(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127266
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法、画像処理プログラム、及び画像処理システム
(51)【国際特許分類】
G06T 5/50 20060101AFI20230906BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
G06T5/50
G06T1/00 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030947
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山中 祐治
(72)【発明者】
【氏名】菊地 太郎
(72)【発明者】
【氏名】澤田 圭人
(72)【発明者】
【氏名】高巣 修作
【テーマコード(参考)】
5B057
【Fターム(参考)】
5B057AA16
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CE08
5B057CE16
5B057DA01
5B057DA16
5B057DA17
5B057DB02
5B057DB09
5B057DC25
(57)【要約】 (修正有)
【課題】構造物のカラー画像を効率良く取得可能とする画像処理装置、画像処理方法及び画像処理プログラムを提供する。
【解決手段】画像処理装置10は、撮像対象の構造物(例えばトンネル)のモノクロ画像を撮像するモノクロ画像撮像部11と、モノクロ画像に対応する構造物のカラー画像を撮像するカラー画像撮像部12と、カラー画像撮像部12により撮像されたカラー画像の色情報に基づき、カラー画像からモノクロ画像に重畳する領域である重畳領域82を抽出する重畳領域決定部16と、重畳領域決定部16により抽出された重畳領域を、モノクロ画像撮像部11により撮像されたモノクロ画像の対応位置に重畳して、重畳領域がカラー化される重畳画像を生成する重畳画像生成部18と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像対象の構造物のモノクロ画像を撮像するモノクロ画像撮像部と、
前記モノクロ画像に対応する前記構造物のカラー画像を撮像するカラー画像撮像部と、
前記カラー画像撮像部により撮像された前記カラー画像の色情報に基づき、前記カラー画像から前記モノクロ画像に重畳する領域である重畳領域を抽出する重畳領域決定部と、
前記重畳領域決定部により抽出された前記重畳領域を、前記モノクロ画像撮像部により撮像された前記モノクロ画像の対応位置に重畳して、前記重畳領域がカラー化される重畳画像を生成する重畳画像生成部と、
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記重畳領域決定部は、物理モデルから求めたパラメータを用いて前記色情報と比較を行い、比較結果に基づき前記重畳領域を抽出する、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記重畳画像生成部は、前記重畳領域決定部により抽出された前記重畳領域のみを前記モノクロ画像に重畳する、
請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記重畳画像生成部は、前記重畳領域決定部により抽出された前記重畳領域の周囲を含む所定領域を前記モノクロ画像に重畳する、
請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記重畳画像生成部は、前記重畳領域を強調表示する標識を追加して前記重畳画像を生成する、
請求項3または4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記構造物は点検対象のトンネルであり、
前記モノクロ画像、前記カラー画像は、前記トンネルの壁面を撮像した画像であり、
前記重畳領域は、前記壁面において異常が発生している可能性のある部分である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
撮像対象の構造物のモノクロ画像を撮像するモノクロ画像撮像ステップと、
前記モノクロ画像に対応する前記構造物のカラー画像を撮像するカラー画像撮像ステップと、
前記カラー画像撮像ステップにおいて撮像された前記カラー画像の色情報に基づき、前記カラー画像から前記モノクロ画像に重畳する領域である重畳領域を抽出する重畳領域決定ステップと、
前記重畳領域決定ステップにおいて抽出された前記重畳領域を、前記モノクロ画像撮像ステップにおいて撮像された前記モノクロ画像の対応位置に重畳して、前記重畳領域がカラー化される重畳画像を生成する重畳画像生成ステップと、
を含む画像処理方法。
【請求項8】
撮像対象の構造物のモノクロ画像を撮像するモノクロ画像撮像機能と、
前記モノクロ画像に対応する前記構造物のカラー画像を撮像するカラー画像撮像機能と、
前記カラー画像撮像機能により撮像された前記カラー画像の色情報に基づき、前記カラー画像から前記モノクロ画像に重畳する領域である重畳領域を抽出する重畳領域決定機能と、
前記重畳領域決定機能により抽出された前記重畳領域を、前記モノクロ画像撮像機能により撮像された前記モノクロ画像の対応位置に重畳して、前記重畳領域がカラー化される重畳画像を生成する重畳画像生成機能と、
をコンピュータに実行させる画像処理プログラム。
【請求項9】
モノクロカメラと、
カラーカメラと、
請求項1~6のいずれか一項に記載の画像処理装置と、
を備える画像処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法、画像処理プログラム、及び画像処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルなどの構造物の維持管理において、従来の現場で目視確認などを行う人力での点検の代わりに、現場では構造物の撮像までを行い、構造物の撮像画像に基づき、撮影画像を確認して点検する手法や、撮影画像を画像処理によって自動的に判定を行い、管理作業を短時間で効率良く行う手法が知られている。
【0003】
ここで、撮影画像の解像度という観点では、カラー画像よりもモノクロ画像のほうが有利であるが、例えば、構造物の表面のひび割れや水漏れなどの変状の状態や点検時の構造物にチョーク等で記された書き込み等などを確認するという観点では、モノクロ画像よりもカラー画像のほうが望ましい。
【0004】
特許文献1には、画像処理装置において、複数の画像データを処理し重畳することでカラー画像を生成する手法において、重畳する画像を表示する色成分の配色を自由に選択可能とする手法について開示されている。
【0005】
特許文献2には、構造物の変異の計測を高精度に行われるとともに、計測結果をわかりやすく提示することを目的として、モノクロ画像とカラー画像を重畳する情報提示装置について開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カラー画像を取得するために特許文献1,2に記載の従来手法を適用すると、モノクロ画像をカラー化する際に、画像全体をカラー化すると処理に時間やコストが掛かる。このため、効率的にカラー化する(所望のカラー画像を得る)という観点で改善の余地がある。
【0007】
本発明は、構造物のカラー画像を効率良く取得可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の一観点に係る画像処理装置は、撮像対象の構造物のモノクロ画像を撮像するモノクロ画像撮像部と、前記モノクロ画像に対応する前記構造物のカラー画像を撮像するカラー画像撮像部と、前記カラー画像撮像部により撮像された前記カラー画像の色情報に基づき、前記カラー画像から前記モノクロ画像に重畳する領域である重畳領域を抽出する重畳領域決定部と、前記重畳領域決定部により抽出された前記重畳領域を、前記モノクロ画像撮像部により撮像された前記モノクロ画像の対応位置に重畳して、前記重畳領域がカラー化される重畳画像を生成する重畳画像生成部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
構造物のカラー画像を効率良く取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る画像処理システムの概略構成を示す斜視図
【
図2】画像処理システムによるトンネルの壁面の撮像方法を説明する図
【
図3】実施形態に係る画像処理装置の機能ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0012】
なお、以下の説明において、x方向、y方向、z方向は互いに垂直な方向である。x方向及びy方向は水平方向であり、z方向は鉛直方向である。x方向はモノクロカメラユニット20、カラーカメラユニット30、形状測定ユニット40の配列方向であり、画像処理システム1が車両100に設置されたときの車両100の前後方向である。y方向は、画像処理システム1が車両100に設置されたときの車両100の幅方向(左右方向)である。また、以下では説明の便宜上、z正方向側を上側、z負方向側を下側とも表現する場合がある。
【0013】
実施形態に係る画像処理システム1は、構造物を点検するために撮影した画像をカラー化するものである。以下では、構造物の一例としてトンネル200を例示して説明する。この場合、画像処理システム1は、トンネル200の壁面201を撮影した画像をカラー化する。
【0014】
なお、トンネル200等の構造物の検査においては、ヒビ等の変状箇所に撮影前にチョーク等で印をつける(例えば、丸で囲む)等の作業を行っており、このチョーク等でつけた印を目立たせることも、画像をカラー化する一つの目的である。
【0015】
図1は、実施形態に係る画像処理システム1の概略構成を示す斜視図である。
図1に示すように、画像処理システム1は、画像処理装置10と、モノクロカメラユニット20と、カラーカメラユニット30と、形状測定ユニット40を備える。
【0016】
画像処理装置10は、モノクロカメラユニット20、カラーカメラユニット30、及び形状測定ユニット40の動作を制御して、各ユニットから取得した情報に基づいて構造物点検用の画像(本実施形態では後述する重畳画像80(
図6参照))を生成する。
【0017】
モノクロカメラユニット20は、検査対象のトンネル壁面201のモノクロ画像81(
図6参照)を撮像する装置ある。モノクロカメラユニット20は、複数組(
図1の例では3組)のモノクロカメラ21と照明22とを有する。モノクロカメラ21は、トンネル壁面201のモノクロ画像を撮像する。照明22は、対応するモノクロカメラ21の撮像領域を照射する。
図1に示すように、モノクロカメラ21と照明22の各組は、それぞれ異なる方向に向いて配置されている。これにより、一度の処理で撮像可能なトンネル壁面201の領域を増加できる。トンネル壁面201の半分以上を一度に撮像できるように各組が配置されるのが好ましい。
【0018】
カラーカメラユニット30は、検査対象のトンネル壁面201のカラー画像を撮像する装置である。カラーカメラユニット30は、複数組(
図1の例では3組)のカラーカメラ31と照明32とを有する。カラーカメラ31は、トンネル壁面201のカラー画像を撮像する。照明32は、対応するカラーカメラ31の撮像領域を照射する。
図1に示すように、カラーカメラ31と照明32の各組は、それぞれ異なる方向に向いて配置されている。これにより、一度の処理で撮像可能なトンネル壁面201の領域を増加できる。トンネル壁面の半分以上を一度に撮像できるように各組が配置されるのが好ましい。
【0019】
また、カラーカメラ31と照明32の組数と、各組の設置方向は、モノクロカメラ21と照明22の組数と各組の方向と同一である。これにより、各モノクロカメラ21が撮像するモノクロ画像81に対応するカラー画像を撮像することができる。
【0020】
形状測定ユニット40は、検査対象のトンネル壁面201の三次元形状を測定する装置である。形状測定ユニット40は、形状測定手段として例えば周知のライダ(Lidar:Light Detection and Ranging または Laser Imaging Detection and Ranging)センサ41を備える。なお、形状測定ユニット40は、検査対象の形状を測定できる機能があればライダセンサ41以外の要素を用いてもよい。
【0021】
また、画像処理システム1は、フレーム50を備える。フレーム50は、例えば
図1に示すように複数の長尺状の部材をx方向及びy方向に組み合わせて、上方に水平面状の設置領域を有するように形成される。モノクロカメラユニット20、カラーカメラユニット30、及び形状測定ユニット40は、それぞれフレーム50上に固設される。
図1の例では、モノクロカメラユニット20、カラーカメラユニット30、形状測定ユニット40の順でx方向に沿って配列される構成を例示しているが、配列順はこれに限られない。
【0022】
また、フレームの幅方向(y方向)の両側端部には、下方に突出して固定具60が設けられる。固定具60は、車両100のルーフなどに固定可能に構成される。固定具60は、フレーム50の各端部において、x方向に沿って複数個ずつ設けられるのが好ましい。
【0023】
なお、画像処理装置10は、有線または無線によって各ユニットと通信可能に接続されていればよく、モノクロカメラユニット20などと共にフレーム上に設置されてもよいし、遠隔位置に設置されてもよい。
【0024】
図2は、画像処理システム1によるトンネル200の壁面201の撮像方法を説明する図である。
図2には、検査対象のトンネル200の進行方向と直交する断面が示される。つまり、トンネル200の断面線から内側に向かって壁面201が存在する。
【0025】
本実施形態の画像処理システム1は、トンネル200内の道路210を走行する車両100のルーフ部分の上に固定具60を介して搭載されて使用される。
図2では、車両100が紙面奥側に向けて走行している状態を図示している。画像処理システム1は、モノクロカメラユニット20、カラーカメラユニット30の各カメラ21、31の光軸方向が車両左側(路肩側)や上側を向くように設置される。このとき、画像処理システム1は、図面上ではトンネル200の断面に沿った壁面201の概ね左半分(車両からみて路肩側の半分)を撮影することができる。
【0026】
ここで、各カメラユニット20、30の複数のカメラ21、31で撮像する画像は、それぞれ撮像領域がオーバーラップしていることが望ましい。これにより、車両100を移動させながら各カメラユニット20、30による撮像を行うことで、トンネル200の入口から出口までにおいて、紙面に対して左側半分の壁面201を漏れなく撮像できる。
【0027】
また、各カメラユニット20、30の撮像と併せて、形状測定ユニット40のライダセンサ41が放射状に光線を射出し、トンネル200の断面形状情報を取得する。図中の破線は射出光線Lを模式的に示したものである。実際の光線Lの本数はより多く、トンネル200の断面形状を高密度に測定できる。
【0028】
図2の例では、トンネル200内では道路210の路肩側に歩道220がある。このため、車両100は、歩道220がない場合と比較して、トンネル200の路肩側の壁面201から遠い位置を移動している。このように、車両100が道路210の最も路肩側の斜線を走行している条件が共通であっても、歩道220の有無によって壁面201との距離が異なるので、各カメラユニット20、30の撮像範囲も異なる。この相違を補完するため、例えば各カメラユニット20、30を車両100の幅方向(y方向)に沿って水平移動可能な構成としてもよい。これにより、歩道220の有無に依存せずに一度に撮像できる壁面201の範囲を均一化できる。
【0029】
例えば、各カメラユニット20、30の撮像範囲は、トンネル200の壁面201と地面との境目までを撮像できるように調整されるのが好ましい。これにより、
図2に示す断面線に沿って壁面201の全範囲を撮像することが可能となり、各カメラユニット20、30の撮像画像に基づく検査の精度を向上できる。
【0030】
図3は、実施形態に係る画像処理装置10の機能ブロック図である。
図3に示すように、画像処理装置10は、上記のトンネル壁面201の検査用画像を撮像する機能に関して、モノクロ画像撮像部11と、カラー画像撮像部12と、モノクロ画像記憶部13と、カラー画像記憶部14と、色情報処理部15と、重畳領域決定部16と、形状測定部17と、重畳画像生成部18と、重畳画像記憶部19と、を備える。
【0031】
モノクロ画像撮像部11は、モノクロカメラユニット20の複数のモノクロカメラ21と照明22とを制御して、撮像対象の構造物(本実施形態ではトンネル200の壁面201)のモノクロ画像81(
図6参照)を撮像する。
【0032】
カラー画像撮像部12は、カラーカメラユニット30の複数のカラーカメラ31と照明32とを制御して、モノクロ画像81に対応する構造物のカラー画像を撮像する。
【0033】
モノクロ画像記憶部13は、モノクロ画像撮像部11により撮像されたモノクロ画像81を記憶する。
【0034】
カラー画像記憶部14は、カラー画像撮像部12により作成されたカラー画像を記憶する。
【0035】
色情報処理部15は、カラー画像撮像部12により撮像されたカラー画像の色情報を算出する。
【0036】
重畳領域決定部16は、色情報処理部15により算出されたカラー画像の色情報に基づき、カラー画像からモノクロ画像81に重畳する領域である重畳領域82(
図6参照)を抽出する。
【0037】
形状測定部17は、形状測定ユニット40のライダセンサ41を制御して、撮像対象(トンネル200の壁面201)の形状を測定する。
【0038】
重畳画像生成部18は、重畳領域決定部16により抽出された重畳領域82を、モノクロ画像撮像部11により撮像されたモノクロ画像81の対応位置に重畳して、重畳領域82がカラー化される重畳画像80(
図6参照)を生成する。なお、重畳画像生成部18は、複数のモノクロカメラ21及びカラーカメラ31により同時に撮像された複数の画像をカメラ配置などに応じて合成して、一枚の重畳画像80として纏めて生成してもよい。
【0039】
重畳画像記憶部19は、重畳画像生成部18により生成された重畳画像80を記憶する。
【0040】
重畳画像生成部18により生成された重畳画像80は、画像処理システム1の内部または外部に設けられる表示装置70に表示される構成でもよい。
【0041】
図4は、画像処理装置10のハードウェア構成図である。
図4に示すように、画像処理装置10は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)101、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)102およびROM(Read Only Memory)103、入力デバイスであるキーボード及びマウス等の入力装置104、ディスプレイ等の出力装置105、ネットワークカード等のデータ送受信デバイスである通信モジュール106、補助記憶装置107、などを含むコンピュータシステムとして構成することができる。
【0042】
図3を参照して説明した画像処理装置10の各機能は、CPU101、RAM102等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェア(画像処理プログラム)を読み込ませることにより、CPU101の制御のもとで通信モジュール106、入力装置104、出力装置105を動作させるとともに、RAM102や補助記憶装置107におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。すなわち、本実施形態に係る画像処理プログラムをコンピュータ上で実行させることで、画像処理装置10は、
図3のモノクロ画像撮像部11と、カラー画像撮像部12と、モノクロ画像記憶部13と、カラー画像記憶部14と、色情報処理部15と、重畳領域決定部16と、形状測定部17と、重畳画像生成部18と、重畳画像記憶部19として機能する。
【0043】
図5を参照して、実施形態に係る画像処理方法について説明する。
図5は、重畳画像生成処理のフローチャートである。
図5の各処理は、画像処理装置10により実施される。
【0044】
ステップS1では、色情報処理部15は、カラー画像の各画素について色情報を求める。色情報処理部15は、例えばカラー画像記憶部14からカラー画像の情報を取得する。カラー画像がRGBカラー画像である場合、色情報は、赤、緑、青チャンネルそれぞれの値をそのまま用いてもよいし、各チャンネル間の比を用いてもよい。または、RGBからHSV表色系に変換し、色相、彩度、明度を求めて、これらの情報を色情報としてもよい。
【0045】
ステップS2では、重畳領域決定部16により、ステップS1で算出された色情報に基づき、重畳する領域(カラー画像からモノクロ画像81に重畳する領域である重畳領域82)の範囲が決定される。重畳領域決定部16は、例えば、色情報処理部15で求めた色情報の各値と、あらかじめ設定しておいた重畳領域決定パラメータとを比較処理し、その結果に基づき重畳領域82の範囲を決定する。重畳領域決定部16は、決定した重畳領域82の画素の座標情報を重畳画像生成部18に送る。
【0046】
重畳領域決定部16の比較処理の一例を下記の(1)式に示す。
【0047】
【0048】
上記(1)式のaは重畳領域決定パラメータである。R、G、Bは、それぞれ色情報処理部15が算出した赤、緑、青チャンネルに対応する値である。例えばa=0.1としたときに、ある画素についての(1)式の出力が1の場合、赤チャンネルの強度が他のチャンネルよりも強いことを意味する。このため、赤色の変状等が写っている領域を重畳領域82として決定することができる。
【0049】
または、色情報処理部15でHSV表色系に変換した場合は、色相Hについて、重畳領域決定パラメータを色環の角度-60度から+60度とし、Hの値と比較する。色相Hの値が重畳領域パラメータの範囲に収まっていたら、赤色の変状領域であるとして1を出力し、重畳領域82としてその画素の座標情報を重畳画像生成部18に送る。
【0050】
ステップS3では、重畳画像生成部18により、カラー画像記憶部14のカラー画像のうち、ステップS2で決定した重畳領域82について、モノクロ画像記憶部13のモノクロ画像81と重畳して、重畳画像80が生成される。重畳画像生成部18は、画像全体ではなく、重畳領域決定部16での比較結果に基づき、モノクロ画像81とカラー画像を重畳する。例えば、カラー画像のうち重畳領域決定部16の比較結果出力が1の座標の画素についてのみ、モノクロ画像81への重畳処理を行い、重畳画像80を生成する。
【0051】
重畳処理の詳細を述べる。
図1のようにモノクロカメラ21とカラーカメラ31が車両100の進行方向(x方向)に沿って並んでいて、かつ、レンズの焦点距離などの仕様が同じで、かつシャッターの同期がとれている場合、モノクロ画像81とカラー画像の座標系は設置位置の分だけ並進させた関係なので、重畳領域決定部16からの座標情報と設計時に既知である並進情報により位置ずれなく重畳することができる。
【0052】
または、モノクロカメラ21とカラーカメラ31の配置が
図1のように車両100の進行方向に沿って並んでおらずレンズの仕様が異なる場合もあり得る。この場合でも、シャッターの同期がとれていれば、各カメラ21、31とライダセンサ41との相対的な位置関係と、壁面201と各カメラ21、31との位置関係の情報により、位置ずれなく重畳することができる。各カメラ21、31とライダセンサ41との相対的な位置関係は、設計時に既知の情報である。壁面201と各カメラ21、31との位置関係は、ライダセンサ41の測定結果から求まる。例えば、形状測定部17が測定した壁面201の形状から、ライダセンサ41から壁面201までの距離を算出でき、さらに、各カメラ21、31とライダセンサ41との相対的な位置関係から壁面201と各カメラ21、31との距離が算出でき、壁面201と各カメラ21、31との位置関係を求めることができる。このように、モノクロカメラ21とカラーカメラ31の配置が
図1のように車両100の進行方向に沿って並んでおらず、かつ、レンズの仕様が異なる場合でも、特許文献2に記載されているようなSIFTなどの特徴量を用いたマッチング処理を行わずとも、位置ずれなく簡易に重畳処理を行うことができる。
【0053】
また、各カメラ21、31のシャッターの同期がとれておらずにずれている場合でも、そのずれを撮影の事前あるいは事後に知ることができれば、同様にマッチング処理を行わずとも、位置ずれなく簡易に重畳処理を行うことができる。
【0054】
モノクロ画像81にカラー画像の重畳領域82を重畳する際には、重畳領域決定部16で出力1の画素のみを重畳してもよいし、出力1の画素を含む矩形領域などの所定範囲を重畳してもよい。また、重畳領域82の周囲を枠線83などで囲み、重畳領域82を強調表示してわかりやすくしてもよい。
【0055】
ステップS4では、重畳画像生成部18により、生成した重畳画像80が重畳画像記憶部19に記憶される。また、生成した重畳画像80を、画像処理システム1の内部または外部の表示装置70に表示させてもよい。
【0056】
図6は、重畳画像80の一例を示す図である。
図6の例では、赤錆が写っている画素を模様付の領域として図示しており、これらの画素を重畳領域82と判定している。そして、カラー画像のうち重畳領域82を含む矩形領域をモノクロ画像81に重畳している。さらに、重畳領域82の周囲を枠線83で囲んで、重畳領域82を強調表示している。
【0057】
このように重畳領域82を明示することで、赤錆等の変状やチョーキングといったカラー画像で確認したい箇所を、単純にモノクロ画像81とカラー画像全体とを重畳した場合と比較して、効率よく画像確認をすることが可能となる。また、覆工表面のひびの幅はトンネル点検において修復作業の必要性を判断するための重要な項目であり、0.1mm程度の精度でひび幅を判別することが要求される。そのためには高解像度の壁面画像が必要であり、この観点からも必要な領域だけカラー画像を重畳するほうが好ましい。なぜならば、カラーセンサ(カラーカメラ31の撮像画像)は一般的にモノクロセンサ(モノクロカメラ21の撮像画像)よりも解像度が低い(モノクロセンサにカラーフィルタをのせてカラー化しているため)ためである。
【0058】
なお、
図6の例では、重畳画像80に枠線83を追加する構成を例示したが、少なくとも重畳領域82を強調表示できればよく、例えば矢印など枠線83以外の標識を表示させる構成でもよい。これにより、重畳画像80の中で重畳領域82をより際立たせることができ、効率よく画像確認をすることが可能となる。
【0059】
また、
図6の例では、重畳されるカラー画像の部分は、重畳領域82を含む矩形の領域(枠線83で囲まれる部分)であるが、この代わりにカラー画像から重畳領域82のみをモノクロ画像81に重畳させ、
図6の例と同様に重畳領域82の周囲に矩形などの枠線83を表示する構成でもよい。
【0060】
ここで、重畳領域決定部16の重畳領域決定パラメータaの決定手法についてさらに説明する。
【0061】
カラーカメラ31で撮像したカラー画像に含まれる各画素の画素値(8bit画像であれば0~255が一般的)は、照明光の分光放射照度やセンサの分光感度などから、下記の(2)式により理論値を計算することができる。
【0062】
【0063】
ここでpは画素値であり、i(λ)は被写体に当たっている光の分光放射照度であり、s(λ)はラインセンサの分光感度であり、r(λ)は被写体の分光反射率である。tは時間であり、画素値pが露光時間tに比例することを意味する。Kは光量から画素値に変換する係数である。
【0064】
カラーカメラ31の各チャンネルの画素値pR、pG、pBは、上位の(2)式のs(λ)をそれぞれ各チャンネルの分光感度sR(λ)、sG(λ)、sB(λ)とすることで計算できる。これらの値はセンサの仕様に含まれており既知である。
【0065】
また、i(λ)は太陽光やトンネル壁面201に設置された照明光が含まれるが、トンネル200の内部においては、画像処理システム1に具備された照明22、32の成分が支配的であり、これも設計時に既知である。
【0066】
赤錆は酸化鉄が主成分なので、例えば酸化鉄の分光反射率r(λ)を文献で調べ、あるいはサンプルがあればその分光反射率を実測して求めることができる。
【0067】
これらの値を(2)式に代入し、RGB各チャンネルの理論上の画素値を求め、重畳領域決定パラメータとして用いることができる。
【0068】
例えば、各チャンネルについての以下の3つの条件式の(3)~(5)式を全て満足した場合に1を出力し、重畳領域82としてその画素の座標情報を重畳画像生成部18に送ればよい。
【0069】
pR(1-c) < R < pR(1+c) ・・・(3)
pG(1-c) < G < pG(1+c) ・・・(4)
pB(1-c) < B < pB(1+c) ・・・(5)
【0070】
ここで、上記(3)~(5)式中のcは、各理論値からの乖離率であり、例えば10[%]である。
【0071】
このように物理モデルにより重畳領域決定パラメータを定めることで、過剰な検出や検出もれの少ない、より適切な重畳領域82の決定が期待でき、また、それまでに撮影したことが無い変状についてもパラメータを設定することが可能となる。
【0072】
また、本実施形態の画像処理システム1が具備するカメラ21、31のセンサの感度波長域は可視域でなくともよい。例えば、赤外領域であれば温度分布を可視化することができ、コンクリートの浮きがあるところと無いところでは、伝熱特性が異なるため赤外線カメラを使うことで変状を検出することが可能である。このように各カメラ21、31の感度波長域を可視域外も含めることによって、検査対象の構造物の性質に応じてより検査精度の高い波長域を適用可能となるので、汎用性を高めることができる。
【0073】
本実施形態に係る画像処理システム1は、撮像対象の構造物(例えばトンネル200)のモノクロ画像81を撮像するモノクロ画像撮像部11と、モノクロ画像81に対応する構造物のカラー画像を撮像するカラー画像撮像部12と、カラー画像撮像部12により撮像されたカラー画像の色情報に基づき、カラー画像からモノクロ画像81に重畳する領域である重畳領域82を抽出する重畳領域決定部16と、重畳領域決定部16により抽出された重畳領域82を、モノクロ画像撮像部11により撮像されたモノクロ画像81の対応位置に重畳して、重畳領域82がカラー化される重畳画像80を生成する重畳画像生成部18と、を備える。
【0074】
この構成により、撮像画像全体をカラー化するのではなく、撮像画像のうち必要な個所のみをカラー化することでカラー化処理を効率化することが可能となり、構造物のカラー画像を効率良く取得できる。また、必要な個所のみをカラー化された重畳画像80では、全体がカラー化されたカラー画像と比較して、カラー化された部分を際立たせることができるので、重畳画像80を利用すれば構造物の点検における画像確認作業も効率化できる。
【0075】
また、本実施形態では、構造物は点検対象のトンネル200である。モノクロ画像撮像部11及びカラー画像撮像部12により撮像されるモノクロ画像及びカラー画像は、トンネル200の壁面201を撮像した画像である。重畳領域決定部16により抽出される重畳領域82は、壁面201において異常が発生している可能性のある部分である。
【0076】
トンネル200等の構造物の検査においては、構造物を撮影した画像全体をカラー化するのではなく、ヒビ等の変状箇所についてのみカラー化すれば良い。さらに言えば、画像全体をカラー化するより、変状箇所等の点検が必要な個所のみをカラー化するほうが、構造物の点検作業では効率的である。したがって、本実施形態に係る画像処理システム1は、トンネル200の壁面201など、点検対象の構造物に対する点検作業用の画像として、重畳画像80を作成する場合に特に有用である。
【0077】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0078】
1 画像処理システム
10 画像処理装置
11 モノクロ画像撮像部
12 カラー画像撮像部
16 重畳領域決定部
18 重畳画像生成部
21 モノクロカメラ
31 カラーカメラ
80 重畳画像
81 モノクロ画像
82 重畳領域
200 トンネル(構造物)
201 壁面
【先行技術文献】
【特許文献】
【0079】
【特許文献1】特許第5979336号公報
【特許文献2】国際公開第2020/090154号