(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127044
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】研磨ヘッドおよび研磨装置
(51)【国際特許分類】
B24B 21/00 20060101AFI20230906BHJP
B24B 21/08 20060101ALI20230906BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
B24B21/00 A
B24B21/08
H01L21/304 621B
H01L21/304 622K
H01L21/304 622R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030585
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】柏木 誠
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 真於
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA05
3C158AA12
3C158AA16
3C158AB04
3C158AB06
3C158BA07
3C158BC02
3C158CB03
3C158DA17
5F057AA16
5F057AA21
5F057AA31
5F057BA11
5F057CA11
5F057DA06
5F057DA39
5F057EB22
5F057EC30
5F057FA01
5F057GA01
5F057GB31
(57)【要約】
【課題】均一な力で研磨テープをウェーハなどの基板に押し付けることができる研磨ヘッドを提供する。
【解決手段】研磨ヘッド10は、研磨テープ2を基板Wに対して押し付ける押圧部材12と、押圧部材12を所定の押圧方向CLに移動させ、押圧部材12に押圧力を付与するアクチュエータ15と、押圧方向CLに対する押圧部材12の傾きを調整する傾き調整機構40を備える。傾き調整機構40は、押圧部材12を押圧方向CLに対して傾け、傾いた押圧部材12の角度を保持するように構成されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を研磨するための研磨ヘッドであって、
研磨テープを基板に対して押し付ける押圧部材と、
前記押圧部材を所定の押圧方向に移動させ、前記押圧部材に押圧力を付与するアクチュエータと、
前記押圧方向に対する前記押圧部材の傾きを調整する傾き調整機構を備え、
前記傾き調整機構は、前記押圧部材を前記押圧方向に対して傾け、前記傾いた押圧部材の角度を保持するように構成されている、研磨ヘッド。
【請求項2】
前記傾き調整機構は、前記研磨テープの進行方向に垂直な第1支軸を有しており、前記押圧部材を前記第1支軸を中心に傾けるように構成されている、請求項1に記載の研磨ヘッド。
【請求項3】
前記傾き調整機構は、
前記第1支軸を支持するベース部材と、
前記第1支軸に連結され、前記第1支軸を中心に傾くことが可能なチルト部材と、
前記チルト部材に設けられた複数のねじ穴にそれぞれ螺合された複数のねじを備え、
前記複数のねじは、前記ベース部材に接触している、請求項2に記載の研磨ヘッド。
【請求項4】
前記複数のねじは、前記第1支軸の両側に配置されている、請求項3に記載の研磨ヘッド。
【請求項5】
前記研磨ヘッドは、前記押圧部材を保持する押圧部材ホルダをさらに備えており、
前記傾き調整機構は、前記第1支軸に垂直な第2支軸をさらに備えており、前記押圧部材ホルダは、前記第2支軸を中心に傾き可能である、請求項3または4に記載の研磨ヘッド。
【請求項6】
基板を保持する基板保持部と、
前記基板を研磨するための、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の研磨ヘッドを備えている、研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハなどの基板に研磨テープを押し付けるための研磨ヘッドに関する。また、本発明はそのような研磨ヘッドで基板を研磨するための研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、メモリー回路、ロジック回路、イメージセンサ(例えばCMOSセンサー)などのデバイスは、より高集積化されつつある。これらのデバイスを形成する工程においては、微粒子や塵埃などの異物がデバイスに付着することがある。デバイスに付着した異物は、配線間の短絡や回路の不具合を引き起こしてしまう。したがって、デバイスの信頼性を向上させるために、デバイスが形成されたウェーハを洗浄して、ウェーハ上の異物を除去することが必要とされる。
【0003】
ウェーハの裏面(非デバイス面)にも、上述したような微粒子や粉塵などの異物が付着することがある。このような異物がウェーハの裏面に付着すると、ウェーハが露光装置のステージ基準面から離間することでウェーハ表面がステージ基準面に対して傾き、結果として、パターニングのずれや焦点距離のずれが生じることとなる。このような問題を防止するために、ウェーハの裏面に付着した異物を除去することが必要とされる。
【0004】
そこで、
図15および
図16に示すように、ウェーハの裏面を研磨テープで研磨する研磨装置が使用されている。
図15は、従来の研磨装置の上面図であり、
図16は
図15に示す従来の研磨装置の側面図である。研磨装置は、複数のローラー500によりウェーハWの周縁部を保持しながら、これらローラー500自身が回転することで、ウェーハWを回転させる。研磨テープ502は、ウェーハWの裏面側に配置されている。研磨テープ502は、矢印Zで示す方向に進行しながら、研磨テープ502には所定のテンションが与えられている。
【0005】
複数の押圧部材505はウェーハWの直径方向に配列されており、これらの押圧部材505で研磨テープ502をウェーハWの裏面に対して押し付けることにより、ウェーハWの裏面を研磨する。ウェーハWの裏面に押し付けられた研磨テープ502は、ウェーハWの裏面から異物を除去することができる。
【0006】
しかしながら、
図17に示すように、押圧部材505により研磨テープ502をウェーハWに押し付けると、ウェーハWが上方に撓んでしまう。ウェーハWは円弧状に撓むため、研磨テープ502は均一に押されず、ウェーハWの研磨レートが不均一となる。
【0007】
そこで、
図18に示すように、押圧部材505を傾動可能に支持するユニバーサルジョイント509を備えた研磨装置が開発されている。このユニバーサルジョイント509は、押圧部材505をウェーハWの撓みに追従させるができるので、押圧部材505は研磨テープ502をウェーハWに均一に押圧できると期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、
図19に示すように、矢印Zで示す方向に進行する研磨テープ502に起因して、押圧部材505が強制的に傾動させられ、押圧部材505がウェーハWの撓みに追従できないことがある。押圧部材505によりウェーハWの裏面に対して押し付けられた研磨テープ502が矢印Zで示す方向に進行する動作により、研磨テープ502とウェーハWとの間と、研磨テープ502と押圧部材505との間に摩擦が生じる。主に研磨テープ502と押圧部材505との間に生じる摩擦により、押圧部材505はユニバーサルジョイント509を支点として回転し、矢印Zで示す方向に傾いてしまう。結果として、押圧部材505は研磨テープ502をウェーハWに均一に押圧することができない。
【0010】
そこで、本発明は、均一な力で研磨テープをウェーハなどの基板に押し付けることができる研磨ヘッドを提供する。また、本発明は、そのような研磨ヘッドを備えた研磨装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様では、基板を研磨するための研磨ヘッドであって、研磨テープを基板に対して押し付ける押圧部材と、前記押圧部材を所定の押圧方向に移動させ、前記押圧部材に押圧力を付与するアクチュエータと、前記押圧方向に対する前記押圧部材の傾きを調整する傾き調整機構を備え、前記傾き調整機構は、前記押圧部材を前記押圧方向に対して傾け、前記傾いた押圧部材の角度を保持するように構成されている、研磨ヘッドが提供される。
【0012】
一態様では、前記傾き調整機構は、前記研磨テープの進行方向に垂直な第1支軸を有しており、前記押圧部材を前記第1支軸を中心に傾けるように構成されている。
一態様では、前記傾き調整機構は、前記第1支軸を支持するベース部材と、前記第1支軸に連結され、前記第1支軸を中心に傾くことが可能なチルト部材と、前記チルト部材に設けられた複数のねじ穴にそれぞれ螺合された複数のねじを備え、前記複数のねじは、前記ベース部材に接触している。
一態様では、前記複数のねじは、前記第1支軸の両側に配置されている。
一態様では、前記研磨ヘッドは、前記押圧部材を保持する押圧部材ホルダをさらに備えており、前記傾き調整機構は、前記第1支軸に垂直な第2支軸をさらに備えており、前記押圧部材ホルダは、前記第2支軸を中心に傾き可能である。
【0013】
一態様では、基板を保持する基板保持部と、前記基板を研磨するための上記研磨ヘッドを備えている、研磨装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
押圧部材は、傾き調整機構によって固定された角度で予め傾いているので、押圧部材は研磨テープを撓んだ基板に対して均一に押し付けることができる。結果として、研磨テープは、基板を均一に研磨することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】研磨具の一例である研磨テープを基板の一例であるウェーハの表面に押し付けてウェーハを研磨するための研磨ヘッドの一実施形態を示す斜視図である。
【
図3】押圧部材および押圧部材ホルダを、傾き調整機構から取り外した状態を示す模式図である。
【
図6】押圧部材ホルダおよび押圧部材を、傾き調整機構によって所定の角度に傾けた状態を示す断面図である。
【
図7】傾き調整機構によって押圧部材ホルダおよび押圧部材を、固定された角度で傾けた状態で、押圧部材により研磨テープをウェーハに対して押し付けている様子を示す断面図である。
【
図8】研磨ヘッドの他の実施形態を示す斜視図である。
【
図9】
図8に示す研磨ヘッドの押圧部材および押圧部材ホルダを、傾き調整機構から取り外した状態を示す模式図である。
【
図11】研磨装置の一実施形態を示す側面図である。
【
図13】研磨ヘッドの他の実施形態を示す斜視図である。
【
図14】
図13に示す押圧部材ホルダおよび押圧部材を、傾き調整機構によって固定された角度で傾けた状態で、押圧部材により研磨テープをウェーハのエッジ部に対して押し付けている様子を示す断面図である。
【
図17】押圧部材によりウェーハが上方に撓む様子を説明する模式図である。
【
図18】ユニバーサルジョイントを備えた従来の研磨装置の模式図である。
【
図19】研磨テープに起因して押圧部材が強制的に傾動させられる様子を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、研磨具の一例である研磨テープ2を基板の一例であるウェーハWの表面に押し付けてウェーハWを研磨するための研磨ヘッド10の一実施形態を示す斜視図であり、
図2は、
図1に示す研磨ヘッド10の断面図である。本実施形態の研磨ヘッド10は、ウェーハWおよび研磨テープ2の下方に配置されており、研磨テープ2をその裏側からウェーハWの裏面に対して押圧するように配置されている。
【0017】
研磨ヘッド10は、研磨テープ2をウェーハWに対して押し付けるための押圧部材12と、押圧部材12を矢印CLで示す所定の押圧方向に移動させ、押圧部材12に押圧力を付与するアクチュエータ15と、アクチュエータ15が内部に配置されたハウジング18を備えている。アクチュエータ15は、押圧部材12に連結された可動軸16と、可動軸16の端部とハウジング18との間に圧力室20を形成する隔壁膜(ダイヤフラム)25とを備えている。可動軸16および隔壁膜25は、ハウジング18内に配置されている。
【0018】
研磨ヘッド10は、押圧部材12を保持する押圧部材ホルダ30をさらに備えている。押圧部材ホルダ30は、可動軸16に連結されており、可動軸16と一体に移動可能である。押圧部材12の全体は、環状であり、押圧部材12は取り外し可能に押圧部材ホルダ30に保持されている。押圧部材ホルダ30は、押圧部材12が嵌合する嵌合溝(図示せず)を有している。環状の押圧部材12は、嵌合溝に嵌りながら弾性変形した状態で押圧部材ホルダ30に掛けられている。本実施形態の押圧部材12は、研磨テープ2をウェーハWに押し付けるための2つのテープ押圧面12A,12Bを有している。
【0019】
押圧部材12は、弾性材料から形成されている。押圧部材12を構成する材料の例としては、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンジエンゴムなどのゴムが挙げられる。押圧部材12の断面は、円形の形状を有している。押圧部材12は、Oリングであってもよい。本実施形態では、押圧部材ホルダ30は、その側面に突起部30b,30cを有している。押圧部材12は、弾性変形した状態で突起部30b,30cに支持されている。
【0020】
ただし、押圧部材12は、本実施形態に限られず、他の形状を有してもよく、あるいは他の材料から構成されてもよい。例えば、押圧部材12は、研磨テープ2をウェーハWに押し付けるための1つのテープ押圧面のみを有してもよい。他の例では、押圧部材12は、環状に代えて、直線状に延びるブレード、または湾曲状ブレードの形状であってもよい。
【0021】
図2に示すように、可動軸16は、その軸方向にハウジング18内で移動可能となっており、可動軸16は、押圧部材12を矢印CLに示す押圧方向に上昇させることができる。押圧部材12は研磨テープ2の裏側に対向している。可動軸16が押圧部材12を矢印CLに示す押圧方向に上昇させると、押圧部材12は、研磨テープ2の裏側に接触する。押圧部材12は研磨テープ2の研磨面をウェーハWの裏面に押し付けてウェーハWの裏面を研磨テープ2で研磨する。ウェーハWの研磨中、研磨テープ2の裏側は、押圧部材12によって支持される。研磨テープ2の裏側は、砥粒を有する研磨面とは反対側の面である。ウェーハWの研磨中、研磨テープ2はその長手方向に所定の速度で送られる。
図1の矢印Zは、研磨テープ2の進行方向を表している。
【0022】
本実施形態では、可動軸16はボールスプライン軸から構成されている。ハウジング18内にはボールスプラインナット32が配置されており、可動軸16はボールスプラインナット32により可動軸16の軸方向に移動可能に支持されている。一実施形態では、可動軸16は、ハウジング18の内面に移動可能に支持されてもよい。
【0023】
ハウジング18は、可動軸16が収容される空間が内部に形成されたハウジング本体18Aと、上記空間を塞ぐ蓋18Bとを備えている。蓋18Bはねじ(図示せず)によりハウジング本体18Aに着脱可能に固定されている。研磨テープ2をウェーハWに対して押圧するための押圧力を発生するアクチュエータ15は、可動軸16および隔壁膜25を含む。隔壁膜25は、可動軸16の端部(下端)に接触しており、隔壁膜25の縁は、ハウジング本体18Aと蓋18Bとの間に挟まれている。隔壁膜25は可動軸16に接触しているのみであり、可動軸16に固定されていない。
【0024】
隔壁膜25は、柔軟な材料から形成されている。隔壁膜25を構成する材料の例としては、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴムが挙げられる。圧力室20は、圧縮気体供給ライン(図示せず)に連通しており、圧縮気体供給ラインから圧縮気体(例えば圧縮空気)が圧力室20内に供給されるようになっている。
【0025】
研磨ヘッド10は、アクチュエータ15によって移動される押圧部材12の移動方向CLに対する押圧部材12の傾きを調整するように構成された傾き調整機構40をさらに備えている。押圧部材ホルダ30は、傾き調整機構40に連結されており、押圧部材12および押圧部材ホルダ30は、傾き調整機構40を介して可動軸16に連結されている。傾き調整機構40は、可動軸16と押圧部材ホルダ30との間に配置されており、かつ押圧部材ホルダ30の内部に収容されている。傾き調整機構40、押圧部材ホルダ30、および押圧部材12は、一体にアクチュエータ15によって移動される。傾き調整機構40は、押圧部材12をその移動方向CLに対して傾け、傾いた押圧部材12の角度を保持するように構成されている。
【0026】
ウェーハWを研磨するときは、圧縮空気などの圧縮気体は圧力室20内に供給される。圧力室20内の圧縮気体の圧力は、隔壁膜25を介して可動軸16の端部(下端)に作用し、可動軸16、傾き調整機構40、押圧部材ホルダ30、および押圧部材12を上昇させる。研磨ヘッド10は、可動軸16のハウジング18に対する相対的な移動距離を測定する距離センサをさらに備えてもよい。ウェーハWの研磨を終了させるときは、圧力室20は大気開放され、その結果、可動軸16の自重および研磨テープ2の張力により可動軸16および押圧部材12が下降する。
【0027】
押圧部材ホルダ30にはスカート38が固定されている。このスカート38は押圧部材ホルダ30から下方に延び、ハウジング18の上部を囲んでいる。本実施形態ではスカート38は円筒状であるが、ハウジング18の上部を囲むことができるのであれば、他の形状であってもよい。スカート38は、ウェーハWの研磨に使用される純水などの液体がハウジング18内に侵入することを防ぐことができる。
【0028】
図3は、押圧部材12および押圧部材ホルダ30を、傾き調整機構40から取り外した状態を示す模式図であり、
図4は、傾き調整機構40の分解斜視図であり、
図5は傾き調整機構40の水平断面図である。
図3および
図4に示すように、傾き調整機構40は、第1支軸41と、この第1支軸41を支持するベース部材45と、第1支軸41に連結され、第1支軸41を中心に傾くことが可能なチルト部材46と、チルト部材46に設けられた複数のねじ穴48にそれぞれ螺合された複数のねじ50を備えている。
【0029】
ベース部材45は、可動軸16の上端に固定されており、可動軸16と一体に移動可能である。第1支軸41は、チルト部材46に形成された通孔46aと、ベース部材45に形成された通孔45aに挿入される。第1支軸41の延びる方向は、押圧部材12の移動方向CLに対して垂直であり、かつ研磨テープ2の長手方向(すなわち研磨テープ2の進行方向)に対して垂直である。したがって、チルト部材46は、第1支軸41を中心に傾く(回転する)ことが可能である。押圧部材12および押圧部材ホルダ30はチルト部材46に連結されており、チルト部材46と一体に第1支軸41を中心に傾く(回転する)ことが可能である。言い換えれば、押圧部材12および押圧部材ホルダ30は、
図1に示す研磨テープ2の進行方向Z(すなわち研磨テープ2の長手方向)に沿って傾くことが可能である。
【0030】
複数のねじ50は、第1支軸41を中心に傾いたチルト部材46の角度、すなわち傾いた押圧部材12および押圧部材ホルダ30の角度を保持する機能を有する。複数のねじ50は、第1支軸41の両側に配置されており、第1支軸41に垂直な方向に沿って並んでいる。すなわち、これらのねじ50は、研磨テープ2の長手方向(
図1に示す研磨テープ2の進行方向Z)に沿って並んでいる。
【0031】
複数のねじ50は、チルト部材46に設けられた複数のねじ穴48にそれぞれ螺合されている。各ねじ穴48はチルト部材46を貫通して延びている。複数のねじ50は、チルト部材46から下方に突出し、複数のねじ50の先端はベース部材45に接触している。ベース部材45は、中心部位53と、その中心部位53の両側から突出する2つの突出部54を有する。中心部位53は、チルト部材46の中央に形成された中空空間55内に配置される。複数のねじ50の先端は、2つの突出部54にそれぞれ接触している。チルト部材46の第1支軸41を中心とした傾きの角度は、複数のねじ50のチルト部材46に対する相対的な位置によって変えることができる。さらに、複数のねじ50の先端をベース部材45に接触させることで、チルト部材46の第1支軸41を中心とした傾きの角度を保持(固定)することができる。
【0032】
傾き調整機構40は、第1支軸41に垂直な第2支軸60をさらに備えている。押圧部材ホルダ30は、第2支軸60を中心に傾き可能(回転可能)である。本実施形態では、第2支軸60は、チルト部材46の両側から突出しており、押圧部材ホルダ30に形成された窪み62(
図5参照)に係合されている。押圧部材ホルダ30の全体は第2支軸60に支持されている。この第2支軸60は、押圧部材ホルダ30上の押圧部材12の2つのテープ押圧面12A,12Bから研磨テープ2を介してウェーハWに与えられる押圧力を均等にするために設けられている。一実施形態では、第2支軸60は省略してもよい。
【0033】
図6は、傾き調整機構40によって押圧部材ホルダ30および押圧部材12を所定の角度に傾けた状態を示す断面図である。
図6から分かるように、研磨テープ2の進行方向Z(研磨テープ2の長手方向)において、複数のねじ50のチルト部材46に対する相対位置は互いに異なっており、これによりチルト部材46、押圧部材ホルダ30、および押圧部材12が押圧方向CLに対して傾くことができる。チルト部材46、押圧部材ホルダ30、および押圧部材12が傾く方向は、研磨テープ2の進行方向Z(研磨テープ2の長手方向)に沿った方向である。チルト部材46、押圧部材ホルダ30、および押圧部材12の傾き角度は、チルト部材46からベース部材45(より具体的には突出部54)に向かって突出する複数のねじ50の突出量の差によって定まる。すなわち、複数のねじ50のねじ穴48への螺合の具合の違いによってこれらねじ50の突出量に差が生じ、このねじ50の突出量の差が、チルト部材46、押圧部材ホルダ30、および押圧部材12の傾き角度を規定する。
【0034】
複数のねじ50とベース部材45との接触により、チルト部材46、押圧部材ホルダ30、および押圧部材12の傾き角度が保持(固定)される。チルト部材46、押圧部材ホルダ30、および押圧部材12の傾き角度は、先に研磨されたウェーハの研磨結果などに基づいて、予め決定される。より具体的には、チルト部材46、押圧部材ホルダ30、および押圧部材12の傾き角度は、押圧部材12で研磨テープ2をウェーハに均一に押し付けることができる(すなわち、研磨テープ2がウェーハを均一に研磨できる)角度である。
【0035】
図7は、押圧部材ホルダ30および押圧部材12を、傾き調整機構40によって固定された角度で傾けた状態で、押圧部材12により研磨テープ2をウェーハWに対して押し付けている様子を示す断面図である。
図7に示すように、押圧部材12により研磨テープ2をウェーハWに対して押し付けるとき、ウェーハWは押圧部材12の押圧力を受けて撓む。押圧部材12は、傾き調整機構40によって固定された角度で予め傾いているので、押圧部材12は研磨テープ2を撓んだウェーハWに対して均一に押し付けることができる。結果として、研磨テープ2は、ウェーハWを均一に研磨することができる。
【0036】
ウェーハWの研磨中は、
図7に示すように、研磨テープ2はテンションが与えられた状態で矢印Zで示す方向に送られている。研磨テープ2の進行に伴い、研磨テープ2とウェーハWとの間と、研磨テープ2と押圧部材12との間に摩擦が生じる。主に研磨テープ2と押圧部材12との間に生じる摩擦により押圧部材12を傾けるトルクが生じる。傾き調整機構40の複数のねじ50は、押圧部材12の傾きを固定することができるので、研磨テープ2と押圧部材12との間に生じる摩擦により発生するトルクが押圧部材12に加わっても、押圧部材12はその予め定められた傾き角度を維持することができる。
【0037】
図8は、研磨ヘッドの他の実施形態を示す斜視図であり、
図9は、
図8に示す研磨ヘッドの押圧部材12および押圧部材ホルダ30を、傾き調整機構40から取り外した状態を示す模式図であり、
図10は、傾き調整機構40の分解斜視図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、
図1乃至
図7を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0038】
この実施形態は、押圧部材12が1つのテープ押圧面12Aのみを有していること、および第2支軸60が設けられていない点で、
図1乃至
図7を参照して説明した実施形態と異なっている。したがって、チルト部材46、押圧部材12、および押圧部材ホルダ30は、第1支軸41と垂直な軸心(第2支軸60に相当)を中心に傾くことができない。
【0039】
図8乃至
図10を参照して説明した実施形態によれば、押圧部材12は、傾き調整機構40によって固定された角度で予め傾いているので、押圧部材12は研磨テープ2を撓んだウェーハWに対して均一に押し付けることができる。結果として、研磨テープ2は、ウェーハWを均一に研磨することができる。
【0040】
図11は、研磨装置の一実施形態を示す側面図であり、
図12は、
図11に示す研磨装置の上面図である。
図11および
図12に示す研磨装置は、ウェーハWを保持し、回転させる基板保持部70と、研磨テープ2A,2Bを、基板保持部70に保持されたウェーハWの第1の面5aに接触させてウェーハWの第1の面5aを研磨する複数の研磨ヘッド10A~10Dと、研磨テープ2Aを研磨ヘッド10A,10Bに供給し、研磨ヘッド10A,10Bから研磨テープ2Aを回収する研磨テープ供給機構72Aと、研磨テープ2Bを研磨ヘッド10C,10Dに供給し、研磨ヘッド10C,10Dから研磨テープ2Bを回収する研磨テープ供給機構72Bを備えている。
【0041】
研磨ヘッド10A,10Cは、
図1乃至
図7を参照して説明した研磨ヘッド10と同じ構成を有し、研磨ヘッド10B,10Dは、
図8乃至
図10を参照して説明した研磨ヘッド10と同じ構成を有している。研磨テープ2A,2Bは、同じ構成を有している。
【0042】
本実施形態では、ウェーハWの第1の面5aは、デバイスが形成されていない、またはデバイスが形成される予定がないウェーハWの裏面、すなわち非デバイス面である。第1の面5aとは反対側のウェーハWの第2の面5bは、デバイスが形成されている、またはデバイスが形成される予定である面、すなわちデバイス面である。本実施形態では、ウェーハWは、その第1の面5aが下向きの状態で、基板保持部70に水平に支持される。
【0043】
基板保持部70は、ウェーハWの周縁部に接触可能な複数のローラー75A,75B,75C,75Dと、ローラー75A~75Dを同じ速度で回転させるためのローラー回転装置(図示せず)を備えている。本実施形態では、4つのローラー75A~75Dが設けられているが、5つまたはそれよりも多いローラーが設けられてもよい。
【0044】
研磨ヘッド10A,10Bは、支持部材78Aに支持され、研磨ヘッド10C,10Dは、支持部材78Bに支持されている。複数の研磨ヘッド10A~10Dは、基板保持部70に保持されているウェーハWの下側に配置されている。これら研磨ヘッド10A~10Dは、ウェーハWの直径方向に配列されている。本実施形態では、4つの研磨ヘッド10A~10Dが設けられているが、研磨ヘッドの数は本実施形態に限られない。一実施形態では、単一の研磨ヘッドが設けられてもよい。
【0045】
研磨テープ供給機構72A,72Bは、同じ構成を有しているので、以下研磨テープ供給機構72Aについて説明する。研磨テープ供給機構72Aは、研磨テープ2Aの一端が接続されたテープ巻き出しリール81と、研磨テープ2Aの他端が接続されたテープ巻き取りリール82と、研磨テープ2Aの進行方向を案内する複数のガイドローラー83を備えている。テープ巻き出しリール81およびテープ巻き取りリール82は、リールモータ86,87にそれぞれ連結されている。
【0046】
テープ巻き取りリール82を矢印で示す方向に回転させることにより、研磨テープ2Aはテープ巻き出しリール81から研磨ヘッド10A,10Bを経由してテープ巻き取りリール82に送られる。研磨テープ2Aは、研磨テープ2Aの研磨面がウェーハWの第1の面5aを向くように研磨ヘッド10A,10Bの上方に供給される。リールモータ86は、所定のトルクをテープ巻き出しリール81に与えることにより、研磨テープ2Aにテンションをかけることができる。リールモータ87は、研磨テープ2Aを一定速度で送るように制御される。研磨テープ2Aを送る速度は、テープ巻き取りリール82の回転速度を変化させることによって変更できる。
【0047】
一実施形態では、研磨装置は、テープ巻き出しリール81、テープ巻き取りリール82、およびリールモータ86,87とは別に、研磨テープ2Aをその長手方向に送るテープ送り装置を備えてもよい。さらに他の実施形態では、テープ巻き出しリール81とテープ巻き取りリール82の位置は、逆に配置されてもよい。
【0048】
ウェーハWは次のようにして研磨される。複数のローラー75A~75DでウェーハWの周縁部を保持しながら、これらローラー75A~75Dを回転させることで、ウェーハWを回転させる。研磨テープ供給機構72A,72Bにより研磨テープ2A,2Bを研磨ヘッド10A~10Dに送りながら、研磨ヘッド10A~10Dの押圧部材12は、上述した傾き調整機構40により予め所定の角度に傾けられた状態で、研磨テープ2A,2BをウェーハWの第1の面5aに押し付けてウェーハWの第1の面5aを研磨する。
【0049】
上述した傾き調整機構40の実施形態は、ウェーハの裏面を研磨する研磨ヘッドに適用されているが、傾き調整機構40は他の構成を有する研磨ヘッドにも適用可能である。例えば、
図13に示すように、傾き調整機構40は、ウェーハのエッジ部を研磨するための研磨ヘッド10に適用することができる。
図13に示す研磨ヘッド10は、ウェーハWのエッジ部に沿って湾曲する押圧部材12を有している。押圧部材12により研磨テープ2をウェーハWのエッジ部に押し付けながら、研磨ヘッド10は、矢印Xで示すように、ウェーハWの半径方向外側に向かって移動する。研磨ヘッド10の方向Xへの移動は、図示しない研磨ヘッド移動機構によって達成される。
【0050】
図14は、
図13に示す押圧部材ホルダ30および押圧部材12を、傾き調整機構40によって固定された角度で傾けた状態で、押圧部材12により研磨テープ2をウェーハWのエッジ部に対して押し付けている様子を示す断面図である。傾き調整機構40の構成は、
図3乃至
図7を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0051】
図14に示すように、押圧部材12により研磨テープ2をウェーハWのエッジ部に対して押し付けるとき、ウェーハWは押圧部材12の押圧力を受けて撓む。押圧部材12は、傾き調整機構40によって固定された角度で予め傾いているので、押圧部材12は研磨テープ2を撓んだウェーハWのエッジ部に対して均一に押し付けることができる。さらに、傾き調整機構40は、
図13に示す軸線Rを中心に矢印で示すように押圧部材12が自由に傾動することを許容する。結果として、研磨テープ2は、ウェーハWのエッジ部を均一に研磨することができる。
【0052】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0053】
W ウェーハ
2 研磨テープ
2A,2B 研磨テープ
5a 第1の面
5b 第2の面
10,10A~10D 研磨ヘッド
12 押圧部材
12A,12B テープ押圧面
15 アクチュエータ
16 可動軸
18 ハウジング
18A ハウジング本体
18B 蓋
20 圧力室
25 隔壁膜
30 押圧部材ホルダ
30b,30c 突起部
32 ボールスプラインナット
38 スカート
40 傾き調整機構
41 第1支軸
45 ベース部材
45a 通孔
46 チルト部材
46a 通孔
48 ねじ穴
50 ねじ
53 中心部位
54 突出部
55 中空空間
60 第2支軸
62 窪み
70 基板保持部
72A,72B 研磨テープ供給機構
78A,78B 支持部材
81 テープ巻き出しリール
82 テープ巻き取りリール
83 ガイドローラー
86,87 リールモータ