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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124714
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】検査方法及び検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20230830BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230830BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
G06T7/00 610
G06T7/00 350C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028655
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100175477
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 慎
【テーマコード(参考)】
2G051
5L096
【Fターム(参考)】
2G051AA32
2G051AB01
2G051AB03
2G051AB05
2G051AC04
2G051CA04
2G051DA13
2G051EA11
2G051EA14
2G051EB05
2G051EC01
2G051ED04
2G051ED15
2G051ED21
2G051FA02
5L096BA03
5L096DA03
5L096EA03
5L096EA13
5L096HA08
5L096HA11
5L096JA11
5L096JA16
5L096KA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】深層学習モデルを用いて高速かつ精度良く検査対象の外観検査を実行する検査方法を提供する。
【解決手段】被検査画像を用いて検査対象の外観を検査する検査方法。当該検査方法は、前記被検査画像から複数の分割画像を取得する分割工程と、第1検査モデルを用いて、分割画像に関して第1欠陥情報を出力する第1出力工程と、前記被検査画像を縮小して、縮小画像を取得する縮小工程と、大欠陥が写った第2教師画像と、第2検査モデルを用いて、縮小画像に関して第2欠陥情報を出力する第2出力工程と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査画像を用いて検査対象の外観を検査する検査方法であって、
前記被検査画像を、前記被検査画像における位置情報を保持したまま複数の領域に分割して、複数の分割画像を取得する分割工程と、
縦サイズと横サイズの双方が基準値以下である小欠陥が写った第1教師画像と、前記小欠陥と第1クラス群に属する複数の欠陥クラスそれぞれとの関連度と、前記小欠陥の前記第1教師画像での位置情報とを含む第1教師データにより深層学習した第1検査モデルを用いて、前記複数の分割画像それぞれに写った欠陥について、前記第1クラス群に属する欠陥クラスごとの関連度、サイズ、及び前記被検査画像での位置情報含む第1欠陥情報を出力する第1出力工程と、
前記被検査画像を縮小して、縮小画像を取得する縮小工程と、
縦サイズと横サイズの少なくとも一方が基準値超である大欠陥が写った第2教師画像と、前記大欠陥と第2クラス群に属する複数の欠陥クラスそれぞれとの関連度と、前記大欠陥の前記第2教師画像での位置情報とを含む第2教師データにより深層学習した第2検査モデルを用いて、前記縮小画像に写った欠陥について、前記第2クラス群に属する欠陥クラスごとの関連度、サイズ、及び前記被検査画像での位置情報を含む第2欠陥情報を出力する第2出力工程と、
を備える検査方法。
【請求項2】
前記第1欠陥情報と前記第2欠陥情報とを統合し、検査結果に関するレポートを作成するレポート作成工程を更に備える、請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
前記レポート作成工程において、前記第1欠陥情報と前記第2欠陥情報との比較に基づいて、前記第1欠陥情報と前記第2欠陥情報とで重複カウントされた欠陥を特定し、当該重複カウントされた欠陥を一つの欠陥として前記レポートを作成する、請求項2に記載の検査方法。
【請求項4】
前記分割工程において、前記被検査画像を互いにオーバーラップする前記複数の領域に分割し、オーバーラップ領域を有する前記複数の分割画像を取得する、請求項1~3の何れかに記載の検査方法。
【請求項5】
前記分割工程において、前記被検査画像を互いにオーバーラップする前記複数の領域に分割し、オーバーラップ領域を有する前記複数の分割画像を取得し、
そして、前記レポート作成工程において、前記オーバーラップ領域において重複カウントされた欠陥を特定し、当該重複カウントされた欠陥を一つの欠陥として前記レポートを作成する、請求項2又は3に記載の検査方法。
【請求項6】
前記被検査画像の画像サイズが1000×1000画素以上である、請求項1~5の何れかに記載の検査方法。
【請求項7】
前記基準値が400μm以上2000μm以下の範囲内の値である、請求項1~6の何れかに記載の検査方法。
【請求項8】
前記第1検査モデル及び前記第2検査モデルは、畳み込みニューラルネットワークを用いた検査モデルである、請求項1~7の何れかに記載の検査方法。
【請求項9】
前記検査対象がゴム成分及び充填材を含むゴムシートである、請求項1~8の何れかに記載の検査方法。
【請求項10】
被検査画像を用いて検査対象の外観を検査する検査装置であって、
前記検査装置は、記憶部と、制御部とを備え、
前記記憶部は、縦サイズと横サイズの双方が基準値以下である小欠陥が写った第1教師画像と、前記小欠陥と第1クラス群に属する複数の欠陥クラスそれぞれとの関連度と、前記小欠陥の前記第1教師画像での位置情報とを含む第1教師データにより深層学習した第1検査モデル、縦サイズと横サイズの少なくとも一方が基準値超である大欠陥が写った第2教師画像と、前記大欠陥と第2クラス群に属する複数の欠陥クラスそれぞれとの関連度と、前記大欠陥の前記第2教師画像での位置情報とを含む第2教師データにより深層学習した第2検査モデル、及び、前記被検査画像を記憶し、
前記制御部は、
前記記憶部から取得した前記被検査画像を、前記被検査画像における位置情報を保持したまま複数の領域に分割して、複数の分割画像を取得し、
前記複数の分割画像を前記第1検査モデルに入力して、前記複数の分割画像それぞれに写った欠陥について、前記第1クラス群に属する欠陥クラスごとの関連度、サイズ、及び前記被検査画像での位置情報を含む第1欠陥情報を出力させ、
前記記憶部から取得した前記被検査画像を縮小して、縮小画像を取得し、
前記縮小画像を前記第2検査モデルに入力して、前記縮小画像に写った欠陥について、前記第2クラス群に属する欠陥クラスごとの関連度、サイズ、及び前記被検査画像での位置情報を含む第2欠陥情報を出力させる、検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査方法及び検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な製品の製造に際し、品質管理のために製品外観の目視検査が行われている。目視検査は、検査員に熟練した検査技能が求められるので、効率化を図ることが難しい。このため、製品外観の検査を自動化する技術が求められている。
【0003】
製品外観の検査を自動で行う手法として、ルールベースでの外観検査方法がこれまで主流で実施されてきたが、近年、深層学習を用いた画像処理による外観検査方法が注目されている。深層学習により学習させたモデルを用いて検査することにより、ルールベースでの検査では困難であった欠陥の分類や、被検査画像のノイズなどによる誤検出を防ぐことができる可能性がある。例えば特許文献1では、深層学習により学習させたモデルを用いて、ウェハなどの基板に発生する欠陥の分類を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-124591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
検査対象に形成される欠陥について、そのサイズは微小なものから目視で容易に確認できるほどの大きさのものまで様々である。そして微小な欠陥を特定するためには、画像サイズの大きい高画質画像を使用する必要がある。しかしながら高画質画像に対して深層学習を適用すると計算量が膨大となるため、検査モデルの生成や当該検査モデルによる計算結果の算出に際し計算処理の負荷が高まるという問題があった。計算処理の負荷を低減する手法としては、高画質画像の画像サイズを縮小して使用する方法が考えられる。しかしながら縮小した画像では微小な欠陥が消失してしまう場合があり、欠陥を検出する精度が低下するという新たな問題が生じる。
【0006】
そこで、本発明は、深層学習モデルを用いて高速かつ精度良く検査対象の外観検査を実行する検査方法及び検査装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行なった。そして、本発明者は、検査対象が写った被検査画像を分割した画像と、当該被検査画像を縮小した画像とを、それぞれ異なる検査モデルに入力して欠陥の情報を出力させることで、高速且つ精度良く検査対象の外観を検査しうることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の検査方法は、被検査画像を用いて検査対象の外観を検査する検査方法であって、前記被検査画像を、前記被検査画像における位置情報を保持したまま複数の領域に分割して、複数の分割画像を取得する分割工程と、縦サイズと横サイズの双方が基準値以下である小欠陥が写った第1教師画像と、前記小欠陥と第1クラス群に属する複数の欠陥クラスそれぞれとの関連度と、前記小欠陥の前記第1教師画像での位置情報とを含む第1教師データにより深層学習した第1検査モデルを用いて、前記複数の分割画像それぞれに写った欠陥について、前記第1クラス群に属する欠陥クラスごとの関連度、サイズ、及び前記被検査画像での位置情報含む第1欠陥情報を出力する第1出力工程と、前記被検査画像を縮小して、縮小画像を取得する縮小工程と、縦サイズと横サイズの少なくとも一方が基準値超である大欠陥が写った第2教師画像と、前記大欠陥と第2クラス群に属する複数の欠陥クラスそれぞれとの関連度と、前記大欠陥の前記第2教師画像での位置情報とを含む第2教師データにより深層学習した第2検査モデルを用いて、前記縮小画像に写った欠陥について、前記第2クラス群に属する欠陥クラスごとの関連度、サイズ、及び前記被検査画像での位置情報を含む第2欠陥情報を出力する第2出力工程と、を備える。
【0009】
上述した本発明の検査方法によれば、被検査画像を分割して得られる分割画像と、被検査画像を縮小して得られる分割画像とをそれぞれ異なる検査モデルに入力して計算を行うことで、被検査画像をそのまま一つの検査モデルに入力した場合に比して計算処理の負荷を低減することができる。加えて上述した本発明の検査方法によれば、分割画像と縮小画像の双方による検査を行うため、微小な欠陥から大きな欠陥まで、幅広いサイズの欠陥を特定することが可能となる。すなわち、上述した本発明の検査方法を用いれば、高速かつ精度良く検査対象の外観検査を実行することができる。
【0010】
本明細書において、欠陥の「縦サイズ」とは、被検査画像などの画像に表示される検査対象における欠陥の上下方向の実際の大きさ(実際の検査対象における物理的な大きさ)を意味し、欠陥の「横サイズ」とは、被検査画像などの画像に表示される検査対象における欠陥の左右方向の実際の大きさを意味する。
【0011】
一実施形態において、本発明の検査方法は、前記第1欠陥情報と前記第2欠陥情報とを統合し、検査結果に関するレポートを作成するレポート作成工程を更に備えていてもよい。レポート作成工程を行うことにより、被検査画像についての統合された欠陥情報が掲載されたレポートを得ることができる。
【0012】
一実施形態において、前記レポート作成工程では、前記第1欠陥情報と前記第2欠陥情報との比較に基づいて、前記第1欠陥情報と前記第2欠陥情報とで重複カウントされた欠陥を特定し、当該重複カウントされた欠陥を一つの欠陥として前記レポートを作成してもよい。このようにしてレポート作成工程を実施することにより、重複カウントによる欠陥情報の重複を除いたレポートを得ることができる。
【0013】
一実施形態において、前記分割工程では、前記被検査画像を互いにオーバーラップする前記複数の領域に分割し、オーバーラップ領域を有する前記複数の分割画像を取得してもよい。このようにして分割工程を実施することにより、分割境界上の欠陥の検出もれを防いで、検査精度を更に高めることができる。
【0014】
一実施形態において、前記分割工程では、前記被検査画像を互いにオーバーラップする前記複数の領域に分割し、オーバーラップ領域を有する前記複数の分割画像を取得し、そして、前記レポート作成工程では、前記オーバーラップ領域において重複カウントされた欠陥を特定し、当該重複カウントされた欠陥を一つの欠陥として前記レポートを作成してもよい。このようにして分割工程及びレポート作成工程を実施することにより、分割境界上の欠陥の検出もれを防いで、検査精度を更に高めることができ、そして重複カウントによる欠陥情報の重複を除いたレポートを得ることができる。
【0015】
一実施形態において、前記被検査画像の画像サイズを1000×1000画素以上としてもよい。被検査画像の画像サイズが1000×1000画素以上であれば、検査精度を十分に高めることができる。
【0016】
一実施形態において、前記基準値を400μm以上2000μm以下の範囲内の値としてもよい。
【0017】
一実施形態において、前記第1検査モデル及び前記第2検査モデルは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いた検査モデルとしてもよい。これにより、検査の更なる高速化と検査精度の向上が可能となる。
【0018】
一実施形態において、前記検査対象をゴム成分及び充填材を含むゴムシートとしてもよい。
【0019】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の検査装置は、被検査画像を用いて検査対象の外観を検査する検査装置であって、前記検査装置は、記憶部と、制御部とを備え、前記記憶部は、縦サイズと横サイズの双方が基準値以下である小欠陥が写った第1教師画像と、前記小欠陥と第1クラス群に属する複数の欠陥クラスそれぞれとの関連度と、前記小欠陥の前記第1教師画像での位置情報とを含む第1教師データにより深層学習した第1検査モデル、縦サイズと横サイズの少なくとも一方が基準値超である大欠陥が写った第2教師画像と、前記大欠陥と第2クラス群に属する複数の欠陥クラスそれぞれとの関連度と、前記大欠陥の前記第2教師画像での位置情報とを含む第2教師データにより深層学習した第2検査モデル、及び、前記被検査画像を記憶し、前記制御部は、前記記憶部から取得した前記被検査画像を、前記被検査画像における位置情報を保持したまま複数の領域に分割して、複数の分割画像を取得し、前記複数の分割画像を前記第1検査モデルに入力して、前記複数の分割画像それぞれに写った欠陥について、前記第1クラス群に属する欠陥クラスごとの関連度、サイズ、及び前記被検査画像での位置情報を含む第1欠陥情報を出力させ、前記記憶部から取得した前記被検査画像を縮小して、縮小画像を取得し、前記縮小画像を前記第2検査モデルに入力して、前記縮小画像に写った欠陥について、前記第2クラス群に属する欠陥クラスごとの関連度、サイズ、及び前記被検査画像での位置情報を含む第2欠陥情報を出力させる。
上述した本発明の検査装置を用いれば、高速かつ精度良く検査対象の外観検査を実行することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、深層学習モデルを用いて高速かつ精度良く検査対象の外観検査を実行する検査方法及び検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態に係る検査装置の構成を示す図である。
図2】一実施形態に係る検査方法を示すフローチャートである。
図3】一実施形態に係る検査方法の分割工程を説明する図である。
図4】一実施形態に係る検査方法の分割工程を説明する他の図である。
図5】一実施形態に係る検査方法の縮小工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図中、同一又は相当する部分は、同一符号を付している。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
また以下では、一例として、検査対象として、ゴム成分及び充填材を含むゴムシートを検査対象として用いた態様について説明する場合があるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
(検査方法及び検査装置)
本発明の検査方法は、被検査画像を複数の領域に分割して複数の分割画像を得る工程(分割工程)と、分割工程により得られた複数の分割画像について第1検査モデルを用いて検査を行い、第1欠陥情報を出力する工程(第1出力工程)とを備える。また本発明の検査方法は、被検査画像を縮小して縮小画像を得る工程(縮小工程)と、縮小工程により得られた縮小画像について第2検査モデルを用いて検査を行い、第2欠陥情報を出力する工程(第2出力工程)とを備える。
【0024】
なお、本発明の検査方法は、上述した分割工程及び第1出力工程、並びに縮小工程及び第2出力工程以外の工程を備えていてもよい。例えば、本発明の検査方法は、分割工程及び縮小工程に先んじて、検査対象を撮影した被検査画像を取得する工程(画像取得工程)、及び/又は第1出力工程から出力される第1欠陥情報と、第2出力工程から出力される第2欠陥情報とを統合して検査結果に関するレポートを作成する工程(レポート作成工程)を備えていても良い。
【0025】
そして、上述した本発明の検査方法は、本発明の検査装置により実施することができる。ここで、本発明の検査装置は、記憶部と、制御部とを備える。なお本発明の検査装置は記憶部と制御部以外の構成を備えていてもよい。例えば、本発明の検査装置は、検査対象を撮影して被検査画像を取得する画像取得部、第1欠陥情報、第2欠陥情報、及び検査結果に関するレポートなどの各種情報を表示する表示部を備えていてもよい。
【0026】
<検査装置>
図1を用いて、本発明の一実施形態に係る検査装置1の構成を説明する。検査装置1は、記憶部2と、制御部3と、画像取得部4と、表示部5とを備える。以下では、検査装置1の構成及び機能が、ハードウェアとしての一般的なコンピュータに設けられている例について主として説明するが、検査装置1の構成及び機能は、全部又は一部が互いに通信可能な(クラウドのような)複数のコンピュータに分散させた実施形態も可能である。
【0027】
記憶部2は、1つ以上の半導体メモリ、1つ以上の磁気メモリ、1つ以上の光メモリ、又はこれらの組み合わせを含む。半導体メモリは、例えば、RAM(random access memory)又はROM(read only memory)である。記憶部2には、検査装置1の動作に用いられる情報、及び検査装置1の動作によって得られる情報が格納される。
【0028】
制御部3は、1つ以上のプロセッサを含む。プロセッサは、例えば、CPU(central processing unit)等の汎用プロセッサ、又は、GPU(graphics processing unit)等の特定の処理に特化した専用プロセッサであってもよい。制御部3は検査装置1の各部を制御しながら、検査装置1の動作に関わる情報処理を実行する。一実施形態において、第1検査モデル及び第2検査モデルによる計算(推論)は、クラウドサービスを用いて(クラウド上で)実施することができる。
【0029】
画像取得部4は、1つ以上の撮像装置を含む。撮像装置は、例えば、可視光カラーカメラ又は可視光モノクロカメラである。画像取得部4は、検査対象を撮影して被検査画像を取得する。
【0030】
表示部5は、1つ以上の表示用インタフェースを含む。表示用インタフェースは、例えば、LCD(liquid crystal display)又は有機EL(electro luminescence)ディスプレイ等のディスプレイ、スピーカ、又はこれらの組み合わせである。表示部5は、検査装置1の動作によって得られる情報を表示する。
【0031】
なお画像取得部4及び表示部5は、それぞれ、検査装置1に備えられる代わりに外部の機器として検査装置1に接続されてもよい。接続方式としては、例えば、USB、HDMI(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等の任意の方式を用いることができる。「USB」は、Universal Serial Busの略語である。「HDMI(登録商標)」は、High-Definition Multimedia Interfaceの略語である。
【0032】
検査装置1の動作は、記憶部2に格納されたプログラムを、制御部3に含まれるプロセッサで実行することにより実現される。
【0033】
<検査方法>
次いで、図2を参照して、上述した検査装置1の動作を説明する。この動作は、本発明の検査方法の一実施形態に相当する。
【0034】
図2の検査方法は、画像取得工程S100と、分割工程S101と、第1出力工程S102と、縮小工程S111と、第2出力工程S112と、レポート作成工程S120とを備える。
【0035】
<画像取得工程S100>
画像取得工程S100では、画像取得部4により検査対象を撮影して被検査画像を取得する。なお、画像取得部4により撮影された検査対象の画像をそのまま被検査画像としてもよいし、撮影された画像に既知の前処理を施して被検査画像としてもよい。また被検査画像の形式は特に限定されず、JPEGやBMPなどの既知の形式とすることができる。
ここで、後述する分割及び縮小する前の被検査画像の画像サイズは特に限定されないが、例えば、1000×1000画素(100万画素)以上とすることができる。被検査画像の画像サイズが1000×1000画素以上であれば、検査精度を十分に高めることができる。なお被検査画像の画像サイズの上限は特に限定されないが、計算負荷低減の観点から、例えば10000×10000画素(1億画素)以下であることが好ましい。
そして、画像取得工程S100で得られた被検査画像は記憶部2に格納される。
【0036】
<分割工程S101>
分割工程S101では、制御部3が、記憶部2に格納された被検査画像を複数の領域に分割する。得られた複数の分割画像は、分割前の当該被検査画像における位置情報を保持する。
【0037】
図3及び図4は、被検査画像10の分割方法の例を説明する図である。図3及び図4で分割される被検査画像10は、2730×2730画素の画像サイズを有する。
【0038】
図3に示される実施形態においては、欠陥11及び12が写った被検査画像10から910×910画素の画像サイズを有する9枚(3×3)の分割画像D1~D9を切り出している。分割画像D1~D9を構成する各画素は、分割前の被検査画像10における位置情報を保持する。例えば、分割前の被検査画像10における最も左上に位置する画素(即ち、分割画像D1の最も左上に位置する画素)の座標(x,y)を(0,0)として、各分割画像を構成するそれぞれの画素は、対応する位置情報を有する。かかる場合、例えば、分割画像D2の最も左上に位置する画素の座標は(910,0)となり、分割画像D4の最も左上に位置する画素の座標は(0,910)となり、分割画像D9の最も左上に位置する画素の座標は(1820,1820)となる。
【0039】
ここで図3においては、欠陥11は分割画像D1とD2の分割境界上に位置する。そのため分割後の分割画像D1とD2それぞれにおいて欠陥11は2つに分割され小さくなり、後述の第1出力工程S102において欠陥として検出されない可能性が生じる。このような分割境界上の欠陥の検出もれを防いで検査精度を高める観点から、分割工程S101では、図4に示される実施形態のように、検査画像を互いにオーバーラップする複数の領域に分割することが好ましい。
図4に示される実施形態においては、欠陥11及び12が写った被検査画像10から1024×1024画素の画像サイズを有する9枚(3×3)の分割画像D1´~D9´を切り出している(符号D1´~D9´は図示せず)。分割画像D1´~D9´を構成する各画素は、図3に示される実施形態と同様に分割前の被検査画像10における位置情報を保持する。そして分割画像D1´~D9´は、それぞれ隣接する分割画像とオーバーラップ領域13(幅171画素)において重なっている。なお、オーバーラップ領域の幅は、任意に決定することができる。
【0040】
そして、分割工程S101で得られた複数の分割画像は記憶部2に格納される。
【0041】
<第1出力工程S102>
第1出力工程S102では、複数の分割画像をそれぞれ第1検査モデルに入力し、各分割画像に写った欠陥についての第1欠陥情報を出力させる。記憶部2に格納された第1検査モデルを用いた計算は、制御部3により実行する。なお当該計算は、制御部3に相当する、クラウドコンピューティングシステムに属するサーバ等が備える制御部で実行してもよい。第1検査モデルによる複数の分割画像に対する上記処理は、順次または並列して行われる。
【0042】
第1検査モデルとしては、深層学習によって構築された学習済みモデルを使用する。具体的には、第1検査モデルは、縦サイズと横サイズの双方が基準値以下の小欠陥を含む第1教師画像と、当該小欠陥と第1クラス群に属する複数の欠陥クラスそれぞれとの関連度と、小欠陥の第1教師画像での位置情報と含む第1教師データを用いて深層学習を行い生成された学習済みモデルである。
ここで、上記基準値は、検査対象の種類などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。基準値は、例えば400μm以上2000μm以下の範囲内の値とすることができる。
【0043】
また、第1クラス群を構成する複数の欠陥クラスも、検査対象の種類などに応じて適宜設定すればよい。
例えば、検査対象をゴムシートとする場合、欠陥としては、付着物(例:切粉、埃、砂、金属異物、繊維、皮膚などの人体由来の異物)、変質物(例:黒点、酸化物)、及び変形(例:凹凸、裂け、スジ、破れ、シワ、亀裂)などが挙げられる。第1クラス群を構成する複数の欠陥クラスは、これらの欠陥から2種以上を選択して設定することができる。
そして、第1クラス群に含まれる欠陥クラスに対応する小欠陥としては、例えば、切粉、埃、砂、金属異物、黒点、酸化物、繊維などが挙げられるが、縦サイズと横サイズの双方が基準値以下であればこれらに限定されるものではない。
【0044】
上述した第1教師データを、入力層、中間層及び出力層を有するニューラルネットワークに学習させることで、学習済みモデルとして第1検査モデルを得る。ニューラルネットワークの例としては、検査の更なる高速化と検査精度の向上の観点から、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)が好ましく挙げられる。畳み込みニューラルネットワークは、中間層に一層以上の畳み込み層及び一層以上のプーリング層を具備し得る。
なお、第1検査モデルを得るに際して使用する深層学習の方法は、特に限定されず既知の学習方法を採用することができる。
一実施形態において、第1検査モデルを得るための深層学習の方法は、マルチタスク学習を採用する。例えば、小欠陥の位置情報及び小欠陥が該当する欠陥クラスの情報が紐づけられたアノテーション済み第1教師画像(第1教師データ)を用い、小欠陥の位置情報の回帰と小欠陥の欠陥クラス分類に関する学習を同時に行う。回帰では座標のズレを最小とするような損失関数を設定し、分類では欠陥クラス分類後の正解率が高くなるような損失関数(例えば、クロスエントロピー誤差関数)を設定すればよい。
【0045】
上述のようにして得られる第1検査モデルに、分割工程S101で取得した分割画像を入力し、それぞれの分割画像について第1欠陥情報を出力させる。ここで第1欠陥情報は、以下の三つを含む。
A1:各欠陥について、第1クラス群の複数の欠陥クラスそれぞれとの関連度
A2:各欠陥のサイズ
A3:各欠陥の位置情報
一実施形態において、A1の関連度は、検出された欠陥がそれぞれの欠陥クラスに該当する確率であり、ニューラルネットワークにおいて活性化関数としてソフトマックス関数を用いた出力層から出力される。
一実施形態において、A2のサイズは、検出された欠陥の重心を通り且つ当該欠陥の縁上に両端がある線分のうち最も長いもの(主軸)の長さ(主軸長)を「縦サイズ」、検出された欠陥の重心を通り且つ上記主軸と直交し、当該欠陥の縁上に両端がある線分(副軸)の長さ(副軸長)を「横サイズ」として算出及び出力される。
一実施形態において、A3の位置情報は、検出された欠陥を含む矩形の一組の対頂点((x1, y1)、(x2, y2))を、保持していた位置情報で補間した値として算出及び出力される。
【0046】
そして、第1出力工程S102で得られた複数の分割画像についての第1欠陥情報は、記憶部2に格納される。この第1欠陥情報は、必要に応じて表示部5で表示させることができる。
【0047】
<縮小工程S111>
縮小工程S111では、制御部3が、記憶部2に格納された被検査画像を縮小して縮小画像を得る。画像サイズを縮小する方法は特に限定されない。例えば、被検査画像の画素を間引き、必要に応じてバイオリニア補間を行うことで縮小画像を得ることができる。
【0048】
図5は、被検査画像10における欠陥が存在する箇所と、当該被検査画像10を縮小して得られた縮小画像14における同一の箇所とを比較したイメージ図である。図5に示されるイメージ図のように、縮小を行うことで欠陥は薄まる。そして特に小さな欠陥は、第2検査モデルでは検出不可能なほどに薄まるか、または消失する場合がある。一実施形態として、例えば150mm×150mm×0.1mmのゴムシートの主面(150mm×150mmの面)を撮影して得られる被検査画像(画像サイズ:8192×8192画素)について、画素を間引いて縮小画像(画像サイズ:1024×1024画素)を得る場合を挙げる。このような縮小を行うと、縦サイズと横サイズ双方が400μm未満の欠陥は後述の第2検査モデルでは検出不可能なほどに薄まるか、または消失する場合がある。しかしながら本発明の検査方法では、縮小画像において検出できない小さな欠陥であっても、上述した第1検査モデルを用いた第1出力工程にて検出することができる。
【0049】
<第2出力工程S112>
第2出力工程S112では、縮小画像を第2検査モデルに入力し、縮小画像に写った欠陥についての第2欠陥情報を出力させる。記憶部2に格納された第2検査モデルを用いた計算は、制御部3により実行する。なお当該計算は、クラウド上の制御部3で実行してもよい。
【0050】
第2検査モデルとしては、深層学習によって構築された学習済みモデルを使用する。具体的には、第2検査モデルは、縦サイズと横サイズの少なくとも一方が基準値超の大欠陥を含む第2教師画像と、当該大欠陥と第2クラス群に属する複数の欠陥クラスそれぞれとの関連度と、大欠陥の被検査画像での位置情報と含む第2教師データを用いて深層学習を行い生成された学習済みモデルである。
ここで、上記基準値は、「第1出力工程S102」の項で採用した基準値と同じ値を用いる。
【0051】
まだ、第2クラス群に含まれる欠陥のクラスも、検査対象の種類などに応じて適宜設定すればよい。
例えば、検査対象をゴムシートとする場合は、欠陥としては、「第1出力工程S102」の項で上述したものが挙げられる。第2クラス群を構成する複数の欠陥クラスは、これらの欠陥から2種以上を選択して設定することができる。
そして、第2クラス群を構成する複数の欠陥クラスに対応する大欠陥としては、例えば、繊維、人体由来の異物、凹凸、裂け、スジ、破れ、シワ、亀裂などが挙げられるが、縦サイズと横サイズの少なくとも一方が基準値超であればこれらに限定されるものではない。
【0052】
上述した第2教師データを、第1検査モデルを生成する際と同様に、CNNなどのニューラルネットワークに学習させることで、学習済みモデルとして第2検査モデルを得る。
なお、第2検査モデルを得るに際して使用する深層学習の方法は、特に限定されず既知の学習方法を採用することができる。一実施形態において、第2検査モデルを得るための深層学習の方法は、「第1出力工程S102」の項で上述したマルチタスク学習を採用する。
【0053】
上述のようにして得られる第2検査モデルに、縮小工程S111で取得した縮小画像を入力し、縮小画像について第2欠陥情報を出力させる。ここで第2欠陥情報は、以下の三つを含む。
B1:各欠陥について、第2クラス群の複数の欠陥クラスそれぞれとの関連度
B2:各欠陥のサイズ
B3:各欠陥の位置情報
一実施形態において、B1の関連度は、特定された欠陥がそれぞれの欠陥クラスに該当する確率であり、ニューラルネットワークにおいて活性化関数としてソフトマックス関数を用いた出力層から出力される。
一実施形態において、B2のサイズは、検出された欠陥の重心を通り且つ当該欠陥の縁上に両端がある線分のうち最も長いもの(主軸)の長さ(主軸長)を「縦サイズ」、検出された欠陥の重心を通り且つ主軸と直交し、当該欠陥の縁上に両端がある線分(副軸)の長さ(副軸長)を「横サイズ」として算出及び出力される。
一実施形態において、B3の位置情報は、検出された欠陥を含む矩形の一組の対頂点((x1, y1)、(x2, y2))を、保持していた位置情報で補間した値として算出及び出力される。
【0054】
そして、第2出力工程S112で得られた縮小画像についての第2欠陥情報は、記憶部2に格納される。この第2欠陥情報は、必要に応じて表示部5で表示させることができる。
【0055】
<レポート作成工程S120>
レポート作成工程S120では、制御部3が、上述の第1出力工程S102で得られた第1欠陥情報と、上述の第2出力工程S112で得られた第2欠陥情報を統合して、検査結果に関するレポートを作成する。
一実施形態において、レポート作成工程S120では、第1欠陥情報と第2欠陥情報のそれぞれをそのまま併記してレポートを作成してもよい。
【0056】
一実施形態において、レポート作成工程S120では、第1欠陥情報において、オーバーラップ領域に存在していたため隣接する複数の分割画像において重複カウントされた欠陥を特定し、当該重複カウントされた欠陥を一つの欠陥としてレポートを作成してもよい。この処理を実行することにより、重複カウントによる欠陥情報の重なりを除いたレポートを得ることができる。
また一実施形態において、レポート作成工程S120では、第1欠陥情報と第2欠陥情報との比較に基づいて、第1欠陥情報と第2欠陥情報とで重複カウントされた欠陥を特定し、当該重複カウントされた欠陥を一つの欠陥としてレポートを作成してもよい。ここで重複カウントされる欠陥の一例として、比較的大きな欠陥が挙げられる。大きな欠陥は複数の分割領域に亘る場合があり、縮小画像に写った当該欠陥全体についての情報が第1欠陥情報に含まれると同時に、複数の分割画像にそれぞれ写った当該欠陥の断片についての情報が第2欠陥情報に含まれる場合がある。このような重複カウントは第1欠陥情報と第2欠陥情報(特には位置情報)を比較することにより特定することができる。そして、重複カウントされた欠陥については、例えば、当該欠陥の第1欠陥情報は考慮せず第2欠陥情報のみに基づいてレポートに掲載することができる。
【0057】
レポート作成工程S120で得られた検査結果に関するレポートは、記憶部2に格納される。作成されるレポートには、例えば、数値情報と、当該数値情報から合成された検出結果画像の少なくとも一方が含まれる。このレポートは、必要に応じて表示部5で表示させることができる。
【0058】
(ゴムシートの製造方法)
上述した本発明の検査方法について、その実際態様は特に限定されない。例えば、本発明の検査方法は、ゴムシートを製造する過程において使用することができる。
一実施形態において、ゴムシートの製造方法は、ゴム成分及び充填材を含み、任意にその他の成分を含むゴム組成物を調製する工程(ゴム組成物調製工程)と、ゴム組成物をシート状に成形する工程(成形工程)と、シート状に成形されたゴム組成物(ゴムシート)を検査対象として、上述した本発明の検査方法を用いて検査を行う工程(検査工程)とを備える。なお、ゴムシートの製造方法は、ゴム組成物調製工程、成形工程及び検査工程以外の工程を備えていてもよい。
本発明の検査方法を用いた検査工程を備えるゴムシートの製造方法によれば、高速かつ精度良く外観検査を実行することができるため、連続で効率良く合格品のゴムシートを特定可能といった利点がある。
【0059】
<ゴム組成物調製工程>
ゴム組成物調製工程では、ゴム成分と、充填材と、任意にその他の成分を含むゴム組成物を調製する。ゴム組成物は、例えば、ゴム成分及び充填材、並びに任意に用いられるその他の成分を混練して調製することができる。ここでゴム組成物が、その他の成分として架橋剤を含む場合、ゴム組成物調製工程では、後述するベース練りと仕上げ練りとを実施することが好ましい。
【0060】
<<ゴム成分>>
ゴム成分としては、特に限定されることなく、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム(SIBR)、ニトリルゴム、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系ゴムが挙げられる。なおゴム成分は、得られるゴムシートの用途や所期の特性に応じて適宜選択することができる。またゴム成分は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
<<充填材>>
充填材としては、特に限定されることなく、例えば、カーボンブラック、ホワイトカーボン(シリカ)、活性化炭酸カルシウム、超微粒子珪酸マグネシウム等の無機充填材; ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ハイスチレン樹脂、フェノール樹脂、リグニン、変性メラミン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油樹脂等の有機充填材などを用いることができる。なお充填材は、得られるゴムシートの用途や所期の特性に応じて適宜選択することができる。また充填材は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
<<その他の成分>>
その他の成分としては、特に限定されることなく、ゴムシートの製造に用いられる既知の成分を用いることができる。その他の成分としては、例えば、可塑剤、ワックス、老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、架橋剤、加硫促進剤、及び酸化亜鉛が挙げられる。またその他の成分は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
<<ベース練り>>
ベース練りでは、まずはゴム成分と充填材を混練して混練物を得る。ベース練りにおける混練は、例えば、噛合式インターミックスタイプミキサー(I/Mミキサー)、接線式バンバリータイプミキサー(B/Bミキサー)、加圧式ニーダー、オープンロールなどの公知の混練機(特には、密閉式混練機)を用いて行うことができる。これらの中でも、混練中の混練物の冷却効率に優れており、温度上昇を抑制しながら、より強いせん断力で混練してゴム成分中に充填材を十分に分散させうるI/Mミキサーを用いることが好ましい。
なお、ベース練りの混練条件(混練温度、混練時間など)は、ゴム成分及び/又は充填材の種類、量などに応じて適宜設定しうる。
【0064】
<<仕上げ練り>>
仕上げ練りでは、ベース練りで得られた混練物と、架橋剤とを混練する。仕上げ練りにおける混練は、「ベース練り」と同様公知の混錬機を用いて行うことができ、中でオープンロールを用いることが好ましい。
仕上げ練りの混錬温度は、特に限定されないが、例えば室温(20℃)以上80℃以下とすることができる。また仕上げ練りの混練時間は、特に限定されないが、例えば1分以上15分以下とすることができる。なお仕上げ練りにおいては、上記混練物及び架橋剤に加え、加硫促進剤、酸化亜鉛等を必要に応じて適宜添加、混練してもよい。
【0065】
<成形工程>
成形工程では、上述したゴム組成物調製工程で得られたゴム組成物を、所定の厚み及び幅を有するシート状に成形する。成形方法は特に限定されないが、押し出し成形が好ましい。また成形は、特に限定されず、既知の成形機を用いて行うことができる。なお成形工程においては、ゴム組成物をシート状に成形した後に複数枚のシートを積層及び一体化してゴムシートとし、当該ゴムシートを後述の検査工程に供してもよい。
【0066】
<検査工程>
検査工程では、上述した成形工程でシート状に成形されたゴム組成物(ゴムシート)を検査対象として、上述した本発明の検査方法により外観検査を行う。
この検査工程により、例えば、合格品のゴムシートと、不合格品のゴムシートを選別することができる。合格品と不合格品の基準(合否基準)は適宜決定することができる。一実施形態においては、当該合否基準と、第一欠陥情報と第二欠陥情報とを統合して得られるレポートに掲載された検査結果とを比較して、合格品と不合格品を選別する。
【0067】
以上、諸図面及び実施形態に基づき説明したが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形又は修正は、本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各工程等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の工程等を1つに組み合わせたり、あるいは分割したりすることが可能である。
【実施例0068】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
【0069】
(実施例1)
<第1検査モデルの準備>
後述の「ゴムシートの製造」と同様の手順で複数のゴムシートを作製した。これら複数のゴムシートについて、後述の「画像取得工程」と同様の手順で画像(JPEG形式の2730×2730画素の画像サイズ)を得た。得られたそれぞれの画像を、後述の「分割工程及び第1出力工程」と同様の手順で、オーバーラップ領域(171画素)を含めた1024×1024画素に9分割した。分割後の画像において、縦サイズと横サイズの双方が基準値の800μm以下である小欠陥(第1クラス群:切粉、埃、砂、金属異物、黒点、酸化物、繊維)が写った画像を第1教師画像とした。この第1教師画像について、小欠陥の位置情報と、小欠陥の分類(最も該当する第1クラス群中の欠陥クラス)とをラベリングして第1教師データとした。この第1教師データを用い、出力結果が位置情報と分類のそれぞれの誤差を最小とするように損失関数を設定したニューラルネットワーク(CNN)によるマルチタスク学習を行い、第1検査モデルを準備した。
<第2検査モデルの準備>
後述の「ゴムシートの製造」と同様の手順で複数のゴムシートを作製した。これら複数のゴムシートについて、これら複数のゴムシートについて、後述の「画像取得工程」と同様の手順で画像(JPEG形式の2730×2730画素の画像サイズ)を得た。得られたそれぞれの画像を、後述の「縮小工程及び第2出力工程」と同様の手順で、1024×1024画素の画像サイズに縮小した。縮小後の画像において、縦サイズと横サイズの少なくとも一方が基準値の800μm超である大欠陥(第2クラス:繊維、人体由来の異物、凹凸、裂け、スジ、破れ、シワ、亀裂)が写った画像を第2教師画像とした。この第2教師画像について、大欠陥の位置情報と、大欠陥の分類(最も該当する第2クラス群中の欠陥クラス)とをラベリングして第2教師データとした。この第2教師データを用い、出力結果が以下の位置情報と分類のそれぞれの誤差を最小とするように損失関数を設定したニューラルネットワーク(CNN)によるマルチタスク学習を行い、第2検査モデルを準備した。
<ゴムシートの製造>
ゴム成分としての天然ゴム(「TSR20」)40部及びブタジエンゴム(宇部興産株式会社製「BR150B」)60部と、充填材としてカーボンブラック-1(三菱化学株式会社製「ダイアブラック(登録商標)N330」)70部を、I/Mミキサーを用いて、150℃の条件下で5分間混練りして、混練物を得た(ベース練り)。得られた混練物に、架橋剤としての硫黄2部及び加硫促進剤としてのN-tert-ブチルー2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(大内新興化学工業株式会社製、ノクセラ―NS)3部を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、ゴム組成物(未加硫)を得た。得られたゴム組成物を、厚さ0.20mmに押し出し加工し所定の大きさ(150mm×150mm)にカットして、シート状に成形されたゴム組成物(ゴムシート)を得た。
【0070】
<ゴムシートの検査>
[画像取得工程]
上述のようにして得られたゴムシート(150mm×150mm×0.20mm)を、検査ステージ(200mm×200mmの透明アクリル板)の上に載置した。検査ステージ上のゴムシートに、当該シート表面の垂線に対し40度(ゴムシートの表面に対し50度)の照射角度から白色LEDバー照明(型番「LDL2-275X」CCS社製;色温度7,800K;消費電力27W)を照射し、真上(ゴムシートの表面に対し90度の撮像角度、以下同じ)から8KのモノクロCMOSラインカメラ(Basler社製;型番「raL8192-12gm」;8192×1画素)で撮像した。照明及び及びカメラをゴムシートの表面に対し平行に走査しながら撮像して得たBMP形式のシート表面のモノクロ画像を、JPEG形式の2730×2730画素の画像サイズに変換して、被検査画像を得た。
[分割工程及び第1出力工程]
上述のようにして得られた被検査画像を、オーバーラップ領域(171画素)を含めた1024×1024画素に9分割し、9つの分割画像を得た。これらの分割画像をそれぞれ第1検査モデルに入力して、下記a1~a3の第1欠陥情報を得た。
a1:各欠陥と、第1クラス群に属する複数の欠陥クラスそれぞれとの関連度
a2:各欠陥のサイズ(縦サイズとしての主軸長、及び横サイズとしての副軸長)
a3:各欠陥の位置情報(座標)
[縮小工程及び第2出力工程]
上述のようにして得られた被検査画像を、1024×1024画素の画像サイズに縮小して縮小画像を得た。この縮小画像を第2検査モデルに入力して、下記b1~b3の第2欠陥情報を得た。
b1:各欠陥と、第2クラス群に属する複数の欠陥クラスそれぞれとの関連度
b2:各欠陥のサイズ(縦サイズとしての主軸長、及び横サイズとしての副軸長)
b3:各欠陥の位置情報(座標)
[レポート作成工程]
上述のようにして得られた第1欠陥情報と第2欠陥情報を統合し、検査結果に関するレポート(画像検査レポート)を作成した。なお第1欠陥情報において、オーバーラップ領域において重複カウントされて欠陥を特定し、当該欠陥を一つの欠陥として画像検査レポートを作成した。また第1欠陥情報と第2欠陥情報との比較に基づいて、第1欠陥情報と第2欠陥情報とで重複カウントされた欠陥を特定した。そして、第1欠陥情報と第2欠陥情報とで重複カウントされた欠陥に関しては、第1欠陥情報は考慮せず第2欠陥情報のみを踏まえて、一つの欠陥として画像検査レポートを作成した。画像検査レポートには、下記c1~c3の項目を掲載した。
c1:各欠陥の種類(最も関連度の高い欠陥クラス)
c2:各欠陥のサイズ(縦サイズとしての主軸長、及び横サイズとしての副軸長)
c3:各欠陥の位置情報(座標)
【0071】
<評価>
上述の画像検査に用いたゴムシートと同じゴムシートについて目視検査を行い、検査結果のレポート(目視検査レポート)を作成した。目視検査レポートには、下記d1~d3の項目を掲載した。
d1:各欠陥の種類
d2:各欠陥のサイズ(縦サイズとしての主軸長、及び横サイズとしての副軸長)
d3:各欠陥の位置情報(座標)
そして、上記画像検査レポートと、目視検査レポートとを踏まえ、検出率、最小検出サイズ、サイズ精度、及び分類精度を算出した。検出率は95%、最小検出サイズは225μm、サイズ精度は±75μm、分類精度は92%であった。なおそれぞれの項目の評価方法を以下に示す。
[検出率]
下記の式で算出した。
検出率(%)=(画像検査レポートに掲載された欠陥の数)÷(目視検査レポートに掲載された欠陥の数)×100
[最小検出サイズ]
画像検査レポートに掲載された欠陥のうち最も構成画素数が少ない欠陥を特定し、当該欠陥の実際のゴムシートにおける縦サイズと横サイズのうち小さい方の値を最小検出サイズとした。
[サイズ精度]
画像検査レポートに掲載された欠陥のうち、測定対象の欠陥を一つ、任意に選択した。画像検査レポートにおける当該欠陥の縦方向の画素数と横方向の画素数のうち大きい方の画素数から算出される長さ(画素数×75μm)と、目視検査レポートにおける同方向長さとを比較し、それらの差分の範囲としてサイズ精度を特定した。
[分類精度]
下記の式で算出した。
分類精度(%)=(画像検査レポートと目視検査レポートにおいて、欠陥の種類が合致した欠陥の数)÷(画像検査レポートに掲載された欠陥の数)×100
【0072】
(比較例1)
第1検査モデルの準備に用いた第1教師データと、第2検査モデルの準備に用いた第2教師データとを足し合わせた教師データを用いてニューラルネットワーク(CNN)による深層学習を行い、比較用検査モデルを準備した。
そして、実施例1で用いた縮小画像(画像サイズ:1024×1024画素)を比較用検査モデルに入力して、下記e1~e3の欠陥情報を得た。
e1:各欠陥と、第1又は第2クラス群に属する複数の欠陥クラスそれぞれとの関連度
e2:各欠陥のサイズ
e3:各欠陥の位置情報(座標)
この欠陥情報を元に、実施例1と同様にして評価を行った。検出率は13.5%、最小検出サイズは400μm、サイズ精度は±200μm、分類精度は83%であった。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、深層学習モデルを用いて高速かつ精度良く検査対象の外観検査を実行する検査方法及び検査装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 検査装置
2 記憶部
3 制御部
4 画像取得部
5 表示部
10 被検査画像
11,12 欠陥
13 オーバーラップ領域
14 縮小画像
D1,D2,D3,D4,D5,D6,D7,D8,D9 分割画像
S100 画像取得工程
S101 分割工程
S102 第1出力工程
S111 縮小工程
S112 第2出力工程
S120 レポート作成工程
図1
図2
図3
図4
図5