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▶ 株式会社荏原製作所の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127050
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】研磨ヘッドおよび研磨装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 21/08 20060101AFI20230906BHJP
   B24B 21/00 20060101ALI20230906BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
B24B21/08
B24B21/00 A
H01L21/304 621B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030594
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】柏木 誠
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 真於
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA05
3C158AA12
3C158AA16
3C158AB04
3C158AB06
3C158BA07
3C158BC02
3C158CB03
3C158DA17
5F057AA16
5F057AA21
5F057AA31
5F057BA11
5F057CA11
5F057CA21
5F057DA06
5F057DA39
5F057EB22
5F057EC24
5F057EC30
5F057FA01
5F057GA27
5F057GB31
(57)【要約】
【課題】押圧部材で研磨テープをウェーハなどの基板に対して均一に押し付けることができる研磨ヘッドを提供する。
【解決手段】基板Wを研磨するための研磨ヘッド10は、研磨テープ2を基板Wに対して押し付ける押圧部材12と、押圧部材12を保持する押圧部材ホルダ30と、押圧部材ホルダ30に連結され、押圧部材12に押圧力を付与するアクチュエータ15を備える。押圧部材12は、両端12aを有する棒形状であり、押圧部材12は、押圧部材ホルダ30の押圧面30aに形成されている溝50に嵌合している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を研磨するための研磨ヘッドであって、
研磨テープを基板に対して押し付ける押圧部材と、
前記押圧部材を保持する押圧部材ホルダと、
前記押圧部材ホルダに連結され、前記押圧部材に押圧力を付与するアクチュエータを備え、
前記押圧部材は、両端を有する棒形状であり、
前記押圧部材は、前記押圧部材ホルダの押圧面に形成されている溝に嵌合している、研磨ヘッド。
【請求項2】
前記溝の両側壁は、互いに平行である、請求項1に記載の研磨ヘッド。
【請求項3】
前記溝は、前記押圧部材の幅よりも小さい第1幅を有する第1部分と、前記第1幅よりも大きい第2幅を有する第2部分を有し、前記押圧部材は前記第1部分に挟まれている、請求項1または2に記載の研磨ヘッド。
【請求項4】
前記第1部分は、前記押圧部材の少なくとも一方側に配置されたスペーサを含む、請求項3に記載の研磨ヘッド。
【請求項5】
前記スペーサは、前記押圧部材ホルダに着脱可能な板材である、請求項4に記載の研磨ヘッド。
【請求項6】
前記押圧部材ホルダは、前記溝の内側に向かって突出する突出部を有しており、前記スペーサは前記突出部から構成されている、請求項4に記載の研磨ヘッド。
【請求項7】
前記押圧部材の両端に配置された押圧部材ストッパをさらに備えている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の研磨ヘッド。
【請求項8】
基板を保持する基板保持部と、
前記基板を研磨するための、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の研磨ヘッドを備えている、研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハなどの基板に研磨テープを押し付けるための研磨ヘッドに関する。また、本発明はそのような研磨ヘッドで基板を研磨するための研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、メモリー回路、ロジック回路、イメージセンサ(例えばCMOSセンサー)などのデバイスは、より高集積化されつつある。これらのデバイスを形成する工程においては、微粒子や塵埃などの異物がデバイスに付着することがある。デバイスに付着した異物は、配線間の短絡や回路の不具合を引き起こしてしまう。したがって、デバイスの信頼性を向上させるために、デバイスが形成されたウェーハを洗浄して、ウェーハ上の異物を除去することが必要とされる。
【0003】
ウェーハの裏面(非デバイス面)にも、上述したような微粒子や粉塵などの異物が付着することがある。このような異物がウェーハの裏面に付着すると、ウェーハが露光装置のステージ基準面から離間することでウェーハ表面がステージ基準面に対して傾き、結果として、パターニングのずれや焦点距離のずれが生じることとなる。このような問題を防止するために、ウェーハの裏面に付着した異物を除去することが必要とされる。
【0004】
そこで、図21に示すように、ウェーハの裏面を研磨テープで研磨する研磨装置が使用されている。図21は、従来の研磨装置の上面図であり、図22図21に示す従来の研磨装置の側面図である。研磨装置は、複数のローラー500によりウェーハWの周縁部を保持しながら、これらローラー500自身が回転することで、ウェーハWを回転させる。研磨テープ502は、ウェーハWの裏面側に配置されている。研磨テープ502は、矢印Zで示す方向に進行する。
【0005】
複数の研磨ヘッド505はウェーハWの直径方向に配列されており、これらの研磨ヘッド505で研磨テープ502をウェーハWの裏面に対して押し付けることにより、ウェーハWの裏面を研磨する。ウェーハWの裏面に押し付けられた研磨テープ502は、ウェーハWの裏面から異物を除去することができる。
【0006】
図23は、研磨ヘッド505の斜視図である。図23に示すように、研磨ヘッド505は、研磨テープ502をウェーハWの裏面に押し付ける押圧リング512を有している。押圧リング512は、シリコーンゴムなどの弾性材料から構成されている。押圧リング512は、テンションが加えられた状態で押圧リングホルダ513に嵌め込まれている。押圧リング512は、研磨テープ502をウェーハWに向かって押し上げ、研磨テープ502は、押圧リング512からの押圧力を受けてウェーハWを研磨することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-122895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、押圧リング512は、弾性を有しているために、押圧リング512を引き伸ばして押圧リングホルダ513に掛けるとき、図24の点線で示すように、やや変形する。この押圧リング512の変形のため、目標の有効研磨範囲PR1に比べて、実際の有効研磨範囲PR2が小さくなってしまう。結果として、研磨テープ502はウェーハWの目標領域を均一に研磨できないことがあった。
【0009】
そこで、本発明は、押圧部材で研磨テープをウェーハなどの基板に対して均一に押し付けることができる研磨ヘッドを提供する。また、本発明は、そのような研磨ヘッドを備えた研磨装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様では、基板を研磨するための研磨ヘッドであって、研磨テープを基板に対して押し付ける押圧部材と、前記押圧部材を保持する押圧部材ホルダと、前記押圧部材ホルダに連結され、前記押圧部材に押圧力を付与するアクチュエータを備え、前記押圧部材は、両端を有する棒形状であり、前記押圧部材は、前記押圧部材ホルダの押圧面に形成されている溝に嵌合している、研磨ヘッドが提供される。
【0011】
一態様では、前記溝の両側壁は、互いに平行である。
一態様では、前記溝は、前記押圧部材の幅よりも小さい第1幅を有する第1部分と、前記第1幅よりも大きい第2幅を有する第2部分を有し、前記押圧部材は前記第1部分に挟まれている。
一態様では、前記第1部分は、前記押圧部材の少なくとも一方側に配置されたスペーサを含む。
一態様では、前記スペーサは、前記押圧部材ホルダに着脱可能な板材である。
一態様では、前記押圧部材ホルダは、前記溝の内側に向かって突出する突出部を有しており、前記スペーサは前記突出部から構成されている。
一態様では、前記研磨ヘッドは、前記押圧部材の両端に配置された押圧部材ストッパをさらに備えている。
【0012】
一態様では、基板を保持する基板保持部と、上記研磨ヘッドを備えている、研磨装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、押圧部材は両端を有する棒形状であるので、押圧部材を押圧部材ホルダに取り付けるときに、押圧部材にはその長手方向にテンションが発生しない。したがって、押圧部材は実質的に変形せず、目標の有効研磨範囲を研磨することを可能とし、研磨テープを基板に対して均一に押し付けることができる。
【0014】
また、押圧部材は溝の第1部分に挟まれているので、幅の狭い第1部分に保持された押圧部材の部位は、幅の広い第2部分に保持された押圧部材の部位に比べて、研磨テープを基板に押し付けたときに変形しにくい。結果として、研磨テープは、第1部分に保持された押圧部材の部位からの押付力を受けて、高い研磨レートで基板を研磨することができる。さらに、第1部分の位置および長さにより、研磨レートの分布を調整することが可能となり、結果として、均一な研磨プロファイルを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】研磨具の一例である研磨テープを基板の一例であるウェーハの表面に押し付けてウェーハを研磨するための研磨ヘッドの一実施形態を示す斜視図である。
図2図1に示す研磨ヘッドの断面図である。
図3】押圧部材および押圧部材ストッパを押圧部材ホルダから取り外した状態を示す図である。
図4】溝の一実施形態を示す上面図である。
図5図4のA-A線断面図である。
図6図4のB-B線断面図である。
図7】溝に嵌め込まれた押圧部材の一実施形態を示す上面図である。
図8図7のC-C線断面図である。
図9図7のD-D線断面図である。
図10図10(a)は、溝の第1部分がない研磨ヘッドを用いた場合の研磨プロファイルの一例を示す図であり、図10(b)は、溝の第1部分がある図7の研磨ヘッドを用いた場合の研磨プロファイルの一例を示す図である。
図11】スペーサが押圧部材の一方側にのみ配置された研磨ヘッドの一実施形態を示す上面図である。
図12】溝の第1部分と第2部分の他の実施形態を示す図である。
図13】溝の第1部分と第2部分のさらに他の実施形態を示す図である。
図14】2つの溝および2つの押圧部材を備えた研磨ヘッドの一実施形態を示す上面図である。
図15】溝の他の実施形態を示す上面図である。
図16図15のE-E線断面図である。
図17図15のF-F線断面図である。
図18】研磨装置の一実施形態を示す側面図である。
図19図18に示す研磨装置の上面図である。
図20】湾曲した溝および押圧部材を備えた研磨ヘッドの一実施形態を示す上面図である。
図21】従来の研磨装置の上面図である。
図22図21に示す従来の研磨装置の側面図である。
図23】従来の研磨ヘッドの斜視図である。
図24】押圧リングが変形する様子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、研磨具の一例である研磨テープ2を基板の一例であるウェーハWの表面に押し付けてウェーハWを研磨するための研磨ヘッド10の一実施形態を示す斜視図であり、図2は、図1に示す研磨ヘッド10の断面図である。本実施形態の研磨ヘッド10は、ウェーハWおよび研磨テープ2の下方に配置されており、研磨テープ2をその裏側からウェーハWの裏面に対して押圧するように配置されている。
【0017】
研磨ヘッド10は、研磨テープ2をウェーハWに対して押し付けるための押圧部材としての押圧部材12と、押圧部材12を矢印CLで示す所定の押圧方向に移動させ、押圧部材12に押圧力を付与するアクチュエータ15と、アクチュエータ15が内部に配置されたハウジング18を備えている。アクチュエータ15は、押圧部材12に連結された可動軸16と、可動軸16の端部とハウジング18との間に圧力室20を形成する隔壁膜(ダイヤフラム)25とを備えている。可動軸16および隔壁膜25は、ハウジング18内に配置されている。
【0018】
研磨ヘッド10は、押圧部材12を保持する押圧部材ホルダ30をさらに備えている。押圧部材ホルダ30は、可動軸16に連結されており、可動軸16と一体に移動可能である。押圧部材ホルダ30は、その押圧面30aに溝50を有しており、押圧部材12は溝50に嵌め込まれている。押圧部材ホルダ30は、押圧面30aの両側から外側に向かって下方に傾斜する傾斜面30b,30cを有する。
【0019】
図2に示すように、可動軸16は、その軸方向にハウジング18内で移動可能となっており、可動軸16は、押圧部材12を矢印CLに示す押圧方向に上昇させることができる。押圧部材12は研磨テープ2の裏側に対向している。可動軸16が押圧部材12を矢印CLに示す押圧方向に上昇させると、押圧部材12は、研磨テープ2の裏側に接触する。押圧部材12は研磨テープ2の研磨面をウェーハWの裏面に押し付けてウェーハWの裏面を研磨テープ2で研磨する。ウェーハWの研磨中、研磨テープ2の裏側は、押圧部材12によって支持される。研磨テープ2の裏側は、砥粒を有する研磨面とは反対側の面である。ウェーハWの研磨中、研磨テープ2はその長手方向に所定の速度で送られる。
【0020】
本実施形態では、可動軸16はボールスプライン軸から構成されている。ハウジング18内にはボールスプラインナット32が配置されており、可動軸16はボールスプラインナット32により可動軸16の軸方向に移動可能に支持されている。一実施形態では、可動軸16は、ハウジング18の内面に移動可能に支持されてもよい。
【0021】
ハウジング18は、可動軸16が収容される空間が内部に形成されたハウジング本体18Aと、上記空間を塞ぐ蓋18Bとを備えている。蓋18Bはねじ(図示せず)によりハウジング本体18Aに着脱可能に固定されている。研磨テープ2をウェーハWに対して押圧するための押圧力を発生するアクチュエータ15は、可動軸16および隔壁膜25を含む。隔壁膜25は、可動軸16の端部(下端)に接触しており、隔壁膜25の縁は、ハウジング本体18Aと蓋18Bとの間に挟まれている。隔壁膜25は可動軸16に接触しているのみであり、可動軸16に固定されていない。
【0022】
隔壁膜25は、柔軟な材料から形成されている。隔壁膜25を構成する材料の例としては、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴムが挙げられる。圧力室20は、圧縮気体供給ライン(図示せず)に連通しており、圧縮気体供給ラインから圧縮気体(例えば圧縮空気)が圧力室20内に供給されるようになっている。
【0023】
ウェーハWを研磨するときは、圧縮空気などの圧縮気体は圧力室20内に供給される。圧力室20内の圧縮気体の圧力は、隔壁膜25を介して可動軸16の端部(下端)に作用し、可動軸16、押圧部材ホルダ30、および押圧部材12を上昇させる。研磨ヘッド10は、可動軸16のハウジング18に対する相対的な移動距離を測定する距離センサをさらに備えてもよい。ウェーハWの研磨を終了させるときは、圧力室20は大気開放され、その結果、可動軸16の自重および研磨テープ2の張力により可動軸16および押圧部材12が下降する。
【0024】
押圧部材ホルダ30にはスカート38が固定されている。このスカート38は押圧部材ホルダ30から下方に延び、ハウジング18の上部を囲んでいる。本実施形態ではスカート38は円筒状であるが、ハウジング18の上部を囲むことができるのであれば、他の形状であってもよい。スカート38は、ウェーハWの研磨に使用される純水などの液体がハウジング18内に侵入することを防ぐことができる。
【0025】
図1に示すように、押圧部材12は、両端12aを有する棒形状を有しており、押圧部材12は取り外し可能に押圧部材ホルダ30に保持されている。本実施形態では、押圧部材12は、研磨テープ2の進行方向Zに対して斜めにかつ直線状に延びている。
【0026】
押圧部材12は、弾性材料から形成されている。押圧部材12を構成する材料の例としては、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンジエンゴムなどのゴムが挙げられる。押圧部材12の断面は、円形の形状を有している。ただし、押圧部材12は、本実施形態に限られず、他の形状を有してもよく、あるいは他の材料から構成されてもよい。例えば、研磨テープ2をウェーハWに押し付けるための複数の押圧部材12が設けられてもよい。他の例では、押圧部材12は、直線状に延びる形状に代えて、湾曲した形状であってもよい。
【0027】
本実施形態の研磨ヘッド10は、押圧部材12の両端に配置された2つの押圧部材ストッパ45を備えている。これら押圧部材ストッパ45は、押圧部材ホルダ30にねじ46により取り外し可能に固定されている。押圧部材ストッパ45は、樹脂または金属などの硬質の材料から構成されている。押圧部材ストッパ45は、押圧部材12の長手方向における押圧部材12の位置決めをする機能を有する。
【0028】
図1に示すように、ウェーハWの研磨中は、研磨テープ2は矢印Zで示すように、研磨テープ2の長手方向に所定の速度で送られる。本実施形態の押圧部材12は、研磨テープ2の長手方向(進行方向Z)に対して斜めに延びている。ウェーハWを研磨するときは、押圧部材12は研磨テープ2をその裏側からウェーハWに対して押し付ける。
【0029】
図3は、押圧部材12および押圧部材ストッパ45を押圧部材ホルダ30から取り外した状態を示す図である。押圧部材ホルダ30の押圧面(本実施形態では上面)30aは、押圧部材12が嵌合する溝50を有している。溝50は、押圧部材12と同じ長さか、あるいは押圧部材12よりも長い。本実施形態では、溝50の長さは、押圧部材12の長さと同じである。本明細書において、「同じ」とは完全に同じであることのみならず、技術常識の範囲内で実質的に同じであることを含む。
【0030】
押圧部材12は、溝50に嵌合されることで押圧部材ホルダ30に取り付けられる。押圧部材12は、接着剤などで押圧部材ホルダ30に固定されていなく、図3に示すように、押圧部材ホルダ30から取り外し可能である。
【0031】
本実施形態によれば、押圧部材12はその両端12aを有する棒形状を有しているので、押圧部材12を押圧部材ホルダ30に取り付けるときに、押圧部材12にはその長手方向にテンションが発生しない。したがって、押圧部材12は実質的に変形せず、研磨テープ2をウェーハWに対して均一に押し付けることができる。
【0032】
図4は溝50の一実施形態を示す上面図であり、図5図4のA-A線断面図であり、図6図4のB-B線断面図である。溝50は、押圧部材ホルダ30の押圧面30aに形成されており、押圧部材ホルダ30の一側面から他側面まで延びている。図5および図6に示すように、溝50は、押圧部材ホルダ30の押圧面30aに形成された2つの側壁51と、これら側壁51の間に位置する底面52から構成されており、両側壁51は平坦であり、互いに平行である。本実施形態の溝50の断面は、矩形状である。溝50の両側壁51が互いに平行であれば、溝50の底面52は平坦でなくてもよい。
【0033】
溝50は、押圧部材12の幅よりも小さい第1幅D1を有する第1部分50Aと、第1幅D1よりも大きい第2幅D2を有する第2部分50Bを有する。第1部分50Aは、押圧部材12の中央に位置し、第2部分50Bは押圧部材12の両端に位置している。第1部分50Aは、2つの第2部分50Bの間に位置している。
【0034】
図5に示すように、第1部分50Aは、押圧部材12の両側に配置されたスペーサ55を含む。第1部分50Aを構成する両側壁51は、スペーサ55から構成されている。本実施形態のスペーサ55は、押圧部材ホルダ30に着脱可能に取り付けられた板材(例えばシム)から構成されている。これらスペーサ55は、溝50の第1部分50Aを構成し、押圧部材12の両側に接触している。スペーサ55の位置、厚さ、長さは変更可能である。したがって、溝50の第1部分50Aの位置、幅、長さも変更可能である。スペーサ55は、樹脂または金属などから構成されている。
【0035】
図6に示すように、第2部分50Bを構成する両側壁51は、押圧部材ホルダ30の表面から構成されている。溝50の第2部分50Bの幅D2は、図5に示す溝50の第1部分50Aの幅D1よりも大きい。
【0036】
図7は溝50に嵌め込まれた押圧部材12の一実施形態を示す上面図であり、図8図7のC-C線断面図であり、図9図7のD-D線断面図である。溝50の第1部分50Aの幅D1は、溝50に嵌め込まれる前の押圧部材12の幅よりも小さい。したがって、弾性材料から構成される押圧部材12は、溝50の第1部分50Aに挟まれ、第1部分50Aによって保持される。一方、溝50の第2部分50Bの幅D2は、溝50に嵌め込まれる前の押圧部材12の幅よりわずかに大きい。したがって、押圧部材12は第2部分50Bには保持されない。ただし、第2部分50Bの幅D2が第1部分50Aの幅D1よりも大きければ、第2部分50Bの幅D2は押圧部材12の幅と同じか、または押圧部材12の幅よりも小さくてもよい。
【0037】
押圧部材12は溝50の第1部分50Aに挟まれているので、幅の狭い第1部分50Aに保持された押圧部材12の部位は、幅の広い第2部分50Bに保持された押圧部材12の部位に比べて、研磨テープ2をウェーハWに押し付けたときに変形しにくい。結果として、研磨テープ2は、第1部分50Aに保持された押圧部材12の部位からの押付力を受けて、高い研磨レートでウェーハWを研磨することができる。さらに、第1部分50Aの位置および長さにより、研磨レートの分布を調整することが可能となり、結果として、均一な研磨プロファイルを達成することができる。
【0038】
図10(a)は、溝50の第1部分50Aがない研磨ヘッド10を用いた場合の研磨プロファイルの一例を示す図であり、図10(b)は、溝50の第1部分50Aがある図7の研磨ヘッド10を用いた場合の研磨プロファイルの一例を示す図である。図10(a)に示すように、押圧部材12の中央に対応する領域の研磨レートは、押圧部材12の両端に対応する領域の研磨レートよりも低い。これに対し、図10(b)に示す研磨プロファイルでは、押圧部材12の全長に亘って研磨レートはほぼ均一である。このように、幅の狭い第1部分50Aを構成するスペーサ55を研磨レートが低い領域に配置することで、均一な研磨レートを達成することができる。
【0039】
図4乃至図9を参照して説明した実施形態では、スペーサ55は押圧部材12の両側に配置されているが、一実施形態では、図11に示すように、スペーサ55は、押圧部材12の一方側にのみ配置されてもよい。この場合でも、溝50の第1部分50Aの幅は、押圧部材12の幅よりも小さく、かつ溝50の第2部分50Bの幅よりも小さい。押圧部材12は溝50の第1部分50Aに挟まれるので、幅の狭い第1部分50Aに保持された押圧部材12の部位は、幅の広い第2部分50Bに保持された押圧部材12の部位に比べて、研磨テープ2をウェーハWに押し付けたときに変形しにくい。
【0040】
図12および図13は、溝50の第1部分50Aと第2部分50Bの他の実施形態を示す図である。図12に示す実施形態では、溝50の第2部分50Bは押圧部材12の中央に位置し、溝50の2つの第1部分50Aは押圧部材12の両端に位置している。第1部分50Aを構成するスペーサ55は押圧部材12の両端に接触している。図13に示す実施形態では、溝50の第1部分50Aおよび第2部分50Bは、押圧部材12の両端に位置している。すなわち、溝50の第1部分50Aを構成するスペーサ55は、押圧部材12の一端に接触し、溝50の第2部分50Bは押圧部材12の他端に位置している。
【0041】
図14に示すように、研磨ヘッド10は、2つの溝50、およびこれら溝50にそれぞれ嵌め込まれた2つの押圧部材12を備えてもよい。各溝50および各押圧部材12の構成は、図4乃至図9を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図11乃至図13を参照して説明した変形例は、図14に示す本実施形態にも適用可能である。
【0042】
図15は溝50の他の実施形態を示す上面図であり、図16図15のE-E線断面図であり、図17図15のF-F線断面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、図4乃至図9を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。この実施形態では、溝50の第1部分50Aを構成するスペーサ55は、溝50の内側に向かって突出する、押圧部材ホルダ30の突出部から構成されている。第1部分50Aの幅D1と、押圧部材12の幅と、第2部分50Bの幅D2との関係は、図4乃至図9を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図11乃至図13を参照して説明した変形例は、図15乃至図17に示す本実施形態にも適用可能である。
【0043】
図18は、研磨装置の一実施形態を示す側面図であり、図19は、図18に示す研磨装置の上面図である。図18および図19に示す研磨装置は、ウェーハWを保持し、回転させる基板保持部70と、研磨テープ2A,2Bを、基板保持部70に保持されたウェーハWの第1の面5aに接触させてウェーハWの第1の面5aを研磨する複数の研磨ヘッド10A~10Dと、研磨テープ2Aを研磨ヘッド10A,10Bに供給し、研磨ヘッド10A,10Bから研磨テープ2を回収する研磨テープ供給機構72Aと、研磨テープ2Bを研磨ヘッド10C,10Dに供給し、研磨ヘッド10C,10Dから研磨テープ2Bを回収する研磨テープ供給機構72Bを備えている。
【0044】
研磨ヘッド10A,10Cは、図14を参照して説明した研磨ヘッド10と同じ構成を有し、研磨ヘッド10B,10Dは、図7を参照して説明した研磨ヘッド10と同じ構成を有している。研磨テープ2A,2Bは、同じ構成を有している。
【0045】
本実施形態では、ウェーハWの第1の面5aは、デバイスが形成されていない、またはデバイスが形成される予定がないウェーハWの裏面、すなわち非デバイス面である。第1の面5aとは反対側のウェーハWの第2の面5bは、デバイスが形成されている、またはデバイスが形成される予定である面、すなわちデバイス面である。本実施形態では、ウェーハWは、その第1の面5aが下向きの状態で、基板保持部70に水平に支持される。
【0046】
基板保持部70は、ウェーハWの周縁部に接触可能な複数のローラー75A,75B,75C,75Dと、ローラー75A~75Dを同じ速度で回転させるためのローラー回転装置(図示せず)を備えている。本実施形態では、4つのローラー75A~75Dが設けられているが、5つまたはそれよりも多いローラーが設けられてもよい。
【0047】
研磨ヘッド10A,10Bは、支持部材78Aに支持され、研磨ヘッド10C,10Dは、支持部材78Bに支持されている。複数の研磨ヘッド10A~10Dは、基板保持部70に保持されているウェーハWの下側に配置されている。これら研磨ヘッド10A~10Dは、ウェーハWの直径方向に配列されている。本実施形態では、4つの研磨ヘッド10A~10Dが設けられているが、研磨ヘッドの数は本実施形態に限られない。一実施形態では、単一の研磨ヘッドが設けられてもよい。
【0048】
研磨テープ供給機構72A,72Bは、同じ構成を有しているので、以下研磨テープ供給機構72Aについて説明する。研磨テープ供給機構72Aは、研磨テープ2Aの一端が接続されたテープ巻き出しリール81と、研磨テープ2Aの他端が接続されたテープ巻き取りリール82と、研磨テープ2Aの進行方向を案内する複数のガイドローラー83を備えている。テープ巻き出しリール81およびテープ巻き取りリール82は、リールモータ86,87にそれぞれ連結されている。
【0049】
テープ巻き取りリール82を矢印で示す方向に回転させることにより、研磨テープ2Aはテープ巻き出しリール81から研磨ヘッド10A,10Bを経由してテープ巻き取りリール82に送られる。研磨テープ2Aは、研磨テープ2Aの研磨面3aがウェーハWの第1の面5aを向くように研磨ヘッド10A,10Bの上方に供給される。リールモータ86は、所定のトルクをテープ巻き出しリール81に与えることにより、研磨テープ2Aにテンションをかけることができる。リールモータ87は、研磨テープ2Aを一定速度で送るように制御される。研磨テープ2Aを送る速度は、テープ巻き取りリール82の回転速度を変化させることによって変更できる。
【0050】
一実施形態では、研磨装置は、テープ巻き出しリール81、テープ巻き取りリール82、およびリールモータ86,87とは別に、研磨テープ2Aをその長手方向に送るテープ送り装置を備えてもよい。さらに他の実施形態では、テープ巻き出しリール81とテープ巻き取りリール82の位置は、逆に配置されてもよい。
【0051】
ウェーハWは次のようにして研磨される。複数のローラー75A~75DでウェーハWの周縁部を保持しながら、これらローラー75A~75Dを回転させることで、ウェーハWを回転させる。研磨テープ供給機構72A,72Bにより研磨テープ2A,2Bを研磨ヘッド10A~10Dに送りながら、研磨ヘッド10A~10Dの押圧部材12は、研磨テープ2A,2BをウェーハWの第1の面5aに押し付けてウェーハWの第1の面5aを研磨する。
【0052】
上述した押圧部材12および溝50の実施形態は、ウェーハの裏面を研磨する研磨ヘッドに適用されているが、上述した押圧部材12および溝50の実施形態はウェーハのエッジ部を研磨するための研磨ヘッドにも適用可能である。例えば、図20に示すように、押圧部材12および溝50は、ウェーハWのエッジ部に沿って湾曲してもよい。押圧部材12により研磨テープ2をウェーハWのエッジ部に押し付けながら、研磨ヘッド10は、矢印Xで示すように、ウェーハWの半径方向外側に向かって移動する。研磨ヘッド10の方向Xへの移動は、図示しない研磨ヘッド移動機構によって達成される。
【0053】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0054】
W ウェーハ
2,2A,2B 研磨テープ
5a 第1の面
5b 第2の面
10,10A~10D 研磨ヘッド
12 押圧部材
15 アクチュエータ
16 可動軸
18 ハウジング
18A ハウジング本体
18B 蓋
20 圧力室
25 隔壁膜
30 押圧部材ホルダ
30a 押圧面
30b,30c 傾斜面
32 ボールスプラインナット
38 スカート
45 押圧部材ストッパ
46 ねじ
50 溝
50A 第1部分
50B 第2部分
51 側壁
52 底面
55 スペーサ
70 基板保持部
72A,72B 研磨テープ供給機構
78A,78B 支持部材
81 テープ巻き出しリール
82 テープ巻き取りリール
83 ガイドローラー
86,87 リールモータ
D1 第1幅
D2 第2幅
図1
図2
図3
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図5
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