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特開2023-124932ポリウレタン接着剤用組成物、自動車構造用接着剤、および硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124932
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】ポリウレタン接着剤用組成物、自動車構造用接着剤、および硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/10 20060101AFI20230831BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20230831BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20230831BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20230831BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20230831BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
C08G18/10
C08G18/42
C08G18/44
C08G18/08 038
C09J175/04
C09J11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028805
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】篠塚 祐志
【テーマコード(参考)】
4J034
4J040
【Fターム(参考)】
4J034BA07
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DF01
4J034DF02
4J034DF17
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC45
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC54
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA42
4J034MA02
4J034MA24
4J034QB10
4J034QB14
4J034QB19
4J034RA08
4J040EF121
4J040EF122
4J040EF131
4J040EF132
4J040EF281
4J040HA356
4J040KA16
4J040KA42
4J040LA01
4J040LA06
4J040NA16
(57)【要約】
【課題】高い破壊靭性値を発揮するポリウレタン接着剤用組成物、自動車構造用接着剤、およびポリウレタン接着剤用組成物の硬化物を提供すること。
【解決手段】硬化剤(A)と、イソシアネート基末端プレポリマー(B)と、を含み、前記硬化剤(A)は、芳香族ジオール(a-1-1)とポリオール(a-1-2)とがエステル交換したエステル交換体(a-1)と、任意成分である架橋剤(a-2)と、を含み、前記ポリオール(a-1-2)は、エステル結合、およびカーボネート結合からなる群より選ばれる1つ以上の結合を含むポリオールであり、前記イソシアネート基末端プレポリマー(B)は、数平均分子量2500以上のポリオール(b-1)と、ポリイソシアネート(b-2)と、任意成分である架橋剤(b-3)と、の反応生成物であり、前記架橋剤(a-2)および前記架橋剤(b-3)のうちの少なくともいずれか一方を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化剤(A)と、
イソシアネート基末端プレポリマー(B)と、を含み、
前記硬化剤(A)は、
芳香族ジオール(a-1-1)とポリオール(a-1-2)とがエステル交換したエステル交換体(a-1)と、
任意成分である架橋剤(a-2)と、を含み、
前記ポリオール(a-1-2)は、エステル結合、およびカーボネート結合からなる群より選ばれる1つ以上の結合を含むポリオールであり、
前記イソシアネート基末端プレポリマー(B)は、
数平均分子量2500以上のポリオール(b-1)と、
ポリイソシアネート(b-2)と、
任意成分である架橋剤(b-3)と、の反応生成物であり、
前記架橋剤(a-2)および前記架橋剤(b-3)のうちの少なくともいずれか一方を含む、ポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項2】
前記ポリオール(a-1-2)が、ポリカーボネートポリオールである、請求項1に記載のポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項3】
前記ポリウレタン樹脂形成性組成物を硬化して得られる樹脂のウレタン基濃度が2000mmol/kg以上4500mmol/kg以下である、請求項1または2に記載のポリウレタン接着剤用組成物。
【請求項4】
溶剤の含有量が1.0質量%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリウレタン接着剤用組成物。
【請求項5】
さらに、フィラー(C)を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリウレタン接着剤用組成物。
【請求項6】
前記硬化剤(A)および前記イソシアネート基末端プレポリマー(B)のうちの少なくとも一方が、25℃および1気圧で液状である、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリウレタン接着剤用組成物。
【請求項7】
25℃および1気圧で液状である、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリウレタン接着剤用組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のポリウレタン接着剤用組成物を含む、自動車構造用接着剤。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載のポリウレタン接着剤用組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリウレタン接着剤用組成物、自動車構造用接着剤、および硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車構造用接着剤には様々な要求特性がある。なかでも特に注目されている物性は、破壊靭性値である。
破壊靭性値は、柔軟性と剛性の複合的指標として考えられ、エネルギーの単位として示される。破壊靭性値が大きいほど接着剤へエネルギーがかかったとき(衝撃など)の耐性が優れることを意味するため、大きいほど好ましい。
特許文献1は、
ポリイソシアネートと特定の分子量のポリオールとを反応させて得られるプレポリマー、および、特定の配合量のフィラーを含有する第1液と、
特定の分子量のポリオールおよび触媒を含有する第2液とからなり、
第1液中のポリオールおよび第2液中のポリオールに由来する水酸基のモル数が特定の関係を有するウレタン系接着剤組成物を開示している。特許文献1によれば、かかるウレタン系接着剤組成物は、良好な接着性能を得られるとともに、保存安定性にも優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2009/047962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、接着性能として引張剪断強度を測定しているものの、破壊靭性値が充分ではなく、柔軟性と剛性とが高度に両立された接着剤用組成物が求められている。
【0005】
そこで、本開示の一態様は、高い破壊靭性値を発揮するポリウレタン接着剤用組成物、自動車構造用接着剤、およびポリウレタン接着剤用組成物の硬化物を提供することに向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の各態様によれば、以下の(1)~(9)に示す実施形態が提供される。
(1): 硬化剤(A)と、
イソシアネート基末端プレポリマー(B)と、を含み、
前記硬化剤(A)は、
芳香族ジオール(a-1-1)とポリオール(a-1-2)とがエステル交換したエステル交換体(a-1)と、
任意成分である架橋剤(a-2)と、を含み、
前記ポリオール(a-1-2)は、エステル結合、およびカーボネート結合からなる群より選ばれる1つ以上の結合を含むポリオールであり、
前記イソシアネート基末端プレポリマー(B)は、
数平均分子量2500以上のポリオール(b-1)と、
ポリイソシアネート(b-2)と、
任意成分である架橋剤(b-3)と、の反応生成物であり、
前記架橋剤(a-2)および前記架橋剤(b-3)のうちの少なくともいずれか一方を含む、ポリウレタン樹脂形成性組成物。
(2): 前記ポリオール(a-1-2)が、ポリカーボネートポリオールである、(1)に記載のポリウレタン樹脂形成性組成物。
(3): 前記ポリウレタン樹脂形成性組成物を硬化して得られる樹脂のウレタン基濃度が2000mmol/kg以上4500mmol/kg以下である、(1)または(2)に記載のポリウレタン接着剤用組成物。
(4): 溶剤の含有量が1.0質量%以下である、(1)~(3)のいずれか1項に記載のポリウレタン接着剤用組成物。
(5): さらに、フィラー(C)を含む、(1)~(4)のいずれか1項に記載のポリウレタン接着剤用組成物。
(6): 前記硬化剤(A)および前記イソシアネート基末端プレポリマー(B)のうちの少なくとも一方が、25℃および1気圧で液状である、(1)~(5)のいずれか1項に記載のポリウレタン接着剤用組成物。
(7): 25℃および1気圧で液状である、(1)~(6)のいずれか1項に記載のポリウレタン接着剤用組成物。
(8): (1)~(7)のいずれか1項に記載のポリウレタン接着剤用組成物を含む、自動車構造用接着剤。
(9): (1)~(7)のいずれか1項に記載のポリウレタン接着剤用組成物の硬化物。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、高い破壊靭性値を発揮するポリウレタン接着剤用組成物、自動車構造用接着剤、およびポリウレタン接着剤用組成物の硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の各態様を実施するための例示的な実施形態を詳細に説明する。
【0009】
[ポリウレタン接着剤用組成物]
本開示の一態様にかかるポリウレタン接着剤用組成物は、
硬化剤(A)と、
イソシアネート基末端プレポリマー(B)と、を含み、
前記硬化剤(A)は、
芳香族ジオール(a-1-1)とポリオール(a-1-2)とがエステル交換したエステル交換体(a-1)と、
任意成分である架橋剤(a-2)と、を含み、
前記ポリオール(a-1-2)は、エステル結合、およびカーボネート結合からなる群より選ばれる1つ以上の結合を含むポリオールであり、
前記イソシアネート基末端プレポリマー(B)は、
数平均分子量2500以上のポリオール(b-1)と、
ポリイソシアネート(b-2)と、
任意成分である架橋剤(b-3)と、の反応生成物であり、
前記架橋剤(a-2)および前記架橋剤(b-3)のうちの少なくともいずれか一方を含む。
【0010】
[[ポリウレタン樹脂形成性組成物]]
ポリウレタン樹脂形成性組成物は、
硬化剤(A)と、
イソシアネート基末端プレポリマー(B)と、を含む。
【0011】
[[[硬化剤(A)]]]
硬化剤(A)は、
芳香族ジオール(a-1-1)とポリオール(a-1-2)とがエステル交換したエステル交換体(a-1)と、
任意成分である架橋剤(a-2)と、を含む。
ポリオール(a-1-2)としてはエステル結合、およびカーボネート結合からなる群より選ばれる1つ以上の結合を含むポリオールが挙げられる。
換言すると、エステル交換体(a-1)は、
芳香族ジオール(a-1-1)に由来する部位と、
ポリオール(a-1-2)に由来する部位と、を有し、
該ポリオール(a-1-2)に由来する部位は、エステル結合、およびカーボネート結合からなる群より選ばれる1つ以上の結合を有する。
【0012】
芳香族ジオール(a-1-1)としては、例えば、ビスフェノールA、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、ビス[3,5-ジブロモ-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、4,4’-ビス(ヒドロキシメチル)ビフェニル、ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、2,2’-ビス(ヒドロキシメチル)ジフェニルエーテル、1,4-ベンゼンジメタノール、1,4-ベンゼンジエタノール、1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン;等が挙げられる。
【0013】
ポリオール(a-1-2)としては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールが好ましく、ポリカーボネートポリオールがより好ましい。
【0014】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール等のポリオール類の1種類以上と;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のアルキレンカーボネート類、ジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジアントリルカーボネート、ジフェナントリルカーボネート、ジインダニルカーボネート等のカーボネート類の1種類以上と;の脱アルコール反応や脱フェノール反応から得られるものが挙げられる。
【0015】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキシルジカルボン酸、α-ハイドロムコン酸、β-ハイドロムコン酸、α-ブチル-α-エチルグルタル酸、α,β-ジエチルサクシン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸またはこれらの無水物等の1種類以上と;エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール等の1種類以上と;の縮重合反応から得られるものが挙げられる。また、ポリオール(a-1-2)としては、これらのアルコール類の一部をヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、モノエタノールアミン等の低分子ポリアミンや低分子アミノアルコールに変えて得られるポリエステル-アミドポリオールも挙げられる。
【0016】
ポリオール(a-1-2)は、これらの1種のみを含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。
【0017】
ポリオール(a-1-2)は、数平均分子量が1000g/mol未満であることが好ましく、750g/mol以下であることがより好ましい。
【0018】
なお、本開示における数平均分子量は、高精度に測定できる測定方法で得られるものであればよく、例えば、JIS K 0070-1992に準拠した方法(滴定法)で測定したものを採用できる。
【0019】
硬化剤(A)がエステル交換体(a-1)を含むことで、破壊靭性値(G1c)が高く、優れた靭性を有するポリウレタン接着剤用組成物が得られる。破壊靭性値は、柔軟性と剛性の複合的指標として考えられ、エネルギーの単位として示される。破壊靭性値が大きいほど接着剤へエネルギーがかかったとき(衝撃など)の耐性が優れることを意味するため、破壊靭性値が大きいほど好ましい。
【0020】
硬化剤(A)は、任意成分である架橋成分(a-2)を含む。すなわち、硬化剤(A)は、架橋成分(a-2)をさらに含んでいてもよい。
架橋成分(a-2)としては、例えば、平均官能基数が3以上のポリオールが挙げられる。
平均官能基数が3以上のポリオールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、N,N-ビスヒドロキシプロピル-N-ヒドロキシエチルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エチレンジアミンプロピレンオキサイド変性体のモノマーポリオール、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性体のモノマーポリオール、ペンタエリスリトールプロピレンオキシド変性体が挙げられる。また、これらの他にも、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオールを開始剤として、ε-カプロラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトンなどの環状エステル類を開環付加させることにより得られる、ポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。
【0021】
架橋成分(a-2)は、これらの1種のみを含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。
【0022】
硬化剤(A)は、25℃および1気圧で液状であることが好ましい。
【0023】
硬化剤(A)は、ポリオール以外にも活性水素含有化合物を含むことができる。
このような活性水素含有化合物としては、例えば、アミノ基、チオール基、カルボキシル基等の官能基を有する化合物がある。これらの活性水素含有化合物は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0024】
[[[イソシアネート基末端プレポリマー(B)]]]
イソシアネート基末端プレポリマー(B)は、
数平均分子量2500以上のポリオール(b-1)と、
ポリイソシアネート(b-2)と、の反応生成物である。
【0025】
数平均分子量2500以上のポリオール(b-1)としては、例えば、ポリオール(a-1-2)と同様であって、数平均分子量2500以上のポリオールが挙げられる。
【0026】
ポリオール(b-1)の数平均分子量は、2500以上10000以下であることが好ましく、2500以上7000以下であることがさらに好ましい。
【0027】
ポリイソシアネート(b-2)としては、分子中に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートが挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、有機ポリイソシアネートを用いることができ、有機ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、反応性や粘度の観点から、芳香族ポリイソシアネートを用いることが好ましい。
【0028】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート/2,6-トリレンジイソシアネート混合物、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート/4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート混合物、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート/4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート混合物、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート/2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート/4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート混合物、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニル-4,4’-ジイソシアネート等が挙げられる。
【0029】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート/1,4-キシリレンジイソシアネート混合物、1,3-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、1,3-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン/1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン混合物、ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン等が挙げられる。
【0030】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、2,2’-ジメチルペンタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、1,3-ブタジエン-1,4-ジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアネート-5-イソシアネートメチルオクタン、ビス(イソシアネートエチル)カーボネート、ビス(イソシアネートエチル)エーテル、1,4-ブチレングリコールジプロピルエーテル-α,α’-ジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル、2-イソシアネートエチル-2,6-ジイソシアネートヘキサノエート、2-イソシアネートプロピル-2,6-ジイソシアネートヘキサノエート等が挙げられる。
【0031】
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタンジイソシアネート、2,2’-ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ビス(4-イソシアネート-n-ブチリデン)ペンタエリスリトール、水素化された水添ダイマー酸ジイソシアネート、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-5-イソシアネートメチル-ビシクロ〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-6-イソシアネートメチル-ビシクロ〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-5-イソシアネートメチル-ビシクロ〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-6-イソシアネートメチル-ビシクロ〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-5-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ-〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-6-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ-〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-5-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ-〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-6-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ-〔2.2.1〕-ヘプタン、2,5-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ〔2.2.1〕-ヘプタン、水素化された水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素化された水添トリレンジイソシアネート、水素化された水添キシレンジイソシアネート、水素化された水添テトラメチルキシレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0032】
ポリイソシアネート(b-2)は、これらの中の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
イソシアネート基末端プレポリマー(B)は、任意成分である架橋剤(b-3)を含む。
すなわち、イソシアネート基末端プレポリマー(B)は、
数平均分子量2500以上のポリオール(b-1)と、
ポリイソシアネート(b-2)と、
任意成分である架橋成分(b-3)との反応生成物であってもよい。
架橋成分(b-3)としては、例えば、架橋成分(a-2)と同様のものが挙げられる。
【0034】
ここで、架橋成分は、以下の(1)および(2)のいずれか一方の態様でポリウレタン接着剤用組成物中に含有されていてもよく、(1)および(2)のいずれにも該当する態様でポリウレタン接着剤用組成物中に含有されていてもよい。
(1)硬化剤(A)が、架橋成分(a-2)をさらに含む。
(2)イソシアネート基末端プレポリマー(B)が、
数平均分子量2500以上のポリオール(b-1)と、
ポリイソシアネート(b-2)と、
架橋成分(b-3)と、の反応生成物である。
【0035】
ここで、架橋性基とは、架橋を形成する官能基である。
したがって、3官能のポリオール(例えば、グリセリン)を例に挙げて説明すると、1分子中の1個の水酸基が架橋を形成し、残りの2個の水酸基は架橋には寄与しないものであるため、この場合であれば架橋性基は1個である。すなわち、3官能のポリオールの場合、架橋性基の含有量とは、3官能のポリオールが1つの架橋性基を有するため、3官能のポリオールの含有量と同義である。
【0036】
イソシアネート基末端プレポリマー(B)が、
ポリエーテルポリオール(b-1)と、
ポリイソシアネート(b-2)と、
架橋成分(b-3)と、の反応生成物であることがより好ましい。
【0037】
イソシアネート基末端プレポリマー(B)は、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、イソシアネート基末端プレポリマー(B)および後述する硬化剤(A)が有する官能基と反応しないもの(例えば、フィラー、着色剤、帯電防止剤、防腐剤)が好ましい。
【0038】
ポリオール(b-1)およびポリイソシアネート(b-2)のうちの少なくとも一方が、25℃および1気圧で液状であることが好ましい。
【0039】
硬化剤(A)およびイソシアネート基末端プレポリマー(B)のうちの少なくとも一方が、25℃および1気圧で液状であることが好ましい。
【0040】
硬化剤(A)およびイソシアネート基末端プレポリマー(B)は、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、硬化剤(A)とイソシアネート基末端プレポリマー(B)とを混合したときに、他の成分と反応しないもの(例えば、フィラー、着色剤、帯電防止剤、防腐剤)が好ましい。
【0041】
ポリウレタン樹脂形成性組成物を硬化して得られる樹脂のウレタン基濃度は、2000mmol/kg以上4500mmol/kg以下であるであることが好ましく、3000mmol/kg以上4000mmol/kg以下であることがより好ましい。
得られる樹脂のウレタン基濃度がこの範囲であると、破壊靭性値(G1c)がさらに高くなり、より優れた靭性を有するためさらに好ましい。
【0042】
ポリウレタン接着剤用組成物は、ハンドリング性の観点から、25℃及び1気圧で液状であること(すなわち流動性があること)が好ましい。
【0043】
[[[フィラー(C)]]]
ポリウレタン接着剤用組成物は、さらに、フィラー(C)を含むことが好ましい。
フィラー(C)としては、公知のフィラーが挙げられ、例えば、無機フィラー、有機フィラーが挙げられる。これらの中でも無機フィラーが好ましい。
【0044】
無機フィラーとしては、タルク、ゼオライト、シリカ、マイクロバルーン、クレイ、ガラスバルーン、カーボンブラック、炭酸カルシウム等を挙げることができるが、これらに制限されるものではない。これらは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
有機フィラーとしては、ポリアミド粒子、アクリル粒子、カーボンナノチューブ、でんぷん、天然有機繊維、合成繊維等が挙げられる。
【0046】
フィラーの含有量は、ポリウレタン接着剤用組成物の全質量に対して、10質量%以上70質量%以下であることが好ましく、10質量%以上50質量%以下であることがさらに好ましい。
フィラーの含有量が10質量%以上であると液だれをより良好に抑制できる。フィラーの含有量が70質量%以下であると、フィラーと他の成分とがより均一に混ざり、さらに良好な接着強度、塗工性が得られる。
【0047】
ポリウレタン接着剤用組成物は、硬化剤(A)と、イソシアネート基末端プレポリマー(B)と、を含む。これらは別個に分かれて存在する2液タイプであってもよく、これらが混合された1液タイプであってもよい。硬化剤(A)と、イソシアネート基末端プレポリマー(B)と、を混合するときの温度及び時間は、例えば、10~35℃で、1~60分間とすることができる。
【0048】
硬化剤(A)とイソシアネート基末端プレポリマー(B)とを混合する方法は、特に制限されず、例えば、ヘラで手動により混合してもよく、機械式回転ミキサー、スタティックミキサー等を用いて混合する方法であってもよい。
【0049】
ポリウレタン接着剤用組成物は、溶剤の含有量が1.0質量%以下であることが好ましい。
また、ポリウレタン接着剤用組成物は、実質的に溶剤を含まない、すなわち無溶剤系であってもよい。ただし、不純物として溶剤が含まれるような場合は、実質的に溶剤を含まないという範疇に属するものである。
【0050】
[自動車構造用接着剤]
本開示の一態様にかかる自動車構造用接着剤は、上述したポリウレタン接着剤用組成物を含む。
【0051】
[硬化物]
本開示の一態様にかかる硬化物は、上述したポリウレタン接着剤用組成物の硬化物である。
【実施例0052】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0053】
[ウレタン樹脂形成性組成物の調製]
以下の化合物を、表1~2に記載される配合量で混合し、ポリウレタン接着剤用組成物を調製した。なお、「f」は官能基数を表す。
[原料]
・「MT」;ミリオネート(登録商標)MT(モノメリックMDI、東ソー社製)
平均分子量250、f=2
・「TMP」;トリメチロールプロパン(三菱ガス化学社製)
トリメチロールプロパン、平均分子量134、f=3
・「PTG-L3500」;非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール
(保土谷化学工業社製)、
平均分子量3500、f=2
・「PCD500」;ポリカーボネートポリオール、
KurarayPolyol C-590(クラレ社製)、
平均分子量500、f=2
・「N-969」;ポリカーボネートポリオール
(東ソー社製、ニッポラン(登録商標)969)、
平均分子量3000、f=2
・「N-968」;ポリカーボネートポリオール
(東ソー社製、ニッポラン(登録商標)968)、
平均分子量3000、f=2
・「BG」;ブチレングリコール(三菱ケミカル社製)
1,4-ブタンジオール、平均分子量90、f=2
・「BHEB」;1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン(東京化成工業社製)
・「CHDM」;1,4-シクロヘキサンジメタノール(富士フイルム和光純薬社製)
・「p-TolylDEA」;2,2’-(p-トリルイミノ)ジエタノール(東京化成工業社製)
・「ゼオライト」;ゼオラム(登録商標)A-3(東ソー社製)
・「タルク」;タルク(富士フイルム和光純薬社製)
【0054】
(実施例1~2)
2Lの撹拌容器内に、硬化剤の各原料、を表1に示す処方に従って投入撹拌し、撹拌容器内の温度を180℃に保ちながら、5~6時間程度、混合撹拌し、硬化剤原料であるエステル交換ジオール(平均分子量500)を得た。
【0055】
窒素を満たした2Lの撹拌容器内に、硬化剤の各原料、を表2に示す処方に従って投入撹拌し、撹拌容器内の温度を70~80℃に保ちながら、1~3時間程度、混合撹拌することで、各種硬化剤(A)を得た。
【0056】
また、窒素を満たした2Lの撹拌容器内に主剤(イソシアネート基末端プレポリマー)(B)の各原料を表2に示す処方に従って投入し、撹拌した。その後、撹拌容器内の温度を70~80℃に保ちながら、2~5時間程度ウレタン化反応を進めることで、各種イソシアネート基末端プレポリマー(B)を得た。
【0057】
[DCB試験(破壊靭性値)]
DCB試験はASTM D3433-99に準拠して行った。
樹脂厚:0.35mmとなるようにスペーサーにて調整
スペーサーはテフロン(登録商標)テープを使用
試験片形状:Contoured型を使用
試験基材:S50C鋼材(無電解ニッケルメッキ処理)を使用
試験条件:2mm/minにて引張り、その最大荷重をもとに破壊靭性値G1cを算出
算出式:G1c=[4L(max)](m)/[EB
L(max) 荷重:(N)
E 基材のヤング率(MPa):208000
B 基材の幅(mm):25.49
m 定数(contoured型より):3.54
【0058】
系内におけるフィラー量が1/3となるように、主剤(イソシアネート基末端プレポリマー)(B)にフィラー(C)(タルク50質量%/ゼオライト50質量%)を加えて混合脱泡した。
30秒撹拌混合した後、基材に塗布してクランプにて固定した。ついで、130℃×1.5時間および110℃×20時間の二段階熱処理により硬化した。
基材に予備き裂を与えるため、0.35mm厚のテフロン(登録商標)シールを先端部より4.9cm貼り付けた。また、接着剤の塗布厚を均一とするために同厚のテフロン(登録商標)シールを基材後部より約2cm貼り付けた。
以上の条件で行われたDCB試験により得られた破壊靭性値(G1c)を表2に示す。
【0059】
[凝集破壊率]
試料破壊面を目視により観察し、接着剤層の部分で破壊されている面積割合を測定した。測定結果を表2に示す。
凝集破壊 :樹脂層が破壊した状態
界面破壊 :基材界面で樹脂がはがれてしまっているような状態
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】