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特開2023-125886洗浄槽、洗浄機、洗浄方法、ガラス基板の製造方法、およびEUVL用マスクブランクの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125886
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】洗浄槽、洗浄機、洗浄方法、ガラス基板の製造方法、およびEUVL用マスクブランクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/08 20060101AFI20230831BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230831BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20230831BHJP
   B08B 3/12 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
B08B3/08 Z
H01L21/304 643D
B08B3/02 B
B08B3/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030237
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】宮本 尚明
(72)【発明者】
【氏名】嶋崎 剛
(72)【発明者】
【氏名】酒井 佑典
【テーマコード(参考)】
3B201
5F157
【Fターム(参考)】
3B201AA03
3B201AB34
3B201AB47
3B201BA01
3B201BB02
3B201BB22
3B201BB83
3B201BB92
3B201BB98
5F157AA02
5F157AA03
5F157AA73
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB33
5F157AB90
5F157AC01
5F157BB73
5F157BE12
5F157BE43
5F157BE44
5F157BE45
5F157CC01
5F157CF02
5F157CF06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】洗浄室に溜めた洗浄液の排出効率を向上することで、対象物から洗浄液に剥落したパーティクルの排出効率を向上する、技術を提供すること。
【解決手段】洗浄槽110は、対象物190が浸漬される洗浄液101を溜める洗浄室111を内部に有し、前記洗浄室111の下面の供給口112から供給された前記洗浄液101を、前記洗浄室111の上面の周縁から流出させる。前記洗浄室111は、前記下面の面積が、前記上面の面積よりも小さい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物が浸漬される洗浄液を溜める洗浄室を内部に有し、前記洗浄室の下面の供給口から供給された前記洗浄液を、前記洗浄室の上面の周縁から流出させる、洗浄槽であって、
前記洗浄室は、前記下面の面積が、前記上面の面積よりも小さい、洗浄槽。
【請求項2】
前記洗浄室は、前記下面と前記上面のそれぞれが円形である、請求項1に記載の洗浄槽。
【請求項3】
前記洗浄室の少なくとも下部は、下方から上方に向かうほど、水平な断面の面積が徐々に大きくなる、請求項1又は2に記載の洗浄槽。
【請求項4】
前記洗浄室の少なくとも下部は、円錐台形状を有する、請求項3に記載の洗浄槽。
【請求項5】
前記洗浄槽は、前記洗浄室の前記上面の前記周縁に、前記周縁に沿って間隔をおいて複数の溝を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の洗浄槽。
【請求項6】
前記洗浄室は、前記下面の面積に対する、前記下面の面積と前記供給口の面積との差の割合が10%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の洗浄槽。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の洗浄槽と、前記洗浄室の前記上面の前記周縁から流出した前記洗浄液を回収する回収槽と、を備える洗浄機。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の洗浄槽の内部で前記洗浄液に前記対象物を浸漬させ、前記洗浄液の流れによって前記対象物を洗浄することを有する、洗浄方法。
【請求項9】
前記対象物は、基板を洗浄する洗浄ツール、又は基板である、請求項8に記載の洗浄方法。
【請求項10】
前記洗浄ツールは、基板を覆う液膜に接する振動面と、前記振動面を振動させる超音波振動子とを含む洗浄ヘッドである、請求項9に記載の洗浄方法。
【請求項11】
前記洗浄ヘッドの前記振動面を前記洗浄液に浸漬させた状態で、前記超音波振動子によって前記振動面を振動させることを有する、請求項10に記載の洗浄方法。
【請求項12】
前記洗浄液は、純水、酸性溶液もしくはアルカリ性溶液、または純水、酸性溶液もしくはアルカリ性溶液にガスを溶存したものである、請求項8~11のいずれか1項に記載の洗浄方法。
【請求項13】
ガラス基板の上に液膜を形成すると共に、前記液膜に洗浄ヘッドの振動面を接触させた状態で、前記振動面を超音波振動子で振動させることで、前記ガラス基板を洗浄することと、
請求項1~6のいずれか1項に記載の洗浄槽の内部で前記洗浄液に前記洗浄ヘッドの前記振動面を浸漬させ、前記洗浄液の流れによって前記洗浄ヘッドの前記振動面を洗浄することと、
を有する、ガラス基板の製造方法。
【請求項14】
ガラス基板または前記ガラス基板の上に形成された機能膜の上に液膜を形成すると共に、前記液膜に洗浄ヘッドの振動面を接触させた状態で、前記振動面を超音波振動子で振動させることで、前記ガラス基板または前記機能膜を洗浄することと、
請求項1~6のいずれか1項に記載の洗浄槽の内部で前記洗浄液に前記洗浄ヘッドの前記振動面を浸漬させ、前記洗浄液の流れによって前記洗浄ヘッドの前記振動面を洗浄することと、
を有する、EUVL用マスクブランクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、洗浄槽、洗浄機、洗浄方法、ガラス基板の製造方法、およびEUVL用マスクブランクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの微細化に伴い、極端紫外線(Extreme Ultra-Violet:EUV)を用いた露光技術であるEUVリソグラフィー(EUVL)が開発されている。EUVとは、軟X線および真空紫外線を含み、具体的には波長が0.2nm~100nm程度の光のことである。現時点では、13.5nm程度の波長のEUVが主に検討されている。
【0003】
EUVLでは、反射型マスクが用いられる。反射型マスクは、ガラス基板などの基板と、EUVを反射する多層反射膜と、EUVを吸収する吸収膜と、をこの順で有する。吸収膜には、開口パターンが形成される。EUVLでは、吸収膜の開口パターンを半導体基板などの対象基板に転写する。転写することは、縮小して転写することを含む。
【0004】
EUVL用マスクブランクの製造工程の途中で、ガラス基板またはガラス基板の上に形成された機能膜を洗浄することがある。その洗浄方法の一つとして、超音波洗浄が行われることがある。
【0005】
特許文献1に記載の洗浄方法は、回転する基板の上面に対し、予め超音波を印可した洗浄液をノズルから噴射することを有する。特許文献2に記載の洗浄方法は、回転する基板の上面と超音波洗浄ヘッドの下面との間に洗浄液を供給し、この洗浄液に対して超音波洗浄ヘッドの下面から超音波を付与することで、基板の上面を洗浄する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-158664号公報
【特許文献2】特開2001-87725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
基板を洗浄する洗浄ツールまたは基板などの対象物を、オーバーフロー型の洗浄機で洗浄することがある。洗浄機は、洗浄室を有し、洗浄室に洗浄液を溜める。対象物は洗浄室に溜めた洗浄液に浸漬され、洗浄液の流れによって洗浄される。洗浄液は、洗浄室の下面の供給口から供給され、洗浄室の上面から流出される。
【0008】
本開示の一態様は、洗浄室に溜めた洗浄液の排出効率を向上することで、対象物から洗浄液に剥落したパーティクルの排出効率を向上する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る洗浄槽は、対象物が浸漬される洗浄液を溜める洗浄室を内部に有し、前記洗浄室の下面の供給口から供給された前記洗浄液を、前記洗浄室の上面から流出させる。前記洗浄室は、前記下面の面積が、前記上面の面積よりも小さい。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様によれば、洗浄室の下面の面積を上面の面積よりも小さくすることで、洗浄室の下部を絞ることができ、洗浄室の下部の流れに渦が発生するのを抑制できる。その結果、洗浄室に溜めた洗浄液の排出効率を向上でき、対象物から洗浄液に剥落したパーティクルの排出効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態に係る洗浄機を示す断面図である。
図2図2は、第1変形例に係る洗浄機を示す断面図である。
図3図3は、第2変形例に係る洗浄機を示す断面図である。
図4図4は、洗浄室の上面の周縁に形成される溝の一例を示す斜視図である。
図5図5は、従来例に係る洗浄機を示す断面図である。
図6図6は、一実施形態に係る基板洗浄装置を示す側面図である。
図7図7は、洗浄ヘッドの内部構造の一例を示す断面図である。
図8図8は、洗浄ヘッドの内部構造の別の一例を示す断面図である。
図9図9は、洗浄ヘッドの移動軌跡の一例を示す平面図である。
図10図10は、一実施形態に係るEUVL用マスクブランクの製造方法を示すフローチャートである。
図11図11は、基板の一例を示す断面図である。
図12図12は、図11の基板の平面図である。
図13図13は、EUVL用マスクブランクの一例を示す断面図である。
図14図14は、EUVL用マスクの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示を実施するための形態について図面を参照して説明する。各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。明細書中、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0013】
図1を参照して、一実施形態に係る洗浄機100について説明する。洗浄機100は、オーバーフロー型であって、例えば、洗浄槽110と回収槽120とを備える。洗浄槽110は、洗浄室111を内部に有し、洗浄室111に洗浄液101を溜める。対象物190は、洗浄室111に溜めた洗浄液101に浸漬され、洗浄液101の流れによって洗浄される。洗浄液101は、洗浄室111の下面111Dの供給口112から供給され、洗浄室111の上面111Uの周縁から流出される。回収槽120は、洗浄槽110から流出した洗浄液101を回収する。
【0014】
洗浄液101は、特に限定されないが、例えば、純水、酸性溶液、またはアルカリ性溶液である。洗浄液101は、例えば、純水(例えば脱イオン水)、純水とX(塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸からなる群から選択される少なくとも1つの成分)の混合物、純水とY(アンモニア、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエタノールアミン、コリン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムからなる群から選択される少なくとも1つの成分)の混合物、純水とZ(過酸化水素、過塩素酸イオン、過ヨウ素酸イオンからなる群から選択される少なくとも1つの成分)の混合物、純水とXとZの混合物、または純水とYとZの混合物である。
【0015】
洗浄液101は、Hガス、COガス、Nガス、Oガス、Oガス、及びArガスからなる群から選択される少なくとも1つのガスを溶存してもよい。ガスの溶存量を制御することで、対象物190の洗浄効率を向上できる。洗浄液に溶存するガスは、好ましくはHガス、COガスまたはNガスであり、より好ましくはCOガスである。
【0016】
洗浄機100は、供給管130と排出管140とを備える。供給管130は、洗浄槽110の供給口112に接続され、供給口112に洗浄液101を供給する。一方、排出管140は、回収槽120の排出口122に接続され、排出口122から洗浄液101を排出する。排出した洗浄液101は、廃棄されるか、フィルターに通した後に供給管130に還流される。フィルターは、パーティクルを捕集することで、洗浄液101を浄化する。
【0017】
対象物190は、例えば、基板を洗浄する洗浄ツール、又は基板である。洗浄ツールは、例えば、洗浄ヘッド30である(図7図8参照)。洗浄ヘッド30は、詳しくは後述するが、基板Wを覆う液膜Fに接する振動面31aと、振動面31aを振動させる超音波振動子32とを含む。
【0018】
洗浄ヘッド30の振動面31aは、下に向けて設置され、基板Wの上面に対して平行に設置される。超音波振動子32は、振動面31aを振動させることで液膜Fに超音波振動を付与し、基板Wに音圧を付与する。これにより、基板上面Waに付着したパーティクルを剥離できる。
【0019】
洗浄ヘッド30が基板Wを洗浄する際に、洗浄ヘッド30の振動面31aと基板Wとの距離が近く、基板Wから剥落したパーティクルが洗浄ヘッド30の振動面31aに付着することがある。振動面31aに付着したパーティクルが意図しないタイミングで剥落すると、基板Wが汚染されてしまう。
【0020】
そこで、洗浄ヘッド30は、n(nは1以上の整数)枚目の基板Wを洗浄した後、n+1枚目の基板Wを洗浄する前に、洗浄槽110の内部で待機させられる。洗浄ヘッド30の振動面31aを洗浄液101に濡らすことで、振動面31aの乾燥を防止でき、振動面31aに対するパーティクルの固着を防止できる。
【0021】
洗浄ヘッド30の振動面31aは、洗浄液101に浸漬され、洗浄液101の流れによって洗浄される。洗浄液101の流れは、振動面31aに付着したパーティクルに対してせん断応力を付与し、振動面31aからパーティクルを剥落させる。その後、パーティクルは、洗浄液101と共に洗浄室111から流出する。これにより、パーティクルが振動面31aに再付着するのを防止できる。
【0022】
洗浄ヘッド30の振動面31aが洗浄液101に浸漬した状態で、超音波振動子32が振動面31aを振動させてもよい。洗浄液101の流れだけではなく、振動面31aの振動をも利用して、振動面31aからパーティクルを剥落でき、パーティクルの除去効率を向上できる。
【0023】
なお、対象物190としての洗浄ツールは、洗浄ヘッド30には限定されない。洗浄ツールは、接触式でもよいし、非接触式でもよい。接触式の洗浄ツールとしては、基板Wを擦る摩擦体が挙げられる。摩擦体は、ブラシでもよいし、スポンジでもよい。非接触式の洗浄ツールとしては、洗浄ヘッド30の他に、流体を噴射するノズルなどが挙げられる。ノズルは、二流体ノズルであってもよい。
【0024】
洗浄機100は、上記の通り、洗浄液101の流れによって対象物190を洗浄する。洗浄液101の流れ方によって、パーティクルに付与されるせん断応力の大きさと、洗浄室111の各点から洗浄室111の外まで洗浄液101が流出するのにかかる時間が決まる。せん断応力の大きさが大きいほど、パーティクルが剥離し易い。また、洗浄室111の各点から洗浄室111の外まで洗浄液101が流出するのにかかる時間が短いほど、洗浄液101の排出効率が良い。せん断応力の大きさが大きいほど、また、洗浄液101の排出効率が良いほど、パーティクルの排出効率が良い。洗浄液101の流れ方は、主に、洗浄室111の形状で決まる。
【0025】
まず、図5を参照して従来例の洗浄室111の形状について説明する。従来例の洗浄室111は、直方体形状を有する。洗浄室111は、下面111Dと上面111Uのそれぞれが矩形である。下面111Dの面積(S1)が上面111Uの面積(S2)と同じである。洗浄室111は、下面111Dから上面111Uまで、水平な断面の面積が一定である。下面111Dは、その中央に供給口112を有する。供給口112の面積(S1A)は、下面111Dの面積(S1)よりも小さい(S1A<S1)。S1に対するΔS(ΔS=S1-S1A)の割合(ΔS/S1)が、10%を超えている。上面111Uの四辺のうち、少なくとも一辺(図5では一辺)から洗浄液101が流出する。
【0026】
従来例の洗浄室111は、下面111Dの面積(S1)が上面111Uの面積(S2)と同じである。この場合、図5に矢印で示すように、洗浄室111の下部の流れに渦が生じてしまい、洗浄液101が供給管130に逆流してしまう。その結果、供給管130から吐出される流れの速さが遅くなってしまい、パーティクルに付与されるせん断応力の大きさが小さくなってしまう。また、洗浄液101の排出効率が悪くなってしまう。せん断応力の大きさが小さく、洗浄液101の排出効率も悪いので、パーティクルの排出効率が悪くなってしまう。
【0027】
次に、図1を再度参照して本実施形態に係る洗浄室111の形状について説明する。本実施形態の洗浄室111は、下面111Dの面積(S1)が上面111Uの面積(S2)よりも小さい(S1<S2)。洗浄室111の下部を絞ることで、洗浄室111の下部の流れに渦が生じるのを抑制でき、洗浄液101が供給管130に逆流するのを抑制できる。その結果、供給管130から吐出される流れの速さが速くなり、パーティクルに付与されるせん断応力の大きさが大きくなる。また、洗浄液101の排出効率も向上する。せん断応力の大きさが大きく、洗浄液101の排出効率も良いので、パーティクルの排出効率が良くなる。
【0028】
好ましくは、洗浄室111の少なくとも下部は、下方から上方に向かうほど、水平な断面の面積が徐々に大きくなる。洗浄室111の少なくとも下部において、下方から上方に向かうほど放射状に広がる流れを形成でき、流れに渦が生じるのを抑制できる。洗浄室111の下部とは、洗浄室111の上下方向寸法をHとすると、洗浄室111の下面111Dからの距離がH/2以下の領域を意味する。
【0029】
洗浄室111の全体において、下方から上方に向かうほど、水平な断面の面積が徐々に大きくなってもよい。なお、洗浄室111は、図2及び図3に示すように、下方から上方に向かうほど水平な断面の面積が徐々に大きくなる下室111-1と、水平な断面の面積が一定である上室111-2と、を有してもよい。上室111-2は、下室111-1の上に配置される。この場合も、洗浄室111の下部の流れに渦が生じるのを抑制できる。
【0030】
図1に示すように、洗浄室111は、好ましくは、割合(ΔS/S1)が0%以上10%以下である。割合(ΔS/S1)が10%以下であれば、下面111Dの面積(S1)と供給口112の面積(S1A)がほぼ同じであるので、洗浄液101が供給管130に逆流するのを抑制できる。割合(ΔS/S1)は小さいほど好ましく、その割合(ΔS/S1)は0%であってもよい。
【0031】
洗浄室111は、好ましくは、下面111Dと上面111Uのそれぞれが円形である。従来例のように下面111Dと上面111Uのそれぞれが矩形である場合に矩形の四つ角に流れの淀みが生じてしまうのに対し、下面111Dと上面111Uのそれぞれが円形であれば、角を無くすことができ、流れに淀みが生じるのを抑制できる。従って、洗浄液101の排出効率を向上でき、パーティクルの排出効率も向上できる。
【0032】
また、上面111Uが円形であれば、上面111Uの周縁から放射状に均等に洗浄液101が流出する。従来例のように上面111Uが矩形であって上面111Uの四辺のうち、一辺から洗浄液101が流出する場合に比べて、洗浄液101の流れの偏りを低減でき、せん断応力の大きさのばらつきを低減できる。
【0033】
洗浄室111は、より好ましくは、上面111Uから下面111Dまでの鉛直方向各点において、水平な断面が円形である。換言すれば、洗浄室111は、回転体の形状を有する。回転体は、供給口112の中心を通る鉛直線を中心に、鉛直な平面図形を1回転させることで得られる立体である。回転体は、例えば、円錐台である(図1参照)。回転体は、円錐台と円柱を組み合わせた立体であってもよい(図2参照)。
【0034】
上面111Uから下面111Dまでの鉛直方向各点において、洗浄室111の水平な断面が円形であれば、各断面において、角を無くすことができ、流れに淀みが生じるのを抑制できる。また、各断面において、上記の鉛直線を中心に対称な流れを形成でき、流れの偏りを低減できる。
【0035】
洗浄室111は、例えば図1に示すように、全体が円錐台形状を有する。洗浄室111は、水平面に対する側面111Sの傾斜角θが、例えば50°~80°である。下面111Dの面積(S1)と上面111Uの面積(S2)をそれぞれ一定に保ちつつ、傾斜角θを小さくすれば、洗浄室111の上下方向寸法Hが小さくなり、洗浄室111の容積が小さくなる。洗浄室111の容積が小さいほど、洗浄室111の各点から洗浄室111の外まで洗浄液101が流出するのにかかる時間が短くなる。
【0036】
図1に示す洗浄室111は全体が円錐台形状のみを有するが、図2に示すように洗浄室111は下室111-1が円錐台形状を有し、上室111-2が円柱形状を有してもよい。対象物190は、上室111-2に配置され、下室111-1には配置されない。対象物190が円柱形状を有する場合、上室111-2も円柱形状を有することが好ましい。
【0037】
なお、下室111-1は、図3に示すように、下方から上方に向かうほど、傾斜角θが大きくなる回転体の形状を有してもよい。図3図2を比較すれば明らかなように、傾斜角θが一定である場合に比べて、下室111-1の上下方向寸法H1を短縮でき、下室111-1の容積を小さくできる。
【0038】
図示しないが、下室111-1だけではなく、洗浄室111の全体において、下方から上方に向かうほど、傾斜角θが大きくなってもよい。洗浄室111の上下方向寸法Hを短縮でき、洗浄室111の容積を小さくできる。なお、傾斜角θが一定である場合、形状が単純であるので、加工が容易である。
【0039】
図4に示すように、洗浄槽110は、洗浄室111の上面111Uの周縁に、その周縁に沿って間隔をおいて複数の溝114を有することが好ましい。溝114は、等間隔で配置されることが好ましい。洗浄槽110の設置精度が低く洗浄室111の上面111Uが傾斜している場合にも、溝114が複数存在すれば、放射状に均等に洗浄液101を流出させることができる。従って、洗浄槽110の設置精度を緩和でき、洗浄槽110の設置作業を易化できる。
【0040】
洗浄室111の上面111Uが傾斜している場合にも、上面111Uの周縁から均等に洗浄液101が流出するように、溝114の深さと数が決められる。溝114の深さは、特に限定されないが、例えば5mm~25mmである。溝114の数は、特に限定されないが、例えば8~20である。溝114の形状は、図4に示すようにV字形状であるが、U字形状などであってもよい。
【0041】
次に、表1に、洗浄室111の形状を表すパラメータと、流体シミュレーションの結果を示す。表1において、例1が比較例であり、例2~例10が実施例である。例1の洗浄室111は、全体が直方体形状を有する(図5参照)。例2~例8の洗浄室111は、全体が円錐台形状を有する(図1参照)。例9の洗浄室111は、下室111-1が円錐台形状を有し、上室111-2が円柱形状を有する(図2参照)。例10の洗浄室111は、下室111-1が後述する回転体形状Aを有し、上室111-2が円柱形状を有する(図3参照)。回転体形状Aは、下方から上方に向かうほど、傾斜角θが大きくなる形状である。例1~例10において、表1に示すパラメータ以外、流体シミュレーションの条件は同じである。
【0042】
【表1】
表1において、「θ」は洗浄室111(または下室111-1)の側面111Sの傾斜角であり、「N」は溝114の数であり、「S1」は洗浄室111の下面111Dの面積であり、「S1A」は供給口112の面積であり、「ΔS/S1」はS1に対するΔS(ΔS=S1-S1A)の割合であり、「S2」は洗浄室111の上面111Uの面積である。
【0043】
また、表1において、「T1」は洗浄室111の各点から洗浄室111の外まで洗浄液101が流出するのにかかる時間の最大値であり、「T2」は洗浄室111の各点から洗浄室111の外まで洗浄液101が流出するのにかかる時間の平均値である。
【0044】
表1から、例2~例10によれば、例1に比べて、T1とT2を短縮でき、洗浄液101の排出効率を向上できることが分かる。
【0045】
次に、図6図9を参照して、一実施形態に係る基板洗浄装置1について説明する。基板洗浄装置1は、基板Wの上に形成された液膜Fに対して超音波振動を付与することで、基板Wを洗浄する。基板Wに付着したパーティクルを除去できる。基板洗浄装置1は、保持部10と、ノズル20と、洗浄ヘッド30と、回転部40と、第1移動部50と、第2移動部60と、制御部90と、を備える。
【0046】
保持部10は、基板Wを水平に保持する。上方から見たときに、基板Wは、矩形であるが(図9参照)、円形であってもよい。基板Wは、ガラス基板、シリコンウエハ、又は化合物半導体ウエハを含む。基板Wは、ガラス基板などの上に形成される機能膜を含んでもよい。機能膜は、例えば光反射膜、光吸収膜、導電膜、または絶縁膜などである。
【0047】
保持部10は、例えば図6に示すように、基板Wの周縁に沿って間隔をおいて配置される複数本のピン11を含む。複数本のピン11は、基板Wの周縁を保持する。基板Wは、複数本のピン11の上に載置される。基板Wの下には空間が存在するので、基板Wの下面にセンサを取りけることも可能である。なお、保持部10は、基板Wを吸着してもよい。
【0048】
ノズル20は、保持部10で保持している基板Wの上面Waに洗浄液を供給することで液膜Fを形成する。基板Wの上面Waを、基板上面Waとも記載する。ノズル20は、例えば、基板上面Waの中心付近に洗浄液を供給する。基板Wは回転しており、基板W上の洗浄液は遠心力によって基板Wの中心から周縁に向けて濡れ広がる。その結果、基板上面Waの全体に液膜Fが形成される。ノズル20は、図6に示すように洗浄ヘッド30の外部に設けられてもよいし、図示しないが洗浄ヘッド30の内部に設けられてもよい。
【0049】
ノズル20は、供給ライン21を介して洗浄液の供給源22と接続されている。供給ライン21の途中には、バルブ23が設けられている。バルブ23は、供給ライン21の流路を開閉する。バルブ23が供給ライン21の流路を開放すると、洗浄液が供給源22からノズル20に供給され、ノズル20が洗浄液を吐出する。バルブ23が供給ライン21の流路を閉塞すると、ノズル20が洗浄液の吐出を停止する。
【0050】
洗浄液は、例えば、純水、純水とX(塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸からなる群から選択される少なくとも1つの成分)の混合物、純水とY(アンモニア、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエタノールアミン、コリン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムからなる群から選択される少なくとも1つの成分)の混合物、純水とZ(過酸化水素、過塩素酸イオン、過ヨウ素酸イオンからなる群から選択される少なくとも1つの成分)の混合物、純水とXとZの混合物、または純水とYとZの混合物である。
【0051】
洗浄液は、Hガス、COガス、Nガス、Oガス、Oガス、及びArガスからなる群から選択される少なくとも1つのガスを溶存してもよい。ガスの溶存量を制御することで、キャビテーションの発生効率を向上でき、パーティクルの除去効率を向上できる。洗浄液に溶存するガスは、好ましくはHガス、COガスまたはNガスであり、より好ましくはCOガスである。
【0052】
洗浄ヘッド30は、図7に示すように、液膜Fに接触する振動面31aと、振動面31aを振動させる超音波振動子32とを含む。洗浄ヘッド30は、振動板31を含む。振動板31は、液膜Fに接触する下向きの振動面31aと、超音波振動子32が取り付けられる上向きの取付面31bと、を有する。
【0053】
振動面31aは、基板上面Waに対して平行に設置される。振動面31aの大きさは、例えば基板上面Waの大きさよりも小さい。振動面31aの形状は、例えば円形である。なお、ノズル20が洗浄ヘッド30の内部に設けられる場合、ノズル20の吐出口が振動面31aに形成される。
【0054】
取付面31bは、図7に示すように振動面31aに対して平行に設置されてもよいし、図8に示すように振動面31aに対して斜めに設置されてもよい。図8において、θは、振動面31aの法線と、取付面31bの法線とのなす角である。取付面31bの法線方向が、超音波振動子32の振動方向である。
【0055】
超音波振動子32は、振動面31aを振動させることで液膜Fに超音波振動を付与し、基板Wに音圧を付与する。これにより、基板上面Waに付着したパーティクルを剥離できる。超音波振動子32の出力は、制御部90によって制御する。洗浄ヘッド30と基板Wの距離Dが一定の場合、超音波振動子32の出力が大きくなるほど、基板Wに作用する音圧が大きくなる。
【0056】
図6に示すように、回転部40は、保持部10と共に基板Wを回転させる。保持部10の回転中心線10Rは、鉛直に設置される。保持部10は、その回転中心線10Rが基板Wの中心を通るように基板Wを保持する。回転部40は、例えばサーボモータ41を含む。サーボモータ41の回転駆動力は、図示しないプーリとベルト、またはギヤを介して保持部10に伝達されてもよい。サーボモータ41は、保持部10の回転位置に関する情報を制御部90に送信する。保持部10の回転位置は、回転角で表される。サーボモータ41の代わりに、ステッピングモータが用いられてもよい。
【0057】
第1移動部50は、保持部10の回転中心線10Rと直交する水平方向に洗浄ヘッド30を移動させる。洗浄ヘッド30は、例えば、基板Wの中心の真上の位置と、基板Wの周縁の真上の位置との間で移動させられる。第1移動部50は、例えばサーボモータ51を含む。サーボモータ51は、洗浄ヘッド30の水平方向位置に関する情報を制御部90に送信する。サーボモータ51の代わりに、ステッピングモータが用いられてもよい。
【0058】
図9に示すように、上方から見たときに、洗浄ヘッド30の移動経路には洗浄槽110が設けられている。洗浄ヘッド30は、n(nは1以上の整数)枚目の基板Wを洗浄した後、n+1枚目の基板Wを洗浄する前に、洗浄槽110の内部で待機させられる。洗浄ヘッド30の振動面31aを洗浄液101に濡らすことで、振動面31aの乾燥を防止でき、振動面31aに対するパーティクルの固着を防止できる。また、洗浄ヘッド30の振動面31aを洗浄液101の流れによって洗浄できる。
【0059】
図6に示すように、第1移動部50は、例えば旋回軸52を回転させることで、保持部10の回転中心線10Rと直交する水平方向に洗浄ヘッド30を移動させる。旋回軸52は旋回アーム53の一端に固定されており、洗浄ヘッド30は旋回アーム53の他端に固定されている。洗浄ヘッド30の旋回中心線30Rは、鉛直に設置される。
【0060】
なお、図示しないが、第1移動部50は、水平なガイドレールに沿って、保持部10の回転中心線10Rと直交する水平方向に洗浄ヘッド30を移動させてもよい。
【0061】
第2移動部60は、洗浄ヘッド30を鉛直方向に移動させる。例えば、第2移動部60は、旋回軸52を鉛直方向に移動させることで、洗浄ヘッド30を鉛直方向に移動させる。第2移動部60は、例えばサーボモータ61を含む。第2移動部60は、サーボモータ61の回転運動を直線運動に変換するボールねじを含んでもよい。サーボモータ61は、洗浄ヘッド30の鉛直方向位置に関する情報を制御部90に送信する。サーボモータ61の代わりに、ステッピングモータが用いられてもよい。第2移動部60は、モータの代わりに、エアシリンダで洗浄ヘッド30を鉛直方向に移動させてもよい。
【0062】
なお、図示しないが、第2移動部60は、洗浄ヘッド30を鉛直方向に移動させる代わりに、保持部10を鉛直方向に移動させてもよい。いずれにしろ、基板Wと洗浄ヘッド30の距離Dを変更できる。
【0063】
制御部90は、バルブ23と超音波振動子32と回転部40と第1移動部50と第2移動部60とを制御する。制御部90は、例えばコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)91と、メモリ等の記憶媒体92とを備える。記憶媒体92には、基板洗浄装置1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部90は、記憶媒体92に記憶されたプログラムをCPU91に実行させることにより、基板洗浄装置1の動作を制御する。
【0064】
次に、基板洗浄装置1の動作、つまり基板洗浄方法について説明する。まず、図示しない搬送ロボットが、基板洗浄装置1の内部に進入し、搬送ロボットが保持している基板Wを保持部10に渡す。保持部10が基板Wを水平に保持した後、搬送ロボットが基板洗浄装置1から退出する。このようにして基板Wの搬入が行われる。
【0065】
次に、回転部40が保持部10と共に基板Wを回転させると共に、ノズル20が基板Wの中心付近に洗浄液を供給する。基板W上の洗浄液は遠心力によって基板Wの中心から周縁に向けて濡れ広がる。その結果、基板上面Waの全体に液膜Fが形成される。洗浄液の供給量は、例えば0.1L/min~5.0L/min、好ましくは0.8L/min~1.6L/minである。
【0066】
次に、洗浄ヘッド30の振動面31aが液膜Fに接触するように、第1移動部50が洗浄ヘッド30の水平方向位置を調整すると共に、第2移動部60が洗浄ヘッド30の鉛直方向位置を調整する。洗浄ヘッド30と基板Wの間には、所望の間隔が形成される。その間隔は、例えば0.1mm~5.0mm、好ましくは1.0mm~4.0mmである。
【0067】
次に、超音波振動子32が洗浄ヘッド30の振動面31aを振動させることで液膜Fに超音波振動を付与し、基板上面Waに音圧を付与する。
【0068】
次に、第1移動部50が洗浄ヘッド30を保持部10の回転中心線10Rと直交する水平方向に移動させる。洗浄ヘッド30は、基板Wの中心の真上の位置と、基板Wの周縁の真上の位置との間を往復移動させられる。基板Wは回転しており、基板上面Waの全体が洗浄される。
【0069】
次に、第2移動部60が洗浄ヘッド30を上昇させた後、第1移動部50が洗浄ヘッド30の水平方向位置を待機位置まで移動させる。待機位置は、例えば洗浄槽110の内部の位置である。また、超音波振動子32が振動面31aの振動を停止し、ノズル20が洗浄液の供給を停止する。
【0070】
次に、ノズル20が洗浄液の供給を停止した状態で、回転部40が保持部10と共に基板Wを回転させることで、基板W上の洗浄液が遠心力によって基板Wの周縁から振り切られる。基板Wから液膜Fが除去され、基板Wが乾燥させられる。
【0071】
次に、図示しない搬送ロボットが基板洗浄装置1の内部に進入し、保持部10から基板Wを受け取る。搬送ロボットが基板Wを保持した後、搬送ロボットが基板洗浄装置1から退出する。このようにして基板Wの搬出が行われる。
【0072】
次に、図10を参照して、図13に示すEUVL用マスクブランク200の製造方法について説明する。EUVL用マスクブランク200の製造方法は、ステップS101~S107を有する。例えば図11及び図12に示す基板210が予め準備される。基板210がガラス基板である場合、ステップS101~S104はガラス基板の製造方法に含まれる。
【0073】
基板210は、第1主面211と、第1主面211とは反対向きの第2主面212とを含む。第1主面211は、矩形状である。本明細書において、矩形状とは、角に面取加工を施した形状を含む。また、矩形は、正方形を含む。第2主面212は、第1主面211とは反対向きである。第2主面212も、第1主面211と同様に、矩形状である。
【0074】
また、基板210は、4つの端面213と、4つの第1面取面214と、4つの第2面取面215とを含む。端面213は、第1主面211及び第2主面212に対して垂直である。第1面取面214は、第1主面211と端面213の境界に形成される。第2面取面215は、第2主面212と端面213の境界に形成される。第1面取面214及び第2面取面215は、本実施形態では、いわゆるC面取面であるが、R面取面であってもよい。
【0075】
基板210は、例えばガラス基板である。基板210のガラスは、TiOを含有する石英ガラスが好ましい。石英ガラスは、一般的なソーダライムガラスに比べて、線膨張係数が小さく、温度変化による寸法変化が小さい。石英ガラスは、SiOを80質量%~95質量%、TiOを4質量%~17質量%含んでよい。TiO含有量が4質量%~17質量%であると、室温付近での線膨張係数が略ゼロであり、室温付近での寸法変化がほとんど生じない。石英ガラスは、SiOおよびTiO以外の第三成分又は不純物を含んでもよい。
【0076】
平面視にて基板210のサイズは、例えば縦152mm、横152mmである。縦寸法及び横寸法は、152mm以上であってもよい。
【0077】
基板210は、第1主面211に中央領域211Aと周縁領域211Bとを有する。中央領域211Aは、その中央領域211Aを取り囲む矩形枠状の周縁領域211Bを除く、正方形の領域であり、ステップS101~S104によって所望の平坦度に加工される領域であり、品質保証領域である。品質保証領域は、例えば縦142mm、横142mmのサイズを有する。中央領域211Aの4つの辺は、4つの端面213に平行である。中央領域211Aの中心は、第1主面211の中心に一致する。
【0078】
なお、図示しないが、基板210の第2主面212も、第1主面211と同様に、中央領域と、周縁領域とを有する。第2主面212の中央領域は、第1主面211の中央領域と同様に、正方形の領域であって、図10のステップS101~S104によって所望の平坦度に加工される領域であり、品質保証領域である。品質保証領域は、例えば縦142mm、横142mmのサイズを有する。
【0079】
ステップS101は、基板210の第1主面211及び第2主面212を研磨することを含む。第1主面211及び第2主面212は、本実施形態では不図示の両面研磨機で同時に研磨されるが、不図示の片面研磨機で順番に研磨されてもよい。ステップS101では、研磨パッドと基板210の間に研磨スラリーを供給しながら、基板210を研磨する。
【0080】
研磨パッドとしては、例えばウレタン系研磨パッド、不織布系研磨パッド、又はスウェード系研磨パッドなどが用いられる。研磨スラリーは、研磨剤と分散媒とを含む。研磨剤は、例えば酸化セリウム粒子である。分散媒は、例えば水又は有機溶剤である。第1主面211及び第2主面212は、異なる材質又は粒度の研磨剤で、複数回研磨されてもよい。
【0081】
なお、ステップS101で用いられる研磨剤は、酸化セリウム粒子には限定されず、例えば、酸化シリコン粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化チタン粒子、ダイヤモンド粒子、又は炭化珪素粒子などであってもよい。
【0082】
ステップS102は、基板210の第1主面211及び第2主面212の表面形状を測定することを含む。表面形状の測定には、例えば、表面が傷付かないように、レーザー干渉式などの非接触式の測定機が用いられる。測定機は、第1主面211の中央領域211A、及び第2主面212の中央領域の表面形状を測定する。
【0083】
ステップS103は、ステップS102の測定結果を参照し、平坦度を向上すべく、基板210の第1主面211及び第2主面212を局所加工することを含む。第1主面211と第2主面212は、順番に局所加工される。その順番は、どちらが先でもよく、特に限定されない。
【0084】
局所加工には、例えば、GCIB(Gas Cluster Ion Beam)法、PCVM(Plasma Chemical Vaporization Machining)法、磁性流体による研磨法、及び回転研磨工具による研磨から選ばれる少なくとも1つが用いられる。
【0085】
ステップS104は、基板210の第1主面211及び第2主面212の仕上げ研磨を行うことを含む。第1主面211及び第2主面212は、本実施形態では不図示の両面研磨機で同時に研磨されるが、不図示の片面研磨機で順番に研磨されてもよい。ステップS104では、研磨パッドと基板210の間に研磨スラリーを供給しながら、基板210を研磨する。研磨スラリーは、研磨剤を含む。研磨剤は、例えばコロイダルシリカ粒子である。
【0086】
ステップS105は、基板210の第2主面212の中央領域に、図13に示す導電膜240を形成することを含む。導電膜240は、EUVL用マスクを露光装置の静電チャックに吸着するのに用いられる。導電膜240は、例えば窒化クロム(CrN)などで形成される。導電膜240の成膜方法としては、例えばスパッタリング法が用いられる。
【0087】
ステップS106は、基板210の第1主面211の中央領域211Aに、図13に示す多層反射膜220を形成することを含む。多層反射膜220は、EUVを反射する。多層反射膜220は、例えば高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層したものである。高屈折率層は例えばシリコン(Si)で形成され、低屈折率層は例えばモリブデン(Mo)で形成される。多層反射膜220の成膜方法としては、例えばイオンビームスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法などのスパッタリング法が用いられる。
【0088】
ステップS107は、ステップS106で形成された多層反射膜220の上に、図13に示す吸収膜230を形成することを含む。吸収膜230は、EUVを吸収する。吸収膜230は、位相シフト膜であってもよく、EUVの位相をシフトさせてもよい。吸収膜230は、例えばタンタル(Ta)、クロム(Cr)、パラジウム(Pd)から選ばれる少なくとも1つの元素を含む単金属、合金、窒化物、酸化物、酸窒化物などで形成される。吸収膜230の成膜方法としては、例えばスパッタリング法が用いられる。
【0089】
なお、ステップS106~S107は、本実施形態ではステップS105の後に実施されるが、ステップS105の前に実施されてもよい。
【0090】
上記ステップS101~S107により、図13に示すEUVL用マスクブランク200が得られる。EUVL用マスクブランク200は、導電膜240と、基板210と、多層反射膜220と、吸収膜230とをこの順番で有する。なお、EUVL用マスクブランク200は、導電膜240と、基板210と、多層反射膜220と、吸収膜230とに加えて、別の膜を含んでもよい。
【0091】
例えば、EUVL用マスクブランク200は、更に、低反射膜を含んでもよい。低反射膜は、吸収膜230上に形成される。その後、低反射膜と吸収膜230の両方に、開口パターン231が形成される。低反射膜は、開口パターン231の検査に用いられ、検査光に対して吸収膜230よりも低反射特性を有する。低反射膜は、例えばTaONまたはTaOなどで形成される。低反射膜の成膜方法としては、例えばスパッタリング法が用いられる。
【0092】
また、EUVL用マスクブランク200は、更に、保護膜を含んでもよい。保護膜は、多層反射膜220と吸収膜230との間に形成される。保護膜は、吸収膜230に開口パターン231を形成すべく吸収膜230をエッチングする際に、多層反射膜220がエッチングされないように、多層反射膜220を保護する。保護膜は、例えばRu、Si、またはTiOなどで形成される。保護膜の成膜方法としては、例えばスパッタリング法が用いられる。
【0093】
図14に示すように、EUVL用マスク201は、EUVL用マスクブランク200の吸収膜230に開口パターン231を形成することで得られる。開口パターン231の形成には、フォトリソグラフィ法およびエッチング法が用いられる。従って、開口パターン231の形成に用いられるレジスト膜が、EUVL用マスクブランク200に含まれてもよい。
【0094】
ところで、EUVL用マスクブランク200の製造工程の途中で、基板210または基板210の上に形成された各種の機能膜を洗浄することがある。酸またはアルカリによる化学反応を利用する洗浄、物理作用を利用する洗浄、またはこれらの組み合せの洗浄などが行われる。物理作用を利用する洗浄は、超音波洗浄、スクラブ洗浄、または二流体洗浄などである。二流体洗浄は、洗浄液とガスを混合しながら噴射する。
【0095】
超音波洗浄は、例えば図6に示す基板洗浄装置1を用いて行われる。超音波洗浄は、好ましくは、ステップS104とS105の間、ステップS105とS106の間、ステップS106とS107の間、ステップS107の後のうちの少なくとも1つで実施される。また、超音波洗浄は、図示しないが、低反射膜、ハードマスク膜または保護膜の前後で実施されてもよい。
【0096】
以上、本開示に係る洗浄槽、洗浄機、洗浄方法、ガラス基板の製造方法、およびEUVL用マスクブランクの製造方法について説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0097】
101 洗浄液
110 洗浄槽
111 洗浄室
111D 下面
111U 上面
112 供給口
190 対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14