IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エフ イー アイ カンパニの特許一覧

特開2023-126181荷電粒子ビーム顕微鏡法における光学収差の測定及び補正
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126181
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】荷電粒子ビーム顕微鏡法における光学収差の測定及び補正
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/153 20060101AFI20230831BHJP
   H01J 37/22 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
H01J37/153 A
H01J37/22 501Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023028012
(22)【出願日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】17/683,076
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】エリック フランケン
(72)【発明者】
【氏名】バルト ヨーゼフ ヤンセン
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA04
5C101EE08
5C101EE22
5C101EE45
5C101EE47
5C101HH21
5C101HH25
5C101HH39
5C101HH42
5C101HH47
5C101HH64
(57)【要約】
【課題】画像の解像度を制限する可能性がある顕微鏡における光学収差をできるだけ抑制する。
【解決手段】荷電粒子ビーム顕微鏡システムは、透過撮像モードで動作する。動作中、荷電粒子ビームマイクロシステムは、荷電粒子ビームを試料に方向付けて、画像を作り出す。時系列のビーム傾斜が、試料に方向付けられた荷電粒子ビームにあるパターンで適用されて、一連の画像を作り出す。荷電粒子ビームが時系列のビーム傾斜における1つのビーム傾斜と時系列のビーム傾斜における順次隣接するビーム傾斜との間で遷移している間に、一連の画像における画像のうちの少なくともいくつかが捕捉される。パターンは、荷電粒子ビーム顕微鏡システムにおける光学収差を指し示す一連の画像における画像間の画像変化を誘起するように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
荷電粒子ビームを放出する荷電粒子源と、
光軸を画定し、前記光軸に沿って配置された試料の視野内に前記荷電粒子ビームを形成するように構成された1つ以上の光学構成要素を備える光学システムと、
パターンを生成するように構成されたパターン生成器と、
前記光軸に沿って配置され、時系列のビーム傾斜を前記荷電粒子ビームに適用するために前記パターンによって制御可能な1つ以上のビーム偏向器と、
前記光軸に沿って位置決めされて前記試料の画像を捕捉する撮像センサと、
1つ以上のプロセッサと、
前記1つ以上のプロセッサによって実行されたとき、前記1つ以上のプロセッサに、前記時系列のビーム傾斜の適用中に前記撮像センサによって捕捉された一連の画像を受信させ、前記一連の画像から前記光学システムについての1つ以上の光学収差値のセットを生成させる命令を格納する1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体であって、前記一連の画像における画像のうちの少なくともいくつかが、前記時系列のビーム傾斜における連続するビーム傾斜の間の前記荷電粒子ビームの運動中に捕捉される、コンピュータ可読記憶媒体と、を備える、システム。
【請求項2】
前記1つ以上のプロセッサによって実行されたとき、前記1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体が、前記1つ以上のプロセッサに、前記一連の画像で誘起された画像シフトを決定させ、前記誘起された画像シフト及び前記誘起された画像シフトに対応する適用された時系列のビーム傾斜から、前記1つ以上の光学収差値のセットを決定させる命令を、更に格納する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記1つ以上のプロセッサによって実行されたとき、前記1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体が、前記1つ以上のプロセッサに、前記1つ以上の光学収差値のセットに基づいて、前記1つ以上の光学構成要素の1つ以上の光学補正を決定させる命令を、更に格納する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記1つ以上のプロセッサによって実行されたとき、前記1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体が、前記1つ以上のプロセッサに、前記1つ以上の光学収差値のセットの精度、前記一連の画像における画像の品質、及び前記一連の画像を捕捉する際の外乱、のうちの1つ以上に基づいて、前記パターン生成器によって生成された前記パターンに対する調整を決定させる命令を、更に格納する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記パターン生成器が、周期的なパターンを生成するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
方法であって、
荷電粒子ビーム顕微鏡システムを透過撮像モードで動作させて、一連の画像を作り出すために、パターンでの時系列のビーム傾斜を荷電粒子ビームに適用することを含む、前記荷電粒子ビームを試料に方向付けることであって、前記荷電粒子ビームが、前記時系列のビーム傾斜における1つのビーム傾斜と、前記時系列のビーム傾斜における順次隣接するビーム傾斜との間で遷移している間に、前記一連の画像における画像のうちの少なくともいくつかが捕捉され、前記パターンが、前記荷電粒子ビーム顕微鏡システムにおける光学収差を指し示す前記一連の画像における画像間の画像変化を誘起するように構成されている、方向付けることと、
前記一連の画像を捕捉することと、を含む、方法。
【請求項7】
前記パターンが、周期的なパターンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記周期的なパターンが、リサージュ図形である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記一連の画像から前記荷電粒子ビーム顕微鏡システムの1つ以上の光学収差値のセットを生成することを更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記画像変化が、誘起された画像シフトを含み、前記一連の画像から前記荷電粒子ビーム顕微鏡システムの前記1つ以上の光学収差値のセットを生成することが、前記一連の画像における連続する画像間で前記誘起された画像シフトを測定することを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記一連の画像から前記荷電粒子ビーム顕微鏡システムの前記1つ以上の光学収差値のセットを生成することが、前記誘起された画像シフトを、前記誘起された画像シフト、ビーム傾斜、及び前記1つ以上の光学収差のセットの間の関係を表す光学収差モデルに当てはめることを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記光学収差モデルが、前記パターンと前記一連の画像との間の不明な時間遅延を組み込んでいる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記一連の画像から前記荷電粒子ビーム顕微鏡システムの前記1つ以上の光学収差値のセットを生成することが、デフォーカス、2回非点収差、3回非点収差、4回非点収差、5回非点収差、6回非点収差、軸上コマ収差、5次軸上コマ収差、球面収差、6次球面収差、星収差、6次星収差、3葉収差、及びロゼット収差、のうちの1つ以上の値を推定することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ以上の光学収差値のセットに基づいて前記荷電粒子ビーム顕微鏡システムの光学補正を決定することを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記荷電粒子ビーム顕微鏡システムの前記光学補正を、前記荷電粒子ビーム顕微鏡システムの1つ以上の光学構成要素に適用することを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ以上の光学収差値のセットの精度、前記一連の画像内の前記画像の品質、及び前記一連の画像を捕捉する際の外乱、のうちの1つ以上に基づいて前記パターンを調整することを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
荷電粒子ビーム顕微鏡システムを動作させる方法であって、
第1の光学収差出力セットを決定することであって、前記第1の光学収差出力セットが、1つ以上の取得された画像を含む第1の入力セットに基づいて、前記荷電粒子ビーム顕微鏡システム内の1つ以上の光学収差の第1のセットの値を含む、決定することと、
前記第1の光学収差出力セットに基づいて、第1の周波数で前記荷電粒子ビーム顕微鏡システムに調整を適用して前記第1のセットの光学収差を軽減することと、
前記荷電粒子ビーム顕微鏡システムにおける1つ以上の光学収差の第2のセットの値を含む第2の光学収差出力セットの値を、前記第1の入力セット又は前記第1の光学収差出力のうちの少なくともいくつかを含む第2の入力セットに基づいて決定することであって、前記第2のセットの1つ以上の光学収差が、前記第1のセットの前記1つ以上の光学収差とは異なる、決定することと、
前記第2の光学収差出力セットに基づいて、第2の周波数で前記荷電粒子ビーム顕微鏡システムに調整を適用して前記第2のセットの収差を軽減することであって、前記第2の周波数が、前記第1の周波数よりも低い、軽減することと、を含む、方法。
【請求項18】
前記第1のセットが、デフォーカスを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2のセットが、コマ収差又は非点収差を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の入力セットに基づいて前記第1の光学収差出力セットを決定することが、前記第2のセットにおける1つ以上の光学収差の少なくともいくつかの値を決定することを含み、前記第2の入力セットに含まれる前記第1の光学収差出力セットのうちの少なくともいくつかが、前記少なくともいくつかの値を含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本分野は、荷電粒子ビーム顕微鏡法に関する。
【背景技術】
【0002】
透過電子顕微鏡法(transmission electron
microscopy、TEM)は、電子ビームが薄い試料を透過して画像を形成する技術である。画像は、電子が試料を透過する際の電子と試料の原子との相互作用によって形成される。画像は、カメラによって捕捉することができる。TEMは、透過電子の波長が短いため、高分解能画像を作り出すことができる。十分に高い解像度の画像を使用して、原子スケールで試料の構造の詳細を調査及び分析することができる。しかしながら、顕微鏡における光学収差は、画像の解像度を制限する可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1】様々な実装形態による、透過撮像モードで動作する荷電粒子ビーム顕微鏡システムにおいて光学収差を測定及び補正するためのシステムのブロック図である。
図2A】様々な実装形態による、透過撮像モードで動作する荷電粒子ビーム顕微鏡システムにおいて光学収差を測定及び補正するための方法のフロー図である。
図2B】様々な実装形態による、透過撮像モードで動作する荷電粒子ビーム顕微鏡システムにおいて光学収差を測定及び補正するための方法のフロー図である。
図3A】リサージュ図形ビーム傾斜パターンのグラフである。
図3B】荷電粒子ビーム顕微鏡システムにデフォーカスがあるときに、図3Aに描写されるリサージュ図形ビーム傾斜パターンによって作り出される、予想される誘起された画像シフトパターンのグラフである。
図3C】荷電粒子ビーム顕微鏡システムにデフォーカス及び非点収差があるときに、図3Aに描写されるリサージュ図形ビーム傾斜パターンによって作り出される、予想される誘起された画像シフトパターンのグラフである。
図3D】荷電粒子ビーム顕微鏡システムにデフォーカス、コマ収差及び非点収差があるときに、図3Aに描写されるリサージュ図形ビーム傾斜パターンによって作り出される、予想される誘起された画像シフトパターンのグラフである。
図3E】荷電粒子ビーム顕微鏡システムにデフォーカス、コマ収差、非点収差及び球面収差があるときに、図3Aに描写されるリサージュ図形ビーム傾斜パターンによって作り出される、予想される誘起された画像シフトパターンのグラフである。
図4A】円形ビーム傾斜パターンのグラフである。
図4B】荷電粒子ビーム顕微鏡システムにデフォーカスがあるときに、図4Aに描写される円形パターンによって作り出される、予想される誘起された画像シフトのグラフである。
図4C】荷電粒子ビーム顕微鏡システムにデフォーカス及び非点収差があるときに、図4Aに描写される円形パターンによって作り出される、予想される誘起された画像シフトのグラフである。
図4D】荷電粒子ビーム顕微鏡システムにデフォーカス、非点収差及びコマ収差があるときに、図4Aに描写される円形パターンによって作り出される、予想される誘起された画像シフトのグラフである。
図5A】収差の監視及び補正を有する荷電粒子ビーム顕微鏡システムを動作させる例示的な方法のフロー図である。
図5B】収差の監視及び補正を有する荷電粒子ビーム顕微鏡システムを動作させる別の例示的な方法のフロー図である。
図6】収差の監視及び補正を有する荷電粒子ビーム顕微鏡システムを動作させる別の例示的な方法のフロー図である。
図7】荷電粒子ビーム顕微鏡システムにおける光学収差の監視及び補正を実装する方法において使用され得る好適なコンピューティング環境の一般化されたコンピューティングシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本明細書に開示される主題は、例えば、透過撮像モードで動作する荷電粒子ビーム顕微鏡システムにおける光学収差を測定及び補正する方法及びシステムに関する。測定及び補正され得る光学収差の例としては、デフォーカス、2回非点収差、3回非点収差、4回非点収差、5回非点収差、6回非点収差、軸上コマ収差、5次軸上コマ収差、球面収差、6次球面収差、星収差、6次星収差、3葉収差、及びロゼット収差が挙げられるが、これらに限定されない。
【0005】
1つ以上の実装形態では、システムは、荷電粒子ビームを放出する荷電粒子源と、光軸を画定し、荷電粒子ビームを光軸に沿って配置された試料の視野内に形成するように構成された1つ以上の光学構成要素を含む光学システムと、パターンを生成するように構成されたパターン生成器と、光軸に沿って配置され、荷電粒子ビームに時系列のビーム傾斜を適用するためにパターンによって制御可能な1つ以上のビーム偏向器と、試料の画像を捕捉するために光軸に沿って位置決めされた撮像センサと、を含む。
【0006】
1つ以上の実装形態では、透過撮像モードで荷電粒子ビーム顕微鏡システムを動作させ、荷電粒子ビームを試料に方向付けている間に、時系列のビーム傾斜があるパターンで荷電粒子ビームに適用されて、一連の画像が作り出される。荷電粒子ビームが時系列のビーム傾斜における1つのビーム傾斜と時系列のビーム傾斜における順次隣接するビーム傾斜との間で遷移している間に、一連の画像における画像のうちの少なくともいくつかが捕捉される。1つ以上の例では、一連の画像を分析して、顕微鏡システムにおける光学収差を決定することができる。
【0007】
1つ以上の例では、パターンは、ビーム傾斜が、顕微鏡システムにおける光学収差に相関され得る一連の画像における画像変化(例えば、画像シフト)を誘起するように構成される。1つ以上の例において、画像変化は、一連の画像から決定することができ、顕微鏡システムの1つ以上の光学収差値を推定するために使用することができる。他の例では、1つ以上の光学収差値は、一連の画像又は一連の画像から導出された情報(例えば、画像のパワースペクトル)を入力データとして受信する訓練されたニューラルネットワークによって決定され得る。
【0008】
1つ以上の例では、ビーム傾斜パターンは、リサージュ図形などの周期的パターンであり得る。周期的パターンの使用は、測定された経時的な画像変化に関連して、適用されたビーム傾斜パターンの周波数における不明な時間遅延及び不明な偏差を決定することを可能にすることができる。周期的パターンはまた、画像変化(例えば、試料ドリフト及び機械的振動)を誘起し得る他の影響に対して強健であるシステムを可能にすることができ、信号処理が異なる信号源を分離するために使用されることを可能にする。
【0009】
主題は、実装形態及び実施例とともに説明される。場合によっては、当業者によって認識されるように、開示される実装形態及び例は、開示される特定の詳細のうちの1つ以上なしで実施され得るか、又は本明細書で具体的に開示されない他の方法、構造、及び材料を用いて実践され得る。本明細書に記載され、図面に示される全ての実装形態及び例は、提案された組み合わせが不適合又は相互排他的である要素を伴う場合など、文脈が明確に別段の指示をしない限り、任意の数の組み合わせを形成するように、いかなる制限もなく組み合わせることができる。本明細書で説明される任意のプロセスにおける動作の連続的な順序は、1つの動作が別の動作の結果を入力として必要とする場合など、文脈が別段に明確に指示しない限り、並べ替えられ得る。
【0010】
簡潔にするために、また説明の連続性のために、同一又は類似の参照符号が異なる図における同一又は類似の要素に使用される場合があり、1つの図における要素の説明は、その要素が同一又は類似の参照符号を有する他の図に現れる場合に繰り越されるとみなされる。場合によっては、「~に対応する」という用語は、異なる図面の要素間の対応を説明するために使用され得る。例示的な使用において、第1の図における要素が第2の図における別の要素に対応するものとして説明される場合、別段の記載がない限り、第1の図における要素は、第2の図における他の要素の特性を有するものとみなされ、逆もまた同様である。
【0011】
「含む(comprise)」という語、並びに「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」などのその派生語は、オープンで包括的な意味で、すなわち「含むが、それに限定されない」と解釈されるべきである。単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」、「少なくとも1つ(at least one)」及び「その(the)」は、文脈上明確に別様に指示されない限り、複数形照応を含む。「及び/又は」という用語は、要素のリストの最後の2つの要素間で使用される場合、列挙された要素のうちの任意の1つ以上を意味する。「又は(or)」という用語は、一般に、その最も広い意味で、すなわち、文脈が別途明確に指示しない限り、「及び/又は(and/or)」を意味するものとして使用される。寸法の範囲を説明するために使用される場合、「XとYとの間」という句は、X及びYを含む範囲を表す。本明細書で使用されるように、「装置」は、任意の個々のデバイス、デバイスの集合、デバイスの一部、又はデバイスの一部の集合を指し得る。
【0012】
図1は、荷電粒子ビーム顕微鏡システムが透過撮像モードで動作している間に荷電粒子ビーム顕微鏡システム内の光学収差を測定及び補正することができる、一実装形態によるシステム100を例解している。システム100は、例示的な荷電粒子ビーム顕微鏡システム104との関連で例解されている。しかしながら、システム100は、図1に示す荷電粒子ビーム顕微鏡システム104の特定の構成に限定されず、透過撮像モードで動作する任意の荷電粒子ビーム顕微鏡システムとともに使用することができる。
【0013】
例解される例では、荷電粒子ビーム顕微鏡システム104は、真空チャンバ106内に封入された荷電粒子ビーム顕微鏡カラム120(以下、顕微鏡カラム120)を含む。顕微鏡カラム120は、荷電粒子ビーム顕微鏡システム104の光軸116を画定する。
【0014】
調査される試料124は、光軸116に沿って配置することができる。試料124は、試料ホルダ140によって支持することができ、いくつかの例では、光軸116に対して試料124を平行移動、回転、及び/又は傾斜させる能力を有することができる。試料ホルダ140は、試料124の異なる領域が調査のために光軸116に対して位置決めされることを可能にすることができる。
【0015】
顕微鏡カラム120の上部には、荷電粒子ビーム112(例えば、電子ビーム)を放出する荷電粒子源108(例えば、熱電子源、ショットキ放出源、電界放出源など)がある。荷電粒子ビーム112は、試料124に衝突して試料124と相互作用することができるように、光軸116に沿って方向付けられる。荷電粒子ビーム112は、試料124を通過して画像を作り出す。
【0016】
顕微鏡カラム120の底部にあるカメラ136は、試料124の画像を捕捉するように動作させることができる。カメラ136は、例えば、CCD(電荷結合素子)撮像センサ、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)撮像センサ、又はより一般的には、光検出器のアレイを含むことができる。一例では、カメラ136は、試料の一連の画像を捕捉するために「動画」モードで動作可能であり得る。
【0017】
顕微鏡カラム120は、荷電粒子ビーム112を光軸116に沿って方向付け、試料124上の所望の視野を覆う一定の照明を提供するように荷電粒子ビーム112を構成する様々な荷電粒子ビームレンズシステム(以下、レンズシステム)を含むことができる。いくつかの例では、様々なレンズシステムは、荷電粒子ビーム112と試料124との相互作用によって作り出された画像をカメラ136の視野に投影することもできる。
【0018】
いくつかの例では、様々なレンズシステムは、コンデンサレンズシステム122、対物レンズシステム126、及び投影レンズシステム130を含むことができ、これらは、所望の視野を提供するように荷電粒子ビーム112を修正するための任意の好適な構成を有することができる。コンデンサレンズシステム122は、荷電粒子ビーム112を略平行ビームに集光するように構成することができる。対物レンズシステム126は、荷電粒子ビーム112が試料124を透過することによって形成される画像を集束させるように構成することができる。投影レンズシステム130は、対物レンズシステム126から来る画像をカメラ136の視野に投影するように構成することができる。
【0019】
いくつかの例では、コンデンサレンズシステム122は、コンデンサレンズ122a、122bと、コンデンサスティグメータ122c(すなわち、軸方向非点収差を補正するデバイス)及びコンデンサアパーチャ122dなどの他の構成要素とを含むことができる。
【0020】
いくつかの例では、対物レンズシステム126は、対物レンズ126aと、ビーム偏向器126b(ビームを中心に置くために使用することができる)、対物スティグメータ126c(すなわち、軸方向非点収差を補正するためのデバイス)、及び対物アパーチャ126dなどの他の構成要素とを含むことができる。例解される例では、試料124は対物レンズ126aの上方に位置決めされている(他の例では、試料124を対物レンズ126aに挿入することができる)。
【0021】
いくつかの例では、プロジェクタレンズシステム130は、例えば、中間レンズ130a(例えば、画像を拡大するため)及びプロジェクタレンズ130b、130cを含むことができる。プロジェクタレンズシステム130は、スティグメータ、画像偏向器、及びアパーチャなどの他の構成要素を含むことができる。
【0022】
レンズシステムの構成要素は、構成要素に印加される電流を変えることによって調整可能である電気光学構成要素であり得る。例えば、レンズシステム122、126、130の様々なレンズは、電磁レンズであり得る。電磁レンズは、ソレノイドによって生成される磁場によって荷電粒子ビームを修正する。ソレノイドへの電流を変化させることによって、磁界を変化させることができ、それに対応してレンズの焦点距離及び倍率が変化する。スティグメータ及びビーム偏向器などのレンズシステム122、126、130の他の構成要素は、電磁レンズについて記載したのと同じ方法で調整することができる電磁デバイスとすることができる。構成要素に供給される電流を変えることによってレンズシステム122、126、130の構成要素を調和する能力は、収差補正がオンザフライで(例えば、荷電粒子ビーム顕微鏡システム104が透過撮像モードで動作している間に)顕微鏡カラム120に適用されることを可能にすることができる。
【0023】
レンズシステム122、126、130は、図1に示されていない他の光学構成要素、又は光学構成要素の異なる構成を含むことができる。顕微鏡カラム120は、荷電粒子源108の出力付近に他の光学構成要素を含むことができる。例えば、顕微鏡カラム120は、(例えば、荷電粒子ビーム112を集光する前に)荷電粒子ビーム112の加速度を増加させるために使用することができる加速器スタックを含むことができる。
【0024】
システム100は、様々なパターンを生成することができるパターン生成器144を含む。パターン生成器144は、例えば、プログラム可能な関数生成器とすることができる。いくつかの例では、パターン生成器144は、周期的パターンを生成するように構成され得る。一例では、周期的パターンはリサージュ図形であり得る。リサージュ図形は、以下のパラメータ方程式によって与えられる、
【0025】
【数1】
【0026】
リサージュ図形は、円と同程度に単純であり得(例えば、パラメトリック方程式(1)及び(2)は、a/b=1、A=B、及びd=p/2ラジアンのときに円を与える)、又はより複雑であり得る(例えば、比a/bは1に等しくない)。
【0027】
システム100は、顕微鏡カラム120に挿入されたビーム偏向器134を含む。ビーム偏向器134は、パターンに従って制御されて、荷電粒子ビーム112をX及びY方向に経時的に傾斜させることができる。ビーム偏向器134は、荷電粒子ビーム112が試料124に到達する前に(例えば、荷電粒子ビーム112を集光する前に)、荷電粒子ビーム112に傾斜運動を適用することができる。ビーム偏向器134は、ビーム偏向器への電流を変えることによって荷電粒子ビーム112に適用される傾斜角を変化させることを可能にする電気光学偏向器(例えば、静電又は磁気ビーム偏向器)とすることができる。
【0028】
パターンに従って動作するビーム偏向器134は、荷電粒子ビーム112に時系列のビーム傾斜を適用する。各ビーム傾斜は画像を作り出す。したがって、時系列のビーム傾斜は、一連の画像をもたらす。一連の画像における連続する(又は隣接する)画像間の画像シフトは、顕微鏡システムにおける光学収差を指し示すことができる。
【0029】
システム100は、カメラ136と通信するフレームグラバ148を含むことができる。フレームグラバ148は、例えば、カメラ136とコンピューティングシステム154(例えば、サーバ)との間のインターフェースを形成することができる。フレームグラバ148は、カメラ136によって作り出された画像データのストリームから個々の画像フレームを捕捉することができる電子デバイスである。
【0030】
システム100は、フレームグラバ148と通信する画像シフトトラッカ152を含むことができる。画像シフトトラッカ152は、フレームグラバ148から画像フレームを受信し、連続する画像フレーム間の画像シフトを経時的に測定(又は計算)することができる。画像シフトトラッカ152は、画像シフトを測定するために任意の好適な画像処理技術を使用することができる。1つの例示的な技法は、相互相関である。一例では、画像シフトトラッカ152は、コンピューティングデバイス154のプロセッサ(例えば、GPU、CPU、又はFPGA)によって実行され得る。
【0031】
システム100は、画像シフトトラッカ152によって測定された画像シフトに基づいて荷電粒子ビーム顕微鏡システムにおける光学収差の値を決定する収差計算器156を含むことができる。荷電粒子ビーム顕微鏡において見出すことができ、測定することができる光学収差の例は、デフォーカス、2回非点収差、3回非点収差、4回非点収差、5回非点収差、6回非点収差、軸上コマ収差、5次軸上コマ収差、球面収差、6次球面収差、星収差、6次星収差、3葉収差、及びロゼット収差である。収差計算器156は、これらの光学収差並びに具体的に言及されていない他の光学収差の任意の組み合わせの値を決定するように構成することができる。
【0032】
一例では、収差計算器156は、画像シフトトラッカ152から画像シフトのストリームを受信し、画像シフトに基づいて顕微鏡カラム120内の光学収差を計算することができる。一例では、収差計算器156は、顕微鏡カラム120における画像シフト、ビーム傾斜、及び光学収差の間の関係を提供する光学収差モデルに画像シフトを当てはめることによって、光学収差を推定することができる。いくつかの実施例では、光学収差モデルは、同様に当てはめられる1つ以上の補助パラメータを用いて拡張することができる。補助パラメータは、測定値の分散を捕捉することができる。例えば、傾斜位置を生成することと、その傾斜位置でビームを実際に傾斜させることとの間の持続時間は、適用されたビーム傾斜と、ビーム傾斜の適用から捕捉された一連の画像との間に不明な時間遅延が存在するように変わり得る。いくつかの例では、ビーム傾斜制御タイミングは、撮像センサから切り離されるか、又は撮像センサと同期されない可能性がある。そのような場合、1つのそのような補助パラメータは、ビーム傾斜を制御するパターンとカメラ136によって捕捉された画像との間の不明な時間遅延又は時間同期であり得る。補助パラメータの別の例は、試料ドリフトを含むことができる。周期的な傾斜パターンを用いて、周期的な傾斜パターンの位相は、タイミング情報を提供するために、検出されたパターンの位相に関連付けられ得る。いくつかの例では、1周期と2周期との間、又は3周期以上の傾斜パターン周期の一部は、ビーム制御と画像検出との間のクロックタイミングを同期させるために使用される時間を提供するのに十分であり得る。非周期的運動を含む様々な傾斜パターンを使用することができる。
【0033】
別の例では、収差計算器156は、一連の画像と顕微鏡カラム120内の光学収差との間の関係を提供するモデルの最適化に基づいて、光学収差の値を決定することができる。例えば、1つの傾斜角で取得された画像を、別の傾斜角で取得された画像に変換することができる。変換は、光学収差に関連する変数によってパラメータ化することができる。これらのパラメータは、モデルに対応する。最適化ルーチンでは、変換された画像の類似性を最大化することができる光学パラメータを見つけて、光学収差の値を決定するために使用することができる。この手順は、複数の画像に拡張することができる。
【0034】
別の例では、収差計算器156は、パターン内の荷電粒子ビームに一続きのビーム傾斜を適用することによって得られる画像情報から光学収差を予測するように訓練されたニューラルネットワークの推論から光学収差の値を決定することができる。訓練されたニューラルネットワークは、一連の画像を入力として受信することができ、及び/又は一連の画像から導出された情報(例えば、画像のパワースペクトル、画像シフトなど)を入力として受信し、予測及び予測の信頼性などの他の情報を含むことができる推論を生成することができる。この例では、収差計算器156は、カメラ136から直接画像データを受信するか、又はフレームグラバ148から画像フレームを受信し、画像データを前処理し、前処理された画像データをニューラルネットワークに提供することができる。場合によっては、推論は、クラウドを介して提供されるサービスとすることができる。
【0035】
システム100は、収差計算器156に通信可能に結合された収差補正器168を含むことができる。収差補正器168は、収差計算器156によって決定された光学収差に基づいて、顕微鏡カラム120の構成要素(例えば、レンズシステムの構成要素)に適用する補正を決定することができる。例えば、構成要素が電気光学構成要素である場合、収差補正器168は、構成要素が荷電粒子ビーム112をどのように修正するかを変化させるために、構成要素に印加される電流を変化させることができる。いくつかの例では、収差補正器168は、所定の基準に基づいて顕微鏡カラム120の構成要素に補正を適用することができる(例えば、光学収差が所定の閾値を超える場合、又は推定収差値の信頼性が所定の閾値を超える場合(例えば、推定収差値の絶対値がその光学収差の信頼区間未満である場合))。
【0036】
いくつかの例では、収差補正器168は、ビーム傾斜のためにパターン生成器144によって生成されたパターンに対して行う調整を決定することができる。例えば、収差計算器156は、あるレベルの信頼性を有する光学収差を提供することができる。信頼性のレベルが低い場合、収差補正器168は、測定の信頼性を向上させるために、後続のビーム傾斜において使用する最適パターンを決定することができる。収差補正器168は更に、最適パターンのパラメータ(基本周波数及び振幅など)を決定し、この情報をパターン生成器144に提供することができる。
【0037】
いくつかの例では、収差計算器156及び収差補正器168は、荷電粒子ビーム顕微鏡システム104に通信可能に結合されたコンピューティングシステム160上で運転されるプログラム又はスクリプトであり得る。収差補正器168は、収差計算器156及びパターン生成器144と通信することができる。いくつかの例では、コンピューティングシステム160は、ディスプレイ164(例えば、荷電粒子ビーム顕微鏡システム104のコンソール)に結合することができる。いくつかの例では、コンピューティングシステム160は、現在の収差値及び収差の傾向をディスプレイ164上に提示することができる。
【0038】
画像シフトトラッカ152、収差計算器156、及び収差補正器168は、ソフトウェア及び/又はハードウェアで実装することができる。画像シフトトラッカ152、収差計算器156、及び収差補正器168のソフトウェア構成要素は、1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体又はコンピュータ可読記憶デバイスに格納され、1つ以上のプロセッサ(例えば、コンピューティングシステム160又は154内のプロセッサ)によって実行され得る。本明細書におけるコンピュータ可読媒体のいずれも、非一時的(例えば、DRAM又はSRAMなどの揮発性メモリ、磁気記憶装置、光記憶装置などの不揮発性メモリ)及び/又は有形であり得る。
【0039】
図2Aは、透過撮像モードで動作する荷電粒子ビーム顕微鏡システム(例えば、図1に例解される荷電粒子ビーム顕微鏡システム104)において光学収差を測定及び補正する方法200を例解するフロー図である。動作は、図2Aにおいて(及びそこで考察されるフロー図の他のものにおいて)各々1回ずつ、かつ特定の順序で例解されているが、動作は、所望に応じて適切に並べ替え及び/又は繰り返され得る(例えば、実施される異なる動作は、好適である際、並行して実施され得る)。
【0040】
210において、方法は、透過撮像モードで荷電粒子ビーム顕微鏡システムを動作させることを含む。動作210は、顕微鏡カラムの上部にある荷電粒子源を使用して荷電粒子ビーム(例えば、電子ビーム)を生成することと、顕微鏡カラム内の光学構成要素を使用して荷電粒子ビームを試料に方向付けることと、を含むことができる。荷電粒子ビームは、試料と相互作用して、画像を作り出す。動作210は、顕微鏡カラムの底部にあるカメラの視野に画像を投影することを含むことができる。
【0041】
220において、動作210で記載したように、方法は、荷電粒子ビーム顕微鏡システムが透過撮像モードで動作させて、あるパターンの時系列のビーム傾斜を荷電粒子源から出てくる荷電粒子ビームに適用することを含むことができる。動作220は、パターンを生成することを含むことができる。動作220は、パターンを横断することによって時系列のビーム傾斜を適用することを含むことができる。横断経路上の各点において、その点のx、y座標は、X及びY方向において荷電粒子ビームに適用される傾斜の量を決定する。傾斜量は、ビームを傾斜させるために顕微鏡カラムに挿入されたビーム偏向器を制御するために使用することができる。いくつかの例では、パターンは、周期的なパターンであり得る。いくつかの例では、周期的パターンは、リサージュ図形(又はリサージュ曲線)であり得る。
【0042】
225において、動作220で記載したように荷電粒子ビームにビーム傾斜を適用しながら、方法は、試料の画像を捕捉するために動画モードでカメラを動作させることを含むことができる。全てのビーム傾斜に対して、カメラは、試料の完全な画像を得ることができる。したがって、カメラは、時系列のビーム傾斜を荷電粒子ビームに適用することに対応する一連の画像を捕捉することができる。ビーム傾斜の適用とビームの実際の傾斜との間の時間は、ビーム傾斜パターンと捕捉された一連の画像との間に不明な時間遅延が存在するように変わり得る。いくつかの例では、光学収差モデルは、当てはめられる補助変数として不明な時間遅延を組み込むことができる。他の補助変数、例えばビーム傾斜パターン又は試料ドリフトも光学収差モデルに組み込むことができる。
【0043】
230において、方法は、動作225において捕捉された画像から顕微鏡カラムにおける光学収差の値を推定することを含むことができる。一例では、光学収差は、画像シフトを顕微鏡カラムのビーム傾斜及び光学収差に関連付ける光学収差モデルから推定することができる。別の例では、光学収差は、一連の画像と顕微鏡カラムにおける光学収差との間の関係を提供するモデルを最適化することによって得ることができる。別の例では、光学収差は、訓練されたニューラルネットワークの推論として得ることができる。推論は、ニューラルネットワークの予測、並びに予測の信頼性などの他の情報を含むことができる。
【0044】
図2Bは、図2Aの動作230の一例を例解する。図2Bに例解される例では、240において、方法は、動作225において捕捉された一連の画像から画像シフトを決定することを含む。動作240は、カメラから画像データを受信することと、画像データから一連の画像(又は画像フレーム)を抽出することと、を含むことができる。各画像は、所与のビーム傾斜における試料の画像に対応する。連続する(又は隣接する)画像間の任意のシフトは、荷電粒子ビーム顕微鏡の光学収差に依存する。動作240は、相互相関などの任意の好適な画像処理技法を使用してこれらの画像シフトを決定することを含む。
【0045】
例解目的で、図3Aは、荷電粒子ビームに適用することができるビーム傾斜パターン300を示し、図3B図3Eは、様々な種類の顕微鏡収差(例えば、デフォーカス、非点収差、コマ収差、及び球面収差)によってビーム傾斜パターン300を適用することから作り出される予想される画像シフトパターン302、304、306、308を示す。ビーム傾斜パターン300は、リサージュパターンである(a=3、b=2であり、式中、a及びbは、式(1)及び(2)に指し示される)。図3B図3Eは、ビーム傾斜パターンが適用されるときの経時的な試料の画像の運動を示す。顕微鏡に光学収差がない場合、ビーム傾斜パターンは、経時的に収集された試料の画像にシフトを誘起しない。しかしながら、顕微鏡に収差がある場合、試料の運動によって形成されるパターンは、適用されたビーム傾斜パターンとは異なる(例えば、スケーリングされ、及び/又は歪められる)。
【0046】
図3Bに示す画像シフトパターン302は、顕微鏡における光学収差がデフォーカスである例に対応する。画像シフトパターン302及び適用されたビーム傾斜パターン300は、線形従属である(すなわち、画像シフトパターン302は、適用されたビーム傾斜パターン300に対してスケーリングされ、デフォーカスの量は、図3A及び図3Bに示される図の間のスケーリング係数である)。
【0047】
図3Cに示す画像シフトパターン304は、顕微鏡の光学収差がデフォーカス及び非点収差である場合の例に対応する。適用されたビーム傾斜パターン300と比較した画像シフトパターン304は、(非点収差によって)一方向に変形され、(デフォーカスによって)スケーリングされる。
【0048】
図3Dの画像シフトパターン306は、顕微鏡の光学収差がデフォーカス、非点収差、及びコマ収差である例に対応する。適用されたビーム傾斜パターン300と比較した画像シフトパターン306は、(コマ収差によって)非対称的に歪められ、(非点収差によって)一方向に変形され、(デフォーカスによって)スケーリングされる。
【0049】
図3Eに示す画像シフトパターン308は、顕微鏡における光学収差がデフォーカス、非点収差、コマ収差、及び球面収差である場合の例に対応する。適用されたビーム傾斜パターン300と比較した画像シフトパターン308は、(球面収差によって)半径方向に歪み、(コマ収差によって)非対称に歪み、(非点収差によって)一方向に変形し、(デフォーカスによって)スケーリングされる。
【0050】
図4Aは、荷電粒子ビームに適用することができるビーム傾斜パターン400の別の例を例解し、図4B図4Dは、様々な種類の顕微鏡収差(例えば、デフォーカス、非点収差、及びコマ収差)によってビーム傾斜パターン400を適用することから作り出される予想される画像シフトパターン402、404、406を例解する。ビーム傾斜パターン400は、円形パターン(リサージュ図形の特殊な場合)である。図4B図4Dは、ビーム傾斜パターンが適用されるときの時間に対する試料の画像の運動を示す。顕微鏡に光学収差がない場合、ビーム傾斜パターンは、経時的に収集された試料の画像にシフトを誘起しない。しかしながら、顕微鏡に収差がある場合、試料の運動によって形成されるパターンは、適用されたビーム傾斜パターンとは異なる(例えば、スケーリングされ、及び/又は歪められる)。
【0051】
図4Bの画像シフトパターン402は、顕微鏡の光学収差がデフォーカスである例に対応する(画像シフトパターン402は、適用されたビーム傾斜パターン400と比較してスケーリングされており、デフォーカスの量は、図4A及び図4Bに示された図の間のスケーリング係数である)。図4Cの画像シフトパターン404は、顕微鏡における光学収差がデフォーカス及び非点収差である例に対応する(画像シフトパターン404は、一方向にスケーリング及び変形される)。図4Dの画像シフトパターン406は、顕微鏡の光学収差がデフォーカス、非点収差、及びコマ収差である例に対応する(画像シフトパターン406がスケーリングされ、一方向に変形され、非対称に歪んでいる)。
【0052】
図4Aに示されるビーム傾斜パターン400などの円形パターンは、低次収差(例えば、デフォーカス)を効果的に捕捉することができるが、高次収差に対しては感度が低い場合がある。より高次の収差に対しては、図3Aに示されるビーム傾斜パターン300などのより複雑なリサージュ図形がより好適であり得る。
【0053】
図2Bに戻ると、245において、方法は、動作240において得られた画像シフトから選択された光学収差の値を推定することを含む。収差値は、画像シフトを荷電粒子ビーム顕微鏡システムの光学収差モデルに当てはめることによって推定することができる。
【0054】
以下の式(3)は、光学収差モデルの一例である。例解目的で、式(3)のモデルは、デフォーカス、非点収差(astigX、astigY)、コマ収差(comaX、comaY)、3回非点収差(threefoldX、threefoldY)、球面収差(球面)、星収差(starX、starY)、及び4回非点収差(fourfoldX、fourfoldY)の値を得ることができる。
【0055】
【数2】
【0056】
式の右辺のベクトルは、ある瞬間における顕微鏡システムの光学システムの所与の状態についての光学収差の値を含む。ビームの傾斜が(tx,ty)ラジアンで調整されるとき、誘起された画像シフトは、(shiftX,shiftY)によって与えられ、これは、ビーム傾斜を適用している間に捕捉された画像から測定することができる(例えば、動作240において)。測定されたshiftX、shiftY及び既知のtx、tyを式(3)のモデルに当てはめて、光学収差の推定値を得ることができる。パラメータtx、tyは、時間依存であり、当てはめのために、適用されたビーム傾斜パターンと誘起された画像シフトパターンとの間の不明な時間遅延がモデルに考慮されることを可能にする。光学収差モデルの変形形態は、ビーム傾斜パターン及び/又は試料ドリフトなどの他の補助パラメータを組み込むことができる。
【0057】
図2Aに戻ると、250において、方法は、動作230(又は図2Bの動作245)において推定された収差値に基づいて、顕微鏡カラム内の光学構成要素に適用する補正を決定することを含む。
【0058】
260において、方法は、動作250で決定された補正を、所定の基準に基づいて顕微鏡カラム内の光学構成要素のうちの1つ以上に適用することを含むことができる。例えば、選択された収差のうちの1つ以上の推定値が所定の閾値を上回る場合、補正が適用され得る。代替的に、選択された収差の推定値が所定の閾値未満である場合、補正は適用されない場合がある。しかしながら、補正は、格納され、試料の捕捉画像の後処理中に使用することができる。
【0059】
270において、本方法は、所定の係数に基づいて、動作220においてビーム傾斜に使用されるパターンを調整することを含むことができる。例えば、パターンは、例えば、1つ以上の選択された光学収差の推定値の精度が所定の閾値未満である場合、一連の画像内の画像の品質が所定の閾値未満である場合、及び/又は一連の画像を捕捉する際の外乱(例えば、機械的振動)がある場合に調整され得る。パターンは、パターンのパラメータを変化させることによって(例えば、パターンの基本周波数及び/若しくは振幅を変化させることができる)、又は顕微鏡及び試料の構成に最適な新しいパターンを選択することによって調整することができる。
【0060】
動作220~270は、計画された取得の終了まで、又は収差が所望の精度で測定されるまで、又は収差が所望の精度で所望の値に調和されるまで、繰り返すことができる。経時的な収差測定値をスクリーン上に表示し、監視することができる。
【0061】
図5Aは、収差の監視及び補正を有する荷電粒子ビーム顕微鏡システム(例えば、図1に例解されるシステム100)を動作させる例示的な方法500を例解する。方法500は、急速に変わる収差を正確かつ精密に測定するように最適化される。図2A及び付随するフロー図の他のものについて、上記のように、動作は、各一度、図5Aに特定の順序で例解されているが、動作は、所望に応じて適切に並べ替え及び/又は繰り返され得る(例えば、実行される異なる動作は、好適である際、並行して実行され得る)。例えば、方法500は、そこに提示された動作の任意の好適な組み合わせを並行して実行することを含むことができる。
【0062】
510において、荷電粒子ビーム顕微鏡システムの光軸に沿って試料が配置された状態で、方法500は、試料上の関心領域に移動することを含む。
【0063】
520において、方法500は、荷電粒子ビーム顕微鏡システムにおける収差の値を測定することを含む。一例では、測定は、図2Aの動作210~230に従って行うことができる。
【0064】
530において、方法500は、荷電粒子ビーム顕微鏡システムにおける急速に変わる収差(例えば、デフォーカス)に対する補正を決定することを含む。
【0065】
540において、方法500は、他の光学収差(例えば、2回非点収差、3回非点収差、4回非点収差、5回非点収差、6回非点収差、軸上コマ収差、5次軸上コマ収差、球面収差、6次球面収差、星収差、6次星収差、3葉収差、又はロゼット収差など、急速に変わらない光学収差)の値の変化を監視することを含む。光学収差の変化は、例えば傾向グラフの形態でディスプレイに提示することができる。
【0066】
550において、方法500は、所定の閾値を超える値を有する他の収差の補正を決定することを含むことができる。
【0067】
560において、方法500は、動作530及び540で決定された任意の補正を荷電粒子ビーム顕微鏡システムの光学カラム(又は顕微鏡カラム)に適用することを含む。
【0068】
570において、方法500は、補正された荷電粒子ビーム顕微鏡システムを用いて試料の画像を取得することを含む。画像を取得した後、方法500は、試料の別の領域を処理するために動作510に戻ることができる。
【0069】
いくつかの光学収差(例えば、デフォーカス)は、比較的少量のデータを使用して識別され得るが、他の光学収差(例えば、コマ収差及び非点収差)は、適切に識別されるために比較的大量のデータを必要とする可能性がある。光学補正を決定して荷電粒子ビーム顕微鏡システムに適用する前に全ての光学収差を識別するのを待つ代わりに、比較的少量のデータを使用して識別することができる光学収差に対して、光学補正をより迅速に決定して適用することができる。
【0070】
図5Bは、異なる周波数で光学補正を適用する原理に基づいて、収差の監視及び補正を行う荷電粒子ビーム顕微鏡システム(例えば、図1に例解されるシステム100)を動作させる例示的な方法580を例解する。図2A及び付随するフロー図の他のものについて、上記のように、動作は、各一度、図5Bに特定の順序で例解されているが、動作は、所望に応じて適切に並べ替え及び/又は繰り返され得る(例えば、実行される異なる動作は、好適である際、並行して実行され得る)。例えば、方法580は、そこに提示された動作の任意の好適な組み合わせを並行して実行することを含むことができる。
【0071】
581において、1つ以上の光学収差の第1のセット及び1つ以上の光学収差の第2のセットが決定される。1つ以上の光学収差の第1のセットは、1つ以上の光学収差の第2のセットとは異なる(例えば、第1のセットにおける1つ以上の光学収差は、第2のセットにおける1つ以上の光学収差とは異なる)。一例では、第1のセットと第2のセットとの間の差は、光学収差を適切に識別するために必要とされるデータの量、及び/又は顕微鏡システムにおけるドリフト率(すなわち、光学収差がその値を有意に変化させる速度)に基づくことができる。一例では、第1のセットは、比較的少量のデータ(例えば、デフォーカス)を使用して識別することができる1つ以上の光学収差を含むことができる。一例では、第2のセットは、比較的大量のデータが適切に識別されることを必要とする1つ以上の光学収差(例えば、コマ収差及び非点収差)を含むことができる。
【0072】
582において、方法580は、荷電粒子ビーム顕微鏡システムの光軸に沿って配置された試料上の関心領域に移動することを含む。
【0073】
583において、方法580は、荷電粒子ビーム顕微鏡システムを動作させながら試料の画像を取得することを含む。画像は、例えば、図2Aの動作210~225で記載したように取得することができる。
【0074】
584において、方法580は、荷電粒子ビーム顕微鏡システムのための第1の光学収差出力セットを決定することを含む。第1の光学収差出力セットは、荷電粒子ビーム顕微鏡システムにおける1つ以上の光学収差の第1のセットの値を含む。第1の光学収差出力セットを決定するための第1の入力セットは、動作583において取得された画像のうちの1つ以上を含む。1つ以上の光学収差の第1のセットの値は、例えば、収差計算器(図1の156)及び第1の入力セットを使用して決定することができる。いくつかの例では、第1の光学収差出力セットは、荷電粒子ビーム顕微鏡システムにおける1つ以上の光学収差の第2のセットの1つ以上の値を更に含むことができる。第2のセットの値は、例えば、収差計算器及び第1の入力セットを使用して決定することができる。第1のセット及び第2のセットの値は、同じ収差計算内で決定することができる(例えば、同じ光学収差モデル、モデルの最適化、又は訓練されたニューラルネットワークを使用して)。第1の光学収差出力セット内の値は、光学収差の推定値及び推定の信頼性を含むことができる。
【0075】
586において、方法580は、第1の周波数で荷電粒子ビーム顕微鏡システムに補正(又は調整)を適用して、1つ以上の光学収差の第1のセットを軽減することを含む。1つ以上の光学収差の第1のセットに適用する補正は、動作584において決定された第1の光学収差出力セット内の1つ以上の光学収差の第1のセットに対応する値に基づいて決定される。一例では、補正は、荷電粒子ビーム顕微鏡システムの1つ以上の電気光学構成要素に供給される電流を変えることによって適用することができる。
【0076】
588において、方法580は、荷電粒子ビーム顕微鏡システムのための第2の光学収差出力セットを決定することを含む。第2の光学収差出力セットは、荷電粒子顕微鏡システムにおける1つ以上の光学収差の第2のセットの値を含む。第2の光学収差出力セットを決定するための第2の入力セットは、動作583において取得された画像のうちの1つ以上を含み得るか、又は第1の光学収差出力セットからのいくつかの値(例えば、動作584において1つ以上の光学収差の第2のセットのうちの1つ以上に対して決定された値)を含み得る。一例では、1つ以上の光学収差の第2のセットの値は、収差計算器(図1の156)及び第2の入力セットを使用して決定することができる。いくつかの例では、動作584において1つ以上の光学収差の第2のセットのうちの1つ以上について決定された値は、経時的に蓄積され得、第2の光学収差出力セットについての値を決定するために使用され得る(例えば、動作584において第2のセットにおける光学収差について経時的に決定された値は、第2の光学収差出力セットにおける光学収差についての対応する値を決定するために平均化され得る)。動作588は、動作584と比較してより遅いレートで運転し得る。したがって、第1の光学収差出力セットを決定する1つ以上の実行は、第2の光学収差出力セットを決定する単一の実行が完了する前に完了することができる(第2の光学収差出力セットの値を決定するための動作584からのデータの前述の蓄積を可能にする)。
【0077】
590において、方法580は、第2の周波数で荷電粒子ビーム顕微鏡システムに補正(又は調整)を適用して、動作588において値が決定された1つ以上の光学収差の第2のセットを軽減することを含む。一例では、動作590における第2の周波数は、動作586における第1の周波数とは異なる。例えば、動作586における補正が動作590における補正よりも頻繁に適用されるように、第2の周波数は第1の周波数よりも低い。第2の周波数は、十分に正確に設定された第2の光学収差を決定するために動作588の各反復に必要な時間に基づいて選択され得る。一例では、補正は、荷電粒子ビーム顕微鏡システムの1つ以上の電気光学構成要素に供給される電流を変えることによって適用することができる。
【0078】
591において、方法580は、動作584及び588のいずれかにおいて決定された値が所定の閾値を超えるかどうかを決定することを含むことができる。値が所定の閾値を超える場合、方法は動作583に戻って、荷電粒子ビーム顕微鏡システムに適用された補正を用いて試料のより多くの画像を取得することができる。
【0079】
592において、方法580は、補正された荷電粒子ビーム顕微鏡システムを用いて試料の画像を取得することを含むことができる。いくつかの場合において、画像は、動作584及び588において決定された収差値が所定の閾値を超えないと決定されたときに取得され得る。画像を取得した後、方法580は、試料の別の領域又は試料の同じ領域を処理するために動作582に戻ることができる。他の例では、動作582は、方法580における他の動作と並行して実施することができる(すなわち、収差値を決定し、顕微鏡システムに対して補正を行うことは、試料を顕微鏡システムに対して移動させながら実施することができる)。
【0080】
図6は、収差の監視及び補正を有する荷電粒子ビーム顕微鏡システムを用いて試料の画像を取得するための例示的な方法600を例解する。図2A及び付随するフロー図の他のものについて、上記のように、動作は、各一度、図6に特定の順序で例解されているが、動作は、所望に応じて適切に並べ替え及び/又は繰り返され得る(例えば、実行される異なる動作は、好適である際、並行して実行され得る)。例えば、方法600は、そこに提示された動作の任意の好適な組み合わせを並行して実行することを含むことができる。
【0081】
610において、荷電粒子ビーム顕微鏡システムの光軸に沿って試料が配置された状態で、方法600は、試料上の関心領域に移動することを含む。
【0082】
620において、方法600は、図2Aの動作210~230に従って荷電粒子ビーム顕微鏡システムにおける収差の値を測定することを含む。
【0083】
630において、方法600は、経時的な光学収差の変化を監視することを含む。光学収差の変化は、例えば傾向グラフの形態でディスプレイに提示することができる。本方法の代替的な実装形態では、光学収差の変化の監視は、省略され得る。
【0084】
640において、方法600は、収差値のいずれかが所定の閾値を超えるかどうかを決定することを含む。収差値のいずれかが所定の閾値を超える場合、方法600は、動作650において継続する。そうでない場合、方法600は、動作660において継続する。
【0085】
650において、方法600は、所定の閾値を超える収差の補正を決定することと、荷電粒子ビーム顕微鏡システムの光学カラムに補正を適用することと、を含む。補正を適用した後、方法600は、動作620に戻り、収差値の測定を繰り返す。これは、所定の閾値を超える収差値がなくなるまで継続することができる。
【0086】
660において、方法600は、補正された荷電粒子ビーム顕微鏡システムを用いて試料の画像を取得することを含む。画像を取得した後、方法600は、試料の別の領域を処理するために動作610に戻ることができる。
【0087】
例示的な方法500、580、600における動作は、1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体上に格納され、コンピューティングシステムの1つ以上のプロセッサによって実行され得るコンピュータプログラムによって制御され得る。コンピュータ可読記憶媒体は、非一時的(例えば、DRAM又はSRAMなどの揮発性メモリ、磁気記憶装置、光記憶装置などの不揮発性メモリ)及び/又は有形であり得る。
【0088】
図7は、本明細書に記載される方法において使用され得る一般化された例示的なコンピューティングシステム(又はコンピューティング環境)のブロック図である。いくつかの例では、方法は、単一のコンピューティングシステムを使用することができる。他の例では、本方法は、ネットワークを介して通信し得る複数のコンピューティングシステムを使用することができる。
【0089】
図7を参照すると、コンピューティングシステム700は、1つ以上の処理ユニット710、715、及びメモリ720、725を含む。図7では、この基本構成730が破線内に含まれている。処理ユニット710、715は、コンピュータ実行可能命令を実行する。処理ユニットは、汎用中央処理ユニット(central processing unit、CPU)、特定用途向け集積回路(application-specific
integrated circuit、ASIC)内のプロセッサ、又は任意の他の種類のプロセッサとすることができる。マルチプロセッシングシステムでは、複数の処理ユニットがコンピュータ実行可能命令を実行して、処理能力を増加させる。例えば、図7は、中央処理ユニット710並びにグラフィックス処理ユニット又はコプロセッシングユニット715を示す。有形メモリ720、725は、処理ユニットによってアクセス可能な揮発性メモリ(例えば、レジスタ、キャッシュ、RAM)、不揮発性メモリ(例えば、ROM、EEPROM、フラッシュメモリなど)、又はその2つの何らかの組み合わせであり得る。メモリ720、725は、処理ユニットによる実行に好適なコンピュータ実行可能命令の形態で、本明細書に記載される1つ以上のイノベーションを実装するソフトウェア780を格納する。ソフトウェア780は、例えば、画像シフトトラッカ152、収差計算器156、収差補正器168、又は方法500、580、600の論理のうちの1つ以上を含むことができる。
【0090】
コンピューティングシステムは、追加の特徴を有し得る。例えば、コンピューティングシステム700は、記憶装置740、1つ以上の入力デバイス750、1つ以上の出力デバイス760、及び1つ以上の通信接続770を含むことができる。バス、コントローラ、又はネットワークなどの相互接続機構(図示せず)が、コンピューティングシステム700の構成要素を相互接続する。典型的には、オペレーティングシステムソフトウェア(図示せず)は、コンピューティングシステム700内で実行される他のソフトウェアのための動作環境を提供し、コンピューティングシステム700の構成要素のアクティビティを調整する。
【0091】
有形記憶装置740は、リムーバブル又は非リムーバブルであり得、磁気ディスク、磁気テープ若しくはカセット、CD-ROM、DVD、又は非一時的に情報を格納するために使用することができ、コンピューティングシステム700内でアクセスすることができる任意の他の媒体を含む。記憶装置740は、本明細書で説明される1つ以上のイノベーションを実装するソフトウェア780のための命令を格納する。
【0092】
入力デバイス750は、キーボード、マウス、ペン、若しくはトラックボールなどのタッチ入力デバイス、音声入力デバイス、スキャンデバイス、又はコンピューティングシステム700に入力を提供する別のデバイスであり得る。出力デバイス760は、ディスプレイ、プリンタ、スピーカ、CDライタ、又はコンピューティングシステム700からの出力を提供する別のデバイスとすることができる。
【0093】
通信接続770は、通信媒体を介した、別のコンピューティングエンティティへの通信を可能にする。通信媒体は、コンピュータ実行可能命令、オーディオ又はビデオ入力若しくは出力、又は変調データ信号内の他のデータなどの情報を搬送する。変調されたデータ信号は、信号内の情報を符号化するような方法で設定又は変更された1つ以上の特性を有する信号である。限定ではなく例として、通信媒体は、電気、光、RF、又は他の搬送波を使用することができる。
【0094】
開示された主題の上記の実装形態を考慮して、本出願は、以下に列挙される追加の例を開示する。単独の項の1つの特徴、又はその項の2つ以上の特徴の組み合わせはまた、任意選択で、1つ以上の更なる例のうちの1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、本出願の開示に含まれる更なる例であることに留意されたい。
【0095】
実施例1は、荷電粒子ビーム顕微鏡システムを透過撮像モードで動作させて、一連の画像を作り出すために、時系列のパターンのビーム傾斜を荷電粒子ビームに適用することを含む、荷電粒子ビームを試料に方向付けることであって、荷電粒子ビームが、時系列のビーム傾斜における1つのビーム傾斜と、時系列のビーム傾斜における順次隣接するビーム傾斜との間で遷移している間に、一連の画像における画像のうちの少なくともいくつかが捕捉され、パターンが、荷電粒子ビーム顕微鏡システムにおける光学収差を指し示す一連の画像における画像間の画像変化を誘起するように構成されている、方向付けることを含む方法である。方法は、一連の画像を捕捉することを含む。
【0096】
実施例2は、実施例1の主題を含み、パターンが周期的パターンであることを更に指定する。
【0097】
実施例3は、実施例2の主題を含み、周期的パターンがリサージュ図形であることを更に指定する。
【0098】
実施例4は、実施例1~3のうちのいずれかの主題を含み、一連の画像から荷電粒子ビーム顕微鏡システムの1つ以上の光学収差値のセットを生成することを更に含む。
【0099】
実施例5は、実施例4の主題を含み、画像変化が誘起された画像シフトを含み、一連の画像から荷電粒子ビーム顕微鏡システムの1つ以上の光学収差値のセットを生成することが、一連の画像における連続する画像間で誘起された画像シフトを測定することを含む。
【0100】
実施例6は、実施例5の主題を含み、一連の画像から荷電粒子ビーム顕微鏡システムの1つ以上の光学収差値のセットを生成することが、一連の画像から導出された入力データから光学収差のセットを識別するように訓練されたニューラルネットワークモデルから推論を得ることを更に含む。
【0101】
実施例7は、実施例5の主題を含み、一連の画像から荷電粒子ビーム顕微鏡システムの1つ以上の光学収差値のセットを生成することが、誘起された画像シフトを、誘起された画像シフトとビーム傾斜と及び光学収差のセットとの間の関係を記載する光学収差モデルに当てはめることを更に含む。
【0102】
実施例8は、実施例7の主題を含み、光学収差モデルが、パターンと一連の画像との間の不明な時間遅延を組み込むことを更に指定する。
【0103】
実施例9は、実施例4~8のうちのいずれかの主題を含み、一連の画像から荷電粒子ビーム顕微鏡システムの1つ以上の光学収差値のセットを生成することが、デフォーカス、2回非点収差、3回非点収差、4回非点収差、5回非点収差、6回非点収差、軸上コマ収差、5次軸上コマ収差、球面収差、6次球面収差、星収差、6次星収差、3葉収差、及びロゼット収差、のうちの1つ以上の値を推定することを含む。
【0104】
実施例10は、実施例4~9のうちのいずれか1つの主題を含み、1つ以上の光学収差値のセットに基づいて荷電粒子ビーム顕微鏡システムの光学補正を決定することを更に含む。
【0105】
実施例11は、実施例10の主題を含み、荷電粒子ビーム顕微鏡システムのための光学補正を荷電粒子ビーム顕微鏡システムの1つ以上の光学構成要素に適用することを更に含む。
【0106】
実施例12は、実施例10の主題を含み、1つ以上の光学収差値のセットの精度、一連の画像内の画像の品質、及び一連の画像を捕捉する際の外乱、のうちの1つ以上に基づいてパターンを調整することを更に含む。
【0107】
実施例13は、実施例4~12のうちのいずれか1つの主題を含み、経時的に1つ以上の光学収差のセットの変化を監視することを更に含む。
【0108】
実施例14は、1つ以上のプロセッサによって、荷電粒子ビーム顕微鏡システムの光学カラムの光軸に沿って透過され、光軸に沿って配置された試料を通る荷電粒子ビームに周期的パターンの時系列のビーム傾斜を適用する間に捕捉された一連の画像を受信することを含む方法である。本方法は、1つ以上のプロセッサによって、一連の画像から光学カラムによって作り出される1つ以上の光学収差の値を推定することを含む。
【0109】
実施例15は、実施例14の主題を含み、光学カラム内の1つ以上の光学構成要素に対する1つ以上の光学補正を決定することと、1つ以上の光学補正を1つ以上の光学構成要素に選択的に適用することと、を更に含む。
【0110】
実施例16は、実施例14~15のうちのいずれか1つの主題を含み、周期的パターンがリサージュ図形パターンであることを更に指定する。
【0111】
実施例17は、荷電粒子ビームを放出する荷電粒子源を含むシステムであって、光軸を画定し、光軸に沿って配置された試料の視野内に荷電粒子ビームを形成するように構成された1つ以上の光学構成要素を備える光学カラムと、パターンを生成するように構成されたパターン生成器と、光軸に沿って配置され、時系列のビーム傾斜を荷電粒子ビームに適用するためにパターンによって制御可能な1つ以上のビーム偏向器と、光軸に沿って位置決めされ、試料の画像を捕捉する撮像センサと、1つ以上のプロセッサと、1つ以上のプロセッサによって実行されたとき、1つ以上のプロセッサに、時系列のビーム傾斜の適用中に、撮像センサによって捕捉された一連の画像を受信させ、1つ以上のプロセッサに、一連の画像から光学システムの1つ以上の光学収差値のセットを生成させる、命令を格納する1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体であって、一連の画像における画像のうちの少なくともいくつかが、時系列のビーム傾斜における連続するビーム傾斜の間の荷電粒子ビームの運動中に捕捉される、コンピュータ可読記憶媒体と、を備える、システムである。
【0112】
実施例18は、実施例17の主題を含み、1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体が、1つ以上のコンピューティングデバイスによって実行されるとき、1つ以上のコンピューティングデバイスに、一連の画像内の誘起された画像シフトを決定させ、誘起された画像シフト及び誘起された画像シフトに対応するビーム傾斜の適用された時系列から1つ以上の光学収差の値を決定させる命令を更に格納することを更に指定する。
【0113】
実施例19は、実施例17の主題を含み、1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体が、1つ以上のコンピューティングデバイスによって実行されるとき、1つ以上のコンピューティングデバイスに、1つ以上の光学収差値のセットに基づいて1つ以上の光学構成要素に対する1つ以上の光学補正を決定させる命令を更に格納することを更に指定する。
【0114】
実施例20は、実施例17~19のうちのいずれか1つの主題を含み、1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体が、1つ以上のコンピューティングデバイスによって実行されると、1つ以上のコンピューティングデバイスに、1つ以上の光学収差について決定された値の信頼性レベルに基づいて、パターン生成器によって生成されたパターンに対する調整を決定させる命令を更に格納することを更に指定する。
【0115】
実施例21は、実施例17~20のうちのいずれか1つの主題を含み、パターン生成器が周期的なパターンを生成するように構成されていることを更に指定する。
【0116】
実施例22は、荷電粒子ビーム顕微鏡システムを動作させる方法であって、第1の光学収差出力セットを決定することであって、第1の収差出力セットが、1つ以上の取得された画像を含む第1の入力セットに基づいて、荷電粒子ビーム顕微鏡システムにおける1つ以上の光学収差の第1のセットに対する値を含む、決定することと、第1の光学収差出力セットに基づいて、第1の周波数で荷電粒子ビーム顕微鏡システムに調整を適用して第1のセットの光学収差を軽減することと、荷電粒子ビームシステムの1つ以上の光学収差の第2のセットの値を含む第2の光学収差出力セットの値を、第1の入力セット又は第1の光学収差出力の少なくとも一部を含む第2の入力セットに基づいて決定することであって、第2のセットの1つ以上の光学収差が、第1のセットの1つ以上の光学収差とは異なる、決定することと、第2の光学収差出力セットに基づいて、第2の周波数で荷電粒子ビーム顕微鏡システムに調整を適用して、第2のセットの収差を軽減することであって、第2の周波数が、第1の周波数よりも小さい、軽減することと、を含む方法である。
【0117】
実施例23は、実施例22の主題を含み、1つ以上の光学収差の第1のセットが、デフォーカスを含むことを更に指定する。
【0118】
実施例24は、実施例22~23のうちのいずれか1つの主題を含み、1つ以上の光学収差の第2のセットがコマ収差又は非点収差を含むことを更に指定する。
【0119】
実施例25は、実施例22~24のうちのいずれか1つの主題を含み、第1の入力セットに基づいて第1の光学収差出力セットを決定することが、第2のセットにおける1つ以上の光学収差の少なくともいくつかの値を決定することであって、第2の入力セットに含まれる第1の光学収差出力セットの少なくともいくつかが、少なくともいくつかの値を含む、決定することを含む。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6
図7
【外国語明細書】