(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124925
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】被験品の繊維配向性を評価する評価方法、評価装置および評価プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20230831BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20230831BHJP
G06T 7/60 20170101ALI20230831BHJP
【FI】
G01N21/17 A
G06T7/00 610Z
G06T7/60 150Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028789
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽生 圭吾
【テーマコード(参考)】
2G059
5L096
【Fターム(参考)】
2G059AA03
2G059FF01
2G059KK04
2G059MM02
2G059MM05
2G059MM09
5L096AA02
5L096AA06
5L096BA03
5L096CA02
5L096EA43
5L096FA35
5L096FA64
5L096FA66
5L096FA67
5L096GA19
5L096GA32
5L096GA51
(57)【要約】
【課題】繊維配向性の弱い材料であっても高精度に繊維配向性を評価する。
【解決手段】下記の工程を有する被験品の繊維配向性を評価する方法:
(A)繊維配向性を評価する被験品の画像を用意する工程、
(B)前記で用意された画像を複数の格子に分割する工程、
(C)前記で分割された各格子について、格子毎に繊維配向性角度を求める工程、
(D)前記で得られた格子毎の繊維配向性角度から、格子の相対度数分布を作成する工程、
(E)前記で得られた相対度数分布から「格子形状に起因するノイズ関数」を除して、「各階級の繊維部分の相対度数を長さとし、配向角度θ
rを偏角とする傾斜楕円関数」を求める工程、及び
(F)前記で得られた傾斜楕円関数から被験品の繊維配向性を評価する指標を演算する工程。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程を有する被験品の繊維配向性を評価する方法:
(A)繊維配向性を評価する被験品の画像を用意する工程、
(B)前記で用意された画像を複数の格子に分割する工程、
(C)前記で分割された各格子について、格子毎に繊維配向性角度を求める工程、
(D)前記で得られた格子毎の繊維配向性角度から、格子の相対度数分布を作成する工程、
(E)前記で得られた相対度数分布から「格子形状に起因するノイズ関数」を除して、「各階級の繊維部分の相対度数を長さとし、配向角度θrを偏角とする傾斜楕円関数」を求める工程、及び
(F)前記で得られた傾斜楕円関数から被験品の繊維配向性を評価する指標を演算する工程。
【請求項2】
前記(A)工程で用意する画像が、被験品において繊維配向性が均質な領域を撮像して得られる画像である、請求項1に記載する評価方法。
【請求項3】
前記(A)工程で用意する画像が、被験品を撮像して得られる画像を二値化処理して得られる画像である、請求項1又は2に記載する評価方法。
【請求項4】
前記二値化処理で採用する閾値が、前記画像における輝度が最下位から55~80%の順位の画素の輝度である、請求項3に記載する評価方法。
【請求項5】
前記(F)で演算する繊維配向性を評価する指標が、配向強度k、配向強度k’及び/又は配向扁平度fである請求項1~4のいずれか一項に記載する評価方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載する評価方法の(F)工程で得られた繊維配向性を評価する指標と、被験品の物性、見た目、及び/又は食感とを紐付ける工程を有する、被験品の物性及び/又は食感の評価方法。
【請求項7】
下記の部を有する被験品の繊維配向性を評価する評価装置:
(a)繊維配向性を評価する被験品の画像を用意する画像用意部、
(b)前記で用意された画像を複数の格子に分割する分割部、
(c)前記で分割された各格子について、格子毎に繊維配向性角度を求める角度演算部、
(d)前記で得られた格子毎の繊維配向性角度から、格子の相対度数分布を作成する相対度数分布作成部、
(e)前記で得られた相対度数分布から「格子形状に起因するノイズ関数」を除して、「各階級の繊維部分の相対度数を長さとし、配向角度θrを偏角とする傾斜楕円関数」を求める傾斜楕円関数演算部、及び
(f)前記で得られた傾斜楕円関数から被験品の繊維配向性を評価する指標を演算する指標演算部。
【請求項8】
前記画像用意部が用意する画像が、被験品において繊維配向性が均質な領域を撮像して得られる画像である、請求項7に記載する評価装置。
【請求項9】
前記画像用意部が用意する画像が、被験品を撮像して得られる画像を二値化処理して得られる画像である、請求項7又は8に記載する評価装置。
【請求項10】
前記二値化処理で採用する閾値が、前記画像における輝度が最下位から55~80%の順位の画素の輝度である、請求項9に記載する評価装置。
【請求項11】
前記指標演算部が演算する繊維配向性を評価する指標が、配向強度k、配向強度k’及び/又は配向扁平度fである請求項7~10のいずれか一項に記載する評価装置。
【請求項12】
請求項7~11のいずれかに記載する評価装置の前記指標演算部で得られた繊維配向性を評価する指標と、被験品の物性、見た目、及び/又は食感とを紐付ける紐付け部を有する、被験品の物性及び/又は食感の評価装置。
【請求項13】
下記の工程をコンピュータに実行させる被験品の繊維配向性を評価する評価プログラム:
(A)繊維配向性を評価する被験品の画像を用意する工程、
(B)前記で用意された画像を複数の格子に分割する工程、
(C)前記で分割された各格子について、格子毎に繊維配向性の角度を求める工程、
(D)前記で得られた格子毎の繊維配向性角度から、格子の相対度数分布を作成する工程、
(E)前記で得られた相対度数分布から「格子形状に起因するノイズ関数」を除して、「各階級の繊維部分の相対度数を長さとし、配向角度θrを偏角とする傾斜楕円関数」を求める工程、及び
(F)前記で得られた傾斜楕円関数から被験品の繊維配向性を評価する指標を演算する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
被験品の繊維配向性を評価する評価方法、評価装置および評価プログラムに関し、特に、食品の繊維配向性を評価する評価方法、評価装置および評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
物体の繊維配向性を評価する技術として、例えば下記の非特許文献1には、セメントなどの工業材料の内部繊維配向性を評価する技術が開示されている。具体的には、非特許文献1では、材料の二値化画像を複数の格子に分割し、分割された各格子について繊維の角度を線形近似すること格子毎に繊維配向性角度を求め、当該繊維配向性角度から格子の相対度数分布を作成し、各階級の相対度数に対して配向角を偏角とする平面座標に変換した極座標分布を作成し、ここで得られた分布を傾斜楕円として近似することで、繊維配向性を評価する指標(繊維の配向角度=楕円の傾斜角度、繊維の配向強度=楕円の長辺と短辺の比)を算出している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】浅野浩平、「高性能繊維補強セメント複合材料における繊維配向性と架橋則に関する研究」、筑波大学学位論文、報告番号12102甲第6888号、2014年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に記載された従来技術では、セメントのような明らかに繊維1本1本を線として認識できるような材料を評価対象としているが、食品のような配向性の弱い材料の分析を行う際に、分析手法固有の「格子形状に起因するノイズ」が生じてしまい、分析結果が大きい誤差を含むことが判明した。非特許文献1でも、ノイズの影響を少なくするために、セル毎に線形近似して角度を算出するときに、平均平方残差が一定以上のもの(線形近似曲線に対して誤差が大きすぎるセル)を除外する処理などが行われているが、これは「画像自体の不鮮明さに起因するノイズ」を除去するものであり、分析手法固有のノイズを除去できるものではない。また、被験品が食品の場合、元々の繊維配向性が弱いので、全体的に画像が不鮮明であり、ノイズ範囲を規定することも難しい。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、繊維配向性の弱い材料であっても高精度に繊維配向性を評価することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の態様を含む。
項1.
下記の工程を有する被験品の繊維配向性を評価する方法:
(A)繊維配向性を評価する被験品の画像を用意する工程、
(B)前記で用意された画像を複数の格子に分割する工程、
(C)前記で分割された各格子について、格子毎に繊維配向性角度を求める工程、
(D)前記で得られた格子毎の繊維配向性角度から、格子の相対度数分布を作成する工程、
(E)前記で得られた相対度数分布から「格子形状に起因するノイズ関数」を除して、「各階級の繊維部分の相対度数を長さとし、配向角度θrを偏角とする傾斜楕円関数」を求める工程、及び
(F)前記で得られた傾斜楕円関数から被験品の繊維配向性を評価する指標を演算する工程。
項2.
前記(A)工程で用意する画像が、被験品において繊維配向性が均質な領域を撮像して得られる画像である、項1に記載する評価方法。
項3.
前記(A)工程で用意する画像が、被験品を撮像して得られる画像を二値化処理して得られる画像である、項1又は2に記載する評価方法。
項4.
前記二値化処理で採用する閾値が、前記画像における輝度が最下位から55~80%の順位の画素の輝度である、項3に記載する評価方法。
項5.
前記(B)工程で分割する格子の形状が矩形である、項1~4のいずれか一項に記載する評価方法。
項6.
前記矩形が正方形である、項5に記載する評価方法。
項7.
前記(F)で演算する繊維配向性を評価する指標が、配向強度k、配向強度k’及び/又は配向扁平度fである項1~6のいずれか一項に記載する評価方法。
項8.
項1~7のいずれか一項に記載する評価方法の(F)工程で得られた繊維配向性を評価する指標と、被験品の物性、見た目、及び/又は食感とを紐付ける工程を有する、被験品の物性及び/又は食感の評価方法。
項9.
下記の部を有する被験品の繊維配向性を評価する評価装置:
(a)繊維配向性を評価する被験品の画像を用意する画像用意部、
(b)前記で用意された画像を複数の格子に分割する分割部、
(c)前記で分割された各格子について、格子毎に繊維配向性角度を求める角度演算部、
(d)前記で得られた格子毎の繊維配向性角度から、格子の相対度数分布を作成する相対度数分布作成部、
(e)前記で得られた相対度数分布から「格子形状に起因するノイズ関数」を除して、「各階級の繊維部分の相対度数を長さとし、配向角度θrを偏角とする傾斜楕円関数」を求める傾斜楕円関数演算部、及び
(f)前記で得られた傾斜楕円関数から被験品の繊維配向性を評価する指標を演算する指標演算部。
項10.
前記画像用意部が用意する画像が、被験品において繊維配向性が均質な領域を撮像して得られる画像である、項9に記載する評価装置。
項11.
前記画像用意部が用意する画像が、被験品を撮像して得られる画像を二値化処理して得られる画像である、項9又は10に記載する評価装置。
項12.
前記二値化処理で採用する閾値が、前記画像における輝度が最下位から55~80%の順位の画素の輝度である、項11に記載する評価装置。
項13.
前記分割部が分割する格子の形状が矩形である、項9~12のいずれか一項に記載する評価装置。
項14.
前記矩形が正方形である、項13に記載する評価装置。
項15.
前記指標演算部が演算する繊維配向性を評価する指標が、配向強度k、配向強度k’及び/又は配向扁平度fである項9~14のいずれか一項に記載する評価装置。
項16.
項9~15のいずれかに記載する評価装置の前記指標演算部で得られた繊維配向性を評価する指標と、被験品の物性、見た目、及び/又は食感とを紐付ける紐付け部を有する、被験品の物性及び/又は食感の評価装置。
項17.
下記の工程をコンピュータに実行させる被験品の繊維配向性を評価する評価プログラム:
(A)繊維配向性を評価する被験品の画像を用意する工程、
(B)前記で用意された画像を複数の格子に分割する工程、
(C)前記で分割された各格子について、格子毎に繊維配向性の角度を求める工程、
(D)前記で得られた格子毎の繊維配向性角度から、格子の相対度数分布を作成する工程、
(E)前記で得られた相対度数分布から「格子形状に起因するノイズ関数」を除して、「各階級の繊維部分の相対度数を長さとし、配向角度θrを偏角とする傾斜楕円関数」を求める工程、及び
(F)前記で得られた傾斜楕円関数から被験品の繊維配向性を評価する指標を演算する工程。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、繊維配向性の弱い材料であっても高精度に繊維配向性を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】評価方法の工程を示すフローチャートである。
【
図3】(a)は、被験品を撮像して得られた二値化処理前の画像の一例であり、(b)は、当該画像を二値化処理した画像の一例である。
【
図4】
図3(b)に示す二値化画像における格子毎の繊維配向性角度を示す図である。
【
図5】(a)は、格子毎の繊維配向性角度の相対度数分布を示すヒストグラムであり、(b)は、当該相対度数分布の各階級の相対度数に対して、繊維配向性角度を偏角とする平面座標に変換した極座標分布および傾斜楕円を示す図である。
【
図6】(a)は配向性を全く持たない画像の一例であり、(b)は、当該画像から従来手法を用いて作成した繊維配向性角度の相対度数分布のヒストグラムである。
【
図7】(a)は、
図3(b)に示す二値化画像の格子毎の繊維配向性角度の相対度数分布からノイズ除去した後の相対度数分布を示すヒストグラムであり、(b)は、当該相対度数分布の各階級の相対度数に対して、繊維配向性角度を偏角とする平面座標に変換した極座標分布および傾斜楕円を示す図である。
【
図8】(a)は被験品の一例を示す斜視図であり、(b)は、当該被験品の断面図であり、(c)は、分析領域の適否を説明するための断面図である。
【
図9】(a)は、楕円の短辺の長さbを1とした時の、長辺a、配向強度k及び配向扁平度fの数値を示しており、(b)は、配向強度k及び配向扁平度fの関係を示すグラフである。
【
図10】分割ピクセル数と、配向強度k及び配向角度θ
rとの関係を示すグラフである。
【
図11】
図3(a)に示す画像の二値化処理で採用する閾値と、上記実施形態の手法で得られた配向強度kとの関係を示すグラフである。
【
図12】(a)は、新鮮なチーズの断面を撮像して得られた画像であり、(b)は、古いチーズの断面を撮像して得られた画像である。
【
図13】
図13は、二値化処理で採用する閾値と、得られた配向強度kとの関係を示すグラフである。
【
図14】(a)及び(b)はそれぞれ、
図12(a)及び(b)に示す画像を75%の閾値で二値化した画像である。
【
図16】(a)は、
図15に示す画像から従来手法を用いて作成した繊維配向性角度の相対度数分布のヒストグラムであり、(b)は、さらにノイズが除去された相対度数分布のヒストグラムである。
【
図17】
図16(b)に示す相対度数分布の各階級の相対度数に対して、繊維配向性角度を偏角とする平面座標に変換した極座標分布および傾斜楕円を示す図である。
【
図19】(a)は、
図18に示す画像から従来手法を用いて作成した繊維配向性角度の相対度数分布のヒストグラムであり、(b)は、さらにノイズが除去された相対度数分布のヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0010】
(装置構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る評価装置1の構成を示すブロック図である。評価装置1は、被験品の繊維配向性を評価する機能を有しており、本実施形態では、被験品は食品である。また、評価装置1は、撮像装置2に接続されており、本実施形態では、撮像装置2は顕微鏡装置である。
【0011】
評価装置1は、汎用のコンピュータで構成することができ、ハードウェア構成として、CPUやGPUなどのプロセッサ(図示省略)、DRAMやSRAMなどの主記憶装置(図示省略)、および、HDDやSSDなどの補助記憶装置10を備えている。補助記憶装置10には、評価プログラムPなどの評価装置1を動作させるための各種プログラムが格納されている。
【0012】
評価装置1は、機能ブロックとして、画像用意部11と、分割部12と、角度演算部13と、相対度数分布作成部14と、傾斜楕円関数演算部15と、指標演算部16と、紐付け部17とを有している。これらの各部は、論理回路等によってハードウェア的に実現してもよいし、評価装置1のプロセッサによってソフトウェア的に実現してもよい。後者の場合、補助記憶装置10に記憶されている評価プログラムPを、プロセッサが主記憶装置に読み出して実行することにより、前記各部を実現することができる。評価プログラムPは、インターネット等の通信ネットワークを介して評価装置1にダウンロードしてもよいし、評価プログラムPを記録したCD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体を介して評価装置1にインストールしてもよい。
【0013】
(処理手順)
図2は、本実施形態に係る評価方法の工程を示すフローチャートである。これらの工程のうち、工程S1は撮像装置2によって実行され、工程S2~S8は評価装置1によって実行される。なお、これらの工程S1~S8の全て又は一部をヒトが手動により実行してもよい。
【0014】
工程S1では、撮像装置2が被験品を撮像して、得られた画像を評価装置1に送信する。本実施形態では、撮像装置2は、被験品である食品の切断面を撮像する。切断面の繊維配向性が全体的に均質ではない場合、撮像装置2は、被験品において繊維配向性が均質な領域を撮像することが好ましい。
【0015】
工程S2では、評価装置1の画像用意部11が、繊維配向性を評価する被験品の画像を用意する。本実施形態では、画像用意部11は、撮像装置2から画像を取得し、さらに当該画像を二値化処理する。工程S2は、特許請求の範囲に記載の(A)工程に対応する。
【0016】
図3(a)は、被験品を撮像して得られた二値化処理前の画像の一例であり、
図3(b)は、当該画像を二値化処理した画像の一例である。この例では、所定の閾値より輝度が大きい画素を1(白)に変換し、所定の閾値より輝度が小さい画素を0(黒)に変換しているが、所定の閾値より輝度が大きい画素を0に変換し、所定の閾値より輝度が小さい画素を1に変換してもよい。二値化処理により、画像中の繊維を白色または黒色で明確化することができる。
【0017】
なお、本実施形態では、二値化処理前の画像における輝度が最下位から75%の順位の画素の輝度を、二値化処理で採用する閾値としている。例えば、画素数が100万である場合、輝度が最下位から75万番目(上から25万番目)の画素の輝度が閾値となる。
【0018】
工程S3では、評価装置1の分割部12が、工程S1で用意された画像を複数の格子に分割する。格子の形状及び大きさは特に限定されないが、本実施形態では、分割部12は、10pixel×10pixelの正方形の格子に分割する。工程S3は、特許請求の範囲に記載の(B)工程に対応する。
【0019】
工程S4では、評価装置1の角度演算部13が、工程S3で分割された各格子について、格子毎に繊維配向性角度を求める。本実施形態では、角度演算部13は、各格子での繊維の角度を線形近似することにより、繊維配向性角度を求める。工程S4は、特許請求の範囲に記載の(C)工程に対応する。
【0020】
図4は、
図3(b)に示す二値化画像における格子毎の繊維配向性角度を示している。なお、黒色画素点のみ含む格子および白色画素点のみ含む格子については、繊維配向性角度を求めていない。
【0021】
工程S5では、評価装置1の相対度数分布作成部14が、工程S4で得られた格子毎の繊維配向性角度から、格子の相対度数分布を作成する。本実施形態では、相対度数分布作成部14は、格子の個数と格子毎の繊維配向性角度について、格子の相対度数分布を作成する。工程S5は、特許請求の範囲に記載の(D)工程に対応する。
【0022】
図5(a)は、格子毎の繊維配向性角度の相対度数分布を示すヒストグラムであり、
図5(b)は、当該相対度数分布の各階級の相対度数に対して、繊維配向性角度を偏角とする平面座標に変換した極座標分布および傾斜楕円を示す図である。非特許文献1に記載された従来技術では、ここで得られた極座標分布を傾斜楕円として近似することで、繊維配向の角度θ
rを楕円の傾斜角度として、繊維配向性の配向強度kを楕円の長辺と短辺の比k=a/bで表すことで、画像の繊維性を分析している。具体的には、ヒストグラムの級数をnとすると(
図5(a)の場合、n=20)、相対度数F
n及び極座標のa、b、θ
rの関係は以下の通りである。
【数1】
【0023】
n個のxとyの組み合わせに(x
n,y
n)ついて、傾斜楕円の式である(4)式を最小二乗法(残差二乗和最小)で解くことで定数a、b及びθ
rを得ることができる。ここでa(長辺)>b(短辺)とすると、繊維配向性の配向強度kは、k=a/bとして算出される。
図3(b)に示す二値化画像から従来技術の手法によって算出された配向強度kは2.40である。
【0024】
しかし、従来技術では食品のような配向性の弱い材料の分析を行う際に、分析手法固有の「格子形状に起因するノイズ」が生じてしまい、分析結果が大きい誤差を含むこととなる。また、被験品が食品の場合、元々の繊維配向性が弱いので、全体的に画像が不鮮明であり、ノイズ範囲を規定することも難しい。
【0025】
そこで、工程S6では、評価装置1の傾斜楕円関数演算部15が、工程S5で得られた相対度数分布から「格子形状に起因するノイズ関数」を除して、「各階級の繊維部分の相対度数を長さとし、配向角度θrを偏角とする傾斜楕円関数」を求める。工程S6は、特許請求の範囲に記載の(E)工程に対応する。
【0026】
まず、「格子形状に起因するノイズ」について説明する。本実施形態では、二値化画像を正方形セル(10pixel×10pixel)で分割し、格子毎に繊維配向性角度を線形近似している。この「正方形セル」が「格子形状に起因するノイズ」の要因である。
【0027】
ここで、
図6(a)に示すような配向性を全く持たない画像について、従来手法を用いて作成した繊維配向性角度の相対度数分布のヒストグラムを
図6(b)に示す。繊維配向を持たない画像の場合、角度による分布は持たないことになるため、ヒストグラムは水平となるべきである。しかし実際には、
図6(b)におけるAのような±45°にピークを持つノイズが存在する。
【0028】
具体的には、F
n=B
n+A
nとすると、ノイズAは下記のように表される。
【数2】
ここで、δは、Aが最大値A
maxとなる定数である。A
maxは以下のように表される。
【数3】
【0029】
ここで、(5)~(8)式で表されるノイズAは正方形セルの形状に起因する関数である。より具体的には、ノイズAは正方形セルの中心点を通る直線について、横断距離の差とその時の角度θの関係を表している。正方形セルの一片の長さを1とすると、斜め45°の角度においては、横断距離が最も長く√2となるため、横断距離の差は最大の(√2-1)となる。
【0030】
このため、どのような画像を分析した場合でも、この「格子形状に起因するノイズ」は発生することになる。繊維1本1本が認識できるような元画像を分析対象とした場合、「格子形状に起因するノイズ」は無視できるほど小さいが、繊維配向性が弱い食品のような被験品の画像を分析する場合は、当該ノイズの影響が無視できなくなる。
【0031】
そこで、本実施形態では、工程S6において、工程S5で得られた相対度数分布から「格子形状に起因するノイズ」を数学的に取り除くことにより、「各階級の繊維部分の相対度数を長さとし、配向角度θrを偏角とする傾斜楕円関数」を求める。
【0032】
具体的には、
図5(a)に示すように、画像から階級数をnとするθ
nの度数分布である初期ヒストグラムF
nを抽出する。初期ヒストグラムF
nには、「格子形状に起因するノイズ」A
nが含まれていることが分かっているため、F
nを以下のように分解する。
F
n=B
n+A
n ・・・(9)
【0033】
Bnが分析したい繊維の情報である傾斜楕円関数であり、Anが「格子形状に起因するノイズ」である。すなわち、得られた配向角度の相対度数分布が、「格子形状に起因するノイズ」Anと、「各階級の繊維部分の相対度数を長さとし、配向角度θrを偏角とする傾斜楕円の関数」Bnとの和の関数であると仮定する。よって、FnからAnを除くことにより、傾斜楕円関数Bnを求める。
【0034】
工程S7では、評価装置1の指標演算部16が、工程S6で得られた傾斜楕円関数から被験品の繊維配向性を評価する指標を演算する。本実施形態では、被験品の繊維配向性を評価する指標は、配向強度kである。工程S7は、特許請求の範囲に記載の(F)工程に対応する。
【0035】
具体的には、傾斜楕円関数B
nが完全に傾斜楕円と一致する場合、下記式が成り立つ。
【数4】
上記3式を連立すると、以下の(10)式に変換できる。
【数5】
すなわち、B
nは定数a,b,θ
rと変数θ
nを用いて、下記の(10)’式のように関数gの形で表すことができる。
B
n=g(a,b,θ
r,θ
n) ・・・(10)’
また、A
nは(5)~(7)式より、定数δ及び変数θ
nを用いて、下記の(11)式のように関数hの形で表すことができる。
A
n=h(δ,θ
n) ・・・(11)
よって(9)式は、下記の(12)式のように和の関数で表すことができる。
F
n=g(a,b,θ
r,θ
n)+h(δ,θ
n) ・・・(12)
すなわち、
B
n=F
n-h(δ,θ
n)
ここで、画像から抽出したF
nと理論的な(12)式を用いて、最小二乗法により残差二乗和が最小となるa,b,θ
r及びδを求める。すなわち、残差二乗和
【数6】
が最小となるa,b,θ
r及びδの組み合わせを求める。これにより、繊維配向性を評価する指標として、配向角度θ
r及び配向強度k=a/bが求められる。
【0036】
図7(a)は、
図3(b)に示す二値化画像の格子毎の繊維配向性角度の相対度数分布からノイズ除去した後の相対度数分布を示すヒストグラムであり、
図7(b)は、当該相対度数分布の各階級の相対度数に対して、繊維配向性角度を偏角とする平面座標に変換した極座標分布および傾斜楕円を示す図である。本実施形態の手法によって算出された配向強度kは1.92である。本実施形態では、極座標の分布もかなり誤差範囲が少なく、高精度に繊維配向性を評価できていることが判る。一方、
図5(a)及び(b)に示す従来技術では、-45度のノイズ部分が重なってしまっていたため、実際よりも高い配向強度(2.40)を算出していることが判る。
【0037】
なお、a,b,θ
rの値には影響しないが、得られた繊維の度数分布情報であるB
n=g(θ
n)は、そのまま使用するとノイズ部分が除去されてしまうため足し合わせて1にならない関数となる(正しくは度数分布とならない)。そこで、得られたB
nの分布を以下のように正規化することで、元画像の真の繊維角度の度数分布C
nが求まる。
【数7】
【0038】
工程S8では、評価装置1の紐付け部17が、工程S7で得られた繊維配向性を評価する指標と、被験品の物性、見た目、及び/又は食感とを紐付ける。
【0039】
本発明が対象とする被験品は、少なくとも撮像できる程度の繊維または繊維様成分を含有する固形又は半固形状のものである。好ましくは可食性繊維を含む食品である。可食性繊維の意味には、可溶性繊維及び不溶性繊維の別を問わず、いずれも包含される。
【0040】
ここで被験品の物性には、被験品の硬さ、流動性、粘弾性、付着性、凝集性、破断強度(引張強度)、加熱溶融性、曳糸性、保形性、結晶化度、及び均一性(混合度)、並びにこれらの経時的安定性が含まれる。また被験品の見た目には、質感、風合い、光沢、色差など、光の吸収や反射によって織りなされるビジュアルが含まれる。なお、当該見た目には、被験品の外観に限らず、その内部断面の見た目も含まれる。
【0041】
さらに被験品が食品である場合、その食感には、食品を口に入れて咀嚼し飲み込むまでの唇、歯、舌、口蓋、及び喉などで感じる様々な食感が含まれる。これらの食感には、制限されないものの、歯ごたえ(弾力)、歯切れ、脆さ感、くちどけ感、舌ざわり、滑らかさ、及び喉ごしなどが含まれる。特に固体状や半固形状の食品は、物理的なおいしさ(テクスチャー)が重要視される傾向にあり、評価対象とする重要な要素である。とりわけ、人工の食肉(代替食肉、培養食肉)や人工の魚介類の肉(代替魚肉、培養魚肉、ゲノム編集魚の肉)の食感を天然の食肉や魚介類の肉の食感に近づけるための評価は、現在並びに今後ますます重要になる。
【0042】
工程S7で得られた繊維配向性を評価する指標と、被験品の物性、見た目、及び/又は食感との紐付けは、被験品について評価された指標と、当該被験品について別途測定した物性、見た目、及び/又は食感とを、対にして付き合わせることで実施され、その結果、両者間に一定の相関性を見出すことで実施される。なお、被験品の物性、見た目、及び/又は食感の測定は、評価対象や測定対象に応じて、当業界の技術常識に基づいて、適宜設定することができる。
【0043】
(指標について)
上記実施形態では、繊維配向性を評価する指標として配向強度kを算出している。配向強度は1~∞を取る値であり、繊維配向性の強さをより感覚的に表すことができる。さらに、被験品の繊維配向性を評価する他の指標として配向扁平度fを求めてもよい。配向扁平度fは、配向強度kと以下の関係がある。
f=1-1/k
k=1/(1-f)
配向強度kも配向扁平度fも、比較する際の指標としては同じである(評価結果が逆転することはない)。
【0044】
図9(a)は、楕円の短辺の長さbを1とした時の、長辺a、配向強度k及び配向扁平度fの数値を示しており、
図9(b)は、配向強度k及び配向扁平度fの関係を示すグラフである。
図9(a)において塗りつぶしで示したように、2つの指標の特徴として、配向強度kは長辺が短辺の2倍以上の時に評価しやすい数値であり、配向扁平度fは長辺が短辺の2倍以下の時に評価しやすい数値であるといえる。別の捉え方をすると、配向強度kは∞まで取りうるため、増加する関数の評価に適している(初期値が2で何倍になったか等)のに対し、配向扁平度fは0を取りうる関数であるため、減少する関数の評価に適している(初期値が0.5で何分の1になったか等)。
【0045】
また、繊維配向性を評価する指標は、配向強度k及び配向扁平度fに限られず、例えば配向強度k’であってもよい。配向強度k’は以下のように算出される。
【0046】
k’=(b-a)/b=1-b/a
配向強度k’は配向強度kと同じく∞まで取りうるが、配向がない場合に0となるため、配向が無い状態からの差をより明確に表す指標であるといえる。
【0047】
(分析領域の均質性について)
上述のように、工程S1において、撮像装置2は、被験品において繊維配向性が均質な領域を撮像することが好ましい。例えば、
図8(a)に示す被験品に対し、中心軸を通る面で切断することにより、
図8(b)に示す切断面が得られたとする。ここで、
図8(c)に示す領域R2は、部位によって繊維配向性が異なるため、正確な繊維配向性を評価することが難しい。そのため、全体的に繊維配向性が均質な領域R1を撮像することが好ましい。
【0048】
ここで「繊維配向性が均質な領域」とは、前述からわかるように、その領域であればどこをとっても繊維の配向性(繊維並びの方向性)が同じ又は一定している領域を意味する。ただし、本発明により繊維配向性が評価できる領域であればよく、厳格に均質である必要はない。
【0049】
(分割ピクセル数について)
上記実施形態では、工程S3において、分割部12は、10pixel×10pixelの正方形の格子に分割しているが、分割ピクセル数はこれに限定されず、分割ピクセル数を縦横±1pixel変化させても、指標(配向強度k、配向角度θr)があまり変化しない値であればよい。
【0050】
図10(a)は、分割ピクセル数と、配向強度k及び配向角度θ
rとの関係を示すグラフであり、
図10(b)は、分割ピクセル数と、配向強度kとの関係を示すグラフである。分析対象の画像の総ピクセル数は、920×726=667920pixelである。配向強度kは、分割ピクセル数が6pixel×6pixel~30pixel×30pixelの範囲では、分割ピクセル数の増減に対する変化が非常に小さいことが分かる。そのため、複数の被験品の相対的な繊維配向性を評価する場合、分割ピクセル数を上記範囲内に設定することで、分析条件の誤差による評価結果への影響を抑えることができる。
【0051】
(二値化処理で採用する閾値について)
濃淡のある元画像を白黒に二値化するとき、二値化処理で採用する閾値によって二値化画像の見え方は大きく変化し、これにより配向強度kも変化する。上記実施形態において、二値化処理で採用する閾値は、二値化処理前の画像における輝度が最下位から75%の順位の画素の輝度としているが、二値化処理で採用する閾値は、二値化画像における繊維の領域が明確になる値であれば特に限定されない。例えば、前記閾値は、前記画像における輝度が最下位から55~80%の順位の画素の輝度であることが好ましい。
【0052】
図11は、
図3(a)に示す画像の二値化処理で採用する閾値と、上記実施形態の手法で得られた配向強度kとの関係を示すグラフである。このグラフから、閾値が55~80%の範囲では配向強度kがあまり変化していないことが分かる。
【0053】
(従来の繊維性測定技術について)
本発明は画像解析技術の1つである。一方で、従来技術には、繊維配向性を直接測定する「測定技術」がある。これらについては、同じ繊維配向性の結果が得られる可能性が高いので、これらについても技術的な比較をする。ただし、大前提として、画像解析技術は測定装置を問わずに分析できるという点で、本発明と大きく異なる技術である。
【0054】
良く知られる繊維配向性の測定技術の1つに、第2高調波顕微鏡(SHG)を用いた繊維性測定技術がある(Francois Tiaho, Estimation of helical angles of myosin and collagen by second harmonic generation imaging microscopy, OPTICS EXPRESS, Vol.15, No.1 (2007)、及び、Jessica C. Mansfield, Collagen reorganization in cartilage under strain probed by polarization sensitive second harmonic generation microscopy, J. R. Soc. Interface, 16 (2018))。SHGは、ある一定の偏向角のパルスレーザー光を試料に照射すると、規則的配向構造(繊維配向性)により、反射光の強度が変わるため、これにより繊維の配向性を外部から測定できるというものである。
【0055】
しかし、SHGは、表面層に近い部分しか測定できないなどの制限がある。そもそもSHGを用いた繊維性測定技術は、当該装置が無いと計測できない技術であり、本発明のような、測定装置に関係なく分析できる画像解析技術とは大きく異なる。
【0056】
(3次元の繊維配向分析について)
上記実施形態では2次元の画像の分析しか行っていないが、技術としては傾斜楕円体を用いることで3次元的な繊維配向をとらえることも理論的には可能である。その場合は3次元的な立方体ボクセルを用いて、傾斜楕円体近似し、立方体ボクセルに起因するノイズを除去することで求めることになる。楕円体の3つの半軸の長さをa,b,c(a≦b≦c)とすると、三次元配向強度kはc/aで表すことができる。a,bに比べてcが十分に大きく、a≒bのような繊維性の場合は、2次元画像が直線cを通る面で切断されていれば2次元の分析でも3次元での分析結果と同等となる。
【0057】
(持続可能な開発目標(SDGs)への寄与)
本発明は、持続可能な開発目標(SDGs)を達成するための手段として活用し得る。本発明を利用することにより、持続可能な開発目標(SDGs)とターゲットの達成に寄与することができる。
【0058】
具体的には、持続可能な開発目標(SDGs)は以下のとおりである(「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」、外務省、インターネット〈URL:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/000101402.pdf〉)。
目標1. あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる。
目標2. 飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する。
目標3. あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する。
目標4. すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する。
目標5. ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児のエンパワーメントを行う。
目標6. すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する。
目標7. すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する。
目標8. 包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する。
目標9. 強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る。
目標10. 各国内及び各国間の不平等を是正する。
目標11. 包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する。
目標12. 持続可能な生産消費形態を確保する。
目標13. 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる。
目標14. 持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する。
目標15. 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する。
目標16. 持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制
度を構築する。
目標17. 持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する。
【0059】
本発明は、特に、目標2(飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する)および目標3(あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する)の達成に寄与できる。すなわち、食品の繊維配向性を高精度に評価することにより、食品を口に入れて咀嚼し嚥下するまでの様々な食感を客観的に数値化し、解析することができる。食品の物性を測定・評価することにより、乳幼児、高齢者、障害者の誤嚥、誤飲リスクを軽減し、食品の安全性の向上に役立てることができる。また、食品の物性を食品の繊維配向性の客観的な数値や指標により高精度に解析して、食品の品質を正確に把握することで、食品のロスを削減して生産性を向上させ、すべての人々に安全で十分な食料を供給することに寄与できる。また、本発明は、特に、目標9(強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る)の達成に寄与できる。すなわち、食品の繊維配向性を高精度に評価することにより、産業の多様化や商品への付加価値創造などの技術開発、研究及びイノベーションを促進させることで、資源利用効率を向上させたり、産業プロセスの拡大や効率を向上させしたりして、持続可能かつ強靱(レジリエント)に、イノベーションを促進させることができる。また、本発明は、特に、目標12(持続可能な生産消費形態を確保する)の達成に寄与できる。すなわち、食品の繊維配向性を高精度に評価することにより、技術開発、研究及びイノベーションを促進することで、資源の効率的な利用を達成したり、食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させたりして、持続可能な開発及び自然と調和した開発を行うことにより、持続可能な生産消費形態を確保することができる。さらに、本発明は、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されているそれぞれの目標に付随するターゲットの達成にも寄与できる。
【実施例0060】
(実施例1:繊維性チーズによる検証)
実施例1では、保存時に性状が変わる繊維性チーズの配向強度を数値化した。
図12(a)は、製造直後の新鮮なチーズの断面を撮像して得られた画像であり、
図12(b)は、5か月保存後の古いチーズの断面を撮像して得られた画像である。これらの画像は、いずれも1pixelの大きさが5μmで、ピクセル数は400pixel×400pixelである(2mm角固定の分析領域)。
【0061】
これらの画像を二値化し、上記実施形態の手法により配向強度kを算出した。
図13は、二値化処理で採用する閾値と、得られた配向強度kとの関係を示すグラフである。同グラフにおいて、「New」は、
図12(a)に示す新鮮なチーズの配向強度を示しており、「Old」は、
図12(b)に示す古いチーズの配向強度を示している。
【0062】
上記グラフより、どの閾値であっても、時間経過による繊維性の低下を捉えられているが、画像解析の結果から以下のことが判った。
(1)閾値が0~55%程度の場合、繊維がない黒い領域を捉えており、正確に数値化できているとは言えない。
(2)閾値が55~80%程度の場合、観測したいタンパク繊維を正確に数値化できている。
(3)閾値が90~100%程度の場合、繊維の高輝度部分のみを線としてとらえてしまっており、繊維配向性を現実より強く検出してしまっている。
【0063】
実施例1では、閾値が75%前後の場合に、よりチーズのタンパク繊維をきれいに捉えられている。
図12に示す画像では、評価したいタンパクが白く(高輝度で)、除外したい構造(脂肪及び脂肪のスポット)が黒となっている。本実施例の画像におけるタンパクの配合比は約25%(正確には26%)であるため、閾値を75%に設定すると、タンパク全体を捉えるのに適した閾値になっていると考えられる。
【0064】
そこで、元画像を75%の閾値で二値化した。
図14(a)及び(b)はそれぞれ、
図12(a)及び(b)に示す画像を75%の閾値で二値化した画像である。これらの画像から配向強度および配向角度を算出すると、新鮮なチーズは、配向強度k=3.23、配向角度θ
r=70.7°であり、古いチーズは、配向強度k=1.75、配向角度θ
r=129.1°であった。この分析結果は、感性的な繊維性評価などの結果とも一致していた。
【0065】
(実施例2:配向性を持たない画像による検証)
図15に示す配向性を持たない画像を、従来技術の手法と本発明の手法とで分析すると以下のようになる。
【0066】
図15に示す画像を二値化し、複数の格子に分割後、格子毎に繊維配向性角度を求め、繊維配向性角度の相対度数分布を作成すると、
図16(a)に示すヒストグラムが得られる(従来技術)。
図16(a)では、「格子形状に起因するノイズ」が大きすぎて傾斜楕円での分析(一峰性を前提とした近似)ができない。
【0067】
一方、上記の相対度数分布からノイズを除去すると、
図16(b)に示すヒストグラムが得られる(本発明)。
図16(b)では、本来の角度の度数分布が得られている(度数分布は一定となる。n=20であるので、F
n=0.05で一定)。
図16(b)に示すヒストグラムでは、配向角度θ
r=-15.3°、配向強度k=1.08、ノイズパラメータδ=0.144である。
図17に示すように、配向強度が1に近いほど楕円が円に近づくことになるため、繊維配向性が無いことになる。すなわち、本発明の手法によって、正確に繊維配向性を評価できることが分かる。
【0068】
(実施例3:弱配向性画像による検証)
図18に示す非常に弱い配向を持つ画像を、従来技術の手法と本発明の手法とで分析すると以下のようになる。
【0069】
図18に示す画像を二値化し、複数の格子に分割後、格子毎に繊維配向性角度を求め、繊維配向性角度の相対度数分布を作成すると、
図19(a)に示すヒストグラムが得られ(従来技術)、さらに当該相対度数分布からノイズを除去すると、
図19(b)に示すヒストグラムが得られる(本発明)。
図19(a)に示す相対度数分布から得られた配向強度kは2.98であるのに対し、
図19(b)に示す相対度数分布から得られた配向強度kは1.82である。よって、本発明の手法によって、画像の持つ本来の繊維配向性を正確に数値化できることが分かる。
本発明は、持続可能な開発目標(SDGs)を達成するための手段として利用することができ、本発明を利用することにより、持続可能な開発目標(SDGs)とターゲットの達成に寄与することができる。本発明は、持続可能な開発目標(SDGs)の中の、特に、目標2(飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する)および目標3(あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する)の達成に寄与できる。すなわち、食品の繊維配向性を高精度に評価することにより、食品を口に入れて咀嚼し嚥下するまでの様々な食感を客観的に数値化し、解析することができる。食品の物性を測定・評価することにより、乳幼児、高齢者、障害者の誤嚥、誤飲リスクを軽減し、食品の安全性の向上に役立てることができる。また、食品の物性を食品の繊維配向性の客観的な数値や指標により高精度に解析して、食品の品質を正確に把握することで、食品のロスを削減して生産性を向上させ、すべての人々に安全で十分な食料を供給することに寄与できる。また、本発明は、持続可能な開発目標(SDGs)の中の、特に、目標9(強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る。)の達成に寄与できる。すなわち、食品の繊維配向性を高精度に評価することにより、産業の多様化や商品への付加価値創造などの技術開発、研究及びイノベーションを促進させることで、資源利用効率を向上させたり、産業プロセスの拡大や効率を向上させしたりして、持続可能かつ強靱(レジリエント)に、イノベーションを促進させることができる。本発明は、持続可能な開発目標(SDGs)の中の、特に、目標12(持続可能な生産消費形態を確保する。)の達成に寄与できる。すなわち、食品の繊維配向性を高精度に評価することにより、技術開発、研究及びイノベーションを促進することで、資源の効率的な利用を達成したり、食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させたりして、持続可能な開発及び自然と調和した開発を行うことにより、持続可能な生産消費形態を確保することができる。