(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126803
(43)【公開日】2023-09-12
(54)【発明の名称】脂環式化合物末端の重合体を含むレジスト下層膜形成組成物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/11 20060101AFI20230905BHJP
C08G 59/16 20060101ALI20230905BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
G03F7/11 503
C08G59/16
G03F7/20 521
G03F7/20 501
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099736
(22)【出願日】2023-06-19
(62)【分割の表示】P 2021518387の分割
【原出願日】2020-05-01
(31)【優先権主張番号】P 2019088345
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】若山 浩之
(72)【発明者】
【氏名】水落 龍太
(72)【発明者】
【氏名】清水 祥
(72)【発明者】
【氏名】染谷 安信
(57)【要約】 (修正有)
【課題】所望のレジストパターンを形成できるレジスト下層膜を形成するための組成物、及び該レジスト下層膜形成組成物を用いたレジストパターン製造方法、半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】ポリマーの末端に、炭素-炭素結合がヘテロ原子で中断されていてもよく且つ置換基で置換されていてもよい脂肪族環を含み、さらに有機溶媒を含む、レジスト下層膜形成組成物である。前記脂肪族環が、炭素原子数3~10の単環式又は多環式脂肪族環である。前記多環式脂肪族環が、ビシクロ環又はトリシクロ環である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーの末端に、
【化1】
又は炭素原子数3~10の単環式若しくは多環式脂肪族環を含み、さらに有機溶媒を含む、レジスト下層膜形成組成物であって、
前記ポリマーが、下記式(3)で表される少なくとも1種の構造単位を主鎖に有する、
レジスト下層膜形成組成物。
【化2】
(式(3)中、A
1、A
2、A
3、A
4、A
5及びA
6は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を表し、Q
1は2価の有機基を表し、m
1及びm
2はそれぞれ独立に0又は1を表す。)
【請求項2】
前記ポリマーが、1,4-テレフタル酸ジグリシジル、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジグリシジル、1,6-ジヒドロキシナフタレンジグリシジル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジル、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキサン)プロパンジグリシジル、1,4-ブタンジオールジグリシジル、モノアリルイソシアヌル酸ジグリシジル、モノメチルイソシアヌル酸ジグリシジル、5,5-ジエチルバルビツール酸ジグリシジル、及び5,5-ジメチルヒダントインジグリシジルからなる群より選択されるモノマー(X)と、イソフタル酸、5-ヒドロキシイソフタル酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、コハク酸、フマル酸、酒石酸、3,3’-ジチオジプロピオン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロブタン酸二無水物、シクロペンタン酸二無水物、モノアリルイソシアヌル酸、5,5-ジエチルバルビツール酸、ジグリコール酸、アセトンジカルボン酸、2,2’-チオジグリコール酸、4-ヒドロキシ安息香酸-4-ヒドロキシフェニル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3-ビス(カルボキシメチル)-5-メチルイソシアヌレート、及び1,3-ビス(カルボキシメチル)-5-アリルイソシアヌレートからなる群より選択されるモノマー(Y)から形成された構造単位を主鎖に有する、請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項3】
前記多環式脂肪族環が、ビシクロ環又はトリシクロ環である、請求項2に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項4】
前記脂肪族環が、少なくとも1つの不飽和結合を有する、請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項5】
前記脂肪族環が、ヒドロキシ基、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、炭素原子数1~10のアシルオキシ基及びカルボキシ基から選ばれる置換基で置換されていてもよい、請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項6】
前記式(3)において、Q
1は下記式(5)で表される2価の有機基を表す、請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【化3】
(式中、Yは下記式(6)又は式(7)で表される二価の基を表す。)
【化4】
(式中、R
6及びR
7はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数3~6のアルケニル基、ベンジル基又はフェニル基を表し、前記フェニル基は、炭素原子数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1~6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されていてもよく、又はR
6とR
7は互いに結合して、該R
6及びR
7と結合した炭素原子と共に炭素原子数3~6の環を形成していてもよい。)
【請求項7】
前記ポリマーが、さらに主鎖中にジスルフィド結合を含む、請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項8】
硬化触媒をさらに含む、請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項9】
架橋剤をさらに含む、請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物からなる塗布膜の焼成物であることを特徴とするレジスト下層膜。
【請求項11】
半導体基板上に請求項1~9の何れか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を塗布しベークしてレジスト下層膜を形成する工程、前記レジスト下層膜上にレジストを塗布しベークしてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト下層膜と前記レジストで被覆された半導体基板を露光する工程、露光後の前記レジスト膜を現像し、パターニングする工程を含む、パターニングされた基板の製造方法。
【請求項12】
半導体基板上に、請求項1~9の何れか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物からなるレジスト下層膜を形成する工程と、
前記レジスト下層膜の上にレジスト膜を形成する工程と、
レジスト膜に対する光又は電子線の照射とその後の現像によりレジストパターンを形成する工程と、
形成された前記レジストパターンを介して前記レジスト下層膜をエッチングすることによりパターン化されたレジスト下層膜を形成する工程と、
パターン化された前記レジスト下層膜により半導体基板を加工する工程と、
を含むことを特徴とする、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造におけるリソグラフィープロセスにおいて、特に最先端(ArF、EUV、EB等)のリソグラフィープロセスに用いられる組成物に関する。また、前記レジスト下層膜を適用したレジストパターン付き基板の製造方法、及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から半導体装置の製造において、レジスト組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。前記微細加工は、シリコンウェハー等の半導体基板上にフォトレジスト組成物の薄膜を形成し、その上にデバイスのパターンが描かれたマスクパターンを介して紫外線などの活性光線を照射し、現像し、得られたフォトレジストパターンを保護膜として基板をエッチング処理することにより、基板表面に、前記パターンに対応する微細凹凸を形成する加工法である。近年、半導体デバイスの高集積度化が進み、使用される活性光線も、従来使用されていたi線(波長365nm)、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)に加え、最先端の微細加工にはEUV光(波長13.5nm)又はEB(電子線)の実用化が検討されている。これに伴い、活性光線の半導体基板からの乱反射、定在波の影響が大きな問題となっている。そこでこの問題を解決すべく、レジストと半導体基板の間に反射防止膜(Bottom Anti-Reflective Coating:BARC)を設ける方法が広く検討されている。当該反射防止膜はレジスト下層膜とも称される。かかる反射防止膜としては、その使用の容易さなどから、吸光部位を有するポリマー等からなる有機反射防止膜について数多くの検討が行われている。
特許文献1には、多環式脂肪族環を有する繰り返し単位構造をポリマーの主鎖に含有する該ポリマーを含む半導体装置製造のリソグラフィー工程に用いるレジスト下層膜形成組成物が開示されている。特許文献2には、特定構造を末端に有するポリマーを含むリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-093162号公報
【特許文献2】国際公開2013/141015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レジスト下層膜に要求される特性としては、例えば、上層に形成されるレジスト膜とのインターミキシングが起こらないこと(レジスト溶剤に不溶であること)、レジスト膜に比べてドライエッチング速度が速いことが挙げられる。
EUV露光を伴うリソグラフィーの場合、形成されるレジストパターンの線幅は32nm以下となり、EUV露光用のレジスト下層膜は、従来よりも膜厚を薄く形成して用いられる。このような薄膜を形成する際、基板表面、使用するポリマーなどの影響により、ピンホール、凝集などが発生しやすく、欠陥のない均一な膜を形成することが困難であった。
一方、レジストパターン形成の際、現像工程において、レジスト膜を溶解し得る溶剤、通常は有機溶剤を用いて前記レジスト膜の未露光部を除去し、当該レジスト膜の露光部をレジストパターンとして残す方法が採用されることがある。このようなネガ現像プロセスにおいては、レジストパターンの密着性の改善が大きな課題となっている。
また、レジストパターン形成時のLWR(Line Width Roughness、ライン・ウィドス・ラフネス、線幅の揺らぎ(ラフネス))の悪化を抑制し、良好な矩形形状を有するレジストパターンを形成すること、及びレジスト感度の向上が求められている。
【0005】
本発明は、上記課題を解決した、所望のレジストパターンを形成できるレジスト下層膜を形成するための組成物、及び該レジスト下層膜形成組成物を用いるレジストパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下を包含する。
[1] ポリマーの末端に、炭素-炭素結合がヘテロ原子で中断されていてもよく且つ置換基で置換されていてもよい脂肪族環を含み、さらに有機溶媒を含む、レジスト下層膜形成組成物。
[2] 前記脂肪族環が、炭素原子数3~10の単環式又は多環式脂肪族環である、[1]に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[3] 前記多環式脂肪族環が、ビシクロ環又はトリシクロ環である、[2]に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[4] 前記脂肪族環が、少なくとも1つの不飽和結合を有する、[1]~[3]何れか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[5] 前記置換基が、ヒドロキシ基、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、炭素原子数1~10のアシルオキシ基及びカルボキシ基から選ばれる、[1]~[4]何れか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【0007】
[6] 前記ポリマーが、下記式(3)で表される少なくとも1種の構造単位を主鎖に有する、[1]~[5]何れか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【0008】
【0009】
(式(3)中、A1、A2、A3、A4、A5及びA6は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を表し、Q1は2価の有機基を表し、m1及びm2はそれぞれ独立に0又は1を表す。)
[7] 前記式(3)において、Q1は下記式(5)で表される2価の有機基を表す、[6]に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【0010】
【0011】
(式中、Yは下記式(6)又は式(7)で表される二価の基を表す。)
【0012】
【0013】
(式中、R6及びR7はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数3~6のアルケニル基、ベンジル基又はフェニル基を表し、前記フェニル基は、炭素原子数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1~6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されていてもよく、又はR6とR7は互いに結合して、該R6及びR7と結合した炭素原子と共に炭素原子数3~6の環を形成していてもよい。)
[8] 前記ポリマーが、さらに主鎖中にジスルフィド結合を含む、[1]~[7]何れか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[9] 硬化触媒をさらに含む、[1]~[8]の何れか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[10] 架橋剤をさらに含む、[1]~[9]の何れか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[11] [1]~[10]の何れか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物からなる塗布膜の焼成物であることを特徴とするレジスト下層膜。
[12] 半導体基板上に[1]~[10]の何れか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を塗布しベークしてレジスト下層膜を形成する工程、前記レジスト下層膜上にレジストを塗布しベークしてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト下層膜と前記レジストで被覆された半導体基板を露光する工程、露光後の前記レジスト膜を現像し、パターニングする工程を含む、パターニングされた基板の製造方法。
[13] 半導体基板上に、[1]~[10]の何れか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物からなるレジスト下層膜を形成する工程と、
前記レジスト下層膜の上にレジスト膜を形成する工程と、
レジスト膜に対する光又は電子線の照射とその後の現像によりレジストパターンを形成する工程と、
形成された前記レジストパターンを介して前記レジスト下層膜をエッチングすることによりパターン化されたレジスト下層膜を形成する工程と、
パターン化された前記レジスト下層膜により半導体基板を加工する工程と、
を含むことを特徴とする、半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物は、当該レジスト下層膜形成組成物に含まれるポリマー(又は重合体とも言う)の末端が、炭素-炭素結合がヘテロ原子で中断されていてもよい脂肪族環、さらに置換基で置換されていてもよい脂肪族環でキャッピングされていることを特徴とするものであり、斯かるポリマー及び有機溶媒、好ましくはさらに架橋剤及び/又は架橋反応を促進させる化合物(硬化触媒)を含有する組成物である。本願のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物は、このような構成とすることにより、良好な矩形形状を有するレジストパターンの形成(パターン倒れが発生しない)、レジストパターン形成時のLWR悪化の抑制及び感度の向上を達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
≪用語の説明≫
本発明において用いられる用語は、他に特に断りのない限り、以下の定義を有する。
【0016】
「炭素原子数1~10のアルキル基」としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基、1-エチル-2-メチル-n-プロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコデシル基等が挙げられる。
【0017】
「炭素原子数1~20のアルコキシ基」としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、1-メチル-n-ブトキシ基、2-メチル-n-ブトキシ基、3-メチル-n-ブトキシ基、1,1-ジメチル-n-プロポキシ基、1,2-ジメチル-n-プロポキシ基、2,2-ジメチル-n-プロポキシ基、1-エチル-n-プロポキシ基、n-ヘキシルオキシ基、1-メチル-n-ペンチルオキシ基、2-メチル-n-ペンチルオキシ基、3-メチル-n-ペンチルオキシ基、4-メチル-n-ペンチルオキシ基、1,1-ジメチル-n-ブトキシ基、1,2-ジメチル-n-ブトキシ基、1,3-ジメチル-n-ブトキシ基、2,2-ジメチル-n-ブトキシ基、2,3-ジメチル-n-ブトキシ基、3,3-ジメチル-n-ブトキシ基、1-エチル-n-ブトキシ基、2-エチル-n-ブトキシ基、1,1,2-トリメチル-n-プロポキシ基、1,2,2-トリメチル-n-プロポキシ基、1-エチル-1-メチル-n-プロポキシ基、及び1-エチル-2-メチル-n-プロポキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ノルボルニオキシ基、アダマンチルオキシ基、アダマンタンメチルオキシ基、アダマンタンエチルオキシ基、テトラシクロデカニルオキシ基、トリシクロデカニルオキシ基等が挙げられる。
【0018】
「炭素原子数1~10のアシルオキシ基」としては、下記式(20):
【0019】
【化4】
(式(20)中、Zは水素原子、又は上記「炭素原子数1~10のアルキル基」中の「炭素原子数1~9のアルキル基」を表し、*は上記「脂肪族環」との結合部分を表す。)で表されるものを言う。
【0020】
「炭素原子数3~6のアルケニル基」としては、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチル-1-エテニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-エチルエテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-n-プロピルエテニル基、1-メチル-1-ブテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、1-メチル-3-ブテニル基、2-エチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-3-ブテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-3-ブテニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基、1-i-プロピルエテニル基、1,2-ジメチル-1-プロペニル基、1,2-ジメチル-2-プロペニル基、1-シクロペンテニル基、2-シクロペンテニル基、3-シクロペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、1-メチル-1-ペンテニル基、1-メチル-2-ペンテニル基、1-メチル-3-ペンテニル基、1-メチル-4-ペンテニル基、1-n-ブチルエテニル基、2-メチル-1-ペンテニル基、2-メチル-2-ペンテニル基、2-メチル-3-ペンテニル基、2-メチル-4-ペンテニル基、2-n-プロピル-2-プロペニル基、3-メチル-1-ペンテニル基、3-メチル-2-ペンテニル基、3-メチル-3-ペンテニル基、3-メチル-4-ペンテニル基、3-エチル-3-ブテニル基、4-メチル-1-ペンテニル基、4-メチル-2-ペンテニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、4-メチル-4-ペンテニル基、1,1-ジメチル-2-ブテニル基、1,1-ジメチル-3-ブテニル基、1,2-ジメチル-1-ブテニル基、1,2-ジメチル-2-ブテニル基、1,2-ジメチル-3-ブテニル基、1-メチル-2-エチル-2-プロペニル基、1-s-ブチルエテニル基、1,3-ジメチル-1-ブテニル基、1,3-ジメチル-2-ブテニル基、1,3-ジメチル-3-ブテニル基、1-i-ブチルエテニル基、2,2-ジメチル-3-ブテニル基、2,3-ジメチル-1-ブテニル基、2,3-ジメチル-2-ブテニル基、2,3-ジメチル-3-ブテニル基、2-i-プロピル-2-プロペニル基、3,3-ジメチル-1-ブテニル基、1-エチル-1-ブテニル基、1-エチル-2-ブテニル基、1-エチル-3-ブテニル基、1-n-プロピル-1-プロペニル基、1-n-プロピル-2-プロペニル基、2-エチル-1-ブテニル基、2-エチル-2-ブテニル基、2-エチル-3-ブテニル基、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル基、1-t-ブチルエテニル基、1-メチル-1-エチル-2-プロペニル基、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル基、1-エチル-2-メチル-2-プロペニル基、1-i-プロピル-1-プロペニル基、1-i-プロピル-2-プロペニル基、1-メチル-2-シクロペンテニル基、1-メチル-3-シクロペンテニル基、2-メチル-1-シクロペンテニル基、2-メチル-2-シクロペンテニル基、2-メチル-3-シクロペンテニル基、2-メチル-4-シクロペンテニル基、2-メチル-5-シクロペンテニル基、2-メチレン-シクロペンチル基、3-メチル-1-シクロペンテニル基、3-メチル-2-シクロペンテニル基、3-メチル-3-シクロペンテニル基、3-メチル-4-シクロペンテニル基、3-メチル-5-シクロペンテニル基、3-メチレン-シクロペンチル基、1-シクロヘキセニル基、2-シクロヘキセニル基及び3-シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0021】
「炭素原子数1~6のアルキルチオ基」としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基及びヘキシルチオ基等が挙げられる。
【0022】
「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0023】
「炭素原子数6~40のアリーレン基」としては、フェニレン基、o-メチルフェニレン基、m-メチルフェニレン基、p-メチルフェニレン基、o-クロルフェニレン基、m-クロルフェニレン基、p-クロルフェニレン基、o-フルオロフェニレン基、p-フルオロフェニレン基、o-メトキシフェニレン基、p-メトキシフェニレン基、p-ニトロフェニレン基、p-シアノフェニレン基、α-ナフチレン基、β-ナフチレン基、o-ビフェニリレン基、m-ビフェニリレン基、p-ビフェニリレン基、1-アントリレン基、2-アントリレン基、9-アントリレン基、1-フェナントリレン基、2-フェナントリレン基、3-フェナントリレン基、4-フェナントリレン基及び9-フェナントリレン基が挙げられる。
【0024】
<レジスト下層膜形成組成物>
本願のレジスト下層膜形成組成物は、該レジスト下層膜形成組成物が含むポリマーの末端に、炭素-炭素結合がヘテロ原子で中断されていてもよい脂肪族環、さらに置換基で置換されていてもよい脂肪族環を含み、さらに有機溶媒を含む。
【0025】
炭素-炭素結合がヘテロ原子で中断されていてもよいとは、本願の脂肪族環の炭素-炭素結合の間に-O-、-S-結合を含むことを言う。
【0026】
置換基で置換されていてもよい脂肪族環とは、本願の脂肪族環の水素原子の全部又は一部が、例えばヒドロキシ基、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、炭素原子数1~10のアシルオキシ基及びカルボキシ基で置換されていることを言う。
【0027】
前記脂肪族環が、炭素原子数3~10の単環式又は多環式脂肪族環であることが好ましい。
【0028】
「炭素原子数3~10の単環式又は多環式脂肪族環」の一例としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロへプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、スピロビシクロペンタン、ビシクロ[2.1.0]ペンタン、ビシクロ[3.2.1]オクタン、トリシクロ[3.2.1.02,7]オクタン、スピロ[3,4]オクタン、ノルボルナン、ノルボルネン、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン(アダマンタン)等が挙げられる。
【0029】
前記多環式脂肪族環が、ビシクロ環又はトリシクロ環であることが好ましい。
これらの内、ビシクロ環としては、ノルボルナン、ノルボルネン、スピロビシクロペンタン、ビシクロ[2.1.0]ペンタン、ビシクロ[3.2.1]オクタン、スピロ[3,4]オクタン等が挙げられる。
これらの内、トリシクロ環としては、トリシクロ[3.2.1.02,7]オクタン、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン(アダマンタン)が挙げられる。
【0030】
前記脂肪族環が、少なくとも1つの不飽和結合(例えば2重結合、3重結合)を有することが好ましい。前記脂肪族環が、1つ~3つの不飽和結合を有することが好ましい。前記脂肪族環が、1つ又は2つの不飽和結合を有することが好ましい。上記不飽和結合は2重結合であることが好ましい。
【0031】
「炭素-炭素結合がヘテロ原子で中断されていてもよく且つ置換基で置換されていてもよい脂肪族環」の具体例としては、下記記載の化合物を該ポリマーの末端に自体公知の方法で反応させることで誘導される。
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
前記ポリマーが、下記式(3)で表される少なくとも1種の構造単位を主鎖に有することが好ましい。
【0036】
【0037】
(式(3)中、A1、A2、A3、A4、A5及びA6は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を表し、Q1は2価の有機基を表し、m1及びm2はそれぞれ独立に0又は1を表す。)
前記式(3)において、Q1は下記式(5)で表される2価の有機基を表すことが好ましい。
【0038】
【0039】
(式中、Yは下記式(6)又は式(7)で表される二価の基を表す。)
【0040】
【0041】
(式中、R6及びR7はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数3~6のアルケニル基、ベンジル基又はフェニル基を表し、前記フェニル基は、炭素原子数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1~6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されていてもよく、又はR6とR7は互いに結合して、該R6及びR7と結合した炭素原子と共に炭素原子数3~6の環を形成していてもよい。)
【0042】
「炭素原子数3~6の環」としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンタジエン及びシクロヘキサンが挙げられる。
【0043】
前記ポリマーが、さらに主鎖中にジスルフィド結合を含むことが好ましい。
【0044】
前記ポリマーが、置換基で置換されていてもよい炭素原子数6~40のアリーレン基を含むことが好ましい。置換基の意味は、上述の内容と同じである。
【0045】
当該ポリマーの重量平均分子量は、例えば2000~50000である。
【0046】
前記式(3)で表され、m1及びm2が1を表す構造単位を形成するモノマーとしては、例えば、下記式(10-a)~式(10-k)で表されるエポキシ基を2つ有する化合物、
【0047】
【0048】
すなわち、1,4-テレフタル酸ジグリシジル、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジグリシジル、1,6-ジヒドロキシナフタレンジグリシジル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジル、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキサン)プロパンジグリシジル、1,4-ブタンジオールジグリシジル、モノアリルイソシアヌル酸ジグリシジル、モノメチルイソシアヌル酸ジグリシジル、5,5-ジエチルバルビツール酸ジグリシジル、5,5-ジメチルヒダントインジグリシジルが挙げられるが、これらの例に限定されるわけではない。
【0049】
前記式(3)で表され、m1及びm2が0で表される構造単位を形成するモノマーとしては、例えば、下記式(11-a)~式(11-s)で表される、カルボキシル基、ヒドロキシフェニル基又はイミド基を2つ有する化合物、及び酸二無水物、
【0050】
【0051】
すなわち、イソフタル酸、5-ヒドロキシイソフタル酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、コハク酸、フマル酸、酒石酸、3,3’-ジチオジプロピオン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロブタン酸二無水物、シクロペンタン酸二無水物、モノアリルイソシアヌル酸、5,5-ジエチルバルビツール酸、ジグリコール酸、アセトンジカルボン酸、2,2’-チオジグリコール酸、4-ヒドロキシ安息香酸-4-ヒドロキシフェニル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3-ビス(カルボキシメチル)-5-メチルイソシアヌレート、1,3-ビス(カルボキシメチル)-5-アリルイソシアヌレートが挙げられるが、これらの例に限定されるわけではない。
【0052】
前記式(3)で表されm1及びm2が1を表す構造単位を形成するモノマー(2官能)と、前記式(3)で表され、m1及びm2が0で表される構造単位を形成するモノマー(2官能)との共重合比(仕込み重量比)は例えば1:2~2:1である。
さらに本願のポリマー末端に結合する脂肪族環を誘導するためのモノマー(ポリマーと主に反応する部位が1官能)と、上記モノマー合計に対する仕込み重量比は、例えば20:1~5:1である。
「官能」とは、物質の化学的属性や化学反応性に着目した概念で、官能基というときにはそれぞれに固有の物性や化学反応性が想定されているが、本願では、他の化合物と結合できる反応性置換基のことを言う。
前記式(3)で表される構造単位の繰り返し数は、例えば5以上10000以下の範囲である。
【0053】
本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれる有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、4-メチル-2-ペンタノール、2―ヒドロキシイソ酪酸メチル、2―ヒドロキシイソ酪酸エチル、エトキシ酢酸エチル、酢酸2-ヒドロキシエチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、2-ヘプタノン、メトキシシクロペンタン、アニソール、γ-ブチロラクトン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、及びN,N-ジメチルアセトアミドが挙げられる。これらの溶剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの溶媒の中でプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、及びシクロヘキサノン等が好ましい。特にプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。
そして、本発明のレジスト下層膜形成組成物に対する有機溶剤の割合は、例えば50質量%以上99.9質量%以下である。
本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれるポリマーは、当該レジスト下層膜形成組成物に対し、例えば0.1質量%~50質量%である。
【0054】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、ポリマー及び有機溶剤の他に、架橋剤、及び架橋反応を促進させる化合物である架橋触媒(硬化触媒)を含んでもよい。本発明のレジスト下層膜形成組成物から有機溶剤を除いた成分を固形分と定義すると、その固形分はポリマー及び、必要に応じて添加される架橋剤、架橋触媒などの添加物を含む。その添加剤の割合は、本発明のレジスト下層膜形成組成物の固形分に対し、例えば0.1質量%~50質量%、好ましくは1質量%~30質量%である。
【0055】
本発明のレジスト下層膜形成組成物に任意成分として含まれる架橋剤としては、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン、1,3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル(テトラメトキシメチルグリコールウリル)(POWDERLINK〔登録商標〕1174)、1,3,4,6-テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3-テトラキス(ブトキシメチル)尿素、1,1,3,3-テトラキス(メトキシメチル)尿素、及び3,3’,5,5’-テトラキス(メトキシメチル)4,4’-ビフェノールが挙げられる。上記架橋剤が使用される場合、当該架橋剤の含有割合は、前記ポリマーに対し、例えば1質量%~50質量%であり、好ましくは、5質量%~30質量%である。
【0056】
本発明のレジスト下層膜形成組成物に任意成分として含まれる硬化触媒(架橋触媒)としては、例えば、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウム-p-トルエンスルホネート(ピリジニウム-p-トルエンスルホン酸)、ピリジニウム-p-ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ピリジニウム-トリフルオロメタンスルホン酸、シクロヘキシルp-トルエンスルホネート、モルホリン、p-トルエンスルホネート、サリチル酸、カンファースルホン酸、5-スルホサリチル酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、1-ナフタレンスルホン酸、クエン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸等のスルホン酸化合物及びカルボン酸化合物が挙げられる。上記架橋触媒が使用される場合、当該架橋触媒の含有割合は、前記架橋剤に対し、例えば0.1質量%~50質量%であり、好ましくは、1質量%~30質量%である。
【0057】
本発明のレジスト下層膜形成組成物には、ピンホールやストレーション等の発生がなく、表面むらに対する塗布性をさらに向上させるために、さらに界面活性剤を添加することができる。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトップEF301、EF303、EF352((株)トーケムプロダクツ製、商品名)、メガファックF171、F173、R-30(大日本インキ(株)製、商品名)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製、商品名)、アサヒガードAG710、サーフロンS-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製、商品名)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)等を挙げることができる。これらの界面活性剤の配合量は、本発明のレジスト下層膜形成組成物の全固形分に対して通常2.0質量%以下、好ましくは1.0質量%以下である。これらの界面活性剤は単独で添加してもよいし、また2種以上の組合せで添加することもできる。
【0058】
<レジスト下層膜>
本発明に係るレジスト下層膜は、上述したレジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し、焼成することにより製造することができる。
本発明のレジスト下層膜形成組成物が塗布される半導体基板としては、例えば、シリコンウエハ、ゲルマニウムウエハ、及びヒ化ガリウム、リン化インジウム、窒化ガリウム、窒化インジウム、窒化アルミニウム等の化合物半導体ウエハが挙げられる。
表面に無機膜が形成された半導体基板を用いる場合、当該無機膜は、例えば、ALD(原子層堆積)法、CVD(化学気相堆積)法、反応性スパッタ法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、スピンコーティング法(スピンオングラス:SOG)により形成される。前記無機膜として、例えば、ポリシリコン膜、酸化ケイ素膜、窒化珪素膜、BPSG(Boro-Phospho Silicate Glass)膜、窒化チタン膜、窒化酸化チタン膜、タングステン膜、窒化ガリウム膜、及びヒ化ガリウム膜が挙げられる。
このような半導体基板上に、スピナー、コーター等の適当な塗布方法により本発明のレジスト下層膜形成組成物を塗布する。その後、ホットプレート等の加熱手段を用いてベークすることによりレジスト下層膜を形成する。ベーク条件としては、ベーク温度100℃~400℃、ベーク時間0.3分~60分間の中から適宜、選択される。好ましくは、ベーク温度120℃~350℃、ベーク時間0.5分~30分間、より好ましくは、ベーク温度150℃~300℃、ベーク時間0.8分~10分間である。
形成されるレジスト下層膜の膜厚としては、例えば0.001μm(1nm)~10μm、0.002μm(2nm)~1μm、0.005μm(5nm)~0.5μm(500nm)、0.001μm(1nm)~0.05μm(50nm)、0.002μm(2nm)~0.05μm(50nm)、0.003μm(1nm)~0.05μm(50nm)、0.004μm(4nm)~0.05μm(50nm)、0.005μm(5nm)~0.05μm(50nm)、0.003μm(3nm)~0.03μm(30nm)、0.003μm(3nm)~0.02μm(20nm)、0.005μm(5nm)~0.02μm(20nm)である。ベーク時の温度が、上記範囲より低い場合には架橋が不十分となることがある。一方、ベーク時の温度が上記範囲より高い場合は、レジスト下層膜が熱によって分解してしまうことがある。
【0059】
<パターニングされた基板の製造方法、半導体装置の製造方法>
パターニングされた基板の製造方法は以下の工程を経る。通常、レジスト下層膜の上にフォトレジスト層を形成して製造される。レジスト下層膜の上に自体公知の方法で塗布、焼成して形成されるフォトレジストとしては露光に使用される光に感光するものであれば特に限定はない。ネガ型フォトレジスト及びポジ型フォトレジストのいずれも使用できる。ノボラック樹脂と1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとからなるポジ型フォトレジスト、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト、酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物とアルカリ可溶性バインダーと光酸発生剤とからなる化学増幅型フォトレジスト、及び酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物と光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト、メタル元素を含有するレジストなどがある。例えば、JSR(株)製商品名V146G、シプレー社製商品名APEX-E、住友化学工業(株)製商品名PAR710、及び信越化学工業(株)製商品名AR2772、SEPR430等が挙げられる。また、例えば、Proc.SPIE,Vol.3999,330-334(2000)、Proc.SPIE,Vol.3999,357-364(2000)、やProc.SPIE,Vol.3999,365-374(2000)に記載されているような、含フッ素原子ポリマー系フォトレジストを挙げることができる。
【0060】
露光は、所定のパターンを形成するためのマスク(レチクル)を通して行われ、例えば、i線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUV(極端紫外線)またはEB(電子線)が使用されるが、本願のレジスト下層膜形成組成物は、EUV(極端紫外線)露光用に適用されることが好ましい。現像にはアルカリ現像液が用いられ、現像温度5℃~50℃、現像時間10秒~300秒から適宜選択される。アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n-プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ-n-ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第4級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類、等のアルカリ類の水溶液を使用することができる。さらに、上記アルカリ類の水溶液にイソプロピルアルコール等のアルコール類、ノニオン系等の界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。これらの中で好ましい現像液は第四級アンモニウム塩、さらに好ましくはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド及びコリンである。さらに、これらの現像液に界面活性剤などを加えることもできる。アルカリ現像液に代えて、酢酸ブチル等の有機溶媒で現像を行い、フォトレジストのアルカリ溶解速度が向上していない部分を現像する方法を用いることもできる。上記工程を経て、上記レジストがパターニングされた基板が製造できる。
【0061】
次いで、形成したレジストパターンをマスクとして、前記レジスト下層膜をドライエッチングする。その際、用いた半導体基板の表面に前記無機膜が形成されている場合、その無機膜の表面を露出させ、用いた半導体基板の表面に前記無機膜が形成されていない場合、その半導体基板の表面を露出させる。その後基板を自体公知の方法(ドライエッチング法等)により基板を加工する工程を経て、半導体装置が製造できる。
【実施例0062】
次に実施例を挙げ本発明の内容を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本明細書の下記合成例1~合成例8、比較合成例1~2に示すポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略称する)による測定結果である。測定には東ソー(株)製GPC装置を用い、測定条件等は次のとおりである。
GPCカラム:Shodex KF803L、Shodex KF802、Shodex KF801〔登録商標〕(昭和電工(株))
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:1.0ml/分
標準試料:ポリスチレン(東ソー(株)製)
【0063】
<合成例1>
ポリマー1としてN,N-ジグリシジル-5,5-ジメチルヒダントイン(四国化成工業株式会社製)7.88g、モノアリルイソシアヌル酸(四国化成工業株式会社製)5.03g、5-ノルボルネン-2-カルボン酸(東京化成製)1.45g及びエチルトリフェニルホスホニウムブロミド(東京化成工業(株)製)0.65gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル66.60gに加え溶解した。反応容器を窒素置換後、110℃で24時間反応させ、ポリマー溶液を得た。GPC分析を行ったところ、得られたポリマーは標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量3000、分散度は2.8であった。ポリマー1中に存在する構造を下記式に示す。
【0064】
【0065】
<合成例2>
ポリマー2としてN,N-ジグリシジル-5,5-ジメチルヒダントイン(四国化成工業株式会社製)7.88g、モノアリルイソシアヌル酸(四国化成工業株式会社製)5.07g、3-シクロヘキセン-1-カルボン酸(東京化成工業(株)製)1.34g及びエチルトリフェニルホスホニウムブロミド(東京化成工業(株)製)0.66gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル66.60gに加え溶解した。反応容器を窒素置換後、110℃で24時間反応させ、ポリマー溶液を得た。GPC分析を行ったところ、得られたポリマーは標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量2500、分散度は2.2であった。ポリマー2中に存在する構造を下記式に示す。
【0066】
【0067】
<合成例3>
ポリマー3としてN,N-ジグリシジル-5,5-ジメチルヒダントイン(四国化成工業株式会社製)7.95g、モノアリルイソシアヌル酸(四国化成工業株式会社製)5.07g、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(東京化成工業(株)製)1.74g及びエチルトリフェニルホスホニウムブロミド(東京化成工業(株)製)0.66gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル66.60gに加え溶解した。反応容器を窒素置換後、110℃で24時間反応させ、ポリマー溶液を得た。GPC分析を行ったところ、得られたポリマーは標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量2500、分散度は2.2であった。ポリマー3中に存在する構造を下記式に示す。
【0068】
【0069】
<合成例4>
ポリマー4としてN,N-ジグリシジル-5,5-ジメチルヒダントイン(四国化成工業株式会社製)7.88g、モノアリルイソシアヌル酸(四国化成工業株式会社製)5.07g、シクロヘキサン-1-カルボン酸(東京化成工業(株)製)1.73g及びエチルトリフェニルホスホニウムブロミド(東京化成工業(株)製)0.63gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル66.60gに加え溶解した。反応容器を窒素置換後、110℃で24時間反応させ、ポリマー溶液を得た。GPC分析を行ったところ、得られたポリマーは標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量2500、分散度は2.2であった。ポリマー4中に存在する構造を下記式に示す。
【0070】
【0071】
<合成例5>
ポリマー5としてN,N-ジグリシジル-5,5-ジメチルヒダントイン(四国化成工業株式会社製)7.73g、モノアリルイソシアヌル酸(四国化成工業株式会社製)4.94g、7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物(東京化成工業(株)製)1.71g及びエチルトリフェニルホスホニウムブロミド(東京化成工業(株)製)0.64gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル66.60gに加え溶解した。反応容器を窒素置換後、110℃で24時間反応させ、ポリマー溶液を得た。GPC分析を行ったところ、得られたポリマーは標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量2500、分散度は2.0であった。ポリマー5中に存在する構造を下記式に示す。
【0072】
【0073】
<合成例6>
ポリマー6としてN,N-ジグリシジル-5,5-ジメチルヒダントイン(四国化成工業株式会社製)7.20g、5-ヒドロキシイソフタル酸(東京化成工業(株)製)4.95g、5-ノルボルネン-2-カルボン酸(東京化成製)1.33g及びエチルトリフェニルホスホニウムブロミド(東京化成工業(株)製)0.54gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル39.19gに加え溶解した。反応容器を窒素置換後、110℃で24時間反応させ、ポリマー溶液を得た。GPC分析を行ったところ、得られたポリマーは標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量2500、分散度は2.2であった。ポリマー6中に存在する構造を下記式に示す。
【0074】
【0075】
<合成例7>
ポリマー7としてモノアリルジグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業株式会社製)25.00g、ジエチルバルビツール酸(東京化成工業(株)製)14.72g、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(東京化成工業(株)製)2.91g及びエチルトリフェニルホスホニウムブロミド(東京化成工業(株)製)1.64gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル89.73gに加え溶解した。反応容器を窒素置換後、110℃で24時間反応させ、ポリマー溶液を得た。GPC分析を行ったところ、得られたポリマーは標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量3000、分散度は2.3であった。ポリマー7中に存在する構造を下記式に示す。
【0076】
【0077】
<合成例8>
ポリマー8としてモノアリルジグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業株式会社製)25.00g、ジチオジプロパン酸(東京化成工業(株)製)15.86g、アダマンタンカルボン酸(東京化成工業(株)製)4.80g及びテトラブチルホスホニウムブロミド(東京化成工業(株)製)1.13gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル57.12gに加え溶解した。反応容器を窒素置換後、110℃で24時間反応させ、ポリマー溶液を得た。GPC分析を行ったところ、得られたポリマーは標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量5000、分散度は2.3であった。ポリマー8中に存在する構造を下記式に示す。
【0078】
【0079】
<合成例9>
ポリマー9としてモノアリルジグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業株式会社製)25.00g、ジチオジプロパン酸(東京化成工業(株)製)15.86g、5-ノルボルネン-2-カルボン酸(東京化成工業(株)製)3.68g及びテトラブチルホスホニウムブロミド(東京化成工業(株)製)1.13gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル57.12gに加え溶解した。反応容器を窒素置換後、110℃で24時間反応させ、ポリマー溶液を得た。GPC分析を行ったところ、得られたポリマーは標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量5000、分散度は2.5であった。ポリマー9中に存在する構造を下記式に示す。
【0080】
【0081】
<比較合成例1>
ポリマー10としてモノアリルジグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業株式会社製)21.90g、ジエチルバルビツール酸(東京化成工業(株)製)12.17g、ラウリン酸(東京化成工業(株)製)4.67g及びエチルトリフェニルホスホニウムブロミド(東京化成工業(株)製)0.56gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル89.73gに加え溶解した。反応容器を窒素置換後、110℃で24時間反応させ、ポリマー溶液を得た。GPC分析を行ったところ、得られたポリマーは標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量3000、分散度は2.2であった。ポリマー10中に存在する構造を下記式に示す。
【0082】
【0083】
<比較合成例2>
ポリマー11として、モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業株式会社製)25.00g、ジチオジプロパン酸(東京化成工業(株)製)15.86g、テトラブチルホスホニウムブロミド(東京化成工業(株)製)1.13gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル57.12gに加え溶解した。反応容器を窒素置換後、110℃で24時間反応させ、ポリマー溶液を得た。GPC分析を行ったところ、得られたポリマーは標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量5000、分散度は4.3であった。ポリマー11中に存在する構造を下記式に示す。
【0084】
【0085】
(レジスト下層膜の調製)
(実施例1)
上記合成例1~9、比較合成例1~2、ポリマー、架橋剤、硬化触媒、溶媒を表1に示す割合で混合し、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって、レジスト下層膜形成用組成物の溶液をそれぞれ調製した。
表1中でテトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)製)をPL-LI、ピリジニウム-p-トルエンスルホン酸をPyPTS、ピリジニウム-p-ヒドロキシベンゼンスルホン酸をPyPSA、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートはPGMEA、プロピレングリコールモノメチルエーテルはPGMEと略した。各添加量は質量部で示した。
【0086】
【0087】
【0088】
(フォトレジスト溶剤への溶出試験)
実施例1~11、比較例1及び比較例2のレジスト下層膜形成組成物を、スピナーを用いてシリコンウェハー上に塗布した。そのシリコンウェハーを、ホットプレート上で205℃で60秒間ベークし、膜厚5nmの膜を得た。これらのレジスト下層膜をフォトレジストに使用する溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテル/プロピレングリコールモノメチルエーテル=70/30の混合溶液に浸漬し、膜厚変化が1Å以下である場合に良、1Å以上である場合に不良として、その結果を表3に示す。比較例1のみ不良を示した。
【0089】
(水接触角の測定)
実施例1~11、比較例1及び比較例2のレジスト下層膜形成組成物を、スピナーを用いてシリコンウェハー上に塗布した。そのシリコンウェハーを、ホットプレート上で205℃で60秒間ベークし、膜厚5nmの膜を得た。これらのレジスト下層膜を、全自動接触角計DM-701(協和界面科学(株)社製)を用いて液滴法により水の接触角を測定した。
【0090】
【0091】
(レジストパターニング評価)
〔KrF露光によるレジストパターンの形成〕
DUV-30J(日産化学(株)製)を反射防止膜としてスピナーを用いてシリコンウェハー上に塗布した。そのシリコンウェハーを、ホットプレート上で205℃で60秒間ベークし、膜厚18nmの膜を得た。その膜上に実施例1~6、実施例8及び比較例1~比較例2のレジスト下層膜形成組成物を、スピナーを用いてシリコンウェハー上にそれぞれ塗布した。そのシリコンウェハーを、ホットプレート上で205℃で60秒間ベークし、膜厚5nmのレジスト下層膜を得た。そのレジスト下層膜上に、KrFエキシマレーザー用ポジ型レジスト溶液としてSEPR-430(信越化学株式会社製)をスピンコートし、100℃で60秒間加熱し、KrFレジスト膜を形成した。そのレジスト膜に対し、KrFエキシマレーザー用露光装置((株)ニコン製、NSR S205C)を用い、所定の条件で露光した。露光後、110℃で60秒間露光後加熱を行った後、フォトレジスト用現像液として2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(東京応化工業(株)製、商品名NMD-3)を用いて60秒間パドル現像を行った。得られたフォトレジストパターンについて、大きなパターン剥がれが発生しないものを良好として評価した。
【0092】
【0093】
〔EUV露光試験〕
シリコンウェハー上に、本発明の実施例9、実施例10及び比較例2のレジスト下層膜形成組成物をスピンコートし、215℃で1分間加熱することにより、レジスト下層膜(膜厚5nm)を形成した。そのレジスト下層膜上に、EUV用レジスト溶液(メタクリレート樹脂系レジスト)をスピンコートし加熱を行い、EUV露光装置(ASML社製、NXE3300)を用い、NA=0.33 Dipoleの条件で露光した。露光後、露光後加熱(PEB、100℃60秒)を行い、クーリングプレート上で室温まで冷却し、アルカリ現像及びリンス処理を行い、シリコンウェハー上にレジストパターンを形成した。評価は、16nmのラインアンドスペース(L/S)の形成可否で行った。実施例9、実施例10及び比較例2の全ての場合で16nmL/Sパターン形成を確認した。また16nmライン/32nmピッチ(ラインアンドスペース(L/S=1/1)を形成した露光量を最適露光量とし、その時の露光量(EOP)を示す。さらにその際の線幅の粗さ(LWR)を表5に示す。実施例9、実施例10は比較例2と比較してLWRの向上が見られた。
【0094】
【0095】
〔EUV露光試験〕
シリコンウェハー上に、本発明の実施例1のレジスト下層膜形成組成物をスピンコートし、215℃で1分間加熱することにより、レジスト下層膜(膜厚5nm)を形成した。更にその上に、EUV用レジスト溶液(メタクリレート樹脂系レジスト)をスピンコートし、130℃で1分間加熱することにより、EUVレジスト膜を形成し、ASML製EUV露光装置(NXE3300B)を用い、NA=0.33、Dipoleの条件で露光した。露光後、露光後加熱(PEB、110℃1分間)を行い、クーリングプレート上で室温まで冷却し、有機溶剤現像液(酢酸ブチル)を用いて60秒現像し、リンス処理をし、レジストパターンを形成した。
同様の手順にて、実施例3、6乃至8、比較例2で得られた各組成物を用いてレジストパターンを形成した。
評価は、44nmピッチ、22nmのラインアンドスペースの形成可否を、パターン断面観察によるパターン形状を確認することにより評価した。
パターン形状の観察において、フッティングからアンダーカットの間の形状であり、かつスペース部に著しい残渣がないという状態を「良好」、レジストパターンが剥がれ倒壊しているという好ましくない状態を「倒れ」、レジストパターンの上部もしくは下部同士が接触しているという好ましくない状態を「ブリッジ」と評価した。得られた結果を表6に示す。
【0096】
本発明に係るレジスト下層膜形成組成物は、所望のレジストパターンを形成できるレジスト下層膜を形成するための組成物、及び該レジスト下層膜形成組成物を用いたレジストパターン付き基板の製造方法、半導体装置の製造方法を提供することができる。