(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125805
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】冷蔵又は冷凍炒め麺類の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20230831BHJP
A23L 23/00 20160101ALI20230831BHJP
A23L 5/10 20160101ALN20230831BHJP
A23L 17/30 20160101ALN20230831BHJP
【FI】
A23L7/109 C
A23L7/109 E
A23L23/00
A23L5/10 C
A23L17/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030113
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】株式会社日清製粉ウェルナ
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西部 将史
(72)【発明者】
【氏名】畑澤 智志
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 武紀
【テーマコード(参考)】
4B035
4B036
4B042
4B046
【Fターム(参考)】
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4B046LP71
(57)【要約】
【課題】喫食可能状態において香ばしい風味と魚卵類の粒感とを有する冷蔵又は冷凍炒め麺類を提供すること。
【解決手段】本発明の冷蔵又は冷凍炒め麺類の製造方法は、1)α化麺類に第1のソースを混合・攪拌して炒め調理し、ソース和え炒め麺類を得る炒め調理工程と、2)前記ソース和え炒め麺類に、茹で調理した魚卵類を含む第2のソースを混合・攪拌せずにトッピングするトッピング工程と、3)前記第2のソースがトッピングされたソース和え炒め麺類を冷蔵又は冷凍する工程とを有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
α化麺類に第1のソースを混合・攪拌して炒め調理し、ソース和え炒め麺類を得る炒め調理工程と、
前記ソース和え炒め麺類に、茹で調理した魚卵類を含む第2のソースを混合・攪拌せずにトッピングするトッピング工程と、
前記第2のソースがトッピングされたソース和え炒め麺類を冷蔵又は冷凍する工程と
を有する、冷蔵又は冷凍炒め麺類の製造方法。
【請求項2】
前記炒め調理工程では、前記α化麺類100質量部に対して、前記第1のソースを15~30質量部用いる、請求項1に記載の冷蔵又は冷凍炒め麺類の製造方法。
【請求項3】
前記トッピング工程では、前記α化麺類100質量部に対して、前記第2のソースを4~30質量部用いる、請求項1又は2に記載の冷蔵又は冷凍炒め麺類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚卵類を含む冷蔵又は冷凍炒め麺類に関する。
【背景技術】
【0002】
焼きそば、ナポリタンスパゲティ等の炒め麺類は、麺類をとともに炒め調理した食品であり、炒め調理による香ばしい香りが食欲をそそり、人気があるメニューである。炒め麺類の改良技術として、特許文献1には、茹で調理等によりα化した麺類に、高温の熱風を直接吹き付けて短時間加熱することを特徴とする麺類の加熱調理法が記載されている。特許文献1に記載の加熱調理法によれば、食感、風味、外観に優れた炒め麺類の大量製造が可能であるとされている。
【0003】
また近年、炒め麺類を冷凍した冷凍炒め麺類が流通しており、これを購入して電子レンジ等で加熱するだけで、炒め麺類を簡便に喫食することが可能となっている。冷凍炒め麺類の改良技術として、特許文献2には、解凍後においても食感がぱさつかず、ウェット感に優れたソース入り冷凍ソテーパスタの製造方法として、茹でスパゲティにソースを混合・攪拌してソテーしてソテースパゲティを得、該ソテースパゲティの上に特定量の該ソースを混合・攪拌せずに添加した後、冷凍する工程を有するものが記載されている。特許文献3には、麺類とソースとの一体感等に優れる冷凍ソース和え炒め麺類の製造方法として、茹で麺類を炒める工程、炒めた麺類をソースと和える工程、ソースと和えた麺類を真空冷却する工程、真空冷却した麺類を冷凍する工程をこの順で実施するものが記載されている。特許文献2及び3には、魚卵類を含む冷凍炒め麺類は記載されていない。
【0004】
また従来、イクラ、タラコ等の腹子である魚卵類が、麺類と和える、パスタソースに混ぜる等されて、麺類とともに食されている。炒め麺類を魚卵類とともに食すると、炒め麺類に特有の香ばしい風味と、魚卵類に特有の風味及び粒感とが合わさって、独特の風味が得られる。特許文献4には、魚卵類をオーブン等の焼成機で焼成した加熱変性物と油脂とを含有し、可撓性容器から押し出して使用する魚卵食品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-245376号公報
【特許文献2】特開2008-278899号公報
【特許文献3】特開2016-42824号公報
【特許文献4】特開2001-238644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
魚卵類を含む冷蔵又は冷凍炒め麺類は、電子レンジ等で喫食可能状態にすると、炒め麺類の特徴である香ばしい風味が低減して油っぽさが強くなるとともに、魚卵類の粒感が低減する傾向がある。魚卵類を含む冷蔵又は冷凍炒め麺類において、炒め調理による香ばしい風味と魚卵類の粒感とを高いレベルで両立させ得る技術は未だ提供されていない。
【0007】
本発明の課題は、喫食可能状態において香ばしい風味と魚卵類の粒感とを有する冷蔵又は冷凍炒め麺類を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、魚卵類を含む冷蔵又は冷凍炒め麺類について種々検討した結果、麺類とともに喫食される魚卵類含有ソースを、α化麺類の炒め調理時(第1段階)と、該炒め調理で得られた炒め麺類への付与時(第2段階)との2段階で製造し、且つ第1段階では、魚卵類を含有しないソース(第1のソース)を用い、第2段階では、茹で調理した魚卵類を含有するソース(第2のソース)を用い、且つ第2段階でのソースの炒め麺類への付与方法としてトッピングを採用することで、前記課題を解決し得る高品質の冷蔵又は冷凍炒め麺類が得られることを知見した。
【0009】
本発明は前記知見に基づきなされたもので、α化麺類に第1のソースを混合・攪拌して炒め調理し、ソース和え炒め麺類を得る炒め調理工程と、前記ソース和え炒め麺類に、茹で調理した魚卵類を含む第2のソースを混合・攪拌せずにトッピングするトッピング工程と、前記第2のソースがトッピングされたソース和え炒め麺類を冷蔵又は冷凍する工程とを有する、冷蔵又は冷凍炒め麺類の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、喫食可能状態において香ばしい風味と魚卵類の粒感とを有する冷蔵又は冷凍炒め麺類が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は冷凍炒め麺類に関するものである。本発明において「麺類」とは、粉体原料から調製した生地を所定形状に成形したものを指す。本発明で利用できる麺類は、α化した状態で炒め調理して喫食し得るものであればよく、例えば、スパゲティ等の麺線形状のロングパスタ類;マカロニ、ペンネ等のショートパスタ類;蕎麦類、うどん類、中華麺類が挙げられる。
【0012】
また、本発明において「炒め麺類」は、炒め調理された麺類を指すところ、ここで言う「炒め調理」とは、鍋等の調理器具に油を引くか又は引かずに食材(α化麺類)を入れてかき混ぜながら加熱する調理を指す。調理器具に油を引く場合の油の使用量は、典型的には例えば、調理器具に投入された食材の下端部(例えば、食材を厚み方向の5等分した場合の最下方に位置する部分)のみが油と接触し得る程度の量であり、食材の略全体を油に接触させた状態で加熱する調理である「油ちょう」に比べて少量である。
【0013】
本発明の冷蔵又は冷凍炒め麺類の製造方法(以下、単に「製造方法」とも言う。)は、1)α化麺類と第1のソースとを混合して炒め調理してソース和え炒め麺類を得る工程(炒め調理工程)と、2)該ソース和え炒め麺類の上に第2のソースをトッピングする工程(トッピング工程)と、3)該トッピング工程を経たソース和え炒め麺類を冷蔵又は冷凍する工程(冷蔵工程又は冷凍工程)とを有する。
【0014】
本発明で用いるα化麺類は、α化処理が施された麺類である。麺類は、常温常圧で粉体である粉体原料を主原料とし、粉体原料は少なくとも穀粉を含有する。
穀粉としては、麺類の製造に従来用いられているものを特に制限無く用いることができ、例えば、小麦粉、米粉、大麦粉、ライ麦粉が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。小麦粉としては、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉(デュラムセモリナ、デュラム小麦粉を含む)を例示できる。
粉体原料は、穀粉に加えて更に澱粉を含有してもよい。澱粉としては、例えば、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、米澱粉、小麦澱粉が挙げられる。未加工の澱粉に、架橋、リン酸化、アセチル化、エーテル化、酸化、α化等の加工処理の1種以上を施した加工澱粉を用いることもできる。
粉体原料は、前記の穀粉及び澱粉以外に、麺類の製造に用いることができる他の原料を含有してもよく、該他の原料として、糖類、油脂類、色素、調味料を例示できる。
【0015】
α化麺類の原料となる麺類は、粉体原料を用いて常法に従って製造されたものであればよい。麺類の製造方法は、典型的には、粉体原料と液体原料とを混合し、その混合物を混捏して生地を調製し、該生地を常法に従って成形する工程を有する。斯かる工程を経て得られる麺類は、乾燥処理が施されていない生麺類である。α化麺類の原料となる麺類は、生麺類でもよく、生麺類を乾燥させた乾燥麺類でもよい。また、前記生地の成形方法は特に制限されず、例えば、所定形状の押出ノズルから生地を高圧で押し出す押出成形法でもよく、あるいは、生地を麺帯状に高圧で押し出して麺帯を得、該麺帯をローラー等によって圧延し、更に切り刃で切り出す方法でもよい。
【0016】
本発明で用いるα化麺類に施されたα化処理は、水分の存在下で麺類を加熱する処理である。本発明ではα化処理として、麺類をα化するのに通常用いられるものを特に制限無く用いることができ、例えば、80~100℃の湯を用いた茹で調理、飽和水蒸気を用いた蒸し調理が挙げられる。
本発明で用いるα化麺類に施されたα化処理は、「α化処理前の麺類の質量に対する、α化処理後の麺類(α化麺類)の質量の割合」(α化処理歩留まり)が225~275質量%の範囲になるようなものであると、炒め調理後のα化麺類(炒め麺類)の食感が良好になるため好ましい。
【0017】
本発明の製造方法は、前記炒め調理工程の前に、α化麺類を製造する工程(α化工程)を有していてもよい。前記α化工程は、粉体原料から調製した生地を麺線状等の所定形状に成形する工程を含むものとすることができ、その詳細は前述したとおりである。
【0018】
また、本発明の製造方法は、前記α化麺類の製造工程の後且つ前記炒め調理工程の前に、該炒め調理工程に供するα化麺類に前処理を施す前処理工程を有していてもよい。
前記前処理の一例として、α化麺類の表面に前処理液を付着させる処理が挙げられる。前記前処理液は、α化麺類の乾燥、α化麺類どうしの付着等の不都合を防止するためのもので、典型的には水を主体とし、更に油脂、増粘剤、塩等を含有し得る。なお、前処理液に含有される油脂は、前記炒め調理工程で用いる油脂には含まれない。
前処理液のα化麺類への付着方法は特に制限されず、例えば、α化麺類に前処理液を噴霧する方法、前処理液中にα化麺類を浸漬させる方法が挙げられる。前処理液の付着量は、α化麺類100質量部に対して、好ましくは2~10質量部、より好ましくは4~8質量部である。また、前記前処理工程による作用効果を一層確実に奏させるようにする観点から、該工程に供するα化麺類及び前処理液の品温は、好ましくは20~60℃である。
【0019】
本発明の炒め調理工程で用いる第1のソースは、典型的には、製造目的物である冷蔵又は冷凍炒め麺類の喫食可能状態での食味、すなわち炒め麺類の食味を決定づけるものであり、炒め麺類とともに喫食されるソースのベースとなるものである。
本発明の製造方法では、2種類のソース(第1のソース、第2のソース)を用いるところ、第1のソースは魚卵類を含有しない。
第1のソースとしては、炒め調理が可能なものを特に制限無く用いることができ、例えば、ミートソース、ナポリタンソース、アラビアータソース、トマトソース、ブラウンソース、カレーソース、ウスターソース、オイスターソース、ホワイトソース、クリームソースが挙げられ、併用するα化麺類の種類等に応じて、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。第1のソースは常法に従って製造することができる。第1のソースは、典型的には、常温常圧(当該ソースの喫食可能状態)で流動性を有する液状部を主体とし、更に、常温常圧で固体の固形物を含有し得る。前記固形物としては、例えば、野菜類、キノコ類、肉類、魚介類、魚卵類以外の卵類等の具材;香辛料類が挙げられる。
【0020】
第1のソースは香味油脂を含有してもよい。これにより、冷蔵又は冷凍炒め麺類の喫食可能状態での香ばしい風味が一層向上し得る。前記香味油脂としては、例えば、バター、マーガリン等の食用油脂;食用油脂にネギ、玉ネギ、ニンニク、生姜等の香味野菜を漬け込んだ香味野菜入り油脂;食用油脂に海老の頭、煮干等の魚介類を漬け込んだ魚介類入り油脂が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。第1のソースにおける香味油脂の含有量は、該ソースの全質量に対して、好ましくは0.5~10質量%、より好ましくは1~7質量%である。
【0021】
本発明の炒め調理工程では、α化麺類と第1のソースとを混合して炒め調理する。炒め調理については前述したとおりである。炒め調理は常法に従って行うことができ、典型的には、加熱した鉄板やフライパン等の調理器具を用いて、食材(α化麺類、第1のソース等)を炒め油脂とともに加熱する。前記炒め油脂は、炒め調理に使用可能な食用油脂を特に制限無く用いることができ、例えば、菜種油、オリーブ油が挙げられ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。炒め調理に用いる油脂量は、α化麺類100質量部に対して、好ましくは1~10質量部、より好ましくは2~7質量部である。
【0022】
本発明の炒め調理工程では、例えば次のようにして炒め調理を行うことができる。熱した鉄板に第1のソースを流しいれ、該ソースが温まったところでα化麺類を投入し、該α化麺類をほぐしながら、該α化麺類の表面全体ができるだけ均一に加熱されるように炒める。炒め温度(α化麺類の品温)は、好ましくは120~230℃、より好ましくは130~210℃である。また、炒め調理の時間は、炒め温度によって適宜設定すればよいが、好ましくは30秒~8分、より好ましくは45秒~6分である。
【0023】
本発明の炒め調理工程において、第1のソースの使用量(α化麺類と混合する量)は特に制限されないが、本発明の所定の効果を一層確実に奏させるようにする観点から、α化麺類100質量部に対して、好ましくは15~30質量部、より好ましくは18~26質量部である。第1のソースの使用量が少なすぎると、炒め麺類が調味不足となるおそれがあり、第1のソースの使用量が多すぎると、炒め風味が不足となるおそれがある。
【0024】
本発明のトッピング工程で用いる第2のソースは、魚卵類を含有する。魚卵類としては、魚介類の腹子であって食品に使用可能なものを特に制限無く用いることができ、例えば、タラ、スケトウダラ、マダラ、ニシン、サケ、トビウオ等の腹子が挙げられる。本発明で用いる魚卵類の形態は特に制限されず、例えば、生状、乾燥物、塩蔵物、冷凍物の何れでもよく、唐辛子付けのタラコ(明太子)のような、調味されたものでもよい。本発明では魚卵類の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
第2のソースが含有する魚卵類は、茹で調理されたものであることを要する。第2のソースが含有する魚卵類が、加熱調理されていない生の魚卵類である、あるいは茹で調理以外の加熱調理(例えば焼き調理のような乾式加熱調理)が施されたものであると、冷蔵又は冷凍炒め麺類の喫食可能状態での炒め風味、魚卵類の粒感が不十分となるおそれがある(後述の比較例5~8)。
【0026】
本発明では、魚卵類の茹で調理方法は、魚卵類を十分な量の水分の存在下で加熱調理する方法であればよく特に制限されない。例えば、魚卵類を液体に浸漬させた魚卵類含有液体を、鍋等の調理器具を用いて加熱するか、又は電子レンジで加熱する方法が挙げられる。前記魚卵類含有液体における液体は、水でもよく、第2のソースの主体をなす液状部でもよい。前記液状部は、例えば、水に加えて更に、調味料、具材等を含有するものであり得る。
【0027】
第2のソースは、典型的には、常温常圧(当該ソースの喫食可能状態)で流動性を有する液状部を主体とし、該液状部が魚卵類を含有する。第2のソースの液状部は、調味されていないもの(例えば魚卵類以外の成分は水及び/又は食用油脂のみ)でもよく、第1のソースの液状部のように調味されていてもよい。第2のソースの液状部としては、例えば、トマトソース、クリームソース、ホワイトソース、オイルソース、ブラウンソース、レモンソース、中華ソースが挙げられ、併用するα化麺類の種類等に応じて、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。第2のソースについては、魚卵類を含有することを条件として、前述した第1のソースに適用可能な構成を適宜採用することができる。第1のソースと第2のソースとは、後者が魚卵類を含有する点を除き、同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、両ソースともにホワイトソースであってもよく、前者がホワイトソース、後者がホワイトソース以外の魚卵類非含有ソースであってもよい。
【0028】
本発明のトッピング工程では、前記炒め調理工程で得られたソース和え炒め麺類、すなわちα化麺類と第1のソースとの混合物の炒め物の上に、第2のソースを混合・攪拌せずにトッピングする。本発明では、魚卵類含有ソースである第2のソースのソース和え炒め麺類への付与方法はトッピングだけ、すなわち該麺類の上に載せるだけであり、該麺類と第2のソースとを混ぜないことを要する。例えば、ソース和え炒め麺類の上に第2のソースを載せた後にこれらを混合・攪拌して、ソース和え炒め麺類の全体に第2のソースが付着した状態にしてしまうと、冷蔵又は冷凍炒め麺類を喫食可能状態とした炒め麺類が油っぽさの強いものとなり、香ばしい風味及び魚卵類の粒感が低減するおそれがある(後述の比較例1)。
第2のソースのソース和え炒め麺類へのトッピング作業は、前記炒め調理工程で炒め調理に用いた鍋等の調理器具で行ってもよく、該調理器具からソース和え炒め麺類を皿等の容器に移した後に行ってもよい。
また、ソース和え炒め麺類における第2のソースがトッピングされる部位は特に制限されない。例えば、ソース和え炒め麺類の麺塊の上面視における一部(例えば中央部)のみでもよく、該麺塊の上面視における全体でもよい。
【0029】
本発明のトッピング工程において、第2のソースの使用量(α化麺類にトッピングする量)は特に制限されないが、本発明の所定の効果を一層確実に奏させるようにする観点から、α化麺類100質量部に対して、好ましくは4~30質量部、より好ましくは8~24質量部である。第2のソースの使用量が少なすぎると、魚卵類の粒感が不足となるおそれがあり、第2のソースの使用量が多すぎると、炒め風味が不足となるおそれがある。
【0030】
本発明の所定の効果を一層確実に奏させるようにする観点から、本発明の製造方法において、第1のソースの使用量と第2のソースの使用量との質量比は、前者:後者として、好ましくは1:1~4:1、より好ましくは1.5:1~3:1である。
【0031】
本発明の製造方法では、前記トッピング工程で得られた「上部に第2のソースが載せられたソース和え炒め麺類」(以下、「魚卵類トッピング炒め麺類」とも言う。)を冷蔵又は冷凍する。魚卵類トッピング炒め麺類を冷蔵するか、冷凍するかは任意に選択し得る。魚卵類トッピング炒め麺類の冷蔵方法、冷凍方法は特に制限されず、麺類を冷蔵又は冷凍する際に行う方法を採用できる。
例えば、魚卵類トッピング炒め麺類を冷蔵する場合は、該麺類の品温を0~8℃程度に調整することができる。また、魚卵類トッピング炒め麺類を冷凍する場合は、該麺類の品温を-4~-20℃程度に調整することができる。
冷凍方法としては、急速冷凍、緩慢冷凍の何れも採用できるが、品質低下を最小限にする観点から、急速冷凍が好ましい。ここで言う「急速冷凍」とは、最大氷結晶生成温度帯を60分間以内に通過する条件で被冷凍物(魚卵類トッピング炒め麺類)を冷凍する方法を指す。
魚卵類トッピング炒め麺類をトレイ等の容器に充填してから冷蔵又は冷凍すると、最終的に得られる冷蔵又は冷凍炒め麺類を、電子レンジ等のマイクロ波加熱装置を用いて加熱して喫食可能状態とするときに、該容器ごと加熱することが可能となり、喫食可能状態とするまでの作業が簡便になり得る。
【0032】
本発明の製造方法によって製造された冷蔵炒め麺類は、ソースの種類、麺類の種類等によっては、品温を室温程度まで上昇させずにそのまま喫食することができるが、典型的には、冷凍炒め麺類と同様に、品温を上昇させてから喫食する。冷蔵又は冷凍炒め麺類の喫食可能状態とするための品温上昇方法は特に制限されず、例えば、雰囲気温度が室温(25℃程度)の環境に該麺類を静置することで、該麺類の品温を比較的緩慢に上昇させる方法でもよいが、簡便性等の観点から、加熱処理を実施する方法が好ましい。前記加熱処理としては、例えば、電子レンジ又はオーブンによる加熱処理、過熱水蒸気による加熱処理が挙げられる。電子レンジとしては、一般的な出力500~600Wのものを使用してもよく、より高出力な1000~1800Wのものを使用してもよい。
【実施例0033】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0034】
〔実施例1~16:冷凍炒め麺類の製造〕
市販の乾燥スパゲティを大量の沸騰水の入った鍋に投入し、一定時間茹で調理(α化処理)した後、ざるに入れて水分を十分に切って、茹で歩留まり260質量%のα化スパゲティを得た(α化工程)。別の鍋に4gの炒め油脂(オリーブ油)を入れ、該鍋をIH調理機にセットして該炒め油脂の品温が140℃となった時点で該鍋に、前記α化スパゲティ100gと、ソースA(第1のソース)24gとを加え、3分間かき混ぜながら炒め調理し、ソース和え炒め麺類を得た(炒め調理工程)。次に、前記ソース和え炒め麺類をプラスチック製トレイにとり、該麺類からなる麺塊の上面視における中央部に、下記方法により調製したソースB1(第2のソース)12gを混合・攪拌せずに載せた(トッピング工程)。こうしてソースB1がトッピングされたソース和え炒め麺類を、庫内温度-20℃の冷凍庫に入れて急速冷凍し(冷凍工程)、冷凍炒め麺類(冷凍炒めタラコスパゲティ)を製造した。
【0035】
ソースAは、常法により製造したホワイトソースであり、魚卵類は含有しない。
ソースB1は、以下の手順で製造したタラコソースであり、茹で調理したタラコ(魚卵類)を含有する。耐熱性容器に、生タラコ(皮を除去してバラバラにしたバラ卵)100g、バター5g、日本酒5g、醤油5g、レモン汁2g、溶き片栗粉水10gを入れ、該容器を電子レンジに入れて出力500Wで40秒間加熱した。電子レンジによる加熱後、前記容器の内容物全体を十分に攪拌してから、該容器を再度電子レンジに入れて500Wで40秒間加熱し、ソースB1を製造した。
【0036】
〔比較例1:冷凍炒め麺類の製造〕
実施例1において、トッピング工程を実施せずに、ソースB1をソース和え炒め麺類に添加・混合した。以上の点以外は実施例1と同様にして、冷凍炒め麺類(冷凍炒めタラコスパゲティ)を製造した。
【0037】
〔比較例2:冷凍炒め麺類の製造〕
実施例1において、炒め調理工程でソースAを用いずに炒め麺類を得、次に、該炒め麺類を火からおろしてソースAを混合・攪拌してソース和え炒め麺類を得、次に、該ソース和え炒め麺類に対してソースB1を用いてトッピング工程を実施した。以上の点以外は実施例1と同様にして、冷凍炒め麺類(冷凍炒めタラコスパゲティ)を製造した。
【0038】
〔比較例3:冷凍炒め麺類の製造〕
実施例1において、炒め調理工程でソースAを用いずに炒め麺類を得、次に、該炒め麺類を火からおろしてソースAを混合・攪拌してソース和え炒め麺類を得、次に、トッピング工程を実施せずに、該ソース和え炒め麺類にソースB1を混合・攪拌した。以上の点以外は実施例1と同様にして、冷凍炒め麺類(冷凍炒めタラコスパゲティ)を製造した。
【0039】
〔比較例4:冷凍炒め麺類の製造〕
実施例1において、炒め調理工程でソースA及びソースB1の両方を用いて炒め麺類を得、次に、トッピング工程を実施せずに冷凍工程を実施した。以上の点以外は実施例1と同様にして、冷凍炒め麺類(冷凍炒めタラコスパゲティ)を製造した。
【0040】
〔比較例5、6:冷凍炒め麺類の製造〕
ソースB1に代えてソースB2(第2のソース)を用いた以外は比較例1、2と同様にして、冷凍炒め麺類(冷凍炒めタラコスパゲティ)を製造した。
ソースB2は、ソースB1と配合が同じで、電子レンジによる加熱を行っていない点でソースB1と相違する。
【0041】
〔比較例7、8:冷凍炒め麺類の製造〕
ソースB1に代えてソースB3(第2のソース)を用いた以外は比較例1、2と同様にして、冷凍炒め麺類(冷凍炒めタラコスパゲティ)を製造した。
ソースB3として、前記のソースB1の製造方法において、生タラコに代えて焼き調理したタラコを用いて製造したものを用いた。
【0042】
〔評価試験〕
評価対象の冷凍炒め麺類(冷凍炒めタラコスパゲティ)を、プラスチック製の包装袋に密封した状態で庫内温度-20℃の冷凍庫で1週間冷凍保存した後、該包装袋から取り出して耐熱性の皿の上面に載せ、該上面全体を該冷凍炒め麺類とともにラップフィルムで覆った。このラップフィルムで覆われた冷凍炒め麺類を皿ごと電子レンジに入れて出力1500Wで4分30秒間加熱して、該冷凍炒め麺類を喫食可能状態である炒め麺類(炒めタラコスパゲティ)とした。こうして得られた炒め麺類を、訓練された10名の専門パネラーに喫食してもらい、その際の炒め風味及び魚卵類の粒感をそれぞれ下記評価基準で評価してもらった。その結果を10名の平均値として表1~表3に示す。
【0043】
<炒め風味の評価基準>
5点:香ばしい風味が非常に強く感じられ、非常に良好。
4点:香ばしい風味が強く感じられ、良好。
3点:香ばしい風味が感じられる。
2点:香ばしい風味があまり感じられず、油っぽさがあり、不良。
1点:香ばしい風味が感じられず、油っぽさが強く、非常に不良。
<魚卵類の粒感の評価基準>
5点:魚卵類の粒感が非常に強く感じられ、非常に良好。
4点:魚卵類の粒感が強く感じられ、良好。
3点:魚卵類の粒感が感じられる。
2点:魚卵類の粒感があまり感じられず、べたつきがあり、不良。
1点:魚卵類の粒感が感じられず、べたつきが強く、非常に不良。
【0044】
【0045】
表1に示すとおり、実施例1は、炒め調理工程でα化スパゲティに魚卵類非含有ソース(ソースA、第1のソース)を混合・攪拌してソース和え炒め麺類を得、該ソース和え炒め麺類に、茹で調理した魚卵類を含有するソース(ソースB1、第2のソース)を混合・攪拌せずにトッピングしたため、このような工程を経ていない各比較例に比べて、冷凍炒め麺類の電子レンジで加熱後の炒め風味及び魚卵類の粒感に優れていた。
【0046】
なお、冷凍工程を実施しなかった以外は比較例4と同様にして製造した炒め麺類(炒めタラコスパゲティ)について、前記と同様の方法で炒め風味及び魚卵類の粒感をそれぞれ評価したところ、炒め風味の評価結果は1点、魚卵類の粒感の評価結果は4点であった。
【0047】
【0048】