(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125629
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】積層薄膜片
(51)【国際特許分類】
A61K 8/29 20060101AFI20230831BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20230831BHJP
A61K 8/28 20060101ALI20230831BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20230831BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230831BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20230831BHJP
C23C 14/08 20060101ALI20230831BHJP
C23C 14/24 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
A61K8/29
A61K8/25
A61K8/28
A61K8/27
A61K8/02
A61Q17/04
C23C14/08
C23C14/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029842
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】弁理士法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 彰
(72)【発明者】
【氏名】山下 和真
(72)【発明者】
【氏名】國津 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】大谷 紘平
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 恵悟
(72)【発明者】
【氏名】紺野 義一
【テーマコード(参考)】
4C083
4K029
【Fターム(参考)】
4C083AB211
4C083AB241
4C083BB46
4C083CC19
4C083EE17
4K029AA09
4K029BA02
4K029BA17
4K029BA18
4K029BA35
4K029BA43
4K029BA46
4K029BA48
4K029BB02
4K029CA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、紫外線領域での反射率が高く、かつ可視光領域での透過率が高い特性を実現した安全性の高い紫外線防御剤の提供を課題とする。
【解決手段】TiO
2、ZnO、CeO
2及びZrO
2よりなる群から選ばれる無機酸化物層からなる紫外線吸収層と、その両側に、2以上の無機酸化物層から構成される同一構造の紫外線反射層が対称に積層された積層薄膜片であって、各無機酸化物層が、紫外線吸収層から外側の層に向かって屈折率の高い順に順次積層され、隣接する無機酸化物層間の屈折率の差が0.1~0.7の範囲にあり、紫外線吸収層の厚さが800nm~2μmであり、紫外線反射層を構成する各無機酸化物層の厚さが以下の式で求められるdの±20%の範囲にあることを特徴とする積層薄膜片。
d=λ/2n(但し、λ=280~320nmであり、nは無機酸化物層を形成する無機酸化物の屈折率である)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
iO2、ZnO、CeO2及びZrO2よりなる群から選ばれる無機酸化物層からなる紫外線吸収層と、その両側に、2以上の無機酸化物層から構成される同一構造の紫外線反射層が対称に積層された積層薄膜片であって、各無機酸化物層が、紫外線吸収層から外側の層に向かって屈折率の高い順に順次積層され、隣接する無機酸化物層間の屈折率の差が0.1~0.7の範囲にあり、紫外線吸収層の厚さが800nm~2μmであり、紫外線反射層を構成する各無機酸化物層の厚さが以下の式で求められるdの±20%の範囲にあることを特徴とする積層薄膜片。
d=λ/2n
(但し、λ=280~320nmであり、nは無機酸化物層を形成する無機酸化物の屈折率である)
【請求項2】
紫外線吸収層を形成する無機酸化物の屈折率が2.0~2.7である請求項1記載の積層薄膜片。
【請求項3】
紫外線反射層の最外層を形成する無機酸化物の屈折率が1.2~1.7である請求項1または2に記載の積層薄膜片。
【請求項4】
波長280~320nmの紫外線の透過率が5%以下である請求項1~3のいずれかの項に記載の積層薄膜片。
【請求項5】
波長500~700nmの可視光の透過率が90%以上である請求項1~4のいずれかの項に記載の積層薄膜片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層薄膜片に関し、紫外線に対する透過率が低く、可視光に対する透過率が高い特性を備え、紫外線防御効果に優れ、透明性が高く自然な質感が得られる積層薄膜片に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線(UV)は、皮膚の老化やシミ・そばかす等様々な皮膚の傷害の原因となることが知られており、紫外線から皮膚を保護するための紫外線防御用(UVカット)化粧料が開発されている。この紫外線防御用化粧料には、紫外線防御剤として紫外線吸収剤又は紫外線散乱剤が配合されている。紫外線吸収剤は、主に有機系の合成化合物であり、例えば、パラアミノ安息香酸(PABA)誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ケイ皮酸誘導体等が使用されている。これらの紫外線吸収剤は、無色透明で、自然な質感を保ったまま紫外線防御できる利点があるが、一方で紫外線のエネルギー吸収時に分子構造がダメージを受け、防御性能が経時劣化する欠点がある。また近年では環境への懸念も指摘されている。
【0003】
これに対し紫外線散乱剤は紫外線を物理的に散乱、反射することにより皮膚を紫外線から防御するものであり、酸化チタン(TiO2)や酸化亜鉛(ZnO)などのナノ粒子が用いられている。これらの紫外線散乱剤は環境に対する懸念も少ないが、多重反射により白く見えるため、白浮きが生じるなど使用時に肌の自然な質感が失われる場合がある。
【0004】
このように紫外線防御剤は、吸収剤、散乱剤ともに長短あるのが現状であるが、近年紫外線防御剤の短所を補うべく改良が試みられている。例えば、第一被覆層が屈折率1.5~2.0で厚さ19nm~35nmの二酸化チタン層、第二被覆層が厚さ29nm~55nmのシリカ層、第三被覆層が厚さ23nm~43nmの二酸化チタン層、第四被覆層が厚さ81nm~150nmのシリカ層の四層交互層によって被覆された積層型干渉性紫外線遮蔽顔料が開示されている(特許文献1)。また天然マイカ、合成マイカ等の無機化合物からなり、2~20μmの平均粒子径と0.05~1μmの厚みを有する鱗片状基材上に、屈折率が互いに異なる2種以上の無機酸化物が屈折率の高いものから順次積層され、最外層に形成された無機酸化物の屈折率が1.73以下、最外層とその内側の無機酸化物層との屈折率の差が0.6以下であり、全無機酸化物の被覆量を所定の範囲とした無機複合粉体が開示されている(特許文献2)。
【0005】
しかし、特許文献1の積層型干渉性紫外線遮蔽顔料は、紫外線領域の反射率及び可視光領域での透過率において十分な性能のものとは言い難く、なお改善の余地があった。また特許文献2の無機複合粉体は、紫外線の透過抑制において十分ではない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3986304号公報
【特許文献2】特許第4293731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように紫外線防御剤の欠点を改善するために、紫外線領域での散乱反射率を高めつつ、可視光領域での透過率の向上が図られているが、紫外線領域と可視光領域は波長が隣り合っており、短いバンド幅で極端な特性変化を実現することは困難であった。かかる実情に鑑み、本発明は、紫外線領域での防御効果が高く、かつ可視光領域での透過率が高い特性を実現した安全性の高い紫外線防御剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、この問題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、紫外線領域における特定の波長を基準として膜厚を調整した無機酸化物の積層構造による多層膜反射とすることで紫外線領域における高い散乱反射率を実現するとともに、中心層を形成する無機酸化物として特定の化合物を選択し膜厚を大きくすることによって紫外線の透過を抑制し、かつ隣り合う無機酸化物層間の屈折率の急激な変化を避け、中心から外側に向かって漸減するように配置することで可視光領域での透過率を高め、透明度が高く自然な質感を与える積層薄膜片が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、TiO2、ZnO、CeO2及びZrO2よりなる群から選ばれる無機酸化物層からなる紫外線吸収層と、その両側に、2以上の無機酸化物層から構成される同一構造の紫外線反射層が対称に積層された積層薄膜片であって、各無機酸化物層が、紫外線吸収層から外側の層に向かって屈折率の高い順に順次積層され、隣接する無機酸化物層間の屈折率の差が0.1~0.7の範囲にあり、紫外線吸収層の厚さが800nm~2μmであり、紫外線反射層を構成する各無機酸化物層の厚さが以下の式で求められるdの±20%の範囲にあることを特徴とする積層薄膜片である。
d=λ/2n
(但し、λ=280~320nmであり、nは無機酸化物層を形成する無機酸化物の屈折率である)
【発明の効果】
【0010】
本発明の積層薄膜片は、紫外線反射層での多層膜反射に加え、紫外線吸収層での紫外線吸収作用により、紫外線の透過率が低く抑えられるため皮膚に対する紫外線防御効果に優れ、かつ可視光領域での透過率が高いため、透明度が高く、自然な質感を与えることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1で作製した積層薄膜の光学スペクトルである((a)透過率、(b)反射率)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の積層薄膜片は無機酸化物層が積層した構造を有するものであり、中心層である紫外線吸収層とその両側に積層される紫外線反射層から構成される。これらの無機酸化物層を形成する無機酸化物の屈折率の上限は2.7以下であることが好ましく、下限は1.2以上であることが好ましい。
【0013】
上記紫外線吸収層を形成する無機酸化物は、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化セリウム(CeO2)または酸化ジルコニウム(ZrO2)であり、これらの中でも紫外線吸収効果等の点では酸化チタンが最も好ましい。紫外線吸収層は単層であり、その厚みは800nm~2μm、好ましくは900nm~1.5μmであり、より好ましくは1~1.2μmである。このような範囲であると、紫外線を吸収し、その透過率を減少させることができる。本明細書において、無機酸化物層の膜厚は、以下の測定方法によって測定される値を意味する。
(測定方法)
走査型電子顕微鏡(JSM-7800 ‘;日本電子社製)を用いて、加速電圧:10 kV、倍率:5,000~20,000という条件下で検出される画像から計測する。
【0014】
また、紫外線吸収層を形成する無機酸化物の屈折率は2.0~2.7が好ましく、具体的な屈折率は酸化チタン(ルチル型)2.5、酸化セリウム2.3、酸化ジルコニウム2.0である。なお、本願において屈折率とは、分散式を用いて算出された500 nmに対する屈折率を用いる。
【0015】
紫外線反射層は2以上の無機酸化物層から構成され、中心層である紫外線吸収層から外側に向かって屈折率の高い順に順次積層される。本発明の積層薄膜を構成する無機酸化物層において、隣接する無機酸化物層間の屈折率の差(形成する無機酸化物の屈折率の差)は0.1~0.7であり、好ましくは0.2~0.6、より好ましくは0.3~0.5である。このように無機酸化物層間の屈折率の急激な変化を避け、中心から外側に向かって段階的に小さくなるようにすることで、可視光線の反射を抑え、白浮きを防止できる。紫外線反射層の最外層を形成する無機酸化物の屈折率は1.2~1.7が好ましい。
【0016】
紫外線反射層の無機酸化物層を形成する無機酸化物としては、ZnO(屈折率1.9)、CeO2(屈折率2.3)、ZrO2(屈折率2.0)、Al2O3(屈折率1.6)SiO2(屈折率1.5)等が挙げられる。これらのうち、紫外線の反射率の向上及び可視光の透過率の向上の観点から、ZrO2、SiO2、Al2O3等が好ましい。紫外線反射層が2層の場合の好適な組み合わせとして、ZrO2とSiO2の組み合わせが例示でき、紫外線吸収層上にZrO2から形成される第1層、その上にSiO2から形成される第2層を積層する態様が、好適な一実施形態として示される。
【0017】
紫外線反射層を構成する各無機酸化物層の厚さは以下の式で求められるdの±20%の範囲内にあればよい。
d=λ/2n
上記式中波長λは280~320nmであり、またnは無機酸化物層を形成する無機酸化物の屈折率である。
例えば、上記した紫外線吸収層上にZrO2から形成される第1層、その上にSiO2から形成される第2層を積層する態様において、第1層におけるdは70~80nmであり、その厚さは56~96nmの範囲となる。まだ第2層におけるdは93~107nmであり、その厚さは75~128nmの範囲である。このように、紫外線領域の中でも特定の波長領域に着目して膜厚の範囲を設定することで、多層膜反射による紫外線領域での高い反射率を実現することが可能になる。
【0018】
上記紫外線吸収層を中心としてその両側に、同一構造の上記紫外線反射層を対称に積層させることにより、本発明に用いられる積層薄膜片を製造することができる。各無機酸化物層は公知の成膜方法を用いて積層させることができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、電子銃加熱方式による蒸着法、イオンプレ-ティング法等の方法が例示される。例えば、上記した紫外線吸収層上にZrO2から形成される第1層、その上にSiO2から形成される第2層を積層した紫外線反射層を配置する態様では、ガラス基板上に75~128nmのSiO2膜、56~96nmのZrO2膜、800nm~2μmのTiO2膜、56~96nmのZrO2膜、75~128nmのSiO2膜を順次成膜することによって、TiO2からなる紫外線吸収層を中心とし、その両側に、ZrO2膜とSiO2膜が順次積層した紫外線反射層を備えた積層薄膜が形成される。この積層薄膜を常法に従ってガラス基板から剥離し、粉砕することによって本発明の積層薄膜片を得ることができる。この積層薄膜片の平均粒子径は特に制限されるものではないが、例えば0.1~50μmが好ましく、0.5~25μmがより好ましい。本明細書において積層薄膜片の平均粒子径は以下の測定方法によって測定される値を意味する。
(測定方法)
走査型電子顕微鏡(JSM-7800;日本電子社製)を用いて、表面状態を観察し、画像解析装置(ルーゼックスAP;ニレコ社製)による測定により求めた値(メジアン径D50)であり、粒子の長径を指すものとする。
【0019】
本発明の積層薄膜片は、常法に従い、公知の化粧料成分と組み合わせて用いることにより、化粧料を製造することができる。化粧料中の積層薄膜片の含有量は特に限定されるものではなく、化粧料の剤型等に応じて任意に設定できるが、例えば、0.01~30質量%(以下、単に「%」と表記する)が好ましく、0.1~15%がより好ましい。
【0020】
本発明の積層薄膜片と組みあわせて用いることができる化粧料成分としては、例えば、揮発性成分、界面活性剤、油剤、粉体、水性成分、アルコール類、水溶性高分子、紫外線吸収剤、保湿剤、ゲル化剤及び増粘剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分(美白剤、細胞賦活剤、抗炎症剤、血行促進剤、皮膚収斂剤、抗脂漏剤等)、防腐剤、抗菌剤、香料、ビタミン類、アミノ酸類、核酸、ホルモン等が例示される。
【0021】
化粧料の剤型等に特に制限はなく、種々の剤型、例えば、液状、乳液状、クリーム状、固形状、ペースト状、ゲル状、粉末状、プレス状、泡沫状、噴霧型等の剤型の化粧料の製造に使用することができ、その種類としても、例えば、紫外線防御用化粧料、メイクアップ化粧料、スキンケア化粧料、毛髪化粧料等に使用することができる。
【実施例0022】
以下に、実施例、比較例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例等に何ら制限されるものではない。
【0023】
実施例1
積層薄膜片の製造:
以下の製造方法により、ガラス基板上に、表1に示すとおり、厚さ100nmのSiO
2膜(1層)、厚さ60nmのZrO
2膜(2層)、厚さ1000nmのTiO
2膜(3層)、厚さ60nmのZrO
2膜(4層)、厚さ100nmのSiO
2膜(5層)を順次積層した積層薄膜を製造した。得られた積層薄膜について、以下の測定方法により、320nm透過率及び550nm透過率を測定した。結果を表1に併せて示す。またその光学スペクトルを
図1に示す。
(製造方法)
厚さ1mm、10cm四方のガラス基板上に、真空蒸着装置を用いて、上記の順序で各々の厚みとなるように、無機酸化物層を蒸着した。
(測定方法)
上述の試料をガラスカッターで2cm四方に切断し、紫外可視分光光度計(V-650、日本分光社製)にセットし、測定プログラムを用いて自動走査・制御によりスペクトルを得た。当該スペクトルより得た320nm及び550nmにおける透過率を用いて、下記の基準により判定した。
(評価基準)
紫外線防御能:320nmの透過率が2%以下:◎
320nmの透過率が2~5%:〇
320nmの透過率が5%を超える:×
透明性:550nmにおける透過率が95%以上:◎
550nmにおける透過率が90~95%:○
550nmにおける透過率が90未満:×
【0024】
比較例1
実施例1と同様にして、ガラス基板上に、表1に示すとおり、厚さ120nmのSiO2膜(1層)、厚さ100nmのAl2O3膜(2層)、厚さ500μmのTiO2膜(3層)、厚さ100nmのAl2O3膜(4層)、厚さ120nmのSiO2膜(5層)を順次積層した積層薄膜を製造し、得られた積層薄膜について、320nm透過率及び550nm透過率を測定した。結果を表1に併せて示す。
【0025】
比較例2
実施例1と同様にして、ガラス基板上に、表1に示すとおり、厚さ81nmのSiO2膜(1層)、厚さ43nmのTiO2膜(2層)、厚さ29μmのSiO2膜(3層)、厚さ35nmのTiO2膜(4層)を順次積層した積層薄膜を製造し、得られた積層薄膜について、320nm透過率及び550nm透過率を測定した。結果を表1に併せて示す。
【0026】
比較例3
実施例1と同様にして、ガラス基板上に、表1に示すとおり、厚さ150nmのSiO2膜(1層)、厚さ43nmのTiO2膜(2層)、厚さ29μmのSiO2膜(3層)、厚さ35nmのTiO2膜(4層)を順次積層した積層薄膜を製造し、得られた積層薄膜について、320nm透過率及び550nm透過率を測定した。結果を表1に併せて示す。
【0027】
比較例4
実施例1と同様にして、ガラス基板上に、表1に示すとおり、厚さ150nmのSiO2膜(1層)、厚さ43nmのTiO2膜(2層)、厚さ55μmのSiO2膜(3層)、厚さ35nmのTiO2膜(4層)を順次積層した積層薄膜を製造し、得られた積層薄膜について、320nm透過率及び550nm透過率を測定した。結果を表1に併せて示す。
【0028】
【0029】
表1から明らかなように、実施例1の積層薄膜は、紫外線(320nm)の透過率が低いため紫外線防御能に優れ、可視光(550nm)の透過率が高く透明性に優れることが示された。さらに実施例1は、表面活性の高い酸化チタンが被覆された構造であり、肌への悪影響が極めて少ないものである。一方、紫外線吸収層(表1の第3層)及び複数の紫外線反射層において、隣接する無機酸化物層間の屈折率差や膜厚が最適化されない比較例1は、透明性の点で劣るものであり、また、無機酸化物層の対象構造や各々の膜厚が最適化されない比較例2~4は、紫外線防御能の点で劣るものであった。
【0030】
製造実施例1
実施例1で得られた積層薄膜をガラス基板から分離して、粉砕し平均粒子径10μmの積層薄膜片を得た。
本発明の積層薄膜片は、紫外線反射層での多層膜反射に加え、紫外線吸収層での紫外線吸収作用により、紫外線の透過率が低く抑えられるため皮膚に対する紫外線防御効果に優れ、かつ可視光領域での透過率が高いため、透明度が高く、自然な質感を与えることができるものである。そのため、化粧料用等の紫外線防御剤として有用なものである。