(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125056
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】貴重印刷物
(51)【国際特許分類】
B41M 3/14 20060101AFI20230831BHJP
B42D 25/337 20140101ALI20230831BHJP
【FI】
B41M3/14
B42D25/337
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028967
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】山本 英男
(72)【発明者】
【氏名】木内 進
(72)【発明者】
【氏名】秋山 洋平
【テーマコード(参考)】
2C005
2H113
【Fターム(参考)】
2C005HA04
2C005HB02
2C005HB09
2C005HB10
2C005JB19
2C005JB26
2H113AA06
2H113BB02
2H113BB07
2H113BB22
2H113CA39
2H113CA44
(57)【要約】
【課題】印影領域に位置する第一画像の視認性を高めることができ、又は不連続による違和感を無くすことができる貴重印刷物を提供する。
【解決手段】本発明の貴重印刷物は、基材1の表面の少なくとも一部に印刷領域2を備え、印刷領域2に印影領域3を有し、印影領域3は、印影輪郭4によって印影外領域5と区分され、印影領域3と印影外領域5とに連続して、所定方向に規則的に配置される複数の画線10によって下地紋が印刷され、下地紋の一部に第一画像20を形成し、印影領域3に位置する第一画像20を形成する画線10を、印影外領域5に位置する第一画像20を形成する画線10に対して、画線幅を狭く、画線ピッチを狭くすることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面の少なくとも一部に印影領域を有する印刷領域を備え、
前記印影領域は、印影輪郭によって印影内領域と印影外領域とに区分され、
前記印影内領域と前記印影外領域とに連続して所定方向に規則的に配置される複数の画線によって下地紋が形成され、
前記下地紋の一部に第一画像が形成された貴重印刷物であって、
前記印影内領域において前記第一画像を形成する前記画線を、前記印影外領域において前記第一画像を形成する前記画線に対して、画線幅及び画線ピッチを狭く形成したことを特徴とする貴重印刷物。
【請求項2】
前記印影内領域に位置する前記画線を、前記印影外領域に位置する前記画線に対して、画線幅を狭く形成したことを特徴とする請求項1に記載の貴重印刷物。
【請求項3】
前記第一画像の輪郭部分に白抜き部を形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の貴重印刷物。
【請求項4】
基材の表面の少なくとも一部に印影領域を有する印刷領域を備え、
前記印影領域は、印影輪郭によって印影内領域と印影外領域とに区分され、
前記印影内領域は、所定方向に規則的に配置された複数の第1画線によって第1下地紋が形成され、
前記印影外領域は、所定方向に規則的に配置された複数の第2画線によって第2下地紋が形成され、
前記印影内領域に形成された前記第1画線と前記印影外領域に形成された前記第2画線の端部が連続して形成されたことを特徴とする貴重印刷物。
【請求項5】
前記第1画線を直線で形成し、前記第2画線を波線で形成したことを特徴とする請求項4に記載の貴重印刷物。
【請求項6】
前記第1画線を同一ピッチで形成したことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の貴重印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行券、株券、有価証券、通行券、パスポート、カード等の貴重印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
日本銀行券等の貴重印刷物には、複雑な印刷模様が形成された印刷画線上に発行機関等を示す印影が加刷されることがある(特許文献1)。これらの貴重印刷物は、偽造や改ざん等を防止するため、複数の偽造防止技術が付与されるとともに、複数の複雑な画線を重ねて配置することで、偽造防止効果を得ている。一方で、複雑な印刷模様上に重ねて配置される印影部分については、印影自体を目立たせる必要があるため、印影印刷を行う下地紋部分については、画線の太さ又はピッチ等を調整することで一定以下の濃度に調整している。
図3は、従来技術1による貴重印刷物を示す概念図であり、
図3(a)は同貴重印刷物を示す平面図、
図3(b)は同貴重印刷物の要部平面図、
図3(c)は同貴重印刷物の下地紋を示す要部平面図である。
基材1表面の印刷領域2には印影領域3を有し、印影領域3は、印影輪郭4によって印影外領域5と区分されている。
図3に示す貴重印刷物では、下地紋中に偽造防止技術として画線を太くした第一画像(桜)200を形成する場合、印影領域3に位置する部分では、画線を太く形成しない方法を用いている。
図4は、従来技術2による貴重印刷物を示す概念図であり、
図4(a)は同貴重印刷物を示す平面図、
図4(b)は同貴重印刷物の要部平面図、
図4(c)は同貴重印刷物の下地紋を示す要部平面図である。
図4に示す貴重印刷物では、印影領域3の下地紋に該当する地紋の画線101の構成と、印影外領域5に形成する画線102の構成を異ならせることで、印影領域3の濃度を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来技術1では、印影領域3に位置する第一画像200は、画線を太く形成せず、第一画像200の輪郭を白抜きで形成しているため、第一画像200である桜が目立ちにくい。
また、従来技術2では、印影領域3の下地紋に該当する地紋の画線101の構成と、印影外領域5に形成する画線102の構成とを別々に設計しているため、画線101と画線102とが隣接した部分が目立ってしまい、デザイン性の観点で課題となっている。
【0005】
本発明は、印影領域に位置する第一画像の視認性を高めることができ、又は不連続による違和感をなくすことができる貴重印刷物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の貴重印刷物は、基材の表面の少なくとも一部に印刷領域を備え、印刷領域に印影領域を有し、印影領域は、印影輪郭によって印影外領域と区分され、印影領域と印影外領域とに連続して、所定方向に規則的に配置される複数の画線によって下地紋が印刷され、下地紋の一部に第一画像を形成する貴重印刷物であって、印影領域に位置する第一画像を形成する画線を、印影外領域に位置する第一画像を形成する画線に対して、画線幅を狭く、画線ピッチを狭くすることを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の貴重印刷物において、印影領域に位置する画線を、前記印影外領域に位置する画線に対して、画線幅を狭くすることを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の貴重印刷物において、第一画像を、白抜きによる輪郭によって形成することを特徴とする。
請求項4記載の本発明の貴重印刷物は、基材の表面の少なくとも一部に印刷領域を備え、印刷領域に印影領域を有し、印影領域は、印影輪郭によって印影外領域と区分され、印影領域と印影外領域とに連続して、所定方向に規則的に配置される複数の第1画線によって第1下地紋が印刷され、印影外領域に、所定方向に規則的に配置される複数の第2画線によって第2下地紋が印刷される貴重印刷物であって、第1画線の端部と第2画線の端部とを連続させることを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項4に記載の貴重印刷物において、第1画線を直線で形成し、第2画線を波線で形成することを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項4又は請求項5に記載の貴重印刷物において、第1画線を同一ピッチとして形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の貴重印刷物によれば、印影領域に位置する第一画像の視認性を高めることができ、又は不連続による違和感をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施例による貴重印刷物を示す概念図
【
図2】本発明の他の実施例による貴重印刷物を示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による貴重印刷物は、印影領域に位置する第一画像を形成する画線を、印影外領域に位置する第一画像を形成する画線に対して、画線幅を狭く、画線ピッチを狭くするものである。本実施の形態によれば、印影領域に位置する第一画像の画線ピッチを狭くすることで第一画像の濃度を高め、視認性を高めることができる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態において、印影領域に位置する画線を印影外領域に位置する画線に対して、画線幅を狭くするものである。本実施の形態によれば、印影外領域に対して印影領域の濃度を低下させることで印影を目立たせることができ、第一画像の視認性を高めることができる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第1又は第2の実施の形態において、第一画像を白抜きによる輪郭によって形成するものである。本実施の形態によれば、白抜きによる輪郭によって形成される第一画像での視認性を高める効果が大きい。
【0012】
本発明の第4の実施の形態による貴重印刷物は、第1画線の端部と第2画線の端部とを連続させるものである。本実施の形態によれば、画線ピッチの異なる画線を各々の領域に形成しても、各々の画線端部を繋ぐ構成とすることができるため、不連続による違和感をなくすことができる。
【0013】
本発明の第5の実施の形態は、第4の実施の形態において、第1画線を直線で形成し、第2画線を波線で形成するものである。本実施の形態によれば、デザイン性を高めることができる。
【0014】
本発明の第6の実施の形態は、第4又は第5の実施の形態において、第1画線を同一ピッチとして形成するものである。本実施の形態によれば、第1下地紋の濃度むらをなくすことができる。
【実施例0015】
本発明の一実施例による貴重印刷物を説明する。
図1は本発明の一実施例による貴重印刷物を示す概念図であり、
図1(a)は本実施例の貴重印刷物を示す平面図、
図1(b)は同貴重印刷物の下地紋を示す要部平面図、
図1(c)は比較例を示す要部平面図、
図1(d)は
図1(b)に示す部分の印影を印刷した状態での要部平面図である。
【0016】
本実施例の貴重印刷物は、例えば、紙幣、パスポート又は身分証明書等の貴重印刷物及びキャッシュカード等の貴重印刷物であり、基材1には紙やプラスチックが用いられる。本実施例の貴重印刷物は、基材1の表面の少なくとも一部に印刷領域2を備えている。
図1(a)に示すように、印刷領域2には印影領域3を有している。また、
図1(b)に示すように、印影領域3は、印影輪郭4によって印影外領域5と区分されている。印影領域3には、一般には文字を表す印影が印刷される。印影輪郭4は、一般には円形や四角形の輪郭線で表されるが、必ずしも輪郭線のすべてが連続している場合に限らない。
本実施例では、印影領域3と印影外領域5とに連続して、所定方向に規則的に配置される複数の画線10によって下地紋が印刷され、下地紋の一部に第一画像20を形成している。第一画像20として5枚の花びらを備えた桜の花を示している。第一画像20は、白抜きによる輪郭によって形成している。
本実施例では、印影領域3に位置する画線10を、印影外領域5に位置する画線10に対して、画線幅を狭くしている。また、印影領域3に位置する第一画像20を形成する画線10を、印影外領域5に位置する第一画像20を形成する画線10に対して、画線ピッチを狭くしている。
印影領域3に位置する画線10を、印影外領域5に位置する画線10に対して、画線幅を狭くすることで、印影外領域5に対して印影領域3の濃度を低下させ、印影を目立たせることができる。
また、印影領域3に位置する第一画像20を形成する画線10は、印影外領域5に位置する第一画像20を形成する画線10に対して、画線幅は狭く、画線ピッチが狭いため、印影自体の視認性を低下させることなく、印影領域3に位置する第一画像20の視認性を高めることができる。
【0017】
図1(c)に示す比較例は、印影領域3に位置する画線10を、印影外領域5に位置する画線10に対して、画線幅を狭くしているが、印影領域3に位置する第一画像20を形成する画線10と、印影外領域5に位置する第一画像20を形成する画線10との画線ピッチは同一としている。
図1(d)に示すように、比較例による
図1(c)と比較すると、印影領域3に位置する第一画像20の視認性が高くなっている。特に、本実施例で示すように、白抜きによる輪郭によって形成される第一画像20での視認性を高める効果が大きい。
【0018】
なお、本実施例では、画線10を直線で示しているが、サイン波、三角波、鋸波、矩形波等の公知の画線とすることもでき、円形状、多角形状、文字形状等の画素又は複数の点を線状に構成したものも本発明においては画線である。
【0019】
図2は本発明の他の実施例による貴重印刷物を示す概念図であり、
図2(a)は本実施例の貴重印刷物を示す平面図、
図2(b)は同貴重印刷物の下地紋を示す要部平面図、
図2(c)は比較例を示す要部平面図、
図2(d)は
図2(b)に示す部分の印影を印刷した状態での要部平面図である。
【0020】
本実施例の貴重印刷物は、例えば、紙幣、パスポート、又は身分証明書等の貴重印刷物及びキャッシュカード等の貴重印刷物であり、基材1には紙やプラスチックが用いられる。本実施例の貴重印刷物は、基材1の表面の少なくとも一部に印刷領域2を備えている。
図2(a)に示すように、印刷領域2には印影領域3を有している。また、
図2(b)に示すように、印影領域3は、印影輪郭4によって印影外領域5と区分されている。印影領域3には、一般には文字を表す印影が印刷される。印影輪郭4は、一般には円形や四角形の輪郭線で表されるが、必ずしも輪郭線のすべてが連続している場合に限らない。
本実施例では、印影領域3と印影外領域5とに連続して、所定方向に規則的に配置される複数の第1画線11によって第1下地紋が印刷され、印影外領域5に、所定方向に規則的に配置される複数の第2画線12によって第2下地紋が印刷されている。第1画線11は直線で形成し、第2画線12は波線で形成している。
本実施例では、第1画線11の端部と第2画線12の端部とを連続させている。従って、不連続による違和感をなくすことができる。
特に、直線で形成している第1画線11と、波線で形成している第2画線12とを連続させることで、連続的なデザイン性を高めることができる。
本実施例では、第1画線11を同一ピッチとして形成し、第1画線11の端部と第2画線12の端部とを連続させているので、第1下地紋の濃度むらをなくすことができる。
なお、第1画線11のピッチ幅を変更することで、第1画線11の端部と第2画線12の端部とを連続させてもよい。
【0021】
図2(c)に示す比較例は、第1画線11の端部と第2画線12の端部とを連続させていないものである。また、
図2(d)に示すように、比較例による
図2(c)と比較すると、直線で形成している第1画線11と、波線で形成している第2画線12とを連続させることで、連続的なデザイン性が高まっている。
【0022】
なお、本実施例では、第1画線11及び第2画線12は、同一ピッチで図示しているが、一部について異なるピッチとすることもできる。
また、本実施例では、第1画線11及び第2画線12は、同一画線幅で図示しているが、一部について異なる画線幅としてもよい。
また、本実施例では、第1画線11を直線で示しているが、サイン波、三角波、鋸波、矩形波等の公知の画線とすることもでき、円形状、多角形状、文字形状等の画素又は点を、線状に構成したものも本発明においては画線である。また、本実施例では、第2画線12を波線で示しているが、波線にはサイン波、三角波、鋸波、矩形波を含み、円形状、多角形状、文字形状等の画素又は複数の点を線状に構成したものであっても本発明においては画線である。また、第1画線11を波線とし、第2画線12を直線としてもよい。