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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126008
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】固形医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/18 20060101AFI20230831BHJP
   A61K 36/076 20060101ALI20230831BHJP
   A61K 36/268 20060101ALI20230831BHJP
   A61K 36/54 20060101ALI20230831BHJP
   A61K 36/718 20060101ALI20230831BHJP
   A61K 36/284 20060101ALI20230831BHJP
   A61K 36/484 20060101ALI20230831BHJP
   A61K 36/68 20060101ALI20230831BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230831BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230831BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230831BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230831BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230831BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230831BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230831BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20230831BHJP
   A61P 27/14 20060101ALI20230831BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
A61K36/18
A61K36/076
A61K36/268
A61K36/54
A61K36/718
A61K36/284
A61K36/484
A61K36/68
A61K47/38
A61K47/12
A61K47/02
A61K47/36
A61K47/26
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/16
A61P27/14
A61P27/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030427
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】山口 朋子
【テーマコード(参考)】
4C076
4C088
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076AA31
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC10
4C076DD29Q
4C076DD41Q
4C076DD67Q
4C076EE31Q
4C076EE32Q
4C076EE38Q
4C076FF01
4C076FF63
4C088AA04
4C088AB12
4C088AB22
4C088AB26
4C088AB32
4C088AB33
4C088AB60
4C088AC01
4C088BA08
4C088MA07
4C088MA35
4C088MA41
4C088MA43
4C088MA52
4C088NA03
4C088ZA33
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、変色が抑制された明朗飲エキスの固形製剤を提供することである。
【解決手段】(A)明朗飲エキス、並びに(B)(B1)セルロース化合物、(B2)ステアリン酸塩、及び(B3)ケイ酸化合物からなる群より選択される所定の化合物を含む固形医薬組成物は、変色が抑制されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)明朗飲エキス、並びに(B)(B1)セルロース化合物、(B2)ステアリン酸塩、及び(B3)ケイ酸化合物からなる群より選択される所定の化合物を含む、固形医薬組成物。
【請求項2】
前記(B1)成分が、セルロース、結晶セルロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択される、請求項1に記載の固形医薬組成物。
【請求項3】
前記(B3)、二酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、及びタルクからなる群より選択される、請求項1又は2に記載の固形医薬組成物。
【請求項4】
前記(A)成分100重量部当たりの請求項(B)成分の含有量が総量で0.1~50重量部である、請求項1~3のいずれかに記載の固形医薬組成物。
【請求項5】
前記(A)成分の含有量が50~95重量%である、請求項1~4のいずかに記載の固形医薬組成物。
【請求項6】
前記(B)成分の含有量が総量で0.1~40重量%である、請求項1~5のいずれかに記載の固形医薬組成物。
【請求項7】
さらに(C)デンプン及び/又は乳糖を含む、請求項1~6のいずれかに記載の固形医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変色抑制性に優れる固形医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
明朗飲は、「浅田家方」を原典とする、体力中等度で、ときにめまい、ふらつき、動悸がある人の、急・慢性結膜炎、目の充血、流涙(なみだ目)に用いられる漢方薬である。明朗飲は市販もされているが、その製剤形態は生薬混合物であり、用時に煎じて服用される(非特許文献1、非特許文献2)。
【0003】
一方、一般的に漢方エキスを含む固形の医薬製剤は、所定の製剤安定性を満足するために、漢方エキスの吸湿性を考慮した処方設計とする必要がある。例えば、特許文献1には、吸湿防止のため漢方エキスに固形分の1/20~1/2重量部のゼラチンを添加した水溶液を噴霧乾燥することからなる粉末とする処方が開示されている。
【0004】
さらに、固形の医薬製剤に配合される漢方エキスが、吸湿性により著しい変色を来たすものである場合は、変色を抑制するためにさらに厳しい処方設計が求められる。例えば、特許文献2には、漢方エキスにポリ酢酸ビニルを配合する処方が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】淀川薬局 明朗飲説明書,[online],[2022年2月20日検索],インターネット<URL:https://store.shopping.yahoo.co.jp/yodogawayaxtukyoku/zk57rpiumy.html#&gid=itemImage&pid=1>
【非特許文献2】薬局フォルモサ 明朗飲K206説明書,[online],[2022年2月20日検索],インターネット<URL:https://item.rakuten.co.jp/farmaciaformosa/k206-1d/>
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-181192号公報
【特許文献2】特開2014-166994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
明朗飲エキスは固形製剤として製剤されていないため、安定に製剤できる処方は未だ知られていない。本発明者が明朗飲エキスの固形製剤化を試みたところ、顕著な変色が生じることを見出した。
【0008】
そこで本発明の目的は、変色が抑制された明朗飲エキスの固形製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、明朗飲エキスに、セルロース化合物、ステアリン酸塩、及び)ケイ酸化合物からなる群より選択される所定の化合物を配合することによって、変色を抑制できることを見出した。本発明は、この知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0010】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)明朗飲エキス、並びに(B)(B1)セルロース化合物、(B2)ステアリン酸塩、及び(B3)ケイ酸化合物からなる群より選択される所定の化合物を含む、固形医薬組成物。
項2. 前記(B1)成分が、セルロース、結晶セルロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択される、項1に記載の固形医薬組成物。
項3. 前記(B3)、二酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、及びタルクからなる群より選択される、項1又は2に記載の固形医薬組成物。
項4. 前記(A)成分100重量部当たりの請求項(B)成分の含有量が総量で0.1~50重量部である、項1~3のいずれかに記載の固形医薬組成物。
項5. 前記(A)成分の含有量が50~95重量%である、項1~4のいずかに記載の固形医薬組成物。
項6. 前記(B)成分の含有量が総量で0.1~40重量%である、項1~5のいずれかに記載の固形医薬組成物。
項7. さらに(C)デンプン及び/又は乳糖を含む、項1~6のいずれかに記載の固形医薬組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の固形医薬組成物によれば、変色が抑制された明朗飲エキスの固形製剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.固形医薬組成物
本発明の固形医薬組成物は、(A)明朗飲エキス(以下において、「(A)成分」とも記載する)、並びに(B)(B1)セルロース化合物(以下において、「(B1)成分」とも記載する)、(B2)ステアリン酸塩(以下において、「(B2)」成分とも記載する)、及び(B3)ケイ酸化合物(以下において、「(B3)」成分とも記載する)からなる群より選択される所定の化合物(以下において、(B1)成分~(B3)成分をまとめて「(B)成分」とも記載する)を含むことを特徴とする。以下、本発明の固形医薬組成物について詳述する。
【0013】
(A)明朗飲エキス
本発明の固形医薬組成物は、(A)成分として明朗飲エキスを含有する。明朗飲を構成する生薬は、ブクリョウ、サイシン、ケイヒ、オウレン、ビャクジュツ、カンゾウ、及びシャゼンシである。明朗飲エキスの製造に供される生薬調合物は、ブクリョウ、サイシン、ケイヒ、オウレン、ビャクジュツ、カンゾウ、及びシャゼンシでからなる。これらの生薬の分量の好ましい例としては、ブクリョウ4~6重量部、サイシン1.5~2重量部、ケイヒ3~4重量部、オウレン1.5~2重量部、ビャクジュツ2~4重量部、カンゾウ2重量部、シャゼンシ2~3重量部が挙げられる。
【0014】
本発明で使用される明朗飲エキスは、前記生薬調合物を公知の手法で抽出することによって得ることができる。前記生薬調合物を抽出する方法については、例えば、前記生薬調合物に対して、約10~20倍量、好ましくは10~15倍量の水を加え、80~100℃程度、好ましくは95~100℃で20分~3時間程度、好ましくは30分~1時間撹拌して抽出する方法が挙げられる。抽出後に、遠心分離、濾過等の固液分離に供して固形分を除去し、必要に応じて、濃縮処理や乾燥処理に供することによって明朗飲エキスが得られる。
【0015】
明朗飲エキスをエキス末として得るには、固形分を除去した抽出液を、必要に応じて濃縮した後に、スプレードライ、減圧濃縮乾燥、凍結乾燥等の乾燥処理に供すればよい。また、乾燥処理(特に、スプレードライによる乾燥処理)に供する際に、必要に応じて抽出液に、賦形剤を添加してもよい。
【0016】
本発明の固形医薬組成物における(A)成分の含有量としては特に限定されないが、たとえば50~95重量%、好ましくは52~80重量%、より好ましくは55~75重量%、さらに好ましくは60~70重量%が挙げられる。
【0017】
(B)所定の化合物
本発明の固形医薬組成物は、(B)成分として、(B1)セルロース化合物、(B2)ステアリン酸塩、及び(B3)ケイ酸化合物からなる群より選択される所定の化合物を含有する。(B)成分は、(A)成分を含む固形医薬組成物において、保存時における変色を抑制する。本発明においては、(B)成分として、(B1)成分又は(B2)成分を単独で用いてもよいし、(B1)成分及び(B2)成分を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
本発明において、(B1)成分であるセルロース化合物は、セルロース、セルロースの部分解重合物、又はセルロース誘導体をいう。セルロースの部分解重合物としては、結晶セルロースが挙げられる。セルロース誘導体は、セルロースの水酸基を介して官能基が導入された化合物であり、具体的には、エーテル結合により官能基が導入されたセルロースエーテル、及びエステル結合により官能基が導入されたセルロースエステルが挙げられ、これらの中でも、変色抑制効果を向上させる観点から、好ましくはセルロースエーテルが挙げられる。セルロースエーテルとしては、カルメロース(すなわちカルボキシメチルセルロース)、カルメロース塩(より具体的には、カルメロースのアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が挙げられる。)、クロスカルメロース塩(すなわち架橋カルメロース塩;より具体的には、クロスカルメロースアルカリ金属塩、クロスカルメロースアルカリ土類金属塩)、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0019】
これらの(B1)成分は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらの(B1)成分の中でも、少量でも変色抑制効果を効率的に得る観点から、好ましくはセルロースの部分解重合物及びセルロース誘導体が挙げられ、より好ましくはセルロースの部分解重合物及びセルロースエーテルが挙げられる。
【0020】
(B2)成分であるステアリン酸塩の具体例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、及びステアリン酸亜鉛が挙げられる。
【0021】
これらの(B2)成分は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらの(B2)成分の中でも、変色抑制効果を向上させる観点から、好ましくはステアリン酸マグネシウムが挙げられる。
【0022】
本発明において、(B3)成分であるケイ酸化合物は、二酸化ケイ素又はケイ酸塩をいう。二酸化ケイ素としては、軽質無水ケイ酸及び含水二酸化ケイ素が挙げられる。ケイ酸塩としては、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、及びタルクが挙げられる。
【0023】
これらの(B3)成分は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらの(B3)成分の中でも、少量でも変色抑制効果を効率的に得る観点から、好ましくはケイ酸塩が挙げられる。
【0024】
本発明の固形医薬組成物における(B)成分の含有量としては、本発明の効果を奏する限りにおいて特に限定されないが、(A)成分100重量部当たりの含有量として、総量で0.1~50重量部が挙げられる。
【0025】
(B1)成分の含有量については、(A)成分100重量部当たりの含有量として、総量で1~50重量部が挙げられる。より具体的には、(A)成分100重量部当たりの含有量として、セルロースについては例えば10~50重量部が挙げられ、セルロースの部分解重合物の含有量については例えば1~40重量部が挙げられ、セルロース誘導体の含有量については例えば0.5~40重量部が挙げられる。
【0026】
また、本発明の固形医薬組成物が(C)成分としてデンプンを含む場合、(A)成分100重量部当たりの含有量として、セルロースについては好ましくは14~50重量部、より好ましくは29~50重量部、さらに好ましくは35~50重量部、一層好ましくは40~50重量部、特に好ましくは44~50重量部又は44~47重量部が挙げられ、セルロースの部分解重合物については好ましくは2~16重量部、より好ましくは4~12重量部、さらに好ましくは6~9重量部が挙げられ、セルロース誘導体については好ましくは1~35重量部、より好ましくは10~32重量部、さらに好ましくは13~20重量部が挙げられる。
【0027】
また、本発明の固形医薬組成物が(C)成分として乳糖を含む場合、(A)成分100重量部当たりの含有量として、セルロースについては好ましくは14~50重量部、より好ましくは39~50重量部、さらに好ましくは42~50重量部が挙げられ、セルロースの部分解重合物については好ましくは7~32重量部、より好ましくは12~21重量部が挙げられ、セルロース誘導体については好ましくは7~35重量部、より好ましくは14~32重量部が挙げられる。
【0028】
(B2)成分の含有量については、(A)成分100重量部当たりの含有量として、例えば0.4~3重量部、好ましくは0.6~2重量部、より好ましくは0.7~1.1重量部が挙げられる。
【0029】
(B3)成分の含有量については、(A)成分100重量部当たりの含有量として、例えば0.3~50重量部が挙げられる。より具体的には、二酸化ケイ素の含有量については、(A)成分100重量部当たりの含有量として、例えば7~50重量部、好ましくは14~40重量部、より好ましくは18~35重量部、一層好ましくは20~33重量部が挙げられる。ケイ酸塩の含有量については、(A)成分100重量部当たりの含有量として、例えば0.3~20重量部、好ましくは0.6~10重量部、より好ましくは1~8重量部、さらに好ましくは5~8重量部が挙げられる。
【0030】
本発明の固形医薬組成物における(B)成分の具体的な含有量としては、上記の(A)成分の含有量及び(A)成分100重量部当たりの(B)成分の含有量に応じて定まるが、好ましくは0.1~50重量%が挙げられる。
【0031】
(B1)成分の具体的な含有量としては、例えば、総量で0.7~33重量%が挙げられる。より具体的には、セルロースの含有量としては、例えば6.5~33重量%が挙げられ、セルロースの部分解重合物の具体的な含有量としては、例えば0.7~27重量%が挙げられ、セルロース誘導体の具体的な含有量としては、例えば0.3~27重量%が挙げられる。
【0032】
また、本発明の固形医薬組成物が(C)成分としてデンプンを含む場合、セルロースの含有量としては、好ましくは9~33重量%、より好ましくは19~33重量%、さらに好ましくは23~33重量%、一層好ましくは26~33重量%、特に好ましくは29~33重量%又は29~31重量%が挙げられ、セルロースの部分解重合物の具体的な含有量としては、好ましくは1.3~10重量%、より好ましくは2.6~8重量%、さらに好ましくは4~6重量%が挙げられる。セルロース誘導体の具体的な含有量としては、好ましくは0.6~23重量%、より好ましくは6.5~21重量%、さらに好ましくは8.5~13重量%が挙げられる。
【0033】
また、本発明の固形医薬組成物が(C)成分として乳糖を含む場合、セルロースの含有量としては、好ましくは9~33重量%、より好ましくは26~33重量%、さらに好ましくは28~33重量%が挙げられ、セルロースの部分解重合物の含有量としては、好ましくは4.7~22重量%、より好ましくは8~14重量%が挙げられ、セルロース誘導体の具体的な含有量としては、好ましくは4.5~23重量%、より好ましくは9.3~21.5重量%が挙げられる。
【0034】
(B2)成分の具体的な含有量としては、例えば0.26~2重量%、好ましくは0.4~1.3重量%、より好ましくは0.45~0.75重量%が挙げられる。
【0035】
(B3)成分の具体的な含有量としては、例えば0.2~33重量%が挙げられる。より具体的には、二酸化ケイ素の具体的な含有量としては、例えば4.7~33重量%、好ましくは9~27重量%、より好ましくは12~23.5重量%、一層好ましくは13~22重量%が挙げられる。ケイ酸塩の具体的な含有量としては、例えば0.2~13重量%、好ましくは0.4~6.7重量%、より好ましくは0.6~5.5重量%、さらに好ましくは3~5.5重量%が挙げられる。
【0036】
(C)デンプン及び/又は乳糖
本発明の固形医薬組成物は、変色抑制性をより一層向上させる観点から、さらに(C)成分としてデンプン及び/又は乳糖(以下において、「(C)成分」とも記載する)を含有することができる。
【0037】
デンプンとしては特に限定されないが、例えばトウモロコシデンプン及びバレイショデンプン等が挙げられ、変色抑制性をより一層向上させる観点から、好ましくはトウモロコシデンプンが挙げられる。
【0038】
本発明の固形医薬組成物における(C)成分の含有量としては、総量で、例えば3~40重量%、好ましくは10~35重量%が挙げられる。
【0039】
他の成分
本発明の固形医薬組成物は、本発明の効果を妨げない範囲で、上記成分以外の他の成分として、添加剤及び/又は基剤を含むことができる。
【0040】
添加剤及び基剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、賦形剤(例えば乳糖等)、結合剤(例えばアルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン等)、崩壊剤(例えば、寒天等)、滑沢剤(例えば、ショ糖脂肪酸エステル等)、着色剤(例えば、カラメル、クチナシ色素、酸化チタン、酸化鉄等)、保存剤(例えば、L-アスコルビン酸等)、防腐剤(例えば、安息香酸塩、パラオキシ安息香酸エステル等)、pH調整剤(例えば、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等)、界面活性剤(例えば、サポニン、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル等)、コーティング剤(例えば、シェラック、マクロゴール、カルナバロウ等)が挙げられる。これらの添加剤及び基剤は、1種単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。また、これらの添加剤及び基剤の含有量については、固形医薬組成物として製剤できることを限度として、使用する添加剤及び基剤の種類等に応じて適宜設定される。
【0041】
また、本発明の固形医薬組成物は、明朗飲エキスの他に、必要に応じて、他の栄養成分や薬理成分を含有していてもよい。このような栄養成分や薬理成分としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、制酸剤、健胃剤、消化剤、整腸剤、鎮痙剤、粘膜修復剤、抗炎症剤、収れん剤、鎮吐剤、鎮咳剤、去痰剤、消炎酵素剤、鎮静催眠剤、抗ヒスタミン剤、カフェイン類、強心利尿剤、抗菌剤、血管収縮剤、血管拡張剤、局所麻酔剤、生薬エキス、ビタミン類、メントール類等が挙げられる。これらの栄養成分や薬理成分は、1種単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。また、これらの成分の含有量については、使用する成分の種類等に応じて適宜設定される。
【0042】
製剤形態
本発明の固形医薬組成物の製剤形態については、固形製剤であれば特に限定されず、具体的には、錠剤、丸剤、散剤、細粒剤、顆粒剤(カプセルに充填される顆粒剤も含む)等が挙げられる。本発明の固形医薬組成物は変色抑制性に優れているため比表面積が大きい、散剤、細粒剤及び顆粒剤であても、効果的に変色を抑制することができる。
【0043】
本発明の固形医薬組成物から製造される錠剤は、素錠(裸錠)であってもよいし、薬剤の安定化、及び矯味や矯臭等の目的で表面にコーティングを施したコーティング錠であってもよい。本発明の固形医薬組成物は変色抑制性に優れているため、表面にコーディングが施されていない素錠であっても効果的に変色を抑制することができる。
【0044】
製造方法
本発明の固形医薬組成物は、上記(A)成分及び(B)成分、並びに必要に応じて配合される(C)成分及び/又は他の成分を用いて、医薬分野で採用されている通常の製剤化手法に従って製造することができる。
【実施例0045】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0046】
試験例
1.明朗飲エキス末の調製
原料生薬として、ブクリョウ4.0(重量部、以下において同様)、ケイヒ3.0、ビャクジュツ2.0、カンゾウ2.0、シャゼンシ2.0、サイシン2.0、オウレン2.0の割合で用い、これらを刻んだ後、水12倍重量を用いて約100℃で30分間抽出し、遠心分離して抽出液を得た。抽出液を減圧下で濃縮し、スプレードライヤーを用いて乾燥し、明朗飲エキス末を得た。なお、スプレードライヤーによる乾燥は、抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の空気の熱風を供給することによって行った。
【0047】
2.固形医薬組成物の調製
表1~表3に示す組成の固形医薬組成物を調製した。具体的には、明朗飲エキス末と表1~表3に示す所定の成分とをビニール袋内で混合した後、篩を通し、粉末状の固形医薬組成物(散剤)を調製した。
【0048】
3.変色抑制性試験
固形医薬組成物3.0gを、直径10cmの円状に均一に延ばし、40℃、75%RHの条件下で6時間保存した。当該固形医薬組成物の調製直後と保存後とについて、色を分光測色計(CM-700d)で測定し、以下の式に基づいて、保存後における色の変化量(ΔE*ab)を測定した。結果を表1~表3に示す。
【0049】
【数1】
【0050】
さらに、比較例1によるΔE*abを100%とした場合の、各実施例及び各比較例のΔE*abの割合(%)を「変色抑制指数」として導出した。変色抑制指数が100%を下回ると、変色が抑制されていることを表し、変色抑制指数が小さいほど、変色抑制効果が高いことを表す。結果を表1~表3に示す。
【0051】

【表1】
【0052】



【表2】
【0053】



【表3】
【0054】
比較例1,5に示される通り、明朗飲エキスを含む固形医薬組成物は、保存後において変色が認められた。また、比較例2~4,6~8に示される通り、明朗飲エキスにデキストリンを配合しても、変色抑制効果は認められず、むしろ悪化した。これに対し、実施例1~33,34~48に示される通り、明朗飲エキスに加えて、セルロース化合物、ステアリン酸塩、又はケイ酸化合物といった所定の化合物を配合することで、変色抑制性を顕著に向上できることが認められた。