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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126671
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】ドライバ回路
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/45 20060101AFI20230831BHJP
   H03F 3/72 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
H03F3/45
H03F3/72
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119800
(22)【出願日】2023-07-24
(62)【分割の表示】P 2021563530の分割
【原出願日】2019-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121669
【弁理士】
【氏名又は名称】本山 泰
(72)【発明者】
【氏名】徐 照男
(72)【発明者】
【氏名】長谷 宗彦
(72)【発明者】
【氏名】野坂 秀之
(57)【要約】
【課題】シャットダウンモード時に高い入出力アイソレーションを実現する。
【解決手段】ドライバ回路は、差動入力信号を増幅して信号出力端子(3,4)から出力する差動対トランジスタ(Q1,Q2)と、差動対トランジスタ(Q1,Q2)に定電流を供給する電流源(Q3)と、シャットダウンモード時に電流源(Q3)から差動対トランジスタ(Q1,Q2)への電流供給を停止させるスイッチ(SW1)と、信号出力端子(3,4)間に挿入されたMOSトランジスタ(Q4,Q5)からなる可変抵抗と、増幅モード時にドライバ回路の利得を所望の値に設定するための利得制御信号に応じてMOSトランジスタ(Q4,Q5)のゲート端子に印加する制御電圧を設定し、シャットダウンモード時に制御電圧をドライバ回路の電源電圧よりも高く設定する制御回路(11)とを備える。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動入力信号を増幅して一対の信号出力端子から出力するように構成された差動対トランジスタと、
前記差動対トランジスタに定電流を供給するように構成された電流源と、
シャットダウンモード時に前記電流源から前記差動対トランジスタへの電流供給を停止させるように構成されたスイッチと、
前記一対の信号出力端子間に挿入されたMOSトランジスタからなる可変抵抗と、
通常の増幅モード時にドライバ回路の利得を所望の値に設定するための利得制御信号に応じて前記MOSトランジスタのゲート端子に印加する制御電圧を設定し、前記シャットダウンモード時に前記制御電圧をドライバ回路の電源電圧よりも高く設定するように構成された第1の制御回路とを備えることを特徴とするドライバ回路。
【請求項2】
請求項1記載のドライバ回路において、
前記増幅モード時に前記スイッチがオンとなり、前記シャットダウンモード時に前記スイッチがオフとなるように制御するように構成された第2の制御回路をさらに備えることを特徴とするドライバ回路。
【請求項3】
請求項1または2記載のドライバ回路において、
前記MOSトランジスタは、
ソース端子が正相側の前記信号出力端子に接続された第1のMOSトランジスタと、
ドレイン端子が前記第1のMOSトランジスタのドレイン端子に接続され、ソース端子が逆相側の前記信号出力端子に接続された第2のMOSトランジスタとを含み、
前記第1の制御回路は、前記第1、第2のMOSトランジスタのゲート-ソース間に加えることができる最大電圧にドライバ回路の電源電圧を足した電圧を、前記シャットダウンモード時の前記制御電圧とすることを特徴とするドライバ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャットダウン機能を備えたドライバ回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光通信用の光送信器に用いられるドライバ回路は、光送信器内の光変調器を駆動するために用いられる。ドライバ回路は、送信する電気信号の振幅強度を光変調器の駆動が可能なレベルにまで増幅する役割を果たす(非特許文献1参照)。
【0003】
ドライバ回路には、入力信号を増幅する通常の増幅モードとは別に、入力信号に異常があった等のときに信号を出力しないシャットダウンモードを備えることが求められる。シャットダウンモードを実現する一般的な方法として、図7に示すように、電流源トランジスタQ3のゲート端子にスイッチSW1を設ける方法がある。
【0004】
通常の増幅モードにおいては、スイッチSW1がオン状態であり、電流源トランジスタQ3のゲート端子にバイアス電圧Vbが印加され、差動対のトランジスタQ1,Q2に電流が流れる。一方、シャットダウンモードにおいては、スイッチSW1にシャットダウン信号SDが入力されることでスイッチSW1がオフになり、電流源トランジスタQ3へのバイアス電圧印加が停止される。その結果、差動対のトランジスタQ1,Q2に電流が流れなくなり、トランジスタQ1,Q2が動作しなくなるため、信号出力端子3,4から信号が出力されなくなる。
このように、図7に示した構成によれば、信号を出力しないシャットダウンモードを実現することができる。
【0005】
しかしながら、差動対を構成するトランジスタQ1,Q2には、図8に示すように寄生容量C1,C2が存在する。このため、トランジスタQ1,Q2が動作していない時でも、寄生容量C1,C2を介して入力信号Vin_P,Vin_Nが信号出力端子3,4に漏洩してしまうという課題があった。寄生容量C1,C2のインピーダンスは、高周波になる程低くなる。したがって、従来のドライバ回路には、特に高周波においてシャットダウンモード時の入出力アイソレーションが悪いという課題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Shinsuke Nakano,et al.,“A 2.25-mW/Gb/s 80-Gb/s-PAM4 linear driver with a single supply using stacked current-mode architecture in 65-nm CMOS”,2017 Symposium on VLSI Circuits,IEEE,2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、シャットダウンモード時に高い入出力アイソレーションを実現することができるドライバ回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のドライバ回路は、差動入力信号を増幅して一対の信号出力端子から出力するように構成された差動対トランジスタと、前記差動対トランジスタに定電流を供給するように構成された電流源と、シャットダウンモード時に前記電流源から前記差動対トランジスタへの電流供給を停止させるように構成されたスイッチと、前記一対の信号出力端子間に挿入されたMOSトランジスタからなる可変抵抗と、通常の増幅モード時にドライバ回路の利得を所望の値に設定するための利得制御信号に応じて前記MOSトランジスタのゲート端子に印加する制御電圧を設定し、前記シャットダウンモード時に前記制御電圧をドライバ回路の電源電圧よりも高く設定するように構成された第1の制御回路とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シャットダウンモード時に高い入出力アイソレーションを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の第1の実施例に係るドライバ回路の構成を示す回路図である。
図2図2は、従来および本発明の第1の実施例に係るドライバ回路の利得のシミュレーション結果を示す図である。
図3図3は、本発明の第2の実施例に係るドライバ回路の構成を示す回路図である。
図4図4は、本発明の第2の実施例における増幅モード時とシャットダウンモード時の制御電圧の上下関係を説明する図である。
図5図5は、従来および本発明の第2の実施例に係るドライバ回路の利得のシミュレーション結果を示す図である。
図6図6は、本発明の第3の実施例に係るドライバ回路の構成を示す回路図である。
図7図7は、従来のドライバ回路の構成を示す回路図である。
図8図8は、従来のドライバ回路の課題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施例に係るドライバ回路の構成を示す回路図である。本実施例のドライバ回路は、ゲート端子が信号入力端子1,2に接続され、ドレイン端子が信号出力端子3,4に接続されたNMOSトランジスタQ1,Q2(差動対トランジスタ)と、ドレイン端子がNMOSトランジスタQ1,Q2のソース端子に接続され、ソース端子がグラウンドに接続され、NMOSトランジスタQ1,Q2に定電流を供給する電流源となるNMOSトランジスタQ3と、一端が電圧電圧VDDに接続され、他端が信号出力端子3,4に接続された負荷抵抗R1,R2と、通常の増幅モード時にオンとなってバイアス電圧VbをNMOSトランジスタQ3のゲート端子に印加し、シャットダウンモード時にオフとなってNMOSトランジスタQ3のゲート端子へのバイアス電圧印加を停止するスイッチSW1と、一端がグラウンドに接続されたキャパシタC3,C4と、シャットダウンモード時にオンとなってキャパシタC3の他端と正相側の信号出力端子3とを接続し、増幅モード時にオフとなってキャパシタC3を信号出力端子3から切り離すスイッチSW2と、シャットダウンモード時にオンとなってキャパシタC4の他端と逆相側の信号出力端子4とを接続し、増幅モード時にオフとなってキャパシタC4を信号出力端子4から切り離すスイッチSW3と、スイッチSW1~SW3を制御する制御回路10とから構成される。
【0012】
本実施例では、図1のように従来のドライバ回路に、キャパシタC3,C4とスイッチSW2,SW3とを追加し、シャットダウンモード時における高周波の入出力アイソレーションを改善する。本実施例の動作と効果を以下で説明する。
【0013】
従来と同様に、本実施例のドライバ回路には、増幅モードとシャットダウンモードの2つの状態がある。
シャットダウンモード時には、スイッチSW1への制御入力としてシャットダウン信号SDが入力され、またスイッチSW2,SW3の制御入力としてシャットダウン信号SDの反転信号バーSDがスイッチSW2,SW3に入力される。
【0014】
シャットダウン信号SDおよび反転信号バーSDは、いずれもシャットダウンモードに入ることを指示する信号である。スイッチSW2,SW3に入力する信号を反転信号としている理由は、後述のようにスイッチSW2,SW3のオン/オフをスイッチSW1のオン/オフと逆にするためである。シャットダウン信号SDおよび反転信号バーSDは、制御回路10によって生成される。制御回路10は、例えば外部から異常を通知する信号が入力されたときに、シャットダウン信号SDおよび反転信号バーSDを出力する。
【0015】
従来と同様に、シャットダウン信号SDの入力によってスイッチSW1がオフになり、NMOSトランジスタQ3へのバイアス電圧印加が停止される。その結果、電流源であるNMOSトランジスタQ3からNMOSトランジスタQ1,Q2への電流供給が停止されるので、NMOSトランジスタQ1,Q2が動作しなくなり、信号出力端子3,4から信号が出力されなくなる。
【0016】
また、シャットダウン信号SDの反転信号バーSDの入力によってスイッチSW2,SW3がオンになり、信号出力端子3,4にキャパシタC3,C4が接続される。キャパシタC3,C4のインピーダンスは、高周波になる程低くなる。したがって、信号入力端子1,2から入力された高周波信号は、キャパシタC3,C4を通じてグラウンドの方に流れ、減衰する。
【0017】
一方、増幅モード時には、スイッチSW1へのシャットダウン信号SDの入力がなくなる(制御回路10からシャットダウン信号SDの反転信号が入力される)ので、スイッチSW1がオンになる。また、スイッチSW2,SW3への信号バーSDの入力がなくなる(制御回路10からシャットダウン信号SDと同レベルの信号が入力される)ので、スイッチSW2,SW3がオフになる。
【0018】
スイッチSW1がオンになったことにより、NMOSトランジスタQ3のゲート端子にバイアス電圧Vbが印加され、NMOSトランジスタQ1,Q2に電流が流れる。ドライバ回路は、信号入力端子1,2に入力された差動入力信号Vin_P,Vin_Nを増幅して、信号出力端子3,4から差動出力信号Vout_P,Vout_Nを出力する。
【0019】
また、スイッチSW2,SW3がオフになったことにより、キャパシタC3,C4が信号出力端子3,4から切り離される。このため、キャパシタC3,C4を設けたことによる帯域劣化がほぼなくなる。
【0020】
図2は従来および本実施例の利得のシミュレーション結果を示す図である。従来のドライバ回路としては、図7に示した構成を用いている。図2のG0_ampは従来のドライバ回路の増幅モード時の利得を示し、G1_ampは本実施例のドライバ回路の増幅モード時の利得を示している。また、G0_shutは従来のドライバ回路のシャットダウンモード時の利得を示し、G1_shutは本実施例のドライバ回路のシャットダウンモード時の利得を示している。
【0021】
図2によれば、本実施例のドライバ回路は、増幅モード時における利得と帯域特性は従来とほぼ変わらないが、シャットダウンモード時における高周波側の利得が大きく低下しており、入出力アイソレーション特性が改善されていることが分かる。
【0022】
[第2の実施例]
従来のドライバ回路の中には可変利得機能を持つものが存在する。本実施例は、この可変利得機能を応用して、シャットダウンモード時における入出力アイソレーション特性を改善する例である。図3は本実施例のドライバ回路の構成を示す回路図である。
【0023】
本実施例のドライバ回路は、NMOSトランジスタQ1~Q3と、負荷抵抗R1,R2と、ソース端子が信号出力端子3に接続されたNMOSトランジスタQ4と、ドレイン端子がNMOSトランジスタQ4のドレイン端子に接続され、ソース端子が信号出力端子4に接続されたNMOSトランジスタQ5と、制御回路10と、増幅モード時にドライバ回路の利得を所望の値に設定するための利得制御信号CTLに応じてNMOSトランジスタQ4,Q5のゲート端子に印加する制御電圧VGを設定し、シャットダウンモード時に制御電圧VGをドライバ回路の電源電圧VDDよりも高く設定する制御回路11とから構成される。
【0024】
NMOSトランジスタQ4,Q5は、可変抵抗として機能する。NMOSトランジスタQ4,Q5のゲート端子にかかる制御電圧VGを上げることで、NMOSトランジスタQ4,Q5のドレイン-ソース間抵抗値が下がり、信号出力端子3,4から出力される差動出力信号Vout_P,Vout_Nが減衰する。
【0025】
従来、このような可変抵抗による可変利得機能は、増幅モード時にのみ使用されていた。増幅モード時における制御電圧VGの範囲は、NMOSトランジスタQ4,Q5のゲート-ソース間に加えることができる最大電圧(耐圧)Vbreakを考慮して、VCM_op~VCM_op+Vbreakの範囲にする必要がある。VCM_opは、増幅モードでドライバ回路が動作している時の信号出力端子3,4のコモン電圧である。制御電圧VGをVCM_op+Vbreakに設定した時に、NMOSトランジスタQ4,Q5のオン抵抗が最も低くなり、差動出力信号Vout_P,Vout_Nが最も減衰する。
【0026】
一方、第1の実施例で説明したとおり、制御回路10からシャットダウン信号SDが出力され、スイッチSW1がオフになると、信号出力端子3,4に電流が流れなくなるため、コモン電圧VCM_opは電源電圧VDDまで上昇する。この状態で制御電圧VGをVCM_op+Vbreakに設定しても、NMOSトランジスタQ4,Q5のオン抵抗は最も低い状態にならない。
【0027】
そこで、本実施例では、シャットダウンモード時に、制御電圧VGをドライバ回路の電源電圧VDDよりも高くなるようにする。具体的には、制御回路11は、シャットダウン信号SDが入力されたとき、制御電圧VGを、電源電圧VDDにNMOSトランジスタQ4,Q5の耐圧Vbreakを足した電圧VDD+Vbreakに設定する。これにより、シャットダウンモード時のNMOSトランジスタQ4,Q5のオン抵抗は最も低い値となり、図7に示した従来のドライバ回路よりも高い入出力アイソレーションを実現することができる。
【0028】
なお、増幅モード時には、制御回路11へのシャットダウン信号SDの入力がなくなる(制御回路10からシャットダウン信号SDの反転信号が入力される)。このとき、制御回路11は、ドライバ回路の利得を所望の値に設定するための利得制御信号CTLに対応する値の制御電圧VGを出力する。増幅モード時の制御電圧VGの範囲は、上記のとおりVCM_op~VCM_op+Vbreakである。以上の制御電圧VGの上下関係を示すと図4のようになる。
【0029】
図5は従来および本実施例の利得のシミュレーション結果を示す図である。従来のドライバ回路としては、図3に示す構成においてシャットダウンモード時に制御電圧VGをVCM_op+Vbreakに設定する構成を用いている。図2と同様に、図5のG0_ampは従来のドライバ回路の増幅モード時の利得を示し、G1_ampは本実施例のドライバ回路の増幅モード時の利得を示している。また、G0_shutは従来のドライバ回路のシャットダウンモード時の利得を示し、G1_shutは本実施例のドライバ回路のシャットダウンモード時の利得を示している。
【0030】
図5によれば、本実施例のドライバ回路は、シャットダウンモード時に制御電圧VGをVCM_op+Vbreakに設定する従来のドライバ回路と比べて、入出力アイソレーション特性が改善されていることが分かる。
【0031】
[第3の実施例]
第1の実施例と第2の実施例を組み合わせることで、シャットダウンモード時の入出力アイソレーション特性をさらに改善することが可能である。
第1の実施例と第2の実施例を組み合わせた構成を図6に示す。図6の各構成要素の動作は第1、第2の実施例で説明したとおりである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、光送信器等に適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
Q1~Q5…NMOSトランジスタ、R1,R2…負荷抵抗、C3,C4…キャパシタ、SW1~SW3…スイッチ、10,11…制御回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8