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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126338
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】ワーク保持装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20230831BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20230831BHJP
   B65G 47/91 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
H01L21/68 B
H01L21/78 N
B65G47/91 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113033
(22)【出願日】2023-07-10
(62)【分割の表示】P 2019063535の分割
【原出願日】2019-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】驛 真利奈
(57)【要約】
【課題】反りのあるワークを直接保持して搬送することができるワーク保持装置を提供する。
【解決手段】ワーク保持装置は、ベース72と、ベース72に設けられ、ワークWを吸着するための一対の吸着パッド74と、一対の吸着パッド74の間隔を変更するシリンダ装置76と、を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハからなるワークを直接保持するためのワーク保持装置であって、
ベースと、
前記ベースに設けられ、前記ワークを吸着するための一対のワーク吸着手段と、
前記一対のワーク吸着手段の間隔を変更する間隔変更手段と、
を備えるワーク保持装置。
【請求項2】
前記間隔変更手段と前記ワーク吸着手段とを制御して前記ワークを前記一対のワーク吸着手段によって吸着させて前記ワークを前記ワーク保持手段に保持させる制御部を備える、
請求項1に記載のワーク保持装置。
【請求項3】
前記ベースに対し、前記ワーク吸着手段を鉛直方向に移動自在に支持する支持部材を備え、
前記支持部材は、前記ワーク吸着手段を上方に向けて付勢可能な第1付勢部材と、前記ワーク吸着手段を下方に向けて付勢可能な第2付勢部材と、を有する、
請求項1又は2に記載のワーク保持装置。
【請求項4】
前記ベースに対し、前記ワーク吸着手段を鉛直方向に移動自在に支持する支持部材を備え、
前記支持部材は、ベース部材と、前記ベース部材に対して前記鉛直方向に移動自在されるとともに前記ワーク吸着手段が固定されたブラケットと、前記ベース部材に対して前記鉛直方向に移動自在に連結されたシャフトと、を有し、
前記シャフトを前記ベース部材に対して前記鉛直方向の一方に付勢する第1付勢部材と、前記ブラケットを前記ベース部材に対して前記鉛直方向の他方に付勢する第2付勢部材と、を有し、前記ワーク吸着手段を、前記ブラケット及び前記シャフトを介して前記ベース部材にフローティング状態で支持するフローティング機構を有する、
請求項1又は2に記載のワーク保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワーク搬送装置に係り、特に半導体ウェーハ等のワークを加工する加工装置に設けられるワーク搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイシング装置は、表面に電子部品が形成された半導体ウェーハ等のワークに対し、高速で回転するブレードを用いて切断又は溝入れ等の切削加工を行う装置である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなダイシング装置は、装置本体にカセット収納部、ワーク切断部、洗浄部及びワーク搬送装置等を有している。カセット収納部には、複数枚のウェーハが収納されたカセットが収納されており、このカセットに収納されたウェーハは、ワーク搬送装置によって1枚ずつ引き出されてワーク切断部まで搬送される。このワーク加工部においてウェーハは、ブレードによってダイス状に切断加工され、そして、切断加工終了したウェーハは、ワーク搬送装置によって洗浄部に搬送され、そして、洗浄後にワーク搬送装置によってカセットに戻される。
【0004】
特許文献2には、ダイシング装置に設けられるワーク搬送装置(搬送機構)が開示されている。このワーク搬送装置は、保護テープに貼着されたウェーハを搬送するものであり、保護テープが装着された支持フレームの上面を吸着する複数の吸着パッドを有している。
【0005】
また、特許文献3には、ウェーハを非接触状態で吸引して搬送するワーク搬送装置(ウェーハ搬送装置)が開示されている。このワーク搬送装置は、ウェーハの裏面を研削する平面加工装置に設けられたものであり、平面加工装置の各種処理部の間でウェーハを搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-299287号公報
【特許文献2】特開2003-243483号公報
【特許文献3】特開2017-92397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年では、ワーク搬送装置において、ワークの種類によってはワークを直接保持して搬送することを実現することが必要とされている。しかしながら、特許文献2のワーク搬送装置は、支持フレーム及び保護テープを介してウェーハを間接的に搬送する装置であり、ワークを直接保持して搬送する装置ではない。
【0008】
一方、特許文献3のワーク搬送装置は、ウェーハを非接触状態で吸引して搬送する装置であるが、例えば表面に反りや凹凸が発生しているワーク、又は厚みにばらつきのあるワークの場合には、そのワークを安定して搬送することができないという問題があった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、表面が反っているようなワークであってもワークを直接保持して搬送することができるワーク搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のワーク搬送装置は、本発明の目的を達成するために、ワークを直接保持して搬送するためのワーク搬送装置であって、ワークを直接保持するワーク保持手段と、ワーク保持手段を搬送する搬送手段と、を備え、ワーク保持手段は、搬送手段に連結されたベースと、ベースに互いに対向する位置に離間して設けられた一対のワーク吸着手段であって、ワークの下面を吸着するための一対のワーク吸着手段と、一対のワーク吸着手段の間隔を変更する間隔変更手段と、を有する。
【0011】
本発明の一形態によれば、ワーク搬送装置を制御するための制御部を備え、制御部は、間隔変更手段とワーク吸着手段とを制御してワークの下面を一対のワーク吸着手段によって吸着させてワークをワーク保持手段に保持させた後、搬送手段を制御してワーク保持手段を搬送することが好ましい。
【0012】
本発明の一形態によれば、ベースに対し、吸着手段を鉛直方向に移動自在に支持する支持部材を備え、支持部材は、吸着手段を上方に向けて付勢可能な第1付勢部材と、一対の吸着手段を下方に向けて付勢可能な第2付勢部材と、を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、表面が反っているようなワークであってもワークを直接保持して搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態のワーク搬送装置が適用されたダイシング装置の斜視図
図2図1のダイシング装置の加工部の構成を示した斜視図
図3】ワーク搬送装置の制御装置の機能ブロック図
図4】ワーク搬送装置を構成する吸着ユニットの全体斜視図
図5図4に示した吸着ユニットの正面図
図6】ワークを搬送する動作を時系列的に示した説明図
図7】ワークを搬送する動作を時系列的に示した説明図
図8】フローティング支持機構の構造を示した正面図
図9図8に示したフローティング支持機構の斜視図
図10図8に示したフローティング支持機構の斜視図
図11】フローティング支持機構の作用を示した説明図
図12】ワークとチャックテーブルの形状のバリエーションを示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に従って本発明に係るワーク搬送装置の好ましい実施形態について説明する。なお、実施形態では、加工装置としてダイシング装置を例示して説明する。
【0016】
図1は、実施形態のワーク搬送装置10が設けられたダイシング装置12の斜視図である。
【0017】
図1に示すように、ダイシング装置12は、上記のワーク搬送装置10の他、半導体ウェーハ等のワークWを加工する加工部14と、加工済みのワークWをスピン洗浄する洗浄部16と、複数枚のワークWを収納したカセットが載置されるロードポート18とを備えている。なお、ダイシング装置12によって加工されるワークWは、その上面である表面に電子部品(不図示)が形成されたものである。
【0018】
本明細書では、3軸方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向)の三次元直交座標系を用いて説明する。図1に示すX軸方向は水平方向であって、後述するXテーブル20(図2参照)の切削送り方向を指している。また、Y軸方向は、水平方向のうちX軸方向に直交する方向であって、後述するブレード22のインデックス送り方向を指している。更に、Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向に直交する鉛直方向であって、ブレード22の切り込み送り方向を指している。
【0019】
図2は、加工部14の構成を示した斜視図である。
【0020】
図2に示すように加工部14は、Xベース24の一対のXガイドレール26、26にガイドされたXテーブル20であって、リニアモータ28によってX軸方向に移動されるXテーブル20を有する。このXテーブル20上には、θ方向に回転する回転テーブル30を介してワークテーブル(チャックテーブル)32が設けられている。
【0021】
ワークテーブル32は、一例として円盤状に構成されており、その上面には水平方向に平坦な吸着面34を備え、この吸着面34にワークW(図1参照)が真空吸着されて固定される。
【0022】
Xベース24の上方には、Xベース24を跨ぐようにYベース36が立設される。Yベース36の正面には、一対のYガイドレール38、38にガイドされた一対のYテーブル40、40であって、Y軸方向に移動自在な一対のYテーブル40、40が設けられる。このYテーブル40、40は、Yベース36に設けられた不図示のY軸駆動機構部によってY軸方向に移動される。
【0023】
Yテーブル40、40には、不図示のZ軸駆動機構部によってZ軸方向に駆動されるZテーブル44、44が設けられている。Zテーブル44、44には高周波モータ内蔵型のスピンドルモータ46、46がY軸方向において対向した状態で固定され、スピンドルモータ46、46のスピンドル48、48の先端にブレード22、22がY軸方向において対向した状態で固定されている。これらのスピンドルモータ46、46は、Zテーブル44、44を介してYテーブル40、40に支持されており、スピンドル48、48は、その軸心がYテーブル40、40の移動方向であるY軸方向に沿って配置されている。
【0024】
ブレード22は、一例として、ダイヤモンド砥粒又はCBN(cubic boron nitride)砥粒をニッケルで電着した電着ブレードを例示する。また、電着ブレードの他、金属粉末を混入した樹脂で結合したメタルレジンボンドのブレードも使用することができる。このブレード22は、スピンドルモータ46によって、例えば、6000rpm~80000rpmで高速回転される。
【0025】
このように構成された加工部14によれば、ワークテーブル32はXテーブル20によってX軸方向に切削送りされるとともに回転テーブル30によってθ方向に回転される。そして、ブレード22、22は、Y軸駆動機構部によってY軸方向にインデックス送りされるとともにZ軸駆動機構部によってZ軸方向に切り込み送りされる。このような加工部14の動作によってワークWが碁盤目状に切削加工される。
【0026】
図1に戻り、洗浄部16は、上面に吸着面50が設けられたスピンナテーブル(チャックテーブル)52と、スピンナテーブル52上のワークへ向けて洗浄水を噴射するノズル(不図示)とを備えている。加工部14によって加工されたワークWは、ワーク搬送装置10によってワークテーブル32からスピンナテーブル52に搬送され、その後、吸着面50で吸着された後、回転されてノズルから噴射される洗浄水によって洗浄される。
【0027】
次に、実施形態のワーク搬送装置10について説明する。
【0028】
図1に示すように、ワーク搬送装置10は、アーム60と吸着ユニット62とを備えている。ここで、吸着ユニット62は、本発明のワーク保持手段の一例である。
【0029】
実施形態のワーク搬送装置10は、図3に示すように、ダイシング装置12を制御する制御装置63によってその動作が制御されている。
【0030】
図3は、ダイシング装置12の制御装置63の機能ブロック図である。なお、図3の機能ブロック図では、ワーク搬送装置10に関連した要素のみ図示し、ワーク搬送装置10に直接関連しない要素については図示を省略している。ここで、制御装置63は、本発明の制御部の一例である。
【0031】
図3に示すように、制御装置63は、不図示のCPU(central processing unit)を含む各演算処理回路と、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)等のメモリと、キーボード等の入力装置と、モニタ等の出力装置とを備えている。制御装置63は、メモリに記憶されたプログラムがCPUによって実行されることにより、制御装置63の各部の機能が実現される。図3に示すように、制御装置63は、統括制御部63Aを有し、この統括制御部63Aは搬送制御部63B、間隔変更制御63C、吸引制御部63Dを統括制御する。
【0032】
搬送制御部63Bは、搬送装置66を制御する。搬送装置66は、アーム60をX-Yの水平面に沿って水平移動させる水平駆動部と、アーム60を鉛直方向に昇降移動させる昇降駆動部とを有している。具体的に説明すると、水平駆動部を構成するモータの出力軸に、アーム60の基端部に鉛直軸に沿って配設された回転軸64(図1参照)が連結されている。これによってアーム60は、水平駆動部のモータによって水平移動される。また、昇降駆動部は、アーム60を鉛直方向に移動させるモータを備えている。これによってアーム60は、昇降駆動部のモータによって鉛直方向に移動される。ここで、搬送装置66は、本発明の搬送手段の一例である。
【0033】
間隔変更部63Bは、後述する吸着パッド74、74(図5参照)の間隔を変更するためにシリンダ装置76、76を制御する。ここで、シリンダ装置76、76は、本発明の間隔変更手段の一例である。
【0034】
吸引制御部63Dは、吸着パッド74、74(図5参照)に吸引力を与える吸引装置68を制御する。
【0035】
図1に戻り、アーム60の先端部には、連結部材70を介して吸着ユニット62が設けられている。このような構成より、吸着ユニット62は、図3に示した搬送装置66によって水平方向及び鉛直方向に搬送される。
【0036】
図4は、吸着ユニット62の全体構成を示す斜視図であり、図5は、図4に示した吸着ユニット62の正面図である。
【0037】
図4及び図5に示すように、吸着ユニット62は、ベース72と、一対の吸着パッド74、74と、一対のシリンダ装置76、76とを備えている。ここで、ベース72は、本発明のベースの一例であり、一対の吸着パッド74、74は、本発明の一対の吸着手段の一例である。
【0038】
ベース72は、例えば、矩形状の板状に構成されている。また、ベース72は、その中央部に連結部78を備えており、この連結部78に連結部材70(図1参照)を連結することによりアーム60の先端部に連結される。なお、図4において、ベース72は、その長辺72AがX軸方向に沿って配置され、その短辺72BがY軸方向に沿って配置されている。
【0039】
一対の吸着パッド74、74は、長辺72A方向においてベース72に互いに対向する短辺部72B、72Bに配置されることにより、ベース72に互いに離間して設けられるとともに、それぞれフック80、80を介してベース72に設けられている。これらの吸着パッド74は、フック80の下部80Aに、その吸引口82を上方に向けた状態で固定されている。吸着パッド74は、一例として直方体形状に構成されており、その長辺74Aが短辺72Bに沿った姿勢でフック80に固定されている。また、吸引口82は長辺74Aに沿って複数配置されている。
【0040】
フック80は、その中央部にベース72が貫通される開口部80Bを有している。また、フック80の上部80Cの下面にはリニアガイド84が固定されている。このリニアガイド84は、ベース72の上面に長辺72Aに沿って配置されたガイドレール86に移動自在に係合されている。これにより、一対の吸着パッド74、74はフック80、80とともに、長辺72A方向において、互いに近接した近接位置と互いに離隔した離間位置との間で移動自在に設けられる。
【0041】
また、フック80の上部80Cの上面には、L字形状のブラケット88が固定されており、このブラケット88にシリンダ装置76のピストン90(図5参照)が固定されている。このシリンダ装置76は、ピストン90の軸線方向が長辺72A方向に沿うように、基台92に固定され、この基台92はガイドレール86を跨いでベース72の上面に固定されている。したがって、一対のシリンダ装置76、76によってピストン90、90が同時に伸長及び収縮されると、一対の吸着パッド74、74はフック80、80とともに、上記の離間位置と近接位置との間で移動され、吸着パッド74、74間の間隔が変更される。
【0042】
図5に示すように、シリンダ装置76、76によってピストン90、90が同時に収縮動作して吸着パッド74、74が近接位置に配置されると、ワークWの裏面(下面)の両側の縁部WA、WAが吸着パッド74、74の吸引口82、82によって吸着保持される。この縁部WA、WAは、ワークテーブル32の吸着面34、及びスピンナテーブル52の吸着面50に吸着される被吸着面WBではなく、被吸着面WBの外側に位置する非吸着面として構成されている。
【0043】
次に、前記の如く構成されたワーク搬送装置10の作用について説明する。
【0044】
図6から図7に示すワーク搬送装置10の動作図は、ワークテーブル32からスピンナテーブル52にワークWを搬送する動作を時系列的に示したものである。また、図6から図7における、アーム60の搬送動作、吸着パッド74、74の間隔変更動作、及び吸着パッド74、74の吸着動作は、図3に示した制御装置63の統括制御部63Aが、搬送制御部63B、間隔変更制御63C、及び吸引制御部63Dを各々制御することにより実行されるものである。
【0045】
まず、図6の6Aは、ワークテーブル32に吸着保持されているワークWをワーク搬送装置10によって搬出する前の初期状態を示している。この初期状態では、アーム60はワークテーブル32から上方に退避した退避位置に配置され、シリンダ装置76、76によって吸着パッド74、74(フック80、80も同様)は近接位置に配置されている。なお、この時の吸着パッド74、74の吸引動作はOFF状態であり、ワークテーブル32の吸引状態はON状態であり、スピンナテーブル52(図1参照)の吸引状態はOFF
状態である。
【0046】
次に、図6の6Bは、シリンダ装置76、76のピストン90、90をそれぞれ伸張させて吸着パッド74、74(フック80、80も同様)を近接位置から離間位置に配置させた状態を示している。この時の吸着パッド74、74、ワークテーブル32及びスピンナテーブル52の各々の吸引状態も図6の6Aの初期状態のままである。
【0047】
次に、図6の6Cは、アーム60を搬送装置66(図3参照)によって下降移動させてフック80、80をフック開閉動作位置に配置させた状態を示している。この時の吸着パッド74、74、ワークテーブル32及びスピンナテーブル52の各々の吸引状態も図6の6Aの初期状態のままである。なお、フック開閉動作位置とは、吸着パッド74の吸引口82(図4参照)がワークテーブル32の吸着面34よりも下方に位置した位置である。
【0048】
次に、図6の6Dは、シリンダ装置76、76のピストン90、90をそれぞれ収縮させて吸着パッド74、74(フック80、80も同様)を離間位置(図6の6B参照)から近接位置に配置させた状態を示している。この動作によって、ワークWの反った縁部WA、WAの直下位置に吸着パッド74、74の吸引口82、82が配置される。この時の吸着パッド74、74、ワークテーブル32及びスピンナテーブル52の各々の吸引状態も図6の6Aの初期状態のままである。
【0049】
次に、図6の6Eは、ワークWの受け取り位置までアーム60を搬送装置66(図3参照)によって上昇移動させて、吸着パッド74、74の吸引動作をOFF状態からON状態に切り替えた状態を示している。また、図6の6Eは、ワークテーブル32の吸引状態をON状態からOFF状態に切り替えるとともに、ワークテーブル32の吸着面34からエアを外部に噴射するエアブロー動作に切り替えた状態を示している。これにより、ワークテーブル32に吸着されたワークWを吸着パッド74、74側に円滑に受け渡しすることができる。なお、ワークWの受け取り位置とは、反った縁部WA、WAに吸引口82が当接される位置であって、ワークテーブル32の吸着面34よりも上方に設定された位置である。
【0050】
次に、図7の7Aは、アーム60を昇降装置68(図3参照)によって上昇移動させてワークWを水平方向搬送位置に配置させた状態を示している。この時の吸着パッド74、74の吸引動作はON状態であり、ワークテーブル32はエアブロー動作が停止されて吸引状態がOFF状態となっている。
【0051】
次に、図7の7Bは、アーム60を搬送装置66(図3参照)によって水平移動させてワークWをスピンナテーブル52の直上位置に配置させ、その後、スピンナテーブル52へのワークWの受け渡し位置までアーム60を搬送装置66によって下降移動させた後、スピンナテーブル52の吸引状態をOFF状態からON状態に切り替えた状態を示している。また、図7の7Bでは、吸着パッド74、74がスピンナテーブル52の吸着面50に向かう下方向において、吸着面50と同一面上の位置まで吸引口82(図4参照)が移動されていることが示されている。
【0052】
これにより、ワークWの中央部分が下方に凸状に反った形状のワークWであっても、縁部WA、WAを吸着した吸引口82(図4参照)を、吸着面50と同一面上の位置まで移動したので、スピンナテーブル52に確実に吸着保持させることができる。
【0053】
次に、図7の7Cは、吸着パッド74、74の吸引状態をON状態からOFF状態に切り替えるとともに、アーム60を搬送装置66(図3参照)によって下降移動させながら吸引口82からエアを外部に噴射するエアブロー動作に切り替えた状態を示している。これにより、吸引口82と縁部WA、WAとの吸着を円滑に解除することができる。
【0054】
次に、図7の7Dは、シリンダ装置76、76のピストン90、90をそれぞれ伸張させて吸着パッド74、74(フック80、80も同様)をフック開閉動作位置(図6の6C参照)に配置させた状態を示している。この動作によってワークWの縁部WA、WAの直下位置から吸着パッド74、74が外側に退避する。
【0055】
次に、図7の7Eは、スピンナテーブル52からアーム60を搬送装置66(図3)によって上昇移動させた状態を示している。この後、ワークWは、スピンナテーブル52の回転動作によって洗浄される。そして、洗浄終了後、ワークWはワーク搬送装置10によって保持されてロードポート18(図1参照)のカセットに収納される。なお、ワーク搬送装置10によるスピンナテーブル52からロードポート18への搬送方法は、先に説明したワークテーブル32からスピンナテーブル52への搬送と略同様なのでその説明は省略する。
【0056】
このように実施形態のワーク搬送装置10によれば、ワークWを直接保持する吸着ユニット62と、吸着ユニット62を搬送する搬送装置66と、を備え、吸着ユニット62は、アーム60に連結されたベース72と、ベース72に互いに対向する位置に離間して設けられ、ワークWの下面を吸着する一対の吸着パッド74、74と、一対の吸着パッド74、74の間隔を変更するシリンダ装置76、76と、を有しているので、表面に反りのあるワークWであっても直接保持して搬送することができる。
【0057】
また、実施形態のワーク搬送装置10によれば、吸着パッド74の吸引口82によってワークWの裏面の縁部WA、WAを吸着した後、吸着面50と同一面上の位置まで吸引口82、82を下方向に移動させたので、反りのあるワークWをスピンナテーブル52に確実に吸着させることができる。
【0058】
また、好ましい態様としては、吸着パッド74、74がスピンナテーブル52の吸着面50に向かう下方向において、上記の同一面上の位置を超えた位置まで吸引口82を移動させることが好ましい。これにより、縁部WA、WAを吸着パッド74、74で吸着した状態でワークWの被吸着面WB(図5参照)をスピンナテーブル52の吸着面50に押え付けることができるので、ワークWをスピンナテーブル52に効果的に吸着保持させることができる。なお、上記の同一面上の位置を超えた位置とは、例えば、同一面上の位置を超えた位置まで吸引口82を移動させた場合でも、ワークWが損傷しない位置であり、その位置はワークWの剛性等によって設定される。
【0059】
図8は、吸着パッド74をベース72にフローティング状態で支持するフローティング支持機構100の構造を示した正面図である。また、図9及び図10は、図8に示したフローティング支持機構100をそれぞれ異なる方向から見た斜視図である。
【0060】
図8から図10に示すように、フローティング支持機構100は、一対の吸着パッド74、74をベース72に対し鉛直方向に移動自在に支持するパッド支持部材102、102を有している。
【0061】
図9に示すように、パッド支持部材102は、シリンダ装置76のピストン90に連結された矩形状のベース104と、ベース104に連結されるとともに下部に吸着パッド74が固定されたクランク形状のブラケット106と、鉛直方向に沿って配置されたシャフト112と、を有している。
【0062】
図10に示すように、ブラケット106は、その上部に鉛直方向に沿った一対の長孔114、114が形成され、この長孔114、114に挿入されたピン116、116を介してベース104に連結される。これにより、ベース104とブラケット106は、長孔114、114とピン116、116とからなる直動ガイド部材によって、相対的に鉛直方向に移動自在に連結される。
【0063】
図8に示すように、シャフト112は、ベース104の貫通孔108にスリーブベアリング110(図11参照)を介して鉛直方向に貫通配置されている。これにより、ベース104とシャフト112は、スリーブベアリング110によって相対的に鉛直方向に移動自在に連結されている。また、シャフト112の下部は、ブラケット106の水平部107にネジ118(図11参照)によって固定されている。
【0064】
このように構成されたパッド支持部材102は、図8に示すように、吸着パッド74を上方に付勢可能なコイルバネ120と、吸着パッド74を下方に付勢可能なコイルバネ122とを備えている。
【0065】
コイルバネ120は、シャフト112に外装されてシャフト112の上部フランジ部113とベース104の上面との間に配置される。また、コイルバネ122は、シャフト112に外装されてベース104の下面とブラケット106の水平部107との間に配置される。このようなコイルバネ120、122を備えることにより、吸着パッド74は、ブラケット106及びシャフト112を介してベース104にフローティング状態で支持される。ここで、コイルバネ120、122は、本発明の第1付勢部材及び第2付勢部材の一例である。
【0066】
次に、前記の如く構成されたフローティング支持機構100の作用について、図11に示す断面図を用いて説明する。
【0067】
図11に示す断面図は、一例としてワークテーブル32からワークWを持ち上げる場合(図6の6E参照)を示したものである。なお、図11に示すワークWは、中央部分が下方に凸状に反った形状のワークを対象としている。
【0068】
図11の11Aで示すように、吸着パッド74がワークの裏面の縁部WAに接触した後、ベース72(図9参照)の上昇移動によりベース104を介して吸着パッド74を上昇させようとすると、吸着パッド74は縁部WAに当接しているため、吸着パッド74とブラケット106とシャフト112は上方への移動が規制され、ベース104がシャフト112に沿って上昇移動していく。そうすると、図11の11Bで示すように、コイルバネ120がベース104の上昇量L分だけ図11の11Aの状態から収縮するので、そのときに生じたコイルバネ120の付勢力がシャフト112とブラケット106を介して吸着パッド74に伝達されて、吸着パッド74が上方に付勢される。これにより、コイルバネ120の付勢力を利用して吸着パッド74をワークWの縁部WAに効果的に押し付けることができる。
【0069】
また、縁部WAの反り量が縁部WAの全域において均一ではない場合、このように吸着パッド74をフローティング支持機構100で支持し、図11の11Bで示すようにベース104を上昇移動させることで全ての吸着パッド74を縁部WAに吸着させることができる。また、ベース104を上昇移動させたときに吸着パッド74から縁部WAにかかる余分な力はコイルバネ120が収縮して吸収するので、ベース104の上昇に起因する縁部WAの損傷を防止することができる。
【0070】
また、図11の11Bの状態からワークテーブル32の吸引状態をON状態からOFFに切り替えると、シャフト112とブラケット106とがコイルバネ120の付勢力により上方に移動して吸着パッド74が上方に移動する。これにより、コイルバネ120の付勢力を利用してワークWをワークテーブル32から効果的に持ち上げることができる。
【0071】
一方、吸着パッド74で縁部WAが吸着されたワークWをスピンナテーブル52に吸着させる場合(図7の7B参照)、アーム60によってベース104を下降移動させていく。このとき、吸引口82を吸着面50と同一面上の位置を超えた位置まで移動させようとすると、ワークWの被吸着面WBはスピンナテーブル52に接触しているため、吸着パッド74とブラケット106とシャフト112は下方への移動が規制され、ベース104がシャフト112に沿って下降移動していく。そうすると、コイルバネ122がベース104の下降量分だけ図11の11Aの状態から収縮するので、そのときに生じたコイルバネ122の付勢力がブラケット106を介して吸着パッド74に伝達されて、吸着パッド74が下方に付勢される。これにより、コイルバネ122の付勢力を利用してワークWをスピンナテーブル52に効果的に押し付けることができる。
【0072】
また、中央部分が上方に凸状に反った形状のワークW又は反りのないワークWの場合であって、ワークテーブル32からワークWを持ち上げる場合、吸着パッド74をワークWの裏面よりも少し高い位置に移動させるが、このとき、吸着パッド74から縁部WAにかかる余分な力はコイルバネ120が収縮して吸収するので、ベース104の上昇に起因する縁部WAの損傷を防止することができる。
【0073】
また、中央部分が上方に凸状に反った形状のワークW又は反りのないワークWの場合であって、吸着パッド74で縁部WAが吸着されたワークWをスピンナテーブル52に吸着させる場合、吸着パッド74をワークWの裏面よりも少し低い位置に移動させるが、このとき、吸着パッド74から縁部WAにかかる余分な力はコイルバネ122が収縮して吸収するので、ベース104の下降に起因する縁部WAの損傷を防止することができる。
【0074】
以上の如く、上記のフローティング支持機構100をワーク搬送装置10に採用することにより、中央部分が下方に凸状に反った形状のワークWであっても、また、中央部分が上方に凸状に反った形状のワークWであっても、それらの縁部WAを効果的に吸着することができ、且つワークWをチャックテーブルに効果的に押し付けることができる。
【0075】
図12の12Aから12Fは、本発明のワーク搬送装置に適用可能なワークとチャックテーブルのバリエーションを示した説明図である。なお、図12に示すワークにはW1~W6の符号を付し、チャックテーブルにはC1~C6の符号を付して説明する。
【0076】
図12の12Aに示すワークW1は、平面視において略正方形に構成され、チャックテーブルC1はワークW1の外形よりも若干小さい略正方形に構成されている。図12の12Aでは4つの吸着パッド74が示されており、ワークW1の互いに対向する2つの縁部をそれぞれ2つの吸着パッド74によって吸着している。
【0077】
図12の12Bに示すワークW2は、平面視において略正方形に構成され、チャックテーブルC2はワークW2の外形と略等しい略正方形に構成されている。同図では4つの吸着パッド74が示されており、ワークW2の互いに対向する2つの縁部をそれぞれ2つの吸着パッド74によって吸着している。また、チャックテーブルC2の互いに対向する2つの縁部には、4つの吸着パッド74が収容される凹状の逃げ溝130が形成されている。このような逃げ溝130をチャックテーブルC2に備えることにより、チャックテーブルC2の大きさをワークW2の大きさに近づけることができるので、チャックテーブルC2によるワークW2の保持力を向上させることができる。
【0078】
図12の12Cに示すワークW3は、平面視において八角形に構成され、チャックテーブルC3はワークW3の外形よりも若干小さい八角形に構成されている。同図では4つの吸着パッド74が示されており、ワークW3の互いに対向する2つの縁部をそれぞれ2つの吸着パッド74によって吸着している。
【0079】
図12の12Dに示すワークW4は、平面視において八角形に構成され、チャックテーブルC4はワークW4の外形と略等しい八角形に構成されている。同図では4つの吸着パッド74が示されており、ワークW4の互いに対向する2つの縁部をそれぞれ2つの吸着パッド74によって吸着している。また、チャックテーブルC4の互いに対向する2つの縁部には、4つの吸着パッド74が収容される凹状の逃げ溝132が形成されているので、図12の12Bに示したチャックテーブルC2と同様にチャックテーブルC4によるワークW4の保持力を向上させることができる。
【0080】
図12の12Eに示すワークW5は、平面視において円形に構成され、チャックテーブルC5はワークW5の外形よりも若干小さい円形に構成されている。同図では4つの吸着パッド74が示されており、ワークW5の互いに対向する周縁部をそれぞれ2つの吸着パッド74によって吸着している。
【0081】
図12の12Fに示すワークW6は、平面視において円形状に構成され、チャックテーブルC6はワークW6の外形と略等しい円形に構成されている。同図では4つの吸着パッド74が示されており、ワークW6の互いに対向する周縁部をそれぞれ2つの吸着パッド74によって吸着している。また、チャックテーブルC6の互いに対向する周縁部には、4つの吸着パッド74が収容される凹状の逃げ溝134が形成されているので、図12の12B及び図12の12Dに示したチャックテーブルC2、C4と同様にチャックテーブルC6によるワークW6の保持力を向上させることができる。
【0082】
なお、実施形態では、表面に反りのあるワークWを搬送対象としたが、搬送対象のワークWはこれに限定されるものではない。すなわち、本発明のワーク搬送装置によれば、表面に凹凸のあるワークであっても、厚みにばらつきのあるワークであっても、反りや凹凸がなくチャックテーブルに対して表面が平行であるワークであっても直接保持して搬送することができる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0084】
10…ワーク搬送装置、12…ダイシング装置、14…加工部、16…洗浄部、18…ロードポート、20…Xテーブル、22…ブレード、24…Xベース、26…Xガイドレール、28…リニアモータ、30…回転テーブル、32…ワークテーブル、34…吸着面、36…Yベース、38…Yガイドレール、40…Yテーブル、44…Zテーブル、46…スピンドルモータ、48…スピンドル、50…吸着面、52…スピンナテーブル、60…アーム、62…吸着ユニット、63…制御装置、64…回転軸、66…搬送装置、68…吸引装置、70…連結部材、72…ベース、74…吸着パッド、76…シリンダ装置、78…連結部、80…フック、82…吸引口、84…リニアガイド、86…ガイドレール、88…ブラケット、90…ピストン、92…基台、100…フローティング支持機構、102…パッド支持部材、104…ベース、106…ブラケット、107…水平部、108…貫通孔、110…スリーブベアリング、112…シャフト、114…長孔、116…ピン、118…ネジ、120…コイルバネ、122…コイルバネ
図1
図2
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図6
図7
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図10
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