(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126161
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】新規セレンテラジン誘導体
(51)【国際特許分類】
C07D 487/04 20060101AFI20230831BHJP
A61K 31/4985 20060101ALI20230831BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
C07D487/04 144
C07D487/04 CSP
A61K31/4985
A61K49/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025582
(22)【出願日】2023-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2022030488
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.2022年10月27日付で神谷弦汰、北田昇雄、古田忠臣、平野誉、牧昌次郎、金誠培が、International Journal of Molecular Sciences,2022,23,P13047にて、C‐Series Coelenterazine‐Driven Bioluminescence Signature Imagingと題し公開。 2.2023年1月11日付で神谷弦汰、北田昇雄、古田忠臣、平野誉、牧昌次郎、金誠培が、International Journal of Molecular Sciences,2023,24,P1420にて、S-Series Coelenterazine-Driven Combinatorial Bioluminescence Imaging Systems for Mammalian Cellsと題し公開。
(71)【出願人】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】牧 昌次郎
(72)【発明者】
【氏名】北田 昇雄
(72)【発明者】
【氏名】金 誠培
【テーマコード(参考)】
4C050
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050BB05
4C050CC08
4C050EE03
4C050FF05
4C050GG01
4C050GG05
4C050HH01
4C050HH02
4C085HH11
4C085JJ02
4C085KB56
4C085LL18
4C086AA03
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA20
4C086ZC78
(57)【要約】 (修正有)
【課題】発光輝度が高く、酵素特異性を有する新規セレンテラジン誘導体を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)又は(2)で表されることを特徴とするセレンテラジン誘導体である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】
[一般式(1)中、R
1は、下記一般式(1-1-1)、(1-1-2)、(1-1-3)又は(1-1-4):
【化2】
で表され、ここで、R
1-1は、炭素数1~4の炭化水素基であり、R
1-2は、それぞれ独立して水素又は炭素数1~3の炭化水素基であり、mは、2~8の整数であり、
R
2は、-R
2’又は-CH
2-R
2’で表され、ここで、R
2’は、下記一般式(1-2-1)、(1-2-2)、(1-2-3)、(1-2-4)又は(1-2-5):
【化3】
で表され、ここで、R
2-1は、水素、ハロゲン、-N(R
2-1-1)
2又は-OR
2-1-1であり(ここで、R
2-1-1は、それぞれ独立して水素又は炭素数1~3の炭化水素基である。)、R
2-2は、炭素数1~4の炭化水素基であり、R
2-3は、それぞれ独立して水素又は炭素数1~3の炭化水素基であり、mは、2~8の整数であり、
R
3は、下記一般式(1-3-1)、(1-3-2)又は(1-3-3):
【化4】
で表され、ここで、R
3-1は、水素又は炭素数1~3の炭化水素基である。]、又は、
下記一般式(2):
【化5】
[一般式(2)中、R
4は、水素、-(CH
2)
n-OR
4-1、-N(R
4-1)
2又は-CF
3であり、ここで、R
4-1は、それぞれ独立して水素又は炭素数1~3の炭化水素基であり、nは、0~3の整数であり、
R
5は、下記一般式(2-5-1)、(2-5-2)、(2-5-3)、(2-5-4)又は(2-5-5):
【化6】
で表され、ここで、R
5-1は、水素、ハロゲン、-N(R
5-1-1)
2又は-OHであり(ここで、R
5-1-1は、それぞれ独立して水素又は炭素数1~3の炭化水素基である。)、R
5-2は、炭素数1~4の炭化水素基であり、R
5-3は、それぞれ独立して水素又は炭素数1~3の炭化水素基であり、mは、2~8の整数であり、
R
6は、水素又は炭素数1~3の炭化水素基である。]で表されることを特徴とする、セレンテラジン誘導体。
【請求項2】
上記一般式(1)で表され、
R1が、上記一般式(1-1-3)で表される、請求項1に記載のセレンテラジン誘導体。
【請求項3】
上記一般式(1)で表され、
R2が、-CH2-R2’で表され、ここで、R2’が、上記一般式(1-2-1)で表される、請求項1又は2に記載のセレンテラジン誘導体。
【請求項4】
上記一般式(1)で表され、
R3が、上記一般式(1-3-2)で表される、請求項1又は2に記載のセレンテラジン誘導体。
【請求項5】
下記構造式(1-1):
【化7】
で表される、請求項1又は2に記載のセレンテラジン誘導体。
【請求項6】
上記一般式(2)で表され、
R4が、-(CH2)n-OR4-1で表される、請求項1に記載のセレンテラジン誘導体。
【請求項7】
上記一般式(2)で表され、
R5が、上記一般式(2-5-1)で表される、請求項1又は6に記載のセレンテラジン誘導体。
【請求項8】
上記一般式(2)で表され、
R6が、水素である、請求項1又は6に記載のセレンテラジン誘導体。
【請求項9】
下記構造式(2-1)又は(2-2):
【化8】
で表される、請求項1又は6に記載のセレンテラジン誘導体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規セレンテラジン誘導体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体内分子イベントの可視化技術は、様々な疾病の診断と治療法の開発に必要不可欠な技術である。生体内分子イベントの可視化技術としては、生物発光を用いた可視化技術が主流であり、ホタルや海洋生物の発光システムを応用した技術が開発されている。これらの中でも、海洋生物の発光システムは、その発光輝度の高さや、発光酵素の小分子量、発光システムの単純さ等から多岐に渡る応用可能性が注目されており、近年ウイルスの可視化等にも好適に用いられている。例えば、海洋生物の発光システムにおいては、発光基質である天然型のセレンテラジン(nCTZ)が、海洋生物の発光酵素を触媒とした酸化反応により、波長が480nm程度の光を発することが知られている。
【0003】
一方、生体内深部で起こる分子イベントの観察には、従来より更に長波長かつ高輝度な発光システムが求められている。生体内深部の病巣を可視化するための標識材料として、生物発光系の発光基質を利用する研究が進められている。例えば、生体内深部の観察には、更に長波長かつ高輝度な発光システムが求められており、従来、構造改変によって発光特性を制御したセレンテラジン誘導体が開発されてきた(特許文献1、非特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Jiang, T.; Du, L.; Li, M. Photochem. Photobiol. Sci. 2016, 15 (4), 466-480.
【非特許文献2】Kaskova, Z. M.; Tsarkova, A. S.; Yampolsky, I. V. Chem. Soc. Rev. 2016, 45 (21), 6048-6077.
【非特許文献3】Nishihara, R.; Suzuki, H.; Hoshino, E.; Suganuma, S.; Sato, M.; Saitoh, T.; Nishiyama, S.; Iwasawa, N.; Citterio, D.; Suzuki, K. Chem. Commun. (Camb). 2015, 51 (2), 391-394.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、発光基質である天然型のセレンテラジン(nCTZ)の構造を変えることで発光輝度が大幅に低下することが知られている。そのため、発光輝度を保ったまま、発光基質の構造を改変することが求められている。
【0007】
また、従来の海洋生物由来の発光システムにおいては、発光輝度や発光波長、発光酵素特異性の制御が難しかった。ここで、発光システムの発光輝度や発光波長、発光酵素特異性を制御することができるようになれば、生体内で起こる分子イベント、癌の転移等、複数の生体内現象を同時に高感度且つ高速に可視化することが可能になる。例えば、多数の発光酵素が共存している中で、特定の発光酵素のみを光らせることは、その発光酵素だけに特異的に発光する発光基質を添加することにより実現できる。
しかしながら、従来の海洋生物由来の発光システムにおいては、発光システムの発光輝度や発光酵素特異性を制御することが難しかった。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決し、発光輝度が高く、酵素特異性を有する新規セレンテラジン誘導体を提供することを課題とする。
また、本発明は、発光輝度が高く、長波長側の発光を示し、酵素特異性を有する新規セレンテラジン誘導体を提供することを更なる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の二環式構造又は特定のチオエーテル構造を有するセレンテラジン誘導体が、発光輝度が高く、酵素特異性を有することを見出し、本発明を完成させる着想に至った。
【0010】
即ち、本発明のセレンテラジン誘導体は、下記一般式(1):
【化1】
[一般式(1)中、R
1は、下記一般式(1-1-1)、(1-1-2)、(1-1-3)又は(1-1-4):
【化2】
で表され、ここで、R
1-1は、炭素数1~4の炭化水素基であり、R
1-2は、それぞれ独立して水素又は炭素数1~3の炭化水素基であり、mは、2~8の整数であり、
R
2は、-R
2’又は-CH
2-R
2’で表され、ここで、R
2’は、下記一般式(1-2-1)、(1-2-2)、(1-2-3)、(1-2-4)又は(1-2-5):
【化3】
で表され、ここで、R
2-1は、水素、ハロゲン、-N(R
2-1-1)
2又は-OR
2-1-1であり(ここで、R
2-1-1は、それぞれ独立して水素又は炭素数1~3の炭化水素基である。)、R
2-2は、炭素数1~4の炭化水素基であり、R
2-3は、それぞれ独立して水素又は炭素数1~3の炭化水素基であり、mは、2~8の整数であり、
R
3は、下記一般式(1-3-1)、(1-3-2)又は(1-3-3):
【化4】
で表され、ここで、R
3-1は、水素又は炭素数1~3の炭化水素基である。]、又は、
下記一般式(2):
【化5】
[一般式(2)中、R
4は、水素、-(CH
2)
n-OR
4-1、-N(R
4-1)
2又は-CF
3であり、ここで、R
4-1は、それぞれ独立して水素又は炭素数1~3の炭化水素基であり、nは、0~3の整数であり、
R
5は、下記一般式(2-5-1)、(2-5-2)、(2-5-3)、(2-5-4)又は(2-5-5):
【化6】
で表され、ここで、R
5-1は、水素、ハロゲン、-N(R
5-1-1)
2又は-OHであり(ここで、R
5-1-1は、それぞれ独立して水素又は炭素数1~3の炭化水素基である。)、R
5-2は、炭素数1~4の炭化水素基であり、R
5-3は、それぞれ独立して水素又は炭素数1~3の炭化水素基であり、mは、2~8の整数であり、
R
6は、水素又は炭素数1~3の炭化水素基である。]で表されることを特徴とする。
かかる本発明のセレンテラジン誘導体は、発光輝度が高く、酵素特異性を有する。
【0011】
本発明のセレンテラジン誘導体は、上記一般式(1)で表され、R1が、上記一般式(1-1-3)で表されることが好ましい。この場合、発光輝度が向上する。
【0012】
本発明のセレンテラジン誘導体は、上記一般式(1)で表され、R2が、-CH2-R2’で表され、ここで、R2’が、上記一般式(1-2-1)で表されることが好ましい。この場合も、発光輝度が向上する。
【0013】
本発明のセレンテラジン誘導体は、上記一般式(1)で表され、R3が、上記一般式(1-3-2)で表されることが好ましい。この場合も、発光輝度が向上する。
【0014】
本発明のセレンテラジン誘導体は、下記構造式(1-1):
【化7】
で表されることが特に好ましい。この場合、該セレンテラジン誘導体を用いた発光系からの発光輝度が特に高い。
【0015】
本発明のセレンテラジン誘導体は、上記一般式(2)で表され、R4が、-(CH2)n-OR4-1で表されることが好ましい。この場合、発光輝度が向上する。
【0016】
本発明のセレンテラジン誘導体は、上記一般式(2)で表され、R5が、上記一般式(2-5-1)で表されることが好ましい。この場合も、発光輝度が向上する。
【0017】
本発明のセレンテラジン誘導体は、上記一般式(2)で表され、R6が、水素であることが好ましい。この場合も、発光輝度が向上する。
【0018】
本発明のセレンテラジン誘導体は、下記構造式(2-1)又は(2-2):
【化8】
で表されることが特に好ましい。この場合、該セレンテラジン誘導体を用いた発光系からの発光輝度が特に高い。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、発光輝度が高く、酵素特異性を有する新規セレンテラジン誘導体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】発光酵素としてALuc16を使用した場合の、生細胞における各発光基質の発光輝度を示すグラフである。
【
図2】発光酵素としてALuc16を使用した場合の、ライセートにおける各発光基質の発光輝度を示すグラフである。
【
図3】発光酵素としてALuc16を使用した場合の、各発光基質の発光スペクトルである。
【
図4】発光酵素としてALuc47を使用した場合の、生細胞における各発光基質の発光輝度を示すグラフである。
【
図5】発光酵素としてALuc47を使用した場合の、ライセートにおける各発光基質の発光輝度を示すグラフである。
【
図6】発光酵素としてALuc47を使用した場合の、各発光基質の発光スペクトルである。
【
図7】発光酵素としてRLuc8.6SGを使用した場合の、生細胞における各発光基質の発光輝度を示すグラフである。
【
図8】発光酵素としてRLuc8.6SGを使用した場合の、ライセートにおける各発光基質の発光輝度を示すグラフである。
【
図9】発光酵素としてRLuc8.6SGを使用した場合の、各発光基質の発光スペクトルである。
【
図10】発光酵素としてNanoLucを使用した場合の、生細胞における各発光基質の発光輝度を示すグラフである。
【
図11】発光酵素としてNanoLucを使用した場合の、ライセートにおける各発光基質の発光輝度を示すグラフである。
【
図12】発光酵素としてNanoLucを使用した場合の、各発光基質の発光スペクトルである。
【
図13】発光基質として構造式(1-1)で表される化合物を使用した場合の、各発光酵素での発光スペクトルを示す。
【
図14】発光酵素としてALuc16とRLuc8.6SGを種々の比率で含む混合物を使用し、発光基質として構造式(1-1)で表される化合物を使用した場合の、発光スペクトルを示す。
【
図15】
図15(a)は、構造式(1-1)で表される化合物、構造式(2-1)で表される化合物又は構造式(2-2)で表される化合物と、ALuc16とを組み合わせた発光系からの発光に対して、バンド幅が20nmで、中心波長が500nm、600nm又は700nmのバンドパスフィルターを通した場合の相対発光強度を示し、
図15(b)は、構造式(1-1)で表される化合物、構造式(2-1)で表される化合物又は構造式(2-2)で表される化合物と、ALuc47とを組み合わせた発光系からの発光に対して、バンド幅が20nmで、中心波長が500nm、600nm又は700nmのバンドパスフィルターを通した場合の相対発光強度を示し、
図15(c)は、構造式(1-1)で表される化合物、構造式(2-1)で表される化合物又は構造式(2-2)で表される化合物と、NanoLucとを組み合わせた発光系からの発光に対して、バンド幅が20nmで、中心波長が500nm、600nm又は700nmのバンドパスフィルターを通した場合の相対発光強度を示し、
図15(d)は、構造式(1-1)で表される化合物、構造式(2-1)で表される化合物又は構造式(2-2)で表される化合物と、RLuc8.6SGとを組み合わせた発光系からの発光に対して、バンド幅が20nmで、中心波長が500nm、600nm又は700nmのバンドパスフィルターを通した場合の相対発光強度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明のセレンテラジン誘導体を、その実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
【0022】
<セレンテラジン誘導体>
本発明のセレンテラジン誘導体は、上記一般式(1)又は(2)で表されることを特徴とする。
本発明のセレンテラジン誘導体は、天然型のセレンテラジン(nCTZ)に対して、イミダゾピラジノン骨格の6位のヒドロキシフェニル基が酸素又は窒素を含む二環式構造に変換されている点[一般式(1)]、又は、8位のベンジル基中のメチレン基がチオエーテルに変換されている点[一般式(2)]で、天然型のセレンテラジンと相違し、該化学構造の相違に基づき、天然型のセレンテラジンとは異なる酵素特異性を有する。
また、本発明のセレンテラジン誘導体は、天然型のセレンテラジンとは異なる酵素特異性を有しつつも、発光輝度の低下が抑制されており、生体内のイメージングに十分な発光輝度を保持しており、海洋生物由来の発光系における発光基質として利用できる。
【0023】
なお、本発明のセレンテラジン誘導体を発光基質とする発光のメカニズムは、特に限定されるものではないが、天然型のセレンテラジンと同様に、まず、イミダゾピラジノン骨格が、塩基によって7位のNHが脱プロトン化されアニオン状態となり、続いて、三重項酸素へ一電子移動し、ラジカルカップリングにより過酸化物アニオンを生成し、この過酸化物アニオンが環化してジオキセタノン中間体を生成し、この分解による脱炭酸により一重項励起状態のアミドピラジンが生成し、これが基底状態に遷移して発光するものと考えられる。また、発光酵素(ルシフェラーゼ)の環境によっては、ジオキセタノンアニオンのプロトン化が起き、中性のジオキセタノンからアミドピラジンの中性種の励起分子が生成して、発光する経路もあり得る。
【0024】
(一般式(1)で表されるセレンテラジン誘導体)
本発明の第1の実施態様のセレンテラジン誘導体は、下記一般式(1)で表される。
【化9】
【0025】
上記一般式(1)中、R
1は、下記一般式(1-1-1)、(1-1-2)、(1-1-3)又は(1-1-4):
【化10】
で表される。一般式(1)中のイミダゾピラジノン骨格の6位に対する、一般式(1-1-1)、(1-1-2)、(1-1-3)又は(1-1-4)中のベンゼン環の結合部位は、特に限定されない。
上記一般式(1-1-4)中、R
1-1は、炭素数1~4の炭化水素基(特には、炭素鎖)であり、R
1-2は、それぞれ独立して水素又は炭素数1~3の炭化水素基であり、mは、2~8の整数(特には、偶数)である。
【0026】
上記一般式(1-1-4)中のR1-1は、炭素数1~4の炭化水素基であるので、一般式(1-1-4)で表される基は、ベンゼン環に4~7員環が縮合した構造を有する。R1-1は、炭素数1~4の直鎖の炭化水素基であることが好ましい。
R1-1としての、炭素数1~4の炭化水素基には、m個(2~8個)の置換基R1-2が、結合しており、即ち、R1-1は、炭素数1~4の、4~10価の炭化水素基である。置換基R1-2は、炭化水素基の水素を置換するものである。また、R1-1としての、炭素数1~4の炭化水素基は、飽和であってもよいし、不飽和であってもよい。
R1-1が炭素数1の炭化水素基である場合(R1-1がN及びベンゼン環と共に4員環を形成する場合)、mは2であることが好ましい。炭素数1の4価の炭化水素基としては、メタン-テトライル基が挙げられる。
また、R1-1が炭素数2の炭化水素基である場合(R1-1がN及びベンゼン環と共に5員環を形成する場合)、mは2又は4であることが好ましい。この場合、R1-1は、飽和にも、不飽和にもなり得る。R1-1が飽和の場合、mは4であり、R1-1が不飽和の場合、mは2であることが好ましい。炭素数2の4価の炭化水素基(炭素鎖)としては、エテン-テトライル基が挙げられ、炭素数2の6価の炭化水素基(炭素鎖)としては、エタン-ヘキサイル基が挙げられる。
また、R1-1が炭素数3の炭化水素基である場合(R1-1がN及びベンゼン環と共に六員環を形成する場合)、mは2、4又は6であることが好ましい。この場合、R1-1は、飽和にも、不飽和にもなり得る。R1-1が飽和の場合、mは6であることが好ましく、R1-1が不飽和の場合、mは4又は2であることが好ましい。炭素数3の4価の炭化水素基(炭素鎖)としては、プロピン-テトライル基が挙げられ、炭素数3の6価の炭化水素基(炭素鎖)としては、プロペン-ヘキサイル基が挙げられ、炭素数3の8価の炭化水素基(炭素鎖)としては、プロパン-オクタイル基が挙げられる。
また、R1-1が炭素数4の炭化水素基である場合(R1-1がN及びベンゼン環と共に七員環を形成する場合)、mは2、4、6又は8であることが好ましい。この場合、R1-1は、飽和にも、不飽和にもなり得る。R1-1が飽和の場合、mは8であることが好ましく、R1-1が不飽和の場合、mは6、4又は2であることが好ましい。炭素数4の6価の炭化水素基(炭素鎖)としては、ブタジエン-ヘキサイル基が挙げられ、炭素数4の8価の炭化水素基(炭素鎖)としては、ブテン-オクタイル基が挙げられ、炭素数4の10価の炭化水素基としては、ブタン-デカイル基が挙げられる。
【0027】
上記一般式(1-1-4)中のR1-2は、それぞれ独立して水素又は炭素数1~3の炭化水素基であり、炭素数1~3の炭化水素基としては、炭素数1~3のアルキル基、炭素数2~3のアルケニル基等が挙げられる。炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。炭素数2~3のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基等が挙げられる。
【0028】
ここで、上記一般式(1)中のR1は、上記一般式(1-1-3)で表されることが好ましい。一般式(1)中のR1は、上記一般式(1-1-3)で表される場合、発光輝度が向上する。
【0029】
上記一般式(1)中、R
2は、-R
2’又は-CH
2-R
2’で表され、ここで、R
2’は、下記一般式(1-2-1)、(1-2-2)、(1-2-3)、(1-2-4)又は(1-2-5):
【化11】
で表される。一般式(1)中のイミダゾピラジノン骨格の8位に対する、一般式(1-2-1)、(1-2-2)、(1-2-3)、(1-2-4)又は(1-2-5)中のベンゼン環の結合部位は、特に限定されない。
上記一般式(1-2-1)中、R
2-1は、水素、ハロゲン、-N(R
2-1-1)
2又は-OR
2-1-1であり、ここで、R
2-1-1は、それぞれ独立して水素又は炭素数1~3の炭化水素基である。
上記一般式(1-2-5)中、R
2-2は、炭素数1~4の炭化水素基(特には、炭素鎖)であり、R
2-3は、それぞれ独立して水素又は炭素数1~3の炭化水素基であり、mは、2~8の整数(特には、偶数)である。
【0030】
上記一般式(1-2-1)中のR2-1に関して、ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素等が挙げられる。
R2-1が-N(R2-1-1)2又は-OR2-1-1である場合、R2-1-1は、それぞれ独立して水素又は炭素数1~3の炭化水素基である。ここで、炭素数1~3の炭化水素基としては、炭素数1~3のアルキル基、炭素数2~3のアルケニル基等が挙げられる。炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。炭素数2~3のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基等が挙げられる。
【0031】
上記一般式(1-2-5)中のR2-2は、炭素数1~4の炭化水素基であるので、一般式(1-2-5)で表される基は、ベンゼン環に4~7員環が縮合した構造を有する。R2-2は、炭素数1~4の直鎖の炭化水素基であることが好ましい。
R2-2としての、炭素数1~4の炭化水素基には、m個(2~8個)の置換基R2-3が、結合しており、即ち、R2-2は、炭素数1~4の、4~10価の炭化水素基である。置換基R2-3は、炭化水素基の水素を置換するものである。また、R2-2としての、炭素数1~4の炭化水素基は、飽和であってもよいし、不飽和であってもよい。
R2-2が炭素数1の炭化水素基である場合(R2-2がN及びベンゼン環と共に4員環を形成する場合)、mは2であることが好ましい。炭素数1の4価の炭化水素基としては、メタン-テトライル基が挙げられる。
また、R2-2が炭素数2の炭化水素基である場合(R2-2がN及びベンゼン環と共に5員環を形成する場合)、mは2又は4であることが好ましい。この場合、R2-2は、飽和にも、不飽和にもなり得る。R2-2が飽和の場合、mは4であることが好ましく、R2-2が不飽和の場合、mは2であることが好ましい。炭素数2の4価の炭化水素基(炭素鎖)としては、エテン-テトライル基が挙げられ、炭素数2の6価の炭化水素基としては、エタン-ヘキサイル基が挙げられる。
また、R2-2が炭素数3の炭化水素基である場合(R2-2がN及びベンゼン環と共に六員環を形成する場合)、mは2、4又は6であることが好ましい。この場合、R2-2は、飽和にも、不飽和にもなり得る。R2-2が飽和の場合、mは6であることが好ましく、R2-2が不飽和の場合、mは4又は2であることが好ましい。炭素数3の4価の炭化水素基(炭素鎖)としては、プロピン-テトライル基が挙げられ、炭素数3の6価の炭化水素基(炭素鎖)としては、プロペン-ヘキサイル基が挙げられ、炭素数3の8価の炭化水素基(炭素鎖)としては、プロパン-オクタイル基が挙げられる。
また、R2-2が炭素数4の炭化水素基である場合(R2-2がN及びベンゼン環と共に七員環を形成する場合)、mは2、4、6又は8であることが好ましい。この場合、R2-2は、飽和にも、不飽和にもなり得る。R2-2が飽和の場合、mは8であることが好ましく、R2-2が不飽和の場合、mは6、4又は2であることが好ましい。炭素数4の6価の炭化水素基(炭素鎖)としては、ブタジエン-ヘキサイル基が挙げられ、炭素数4の8価の炭化水素基(炭素鎖)としては、ブテン-オクタイル基が挙げられ、炭素数4の10価の炭化水素基としては、ブタン-デカイル基が挙げられる。
【0032】
上記一般式(1-2-5)中のR2-3は、それぞれ独立して水素又は炭素数1~3の炭化水素基であり、炭素数1~3の炭化水素基としては、炭素数1~3のアルキル基、炭素数2~3のアルケニル基等が挙げられる。炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。炭素数2~3のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基等が挙げられる。
【0033】
ここで、上記一般式(1)中のR2は、-CH2-R2’で表されることが好ましく、また、該R2’が、上記一般式(1-2-1)で表されることが好ましい。一般式(1)中のR2が-CH2-R2’で表され、該R2’が、上記一般式(1-2-1)で表される場合、発光輝度が向上する。
【0034】
上記一般式(1)中、R
3は、下記一般式(1-3-1)、(1-3-2)又は(1-3-3):
【化12】
で表される。
上記一般式(1-3-2)中、R
3-1は、水素又は炭素数1~3の炭化水素基である。
【0035】
上記一般式(1-3-2)中のR3-1に関して、炭素数1~3の炭化水素基としては、炭素数1~3のアルキル基、炭素数2~3のアルケニル基等が挙げられる。炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。炭素数2~3のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基等が挙げられる。
【0036】
ここで、上記一般式(1)中のR3は、上記一般式(1-3-2)で表されることが好ましい。一般式(1)中のR3が上記一般式(1-3-2)で表される場合、発光輝度が向上する。
また、上記一般式(1-3-2)中のR3-1は、水素であることが好ましい。一般式(1)中のR3が上記一般式(1-3-2)で表され、R3-1が水素である場合、発光輝度が更に向上する。
【0037】
本発明のセレンテラジン誘導体は、下記構造式(1-1):
【化13】
で表されることが特に好ましい。この場合、該セレンテラジン誘導体を用いた発光系からの発光輝度が特に高い。
【0038】
(一般式(2)で表されるセレンテラジン誘導体)
本発明の第2の実施態様のセレンテラジン誘導体は、下記一般式(2)で表される。
【化14】
【0039】
上記一般式(2)中、R4は、水素、-(CH2)n-OR4-1、-N(R4-1)2又は-CF3であり、ここで、R4-1は、それぞれ独立して水素又は炭素数1~3の炭化水素基であり、nは、0~3の整数である。一般式(2)中のイミダゾピラジノン骨格の6位に結合しているベンゼン環に対するR4の結合位置は、o-でも、m-でも、p-でもよい。
R4が-(CH2)n-OR4-1又は-N(R4-1)2である場合、R4-1は、それぞれ独立して水素又は炭素数1~3の炭化水素基である。ここで、炭素数1~3の炭化水素基としては、炭素数1~3のアルキル基、炭素数2~3のアルケニル基等が挙げられる。炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。炭素数2~3のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基等が挙げられる。
【0040】
ここで、上記一般式(2)中のR4は、-(CH2)n-OR4-1で表されることが好ましい。一般式(2)中のR4が-(CH2)n-OR4-1で表される場合、発光輝度が向上する。
また、-(CH2)n-OR4-1中のnは0であることが好ましく、R4-1は水素であることが好ましい。即ち、上記一般式(2)中のR4は、-OHであることが特に好ましい。一般式(2)中のR4が-OHである場合、発光輝度が更に向上する。
【0041】
上記一般式(2)中、R
5は、下記一般式(2-5-1)、(2-5-2)、(2-5-3)、(2-5-4)又は(2-5-5):
【化15】
で表される。一般式(2)中のSに対する、一般式(2-5-1)、(2-5-2)、(2-5-3)、(2-5-4)又は(2-5-5)中のベンゼン環の結合部位は、特に限定されない。
上記一般式(2-5-1)中、R
5-1は、水素、ハロゲン、-N(R
5-1-1)
2又は-OHであり、ここで、R
5-1-1は、それぞれ独立して水素又は炭素数1~3の炭化水素基である。
上記一般式(2-5-5)中、R
5-2は、炭素数1~4の炭化水素基(特には、炭素鎖)であり、R
5-3は、それぞれ独立して水素又は炭素数1~3の炭化水素基であり、mは、2~8の整数(特には、偶数)である。
【0042】
上記一般式(2-5-1)中のR5-1に関して、ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素等が挙げられる。
R5-1が-N(R5-1-1)2である場合、R5-1-1は、それぞれ独立して水素又は炭素数1~3の炭化水素基である。ここで、炭素数1~3の炭化水素基としては、炭素数1~3のアルキル基、炭素数2~3のアルケニル基等が挙げられる。炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。炭素数2~3のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基等が挙げられる。
【0043】
上記一般式(2-5-5)中のR5-2は、炭素数1~4の炭化水素基であるので、一般式(2-5-5)で表される基は、ベンゼン環に4~7員環が縮合した構造を有する。R5-2は、炭素数1~4の直鎖の炭化水素基であることが好ましい。
R5-2としての、炭素数1~4の炭化水素基には、m個(2~8個)の置換基R5-3が、結合しており、即ち、R5-2は、炭素数1~4の、4~10価の炭化水素基である。置換基R5-3は、炭化水素基の水素を置換するものである。また、R5-2としての、炭素数1~4の炭化水素基は、飽和であってもよいし、不飽和であってもよい。
R5-2が炭素数1の炭化水素基である場合(R5-2がN及びベンゼン環と共に4員環を形成する場合)、mは2であることが好ましい。炭素数1の4価の炭化水素基としては、メタン-テトライル基が挙げられる。
また、R5-2が炭素数2の炭化水素基である場合(R5-2がN及びベンゼン環と共に5員環を形成する場合)、mは2又は4であることが好ましい。この場合、R5-2は、飽和にも、不飽和にもなり得る。R5-2が飽和の場合、mは4であることが好ましく、R2-2が不飽和の場合、mは2であることが好ましい。炭素数2の4価の炭化水素基(炭素鎖)としては、エテン-テトライル基が挙げられ、炭素数2の6価の炭化水素基としては、エタン-ヘキサイル基が挙げられる。
また、R5-2が炭素数3の炭化水素基である場合(R5-2がN及びベンゼン環と共に六員環を形成する場合)、mは2、4又は6であることが好ましい。この場合、R5-2は、飽和にも、不飽和にもなり得る。R5-2が飽和の場合、mは6であることが好ましく、R5-2が不飽和の場合、mは4又は2であることが好ましい。炭素数3の4価の炭化水素基(炭素鎖)としては、プロピン-テトライル基が挙げられ、炭素数3の6価の炭化水素基(炭素鎖)としては、プロペン-ヘキサイル基が挙げられ、炭素数3の8価の炭化水素基(炭素鎖)としては、プロパン-オクタイル基が挙げられる。
また、R5-2が炭素数4の炭化水素基である場合(R5-2がN及びベンゼン環と共に七員環を形成する場合)、mは2、4、6又は8であることが好ましい。この場合、R5-2は、飽和にも、不飽和にもなり得る。R5-2が飽和の場合、mは8であることが好ましく、R5-2が不飽和の場合、mは6、4又は2であることが好ましい。炭素数4の6価の炭化水素基(炭素鎖)としては、ブタジエン-ヘキサイル基が挙げられ、炭素数4の8価の炭化水素基(炭素鎖)としては、ブテン-オクタイル基が挙げられ、炭素数4の10価の炭化水素基としては、ブタン-デカイル基が挙げられる。
【0044】
上記一般式(2-5-5)中のR5-3は、それぞれ独立して水素又は炭素数1~3の炭化水素基であり、炭素数1~3の炭化水素基としては、炭素数1~3のアルキル基、炭素数2~3のアルケニル基等が挙げられる。炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。炭素数2~3のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基等が挙げられる。
【0045】
ここで、上記一般式(2)中のR5は、上記一般式(2-5-1)で表されることが好ましい。一般式(2)中のR5が上記一般式(2-5-1)で表される場合、発光輝度が向上する。
また、上記一般式(2-5-1)中のR5-1は水素又はハロゲンであることが好ましく、水素又はフッ素であることが更に好ましい。一般式(2)中のR5が一般式(2-5-1)で表され、R5-1が水素又はハロゲンである場合、発光輝度が更に向上し、R5-1が水素又はフッ素である場合、発光輝度がより一層向上する。
【0046】
上記一般式(2)中、R6は、水素又は炭素数1~3の炭化水素基である。
R6に関して、炭素数1~3の炭化水素基としては、炭素数1~3のアルキル基、炭素数2~3のアルケニル基等が挙げられる。炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。炭素数2~3のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基等が挙げられる。
【0047】
ここで、上記一般式(2)中のR6は、水素であることが好ましい。一般式(2)中のR6が水素である場合、発光輝度が向上する。
【0048】
本発明のセレンテラジン誘導体は、下記構造式(2-1)又は(2-2):
【化16】
で表されることが特に好ましい。この場合、該セレンテラジン誘導体を用いた発光系からの発光輝度が特に高い。
【0049】
(一般式(1)で表されるセレンテラジン誘導体の合成方法)
上記一般式(1)で表されるセレンテラジン誘導体は、特に限定されるものではないが、例えば、以下のようにして合成することができる。
(i-1)まず、2-アミノ-3,5-ジブロモアミノピラジンとベンジルマグネシウムクロリド及びビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドを用いたカップリング反応により、ベンジル体を合成する。
(i-2)次に、ベンジル体とボロン酸を用いて鈴木・宮浦カップリングを行い、6位に所望の環構造を導入したベンジル体を合成する。
(ii-1)或いは、2-アミノ-3,5-ジブロモアミノピラジンとボロン酸を用いて鈴木・宮浦カップリングを行い、フェニル体を合成する。
(ii-2)次に、フェニル体で再度鈴木・宮浦カップリングを行い、6位に所望の環構造を導入したフェニル体を合成する。
(iii)最後に、6位に所望の環構造を導入したベンジル体又はフェニル体をケトアセタール体と縮合環化反応させ、目的物質である一般式(1)で表されるセレンテラジン誘導体を合成することができる。
【0050】
(一般式(2)で表されるセレンテラジン誘導体の合成方法)
上記一般式(2)で表されるセレンテラジン誘導体は、特に限定されるものではないが、例えば、以下のようにして合成することができる。
(i)まず、2-アミノ-3,5-ジブロモアミノピラジンとボロン酸を用いて鈴木・宮浦カップリングを行い、6位に所望の環構造を導入した中間体を合成する。
(ii)NBSを用いてブロモ化させ、8位をブロモ化した中間体を合成する。
(iii)8位をブロモ化した中間体とチオールを水素化ナトリウムで置換反応を行い、チオール体を合成する。ここで、所望により、チオール体と三臭化ホウ素を反応させ、脱メチル化反応させてもよい。
(iv)最後に、チオール体をケトアセタール体と縮合環化反応させ、目的物質である一般式(2)で表されるセレンテラジン誘導体を合成することができる。
【0051】
本発明のセレンテラジン誘導体は、海洋生物発光酵素を触媒とした酸化反応により、発光する。そのため、本発明のセレンテラジン誘導体は、生物学的測定/検出における発光標識として利用でき、例えば、アミノ酸、ポリペプチド、タンパク質、核酸等を標識するために使用できる。なお、本発明のセレンテラジン誘導体をこれらの物質に結合させる方法は、当業者に周知であり、例えば、当業者に周知の方法を使用して、目的の物質のカルボキシル基やアミノ基に対して本発明のセレンテラジン誘導体を結合させることができる。
【0052】
また、本発明のセレンテラジン誘導体は、発光基質の発光によって、海洋生物発光酵素活性を検出することを利用した測定/検出に利用することもできる。例えば、海洋生物発光酵素遺伝子を導入した細胞又は動物に対して、本発明のセレンテラジン誘導体を投与することにより、インビボにおける標的遺伝子又はタンパク質の発現等を測定/検出することができる。
【0053】
なお、本発明のセレンテラジン誘導体の中でも、上記一般式(2)で表されるセレンテラジン誘導体は、天然型のセレンテラジンよりも長波長光を発することが可能であり、長波長光は生体内での透過率が高いため、生体内深部の病巣を可視化するための標識材料として有用である。
【0054】
本発明のセレンテラジン誘導体を発光基質(ルシフェリン)として用いる場合、発光酵素(ルシフェラーゼ)としては、天然のものでも、人工のものでも使用できる。
天然の発光酵素としては、ウミシイタケ(Renilla reniformis)由来のルシフェラーゼ(RLuc)、海洋性カイアシ(Gaussia princeps)由来のルシフェラーゼ(Gluc)、発光エビ(Oplophorus gracilirostris)由来のルシフェラーゼ(Oluc)、ウミサボテン由来のルシフェラーゼ等が挙げられる。
また、人工の発光酵素としては、発光エビ(Oplophorus gracilirostris)由来の人工の発光酵素であるPromega社製の「NanoLuc」、ウミシイタケ(Renilla reniformis)由来の人工の発光酵素であるRenillaルシフェラーゼ8.6-535SG(RLuc8.6SG)、産業技術総合研究所の金誠培博士らによって開発された発光プランクトン由来の人工発光酵素群であるALuc等が挙げられる。ここで、ALucには、種々の人工発光酵素があり、例えば、ALuc16、ALuc23、ALuc47、ALuc49等が挙げられる。
【0055】
本発明のセレンテラジン誘導体は、ルシフェラーゼ特異性を有し、酵素により発光輝度が大きく異なる。そのため、本発明のセレンテラジン誘導体によれば、生体内で起こる分子イベント、癌の転移等、複数の生体内現象を同時に高感度且つ高速に可視化することが可能となり、例えば、多数の発光酵素標識が共存している中で、特定の発光酵素のみを光らせることが可能となる。
【0056】
なお、これら海洋生物発光酵素は、分子サイズが小さく、生体内に導入しても、生体への負荷が小さく、また、生体内に遺伝子を導入した場合の発現効率が高いという利点もある。
【0057】
海洋生物発光酵素を産生可能な遺伝子の生体内への組み込み方法は、特に限定されず、例えば、ベクターを用いた方法を利用することができる。かかる海洋生物発光酵素をコードするベクターの作製も、特に限定されず、公知の方法で作製することができる。また、かかるベクターとしては、市販品を使用することもでき、例えば、Promega社製の「R-luc」や、Stanford,Gambhir lab.製の「R-luc8」、「R-luc8.6_547」等を使用することもできる。また、Mirus社製のTransIT-LT1試薬を用いて、生細胞に海洋生物由来の発光酵素をコードするプラスミドを一過性発現させてもよい。
【0058】
なお、本発明のセレンテラジン誘導体は、溶液として使用することが好ましい。ここで、溶液の調製に使用する溶媒としては、水の他、メタノール、エタノール等のアルコールが挙げられる。また、溶液中のセレンテラジン誘導体の濃度は、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、1mM~5mMの範囲が好ましい。
【実施例0059】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0060】
<ケトアセタール体(5)の合成>
市販されている4-ベンジルオキシベンジルアルコール(3)(2g, 9.33 mmol)を乾燥ジクロロメタン(15 mL)に溶解させ、アルゴン雰囲気下、0℃で攪拌した。混合物に塩化チオニル(1.35 mL, 1.64 mmol)を加え、アルゴン雰囲気下、室温で2時間攪拌した。反応混合物に水を加えた後、ジクロロメタン(100 mL×3)で抽出した。抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮した。析出した固体をヘキサン洗浄し、化合物(4)を白色固体で得た(1.6 g, 6.84 mmol, 74 %)。
【化17】
【0061】
・化合物(4)の同定結果
1H-NMR (500 MHz, CHLOROFORM-D) δ 7.43-7.37 (m, 4H), 7.34-7.33 (m, 1H), 7.31 (dd, J = 6.6, 2.0 Hz, 2H), 6.95 (dd, J = 6.6, 2.0 Hz, 2H), 5.07 (S, 2H), 4.56 (S, 2H)
【0062】
マグネシウム削り状(391 mg, 16.09 mmol)を乳鉢で削り、脱気しアルゴン雰囲気下にした後、超脱水テトラヒドロフラン(10 mL)と1,2-ジブロモエタン(0.2 mL)を加え、1時間攪拌した。この反応混合物に、脱水テトラヒドロフラン(10 mL)で溶解させた化合物(4)(1.5 g, 6.45 mmol)を加え、2時間加熱還流した後、反応混合物(グリニャール試薬)を氷冷した。超脱水テトラヒドロフラン(10 mL)に溶解させたジエトキシ酢酸エチル(1.72 mL, 9.67 mmol)を-80℃に冷却した後、上記グリニャール試薬を20分かけて全て滴下し、-80℃で3時間攪拌した。冷却したまま水でクエンチを行い、室温に戻した後、酢酸エチル(200 mL×3)で抽出した。抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮した。残渣をエタノール(30 mL)で溶解させ、パラジウム炭素(160 mg)を加え、室温で水素雰囲気下、12時間攪拌した。反応混合物をセライトろ過した後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(w = 65 g, φ = 4.0 cm, ヘキサン:酢酸エチル = 4 : 1 → 3 : 1)で精製し、ケトアセタール体(5)を薄黄色油状で得た(669 mg, 2.81 mmol, 43 %)。
【化18】
【0063】
・ケトアセタール体(5)の同定結果
1H-NMR (500 MHz, CHLOROFORM-D) δ 7.05 (dd, J = 11.5, 2.9 Hz, 2H), 6.75 (dd, J = 11.5, 3.4 Hz, 2H), 5.58 (S, 1H), 4.65 (S, 1H), 3.82 (S, 2H), 3.73-3.67 (m, 2H), 3.58-3.52 (m, 2H), 1.24 (t, J = 7.2 Hz, 6H)
HR-ESI-MS: m/z: [M+Na]+ C13H18Na1O4の計算値 261.11141; 実測値 261.11028
【0064】
<構造式(1-1)で表される化合物の合成>
塩化亜鉛(2.7 g, 19.77 mmol)と1M ベンジルマグネシウムクロリド-テトラヒドロフラン溶液(22 mL, 19.77 mmol)をアルゴン雰囲気化で1時間攪拌した。この混合物に超脱水テトラヒドロフラン(22 mL)で溶解させたビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(351 mg, 0.49 mmol)と、2-アミノ-3,5-ジブロモピラジン(6)(2.5 g, 9.89 mmol)を加え、4日間室温で攪拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチル(200 mL×3)で抽出した。抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(w = 170 g, φ = 4.0 cm, ヘキサン:酢酸エチル = 4 : 1 → 3 : 1 )で精製し、化合物(7)を黄色油状で得た(2.1 g, 7.98 mmol, 81 %)。
【化19】
【0065】
・化合物(7)の同定結果
1H-NMR (500 MHz, CHLOROFORM-D) δ 8.03 (s, 1H), 7.34-7.21 (m, 5H), 4.41 (s, 2H), 4.08 (s, 2H)
HR-ESI-MS: m/z: [M+H]+ C11H11
79Br1N3の計算値 264.01363; 実測値 264.01253
HR-ESI-MS: m/z: [M+H]+ C11H11
81Br1N3の計算値 266.01103; 実測値 266.01159
【0066】
化合物(7)(150 mg, 0.567 mmol)と市販されている1,4-ベンゾジオキサン-6-ボロン酸(133 mg, 0.741 mmol)を1,4-ジオキサン(5 mL)に溶解し、簡易脱気した後、アルゴン雰囲気下にした。この混合物にテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(32 mg, 0.028 mmol)と、2 M炭酸ナトリウム水溶液(5 mL)を加え、110℃で1.5時間攪拌した。反応混合物を室温に戻した後、水を加え酢酸エチル(60 mL×2)で抽出した。抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで(w = 60 g, φ = 3.0 cm, ヘキサン:酢酸エチル = 1 : 1 → 酢酸エチル)精製し、化合物(8)を薄黄色固体で得た(142 mg, 0.444 mmol, 78 %)。
【化20】
【0067】
・化合物(8)の同定結果
1H-NMR (500 MHz, ACETONE-D6) δ 8.35 (s, 1H), 7.48 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 7.45 (dd, J = 8.3, 2.0 Hz, 1H), 7.37 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.30 (t, J = 7.7 Hz, 2H), 7.21 (t, J = 7.4 Hz, 1H), 6.87 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 5.54 (s, 1H), 4.29 (s, 4H), 4.16 (s, 2H)
HR-ESI-MS: m/z: [M+H]+ C19H18N3O2の計算値 320.13956; 実測値 320.13990
【0068】
基質(8)(30 mg, 0.094 mmol)とケトアセタール体(5)(33 mg, 0.14 mmol)をエタノール(2 mL)で溶解させた後、12 M塩酸(100μL)加え、60℃で12時間攪拌した。反応混合物を減圧濃縮し、自動分取中圧カラムクロマトグラフィー(クロロホルム : メタノール = 99 : 1→85 : 15 )で精製し、構造式(1-1)で表される化合物(26 mg, 0.056 mmol, 60 %)を黄色固体で得た。
【化21】
【0069】
・構造式(1-1)で表される化合物の同定結果
1H-NMR (500 MHz, METHANOL-D4, 0.5% TFA-D) δ 8.39 (s, 1H), 7.44 (d, J = 1.7 Hz, 1H), 7.41-7.38 (m, 3H), 7.32-7.29 (m, 2H), 7.26-7.23 (m, 1H), 7.10 (dd, J = 11.5, 2.9 Hz, 2H), 6.95 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 6.73 (dd, J = 11.5, 2.9 Hz, 2H), 4.52 (s, 2H), 4.29 (m, 4H), 4.17 (s, 2H)
HR-ESI-MS: m/z: [M+H]+ C28H24N3O4の計算値 466.17655; 実測値 466.17668
【0070】
<構造式(2-1)で表される化合物の合成>
市販されている2-アミノ-5-ジブロモピラジン(9)(2.0 g, 11.49 mmol)と市販されている4-メトキシフェニルボロン酸(2.6 g, 17.24 mmol)を1,4-ジオキサン(30 mL)に溶解し、簡易脱気した後、アルゴン雰囲気下にした。この混合物にテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(654 mg, 0.86 mmol)と、2 M炭酸ナトリウム水溶液(30 mL)を加え、110℃で1.5時間攪拌した。反応混合物を室温に戻した後、水を加え、酢酸エチル(200 mL×2)で抽出した。抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで(w = 100 g, φ = 4.0 cm, ヘキサン:酢酸エチル = 2 : 1 → 1 : 1)精製し、化合物(10)を薄黄色固体で得た(2.62 g, 13.03 mmol, 113 %)。
【化22】
【0071】
・化合物(10)の同定結果
1H-NMR (500 MHz, CHLOROFORM-D) δ 8.40 (d, J = 1.7 Hz, 1H), 8.04 (d, J = 1.7 Hz, 1H), 7.81 (td, J = 6.0, 3.4 Hz, 2H), 6.98 (td, J = 6.0, 3.4 Hz, 2H), 4.54 (s, 2H), 3.86 (s, 3H)
HR-ESI-MS: m/z: [M+H]+ C16H14N3O1の計算値 202.09755; 実測値 202.09804
【0072】
化合物(10)(2.62 g, 13.02 mmol)をクロロホルム(70 mL)で溶解させた後、N-ブロモスクシンイミド(3.01 g, 16.93 mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。反応混合物を氷冷した後、水でクエンチし、クロロホルム(100 mL×2)で抽出した。抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(w = 50 g, φ = 4.0 cm, ヘキサン:酢酸エチル = 3 : 1 → 2 : 1)で精製し、化合物(11)を赤褐色固体で得た(2.04 g, 7.31 mmol, 56%)。
【化23】
【0073】
・化合物(11)の同定結果
1H-NMR (500 MHz, CHLOROFORM-D) δ 8.34 (s, 1H), 7.81 (td, J = 6.0, 3.4 Hz, 2H), 6.97 (td, J = 6.0, 3.4 Hz, 2H), 4.99 (s, 2H), 3.85 (s, 3H)
HR-ESI-MS: m/z: [M+H]+ C11H11
79Br1N3O1の計算値 280.00907; 実測値 280.00855
HR-ESI-MS: m/z: [M+H]+ C11H11
81Br1N3O1の計算値 282.00530; 実測値 251.00650
【0074】
ベンゼンチオール(273 μL, 2.68 mmol)を乾燥N,N-ジメチルホルムアミド(20 mL)で溶解させ、氷冷した後水素化ナトリウム(178 mg, 4.46 mmol)を加え、アルゴン雰囲気下、0℃で1時間攪拌した。この混合物に化合物(11)(500 mg, 1.78 mmol)を加え、100℃で2時間攪拌した。反応混合物を室温に戻した後、水を加え、酢酸エチル(200 mL×3)で抽出した。抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、トルエンを加え、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(w = 90 g, φ = 3.0 cm, ヘキサン:酢酸エチル = 2 : 1 → 1 : 1)で精製し、化合物(12)を褐色固体で得た(441 mg, 1.43 mmol, 80 %)。
【化24】
【0075】
・化合物(12)の同定結果
1H-NMR (500 MHz, CHLOROFORM-D) δ 8.30 (s, 1H), 7.71 (dd, J = 6.6, 2.0 Hz, 2H), 7.49 (dd, J = 8.3, 1.4 Hz, 2H), 7.40-7.35 (m, 3H), 6.91 (dd, J = 6.9, 2.3 Hz, 2H), 4.84 (s, 2H), 3.83 (s, 3H)
HR-ESI-MS: m/z: [M+H]+ C17H16N3O1S1の計算値 310.10158; 実測値 310.10141
【0076】
化合物(12)(150 mg, 0.48 mmol)をアルゴン雰囲気下にし、超脱水ジクロロメタン(8 mL)を加え、-80℃で冷却した。反応混合物に三臭化ホウ素(4.8 mL, 4.85 mmol)を加え、室温に戻し、12時間攪拌した。反応混合物を氷冷し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液でクエンチを行い、クロロホルム(50 mL×3)で抽出した。抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(w = 50 g, φ = 2.0 cm, ヘキサン : 酢酸エチル = 3 : 1 → 1 : 1)で精製し、化合物(13)を赤褐色固体で得た(115 mg, 0.39 mmol, 81 %)。
【化25】
【0077】
・化合物(13)の同定結果
1H-NMR (500 MHz, ACETONE-D6) δ 8.31 (s, 1H), 7.64 (dd, J = 6.9, 2.3 Hz, 2H), 7.51 (dt, J = 8.2, 1.9 Hz, 2H), 7.42-7.35 (m, 3H), 6.80 (dd, J = 6.6, 2.0 Hz, 2H), 5.75 (s, 2H)
HR-ESI-MS: m/z: [M+H]+ C16H14N3O1S1の計算値 296.08613; 実測値 296.08576
【0078】
化合物(13)(30 mg, 0.101 mmol)とケトアセタール体(5)(36 mg, 0.153 mmol)をエタノール(2 mL)で溶解させた後、12 M塩酸(100μL)加え、60℃で12時間攪拌した。反応混合物を減圧濃縮し、自動分取中圧カラムクロマトグラフィー(クロロホルム : メタノール = 99 : 1→85 : 15 )で精製し、構造式(2-1)で表される化合物(23 mg, 0.052 mmol, 51 %)を赤褐色固体で得た。
【化26】
【0079】
・構造式(2-1)で表される化合物の同定結果
1H-NMR (500 MHz, METHANOL-D4) δ 8.16 (s, 1H), 7.66 (dd, J = 7.2, 2.0 Hz, 2H), 7.53-7.49 (m, 5H), 7.11 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.72 (d, J = 4.6 Hz, 2H), 6.70 (d, J = 4.0 Hz, 2H), 4.03 (s, 2H)
HR-ESI-MS: m/z: [M+H]+ C25H20N3O3S1の計算値 442.12153; 実測値 442.12254
【0080】
<構造式(2-2)で表される化合物の合成>
構造式(2-1)で表される化合物の合成の項と同様にして、化合物(11)を合成した。
【0081】
4-フルオロベンゼンチオール(285 μL, 2.14 mmol)を乾燥N,N-ジメチルホルムアミド(20 mL)で溶解させ、氷冷した後、水素化ナトリウム(178 mg, 4.46 mmol)を加え、アルゴン雰囲気下、0℃で1時間攪拌した。この混合物に、化合物(11)(500 mg, 1.78 mmol)を加え、100℃で2.5時間攪拌した。反応混合物を室温に戻した後、水を加え、酢酸エチル(200 mL×3)で抽出した。抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、トルエンを加え、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(w = 95 g, φ = 3.0 cm, クロロホルム : 酢酸エチル= 2 : 1 → 1 : 1)で精製し、化合物(14)を薄橙色固体で得た(396 mg, 1.21 mmol, 68 %)。
【化27】
【0082】
・化合物(14)の同定結果
1H-NMR (500 MHz, CHLOROFORM-D) δ 8.26 (s, 1H), 7.65 (dd, J = 6.9, 2.3 Hz, 2H), 7.54-7.51 (m, 2H), 7.12-7.08 (m, 2H), 6.89 (dd, J = 6.9, 1.7 Hz, 2H), 4.89 (s, 2H), 3.82 (s, 3H)
HR-ESI-MS: m/z: [M+H]+ C17H15F1N3O1S1の計算値 328.09432; 実測値 328.09199
【0083】
化合物(14)(50 mg, 0.15 mmol)をアルゴン雰囲気下にし、超脱水ジクロロメタン(5 mL)を加え、-80℃で冷却した。反応混合物に三臭化ホウ素(0.9 mL, 1.21 mmol)を加え、室温に戻し、12時間攪拌した。反応混合物を氷冷し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液でクエンチを行い、クロロホルム(15 mL×3)で抽出した。抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(w = 30 g, φ = 1.5 cm, ヘキサン : 酢酸エチル = 3 : 1 → 1 : 1)で精製し、化合物(15)を黄色固体で得た(38 mg, 0.12 mmol, 76 %)。
【化28】
【0084】
・化合物(15)の同定結果
1H-NMR (500 MHz, METHANOL-D4) δ 8.15 (s, 1H), 7.57 (td, J = 5.9, 2.5 Hz, 2H), 7.50 (dd, J = 6.6, 2.0 Hz, 2H), 7.20-7.16 (m, 2H), 6.73 (dd, J = 6.6, 2.0 Hz, 2H)
HR-ESI-MS: m/z: [M+H]+ C16H13F1N3O1S1の計算値 314.07754; 実測値 314.07634
【0085】
化合物(15)(30 mg, 0.096 mmol)とケトアセタール体(5)(34 mg, 0.14 mmol)をエタノール(2 mL)で溶解させた後、12 M塩酸(100μL)加え、60℃で12時間攪拌した。反応混合物を減圧濃縮し、自動分取中圧カラムクロマトグラフィー(クロロホルム : メタノール = 99 : 1→85 : 15 )で精製し、構造式(2-2)で表される化合物(22 mg, 0.049 mmol, 51 %)を褐色固体で得た。
【化29】
【0086】
・構造式(2-2)で表される化合物の同定結果
1H-NMR (500 MHz, METHANOL-D4) δ 8.10 (s, 1H), 7.65 (qd, J = 5.7, 3.0 Hz, 2H), 7.46 (dd, J = 6.9, 2.3 Hz, 2H), 7.24-7.21 (m, 2H), 7.10 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 6.71 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.69 (dd, J = 6.6, 2.0 Hz, 2H), 4.02 (s, 2H)
HR-ESI-MS: m/z: [M+H]+ C25H19F1N3O3S1の計算値 460.11304; 実測値 460.11311
【0087】
<比較化合物(17)の合成>
構造式(1-1)で表される化合物の合成の項と同様にして、化合物(7)を合成した。
1,4-ベンゾジオキサン-6-ボロン酸に代えて、3-ピリジルボロン酸を使用し、構造式(1-1)で表される化合物の合成と同様にして、比較化合物(17)を合成した。
以下に反応スキームを示す。
【化30】
【0088】
・比較化合物(17)の同定結果
1H-NMR (500 MHz, METHANOL-D4) δ 8.96 (s, 1H), 8.57 (dd, J = 4.9, 1.4 Hz, 1H), 8.21 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 8.06 (s, 1H), 7.52 (dd, J = 8.0, 5.2 Hz, 1H), 7.39 (d, J = 7.4 Hz, 2H), 7.28 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 7.22-7.19 (m, 1H), 7.13 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.69 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 4.41 (s, 2H), 4.07 (s, 2H)
HR-ESI-MS: m/z: [M+H]+ C25H21N4O2の計算値 409.16635; 実測値 409.16645
【0089】
<比較化合物(19)の合成>
構造式(1-1)で表される化合物の合成の項と同様にして、化合物(7)を合成した。
1,4-ベンゾジオキサン-6-ボロン酸に代えて、4-ピリジルボロン酸を使用し、構造式(1-1)で表される化合物の合成と同様にして、比較化合物(19)を合成した。
以下に反応スキームを示す。
【化31】
【0090】
・比較化合物(19)の同定結果
1H-NMR (500 MHz, METHANOL-D4) δ 9.17 (s, 1H), 8.90 (d, J = 6.9 Hz, 2H), 8.72 (d, J = 6.9 Hz, 2H), 7.42 (d, J = 6.9 Hz, 2H), 7.31-7.28 (m, 2H), 7.24-7.21 (m, 1H), 7.11 (dd, J = 11.5, 2.9 Hz, 2H), 6.71 (dd, J = 6.6, 2.0 Hz, 2H), 4.55 (s, 2H), 4.17 (s, 2H)
HR-ESI-MS: m/z: [M+H]+ C25H21N4O2の計算値 409.16614; 実測値 409.16645
【0091】
<比較化合物(22)の合成>
ベンジルマグネシウムクロリドに代えて、フェニルボロン酸を使用し、また、1,4-ベンゾジオキサン-6-ボロン酸に代えて、4-ヒドロキシボロン酸を使用し、構造式(1-1)で表される化合物の合成と同様にして、比較化合物(22)を合成した。
以下に反応スキームを示す。
【化32】
【0092】
・比較化合物(22)の同定結果
1H-NMR (500 MHz, METHANOL-D4) δ 8.01 (d, J = 5.2 Hz, 2H), 7.65 (s, 1H), 7.60-7.55 (m, 3H), 7.13 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.90 (dd, J = 6.6, 2.0 Hz, 2H), 6.66 (dd, J = 6.6, 2.0 Hz, 2H), 4.03 (s, 2H)
HR-ESI-MS: m/z: [M+H]+ C25H20N3O3の計算値 410.14906; 実測値 410.15047
【0093】
また、その他の比較基質として、以下に示す天然基質(nCTZ)と、公知の天然類似基質1(CTZh、Coelenterazine h)及び天然類似基質2(DBC、DeepBLueC)を使用した。
【化33】
【0094】
<発光スペクトル測定>
ATTO株式会社製発光スペクトル装置AB-1850を用いて測定した。
測定したスペクトルは全て検出器の特性を補正したスペクトルである。
【0095】
<生細胞及びライセート細胞での発光測定>
発光測定には、PerkinElmer社製IVISイメージングシステム(Caliper Life Sciences)を用いた。
また、発光酵素を発現する生細胞(Live cells)としては、アフリカミドリザル腎臓由来のCOS-7細胞を使用し、また、該生細胞を溶解したライセート(Lysate)でも評価した。
【0096】
<発光輝度の評価>
アフリカミドリザル腎臓由来のCOS-7細胞を6穴マイクロプレートに植え、70%の底面積を埋めるほど生えた時点までCO2インキュベーターで培養する。TransIT-LT1試薬(Mirus)を用いて各ウェル細胞に、以下の海洋生物由来の各発光酵素をコードするプラスミドを一過性発現させる。
(i)ALuc16
(ii)ALuc47
(iii)Renillaルシフェラーゼ8.6-535SG(RLuc8.6SG)
(iv)NanoLuc
このリポフェクション後、1日間、CO2インキュベーターで継続培養する。それから、各細胞を96穴マイクロプレートにサブカルチャーし、更に1日間培養する。
【0097】
同一プラスミドを導入した細胞ウェルを任意に2つに分け、1つはライセートに、もう一方は生細胞実験に充てる。ライセートのためには、まず、96穴マイクロプレートから細胞培地を除去してから、Promega製の細胞溶解試薬(ライセート)を各ウェル40mLずつインジェクトし、15分間インキュベーションした。一方、生細胞実験のためには、細胞培地だけを完全に除去した後、ただちに蓋をかけ発光測定までに乾燥しないように処置する。
【0098】
一方、各発光基質は、最初にメタノール(PEG400、25%)で5mMになるように溶解し(ストック溶液)、さらにリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で100μMにまで希釈した(以下、希釈発光基質溶液と称する)。事前に、この「希釈発光基質溶液」を何も入っていない96穴マイクロプレートの各ウェルにそれぞれ分注しておいた。前述した細胞溶解液(ライセート)の入った96穴ブラックフレームマイクロプレートの各ウェルに40μLの「希釈発光基質溶液」が同時に入るように、12チャンネルマイクロピペットを用いて、同時に注入した。希釈発光基質溶液注入後、直ちにIVISイメージングシステム(Xenogen、USA)にプレートを移し、96穴ブラックフレームマイクロプレートからの生物発光輝度を測定し、専用ソフトウェアLiving Image ver.4.7で分析した。
結果を
図1、
図2、
図4、
図5、
図7、
図8、
図10及び
図11に示す。
図1、
図2、
図4、
図5、
図7、
図8、
図10及び
図11中、構造式(1-1)で表される化合物を「(1-1)」と表記し、構造式(2-1)で表される化合物を「(2-1)」と表記し、構造式(2-2)で表される化合物を「(2-2)」と表記し、比較化合物(17)を「(17)」と表記し、比較化合物(19)を「(19)」と表記し、比較化合物(22)を「(22)」と表記した。
【0099】
<生物発光スペクトルの評価1>
COS-7細胞を6穴マイクロプレートに植え、70%の底面積を埋めるほど生えた時点までCO
2インキュベーターで培養する。TransIT-LT1試薬(Mirus)を用いて各ウェル細胞に、以下の海洋生物由来の各発光酵素をコードするプラスミドを一過性発現させる。
(i)ALuc16
(ii)ALuc47
(iii)Renillaルシフェラーゼ8.6-535SG(RLuc8.6SG)
(iv)NanoLuc
このリポフェクション後、1日間、CO
2インキュベーターで継続培養する。6穴マイクロプレートの細胞培地を完全に除去した後、各ウェルにPromega製の細胞溶解試薬(ライセート)を200μLずつ加え、15分間室温でインキュベーションする。
このライセート20μLをPCRチューブにそれぞれ分注し、発光輝度評価時の100μM希釈発光基質溶液20μL添加した。PCRチューブを直ちに分光光度計(AB-1850、ATTO)に入れ、高感度モードの0.5秒、5秒、10秒、30秒の積算モードより生物発光スペクトルを測定した。
結果を
図3、
図6、
図9及び
図12に示す。
図3、
図6、
図9及び
図12中、構造式(1-1)で表される化合物を「(1-1)」と表記し、構造式(2-1)で表される化合物を「(2-1)」と表記し、構造式(2-2)で表される化合物を「(2-2)」と表記した。
【0100】
<結果>
図1及び
図2から分かるように、構造式(1-1)で表される化合物は、ALuc16に対して高輝度で発光を示した。また、
図4、
図5、
図7及び
図8から分かるように、構造式(1-1)で表される化合物は、ALuc47及びRLuc8.6SGに対して僅かに発光を示した。一方、
図10及び
図11から分かるように、構造式(1-1)で表される化合物は、NanoLucに対しても発光活性を示さなかった。
このように、構造式(1-1)で表される化合物は、ALuc16に酵素特異性を有することが確認された。
【0101】
図1、
図2、
図7、
図8、
図10及び
図11から分かるように、構造式(2-1)で表される化合物は、ALuc16、RLuc8.6SG、NanoLucに対して発光活性を示した。また、
図3、
図9及び
図12から分かるように、構造式(2-1)で表される化合物は、ALuc16、RLuc8.6SG、NanoLucに対して、それぞれ538nm、573nm、507nmの発光スペクトルを示した。また、
図4及び
図5から分かるように、構造式(2-1)で表される化合物は、ALuc47に対しても発光を示した。
また、
図1、
図2、
図7及び
図8から分かるように、構造式(2-2)で表される化合物は、ALuc16、RLuc8.6SGに対して発光活性を示し、
図4、
図10及び
図11から分かるように、ALuc47及びNanoLucに対して僅かに発光を示した。
このように、構造式(2-1)又は(2-2)で表される化合物も、酵素特異性を有することが確認された。
また、構造式(2-1)又は(2-2)で表される化合物は、天然のセランテラジン等に比べて、発光波長が50nm程度長波長化することが確認された。
【0102】
<生物発光スペクトルの評価2>
天然基質(nCTZ)と、構造式(1-1)で表される化合物に対して、生物発光スペクトルの評価を更に行った。
COS-7細胞を6穴マイクロプレートに植え、70%の底面積を埋めるほど生えた時点までCO
2インキュベーターで培養する。TransIT-LT1試薬(Mirus)を用いて各ウェル細胞に、以下の海洋生物由来の各発光酵素をコードするプラスミドを一過性発現させる。
(i)ALuc16
(ii)ALuc23
(iii)F-A23-F
(iv)ALuc47
(v)ALuc49
(vi)RLuc8
(vii)F-R8-F
(viii)RLuc8.6SG
このリポフェクション後、1日間、CO
2インキュベーターで継続培養する。6穴マイクロプレートの細胞培地を完全に除去した後、各ウェルにPromega製の細胞溶解試薬(ライセート)を200μLずつ加え、15分間室温でインキュベーションする。
このライセート20μLをPCRチューブにそれぞれ分注し、発光輝度評価時の100μM希釈発光基質溶液20μL添加した。PCRチューブを直ちに分光光度計(AB-1850、ATTO)に入れ、高感度モードの0.5秒、5秒、10秒、30秒の積算モードより生物発光スペクトルを測定した。
最大発光強度の波長(λ
max)を表1に示す。また、
図13に、構造式(1-1)で表される化合物の発光スペクトルを示す。
【0103】
なお、F-A23-Fは、分子歪みセンサーの一種類であり、ラパマイシンに結合する蛋白質であるFRBとFKBPの間にALuc23(即ち、A23)を挟み込んだ分子構造である。ラパマイシン共存下で、FRBとFKBPがラパマイシンを介して結合すると、その間に挟まれているALuc23に分子歪みがかかるため、発光酵素活性に変化が生じる。その輝度の定量値よりラパマイシンの有無、濃度を測定することができる。
【0104】
また、F-R8-Fも、分子歪みセンサーの一種類であり、ラパマイシンに結合する蛋白質であるFRBとFKBPの間にRLuc8(即ち、R8)を挟み込んだ分子構造である。ラパマイシン共存下で、FRBとFKBPがラパマイシンを介して結合すると、その間に挟まれているRLuc8に分子歪みがかかるため、発光酵素活性に変化が生じる。その輝度の定量値よりラパマイシンの有無、濃度を測定することができる。
【0105】
【0106】
<結果>
表1から、天然基質(nCTZ)は、使用するルシフェラーゼの種類によらず発光波長が略同じであるのに対し、構造式(1-1)で表される化合物は、使用するルシフェラーゼの種類により発光波長が大きく異なることが分かる。
また、
図13から、構造式(1-1)で表される化合物は、RLuc8、F-R8-F、RLuc8.6SGを使用した場合、発光波長が短波長側に大きくシフトすることが分かる。
【0107】
<生物発光スペクトルの評価3>
構造式(1-1)で表される化合物に対して、生物発光スペクトルの評価を更に行った。
COS-7細胞を6穴マイクロプレートに植え、70%の底面積を埋めるほど生えた時点までCO
2インキュベーターで培養する。TransIT-LT1試薬(Mirus)を用いて各ウェル細胞に、以下の海洋生物由来の各発光酵素をコードするプラスミドを一過性発現させる。
(i)ALuc16
(ii)RLuc8.6SG
このリポフェクション後、1日間、CO
2インキュベーターで継続培養する。それから、各細胞を96穴マイクロプレートにサブカルチャーし、更に1日間培養する。
ALuc16を含むCOS-7細胞の溶液と、RLuc8.6SGを含むCOS-7細胞の溶液と、を種々の比(20:20、30:10、35:5、又は37.5:2.5(単位はμL))で含む混合物に対して、構造式(1-1)で表される化合物を用いて、生物発光スペクトルを観測した。結果を
図14に示す。
【0108】
<結果>
図14から、ALuc16と、RLuc8.6SGとの量の比により、407nmのピークと、497nmのピークの比率が変化することが分かる。
このことから、構造式(1-1)で表される化合物は、ALuc系統のルシフェラーゼと、RLuc系統のルシフェラーゼを用いることで、複数の生体内現象を同時に高感度且つ高速に可視化できることが分かる。
【0109】
<生物発光スペクトルの評価4>
構造式(2-1)で表される化合物と、構造式(2-2)で表される化合物に対して、生物発光スペクトルの評価を更に行った。
COS-7細胞を6穴マイクロプレートに植え、70%の底面積を埋めるほど生えた時点までCO2インキュベーターで培養する。TransIT-LT1試薬(Mirus)を用いて各ウェル細胞に、以下の海洋生物由来の各発光酵素をコードするプラスミドを一過性発現させる。
(i)ALuc16
(ii)ALuc47
(iii)ALuc49
(iv)RLuc8.6SG
(v)NanoLuc
このリポフェクション後、1日間、CO2インキュベーターで継続培養する。6穴マイクロプレートの細胞培地を完全に除去した後、各ウェルにPromega製の細胞溶解試薬(ライセート)を200μLずつ加え、15分間室温でインキュベーションする。
このライセート20μLをPCRチューブにそれぞれ分注し、発光輝度評価時の100μM希釈発光基質溶液20μL添加した。PCRチューブを直ちに分光光度計(AB-1850、ATTO)に入れ、高感度モードの0.5秒、5秒、10秒、30秒の積算モードより生物発光スペクトルを測定した。
最大発光強度の波長(λmax)を表2に示す。
【0110】
【0111】
<結果>
表2から、構造式(2-1)で表される化合物及び構造式(2-2)で表される化合物も、使用するルシフェラーゼの種類により発光波長が大きく異なことが分かる。
但し、RLuc8.6SGを使用した場合、構造式(2-1)で表される化合物及び構造式(2-2)で表される化合物は、構造式(1-1)で表される化合物とは異なり、発光波長が長波長側に大きくシフトすることが分かる。
【0112】
<生物発光スペクトルの評価5>
構造式(1-1)で表される化合物、構造式(2-1)で表される化合物、又は構造式(2-2)で表される化合物と、ALuc16、ALuc47、NanoLuc、又はRLuc8.6SGとを組み合わせた発光系からの発光に対して、バンド幅が20nmで、中心波長が500nm、600nm、又は700nmのバンドパスフィルターを通した場合の、相対発光強度を
図15に示す。
図15中、構造式(1-1)で表される化合物を「(1-1)」と表記し、構造式(2-1)で表される化合物を「(2-1)」と表記し、構造式(2-2)で表される化合物を「(2-2)」と表記した。
【0113】
<結果>
図15から、構造式(2-1)で表される化合物及び構造式(2-2)で表される化合物は、構造式(1-1)で表される化合物よりも長波長の光を発するため、中心波長が600nm又は700nmのバンドパスフィルターを通した場合、構造式(1-1)で表される化合物よりも、相対発光強度が大きくなることが分かる。
長波長光は生体内での透過率が高いため、上記の結果から、上記一般式(2)で表されるセレンテラジン誘導体は、生体内深部の病巣を可視化するための標識材料として有用であることが分かる。
更に構造式(2-1)、構造式(2-2)、構造式(1-1)を並べあわせることにより、発光酵素ごとに独特な発光パターンが示されることが
図15より分かる。このような発光パターンはフィンガープリントのように各発光酵素の独特な発光特徴である。従って、複数の不明な発光酵素があるとしても、その発光パターンより特定発光酵素の存在を同定することができる。
本発明のセレンテラジン誘導体は、海洋生物由来の発光酵素類における発光基質として利用できる。また、独特な酵素特異性、強い発光輝度、長波長発光特性を示すことから、様々なバイオアッセイにおいて、広く用いられる。例えば、長波長シフトした発光特性のおかげで、生体深部で起こる分子イベントを容易に可視化できる。また、従来と比較して明るいため、バイオアッセイの検出感度や検出限界を改善することができる。また、今回の発光基質が発光特異性を示すことから、多数の検体の中で特定検体を特異的に検出することができる。このようなマルチプレックス性は、バイオアッセイの効率を飛躍的にあげ、診断コスト削減にも大きく貢献する。