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特開2023-12688トナー及びその製造方法、トナー収容ユニット、画像形成装置、並びに画像形成方法
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  • 特開-トナー及びその製造方法、トナー収容ユニット、画像形成装置、並びに画像形成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012688
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】トナー及びその製造方法、トナー収容ユニット、画像形成装置、並びに画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20230119BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20230119BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
G03G9/097 372
G03G9/097 365
G03G9/087 325
G03G9/087 331
G03G9/08 381
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116278
(22)【出願日】2021-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】行川 真広
(72)【発明者】
【氏名】山田 博
(72)【発明者】
【氏名】武井 章生
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 彰法
(72)【発明者】
【氏名】竹林 冬馬
(72)【発明者】
【氏名】原島 朋美
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA08
2H500AA10
2H500BA10
2H500BA16
2H500BA32
2H500CA03
2H500CA06
2H500EA52D
2H500EA58A
2H500EA60D
2H500EA62D
(57)【要約】
【課題】フィルミングの異常画像の発生を抑制するとともに、低温定着性及び低付着力による優れたクリーニング性を高いレベルで両立できるトナーの提供。
【解決手段】
トナー母体粒子の表面上に、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察される樹脂微粒子を複数有するトナーであって、前記トナーは、樹脂とワックスとを少なくとも含み、前記樹脂微粒子における最小粒子の長径をRとし、長径3R以上を満たす前記樹脂微粒子を凝集体としたとき、前記凝集体が前記トナー母体粒子の表面を占める割合が、15%以上60%以下であることを特徴とするトナーである。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー母体粒子の表面上に、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察される樹脂微粒子を複数有するトナーであって、
前記トナーは、樹脂とワックスとを少なくとも含み、
前記樹脂微粒子における最小粒子の長径をRとし、長径3R以上を満たす前記樹脂微粒子を凝集体としたとき、前記凝集体が前記トナー母体粒子の表面を占める割合が、15%以上60%以下であることを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記樹脂微粒子が、コア樹脂と、前記コア樹脂の少なくとも一部の表面を被覆するシェル樹脂と、を有する請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記シェル樹脂が、スチレン-アクリル樹脂を含有する請求項2に記載のトナー。
【請求項4】
前記凝集体が前記トナー母体粒子表面上を占める割合が、15%以上35%以下である請求項1から3のいずれかに記載のトナー。
【請求項5】
前記トナー母体粒子の表面に存在する互いに接触してない隣り合った前記樹脂微粒子間の距離における標準偏差が、500nm以下である請求項1から4のいずれかに記載のトナー。
【請求項6】
前記樹脂微粒子の体積平均一次粒径が、10nm以上100nm以下である請求項1から5のいずれかに記載のトナー。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のトナーを収容することを特徴とするトナー収容ユニット。
【請求項8】
請求項7に記載のトナー収容ユニットを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を、トナーを用いて現像することにより可視像であるトナー像を形成する現像工程と、を含み、
前記トナーが請求項1から6のいずれかに記載のトナーであることを特徴とする画像形成方法。
【請求項10】
請求項1から6のいずれかに記載のトナーを製造するトナーの製造方法であって、
トナー母体粒子の表面に樹脂微粒子を付着させて複合粒子を形成する複合粒子形成工程と、
前記複合粒子から、前記樹脂微粒子の少なくとも一部を除去する除去工程と、を含むことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項11】
前記除去工程が、塩基性の水溶液を用いて洗浄する工程である請求項10に記載のトナーの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー及びその製造方法、トナー収容ユニット、画像形成装置、並びに画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トナーには、出力画像の高品質化のための小粒径化と耐高温オフセット性、省エネルギー化のための低温定着性、及び製造後の保管時や運搬時における高温高湿に耐えうる耐熱保存性が要求されている。特に、定着時における消費電力は画像形成工程における消費電力の多くを占めるため、低温定着性の向上は非常に重要である。
【0003】
近年、低温定着性と耐熱保存性とを両立することができるトナーを得る目的で、2種の樹脂を同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子が、樹脂粒子の表面に付着した複合樹脂粒子を形成した後、前記樹脂微粒子の樹脂の一部又は全部を除去する除去工程を含む複合樹脂粒子の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1~2を参照)。
また、高い耐熱保存性を有し、長期間使用してもトナーの凝集を抑制することができるトナーを得る目的で、コア層がスチレンアクリル変性ポリエステル樹脂を含有し、スチレンアクリル樹脂成分で覆われたシェル用球状粒子により被覆されたトナーが提案されている(例えば、特許文献3を参照)。
【0004】
また、乾式製法シリカよりも大粒径まで制御可能な湿式製法シリカを使用することで、スペーサー効果をもたせ、トナー同士の接触を防ぐことによって、低温定着性を維持しつつ、画像欠陥の発生を防止し、長期に安定した画像を形成することができるトナーを得る目的で、結晶性樹脂と、シリコーンオイル処理された平均一次粒径が50nm以上150nm以下であるシリカ粒子とを含有するトナーが提案されている(例えば、特許文献4を参照)。
【0005】
さらに、トナー同士の摩擦によりシリカが遊離することや、トナー表面にシリカが埋没することを防ぐために、非球形のシリカを外添剤として含有するトナーが提案されている(例えば、特許文献5を参照)。前記特許文献5に記載の発明は、外添剤とトナー母体との接触面積を大きくすることで、トナー同士や、トナーとキャリアとの摩擦などによる外添剤の遊離や埋没を抑制している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、フィルミングの異常画像の発生を抑制するとともに、低温定着性及び低付着力による優れたクリーニング性を高いレベルで両立できるトナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としての本発明のトナーは、トナー母体粒子の表面上に、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察される樹脂微粒子を複数有するトナーであって、前記トナーは、樹脂とワックスとを少なくとも含み、前記樹脂微粒子における最小粒子の長径をRとし、長径3R以上を満たす前記樹脂微粒子を凝集体としたとき、前記凝集体が前記トナー母体粒子の表面を占める割合が、15%以上60%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、フィルミングの異常画像の発生を抑制するとともに、低温定着性及び低付着力による優れたクリーニング性を高いレベルで両立できるトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、トナー表面の状態の一例を示す概略図である。
図2図2は、本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略図である。
図3図3は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(トナー)
本発明は、トナー母体粒子の表面上に、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察される樹脂微粒子を複数有するトナーであって、前記トナーは、樹脂とワックスとを少なくとも含み、前記樹脂微粒子における最小粒子の長径をRとし、長径3R以上を満たす前記樹脂微粒子を凝集体としたとき、前記凝集体が前記トナー母体粒子の表面を占める割合が、15%以上60%以下であり、更に必要に応じて、その他の成分(A)を有する。
なお、本発明において、前記樹脂微粒子が、前記トナー母体粒子の表面上に存在している粒子を複合粒子と称することがある。
【0011】
一般的に、トナーの低温定着性を向上させるためには、前記トナーに低融点の材料を使用する必要があるが、低融点の材料を用いて製造したトナーは、耐熱保存性及び付着力が悪くなることから、低温定着性と耐熱保存性及び付着力とはトレードオフの関係にある。
【0012】
前記特許文献1~3に記載の従来技術では、低温定着性に優れたトナーにおいて、付着力悪化に伴うクリーニング不良が十分に解決されていないという問題がある。したがって、一層の低温定着性が求められる場合、相反である付着力を解決する手段が求められる。
前記特許文献3(特開2013-011644号公報)に記載の従来技術では、シェル層が定着ローラからの熱の伝わりを阻害してしまい、十分な低温定着性が得られないという問題があった。
【0013】
特許文献4(特開2009-098194号公報)に記載の従来技術では、トナー粒子表面に添加される小粒径な外添剤(例えば、シリカ)がトナーから脱離し、感光体上に付着した後、それらが凝集、緻密化することで強固な固着シリカとなり、所謂、フィルミングによる異常画像の発生をもたらすという問題があった。
また、前記特許文献4に記載の従来技術における外添剤の粒径範囲には、120nm~150nmといった大粒径のシリカも含まれているので、シリカ遊離に伴う異常画像が発生しやすくなるという問題がある。さらに、従来の前記トナーは、トナー同士の摩擦によりシリカが遊離しやすく、フィルミングや画像ボケといった異常画像の発生も懸念される。
外添剤の離脱を防止するためには、混合機による強い力でトナー母体粒子表面に外添剤を強固に付着させる必要があり、その結果、外添剤が埋没してしまう部分が発生して、所望の効果が得られないという問題がある。
【0014】
したがって、フィルミングが生じる根本的な原因となっているのは、トナー母体粒子表面に付着させた外添剤(シリカ等)が遊離してしまうことであり、トナー特性に求められている低温定着性と、付着力及び耐熱保存性とは、トレードオフの関係にあるため、すべての品質を満足させることは困難である。
【0015】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、トナー母体粒子表面上に樹脂微粒子から成る凝集体が存在し、前記凝集体のトナー母体粒子表面上を占める割合を15%以上60%以下とすることにより、適正量の凝集体をトナー母体粒子表面上に配置させることができるため、外添剤の遊離量を適正化することができ、フィルミングの発生を抑制するとともに、低温定着性及び低付着力による優れたクリーニング性を高いレベルで両立できることを見出した。
【0016】
したがって、本発明においては、トナー母体粒子の表面上に、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察される樹脂微粒子を複数有するトナーであって、前記トナーは、樹脂とワックスとを少なくとも含み、前記樹脂微粒子における最小粒子の長径をRとし、長径3R以上を満たす前記樹脂微粒子を凝集体としたとき、前記凝集体が前記トナー母体粒子の表面を占める割合が、15%以上60%以下であることによって、フィルミングの発生を抑制するとともに、低温定着性及び低付着力による優れたクリーニング性を高いレベルで両立することができる。
【0017】
<樹脂微粒子>
本発明における樹脂微粒子及び、前記樹脂微粒子から成る凝集体は、後述するトナー母体粒子の表面上に存在する。
【0018】
前記樹脂微粒子は、コア樹脂(芯部)と、前記コア樹脂の少なくとも一部の表面を被覆するシェル樹脂(外殻部)とを有することが好ましく、コア樹脂及びシェル樹脂からなることがより好ましく、コア樹脂及びシェル樹脂からなるビニル系ユニットを含有することがさらに好ましい。
前記シェル樹脂及び前記コア樹脂は、ビニルモノマーを単独重合又は共重合したポリマーを含有することが好ましい。前記シェル樹脂は、スチレン-アクリル樹脂を含有することが好ましい。
なお、本発明において、前記シェル樹脂は「樹脂(b1)」、前記コア樹脂は「樹脂(b2)」と称することがある。
なお、本発明において、前記樹脂(b1)及び前記樹脂(b2)を同一粒子内に構成成分として含む粒子を「樹脂微粒子(B)」と称することがある。
【0019】
前記ビニルモノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、以下に示す(1)~(10)などが挙げられる。
【0020】
(1)ビニル炭化水素
前記ビニル炭化水素としては、例えば、(1-1)脂肪族ビニル炭化水素、(1-2)脂環式ビニル炭化水素、(1-3)芳香族ビニル炭化水素などが挙げられる。
【0021】
(1-1)脂肪族ビニル炭化水素
前記脂肪族ビニル炭化水素としては、例えば、アルケン、アルカジエンなどが挙げられる。
前記アルケンの具体例としては、エチレン、プロピレン、α-オレフィンなどが挙げられる。
前記アルカジエンの具体例としては、ブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,6-ヘキサジエン、1,7-オクタジエンなどが挙げられる。
【0022】
(1-2)脂環式ビニル炭化水素
前記脂環式ビニル炭化水素としては、例えば、モノ-シクロアルケン、ジ-シクロアルケン、アルカジエンなどが挙げられる。
前記脂環式ビニル炭化水素の具体例としては、(ジ)シクロペンタジエン、テルペンなどが挙げられる。
【0023】
(1-3)芳香族ビニル炭化水素
前記芳香族ビニル炭化水素としては、例えば、スチレン及びそのハイドロカルビル(アルキル、シクロアルキル、アラルキル及び/又はアルケニル)置換体などが挙げられる。
前記芳香族ビニル炭化水素の具体例としては、α-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。
【0024】
(2)カルボキシル基含有ビニルモノマー及びその塩
前記カルボキシル基含有ビニルモノマー及びその塩としては、例えば、炭素数3~30の不飽和モノカルボン酸(塩)、不飽和ジカルボン酸(塩)、及びこれら無水物(塩)、並びにこれらのモノアルキル(炭素数1~24)エステル又はその塩などが挙げられる。
前記カルボキシル基含有ビニルモノマー及びその塩の具体例としては、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、桂皮酸等のカルボキシル基含有ビニルモノマー、及びこれらの金属塩などが挙げられる。
【0025】
本発明において「(塩)」とは、酸又はその塩を意味する。
例えば、炭素数3~30の不飽和モノカルボン酸(塩)とは、不飽和モノカルボン酸又はその塩を意味する。
本発明において「(メタ)アクリル」とは、メタクリル酸又はアクリル酸を意味する。
本発明において「(メタ)アクリロイル」とは、メタクリロイル又はアクリロイルを意味する。
本発明において「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート又はアクリレートを意味する。
【0026】
(3)スルホン基含有ビニルモノマー、ビニル硫酸モノエステル化物、及びこれらの塩
前記スルホン基含有ビニルモノマー、ビニル硫酸モノエステル化物、及びこれらの塩としては、例えば、炭素数2~14のアルケンスルホン酸(塩)、炭素数2~24のアルキルスルホン酸(塩)、スルホ(ヒドロキシ)アルキル-(メタ)アクリレート(塩)又は(メタ)アクリルアミド(塩)、アルキルアリルスルホコハク酸(塩)などが挙げられる。
前記炭素数2~14のアルケンスルホン酸(塩)の具体例としては、ビニルスルホン酸(塩)などが挙げられる。
前記炭素数2~24のアルキルスルホン酸(塩)の具体例としては、α-メチルスチレンスルホン酸(塩)などが挙げられる。
前記スルホ(ヒドロキシ)アルキル-(メタ)アクリレート(塩)又は(メタ)アクリルアミド(塩)の具体例としては、スルホプロピル(メタ)アクリレート(塩)、硫酸エステル(塩)、スルホン酸基含有ビニルモノマー(塩)などが挙げられる。
【0027】
(4)燐酸基含有ビニルモノマー及びその塩
前記燐酸基含有ビニルモノマー及びその塩としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1~24)燐酸モノエステル(塩)、(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1~24)ホスホン酸(塩)などが挙げられる。
前記(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1~24)燐酸モノエステル(塩)の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート(塩)、フェニル-2-アクリロイロキシエチルホスフェート(塩)などが挙げられる。
前記(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1~24)ホスホン酸(塩)の具体例としては、2-アクリロイルオキシエチルホスホン酸(塩)などが挙げられる。
【0028】
前記(2)カルボキシル基含有ビニルモノマー、前記(3)スルホン基含有ビニルモノマー及びビニル硫酸モノエステル化物、及び前記(4)燐酸基含有ビニルモノマーの塩としては、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩、アミン塩、4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0029】
(5)ヒドロキシル基含有ビニルモノマー
前記ヒドロキシル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、ヒドロキシスチレン、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1-ブテン-3-オール、2-ブテン-1-オール、2-ブテン-1,4-ジオール、プロパルギルアルコール、2-ヒドロキシエチルプロペニルエーテル、蔗糖アリルエーテルなどが挙げられる。
【0030】
(6)含窒素ビニルモノマー
前記含窒素ビニルモノマーとしては、例えば、(6-1)アミノ基含有ビニルモノマー、(6-2)アミド基含有ビニルモノマー、(6-3)ニトリル基含有ビニルモノマー、(6-4)4級アンモニウムカチオン基含有ビニルモノマー、(6-5)ニトロ基含有ビニルモノマーなどが挙げられる。
【0031】
(6-1)アミノ基含有ビニルモノマー
前記アミノ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0032】
(6-2)アミド基含有ビニルモノマー
前記アミド基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0033】
(6-3)ニトリル基含有ビニルモノマー
前記ニトリル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン、シアノアクリレートなどが挙げられる。
【0034】
(6-4)4級アンモニウムカチオン基含有ビニルモノマー
前記4級アンモニウムカチオン基含有ビニルモノマーとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジアリルアミン等の3級アミン基含有ビニルモノマーの4級化物(メチルクロライド、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド、ジメチルカーボネート等の4級化剤を用いて4級化したもの)などが挙げられる。
【0035】
(6-5)ニトロ基含有ビニルモノマー
前記ニトロ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、ニトロスチレンなどが挙げられる。
【0036】
(7)エポキシ基含有ビニルモノマー
前記エポキシ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、p-ビニルフェニルフェニルオキサイドなどが挙げられる。
【0037】
(8)ハロゲン元素含有ビニルモノマー
前記ハロゲン元素含有ビニルモノマーとしては、例えば、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、アリルクロライド、クロルスチレン、ブロムスチレン、ジクロルスチレン、クロロメチルスチレン、テトラフルオロスチレン、クロロプレンなどが挙げられる。
【0038】
(9)ビニルエステル、ビニル(チオ)エーテル、ビニルケトン
前記ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメタクリレート、メチル4-ビニルベンゾエート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート、エチルα-エトキシアクリレート、炭素数1~50のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート[メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等)]、ジアルキルフマレート(2個のアルキル基は炭素数2~8であり、直鎖、分枝鎖、又は脂環式の基である)、ジアルキルマレエート(2個のアルキル基は炭素数2~8であり、直鎖、分枝鎖又は脂環式の基である)、ポリ(メタ)アリロキシアルカン[ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン等]、ポリアルキレングリコール鎖を有するビニルモノマー[ポリエチレングリコール(分子量300)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノアクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド10モル付加物(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールエチレンオキサイド30モル付加物(メタ)アクリレート等]、ポリ(メタ)アクリレート[多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等]などが挙げられる。
前記ビニル(チオ)エーテルとしては、例えば、ビニルメチルエーテルなどが挙げられる。
前記ビニルケトンとしては、例えば、ビニルメチルケトンなどが挙げられる。
【0039】
(10)その他のビニルモノマー
前記その他のビニルモノマーとしては、例えば、テトラフルオロエチレン、フルオロアクリレート、イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、m-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネートなどが挙げられる。
【0040】
前記樹脂(b1)の合成には、上記(1)~(10)のビニルモノマーを1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記樹脂(b1)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、低温定着性の観点から、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体及び(メタ)アクリル酸エステル共重合体がより好ましく、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体がさらに好ましい。
前記樹脂(b1)が、カルボン酸を有することで、樹脂に酸価を付与することができ、後述するトナー母体粒子の表面に前記樹脂微粒子(B)を有するトナーを形成しやすくなる。
【0041】
前記樹脂(b2)の合成には、上記樹脂(b1)で挙げた(1)~(10)のビニルモノマーを1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記樹脂(b2)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、低温定着性の観点から、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体及び(メタ)アクリル酸エステル共重合体が好ましく、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体がより好ましい。
【0042】
前記樹脂(b1)の周波数1Hzでの100℃における粘弾性特性の損失弾性率G”としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、1.5MPa~100MPaが好ましく、1.7MPa~30MPaがより好ましく、2.0MPa~10MPaがさらに好ましい。
前記樹脂(b2)の周波数1Hzでの100℃における粘弾性特性の損失弾性率G”としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、0.01MPa~1.0MPaが好ましく、0.02MPa~0.5MPaがより好ましく、0.05MPa~0.3MPaがさらに好ましい。
前記樹脂(b1)及び前記樹脂(b2)における粘弾性特性の損失弾性率G”が上記範囲であれば、後述するトナー母体粒子の表面に前記樹脂微粒子(B)を有するトナーを形成しやすくなる。
【0043】
本発明における粘弾性特性の損失弾性率G”は、例えば、粘弾性測定装置(ARES-24A(レオメトリック社製))を用いて、下記条件で測定される。
―測定条件―
・治具:25mmパラレルプレート
・周波数:1Hz
・歪み率:10%
・昇温速度:5℃/min
【0044】
前記樹脂(b1)及び前記樹脂(b2)の周波数1Hzでの100℃における粘弾性特性の損失弾性率G”は、構成モノマーの種類やその構成比、及び重合条件(開始剤、連鎖移動剤の種類及び使用量、並びに反応温度等)によって、各々の損失弾性率G”を前述した範囲に調整することが可能である。
前記粘弾性特性の損失弾性率G”の調製方法の具体例としては、例えば、(i)ガラス転移温度(Tg)の調製、(ii)計算酸価(AV)の調製などが挙げられる。
【0045】
(i)ガラス転移温度(Tg)の調製
本明細書において、前記樹脂(b1)の構成単量体から計算されるガラス転移温度を(Tg1)、前記樹脂(b2)の構成単量体から計算されるガラス転移温度を(Tg2)とする。
前記ガラス転移温度(Tg1)としては、0℃~150℃が好ましく、50℃~100℃がより好ましい。
前記ガラス転移温度(Tg1)が、0℃以上であると、耐熱保存性に優れたトナーを得ることできるため好適である。前記ガラス転移温度(Tg1)が、150℃以下であると、前記トナーの定着時における熱伝導の阻害が少ないため好適である。
前記ガラス転移温度(Tg2)としては、-30℃~100℃が好ましく、0℃~80℃がより好ましい、30℃~60℃がさらに好ましい。
前記ガラス転移温度(Tg2)が、-30℃以上であると、耐熱保存性に優れたトナーを得ることできる。前記ガラス転移温度(Tg2)が、100℃以下であると、前記トナーの定着時における熱伝導の阻害が少ないため好適である。
【0046】
前記(Tg1)は、前記(Tg2)より高いことが好ましく、前記(Tg1)は、前記(Tg2)より、10℃以上高いことがより好ましく、前記(Tg1)は、前記(Tg2)より、20℃以上高いことがさらに好ましい。その様にすることで、後述するトナー母体粒子の表面に前記樹脂微粒子(B)を有するトナーを形成しやすくなり、また優れた低温定着性を示すトナーが得られるため好適である。
【0047】
前記樹脂の構成単量体から計算されるガラス転移温度(Tg)とは、Fox法により計算することができる値である。
ここで、Fox法[T.G.Fox,Phys.Rev.,86,652(1952)]とは、下記(式1)で示される個々の単独重合体のTgから共重合体のTgを推算する方法である。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn (式1)
(式1中、Tgは、共重合体のガラス転移温度(絶対温度表示)を示し、Tg1、Tg2・・・Tgnは、各単量体成分の単独重合体のガラス転移温度(絶対温度表示)を示し、W1、W2・・・Wnは、各単量体成分の重量分率を示す)。
前記ガラス転移温度(Tg)は、「DSC20,SSC/580」(セイコーインスツル(株)製)を用いて、ASTM D3418-82に規定されている方法(DSC)で測定することができる。
【0048】
(ii)計算酸価(AV)の調製
本明細書において、前記樹脂(b1)の計算酸価を(AV1)、前記樹脂(b2)の計算酸価を(AV2)とする。
前記(AV1)としては、75mgKOH/g~400mgKOH/gが好ましく、150mgKOH/g~300mgKOH/gがより好ましい。
前記(AV2)としては、優れた低温定着性を示すトナーが得られる点から、0mgKOH/g~50mgKOH/gが好ましく、0mgKOH/g~20mgKOH/gがより好ましく、0mgKOH/gがさらに好ましい。
前記(AV1)が75mgKOH/g以上400mgKOH/g以下であり、前記(AV2)が0mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることにより、後述するトナー母体粒子の表面に前記樹脂微粒子(B)を有するトナーを形成しやすくなるため好適である。
なお、計算酸価とは、構成単量体中に含有される酸性基のモル量と、構成モノマーの総重量から計算される理論酸価である。
本発明における酸価の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、JIS K0070:1992の方法で測定することができる。
【0049】
前記(i)及び前記(ii)の条件を満たす前記樹脂(b1)としては、例えば、(Tg1)及びその他モノマーとの共重合性の観点から、前記樹脂(b1)の合計質量に基づいて、構成単量体としてスチレンを好ましくは10質量%~80質量%、より好ましくは30質量%~60質量%含有し、メタクリル酸及び/又はアクリル酸を、好ましくは合計10質量%~60質量%、より好ましくは合計30質量%~50質量%含有する樹脂などが挙げられる。
前記(i)及び前記(ii)の条件を満たす前記樹脂(b2)としては、例えば、(Tg2)及びその他モノマーとの共重合性の観点から、前記樹脂(b2)の合計質量に基づいて、構成単量体としてスチレンを好ましくは10質量%~100質量%、より好ましくは30質量%~90質量%含有し、メタクリル酸及び/又はアクリル酸を、好ましくは合計0質量%~7.5質量%、より好ましくは合計0質量%~2.5質量%含有する樹脂などが挙げられる。
【0050】
前記樹脂(b1)の溶解性パラメータ(以下、SP値と略記することもある)としては、トナー粒子の形成しやすさの観点から、9(cal/cm1/2~13(cal/cm1/2が好ましく、9.5(cal/cm1/2~12.5(cal/cm1/2がより好ましく、10.5(cal/cm1/2~11.5(cal/cm1/2がさらに好ましい。
前記樹脂(b2)のSP値としては、トナー粒子の形成しやすさの観点から、8.5(cal/cm1/2~12.5(cal/cm1/2が好ましく、9(cal/cm1/2~12(cal/cm1/2がより好ましく、10(cal/cm1/2~11(cal/cm1/2がさらに好ましい。
前記樹脂(b1)及び前記樹脂(b2)のSP値は、構成するモノマーの種類及びその構成比を変えることで調整することができる。
なお、本発明におけるSP値は、Fedorsによる方法[Polym.Eng.Sci.14(2)152,(1974)]により計算することができる。
【0051】
前記樹脂(b1)の数平均分子量(Mn1)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、2,000~2,000,000が好ましく、20,000~200,000がより好ましい。前記数平均分子量(Mn1)が2,000以上であれば、耐熱保存性が向上し、2,000,000以下であれば、トナーの低温定着性に対する阻害が少ないため好適である。
前記樹脂(b2)の数平均分子量(Mn2)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、1,000~1,000,000が好ましく、10,000~100,000がより好ましい。前記数平均分子量(Mn2)が、1,000以上であれば、トナーの耐熱保存性が向上し、1,000,000以下であれば、トナーの低温定着性に対する阻害が少ないため好適である。
【0052】
前記樹脂(b1)の重量平均分子量(Mw1)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、20,000~20,000,000が好ましく、200,000~2,000,000がより好ましい。前記重量平均分子量(Mw1)が、20,000以上であれば、トナーの耐熱保存性が向上し、20,000,000以下であれば、トナーの低温定着性に対する阻害が少ないため好適である。
前記樹脂(b2)の重量平均分子量(Mw2)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、10,000~10,000,000が好ましく、100,000~1,000,000がより好ましい。前記重量平均分子量(Mw2)が、10,000以上であれば、トナーの耐熱保存性が向上し、10,000,000以下であれば、トナーの低温定着性に対する阻害が少ないため好適である。
【0053】
前記樹脂(b1)の重量平均分子量(Mw1)としては、前記樹脂(b2)の重量平均分子量(Mw2)より大きいことが好ましく、前記樹脂(b2)の重量平均分子量(Mw2)より1.5倍以上大きいことがより好ましく、前記樹脂(b2)の重量平均分子量(Mw2)より2.0倍以上大きいことがさらに好ましい。前記(Mw1)が上記範囲であれば、後述するトナー母体粒子の表面に前記樹脂微粒子(B)を有するトナーを形成しやすくなり、また優れた低温定着性を示すトナーが得られるため好適である。
【0054】
これらの中でも、前記樹脂(b1)の重量平均分子量(Mw1)が200,000~2,000,000であり、前記樹脂(b2)の重量平均分子量(Mw2)が100,000~500,000であり、かつ「前記樹脂(b1)の重量平均分子量(Mw1)」>「前記樹脂(b2)の重量平均分子量(Mw2)」であることが好ましい。
【0055】
本発明における数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、以下の条件で測定することができる。
―測定条件―
・装置(一例):「HLC-8120」(東ソー株式会社製)
・カラム(一例):「TSK GEL GMH6」(東ソー株式会社製)2本
・測定温度:40℃
・試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液(不溶解分をグラスフィルターで濾別したもの)
・溶液注入量:100μl
・検出装置:屈折率検出器
・基準物質:標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量:500、1,050、2,800、5,970、9,100、18,100、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,890,000)(東ソー株式会社製)
【0056】
前記樹脂微粒子(B)における前記樹脂(b1)と前記樹脂(b2)との質量比率[樹脂(b1)の質量/樹脂(b2)の質量]としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、5/95~95/5が好ましく、25/75~75/25がより好ましく、40/60~60/40がさらに好ましい。
前記樹脂(b1)と前記樹脂(b2)との質量比率が5/95以上であれば、トナーの耐熱保存性に優れ、前記樹脂(b1)と前記樹脂(b2)との質量比率が95/5以下であれば、後述するトナー母体粒子の表面に前記樹脂微粒子(B)を有するトナーを形成しやすくなるため好適である。
【0057】
前記樹脂微粒子(B)の含有量(前記樹脂(b1)と前記樹脂(b2)とにおける質量の和)としては、前記トナーに対して、0.2質量%以上5質量%以下であることが好ましい。前記樹脂(b1)と前記樹脂(b2)とにおける質量の和が、上記範囲にあることで、低温定着性及び耐熱保存性が向上するため好適である。
前記樹脂微粒子(B)の含有量が前記トナーに対して0.2質量%以上であると、耐熱保存性が悪化するといった不具合を防止することができ、前記樹脂微粒子(B)の含有量が前記トナーに対して5質量%以下であると、低温定着性が低下するといった不具合を防止することができる。
【0058】
<体積平均一次粒径>
前記樹脂微粒子(B)の体積平均一次粒径は、良好な低温定着性を示すトナーが得られるという観点から、10nm以上100nm以下が好ましく、10nm以上50nm以下がより好ましい。
前記体積平均一次粒径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)画像観察や、動的光散乱式粒径分布測定装置(LB)によって測定することができる。
【0059】
本発明におけるトナーは、前記樹脂微粒子(B)を単独で用いることもできるが、2種類のスチレン-アクリル樹脂(樹脂(b1)及び樹脂(b2))から成る樹脂微粒子(B)と、1種類のスチレン-アクリル樹脂から成る樹脂微粒子(A)とを併用することが好ましい。
本発明のトナー製造過程において、乳化中に予め混合した前記樹脂微粒子(A)及び前記樹脂微粒子(B)がトナー母体粒子の表面に均一に付着し、後述する洗浄工程により前記トナー表面に付着した樹脂微粒子(A)と、樹脂微粒子(B)中の樹脂(b1)の全部又は一部とが取り除かれることで、前記樹脂微粒子(B)を均一な隙間を空けて付着させることができる。
本発明のトナーにおいて、前記樹脂微粒子(A)に対する前記樹脂微粒子(B)の質量比[(B)/(A)]としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、1/4であることが好ましく、1/2であることがより好ましい。
【0060】
前記樹脂微粒子(B)を製造する方法としては、特に制限はなく、公知の製造方法が挙げられ、例えば、コア樹脂を形成した後に、前記コア樹脂を覆うようにシェル樹脂を形成する方法や、シェル樹脂を形成した後に、前記シェル樹脂内にコア樹脂を形成する方法などが挙げられる。
上述したシェル樹脂を形成した後に、前記シェル樹脂内にコア樹脂を形成する方法におけるメカニズムの詳細は定かではないが、樹脂(b2)の構成モノマーの疎水性等を調整し、水よりも樹脂(b1)になじみやすくすることで、前記樹脂(b1)に前記樹脂(b2)の構成モノマーを吸収させることにより、樹脂(b1)内に前記樹脂(b2)を合成させることができると考えられる。
また、前記樹脂微粒子(B)を製造する方法の具体例としては、次のような製造方法(I)~(V)などが挙げられる。なお、以下に示す(I)~(V)のいずれの製造方法も好適に採用することができる。
【0061】
(I)水性分散液中の樹脂(b1)をシードとして、樹脂(b2)の構成モノマーをシード重合する方法
前記(I)の具体例としては、樹脂(b1)の構成モノマーを滴下重合して樹脂(b1)を含む粒子の水性分散液を製造した後、これをシードとして樹脂(b2)の構成モノマーをシード重合する方法、及びあらかじめ溶液重合等で製造した樹脂(b1)を水に乳化分散した後、これをシードとして樹脂(b2)の構成モノマーをシード重合する方法などが挙げられる。
【0062】
(II)水性分散液中の樹脂(b2)をシードとして、樹脂(b1)の構成モノマーをシード重合する方法
前記(II)の具体例としては、樹脂(b2)の構成モノマーを滴下重合して樹脂(b2)を含む粒子の水性分散液を製造した後、これをシードとして樹脂(b1)の構成モノマーをシード重合する方法、及びあらかじめ溶液重合等で製造した樹脂(b2)を水に乳化分散した後、これをシードとして樹脂(b1)の構成モノマーをシード重合する方法などが挙げられる。
【0063】
(III)樹脂(b1)及び樹脂(b2)の混合物を水性媒体に乳化して樹脂微粒子の水性分散液として得る方法
前記(III)の具体例としては、あらかじめ溶液重合等で製造した樹脂(b1)及び樹脂(b2)の溶液又は溶融物を混合した後、これを水性媒体に乳化分散する方法などが挙げられる。
【0064】
(IV)樹脂(b1)と樹脂(b2)の構成モノマーの混合物とを水性媒体に乳化した後に、樹脂(b2)の構成モノマーを重合して樹脂微粒子の水性分散液として得る方法
前記(IV)の具体例としては、あらかじめ溶液重合等で製造した樹脂(b1)を樹脂(b2)の構成モノマーと混合し、これを水性媒体に乳化分散した後、樹脂(b2)の構成モノマーを重合する方法、及び樹脂(b2)の構成モノマー中で樹脂(b1)を製造した後、その混合物を水性媒体に乳化分散した後、樹脂(b2)の構成モノマーを重合する方法などが挙げられる。
【0065】
(V)樹脂(b2)と樹脂(b1)の構成モノマーの混合物とを水性媒体に乳化した後に、樹脂(b1)の構成モノマーを重合して樹脂微粒子の水性分散液として得る方法
前記(V)の具体例としては、あらかじめ溶液重合等で製造した樹脂(b2)を樹脂(b1)の構成モノマーと混合し、これを水性媒体に乳化分散した後、樹脂(b1)の構成モノマーを重合する方法、及び樹脂(b1)の構成モノマー中で樹脂(b2)を製造した後、その混合物を水性媒体に乳化分散した後、樹脂(b1)の構成モノマーを重合する方法などが挙げられる。
【0066】
前記樹脂微粒子(B)が、前記樹脂(b1)と前記樹脂(b2)とを同一粒子内に構成成分として含むことは、前記樹脂微粒子(B)の切断面を公知の表面元素分析装置(TOF-SIMSEDX-SEM等)を用いて元素マッピング画像の観察、及び前記樹脂(b1)と前記樹脂(b2)とに含まれる官能基に応じた染色剤で染色した樹脂微粒子(B)の切断面の電子顕微鏡観察画像の観察を行うことにより確認することができる。
また、この方法で得られる樹脂微粒子は、前記樹脂(b1)と前記樹脂(b2)とを同一粒子内に構成成分として含む前記樹脂微粒子(B)の他に、前記樹脂(b1)のみを構成樹脂成分とする樹脂微粒子、及び前記樹脂(b2)のみを構成樹脂成分とする樹脂微粒子を含む混合物として得られる場合があるが、後述する複合粒子形成工程においては、混合物のまま用いてもよく、前記樹脂微粒子(B)だけを単離して用いてもよい。
【0067】
前記樹脂微粒子(B)は、水性分散液として用いることが好ましい。
前記水性分散液に用いられるもの(水性媒体)としては、水に溶解するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、界面活性剤(D)、緩衝剤、保護コロイドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、前記水性分散液に用いる水性媒体としては、水を必須とする液体であれば、特に制限なく用いることができ、例えば、水を含有させた水溶液などが挙げられる。
【0068】
―界面活性剤(D)―
前記界面活性剤(D)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、ノニオン性界面活性剤(D1)、アニオン性界面活性剤(D2)、カチオン性界面活性剤(D3)、両性界面活性剤(D4)、その他の乳化分散剤(D5)などが挙げられる。
【0069】
前記ノニオン性界面活性剤(D1)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、AO(アルキレンオキサイド)付加型ノニオン性界面活性剤、多価アルコール型ノニオン性界面活性剤などが挙げられる。
前記AO付加型ノニオン性界面活性剤としては、例えば、炭素数10~20の脂肪族アルコールのEO付加物、フェノールのEO付加物、ノニルフェノールのEO(エチレンオキサイド)付加物、炭素数8~22のアルキルアミンのEO付加物、ポリ(オキシプロピレン)グリコールのEO付加物などが挙げられる。
前記多価アルコール型ノニオン性界面活性剤としては、例えば、多価(3~8価又はそれ以上)アルコール(炭素数2~30)の脂肪酸(炭素数8~24)エステル(例えば、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート等)、アルキル(炭素数4~24)ポリ(重合度1~10)グリコシドなどが挙げられる。
【0070】
前記アニオン性界面活性剤(D2)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、炭素数8~24の炭化水素基を有するエーテルカルボン酸又はその塩、炭素数8~24の炭化水素基を有する硫酸エステル又はエーテル硫酸エステル及びそれらの塩、炭素数8~24の炭化水素基を有するスルホン酸塩、炭素数8~24の炭化水素基を1個又は2個有するスルホコハク酸塩、炭素数8~24の炭化水素基を有するリン酸エステル又はエーテルリン酸エステル及びそれらの塩、炭素数8~24の炭化水素基を有する脂肪酸塩、炭素数8~24の炭化水素基を有するアシル化アミノ酸塩などが挙げられる。
前記炭素数8~24の炭化水素基を有するエーテルカルボン酸又はその塩としては、例えば、ラウリルエーテル酢酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ラウリルエーテル酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
前記炭素数8~24の炭化水素基を有する硫酸エステル又はエーテル硫酸エステル及びそれらの塩としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ラウリル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ラウリル硫酸トリエタノールアミン、(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
前記炭素数8~24の炭化水素基を有するスルホン酸塩としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
前記炭素数8~24の炭化水素基を有するリン酸エステル又はエーテルリン酸エステル及びそれらの塩としては、例えば、ラウリルリン酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ラウリルエーテルリン酸ナトリウムなどが挙げられる。
前記炭素数8~24の炭化水素基を有する脂肪酸塩としては、例えば、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸トリエタノールアミンなどが挙げられる。
前記炭素数8~24の炭化水素基を有するアシル化アミノ酸塩としては、例えば、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシントリエタノールアミン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸トリエタノールアミン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸ナトリウム、ラウロイルメチル-β-アラニンナトリウムなどが挙げられる。
【0071】
前記カチオン性界面活性剤(D3)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、第4級アンモニウム塩型、アミン塩型などが挙げられる。
前記第4級アンモニウム塩型としては、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウムなどが挙げられる。
前記アミン塩型としては、例えば、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド乳酸塩、ジラウリルアミン塩酸塩、オレイルアミン乳酸塩などが挙げられる。
【0072】
前記両性界面活性剤(D4)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、ベタイン型両性界面活性剤、アミノ酸型両性界面活性剤などが挙げられる。
前記ベタイン型両性界面活性剤としては、例えば、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタインなどが挙げられる。
前記アミノ酸型両性界面活性剤としては、例えば、β-ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0073】
前記その他の乳化分散剤(D5)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、反応性活性剤が挙げられる。
前記反応性活性剤としては、ラジカル反応性を有するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、アデカリアソープ(登録商標)SE-10N、SR-10、SR-20、SR-30、ER-20、ER-30(以上、株式会社ADEKA製)、アクアロン(登録商標)HS-10、KH-05、KH-10、KH-1025(以上、第一工業製薬株式会社製)、エレミノール(登録商標)JS-20(三洋化成工業株式会社製)、ラテムル(登録商標)D-104、PD-420、PD-430(以上、花王株式会社製)、イオネット(登録商標)MO-200(三洋化成工業株式会社製)、ポリビニルアルコール、デンプン又はその誘導体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、並びにポリアクリル酸ソーダ等のカルボキシル基含有(共)重合体及び米国特許第5906704号明細書に記載のウレタン基又はエステル基を有する乳化分散剤(例えば、ポリカプロラクトンポリオールとポリエーテルジオールとをポリイソシアネートで連結させたもの)などが挙げられる。
【0074】
前記界面活性剤(D)としては、乳化及び分散させる際に、油滴を安定化させ、所望の形状を得ながら、粒度分布をシャープにする観点から、ノニオン性界面活性剤(D1)とアニオン性界面活性剤(D2)とその他の乳化分散剤(D5)との併用が好ましく、ノニオン性界面活性剤(D1)とその他の乳化分散剤(D5)との併用、及びアニオン性界面活性剤(D2)とその他の乳化分散剤(D5)との併用がより好ましい。
【0075】
―緩衝剤―
前記緩衝剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0076】
―保護コロイド―
前記保護コロイドとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、水溶性セルロース化合物、ポリメタクリル酸のアルカリ金属塩などが挙げられる。
【0077】
前記樹脂微粒子(B)は、前記樹脂(b1)及び前記樹脂(b2)に加え、その他の樹脂成分、開始剤(及びその残渣)、連鎖移動剤、酸化防止剤、可塑剤、防腐剤、還元剤、有機溶剤などを含有していてもよい。
【0078】
―その他の樹脂成分―
前記その他の樹脂成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、前記樹脂(b1)及び前記樹脂(b2)に用いられる樹脂以外のビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。
【0079】
―開始剤(及びその残渣)―
前記開始剤(及びその残渣)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、公知のラジカル重合開始剤などが挙げられる。
前記開始剤(及びその残渣)の具体例としては、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩開始剤;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ開始剤;過酸化ベンゾイル、クメンヒドロパーオキサイド、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物;過酸化水素などが挙げられる。
【0080】
―連鎖移動剤―
前記連鎖移動剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、n-ドデシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン、2-エチルヘキシルチオグリコレート、2-メルカプトエタノール、β-メルカプトプロピオン酸、α-メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。
【0081】
―酸化防止剤―
前記酸化防止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、フェノール化合物、パラフェニレンジアミン、ハイドロキノン、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。
【0082】
前記フェノール化合物としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、ステアリル-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′-メチレン-ビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2′-メチレン-ビス-(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4′-チオビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4′-ブチリデンビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3′-ビス(4′-ヒドロキシ-3′-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド]クリコ-ルエステル、トコフェロールなどが挙げられる。
【0083】
前記パラフェニレンジアミンとしては、例えば、N-フェニル-N′-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジメチル-N,N′-ジ-t-ブチル-p-フェニレンジアミンなどが挙げられる。
【0084】
前記ハイドロキノンとしては、例えば、2,5-ジ-t-オクチルハイドロキノン、2,6-ジドデシルハイドロキノン、2-ドデシルハイドロキノン、2-ドデシル-5-クロロハイドロキノン、2-t-オクチル-5-メチルハイドロキノン、2-(2-オクタデセニル)-5-メチルハイドロキノンなどが挙げられる。
【0085】
前記有機硫黄化合物としては、例えば、ジラウリル-3,3′-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3′-チオジプロピオネート、ジテトラデシル-3,3′-チオジプロピオネートなどが挙げられる。
【0086】
前記有機燐化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4-ジブチルフェノキシ)ホスフィンなどが挙げられる。
【0087】
―可塑剤―
前記可塑剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、フタル酸エステル、脂肪族2塩基酸エステル、トリメリット酸エステル、燐酸エステル、脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0088】
前記フタル酸エステルとしては、例えば、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジイソデシルなどが挙げられる。
【0089】
前記脂肪族2塩基酸エステルとしては、例えば、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル、セバシン酸-2-エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0090】
前記トリメリット酸エステルとしては、例えば、トリメリット酸トリ-2-エチルヘキシル、トリメリット酸トリオクチルなどが挙げられる。
【0091】
前記燐酸エステルとしては、例えば、リン酸トリエチル、リン酸トリ-2-エチルヘキシル、リン酸トリクレジールなどが挙げられる。
【0092】
前記脂肪酸エステルとしては、例えば、オレイン酸ブチルなどが挙げられる。
【0093】
―防腐剤―
前記防腐剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、有機窒素硫黄化合物防腐剤、有機硫黄ハロゲン化物防腐剤などが挙げられる。
【0094】
―還元剤―
前記還元剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルムアルデヒドスルホキシラート金属塩等の還元性有機化合物;チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物などが挙げられる。
【0095】
―有機溶剤―
前記有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(以下、MEKと略記)等のケトン溶媒;酢酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル溶媒;THF(テトラヒドロフラン)等のエーテル溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム等のアミド溶媒;イソプロピルアルコール等のアルコール溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒などが挙げられる。
【0096】
<トナー母体粒子>
前記トナー母体粒子(以下、「トナー母体」、「母体粒子」とも称することがある)は、結着樹脂、着色剤、及びワックスを含有し、更に必要に応じて、その他の成分(B)を含有する。
【0097】
<<結着樹脂>>
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル樹脂、スチレン-アクリル樹脂、ポリオール樹脂、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。これらの中でも、トナーに可撓性を与えることができる点から、ポリエステル樹脂が好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0098】
<<<ポリエステル樹脂>>>
前記ポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、変性ポリエステル樹脂などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0099】
-結晶性ポリエステル-
前記結晶性ポリエステル樹脂(以下、「結晶性ポリエステル」、「ポリエステル樹脂成分D」とも称する)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオールと、ポリカルボン酸とを反応させて得られる結晶性ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0100】
前記結晶性ポリエステル樹脂は、高い結晶性をもつために、定着開始温度付近において急激な粘度低下を示す熱溶融特性を示す。
このような特性を有する前記結晶性ポリエステル樹脂を後述する非晶性ポリエステル樹脂と併用することで、溶融開始温度直前までは結晶性による耐熱保存性がよく、溶融開始温度では結晶性ポリエステル樹脂の融解による急激な粘度低下(シャープメルト)を起こし、それに伴い前記非晶性ポリエステル樹脂と相溶し、共に急激に粘度低下することで定着することから、良好な耐熱保存性と低温定着性とを兼ね備えたトナーが得られる。また、離型幅(定着下限温度と耐高温オフセット発生温度との差)についても、良好な結果を示す。
なお、本発明において結晶性ポリエステル樹脂とは、上記のごとく、ポリオールと、ポリカルボン酸とを反応させて得られるものを指し、ポリエステル樹脂を変性したもの、例えば、前記プレポリマー、及びそのプレポリマーを架橋及び/又は伸長反応させて得られる樹脂は、前記結晶性ポリエステル樹脂には属さない。
【0101】
--ポリオール--
前記結晶性ポリエステル樹脂の合成に用いられる前記ポリオールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール、3価以上のアルコールなどが挙げられる。
【0102】
前記結晶性ポリエステル樹脂の合成に用いられる前記ジオールとしては、例えば、飽和脂肪族ジオールなどが挙げられる。
前記飽和脂肪族ジオールとしては、例えば、直鎖飽和脂肪族ジオール、分岐飽和脂肪族ジオールなどが挙げられる。これらの中でも、結晶性を向上させ、かつ融点の低下を防ぐことができる点から、直鎖飽和脂肪族ジオールが好ましく、炭素数が2以上12以下の直鎖飽和脂肪族ジオールがより好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0103】
前記飽和脂肪族ジオールの具体例としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、前記結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が高く、シャープメルト性に優れる点で、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが好ましい。
【0104】
前記結晶性ポリエステル樹脂の合成に用いられる前記3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0105】
--ポリカルボン酸--
前記結晶性ポリエステル樹脂の合成に用いられる前記ポリカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2価のカルボン酸、3価以上のカルボン酸などが挙げられる。
【0106】
前記結晶性ポリエステル樹脂の合成に用いられる前記2価のカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の二塩基酸等の芳香族ジカルボン酸などが挙げられ、更に、これらの無水物やこれらの低級(炭素数1~3)アルキルエステルなども挙げられる。
【0107】
前記結晶性ポリエステル樹脂の合成に用いられる前記3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、及びこれらの無水物やこれらの低級(炭素数1~3)アルキルエステルなどが挙げられる。
【0108】
前記結晶性ポリエステル樹脂の合成に用いられる前記ポリカルボン酸としては、前記飽和脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、スルホン酸基を持つジカルボン酸や、2重結合を持つジカルボン酸などが含まれていてもよい。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0109】
前記結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数4以上12以下の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸と、炭素数2以上12以下の直鎖飽和脂肪族ジオールとから構成されることが好ましい。即ち、前記結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数4以上12以下の飽和脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位と、炭素数2以上12以下の飽和脂肪族ジオールに由来する構成単位とを有することが好ましい。そうすることにより、結晶性が高く、シャープメルト性に優れることから、優れた低温定着性を発揮できる点で好ましい。
【0110】
本発明のトナーにおける結晶性ポリエステル樹脂の結晶性の有無は、結晶解析X線回折装置(例えば、X’Pert Pro MRD、フィリップス社製)により確認することができる。以下、測定方法について説明する。
まず、対象試料を乳鉢により、すり潰し試料粉体を作製し、得られた試料粉体を試料ホルダーに均一に塗布する。その後、回折装置内に試料ホルダーをセットし、測定を行い、回折スペクトルを得る。
得られた回折スペクトルにおいて、20°<2θ<25°の範囲に得られたピークのうち最もピーク強度が大きいピークのピーク半値幅が2.0以下である場合に、結晶性ポリエステル樹脂を有すると判断した。
結晶性ポリエステル樹脂に対し、上記状態を示さないポリエステル樹脂を、本発明では、非晶質ポリエステル樹脂とした。
以下にX線回折の測定条件を記載する。
―測定条件-
・Tension kV: 45kV
・Current: 40mA
・MPSS
・Upper
・Gonio
・Scanmode: continuos
・Start angle : 3°
・End angle : 35°
・Angle Step:0.02°
・Lucident beam optics
・Divergence slit : Div slit 1/2
・Difflection beam optics
・Anti scatter slit: As Fixed 1/2
・Receiving slit : Prog rec slit
【0111】
前記結晶性ポリエステル樹脂の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以上80℃以下であることが好ましい。
前記結晶性ポリエステル樹脂の融点が、60℃以上であると、前記結晶性ポリエステル樹脂が低温で溶融しやすく、トナーの耐熱保存性が低下する不具合を防止でき、80℃以下であると、定着時の加熱による結晶性ポリエステル樹脂の溶融が不十分で、低温定着性が低下するという不具合を防止することができる。
【0112】
前記結晶性ポリエステル樹脂の分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記結晶性ポリエステル樹脂のオルトジクロロベンゼンの可溶分の重量平均分子量(Mw)は、GPC測定において、3,000~30,000が好ましく、5,000~15,000がより好ましい。
前記結晶性ポリエステル樹脂のオルトジクロロベンゼンの可溶分の数平均分子量(Mn)は、GPC測定において、1,000~10,000が好ましく、2,000~10,000がより好ましい。
前記結晶性ポリエステル樹脂の分子量の比(Mw/Mn)としては、1.0~10が好ましく、1.0~5.0がより好ましい。これは、分子量分布がシャープで低分子量のものが低温定着性に優れ、かつ分子量が低い成分が多いと耐熱保存性が低下するためである。
【0113】
前記結晶性ポリエステル樹脂の酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、紙と樹脂との親和性の観点から、所望の低温定着性を達成するためには、5mgKOH/g以上が好ましく、10mgKOH/g以上がより好ましい。一方、耐高温オフセット性を向上させるには、45mgKOH/g以下が好ましい。
【0114】
前記結晶性ポリエステル樹脂の水酸基価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、所望の低温定着性を達成し、かつ良好な帯電特性を達成するためには、0mgKOH/g~50mgKOH/gが好ましく、5mgKOH/g~50mgKOH/gがより好ましい。
【0115】
前記結晶性ポリエステル樹脂の分子構造は、溶液又は固体によるNMR測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、IR測定などにより確認することができる。簡便には、赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm-1又は990±10cm-1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有するものを結晶性ポリエステル樹脂として検出する方法などが挙げられる。
【0116】
前記結晶性ポリエステル樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、3質量部以上20質量部以下が好ましく、5質量部以上15質量部以下がより好ましい。
前記結晶性ポリエステル樹脂の含有量が、3質量部以上であると、結晶性ポリエステル樹脂によるシャープメルト化が不十分なため、低温定着性が悪化するという不具合を防止することができる。前記結晶性ポリエステル樹脂の含有量が、20質量部以下であると、耐熱保存性が低下したり、画像のかぶりが生じやすくなったりするといった不具合を防止することができる。
【0117】
-非晶性ポリエステル樹脂-
前記非晶性ポリエステル樹脂(以下、「非晶性ポリエステル」、「非晶質ポリエステル」、「非晶質ポリエステル樹脂」、「未変性ポリエステル樹脂」、「ポリエステル樹脂成分A」と称することがある)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオールと、ポリカルボン酸とを反応させて得られる非晶性ポリエステル樹脂などが挙げられる。
なお、本発明において非晶性ポリエステル樹脂とは、上記のごとく、ポリオールと、ポリカルボン酸とを反応させて得られるものを示す。即ち、ポリエステル樹脂を変性したもの、例えば、後述するプレポリマー、及びそのプレポリマーを架橋及び/又は伸長反応させて得られる変性ポリエステル樹脂は、本発明においては前記非晶性ポリエステル樹脂には含めず、変性ポリエステル樹脂として扱う。
前記非晶性ポリエステル樹脂は、テトラヒドロフラン(THF)に可溶なポリエステル樹脂成分である。
前記非晶性ポリエステル樹脂としては、線状のポリエステル樹脂が好ましい。
【0118】
--ポリオール--
前記非晶性ポリエステル樹脂の合成に用いられるポリオールとしては、例えば、ジオールなどが挙げられる。
【0119】
前記非晶性ポリエステル樹脂の合成に用いられるジオールとしては、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド(平均付加モル数1~10)付加物;エチレングリコール、プロピレングリコール;水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド(平均付加モル数1~10)付加物などが挙げられる。これらの中でも、ポリオールとしては、アルキレングリコールを40モル%以上含有することが好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0120】
--ポリカルボン酸--
前記非晶性ポリエステル樹脂の合成に用いられる前記ポリカルボン酸としては、例えば、ジカルボン酸などが挙げられる。
【0121】
前記非晶性ポリエステル樹脂の合成に用いられる前記ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸、ドデセニルコハク酸、オクチルコハク酸等の炭素数1~20のアルキル基;炭素数2~20のアルケニル基で置換されたコハク酸などが挙げられる。これらの中でも、ポリカルボン酸としては、テレフタル酸を50モル%以上含有するものが好ましい。
これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0122】
前記非晶性ポリエステル樹脂は、酸価、水酸基価を調整するため、前記非晶性ポリエステル樹脂における樹脂鎖の末端に3価以上のカルボン酸及び/又は3価以上のアルコール、3価以上のエポキシ化合物などを含んでいてもよい。これらの中でも、ムラが発生しにくく、十分な光沢や画像濃度が得られるという観点から、3価以上の脂肪族アルコールを含有することが好ましい。
前記非晶性ポリエステル樹脂における3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、又はそれらの酸無水物などが挙げられる。
前記非晶性ポリエステル樹脂における前記3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0123】
前記非晶性ポリエステル樹脂の分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、以下の範囲であることが好ましい。
前記非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、3,000~10,000が好ましく、4,000~7,000がより好ましい。
前記非晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)としては、1,000~4,000が好ましく、1,500~3,000がより好ましい。
前記非晶性ポリエステル樹脂の分子量の比(Mw/Mn)としては、1.0~4.0が好ましく、1.0~3.5がより好ましい。
前記重量平均分子量(Mw)及び前記数平均分子量(Mn)が上記範囲であることが好ましい理由としては、重量平均分子量(Mw)が3,000未満、及び数平均分子量(Mn)が1,000未満であると、トナーの耐熱保存性、現像機内での撹拌等のストレスに対する耐久性に劣る場合があり、重量平均分子量(Mw)が10,000、及び数平均分子量(Mn)が4,000を超えると、トナーの溶融時の粘弾性が高くなり低温定着性に劣る場合があるためである。
前記重量平均分子量(Mw)及び前記数平均分子量(Mn)は、例えば、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定できる。
【0124】
前記非晶性ポリエステル樹脂(THF可溶分)における分子量600以下の成分は、2質量%~10質量%が好ましい。
前記非晶性ポリエステル樹脂(THF可溶分)における分子量600以下の成分が10質量%以下であると、トナーの耐熱保存性、及び現像機内での撹拌等のストレスに対する耐久性に劣るといった問題を解消することができる、前記非晶性ポリエステル樹脂(THF可溶分)における分子量600以下の成分が2質量%以上であると、低温定着性に劣るといった問題を解消することができる。
前記非晶性ポリエステル樹脂(THF可溶分)における分子量600以下の成分の含有量を調節する方法としては、前記非晶性ポリエステル樹脂をメタノールにより抽出し、分子量600以下の成分を除去し、精製する方法などが挙げられる。
【0125】
前記非晶性ポリエステル樹脂の酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1mgKOH/g~50mgKOH/gが好ましく、5mgKOH/g~30mgKOH/gがより好ましい。
前記非晶性ポリエステル樹脂の酸価が1mgKOH/g以上であると、トナーが負帯電性となりやすく、更には、紙への定着時に紙とトナーの親和性がよくなり、低温定着性を向上させることができる。前記非晶性ポリエステル樹脂の酸価が、50mgKOH/g以下であると、帯電安定性、特に環境変動に対する帯電安定性が低下するという不具合を防止することができる。
【0126】
前記非晶性ポリエステル樹脂の水酸基価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5mgKOH/g以上が好ましい。
【0127】
前記非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、40℃~65℃が好ましく、45℃~65℃がより好ましく、50℃~60℃がさらに好ましい。
前記非晶性ポリエステル樹脂のTgが40℃以上であると、トナーの耐熱保存性、及び現像機内での撹拌等のストレスに対する耐久性が向上し、また、耐フィルミング性が向上するため好適である。前記非晶性ポリエステル樹脂のTgが65℃以下であると、トナーの定着時における加熱及び加圧による変形が良好になり、低温定着性が向上するため好適である。
【0128】
前記非晶性ポリエステル樹脂の含有量は、低温定着性及び耐熱保存性が両立したトナーが得られるという点で、トナー100質量部に対して、80質量部以上90質量部以下が好ましい。
【0129】
-変性ポリエステル樹脂-
前記変性ポリエステル樹脂(以下、「変性ポリエステル」、「ポリエステル樹脂成分C」と称することがある)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、活性水素基含有化合物と、前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有するポリエステル樹脂(以下、「プレポリマー」、「ポリエステルプレポリマー」と称することがある)との反応生成物などが挙げられる。
前記変性ポリエステル樹脂は、テトラヒドロフラン(THF)に不溶なポリエステル樹脂である。前記テトラヒドロフラン(THF)に不溶なポリエステル樹脂成分は、Tgや溶融粘性を低下させ、低温定着性を担保しつつ、分子骨格中に分岐構造を有し、分子鎖が三次元的な網目構造となるため、低温で変形するが流動しないというゴム的な性質を付与する。
前記変性ポリエステル樹脂は、活性水素基含有化合物と、前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有するため、これらの部位が擬似架橋点のような挙動を示し、前記非晶性ポリエステル樹脂のゴム的性質が強くなり、耐熱保存性、耐高温オフセット性に優れたトナーを作製することができる。
【0130】
--活性水素基含有化合物--
前記活性水素基含有化合物は、前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有するポリエステル樹脂と反応する化合物である。
【0131】
前記活性水素基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水酸基(アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0132】
前記活性水素基含有化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有するポリエステル樹脂がイソシアネート基を含有するポリエステル樹脂である場合には、アミン類が好ましい。
前記活性水素基含有化合物がアミン類であることで、前記ポリエステル樹脂と伸長反応、架橋反応等により前記ポリエステル樹脂を高分子量化することができる。
【0133】
前記アミン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジアミン、3価以上のアミン、アミノアルコール、アミノメルカプタン、アミノ酸、これらのアミノ基をブロックしたものなどが挙げられる。これらの中でも、ジアミン、ジアミンと少量の3価以上のアミンとの混合物が好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0134】
前記ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、脂肪族ジアミンなどが挙げられる。
前記芳香族ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。
前記脂環式ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミンなどが挙げられる。
前記脂肪族ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。
【0135】
前記3価以上のアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。
【0136】
前記アミノアルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。
【0137】
前記アミノメルカプタンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。
【0138】
前記アミノ酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。
【0139】
前記アミノ基をブロックしたものとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノ基を、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類でブロックすることにより得られるケチミン化合物、オキサゾリゾン化合物などが挙げられる。
【0140】
--活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有するポリエステル樹脂--
前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有するポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂(以下、「イソシアネート基を含有するポリエステルプレポリマー」と称することがある)などが挙げられる。
前記イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオールとポリカルボン酸とを重縮合することにより得られる活性水素基を有するポリエステル樹脂とポリイソシアネートとの反応生成物などが挙げられる。
【0141】
前記イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂の合成に用いられる前記ポリオールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール、3価以上のアルコール、ジオールと3価以上のアルコールとの混合物などが挙げられる。これらの中でも、ジオール、ジオールと少量の3価以上のアルコールとの混合物が好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0142】
前記イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂の合成に用いられる前記ジオールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鎖状アルキレングリコール、オキシアルキレン基を有するジオール、脂環式ジオール、ビスフェノール類、脂環式ジオールのアルキレンオキシド付加物、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。
前記鎖状アルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどが挙げられる。
なお、前記鎖状アルキレングリコールの炭素数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2~12が好ましい。
これらの中でも、炭素数が2~12である鎖状アルキレングリコール、及びビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物の少なくともいずれかが好ましく、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物と炭素数が2~12の鎖状アルキレングリコールとの混合物がより好ましい。
前記オキシアルキレン基を有するジオールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
前記脂環式ジオールとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなどが挙げられる。
前記ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどが挙げられる。
前記アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどが挙げられる。
【0143】
前記イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂の合成に用いられる前記3価以上のアルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3価以上の脂肪族アルコール、3価以上のポリフェノール類、3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。
前記3価以上の脂肪族アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。
前記3価以上のポリフェノール類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどが挙げられる。
前記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物としては、例えば、3価以上のポリフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したものなどが挙げられる。
【0144】
前記ジオールと前記3価以上のアルコールとを混合して用いる場合、前記ジオールに対する前記3価以上のアルコールの質量比(3価以上のアルコール/ジオール)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01質量%~10質量%が好ましく、0.01質量%~1質量%がより好ましい。
【0145】
前記イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂の合成に用いられる前記ポリカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジカルボン酸、3価以上のカルボン酸、ジカルボン酸と3価以上のカルボン酸との混合物などが挙げられる。これらの中でも、ジカルボン酸、ジカルボン酸と少量の3価以上のポリカルボン酸との混合物が好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0146】
前記イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂の合成に用いられる前記ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2価のアルカン酸、2価のアルケン酸、芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
前記2価のアルカン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸などが挙げられる。
前記2価のアルケン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数4~20の2価のアルケン酸が好ましい。
前記炭素数4~20の2価のアルケン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。
前記芳香族ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。
前記炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。
【0147】
前記イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂の合成に用いられる前記3価以上のカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3価以上の芳香族カルボン酸などが挙げられる。
前記3価以上の芳香族カルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数9~20の3価以上の芳香族カルボン酸が好ましい。
前記炭素数9~20の3価以上の芳香族カルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。
【0148】
前記イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂の合成に用いられる前記ポリカルボン酸として、ジカルボン酸、3価以上のカルボン酸、及びジカルボン酸と、3価以上のカルボン酸との混合物のいずれかの酸無水物又は低級アルキルエステルを用いることもできる。
前記低級アルキルエステルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなどが挙げられる。
【0149】
前記ジカルボン酸と前記3価以上のカルボン酸とを混合して用いる場合、前記ジカルボン酸に対する前記3価以上のカルボン酸の質量比(3価以上のカルボン酸/ジカルボン酸)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01質量%~10質量%が好ましく、0.01質量%~1質量%がより好ましい。
【0150】
前記ポリオールと前記ポリカルボン酸とを重縮合させるときの、前記ポリカルボン酸のカルボキシル基に対するポリオールの水酸基の当量比(ポリオールの水酸基/ポリカルボン酸のカルボキシル基)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1~2が好ましく、1~1.5がより好ましく、1.02~1.3が特に好ましい。
【0151】
前記イソシアネート基を含有するポリエステルプレポリマーにおけるポリオール由来の構成単位の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5質量%~40質量%が好ましく、1質量%~30質量%がより好ましく、2質量%~20質量%が特に好ましい。
前記含有量が0.5質量%以上であると、耐ホットオフセット性が低下し、トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立が困難となるといった問題を解消することができ、前記含有量が40質量%以下であると、低温定着性が低下するといった問題を解消することができる。
【0152】
前記ポリイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、イソシアヌレート類、これらをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタム等でブロックしたものなどが挙げられる。
前記脂肪族ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトカプロン酸メチル、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネートなどが挙げられる。
前記脂環式ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
前記芳香族ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリレンジイソシアネート、ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナトジフェニル、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルジフェニル、4,4’-ジイソシアナト-3-メチルジフェニルメタン、4,4’-ジイソシアナト-ジフェニルエーテルなどが挙げられる。
前記芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
前記イソシアヌレート類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリス(イソシアナトアルキル)イソシアヌレート、トリス(イソシアナトシクロアルキル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0153】
前記ポリイソシアネートと、水酸基を有するポリエステル樹脂を反応させる場合、前記ポリエステル樹脂の水酸基に対する前記ポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1~5が好ましく、1.2~4がより好ましく、1.5~2.5が特に好ましい。
前記当量比が1以上であると、耐ホットオフセット性が低下するといった問題を解消することができ、前記当量比が5以下であると、低温定着性が低下するといった問題を解消することができる。
【0154】
前記イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーにおけるポリイソシアネート由来の構成単位の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5質量%~40質量%が好ましく、1質量%~30質量%がより好ましく、2質量%~20質量%がさらに好ましい。
前記含有量が0.5質量%以上であると、耐ホットオフセット性が低下するといった問題を解消することができ、前記含有量が40質量%以下であると、低温定着性が低下するといった問題を解消することができる。
【0155】
前記イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーが一分子当たりに有するイソシアネート基の平均数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1以上が好ましく、1.5~3がより好ましく、1.8~2.5がさらに好ましい。
前記イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーが一分子当たりに有するイソシアネート基の平均数が1以上であると、変性ポリエステル樹脂の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が低下するといった問題を解消することができる。
【0156】
前記変性ポリエステル樹脂は、ワンショット法等により製造することができる。その一例として、ウレア変性ポリエステル樹脂の製造方法について説明する。
まず、ポリオールとポリカルボン酸とを、テトラブトキシチタネート、ジブチルスズオキサイド等の触媒の存在下で、150℃~280℃に加熱し、必要に応じて、減圧しながら生成する水を除去して、水酸基を有するポリエステル樹脂を得る。
次に、水酸基を有するポリエステル樹脂とポリイソシアネートとを40℃~140℃で反応させ、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーを得る。
更に、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーとアミン類とを0℃~140℃で反応させ、ウレア変性ポリエステル樹脂を得る。
【0157】
前記変性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定において、1,000~10,000が好ましく、1,500~6,000がより好ましい。
前記変性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定において、20,000以上1,000,000以下が好ましい。
前記変性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)が、20,000以上であると、トナーが低温で流動しやすくなり、耐熱保存性に劣るという不具合、及び溶融時の粘性が低くなり高温オフセット性が低下する不具合を防止することができる。
【0158】
前記水酸基を有するポリエステル樹脂と、前記ポリイソシアネートとを反応させる場合、及び前記イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーと、前記アミン類とを反応させる場合には、必要に応じて、溶媒を用いることもできる。
【0159】
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、芳香族溶媒、ケトン類、エステル類、アミド類、エーテル類等のイソシアネート基に対して不活性なものなどが挙げられる。
前記芳香族溶媒としては、例えば、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
前記ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
前記エステル類としては、例えば、酢酸エチルなどが挙げられる。
前記アミド類としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。
前記エーテル類としては、例えば、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0160】
前記変性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、-60℃以上0℃以下であることが好ましく、-40℃以上-20℃以下がより好ましい。
前記変性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)が-60℃以上であると、低温でのトナーの流動が抑制できずに、耐熱保存性が悪化し、また、耐フィルミング性が悪化するといった不具合を防止することができる。
前記変性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)が0℃以下であると、定着時の加熱及び加圧によるトナーが十分に変形できず、低温定着性が不十分となる不具合を防止することができる。
【0161】
前記変性ポリエステル樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、1質量部~15質量部が好ましく、5質量部~10質量部がより好ましい。
【0162】
前記非晶性ポリエステル樹脂、及び前記変性ポリエステル樹脂の分子構造は、溶液や固体によるNMR測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、IR測定などにより確認することができる。
簡便には、赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm-1及び990±10cm-1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有しないものを非晶性ポリエステル樹脂として検出する方法などが挙げられる。
【0163】
<<着色剤>>
前記着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン系染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボンなどが挙げられる。
【0164】
前記着色剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、1質量部以上15質量部以下が好ましく、3質量部以上10質量部以下がより好ましい。
【0165】
前記着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。
前記マスターバッチの製造又は前記マスターバッチと共に混練される樹脂(マスターバッチ用樹脂)としては、例えば、ポリスチレン、ポリp-クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン又はその置換体の重合体;スチレン-p-クロロスチレン共重合体、スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸オクチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0166】
前記マスターバッチは、マスターバッチ用樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合し、混練して得ることができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いることができる。また、いわゆるフラッシング法と呼ばれる着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶剤と共に混合混練を行い、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も、着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができるため乾燥する必要がなく、好ましく用いられる。混合混練するには3本ロールミル等の高せん断分散装置が好ましく用いられる。
【0167】
<<ワックス>>
前記ワックス(離型剤)としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、天然ワックス、合成ワックスなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0168】
前記天然ワックスとしては、例えば、カルナウバワックス、綿ロウ、木ロウライスワックス等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス;オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックスなどが挙げられる。
前記合成ワックスとしては、例えば、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成炭化水素ワックス;エステル、ケトン、エーテル、12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド系化合物;低分子量の結晶性高分子樹脂であるポリ-n-ステアリルメタクリレート、ポリ-n-ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体又は共重合体(例えば、n-ステアリルアクリレート-エチルメタクリレートの共重合体等);側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子などが挙げられる。
これらの中でも、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどの炭化水素系ワックスが好ましい。
【0169】
前記ワックスの融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以上80℃以下が好ましい。
前記ワックスの融点が60℃以上であると、低温で離型剤が溶融しやすくなり、耐熱保存性が劣るという不具合を防止することができる。前記ワックスの融点が80℃以下であると、樹脂が溶融して定着温度領域にある場合でも、ワックスが充分溶融しないため、定着オフセットが生じ、画像の欠損を生じるという不具合を防止することができる。
【0170】
前記ワックスの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、2質量部以上10質量部以下が好ましく、3質量部以上8質量部以下がより好ましい。
前記ワックスの含有量が2質量部以上であると、定着時の耐高温オフセット性、及び低温定着性に劣るという不具合を防止することができ、前記ワックスの含有量が10質量部以下であると、耐熱保存性が低下したり、画像のかぶりなどが生じやすくなったりするといった不具合を防止することができる。
【0171】
前記トナー母体粒子におけるその他の成分(B)としては、通常のトナー母体粒子に用いられるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
前記その他の成分(B)の含有量としては、トナーの性質を害することがない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0172】
<その他の成分(A)>
前記トナーにおけるその他の成分(A)としては、通常のトナーに用いられるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、帯電制御剤、外添剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料などが挙げられる。
【0173】
-帯電制御剤-
前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩などが挙げられる。
【0174】
前記帯電制御剤の市販品としては、例えば、ニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP-51、含金属アゾ染料のボントロンS-34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE-82、サリチル酸系金属錯体のE-84、フェノール系縮合物のE-89(以上、オリエント化学工業株式会社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP-302、TP-415(以上、保土谷化学工業株式会社製)、LRA-901、ホウ素錯体であるLR-147(以上、日本カーリット株式会社製)などが挙げられる。
【0175】
前記帯電制御剤の含有量は、前記結着樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、前記結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部~10質量部が好ましく、0.2質量部~5質量部がより好ましい。
前記帯電制御剤の含有量が10質量部以下であると、トナーの帯電性が大きすぎることにより主帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招くといった問題を解消することができる。
前記帯電制御剤はマスターバッチ及び樹脂とともに溶融混練した後、溶解分散させてもよいし、有機溶媒に直接溶解乃至分散する際に加えてもよいし、トナー表面にトナー粒子作製後に固定化させてもよい。
【0176】
-外添剤-
前記外添剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリカ微粒子、疎水性シリカ、脂肪酸金属塩(例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム等)、金属酸化物(例えば、チタニア、アルミナ、酸化錫、酸化アンチモン等)、フルオロポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、無機微粒子が好ましく、疎水化処理された無機微粒子がより好ましい。
前記疎水化された無機微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、疎水化処理された酸化チタン微粒子、疎水化処理されたシリカ微粒子などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0177】
前記シリカ微粒子の市販品としては、例えば、R972、R974、RX200、RY200、R202、R805、R812(いずれも、日本アエロジル株式会社製)などが挙げられる。
前記チタニアの市販品としては、例えば、P-25(日本アエロジル株式会社製)、STT-30、STT-65C-S(いずれも、チタン工業株式会社製)、TAF-140(富士チタン工業株式会社製)、MT-150W、MT-500B、MT-600B、MT-150A(いずれも、テイカ株式会社製)などが挙げられる。
前記疎水化処理された酸化チタン微粒子の市販品としては、例えば、T-805(日本アエロジル株式会社製)、STT-30A、STT-65S-S(いずれも、チタン工業株式会社製)、TAF-500T、TAF-1500T(いずれも、富士チタン工業株式会社製)、MT-100S、MT-100T(いずれも、テイカ株式会社製)、IT-S(石原産業株式会社製)などが挙げられる。
【0178】
前記疎水化処理は、例えば、親水性の微粒子をメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤などを用いて行うことができる。
また、シリコーンオイルを無機微粒子や酸化微粒子に処理した、シリコーンオイル処理酸化物微粒子、及びシリコーンオイル処理無機微粒子も好適である。前記シリコーンオイルを用いた処理においては、必要に応じて、熱を加えてもよい。
【0179】
前記シリコーンオイルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、α-メチルスチレン変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0180】
前記外添剤における一次粒子の平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100nm以下が好ましく、1nm~100nmがより好ましく、3nm~70nmがさらに好ましく、5nm~70nmが特に好ましい。
前記外添剤における一次粒子の平均粒径が、上記範囲であると、無機微粒子がトナー中に埋没し、その機能が有効に発揮されにくいという不具合、及び感光体表面を不均一に傷つけるという不具合を防止することができる。
前記外添剤としては、疎水化処理された一次粒子の平均粒径が20nm以下の無機微粒子を少なくとも1種類以上含み、かつ30nm以上の無機微粒子を少なくとも1種類含むことが好ましい。
前記外添剤のBET法による比表面積としては、20m/g~500m/gが好ましい。
【0181】
前記外添剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下が好ましく、0.3質量部以上3質量部以下がより好ましい。
【0182】
-流動性向上剤-
前記流動性向上剤としては、表面処理を行い、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止可能なものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
前記シリカ及び前記酸化チタンは、前記流動性向上剤により表面処理を行い、疎水性シリカ、疎水性酸化チタンとして使用するのが特に好ましい。
【0183】
-クリーニング性向上剤-
前記クリーニング性向上剤は、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するために前記トナーに添加されるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子などが挙げられる。
前記ポリマー微粒子としては、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01μm~1μmであるものも好ましい。
【0184】
-磁性材料-
前記磁性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉄粉、マグネタイト、フェライトなどが挙げられる。これらの中でも、色調の点で白色のものが好ましい。
【0185】
本発明のトナーにおいて、示差走査熱量測定(DSC)の昇温1回目におけるガラス転移温度(Tg1st)としては、40℃~65℃が好ましい。
前記トナーのテトラヒドロフラン(THF)に不溶な成分において、DSCの昇温1回目におけるガラス転移温度(Tg1st)としては、-45℃~5℃が好ましい。
前記トナーのTHFに可溶な成分において、DSCの昇温2回目におけるガラス転移温度(Tg2nd)としては、20℃~65℃が好ましい。
前記トナーの示差走査熱量測定(DSC)の昇温1回目におけるガラス転移温度(Tg1st)、及び2回目の昇温におけるガラス転移点(Tg2nd)は、低温定着性と耐熱保存性が向上したトナーを得ることができる点で、Tg1st-Tg2nd≧10[℃]を満たすことが好ましい。
【0186】
前記トナーのガラス転移温度は、例えば、示差走査熱量計(DSC-60、株式会社島津製作所製)などを用いて測定することができる。
例えば、上記示差走査熱量計を用いてDSC曲線を計測する。得られたDSC曲線から、解析プログラムを用いて、1回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、解析プログラム中の吸熱ショルダー温度を用いて、昇温1回目におけるガラス転移温度(Tg1st)を求めることができる。2回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、吸熱ショルダー温度を用いて、昇温2回目におけるガラス転移温度(Tg2nd)を求めることができる。
【0187】
<樹脂微粒子の凝集体>
本発明において、前記トナー母体粒子の表面上には、前記樹脂微粒子(B)及び前記樹脂微粒子(B)が凝集してなる凝集体が存在する。
本発明における「凝集体」とは、前記トナー母体粒子の表面上に存在する前記樹脂微粒子(B)における最小粒子の長径をRとしたとき、3R以上の長径を有する粒子のことを示す。
本発明における「最小粒子」とは、前記トナー母体粒子上に存在する樹脂粒子(樹脂微粒子又は凝集体)の外周が、最も小さい樹脂粒子のことを示す。
なお、本発明における凝集体の長径をR’とする。
【0188】
<長径R及びR’の測定方法>
トナーに対して、超音波による外添剤の遊離処理を行うことで外添剤を極力除去し、トナー母体粒子に近い状態にした後、最小粒子の長径Rを求める。
[1]100mlのスクリュー管に、界面活性剤を含有した5質量%水溶液(商品名:ノイゲンET-165、第一工業製薬株式会社製)を50ml添加し、その混合液にトナー3gを加えて静かに上下左右に動かす。その後、トナーが分散溶液になじむようにボールミルで30分間撹拌する。
[2]超音波ホモジナイザー(商品名:homogenizer、形式VCX750、CV33、SONICS&MATERIALS有限会社製)を用いて、出力40Wに設定し、60分間超音波エネルギーを付与する。
-超音波条件-
・振動時間:60分連続
・振幅:40W
・振動開始温度:23±1.5℃
・振動中温度:23±1.5℃
[3](1)分散液を濾紙(商品名:定性ろ紙(No.2、110mm)、アドバンテック東洋株式会社製)で吸引濾過し、イオン交換水で2回洗浄した後、再度濾過を行い、遊離した添加剤を除去後、トナーを乾燥させる。
(2)(1)で得られたトナーをランダムに選択し、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察する。まず、反射電子像を観察することでSiを含有する外添剤や帯電制御剤を検出し、反射電子画像を撮影する。
(3)得られた反射電子画像を画像処理ソフト(ImageJ)で二値化処理(閾値;135)を行い、前記外添剤と前記帯電制御剤とを排した画像を作製する。
(4)(2)と同じ位置で二次電子画像を観察及び撮影する。樹脂微粒子(OMS)は反射電子画像では観察されず、二次電子画像でのみ観察されるため、(3)で得られた画像と照合し、残存外添剤及び帯電制御剤以外の部分((3)で排除した以外の部分)に存在する粒子を樹脂粒子(樹脂微粒子又は凝集体)とする。
(5)画像処理ソフト(ImageJ)を使用して、トナー母体粒子上の樹脂粒子(樹脂微粒子又は凝集体)の外周を測定し、最も外周が小さい樹脂微粒子を最小粒子とする。なお、最小粒子は、1視野単位ではなく、1トナー粒子単位で判定する。
(6)前記最小粒子において、測定して得られた外周と同じ円周を有する真円の直径を、前記長径Rとする。
なお、前記凝集体の長径R’についても、前記長径Rと同様に外周を測定し、測定して得られた外周と同じ円周を有する真円の直径を、前記長径R’とする。
【0189】
<凝集体の占有率>
本発明において、前記凝集体が前記トナー母体粒子の表面を占める割合は、15%以上60%以下である。
なお、本発明において、「前記凝集体が前記トナー母体粒子の表面を占める割合」は、「占有率」と称することがある。
【0190】
前記占有率としては、15%以上60%以下であることが好ましく、15%以上35%以下がより好ましい。
前記占有率が15%以上60%以下であれば、外添剤の遊離量を適正化することができ、フィルミングの発生を抑制するのとともに、低温定着性及び低付着力による優れたクリーニング性を高いレベルで両立することができる。
前記占有率が15%以上であると、トナー母体粒子表面上の外添剤は遊離しやすく、遊離量が多すぎるためフィルミングが発生しやすくなるといった問題を解消することができる。
前記占有率が60%以下であると、凝集体が定着ローラからの熱の伝わりを阻害してしまい、十分な低温定着性が得られないといった問題を解消することができる。
【0191】
<樹脂微粒子間の距離における標準偏差>
本発明において、前記樹脂微粒子間の距離とは、トナー母体粒子の表面に存在する樹脂微粒子表面と、前記樹脂微粒子に接触していない隣り合った樹脂微粒子表面との最短距離を示す。
なお、本発明において、「トナー母体粒子の表面に存在する樹脂微粒子表面と、前記樹脂微粒子に接触していない隣り合った樹脂微粒子表面との最短距離」は、「樹脂微粒子間の距離」と称することがある。
前記トナー母体粒子の表面は、平らではなく若干丸みをおびている(カーブしている)ため、前記樹脂微粒子間の距離とは、前記トナー母体粒子表面の前記樹脂微粒子間の距離を測定したものではなく、前記トナー母体粒子表面上の前記樹脂微粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影した画像上における、樹脂微粒子間の最短距離である。
【0192】
本発明のトナーは、前記トナー母体粒子の表面に存在する互いに接触してない隣り合った前記樹脂微粒子間の距離における標準偏差が、500nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましく、150nm以下であることがさらに好ましい。
前記樹脂微粒子間の距離における標準偏差が500nm以下であることにより、樹脂微粒子に期待される前記トナー母体粒子表面の保護作用が局所的に発現されず、信頼性が悪化するといった問題を解消することができる。
【0193】
<占有率及び樹脂微粒子間の距離の測定方法>
トナーに対して、超音波による外添剤の遊離処理を行うことで外添剤を極力除去し、トナー母体粒子に近い状態にした後、占有率及び樹脂微粒子間の距離を求める。
[1]100mlのスクリュー管に、界面活性剤を含有した5質量%水溶液(商品名:ノイゲンET-165、第一工業製薬株式会社製)を50ml添加し、その混合液にトナー3gを加えて静かに上下左右に動かす。その後、トナーが分散溶液になじむようにボールミルで30分間撹拌する。
[2]超音波ホモジナイザー(商品名:homogenizer、形式VCX750、CV33、SONICS&MATERIALS有限会社製)を用いて、出力40Wに設定し、60分間超音波エネルギーを付与する。
-超音波条件-
・振動時間:60分連続
・振幅:40W
・振動開始温度:23±1.5℃
・振動中温度:23±1.5℃
[3](1)分散液を濾紙(商品名:定性ろ紙(No.2、110mm)、アドバンテック東洋株式会社製)で吸引濾過し、イオン交換水で2回洗浄した後、再度濾過を行い、遊離した添加剤を除去後、トナーを乾燥させる。
(2)(1)で得られたトナーをランダムに選択し、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察する。まず、反射電子像を観察することでSiを含有する外添剤や帯電制御剤を検出し、反射電子画像を撮影する。
(3)得られた反射電子画像を画像処理ソフト(ImageJ)で二値化処理(閾値;135)を行い、前記外添剤と前記帯電制御剤とを排した画像を作製する。
(4)(2)と同じ位置で二次電子画像を観察及び撮影する。樹脂微粒子(OMS)は反射電子画像では観察されず、二次電子画像でのみ観察されるため、(3)で得られた画像と照合し、残存外添剤及び帯電制御剤以外の部分((3)で排除した以外の部分)に存在する粒子を樹脂粒子(樹脂微粒子又は凝集体)とする。なお、トナー粒子の撮影場所は無作為に選定する。
(5)画像処理ソフト(ImageJ)を使用して、二値化処理(閾値;135)を行い、二値化画像100枚(画像一枚当たりトナー粒子1個)を作製する。得られた二値化画像から各凝集体が占める総面積、及びトナー母体粒子の面積、及び樹脂微粒子間の距離を測定する。
(6)各凝集体が占める総面積、及びトナー母体粒子の面積については、平均値を求め、前記占有率を算出する。前記樹脂微粒子間の距離については、標準偏差を算出する。
なお、各凝集体が占める総面積、及び前記トナー母体粒子の面積は、測定して得られた外周と同じ円周を有する真円の面積を、前記凝集体及び前記トナー母体粒子のそれぞれの面積とする。
【0194】
前記占有率は、下記式によって算出される。
占有率(%)=凝集体が占める総面積の平均値/トナー母体の面積の平均値
【0195】
前記樹脂微粒子間の距離における標準偏差は、粒子間距離をxとすると、下記式によって算出される。
【0196】
【数1】
【0197】
前記走査型電子顕微鏡(SEM)における撮影条件を以下に示す。
[撮影条件]
・走査型電子顕微鏡:SU-8230(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)
・撮影倍率:60000倍
・撮影像:SE(L):二次電子、BSE(反射電子)
・加速電圧:3.0kV
・加速電流:1.0μA
・プローブ電流:Normal
・焦点モード:UHR
・WD:8.0mm
【0198】
ここで、本発明に係るトナーについて図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0199】
図1は、トナー表面の状態の一例を示す概略図である。トナー母体粒子4の表面には、樹脂微粒子3、及び樹脂微粒子からなる凝集体5が存在している。樹脂微粒子3は、コア樹脂2とシェル樹脂1とからなる。Mは、樹脂微粒子3の体積平均一次粒径を示す。Lは、樹脂微粒子間の距離を示す。
【0200】
(現像剤)
本発明の現像剤は、少なくとも本発明のトナーを含み、必要に応じて、キャリア等の適宜選択されるその他の成分を含む。なお、現像剤は、一成分現像剤であっても二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等に使用する場合には、寿命が向上することから、二成分現像剤が好ましい。
【0201】
<キャリア>
前記キャリアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、芯材を被覆する樹脂層とを有するものが好ましい。
【0202】
<<芯材>>
前記芯材の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、50emu/g~90emu/gのマンガン-ストロンチウム系材料、50emu/g~90emu/gのマンガン-マグネシウム系材料などが挙げられる。また、画像濃度を確保するためには、100emu/g以上の鉄粉、75emu/g~120emu/gのマグネタイト等の高磁化材料を用いることが好ましい。また、穂立ち状態となっている現像剤の感光体に対する衝撃を緩和でき、高画質化に有利であることから、30emu/g~80emu/gの銅-亜鉛系等の低磁化材料を用いることが好ましい。
これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0203】
前記芯材の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm~150μmが好ましく、40μm~100μmがより好ましい。
前記芯材の体積平均粒径が10μm以上であると、キャリア中に微粉が多くなり、一粒子当たりの磁化が低下してキャリアの飛散が生じるといった問題を解消することができる。
前記芯材の体積平均粒径が150μm以下であると、比表面積が低下し、トナーの飛散が生じることで、ベタ部分の多いフルカラーでは、特にベタ部の再現が悪くなるといった問題を解消することができる。
【0204】
本発明のトナーは、前記キャリアと混合して二成分現像剤に用いることができる。
前記二成分現像剤における前記キャリアの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記二成分現像剤100質量部に対して、90質量部以上98質量部以下が好ましく、93質量部以上97質量部以下がより好ましい。
本発明の現像剤は、磁性一成分現像方法、非磁性一成分現像方法、二成分現像方法等の公知の各種電子写真法による画像形成に好適に用いることができる。
【0205】
(トナーの製造方法)
本発明のトナーの製造方法は、前記トナーを製造する方法である。
前記トナーの製造方法は、複合粒子形成工程と、除去工程とを含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0206】
<複合粒子形成工程>
前記複合粒子形成工程は、前記トナー母体粒子の表面に前記樹脂微粒子を付着させて、複合粒子を形成する工程である。
前記複合粒子の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、結着樹脂、着色剤、ワックス等のトナー母体粒子の成分を含む油相を、樹脂微粒子を含む水系媒体中で分散させることにより造粒する公知の溶解懸濁法などが挙げられる。
【0207】
前記溶解懸濁法の一例として、前記プレポリマーと硬化剤との伸長反応及び/又は架橋反応によりポリエステル樹脂を生成させながら、複合粒子を形成する方法を示す。
この方法では、水系媒体(水相)の調製、トナー母体粒子の材料を含有する油相の調製、トナー母体粒子材料の乳化乃至分散、及び有機溶媒の除去を行う。
【0208】
-水系媒体(水相)の調製-
前記水系媒体の調製は、例えば、樹脂微粒子を水系媒体に分散させることにより行うことができる。
前記水系媒体における樹脂微粒子の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水系媒体100質量部に対して、0.5質量部~10質量部が好ましい。
【0209】
前記水系媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、水と混和可能な溶媒、これらの混合物などが挙げられる。これらの中でも、水が好ましい。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記水と混和可能な溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セロソルブ類、低級ケトン類などが挙げられる。
前記アルコールとしては、例えば、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなどが挙げられる。
前記低級ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
【0210】
-油相の調製-
前記油相の調製は、結着樹脂、着色剤、及びワックスを含有し、更に必要に応じて、硬化剤等を含むトナー母体粒子の材料を、有機溶媒中に溶解乃至分散させることにより行うことができる。
前記硬化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、イソホロンジアミン(IPDA)などが挙げられる。
【0211】
前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、除去が容易である点で、沸点が150℃未満の有機溶媒が好ましい。
前記沸点が150℃未満の有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。これらの中でも、酢酸エチル、トルエン、キシレン、ベンゼン、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等が好ましく、酢酸エチルがより好ましい。
これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0212】
-乳化乃至分散-
前記トナーの材料の乳化乃至分散は、前記トナー母体粒子の材料を含有する油相を、前記水系媒体中に分散させることにより行うことができる。そして、前記トナーの材料を乳化乃至分散させる際に、前記硬化剤と前記プレポリマーとを伸長反応及び/又は架橋反応させることができる。
【0213】
前記プレポリマーを生成させるための反応条件(反応時間、反応温度)としては、特に制限はなく、前記硬化剤と前記プレポリマーとの組み合わせに応じて、適宜選択することができる。
前記反応時間としては、10分間~40時間が好ましく、2~24時間がより好ましい。
前記反応温度としては、0℃~150℃が好ましく、40℃~98℃がより好ましい。
【0214】
前記水系媒体中において、前記プレポリマーを含有する分散液を安定に形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水系媒体相中に、トナー材料を溶媒に溶解乃至分散させて調製した油相を添加し、せん断力により分散させる方法などが挙げられる。
【0215】
前記分散のための分散機としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機などが挙げられる。これらの中でも分散体(油滴)の粒径を2μm~20μmに制御することができる点で、高速せん断式分散機が好ましい。
【0216】
前記高速せん断式分散機を用いた場合、回転数、分散時間、分散温度等の条件は、目的に応じて適宜選択することができる。
前記回転数としては、1,000rpm~30,000rpmが好ましく、5,000rpm~20,000rpmがより好ましい。
前記分散時間としては、バッチ方式の場合、0.1分間~5分間が好ましい。
前記分散温度としては、加圧下において、0℃~150℃が好ましく、40℃~98℃がより好ましい。なお、一般に、前記分散温度が高温である方が分散は容易である。
【0217】
前記トナーの材料を乳化乃至分散させるときの水系媒体の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー材料100質量部に対して、50質量部~2,000質量部が好ましく、100質量部~1,000質量部がより好ましい。
前記水系媒体の使用量が50質量部以上であると、前記トナー材料の分散状態が悪くなって、所定の粒径のトナー母体粒子が得られないといった問題を解消することができる。前記水系媒体の使用量が2,000質量部以下であると、生産コストが高くなるといった問題を解消することができる。
【0218】
前記トナー材料を含有する油相を乳化乃至分散するときには、油滴等の分散体を安定化させ、所望の形状にするとともに、粒度分布をシャープにする観点から、分散剤を用いることが好ましい。
前記分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイドなどが挙げられる。これらの中でも、界面活性剤が好ましい。
これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0219】
前記分散剤として用いられる前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを用いることができる。
前記分散剤として用いられるアニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、フルオロアルキル基を有するものが好ましい。
【0220】
-有機溶媒の除去-
前記乳化スラリー等の分散液から有機溶媒を除去する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、反応系全体を徐々に昇温させて油滴中の有機溶媒を蒸発させる方法、分散液を乾燥雰囲気中に噴霧して油滴中の有機溶媒を除去する方法などが挙げられる。
前記有機溶媒が除去されると、複合粒子が形成される。
【0221】
<除去工程>
前記除去工程は、前記複合粒子から、樹脂微粒子の少なくとも一部を除去する工程であり、前記樹脂微粒子におけるシェル樹脂(樹脂(b1))の一部又は全部を除去することが好ましい。
前記樹脂微粒子の少なくとも一部を除去する工程としては、例えば、複合粒子を洗浄する洗浄工程が挙げられる。このことから、除去工程は、洗浄工程とも言える。
【0222】
前記洗浄工程において、前記樹脂(b1)の一部又は全部を除去する方法としては、例えば、化学的方法で前記樹脂(b1)の一部又は全部を除去する方法などが挙げられる。
前記化学的方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩基性の水溶液を用いて、複合粒子を洗浄する工程などが挙げられる。塩基性の水溶液を用いて、複合粒子を洗浄することで、シェル樹脂(b1)の一部又は全部を溶解することができる。
【0223】
前記塩基性の水溶液としては、塩基性であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物等の水溶液、アンモニアなどが挙げられる。これらの中でも、シェル樹脂(b1)を溶解させやすいという観点から、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムが好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記塩基性の水溶液のpHとしては、8~14が好ましく、10~12がより好ましい。
【0224】
前記洗浄工程における複合粒子と塩基性の水溶液との混合は、撹拌下において複合スラリーに塩基性の水溶液を滴下する方法などによって行うことができる。
塩基性水溶液を滴下した後に、酸水溶液を滴下して中和してもよい。
【0225】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、乾燥工程、分級工程などが挙げられる。
前記乾燥工程としては、複合粒子から溶媒を除去することができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。
前記分級工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、液中でサイクロン、デカンター、遠心分離などにより、微粒子部分を取り除くことにより行ってもよいし、乾燥後に分級操作を行ってもよい。
【0226】
前記複合粒子形成工程、前記除去工程、及び前記その他の工程によって得られた複合粒子は、前記外添剤、前記帯電制御剤等の粒子と混合してもよい。このとき、機械的衝撃力を印加することにより、トナー母体粒子の表面から前記外添剤等の粒子が脱離するのを抑制することができる。
前記機械的衝撃力を印加する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高速で回転する羽根を用いて混合物に衝撃力を印加する方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させて粒子同士又は粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などが挙げられる。
【0227】
前記機械的衝撃力を印加する方法に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オングミル(ホソカワミクロン株式会社製)、I式ミル(日本ニューマチック株式会社製)を改造して粉砕エアー圧力を下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(株式会社奈良機械製作所製)、クリプトロンシステム(川崎重工業株式会社製)、自動乳鉢などが挙げられる。
【0228】
(トナー収容ユニット)
本発明におけるトナー収容ユニットとは、トナーを収容する機能を有するユニットに、本発明のトナーを収容したものを示す。ここで、トナー収容ユニットの態様としては、例えばトナー収容容器、現像器、プロセスカートリッジなどが挙げられる。
前記トナー収容容器とは、本発明のトナーを収容した容器を示す。
前記現像器は、本発明のトナーを収容し現像する手段を有するものを示す。
前記プロセスカートリッジとは、少なくとも像担持体と現像手段とを一体とし、本発明のトナーを収容し、画像形成装置に対して着脱可能であるものを示す。前記プロセスカートリッジは、更に帯電手段、露光手段、クリーニング手段から選ばれる少なくとも一つを備えていてもよい。
【0229】
ここで、本発明に係るプロセスカートリッジについて図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0230】
前記プロセスカートリッジの一実施形態を図2に示す。本実施形態のプロセスカートリッジは、図2に示すように、潜像担持体101を内蔵し、帯電装置102、現像装置104、クリーニング部107を含み、更に必要に応じて、その他の手段を有する。図2中、符号103は露光装置からの露光、符号105は記録紙をそれぞれ示す。
潜像担持体101としては、後述する画像形成装置における静電潜像担持体と同様のものを用いることができる。また帯電装置102には、任意の帯電部材が用いられる。
図2に示すプロセスカートリッジによる画像形成プロセスについては、潜像担持体101は、図2中において時計回りに回転しながら、帯電装置102による帯電、露光手段(図示せず)による露光103により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成される。
前記静電潜像は、現像装置104でトナー現像され、前記トナー現像は転写ローラ108により、記録紙105に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の潜像担持体表面は、クリーニング部107によりクリーニングされ、更に除電手段(図示せず)により除電されて、再び、以上の操作を繰り返すものである。
【0231】
(画像形成装置及び画像形成方法)
本発明の画像形成装置は、前述のトナー収容ユニットを有し、静電潜像担持体と、静電潜像形成手段と、現像手段とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の手段を有することが好ましい。
本発明に関する画像形成方法は、静電潜像形成工程と、現像工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0232】
<静電潜像担持体>
前記静電潜像担持体の材質、構造、大きさとしては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができる。
前記静電潜像担持体の材質としては、例えば、アモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体などが挙げられる。これらの中でも、長寿命性の点でアモルファスシリコンが好ましい。
前記静電潜像担持体の線速としては、300mm/s以上であることが好ましい。
【0233】
<静電潜像形成手段及び静電潜像形成工程>
前記静電潜像形成手段としては、前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記静電潜像担持体の表面を帯電させる帯電部材と、前記静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光部材とを少なくとも有する手段などが挙げられる。
前記静電潜像形成工程としては、前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記静電潜像担持体の表面を帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、前記静電潜像形成手段を用いて行うことができる。
【0234】
-帯電部材及び帯電-
前記帯電部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、導電性又は半導電性のローラ、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器などが挙げられる。これらの中でも、帯電部材から発生するオゾンが低減された画像形成装置が得られる点で、接触式の帯電部材を用いることが好ましい。
前記帯電部材の形状としては、ローラの他にも、磁気ブラシ、ファーブラシ等のどのような形態をとってもよく、前記画像形成装置の仕様や形態にあわせて選択することができる。
【0235】
前記帯電は、例えば、前記帯電部材を用いて前記静電潜像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。
【0236】
<<露光部材及び露光>>
前記露光部材としては、前記帯電部材により帯電された前記静電潜像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系、液晶シャッタ光学系等の各種露光部材などが挙げられる。
【0237】
前記露光部材に用いられる光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等の発光物全般などが挙げられる。
また、前記露光部材に用いられる光源には、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルター等の各種フィルターを用いることもできる。
【0238】
前記露光は、例えば、前記露光部材を用いて前記静電潜像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
なお、本発明においては、前記静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0239】
<現像手段及び現像工程>
前記現像手段としては、前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を現像して可視像であるトナー像を形成するトナーを備える現像手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記現像工程としては、前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を、トナーを用いて現像することにより、可視像であるトナー像を形成する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記現像手段により行うことができる。
前記現像手段としては、前記トナーを摩擦撹拌させて帯電させる撹拌器と、内部に固定された磁界発生手段を有し、かつ表面に前記トナーを含む現像剤を担持して回転可能な現像剤担持体を有する現像装置が好ましい。
【0240】
<その他の手段及びその他の工程>
前記その他の手段としては、例えば、転写手段、定着手段、クリーニング手段、除電手段、リサイクル手段などが挙げられる。
前記その他の工程としては、例えば、転写工程、定着工程、クリーニング工程、除電工程、リサイクル工程などが挙げられる。
【0241】
-転写手段及び転写工程-
前記転写手段としては、可視像を記録媒体に転写する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、前記複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。
前記転写工程としては、可視像を記録媒体に転写する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、中間転写体を用い、前記中間転写体上に可視像を一次転写した後、前記可視像を記録媒体上に二次転写する態様が好ましい。
前記転写工程は、例えば、前記可視像を、転写帯電器を用いて前記感光体を帯電することにより行うことができ、前記転写手段により行うことができる。
【0242】
ここで、前記記録媒体上に二次転写される画像が複数色のトナーからなるカラー画像である場合に、前記転写手段により、前記中間転写体上に各色のトナーを順次重ね合わせて、前記中間転写体上に画像を形成し、前記中間転写手段により、前記中間転写体上の画像を前記記録媒体上に一括で二次転写する構成とすることができる。
前記中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルトなどが好適に挙げられる。
【0243】
前記転写手段(前記第一次転写手段、及び前記第二次転写手段)は、前記感光体上に形成された前記可視像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。
前記転写器としては、例えば、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器などが挙げられる。
前記記録媒体としては、代表的には普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものなら、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、OHP用のPETベース等も用いることができる。
【0244】
-定着手段及び定着工程-
前記定着手段としては、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の加熱加圧部材が好ましい。
前記加熱加圧部材としては、例えば、加熱ローラと加圧ローラとの組み合わせ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組み合わせなどが挙げられる。
前記定着工程としては、前記記録媒体に転写された可視像を定着させる工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写するごとに行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。前記定着工程は、前記定着手段により行うことができる。
前記加熱加圧部材における加熱としては、80℃~200℃が好ましい。
【0245】
本発明においては、目的に応じて、前記定着手段とともに、あるいはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
前記定着工程における面圧としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10N/cm~80N/cmであることが好ましい。
【0246】
<<クリーニング手段及びクリーニング工程>>
前記クリーニング手段としては、前記感光体上に残留する前記トナーを除去できる手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナなどが挙げられる。
前記クリーニング工程としては、前記感光体上に残留する前記トナーを除去できる工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記クリーニング手段により行うことができる。
【0247】
-除電手段及び除電工程-
前記除電手段としては、前記感光体に対し除電バイアスを印加して除電する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、除電ランプなどが挙げられる。
前記除電工程としては、前記感光体に対し除電バイアスを印加して除電する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記除電手段により行うことができる。
【0248】
-リサイクル手段及びリサイクル工程-
前記リサイクル手段としては、前記クリーニング工程により除去した前記トナーを前記現像装置にリサイクルさせる手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の搬送手段などが挙げられる。
前記リサイクル工程としては、前記クリーニング工程により除去した前記トナーを前記現像装置にリサイクルさせる工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記リサイクル手段により行うことができる。
【0249】
ここで、本発明に係る画像形成装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0250】
本発明の画像形成装置により画像を形成する方法を実施する一の態様について、図3を参照しながら説明する。なお、本実施形態の画像形成装置として、プリンタが例として示されているが、本発明の画像形成装置は、複写機、ファクシミリ、複合機等のトナーを用いて画像を形成することが可能であれば、特に限定されない。
画像形成装置は、給紙部210と、搬送部220と、作像部230と、転写部240と、定着器250とを備えている。
給紙部210は、給紙される紙Pが積載された給紙カセット211と、給紙カセット211に積載された紙Pを一枚ずつ給紙する給紙ローラ212を備えている。
【0251】
搬送部220は、給紙ローラ212により給紙された紙Pを転写部240の方向へ搬送するローラ221と、ローラ221により搬送された紙Pの先端部を挟み込んで待機し、紙を所定のタイミングで転写部240に送り出す一対のタイミングローラ222と、カラートナー像が定着した紙Pを排紙トレイ224に排出する排紙ローラ223を備えている。
【0252】
作像部230は、所定の間隔をおいて、図中、左方から右方に向かって順に、イエロートナーを有した現像剤を用いて画像を形成する画像形成ユニット180Yと、シアントナーを有した現像剤を用いる画像形成ユニット180Cと、マゼンタトナーを有した現像剤を用いる画像形成ユニット180Mと、ブラックトナーを有した現像剤を用いる画像形成ユニット180Kと、露光器233を備えている。
前記画像形成ユニット画像形成ユニット180(180Y、180C、180M、180K)は、図中、時計回りに回転可能に設けられており、静電潜像及びトナー像が形成される感光体ドラム231(231Y、231C、231M、231K)と、感光体ドラム231(231Y、231C、231M、231K)の表面を一様に帯電させる帯電器232(232Y、232C、232M、232K)と、感光体ドラム231(231Y、231C、231M、231K)の表面に残ったトナーを除去する清掃器236(236Y、236C、236M、236K)を備えている。
また、画像形成ユニット180(180Y、180C、180M、180K)は、各色のトナーを収容するトナーボトル234(234Y、234C、234M、234K)と、トナーボトル234(234Y、234C、234M、234K)から供給されたトナーを補給するためのサブホッパ160(160Y、160C、160M、160K)を備えている。
なお、画像形成ユニット180(180Y、180C、180M、180K)のうち、任意の画像形成ユニットを示す場合には、画像形成ユニットという。
【0253】
露光器233は、画像情報に基づいて光源233aから発せられたレーザ光Lを、モータにより回転駆動されるポリゴンミラー233b(233bY、233bC、233bM、233bK)により反射させて感光体ドラム231に照射する。
また、現像剤は、トナーとキャリアを有する。4つの画像形成ユニット180(180Y、180C、180M、180K)は、それぞれに用いられる現像剤が異なるのみで、機械的な構成は実質的に同一である。
【0254】
転写部240は、駆動ローラ241及び従動ローラ242と、駆動ローラ241の駆動に伴い、図3中反時計回りに回転することが可能な中間転写ベルト243と、中間転写ベルト243を挟んで、感光体ドラム231(231Y、231C、231M、231K)に対向して設けられた一次転写ローラ244(244Y、244C、244M、244K)と、トナー像の紙への転写位置において中間転写ベルト243を挟んで対向して設けられた二次対向ローラ245及び二次転写ローラ246を備えている。
【0255】
定着器250は、ヒータが内部に設けられており、紙Pを加熱する定着ベルト251を、定着ベルト251に対して、回転可能に加圧することによりニップを形成する加圧ローラ252を備えている。これにより、紙P上のカラートナー像に熱と圧力が印加されて、カラートナー像が定着する。カラートナー像が定着した紙Pは、排紙ローラ223により排紙トレイ224に排紙され、一連の画像形成プロセスが完了する。
【実施例0256】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0257】
(製造例1)
<非晶性ポリエステル(低分子ポリエステル)樹脂の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌器、及び熱伝対を装備した5リットルの四つ口フラスコに、以下の材料を入れ、常圧下、230℃で7時間反応させた。
―材料―
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 229質量部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 529質量部
・テレフタル酸 208質量部
・アジピン酸 46質量部
・ジブチルチンオキサイド 2質量部
更に、10mmHg~15mmHgの減圧下で4時間反応した後、反応容器に無水トリメリット酸44質量部を入れ、常圧下、180℃で2時間反応させて[非晶性ポリエステル(低分子ポリエステル)樹脂]を得た。
【0258】
(製造例2)
<結晶性ポリエステル樹脂の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌器、及び熱伝対を装備した5リットルの四つ口フラスコに、以下の材料を入れ、160℃で5時間反応させた。
―材料―
・1,6-ヘキサンジオール 2,300質量部
・フマル酸 2,530質量部
・無水トリメリット酸 291質量部
・ハイドロキノン 4.9質量部
更に、200℃に昇温して1時間反応させた後、8.3kPaにて1時間反応させて[結晶性ポリエステル樹脂]を得た。
【0259】
(製造例3)
<ポリエステルプレポリマーの合成>
冷却管、撹拌機、及び窒素導入管の付いた反応容器中に、以下の材料を入れ、常圧下、230℃で8時間反応させた。
―材料―
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 682質量部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 81質量部
・テレフタル酸 283質量部
・無水トリメリット酸 22質量部
・ジブチルチンオキサイド 2質量部
更に、10mmHg~15mmHgの減圧で5時間反応して[中間体ポリエステル]を得た。
得られた[中間体ポリエステル]は、数平均分子量Mnが2,100、重量平均分子量Mwが9,500、ガラス転移温度Tgが55℃、酸価が0.5KOHmg/g、水酸基価が51KOHmg/gであった。
次に、冷却管、撹拌機、及び窒素導入管の付いた反応容器中に、[中間体ポリエステル]を410質量部、イソホロンジイソシアネート89質量部、及び酢酸エチル500質量部を入れ、100℃で5時間反応させて[ポリエステルプレポリマー]を得た。
【0260】
(製造例4)
<樹脂微粒子(A-1)水性分散液(W0-1)の製造>
攪拌機、加熱冷却装置、及び温度計を備えた反応容器に、以下の材料を加え、200回転/分で撹拌して均一化した。
―材料―
・水 3710質量部
・ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム(第一工業製薬(株)製、アクアロンKH-1025) 200質量部
均一化したものを加熱して系内温度75℃まで昇温させた後、10質量%過硫酸アンモニウム水溶液90質量部を加えてから、以下の材料(混合液)を4時間かけて滴下した。
―材料(混合液)―
・スチレン 450質量部
・ブチルアクリレート 250質量部
・メタクリル酸 300質量部
滴下後、75℃で4時間熟成させることで前記モノマー及びポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウムが共重合したポリマーである樹脂(a1)を含む[樹脂微粒子(A-1)分散液(W0-1)]を得た。
前記樹脂微粒子(A-1)水性分散液(W0-1)における微粒子の体積平均一次粒径は、動的光散乱式粒径分布測定装置(LB)で測定したところ、15nmであった。
前記樹脂微粒子(A-1)水性分散液(W0-1)の一部を乾燥して、樹脂(a1)を単離した。
前記樹脂(a1)のガラス転移温度(Tg)は53℃、酸価は195mgKOH/gであった。
【0261】
(製造例5)
<樹脂微粒子(A-2)水性分散液(W0-2)の製造>
攪拌機、加熱冷却装置、及び温度計を備えた反応容器に、以下の材料を加え、200回転/分で撹拌して均一化した。
―材料―
・水 3760質量部
・ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム(第一工業製薬(株)製、アクアロンKH-1025) 150質量部
均一化したものを加熱して系内温度75℃まで昇温させた後、10質量%過硫酸アンモニウム水溶液90質量部を加えてから、以下の材料(混合液)を4時間かけて滴下した。
―材料(混合液)―
・スチレン 430質量部
・ブチルアクリレート 270質量部
・メタクリル酸 300質量部
滴下後、75℃で4時間熟成させることで前記モノマー及びポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウムが共重合したポリマーである樹脂(a2)を含む[樹脂微粒子(A-2)水性分散液(W0-2)]を得た。
前記樹脂微粒子(A-2)水性分散液(W0-2)における微粒子の体積平均一次粒径は、製造例4と同様にして測定したところ、30nmであった。
前記樹脂微粒子(A-2)水性分散液(W0-2)の一部を乾燥して、樹脂(a2)を単離した。
前記樹脂(a2)のガラス転移温度(Tg)は53℃、酸価は195mgKOH/gであった。
【0262】
(製造例6)
<樹脂微粒子(A-3)水性分散液(W0-3)の製造>
攪拌機、加熱冷却装置、及び温度計を備えた反応容器に、以下の材料を加え、200回転/分で撹拌して均一化した。
―材料―
・水 3810質量部
・ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム(第一工業製薬(株)製、アクアロンKH-1025) 100質量部
加熱して系内温度75℃まで昇温させた後、10質量%過硫酸アンモニウム水溶液90質量部を加えてから、以下の材料(混合液)を4時間かけて滴下した。
―材料(混合液)―
・スチレン 400質量部
・ブチルアクリレート 300質量部
・メタクリル酸 300質量部
滴下後、75℃で4時間熟成させることで前記モノマー及びポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウムが共重合したポリマーである樹脂(a3)を含む[樹脂微粒子(A-3)水性分散液(W0-3)]を得た。
前記樹脂微粒子(A-3)水性分散液(W0-3)における微粒子の体積平均一次粒径は、製造例4と同様にして測定したところ、45nmであった。
前記樹脂微粒子(A-3)水性分散液(W0-3)の一部を乾燥して、樹脂(a3)を単離した。
前記樹脂(a3)のガラス転移温度(Tg)は53℃、酸価は195mgKOH/gであった。
【0263】
(製造例7)
<樹脂微粒子(B-1)水性分散液(W-1)の製造>
攪拌機、加熱冷却装置、及び温度計を備えた反応容器に、以下の材料を加え、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド(日油(株)製、パーブチルH)0.267質量部を添加後に加熱し、系内温度を70℃まで昇温させた。
―材料―
・樹脂微粒子(A-1)水性分散液(W0-1) 667質量部
・水 248質量部
次に、以下の材料(混合液)を2時間かけて滴下した。
―材料(混合液)―
・スチレン 43.3質量部
・ブチルアクリレート 17.5質量部
・2エチルへキシルアクリレート 5.8質量部
・1重量%アスコルビン酸水溶液 18.0質量部
滴下後、70℃で4時間熟成させることで樹脂微粒子(A-1)水性分散液(W0-1)中の樹脂(a1)をシードとして、前記モノマーが共重合したポリマーである樹脂(a1-1)と樹脂(a1)とを同一粒子内に構成成分として含む[樹脂微粒子(B-1)水性分散液(W-1)]を得た。
前記樹脂微粒子(B-1)水性分散液(W-1)における樹脂微粒子(B-1)の体積平均一次粒径は、製造例4と同様にして測定したところ、17nmであった。
【0264】
前記樹脂微粒子(B-1)水性分散液(W-1)が、樹脂(a1-1)と樹脂(a1)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子(B-1)を含むことは以下のようにして確認した。
具体的には、ゼラチン(クックゼラチン、森永乳業株式会社製)2質量部を95℃~100℃に温めた水15質量部に加えて溶解させ、空冷して40℃となったゼラチン水溶液に前記樹脂微粒子(B-1)水性分散液(W-1)を1:1の質量比率で混合し、よく撹拌した後、10℃で1時間冷やすことで硬化させたゲルを作製した。
このゲルをウルトラミクロトーム(ウルトラミクロトームUC7、FC7、ライカマイクロシステムス社製)において、-80℃に温調しながら厚さ80nmの切片を作製した後、2質量%四酸化ルテニウム水溶液で5分間気相染色を行ってから透過型電子顕微鏡(日立テクノロジーズ株式会社製、H-7100)で観察を行うことにより確認した。
【0265】
(製造例8)
<樹脂微粒子(B-2)水性分散液(W-2)の製造>
攪拌機、加熱冷却装置、及び温度計を備えた反応容器に、以下の材料を加え、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド(日油(株)製、パーブチルH)0.267質量部を添加後に加熱し、系内温度を70℃まで昇温させた。
―材料―
・樹脂微粒子(A-1)水性分散液(W0-1) 667質量部
・水 248質量部
次に、以下の材料(混合液)を2時間かけて滴下した。
―材料(混合液)―
・スチレン 43.3質量部
・ブチルアクリレート 23.3質量部
・1重量%アスコルビン酸水溶液 18.0質量部
滴下後、70℃で4時間熟成させることで樹脂微粒子(A-1)水性分散液(W0-1)中の樹脂(a1)をシードとして、前記モノマーが共重合したポリマーである樹脂(a1-2)と樹脂(a1)とを同一粒子内に構成成分として含む[樹脂微粒子(B-2)水性分散液(W-2)]を得た。
前記樹脂微粒子(B-2)水性分散液(W-2)における樹脂微粒子(B-2)の体積平均一次粒径は、製造例4と同様にして測定したところ、17nmであった。
前記樹脂微粒子(B-2)水性分散液(W-2)が、樹脂(a1)と樹脂(a1-2)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子(B-2)を含むことを製造例7と同様の方法により確認した。
【0266】
(製造例9)
<樹脂微粒子(B-3)水性分散液(W-3)の製造>
攪拌機、加熱冷却装置、及び温度計を備えた反応容器に、以下の材料を加え、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド(日油(株)製、パーブチルH)0.267質量部を添加後に加熱し、系内温度を70℃まで昇温させた。
―材料―
・樹脂微粒子(A-1)水性分散液(W0-1) 667質量部
・水 248質量部
次に、以下の材料の混合液を2時間かけて滴下した。
―材料(混合液)―
・スチレン 43.3質量部
・2エチルへキシルアクリレート 23.3質量部
・1重量%アスコルビン酸水溶液 18.0質量部
滴下後、70℃で4時間熟成させることで樹脂微粒子(A-1)水性分散液(W0-1)中の樹脂(a1)をシードとして、前記モノマーが共重合したポリマーである樹脂(a1-3)と樹脂(a1)とを同一粒子内に構成成分として含む[樹脂微粒子(B-3)水性分散液(W-3)]を得た。
前記樹脂微粒子(B-3)水性分散液(W-3)における樹脂微粒子(B-3)の体積平均一次粒径は、製造例4と同様にして測定したところ、17nmであった。
前記樹脂微粒子(B-3)水性分散液(W-3)が、樹脂(a1)と樹脂(a1-3)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子(B-3)を含むことを製造例7と同様の方法により確認した。
【0267】
(製造例10)
<樹脂微粒子(B-4)水性分散液(W-4)の製造>
攪拌機、加熱冷却装置、及び温度計を備えた反応容器に、以下の材料を加え、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド(日油(株)製、パーブチルH)0.267質量部を添加後に加熱し、系内温度を70℃まで昇温させた。
―材料―
・樹脂微粒子(A-2)水性分散液(W0-2) 667質量部
・水 248質量部
次に、以下の材料(混合液)を2時間かけて滴下した。
―材料(混合液)―
・スチレン 43.3質量部
・ブチルアクリレート 17.5質量部
・2エチルへキシルアクリレート 5.8質量部
・1重量%アスコルビン酸水溶液 18.0質量部
滴下後、70℃で4時間熟成させることで樹脂微粒子(A-2)水性分散液(W0-2)中の樹脂(a2)をシードとして、前記モノマーが共重合したポリマーである樹脂(a2-1)と樹脂(a2)とを同一粒子内に構成成分として含む[樹脂微粒子(B-4)水性分散液(W-4)]を得た。
前記樹脂微粒子(B-4)水性分散液(W-4)における樹脂微粒子(B-4)の体積平均一次粒径は、製造例4と同様にして測定したところ、34nmであった。
前記樹脂微粒子(B-4)水性分散液(W-4)が、樹脂(a2-1)と樹脂(a2)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子(B-4)を含むことを製造例7と同様の方法により確認した。
【0268】
(製造例11)
<樹脂微粒子(B-5)水性分散液(W-5)の製造>
攪拌機、加熱冷却装置、及び温度計を備えた反応容器に、以下の材料を加え、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド(日油(株)製、パーブチルH)0.267質量部を添加後に加熱し、系内温度を70℃まで昇温させた。
―材料―
・樹脂微粒子(A-3)水性分散液(W0-3) 667質量部
・水 248質量部
次に、以下の材料(混合液)を2時間かけて滴下した。
―材料(混合液)―
・スチレン 43.3質量部
・ブチルアクリレート 23.3質量部
・1重量%アスコルビン酸水溶液 18.0質量部
滴下後、70℃で4時間熟成させることで樹脂微粒子(A-3)水性分散液(W0-3)中の樹脂(a3)をシードとして、前記モノマーが共重合したポリマーである樹脂(a3-1)と樹脂(a3)とを同一粒子内に構成成分として含む[樹脂微粒子(B-5)水性分散液(W-5)]を得た。
前記樹脂微粒子(B-5)水性分散液(W-5)における樹脂微粒子(B-5)の体積平均一次粒径は、製造例4と同様にして測定したところ、52nmであった。
前記樹脂微粒子(B-5)水性分散液(W-5)が、樹脂(a3-1)と樹脂(a3)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子(B-5)を含むことを製造例7と同様の方法により確認した。
【0269】
(製造例12)
<樹脂微粒子(B-6)水性分散液(W-6)~樹脂微粒子(B-9)水性分散液(W-9)の製造>
製造例11において、ブチルアクリレート23.3質量部に対して、全量を2エチルへキシルアクリレートに変更して製造したものを樹脂微粒子(B-6)水性分散液(W-6)、ブチルアクリレート23.3質量部の75%を2エチルへキシルアクリレートに変更して製造したものを樹脂微粒子(B-7)水性分散液(W-7)、ブチルアクリレート23.3質量部の50%を2エチルへキシルアクリレートに変更して製造したものを樹脂微粒子(B-8)水性分散液(W-8)、ブチルアクリレート23.3質量部の25%を2エチルへキシルアクリレートに変更して製造したものを樹脂微粒子(B-9)水性分散液(W-9)とした。
前記樹脂微粒子(B-6)水性分散液(W-6)~樹脂微粒子(B-9)水性分散液(W-9)における体積平均一次粒径は、製造例4と同様にして測定したところ、前記樹脂微粒子(B-6)は56nm、前記樹脂微粒子(B-7)は54nm、前記樹脂微粒子(B-8)は54nm、前記樹脂微粒子(B-9)は52nmであった。
前記樹脂微粒子(B-6)水性分散液(W-6)~樹脂微粒子(B-9)水性分散液(W-9)が、(W0-3)中の樹脂(a3)をシードとして、前記モノマーが共重合したポリマーである樹脂(a3-2)~樹脂(a3-5)と、樹脂(a3)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子(B-6)~樹脂微粒子(B-9)を含むことを製造例7と同様の方法により確認した。
【0270】
(製造例13)
<ポリエステル樹脂微粒子の製造>
下記のようにしてポリエステル樹脂を製造した。
〔ポリエステル樹脂の製造〕
テレフタル酸1,600部、イソフタル酸633部、エチレングリコール1,149部、ネオペンチルグリコール1,510部からなる混合物を、オートクレーブ中、260℃で5時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、触媒の二酸化ゲルマニウムを0.262部添加し、系の温度を30分かけて280℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1時間後に0.1Torrとした。この条件下で更に重縮合反応を続け、5時間後に系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、260℃になったところでイソフタル酸50部、無水トリメリット酸26.6部を添加し、255℃で30分間撹拌し、シート状に払い出した。次いで、室温まで十分に冷却した後、クラッシャーで粉砕し、篩を用いて目開き1~6mmの分画の[ポリエステル樹脂]を得た。
〔結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の製造〕
ジャケット付きの2Lガラス容器に、ポリエステル樹脂200部、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル35部、ポリビニルアルコール(ユニチカ社製「ユニチカポバール」050G)0.5質量%水溶液(以下、PVA-1)450部、及び前記[ポリエステル樹脂]中に含まれる全カルボキシル基量の1.2倍当量に相当するN,N-ジメチルエタノールアミンを投入し、これを開放系で卓上型ホモディスパー(特殊機化工業社製、TKロボミックス)を用いて6,000rpmで撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、完全浮遊状態となっていることが確認された。そこで、この状態を保ち、10分後にジャケットに熱水を通し、加熱した。容器内温度が68℃に達したところで7,000rpmで撹拌し、容器内温度を68~70℃に保って更に20分間撹拌し、乳白色の均一な水分散体を得た。次いで、ジャケット内に冷水を流して3,500rpmで撹拌しながら室温まで冷却し、ステンレス製のフィルター(635メッシュ、平織)を用いて濾過し、体積平均一次粒径が55nmであるポリエステル樹脂微粒子を有する[結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液]を得た。なお、濾過工程において、フィルター上には樹脂粒子がほとんど残らなかった。
【0271】
(製造例14)
<樹脂微粒子(B’)水性分散液の製造>
攪拌機、及び温度計を備えた反応容器に、以下の材料を加え、400回転/分間で15分間撹拌した。
―材料―
・水 683質量部
・メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS-30、三洋化成工業株式会社製) 11質量部
・スチレン 138質量部
・メタクリル酸 138質量部
・過硫酸アンモニウム 1質量部
得られた乳濁液を加熱し、系内温度75℃まで昇温し、5時間反応させた。
更に、1質量%過硫酸アンモニウム水溶液30質量部加え、75℃で5時間熟成して、[樹脂微粒子(B’)(ビニル系樹脂:スチレン-メタクリル酸-メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)水性分散液]を得た。
前記樹脂微粒子(B’)水性分散液における樹脂微粒子(B’)水性分散液の体積平均一次粒径は、製造例4と同様にして測定したところ、140nmであった。
【0272】
(実施例1)
<マスターバッチ(MB)の作製>
容器に、以下の材料を加え、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて混合した。
―材料―
・水 1200質量部
・カーボンブラック(Printex35、DBP吸油量=42mL/100mg、pH=9.5、エボニックデクサ社製) 540質量部
・[非晶性ポリエステル樹脂] 1200質量部
混合物を2本ロールを用いて、150℃で30分間混練後、圧延冷却し、パルペライザーで粉砕し、[マスターバッチ]を得た。
【0273】
<ワックス分散液の作製>
撹拌棒、及び温度計をセットした容器に、離型剤としてパラフィンワックス50質量部(日本精鑞株式会社製、HNP-9、炭化水素系ワックス、融点75℃、SP値8.8)、及び酢酸エチル450質量部を仕込み、撹拌下、80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間で30℃に冷却し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒間、直径0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で分散を行い[ワックス分散液]を得た。
【0274】
<結晶性ポリエステル樹脂分散液の作製>
撹拌棒、及び温度計をセットした容器に製造例2の結晶性ポリエステル樹脂を50質量部、及び酢酸エチル450質量部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間で30℃に冷却し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒間、直径0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、分散を行い[結晶性ポリエステル樹脂分散液]を得た。
【0275】
<油相の調製>
温度計、及び撹拌機を装備した別の容器に、非晶性ポリエステル樹脂78質量部、結晶性ポリエステル樹脂分散液70質量部、ワックス分散液25質量部、及びマスターバッチ16質量部を入れ、固形分濃度が30質量%になるように酢酸エチルを加え、撹拌して十分に溶解させた。次に、TK式ホモミキサー(プライミクス株式会社製)を用いて、回転数8,000rpmで撹拌し、均一に溶解、分散させた。
更に、イソホロンジアミン(IPDA)を、IPDAのアミノ基と、[中間体ポリエステル]のイソシアネート基とのモル比(NH2/NCO)が、0.98となる量を入れ、TK式ホモミキサーを用いて回転数8,000rpmで15秒間撹拌した。次いで、50質量%酢酸エチル溶液に調製した[中間体ポリエステル]30質量部を加え、TK式ホモミキサーを用いて回転数8,000rpmで30秒間撹拌し、[油相1]を得た。
【0276】
<水相の調製>
撹拌機、及び温度計をセットした容器内に、イオン交換水75質量部、カルボキシメチルセルロースナトリウム1質量部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5質量%水溶液(エレミノールMON-7、三洋化成工業株式会社製)16質量部、及び酢酸エチル5質量部を混合撹拌させ、更に[樹脂微粒子(A-1)水性分散液(W0-1)]の固形分1.6質量部相当量、及び[樹脂微粒子(B-1)水性分散液(W-1)]の固形分0.8質量部相当量を加えて水相溶液を作製した。これを[水相1]とした。
【0277】
<乳化及び脱溶剤>
[油相1]29質量部が入った容器に、[水相1]50質量部を加え、TKホモミキサーで、回転数8,000rpmで2分間混合撹拌し、その後、20分間混合し[乳化スラリー1]を得た。
次に、撹拌機及び温度計をセットした容器に、[乳化スラリー1]を投入し、30℃で8時間脱溶剤した後、45℃で4時間熟成を行い、[分散スラリー1]を得た。
【0278】
<洗浄及び乾燥>
得られた[分散スラリー1]100質量部を減圧濾過して[濾過ケーキ]を得た後、以下の操作を行った。
(1):前記濾過ケーキにイオン交換水100質量部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(2):(1)後の濾過ケーキに10質量%水酸化ナトリウム水溶液100質量部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。
(3):(2)後の濾過ケーキに10質量%塩酸100質量部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(4):(3)後の濾過ケーキにイオン交換水300質量部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
前記(1)~(4)の操作を2回行い[洗浄処理後の濾過ケーキ]を得た。
得られた[洗浄処理後の濾過ケーキ]を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmのメッシュで篩い[トナー母体粒子1]を得た。
【0279】
<外添処理>
得られた[トナー母体粒子1]100質量部に対して、外添剤としてコロイダルシリカ(日本アエロジル製、アエロジルR972)1.0重量部をサンプルミルにて混合して、外添処理後の[トナー1]を得た。
【0280】
(実施例2)
実施例1の<水相の調整>において、[樹脂微粒子(A-1)水性分散液(W0-1)]の固形分1.6質量部相当量、及び[樹脂微粒子(B-1)水性分散液(W-1)]の固形分0.8質量部相当量を、[樹脂微粒子(A-1)水性分散液(W0-1)]の固形分1.9質量部相当量、及び[樹脂微粒子(B-1)水性分散液(W-1)]の固形分0.5質量部相当量に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、[トナー母体粒子2]を得た。得られた[トナー母体粒子2]を用い、実施例1と同様にして、[トナー2]を作製した。
【0281】
(実施例3)
実施例1の<水相調整>において、[樹脂微粒子(A-1)水性分散液(W0-1)]の固形分1.6質量部相当量、及び[樹脂微粒子(B-1)水性分散液(W-1)]の固形分0.8質量部相当量を、[樹脂微粒子(B-7)水性分散液(W-7)]の固形分2.4質量部相当量に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、[トナー母体粒子3]を得た。得られた[トナー母体粒子3]を用い、実施例1と同様にして、[トナー3]を作製した。
【0282】
(実施例4)
実施例1の<水相の調整>において、[樹脂微粒子(A-1)水性分散液(W0-1)]の固形分1.6質量部相当量、及び[樹脂微粒子(B-1)水性分散液(W-1)]の固形分0.8質量部相当量を、[樹脂微粒子(B-8)水性分散液(W-8)]の固形分2.4質量部相当量に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、[トナー母体粒子4]を得た。得られた[トナー母体粒子4]を用い、実施例1と同様にして、[トナー4]を作製した。
【0283】
(実施例5)
実施例1の<水相の調整>において、[樹脂微粒子(A-1)水性分散液(W0-1)]の固形分1.6質量部相当量、及び[樹脂微粒子(B-1)水性分散液(W-1)]の固形分0.8質量部相当量を、[樹脂微粒子(B-9)水性分散液(W-9)]の固形分2.4質量部相当量に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、[トナー母体粒子5]を得た。得られた[トナー母体粒子5]を用い、実施例1と同様にして、[トナー5]を作製した。
【0284】
(実施例6)
実施例1の<水相の調整>において、[樹脂微粒子(A-1)水性分散液(W0-1)]の固形分1.6質量部相当量、及び[樹脂微粒子(B-1)水性分散液(W-1)]の固形分0.8質量部相当量を、[樹脂微粒子(A-2)水性分散液(W0-2)]の固形分1.6質量部相当量、及び[樹脂微粒子(B-4)水性分散液(W-4)]の固形分0.8質量部相当量に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、[トナー母体粒子6]を得た。得られた[トナー母体粒子6]を用い、実施例1と同様にして、[トナー6]を作製した。
【0285】
(実施例7)
実施例1の<水相の調整>において、[樹脂微粒子(A-1)水性分散液(W0-1)]の固形分1.6質量部相当量、及び[樹脂微粒子(B-1)水性分散液(W-1)]の固形分0.8質量部相当量を、[結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液]の固形分2.4質量部相当量に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、[トナー母体粒子7]を得た。
得られた[トナー母体粒子7]を用い、実施例1と同様にして、[トナー7]を作製した。
【0286】
(実施例8)
実施例1の<水相の調整>において、[樹脂微粒子(A-1)水性分散液(W0-1)]の固形分1.6質量部相当量、及び[樹脂微粒子(B-1)水性分散液(W-1)]の固形分0.8質量部相当量を、[樹脂微粒子(B’)水性分散液]の固形分2.4質量部相当量に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、[トナー母体粒子8]を得た。
得られた[トナー母体粒子8]を用い、実施例1と同様にして、[トナー8]を作製した。
【0287】
(比較例1)
実施例1の<水相の調整>において、[樹脂微粒子(A-1)水性分散液(W0-1)]の固形分1.6質量部相当量、及び[樹脂微粒子(B-1)水性分散液(W-1)]の固形分0.8質量部相当量を、[樹脂微粒子(B-5)水性分散液(W-5)]の固形分2.4質量部相当量に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、[トナー母体粒子9]を得た。
得られた[トナー母体粒子9]を用い、実施例1と同様にして、[トナー9]を作製した。
【0288】
(比較例2)
実施例1の<水相の調整>において、[樹脂微粒子(A-1)水性分散液(W0-1)]の固形分1.6質量部相当量、及び[樹脂微粒子(B-1)水性分散液(W-1)]の固形分0.8質量部相当量を、[樹脂微粒子(B-6)水性分散液(W-6)]の固形分2.4質量部相当量に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、[トナー母体粒子10]を得た。
得られた[トナー母体粒子10]を用い、実施例1と同様にして、[トナー10]を作製した。
【0289】
(比較例3)
実施例1の<水相の調整>において、[樹脂微粒子(A-1)水性分散液(W0-1)]の固形分1.6質量部相当量、及び[樹脂微粒子(B-1)水性分散液(W-1)]の固形分0.8質量部相当量を、[樹脂微粒子(A-1)水性分散液(W0-1)]の固形分1.9質量部相当量、及び[樹脂微粒子(B-2)水性分散液(W-2)]の固形分0.5質量部相当量に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、[トナー母体粒子11]を得た。
得られた[トナー母体粒子11]を用い、実施例1と同様にして、[トナー11]を作製した。
【0290】
(比較例4)
実施例1の<水相の調整>において、[樹脂微粒子(A-1)水性分散液(W0-1)]の固形分1.6質量部相当量、及び[樹脂微粒子(B-1)水性分散液(W-1)]の固形分0.8質量部相当量を、[樹脂微粒子(A-1)水性分散液(W0-1)]の固形分1.9質量部相当量、及び[樹脂微粒子(B-3)水性分散液(W-3)]の固形分0.5質量部相当量に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、[トナー母体粒子12]を得た。
得られた[トナー母体粒子12]を用い、実施例1と同様にして、[トナー12]を作製した。
【0291】
<キャリアの作製>
トルエン100質量部に、シリコーン樹脂(オルガノストレートシリコーン)100質量部、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン5質量部、及びカーボンブラック10質量部を添加し、ホモミキサーで20分間分散させて、樹脂層塗布液を調製した。
流動床型コーティング装置を用いて、体積平均粒径50μmの球状マグネタイト1,000質量部の表面に前記樹脂層塗布液を塗布して、[キャリア]を作製した。
【0292】
<現像剤の作製>
ボールミルを用いて、各[トナー]5質量部と[キャリア]95質量部とを混合し、各[現像剤]を作製した。
【0293】
次に、得られた各トナー及び各現像剤を用い、以下のようにして諸特性を評価した。結果を表1~表3に示した。
【0294】
<造粒性の評価>
各[トナー]をそれぞれ水に分散して、コールターカウンター「マルチサイザーIII」(ベックマンコールター社製)で体積平均一次粒径、及び粒度分布(体積平均一次粒径/数平均粒径)を測定することによって、下記の基準で造粒性を評価した
なお、造粒性は、トナーの体積平均一次粒径が5.0μm~5.9μmであるときに、粒度分布が1.20以下であることが好ましいとされる。
[造粒性の評価基準]
○:粒度分布が1.20以下
×:粒度分布が1.21以上
【0295】
<低温定着性の評価>
紙(株式会社リコー製、Type6200、A4サイズ版)面上に、トナー(粉体状)を0.8mg/cmとなるように均一に載せ、加圧ローラに定着速度(加熱ローラ周速)213mm/sec、定着圧力(加圧ローラ圧)10kg/cmの条件で通したときのコールドオフセットの発生温度(MFT)を測定した。なお、コールドオフセットの発生温度が低いほど、低温定着性に優れることを意味する。
なお、前記トナー(粉体状)を紙面に載せる方法は、熱定着機を外したプリンタを用いる。上記の重量密度で、前記トナー(粉体状)を紙面上に均一に載せることができれば、特に制限はなく、他の方法を用いてもよい。
[低温定着性の評価基準]
◎:定着下限温度が130℃以下
○:定着下限温度が130℃より大きく135℃以下
△:定着下限温度が135℃より大きく140℃以下
×:定着下限温度が140℃より大きい
【0296】
<トナー付着力の評価>
各トナーの160kN/m圧縮時の二粒子間力(Fp)は、粉体層の圧縮・引張特性計測装置アグロボット(ホソカワミクロン株式会社製)を用いて測定することができる。
前記二粒子間力(Fp)は、下記条件下で上下2分割の円筒セル内に一定量の各トナーを充填し、各トナーを160kN/mの圧力下で保持した後、上部セルを持ち上げて粉体層が破断されたときの最大引張破断力、圧縮時の粉体層高さ、セル内径、トナー平均粒径、トナー真密度、及びトナー量から算出される。
具体的には、以下に示す条件にて測定を行い、付属のアプリケーションソフトにより算出された二粒子間力(Fp)を、トナーの160kN/m圧縮時の二粒子間力(Fp)として下記の基準で評価した。なお、測定は、トナーを23℃、53%RHで24時間調湿して行った。
―測定条件―
・トナー量:8.00g±0.02g
・環境温度:25±2℃
・湿度:30±5%RH
・セル内径:25mm
・セル温度:25℃
・バネ線径:1.0mm
・圧縮速度:0.1mm/sec
・圧縮荷重:8kg(加圧力:160kN/m2)
・圧縮保持時間:60sec
・引張速度:0.6mm/sec
・引張サンプリング開始時間:0sec
・引張サンプリング時間:25sec
[トナー付着力の評価基準]
◎:最も良好 Fp≦200
〇:良好 200<Fp≦300
△:許容 300<Fp≦500
×:NG 破断不良
【0297】
<耐フィルミング性の評価>
各現像剤を、画像形成装置(RICOH MPC 6003、株式会社リコー製)に入れ、付着量0.4mg/cmのベタ画像を、露光、現像、転写工程を経ることで紙(株式会社リコー製、Type6200、A4サイズ版)上に出力し、2,000枚の連続通紙試験を行い、潜像担持体における汚染、及び帯電装置における汚染状況を目視にて観察し、下記基準で評価した。
[耐フィルミング性の評価基準]
◎:潜像担持体における汚染及び帯電装置上にフィルミングがない
○:潜像担持体における汚染及び帯電装置上にフィルミングがわずかにある
△:潜像担持体における汚染及び帯電装置上にフィルミングがわずかにあり、経時で異常画像が発生する
×:潜像担持体における汚染及び帯電装置上にフィルミングがわずかにあり、早期に異常画像が発生する
【0298】
<総合判定>
各評価項目の結果をもとに以下の判断基準で判定する。
[評価基準]
◎:評価項目の内3つ以上「◎」
〇:評価項目の内「◎」が2つ以下であり、「△」及び「×」がない
△:評価項目のどれかが「△」
×:評価項目のどれかが「×」
【0299】
【表1】
【0300】
【表2】
【0301】
【表3】
【0302】
表1~表3の結果から、本発明の実施例1~8は、造粒性、低温定着性、付着力、耐フィルミング性のいずれも優れた性能を示すことがわかった。
比較例1は、トナー母体表面上の凝集体量が多く低温定着性がやや低下しており、凝集体過多により外添剤の遊離量を適正化できないため耐フィルミング性は不良であった。
比較例2は、トナー母体表面上の凝集体量が少なく、スペーサー効果が弱いため付着力は劣位である。
比較例3は比較例1に対して標準偏差が大きく、同様に比較例4は比較例2に対して標準偏差が大きい。そのため、トナー母体が不均一に露出することで付着力が悪化した。
【0303】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1>トナー母体粒子の表面上に、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察される樹脂微粒子を複数有するトナーであって、前記トナーは、樹脂とワックスとを少なくとも含み、前記樹脂微粒子における最小粒子の長径をRとし、長径3R以上を満たす前記樹脂微粒子を凝集体としたとき、前記凝集体が前記トナー母体粒子の表面を占める割合が、15%以上60%以下であることを特徴とするトナーである。
<2>前記樹脂微粒子が、コア樹脂と、前記コア樹脂の少なくとも一部の表面を被覆するシェル樹脂と、を有する前記<1>に記載のトナーである。
<3>前記シェル樹脂が、スチレン-アクリル樹脂を含有する前記<2>に記載のトナーである。
<4>前記凝集体が前記トナー母体粒子表面上を占める割合が、15%以上35%以下である前記<1>から前記<3>のいずれかに記載のトナーである。
<5>前記トナー母体粒子の表面に存在する互いに接触してない隣り合った前記樹脂微粒子間の距離における標準偏差が、500nm以下である前記<1>から前記<4>のいずれかに記載のトナーである。
<6>前記樹脂微粒子の体積平均一次粒径が、10nm以上100nm以下である前記<1>から前記<5>のいずれかに記載のトナーである。
<7>前記<1>から前記<6>のいずれかに記載のトナーを収容することを特徴とするトナー収容ユニットである。
<8>前記<7>に記載のトナー収容ユニットを有することを特徴とする画像形成装置である。
<9>静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を、トナーを用いて現像することにより可視像であるトナー像を形成する現像工程と、を含み、前記トナーが前記<1>から前記<6>のいずれかに記載のトナーであることを特徴とする画像形成方法である。
<10>前記<1>から前記<6>のいずれかに記載のトナーを製造するトナーの製造方法であって、トナー母体粒子の表面に樹脂微粒子を付着させて複合粒子を形成する複合粒子形成工程と、前記複合粒子から、前記樹脂微粒子の少なくとも一部を除去する除去工程と、を含むことを特徴とするトナーの製造方法である。
<11>前記除去工程が、塩基性の水溶液を用いて洗浄する工程である前記<10>に記載のトナーの製造方法である。
【0304】
前記<1>から前記<6>のいずれかに記載のトナー、前記<7>に記載のトナー収容ユニット、前記<8>に記載の画像形成装置、前記<9>に記載の画像形成方法、前記<10>から前記<11>のいずれかに記載のトナーの製造方法によれば、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0305】
1 シェル樹脂
2 コアシェル樹脂
3 樹脂微粒子
4 トナー母体粒子
101 潜像担持体
102 帯電装置
103 露光装置からの露光
104 現像装置
105 記録紙
107 クリーニング部
108 転写ローラ
160Y サブホッパ(イエロー)
160C サブホッパ(シアン)
160M サブホッパ(マゼンタ)
160K サブホッパ(ブラック)
180Y 画像形成ユニット(イエロー)
180C 画像形成ユニット(シアン)
180M 画像形成ユニット(マゼンタ)
180K 画像形成ユニット(ブラック)
210 給紙部
211 給紙カセット
212 給紙ローラ
220 搬送部
221 ローラ
222 タイミングローラ
223 排紙ローラ
224 排紙トレイ
230 作像部
231Y 感光体ドラム(イエロー)
231C 感光体ドラム(シアン)
231M 感光体ドラム(マゼンタ)
231K 感光体ドラム(ブラック)
232Y 帯電器(イエロー)
232C 帯電器(シアン)
232M 帯電器(マゼンタ)
232K 帯電器(ブラック)
233 露光器
233a 光源
233bY ポリゴンミラー(イエロー)
233bC ポリゴンミラー(シアン)
233bM ポリゴンミラー(マゼンタ)
233bK ポリゴンミラー(ブラック)
234Y トナーボトル(イエロー)
234C トナーボトル(シアン)
234M トナーボトル(マゼンタ)
234K トナーボトル(ブラック)
236Y 清掃器(イエロー)
236C 清掃器(シアン)
236M 清掃器(マゼンタ)
236K 清掃器(ブラック)
240 転写部
241 駆動ローラ
242 従動ローラ
243 中間転写ベルト
244 一次転写ローラ
244Y 一次転写ローラ(イエロー)
244C 一次転写ローラ(シアン)
244M 一次転写ローラ(マゼンタ)
244K 一次転写ローラ(ブラック)
245 二次対向ローラ
246 二次転写ローラ
250 定着器
251 定着ベルト
252 加圧ローラ
L レーザ
P 紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0306】
【特許文献1】特開2019-099809号公報
【特許文献2】特開2019-143128号公報
【特許文献3】特開2013-011644号公報
【特許文献4】特開2009-098194号公報
【特許文献5】特開2014-178528号公報
図1
図2
図3