(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125434
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】スピネル型マンガン酸リチウム及びその製造方法並びにその用途
(51)【国際特許分類】
C01G 45/12 20060101AFI20230831BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20230831BHJP
【FI】
C01G45/12
H01M4/505
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029513
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直人
(72)【発明者】
【氏名】阪口 雄哉
(72)【発明者】
【氏名】谷口 諄
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB01
4G048AB04
4G048AC06
4G048AD03
4G048AD06
4G048AE05
5H050AA02
5H050AA10
5H050BA17
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB11
5H050CB12
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA14
(57)【要約】
【課題】 充放電特性に優れ、特に高温における充放電特性に優れるスピネル型マンガン酸リチウム及びリチウムイオン二次電池を提供する。
【解決手段】 リン化合物を含有し、化学式Li
1+XMn
2-X-YM
YO
4(式中、0.02≦X≦0.20、0.05≦Y≦0.30であり、MはAlまたはMgである。)で表されるスピネル型マンガン酸リチウムであって、リン化合物のBET比表面積が10m
2/g以上80m
2/g以下であるスピネル型マンガン酸リチウムである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン化合物を含有し、化学式Li1+XMn2-X-YMYO4(式中、0.02≦X≦0.20、0.05≦Y≦0.30であり、MはAlまたはMgである。)で表されるスピネル型マンガン酸リチウムであって、前記リン化合物のBET比表面積が10m2/g以上80m2/g以下であるスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項2】
前記リン化合物の含有量が0.1質量%以上10質量%以下である請求項1に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項3】
BET比表面積が0.2m2/g以上1.5m2/g以下である請求項1又は2に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項4】
二次粒子の平均粒子径が4.0μm以上20.0μm以下である請求項1乃至3のいずれかの項に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項5】
SO4の含有量が0.8質量%以下である請求項1乃至4のいずれかの項に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項6】
Naの含有量が3000質量ppm以下である請求項1乃至5のいずれかの項に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項7】
マンガン源、リチウム源、並びに、アルミニウム及びマグネシウムの少なくともいずれかを含む金属源、を含む組成物を750℃以上970℃以下で焼成して焼成物を得る焼成工程と、該焼成物にリン化合物を含有させるリン化合物含有工程と、を有する、請求項1乃至6のいずれかの項に記載のスピネル型マンガン酸リチウムの製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかの項に記載のスピネル型マンガン酸リチウムを含む電極。
【請求項9】
請求項8に記載の電極を含むリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スピネル型マンガン酸リチウム及びその製造方法並びにその用途に関するものであり、より詳しくは、リン化合物を含有したスピネル型マンガン酸リチウム及びその製造方法、並びにリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池はエネルギー密度が高いことから、携帯電話等の小型の電子機器に用いる電池として幅広く使用されている。最近では、定置用や車載用といった大型で大容量と高出力が必要とされる用途への適用が進められており、更なる高性能化が期待されている。
【0003】
現在のリチウムイオン二次電池の正極材料として、携帯電話等の民生用小型電池には主にコバルト系材料(LiCoO2)が、定置用や車載用にはニッケル系材料(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2)やニッケル-コバルト-マンガン三元系材料(LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2等)が主に使用されている。しかし、コバルト原料やニッケル原料は埋蔵量が少なく高価であり、多量の確保が難しいことに加え、出力特性があまり高くない。
【0004】
一方、マンガン系材料の一つであるスピネル型マンガン酸リチウムは、原料のマンガンが安価かつ豊富に存在するため多量に入手可能であり、また、安全性に優れることから、大型電池に適した材料の一つである。
【0005】
しかしながら、スピネル型マンガン酸リチウムは高温安定性、すなわち、高温における電池特性、特に保存特性や充放電特性に問題があり、この課題の解決が検討されていた。例えば、特許文献1及び特許文献2では、いずれもリン酸塩を含有したスピネル型マンガン酸リチウムが提案されているが、高温における電池特性に改善の余地を残している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5556983号公報
【特許文献2】特開2017-31006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の目的は、二次電池の電極として使用した際に、高温における電池特性、特に保存特性及び充放電特性に優れるスピネル型マンガン酸リチウム及びその製造方法の少なくともいずれかを提供することであり、さらには、該スピネル型マンガン酸リチウムを用いた電極、またはリチウムイオン二次電池を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は特許請求の範囲のとおりであり、また、本開示の要旨は以下のとおりである。
(1) リン化合物を含有し、化学式Li1+XMn2-X-YMYO4(式中、0.02≦X≦0.20、0.05≦Y≦0.30であり、MはAlまたはMgである。)で表されるスピネル型マンガン酸リチウムであって、前記リン化合物のBET比表面積が10m2/g以上80m2/g以下であるスピネル型マンガン酸リチウム。
(2) 前記リン化合物の含有量が0.1質量%以上10質量%以下である(1)に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
(3) BET比表面積が0.2m2/g以上1.5m2/g以下である(1)又は(2)に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
(4) 二次粒子の平均粒子径が4.0μm以上20.0μm以下である(1)乃至(3)のいずれかに記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
(5) SO4の含有量が0.8質量%以下である(1)乃至(4)のいずれかに記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
(6) Naの含有量が3000質量ppm以下である(1)乃至(5)のいずれかに記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
(7) マンガン源、リチウム源、並びに、アルミニウム及びマグネシウムの少なくともいずれかを含む金属源、を含む組成物を750℃以上970℃以下で焼成して焼成物を得る焼成工程と、該焼成物に前記リン化合物を含有させるリン化合物含有工程と、を有する、(1)乃至(6)のいずれかに記載のスピネル型マンガン酸リチウムの製造方法。
(8) (1)乃至(6)のいずれかに記載のスピネル型マンガン酸リチウムを含む電極。
(9) (8)に記載の電極を含むリチウムイオン二次電池。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、二次電池の電極として使用した際に、高温における電池特性、特に保存特性及び充放電特性に優れるスピネル型マンガン酸リチウム及びその製造方法の少なくともいずれかを提供することが可能になり。さらには、該スピネル型マンガン酸リチウムを用いた電極、またはリチウムイオン二次電池を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1で得られたスピネル型マンガン酸リチウムの粒子断面のTEM-EDX像である。
【
図2】実施例1で得られたスピネル型マンガン酸リチウムの粒子断面のXRDパターンである。
【
図3】比較例1で得られたスピネル型マンガン酸リチウムの粒子断面のXRDパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示について、一実施形態を示して詳細に説明するが、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムは、表面にリン化合物を有する。リン化合物としては、本願発明の効果が得られるものであれば特に限定されるものではないが、無機化合物であることが好ましく、さらにはリン酸塩であることが好ましく、例えば、Li3PO4、LiPO3等のリチウムのリン酸塩、Na3PO4、NaH2PO4、Na2HPO4等のナトリウムのリン酸塩、K3PO4、KH2PO4、K2HPO4等のカリウムのリン酸塩等が挙げられる。好ましくはLi3PO4、LiPO3であり、より好ましくはLi3PO4である。以下、本明細書においては、リン化合物はリン酸塩として記載する。リン酸塩がスピネル型マンガン酸リチウムに含有されることにより、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用した際に優れた電池性能を示し、特に高温において優れた保存特性及び充放電特性を得ることが可能となる。含有されるリン酸塩の性状には特に制限はなく、結晶質性のもの、結晶質性で多孔性のもの、結晶質性で緻密なもの、非晶質性のもの、非晶質性で多孔性のもの、非晶質性で緻密な状態のもの等が例示されるが、これらに限定されない。
【0013】
本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムは、化学式Li1+XMn2-X-YMYO4(式中、0.02≦X≦0.20、0.05≦Y≦0.30であり、MはAlまたはMgである。)で表される。Xの値が0.02未満であることで高温における保存及び充放電での容量低下が発生し、0.20を超えることで十分な充放電容量が得られなくなる。また、Yの値が0.05未満であると高温における保存及び充放電での容量低下が発生し、0.30を超えると十分な充放電容量が得られなくなる。X及びYはスピネル型マンガン酸リチウムを組成分析することで求めることができる。組成分析の方法としては、例えば、誘導結合プラズマ発光分析(以下、「ICP」ともいう。)、原子吸光分析等が挙げられる。
【0014】
本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムに含有されるリン酸塩はBET比表面積が10m2/g以上80m2/g以下である。これにより、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用した際に、電解液中に含まれるフッ化水素をリン酸塩で捕捉する反応が速やかに進行する。その結果、フッ化水素とスピネル型マンガン酸リチウムの反応に起因するマンガン溶出が抑制され、高温において優れた保存特性及び充放電特性が得られる。リン酸塩のBET比表面積が10m2/g未満であることで、フッ化水素をリン酸塩で捕捉する反応が速やかに進行せず、80m2/gを超えることで、本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムを正極とした際の電極密度が低下する。リン酸塩のBET比表面積は10m2/g以上50m2/g以下であることが好ましく、10m2/g以上30m2/g以下であることがより好ましい。リン酸塩のBET比表面積は窒素ガス吸着法(BET法)から求めることができる。
【0015】
本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムのリン酸塩の含有量は、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上6質量%以下であることがより好ましい。これにより、本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムをリチウムイオン二次電池の正極活物質として使用した際の充放電容量がより大きくなる。本実施形態におけるリン酸塩の含有量は、スピネル型マンガン酸リチウムの質量に対する、スピネル型マンガン酸リチウムに含まれるP元素をLi3PO4換算した質量の割合(質量%)である。すなわち、リン酸塩の含有量は、ICP測定で求めたP元素の濃度(質量%)に、Li3PO4/P(原子量比)をかけてLi3PO4換算することで求めることができる。
【0016】
本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムに含有されるリン酸塩は多孔質であることが好ましい。リン酸塩が多孔質であることにより、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用した際に電解液中に含まれるフッ化水素をより速やかに補足できる。その結果、フッ化水素とスピネル型マンガン酸リチウムの反応に起因するマンガン溶出がさらに抑制され、高温において優れた保存特性及び充放電サイクル特性が得られる。リン酸塩が多孔質であることは、スピネル型マンガン酸リチウム粒子の断面TEM-EDX測定により判定することができる。
【0017】
本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムのBET比表面積は、0.2m2/g以上1.5m2/g以下であることが好ましく、0.2m2/g以上1.0m2/g以下であることがより好ましく、0.3m2/g以上0.8m2/g以下であることがさらに好ましい。これにより、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用した際に、高温においてより優れた保存特性及び充放電特性を得ることが可能になる。
【0018】
本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムの二次粒子の平均粒子径が4.0μm以上20.0μm以下であることが好ましく、5.0μm以上15.0μm以下であることがより好ましい。これにより、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用した際に、スピネル型マンガン酸リチウム粒子内のリチウム拡散距離がより小さくなり、より優れた出力特性を得ることが可能になるとともに、正極合剤の充填性をより高くすることが可能となる。
【0019】
ここで、「二次粒子」とはLMO粉末の一次粒子同士が凝集して焼結した粒子であり、「一次粒子」とは独立した結晶粒子である。本実施形態における二次粒子の平均粒子径は、粒度分布測定装置(例えば、MicrotracBEL製 MT3000II)によって測定されるD50である。二次粒子の平均粒子径はレーザー回折・散乱法によって測定される。
【0020】
本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムのSO4の含有量は、0.8質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。これにより、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用した際の充放電容量をより大きくするとともに、高温においてより優れた保存特性及び充放電特性を得ることができる。SO4の含有量は、0.01質量%以上または0.02質量%以上であることが例示できる。SO4の含有量(質量%)は、スピネル型マンガン酸リチウムの質量に対する、スピネル型マンガン酸リチウムに含まれるS元素をSO4換算した質量の割合(質量%)である。すなわち、SO4の含有量は、ICP測定で求めたS元素の濃度(質量%)に、SO4/S(原子量比)をかけてSO4換算することで求めることができる。
【0021】
含有されるSO4の状態としては限定されるものではなく、例えば硫酸イオン及びSO4基を含む化合物の少なくともいずれかが挙げられ、具体的には、Li2SO4、Na2SO4等が例示できる。
【0022】
本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムのNaの含有量は、3000質量ppm以下であることが好ましく、1500質量ppm以下であることがより好ましく、1000質量ppm以下であることがさらに好ましい。これにより、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用した際の充放電容量をより大きくするとともに、高温においてより優れた保存特性及び充放電特性を得ることができる。Naの含有量は、10質量ppm以上または20質量ppm以上であることが例示できる。Naの含有量は、ICP測定によって求めることができる。
【0023】
含有されるNaの状態としては限定されるものではなく、例えばNa金属、Naを含む化合物及びNaイオンからなる群より選ばれる少なくとも1つが挙げられ、具体的には、Na2SO4等が例示できる。
【0024】
本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムのホウ素の含有量は、1000質量ppm以下であることが好ましく、500質量ppm以下であることがより好ましく、300質量ppm以下であることがさらに好ましい。これにより、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用した際の充放電容量をより大きくするとともに、高温においてより優れた保存特性及び充放電特性を得ることができる。ホウ素の含有量は、0質量ppm以上であればよく、すなわち本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムに含まれていなくともよい。ホウ素の含有量は、ICP測定によって求めることができる。
【0025】
含有されるホウ素の状態としては限定されるものではなく、例えばホウ素金属、ホウ素を含む化合物及びホウ素イオンからなる群より選ばれる少なくとも1つが挙げられ、具体的には、B2O3、Li2B4O7等が例示できる。
【0026】
次に、本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムの製造方法について説明する。
【0027】
本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムは、マンガン源、リチウム源、並びに、アルミニウム及びマグネシウムの少なくともいずれかを含む金属M源、を混合して混合物を得る混合工程と、該混合物を750℃以上970℃以下で焼成して焼成物を得る焼成工程と、該焼成物にリン化合物を含有させるリン化合物含有工程と、を有する製造方法によって製造することができる。
【0028】
混合工程では、少なくともマンガン源、リチウム源、並びに、アルミニウム及びマグネシウムの少なくともいずれかを含む金属M源、を混合して混合物を得る。マンガン源、リチウム源、及び、金属M源が均一に混合されれば、混合方法は湿式混合又は乾式混合のいずれであってもよい。より均一な混合粉末が得られるため、混合方法は湿式混合であることが好ましい。
【0029】
マンガン源は特に限定されるものではなく、例えば、MnO2、Mn3O4、Mn2O3のほか、酢酸マンガンのような有機酸塩が挙げられる。
【0030】
リチウム源は特に限定されるものではなく、例えば、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム、塩化リチウム、ヨウ化リチウム、シュウ酸リチウムのようなリチウム塩が挙げられる。
【0031】
金属M源は、マグネシウム源及びアルミニウム源の少なくともいずれかを含む。
【0032】
マグネシウム源としては、例えば、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムの少なくともいずれかが挙げられる。
【0033】
アルミニウム源としては、例えば、水酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム、酸化アルミニウムの少なくともいずれかが挙げられる。
【0034】
混合物は、必要に応じてバインダー、導電助剤、その他の添加物を含んでいてもよい。例えば、融剤としてホウ素化合物を混合することが好ましい。これにより、本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムのBET比表面積を低下させることができる。ホウ素化合物は特に制限はなく、例えば、H3BO3、B2O3、Li2O・nB2O3(n=1~5)等が挙げられる。
【0035】
焼成工程は、混合工程で得られた混合物を焼成することにより、焼成物を得る工程である。焼成温度は、750℃以上970℃以下で行う。焼成温度が750℃未満であることで、スピネル型マンガン酸リチウムのBET比表面積が大きくなる。その結果、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用した際にマンガンの溶出が進行しやすく、保存特性及び充放電特性が低下しやすい。焼成温度が970℃を超えることで、スピネル型マンガン酸リチウムの酸素欠損が増加する。その結果、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用した際に保存特性及び充放電特性が低下しやすい。さらには、焼成温度は800℃以上950℃以下で行うことが好ましい。焼成時間は、製造コストを下げるため、3時間以上12時間以下であることが好ましい。
【0036】
焼成雰囲気は特に限定されないが、例えば、大気中、又は、高濃度酸素雰囲気中(純粋酸素雰囲気中を含む)、すなわち、酸素含有量が18vol%以上100vol%以下の酸素雰囲気中で行うことが好ましい。
【0037】
リン化合物含有工程は、焼成工程で得られた焼成物にリン化合物を含有させる工程である。以下、本明細書においては、リン化合物含有工程はリン酸塩含有工程として記載する。焼成物へリン酸塩を含有させる方法としては特に限定されないが、例えば、リチウム化合物の溶液及びリン化合物の溶液を添加して混合した後、ろ過及び乾燥を行う、晶析法が挙げられる。
【0038】
リチウム化合物は水溶性であれば特に制限はなく、例えば、水酸化リチウム、炭酸リチウム、硝酸リチウム、塩化リチウム、ヨウ化リチウム、シュウ酸リチウム等が挙げられる。
【0039】
リン化合物は水溶性であれば特に制限はなく、Li3PO4、LiPO3等のリチウムのリン酸塩、Na3PO4、NaH2PO4、Na2HPO4等のナトリウムのリン酸塩、K3PO4、KH2PO4、K2HPO4等のカリウムのリン酸塩等、Mg3(PO4)2、MgHPO4、Mg(H2PO4)2等のマグネシウムのリン酸塩、NH4H2PO4、(NH4)2HPO4等のアンモニウムのリン酸等が例示される。
【0040】
スピネル型マンガン酸リチウムにリチウム化合物の溶液及びリン酸化合物の溶液を添加する方法は、スピネル型マンガン酸リチウムにリチウム化合物の溶液を添加した後にリン酸化合物の溶液を添加する方法、スピネル型マンガン酸リチウムのスラリーを調製した後にリチウム化合物の溶液とリン酸化合物の溶液を同時に添加する方法等が例示される。スピネル型マンガン酸リチウムにリチウム化合物の溶液及びリン酸化合物の溶液を添加する際には、スピネル型マンガン酸リチウムからリチウムが脱離することを抑制するため、溶液のpHを7以上とすることが好ましい。
【0041】
リチウム化合物及びリン酸化合物を加える溶液は、例えば、純水、水等が挙げられる。
【0042】
スピネル型マンガン酸リチウムは、焼成時に二次粒子同士が固結し易いため、目的の粒子径を得るために解砕を行うことが好ましい。解砕方法は、微粉生成をより抑制するため、せん断力による解砕が好ましい。
【0043】
スピネル型マンガン酸リチウムは、正極の厚みを超える粗大粒子を除去するため、篩を通過させることが好ましい。篩の目開きは200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましい。
【0044】
本実施形態のリン酸塩を含有したスピネル型マンガン酸リチウムをリチウムイオン二次電池の正極に使用することで、従来では得ることができなかった、高温における保存特性及び充放電特性に優れるリチウムイオン二次電池を構成することが可能になる。
【0045】
正極以外のリチウムイオン二次電池の構成としては、特に制限はないが、負極にはLiを吸蔵放出する材料、例えば、炭素系材料、酸化錫系材料、Li4Ti5O12、SiO、Liと合金を形成する材料等が挙げられる。Liと合金を形成する材料としては、例えば、シリコン系材料やアルミニウム系材料等が挙げられる。電解質には、例えば、有機溶媒にLi塩や各種添加剤を溶解した有機電解液や、Liイオン伝導性の固体電解質、これらを組み合わせたもの等が挙げられる。
【実施例0046】
次に、本開示を具体的な実施例で説明するが、本開示はこれらの実施例に限定して解釈されるものではない。
【0047】
<組成分析>
実施例および比較例で得られたスピネル型マンガン酸リチウムの組成、リン酸塩含有量、SO4含有量、Na含有量、ホウ素含有量は、スピネル型マンガン酸リチウムを硫酸-過酸化水素混合水溶液もしくは塩酸-過酸化水素混合水溶液に溶解した後、誘電結合プラズマ発光分析装置(商品名:ICP-AES、パーキンエルマージャパン製)で分析した。
【0048】
<XRDによる結晶相の同定>
実施例および比較例で得られたスピネル型マンガン酸リチウムの結晶相の同定は、粉末XRD測定(商品名:Ultima IV、Rigaku製)により行った。測定条件は、以下の通りとした。
【0049】
・ターゲット:Cu
・出力:1.6kW(40mA-40kV)
・フィルター:Kβフィルター
・発散スリット:1°
・発散縦制限スリット:10mm
・散乱スリット:解放
・受光スリット;解放
・走査モード:連続
・スキャンスピード:4.000°/分
・サンプリング幅:0.04°(2θ/θ)
・積算回数:1回
・測定範囲:10-90°(2θ/θ)
<リン酸塩及びスピネル型マンガン酸リチウムのBET比表面積の測定>
実施例および比較例で得られたスピネル型マンガン酸リチウム1.5gをBET比表面積測定用のガラス製セルに入れ、窒素気流下で150℃、30分間脱水処理を行い、粉体粒子に付着した水分の除去を行った。処理後の試料を、BET測定装置(商品名:MICROMERITICS DeSorbIII、島津製作所製)で、吸着ガスとして、窒素30%-ヘリウム70%の混合ガスを用いて、1点法でBET比表面積を測定した。
【0050】
また、リン酸塩を含有していない、すなわち、焼成工程後、リン酸塩含有工程直前のスピネル型マンガン酸リチウムのBET比表面積を予め測定しておき、以下の式に基づきリン酸塩(Li3PO4)のBET比表面積を算出した。
【0051】
Li3PO4のBET比表面積[m2/g]=((Li3PO4含有スピネル型マンガン酸リチウムのBET比表面積[m2/g])-(Li3PO4を含有していないスピネル型マンガン酸リチウムのBET比表面積[m2/g]))/(Li3PO4含有量(質量%)/100)
<断面TEM-EDXの測定>
電界放射型透過電子顕微鏡(商品名:JEM-2100F、日本電子製)及びエネルギー分散型X線分光器(商品名:JED-2300T、日本電子製)を使用して、スピネル型マンガン酸リチウム粒子の断面TEM-EDX測定を行った。測定に先立ち、試料をビームカッターにて切断した。
【0052】
<二次粒子径の測定>
粒度分布測定装置(商品名:MT3000IIシリーズ、MicrotracBEL製)を使用して、スピネル型マンガン酸リチウムの二次粒子の平均粒子径(D50)を測定した。
【0053】
<電池性能評価>
正極は、実施例、比較例で得られたスピネル型マンガン酸リチウム4.7gとアセチレンブラック(商品名:デンカブラックLi-400、デンカ製)0.15gと10質量%ポリフッ化ビニリデン/N-メチル-2-ピロリドン溶液1.434mL(ポリフッ化ビニリデン0.15g)(重量比でスピネル型マンガン酸リチウム:アセチレンブラック:ポリフッ化ビニリデン=94:3:3)とN-メチル-2-ピロリドン1.23mLを自転公転ミキサー(商品名:AR-310、シンキー製)で混合して正極合剤スラリーを作製し、得られた正極合剤スラリーをアルミニウム箔に塗布し、120℃で10分乾燥後、縦60mm、横30mmの長方形に打ち抜き、ロールプレスを行った。塗布した正極合剤を縦50mm、横30mmとなるようにN-メチル-2-ピロリドンを用いてアルミニウム箔から剥がし、剥がした部分にアルミ製タブを溶接して150℃で5時間真空乾燥した後、使用した。塗布量はスピネル型マンガン酸リチウム量が15mg/cm2となるようにした。正極合剤密度は2.4g/cm3とした。
【0054】
負極は、人造黒鉛4.0gと10質量%ポリフッ化ビニリデン/N-メチル-2-ピロリドン溶液2.008mL(ポリフッ化ビニリデン0.210g)(重量比で黒鉛:ポリフッ化ビニリデン=95:5)とN-メチル-2-ピロリドン3.160mLを自転公転ミキサー(商品名:AR-310、シンキー製)で混合して負極合剤スラリーを作製し、得られた負極材スラリーを銅箔に塗布し、120℃で10分乾燥後、縦62mm、横32mmの長方形に打ち抜き、ロールプレスを行った。塗布した負極合剤を縦52mm、横32mmとなるようにN-メチル-2-ピロリドンを用いて銅箔から剥がし、剥がした部分にニッケル製タブを溶接して150℃で5時間真空乾燥した後、使用した。塗布量は、人造黒鉛が5.5mg/cm2となるようにした。負極合剤密度は1.3g/cm3とした。
【0055】
上記の正極及び負極と、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの混合溶媒(体積比1:2)にLiPF6を1mol/dm3溶解した電解液0.24mLと、縦65mm、横35mmの長方形に打ち抜いたセパレータ(商品名:セラミックコーティング湿式セパレータ―SH716E14、Shenzhen Senior Technology Material製)を用いてラミネートセルを作製した。電池評価の際には、ラミネートセルを2枚のアクリル板で挟み、アクリル板を貫通する4本のネジを用いて1N/mのトルク圧で締め付けを行った。
【0056】
また、上記正極を15.96mmφに打ち抜き、16mmφに打ち抜いたLi金属を負極として、セパレータ(商品名:セルガード、ポリポア製)を用いてCR2032型コインセルを作製した。
【0057】
作製したCR2032型コインセルを用いて、24℃において、セル電圧4.3Vと3.0Vの間で電流0.6mAで定電流充電-定電流放電を1サイクル行い、充電容量を初期容量とした。
【0058】
次に、作製したラミネートセルを用いてエージングを行った。エージングは、24℃において、初期容量の10%まで定電流で充電して9時間休止し、次に初期容量の60%まで定電流で充電して24時間休止し、次にセル電圧4.2Vまで定電流定電圧充電を行った後、3.0Vまで定電流で放電した。充電時及び放電時の電流は初期容量に対して時間率0.1Cとし、定電圧充電の終了条件は、充電電流が時間率0.005Cまで減衰した時点とした。
【0059】
エージング終了後、セル容量確認を行った。セル容量確認は、24℃において、セル電圧が4.2Vと3.0Vの間で、定電流定電圧充電-定電流放電を1サイクル行い、放電容量をセル容量とした。充電時及び放電時の電流は初期容量に対して時間率0.2Cとし、定電圧充電の終了条件は、充電電流が時間率0.01Cまで減衰した時点とした。
【0060】
セル容量確認後、保存試験及び充放電サイクル試験を行った。
【0061】
保存試験は、作製したラミネートセルを24℃において4.2Vまで充電後、60℃で7日間保存した。次いで、セル電圧3.0Vまで放電した後、4.2Vと3.0Vの間で定電流定電圧充電-定電流放電を1サイクル行い、放電容量を回復容量とし、セル容量に対する回復容量の割合を保存容量回復率とした。なお、充電時及び放電時の電流はセル容量に対して時間率0.2Cとし、定電圧充電の終了条件は、充電電流が時間率0.01Cまで減衰した時点とした。
【0062】
充放電サイクル試験は、作製したラミネートセルについて45℃においてセル電圧4.2Vと3.0Vの間で定電流定電圧充電-定電流放電を50サイクル行い、1サイクル目の容量に対する50サイクル目の容量の割合を充放電サイクル維持率とした。なお、充電時及び放電時の電流はセル容量に対して時間率0.5Cとし、定電圧充電の終了条件は、充電電流が時間率0.025Cまで減衰した時点とした。
【0063】
実施例1
平均粒子径12.0μmの電解二酸化マンガン80.00gと、平均粒子径3μmのLi2CO318.80gと、Mg(OH)2(和光純薬工業製、平均粒子径0.07μm)1.56gと、H3BO3(キシダ化学製)をめのう乳鉢で粉砕したもの0.24gを乳鉢で混合して混合物を得た。この混合物を箱型炉にて空気を5L/minの速度で流通させながら930℃で6時間焼成を行った後、600℃で24時間熱処理を行い、室温まで冷却して、スピネル型マンガン酸リチウムを得た。930℃までの昇温速度は100℃/hrとし、降温速度は930℃から600℃までは20℃/hr、600℃から室温までは100℃/hrとした。得られたスピネル型マンガン酸リチウムを、強力小型粉砕機(商品名:ロータリークラッシャー、大阪ケミカル製)で解砕した。
【0064】
次に、得られたスピネル型マンガン酸リチウム72.0gに、72mLの純水と2.0mol/LのLiOH(キシダ化学製)水溶液18mLを添加し、室温下、600rpmで攪拌しながら26質量%のH3PO4(キシダ化学製)水溶液10mLを0.056mL/分の速度で添加した。その後、ろ過・乾燥を行い、目開き32μmの篩を通過させて粗大な粒子を取り除き、本実施例のスピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0065】
ICPの測定結果より、得られたスピネル型マンガン酸リチウムの組成は、化学量論組成Li1+XMn2-X-YMYO4を取ると仮定して、Li1.08Mn1.86Mg0.06O4であった。リン酸塩含有量、リン酸塩のBET比表面積、スピネル型マンガン酸リチウム二次粒子の平均粒子径、SO4含有量、Na含有量、ホウ素含有量の測定結果(以下、単に「測定結果」ともいう。)を表1に示し、電池性能評価結果を表2に示す。
【0066】
【0067】
【0068】
また、スピネル型マンガン酸リチウム粒子断面のTEM-EDX像を
図1に示す。
図1(A)はP元素のマッピング結果を、
図1(B)はMn元素のマッピング結果を示す。リン酸塩(Li
3PO
4)がスピネル型マンガン酸リチウム粒子の表面に存在することが確認された。また、XRD測定により、スピネル型マンガン酸リチウムからは、JCPDSのNo.35-782(LiMn
2O
4、ピーク位置:2θ=18.6°、30.7°、36.1°、37.8°、43.9°、48.1°、58.1°、63.8°、67.1°、75.6°、76.6°)とNo.25-1030(Li
3PO
4、ピーク位置:2θ=16.9°、22.4°、23.4°、25.0°、29.2°、33.9°)の2つのピークパターンが検出された。
図2に実施例1のXRDピークパターンを示す。
【0069】
実施例2
LiOH水溶液の濃度を1.0mol/Lとしたことと、H3PO4水溶液の濃度を13質量%としたこと以外は実施例1と同様の方法でスピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0070】
得られたスピネル型マンガン酸リチウムの組成はLi1.08Mn1.86Mg0.06O4であった。測定結果を表1に示し、電池性能を表2に示す。また、XRD測定から、得られたスピネル型マンガン酸リチウムはJCPDSのNo.35-782(LiMn2O4)とNo.25-1030(Li3PO4)の2つのピークパターンが検出された。
【0071】
実施例3
LiOH水溶液の濃度を0.50mol/Lとしたことと、H3PO4水溶液の濃度を6.5質量%としたこと以外は実施例1と同様の方法でスピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0072】
得られたスピネル型マンガン酸リチウムの組成はLi1.08Mn1.86Mg0.06O4であった。測定結果を表1に示し、電池性能を表2に示す。また、XRD測定から、得られたスピネル型マンガン酸リチウムはJCPDSのNo.35-782(LiMn2O4)とNo.25-1030(Li3PO4)の2つのピークパターンが検出された。
【0073】
比較例1 平均粒子径4.0μmのMn3O475.00gと、平均粒子径3μmのLi2CO321.48gと、Mg(OH)2(和光純薬工業製、平均粒子径0.07μm)1.70gと、H3BO3(キシダ化学製)をめのう乳鉢で粉砕したもの0.60gを混合して混合物を得た。この混合物について箱型炉にて空気を5L/minの速度で流通させながら850℃で6時間焼成を行った後、600℃で24時間焼成を行い、室温まで冷却して、スピネル型マンガン酸リチウムを得た。室温から850℃までの昇温速度は100℃/hrとし、降温速度は850℃から600℃までは20℃/hr、600℃から室温までは100℃/hrとした。得られたスピネル型マンガン酸リチウムを、強力小型粉砕機(商品名:ロータリークラッシャー、大阪ケミカル製)で解砕した。
【0074】
次に、得られたスピネル型マンガン酸リチウムに対して、豊島製作所製粉末バレルスパッタリング装置を用いてLi3PO4の成膜を行った。ターゲットにはLi3PO4焼結体を用い、使用電源はRF、成膜時出力は2kW、成膜時間は8時間、使用ガスはAr100%とした。
【0075】
得られたスピネル型マンガン酸リチウムの組成はLi1.09Mn1.85Mg0.06O4であった。測定結果を表1に示し、電池性能を表2に示す。また、XRD測定から、得られたスピネル型マンガン酸リチウムはJCPDSのNo.35-782(LiMn2O4)とNo.25-1030(Li3PO4)の2つのピークパターンが検出された。
【0076】
比較例2
平均粒子径12μmの電解二酸化マンガン100.0gと平均粒子径3μmの炭酸リチウム23.7gと平均粒子径3μmの水酸化アルミニウム4.3gとリン酸三リチウム(和光純薬工業製)0.9gとH3BO3(和光純薬工業製)1.8gを純水98.2gに溶解して1.8質量%水溶液としたもの0.11gを混合して混合物を得た。この混合物について、箱型炉にて空気を5L/minの速度で流通させながら800℃で20時間焼成を行い、室温まで冷却して、スピネル型マンガン酸リチウムを得た。昇温速度、降温速度はいずれも100℃/hrとした。次に、強力小型粉砕機(商品名:ロータリークラッシャー、大阪ケミカル製)で解砕し、目開き32μmの篩を通過させてスピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0077】
得られたスピネル型マンガン酸リチウムの組成はLi1.07Mn1.84Al0.09O4であった。測定結果を表1に示し、電池性能を表2に示す。また、XRD測定から、得られたスピネル型マンガン酸リチウムはJCPDSのNo.35-782(LiMn2O4)とNo.25-1030(Li3PO4)の2つのピークパターンが検出された。
【0078】
比較例3
スピネル型マンガン酸リチウムにLiOHとH3PO4を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法でスピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0079】
得られたスピネル型マンガン酸リチウムの組成はLi
1.08Mn
1.86Mg
0.06O
4であった。測定結果を表1に示し、電池性能を表2に示す。また、XRD測定から、得られたスピネル型マンガン酸リチウムはJCPDSのNo.35-782(LiMn
2O
4)単相であった。
図3に比較例3のXRDピークパターンを示す。なお表1において、リン酸塩BET比表面積の欄は「-」で示しているが、リン酸塩(Li
3PO
4)を含有しないため測定していないことを表す。
本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムは、リン酸塩が特異的に大きいBET比表面積有するため、高温における電池性能、特に保存特性及び充放電特性に優れるリチウムイオン二次電池の正極活物質として使用することができる。