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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124995
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】二酸化炭素分離用アミン組成物
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20230831BHJP
   C07D 487/08 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
B01D53/14 210
B01D53/14 220
C07D487/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028892
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】藤井 亮太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤原 裕志
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 学
【テーマコード(参考)】
4C050
4D020
【Fターム(参考)】
4C050AA03
4C050BB08
4C050CC08
4C050CC09
4C050EE02
4C050FF02
4C050GG03
4C050HH01
4D020AA03
4D020BA16
4D020BB01
4D020BB03
4D020BB07
4D020BC01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】従来技術より二酸化炭素の放散性能に優れる二酸化炭素分離用組成物、並びに二酸化炭素の分離方法を提供すること。
【解決手段】下記式(3)又は(4)で示されるアミン化合物(A)と当該アミン化合物(A)以外のアミン化合物(B)と有機溶媒を含むことを特徴とする、二酸化炭素分離用組成物を用いる。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)又は(2)で示されるアミン化合物(A)と当該アミン化合物(A)以外のアミン化合物(B)と有機溶媒を含むことを特徴とする、二酸化炭素分離用組成物。
【化1】
[上記式中、R、R、R、R及びRは、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を表す。a及びbは、それぞれ独立に、0又は1であり、a+b=1の関係を満たす。Rは、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、又は1つ若しくは2つの水酸基を有する炭素数1~4のヒドロキシアルキル基を表す。]
【請求項2】
前記有機溶媒が、アルコール、ジオール、トリオール、ポリオール(ここでは水酸基4つ以上のアルコールを表す)、アミド化合物、及びウレア化合物より選ばれる少なくとも一種を含む有機溶媒である、前記の請求項1に記載の二酸化炭素分離用組成物。
【請求項3】
前記有機溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、2-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール、ペンタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、グリセリン、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンからなる群より選ばれる少なくとも一種からなる有機溶媒である、請求項1に記載の二酸化炭素分離用組成物。
【請求項4】
上記一般式(1)又は(2)で示されるアミン化合物(A)が、下記式(3)で示される、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノール、又は下記式(4)で示される、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンである
前記の請求項1乃至3のいずれかに記載の二酸化炭素分離用組成物。
【化2】
【請求項5】
前記の二酸化炭素分離用組成物における、前記アミン化合物(A)及び前記アミン化合物(B)の合計量と前記有機溶媒の量の比率が、前記合計量 100質量部に対して、有機溶媒の量が1~300質量部である、前記の請求項1乃至4のいずれかに記載の二酸化炭素分離用組成物。
【請求項6】
前記のアミン化合物(A)と前記のアミン化合物(B)の組成比が、アミン化合物(A)の量 100質量部に対して、アミン化合物(B)が5~1150質量部である、前記の請求項1乃至5のいずれかに記載の二酸化炭素分離用組成物。
【請求項7】
前記のアミン化合物(B)が、下記一般式(5)で示されるアミン化合物である、前記の請求項1乃至6のいずれかに記載の二酸化炭素分離用組成物。
【化3】
[上記式中、R、R、及びRは、各々独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基、炭素数4~10のヒドロキシアルキル基、2,3-ジアルコキシプロピル基(該アルコキシ基は、各々独立して、炭素数1~4のアルコキシ基を表す)、又は炭素数2~6のアミノアルキル基を表す。なお、RとRは互いに結合して環を形成していてもよい。]
【請求項8】
前記のアミン化合物(B)が、ピペラジン、N-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-ピペラジン、N-(2-アミノエチル)-2-アミノエタノール、N-メチル-1,3-ジアミノプロパン、N-メチルエチレンジアミン、N-イソプロピルエチレンジアミン、及びエチレンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1つである、前記の前記の請求項1乃至7のいずれかに記載の二酸化炭素分離用組成物。
【請求項9】
前記の請求項1乃至8のいずれかに記載の二酸化炭素分離用組成物に、さらに水を含み、当該水の濃度が水を含んだ二酸化炭素分離用組成物全体の1~70重量%である、二酸化炭素分離用組成物。
【請求項10】
二酸化炭素を含むガスを、前記の請求項1乃至9のいずれかに記載の二酸化炭素分離用組成物に接触させて、該混合ガス中の二酸化炭素を吸収させる工程を含むことを特徴とする、二酸化炭素の分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を含有する混合ガスから二酸化炭素を分離するための二酸化炭素分離用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題のため、二酸化炭素の分離・回収が注目されており、二酸化炭素吸収液の開発が盛んにおこなわれている。
【0003】
二酸化炭素吸収液として、モノエタノールアミン水溶液が最も一般的である。モノエタノールアミンは、安価で工業的に入手しやすいが、低温で吸収した二酸化炭素を120℃以上の高温にしないと放散しないという特性がある。そして、二酸化炭素放散温度を水の沸点以上にすると、水の高い潜熱、比熱のため、二酸化炭素の回収に多くのエネルギーを要することになる。
【0004】
そのため、モノエタノールアミンより二酸化炭素放散温度が低く、二酸化炭素回収エネルギーの低く、放散性能(放散量/放散速度)に優れたアミンの開発がおこなわれている。例えば、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノール(特許文献1)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2021/153650号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、さらに二酸化炭素の放散性能に優れた二酸化炭素分離用組成物が求められている。二酸化炭素の分離回収については、(i)混合ガスから二酸化炭素分離用組成物への二酸化炭素の吸収、及び(ii)二酸化炭素分離用組成物に吸収された二酸化炭素の放散、の繰返しによってなされる。二酸化炭素の放散には、主に二酸化炭素分離用組成物を加熱することによって行われる。このため、二酸化炭素の放散性能を向上させることにより、前記加熱等の二酸化炭素回収エネルギーを低下させることが可能であり、その結果二酸化炭素分離回収プロセス全体の効率を向上させることができる。本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来技術より二酸化炭素の放散性能に優れる二酸化炭素分離用組成物、並びに二酸化炭素の分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定のアミン化合物と有機溶媒を含有する二酸化炭素分離用組成物が、二酸化炭素の放散量及び放散速度が高く、二酸化炭素の放散性能に優れるという知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下に示すとおりの二酸化炭素分離用組成物である。
【0009】
[1]
下記一般式(1)又は(2)で示されるアミン化合物(A)と当該アミン化合物(A)以外のアミン化合物(B)と有機溶媒を含むことを特徴とする、二酸化炭素分離用組成物。
【0010】
【化1】
【0011】
[上記式中、R、R、R、R及びRは、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を表す。a及びbは、それぞれ独立に、0又は1であり、a+b=1の関係を満たす。Rは、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、又は1つ若しくは2つの水酸基を有する炭素数1~4のヒドロキシアルキル基を表す。]
[2]
前記有機溶媒が、アルコール、ジオール、トリオール、ポリオール(ここでは水酸基4つ以上のアルコールを表す)、アミド化合物、及びウレア化合物より選ばれる少なくとも一種を含む有機溶媒である、前記の[1]に記載の二酸化炭素分離用組成物。
【0012】
[3]
前記有機溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、2-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール、ペンタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、グリセリン、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンからなる群より選ばれる少なくとも一種からなる有機溶媒である、請求項1に記載の二酸化炭素分離用組成物。
【0013】
[4]
上記一般式(1)又は(2)で示されるアミン化合物(A)が、下記式(3)で示される、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノール、又は下記式(4)で示される、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンである
前記の[1]乃至[3]のいずれかに記載の二酸化炭素分離用組成物。
【0014】
【化2】
【0015】
[5]
前記の二酸化炭素分離用組成物における、前記アミン化合物(A)及び前記アミン化合物(B)の合計量と前記有機溶媒の量の比率が、前記合計量 100質量部に対して、有機溶媒の量が1~300質量部である、前記の[1]乃至[4]のいずれかに記載の二酸化炭素分離用組成物。
【0016】
[6]
前記のアミン化合物(A)と前記のアミン化合物(B)の組成比が、アミン化合物(A)の量 100質量部に対して、アミン化合物(B)が5~1150質量部である、前記の[1]乃至[5]のいずれかに記載の二酸化炭素分離用組成物。
【0017】
[7]
前記のアミン化合物(B)が、下記一般式(5)で示されるアミン化合物である、前記の[1]乃至[6]のいずれかに記載の二酸化炭素分離用組成物。
【0018】
【化3】
【0019】
[上記式中、R、R、及びRは、各々独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基、炭素数4~10のヒドロキシアルキル基、2,3-ジアルコキシプロピル基(該アルコキシ基は、各々独立して、炭素数1~4のアルコキシ基を表す)、又は炭素数2~6のアミノアルキル基を表す。なお、RとRは互いに結合して環を形成していてもよい。]
[8]
前記のアミン化合物(B)が、ピペラジン、N-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-ピペラジン、N-(2-アミノエチル)-2-アミノエタノール、N-メチル-1,3-ジアミノプロパン、N-メチルエチレンジアミン、N-イソプロピルエチレンジアミン、及びエチレンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1つである、前記の前記の[1]乃至[7]のいずれかに記載の二酸化炭素分離用組成物。
【0020】
[9]
前記の[1]乃至[8]のいずれかに記載の二酸化炭素分離用組成物に、さらに水を含み、当該水の濃度が水を含んだ二酸化炭素分離用組成物全体の1~70重量%である、二酸化炭素分離用組成物。
【0021】
[10]
二酸化炭素を含むガスを、前記の[1]乃至[9]のいずれかに記載の二酸化炭素分離用組成物に接触させて、該混合ガス中の二酸化炭素を吸収させる工程を含むことを特徴とする、二酸化炭素の分離方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の二酸化炭素分離用組成物は、従来公知の材料に比べて単位時間当たりの二酸化炭素放散速度が速く、二酸化炭素の放散性能に優れるという特長があり、二酸化炭素の放散に要する投下エネルギーを従来技術より低く抑えることができるという効果を奏する。このため、本発明は、従来技術に比べて、二酸化炭素の分離・回収プロセス全体の効率を高められるという点で、工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
まず、本発明の二酸化炭素分離用組成物について説明する。
【0025】
本発明の二酸化炭素分離用組成物は、上記一般式(1)又は(2)で示されるアミン化合物(A)と当該アミン化合物(A)以外のアミン化合物(B)と有機溶媒を含むことを特徴とする。
【0026】
さらに、上記のアミン化合物(A)と上記のアミン化合物(A)以外のアミン化合物(B)及び有機溶媒の混合物を水に溶解させることで、二酸化炭素の放散性能を調整することが可能である。すなわち、本発明の二酸化炭素分離用組成物は、前記アミン化合物(A)とアミン化合物(B)と有機溶媒に加えて、さらに水を含んでもよく、含んでいることが好ましい。
【0027】
本発明において、アミン化合物(A)及びアミン化合物(B)は、いずれも二酸化炭素を吸収したり、放散したりする役割を担う。
【0028】
本発明において、上記一般式(1)及び(2)における、R、R、R、R、及びRは、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を表す。
【0029】
本発明において、上記一般式(1)における、R、R、R、R、及びRは、上記の定義に該当すればよく、特に限定するものではないが、各々独立して、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基(n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基)、水酸基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基(n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、又はtert-ブトキシ基)を挙げることができる。これらのうち、二酸化炭素の放散効率に優れる点で、R、R、R、R、及びRは、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、ブチル基、ヒドロキシメチル基、又はメトキシ基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0030】
本発明において、上記一般式(1)及び(2)におけるRは、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、又は1つ若しくは2つの水酸基を有する炭素数1~4のヒドロキシアルキル基を表す。
【0031】
また、上記一般式(1)および(2)におけるRは、上記の定義に該当すればよく、特に限定するものではないが、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基(n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基)、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基、2-メチル-2-ヒドロキシプロピル基、又は2-ヒドロキシブチル基を挙げることができる。これらのうち、二酸化炭素の放散効率に優れる点で、Rは、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、ブチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、又は2-ヒドロキシプロピル基であり、水素原子であることがより好ましい。
【0032】
上記一般式(1)において、a及びbは、それぞれ独立に、0又は1であり、a+b=1の関係を満たす。
【0033】
a=1且つb=0のとき、上記の一般式(1)は下記一般式(1a)で示される。
【0034】
【化4】
【0035】
[上記式中、R、R、R、R、R、及びRの定義及び好ましい範囲は、上記の一般式(1)において示したR、R、R、R、R、及びRの定義及び好ましい範囲と同義である。]
a=0且つb=1のとき、上記の一般式(1)は下記一般式(1b)で示される。
【0036】
【化5】
【0037】
[上記式中、R、R、R、R、R、及びRの定義及び好ましい範囲は、上記の一般式(1)において示したR、R、R、R、R、及びRの定義及び好ましい範囲と同義である。]
一般式(1)で示されるアミン化合物の具体例としては、例えば、以下の化合物(例示化合物1~30)を挙げる事ができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
【化6】
【0039】
上記一般式(1)で示されるアミン化合物については、入手容易性の観点から、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノール(R=R=R=R=R=R=水素原子、a=0、b=1)であることが好ましい。すなわち、下記式(3)で表されるアミン化合物が好ましい。
【0040】
【化7】
【0041】
一般式(2)で示されるアミン化合物の具体例としては、例えば、以下の化合物(例示化合物1~28)を挙げる事ができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
【化8】
【0043】
上記一般式(2)で示されるアミン化合物については、入手容易性の観点から、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(R=R=R=R=R=R=水素原子)であることが好ましい。すなわち、下記式(4)で表されるアミン化合物が好ましい。
【0044】
【化9】
【0045】
本発明において、アミン化合物(B)は、上記の通り、前記のアミン(A)を除くアミン化合物であることを特徴とするが、例えば、アルカノールアミン類、エチレンジアミン類、プロピレンジアミン類、ブチレンジアミン類、ピペラジン類、ピペリジン類、モルホリン類、ピロリジン類、アゼパン類、及びポリエチレンポリアミン類からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン化合物(前記のアミン(A)を除く)が挙げられる。 なお、本発明の二酸化炭素分離用組成物については、二酸化炭素の放散性能に優れる点で、前記のアミン化合物(B)が、下記一般式(5)で表されるアミン化合物であることが好ましい。
【0046】
【化10】
【0047】
[上記式中、R、R、及びRは、各々独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基、炭素数4~10のヒドロキシアルキル基、2,3-ジアルコキシプロピル基(該アルコキシ基は、各々独立して、炭素数1~4のアルコキシ基を表す)、又は炭素数2~6のアミノアルキル基を表す。なお、RとRは互いに結合して環を形成していてもよい。]
前記の炭素数1~6のアルキル基については、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、sec-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、シクロペンチル基、n-へキシル基、sec-へキシル基、イソへキシル基、tert-へキシル基、又はシクロへキシル基等を挙げることができる。
【0048】
上記の炭素数4~10のヒドロキシアルキル基については、特に限定するものではないが、例えば、2-ヒドロキシブチル基、4-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシペンチル基、5-ヒドロキシペンチル基、2-ヒドロキシシクロへキシル基、4-ヒドロキシシクロヘキシル基、6-ヒドロキシヘキシル基、2-ヒドロキシヘプチル基、7-ヒドロキシヘプチル基、2-ヒドロキシオクチル基、8-ヒドロキシオクチル基、2-ヒドロキシノニル基、9-ヒドロキシノニル基、又は10-ヒドロキシデシル基等を挙げることができる。
【0049】
上記の2,3-ジアルコキシプロピル基(該アルコキシ基は、各々独立して、炭素数1~4のアルコキシ基を表す)については、特に限定するものではないが、例えば、2,3-ジメトキシプロピル基、2,3-ジエトキシプロピル基、2,3-ジプロポキシプロピル基、又は2,3-ジブトキシプロピル基等を例示することができる。
【0050】
上記の炭素数2~6のアミノアルキル基については、特に限定するものではないが、例えば、2-アミノエチル基、3-アミノプロピル基、又は4-アミノブチル基等を例示することができる。
【0051】
本発明の一般式(5)におけるR、R、及びRについては、二酸化炭素の放散効率に優れる点で、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、2-アミノエチル基、又は3-アミノプロピル基である(なお、RとRは互いに結合して環を形成していてもよい)ことが好ましい。
【0052】
なお、上記一般式(5)で示されるアミン化合物において、RとRは互いに結合して環を形成したものについては、特に限定するものではないが、例えば、下記一般式(5a)、(5b)、又は(5c)で示されるアミン化合物を例示することができ、二酸化炭素吸収効率に優れる点で、下記一般式(5c)で示されるアミン化合物が好ましい。
【0053】
【化11】
【0054】
[上記式中、Rの定義及び好ましい範囲は、上記の一般式(5)において示したRの定義及び好ましい範囲と同義である。]
【0055】
【化12】
【0056】
[上記式中、Rの定義及び好ましい範囲は、上記の一般式(5)において示したRの定義及び好ましい範囲と同義である。]
一般式(5a)におけるR10については、二酸化炭素の放散効率に優れる点で、1,2-エチレン、1,2-プロピレン、又は1,3-プロピレンであることが好ましく、1,2-エチレンであることがより好ましい。
【0057】
一般式(5)で示されるアミン化合物の具体例としては、例えば、シクロへキシルアミン、ジシクロへキシルアミン、エタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-イソプロピルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N,N-ジメチル-1,4-ジアミノブタン、N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N-ジメチル-1,2-ジアミノプロパン、N,N-ジメチル-1,2-ジアミノエタン、N,N-ジエチル-1,4-ジアミノブタン、N,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N-ジエチル-1,2-ジアミノプロパン、N,N-ジエチル-1,2-ジアミノエタン、N,N-ジプロピル-1,4-ジアミノブタン、N,N-ジプロピル-1,3-ジアミノプロパン、N,N-ジプロピル-1,2-ジアミノプロパン、N,N-ジプロピル-1,2-ジアミノエタン、N-(2-アミノエチル)-2-アミノエタノール、N-(3-アミノプロピル)-2-アミノエタノール、N-(2-アミノプロピル)-2-アミノエタノール、N-(4-アミノブチル)-2-アミノエタノール、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロパノール、N-(3-アミノプロピル)-3-アミノプロパノール、N-(2-アミノプロピル)-3-アミノプロパノール、N-(4-アミノブチル)-3-アミノプロパノール、N-(2-アミノエチル)-4-アミノブタノール、N-(3-アミノプロピル)-4-アミノブタノール、N-(2-アミノプロピル)-4-アミノブタノール、又はN-(4-アミノブチル)-4-アミノブタノール、N-(2-アミノシクロペンチル)-2-アミノエタノール、N-(3-アミノシクロペンチル)-2-アミノエタノール、N-(2-アミノシクロへキシル)-2-アミノエタノール、N-(3-アミノシクロへキシル)-2-アミノエタノール、N-(4-アミノシクロへキシル)-2-アミノエタノール、N-(2-アミノシクロペンチル)-3-アミノプロパノール、N-(3-アミノシクロペンチル)-3-アミノプロパノール、N-(2-アミノシクロへキシル)-3-アミノプロパノール、N-(3-アミノシクロへキシル)-3-アミノプロパノール、N-(4-アミノシクロへキシル)-3-アミノプロパノール、ピペラジン、N-メチルピペラジン、N-エチルピペラジン、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、N-(2-ヒドロキシプロピル)ピペラジン、N-(3-アミノプロピル)ピペラジン、N-(2、3-ジヒドロキシプロピル)ピペラジン、又はモルホリン等を挙げることができる。
【0058】
上記のアミン化合物(B)については、二酸化炭素の放散性能に優れる点で、ピペラジン、N-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-ピペラジン、N-(2-アミノエチル)-2-アミノエタノール、N-メチル-1,3-ジアミノプロパン、N-メチルエチレンジアミン、N-イソプロピルエチレンジアミン、及びエチレンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0059】
本発明において、上記のアミン化合物(A)及びアミン化合物(B)については、市販のものでもよいし、公知の方法により合成したものでもよく、特に限定されない。また、これらのアミン化合物の純度としては、特に限定するものではないが、いずれも、それぞれ、95%以上であることが好ましく、99%以上が特に好ましい。
【0060】
本発明において、前記有機溶媒は、特に限定するものではないが、アミン化合物(A)及びアミン化合物(B)の両方と混和する有機溶媒であることが好ましく、アミン化合物(A)、アミン化合物(B)、及び水のいずれにも混和する有機溶媒であることがより好ましい。
【0061】
また、二酸化炭素の放散には主に加熱を行うため、前記の有機溶媒については、沸点が50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。
【0062】
本発明の二酸化炭素分離用組成物については、室温で液体であることが好ましい。このため、本発明の二酸化炭素分離用組成物は、その融点が150℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。
【0063】
二酸化炭素の放散に伴う加熱により有機溶媒が揮発した場合、気相部分の二酸化炭素分圧を下げることが出来る場合があり、二酸化炭素の放散が促進される点で、工業的に有利である場合がある。また、揮発した有機溶媒は冷却凝縮及び回収することにより、アミン化合物と有機溶媒の組成は一定に保たれる。
【0064】
前記の有機溶媒は、特に限定するものではないが、例えば、アルコール類、エステル類、エーテル類、チオエーテル類、アミド類、ウレア類、ニトリル類、スルホン類、又はスルホキシド類を挙げることができる。
【0065】
前記の有機溶媒については、二酸化炭素の放散性能に優れる点で、アルコール、ジオール、トリオール、ポリオール(ここでは水酸基4つ以上のアルコールを表す)、アミド化合物、及びウレア化合物群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、2-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、ε-カプロラクタム、テトラメチルウレア、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、又はN,N’-ジメチルプロピレンウレア等を挙げることができる。
【0066】
前記の有機溶媒については、二酸化炭素の放散性能に優れる点で、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、2-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール、ペンタノール、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、グリセリン、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、又は1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンであることが好ましい。
【0067】
前記の有機溶媒は、市販のものでもよいし、公知の方法により合成したものでもよく、特に限定されない。また、当該有機溶媒の純度としては、特に限定するものではないが、95%以上であることが好ましく、99%以上であることが特に好ましい。
【0068】
すなわち、本発明の二酸化炭素分離用組成物については、二酸化炭素の放散性能に優れる点で、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノール又は1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(アミン化合物(A))と、アミン化合物(B)と、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、2-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、ε-カプロラクタム、テトラメチルウレア、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、及びN,N’-ジメチルプロピレンウレアからなる群より選ばれる少なくとも一種の有機溶媒を含むものであることが好ましい。
【0069】
また、本発明の二酸化炭素分離用組成物については、二酸化炭素の放散性能に優れる点で、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノール又は1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(アミン化合物(A))と、N-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-ピペラジン、ピペラジン、N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N-ジメチル-1,2-ジアミノエタン、N-(2-アミノエチル)-2-アミノエタノール、及び2-(3-アミノプロピル)-2-アミノエタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン化合物(アミン化合物(B)と、)と、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、2-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、ε-カプロラクタム、テトラメチルウレア、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、及びN,N’-ジメチルプロピレンウレアからなる群より選ばれる少なくとも一種の有機溶媒を含むものであることがより好ましい。
【0070】
本発明の二酸化炭素分離用組成物については、二酸化炭素の放散性能に優れる点で、前記のアミン化合物(A)と前記のアミン化合物(B)の合計量と前記の有機溶媒の量の比が、前記の合計量 100質量部に対して、前記の有機溶媒の量が0.1~500質量部であることが好ましく、前記の有機溶媒の量が1~300質量部であることがより好ましく、20~300質量部であることが更に好ましい。
【0071】
また、前記のアミン化合物(A)と前記のアミン化合物(B)の組成比は、アミン化合物(A)の量、100質量部に対して、アミン化合物(B)の量が、1~1500質量部であることが好ましく、アミン化合物(B)の量が、5~1150質量部であることがより好ましく、10~1000質量部であることがより好ましく、20~500質量部であることが更に好ましい。
【0072】
本発明の二酸化炭素分離用組成物については、さらに水を含んでいてもよい。本発明の二酸化炭素分離用組成物が水を含む場合、その水の濃度については、水を含んだ二酸化炭素分離用組成物全体の1~70重量%であることが好ましく、10~60重量%であることがより好ましく、20~50重量%であることがより好ましい。
【0073】
次に、本発明における二酸化炭素の分離方法について説明する。
【0074】
本発明の二酸化炭素の分離方法は、本発明の二酸化炭素分離用組成物と二酸化炭素を含むガスを接触させ、二酸化炭素を前記二酸化炭素分離用組成物に高選択的に吸収させる工程を有することを特徴とし、このように吸収させた後、前記の二酸化炭素分離用組成物を加熱及び/又は減圧することにより、吸収された二酸化炭素を放散させる工程を含んでいてもよい。
【0075】
本発明の二酸化炭素の分離方法において、二酸化炭素を含むガスを、本発明の二酸化炭素分離用組成物に接触させる方法については、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。公知の方法としては、バブリング法や、充填塔又は棚段塔を用いた対向接触法などが挙げられる。
【0076】
本発明の二酸化炭素の分離方法において、二酸化炭素を含むガスを、本発明の二酸化炭素分離用組成物に吸収させる際の温度としては、特に制限するものではないが、通常0℃~60℃の範囲を挙げることができる。
【0077】
本発明の二酸化炭素の分離方法において、二酸化炭素を本発明の二酸化炭素分離用組成物から放散させる温度は、特に制限するものではないが、通常50~150℃の範囲を挙げることができる。但し、エネルギー低減の観点から、100℃以下とすることが好ましい。
【0078】
また、本発明の二酸化炭素分離用組成物については、これを任意の担体に担持又は添着させてなる二酸化炭素分離剤として、二酸化炭素の固体吸収法に用いることができる。
【0079】
当該固体吸収法は、上記の二酸化炭素分離剤と二酸化炭素を含むガスを接触させ、二酸化炭素を吸収させた後、高温又は減圧することにより吸収された二酸化炭素を放散させる方法を表す。この吸収法では、一般的に二酸化炭素を放散させる温度は100℃以上とされるが、本発明の二酸化炭素分離用組成物を使用する場合には、特に温度に関する制約は無く、100℃未満の温度としてもよい。
【0080】
前記の担体としては、特に限定するものではないが、例えば、シリカ、アルミナ、マグネシア、多孔性ガラス、活性炭、ポリアクリレートもしくはポリメタクリレート系の多孔性樹脂、又は繊維などを用いることができる。
【0081】
前記のシリカとしては、特に制限はなく、結晶性と非結晶性(アモルファス)があり、球状シリカ、破砕状シリカ、メソポーラスシリカなど工業的に流通しているものを使用することが可能である。
【0082】
上記の二酸化炭素を含むガスについては、純粋な二酸化炭素ガスであってもよいし、二酸化炭素とその他ガスを含む混合ガスであってもよい。前記のその他のガスとしては、特に限定するものではないが、例えば、大気、窒素、酸素、水素、アルゴン、ネオン、ヘリウム、一酸化炭素、水蒸気、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブテン、ブタジエン、硫化水素又は窒素酸化物等が挙げられる。
【0083】
本発明の二酸化炭素の分離方法に適用できる混合ガスについては、二酸化炭素を含む混合ガスであれば特に制限されないが、二酸化炭素と他のガスとの分離性能を向上させるためには、二酸化炭素濃度が5%以上であることが好ましく、より好ましくは10%以上であることが望ましい。
【0084】
本発明の二酸化炭素の分離方法においては、上記の工程(吸収工程、放散工程)以外の工程を追加して実施しても一向に差し支えない。例えば、冷却工程、加熱工程、洗浄工程、抽出工程、超音波処理工程、蒸留工程、その他薬液で処理する工程などを適宜実施することができる。
【0085】
本発明の二酸化炭素の分離方法は、特に限定するものではないが、例えば、火力発電所、鉄鋼プラント、及びセメント工場などで発生する燃焼排ガスからの二酸化炭素(CO)の分離や、水蒸気改質プロセスで得られる水蒸気改質ガスからの二酸化炭素(CO)の分離に適用することができる。
【実施例0086】
以下に実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0087】
二酸化炭素分離用組成物の二酸化炭素放散速度及び二酸化炭素放散量を測定する際に、140mL/分の二酸化炭素ガスと560mL/分の窒素ガスの混合気体(以下、「本混合気体」と記載する)を用いた。
【0088】
二酸化炭素分離用組成物の二酸化炭素放散速度及び二酸化炭素放散量については、ガス流量計及び二酸化炭素濃度計を用いて算出した。
【0089】
[実施例1]
1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー製)7g、N-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-ピペラジン(Sigma-Aldrich製)33g、ポリエチレングリコール(PEG200、三洋化成工業製)30g、及び純水 30gを混合撹拌し、二酸化炭素分離用組成物(100g)を得た。当該二酸化炭素分離用組成物の全量を200mLのガス吸収瓶に入れ、水浴で40℃に調温した。前記の二酸化炭素分離用組成物に本混合気体を吹き込み、二酸化炭素ガスを吸収させた。次いで、ガス吸収瓶を100℃の油浴に入れ、二酸化炭素分離用組成物に、本混合気体を吹き込み、二酸化炭素分離用組成物吸収されていた二酸化炭素ガスを放散させた。本混合気体吹込み開始直後30分間の単位時間当たりの二酸化炭素ガス放散速度は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり520mL/分であり、本混合気体吹込み開始から二酸化炭素ガス放散速度がゼロになるまでの二酸化炭素ガス放散量は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり29.5gであった。
【0090】
[実施例2]
1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー製)30g、ピペラジン(東京化成工業製、無水品)10g、平均分子量200g/molのPEG200(三洋化成工業製)30g、及び純水30gを混合撹拌し、二酸化炭素分離用組成物(100g)を得た。当該二酸化炭素分離用組成物を用いて、実施例1と同様の操作を行った。本混合気体吹込み開始直後30分間の単位時間当たりの二酸化炭素ガス放散速度は、二酸化炭素分離用組成物1L当たり692mL/分であり、本混合気体吹込み開始から二酸化炭素ガス放散速度がゼロになるまでの二酸化炭素ガス放散量は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり40.9gであった。
【0091】
[実施例3]
1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー製)20g、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン(東京化成工業製)20g、PEG200(三洋化成工業製)30g、及び純水 30gを混合撹拌し、二酸化炭素分離用組成物(100g)を得た。当該二酸化炭素分離用組成物を用いて、実施例1と同様の操作を行った。本混合気体吹込み開始直後30分間の単位時間当たりの二酸化炭素ガス放散速度は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり756mL/分であり、本混合気体吹込み開始から二酸化炭素ガス放散速度がゼロになるまでの二酸化炭素ガス放散量は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり44.8gであった。
【0092】
[実施例4]
1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー製)25g、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン(東京化成工業製)15g、PEG200(三洋化成工業製)30g、及び純水 30gを混合撹拌し、二酸化炭素分離用組成物(100g)を得た。当該二酸化炭素分離用組成物を用いて、実施例1と同様の操作を行った。本混合気体吹込み開始直後30分間の単位時間当たりの二酸化炭素ガス放散速度は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり729mL/分であり、本混合気体吹込み開始から二酸化炭素ガス放散速度がゼロになるまでの二酸化炭素ガス放散量は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり43.1gであった。
【0093】
[実施例5]
1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー製)15g、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン(東京化成工業製)25g、PEG200(三洋化成工業製)30g、及び純水 30gを混合撹拌し、二酸化炭素分離用組成物(100g)を得た。当該二酸化炭素分離用組成物を用いて、実施例1と同様の操作を行った。本混合気体吹込み開始直後30分間の単位時間当たりの二酸化炭素ガス放散速度は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり779mL/分であり、本混合気体吹込み開始から二酸化炭素ガス放散速度がゼロになるまでの二酸化炭素ガス放散量は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり47.2gであった。
【0094】
[実施例6]
1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー製)15g、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン(東京化成工業製)25g、PEG200(三洋化成工業製)15g、及び純水 45gを混合撹拌し、二酸化炭素分離用組成物(100g)を得た。当該二酸化炭素分離用組成物を用いて、実施例1と同様の操作を行った。本混合気体吹込み開始直後30分間の単位時間当たりの二酸化炭素ガス放散速度は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり694mL/分であり、本混合気体吹込み開始から二酸化炭素ガス放散速度がゼロになるまでの二酸化炭素ガス放散量は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり41.0gであった。
【0095】
[実施例7]
1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー製)15g、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン(東京化成工業製)25g、PEG200(三洋化成工業製)45g、及び純水 15gを混合撹拌し、二酸化炭素分離用組成物(100g)を得た。当該二酸化炭素分離用組成物を用いて、実施例1と同様の操作を行った。本混合気体吹込み開始直後30分間の単位時間当たりの二酸化炭素ガス放散速度は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり936mL/分であり、本混合気体吹込み開始から二酸化炭素ガス放散速度がゼロになるまでの二酸化炭素ガス放散量は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり60.9gであった。
【0096】
[実施例8]
1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー製)15g、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン(東京化成工業製)25g、及びPEG200(三洋化成工業製)60g混合撹拌し、二酸化炭素分離用組成物(100g)を得た。当該二酸化炭素分離用組成物を用いて、実施例1と同様の操作を行った。本混合気体吹込み開始直後30分間の単位時間当たりの二酸化炭素ガス放散速度は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり1153mL/分であり、本混合気体吹込み開始から二酸化炭素ガス放散速度がゼロになるまでの二酸化炭素ガス放散量は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり86.5gであった。
【0097】
[実施例9]
1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(東ソー製)15g、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン(東京化成工業製)25g、及びPEG200(三洋化成工業製)30g、及び純水 30gを混合撹拌し、二酸化炭素分離用組成物(100g)を得た。当該二酸化炭素分離用組成物を用いて、実施例1と同様の操作を行った。本混合気体吹込み開始直後30分間の単位時間当たりの二酸化炭素ガス放散速度は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり754mL/分であり、本混合気体吹込み開始から二酸化炭素ガス放散速度がゼロになるまでの二酸化炭素ガス放散量は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり50.0gであった。
【0098】
[実施例10]
1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー製)15g、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン(東京化成工業製)25g、エチレングリコール(EG、キシダ化学製)30g、及び純水 30gを混合撹拌し、二酸化炭素分離用組成物(100g)を得た。当該二酸化炭素分離用組成物を用いて、実施例1と同様の操作を行った。本混合気体吹込み開始直後30分間の単位時間当たりの二酸化炭素ガス放散速度は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり724mL/分であり、本混合気体吹込み開始から二酸化炭素ガス放散速度がゼロになるまでの二酸化炭素ガス放散量は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり43.7gであった。
【0099】
[実施例11]
1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー製)15g、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン(東京化成工業製)25g、1,5-ペンタンジオール(1,5-PDOL、東京化成工業製)30g、及び純水 30gを混合撹拌し、二酸化炭素分離用組成物(100g)を得た。当該二酸化炭素分離用組成物を用いて、実施例1と同様の操作を行った。本混合気体吹込み開始直後30分間の単位時間当たりの二酸化炭素ガス放散速度は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり723mL/分であり、本混合気体吹込み開始から二酸化炭素ガス放散速度がゼロになるまでの二酸化炭素ガス放散量は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり45.4gであった。
【0100】
[実施例12]
1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー製)15g、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン(東京化成工業製)25g、グリセリン(GC、キシダ化学製)30g、及び純水 30gを混合撹拌し、二酸化炭素分離用組成物(100g)を得た。当該二酸化炭素分離用組成物を用いて、実施例1と同様の操作を行った。本混合気体吹込み開始直後30分間の単位時間当たりの二酸化炭素ガス放散速度は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり655mL/分であり、本混合気体吹込み開始から二酸化炭素ガス放散速度がゼロになるまでの二酸化炭素ガス放散量は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり38.2gであった。
【0101】
[実施例13]
1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー製)15g、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン(東京化成工業製)25g、2-ピロリドン(2-Pyrrolidone、キシダ化学製)30g、及び純水 30gを混合撹拌し、二酸化炭素分離用組成物(100g)を得た。当該二酸化炭素分離用組成物を用いて、実施例1と同様の操作を行った。本混合気体吹込み開始直後30分間の単位時間当たりの二酸化炭素ガス放散速度は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり763mL/分であり、本混合気体吹込み開始から二酸化炭素ガス放散速度がゼロになるまでの二酸化炭素ガス放散量は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり44.8gであった。
【0102】
[実施例14]
1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー製)15g、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン(東京化成工業製)25g、N―メチル-2-ピロリドン(NMP、キシダ化学製)30g、及び純水 30gを混合撹拌し、二酸化炭素分離用組成物(100g)を得た。当該二酸化炭素分離用組成物を用いて、実施例1と同様の操作を行った。本混合気体吹込み開始直後30分間の単位時間当たりの二酸化炭素ガス放散速度は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり780mL/分であり、本混合気体吹込み開始から二酸化炭素ガス放散速度がゼロになるまでの二酸化炭素ガス放散量は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり47.1gであった。
【0103】
[実施例15]
1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー製)15g、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン(東京化成工業製)25g、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI、東京化成工業製)30g、及び純水 30gを混合撹拌し、二酸化炭素分離用組成物(100g)を得た。当該二酸化炭素分離用組成物を用いて、実施例1と同様の操作を行った。本混合気体吹込み開始直後30分間の単位時間当たりの二酸化炭素ガス放散速度は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり754mL/分であり、本混合気体吹込み開始から二酸化炭素ガス放散速度がゼロになるまでの二酸化炭素ガス放散量は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり44.8gであった。
【0104】
[比較例1]
1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー製)40g、及び純水60gを混合撹拌し、二酸化炭素分離用組成物(100g)を得た。当該二酸化炭素分離用組成物を用いて、実施例1と同様の操作を行った。本混合気体吹込み開始直後30分間の単位時間当たりの二酸化炭素ガス放散速度は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり441mL/分であり、本混合気体吹込み開始から二酸化炭素ガス放散速度がゼロになるまでの二酸化炭素ガス放散量は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり26.0gであった。
【0105】
[比較例2]
1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー製)40g、PEG200(三洋化成製)30g、及び純水30gを混合撹拌し、二酸化炭素分離用組成物(100g)を得た。当該二酸化炭素分離用組成物を用いて、実施例1と同様の操作を行った。本混合気体吹込み開始直後30分間の単位時間当たりの二酸化炭素ガス放散速度は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり375mL/分であり、本混合気体吹込み開始から二酸化炭素ガス放散速度がゼロになるまでの二酸化炭素ガス放散量は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり22.2gであった。
【0106】
[比較例3]
1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー製)7g、N-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-ピペラジン(Sigma-Aldrich製)33g、及び純水 60gを混合撹拌し、二酸化炭素分離用組成物(100g)を得た。当該二酸化炭素分離用組成物を用いて、実施例1と同様の操作を行った。本混合気体吹込み開始直後30分間の単位時間当たりの二酸化炭素ガス放散速度は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり498mL/分であり、本混合気体吹込み開始から二酸化炭素ガス放散速度がゼロになるまでの二酸化炭素ガス放散量は、二酸化炭素分離用組成物 1L当たり29.3gであった。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】
【0110】
実施例1~15、及び比較例1~3の対比から明らかなように、本発明の二酸化炭素分離用組成物は、従来の二酸化炭素分離用組成物に比べ、二酸化炭素放散量と二酸化炭素放散速度が高く、二酸化炭素放散性能に優れていた。
【0111】
また、比較例1と2の結果から、従来技術にPEG200に代表される有機溶媒を添加した場合は、二酸化炭素放散量と二酸化炭素放散速度の両方が低下する傾向がみられた。
【0112】
これに対して、比較例3と実施例の対比から、本願発明の二酸化炭素分離用組成物においては、有機溶媒を含有することによって、従来技術とは逆に、二酸化炭素放散量と二酸化炭素放散速度の両方が向上する傾向がみられた。当該結果は、従来技術からは容易に想到されない顕著意外な効果である。