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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126841
(43)【公開日】2023-09-12
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20230905BHJP
   H02G 1/14 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
H01B7/00 301
H02G1/14 050
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104645
(22)【出願日】2023-06-27
(62)【分割の表示】P 2020060236の分割
【原出願日】2020-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】杉田 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】阿部 正浩
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ケーブル群の絶縁体材料とシースの絶縁体材料が異なる場合であっても、ケーブル群の分岐部を覆う樹脂モールドによって分岐部からの水の浸入が抑えられたワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】ワイヤハーネス1は、最外層が熱可塑性ポリウレタンからなるABSセンサケーブル21と、最外層がポリオレフィンからなる電動パーキングブレーキケーブル22と、を有する多芯ケーブル2と、ABSセンサケーブル21及び電動パーキングブレーキケーブル22を覆う樹脂モールド3と、を備え、樹脂モールド3が、ポリアミド系ポリマ、ポリエステル系ポリマ、熱可塑性ポリウレタンのうちの少なくとも1つからなる第1のポリマとポリオレフィンからなる第2のポリマとのポリマアロイからなる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンからなる最外層を有する第1ケーブルと、
熱可塑性ポリウレタンからなる最外層を有する第2ケーブルと、
前記第1ケーブル及び前記第2ケーブルを一括して部分的に覆う樹脂モールドと、
を備え、
前記樹脂モールドが、ポリアミド系ポリマ、ポリエステル系ポリマ、熱可塑性ポリウレタンのうちの少なくとも1つからなる第1のポリマとポリオレフィンからなる第2のポリマとのポリマアロイからなり、
-40℃の大気中での30分間の放置、及び120℃の大気中での30分間の放置を1サイクルとする熱衝撃試験を1000サイクル実施した後に、前記樹脂モールドを水に浸した状態で前記第1ケーブル及び前記第2ケーブルの端部それぞれから200kPaの圧縮空気を30秒間供給した際に前記樹脂モールドから気泡が漏れ出さない、ワイヤハーネス。
【請求項2】
前記ポリオレフィンが、架橋ポリエチレン又は架橋したエチレン酢酸ビニル共重合体である、
請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記第2のポリマが、酸変性ポリオレフィンである、
請求項1又は2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記ポリマアロイの平均分散径が120μm未満である、
請求項1~3のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。


















【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ABSセンサ用ケーブル及びパーキングブレーキ用ケーブルがシース内に収容された複合ハーネスであって、ABSセンサ用ケーブルとパーキングブレーキ用ケーブルがシース端部から引き出されて分岐する分岐部がウレタンからなる成形部に覆われたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1によれば、上記分岐部においてシースの端部、ABSセンサ用ケーブル、及びパーキングブレーキ用ケーブルが成形部に覆われているため、シースの端部から内部に水が浸入することが抑えられるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-91731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の複合ハーネスにおいて、シースの端部からの水の浸入を十分に抑えるためには、シース、ABSセンサ用ケーブル、及びパーキングブレーキ用ケーブルのすべてが成形部との高い接着性を有している必要がある。
【0006】
一般的に、ABSセンサ用ケーブルやパーキングブレーキ用ケーブルの絶縁体には、ウレタンとの接着性が低い架橋ポリエチレンなどのポリオレフィンが用いられることが多い。引用文献1には、ABSセンサ用ケーブル及びパーキングブレーキ用ケーブルの絶縁体の材料は開示されていないが、ポリオレフィンを用いた場合には成形部との接着性を確保することができず、シースの端部から内部に水が浸入するおそれがある。
【0007】
したがって、本発明の目的は、ケーブル群の絶縁体材料とシースの絶縁体材料が異なる場合であっても、ケーブル群の分岐部を覆う樹脂モールドによって分岐部からの水の浸入が抑えられたワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、ポリオレフィンからなる最外層を有する第1ケーブルと、熱可塑性ポリウレタンからなる最外層を有する第2ケーブルと、前記第1ケーブル及び前記第2ケーブルを一括して部分的に覆う樹脂モールドと、を備え、前記樹脂モールドが、ポリアミド系ポリマ、ポリエステル系ポリマ、熱可塑性ポリウレタンのうちの少なくとも1つからなる第1のポリマとポリオレフィンからなる第2のポリマとのポリマアロイからなり、-40℃の大気中での30分間の放置、及び120℃の大気中での30分間の放置を1サイクルとする熱衝撃試験を1000サイクル実施した後に、前記樹脂モールドを水に浸した状態で前記第1ケーブル及び前記第2ケーブルの端部それぞれから200kPaの圧縮空気を30秒間供給した際に前記樹脂モールドから気泡が漏れ出さない、ワイヤハーネスを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ケーブル群の絶縁体材料とシースの絶縁体材料が異なる場合であっても、ケーブル群の分岐部を覆う樹脂モールドによって分岐部からの水の浸入が抑えられたワイヤハーネスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施の形態に係るワイヤハーネスのケーブル分岐部の周辺の斜視図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係るワイヤハーネスの分岐部の周辺の側面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る多芯ケーブルの径方向の断面図である。
図4図4(a)~(c)は、第1のポリマと第2のポリマとのポリマアロイの相構造のSEM(走査電子顕微鏡)観察像である。
図5図5(a)は、本発明の実施例に係る気密性評価試験に用いる試料の主要部を拡大した断面図である。図5(b)は、本発明の実施例に係る気密性試験の実施状態を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施の形態〕
図1は、本発明の実施の形態に係るワイヤハーネス1のケーブル分岐部4の周辺の斜視図である。
【0012】
ワイヤハーネス1は、自動車のホイールハウス内に配線される自動車用部品であり、ABS(アンチロックブレーキシステム)センサケーブル21と電動パーキングブレーキ(EPB)ケーブル22がシース23で被覆された多芯ケーブル2と、多芯ケーブル2のシース23の端部から露出するABSセンサケーブル21と電動パーキングブレーキケーブル22が分岐するケーブル分岐部4において、シース23、ABSセンサケーブル21、及び電動パーキングブレーキケーブル22を覆い、シース23の端部からの多芯ケーブル2内への水の浸入を抑える樹脂モールド3と、を備える。
【0013】
ABSセンサケーブル21は、自動車のアンチロックブレーキシステムに用いられるケーブルであり、ホイールの回転数を検知するホイールスピードセンサと車体側の電子制御ユニットの間の信号伝送を担う信号線である。ABSセンサケーブル21のケーブル分岐部4の先の先端には、例えば、ホイールスピードセンサに接続するためのコネクタが設けられている。
【0014】
電動パーキングブレーキケーブル22は、自動車のEPBシステムに用いられるケーブルであり、ホイールハウス内のディスクブレーキを構成するブレーキキャリパーに内蔵された電気モータと車体側のブレーキ制御部を電気的に接続し、ブレーキキャリパー駆動用の電源を供給する電源線である。電動パーキングブレーキケーブル22のケーブル分岐部4の先の先端には、例えば、ブレーキキャリパーに内蔵された電気モータに接続するためのコネクタが設けられている。
【0015】
図2は、ワイヤハーネス1のケーブル分岐部4の周辺の側面図である。多芯ケーブル2のシース23が取り除かれた端部において露出するABSセンサケーブル21と電動パーキングブレーキケーブル22が分岐し、これらの分岐部が樹脂モールド3で固定され、分岐した状態が保たれている。
【0016】
図1図2に示される例では、電動パーキングブレーキケーブル22はケーブル分岐部4から多芯ケーブル2の長さ方向に沿って延び、ABSセンサケーブル21はケーブル分岐部4から多芯ケーブル2の長さ方向から逸れるように延びている。しかしながら、ABSセンサケーブル21と電動パーキングブレーキケーブル22のケーブル分岐部4から延びる方向(分岐の状態)は特に限定されるものではない。
【0017】
図3は、複合ケーブル2の径方向の断面図である。多芯ケーブル2においては、ABSセンサケーブル21と2本の電動パーキングブレーキケーブル22の周囲にシース23が設けられている。ABSセンサケーブル21と電動パーキングブレーキケーブル22の配置を安定させるため、ABSセンサケーブル21と電動パーキングブレーキケーブル22の隙間に介在24を設けてもよい。また、ABSセンサケーブル21と電動パーキングブレーキケーブル22の周囲に押さえ巻きテープが巻かれていてもよい。
【0018】
シース23は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)からなる。また、シース23の材料には、難燃性を高めるための難燃剤が含まれていてもよく、また、耐熱性を高めるために架橋が導入されていてもよい。
【0019】
ABSセンサケーブル21は、2本のABSケーブル210と、それらの周囲に設けられた熱可塑性ポリウレタンからなるシース213を備える。シース213の材料には、架橋が導入されていてもよい。ABSケーブル210は、線状の導体211と、導体211の周囲に設けられた絶縁体212を備える。導体211は銅などの導電性材料からなり、絶縁体212は架橋ポリエチレン、架橋したエチレン酢酸ビニル共重合体などの絶縁性材料からなる。絶縁体212の材料には、難燃剤が含まれていてもよい。
【0020】
電動パーキングブレーキケーブル22は、線状の導体221と、導体221の周囲に設けられた絶縁体222を備える。導体221は銅などの導電性材料からなり、絶縁体222はポリオレフィンからなる。絶縁体222の材料であるポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、ポリプロピレン、架橋したエチレンプロピレンゴム、架橋したエチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンエチルアクリレート重合体などを用いることができ、特に、安価で端末加工性に優れるため、架橋ポリエチレン又は架橋したエチレン酢酸ビニル共重合体を用いることが好ましい。絶縁体222の材料には、難燃剤が含まれていてもよい。
【0021】
また、絶縁体222の材料であるポリオレフィンは、酸変性ポリオレフィンであってもよい。酸変性ポリオレフィンの酸としては、不飽和カルボン酸及びその誘導体を用いることができ、より具体的には無水マレイン酸を好適に用いることができる。
【0022】
樹脂モールド3は、ポリアミド系ポリマ、ポリエステル系ポリマ、熱可塑性ポリウレタンのうちの少なくとも1つからなる第1のポリマとポリオレフィンからなる第2のポリマとのポリマアロイからなる。ポリマアロイは、ニーダーやバンバリミキサなどのバッチ式混練機や二軸押出機などの連続式混練機などを用いて製造することができる。
【0023】
第1のポリマとして用いられるポリアミド系ポリマには、例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド9T、ポリアミド10Tなどのポリアミドや、ポリアミドとポリエーテル、ポリエーテルエステルなどとの共重合体からなるポリアミドエラストマ、又はこれらを混合又は共重合させたものを用いることができる。
【0024】
第1のポリマとして用いられるポリエステル系ポリマには、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)などのポリエステル系樹脂や、PBTとポリエーテルの共重合体、PBTとポリエステルの共重合体などのポリエステル系エラストマを用いることができる。
【0025】
第1のポリマとして用いられる熱可塑性ポリウレタンには、耐水性の観点から、エーテル系熱可塑性ポリウレタンを用いることが好ましい。
【0026】
第2のポリマとして用いられるポリオレフィンには、上に挙げた絶縁体222の材料として用いられるポリオレフィン(酸変性ポリオレフィンを含む)を用いることができる。なお、第2のポリマは、第1のポリマとの相溶性を高めるため、酸変性ポリオレフィンであることが好ましい。
【0027】
樹脂モールド3は、ポリアミド系ポリマ、ポリエステル系ポリマ、熱可塑性ポリウレタンのうちの少なくとも1つからなる第1のポリマを含むため、熱可塑性ポリウレタンからなる多芯ケーブル2のシース23及びABSセンサケーブル21のシース213との接着性が高い。また、樹脂モールド3は、ポリオレフィンからなる第2のポリマを含むため、電動パーキングブレーキケーブル22の最外層の部材であるポリオレフィンからなる絶縁体222との接着性が高い。
【0028】
樹脂モールド3は、熱接着(熱融着)により、多芯ケーブル2のシース23、ABSセンサケーブル21のシース213、及び電動パーキングブレーキケーブル22の絶縁体222と密着し、それによって、ケーブル分岐部4からの多芯ケーブル2内への水の浸入が抑えられる。このように、ワイヤハーネス1においては、樹脂モールド3によってケーブル分岐部4の防水性が確保されるため、熱収縮チューブなどのシール部材を別途用いる必要がなく、製造工程数を減らし、また、製造コストを低減することができる。
【0029】
樹脂モールド3の材料であるポリマアロイは、第1のポリマと第2のポリマの合計100質量部に対して、第1のポリマを30~80質量部、第2のポリマを70~20質量部含むことが好ましい。第1のポリマの含有量を30質量部以上とすることにより、熱可塑性ポリウレタンからなる多芯ケーブル2のシース23及びABSセンサケーブル21のシース213との接着性を高めることができる。一方、第2のポリマの含有量を20質量部以上とすることにより、ポリオレフィンからなる電動パーキングブレーキケーブル22の絶縁体222との接着性をより高めることができる。
【0030】
樹脂モールド3を構成するポリマアロイの相構造は、連続相と分散相からなる相構造であってもよく、共連続構造であってもよい。また、連続相と分散相からなる相構造である場合、第1のポリマと第2のポリマのいずれが連続相であってもよい。通常、これらの相構造の違いは、多芯ケーブル2のシース23、ABSセンサケーブル21のシース213、及び電動パーキングブレーキケーブル22の絶縁体222に対する樹脂モールド3の接着性にほとんど影響を及ぼさない。
【0031】
ただし、最外層がポリオレフィンからなる電動パーキングブレーキケーブル22に対する樹脂モールド3の接着性をより高めるためには、樹脂モールド3の材料であるポリマアロイを構成する第1のポリマとしてポリアミド系ポリマを用いる場合であって、第1のポリマと第2のポリマの一方が分散相を形成する場合は、平均分散径が125μm未満であることが好ましく、95μm以下であることがより好ましいことが確認されている。また、樹脂モールド3の材料であるポリマアロイを構成する第1のポリマとしてポリエステル系ポリマを用いる場合であって、第1のポリマと第2のポリマの一方が分散相を形成する場合は、平均分散径が125μm未満であることが好ましく、98μm以下であることがより好ましいことが確認されている。また、樹脂モールド3の材料であるポリマアロイを構成する第1のポリマとして熱可塑性ポリウレタンを用いる場合であって、第1のポリマと第2のポリマの一方が分散相を形成する場合は、平均分散径が120μm未満であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましいことが確認されている。したがって、第1のポリマと第2のポリマの一方が分散相を形成する場合は、平均分散径が120μm未満であることが好ましく、95μm以下であることがより好ましいと言える。
【0032】
図4(a)は、第1のポリマとしての熱可塑性ポリウレタンが連続相、第2のポリマとしての酸変性ポリオレフィンが分散相を形成するポリマアロイの相構造のSEM(走査電子顕微鏡)観察像である。図4(b)は、第1のポリマとしての熱可塑性ポリウレタンと第2のポリマとしての酸変性ポリオレフィンが共連続構造を形成するポリマアロイの相構造のSEM観察像である。図4(c)は、第2のポリマとしての酸変性ポリオレフィンが連続相、第1のポリマとしての熱可塑性ポリウレタンが分散相を形成するポリマアロイの相構造のSEM観察像である。
【0033】
平均分散径は、例えば、図4(a)~(c)のようなポリマアロイの相構造のSEM観察像において、任意の観察範囲内で任意の数の分散粒子の粒子径(楕円形であれば例えば長径と短径の平均値)を平均化したものとして求めることができる。平均分散径を変える(小さくする)には、ポリマアロイの混練時のせん断速度を上げることが有効であり、例えば、押出機のスクリュやニーダーなどのローターの回転数を上げる等の方法を採ることができる。
【0034】
なお、多芯ケーブル2において、ABSセンサケーブル21の代わりに、2本のABSケーブル210(ABSセンサケーブル21からシース23や介在24を省いたもの)を用いてもよい。この場合、樹脂モールド3はABSケーブル210の絶縁体212を直接被覆する。また、この場合、樹脂モールド3との高い接着性を確保するため、絶縁体212はポリオレフィンからなる。絶縁体212の材料に用いられるポリオレフィンには、上に挙げた絶縁体222の材料として用いられるポリオレフィン(酸変性ポリオレフィンを含む)を用いることができる。
【0035】
また、多芯ケーブル2に含まれるケーブル群を構成するケーブルは、ABSセンサケーブル21や電動パーキングブレーキケーブル22に限られず、ABSセンサケーブル21や電動パーキングブレーキケーブル22と同様に最外層がポリオレフィン又は熱可塑性ポリウレタンからなるものであれば、他のケーブルであってもよく、また、その本数も限定されない。また、多芯ケーブル2のシース23の材料は、ポリオレフィンであってもよい。
【0036】
すなわち、多芯ケーブル2に含まれるケーブル群を構成するケーブルのそれぞれの最外層は、ポリオレフィン又は熱可塑性ポリウレタンからなる。多芯ケーブル2のシース23がポリオレフィンからなる場合は、ケーブル群は熱可塑性ポリウレタンからなる最外層を有するケーブルを少なくとも1本含み、その他のケーブルの最外層は熱可塑性ポリウレタンからなる。また、多芯ケーブル2のシース23が熱可塑性ポリウレタンからなる場合は、ケーブル群はポリオレフィンからなる最外層を有するケーブルを少なくとも1本含み、その他のケーブルの最外層は熱可塑ポリウレタンからなる。
【0037】
多芯ケーブル2の径方向の断面形状は、典型的には図3に示されるような円形であるが、特に限定されるものではない。また、樹脂モールド3は、ワイヤハーネス1を自動車の車体にソフトマウントするグロメットと一体成型されてもよく、樹脂モールド自身がグロメットを形成してもよい。
【0038】
(実施の形態の効果)
上記実施の形態に係るワイヤハーネス1によれば、ポリアミド系ポリマ、ポリエステル系ポリマ、熱可塑性ポリウレタンのうちの少なくとも1つからなる第1のポリマとポリオレフィンからなる第2のポリマのポリマアロイが樹脂モールド33の材料として用いられるため、熱可塑性ポリウレタンからなるシース23、最外層が熱可塑性ポリウレタンからなるABSセンサケーブル21、及び最外層がポリオレフィンからなる電動パーキングブレーキケーブル22に対する樹脂モールド3の接着性が十分に確保できる。そのため、ケーブル分岐部4のシース23の端部からの多芯ケーブル2内への水の浸入を効果的に抑えることができる。
【実施例0039】
以下、上記実施の形態に係るワイヤハーネス1のケーブル分岐部4における防水性を評価するための試験の結果について述べる。
【0040】
(評価用試料の構成)
図5(a)は、本実施例に係る気密性評価試験に用いる試料30の主要部を拡大した断面図である。試料30は、線状の導体31と、導体31の外周を被覆する絶縁体32と、絶縁体32の一方の端末を被覆する樹脂モールド33とを有する。
【0041】
導体31は、直径0.26mmの7本の銅導体線からなる撚線であり、絶縁体32の内側の導体31中を空気が通過できるようになっている。また、絶縁体32の厚さは0.36mmであり、絶縁体32の外径は1.5mmである。また、樹脂モールド33は、直径6mm、長さ20mmの円筒形状を有し、ケーブル34の樹脂モールド33への挿入長さは、10mmである。
【0042】
本実施例においては、後述する表1~3に示されるように、樹脂モールド33の組成(樹脂モールド33の材料であるポリマアロイを構成するポリマの種類)が異なる試料番号A1~A20、B1~B18、C1~C11の試料30を用意した。試料番号A1~A20、B1~B18、C1~C11の試料30の各々には、さらに、絶縁体32の材料が異なる2種の試料30が含まれる。
【0043】
(評価方法)
<気密性評価>
気密性試験と熱衝撃試験を交互に繰り返して実施し、気密性がいつまで保たれるかを評価した。
【0044】
図5(b)は、本実施例に係る気密性試験の実施状態を表す概略図である。図5(b)に示されるように、試料30の樹脂モールド33側の端部が水槽36内の水37の中に浸され、反対側の端部に空気供給機35に接続される。
【0045】
気密性試験では、空気供給機35から導体31内を通して樹脂モールド33側に供給される空気が、樹脂モールド33と絶縁体32の接着面から気泡38となって漏れ出せば気密性が失われたと判定し、気泡38が生じなければ気密性が保たれていると判定した。ここで、1回の気密性試験において、空気供給機35から、200kPaの圧縮空気を30秒間供給した。
【0046】
熱衝撃試験では、試料30に対して、-40℃の大気中での30分間の放置、及び120℃の大気中での30分間の放置を1サイクルとして、100サイクル実施した。
【0047】
すなわち、この気密性評価では、熱衝撃試験を100サイクル実施するごとに、気密性試験を実施して、気密性が保たれているか否かを確認した。気密性が失われた時点での熱衝撃試験のサイクル数が2000以上である試料30を気密性に優れた“優”と判定し、1000以上で2000に満たない試料30を使用可能な程度の気密性を有する“可”と判定し、1000に満たない試料30を使用可能な程度の気密性を有しない“不可”と判定した。
【0048】
<接着性評価>
樹脂モールド33の材料からなるシート(縦200mm×横25mm×厚さ1mm)と絶縁体32の材料からなるシート(縦200mm×横25mm×厚さ1mm)を積層プレスした積層シートを用いて、JIS K6854-3(1999)に準拠したT字剥離試験を実施し、剥離強度を測定した。また、剥離に至った際に、両シートが界面で剥離しているか、いずれかのシートが凝集破壊されて剥離に至っているかのいずれであるかを目視により確認した。
【0049】
(評価結果)
次の表1~3に、試料番号A1~A18、B1~B18、C1~C11の試料30の構成及び各種評価の結果を示す。表1~3の“平均分散径”は、樹脂モールド33の材料であるポリマアロイの分散相の平均粒子径である。また、“シート接着評価(架橋PE)”は、絶縁体32がポリオレフィンである架橋ポリエチレンからなる場合のシート接着評価を示し、“シート接着評価(TPU)”は、絶縁体32が熱可塑性ポリウレタンからなる場合のシート接着評価を示している。また、“剥離形態”の“α”は、界面剥離を示し、“β”は凝集破壊を示している。
【0050】
次の表1に、試料番号A1~A18の試料30の構成及び各種評価の結果を示す。試料番号A1~A18の試料30においては、樹脂モールド33の材料であるポリマアロイを構成する第1のポリマとして、ポリアミド系ポリマであるPA612(デュポン製ザイテル151L NC010)とPAエラストマ(アルケマ製ペバックス5533)が用いられている。また、第2のポリマとして、ポリオレフィンである無水マレイン酸変性のエチレンプロピレンゴム(三井化学製アドマーXE070)(表1では酸変性ポリオレフィンと表記)が用いられている。
【0051】
【表1】
【0052】
表1によれば、試料番号A1とA2の試料30は、いずれも絶縁体32の材料が熱可塑性ポリウレタンである場合に、シート接着評価における剥離強度が強く、また、気密性評価が“優”となっている。しかしながら、いずれも絶縁体32の材料が架橋ポリエチレンである場合に、シート接着評価における剥離強度が弱く、また、気密性評価が“不可”となっている。これは、樹脂モールド33の材料に第1のポリマのみが用いられているため、熱可塑性ポリウレタンとの接着性は十分であったものの、ポリオレフィンとの接着性が不十分であったことによると考えられる。
【0053】
また、樹脂モールド33の材料が第1のポリマと第2のポリマのポリマアロイからなる試料番号A3~A18の試料30の評価によれば、試料番号A11とA18の試料30は、いずれも絶縁体32の材料が架橋ポリエチレンである場合に、シート接着評価における剥離強度が強く、また、気密性評価が“優”となっている。しかしながら、いずれも絶縁体32の材料が熱可塑性ポリウレタンである場合に、シート接着評価における剥離強度が弱く、また、気密性評価が“不可”となっている。これは、樹脂モールド33の材料であるポリマアロイにおける第1のポリマの割合が小さい(第1のポリマと第2のポリマの合計100質量部に対して、第1のポリマが20質量部、第2のポリマが80質量部)ため、ポリオレフィンとの接着性は十分であったものの、熱可塑性ポリウレタンとの接着性が不十分であったことによると考えられる。
【0054】
一方で、試料番号A3~A18の試料30の評価によれば、樹脂モールド33の材料であるポリマアロイが、第1のポリマと第2のポリマの合計100質量部に対して、第1のポリマを30~80質量部、第2のポリマを70~20質量部含む場合(試料番号A3~A10、A12~A17の場合)に、絶縁体32の材料が架橋ポリエチレンである場合と熱可塑性ポリウレタンである場合の両方において、気密性評価において“可”以上の判定が得られている。これは、第1のポリマの含有量を30質量部以上とすることにより、熱可塑性ポリウレタンとの接着性を高めることができ、第2のポリマの含有量を20質量部以上とすることにより、ポリオレフィンとの接着性を高めることができることによると考えられる。
【0055】
また、樹脂モールド33の材料であるポリマアロイが、第1のポリマと第2のポリマの合計100質量部に対して、第1のポリマを40~70質量部、第2のポリマを60~30質量部含む場合(試料番号A4~A9、A13~A16の場合)に、絶縁体32の材料が架橋ポリエチレンである場合と熱可塑性ポリウレタンである場合の両方において、気密性評価において“優”の判定が得られている(第1のポリマを70質量部、第2のポリマを30質量部含む試料番号A4~A6の試料30においては、平均分散径が比較的小さい試料番号A4、A5の試料30において、絶縁体32の材料が架橋ポリエチレンである場合と熱可塑性ポリウレタンである場合の両方において“優”の判定が得られている)。これは、第1のポリマの含有量を40質量部以上とすることにより、熱可塑性ポリウレタンとの接着性をより高めることができ、第2のポリマの含有量を30質量部以上とすることにより、ポリオレフィンとの接着性をより高めることができることによると考えられる。
【0056】
また、試料番号A4~A6の試料30は、樹脂モールド33の材料であるポリマアロイにおける第1のポリマと第2のポリマの質量比が等しく、ポリマアロイの平均分散径が異なる。このため、絶縁体32の材料が熱可塑性ポリウレタンである場合の気密性評価において、試料番号A4、A5の試料30が“優”と判定され、試料番号A6の試料30が“可”と判定されたのは、平均分散径の違いによると考えられ、平均分散径が125μm未満であることが好ましく、95μm以下であることがより好ましいと言える。
【0057】
上記の結果から、上記実施の形態に係るワイヤハーネス1において、樹脂モールド3の材料であるポリマアロイを構成する第1のポリマとしてポリアミド系ポリマを用いる場合、熱可塑性ポリウレタンからなるシース23、最外層が熱可塑性ポリウレタンからなるABSセンサケーブル21、及び最外層がポリオレフィンからなる電動パーキングブレーキケーブル22に対する樹脂モールド3の接着性が十分に確保できることが確認された。
【0058】
次の表2に、試料番号B1~B18の試料30の構成及び各種評価の結果を示す。試料番号B1~B18の試料30においては、樹脂モールド33の材料であるポリマアロイを構成する第1のポリマとして、ポリエステル系ポリマであるPBT(ポリブチレンテレフタレート)(東レ製トレコン1401X06)とポリエステル系エラストマ(東レ・デュポン製ハイトレル3046)(表2ではポリエステル系エラストマと表記)が用いられている。また、第2のポリマとして、ポリオレフィンである無水マレイン酸変性のエチレンプロピレンゴム(三井化学製アドマーXE070)(表2では酸変性ポリオレフィンと表記)が用いられている。
【0059】
【表2】
【0060】
表2によれば、試料番号B1とB2の試料30は、いずれも絶縁体32の材料が熱可塑性ポリウレタンである場合に、シート接着評価における剥離強度が強く、また、気密性評価が“優”となっている。しかしながら、いずれも絶縁体32の材料が架橋ポリエチレンである場合に、シート接着評価における剥離強度が弱く、また、気密性評価が“不可”となっている。これは、樹脂モールド33の材料に第1のポリマのみが用いられているため、熱可塑性ポリウレタンとの接着性は十分であったものの、ポリオレフィンとの接着性が不十分であったことによると考えられる。
【0061】
また、樹脂モールド33の材料が第1のポリマと第2のポリマのポリマアロイからなる試料番号B3~B18の試料30の評価によれば、試料番号B11とB18の試料30は、いずれも絶縁体32の材料が架橋ポリエチレンである場合に、シート接着評価における剥離強度が強く、また、気密性評価が“優”となっている。しかしながら、いずれも絶縁体32の材料が熱可塑性ポリウレタンである場合に、シート接着評価における剥離強度が弱く、また、気密性評価が“不可”となっている。これは、樹脂モールド33の材料であるポリマアロイにおける第1のポリマの割合が小さい(第1のポリマと第2のポリマの合計100質量部に対して、第1のポリマが20質量部、第2のポリマが80質量部)ため、ポリオレフィンとの接着性は十分であったものの、熱可塑性ポリウレタンとの接着性が不十分であったことによると考えられる。
【0062】
一方で、試料番号B3~B18の試料30の評価によれば、樹脂モールド33の材料であるポリマアロイが、第1のポリマと第2のポリマの合計100質量部に対して、第1のポリマを30~80質量部、第2のポリマを70~20質量部含む場合(試料番号B3~B10、B12~B17の場合)に、絶縁体32の材料が架橋ポリエチレンである場合と熱可塑性ポリウレタンである場合の両方において、気密性評価において“可”以上の判定が得られている。これは、第1のポリマの含有量を30質量部以上とすることにより、熱可塑性ポリウレタンとの接着性を高めることができ、第2のポリマの含有量を20質量部以上とすることにより、ポリオレフィンとの接着性を高めることができることによると考えられる。
【0063】
また、樹脂モールド33の材料であるポリマアロイが、第1のポリマと第2のポリマの合計100質量部に対して、第1のポリマを40~70質量部、第2のポリマを60~30質量部含む場合(試料番号B4~B9、B13~B16の場合)に、絶縁体32の材料が架橋ポリエチレンである場合と熱可塑性ポリウレタンである場合の両方において、気密性評価において“優”の判定が得られている(第1のポリマを70質量部、第2のポリマを30質量部含む試料番号B4~B6の試料30においては、平均分散径が比較的小さい試料番号B4、B5の試料30において、絶縁体32の材料が架橋ポリエチレンである場合と熱可塑性ポリウレタンである場合の両方において“優”の判定が得られている)。これは、第1のポリマの含有量を40質量部以上とすることにより、熱可塑性ポリウレタンとの接着性をより高めることができ、第2のポリマの含有量を30質量部以上とすることにより、ポリオレフィンとの接着性をより高めることができることによると考えられる。
【0064】
また、試料番号B4~B6の試料30は、樹脂モールド33の材料であるポリマアロイにおける第1のポリマと第2のポリマの質量比が等しく、ポリマアロイの平均分散径が異なる。このため、絶縁体32の材料が熱可塑性ポリウレタンである場合の気密性評価において、試料番号B4、B5の試料30が“優”と判定され、試料番号B6の試料30が“可”と判定されたのは、平均分散径の違いによると考えられ、平均分散径が125μm未満であることが好ましく、98μm以下であることがより好ましいと言える。
【0065】
上記の結果から、上記実施の形態に係るワイヤハーネス1において、樹脂モールド3の材料であるポリマアロイを構成する第1のポリマとしてポリエステル系ポリマを用いる場合、熱可塑性ポリウレタンからなるシース23、最外層が熱可塑性ポリウレタンからなるABSセンサケーブル21、及び最外層がポリオレフィンからなる電動パーキングブレーキケーブル22に対する樹脂モールド3の接着性が十分に確保できることが確認された。
【0066】
次の表3に、試料番号C1~C10の試料30の構成及び各種評価の結果を示す。試料番号C1~C10の試料30においては、樹脂モールド33の材料であるポリマアロイを構成する第1のポリマとして、熱可塑性ポリウレタン(TPU)(BASF製エラストラン1190A)が用いられている。また、第2のポリマとして、ポリオレフィンである無水マレイン酸変性のエチレンプロピレンゴム(三井化学製アドマーXE070)(表3では酸変性ポリオレフィンと表記)が用いられている。
【0067】
【表3】
【0068】
表3によれば、試料番号C1の試料30は、絶縁体32の材料が架橋ポリエチレンである場合に、シート接着評価における剥離強度が弱く、また、気密性評価が“不可”となっている。これは、樹脂モールド33の材料に第1のポリマのみが用いられているため、ポリオレフィンとの接着性が不十分であったことによると考えられる。
【0069】
また、樹脂モールド33の材料が第1のポリマと第2のポリマのポリマアロイからなる試料番号C3~C10の試料30の評価によれば、C10の試料30は、絶縁体32の材料が架橋ポリエチレンである場合に、シート接着評価における剥離強度が強く、また、気密性評価が“優”となっている。しかしながら、絶縁体32の材料が熱可塑性ポリウレタンである場合に、シート接着評価における剥離強度が弱く、また、気密性評価が“不可”となっている。これは、樹脂モールド33の材料であるポリマアロイにおける第1のポリマの割合が小さい(第1のポリマと第2のポリマの合計100質量部に対して、第1のポリマが20質量部、第2のポリマが80質量部)ため、ポリオレフィンとの接着性は十分であったものの、熱可塑性ポリウレタンとの接着性が不十分であったことによると考えられる。
【0070】
また、試料番号C2~C10の試料30の評価によれば、樹脂モールド33の材料であるポリマアロイが、第1のポリマと第2のポリマの合計100質量部に対して、第1のポリマを30~80質量部、第2のポリマを70~20質量部含む場合(試料番号C2~C9の場合)に、絶縁体32の材料が架橋ポリエチレンである場合と熱可塑性ポリウレタンである場合の両方において、気密性評価において“可”以上の判定が得られている。これは、第1のポリマの含有量を30質量部以上とすることにより、熱可塑性ポリウレタンとの接着性を高めることができ、第2のポリマの含有量を20質量部以上とすることにより、ポリオレフィンとの接着性を高めることができることによると考えられる。
【0071】
また、樹脂モールド33の材料であるポリマアロイが、第1のポリマと第2のポリマの合計100質量部に対して、第1のポリマを40~70質量部、第2のポリマを60~30質量部含む場合(試料番号C3~C8の場合)に、絶縁体32の材料が架橋ポリエチレンである場合と熱可塑性ポリウレタンである場合の両方において、気密性評価において“優”の判定が得られている(第1のポリマを70質量部、第2のポリマを30質量部含む試料番号C3~C5の試料30においては、平均分散径が比較的小さい試料番号C3、C4の試料30において、絶縁体32の材料が架橋ポリエチレンである場合と熱可塑性ポリウレタンである場合の両方において“優”の判定が得られている)。これは、第1のポリマの含有量を40質量部以上とすることにより、熱可塑性ポリウレタンとの接着性をより高めることができ、第2のポリマの含有量を30質量部以上とすることにより、ポリオレフィンとの接着性をより高めることができることによると考えられる。
【0072】
また、試料番号C3~C5の試料30は、樹脂モールド33の材料であるポリマアロイにおける第1のポリマと第2のポリマの質量比が等しく、ポリマアロイの平均分散径が異なる。このため、絶縁体32の材料が熱可塑性ポリウレタンである場合の気密性評価において、試料番号C3、C4の試料30が“優”と判定され、試料番号C5の試料30が“可”と判定されたのは、平均分散径の違いによると考えられ、平均分散径が120μm未満であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましいと言える。
【0073】
上記の結果から、上記実施の形態に係るワイヤハーネス1において、樹脂モールド3の材料であるポリマアロイを構成する第1のポリマとして熱可塑性ポリウレタンを用いる場合、熱可塑性ポリウレタンからなるシース23、最外層が熱可塑性ポリウレタンからなるABSセンサケーブル21、及び最外層がポリオレフィンからなる電動パーキングブレーキケーブル22に対する樹脂モールド3の接着性が十分に確保できることが確認された。
【0074】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0075】
[1]複数本のケーブルから構成されるケーブル群(21、22)と、ケーブル群(21、22)の周囲に設けられたシース(23)と、を有する多芯ケーブル(2)と、多芯ケーブル(2)のシース(23)の端部から露出するケーブル群(21、22)が分岐するケーブル分岐部(4)において、シース(23)とケーブル群(21、22)を覆う樹脂モールド(3)と、を備え、ケーブル群(21、22)を構成するケーブルそれぞれの最外層は、ポリオレフィン又は熱可塑性ポリウレタンからなり、シース(23)がポリオレフィンからなる場合は、ケーブル群(21、22)は、熱可塑性ポリウレタンからなる最外層を有するケーブルを少なくとも1本含み、シース(23)が熱可塑性ポリウレタンからなる場合は、ケーブル群(21、22)は、ポリオレフィンからなる最外層を有するケーブルを少なくとも1本含み、樹脂モールド(3)が、ポリアミド系ポリマ、ポリエステル系ポリマ、熱可塑性ポリウレタンのうちの少なくとも1つからなる第1のポリマとポリオレフィンからなる第2のポリマとのポリマアロイからなる、ワイヤハーネス(1)。
【0076】
[2]前記ケーブルの最外層を構成するポリオレフィンが、架橋ポリエチレン又は架橋したエチレン酢酸ビニル共重合体である、上記[1]に記載のワイヤハーネス(1)。
【0077】
[3]前記第2のポリマが、酸変性ポリオレフィンである、上記[1]又は[2]に記載のワイヤハーネス(1)。
【0078】
[4]前記ポリマアロイが、前記第1のポリマと前記第2のポリマの合計100質量部に対して、前記第1のポリマを30~80質量部、前記第2のポリマを70~20質量部含む、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載のワイヤハーネス(1)。
【0079】
[5]前記ポリマアロイの平均分散径が120μm未満である、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載のワイヤハーネス(1)。
【0080】
[6]ケーブル群(21、22)が、ABSセンサケーブル(21)と電動パーキングブレーキケーブル(22)を含む、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載のワイヤハーネス(1)。
【0081】
[7]前記ポリマアロイが、前記第1のポリマと前記第2のポリマの合計100質量部に対して、前記第1のポリマを40~70質量部、前記第2のポリマを60~30質量部含む、上記[1]~[6]のいずれか1項に記載のワイヤハーネス(1)。
【0082】
以上、本発明の実施の形態及び実施例を説明したが、本発明は、上記実施の形態及び実施例に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。また、上記に記載した実施の形態及び実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び実施例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0083】
1…ワイヤハーネス
2…多芯ケーブル
21…ABSセンサケーブル
213…シース
22…電動パーキングブレーキケーブル
222…絶縁体
23…シース
3…樹脂モールド
4…ケーブル分岐部



図1
図2
図3
図4
図5