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特開2023-125069ニトリルゴム組成物、およびゴム架橋物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125069
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】ニトリルゴム組成物、およびゴム架橋物
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/02 20060101AFI20230831BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230831BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20230831BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
C08L9/02
C08K3/013
C08K5/10
C08J3/20 CEQ
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028991
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田川 義幸
(72)【発明者】
【氏名】召田 郁哉
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA07
4F070AB10
4F070AB16
4F070AC04
4F070AC05
4F070AC14
4F070AC16
4F070AC22
4F070AC23
4F070AC36
4F070AC40
4F070AC43
4F070AC50
4F070AC71
4F070AE01
4F070AE02
4F070AE03
4F070AE08
4F070FA03
4F070FB06
4F070FB07
4F070FC03
4J002AC012
4J002AC021
4J002AC032
4J002AC071
4J002AC072
4J002AC082
4J002AC092
4J002AC111
4J002BB152
4J002BD122
4J002BG042
4J002CH042
4J002CK022
4J002CP032
4J002DA036
4J002DE076
4J002DE086
4J002DE136
4J002DE146
4J002DE237
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002DJ046
4J002EH096
4J002FD017
4J002FD026
4J002FD140
4J002FD150
4J002GG00
4J002GJ02
4J002GM00
4J002GM01
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】低硬度で、かつ引張強度に優れたゴム架橋物を与えることのできるニトリルゴム組成物を提供すること。
【解決手段】油展ニトリルゴムと、配合用可塑剤と、充填剤と、を含むニトリルゴム組成物であって、前記油展ニトリルゴムは、ニトリルゴム成分と、ゴム添加可塑剤とを含み、前記油展ニトリルゴムにおける前記ゴム添加可塑剤の含有割合が、前記油展ニトリルゴムの前記ニトリルゴム成分100重量部に対して15重量部以上であるニトリルゴム組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油展ニトリルゴムと、配合用可塑剤と、充填剤と、を含むニトリルゴム組成物であって、
前記油展ニトリルゴムは、ニトリルゴム成分と、ゴム添加可塑剤とを含み、
前記油展ニトリルゴムにおける前記ゴム添加可塑剤の含有割合が、前記油展ニトリルゴム中の前記ニトリルゴム成分100重量部に対して15重量部以上であるニトリルゴム組成物。
【請求項2】
前記ゴム添加可塑剤がアジピン酸エーテルエステル系の可塑剤である請求項1に記載のニトリルゴム組成物。
【請求項3】
前記ニトリルゴム組成物における前記ゴム添加可塑剤および前記配合用可塑剤の合計の含有割合が、前記油展ニトリルゴム中の前記ニトリルゴム成分100重量部に対して18重量部以上である請求項1または2に記載のニトリルゴム組成物。
【請求項4】
前記油展ニトリルゴム中の前記ニトリルゴム成分が、アクリロニトリル、ブタジエン、および、イソプレンとの共重合体である請求項1~3のいずれかに記載のニトリルゴム組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のニトリルゴム組成物を架橋することにより得られるゴム架橋物であって、
デュロメータ硬さ試験により測定される硬さが50以下であるゴム架橋物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニトリルゴム組成物に関し、さらに詳しくは、低硬度で、かつ引張強度に優れたゴム架橋物を与えることのできるニトリルゴム組成物、および、このようなニトリルゴム組成物を用いて得られるゴム架橋物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ニトリルゴム(アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム)は、耐油性に優れるゴムとして知られており、その加硫物は主にホース、ベルト、ガスケット、パッキン、シール、ロールなど産業用・自動車用の各種油類まわりのゴム製品の材料として用いられている。
【0003】
このようなニトリルゴムの組成物として、たとえば、特許文献1には、アクリロニトリル-ブタジエンゴムと、シリカと、エーテルエステル系可塑剤と、架橋剤とからなるニトリルゴム組成物が開示されている。特許文献1に記載のニトリルゴム組成物によれば、耐寒性と耐熱性に優れ、圧縮永久歪みが小さく、かつ、耐油性に優れたゴム架橋物が得られている。
【0004】
ここで、ニトリルゴムのゴム架橋物には、その用途に応じて、耐油性に加え、低硬度であることが求められる。しかしながら、特許文献1に記載のニトリルゴム組成物では、ゴム架橋物の低硬度化を図るために可塑剤の含有量を増やした場合に、得られるゴム架橋物の引張強度が低下するおそれがあるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2014/024698号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、低硬度で、かつ引張強度に優れたゴム架橋物を与えることのできるニトリルゴム組成物、および、このようなニトリルゴム組成物を用いて得られるゴム架橋物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、特定量のゴム添加可塑剤を含有する油展ニトリルゴムと、配合用可塑剤と、充填剤とを含有するニトリルゴム組成物を用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、油展ニトリルゴムと、配合用可塑剤と、充填剤と、を含むニトリルゴム組成物であって、前記油展ニトリルゴムは、ニトリルゴム成分と、ゴム添加可塑剤とを含み、前記油展ニトリルゴムにおける前記ゴム添加可塑剤の含有割合が、前記油展ニトリルゴム中の前記ニトリルゴム成分100重量部に対して15重量部以上であるニトリルゴム組成物が提供される。
【0009】
本発明のニトリルゴム組成物は、前記ゴム添加可塑剤がアジピン酸エーテルエステル系の可塑剤であることが好ましい。
【0010】
本発明のニトリルゴム組成物は、前記ニトリルゴム組成物における前記ゴム添加可塑剤および前記配合用可塑剤の合計の含有割合が、前記油展ニトリルゴム中の前記ニトリルゴム成分100重量部に対して18重量部以上であることが好ましい。
【0011】
本発明のニトリルゴム組成物は、前記油展ニトリルゴム中の前記ニトリルゴム成分が、アクリロニトリル、ブタジエン、および、イソプレンとの共重合体であることが好ましい。
【0012】
また、本発明によれば、前記ニトリルゴム組成物を架橋することにより得られ、デュロメータ硬さ試験により測定される硬さが50以下であるゴム架橋物が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低硬度で、かつ引張強度に優れたゴム架橋物を与えることができるニトリルゴム組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<ニトリルゴム組成物>
本発明のニトリルゴム組成物は、油展ニトリルゴムと、配合用可塑剤と、充填剤とを含有する。
【0015】
<油展ニトリルゴム>
油展ニトリルゴムは、ニトリルゴム成分と、ゴム添加可塑剤とを含有する。
ニトリルゴム成分は、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位と、共役ジエン単量体単位とを含有する。
【0016】
α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を形成するα,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、特に限定されないが、ニトリル基を有し、炭素数が、好ましくは3~18であるエチレン性不飽和化合物を用いることができる。このようなα,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、たとえば、アクリロニトリル;α-クロロアクリロニトリル、α-ブロモアクリロニトリルなどのα-ハロゲノアクリロニトリル;メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどのα-アルキルアクリロニトリル;などが挙げられる。これらのなかでも、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルが特に好ましい。なお、これらのα,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
油展ニトリルゴムに含まれるニトリルゴム成分中における、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、15~48重量%であり、好ましくは20~45重量%、より好ましくは25~40重量%、特に好ましくは30~40重量%である。α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物の耐油性が低下してしまう。一方、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量が多すぎると、油展ニトリルゴムと配合用可塑剤との親和性が悪くなり、得られるゴム組成物やゴム架橋物から配合用可塑剤が表面に浮き出てしまう(ブリードする)おそれがある。
【0018】
共役ジエン単量体単位を形成する共役ジエン単量体としては、特に限定されないが、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、クロロプレンなどの炭素数4~6の共役ジエン単量体が好ましく、1,3-ブタジエンおよびイソプレンがより好ましく、1,3-ブタジエンまたは1,3-ブタジエンおよびイソプレンの組み合わせがさらに好ましく、形状保持性に一層優れたニトリルゴム組成物を得ることができることから、1,3-ブタジエンおよびイソプレンの組み合わせが特に好ましい。なお、これらの共役ジエン単量体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
共役ジエン単量体単位を形成するために、1,3-ブタジエンとイソプレンとを組み合わせて用いる場合の、1,3-ブタジエン単位とイソプレン単位との重量比(1,3-ブタジエン単位/イソプレン単位)としては、好ましくは50/50~90/10であり、より好ましくは60/40~90/10であり、特に好ましくは70/30~85/15である。
【0020】
油展ニトリルゴムに含まれるニトリルゴム成分中における、共役ジエン単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは45~85重量%、より好ましくは55~80重量%、特に好ましくは60~75重量%である。共役ジエン単量体単位の含有量を上記範囲にすることにより、得られるゴム架橋物を、良好なゴム弾性を保ちながら、機械的特性に優れたものとすることができる。
【0021】
油展ニトリルゴムに含まれるニトリルゴム成分は、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位および共役ジエン単量体単位に加えて、これらの単量体単位を形成する単量体と共重合可能なその他の単量体の単位を含有していてもよい。
【0022】
このようなその他の単量体としては、α-オレフィン単量体、非共役ジエン単量体、芳香族ビニル単量体、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸およびそのエステル、α,β-エチレン性不飽和多価カルボン酸ならびにそのモノエステル、多価エステルおよび無水物、架橋性単量体、フッ素含有ビニル単量体、共重合性老化防止剤などが挙げられる。
【0023】
α-オレフィン単量体としては、好ましくは炭素数が2~12のものであり、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどが例示される。
【0024】
非共役ジエン単量体としては、炭素数が5~12のものが好ましく、たとえば、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエンなどが挙げられる。
【0025】
芳香族ビニル単量体としては、たとえば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられる。
【0026】
α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などが好ましく挙げられる。
α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの炭素数1~18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(「メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステル」の略記。以下同様。);アクリル酸メトキシメチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシプロピル、アクリル酸メトキシブチル、アクリル酸エトキシドデシル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシブチル、メタクリル酸エトキシペンチルなどの炭素数2~18のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸α-シアノエチル、メタクリル酸α-シアノエチル、メタクリル酸シアノブチルなどの炭素数2~12のシアノアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルなどの炭素数1~12のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸テトラフルオロプロピルなどの炭素数1~12のフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;などが挙げられる。
【0027】
α,β-エチレン性不飽和多価カルボン酸としては、たとえば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。
α,β-エチレン性不飽和多価カルボン酸モノエステルとしては、たとえば、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノn-ブチルなどのマレイン酸モノアルキルエステル;マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘプチルなどのマレイン酸モノシクロアルキルエステル;マレイン酸モノメチルシクロペンチル、マレイン酸モノエチルシクロヘキシルなどのマレイン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノn-ブチルなどのフマル酸モノアルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘプチルなどのフマル酸モノシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチルシクロペンチル、フマル酸モノエチルシクロヘキシルなどのフマル酸モノアルキルシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル、シトラコン酸モノn-ブチルなどのシトラコン酸モノアルキルエステル;シトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル、シトラコン酸モノシクロヘプチルなどのシトラコン酸モノシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチルシクロペンチル、シトラコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのシトラコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、イタコン酸モノn-ブチルなどのイタコン酸モノアルキルエステル;イタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、イタコン酸モノシクロヘプチルなどのイタコン酸モノシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチルシクロペンチル、イタコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのイタコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;などが挙げられる。
α,β-エチレン性不飽和多価カルボン酸多価エステルとしては、たとえば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジn-ブチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジn-ブチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジn-ブチルなどが挙げられる。
α,β-エチレン性不飽和多価カルボン酸無水物としては、たとえば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。
【0028】
架橋性単量体としては、たとえば、ジビニルベンゼンなどのジビニル化合物;エチレンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリル酸エステル類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどのトリメタクリル酸エステル類;などの多官能エチレン性不飽和単量体のほか、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N’-ジメチロール(メタ)アクリルアミドなどの自己架橋性単量体などが挙げられる。
【0029】
フッ素含有ビニル単量体としては、フルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、o-トリフルオロメチルスチレン、ペンタフルオロ安息香酸ビニル、ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
【0030】
共重合性老化防止剤としては、たとえば、N-(4-アニリノフェニル)アクリルアミド、N-(4-アニリノフェニル)メタクリルアミド、N-(4-アニリノフェニル)シンナムアミド、N-(4-アニリノフェニル)クロトンアミド、 N-フェニル-4-(3-ビニルベンジルオキシ)アニリン、N-フェニル-4-(4-ビニルベンジルオキシ)アニリンなどが挙げられる。
【0031】
これらの共重合可能なその他の単量体として、複数種類を併用してもよい。
油展ニトリルゴムに含まれるニトリルゴム成分中における、その他の単量体の単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。
【0032】
本発明で用いられる油展ニトリルゴムは、上記ニトリルゴム成分に対して、あらかじめ添加されたゴム添加可塑剤を含有する。すなわち、本発明で用いられる油展ニトリルゴムは、ゴム添加可塑剤を油展油として含有する油展ゴムである。ゴム添加可塑剤としては、ゴム用の可塑剤として一般的に用いられているものであればよく、特に限定されないが、ジカルボン酸とエーテル結合含有アルコールとのエステル化合物であることが好ましい。油展ニトリルゴムに、予め添加するゴム添加可塑剤として、ジカルボン酸とエーテル結合含有アルコールとのエステル化合物を含有することから、本発明のニトリルゴム組成物は、低硬度で、かつ、優れた引張強度を有するゴム架橋物を得ることができる。
【0033】
エステル化合物を形成するジカルボン酸としては、下記一般式(1)で表されるジカルボン酸が挙げられる。
HOOCRCOOH (1)
(式中のRは炭素数2~10のアルキレン基を表し、COOHはカルボキシ基を表す。)
【0034】
式(1)中のRとしては、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基であってよいが、直鎖状のアルキレン基が好ましい。また、アルキレン基の炭素数は、好ましくは2~10であり、より好ましくは4~8である。
【0035】
エステル化合物を形成するジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸などが挙げられ、中でもアジピン酸が好ましい。
【0036】
エステル化合物を形成するエーテル結合含有アルコールとしては、一価のアルコールが好ましい。また、エーテル結合含有アルコールの炭素数は、好ましくは4~10であり、より好ましくは6~8である。エーテル結合含有アルコールに含有されるエーテル結合の数は、好ましくは1~4、より好ましくは1~2である。
【0037】
エステル化合物としては、ジカルボン酸とエーテル結合含有アルコールとを任意に組み合わせて得られるものを用いることができる。通常、モノエステル化合物およびジエステル化合物が用いられるが、好ましいのはジエステル化合物である。エステル化合物としては、好ましくはアジピン酸エーテルエステル化合物が用いられる。すなわち、ゴム添加可塑剤としては、好ましくはアジピン酸エーテルエステル系の可塑剤が用いられる。
【0038】
油展ニトリルゴム中のゴム添加可塑剤の含有量は、ニトリルゴム成分100重量部に対して、15重量部以上である。油展ニトリルゴム中のゴム添加可塑剤の含有量の上限は、特に限定されないが、好ましくは100重量部以下であり、より好ましくは50重量部以下であり、さらに好ましくは40重量部以下である。ゴム添加可塑剤の含有量が少なすぎると、得られるニトリルゴム組成物の加工性(添加剤の混合容易性)が劣るため、得られるニトリルゴム組成物の成形性に劣り、得られるゴム架橋物の引張応力が劣る。また、ゴム添加可塑剤の含有量が多すぎると、得られるニトリルゴム組成物の形状保持性が劣る。
【0039】
油展ニトリルゴムのムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、好ましくは10~200、より好ましくは20~150、さらに好ましくは40~100である。油展ニトリルゴムのムーニー粘度を上記範囲とすることにより、良好な常態物性を有するゴム架橋物を与えることのできるニトリルゴム組成物を得ることができる。
【0040】
<配合用可塑剤>
本発明のニトリルゴム組成物は、上記した油展ニトリルゴムに、配合用可塑剤および充填剤を含有するものである。すなわち、本発明のニトリルゴム組成物は、上記した油展ニトリルゴムに含まれるゴム添加可塑剤に加えて、配合用可塑剤をさらに配合し、かつ、これに充填剤を配合することにより得られるものである。
【0041】
配合用可塑剤は、ゴム用の可塑剤として一般的に用いられているものであればよく、特に限定されないが、ジカルボン酸とエーテル結合含有アルコールとのエステル化合物であることが好ましい。配合用可塑剤として用いられる、ジカルボン酸とエーテル結合含有アルコールとのエステル化合物としては、上述したゴム添加可塑剤として用いられるジカルボン酸とエーテル結合含有アルコールとのエステル化合物として例示したものと同様のものを選択することができる。
【0042】
本発明のニトリルゴム組成物中における、配合用可塑剤の含有量は、特に限定されないが、油展ニトリルゴム中に含まれるニトリルゴム成分100重量部に対して、好ましくは3重量部以上であり、より好ましくは10重量部以上であり、さらに好ましくは20重量部以上である。
【0043】
本発明のニトリルゴム組成物中に含まれるゴム添加可塑剤および配合用可塑剤の合計の含有量は、油展ニトリルゴム中に含まれるニトリルゴム成分100重量部に対して、18重量部以上であり、好ましくは30重量部以上であり、より好ましくは45重量部以上である。ゴム添加可塑剤および配合用可塑剤の合計の含有量の上限は、特に限定されないが、油展ニトリルゴム中に含まれるニトリルゴム成分100重量部に対して、好ましくは110重量部以下であり、より好ましくは85重量部以下であり、さらに好ましくは70重量部以下である。
【0044】
<充填剤>
また、本発明のニトリルゴム組成物は、上記した油展ニトリルゴムおよび配合用可塑剤に加えて、充填剤を含有する。充填剤としては、ゴム分野において通常用いられている充填剤であれば何でもよく特に限定されず、有機充填剤および無機充填剤のいずれをも用いることができるが、その配合効果が高いという点より、無機充填剤が好ましい。
【0045】
無機充填剤としては、ゴムの配合用に通常用いられているものであればよく、たとえば、カーボンブラック、シリカ、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化アルミニウムマグネシウム、酸化チタン、カオリン、パイロフィライト、ベントナイト、タルク、アタパルジャイト、ケイ酸マグネシウムカルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、結晶性アルミノケイ酸塩などが挙げられる。これらのなかでも、好ましくはカーボンブラック、シリカ、クレーが用いられ、より好ましくはシリカが用いられる。無機充填剤は、1種単独で、または複数種併せて用いることができる。
【0046】
カーボンブラックとしては、ゴムの配合用に通常用いられているものであればよく、たとえば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、およびグラファイトなどが挙げられる。
【0047】
シリカとしては、石英粉末、珪石粉末などの天然シリカ;無水珪酸(シリカゲル、アエロジルなど)、含水珪酸などの合成シリカ;などが挙げられ、これらの中でも、合成シリカが好ましい。またこれらシリカはカップリング剤等で表面処理されたものであってもよい。
【0048】
クレーとしては、含水ケイ酸アルミニウムを主成分とする天然鉱物であればよく、特に限定されないが、モンモリロナイト、パイロフィライト、カオリナイト、ハロイサイトおよびセリサイトなどが挙げられる。
【0049】
本発明のニトリルゴム組成物中の充填剤の含有量は、油展ニトリルゴム中に含まれるニトリルゴム成分100重量部に対して、好ましくは1~200重量部、より好ましくは15~150重量部、特に好ましくは30~100重量部である。
【0050】
また、本発明のニトリルゴム組成物には、油展ニトリルゴム、配合用可塑剤および可塑剤に加えて、ゴム分野において通常使用される配合剤、たとえば、炭酸カルシウム、タルクやクレーなどの充填剤、酸化亜鉛や酸化マグネシウムなどの金属酸化物、メタクリル酸亜鉛やアクリル酸亜鉛などのα,β-エチレン性不飽和カルボン酸金属塩、共架橋剤、架橋助剤、架橋遅延剤、酸化防止剤、光安定剤、一級アミンなどのスコーチ防止剤、ジエチレングリコールなどの活性剤、カップリング剤、加工助剤、滑剤、粘着剤、潤滑剤、難燃剤、防黴剤、受酸剤、帯電防止剤、顔料、発泡剤などを配合することができる。これらの配合剤の配合量は、本発明の目的や効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、配合目的に応じた量を配合することができる。
【0051】
<油展ニトリルゴム以外のゴム>
本発明のニトリルゴム組成物には、上記した油展ニトリルゴム以外のゴムを配合してもよい。このようなゴムとしては、可塑剤を含有しない非油展ニトリルゴム、アクリルゴム、エチレン-アクリル酸共重合体ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴム、エチレン-プロピレン共重合体ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴムなどが挙げられる。
【0052】
油展ニトリルゴム以外のゴムを配合する場合における、ニトリルゴム組成物中の油展ニトリルゴム以外のゴムの配合量は、油展ニトリルゴム中に含まれるニトリルゴム成分100重量部に対して、好ましくは230重量部以下、より好ましくは100重量部以下、さらに好ましくは65重量部以下である。
【0053】
油展ニトリルゴム以外のゴムを配合する場合における、ニトリルゴム組成物中の配合用可塑剤の含有量は、特に限定されないが、油展ニトリルゴムおよび油展ニトリルゴム以外のゴムに含まれる全ゴム成分100重量部に対して、好ましくは10重量部以上、より好ましくは20重量部以上である。
【0054】
油展ニトリルゴム以外のゴムを配合する場合における、ニトリルゴム組成物中に含まれるゴム添加可塑剤および配合用可塑剤の合計の含有量は、油展ニトリルゴムおよび油展ニトリルゴム以外のゴムに含まれる全ゴム成分100重量部に対して、18重量部以上であり、好ましくは30重量部以上であり、より好ましくは45重量部以上である。ゴム添加可塑剤および配合用可塑剤の合計の含有量の上限は、特に限定されないが、油展ニトリルゴム中に含まれるニトリルゴム成分100重量部に対して、好ましくは110重量部以下であり、より好ましくは85重量部以下であり、さらに好ましくは70重量部以下である。
【0055】
本発明のニトリルゴム組成物は、上記した各成分を好ましくは非水系で混合することで調製される。本発明のニトリルゴム組成物を調製する方法に限定はないが、通常、架橋剤および熱に不安定な成分を除いた成分を、バンバリーミキサ、インターミキサ、ニーダーなどの混合機で混練することにより調製できる。混練は、通常、10~200℃、好ましくは30~180℃の温度で、1分間~1時間、好ましくは1分間~30分間行う。
【0056】
<ゴム架橋物>
本発明のゴム架橋物は、上述した本発明のニトリルゴム組成物を架橋してなるものである。
本発明のゴム架橋物は、本発明のニトリルゴム組成物をオープンロールなどに移して架橋剤や熱に不安定な成分を加えて混錬して得られた架橋性ゴム組成物を用い、所望の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。混練は、通常、10~90℃、好ましくは20~60℃の温度で、1分間~1時間、好ましくは1分間~30分間行う。
この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10~200℃、好ましくは25~120℃である。架橋温度は、通常、100~200℃、好ましくは130~190℃であり、架橋時間は、通常、1分~24時間、好ましくは2分~1時間である。
【0057】
本発明のニトリルゴムと架橋剤とを混錬して得られる架橋性ゴム組成物は、配合物・ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が、好ましくは5~80、より好ましくは10~60、さらに好ましくは15~40である。架橋性ゴム組成物の配合物・ムーニー粘度を上記範囲とすることにより、良好な常態物性が得られる。
【0058】
架橋剤としては、特に限定されず、硫黄系架橋剤、有機過酸化物系架橋剤が挙げられるが、油展ニトリルゴムに含まれるニトリルゴム成分が、カルボキシル基を有する単量体単位を有する場合には、ポリアミン系架橋剤を用いることもできる。架橋剤としては、なかでも、様々な架橋成形方法を取り得るという点で硫黄系架橋剤が好ましい。
【0059】
硫黄系架橋剤としては、粉末硫黄、硫黄華、沈降性硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄などの硫黄;塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、ジベンゾチアジルジスルフィド、N,N’-ジチオ-ビス(ヘキサヒドロ-2H-アゼノピン-2)、含リンポリスルフィド、高分子多硫化物などの含硫黄化合物;テトラメチルチウラムジスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、2-(4’-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなどの硫黄供与性化合物;などが挙げられる。これらは一種単独でまたは複数種併せて用いることができる。
【0060】
有機過酸化物系架橋剤としては、ジクミルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、パラメンタンヒドロペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,4-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ジ-t-ブチルペルオキシ-3,3-トリメチルシクロヘキサン、4,4-ビス-(t-ブチル-ペルオキシ)-n-ブチルバレレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルペルオキシヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルペルオキシヘキシン-3、1,1-ジ-t-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、p-クロロベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルペルオキシベンゾエートなどが挙げられる。これらは一種単独でまたは複数種併せて用いることができる。
【0061】
ポリアミン系架橋剤としては、2つ以上のアミノ基を有する化合物、または、架橋時に2つ以上のアミノ基を有する化合物の形態になるもの、であれば特に限定されないが、脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素の複数の水素原子が、アミノ基またはヒドラジド構造(-CONHNHで表される構造、COはカルボニル基を表す。)で置換された化合物および架橋時にその化合物の形態になるものが好ましい。その具体例としては、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、テトラメチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミンシンナムアルデヒド付加物、ヘキサメチレンジアミンジベンゾエート塩などの脂肪族多価アミン類;2,2-ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、4,4’-メチレンジアニリン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4’-メチレンビス(o-クロロアニリン)などの芳香族多価アミン類;イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどのヒドラジド構造を2つ以上有する化合物などが挙げられる。これらは一種単独でまたは複数種併せて用いることができる。
【0062】
本発明のニトリルゴム組成物中における、架橋剤の含有量は特に限定されないが、油展ニトリルゴム中に含まれるニトリルゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1~10重量部、より好ましくは0.2~5重量部である。
【0063】
架橋剤として硫黄系架橋剤を使用する場合は、架橋助剤として、亜鉛華、グアニジン系架橋促進剤、チアゾール系架橋促進剤、チウラム系架橋促進剤、ジチオカルバミン酸塩系架橋促進剤などを併用することが好ましい。
【0064】
また、架橋剤として有機過酸化物系架橋剤を使用する場合は、架橋助剤として、トリアリルシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、N,N’-m-フェニレンビスマレイミドなどを併用することが好ましい。
【0065】
また、架橋剤としてポリアミン系架橋剤を使用する場合は、架橋助剤として、下記一般式(2)で表される化合物や、環状アミジン構造を有する塩基性架橋促進剤、グアニジン系塩基性架橋促進剤、アルデヒドアミン系塩基性架橋促進剤などの塩基性架橋促進剤を併用することが好ましい。
-NH-R (2)
(上記一般式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、または、置換基を有していてもよい炭素数5~12のシクロアルキル基である。)
【0066】
架橋助剤は、単独で使用してもよいし、また、複数種を併用してもよく、クレー、炭酸カルシウム、シリカなどに分散させ、加工性を改良したものを使用してもよい。架橋助剤の使用量は特に限定されず、ゴム架橋物の用途、要求性能、架橋剤の種類、架橋助剤の種類などに応じて決めればよい。
【0067】
また、架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
加熱方法としては、プレス加熱、スチーム加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる一般的な方法を適宜選択すればよい。
【0068】
このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、上述した本発明のニトリルゴム組成物を架橋して得られるものであるため、低硬度でありながら、引張強度に優れるものである。
【0069】
このため、本発明のゴム架橋物は、このような特性を活かし、O-リング、パッキン、ダイアフラム、オイルシール、シャフトシール、ベアリングシール、ウェルヘッドシール、ショックアブソーバシール、ロングライフクーラント(LLC)など冷却液の密封用シールであるクーラントシールやオイルクーラントシール、空気圧機器用シール、エアコンディショナの冷却装置や空調装置の冷凍機用コンプレッサに使用されるフロン若しくはフルオロ炭化水素または二酸化炭素の密封用シール、精密洗浄の洗浄媒体に使用される超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素の密封用シール、転動装置(転がり軸受、自動車用ハブユニット、自動車用ウォーターポンプ、リニアガイド装置およびボールねじ等)用のシール、バルブおよびバルブシート、BOP(Blow Out Preventer)、プラターなどの各種シール材;インテークマニホールドとシリンダヘッドとの連接部に装着されるインテークマニホールドガスケット、シリンダブロックとシリンダヘッドとの連接部に装着されるシリンダヘッドガスケット、ロッカーカバーとシリンダヘッドとの連接部に装着されるロッカーカバーガスケット、オイルパンとシリンダブロックあるいはトランスミッションケースとの連接部に装着されるオイルパンガスケット、正極、電解質板および負極を備えた単位セルを挟み込む一対のハウジング間に装着される燃料電池セパレーター用ガスケット、ハードディスクドライブのトップカバー用ガスケットなどの各種ガスケット;印刷用ロール、製鉄用ロール、製紙用ロール、工業用ロール、事務機用ロールなどの各種ロール;平ベルト(フィルムコア平ベルト、コード平ベルト、積層式平ベルト、単体式平ベルト等)、Vベルト(ラップドVベルト、ローエッジVベルト等)、Vリブドベルト(シングルVリブドベルト、ダブルVリブドベルト、ラップドVリブドベルト、背面ゴムVリブドベルト、上コグVリブドベルト等)、CVT用ベルト、タイミングベルト、歯付ベルト、コンベアーベルト、などの各種ベルト;燃料ホース、ターボエアーホース、オイルホース、ラジェターホース、ヒーターホース、ウォーターホース、バキュームブレーキホース、コントロールホース、エアコンホース、ブレーキホース、パワーステアリングホース、エアーホース、マリンホース、ライザー、フローラインなどの各種ホース;CVJブーツ、プロペラシャフトブーツ、等速ジョイントブーツ、ラックアンドピニオンブーツなどの各種ブーツ;クッション材、ダイナミックダンパ、ゴムカップリング、空気バネ、防振材、クラッチフェーシング材などの減衰材ゴム部品;ダストカバー、自動車内装部材、タイヤ、被覆ケーブル、靴底、電磁波シールド、フレキシブルプリント基板用接着剤等の接着剤、燃料電池セパレーターの他、エレクトロニクス分野など幅広い用途に使用することができる。これらの中でも、ロール、ベルト、ホースに好適に使用できる。さらにこれらの中でも、特にロールに好適である。
【実施例0070】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。以下において、特記しない限り「部」は重量基準である。なお、試験、評価は以下によった。
【0071】
<常態物性(引張強度、伸び、硬さ)>
ニトリルゴム組成物と架橋剤を混錬して得られた架橋性ゴム組成物を、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、プレス圧10MPaで加圧しながら150℃で60分間プレス成形してシート状のゴム架橋物を得た。次いで、得られたシート状のゴム架橋物をJIS3号形ダンベルで打ち抜いて試験片を作製した。そして、得られた試験片を用いて、JIS K6251:2017に従い、ゴム架橋物の引張強度、および破断時の伸びをそれぞれ測定した。また、デュロメータ硬さ試験機(タイプA)を用いて、JIS K6253-3に従い、ゴム架橋物の硬さを測定した。
【0072】
<実施例1>
油展ニトリルゴム(商品名「Nipol DN230」、日本ゼオン社製、アクリロニトリル単位含有量:29重量%、アジピン酸エーテルエステル系可塑剤含有量:17重量%)100部に対し、ステアリン酸1部、酸化亜鉛5部、シリカ(商品名「カープレックス#1120」、エボニック社製、無機充填剤)35部、酸化チタン(商品名「TITONE A-110」、堺化学工業社製)8部、配合用可塑剤(商品名「アデカサイザー RS-107」、ADEKA社製)25部、シランカップリング剤(商品名「A-189」、モメンティブ社製)0.5部、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体(商品名「ノクラック224」、大内新興化学工業社製、老化防止剤)1部を配合して混錬した。次いで、得られた混合物を50℃のロールに移して、粉末硫黄(325メッシュ)0.5部、テトラメチルチウラムジスルフィド(商品名「ノクセラーTT」、大内新興化学工業社製、加硫促進剤)1.5部、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(商品名「ノクセラーCZ」、大内新興化学工業社製、加硫促進剤)1.5部を添加して混錬した。得られた架橋性ゴム組成物を用いて、上記方法に従い、常態物性(引張強度、伸び、硬さ)の測定を行った。結果を表1に示す。
【0073】
<実施例2>
粉末硫黄の含有量を1.5部に変更し、加硫促進剤として、1,3-ジフェニルグアニジン(商品名「ノクセラーD」、大内新興化学工業社製)0.25部、およびジベンゾチアジルジスルフィド(商品名「ノクセラーDM」、大内新興化学工業社製)1.5部を用いた以外は、実施例1と同様にして、ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
<比較例1>
油展ニトリルゴム(Nipol DN230)に代えて、ニトリルゴム(商品名「Nipol 3350」、日本ゼオン社製、アクリロニトリル単位含有量:33重量%、可塑剤を含有しない)を用い、配合用可塑剤の含有量を50部に変更し、その他の配合剤の含有量を表1に記載の量に変更した以外は、実施例1と同様にしてニトリルゴム組成物を得た。そして、粉末硫黄および架橋促進剤の量を表1に記載の量に変更した以外は、実施例1と同様にして架橋性ゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0075】
<比較例2>
油展ニトリルゴム(Nipol DN230)に代えて、ニトリルゴム(商品名「Nipol 3350」、日本ゼオン社製、アクリロニトリル単位含有量:33重量%、可塑剤を含有しない)を用い、配合用可塑剤の含有量を50部に変更し、その他の配合剤の含有量を表1に記載の量に変更した以外は、実施例2と同様にしてニトリルゴム組成物を得た。そして、粉末硫黄および架橋促進剤の量を表1に記載の量に変更した以外は、実施例2と同様にして架橋性ゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
<実施例と比較例の評価>
表1より、油展ニトリルゴムと、配合用可塑剤と、充填剤と、を含むニトリルゴム組成物であって、油展ニトリルゴムに含有されるゴム添加可塑剤の含有量がニトリルゴム成分100重量部に対して15重量部以上であるニトリルゴム組成物によれば、得られるゴム架橋物を、低硬度としながら、引張強度および伸びに優れたものとすることができた(実施例1,2)。
一方、油展ニトリルゴムに代えて、可塑剤を含有しないニトリルゴムを用いた場合は、得られるゴム架橋物の引張強度および伸びに劣る結果となった(比較例1,2)。
【0078】
<実施例3~49>
表2~6に示す配合にて、ニトリルゴム組成物を得て、上記常態物性の評価と同様にして、シート状のゴム架橋物を得た。
なお、実施例3~49においては、各表に示すニトリルゴムと、配合剤とを各表に示す量にて配合して、50℃で混合した後、得られたニトリルゴム組成物を50℃のロールに移して、各表に示す架橋剤・架橋促進剤を配合して混錬した。
実施例3~49に係るニトリルゴム組成物も、油展ニトリルゴムと、配合用可塑剤と、充填剤とを含有するため、得られたゴム架橋物は、実施例1と同様に、低硬度でありながら、引張強度および伸びに優れたものであると考えられる。
【0079】
各表に示すゴムおよび配合剤は以下の通りである。
・Nipol DN230:油展ニトリルゴム(商品名「Nipol DN230」、日本ゼオン社製、アクリロニトリル単位含有量:29重量%、アジピン酸エーテルエステル系可塑剤含有量:17重量%)
・Nipol DN3350:ニトリルゴム(商品名「Nipol 3350」、日本ゼオン社製、アクリロニトリル単位含有量:33重量%、可塑剤を含有しない)
・シースト S:カーボンブラック(商品名「シースト S」、東海カーボン社製、無機充填剤)
・シースト SO:カーボンブラック(商品名「シースト SO」、東海カーボン社製、無機充填剤)
・Nipsil VN3:シリカ(商品名「Nipsil VN3」、東ソー・シリカ社製、BET比表面積:200m/g)
・炭酸カルシウム(商品名「シルバーW」、白石カルシウム社製、無機充填剤)
・クラウンクレー:クレー(商品名「ST-CROWN」、白石カルシウム社製、無機充填剤)
・酸化チタン(商品名「TITONE A-110」、堺化学工業社製、無機充填剤)
・アデカサイザー RS-107:可塑剤(商品名「アデカサイザー RS-107」、ADEKA社製)
・A-189:シランカップリング剤(商品名「A-189」、モメンティブ社製)
・A-172:シランカップリング剤(商品名「A-172」、モメンティブ社製)
・ノクラック224:2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体(商品名「ノクラック224」、大内新興化学工業社製、老化防止剤)
・ノクセラーD:1,3-ジフェニルグアニジン(商品名「ノクセラーD」、大内新興化学工業社製、加硫促進剤)
・ノクセラーDM:ジベンゾチアジルジスルフィド(商品名「ノクセラーDM」、大内新興化学工業社製、加硫促進剤)
・ノクセラーTT:テトラメチルチウラムジスルフィド(商品名「ノクセラーTT」、大内新興化学工業社製、加硫促進剤)1.5部
・ノクセラーCZ:N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(商品名「ノクセラーCZ」、大内新興化学工業社製、加硫促進剤)
・パークミルD-40:ジクミルペルオキシド(商品名「パークミルD-40」、日油社製、過酸化物架橋剤)
・TMPT:トリメチロールプロパントリメタクリレート(商品名「TMPT」、新中村化学社製、架橋助剤)
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
【表5】
【0084】
【表6】