(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127221
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】情報処理装置、原料粒径探索方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
C22B 5/02 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
C22B5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030868
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】西原 泰孝
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001BA01
4K001CA11
4K001DA05
4K001GA07
(57)【要約】
【課題】乾式製錬法における所望の原料の粒径を探索するための計算コストを削減させる。
【解決手段】情報処理装置は、ロータリーキルンを用いた製錬において、前記ロータリーキルンにおける一次元の炉内温度分布を算出する第一シミュレーションを実行する第一シミュレーション実行部と、前記ロータリーキルンにおける三次元の第二シミュレーションによって、前記ロータリーキルンを用いた製錬における原料のダスト化率と粒径との関係を算出する第二シミュレーション実行部と、第一シミュレーションの算出結果と前記第二シミュレーションの算出結果とに基づいて、所望の炉内温度分布を実現させるための前記原料の粒径を決定する原料粒径決定部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリーキルンを用いた製錬において、前記ロータリーキルンにおける一次元の炉内温度分布を算出する第一シミュレーションを実行する第一シミュレーション実行部と、
前記ロータリーキルンにおける三次元の第二シミュレーションによって、前記ロータリーキルンを用いた製錬における原料のダスト化率と粒径との関係を算出する第二シミュレーション実行部と、
第一シミュレーションの算出結果と前記第二シミュレーションの算出結果とに基づいて、所望の炉内温度分布を実現させるための前記原料の粒径を決定する原料粒径決定部と、を備える、
情報処理装置。
【請求項2】
前記第一シミュレーション実行部は、選択を受け付けた原料の移動速度ごとに前記第一シミュレーションを実行し、
前記原料の移動速度に対応するダスト化率を算出するダスト化率算出部をさらに備え、
前記原料粒径決定部は、前記所望の炉内温度分布に近い炉内温度分布となる前記原料の移動速度に対応する前記ダスト化率を決定して、決定した前記ダスト化率となる前記粒径を、前記第二シミュレーションの算出結果に基づいて算出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第一シミュレーションの条件として、前記ロータリーキルンの構造、操業条件および前記第一シミュレーションの計算条件を含む第一シミュレーション条件情報を取得する第一シミュレーション条件情報取得部をさらに備え、
前記第一シミュレーション実行部は、前記第一シミュレーション条件情報に基づいて、前記第一シミュレーションを実行する、
請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記第二シミュレーションの条件として、前記ロータリーキルンの構造、操業条件および前記第二シミュレーションの計算条件を含む第二シミュレーション条件情報であって、前記第一シミュレーション条件情報の一部を省略した条件を示す情報を取得する第二シミュレーション条件情報取得部をさらに備え、
前記第二シミュレーション実行部は、前記第二シミュレーション条件情報に基づいて、前記第二シミュレーションを実行する、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記原料粒径決定部は、算出された前記原料の粒径と前記ダスト化率の離散値の間を補間して、前記第一シミュレーションによって算出されたダスト化率の範囲内における前記原料の粒径と前記ダスト化率の連続的な関係を算出する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
コンピュータが実行する原料粒径探索方法であって、
ロータリーキルンを用いた製錬において、前記ロータリーキルンにおける一次元の炉内温度分布を算出する第一シミュレーションを実行するステップと、
前記ロータリーキルンにおける三次元の第二シミュレーションによって、前記ロータリーキルンを用いた製錬における原料のダスト化率と粒径との関係を算出するステップと、
第一シミュレーションの算出結果と前記第二シミュレーションの算出結果とに基づいて、所望の炉内温度分布を実現させるための前記原料の粒径を決定するステップと、を備える、
原料粒径探索方法。
【請求項7】
コンピュータに、
ロータリーキルンを用いた製錬において、前記ロータリーキルンにおける一次元の炉内温度分布を算出する第一シミュレーションを実行するステップと、
前記ロータリーキルンにおける三次元の第二シミュレーションによって、前記ロータリーキルンを用いた製錬における原料のダスト化率と粒径との関係を算出するステップと、
第一シミュレーションの算出結果と前記第二シミュレーションの算出結果とに基づいて、所望の炉内温度分布を実現させるための前記原料の粒径を決定するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、原料粒径探索方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリーキルンを用いた乾式製錬法では、装入端より供給する石炭の燃焼熱やバーナーによる微粉炭や重油等の燃焼熱を、鉱石の乾燥や部分還元に使用する。ロータリーキルン内のガス、および、ダストが流れる領域をガス相、鉱石などの原料が移動する領域は、ベッド層と呼ばれる。
【0003】
ロータリーキルンではキルンを転動させることでベッド層とガス相との熱交換や混合を促進し、乾燥などの目的とする処理を行う。ベッド層の混合効率に関連する因子は、キルン回転数、内径、炉壁の構造、処理量、原料安息角等がある。
【0004】
原料の転動やガスによって、ベッド層の一部の原料はダスト化してガス相に移動する。ベッド層中の原料とガス相中のダストは、一般に燃焼反応速度が異なるため、ダスト量によっては適切な処理が困難となる。ベッド層の原料のダスト化率に関連する因子の一つは原料の粒径である。
【0005】
ロータリーキルン炉内の様子を知るために、炉内温度分布が計測されている。炉内温度分布は、目的とする処理が適切に行えているかを表す指標の一つである。そのため、適切に処理されていると思われる炉内温度分布を設定し、それを満たすように操業に関する諸条件を設定する場合もある。
【0006】
適切な処理、例えば、効率的な燃焼熱の使用のために、ロータリーキルン内の熱移動や反応に関するシミュレーション手法が複数提案されている。例えば、非特許文献1には、原料の反応率、ガス相とベッド層との間の移動速度等に基づいて、一次元の炉内温度分布を算出するシミュレーション手法が開示されている。また、非特許文献2には、三次元混相流の流体計算によってロータリーキルン内の現象を表現するシミュレーション手法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】K. Penttila, et al., "Advanced Thermochemical Process Model of Rotary Kilns - KilnSimu", International Chemical Recovery Conference (ICRC) 2017
【非特許文献2】S. Dissanayake et al., "CFD Study of Particle Flow Patterns in a Rotating Cylinder Applying OpenFOAM and Fluent", Linkoping Electronic Conference Proceedings, 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、実験前の試算として、所望の炉内温度分布を実現させるための原料の粒径を探索することは困難であるという問題がある。例えば、非特許文献1に記載されたシミュレーション手法では、原料を粒として捉えていないため、粒径を探索することはできない。また、非特許文献2に記載されたシミュレーション手法で原料の粒径を探索することは、複雑な計算が必要となるため、時間とコストがかかってしまい、現実的ではない問題がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、乾式製錬法における所望の原料の粒径を探索するための計算コストを削減させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る情報処理装置は、ロータリーキルンを用いた製錬において、前記ロータリーキルンにおける一次元の炉内温度分布を算出する第一シミュレーションを実行する第一シミュレーション実行部と、
前記ロータリーキルンにおける三次元の第二シミュレーションによって、前記ロータリーキルンを用いた製錬における原料のダスト化率と粒径との関係を算出する第二シミュレーション実行部と、
第一シミュレーションの算出結果と前記第二シミュレーションの算出結果とに基づいて、所望の炉内温度分布を実現させるための前記原料の粒径を決定する原料粒径決定部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
乾式製錬法における所望の原料の粒径を探索するための計算コストを削減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】ロータリーキルンの構造の一例を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る情報処理装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る原料粒径探索処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の実施の形態に係る情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図5】記号の内容について説明するための第一の図である。
【
図6】記号の内容について説明するための第二の図である。
【
図7】第一シミュレーションによって算出された炉内温度分布の一例を示す図である。
【
図8】第二シミュレーションによって算出された原料の体積分率の一例を示す第一の図である。
【
図9】第二シミュレーションによって算出された原料の体積分率の一例を示す第二の図である。
【
図10】第二シミュレーションによって算出された原料の粒径とダスト化率の関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態(本実施の形態)について説明する。
【0014】
本実施の形態に係る情報処理装置は、ロータリーキルンを用いた乾式製錬法において、一次元の炉内温度分布を算出するシミュレーション(第一シミュレーション)と、三次元混相流の流体計算によって原料の粒径と原料のダスト化率の関係を算出するシミュレーション(第二シミュレーション)とを実行する。そして、これら2つのシミュレーションを併用することによって、乾式製錬法における所望の原料の粒径を探索するための計算コストを削減させることができる。
【0015】
(ロータリーキルンを用いた乾式製錬法の概要)
図1は、ロータリーキルンの構造の一例を示す図である。矢印901に示されるように、原料3(例えばカーボン)は、注入部4からロータリーキルン1の内部に注入される。原料3は、ロータリーキルン1の転動によって矢印903に示されるように撹拌され、加熱器2によって加熱される。そして、製錬された原料3は、矢印904に示されるように、射出部5から射出される。また、矢印902に示される方向に空気が注入される。
【0016】
また、
図1に示すように、Z軸方向をロータリーキルン1の長手方向とし、Z軸負方向の端部を炉尻と呼ぶ。
【0017】
(情報処理装置の機能構成)
図2は、本発明の実施の形態に係る情報処理装置の機能構成の一例を示す図である。情報処理装置10は、上述したロータリーキルン1を用いた乾式製錬法において、所望の炉内温度分布を実現させる原料3の粒径をシミュレーションによって算出するための装置である。
【0018】
具体的には、情報処理装置10は、第一シミュレーション条件情報取得部11と、移動速度選択受付部12と、ダスト化率算出部13と、第一シミュレーション実行部14と、第二シミュレーション条件情報取得部15と、原料粒径選択受付部16と、第二シミュレーション実行部17と、原料粒径決定部18と、出力部19と、を備える。
【0019】
第一シミュレーション条件情報取得部11は、一次元の炉内温度分布を算出するシミュレーション(第一シミュレーション)の条件を示す情報(第一シミュレーション条件情報)を取得する。具体的には、第一シミュレーション条件情報は、ロータリーキルン1の構造、操業条件、第一シミュレーションの計算条件等を含む。
【0020】
ロータリーキルン1の構造の一例は、以下である。
・全長[m]:1
・内径[m]:0.3
・外径[m]:0.40
・内壁伝導率[W/mK]:1.28
・外壁断熱率[W/mK]:40
・吹き込み仕様:向流
・加熱方法:外部ヒーター(700℃)
【0021】
また、操業条件の一例は、以下である。
・回転数[rpm]:0.6
・安息角[°]:30
・物量移動時間[h]:5
・供給原料物量[kg/h]:4
・吹き込み空気量[L/min]:46.5
【0022】
また、計算条件の一例は、以下である。
・セルの数:40
・各物質の反応率、活性化温度
【0023】
第一シミュレーション条件情報取得部11は、上述した第一シミュレーション条件情報を、ユーザによる入力操作を受け付けて取得してもよいし、他の装置等から通信ネットワーク等を介して受信してもよい。
【0024】
移動速度選択受付部12は、ユーザによる移動速度の選択操作を受け付ける。移動速度とは、原料がベッド層からガス相に移動する速度である。なお、移動速度は、ガス相からベッド層に移動する速度であってもよく、これらの組み合わせであってもよい。
【0025】
移動速度選択受付部12は、1つまたは複数の移動速度の選択操作を受け付ける。例えば、移動速度選択受付部12は、15[1/m2]、3.5[1/m2]、1.5[1/m2]、0.35[1/m2]、0.15[1/m2]の選択操作を受け付けてもよい。移動速度選択受付部12が複数の選択操作を受け付けると、第一シミュレーション実行部14が、受け付けた分のシミュレーションをそれぞれ実行する。
【0026】
ダスト化率算出部13は、原料がダスト化する確率を示すダスト化率を算出する。具体的には、ダスト化率算出部13は、移動速度選択受付部12によって受け付けられた1つまたは複数の移動速度に基づいて、原料の移動速度ごとのダスト化率を算出する。具体的な算出方法については後述する。
【0027】
第一シミュレーション実行部14は、第一シミュレーションを実行して、原料の移動速度ごとに、一次元(ロータリーキルン1の長手方向、すなわちZ軸方向)の炉内温度分布(ベッド層、ガス相、内壁、外壁)を算出する。第一シミュレーションは、例えば、非特許文献1に記載の方法によるシミュレーションであってもよい。なお、第一シミュレーション実行部14は、一次元の炉内物量変化(ベッド層中の固体・溶融物・ガス、ガス相中の固体・溶融物・ガス)を算出してもよい。
【0028】
第二シミュレーション条件情報取得部15は、三次元混相流の流体計算によって原料の粒径と原料のダスト化率の関係を算出するシミュレーション(第二シミュレーション)の条件を示す情報(第二シミュレーション条件情報)を取得する。具体的には、第二シミュレーション条件情報は、ロータリーキルン1の構造、操業条件、第二シミュレーションの計算条件等を含む。
【0029】
ロータリーキルン1の構造の一例は、以下である。
・全長[m]:0.2
・内径[m]:0.3
・内壁伝導率[W/mK]:1.28
【0030】
また、操業条件の一例は、以下である。
・供給原料物量[kg/h]:1
・吹き込み空気量[L/min]:46.5
【0031】
また、計算条件の一例は、以下である。
・計算方法:混相流
・メッシュ数:15000
・時間幅[ms]:1
・計算時間[s]:5
【0032】
なお、第二シミュレーションでは、原料の粒径と原料のダスト化率の関係を算出することを目的としているため、影響の少ない要素(例えばロータリーキルン1の加熱、転動等)を省略してもよい。これによって、第二シミュレーションの計算量を削減させることができる。
【0033】
原料粒径選択受付部16は、ユーザによる原料粒径の選択操作を受け付ける。原料粒径は、第二シミュレーションの条件となる情報である。原料粒径選択受付部16は、1つまたは複数の原料粒径の選択操作を受け付ける。例えば、原料粒径選択受付部16は、1[μm]、2[μm]、3[μm]、4[μm]、5[μm]、10[μm]、50[μm]、100[μm]の選択操作を受け付けてもよい。原料粒径選択受付部16が複数の選択操作を受け付けると、第二シミュレーション実行部17が、受け付けた分のシミュレーションをそれぞれ実行する。
【0034】
第二シミュレーション実行部17は、第二シミュレーションを実行して、原料の粒径ごとに、体積分率(ベッド層、ガス相)を算出する。第二シミュレーションは、例えば、非特許文献2に記載の方法によるシミュレーションであってもよい。第二シミュレーション実行部17は、算出された体積分率に基づいて、原料の粒径と原料のダスト化率の関係を算出する。
【0035】
原料粒径決定部18は、第一シミュレーションの算出結果と第二シミュレーションの算出結果とに基づいて、所望の炉内温度分布を実現させるための原料の粒径を決定する。具体的には、第一シミュレーションの算出結果に基づいて、所望の炉内温度分布に近い炉内温度分布の移動速度およびダスト化率を決定する。ここで、原料粒径決定部18は、所望の炉内温度分布を示す情報を、ユーザの入力を受け付けることによって取得してもよいし、他の装置等から通信ネットワーク等を介して受信することによって取得してもよい。
【0036】
そして、原料粒径決定部18は、第二シミュレーションで算出した原料の粒径と原料のダスト化率の関係に基づいて、決定したダスト化率に対応する原料の粒径を決定する。
【0037】
出力部19は、決定した原料の粒径を出力する。具体的には、出力部19は、決定した原料の粒径をディスプレイ等の画面に表示する。なお、出力部19は、決定した原料の粒径を示す情報を、通信ネットワーク等を介して図示しない他の装置等に送信しても良い。例えば、設計装置が、受信した情報に基づいて、原料の選定、操業条件の設定等を行ってもよい。
【0038】
(情報処理装置の動作)
次に、情報処理装置10の動作について説明する。
【0039】
図3は、本発明の実施の形態に係る原料粒径探索処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0040】
ユーザの操作を受けて、第一シミュレーション条件情報取得部11は、第一シミュレーション条件情報を取得する(ステップS11)。
【0041】
次に、移動速度選択受付部12は、移動速度の選択を受け付ける。そして、ダスト化率算出部13は、移動速度に対応するダスト化率を算出する(ステップS12)。
【0042】
続いて、第一シミュレーション実行部14は、移動速度ごとに、第一シミュレーション条件情報に基づく第一シミュレーションを行い、ロータリーキルンにおける一次元の炉内温度分布を算出する(ステップS13)。
【0043】
そして、原料粒径決定部18は、所望の炉内温度分布に近い結果となるシミュレーション番号に対応するダスト化率を決定する(ステップS14)。
【0044】
次に、第二シミュレーション条件情報取得部15は、第二シミュレーション条件情報を取得する(ステップS15)。
【0045】
次に、原料粒径選択受付部16は、原料の粒径の選択を受け付ける(ステップS16)。
【0046】
続いて、第二シミュレーション実行部17は、第二シミュレーションによって、原料の粒径とダスト化率の関係を算出する(ステップS17)。
【0047】
次に、原料粒径決定部18は、第一シミュレーションの算出結果と第二シミュレーションの算出結果とに基づいて、所望の炉内温度分布を実現させるための原料の粒径を決定する(ステップS18)。
【0048】
出力部19は、決定した原料の粒径を表示する(ステップS19)。
【0049】
上述した各ステップの詳細については後述する。
【0050】
(情報処理装置のハードウェア構成)
次に、情報処理装置10のハードウェア構成について説明する。
【0051】
図4は、本発明の実施の形態に係る情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0052】
情報処理装置10は、コンピュータによって構成され、例えば、CPU(Central Processing Unit)101、主記憶装置102、補助記憶装置103、入力装置104、表示装置105、通信インターフェース装置106、ドライブ装置107を備える。これらの各装置は、バスで接続されている。
【0053】
CPU101は、情報処理装置10の動作を制御する主制御部であり、主記憶装置102に格納されたプログラムを読みだして実行することで、後述する各種の機能を実現する。
【0054】
主記憶装置102は、情報処理装置10の起動時に補助記憶装置103からプログラムを読み出して格納する。補助記憶装置103は、インストールされたプログラムを格納すると共に、後述する各種機能に必要なファイル、データ等を格納する。
【0055】
入力装置104は、各種の情報の入力を行うための装置であり、例えばキーボードやポインティングデバイス等により実現される。表示装置105は、各種の情報の表示を行うためものであり、例えばディスプレイ等により実現される。通信インターフェース装置106は、LANカード等を含み、他の装置等との接続の為に用いられる。
【0056】
本実施形態に係るプログラムは、情報処理装置10を制御する各種プログラムの少なくとも一部である。プログラムは、例えば記憶媒体108の配布やネットワークからのダウンロード等によって提供される。プログラムを記録した記憶媒体108は、CD-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等の様に情報を光学的、電気的或いは磁気的に記録する記憶媒体、ROM、フラッシュメモリ等の様に情報を電気的に記録する半導体メモリ等、様々なタイプの記憶媒体を用いることができる。
【0057】
また、プログラムは、プログラムを記録した記憶媒体108がドライブ装置107にセットされると、記憶媒体108からドライブ装置107を介して補助記憶装置103にインストールされる。ネットワークからダウンロードされたプログラムは、通信インターフェース装置106を介して補助記憶装置103にインストールされる。
【0058】
(ダスト化率の算出方法)
次に、
図3に示したステップS12において、ダスト化率算出部13が移動速度に基づいて原料のダスト化率を算出する方法について説明する。
【0059】
図5は、記号の内容について説明するための第一の図である。
図5は、ロータリーキルン1の断面を示している。ωは、ロータリーキルン1の回転速度を示す記号である。また、P
bgは、ベッド層とガス相との境界の断面長さを示す記号である。
【0060】
図6は、記号の内容について説明するための第二の図である。
図6は、ロータリーキルン1を長手方向(Z軸方向)にN個のセルに分割した場合におけるk番目のセル内の物量変化を示す記号について説明するための図である。
【0061】
mは物量を示す記号である。Δzはセルの長さである。添え字のbはベッド層、gはガス相を示す記号である。
【0062】
このとき、化合物jのベッド層での物量mbjのZ軸方向の移動速度は式1で表される。
【0063】
【0064】
ここで、k
bgjはベッド層からガス相への移動速度係数、P
bgはベッド層とガス相の境界面の長さ(
図5を参照)、R
bjは反応速度である。また、k番目のセル内の化合物jのベッド層の物量は式2のようになる。
【0065】
【0066】
他方、ダスト化率は、式3によって表される。
【0067】
【0068】
したがって、化合物jのベッド層からガス相への移動速度係数kbgjとダスト化率djの関係は、式4のようになる。
【0069】
【0070】
すなわち、ダスト化率算出部13は、
図3に示したステップS12において、式4の関係に基づいて、ダスト化率を算出する。
【0071】
【0072】
表1は、第一シミュレーションの条件として選択された移動速度と、
図3に示したステップS12の処理で算出されたダスト化率の一例を示している。
【0073】
(第一シミュレーションの算出結果)
次に、
図3に示したステップS13の処理における第一シミュレーションの算出結果について説明する。
【0074】
図7は、第一シミュレーションによって算出された炉内温度分布の一例を示す図である。グラフ801からグラフ805までは、それぞれ表1のシミュレーション番号1から5までの第一シミュレーションにおいて算出された炉内温度分布を示すグラフである。
【0075】
また、グラフ800は、一次元の炉内温度分布として所望の炉内温度分布を示すグラフである。
図3に示したステップS14の処理において、原料粒径決定部18は、所望の炉内温度分布(グラフ800)に近い結果となるシミュレーション番号(グラフ802に対応するシミュレーション番号2)に対応するダスト化率(表1より0.10)を決定する。
【0076】
なお、ダスト化率算出部13は、上述したステップS12の処理をステップS14に続いて実行してもよい。その場合、ステップS14では、原料粒径決定部18は、所望の炉内温度分布に近い結果となるシミュレーション番号を決定する。そして、ダスト化率算出部13は、決定されたシミュレーション番号に対応するダスト化率のみを算出してもよい。
【0077】
(第二シミュレーションの算出結果)
次に、
図3に示したステップS17における第二シミュレーションの算出結果について説明する。
【0078】
図8は、第二シミュレーションによって算出された原料の体積分率の一例を示す第一の図である。
図8は、原料の粒径が5[μm]における体積分率を示す図である。
【0079】
図9は、第二シミュレーションによって算出された原料の体積分率の一例を示す第二の図である。
図9は、原料の粒径が50[μm]における体積分率を示す図である。
【0080】
図8および
図9は、
図3に示したステップS17において算出された、ロータリーキルン1を長手方向(Z軸方向)分割されたN個のセルのうち、連続する複数のセル、例えば5つのセルにおける長手方向(Z軸方向)の平均体積分率である。第二シミュレーション実行部17は、N個分割したうちの5つのセルのそれぞれについて、
図8および
図9に示すように、体積分率を算出する。
【0081】
【0082】
表2は、
図3に示したステップS17において算出された原料の粒径とダスト化率の関係である。
【0083】
図10は、第二シミュレーションによって算出された原料の粒径とダスト化率の関係の一例を示す図である。
図10におけるグラフ906は、表2ように算出された原料の粒径とダスト化率の離散値の間を補間してグラフ化したものである。すなわち、原料粒径決定部18は、算出された原料の粒径とダスト化率の離散値の間を補間して、第一シミュレーションによって算出されたダスト化率の範囲内における原料の粒径とダスト化率の連続的な関係を算出してもよい。
【0084】
破線901から破線905までは、それぞれ表1のシミュレーション番号1から5までの第一シミュレーションにおいて算出されたダスト化率を示している。原料粒径決定部18は、第一シミュレーションによって決定されたダスト化率(破線902)に対応する原料の粒径を、原料の粒径とダスト化率の連続的な関係(グラフ906)によって、例えば4[μm]と算出する。
【0085】
実際、上述した第一シミュレーション条件では、ダスト化率0.14が最も燃焼効率が高いことが実験的に判明している。したがって、第一シミュレーションの結果として算出されたダスト化率が0.10であれば、簡易なシミュレーションの結果としては十分有効な値である。
【0086】
また、ダスト化率0.14に対応する原料の粒径は、約3[μm]である。したがって、第二シミュレーションの結果として算出された原料の粒径が4[μm]であれば、簡易なシミュレーションの結果としては十分有効な値である。例えば、ユーザは、算出された粒径に近い値を中心に実験を行うことによって、より正確な粒径を算出することができる。
【0087】
本実施の形態に係る情報処理装置10によれば、ロータリーキルンを用いた乾式製錬法において、一次元の炉内温度分布を算出するシミュレーション(第一シミュレーション)と、三次元混相流の流体計算によって原料の粒径と原料のダスト化率の関係を算出するシミュレーション(第二シミュレーション)とを実行する。そして、これら2つのシミュレーションを併用することによって、乾式製錬法における所望の原料の粒径を探索するための計算コストを削減させることができる。
【0088】
以上、本実施の形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施の形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、ロータリーキルンを用いた乾式製錬法における原料、操業条件等の設計に適用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 ロータリーキルン
2 加熱器
3 原料
4 注入部
5 射出部
10 情報処理装置
11 第一シミュレーション条件情報取得部
12 移動速度選択受付部
13 ダスト化率算出部
14 第一シミュレーション実行部
15 第二シミュレーション条件情報取得部
16 原料粒径選択受付部
17 第二シミュレーション実行部
18 原料粒径決定部
19 出力部
101 CPU
102 主記憶装置
103 補助記憶装置
104 入力装置
105 表示装置
106 通信インターフェース装置
107 ドライブ装置
108 記憶媒体