(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126547
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】光学部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/02257 20210101AFI20230831BHJP
H01S 5/0239 20210101ALI20230831BHJP
H01S 5/024 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
H01S5/02257
H01S5/0239
H01S5/024
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117100
(22)【出願日】2023-07-18
(62)【分割の表示】P 2019561611の分割
【原出願日】2018-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2017249795
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】三次 智紀
(72)【発明者】
【氏名】田中 政信
(72)【発明者】
【氏名】湯藤 祐且
(72)【発明者】
【氏名】原 章徳
(72)【発明者】
【氏名】野口 輝彦
(57)【要約】
【課題】レーザ光の漏れに繋がる異常をより精度良く検出可能である光学部材、光学部材を用いた発光装置及び光学部材の製造方法を提供すること。
【解決手段】光学部材1Aは、光取出面2aとなる第1面を有し、励起光であるレーザ光を異なる波長の光に変換可能である変換部材2と、変換部材2を保持し、第1面と連続する第2面を有する保持部材3と、第1面から第2面にかけて連続して形成された線状の配線4と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光照射面又は光取出面となる第1面を有し、励起光であるレーザ光を異なる波長の光に変換可能である変換部材と、
前記変換部材を保持し、前記第1面と連続する第2面を有する保持部材と、
前記第1面から前記第2面にかけて連続して形成された線状の配線と、
を備える光学部材。
【請求項2】
前記配線は、その一部が平面視で複数の屈曲部を有する形状をなし、複数の前記屈曲部のうち少なくとも1つが前記第2面に形成されている請求項1に記載の光学部材。
【請求項3】
前記配線は、その一部が平面視で渦巻形状を有し、その一部が前記第2面に形成されている請求項1に記載の光学部材。
【請求項4】
前記保持部材は、光反射性セラミックスからなり、
前記変換部材は、蛍光体を含有するセラミックスからなる請求項1から3のいずれか1項に記載の光学部材。
【請求項5】
前記配線は、透光性導電材料からなる請求項1から4のいずれか1項に記載の光学部材。
【請求項6】
前記配線は、酸化インジウムスズからなる請求項5に記載の光学部材。
【請求項7】
前記配線は、厚み50~200nmである請求項1から6のいずれか1項に記載の光学部材。
【請求項8】
前記配線は、幅5~50μmである請求項1から7のいずれか1項に記載の光学部材。
【請求項9】
前記第1面及び第2面を覆うように形成された透光性膜を、さらに備え、
前記配線は前記透光性膜を介して前記第1面及び第2面に形成されている請求項1から8のいずれか1項に記載の光学部材。
【請求項10】
前記第1面は光取出面である請求項1から9のいずれか1項に記載の光学部材。
【請求項11】
前記第1面及び前記配線を覆うように形成された透光性の保護膜を、さらに備える請求項10に記載の光学部材。
【請求項12】
前記保護膜は、酸化ケイ素と、酸化ケイ素よりも高屈折率の材料とを含有する請求項11に記載の光学部材。
【請求項13】
前記第1面は光照射面であり、
前記配線の一部を覆う接合用の第1金属層と、
前記第1金属層と前記配線とを絶縁する絶縁膜と、
前記第1金属層と電気的に接続されたリーク確認用電極とを、さらに備える、請求項1から12のいずれか1項に記載の光学部材。
【請求項14】
前記保持部材及び前記変換部材の前記光照射面の側に配置された透光性の放熱部材をさらに備える請求項1から13のいずれか1項に記載の光学部材。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の光学部材と、
前記変換部材の前記光照射面にレーザ光を照射するように配置されるレーザ素子と、
を備える発光装置。
【請求項16】
前記レーザ素子を包囲するパッケージをさらに備え、
前記レーザ光が前記変換部材に到達するように、前記光学部材が前記パッケージに固定されている請求項15に記載の発光装置。
【請求項17】
前記配線の抵抗値の変化を検出する検出回路をさらに備える請求項15又は16に記載の発光装置。
【請求項18】
変換部材と保持部材とが一体に形成された焼結体を準備する工程と、
前記変換部材の第1面と、前記第1面から連続する前記保持部材の第2面と、が得られるように、前記変換部材及び前記保持部材の一部を除去する工程と、
前記第1面から前記第2面に連続して線状の配線を形成する工程と、
を含む光学部材の製造方法。
【請求項19】
前記変換部材及び前記保持部材の一部を除去する工程の後であって前記配線を形成する工程の前に、前記第1面及び前記第2面を熱処理する工程を、さらに含む請求項18に記載の光学部材の製造方法。
【請求項20】
前記熱処理する工程の後であって前記配線を形成する工程の前に、
熱処理された前記第1面及び前記第2面を覆うように透光性膜を形成する工程を、さらに含み、
前記配線を形成する工程では、前記透光性膜に前記配線を形成する請求項19に記載の光学部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学部材、発光装置及び光学部材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ素子を使った発光装置が知られている。このような発光装置では、レーザ光が当たる蛍光体板表面に導電性細線又は導電性線路を形成することで、蛍光体板のクラック等を検知し、レーザ光の漏れの防止を図っている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-60159号公報
【特許文献2】国際公開第2017/012763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような発光装置においては、蛍光体板のクラック等の検出は可能であるが、蛍光体板とその保持部材との境界部近傍でのクラック等の検出は困難である。また、発光装置の使用中に蛍光体板がずれたとしても、導電性細線又は導電性線路を外部回路と電気的に接続するためのワイヤ等が断線しない程度のズレであれば、異常と検出されない。これらの理由から、レーザ光の漏れ防止が不十分であるという問題があった。
【0005】
そこで、本開示に係る実施形態は、レーザ光の漏れに繋がる異常をより精度良く検出可能である光学部材、光学部材を用いた発光装置及び光学部材の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の実施形態に係る光学部材は、光照射面又は光取出面となる第1面を有し、励起光であるレーザ光を異なる波長の光に変換可能である変換部材と、前記変換部材を保持し、前記第1面と連続する第2面を有する保持部材と、前記第1面から前記第2面にかけて連続して形成された線状の配線と、を備える。
【0007】
本開示の実施形態に係る発光装置は、前記光学部材と、前記変換部材の前記光照射面にレーザ光を照射するように配置されるレーザ素子と、を備える。
【0008】
本開示の実施形態に係る光学部材の製造方法は、変換部材と保持部材とが一体に形成された焼結体を準備する工程と、前記変換部材の第1面と、前記第1面から連続する前記保持部材の第2面と、が得られるように、前記変換部材及び前記保持部材の一部を除去する工程と、前記第1面から前記第2面に連続して線状の配線を形成する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示の実施形態に係る光学部材及び発光装置によれば、レーザ光の漏れに繋がる異常をより精度良く検出することができる。本開示の実施形態に係る光学部材の製造方法によれば、レーザ光の漏れに繋がる異常をより精度良く検出可能な光学部材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る光学部材を用いた発光装置の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1の保持部材の光取出面側の一部を示す平面図である。
【
図3】
図1のIII-III線における断面図である。
【
図4】配線の抵抗値の変化を検出する検出回路の構成を示す図である。
【
図5A】第1実施形態に係る光学部材の製造方法を説明するための図である。
【
図5B】第1実施形態に係る光学部材の製造方法を説明するための図である。
【
図5C】第1実施形態に係る光学部材の製造方法を説明するための図である。
【
図6】第2実施形態に係る光学部材を用いた発光装置の構成を示す斜視図である。
【
図10】第3実施形態に係る光学部材の構成を示す光取出面側の平面図である。
【
図13】
図10のXIII-XIII線における断面図である。
【
図14】第1実施形態に係る光学部材の変形例を示す断面図である。
【
図15】第2実施形態に係る光学部材の変形例を示す断面図である。
【
図16】第3実施形態に係る光学部材の変形例を示す断面図である。
【
図17A】第1実施形態に係る光学部材の変形例を示す光取出面側の平面図である。
【
図17B】第1実施形態に係る光学部材の変形例を示す一部拡大図である。
【
図17C】第1実施形態に係る光学部材の変形例を示す一部拡大図である。
【
図18A】焼結体の第1の製造方法を説明するための図である。
【
図18B】焼結体の第1の製造方法を説明するための図である。
【
図18C】焼結体の第1の製造方法を説明するための図である。
【
図19A】焼結体の第2の製造方法を説明するための図である。
【
図19B】焼結体の第2の製造方法を説明するための図である。
【
図19C】焼結体の第2の製造方法を説明するための図である。
【
図19D】焼結体の第2の製造方法を説明するための図である。
【
図20A】焼結体の第3の製造方法を説明するための図である。
【
図20B】焼結体の第3の製造方法を説明するための図である。
【
図20C】焼結体の第3の製造方法を説明するための図である。
【
図20D】焼結体の第3の製造方法を説明するための図である。
【
図21A】光学部材の他の製造方法を説明するための図である。
【
図21B】光学部材の他の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施形態を、以下に図面を参照しながら説明する。但し、以下に示す形態は、本実施形態の技術思想を具現化するための光学部材及び発光装置を例示するものであって、以下に限定するものではない。また、実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさ、位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。また、以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており詳細説明を適宜省略する。
【0012】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る光学部材、発光装置及び光学部材の製造方法について説明する。
図1~
図4に示すように、光学部材1Aは、変換部材2と、保持部材3と、配線4と、を備える。また、光学部材1Aは、放熱部材9を備えることが好ましい。
発光装置20は、光学部材1Aと、レーザ素子25と、を備え、パッケージ21を備えることが好ましい。なお、発光装置20は、検出回路30を備えることがより好ましい。
以下、光学部材1A及び発光装置20の各構成要素について説明する。
【0013】
<光学部材>
(変換部材)
変換部材2は、光取出面2aとなる第1面を有し、レーザ素子25が出射する励起光であるレーザ光を異なる波長の光に変換可能にする部材である。変換部材2は、光取出面2a(第1面)と反対となる面を、レーザ素子25からのレーザ光を入射する光照射面2bとしている。変換部材2の表面側となる光取出面2a(第1面)上に配線4が形成されているため、配線4に通電するための外部電源や回路への接続が容易となる。
【0014】
変換部材2は、レーザ光の照射により分解されにくいように、無機材料からなることが好ましい。無機材料からなる変換部材2としては、レーザ光を波長変換可能な蛍光体を含有するセラミックス又はガラス、蛍光体の単結晶が挙げられる。また、変換部材2は、融点の高い材料が好ましく、融点は1300~2500℃が好ましい。このような耐光性及び耐熱性の良好な材料によって変換部材2が形成されていることにより、レーザ光のような高密度の光が照射されても変質が生じ難く、保持部材3に保持される際の熱によっても変形および変色等が生じ難くなる。よって、変換部材2は、耐光性及び耐熱性の良好な材料で形成されることが好ましい。
【0015】
変換部材2として蛍光体を用いる場合は、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)、セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット(LAG)、ユウロピウム及び/又はクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム(CaO-Al2O3-SiO2)、ユウロピウムで賦活されたシリケート((Sr,Ba)2SiO4)、αサイアロン蛍光体、βサイアロン蛍光体等が挙げられる。蛍光体としては、耐熱性が良好な蛍光体であるYAGを用いることが好ましい。
【0016】
変換部材2としてセラミックスを用いる場合は、蛍光体と酸化アルミニウム(Al2O3、融点:約1900℃~2100℃)等の透光性材料とを焼結させたものが挙げられる。この場合、蛍光体の含有量は、セラミックスの総体積に対して0.05~50体積%とすることが好ましく、1~30体積%がより好ましい。また、このような透光性材料を用いずに蛍光体の紛体を焼結させることにより形成する、実質的に蛍光体のみからなるセラミックスを変換部材2として用いてもよい。
【0017】
(保持部材)
保持部材3は、変換部材2を保持し、変換部材2の光取出面2a(第1面)と同一平面上に連続する表面3a(第2面)を有する部材である。保持部材3は、その厚み方向に貫通する貫通孔3bを有し、その貫通孔3bに変換部材2が挿入された状態で変換部材2と連結されることで、変換部材2を保持している。貫通孔3bの形状としては、変換部材2の形状に対応させることが好ましく、例えば、柱形状、錐形状、円錐台、角錐台又はこれらを組み合わせた形状とすることができ、平面視で三角形及び四角形等の多角形のほか、円形または楕円形とすることができる。
【0018】
保持部材3の厚みは、強度を考慮すると0.2mm以上であることが好ましい。また、保持部材3の厚みは、変換部材2が保持できる程度の厚みであればよく、コスト増大及び光学部材1Aの高さの増大を抑えるため、2.0mm以下が好ましい。
【0019】
保持部材3は、レーザ光及び蛍光体が発する蛍光を高反射率で反射する材料で、かつ、貫通孔3bに保持された変換部材2の熱を排熱する高熱伝導率の材料からなることが好ましい。高反射率及び高熱伝導率の材料としては、光反射性のセラミックス、金属、又は、セラミックスと金属との複合体が挙げられる。高反射率が得られやすい光反射性のセラミックスであることが好ましい。光反射性のセラミックスとしては、アルミナ(Al2O3)セラミックスを用いることが好ましい。保持部材3に高反射率の材料を用いることによって、変換部材2中の光を主として光取出面2aから取り出すことができるため、高輝度化が可能である。また、変換部材2以外に照射されたレーザ光が外部に漏れることを防止できる。
【0020】
(配線)
配線4は、変換部材2の光取出面2a(第1面)から保持部材3の表面3a(第2面)にかけて連続して形成された線状体である。配線4は、変換部材2及び保持部材3の表面に直接形成することに限定されず、透光性膜7(
図14参照)等の膜を介して形成してもよい。また、平面視で、配線4は一筆書きの形状とする。そして、配線4は、その両端側で、通電のための通電部6に電気的に接続されている。
【0021】
図1~3に示すように、配線4は変換部材2の光取出面2a(第1面)から保持部材3の表面3a(第2面)にわたって変換部材2と保持部材3との境界を跨いで連続して形成されている。これによって、変換部材2の破損等のみならず、強度が他の部分よりも弱くなりやすい境界部近傍での部材破損、例えば、クラック、位置ずれ等も、配線4の破損で検出することが可能となる。ここで、配線4の破損とは、配線4の断線に限らず、欠け等による部分的な又は全体的な細線化や薄膜化も含まれる。つまり、配線4は、細線化等により抵抗値が変化して電圧値が変化することで、通常の状態との差がわかり、部材破損を検出できる。本実施形態では、境界部近傍での変換部材2及び保持部材3の破損が検出可能となるため、レーザ光の漏れに繋がる異常をより精度良く検出することができる。また、本実施形態では、境界部近傍での変換部材2及び保持部材3の破損が検出可能となるため、レーザ光が当り易い位置に部材間の境界を配置することが可能となり、変換部材2を小さくして、高輝度化することが可能となる。
【0022】
配線4は、変換部材2の光取出面2a(第1面)の少なくとも一部を覆い、一部が平面視で複数の屈曲部5aを有する形状をなし、複数の屈曲部5aのうち少なくとも1つが保持部材3の表面3a(第2面)にわたって形成されていることが好ましい。ここで、
図2に示すような蛇腹形状における屈曲部5aの数及びピッチは、保持部材3の貫通孔3bの大きさ、配線4の幅を考慮して、適宜設定する。配線4が蛇腹形状をなすことによって、変換部材2と保持部材3との境界を配線4が跨ぐ箇所が複数設定されることとなり、境界部近傍での変換部材2及び保持部材3の破損を検出する精度が向上する。
図1~3に示す配線4は、言い換えれば、一方向に延伸する延伸部5bと、隣接する延伸部5b同士を繋ぐ屈曲部5aとを有する形状であるといえる。
【0023】
配線4は、発光装置20の配線として一般的に用いられている導電材料からなる。配線4は、変換部材2から取り出される光の輝度の低下を抑制するために、透光性導電材料からなることが好ましい。透光性導電材料としては、可視光による透過率が高い酸化インジウムスズ(ITO)が好ましい。また、配線4の両端側で電気的に接続される通電部6も、導電材料で膜状に形成することができる。配線4としてITOを用いる場合は、ワイヤ等の密着性を向上させるために、ITO層の上にTi/Pt/Au層などの金属層を設けて、この金属層を通電部6の最表面とすることが好ましい。
【0024】
配線4は、変換部材2から取り出される光の輝度むらを抑制するために、少なくとも変換部材2の上方においては、厚みが50~200nmであることが好ましい。また、配線4の幅は5~50μmであることが好ましい。配線4の厚みが50nm未満、又は、幅が5μm未満であると、変換部材2及び保持部材3の破損がなくても配線4に断線等の破損が生じ易くなり、部材破損の誤検出につながり易い。また、配線4の厚みが200nmを超える、又は、幅が50μmを超えると、変換部材2から取り出される光の輝度むらが抑制し難くなる。
【0025】
(放熱部材)
放熱部材9は、保持部材3の裏面3cの側に配置され、レーザ素子25からのレーザ光を透過する透光性の部材である。放熱部材9を構成する主要な部材としては、透光性であり熱伝導率が高い材料であるサファイアを用いることが好ましい。放熱部材9を備えることによって、変換部材2からの熱を効率よく放熱させることができる。放熱部材9の厚みは、例えば、0.2~1mmが挙げられ、好ましくは0.4~0.6mmとする。
【0026】
(第1金属層、第2金属層)
放熱部材9と、保持部材3との接合には、第1金属層10及び第2金属層11を用いることができる。第1金属層10及び第2金属層11は、金、錫、銀、ニッケル、ロジウム、アルミニウム、タングステン、白金、チタン、ルテニウム、モリブデン、ニオブから選択される少なくとも1つを含む金属材料からなることが好ましい。第1金属層10及び第2金属層11は、例えば、チタン膜、白金膜及び金膜からなる積層膜、又は、チタン膜、白金膜、金膜及び金・錫合金からなる混合膜からなる積層膜である。第1金属層10は保持部材3側に形成され、第2金属層11は放熱部材9側に形成される。例えば、金・錫合金を第1金属層10及び第2金属層11のいずれか一方に形成し、第1金属層10及び第2金属層11を接触させ、金・錫合金の融点以上に加熱することにより、放熱部材9と保持部材3とを接合することができる。第1金属層10及び第2金属層11の厚みは、それぞれ、例えば、0.1~5μmとすることができる。具体例としては、第1金属層10を、保持部材3側から順に、Ti(6nm)/Pt(200nm)/Au(300nm)とし、第2金属層11を、放熱部材9側から順に、Ti(6nm)/Pt(200nm)/Au(50nm)/AuSn(3μm)とすることが挙げられる。また、第1金属層10及び第2金属層11等の接合部材は、変換部材2に対面する位置には形成されていないことが好ましい。これにより第1金属層10等の接合部材によってレーザ光が遮蔽されることがない。なお、本実施形態では、第1金属層10は、放熱部材9と対面する変換部材2の光照射面2bを囲むように形成されている。そのため、第1金属層10及び放熱部材9が、変換部材2の光照射面2bへの塵埃の付着を効果的に防止することができる。放熱部材9と保持部材3との接合方法は、第1金属層10を用いた接合のほかに、表面活性化接合や原子拡散接合などの常温接合、樹脂を用いた接着等が挙げられる。樹脂等の有機材料を用いるとレーザ光により分解される懸念があるため、金属等の無機材料を用いることが好ましい。
【0027】
<発光装置>
(レーザ素子)
図3に示すように、レーザ素子25は、変換部材2にレーザ光を照射するように配置される。レーザ素子25は、出射するレーザ光が短波長であるほど高エネルギーとなり、レーザ光の漏れの検出がより要求されるため、短波長のレーザ光を出射する素子をレーザ素子25として用いることが好ましい。そのようなレーザ素子としては、窒化物半導体からなる半導体レーザ素子が挙げられる。そして、レーザ素子25は、光路中にレーザ光を変換部材2に照射させるための構成、例えば反射部材26を、併せて備えることができる。
ここで、反射部材26は、三角柱や四角錐台等の形状をしたガラス等からなる本体部の斜面に反射膜が設けられた部材を用いることができる。本体部の底面に対する斜面の角度は、レーザ光を直交する方向に導くため、約45度であることが好ましい。
【0028】
(パッケージ)
パッケージ21は、レーザ素子25を包囲している。パッケージ21は、凹部27等の収納部を有し、その収納部にレーザ素子25及び反射部材26を配置して収納する収納体である。パッケージ21は、主として、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素等のセラミックス又はCu等の金属からなる収納本体部22と、収納本体部22に溶接等により接合された蓋部24と、を備えている。収納本体部22は、上面側が開口した凹部27を有することができる。その凹部開口周縁に、蓋部24と溶接するための、主成分として鉄を含む枠状の溶接部23を有してもよい。収納本体部22は、凹部27の開口に連続する四方の上面の少なくとも1面が他の面より広くなるように形成され、電極部28が配置されている。電極部28は、アノードとカソードを、平面視で光学部材1Aを挟む位置に配置してもよい。また、収納本体部22が金属からなる場合は、電極部28として、例えばリード端子を用いる。
【0029】
蓋部24は、収納本体部22に溶接等により接合されることで、レーザ素子25を気密封止している。これにより、レーザ素子25への有機物等の塵埃の付着を抑制することができる。蓋部24は、収納本体部22と溶接される支持部24aと、レーザ光を透過させる透光部24bと、支持部24aと透光部24bとを接合する接合材24cと、を有することができる。支持部24aには鉄を主成分とする材料を用いることができる。透光部24bにはガラス、サファイア等を用いることができる。接合材24cには低融点ガラス、金錫半田等を用いることができる。そして、レーザ素子25から出射したレーザ光は、反射部材26で反射し、透光部24b及び放熱部材9を透過して、変換部材2の光照射面2bに照射される。
【0030】
パッケージ21は、収納本体部22の上面に露出する電極部28を備える。パッケージ21は、外部と電気的に接続する電極部28を収納本体部22の下面以外の面に設けることにより、パッケージ21の下面の全面をヒートシンク等の他の部材に実装する面とすることができる。そのため、パッケージ21は、発光装置20で生じる熱をヒートシンクに発散させやすくなる。
【0031】
(検出回路)
検出回路30は、配線4の破損に起因した抵抗値の変化を検出する回路である。発光装置20では、配線4及びレーザ素子25の通電回路に接続される回路である。このような検出回路30を備えることによって、変換部材2及び保持部材3の破損を、配線4の破損に起因した抵抗値の変化で検出できる。そして、配線4の抵抗値の変化を検出した際に、変換部材2及び保持部材3に破損が生じたと判断して、レーザ素子25の駆動を停止することによって、レーザ光の漏れを防止することができる。
【0032】
検出回路30は、配線4の破損を検出できればよい。好ましくは、検出回路30を、
図4に示す回路構成とする。
図4に示すように、検出回路30では、配線4の破損に起因した抵抗値の変化を電圧値の変化により検出する。検出回路30は、第1接続用導線31と、第2接続用導線32と、を備える。第1接続用導線31には、通電用電源が接続され、また、配線4、レーザ素子25及びスイッチ素子33が接続されている。第2接続用導線32には、電圧検出用抵抗34が接続されている。配線4及び電圧検出用抵抗34には、通電用電源により通電する。スイッチ素子33は、電圧検出用抵抗34の電圧と、基準電圧とを比較する等して、レーザ素子25の駆動停止を制御する。
【0033】
検出回路30では、配線4に破損がなく通電している間、配線4の抵抗値は正常に低く、配線4の電圧は低いため、相対的に電圧検出用抵抗34の電圧は高く、基準電圧以上となる。この間、スイッチ素子33からの入力に応じて、レーザ素子25の駆動を継続する。配線4の破損により、配線4が高抵抗化すれば、配線4の電圧が上昇し、相対的に電圧検出用抵抗34の電圧が低下する。この際には、スイッチ素子33からの入力に応じて、レーザ素子25の駆動を停止する。
また、スイッチ素子33としては、オペアンプ、コンパレータ、バイポーラトランジスタ、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)等を用いることができる。特に、電圧検出用抵抗34の電圧によってオンオフを制御可能なMOSFET等のトランジスタ素子が好ましい。スイッチ素子33は例えばMOSFET等のトランジスタ素子であり、電圧検出用抵抗34の電圧が基準電圧以上である場合にオンとなるものを用いることができる。これにより、電圧検出用抵抗34の電圧が低下して基準電圧未満となれば、スイッチ素子33がオフになり、レーザ素子25への電流供給を自動的に停止することができる。
【0034】
発光装置20では、凹部27から透光部24b及び放熱部材9を通過したレーザ光が変換部材2に到達するように、光学部材1Aがパッケージ21に固定されている。そして、配線4の複数の屈曲部5aが、変換部材2と保持部材3との境界部を跨ぐように配置されることが好ましい。このような配置であることによって、変換部材2と保持部材3との境界部の破損を配線4により精度良く検出できる。光学部材1Aのパッケージ21への固定には、前記した放熱部材9及び第1金属層10等を用いることができる。
【0035】
<光学部材の製造方法>
光学部材1Aの製造方法について説明する。
図5A~
図5Cに示すように、光学部材の製造方法は、(1)焼結体を準備する工程と、(2)変換部材及び保持部材の一部を除去する工程と、を含み、さらに、(3)配線を形成する工程を含む。以下、各工程について説明する。
【0036】
(1)焼結体を準備する工程
図5Aに示すように、焼結体を準備する工程は、変換部材2と保持部材3とを接触させて一体に形成された焼結体100を準備する工程である。焼結体100を得る方法としては、例えば、変換部材2を準備する工程と、保持部材3となる成形体を形成する工程と、変換部材2と成形体とを焼結する工程と、を含む方法が挙げられる。
【0037】
一般的に、焼結体とは粉末状の材料を融点よりも低い温度で加熱して固まったものを指す。しかしながら、本製造方法のように、成形品からなる変換部材2と、まだ焼結されていない粉粒の保持部材3と、を加熱処理する場合であっても、成形品からなる変換部材2の表面と粉粒の保持部材3の表面とにおいては、一般的な焼結現象と同様の焼結現象が起こっていると考えられる。したがって、本明細書では、成形品からなる変換部材2と粉粒の保持部材3とを一体に形成したものも焼結体という。同様に、粉粒の変換部材2と成形品からなる保持部材3とを一体に形成したものについても焼結体という。
【0038】
焼結法としては、例えば、放電プラズマ焼結法(SPS法:spark plasma sintering法)又はホットプレス焼結法(HP法:hot pressing法)を用いることができる。粉末状の保持部材3として酸化アルミニウム(アルミナ)を用いる場合は、焼結温度を、1200℃以上1800℃以下に設定することが好ましく、1400℃以上1500℃以下に設定することがより好ましい。1200℃以上に設定することにより、保持部材3としての強度を確保することができる。また、1800℃以下に設定することにより、保持部材3の透光性が高くなる可能性を低減することができる。
【0039】
(2)変換部材及び保持部材の一部を除去する工程
前工程では、変換部材2の上面は保持部材3で覆われている。そこで、
図5Bに示すように、変換部材2が露出するまで、焼結体100の上面側から変換部材2及び保持部材3の一部を除去する。これによって、
図5Cに示すように、焼結体100を個片化した際に、光取出面2aとなる第1面を備えた変換部材2と、第1面から連続する表面3a(第2面)を備えた保持部材3が得られる。
【0040】
焼結体100の一部を除去する方法としては、研削、研磨、CMP等が挙げられる。本製造方法は、一方側からのみ除去しているが、変換部材2の下面及び保持部材3の下面の付着物を除去するために、先に下面側から焼結体100の一部を除去し、その後上面側から焼結体100の保持部材3を除去してもよい。
【0041】
焼結体100を個片化する際には、1つの焼結体100が1つの変換部材2を含むように複数の焼結体100に個片化する。例えば、スクライブ、ダイシング、ブレイクの1以上を用いることにより複数の焼結体100に個片化することができる。なお、本製造方法では、1つの焼結体100が1つの変換部材2を含むように個片化しているが、1つの焼結体100が複数の変換部材2を含むように個片化してもよい。
【0042】
(3)配線を形成する工程
変換部材2の光取出面2a(第1面)から保持部材3の表面3a(第2面)に連続して配線4を形成する工程である。配線4を形成する方法としては、スパッタ法、化学蒸着法、原子層堆積法が挙げられる。変換部材2と保持部材3とを接触させて一体に形成された焼結体100を用いることにより、変換部材2から保持部材3にかけて連続する配線4を形成することができる。そして、配線4が変換部材2の光取出面2a(第1面)から保持部材3の表面3a(第2面)に連続して形成されるため、変換部材2の光取出面2a(第1面)と保持部材3の表面3a(第2面)との境界近傍の破損を配線4の破損よって検出可能となる。その結果、レーザ光の漏れに繋がる異常をより精度良く検出することができる。
【0043】
光学部材1Aの製造方法では、配線を形成する工程の後に、スパッタ法等で形成された第1金属層10を用いて、放熱部材9と保持部材3とを接合する接合工程を含んでいる。
【0044】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る光学部材、発光装置及び光学部材の製造方法について説明する。
図6~
図9に示すように、発光装置20に用いる光学部材1Bは、変換部材2と、保持部材3と、配線4と、を備える。また、光学部材1Bは、放熱部材9を備えることが好ましい。
発光装置20は、光学部材1Bと、レーザ素子25とを備え、パッケージ21を備えることが好ましい。なお、発光装置20は、第1実施形態に係る発光装置20と同様に、検出回路30を備えることがより好ましい。
光学部材1B及び発光装置20の各構成要素について説明する。なお、以下に示す事項以外は、
図1~
図4に示す光学部材1A及び発光装置20と同様である。
【0045】
<光学部材>
光学部材1Bでは、変換部材2の放熱部材9側となる裏面側の光照射面2bが第1面となる。配線4は、光照射面2b(第1面)から保持部材3の裏面3c(第2面)にわたって境界を跨いで連続して形成される。つまり、配線4は、変換部材2及び保持部材3と放熱部材9との間に配置されている。配線4がこのような配置をとることによって、変換部材2及び保持部材3の境界近傍での破損を検出できるため、レーザ光の漏れに繋がる異常をより精度良く検出することができる。加えて、変換部材2は、光照射面2bと反対となる面を、波長変換された光が出射する光取出面2aとしている。このように配線4が光取出面2aではなく光照射面2bに配置されていることにより、変換部材2から取り出される波長変換された光が配線4によって影響を受けないため、輝度むらを低下させることができる。
【0046】
光学部材1Bでは、保持部材3と放熱部材9との接合には、第1金属層10に加えて第2金属層11が用いられる。
【0047】
(第1金属層)
第1金属層10は、中央側第1金属層10a及び端部側第1金属層10bを含み、保持部材3と放熱部材9とを接合する役割を有する。中央側第1金属層10a及び端部側第1金属層10bの構成材料及び厚さは、光学部材1Aの第1金属層10と同じとする。
中央側第1金属層10aは、平面視で変換部材2の光照射面2b(第1面)表面に形成された配線4を取り囲むように、保持部材3の裏面3c(第2面)の中央に矩形環状に形成されている。中央側第1金属層10aが配線4と電気的に接続されていると配線4の破損の検知が困難となる。このため、中央側第1金属層10aは、配線4と絶縁膜14を介して配置することにより配線4と絶縁されている。平面視で中央側第1金属層10aと配線4が重なる部分が小面積であるほど、中央側第1金属層10aと配線4との間がリークする可能性を低減することができる。このため、
図7に示すように、平面視で、中央側第1金属層10aと配線4が重なる箇所は2か所のみとすることが好ましい。このような配置とするためには、中央側第1金属層10aを配線4の屈曲部5aよりも外側に配置すればよい。
端部側第1金属層10bは、配線4に通電する2つの通電部6を覆うように、中央側第1金属層10aが形成された裏面3cの中央から離間して左右にそれぞれ矩形に形成されている。2つの端部側第1金属層10bは、それぞれ配線4と電気的に接続されており、配線4のアノードとカソードとなる。
【0048】
(第2金属層)
第2金属層11は、中央側第2金属層11a及び端部側第2金属層11bを含む。中央側第2金属層11a及び端部側第2金属層11bの構成材料及び厚さは、光学部材1Aの第2金属層11と同じとする。
【0049】
中央側第2金属層11aは、裏面3c(第2面)に形成された中央側第1金属層10aを覆うように、保持部材3と対面する放熱部材9の面の中央側に形成されている。中央側第2金属層11aは、中央側第1金属層10aと同様に、配線4を取り囲むように矩形環状に形成されている。
端部側第2金属層11bは、中央側第2金属層11aから離間して、放熱部材9の保持部材3と対面する面の左右のそれぞれに矩形に形成されている。そして、端部側第2金属層11bは、左右側では、保持部材3と放熱部材9とを接合した際に平面視で保持部材3から一部が外側にはみ出す大きさの矩形に形成されている。2つの端部側第2金属層11bは、保持部材3と放熱部材9との接合のほかに、それぞれ通電部6(端部側第1金属層10b)と電気的に接続されて、配線4の通電部6に外部から電気を通電する役割を有する。このため、端部側第2金属層11bは、接合後に、平面視において、その一部が保持部材3から露出するように配置される。これにより、保持部材3から露出した部分にワイヤ等を接続することができる。このように、外部と接続する端部側第2金属層11bを、中央側第2金属層11aよりも外側に配置することにより、端部側第2金属層11bを外に引き出しやすい。
【0050】
中央側第1金属層10aと中央側第2金属層11aは、放熱部材9と共に変換部材2の光照射面2b(第1面)を囲むように形成されている。そのため、変換部材2の光照射面2b(第1面)への塵埃の付着を効果的に防止することができる。この効果を得るために、中央側第1金属層10a及び中央側第2金属層11aの平面視形状は環状であることが好ましい。また、接合面積をなるべく大きく確保するためには保持部材3の外縁や配線4の形状に沿った形状とすることが好ましく、例えば円形の保持部材であれば円環状としてもよい。
光学部材1Bは、第2金属層11を備えることによって、変換部材2及び保持部材3と放熱部材9との間に配線4が配置されても、配線4に外部電極または回路を容易に接続することができる。
【0051】
(絶縁膜)
絶縁膜14は、中央側第1金属層10aと配線4とを絶縁する膜である。絶縁膜14は、平面視で、少なくとも中央側第1金属層10aと配線4が重なる部分に配置される。絶縁膜14をレーザ光の経路上にも配置する場合には、絶縁膜14は透光性であることが好ましい。絶縁膜14は、配線4に通電する2つの通電部6が形成された領域を除いた変換部材2の光照射面2b(第1面)、配線4及び保持部材3の裏面3c(第2面)の全体を覆うように形成することができる。なお、絶縁膜14は、後記する第1実施形態の変形例における保護膜8を兼用してもよい。構成材料及び厚さは、保護膜8と同様とすることができる。
【0052】
<発光装置>
図9に示すように、発光装置20は、第1実施形態の光学部材1Aを用いた発光装置20(
図3参照)において、光学部材1Aの代わりに、光学部材1Bを用いること以外は、第1実施形態と同様である。このような構成を備える発光装置20は、光学部材1Bを用いることにより、取り出される光の輝度むらを低減可能である。
【0053】
<光学部材の製造方法>
光学部材1Bは、第1実施形態と同様な製造方法で製造することができる。なお光学部材1Bは、変換部材2の光照射面2bを配線4が形成される第1面として製造する。また、光学部材1Bの製造方法では、配線を形成する工程の後に、スパッタ法等で形成された中央側第1金属層10a及び端部側第1金属層10bと、中央側第2金属層11a及び端部側第2金属層11bとを用いて、放熱部材9と保持部材3とを接合する接合工程を含んでいる。
【0054】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る光学部材、発光装置及び光学部材の製造方法について説明する。
図10~
図13に示すように、第3実施形態に係る光学部材1Cは、第2実施形態に係る光学部材1Bの一部を変更している。つまり、光学部材1Cでは、第2金属層11の中央側第2金属層が、その一部が平面視で保持部材3から露出するように形状を変えてリーク確認用電極15となっている。
光学部材1Cは、変換部材2と、保持部材3と、配線4と、第1金属層10と、絶縁膜14と、リーク確認用電極15と、配線電極16と、放熱部材9を備える。
発光装置20は、光学部材1Cと、レーザ素子25とを備え、パッケージ21を備えることが好ましい。なお、発光装置20は、検出回路30を備えることがより好ましい。
光学部材1Cの各構成要素について説明する。なお、以下に示す事項以外は、
図6~
図9に示す光学部材1Bと同様である。
【0055】
<光学部材>
(リーク確認用電極)
リーク確認用電極15は、中央部15aと、中央部15aに線状の接続部15cを介して接続する端子部15bとを備えている。リーク確認用電極15は、保持部材3と放熱部材9との接合後に中央側第1金属層10aと配線4との間の絶縁が確保できているかどうかを確認するためのものである。リーク確認用電極15は、中央側第1金属層10aと電気的に接続されている。これにより、リーク確認用電極15の端子部15bをアノードとし、配線電極16のカソード側との間に電圧を印加し、電流が流れるか否かを確認することで、中央側第1金属層10aと配線4がリークしているか否かを判断することができる。なお、アノードとカソードは逆転してもよい。
中央部15aは、平面視で変換部材2(第1面)を取り囲むように形成された中央側第1金属層10aを覆うように、放熱部材9側に矩形環状に形成されている。中央部15aは、中央側第1金属層10aと同サイズで形成することができる。加えて、端子部15bは、外部と電気的に接続するため、保持部材3と放熱部材9とを接合した際に、平面視で保持部材3から一部が外側にはみ出す大きさと位置に形成されている。そして、端子部15bは、接続部15cを介して中央部15aに電気的に接続されている。端子部15bは、放熱部材9の一辺側に沿った長方形状で放熱部材9側に形成されている。
【0056】
中央部15a、接続部15c及び端子部15bは、光学部材1Bにおける中央側第2金属層11aに相当するもので、構成材料及び厚さは、光学部材1Bにおける中央側第2金属層11aと同様とすることができる。なお、中央部15a、接続部15c及び端子部15bは、保持部材3と放熱部材9との接合にも用いられる。
【0057】
(配線電極)
配線電極16は、光学部材1Bにおける端部側第2金属層11bに相当するものであり、端部側第2金属層11bとは形状が異なるのみであり、構成材料及び厚さは同様とすることができる。配線電極16は、中央部16aと、中央部16aに線状の接続部16cを介して接続する端子部16bとを備えている。中央部16aは、2つの通電部6のそれぞれに端部側第1金属層10bを介して電気的に接続して配線4に通電するために、端部側第1金属層10bと同サイズで放熱部材9側に矩形に形成されている。端子部16bは、保持部材3と放熱部材9とを接合した際に、平面視で保持部材3から一部が外側にはみ出す大きさと位置になるように、放熱部材9の角部分に矩形状で形成されている。中央部16aと端子部16bとは、接続部16cを介して電気的に接続されるように形成されている。なお、中央部16a、接続部16c及び端子部16bは、保持部材3と放熱部材9との接合にも用いられる。
【0058】
<発光装置>
発光装置20は、第2実施形態の光学部材1Bを用いた発光装置20(
図9参照)において、光学部材1Bの代わりに、光学部材1Cを用いること以外は、第2実施形態と同様である。なお、絶縁膜14は、保護膜8(
図14参照)と同様な膜である。また、リーク確認用電極15(中央部15a及び端子部15b)は、中央側第2金属層11a及び端部側第2金属層11b(
図8、
図9参照)と同様な接合層である。
【0059】
<光学部材の製造方法>
光学部材1Cは、第2実施形態と同様な製造方法で製造することができる。なお、光学部材1Cの製造方法は、配線を形成する工程の後に、スパッタ法等で形成された中央側第1金属層10a及び端部側第1金属層10b、リーク確認用電極15(中央部15a、接続部15c及び端子部15b)、配線電極16(中央部16a、接続部16c及び端子部16b)を用いて、放熱部材9と保持部材3とを接合する接合工程を含んでもよい。
【0060】
[各実施形態の変形例]
次に、各実施形態に係る構成の変形例について、
図14~
図17Cを参照して説明する。
<光学部材>
光学部材の変形例について説明する。
図14に示すように、第1実施形態に係る光学部材1Aの変形例である光学部材1Dは、変換部材2と、保持部材3と、配線4と、透光性膜7と、保護膜8と、放熱部材9と、誘電体多層膜17と、反射防止膜18と、を備える。このように、光学部材1Dは、透光性膜7、保護膜8、誘電体多層膜17及び反射防止膜18のうち1以上を備えてもよい。光学部材1Dの変換部材2、保持部材3、配線4及び放熱部材9については光学部材1Aと同様であるので、説明を省略する。光学部材1Dの透光性膜7、保護膜8、誘電体多層膜17及び反射防止膜18について、以下に説明する。
【0061】
(透光性膜)
透光性膜7は、変換部材2の光取出面2a(第1面)と保持部材3の表面3a(第2面)を覆う膜である。透光性膜7を設けることにより、変換部材2及び保持部材3の表面の平坦性を向上させることができる。透光性膜7を備える場合には、配線4は、変換部材2及び保持部材3の表面に直接形成されず、透光性膜7の表面に形成される。したがって、変換部材2及び保持部材3よりも表面の平坦性が向上した、透光性膜7の表面に、配線4が形成されるため、形成時に配線4が断線する可能性を低減することができる。
【0062】
変換部材2を2種以上の材料から構成する場合には、変換部材2の表面にCMP等の平坦化処理を施すと、材料によって除去速度が異なるため、表面に段差が生じやすい。このため、変換部材2の表面に透光性膜7を形成することが好ましい。同様に、保持部材3を光反射性セラミックスで形成した場合にも、セラミックスは高反射ほど空孔率が高い傾向にあって、保持部材3の表面の平坦性が悪いため、保持部材3の表面に透光性膜7を形成することが好ましい。
【0063】
透光性膜7は、透光性材料からなる。可視光に対して透光性である透光性材料としては、SiO2等の酸化ケイ素を含有する材料が挙げられる。透光性膜7は、例えばSiO2膜である。透光性膜7の厚みは、変換部材2及び保持部材3の平坦性を向上できる程度が好ましく、具体的には1~15μmであることが好ましい。また、変換部材2の光照射面2b及び保持部材3の裏面3cを覆うように透光性膜7を形成してもよい。
【0064】
(保護膜)
保護膜8は、少なくとも変換部材2の光取出面2a(第1面)及び配線4を覆うように形成された透光性の膜である。好ましくは保護膜8は光取出面2a(第1面)の全体を覆うように形成される。保護膜8を備えることによって、変換部材2が破損しない程度の軽微な衝撃によって配線4が破損しないよう、配線4を保護することができる。また、保護膜8の内部において光が広がることが可能であるため、変換部材2から、保護膜8を介して取り出される光の輝度むらが改善できると考えられる。
保護膜8の厚みは、励起光の波長(例えば450nm)以上、20μm以下が挙げられる。
【0065】
保護膜8は、透光性膜7と同様に透光性材料からなる。可視光に対して透光性である透光性材料としては、SiO2等の酸化ケイ素を含有する材料が挙げられる。保護膜8は、例えばSiO2膜である。
配線4が透光性である場合には、保護膜8の屈折率は、配線4の屈折率に近い値とし、保護膜8を少なくとも配線4が形成されない領域に配置することが好ましい。これにより、配線4が形成された領域と、配線4が形成されない領域との屈折率差を縮小することができ、輝度むらを低減することができる。SiO2等の酸化ケイ素はITO等の導電性酸化膜よりも低屈折率であるため、保護膜8は、酸化ケイ素と、酸化ケイ素よりも高屈折率の材料とを含有することが好ましい。このように、保護膜8が高屈折率の材料を含有することによって、前記したとおり輝度むらを改善することができる。具体的には、保護膜8は、酸化ケイ素に所定量の酸化タンタルを混合した材料を用いることが好ましい。保護膜8は、例えばSiO2とTa2O5が混合する膜とすることができる。配線4がITOである場合には、保護膜8は、SiO2が25~35重量%程度のSiO2とTa2O5との混合膜とすることが適している。
【0066】
(誘電体多層膜)
誘電体多層膜17は、放熱部材9の変換部材2及び保持部材3側となる上面に配置された多層膜である。誘電体多層膜17は、例えば窒化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タンタルなどの誘電体からなる屈折率の異なる2種以上の誘電体膜を多層に積層させたものである。誘電体多層膜17は、レーザ素子25からのレーザ光を透過し、変換部材2の光照射面2bからの波長変換光を反射する膜とする。言い換えると、誘電体多層膜17は、変換部材2で波長変換された光に対する反射率が、励起光(レーザ素子25からのレーザ光)に対する反射率よりも高い膜とする。これにより、変換部材2からレーザ素子25の方へ向かう光を反射して変換部材2に戻すことができるため、変換部材2の光取出面2aからの光取出し効率を向上させることができる。誘電体多層膜17の厚みは、例えば、1~10μmとすることができる。
【0067】
(反射防止膜)
反射防止膜18は、放熱部材9のレーザ光が入射する側の面となる下面に配置された膜である。反射防止膜18は、例えば窒化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タンタルから選択される少なくとも1つを主体とする誘電体材料からなる。反射防止膜18は、厚み、組成比等を調整することによって、レーザ素子25からのレーザ光に対する反射率を1%以下等の非常に小さい値とした膜である。反射防止膜18を備えることによって、変換部材2へのレーザ光の入射量を増大することができる。反射防止膜18の厚みは、例えば、0.2~1μmとすることができる。
【0068】
(第2、3実施形態に係る光学部材の変形例)
図15に示すように、第2実施形態に係る光学部材1Bの変形例である光学部材1Eは、変換部材2と、保持部材3と、配線4と、透光性膜7と、放熱部材9と、誘電体多層膜17と、反射防止膜18と、を備える。また、
図16に示すように、第3実施形態に係る光学部材1Cの変形例である光学部材1Fは、変換部材2と、保持部材3と、配線4と、透光性膜7、放熱部材9と、誘電体多層膜17と、反射防止膜18と、を備える。
【0069】
このように、光照射面2b側に配線4を設ける光学部材においても、透光性膜7、保護膜8、誘電体多層膜17及び反射防止膜18のうち1以上を設けることができる。光学部材1E及び1Fの変換部材2、保持部材3、配線4及び放熱部材9については光学部材1Bと同様である。光学部材1E及び1Fの透光性膜7、誘電体多層膜17及び反射防止膜18については光学部材1Dと同様である。なお、光学部材1E及び1Fの透光性膜7は、変換部材2の光照射面2b(第1面)と保持部材3の裏面3c(第2面)を覆うように形成されている。このように配線4を設ける側の面(すなわち、光照射面2b及び裏面3c)を覆う透光性膜7を設けることで、上記したとおり、形成時に配線4が断線する可能性を低減することができる。また、変換部材2の光取出面2aと保持部材3の表面3aを覆うように透光性膜7を形成してもよい。
【0070】
(配線の形状)
図17Aに示すように、各実施形態及び変形例で示す配線4は、平面視で渦巻形状を有するように形成してもよい。配線4の渦巻形状の部分は、その一部が変換部材2を覆い、別の一部は保持部材3に形成されている。ここで、渦巻形状における巻数及びピッチは、保持部材3の貫通孔3bの大きさ、配線4の幅を考慮して、適宜設定する。配線4が
図2に示すような蛇腹状の形状である場合、例えば変換部材2に図中左右方向に進展するクラックが生じると、変換部材2は破損するが配線4は破損しないという状況があり得る。しかし、
図17Aに示すような渦巻形状であれば、図中左右方向のクラックであっても上下方向のクラックであっても、配線4が破損され、異常を検出することができる。より精度良く異常を検出するためには、渦巻形状のピッチは60μm以下とすることが好ましい。渦巻形状のピッチとは、言い換えると配線4が設けられていない部分である通路部の幅である。また、この通路部が配線4の形成時に潰れないように、渦巻形状のピッチは5μm以上とすることが好ましい。
【0071】
また、
図17Bに示すように、各実施形態及び変形例で示す配線4は、平面視で、最外の列の延伸部5bが内側の列の延伸部5bと異なる方向に延伸する形状であってもよい。
図1~3に示す配線4は、平面視において、一方向に延びる延伸部5bのうち最外の延伸部5bが変換部材2と保持部材3との境界と重なっている。このような形状で製造する場合、延伸部5bの幅方向におけるズレの許容量は最外の延伸部5bの幅以下であり、それよりもずれた場合は最外の延伸部5bが変換部材2と保持部材3との境界と重ならない。一方、
図17Bに示すように、内側の列の延伸部5bは第1方向に延伸し、それらを挟む最外の列の延伸部5bは第2方向に延伸する形状であれば、ズレの許容量を配線4の幅よりも大きくすることができる。それぞれの延伸部5bは屈曲部5aで繋がれており、これによって配線4は一筆書き形状となっている。
【0072】
また、平面視で、変換部材2が多角形状である場合、
図17Cに示すように、各実施形態及び変形例で示す配線4は、変換部材2の外縁を成す辺のいずれとも交差する方向に延伸する複数の延伸部5bと、隣接する延伸部5bを繋ぐ屈曲部5aとを有する一筆書き形状であってもよい。これにより、変換部材2に重なる配線4における屈曲部5a以外の部分の延伸方向を一方向のみとしながら、変換部材2と保持部材3の境界に対する配線4のズレの許容量を
図1~3に示す配線4の場合よりも拡大することができる。
【0073】
なお、屈曲部5aは、直線状に形成されているが、半円等の曲線状であってもよい。また、延伸部5bも、直線状に形成されているが、直線の凹凸を繰り返す、曲線の凹凸を繰り返す等、直線状以外の形状であってもよい。
【0074】
<光学部材の製造方法>
次に、光学部材の製造方法の変形例について説明する。
第1実施形態の光学部材1Aの製造方法の変形例は、(1)焼結体を準備する工程と、(2)変換部材及び保持部材の一部を除去する工程と、(A)熱処理する工程と、(B)透光性膜を形成する工程と、(3)配線を形成する工程と、を含む。
変形例において、(1)~(3)の工程は、前記した製造方法と同様であるので、説明を省略する。(A)、(B)の工程について、以下で説明する。なお、第2、第3実施形に係る光学部材1B、1Cの製造方法においても同様の変形例を採用することができる。
【0075】
(A)熱処理する工程
変換部材2及び保持部材3の一部を除去する工程の後であって、配線4を形成する工程の前に、変換部材2の光取出面2a(第1面)及び保持部材3の表面3a(第2面)を熱処理する。そして、熱処理は、大気中で300℃以上で行うことが好ましく、800℃以上で行うことがより好ましい。熱処理することによって、保持部材3を構成する焼結体のボイド内に残留する有機物を除去することができる。保持部材3のボイド内に有機物が残留していると、後の工程で配線4等によって有機物が逃げる経路の少なくとも一部が塞がれた状態で保持部材3が加熱されることで残留有機物が黒色化し、保持部材3の外観異常が発生する原因となる。そこで、配線4等を形成する前に熱処理を行うことで、保持部材3内の残留有機物を減少させることができ、保持部材3の外観異常が発生する可能性を低減することができる。熱処理の温度は、保持部材3を構成する焼結体の焼結温度より低いことが好ましい。これにより、熱処理によって焼結体の再焼結による材料の収縮や反り等 が発生する可能性を低減することができる。例えば、熱処理の温度は1200℃以下であることが好ましい。
【0076】
(B)透光性膜を形成する工程
熱処理する工程の後であって、配線4を形成する工程の前に、熱処理された変換部材2の光取出面2a(第1面)及び保持部材3の表面3a(第2面)を覆うように透光性膜7を形成する。透光性膜7は、スパッタ法、化学蒸着法、原子層堆積法等によって形成することができる。なお、透光性膜7の形成は、変換部材2の第1面と反対の表面である光照射面2b及び保持部材3の第2面と反対の裏面3cにも、熱処理後に行ってもよい。
【0077】
透光性膜7の形成によって、保持部材3を構成する材料のボイド内に有機物が再度浸透することを防止することができる。そのため、残留有機物の黒色化による保持部材3の外観異常が発生する可能性を低減することができる。透光性膜7は、有機物の再浸透を防止するために、膜厚が厚いことが好ましく、かつ、保持部材3の表面を隙間なく被覆可能であることが好ましい。このため、透光性膜7は、まず化学蒸着法により堆積させ、次に原子層堆積法により堆積させることが好ましい。例えば、透光性膜7は、まず膜厚5μmのSiO2膜を化学蒸着法により形成し、次に膜厚1μmのSiO2/Al2O3多層膜を原子層堆積法により形成する。また、上述のとおり、透光性膜7の形成によって、変換部材2及び保持部材3の表面の平坦性が向上するため、配線4が形成時に破損する可能性を低減することができる。
【0078】
第1実施形態に係る光学部材の製造方法では、配線4を形成する工程の後、放熱部材9を配置する工程の前に、
図14に示すように透光性膜7が形成された光取出面2aを覆うように、かつ、配線4を覆うようにスパッタ法、化学蒸着法、原子層堆積法等によって保護膜8を形成する工程をさらに含んでもよい。また、第2、3実施形態に係る光学部材の製造方法では、配線4を形成する工程の後、放熱部材9を配置する工程の前に、
図15、16に示すように透光性膜7が形成された光照射面2bを覆うように、かつ、配線4を覆うようにスパッタ法、化学蒸着法、原子層堆積法等によって絶縁膜14を形成する工程をさらに含んでもよい。
【0079】
<焼結体の他の製造方法>
第1~第3実施形態に係る光学部材の製造方法において、焼結体は、以下の第1~第3の製造方法により得てもよい。
以下の第1~第3の製造方法について、変換部材2の光取出面2aを配線4が形成される第1面とする光学部材1Aを製造する場合を例にとって説明するが、変換部材2の光照射面2bを配線4が形成される第1面とする光学部材1B、1Cを製造する場合でも同様である。
また、以下の第1~第3の製造方法の説明では、例えば「粉末状の変換部材」や「焼結体からなる変換部材」の用語を用いており、変換部材であればその状態に拘わらず「変換部材」の用語を用いている。同様に、以下の第1~第3の製造方法の説明では、例えば「粉末状の保持部材」や「焼結体からなる保持部材」の用語を用いており、保持部材であればその状態に拘わらず「保持部材」の用語を用いている。
【0080】
(第1の製造方法)
焼結体の第1の製造方法について説明する。
【0081】
(1)焼結体を得る工程
図18A~
図18Cに示すように、焼結体を得る工程は、変換部材2と保持部材3とを接触させて一体に形成された焼結体100を得る工程である。具体的には、変換部材2を準備する工程と、保持部材3を配置する工程と、焼結体100を得る工程と、を含む。
【0082】
(1-1)変換部材を準備する工程
図18Aに示すように、変換部材2を準備する工程の前に、容器に緩衝部材70として粉末状の材料(例えば、保持部材3と同様の材料)を配置する。本製造方法では、焼結ダイ80と下側のパンチ90とを容器として用いている。緩衝部材70は必須ではないが、緩衝部材70を用いることが好ましい。これにより、焼結体からなる変換部材2を用いる場合であっても、後に保持部材3(
図18C参照)を焼結する際に変換部材2にかかる圧力を実質的に均等にすることができる。したがって、焼結体からなる変換部材2の割れ等を低減することができる。
【0083】
次に、後の工程において容器から変換部材2及び保持部材3からなる焼結体100(
図18C参照)を取り出しやすくするために、緩衝部材70の上方に、離形シート60を配置する。離形シート60として、例えば、ポリエチレンシート、又はカーボンシートを用いることができる。
【0084】
変換部材2を準備する工程では、緩衝部材70及び離形シート60を設けた下側パンチ90及び焼結ダイ80とに囲まれた領域に粉末状の蛍光体と、保持部材3と同一の材料を含む粉末状の焼結助剤と、を混合した粉体を焼結して板状の焼結体をはじめに形成する。さらに、マシニングセンタを用いて板状の焼結体に複数の凸部を形成し、複数の凸部が上面側に設けられた焼結体からなる変換部材2を得ている。
【0085】
(1-2)保持部材を配置する工程
次に、
図18Bに示すように、変換部材2における複数の凸部の間に粉末状の保持部材3を配置する。粉末状の保持部材3を用いることで、隣り合う凸部間に保持部材3を充填しやすくなり、変換部材2と保持部材3との隙間を実質的になくすことができる。本製造方法では、凸部が上方を向くように変換部材2を配置し、上方から粉末状の保持部材3を配置することで、変換部材2の凸部の間に保持部材3を配置している。
【0086】
図18Bでは、焼結体からなる変換部材2を下方に配置し、粉末状の保持部材3を上方に配置しているが、配置の順序を逆にすることもできる。つまり、まず容器に粉末状の保持部材3を配置し、次にその上方において焼結体からなる変換部材2をその凸部が下方を向くように配置して、必要に応じて押圧することもできる。このようにしても、変換部材2における複数の凸部の間に保持部材3を配置することができる。
【0087】
(1-3)焼結体を得る工程
次に、
図18Cに示すように、当該工程は、粉末状の保持部材3及び複数の凸部が形成された変換部材2を焼結して、変換部材2と保持部材3とが一体に形成された焼結体100を得る。なお、変換部材2及び保持部材3を10MPa以上50MPa以下で加圧しながら焼結するのが好ましい。これにより、変換部材2と保持部材3との接合強度を向上させることができる。
【0088】
また、焼結体を得る工程の後に、焼結体100を酸化雰囲気(例えば、大気雰囲気)で1000℃以上1500℃以下の範囲で熱処理することが好ましい。これにより、焼結型の炭素が保持部材3に含まれる酸化物へ浸炭又は還元反応することが抑制でき、保持部材3の反射率を向上することができる。
【0089】
(第2の製造方法)
焼結体の第2の製造方法について説明する。
焼結体の第2の製造方法は、次に説明する事項以外は第1の製造方法において説明した事項と実質的に同一であるが、粉末状の変換部材と粉末状の保持部材とを焼結する点で第1の製造方法と異なる。以下、各工程について説明する。
【0090】
(1)焼結体を得る工程
図19A~
図19Dに示すように、焼結体を得る工程は、変換部材2と保持部材3とを接触させて一体に形成された焼結体100を得る工程である。具体的には、保持部材3を準備する工程と、変換部材2を配置する工程と、焼結体100を得る工程と、を含む。
【0091】
(1-1)保持部材を準備する工程
上面に複数の凹部が設けられた保持部材3を準備する。本製造方法では、保持部材3を準備する工程は、焼結型となる容器(下側パンチ90及び焼結ダイ80)に粉末状の保持部材3を充填する工程(
図19A参照)と、複数の凸部あるいは凹部が設けられた押圧部材92で、粉末状の保持部材3を押圧することにより、複数の凹部あるいは凸部が設けられた保持部材3を作製する工程(
図19B参照)と、を含む。これにより、粉末状ではあるが一定の形状(複数の凹部が設けられた形状)を保持した保持部材3を比較的簡便な方法で形成することができる。なお、この工程では焼結体からなる保持部材3を準備してもよい。
【0092】
(1-2)変換部材を配置する工程
蛍光体を含む粉末状の変換部材2を準備する。そして、保持部材3における複数の凹部に粉末状の変換部材2を配置する(
図19C参照)。つまり、本製造方法では、粉末状の保持部材3の上方に粉末状の変換部材2が配置されている。なお、焼結体からなる保持部材3を準備する場合は、保持部材3及び変換部材2の配置の順序は限定されない。つまり、焼結体からなる保持部材3を下方に配置し、粉末状の変換部材2を上方に配置してもよいし、配置の順序を逆にすることもできる。
【0093】
(1-3)焼結体を得る工程
次に、粉末状の変換部材2及び粉末状の保持部材3の両方を焼結して、
図19Dに示すように、変換部材2と保持部材3とが一体に形成された焼結体100を得る。本製造方法では、一工程において、粉末状の変換部材2及び粉末状の保持部材3の両方を焼結して焼結体100を得ている。このとき、変換部材2に含まれる焼結助剤の透過率を高くする必要があるため、焼結温度は第1の製造方法よりも高くすることが好ましい。
【0094】
(第3の製造方法)
焼結体の第3の製造方法について説明する。
焼結体の第3の製造方法は、次に説明する事項以外は第2の製造方法において説明した事項と実質的に同一であるが、上面側が変換部材のみからなり、下面側が変換部材及び保持部材からなる焼結体が得られる点で第2の製造方法と異なる。以下、各工程について説明する。
【0095】
(1)焼結体を得る工程
図20A~
図20Dに示すように、焼結体を得る工程は、変換部材2と保持部材3とを接触させて一体に形成された焼結体100を得る工程である。具体的には、保持部材3を準備する工程と、変換部材2を配置する工程と、焼結体100を得る工程と、を含む。
【0096】
(1-1)保持部材を準備する工程
設置された保持部材3の厚みを貫通する複数の貫通孔が設けられた粉末状ではあるが一定の形状を保持した保持部材3を準備する(
図20A、B参照)。なお、この工程では焼結体からなる保持部材3を準備してもよい
【0097】
(1-2)変換部材を配置する工程
蛍光体を含む粉末状の変換部材2を準備する。そして、保持部材3における複数の貫通孔内を充填するように粉末状の変換部材2を配置する(
図20C参照)。
【0098】
(1-3)焼結体を得る工程
次に、粉末状の変換部材2及び粉末状の保持部材3の両方を焼結して、
図20Dに示すように、変換部材2と保持部材3とが一体に形成された焼結体100を得る。
【0099】
(光学部材の他の製造方法)
前記した光学部材の製造方法では、変換部材と保持部材とが一体に形成された焼結体を用いているが、変換部材と保持部材とをガラス等を介して固着することにより変換部材と保持部材とが一体化された固着体を用いてもよい。以下、固着体を用いた光学部材の他の製造方法について説明する。
図21A、
図21Bに示すように、光学部材の他の製造方法は、(1)固着体を得る工程と、(2)ガラス膜の一部を除去する工程と、(3)配線を形成する工程と、を含む。以下、各工程について説明する。
【0100】
(1)固着体を得る工程
図21Aに示すように、変換部材2と保持部材3とが一体化された固着体を得る工程である。具体的には、ガラス膜12を形成する工程と、変換部材2を固定する工程と、を含む。
【0101】
(1-1)ガラス膜を形成する工程
当該工程は、保持部材3に形成された貫通孔3bの内壁面、又は、内壁面と保持部材3の上面側の表面にガラス膜12を形成する工程である。保持部材3への貫通孔3bの形成方法は従来公知の穿孔加工法を用いることができる。貫通孔3bの大きさは変換部材2の大きさに応じて適宜設定する。ガラス膜12の形成方法は、スパッタ等により行う。ガラス膜12の厚みは0.1~20μmとすることができる。
【0102】
ガラス膜12の厚みが0.1μm未満であると、貫通孔3bの内壁面にガラス膜12が形成されない箇所ができやすく、製造される光学部材において変換部材2の保持力が低下し易くなる。また、ガラス膜12の厚みが20μmを超えると、ガラス膜12による光の吸収が増大して、光学部材における発光効率が低下し易くなる。
【0103】
ガラス膜12を構成する材料としては、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石英ガラス、ソーダガラス、鉛ガラス等の透光性ガラスを用いることが好ましい。また、次工程において、熱融着を行うため、ガラス膜12の軟化点が、変換部材2及び保持部材3よりも低い材料であることが好ましい。
【0104】
(1-2)変換部材を固定する工程
当該工程は、保持部材3にガラス膜12を介して変換部材2を固定する工程である。ガラス膜12を孔内側面に設けた貫通孔3b内に変換部材2を配置し、ガラス膜12を第1雰囲気温度で加熱することによって、変換部材2がガラス膜12を介して保持部材3に固定された固着体を得る工程である。
【0105】
ここで、第1雰囲気温度は、貫通孔3bの内壁面に形成されたガラス膜12の軟化点に応じて、ガラス膜12が変形し熱融着できるように適宜設定する。内壁面に形成されたガラス膜12は、室温では固体であるが、加熱によって軟化し、再び室温に戻すことによって硬化する。これによって、貫通孔3b内に配置された変換部材2を、保持部材3に隙間なく固定することができる。
【0106】
(2)ガラス膜の一部を除去する工程
図21Bに示すように、当該工程では、固着体の上面側を研削、研磨、CMP等により除去する。この工程では、保持部材3の上面側の表面が露出するまでガラス膜12を除去することが好ましい。これにより、変換部材2の光照射面又は光取出面となる第1面と、第1面から連続する保持部材3の第2面と、が得られる。このように変換部材2が保持部材3に隙間なく固定されていることにより、配線4が形成可能な面を得ることができる。なお、この工程は省略してもよい。
本製造方法において、(3)配線を形成する工程については、第1~第3実施形態の製造方法と同様である。
【0107】
また、ガラス膜12のように軟化するガラスを用いて、変換部材2の光取出面を被覆してもよい。上記した工程以外については、第1~第3実施形態と同様の工程等を採用することができる。
【符号の説明】
【0108】
1A、1B、1C、1D、1E、1F 光学部材
2 変換部材
2a 光取出面
2b 光照射面
3 保持部材
3a 表面
3c 裏面
4 配線
5a 屈曲部
5b 延伸部
7 透光性膜
8 保護膜
9 放熱部材
20 発光装置
21 パッケージ
25 レーザ素子
30 検出回路
【手続補正書】
【提出日】2023-08-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変換部材と保持部材とが一体に形成された焼結体を準備する工程と、
前記焼結体の一部を除去する工程と、
前記焼結体を熱処理する工程と、
前記焼結体の熱処理した面に、配線を形成する工程と、を有する光学部材の製造方法。
【請求項2】
前記変換部材は、蛍光体を含有するセラミックスからなる請求項1に記載の光学部材の製造方法。
【請求項3】
前記熱処理する工程は、大気中で300℃以上で行う請求項1または請求項2に記載の光学部材の製造方法。
【請求項4】
前記熱処理する工程の後であって前記配線を形成する工程の前に、
前記変換部材の第1面及び前記保持部材の第2面を覆うように透光性膜を形成する工程を有し、
前記配線を形成する工程において、前記透光性膜に配線を形成する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光学部材の製造方法。
【請求項5】
前記透光性膜が形成された面を覆うように、かつ、前記配線を覆うように、保護膜または絶縁膜を形成する工程を有する請求項4に記載の光学部材の製造方法。