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特開2023-127083ターゲット供給システム、極端紫外光生成装置、及び電子デバイスの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127083
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】ターゲット供給システム、極端紫外光生成装置、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030642
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105212
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 延寿
(72)【発明者】
【氏名】大上 望
(72)【発明者】
【氏名】白石 裕
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197AA09
2H197CA10
2H197DC03
2H197GA01
2H197GA05
2H197GA24
2H197HA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ターゲット形成不良の発生を抑制するターゲット供給システム。
【解決手段】ターゲット供給システムは、固体ターゲット物質を内部で溶融させて液体ターゲット物質を生成し、液体ターゲット物質を吐出するターゲット生成部と、ターゲット生成部に固体ターゲット物質を投入する投入機構と、ターゲット生成部に配置されたヒーターと、ターゲット生成部の温度を検出するセンサと、プロセッサであって、固体ターゲット物質がターゲット生成部に投入される投入タイミングを制御し、センサで検出された現在温度に基づいてヒーターをフィードバック制御し、ヒーターをフィードバック制御しながら、投入タイミングに基づいてヒーターをフィードフォワード制御する、プロセッサと、を備える。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体ターゲット物質を内部で溶融させて液体ターゲット物質を生成し、前記液体ターゲット物質を吐出するターゲット生成部と、
前記ターゲット生成部に前記固体ターゲット物質を投入する投入機構と、
前記ターゲット生成部に配置されたヒーターと、
前記ターゲット生成部の温度を検出するセンサと、
プロセッサであって、
前記固体ターゲット物質が前記ターゲット生成部に投入される投入タイミングを制御し、
前記センサで検出された現在温度に基づいて前記ヒーターをフィードバック制御し、
前記ヒーターをフィードバック制御しながら、前記投入タイミングに基づいて前記ヒーターをフィードフォワード制御する、
前記プロセッサと、
を備える、ターゲット供給システム。
【請求項2】
請求項1に記載のターゲット供給システムであって、
前記プロセッサは、前記ターゲット生成部の温度の低下が0.1℃未満となるように、前記ヒーターをフィードフォワード制御する、
ターゲット供給システム。
【請求項3】
請求項1に記載のターゲット供給システムであって、
前記プロセッサは、前記ヒーターのフィードバック制御の制御周期に合わせて前記ヒーターをフィードフォワード制御する、
ターゲット供給システム。
【請求項4】
請求項1に記載のターゲット供給システムであって、
前記プロセッサは、
前記ターゲット生成部の温度の第1の目標値を読み込み、
前記第1の目標値に、フィードフォワード要素を含む補正値を加算して第2の目標値を算出し、
前記第2の目標値と、前記現在温度と、に基づいて前記ヒーターをフィードバック制御する、
ターゲット供給システム。
【請求項5】
請求項4に記載のターゲット供給システムであって、
前記プロセッサは、
前記ターゲット生成部に投入される前記固体ターゲット物質の投入量を制御し、
前記投入量に基づいて前記補正値を算出する、
ターゲット供給システム。
【請求項6】
請求項4に記載のターゲット供給システムであって、
前記プロセッサは、前記ヒーターをフィードバック制御しながら前記補正値を0に近づける、
ターゲット供給システム。
【請求項7】
請求項6に記載のターゲット供給システムであって、
前記プロセッサは、前記補正値が実質的に0になった状態で前記固体ターゲット物質が前記ターゲット生成部に投入されるように、前記投入タイミングを制御する、
ターゲット供給システム。
【請求項8】
請求項1に記載のターゲット供給システムであって、
前記ターゲット生成部は、前記固体ターゲット物質を内部で溶融させて前記液体ターゲット物質を生成する第1の領域と、前記第1の領域で生成された前記液体ターゲット物質を吐出するノズルを含む第2の領域と、を含み、
前記ヒーターは、前記第1の領域に配置された第1のヒーターと、前記第2の領域に配置された第2のヒーターと、を含み、
前記プロセッサは、
前記第1及び第2のヒーターの少なくとも1つをフィードバック制御しながらフィードフォワード制御する、
ターゲット供給システム。
【請求項9】
請求項8に記載のターゲット供給システムであって、
前記プロセッサは、
前記第1のヒーターをフィードバック制御し、
前記第2のヒーターをフィードバック制御しながらフィードフォワード制御する、
ターゲット供給システム。
【請求項10】
請求項9に記載のターゲット供給システムであって、
前記第1の領域と前記第2の領域との間にフィルターが配置された、
ターゲット供給システム。
【請求項11】
請求項8に記載のターゲット供給システムであって、
前記プロセッサは、
前記第1及び第2のヒーターの少なくとも1つは、フィードバック制御しながらフィードフォワード制御するか否かを選択可能である、
ターゲット供給システム。
【請求項12】
請求項8に記載のターゲット供給システムであって、
前記プロセッサは、
前記第1のヒーターをフィードバック制御しながら第1の設定値を用いてフィードフォワード制御し、
前記第2のヒーターをフィードバック制御しながら前記第1の設定値と異なる第2の設定値を用いてフィードフォワード制御する、
ターゲット供給システム。
【請求項13】
請求項8に記載のターゲット供給システムであって、
前記第1の領域は第1のタンクを含み、
前記第2の領域は前記第1のタンクと前記ノズルとの間の第2のタンクをさらに含み、
前記ヒーターは、前記第2の領域に配置された第3のヒーターをさらに含み、
前記第2のヒーターは前記第2のタンクに配置され、前記第3のヒーターは前記ノズルに配置された、
ターゲット供給システム。
【請求項14】
請求項1に記載のターゲット供給システムであって、
前記プロセッサは、
前記ターゲット生成部の目標温度を読み込み、
前記目標温度と、前記現在温度と、に基づくフィードバック制御演算により前記ヒーターの第1の電流値を算出し、
前記第1の電流値に、フィードフォワード要素を含む補正値を加算して第2の電流値を算出し、
前記第2の電流値に従って前記ヒーターを制御する
ターゲット供給システム。
【請求項15】
請求項14に記載のターゲット供給システムであって、
前記プロセッサは、
前記ターゲット生成部に投入される前記固体ターゲット物質の投入量を制御し、
前記投入量に基づいて前記補正値を算出する、
ターゲット供給システム。
【請求項16】
請求項14に記載のターゲット供給システムであって、
前記プロセッサは、前記第2の電流値に従って前記ヒーターを制御しながら前記補正値を0に近づける、
ターゲット供給システム。
【請求項17】
請求項16に記載のターゲット供給システムであって、
前記プロセッサは、前記補正値が実質的に0になった状態で前記固体ターゲット物質が前記ターゲット生成部に投入されるように、前記投入タイミングを制御する、
ターゲット供給システム。
【請求項18】
請求項1に記載のターゲット供給システムと、
前記ターゲット供給システムから吐出されて所定領域に到達した前記液体ターゲット物質にパルスレーザ光を照射するレーザ装置と、
前記所定領域に生成されたプラズマから放出される極端紫外光を集光するEUV集光ミラーと、
を備える極端紫外光生成装置。
【請求項19】
電子デバイスの製造方法であって、
固体ターゲット物質を内部で溶融させて液体ターゲット物質を生成し、前記液体ターゲット物質を吐出するターゲット生成部と、
前記ターゲット生成部に前記固体ターゲット物質を投入する投入機構と、
前記ターゲット生成部に配置されたヒーターと、
前記ターゲット生成部の温度を検出するセンサと、
プロセッサであって、
前記固体ターゲット物質が前記ターゲット生成部に投入される投入タイミングを制御し、
前記センサで検出された現在温度に基づいて前記ヒーターをフィードバック制御し、
前記ヒーターをフィードバック制御しながら、前記投入タイミングに基づいて前記ヒーターをフィードフォワード制御する、
前記プロセッサと、
を備えるターゲット供給システムと、
前記ターゲット供給システムから吐出されて所定領域に到達した前記液体ターゲット物質にパルスレーザ光を照射するレーザ装置と、
前記所定領域に生成されたプラズマから放出される極端紫外光を集光するEUV集光ミラーと、
を備える極端紫外光生成装置によって極端紫外光を生成し、
極端紫外光を露光装置に出力し、
電子デバイスを製造するために、前記露光装置内で感光基板上に極端紫外光を露光する
ことを含む、電子デバイスの製造方法。
【請求項20】
電子デバイスの製造方法であって、
固体ターゲット物質を内部で溶融させて液体ターゲット物質を生成し、前記液体ターゲット物質を吐出するターゲット生成部と、
前記ターゲット生成部に前記固体ターゲット物質を投入する投入機構と、
前記ターゲット生成部に配置されたヒーターと、
前記ターゲット生成部の温度を検出するセンサと、
プロセッサであって、
前記固体ターゲット物質が前記ターゲット生成部に投入される投入タイミングを制御し、
前記センサで検出された現在温度に基づいて前記ヒーターをフィードバック制御し、
前記ヒーターをフィードバック制御しながら、前記投入タイミングに基づいて前記ヒーターをフィードフォワード制御する、
前記プロセッサと、
を備えるターゲット供給システムと、
前記ターゲット供給システムから吐出されて所定領域に到達した前記液体ターゲット物質にパルスレーザ光を照射するレーザ装置と、
前記所定領域に生成されたプラズマから放出される極端紫外光を集光するEUV集光ミラーと、
を備える極端紫外光生成装置によって生成した極端紫外光をマスクに照射してマスクの欠陥を検査し、
前記検査の結果を用いてマスクを選定し、
前記選定したマスクに形成されたパターンを感光基板上に露光転写する
ことを含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ターゲット供給システム、極端紫外光生成装置、及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、10nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、波長約13nmの極端紫外(EUV)光を生成するEUV光生成装置と縮小投影反射光学系(reduced projection reflection optics)とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲット物質にパルスレーザ光を照射することによって生成されるプラズマが用いられるLPP(Laser Produced Plasma)式の装置の開発が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-123405号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2013/0206863号明細書
【特許文献3】特開2009-015545号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2006/0133967号明細書
【概要】
【0005】
本開示の1つの観点に係るターゲット供給システムは、固体ターゲット物質を内部で溶融させて液体ターゲット物質を生成し、液体ターゲット物質を吐出するターゲット生成部と、ターゲット生成部に固体ターゲット物質を投入する投入機構と、ターゲット生成部に配置されたヒーターと、ターゲット生成部の温度を検出するセンサと、プロセッサであって、固体ターゲット物質がターゲット生成部に投入される投入タイミングを制御し、センサで検出された現在温度に基づいてヒーターをフィードバック制御し、ヒーターをフィードバック制御しながら、投入タイミングに基づいてヒーターをフィードフォワード制御する、プロセッサと、を備える。
【0006】
本開示の1つの観点に係る電子デバイスの製造方法は、固体ターゲット物質を内部で溶融させて液体ターゲット物質を生成し、液体ターゲット物質を吐出するターゲット生成部と、ターゲット生成部に固体ターゲット物質を投入する投入機構と、ターゲット生成部に配置されたヒーターと、ターゲット生成部の温度を検出するセンサと、プロセッサであって、固体ターゲット物質がターゲット生成部に投入される投入タイミングを制御し、センサで検出された現在温度に基づいてヒーターをフィードバック制御し、ヒーターをフィードバック制御しながら、投入タイミングに基づいてヒーターをフィードフォワード制御する、プロセッサと、を備えるターゲット供給システムと、ターゲット供給システムから吐出されて所定領域に到達した液体ターゲット物質にパルスレーザ光を照射するレーザ装置と、所定領域に生成されたプラズマから放出される極端紫外光を集光するEUV集光ミラーと、を備える極端紫外光生成装置によって極端紫外光を生成し、極端紫外光を露光装置に出力し、電子デバイスを製造するために、露光装置内で感光基板上に極端紫外光を露光することを含む。
【0007】
本開示の1つの観点に係る電子デバイスの製造方法は、固体ターゲット物質を内部で溶融させて液体ターゲット物質を生成し、液体ターゲット物質を吐出するターゲット生成部と、ターゲット生成部に固体ターゲット物質を投入する投入機構と、ターゲット生成部に配置されたヒーターと、ターゲット生成部の温度を検出するセンサと、プロセッサであって、固体ターゲット物質がターゲット生成部に投入される投入タイミングを制御し、センサで検出された現在温度に基づいてヒーターをフィードバック制御し、ヒーターをフィードバック制御しながら、投入タイミングに基づいてヒーターをフィードフォワード制御する、プロセッサと、を備えるターゲット供給システムと、ターゲット供給システムから吐出されて所定領域に到達した液体ターゲット物質にパルスレーザ光を照射するレーザ装置と、所定領域に生成されたプラズマから放出される極端紫外光を集光するEUV集光ミラーと、を備える極端紫外光生成装置によって生成した極端紫外光をマスクに照射してマスクの欠陥を検査し、検査の結果を用いてマスクを選定し、選定したマスクに形成されたパターンを感光基板上に露光転写することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
図1図1は、LPP式のEUV光生成システムの構成を概略的に示す。
図2図2は、比較例に係るターゲット供給システムの構成を概略的に示す。
図3図3は、ロードロック室及び固体ターゲット供給バルブの構成を示し、それらの動作を図4との組み合わせで示す。
図4図4は、ロードロック室及び固体ターゲット供給バルブの構成を示し、それらの動作を図3との組み合わせで示す。
図5図5は、比較例におけるEUV光生成プロセッサのフローチャートである。
図6図6は、比較例における投入制御プロセッサのフローチャートである。
図7図7は、比較例における温度制御プロセッサによる大タンクの温度制御のフローチャートである。
図8図8は、比較例における温度制御プロセッサによる小タンクの温度制御のフローチャートである。
図9図9は、比較例における温度制御プロセッサによるノズルの温度制御のフローチャートである。
図10図10は、比較例における温度制御のブロック図である。
図11図11は、比較例における小タンクの内部の液体ターゲット物質の温度変化をシミュレーションした結果を示す。
図12図12は、第1の実施形態における投入制御プロセッサのフローチャートである。
図13図13は、第1の実施形態における温度制御プロセッサによる小タンクの温度制御のフローチャートである。
図14図14は、第1の実施形態における温度制御のブロック図である。
図15図15は、第1の実施形態における小タンクの内部の液体ターゲット物質の温度変化をシミュレーションした結果を示す。
図16図16は、第2の実施形態における投入制御プロセッサのフローチャートである。
図17図17は、第2の実施形態における温度制御プロセッサによる大タンクの温度制御のフローチャートである。
図18図18は、第2の実施形態における温度制御プロセッサによるノズルの温度制御のフローチャートである。
図19図19は、第2の実施形態における温度制御のブロック図である。
図20図20は、第3の実施形態における温度制御プロセッサによるノズルの温度制御のフローチャートである。
図21図21は、第3の実施形態における温度制御のブロック図である。
図22図22は、第3の実施形態における小タンクの内部の液体ターゲット物質の温度変化をシミュレーションした結果を示す。
図23図23は、第4の実施形態における温度制御プロセッサによる小タンクの温度制御のフローチャートである。
図24図24は、第4の実施形態における温度制御のブロック図である。
図25図25は、第4の実施形態における小タンクの内部の液体ターゲット物質の温度変化をシミュレーションした結果を示す。
図26図26は、第5の実施形態における小タンクの内部の液体ターゲット物質の温度変化をシミュレーションした結果を示す。
図27図27は、EUV光生成システムに接続された露光装置の構成を概略的に示す。
図28図28は、EUV光生成システムに接続された検査装置の構成を概略的に示す。
【実施形態】
【0009】
<内容>
1.EUV光生成システム11の全体説明
1.1 構成
1.2 動作
2.比較例
2.1 構成
2.1.1 リザーバタンクC1
2.1.2 ロードロック室C2
2.1.3 ターゲット生成部260
2.1.4 ロードロック室C2及び固体ターゲット供給バルブVT2の詳細
2.2 動作
2.2.1 EUV光生成プロセッサ5の動作
2.2.2 固体ターゲット物質27aの投入制御
2.2.3 大タンク7ltの温度制御
2.2.4 小タンク7stの温度制御
2.2.5 ノズル7nzの温度制御
2.2.6 ブロック図
2.3 比較例の課題
3.フィードフォワード制御による温度低下の抑制
3.1 動作
3.1.1 固体ターゲット物質27aの投入制御
3.1.2 大タンク7ltの温度制御
3.1.3 小タンク7stの温度制御
3.1.4 ノズル7nzの温度制御
3.1.5 ブロック図
3.2 シミュレーション結果
3.3 作用
4.フィードフォワード制御を選択可能とした例
4.1 動作
4.1.1 固体ターゲット物質27aの投入制御
4.1.2 大タンク7ltの温度制御
4.1.3 小タンク7stの温度制御
4.1.4 ノズル7nzの温度制御
4.1.5 ブロック図
4.2 作用
5.小タンク7st及びノズル7nzの温度をフィードフォワード制御する例
5.1 動作
5.1.1 固体ターゲット物質27aの投入制御
5.1.2 大タンク7ltの温度制御
5.1.3 小タンク7stの温度制御
5.1.4 ノズル7nzの温度制御
5.1.5 ブロック図
5.2 シミュレーション結果
5.3 作用
6.電流の補正値fcst(t)を用いてフィードフォワード制御を行う例
6.1 動作
6.1.1 固体ターゲット物質27aの投入制御
6.1.2 大タンク7ltの温度制御
6.1.3 小タンク7stの温度制御
6.1.4 ノズル7nzの温度制御
6.1.5 ブロック図
6.2 シミュレーション結果
6.3 作用
7.電流の補正値fcst(t)の波形を矩形波とした例
8.その他
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
1.EUV光生成システム11の全体説明
1.1 構成
図1に、LPP式のEUV光生成システム11の構成を概略的に示す。EUV光生成装置1は、レーザ装置3とともに用いられる。本開示においては、EUV光生成装置1及びレーザ装置3を含むシステムを、EUV光生成システム11と称する。EUV光生成装置1は、チャンバ2及びターゲット供給システム26を含む。チャンバ2は、密閉可能な容器である。ターゲット供給システム26は、ターゲット物質を含むターゲット27をチャンバ2内部に供給する。ターゲット物質の材料は、スズ、テルビウム、ガドリニウム、リチウム、キセノン、又は、それらの内のいずれか2つ以上の組合せを含んでもよい。
【0012】
チャンバ2の壁には、貫通孔が備えられている。その貫通孔は、ウインドウ21によって塞がれ、ウインドウ21をレーザ装置3から出力されるパルスレーザ光32が透過する。チャンバ2の内部には、回転楕円面形状の反射面を備えたEUV集光ミラー23が配置される。EUV集光ミラー23は、第1及び第2の焦点を備える。EUV集光ミラー23の表面には、モリブデンとシリコンとが交互に積層された多層反射膜が形成される。EUV集光ミラー23は、その第1の焦点がプラズマ生成領域25に位置し、その第2の焦点が中間集光点292に位置するように配置される。EUV集光ミラー23の中央部には貫通孔24が備えられ、貫通孔24をパルスレーザ光33が通過する。
【0013】
EUV光生成装置1は、EUV光生成プロセッサ5、ターゲットセンサ4等を含む。EUV光生成プロセッサ5は、制御プログラムが記憶されたメモリ501と、制御プログラムを実行するCPU(central processing unit)502と、を含む処理装置である。EUV光生成プロセッサ5は本開示に含まれる各種処理を実行するために特別に構成又はプログラムされている。ターゲットセンサ4は、ターゲット27の存在、軌跡、位置、速度の内の少なくとも1つを検出する。ターゲットセンサ4は、撮像機能を備えてもよい。
【0014】
また、EUV光生成装置1は、チャンバ2の内部とEUV光利用装置6の内部とを連通させる接続部29を含む。EUV光利用装置6の例については、図27及び図28を参照しながら後述する。接続部29内部には、アパーチャが形成された壁291が備えられる。壁291は、そのアパーチャがEUV集光ミラー23の第2の焦点に位置するように配置される。
【0015】
さらに、EUV光生成装置1は、レーザ光伝送装置34、レーザ光集光ミラー22、ターゲット27を回収するためのターゲット回収部28等を含む。レーザ光伝送装置34は、パルスレーザ光32の伝送状態を規定するための光学素子と、この光学素子の位置、姿勢等を調整するためのアクチュエータとを備える。
【0016】
1.2 動作
図1を参照して、EUV光生成システム11の動作を説明する。レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光31は、レーザ光伝送装置34を経て、パルスレーザ光32としてウインドウ21を透過してチャンバ2内に入射する。パルスレーザ光32は、レーザ光経路に沿ってチャンバ2内を進み、レーザ光集光ミラー22で反射されて、パルスレーザ光33としてターゲット27に照射される。
【0017】
ターゲット供給システム26は、ターゲット27をチャンバ2内部のプラズマ生成領域25に向けて出力する。ターゲット27には、パルスレーザ光33が照射される。パルスレーザ光33が照射されたターゲット27はプラズマ化し、そのプラズマから放射光251が放射される。放射光251に含まれるEUV光は、EUV集光ミラー23によって他の波長域の光に比べて高い反射率で反射される。EUV集光ミラー23によって反射されたEUV光を含む反射光252は、中間集光点292で集光され、EUV光利用装置6に出力される。なお、1つのターゲット27に、パルスレーザ光33に含まれる複数のパルスが照射されてもよい。
【0018】
EUV光生成プロセッサ5は、EUV光生成システム11全体を制御する。EUV光生成プロセッサ5は、ターゲットセンサ4の検出結果を処理する。ターゲットセンサ4の検出結果に基づいて、EUV光生成プロセッサ5は、ターゲット27が出力されるタイミング、ターゲット27の出力方向等を制御する。さらに、EUV光生成プロセッサ5は、レーザ装置3の発振タイミング、パルスレーザ光32の進行方向、パルスレーザ光33の集光位置等を制御する。上述の様々な制御は単なる例示に過ぎず、必要に応じて他の制御が追加されてもよい。
【0019】
2.比較例
2.1 構成
図2は、比較例に係るターゲット供給システム26の構成を概略的に示す。本開示の比較例とは、出願人のみによって知られていると出願人が認識している形態であって、出願人が自認している公知例ではない。図2に示されるように、比較例に係るターゲット供給システム26は、リザーバタンクC1と、ロードロック室C2と、ターゲット生成部260と、ターゲット供給プロセッサ60と、計量器61と、圧力調節器62と、温度制御プロセッサ63と、投入制御プロセッサ64と、を含む。
【0020】
ターゲット供給プロセッサ60は、制御プログラムが記憶されたメモリ601と、制御プログラムを実行するCPU602と、を含む処理装置である。ターゲット供給プロセッサ60は本開示に含まれる各種処理を実行するために特別に構成又はプログラムされている。ターゲット供給プロセッサ60は、圧力調節器62及び温度制御プロセッサ63に制御信号を送信する。
【0021】
2.1.1 リザーバタンクC1
リザーバタンクC1は、スズなどの固体ターゲット物質27aを収容する容器である。固体ターゲット物質27aは、例えば、互いにほぼ同じ大きさの球形の粒であってもよい。あるいは、球形以外の形状の粒であってもよい。リザーバタンクC1の内部の温度はターゲット物質の融点より低い温度である。リザーバタンクC1の内部のガス圧は、大気圧と同程度である。
【0022】
計量器61はリザーバタンクC1の重力方向における下端部に配置されている。リザーバタンクC1は、計量器61を介して固体ターゲット供給管41に接続され、固体ターゲット供給管41はロードロック室C2に接続されている。固体ターゲット供給管41には固体ターゲット供給バルブVT1が配置されている。
【0023】
計量器61は、通常時は固体ターゲット物質27aの固体ターゲット供給管41への供給を止めている。
計量器61は、リザーバタンクC1から供給される固体ターゲット物質27aを計量しながらロードロック室C2へ向けて通過させることができる。固体ターゲット物質27aの計量は、固体ターゲット物質27aの粒の数を数えることを含む。計量された固体ターゲット物質27aは重力によって移動し、固体ターゲット供給管41及び固体ターゲット供給バルブVT1を通過してロードロック室C2に移動する。計量器61は、予め決められた量の固体ターゲット物質27aを通過させたら、固体ターゲット物質27aの通過を止める。
【0024】
2.1.2 ロードロック室C2
ロードロック室C2は、リザーバタンクC1から供給される固体ターゲット物質27aを収容可能に構成された容器である。ロードロック室C2の内部の温度はターゲット物質の融点より低い温度である。
【0025】
ロードロック室C2は、固体ターゲット供給管42に接続され、固体ターゲット供給管42はターゲット生成部260に接続されている。固体ターゲット供給管42には固体ターゲット供給バルブVT2が配置されている。ロードロック室C2及び固体ターゲット供給バルブVT2の構成については図3及び図4を参照しながら後述する。
【0026】
固体ターゲット供給バルブVT1及びVT2は、通常時には閉められており、一方が閉められている状態でのみ他方が開けられる。すなわち、リザーバタンクC1から計量器61を介してロードロック室C2に固体ターゲット物質27aを移動させるときは、固体ターゲット供給バルブVT2が閉められた状態で固体ターゲット供給バルブVT1が一時的に開けられる。また、ロードロック室C2からターゲット生成部260に固体ターゲット物質27aを投入するときは、固体ターゲット供給バルブVT1が閉められた状態で固体ターゲット供給バルブVT2が一時的に開けられる。これにより、ターゲット生成部260の内部のガスがリザーバタンクC1に向けて流れることが抑制される。
【0027】
投入制御プロセッサ64は、制御プログラムが記憶されたメモリ641と、制御プログラムを実行するCPU642と、を含む処理装置である。投入制御プロセッサ64は本開示におけるプロセッサを構成する。投入制御プロセッサ64は本開示に含まれる各種処理を実行するために特別に構成又はプログラムされている。投入制御プロセッサ64は、計量器61、固体ターゲット供給バルブVT1及びVT2、及びロードロック室C2の内部に設けられた後述の調整機構66を制御する。計量器61、固体ターゲット供給バルブVT1及びVT2、及び調整機構66は、本開示における投入機構を構成する。
【0028】
2.1.3 ターゲット生成部260
ターゲット生成部260は、ロードロック室C2から固体ターゲット供給管42を介して投入された固体ターゲット物質27aを内部で溶融させて液体ターゲット物質27bを生成し、液体ターゲット物質27bをターゲット27として吐出する装置である。
【0029】
ターゲット生成部260は、大タンク7lt、小タンク7st、及びノズル7nzを含む。大タンク7ltは、固体ターゲット物質27aを内部で溶融させて液体ターゲット物質27bを生成する。小タンク7stは、大タンク7ltで生成された液体ターゲット物質27bをノズル7nzに向けて通過させる。ノズル7nzは、大タンク7ltで生成された液体ターゲット物質27bを吐出する。大タンク7ltと小タンク7stとの間にはフィルターFが配置されている。フィルターFは多数の微細な貫通孔を有する板であり、大タンク7ltの内部に混入した固形物が小タンク7stに流れ込むことを抑制する。大タンク7ltは本開示における第1のタンクに相当し、小タンク7stは本開示における第2のタンクに相当する。但し、大タンク7ltは小タンク7stより大きくなくてもよい。
【0030】
本開示において、ターゲット生成部260のうちの大タンク7ltを含む領域を第1の領域といい、ターゲット生成部260のうちのノズル7nzを含む領域を第2の領域ということがある。
第1の領域と第2の領域との境界はフィルターFの位置で規定されてもよく、その場合には小タンク7stが第2の領域に含まれることとなるが、本開示はこれに限定されない。
【0031】
大タンク7lt、小タンク7st、及びノズル7nzには、それぞれヒーター8lt、8st、及び8nzが配置されている。ヒーター8lt、8st、及び8nzは、それぞれ電源82lt、82st、及び82nzに接続されており、ターゲット生成部260の内部をターゲット物質の融点より高い所定温度にまで加熱する。ヒーター8lt、8st、及び8nzにそれぞれ配置されたセンサ80lt、80st、及び80nzの出力に基づいて電源82lt、82st、及び82nzが制御されることにより、ターゲット生成部260の内部の温度が制御される。センサ80ltはヒーター8ltに配置されており、大タンク7lt又はその内部の液体ターゲット物質27bには接していない。しかし、大タンク7ltの温度、及びその内部の液体ターゲット物質27bの温度は、ヒーター8ltの温度とほぼ同じとみなせるほどこれらの熱伝導率が高く、センサ80ltによって計測可能であってもよい。センサ80st及び80nzはそれぞれヒーター8st及び8nzに配置されており、小タンク7st、ノズル7nz、又はそれらの内部の液体ターゲット物質27bには接していない。しかし、小タンク7st及びノズル7nzの熱伝導率も同様であり、それぞれの温度はセンサ80st及び80nzによって計測可能であってもよい。また、センサ80lt、80st、及び80nzはそれぞれ大タンク7lt、小タンク7st、及びノズル7nzに直接取り付けられてもよい。
【0032】
本開示において、ヒーター8lt、8st、及び8nzのうちの第1の領域に配置された1つのヒーターを、第1のヒーターといい、ヒーター8lt、8st、及び8nzのうちの第2の領域に配置された1つのヒーターを、第2のヒーターという。例えば、ヒーター8ltが第1のヒーターに相当し、ヒーター8st及び8nzのいずれかが第2のヒーターに相当する。あるいは、ヒーター8lt及び8stのいずれかが第1のヒーターに相当し、ヒーター8nzが第2のヒーターに相当する。あるいは、ヒーター8ltが第1のヒーターに相当し、ヒーター8stが第2のヒーターに相当し、ヒーター8nzが第3のヒーターに相当する。
【0033】
大タンク7ltは、ガス配管を介して圧力調節器62に接続されている。圧力調節器62はガスボンベG1に接続されている。ガスボンベG1は、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの高圧の希ガスを加圧ガスとして収容している。圧力調節器62は、ガスボンベG1から供給されたガス圧を調節して大タンク7ltに供給する。大タンク7ltの内部のガス圧は、ガスボンベG1から供給されたガス圧より低く、大気圧より高いガス圧となる。
【0034】
小タンク7stは、大タンク7ltとノズル7nzとの間に位置する。
ノズル7nzは、ターゲット生成部260の重力方向における下端部に配置されている。ノズル7nzの先端は、チャンバ2(図1参照)の内部に開口している。ターゲット生成部260の内部の液体ターゲット物質27bは、圧力調節器62から供給されるガス圧とチャンバ2の内部のガス圧との差によって、ノズル7nzの先端の開口から吐出される。図示しないピエゾ素子によってノズル7nzに振動を与えると、ノズル7nzから吐出されたジェット状の液体ターゲット物質27bが液滴状に分離され、ターゲット27となる。
【0035】
温度制御プロセッサ63は、制御プログラムが記憶されたメモリ631と、制御プログラムを実行するCPU632と、を含む処理装置である。温度制御プロセッサ63は本開示におけるプロセッサを構成する。温度制御プロセッサ63は本開示に含まれる各種処理を実行するために特別に構成又はプログラムされている。温度制御プロセッサ63は、センサ80lt、80st、及び80nzによって検出されたターゲット生成部260の温度に基づいてヒーター8lt、8st、及び8nzの電流値を決定し、電源82lt、82st、及び82nzを制御する。
【0036】
2.1.4 ロードロック室C2及び固体ターゲット供給バルブVT2の詳細
図3及び図4の各々は、ロードロック室C2及び固体ターゲット供給バルブVT2の構成を示し、それらの動作を図3及び図4の組み合わせで示す。
ロードロック室C2に含まれる調整機構66は、受け板66aと、アクチュエータ66bと、を含む。受け板66aは、ロードロック室C2の重力方向における下端付近に位置する。アクチュエータ66bは、受け板66aを移動させることにより、図3に示される第1の状態と、図4に示される第2の状態とに、調整機構66を切り替えられるように構成されている。
【0037】
第1の状態において、受け板66aは、ロードロック室C2から固体ターゲット供給管42への接続部分を塞ぐように配置される。これにより、固体ターゲット物質27aが固体ターゲット供給バルブVT2に向けて移動することが抑制される。
第2の状態において、受け板66aは、ロードロック室C2から固体ターゲット供給管42への接続部分から離れた位置に配置される。これにより、固体ターゲット物質27aが固体ターゲット供給バルブVT2に向けて移動することが許容される。
調整機構66は、通常は第1の状態とされ、固体ターゲット物質27aを固体ターゲット供給バルブVT2に向けて移動させるときに、一時的に第2の状態とされる。
【0038】
固体ターゲット供給バルブVT2は、例えば、ボール部V2aとボディ部V2bとを含むボールバルブで構成される。ボール部V2aがボディ部V2bの内部で矢印Rの向きに回転することにより、図3に示される閉状態と、図4に示される開状態とに切り替えられる。閉状態ではターゲット生成部260からロードロック室C2へのガスの流れが抑制され、開状態ではロードロック室C2からターゲット生成部260への固体ターゲット物質27aの投入が許容される。
【0039】
2.2 動作
2.2.1 EUV光生成プロセッサ5の動作
図5は、比較例におけるEUV光生成プロセッサ5のフローチャートである。EUV光生成プロセッサ5が以下のようにしてEUV光生成システム11を動作させることにより、EUV光が生成される。
【0040】
S1において、EUV光生成プロセッサ5はEUV光生成システム11を起動させる。EUV光生成システム11の起動は、EUV光生成システム11に含まれる各種電源の起動、各種プロセッサの起動、各種装置内のガスパージ及び真空引き等を含む。
【0041】
S2において、EUV光生成プロセッサ5は投入制御プロセッサ64に固体ターゲット物質27aの投入制御を開始させる。固体ターゲット物質27aの投入制御は、S2で開始された後、例えばEUV光生成が終了するまで繰り返される。固体ターゲット物質27aの投入制御については図6を参照しながら後述する。
【0042】
S3において、EUV光生成プロセッサ5はターゲット供給プロセッサ60に制御信号を送信し、温度制御プロセッサ63に大タンク7lt、小タンク7st、及びノズル7nzの温度制御を開始させる。温度制御は、S3で開始された後、例えばEUV光生成が終了するまで繰り返される。温度制御については図7図9を参照しながら後述する。
【0043】
S4において、EUV光生成プロセッサ5はターゲット供給プロセッサ60にターゲット供給を開始させる。ターゲット供給は、例えば、圧力調節器62が大タンク7ltの内部のガス圧を高圧に調整することによって開始される。
【0044】
S5において、EUV光生成プロセッサ5はEUV光生成のための処理を行う。EUV光生成は、ターゲット27がプラズマ生成領域25(図1参照)に到達するタイミングでパルスレーザ光33がターゲット27に照射されるようにレーザ装置3及びレーザ光伝送装置34等を制御することにより行われる。
【0045】
S6において、EUV光生成プロセッサ5はEUV光生成を継続するか否かを判定する。EUV光生成を継続する場合(S6:YES)、EUV光生成プロセッサ5はS5に処理を戻す。EUV光生成を継続しない場合(S6:NO)、EUV光生成プロセッサ5は本フローチャートの処理を終了する。
【0046】
2.2.2 固体ターゲット物質27aの投入制御
図6は、比較例における投入制御プロセッサ64のフローチャートである。以下のようにして固体ターゲット物質27aがターゲット生成部260に投入される。
【0047】
S21において、投入制御プロセッサ64は大タンク7ltの内部の液体ターゲット物質27bの量が設定値以下であるか否かを判定する。液体ターゲット物質27bの量は大タンク7ltに配置された図示しない液面センサの出力によって判定される。液体ターゲット物質27bの量が設定値以下である場合(S21:YES)、投入制御プロセッサ64はS22に処理を進める。液体ターゲット物質27bの量が設定値より多い場合(S21:NO)、投入制御プロセッサ64はS26に処理を進める。液体ターゲット物質27bの量が設定値以下となるまで固体ターゲット物質27aを投入せず待機することで、投入タイミングが制御される。
【0048】
S22において、投入制御プロセッサ64は、固体ターゲット物質27aを1粒ずつ計量してロードロック室C2に移動させるように計量器61及び固体ターゲット供給バルブVT1を制御する。
【0049】
S23において、投入制御プロセッサ64は、所定量の固体ターゲット物質27aがロードロック室C2へ移動したか否かを判定する。所定量の固体ターゲット物質27aが移動していない場合(S23:NO)、投入制御プロセッサ64はS22に処理を戻す。所定量の固体ターゲット物質27aが移動した場合(S23:YES)、投入制御プロセッサ64はS25に処理を進める。所定量の固体ターゲット物質27aが移動するまで計量を続けることにより、固体ターゲット物質27aの投入量が制御される。
【0050】
S25において、投入制御プロセッサ64は、大タンク7ltへ固体ターゲット物質27aを投入するよう、ロードロック室C2の内部の調整機構66と固体ターゲット供給バルブVT2とを制御する。
【0051】
S26において、投入制御プロセッサ64は、固体ターゲット物質27aの投入制御を継続するか否かを判定する。例えば、EUV光生成プロセッサ5がEUV光生成を継続すると判定している場合は、固体ターゲット物質27aの投入制御も継続すると判定される。固体ターゲット物質27aの投入制御を継続する場合(S26:YES)、投入制御プロセッサ64はS21に処理を戻す。固体ターゲット物質27aの投入制御を継続しない場合(S26:NO)、投入制御プロセッサ64は本フローチャートの処理を終了する。
【0052】
このような動作により、ほぼ大気圧であるリザーバタンクC1の内部に収容されている固体ターゲット物質27aが、高圧のターゲット生成部260の内部に投入される。ターゲット生成部260の内部の液体ターゲット物質27bが消費されても、ターゲット生成部260を交換せずにターゲット物質を補充できるので、EUV光生成装置1の停止時間を低減することができる。
【0053】
2.2.3 大タンク7ltの温度制御
図7は、比較例における温度制御プロセッサ63による大タンク7ltの温度制御のフローチャートである。以下のようにして大タンク7ltの温度がフィードバック制御される。
【0054】
S301において、温度制御プロセッサ63は大タンク7ltの温度の制御周期が経過したか否かを判定する。制御周期が経過した場合(S301:YES)、温度制御プロセッサ63はS302に処理を進める。制御周期が経過していない場合(S301:NO)、温度制御プロセッサ63はS312に処理を進める。
S302において、温度制御プロセッサ63は大タンク7ltの目標温度SVltをメモリ631から読み込む。
【0055】
S306において、温度制御プロセッサ63はセンサ80ltで検出された大タンク7ltの現在温度PVltを読み込む。
S307において、温度制御プロセッサ63は目標温度SVltと現在温度PVltとの温度偏差eltを以下の式で算出する。
elt=SVlt-PVlt
S308において、温度制御プロセッサ63はPID制御演算を行い、ヒーター8ltの電流値Cltを算出する。
【0056】
S311において、温度制御プロセッサ63は電流値Cltを用いてヒーター8ltのためのヒーター制御信号を出力する。
S312において、温度制御プロセッサ63は大タンク7ltの温度制御を継続するか否かを判定する。例えば、EUV光生成プロセッサ5がEUV光生成を継続すると判定している場合は、温度制御も継続すると判定される。温度制御を継続する場合(S312:YES)、温度制御プロセッサ63はS301に処理を戻す。温度制御を継続しない場合(S312:NO)、温度制御プロセッサ63は本フローチャートの処理を終了する。
【0057】
2.2.4 小タンク7stの温度制御
図8は、比較例における温度制御プロセッサ63による小タンク7stの温度制御のフローチャートである。小タンク7stの温度制御は、図7を参照しながら説明した大タンク7ltの温度制御において以下の点を置き換えたものに相当する。
・「S3」から始まるステップ番号を「S4」から始まるステップ番号に置き換える。
・大タンク7ltの目標温度SVltを小タンク7stの目標温度SVstに置き換える。目標温度SVlt及びSVstの具体的数値は同じでもよい。
・大タンク7ltの現在温度PVltを小タンク7stの現在温度PVstに置き換える。
・温度偏差eltを温度偏差estに置き換える。
・ヒーター8ltの電流値Cltをヒーター8stの電流値Cstに置き換える。
【0058】
2.2.5 ノズル7nzの温度制御
図9は、比較例における温度制御プロセッサ63によるノズル7nzの温度制御のフローチャートである。ノズル7nzの温度制御は、図7を参照しながら説明した大タンク7ltの温度制御において以下の点を置き換えたものに相当する。
・「S3」から始まるステップ番号を「S5」から始まるステップ番号に置き換える。
・大タンク7ltの目標温度SVltをノズル7nzの目標温度SVnzに置き換える。目標温度SVlt及びSVnzの具体的数値は同じでもよい。
・大タンク7ltの現在温度PVltをノズル7nzの現在温度PVnzに置き換える。
・温度偏差eltを温度偏差enzに置き換える。
・ヒーター8ltの電流値Cltをヒーター8nzの電流値Cnzに置き換える。
【0059】
2.2.6 ブロック図
図10は、比較例における温度制御のブロック図である。温度制御は、大タンク7lt、小タンク7st、及びノズル7nzについて互いに独立して行われる。大タンク7lt、小タンク7st、及びノズル7nzの目標温度SVlt、SVst、及びSVnzと現在温度PVlt、PVst、及びPVnzとからそれぞれ温度偏差elt、est、及びenzが計算される。温度偏差elt、est、及びenzを用いたPID制御演算により、ヒーター8lt、8st、及び8nzの電流値Clt、Cst、及びCnzが算出される。ヒーター8lt、8st、及び8nzはそれぞれ電流値Clt、Cst、及びCnzに応じた電気エネルギーを熱エネルギーに変換する。この熱エネルギーと、大タンク7ltへ固体ターゲット物質27aが投入されたときの外乱とが、現在温度PVlt、PVst、及びPVnzに影響を与える。現在温度PVlt、PVst、及びPVnzはセンサ80lt、80st、及び80nzで検出されてフィードバックされる。
【0060】
2.3 比較例の課題
図11は、比較例における小タンク7stの内部の液体ターゲット物質27bの温度変化をシミュレーションした結果を示す。横軸は固体ターゲット物質27aの投入タイミングからの経過時間を示し、縦軸は固体ターゲット物質27aの投入タイミングにおける液体ターゲット物質27bの温度を基準とした温度偏差を示す。固体ターゲット物質27aを投入する前におけるターゲット生成部260の内部の液体ターゲット物質27bの残量を50cmとし、固体ターゲット物質27aの投入量を0.35cmとした。
【0061】
液体ターゲット物質27bは、固体ターゲット物質27aに融解熱を奪われて温度が低下する。その後、ヒーター8lt、8st、及び8nzのフィードバック制御によって液体ターゲット物質27bの温度が回復する。温度の低下が許容範囲内であれば、ノズル7nzから吐出された液体ターゲット物質27bが理想的な液滴状のターゲット27となるが、許容範囲外となるとターゲット形成不良となることがある。例えば、0.1℃の低下でターゲット形成不良となることがある。
【0062】
3.フィードフォワード制御による温度低下の抑制
第1の実施形態について以下に説明する。第1の実施形態に係るターゲット供給システム26の構成は、図2を参照しながら説明したものと同様でよい。
【0063】
3.1 動作
3.1.1 固体ターゲット物質27aの投入制御
図12は、第1の実施形態における投入制御プロセッサ64のフローチャートである。図12に示される処理は、以下の点で図6に示される処理と異なる。
【0064】
所定量の固体ターゲット物質27aがロードロック室C2へ移動した場合(S23:YES)、投入制御プロセッサ64はS24aに処理を進める。
S24aにおいて、投入制御プロセッサ64は、温度制御プロセッサ63に固体ターゲット物質27aの投入タイミング及び投入量を通知する。その後、S25において固体ターゲット物質27aが大タンク7ltへ投入される。
【0065】
3.1.2 大タンク7ltの温度制御
大タンク7ltの温度制御は、図7と同様のフィードバック制御でよい。
【0066】
3.1.3 小タンク7stの温度制御
図13は、第1の実施形態における温度制御プロセッサ63による小タンク7stの温度制御のフローチャートである。図13に示される処理は、以下の点で図8に示される処理と異なる。
【0067】
S402において小タンク7stの目標温度SVstを読み込んだ後、S404aにおいて、温度制御プロセッサ63は、フィードフォワード制御演算により小タンク7stの温度の補正値fst(t)を算出する。補正値fst(t)は、投入制御プロセッサ64から受信した固体ターゲット物質27aの投入タイミング及び投入量に基づいて算出される。補正値fst(t)は以下の式で示される時間の関数である。
fst(t)=N・Ast・exp(-t/τst)
ここで、Nは固体ターゲット物質27aの投入量であり、Astは制御ゲインであり、tは固体ターゲット物質27aの投入タイミングからの経過時間であり、τstは時定数である。補正値fst(t)は経過時間tに応じて減衰して0に近づく関数である。
【0068】
S405aにおいて、温度制御プロセッサ63は、小タンク7stの目標温度SVstに補正値fst(t)を加算して補正目標温度SVstrを算出する。目標温度SVstは本開示における第1の目標値の一例であり、補正目標温度SVstrは本開示における第2の目標値の一例である。
S406~S411においてフィードバック制御が行われる。このとき、S407aにおいて温度偏差estを算出するために補正目標温度SVstrが用いられることで、フィードバック制御とともにフィードフォワード制御が行われる。フィードフォワード制御はフィードバック制御の制御周期に合わせて行われる。
【0069】
3.1.4 ノズル7nzの温度制御
ノズル7nzの温度制御は、図9と同様のフィードバック制御でよい。
【0070】
3.1.5 ブロック図
図14は、第1の実施形態における温度制御のブロック図である。第1の実施形態においては、投入制御プロセッサ64が固体ターゲット物質27aの投入タイミング及び投入量を温度制御プロセッサ63に送信する。温度制御プロセッサ63は、投入タイミング及び投入量に基づくフィードフォワード制御演算によって補正値fst(t)を算出し、小タンク7stの目標温度SVstに補正値fst(t)を加算することによって補正目標温度SVstrを算出する。補正目標温度SVstrに基づいて小タンク7stのヒーター8stのフィードバック制御を行うことで、フィードバック制御とフィードフォワード制御とが行われる。
【0071】
大タンク7ltの温度及びノズル7nzの温度については、投入タイミング及び投入量に基づくフィードフォワード制御は行われなくてもよく、比較例と同様にフィードバック制御が行われてもよい。
【0072】
3.2 シミュレーション結果
図15は、第1の実施形態における小タンク7stの内部の液体ターゲット物質27bの温度変化をシミュレーションした結果を示す。液体ターゲット物質27bの温度は、固体ターゲット物質27aの投入後に低下し、その後フィードバック制御により回復する。
【0073】
図15には、小タンク7stの温度の補正値fst(t)が併せて示されている。補正値fst(t)の時定数τstは例えば10秒程度に設定されており、補正値fst(t)が実質的に0になった後で、液体ターゲット物質27bの温度が最も低くなる。ターゲット生成部260に次の固体ターゲット物質27aが投入されるのはさらにその後となる。
【0074】
液体ターゲット物質27bの温度の低下は、比較例においては0.1℃以上であったのに対し、第1の実施形態においてはフィードフォワード制御が行われたことで0.1℃未満となっている。温度の低下が許容範囲内であるためターゲット形成不良の発生が抑制される。これにより、EUV光の生成が安定化し得る。
【0075】
3.3 作用
(1)第1の実施形態によれば、ターゲット供給システム26は、ターゲット生成部260と、投入機構と、ヒーター8stと、センサ80stと、投入制御プロセッサ64と、温度制御プロセッサ63と、を備える。ターゲット生成部260は、固体ターゲット物質27aを内部で溶融させて液体ターゲット物質27bを生成し、液体ターゲット物質27bを吐出する。投入機構は、例えば、計量器61、固体ターゲット供給バルブVT1及びVT2、及び調整機構66を含み、ターゲット生成部260に固体ターゲット物質27aを投入する。ヒーター8stは、ターゲット生成部260に配置されている。センサ80stは、ターゲット生成部260の温度を検出する。投入制御プロセッサ64は、固体ターゲット物質27aがターゲット生成部260に投入される投入タイミングを制御する。温度制御プロセッサ63は、センサ80stで検出された現在温度PVstに基づいてヒーター8stをフィードバック制御しながら、投入タイミングに基づいてヒーター8stをフィードフォワード制御する。
これによれば、ヒーター8stをフィードバック制御しながら、固体ターゲット物質27aの投入タイミングに基づいてフィードフォワード制御することで、固体ターゲット物質27aを投入したときの温度変動を抑制し、ターゲット27の形成を安定化し得る。
【0076】
(2)第1の実施形態によれば、温度制御プロセッサ63は、ターゲット生成部260の温度の低下が0.1℃未満となるように、ヒーター8stをフィードフォワード制御する。
これによれば、ターゲット形成不良の発生を抑制し得る。
【0077】
(3)第1の実施形態によれば、温度制御プロセッサ63は、ヒーター8stのフィードバック制御の制御周期に合わせてヒーター8stをフィードフォワード制御する。
これによれば、制御周期を合わせることで制御演算の計算量の増加を抑制し得る。
【0078】
(4)第1の実施形態によれば、温度制御プロセッサ63は、ターゲット生成部260の目標温度SVstを読み込み、目標温度SVstに、フィードフォワード要素を含む補正値fst(t)を加算して補正目標温度SVstrを算出する。温度制御プロセッサ63はさらに、補正目標温度SVstrと現在温度PVstとに基づいてヒーター8stをフィードバック制御する。
これによれば、目標温度SVstに補正値fst(t)を加算してフィードバック制御することで、フィードフォワード制御の追加による計算量の増加を抑制し得る。
【0079】
(5)第1の実施形態によれば、投入制御プロセッサ64は、ターゲット生成部260に投入される固体ターゲット物質27aの投入量を制御し、温度制御プロセッサ63は、投入量に基づいて補正値fst(t)を算出する。
これによれば、固体ターゲット物質27aの投入量を固体ターゲット物質27aの投入前に知ることができ、補正値fst(t)をタイムリーに算出できる。また、投入量が多すぎて温度変動を抑制しきれなくなったり、投入量が少なすぎることで固体ターゲット供給バルブVT2を頻繁に開閉してその寿命を縮めたりすることが避けられ得る。
【0080】
(6)第1の実施形態によれば、温度制御プロセッサ63は、ヒーター8stをフィードバック制御しながら補正値fst(t)を0に近づける。
これによれば、ヒーター8stをフィードバック制御しながら、フィードフォワード制御を必要な期間のみ実施できる。
【0081】
(7)第1の実施形態によれば、投入制御プロセッサ64は、補正値fst(t)が実質的に0になった状態で固体ターゲット物質27aがターゲット生成部260に投入されるように、次の投入タイミングを制御する。
これによれば、補正値fst(t)が実質的に0になった状態で次のフィードフォワード制御を開始するので、フィードフォワード制御演算の複雑化を回避できる。
【0082】
(8)第1の実施形態によれば、ターゲット生成部260は、固体ターゲット物質27aを内部で溶融させて液体ターゲット物質27bを生成する第1の領域と、第1の領域で生成された液体ターゲット物質27bを吐出するノズル7nzを含む第2の領域と、を含む。ターゲット生成部260は、第1の領域に配置されたヒーター8ltと、第2の領域に配置されたヒーター8stと、を含む。温度制御プロセッサ63は、ヒーター8lt及び8stの少なくとも1つをフィードバック制御しながらフィードフォワード制御する。
これによれば、ターゲット生成部260内の領域ごとに最適な制御を選択できる。
【0083】
第1の実施形態においては小タンク7stのヒーター8stをフィードバック制御しながらフィードフォワード制御し、大タンク7ltのヒーター8lt及びノズル7nzのヒーター8nzをフィードバック制御する場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。ヒーター8lt、8st及び8nzのうちの少なくとも1つをフィードバック制御しながらフィードフォワード制御し、残りをフィードバック制御することとしてもよい。
また、小タンク7stが設けられないことがあってもよく、その場合に例えば大タンク7ltのヒーター8ltをフィードバック制御し、ノズル7nzのヒーター8nzをフィードバック制御しながらフィードフォワード制御することとしてもよい。
【0084】
(9)第1の実施形態によれば、温度制御プロセッサ63は、ヒーター8ltをフィードバック制御し、ヒーター8stをフィードバック制御しながらフィードフォワード制御する。
これによれば、ノズル7nzに近い小タンク7stの温度を安定化することで、ターゲット27の形成を安定化し得る。
【0085】
(10)第1の実施形態によれば、第1の領域と第2の領域との間にフィルターFが配置されている。
これによれば、第1の領域に固体ターゲット物質27aが投入されたときの第2の領域の温度を安定化し得る。
その他の点については、第1の実施形態は比較例と同様でよい。
【0086】
4.フィードフォワード制御を選択可能とした例
第2の実施形態について以下に説明する。第2の実施形態に係るターゲット供給システム26の構成は、図2を参照しながら説明したものと同様でよい。
【0087】
4.1 動作
4.1.1 固体ターゲット物質27aの投入制御
図16は、第2の実施形態における投入制御プロセッサ64のフローチャートである。図16に示される処理は、以下の点で図12に示される処理と異なる。
【0088】
所定量の固体ターゲット物質27aがロードロック室C2へ移動した場合(S23:YES)、投入制御プロセッサ64はS24cに処理を進める。
S24cにおいて、投入制御プロセッサ64は、温度制御プロセッサ63に固体ターゲット物質27aの投入タイミング及び投入量を通知する他、フィードフォワード制御の対象箇所を通知する。その後、S25において固体ターゲット物質27aが大タンク7ltへ投入される。
【0089】
フィードフォワード制御の対象箇所は、固体ターゲット物質27aの投入量に応じて決定されるものでもよいし、ユーザーが選択するものでもよい。第2の実施形態においては、小タンク7stのヒーター8stは必ずフィードフォワード制御され、大タンク7ltのヒーター8lt及びノズル7nzのヒーター8nzの各々について、フィードフォワード制御するか否かが選択可能となっている。
【0090】
4.1.2 大タンク7ltの温度制御
図17は、第2の実施形態における温度制御プロセッサ63による大タンク7ltの温度制御のフローチャートである。図17に示される処理は、以下の点で図7に示される処理と異なる。
【0091】
S302において大タンク7ltの目標温度SVltを読み込んだ後、S303cにおいて、温度制御プロセッサ63は、大タンク7ltのヒーター8ltをフィードフォワード制御するか否かを判定する。図16の処理において大タンク7ltがフィードフォワード制御の対象箇所となっていた場合は、温度制御プロセッサ63はフィードフォワード制御すると判定し(S303c:YES)、S304bに処理を進める。大タンク7ltがフィードフォワード制御の対象箇所となっていなかった場合は、温度制御プロセッサ63はフィードフォワード制御しないと判定し(S303c:NO)、S306に処理を進める。
【0092】
S304bにおいて、温度制御プロセッサ63は、フィードフォワード制御演算により大タンク7ltの温度の補正値flt(t)を算出する。補正値flt(t)は、投入制御プロセッサ64から受信した固体ターゲット物質27aの投入タイミング及び投入量に基づいて算出される。補正値flt(t)は以下の式で示される時間の関数である。
flt(t)=N・Alt・exp(-t/τlt)
ここで、Altは制御ゲインであり、τltは時定数である。補正値flt(t)は経過時間tに応じて減衰して0に近づく関数である。
【0093】
S305bにおいて、温度制御プロセッサ63は、大タンク7ltの目標温度SVltに補正値flt(t)を加算して補正目標温度SVltrを算出する。目標温度SVltは本開示における第1の目標値の一例であり、補正目標温度SVltrは本開示における第2の目標値の一例である。
S307bにおいて温度偏差eltを算出するときは、補正目標温度SVltrが用いられる。
【0094】
4.1.3 小タンク7stの温度制御
小タンク7stの温度制御は、図13と同様のフィードバック制御及びフィードフォワード制御の組み合わせでよい。
【0095】
4.1.4 ノズル7nzの温度制御
図18は、第2の実施形態における温度制御プロセッサ63によるノズル7nzの温度制御のフローチャートである。ノズル7nzの温度制御は、図17を参照しながら説明した大タンク7ltの温度制御において以下の点を置き換えたものに相当する。
・「S3」から始まるステップ番号を「S5」から始まるステップ番号に置き換える。
・大タンク7ltの目標温度SVltをノズル7nzの目標温度SVnzに置き換える。
・大タンク7ltの温度の補正値flt(t)をノズル7nzの温度の補正値fnz(t)に置き換える。
・大タンク7ltの補正目標温度SVltrをノズル7nzの補正目標温度SVnzrに置き換える。
・大タンク7ltの現在温度PVltをノズル7nzの現在温度PVnzに置き換える。
・温度偏差eltを温度偏差enzに置き換える。
・ヒーター8ltの電流値Cltをヒーター8nzの電流値Cnzに置き換える。
【0096】
補正値fnz(t)は以下の式で示される時間の関数である。
fnz(t)=N・Anz・exp(-t/τnz)
ここで、Anzは制御ゲインであり、τnzは時定数である。補正値fnz(t)は経過時間tに応じて減衰して0に近づく関数である。
【0097】
補正値flt(t)、fst(t)、及びfnz(t)を算出するための制御ゲインAlt、Ast、及びAnzの設定値は、互いに異なっていてもよい。補正値flt(t)、fst(t)、及びfnz(t)を算出するための時定数τlt、τst、及びτnzの設定値も、互いに異なっていてもよい。
【0098】
4.1.5 ブロック図
図19は、第2の実施形態における温度制御のブロック図である。第2の実施形態においては、投入制御プロセッサ64が温度制御プロセッサ63にフィードフォワード制御の対象箇所を通知する。
【0099】
温度制御プロセッサ63は、大タンク7ltがフィードフォワード制御の対象箇所となった場合は補正値flt(t)によって補正された補正目標温度SVltrを用いて大タンク7ltのヒーター8ltをフィードバック制御する。大タンク7ltがフィードフォワード制御の対象箇所でない場合は、比較例と同様にフィードバック制御が行われる。
【0100】
温度制御プロセッサ63は、ノズル7nzがフィードフォワード制御の対象箇所となった場合は補正値fnz(t)によって補正された補正目標温度SVnzrを用いてノズル7nzのヒーター8nzをフィードバック制御する。ノズル7nzがフィードフォワード制御の対象箇所でない場合は、比較例と同様にフィードバック制御が行われる。
【0101】
小タンク7stについては必ずフィードフォワード制御の対象箇所となり、温度制御プロセッサ63は補正値fst(t)によって補正された補正目標温度SVstrを用いて小タンク7stのヒーター8stをフィードバック制御する。
【0102】
4.2 作用
(11)第2の実施形態によれば、ヒーター8lt及び8nzの少なくとも1つは、フィードバック制御しながらフィードフォワード制御するか否かを選択可能である。
これによれば、固体ターゲット物質27aの投入量などの状況に応じて最適な制御を選択できる。
【0103】
第2の実施形態においては、小タンク7stのヒーター8stを必ずフィードフォワード制御する場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。小タンク7stのヒーター8stをフィードフォワード制御するか否かを選択可能としてもよい。
【0104】
(12)第2の実施形態によれば、温度制御プロセッサ63が、ヒーター8ltをフィードバック制御しながら時定数τltなどの第1の設定値を用いてフィードフォワード制御する。また、ヒーター8stをフィードバック制御しながら第1の設定値と異なる時定数τstなどの第2の設定値を用いてフィードフォワード制御する。
これによれば、フィードフォワード制御の設定値を領域ごとに変えられるので、きめ細かな温度制御が可能となる。
その他の点については、第2の実施形態は第1の実施形態と同様でよい。
【0105】
5.小タンク7st及びノズル7nzの温度をフィードフォワード制御する例
第3の実施形態について以下に説明する。第3の実施形態に係るターゲット供給システム26の構成は、図2を参照しながら説明したものと同様でよい。
【0106】
5.1 動作
5.1.1 固体ターゲット物質27aの投入制御
固体ターゲット物質27aの投入制御は、図12と同様でよい。
【0107】
5.1.2 大タンク7ltの温度制御
大タンク7ltの温度制御は、図7と同様のフィードバック制御でよい。
【0108】
5.1.3 小タンク7stの温度制御
小タンク7stの温度制御は、図13と同様のフィードバック制御及びフィードフォワード制御の組み合わせでよい。
【0109】
5.1.4 ノズル7nzの温度制御
図20は、第3の実施形態における温度制御プロセッサ63によるノズル7nzの温度制御のフローチャートである。図20に示される処理は、以下の点で図9に示される処理と異なる。
【0110】
S502においてノズル7nzの目標温度SVnzを読み込んだ後、S504bにおいて、温度制御プロセッサ63は、フィードフォワード制御演算によりノズル7nzの温度の補正値fnz(t)を算出する。補正値fnz(t)は、投入制御プロセッサ64から受信した固体ターゲット物質27aの投入タイミング及び投入量に基づいて算出される。補正値fnz(t)は第2の実施形態において説明したものと同様でよい。
ノズル7nzの温度の補正値fnz(t)を算出するための時定数τnz及び制御ゲインAnzの設定値は、小タンク7stの温度の補正値fst(t)を算出するための時定数τst及び制御ゲインAstの設定値よりもそれぞれ大きい値であってもよい。補正値fnz(t)は補正値fst(t)よりも遅く減衰する関数であってもよい。
【0111】
S505bにおいて、温度制御プロセッサ63は、ノズル7nzの目標温度SVnzに補正値fnz(t)を加算して補正目標温度SVnzrを算出する。目標温度SVnzは本開示における第1の目標値の一例であり、補正目標温度SVnzrは本開示における第2の目標値の一例である。
S507bにおいて温度偏差enzを算出するときは、補正目標温度SVnzrが用いられる。
【0112】
5.1.5 ブロック図
図21は、第3の実施形態における温度制御のブロック図である。第3の実施形態において、温度制御プロセッサ63は、投入タイミング及び投入量に基づくフィードフォワード制御演算によって算出された補正値fnz(t)を、ノズル7nzの目標温度SVnzに加算する。補正値fnz(t)が加算された補正目標温度SVnzrに基づいて、ノズル7nzのヒーター8nzのフィードバック制御が行われる。
【0113】
大タンク7ltの温度については、投入タイミング及び投入量に基づくフィードフォワード制御は行われなくてもよく、比較例と同様にフィードバック制御が行われてもよい。
【0114】
5.2 シミュレーション結果
図22は、第3の実施形態における小タンク7stの内部の液体ターゲット物質27bの温度変化をシミュレーションした結果を示す。液体ターゲット物質27bの温度は、固体ターゲット物質27aの投入後に低下し、その後フィードバック制御により回復する。
【0115】
図22には、小タンク7stの温度の補正値fst(t)及びノズル7nzの温度の補正値fnz(t)が併せて示されている。補正値fst(t)の時定数τstは例えば10秒程度、補正値fnz(t)の時定数τnzは例えば20秒程度に設定されており、補正値fst(t)及び補正値fnz(t)の両方が実質的に0になった後で、液体ターゲット物質27bの温度が最も低くなる。ターゲット生成部260に次の固体ターゲット物質27aが投入されるのはさらにその後となる。
【0116】
液体ターゲット物質27bの温度の低下は、第1の実施形態における温度の低下に比べてわずかとなっている。温度の低下がわずかであるためターゲット形成不良の発生が抑制される。これにより、EUV光の生成が安定化し得る。
【0117】
5.3 作用
(13)第3の実施形態によれば、ターゲット生成部260が、大タンク7ltと、ノズル7nzと、それらの間の小タンク7stと、を含み、大タンク7ltにはヒーター8ltが配置され、小タンク7stにはヒーター8stが配置され、ノズル7nzにはヒーター8nzが配置されている。
これによれば、大タンク7lt、小タンク7st、及びノズル7nzの各々にヒーターを配置することで、きめ細かな温度制御が可能となる。
その他の点については、第3の実施形態は第1の実施形態と同様でよい。
【0118】
第1~第3の実施形態において説明したように、小タンク7stは必ずフィードフォワード制御の対象箇所としてもよい。
ノズル7nzは、第1の実施形態において説明したようにフィードバック制御のみとしてもよいし、第2の実施形態において説明したようにフィードフォワード制御を選択可能にしてもよいし、第3の実施形態において説明したように必ずフィードフォワード制御の対象箇所としてもよい。
【0119】
6.電流の補正値fcst(t)を用いてフィードフォワード制御を行う例
第4の実施形態について以下に説明する。第4の実施形態に係るターゲット供給システム26の構成は、図2を参照しながら説明したものと同様でよい。
【0120】
6.1 動作
6.1.1 固体ターゲット物質27aの投入制御
固体ターゲット物質27aの投入制御は、図12と同様でよい。
【0121】
6.1.2 大タンク7ltの温度制御
大タンク7ltの温度制御は、図7と同様のフィードバック制御でよい。
【0122】
6.1.3 小タンク7stの温度制御
図23は、第4の実施形態における温度制御プロセッサ63による小タンク7stの温度制御のフローチャートである。図23に示される処理は、以下の点で図8に示される処理と異なる。
【0123】
S408において目標温度SVst及び現在温度PVstを用いたPID制御演算によりヒーター8stの電流値Cstを算出した後、S409dにおいて、温度制御プロセッサ63は、フィードフォワード制御演算によりヒーター8stの電流の補正値fcst(t)を算出する。補正値fcst(t)は、投入制御プロセッサ64から受信した固体ターゲット物質27aの投入タイミング及び投入量に基づいて算出される。補正値fcst(t)は以下の式で示される時間の関数である。
fcst(t)=N・Acst・exp(-t/τcst)
ここで、Acstは制御ゲインであり、τcstは時定数である。補正値fcst(t)は経過時間tに応じて減衰して0に近づく関数である。
【0124】
S410dにおいて、温度制御プロセッサ63は、ヒーター8stの電流値Cstに補正値fcst(t)を加算して補正電流値Cstrを算出する。電流値Cstは本開示における第1の電流値に相当し、補正電流値Cstrは本開示における第2の電流値に相当する。S411においてヒーター制御信号を出力するときは、補正電流値Cstrが用いられる。
【0125】
6.1.4 ノズル7nzの温度制御
ノズル7nzの温度制御は、図9と同様のフィードバック制御でよい。
【0126】
6.1.5 ブロック図
図24は、第4の実施形態における温度制御のブロック図である。第4の実施形態においては、温度制御プロセッサ63は、投入タイミング及び投入量に基づくフィードフォワード制御演算によって算出された補正値fcst(t)を、PID制御演算により算出されたヒーター8stの電流値Cstに加算する。補正値fcst(t)が加算された補正電流値Cstrを用いて、ヒーター8stの制御が行われる。
【0127】
大タンク7ltの温度及びノズル7nzの温度については、投入タイミング及び投入量に基づくフィードフォワード制御は行われなくてもよく、比較例と同様にフィードバック制御が行われてもよい。
【0128】
6.2 シミュレーション結果
図25は、第4の実施形態における小タンク7stの内部の液体ターゲット物質27bの温度変化をシミュレーションした結果を示す。液体ターゲット物質27bの温度は、固体ターゲット物質27aの投入後に低下し、その後フィードバック制御により回復する。
【0129】
図25には、ヒーター8stの電流の補正値fcst(t)が併せて示されている。補正値fcst(t)の時定数τcstは例えば100秒程度に設定されており、液体ターゲット物質27bの低下した温度は、補正値fcst(t)が実質的に0になった後で回復する。ターゲット生成部260に次の固体ターゲット物質27aが投入されるのはさらにその後となる。
【0130】
液体ターゲット物質27bの温度の低下は、比較例においては0.1℃以上であったのに対し、第4の実施形態においては0.1℃未満となっている。温度の低下が許容範囲内であるためターゲット形成不良の発生が抑制される。また、第4の実施形態においては温度が一旦低下して回復した後のオーバーシュートを小さくすることが可能となっている。これにより、EUV光の生成が安定化し得る。
【0131】
6.3 作用
(14)第4の実施形態によれば、温度制御プロセッサ63は、ターゲット生成部260の目標温度SVstを読み込み、目標温度SVstと、現在温度PVstと、に基づくフィードバック制御演算によりヒーター8stの電流値Cstを算出する。温度制御プロセッサ63は、電流値Cstに、フィードフォワード要素を含む補正値fcst(t)を加算して補正電流値Cstrを算出し、補正電流値Cstrに従ってヒーター8stを制御する。
これによれば、電流値Cstに補正値fcst(t)を加算してフィードバック制御することで、フィードフォワード制御の追加による計算量の増加を抑制し得る。
【0132】
(15)第4の実施形態によれば、投入制御プロセッサ64は、ターゲット生成部260に投入される固体ターゲット物質27aの投入量を制御し、温度制御プロセッサ63は、投入量に基づいて補正値fcst(t)を算出する。
これによれば、固体ターゲット物質27aの投入量を固体ターゲット物質27aの投入前に知ることができ、補正値fcst(t)をタイムリーに算出できる。また、投入量が多すぎて温度変動を抑制しきれなくなったり、投入量が少なすぎることで固体ターゲット供給バルブVT2を頻繁に開閉してその寿命を縮めたりすることが避けられ得る。
【0133】
(16)第4の実施形態によれば、温度制御プロセッサ63は、補正電流値Cstrに従ってヒーター8stを制御しながら補正値fcst(t)を0に近づける。
これによれば、ヒーター8stをフィードバック制御しながら、フィードフォワード制御を必要な期間のみ実施できる。
【0134】
(17)第4の実施形態によれば、投入制御プロセッサ64は、補正値fcst(t)が実質的に0になった状態で固体ターゲット物質27aがターゲット生成部260に投入されるように、次の投入タイミングを制御する。
これによれば、補正値fcst(t)が実質的に0になった状態で次のフィードフォワード制御を開始するので、フィードフォワード制御演算の複雑化を回避できる。
【0135】
第4の実施形態において、小タンク7stのヒーター8stをフィードフォワード制御する場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。大タンク7ltのヒーター8lt又はノズル7nzのヒーター8nzを、補正電流値を用いてフィードフォワード制御してもよい。ヒーター8lt、8st、及び8nzの各々についてフィードフォワード制御するか否かを選択可能としてもよい。
その他の点については、第4の実施形態は第1の実施形態と同様でよい。
【0136】
7.電流の補正値fcst(t)の波形を矩形波とした例
図26は、第5の実施形態における小タンク7stの内部の液体ターゲット物質27bの温度変化をシミュレーションした結果を示す。
【0137】
図26には、ヒーター8stの電流の補正値fcst(t)が併せて示されている。第5の実施形態において、補正値fcst(t)は減衰する関数ではなく、次の式に示される矩形波となっている。
fcst(t)=N・Ac(0≦t≦T)
fcst(t)=0(t<0,T<t)
ここで、Acは制御ゲインであり、Tは矩形波の時間幅である。矩形波とすることで、補正値fcst(t)の算出が容易となり得る。時間幅Tは例えば200秒程度に設定されており、補正値fcst(t)が実質的に0になった後で、液体ターゲット物質27bの温度が最も低くなる。ターゲット生成部260に次の固体ターゲット物質27aが投入されるのはさらにその後となる。
【0138】
液体ターゲット物質27bの温度は、補正値fcst(t)が一定値N・Acである期間には大幅に低下せず、逆に急激に上昇することもあり得るが、補正値fcst(t)が0に切り替わると低下し得る。制御ゲインAc及び矩形波の時間幅Tを変更することにより、液体ターゲット物質27bの温度変化を調整することができる。
その他の点については、第5の実施形態は第4の実施形態と同様でよい。
【0139】
8.その他
図27は、EUV光生成システム11に接続された露光装置6aの構成を概略的に示す。
図27において、EUV光利用装置6(図1参照)としての露光装置6aは、マスク照射部608とワークピース照射部609とを含む。マスク照射部608は、EUV光生成システム11から入射したEUV光によって、反射光学系を介してマスクテーブルMTのマスクパターンを照明する。ワークピース照射部609は、マスクテーブルMTによって反射されたEUV光を、反射光学系を介してワークピーステーブルWT上に配置された図示しないワークピース上に結像させる。ワークピースはフォトレジストが塗布された半導体ウエハ等の感光基板である。露光装置6aは、マスクテーブルMTとワークピーステーブルWTとを同期して平行移動させることにより、マスクパターンを反映したEUV光をワークピースに露光する。以上のような露光工程によって半導体ウエハにデバイスパターンを転写することで電子デバイスを製造できる。
【0140】
図28は、EUV光生成システム11に接続された検査装置6bの構成を概略的に示す。
図28において、EUV光利用装置6(図1参照)としての検査装置6bは、照明光学系603と検出光学系606とを含む。照明光学系603は、EUV光生成システム11から入射したEUV光を反射して、マスクステージ604に配置されたマスク605を照射する。ここでいうマスク605はパターンが形成される前のマスクブランクスを含む。検出光学系606は、照明されたマスク605からのEUV光を反射して検出器607の受光面に結像させる。EUV光を受光した検出器607はマスク605の画像を取得する。検出器607は例えばTDI(time delay integration)カメラである。以上のような工程によって取得したマスク605の画像により、マスク605の欠陥を検査し、検査の結果を用いて、電子デバイスの製造に適するマスクを選定する。そして、選定したマスクに形成されたパターンを、露光装置6aを用いて感光基板上に露光転写することで電子デバイスを製造できる。
【0141】
上述の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。従って、特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかである。また、本開示の実施形態を組み合わせて使用することも当業者には明らかである。
【0142】
本明細書及び特許請求の範囲全体で使用される用語は、明記が無い限り「限定的でない」用語と解釈されるべきである。たとえば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、不定冠詞「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。また、「A、B及びCの少なくとも1つ」という用語は、「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」又は「A+B+C」と解釈されるべきである。さらに、それらと「A」「B」「C」以外のものとの組み合わせも含むと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図11
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