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特開2023-126189レーザ加工装置、レーザ加工システム、及びレーザ加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126189
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】レーザ加工装置、レーザ加工システム、及びレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/146 20140101AFI20230831BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20230831BHJP
【FI】
B23K26/146
B23K26/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029208
(22)【出願日】2023-02-28
(31)【優先権主張番号】63/314587
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(74)【代理人】
【識別番号】100171848
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 裕美
(72)【発明者】
【氏名】高橋 哲
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 涼太
(72)【発明者】
【氏名】増田 秀征
(72)【発明者】
【氏名】増井 周造
(72)【発明者】
【氏名】門屋 祥太郎
(72)【発明者】
【氏名】道畑 正岐
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168CA02
4E168CA03
4E168CA05
4E168CA06
4E168CA07
4E168CA11
4E168DA06
4E168DA24
4E168FA05
4E168FB03
4E168FB07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ジェット安定長を伸長することにより高アスペクト比の微細穴加工の実現を目的とする。
【解決手段】レーザ加工装置200は、ウォータガイドレーザ光WGLを生成するものであって、高圧水HWが供給されウォータジェットWJを射出するウォータチャンバ21と、加工用レーザをウォータチャンバ21中に供給する加工光供給装置22と、ウォータチャンバ21から射出されるウォータジェットWJの温度を調節する水温調整装置23とを備える。水温調整装置23がウォータチャンバ21から射出されるウォータジェットWJの温度を調節することにより、ウォータジェットWJの安定長を伸長することができ、高アスペクト比の微細穴等の加工が容易になる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォータガイドレーザ光を生成するレーザ加工装置であって、
高圧水が供給されウォータジェットを射出するウォータチャンバと、
加工用レーザ光を前記ウォータチャンバ中に供給する加工光供給装置と、
前記ウォータチャンバから射出される前記ウォータジェットの温度を調節する水温調整装置と
を備えるレーザ加工装置。
【請求項2】
前記水温調整装置は、水供給装置から前記ウォータチャンバに供給された水を加熱する、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記水温調整装置は、前記ウォータチャンバに供給される前の水を加熱する、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記水温調整装置は、前記ウォータチャンバに供給された水、又は前記ウォータチャンバに供給される前の水を40℃以上に加熱する、請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記水温調整装置は、前記ウォータチャンバに供給された水、又は前記ウォータチャンバに供給される前の水の温度を調整する温度調整部材と、前記温度調整部材の動作状態を調整する動作調整装置とを有する、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記動作調整装置は、前記ウォータチャンバに供給された水、又は前記ウォータチャンバに供給される前の水の温度を検出する温度センサを有する、請求項5に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記温度調整部材は、前記ウォータチャンバの温度を調整し、
前記温度センサは、前記ウォータジェットを射出するカップリングノズルの温度を検出する、請求項6に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記ウォータチャンバに設けられて前記ウォータジェットを射出するカップリングノズルから射出された前記ウォータジェットからの漏れ光を撮影する観察系をさらに備える、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
前記観察系は、観察用レーザ光を形成する観察レーザ源と、前記観察用レーザ光を前記加工用レーザ光に対して合波させ前記観察用レーザ光を前記ウォータチャンバ中に供給するダイクロイックミラーと、前記ウォータジェットを側方から撮影するカメラとを有する、請求項8に記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
前記ウォータジェットの周囲にヘリウムガスを供給するヘリウム供給装置をさらに備える、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載のレーザ加工装置と
ワークを支持するステージ装置と、
レーザ加工装置及びステージ装置の動作を制御する制御装置とを備える、レーザ加工システム。
【請求項12】
ウォータガイドレーザ光を用いて対象を加工するレーザ加工方法であって、
ウォータチャンバに高圧水を供給し、前記ウォータチャンバからウォータジェットを射出させ、
前記ウォータチャンバに加工用レーザ光を供給し、前記ウォータジェット中に加工用レーザ光を導光させ、
前記ウォータチャンバから射出される前記ウォータジェットの温度を調節する、レーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォータガイドレーザ光を用いて対象を加工するレーザ加工装置、レーザ加工システム、及びレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年アスペクト比の高い深穴加工が可能であるウォータガイドレーザ加工法が注目を集めている。このレーザ加工法ではウォータジェット内に拘束したレーザ光をワークまで誘導し、レーザ加工を行う。加工位置が焦点に限定されないために、アスペクト比の高い加工が可能となっている。加えて複合材料の穴あけ加工に優れた加工法であることが示されている(非特許文献1、後に付記した参考文献[1])。
【0003】
ウォータガイドレーザ加工法では、下部にカップリングノズルを有し対向する上部に光学窓を有するチャンバを用いる。チャンバ内の水には10MPa程度の圧力が加わっており、直径数10μmのノズルから高圧のウォータジェットが射出される。加工用のレーザ光は、レンズと光学窓とを通りカップリングノズルに集光され、ウォータジェット内に導入される。導入されたレーザ光は、ウォータジェット内にて全反射を繰り返しながら伝搬し、ワークに到達する。レーザ光がアブレーションを起こすことで加工が進むと同時にウォータジェットは発生した熱やデブリを排出する。そのため、この加工法では熱やデブリの影響が小さいという利点が存在する。さらに加工位置が焦点に限定されないために、アスペクト比の高い加工が可能であることも大きな利点である。
【0004】
ウォータジェットがある程度進んで長くなるとその形状を保つことができなくなり、全反射条件を満たせずレーザ光を内部に閉じ込めることができなくなる。結果として、レーザ光が散乱するため、加工が行えなくなる。つまり、ウォータガイドレーザ加工における最大作動距離はウォータジェットの安定長に制限されている。
【0005】
関連する技術として、加圧された液体噴流中にパルスレーザビームを入射させ、パルスレーザビームを被加工材に向かわせる加工方法であって、パルスレーザビームとして、パワーが異なる2つのパルス波を重ね合わされものを用いる方法が公知となっている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Marimuthu, S., J. Dunleavey, Y. Liu, B. Smith, A. Kiely, and M. Antar. "Water-jet guided laser drilling of SiC reinforced aluminium metal matrix composites." Journal of Composite Materials 53, no. 26-27 (2019): 3787-3796.
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2022-518241号公報
【発明の概要】
【0008】
本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、ジェット安定長を伸長することにより高アスペクト比の微細穴等の加工の実現を目的とする。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るレーザ加工装置は、ウォータガイドレーザ光を生成するレーザ加工装置であって、高圧水が供給されウォータジェットを射出するウォータチャンバと、加工用レーザ光をウォータチャンバ中に供給する加工光供給装置と、ウォータチャンバから射出されるウォータジェットの温度を調節する水温調整装置とを備える。
【0010】
上記レーザ加工装置では、水温調整装置がウォータチャンバから射出されるウォータジェットの温度を調節するので、ウォータジェットの安定長を伸長することができ、高アスペクト比の微細穴等の加工が容易になる。
【0011】
本発明の具体的な側面によれば、上記レーザ加工装置において、水温調整装置は、水供給装置からウォータチャンバに供給された水を加熱する。この場合、ウォータジェットの温度を直接的に近い状態で調整することができる。
【0012】
本発明の別の側面によれば、水温調整装置は、ウォータチャンバに供給される前の水を加熱する。この場合、ウォータジェットの温度を間接的に調整することになるが、ウォータジェットの温度を安定化させることは容易になる。
【0013】
本発明の別の側面によれば、水温調整装置は、ウォータチャンバに供給された水、又はウォータチャンバに供給される前の水を40℃以上に加熱する。この場合、ウォータジェットの安定長を常温の場合に比較して、例えば水が40℃であれば1.27倍程度伸長し、例えば水が50℃であれば1.4倍程度伸長し、例えば水が100℃であれば1.9倍程度伸長することが期待される。
【0014】
本発明の別の側面によれば、水温調整装置は、ウォータチャンバに供給された水、又はウォータチャンバに供給される前の水の温度を調整する温度調整部材と、温度調整部材の動作状態を調整する動作調整装置とを有する。
【0015】
本発明の別の側面によれば、動作調整装置は、ウォータチャンバに供給された水、又はウォータチャンバに供給される前の水の温度を検出する温度センサを有する。
【0016】
本発明の別の側面によれば、温度調整部材は、ウォータチャンバの温度を調整し、温度センサは、ウォータジェットを射出するカップリングノズルの温度を検出する。この場合、ウォータジェットの温度を高精度で管理することができ、必要に応じて常温よりも冷却することもできる。
【0017】
本発明の別の側面によれば、ウォータチャンバに設けられてウォータジェットを射出するカップリングノズルから射出されたウォータジェットからの漏れ光を撮影する観察系をさらに備える。この場合、観察系によって、ウォータジェットの安定長を実測することができ、ウォータジェットによる加工精度を向上させることができる。
【0018】
本発明の別の側面によれば、観察系は、観察用レーザ光を形成する観察レーザ源と、観察用レーザ光を加工用レーザ光に対して合波させ観察用レーザ光をウォータチャンバ中に供給するダイクロイックミラーと、ウォータジェットを側方から撮影するカメラとを有する。
【0019】
本発明の別の側面によれば、ウォータジェットの周囲にヘリウムガスを供給するヘリウム供給装置をさらに備える。ヘリウムガスは、水の表面との摩擦を低減し、ウォータジェットの安定長をより長くすることができると考えられる。
【0020】
上記目的を達成するため、本発明に係るレーザ加工システムは、上述したレーザ加工装置と、ワークを支持するステージ装置と、レーザ加工装置及びステージ装置の動作を制御する制御装置とを備える。
【0021】
上記目的を達成するため、本発明に係るレーザ加工方法は、ウォータガイドレーザ光を用いて対象を加工するレーザ加工方法であって、ウォータチャンバに高圧水を供給し、ウォータチャンバからウォータジェットを射出させ、ウォータチャンバに加工用レーザ光を供給し、ウォータジェット中に加工用レーザ光を導光させ、ウォータチャンバから射出されるウォータジェットの温度を調節する。
【0022】
上記レーザ加工方法では、ウォータチャンバから射出されるウォータジェットの温度を調節するので、ウォータジェットの安定長を伸長することができ、高アスペクト比の微細穴等の加工が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態のレーザ加工システムの基本構造を説明する概念図である。
図2図1に示すレーザ加工システムの動作の概要を説明する図である。
図3】レーザ加工装置等の変形例を説明する図である。
図4】第2実施形態のレーザ加工システムの基本構造を説明する概念図である。
図5】20℃を基準としたジェット安定長比率のシミュレーションを示す。
図6】(a)は、実験装置の模式図であり、(b)は、観察画像の一例を示す。
図7】(a)は、ウォータガイドレーザの模式図であり、(b)-(e)は、各条件での観察画像を示す。
図8】ウォータジェット安定長の計測結果を示すチャートである。
図9】ウォータジェットを構成する縦方向の3領域を説明する図である。
図10】ウォータジェットの分裂の原因に関する先行資料を示す図である。
図11】(a)は、観察用レーザ光を加工装置本体に導入するカップリング部を示し、(b)は、加工装置本体の外観を示し、(c)は、カメラによって撮影された画像を示す。
図12】(a)は、カップリングノズル周辺の写真であり、(b)は、カップリングノズルの下方からの写真である。
図13】実験の様子や、ジェット安定長の撮影準備を説明する写真である。
図14】(a)は、ウォータジェット周辺の画像であり、(b)は、赤輝度値の抽出結果を示す。
図15】(a)は、ウォータジェットを撮影した計測画像の一フレームを示し、(b)は、各フレームから算出したジェット安定長の推移を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔第1実施形態〕
以下、図1を参照して、本発明に係る第1実施形態のレーザ加工装置及びレーザ加工システムについて説明する。
【0025】
図1に示すレーザ加工システム100は、ウォータガイドレーザ光を用いた加工機を含むものであり、加工装置本体20と、高圧ポンプ30と、水源装置40と、ステージ装置50と、観察系60と、制御装置80とを備える。これらのうち、加工装置本体20と、高圧ポンプ30と、観察系60とは、レーザ加工装置200を構成する。加工装置本体20は、ウォータガイドレーザ光を生成する。高圧ポンプ30は、加工装置本体20に高圧水を供給する。ステージ装置50は、ワークWOを支持して3次元的に移動させる。観察系60は、ウォータジェットの状態を撮影することでウォータジェットの状態を観察可能にする。制御装置80は、レーザ加工システム100又はレーザ加工装置200の各部の動作状態を統括的に制御する。
【0026】
加工装置本体20は、ウォータチャンバ21と、加工光供給装置22と、水温調整装置23とを備える。ウォータチャンバ21は、例えばステンレス製であり、側壁21aと、天板21bと、底板21cとを有し、これらの内部に水収納空間SPを形成する。側壁21aには、配管28が連結され、高圧ポンプ30からの高圧水HWが水収納空間SPに供給される。天板21bには、加工光供給装置22からの加工用レーザ光L1を水収納空間SPに導く円形で平板状の光学窓25が形成されている。また、底板21cには、ウォータジェットWJを形成するカップリングノズル26が組付けられている。カップリングノズル26は、水収納空間SP中の高圧水HWを下方に噴射させる細孔26aを有する。カップリングノズル26のうち細孔26aの周りは、例えばダイヤモンド、サファイア等の材料で形成される。加工光供給装置22は、加工用レーザ光L1を形成する加工レーザ源22aと、加工レーザ源22aからの加工用レーザL1をウォータチャンバ21中に導く集光レンズ22bとを有する。加工レーザ源22aは、ワークWOの加工に適し、かつ、水による吸収が少ない波長域の加工用レーザ光L1を射出する。加工レーザ源22aは、具体的には高出力のパルスレーザであり、加工用レーザ光L1は、周期的にパルス状に出力される。加工レーザ源22aは、例えばYAGレーザを含み、波長1064nmの基本波から例えば第2高調波を形成し、加工用レーザ光L1として出力する。集光レンズ22bは、加工レーザ源22aからの加工用レーザ光L1をウォータチャンバ21中に導き、水収納空間SP中において、カップリングノズル26の上端近傍にレーザスポットLPを形成する。レーザスポットLPからの加工用レーザ光L1は、カップリングノズル26から射出されるウォータジェットWJの側面SAで全反射され、ウォータジェットWJの先端に向けて伝搬される。ウォータジェットWJ中に加工用レーザ光L1を導光させたものをウォータガイドレーザ光WGLと呼ぶ。水温調整装置23は、ウォータチャンバ21の温度を調整するペルチェ素子23aと、カップリングノズル26の温度を検出する温度センサ23bと、ペルチェ素子23aの動作状態等を調整する駆動回路23cとを有する。ペルチェ素子23aは、ウォータチャンバ21に供給された水の温度を直接的に調整する温度調整部材2aである。駆動回路23cと温度センサ23bとを合わせて動作調整装置2bと呼ぶ。ペルチェ素子23aは、駆動回路23cに駆動されてウォータチャンバ21の底板21cや側壁21aを加熱するが、底板21cや側壁21aを冷却することもできる。温度センサ23bは、カップリングノズル26の温度を検出することによって、カップリングノズル26から射出されるウォータジェットWJの温度を間接的に計測している。駆動回路23cは、制御装置80の制御下で動作し、ペルチェ素子23aに供給する電力や極性を調整する。水温調整装置23により、カップリングノズル26から射出されるウォータジェットWJの温度を所望の温度に制御することができる。
【0027】
ウォータジェットWJの温度を水の標準的な常温20℃より高くすることにより、水の粘度が相対的に低下し、ウォータジェットWJの安定長を相対的に増加させることが期待される。一般的には、ウォータジェットWJの温度を40℃より高くすることにより、より好ましくはウォータジェットWJの温度を50℃より高くすることにより、ウォータジェットWJの安定長を確実に増加させることができる。
【0028】
高圧ポンプ30は、水源装置40からの精製水を所望の水圧まで上昇させた高圧水HWをウォータチャンバ21に連通する配管28に供給する。水源装置40は、微細な粒子を除去し、イオン交換によって脱イオン化した精製水を安定して供給することができる。高圧ポンプ30や水源装置40の動作は、制御装置80によって制御され、カップリングノズル26から射出されるウォータジェットWJの噴射速度を規定値に調整している。
【0029】
ステージ装置50は、基板51と、移動装置52とを有する。基板51は、ワークWOの周辺部を機械的に固定し、或いはワークWOの裏面を吸着によって固定する固定具(不図示)を備える。移動装置52は、スライドガイド、モータ、エンコーダ等を有し、加工装置本体20に対する基板51の位置を3次元的に変化させ、所望の姿勢に変化させることができる。具体的には、移動装置52は、X軸、Y軸、及びZ軸に関して基板51の配置及び姿勢を調整可能であり、6軸で基板51上のワークWOを並進移動させ回転させることができる。ここで、Z軸は、鉛直軸であり、ウォータジェットWJの延びる方向に略平行となっている。また、X軸及びY軸は、水平方向に互いに直交して延びる。
【0030】
観察系60は、観察用レーザ光L2を形成する観察レーザ源62aと、観察レーザ源62aからの観察用レーザL2を加工用レーザ光L1と合波させダイクロイックミラー62bと、ウォータジェットWJを側方から撮影するカメラ62cとを有する。観察レーザ源62aは、具体的には低出力の連続波レーザであり、観察用レーザ光L2は、比較的微弱であるが、連続的に出力される。観察レーザ源62aは、観察用レーザ光L2として例えば波長650nmを射出する。観察用レーザ光L2は、ダイクロイックミラー62bよって集光レンズ22bに導かれ、集光レンズ22bによってカップリングノズル26の上端近傍に集光される。カメラ62cは、ウォータジェットWJから漏れ出す観察用レーザ光L2を撮影し、制御装置80は、カメラ62cによって撮影された画像から、ウォータジェットWJにおいて観察用レーザ光L2が漏れ出す位置を特定する。観察レーザ源62aを動作させるタイミングは、通常、加工光供給装置22による加工を開始する前とするが、加工光供給装置22による加工中は加工後であってもよい。カメラ62cは、観察用レーザ光L2のみを選択的に撮影するため、フィルタを備える。
【0031】
制御装置80は、演算処理装置、メモリ、信号通信装置等を含むコンピュータであり、水温調整装置23に対して例えば目標温度の設定値を出力することにより水温調整装置23の動作を制御し、ウォータチャンバ21のカップリングノズル26から射出されるウォータジェットWJを所望の温度状態に設定しつつ、高圧ポンプ30の動作を制御することにより、ウォータジェットWJを所望の噴射速度に設定する。制御装置80は、加工光供給装置22の動作を制御することにより、ウォータジェットWJ中に加工用レーザ光L1を導光させつつ、ステージ装置50の動作を制御することにより、ワークWO上のウォータジェットWJが当たる位置やその際の作動距離WDを調整する。これにより、ワークWOに所望の深さの穴98aその他の所望の形状を有する凹部を形成することができる。
【0032】
図2を参照して、図1に示すレーザ加工システムの動作の概要を説明する。まず、オペレータが制御装置80を操作し、加工対象であるワークWOの材料、加工形状等に関する各種加工パラメータを選択し入力する(ステップS11)。制御装置80の記憶装置には、加工パラメータが保管される。次に、制御装置80は、これまでに蓄積されたデータをまとめたテーブル等に基づいて、データ加工パラメータに適した加工条件、例えば高圧水HWの水温、水圧等を設定する(ステップS12)。この際、ステージ装置50の動作、つまり基板51の移動の経路や速度が設定される。その後、オペレータの管理下で制御装置80が動作し、ステージ装置50の基板51を適宜移動させ、ワークWOに対して目的の位置に目的の作動距離でウォータジェットWJを供給しつつ、ワークWOに目的の形状を加工する(ステップS13)。この際、ウォータジェットWJの水圧調整と温度調整とによって、ウォータジェットWJの安定長を所望の状態に維持することができる。
【0033】
図3は、図1に示すレーザ加工装置200又はレーザ加工システム100の変形例を説明する図である。この場合、第1の水温調整装置23に代えて、或いは第1の水温調整装置23とともに第2の水温調整装置123を組み込んでいる。第2の水温調整装置123は、ヒータ123aと、温度センサ123bと、駆動回路23cとを備える。駆動回路23cは、両水温調整装置23,123に共通のものである。駆動回路23cと温度センサ123bとを合わせて動作調整装置2bと呼ぶ。ヒータ123aは、例えば電熱線ヒータであり、高圧ポンプ30からウォータチャンバ21にかけての配管28の一部分をカバーするように設けられている。ヒータ123aは、それ自体が発熱するものに限らず、熱媒体の流体を配管28の周りに流すようなものであってもよい。ヒータ123aは、ウォータチャンバ21に供給される前の水の温度を調整することによって、ウォータチャンバ21に供給された水の温度を間接的に調整する温度調整部材2aである。温度センサ123bは、例えばサーミスタセンサを備えるものであるが、これに限るものではなく、熱電対やその他の各種原理の温度センサを用いることができる。水温調整装置123は、制御装置80の制御下で動作し、温度センサ123bによって配管28の温度を監視しつつウォータチャンバ21に供給される前の高圧水HWを加熱し、高圧水HWを所望の温度まで上昇させる。第1の水温調整装置23と第2の水温調整装置123とを併用する場合、第2の水温調整装置123は、例えば予熱といった補助的加熱に使用される。水温調整装置123は、電熱線ヒータを備えるものに限らず、ペルチェ素子を備えるものであってもよい。また、第1の水温調整装置23において、ペルチェ素子23aに代えて、ウォータチャンバ21にヒータのような加熱装置を設けてもよい。
【0034】
以上で説明した第1実施形態のレーザ加工装置200は、ウォータガイドレーザ光WGLを生成するものであって、高圧水HWが供給されウォータジェットWJを射出するウォータチャンバ21と、加工用レーザ光L1をウォータチャンバ21中に供給する加工光供給装置22と、ウォータチャンバ21から射出されるウォータジェットWJの温度を調節する水温調整装置23とを備える。
【0035】
上記レーザ加工装置では、水温調整装置23がウォータチャンバ21から射出されるウォータジェットWJの温度を調節するので、ウォータジェットWJの安定長を伸長することができ、高アスペクト比の微細穴等の加工が容易になる。
【0036】
図1に示すレーザ加工装置200では、水温調整装置23は、水供給装置40からウォータチャンバ21に供給された高圧水HWを加熱する。この場合、ウォータジェットWJの温度を直接的に近い事態で調整することができる。
【0037】
図3に示すレーザ加工装置200では、水温調整装置23は、ウォータチャンバ21に供給される前の高圧水HWを加熱する。この場合、ウォータジェットWJの温度を間接的に調整することになるが、ウォータジェットWJの温度を安定化させることが容易になる。
【0038】
〔第2実施形態〕
以下、図4を参照して、第2実施形態のレーザ加工装置及びレーザ加工システムについて説明する。
【0039】
図4に示すレーザ加工システム100は、ヘリウム供給装置70を備える。ヘリウム供給装置70は、カップリングノズル26の下端からウォータジェットWJを囲んで下方に延びるカバー71と、カバー71の上端にヘリウムガスを供給するヘリウムガス源72とを有する。ヘリウム供給装置70は、カップリングノズル26から射出されるウォータジェットWJの周囲を包んで下方に流れるヘリウムガス流HSを形成する。ヘリウムガス流HSは、水の表面との摩擦を低減し、ウォータジェットWJの安定長をより長くすることができる。
【0040】
カバー71は、光透過性を有する材料で形成されるが、光透過性を有する材料で形成されない場合、例えばカバー71の一部に光透過窓を形成することにより、カメラ62cによるウォータジェットWJの撮影を確保することができる。
【0041】
カバー71の上端のヘリウムガスの取込部には、ガス流の方向を規制するような流路を有する案内部を形成することができ、或いは、カバー71の内面には、ヘリウムガス流HSの状態を調整する突起を形成することができる。これにより、ウォータジェットWJの周囲を包んで下方に流れるヘリウムガス流HSの状態を安定化させることができ、例えばウォータジェットWJの周りに螺旋状に旋回しつつ下方に流れるヘリウムガス流HSを形成することもできる。
【0042】
〔A.具体的な実施例及び考察〕
(1)ウォータジェット伸長原理
水は温度上昇によって粘度が大きく低下することが知られている。そして粘度の低下によりジェット安定長が伸びることが期待される。そのため水温を上昇させることによりジェット安定長は伸長するはずである。
【0043】
(1.1)液体ジェット安定長と水温
Erogluらは、実験結果より同軸空気流中の液体ジェットの安定長Lに関する次の関係式を導き出した(参考文献[2])。ここでのジェット安定長とは、ジェットが乱れ始めるまでの長さのことである。
L/d=0.5We-0.4Re0.6 (1)
ここで、dは液体ジェットの直径である。またウェーバ数Weとレイノルズ数Reは次の式で定義されている。
We=dρ /2σ (2)
Re=dρ/μ (3)
ここで、ρは空気密度、uは液体と気体の相対速度、σは表面張力である。また、ρ,u,μは、それぞれ液体の密度,速度,粘度である。これらのパラメータのうち温度変動によって値が変化するものとして液体の表面張力、密度、粘度の3つが挙げられる(参考文献[3~5])。これら3つの水の物性値からジェット安定長の温度依存性を算出する。
【0044】
式(1)、(2)、(3)より、水温Tでのジェット安定長Lと水温Tでのジェット安定長Lの比率r=L/Lは次式で表される。
r=(σ/σ0.4×(ρμ/ρμ0.6 (4)
ただし、各パラメータの添字は水温を表しており、添字0は水温Tを、添字1は水温Tをそれぞれ意味する。水温20℃のジェット安定長を基準として0℃から100℃まで10℃刻みのジェット安定長比率を式(4)と文献値から計算した(参考文献[3~5])。
【0045】
図5は、安定長に関する比率rの計算結果を示す。ジェット安定長は温度上昇に伴い単調増加し、水温50℃の場合は1.4倍、100℃の場合には1.9倍にまで伸長されるという計算結果となった。計算に用いた3つの物性値のうち最も温度依存性が大きいのは水の粘度である。式(4)に対し粘度以外の物性値が温度によらず一定と仮定して計算した場合、ジェット安定長は50℃では1.4、100℃では2.1倍となり図5に示した結果と大差ない。以上より、水温上昇によって水の粘度が低下し、ジェット安定長が伸びることが期待される。
【0046】
(1.2)温度制御手法
温度制御のためにペルチェ素子を使用した。ペルチェ素子は電流を流すことで素子の片側の面から反対の面へと熱量を移動させる素子である。そのため片面が冷却面であり、他方の放熱面において放熱される熱量は、電流値と正の相関をもつ。電流を流したペルチェ素子の放熱面を用いて水の加熱を行うことができる。
【0047】
(2)実験
提案手法によってジェット安定長が伸長することを実証するため、水を加熱しないときのジェット安定長と加熱したときのジェット安定長とを計測し比較した。またウォータジェットの周りにヘリウムガスを流すことでウォータジェットが伸長する。そのため各温度にてヘリウム流量0L/minと0.5L/minの条件にてジェット安定長計測を実施し、提案手法がヘリウムの使用と両立可能であるかの確認を行なった。
【0048】
実験装置の模式図を図6(a)に示す。ウォータガイドレーザ加工機はMCS300(株式会社牧野フライス製作所)をベースにしたものを用いた。カップリングノズルは穴径が40μmのものを使用し、水圧は15MPaとした。ペルチェ素子をウォータチャンバ下部に設置し水温制御を行った。さらにカップリングノズルに温度センサを設置し温度を計測した。ジェット安定長計測のために波長650nmで30mWの観察レーザ光をウォータジェットに導入した。図6(b)のように観察レーザ光がウォータジェットから漏れることを利用し、漏れ出す位置とカップリングノズル下端との距離をジェット安定長と定義し計測した。
【0049】
実験手順を説明する。非加熱時カップリングノズルの温度は24℃であった。このときペルチェ素子は設置してあるが電流は流していない。図6(b)のようにウォータジェット脇に定規を配置し取得画像の画素座標とカップリングノズルからの距離を対応づけた。定規とウォータジェット周りの気流との干渉を防ぐため定規を取り除き、約5秒の動画撮影を行なった。動画は30fpsであり約150フレームを得た。動画の各フレームにおいてカップリングノズルとレーザ光の漏れ位置の距離を算出した。加熱時にはペルチェ素子に3.3Aの電流を流し40W程度の熱量で加熱した。温度は52℃まで上昇し安定した。温度安定後に、非加熱時と同様に、定規を用いた画素座標と距離の対応づけ、動画撮影、ジェット安定長算出を行った。
【0050】
図7にジェット観察画像を示した。図7(a)は観察画像に対応した模式図である。画像上方にカップリングノズルがあり、その下方にてレーザ光がウォータジェットから漏れ出している。図7(b)のスケールバーは10mmであり、4画像の拡大倍率は等しい。図7(b)、7(c)は非加熱時、図7(d)、7(e)は加熱時の画像である。一方ヘリウム流量に関しては図7(b)、7(d)はどちらも0L/minと等しく、図7(c)、7(e)はどちらも0.5L/minと等しい。ヘリウムの有無に関わらず、水温上昇によってジェット安定長が伸びたことが見て取れる。さらに水温上昇とヘリウム使用の併用により最大のジェット安定長が得られた。ジェット安定長計測結果を図8に示す。各条件においてフレームごとに算出したジェット安定長の平均値をプロットした。エラーバーは標準偏差を表す。ヘリウムを流さない場合のジェット安定長は24℃では8.8mmであったが、52℃では19.7mmであり、加熱によって約2.2倍まで伸長した。またヘリウムを0.5L/min流した場合のジェット安定長は24℃では11.2mmであったが、52℃では20.2mmであり、約1.8倍となった。また全条件において標準偏差の値は小さく、ジェット安定長の時間変動が少ないことがわかる。
【0051】
理論との比較を行う。「(1.1)液体ジェット安定長と水温」欄で算出したジェット安定長の温度依存を見ると、20℃に対し50℃でのジェット安定長は1.4倍であり、実験の結果ジェット安定長は理論値以上に伸長した。この差異の一因としては、ジェット安定長の定義の違いが考えられる。理論ではジェットが乱れ始めるまでの長さと定義し、実験ではジェットが乱れた結果レーザ光が漏れ出す位置(以下、レーザ漏れ出し位置)までの距離と定義した。定義の違いのために2つのジェット安定長は似通っているが異なる物理メカニズムが働いており、そのためジェット安定長の伸長度合いに差が生じたと考えられる。本実験の加熱条件ではカップリングユニットの温度は52℃まで上昇した。図8に示すようにジェット安定長は水温に対して単調増加すると考えられるため、水に加える熱量を増やすことでジェット安定長のさらなる伸長が期待される。
【0052】
(3)結論
ウォータガイドレーザ加工において、ウォータチャンバ内の水を加熱し水の物性値を変化させ、ジェット安定長を伸ばすウォータジェット伸長手法を提案し、ウォータジェット伸長を実験によって実証した。ウォータチャンバを加熱することでジェット安定長は8.8mmから19.7mmまで伸長した。ウォータジェット伸長効果のあるヘリウム流環境下においてジェット安定長は11.2mmから20.2mmまで伸長した。
【0053】
(4)参考文献
[1] Marimuthu, S., J. Dunleavey, Y. Liu, B. Smith, A. Kiely, and M. Antar. "Water-jet guided laser drilling of SiC reinforced aluminium metal matrix composites." Journal of Composite Materials 53, no. 26-27 (2019): 3787-3796.
[2] Eroglu, Hasan, Norman Chigier, and Zoltan Farago. "Coaxial atomizer liquid intact lengths." Physics of Fluids A: Fluid Dynamics 3, no. 2 (1991): 303-308.
[3] Vargaftik, N. B., B. N. Volkov, and L. D. Voljak. "International tables of the surface tension of water." Journal of Physical and Chemical Reference Data 12, no. 3 (1983): 817-820.
[4] Kampmeyer, Preston M. "The temperature dependence of viscosity for water and mercury." Journal of Applied Physics23, no. 1 (1952): 99-102.
[5] Kell, George S. "Density, thermal expansivity, and compressibility of liquid water from 0. deg. to 150. deg.. Correlations and tables for atmospheric pressure and saturation reviewed and expressed on 1968 temperature scale." Journal of Chemical and Engineering data 20, no. 1 (1975): 97-105.
【0054】
〔B.補充説明〕
(1)ウォータガイドレーザ加工法の高機能化
研究の方向性として、ウォータガイドレーザ加工法の長所である高アスペクト比加工性の拡張を目指している。
【0055】
図9に示すように、ウォータジェットWJについては、カップリングノズルから下方に向けて、下記3領域
(a1)レーザ全反射領域
(a2)レーザ漏れ出し領域
(a3)分裂後領域
が想定される。ここで、レーザ全反射領域は、加工エネルギーがほとんど損失せずに供給されている領域であり、レーザ全反射領域が加工に適した領域といえる。加工の最大作動距離はレーザ全反射領域長さ(ジェット安定長)に制限される。つまり、ジェット安定長を伸長すれば、最大作動距離が拡張され、超高アスペクト比加工を実現できる。
【0056】
(2)ジェット伸長に関する先行研究
アシストガスを活用することでウォータジェットWJが伸長するとの報告があり、ウォータジェットWJと同軸のアシストガスを流すことと、同軸螺旋状のアシストガス同軸螺旋状のアシストガスを流すこととが提案されている(参考文献[6]:Cheng, Bai, Ye Ding, Yuan Li, Jingyi Li, Junjie Xu, Qiang Li, and Lijun Yang. Journal of Materials Processing Technology 293 (2021): 117067.)。この報告では、アルゴンガス0.7MPaの使用によって、ウォータジェットが36mmから72mmまで伸長したとされる。アシストガスを活用したウォータジェット伸長手法は研究されているものの、水の物性を活用した手法はまだない。本研究では、水の物性、特に水温に着目しウォータジェット伸長に取り組んだ。
【0057】
(3)ジェット分裂に関して
ウォータジェットWJの分裂機構として、表面波の成長と空気との摩擦の2つがあると考えられる。層流では表面波の成長が、乱流では空気との摩擦が、ウォータジェットWJの分裂の主な原因と考えられる。図10は、参考文献[7](Lin, Sung P., and Rolf D. Reitz. "Drop and spray formation from a liquid jet." Annual review of fluid mechanics 30, no. 1 (1998): 85-105.)を引用したものであり、(a)及び(b)の左半分が層流に対応し、右半分が乱流に対応する。
【0058】
ガス雰囲気中にウォータジェットWJを噴出する場合、ガスのウェーバ数We(慣性力と表面張力)から層流及び乱流の判別が可能であり、上記実験では、We=3.94であり、ウォータジェットWJは層流となっているといえる。なお、層流及び乱流に関するWeの閾値は、25である。
【0059】
(4)水物性値とジェット安定長の温度依存性
以下の表1は、水の物性値温度依存性と、これに対応するジェット伸長比率又はジェット安定長比率とをまとめたものである。
[表1]
図5に示すジェット安定長比率のチャートは、上記表1に対応する。
【0060】
(5)ジェット安定長の測定手法
実験では、ウォータジェット中に導入した観察用レーザ光が漏れる位置をカメラで撮影し、観察用レーザ光が漏れる位置をジェット安定長として測定した。
図11(a)は、観察用レーザ光(波長650nm)を図1等に示す加工装置本体20のヘッドに導入するカップリング部を示し、図11(b)は、加工装置本体20のヘッドの外観を示し、図11(c)は、カメラ62cによって撮影された画像であり、ウォータジェットWJや定規が映っている。
【0061】
(6)水温制御手法
実験では、ペルチェ素子(熱交換素子)を用いてウォータチャンバ内の水を加熱した。
図12(a)は、カップリングノズル周辺の写真であり、図12(b)は、カップリングノズルの下方からの写真である。ペルチェ素子の形状は、1辺30mmの正方形板である。温度センサは、サーミスタ方式であり、サイズは3.6×25mmとした。
【0062】
(7)水温制御によるジェット安定長変化計測
実験では、水温を制御した際のジェット長を観察用レーザ光を用いて計測した。
図13は、実験の様子や、観察用レーザ光によるジェット安定長の撮影準備を説明する写真である。計測手順は、(1)カップリングノズル真下に定規を垂直に配置する、(2)準備としての撮影を行い、(3)定規を用いて実際の距離と取得画像上の距離とを対応づけし、(4)定規を除去し、(5)本番の撮影を行い、(6)取得画像からジェット安定長を算出した。
【0063】
(8)ジェット安定長の算出手法
図14(a)は、ウォータジェットWJ周辺の画像であり、図14(b)は、赤輝度値の抽出結果を示す。まず、取得画像からレーザ漏れ出し位置を決定する。具体的には、ジェット周辺の赤輝度値を抽出し、閾値を設定しレーザ光が見えている箇所を決定することで、画像上でのノズルとレーザ漏れ出し位置の距離が決定される。次に、レーザ漏れ出し位置をジェット安定長に変換する。具体的には、あらかじめウォータジェット横に定規を配置しカメラによって撮影し、画素上の距離を実際の距離を変換する。
(9)撮影動画とジェット安定長算出結果
図15(a)は、ウォータジェットWJを撮影した動画の一フレームを示し、図15(b)は、各フレームから算出したジェット安定長の推移を示す。この場合、ウォータジェットWJを52℃に加熱し、ヘリウム流量は、0L/minとしている。
【0064】
〔その他〕
以上では、実施形態や実施例として、本発明に係るレーザ加工装置等について説明したが、本発明に係るレーザ加工装置等は上記のものには限られない。
【0065】
例えば、加工光供給装置22は、単一の加工レーザ源22aに限らず、複数の加工レーザ源22aを組み込んだものであってもよい。この場合、複数の加工レーザ源22aは互いに異なるパルス周期で動作するものであってもよい。
【0066】
以上では、ウォータチャンバ21の水収納空間SPの形状について特に限定していないが、水収納空間SP又はウォータチャンバ21の内面形状は、カップリングノズル26を中心とする対称的な形状とすることができ、高圧水HWに一様な流れを形成するような内面形状を付加したものとすることができる。
【0067】
加工装置本体20において、ウォータジェットWJの先端の加工点からの誘導光又は戻り光を計測する検査装置を追加することもできる。
【0068】
ウォータチャンバ21に供給する液体は、水に限らず、例えば界面活性剤のような添加物を添加した水であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
2a…温度調整部材、2b…動作調整装置、 20…加工装置本体、 21…ウォータチャンバ、 22…加工光供給装置、 22a…加工レーザ源、 22b…集光レンズ、 23,123…水温調整装置、 23a…ペルチェ素子、 23b…温度センサ、 23c…駆動回路、 25…光学窓、 26…カップリングノズル、 26a…細孔、 30…高圧ポンプ、 40…水源装置、 50…ステージ装置、 51…基板、 52…移動装置、 60…観察系、 62a…観察レーザ源、 62b…ダイクロイックミラー、 62c…カメラ、 70…ヘリウム供給装置、 71…カバー、 72…ヘリウムガス源、 80…制御装置、 100…レーザ加工システム、 123…加熱装置、 200…レーザ加工装置、 HS…ヘリウムガス流、 HW…高圧水、 L1…加工用レーザ光、 L2…観察用レーザ光、 SA…側面、 SP…水収納空間、 LP…レーザスポット、 WGL…ウォータガイドレーザ光、 WJ…ウォータジェット、 WO…ワーク
図1
図2
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図10
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