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特開2023-127349ハードマスク、基板処理方法、およびハードマスクの除去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127349
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】ハードマスク、基板処理方法、およびハードマスクの除去方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031091
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】李 暁竜
(72)【発明者】
【氏名】前原 大樹
(72)【発明者】
【氏名】石橋 翔太
(72)【発明者】
【氏名】北田 亨
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA02
5F004AA04
5F004BA09
5F004BB13
5F004CA06
5F004DA00
5F004DA04
5F004DA11
5F004DA15
5F004DA18
5F004DA23
5F004DA25
5F004DA26
5F004DB01
5F004DB02
5F004DB03
5F004DB07
5F004DB13
5F004EA03
5F004EA28
(57)【要約】
【課題】加工対象物に対する選択比が高く、薄膜化することが可能なハードマスク、基板処理方法、およびハードマスクの除去方法を提供する。
【解決手段】加工対象物のエッチングに用いられるハードマスクは、ガリウム、インジウム、および亜鉛の1種または2種以上を含む酸化物を含む。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物のエッチングに用いられるハードマスクであって、ガリウム、インジウム、および亜鉛の1種または2種以上を含む酸化物を含む、ハードマスク。
【請求項2】
前記加工対象物はシリコン含有膜である、請求項1に記載のハードマスク。
【請求項3】
前記加工対象物のエッチングは、フッ素含有ガスを用いて行われる、請求項1または請求項2に記載のハードマスク。
【請求項4】
前記ガリウム、インジウム、および亜鉛の1種または2種以上を含む酸化物はアモルファスである、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のハードマスク。
【請求項5】
前記ガリウム、インジウム、および亜鉛の1種または2種以上を含む酸化物は、InGaZnO、InZnO、GaZnO、Inのいずれかである、請求項4に記載のハードマスク。
【請求項6】
加工対象物を有する基板を準備する工程と、
前記加工対象物の上にガリウム、インジウム、および亜鉛の1種または2種以上を含む酸化物を含むハードマスクを形成する工程と、
前記ハードマスクを所望のパターンにエッチングする工程と、
前記ハードマスクをマスクとして前記加工対象物をエッチングする工程と、
を有する基板処理方法。
【請求項7】
前記加工対象物はシリコン含有膜である、請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記加工対象物をエッチングする工程は、フッ素含有ガスを用いて行われる、請求項6または請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記ガリウム、インジウム、および亜鉛の1種または2種以上を含む酸化物はアモルファスである、請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記ガリウム、インジウム、および亜鉛の1種または2種以上を含む酸化物は、InGaZnO、InZnO、GaZnO、Inのいずれかである、請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記ハードマスクを成膜する工程は、PVDにより行われる、請求項6から請求項10のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記ハードマスクをエッチングする工程および前記加工対象物をエッチングする工程は、プラズマを用いた異方性エッチングにより行われる、請求項6から請求項11のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記ハードマスクを所望のパターンにエッチングする工程は、フォトリソグラフィによりパターニングを行った後、前記パターニングにより形成されたパターンで前記ハードマスクをエッチングする、請求項6から請求項12のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記加工対象物をエッチングする工程の後、前記ハードマスクにBClとOとの混合ガスを供給して前記ハードマスクを改質した後、純水洗浄することにより前記ハードマスクを除去する工程をさらに有する、請求項6から請求項13のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項15】
加工対象物を、ガリウム、インジウム、および亜鉛の1種または2種以上を含む酸化物を含むハードマスクをマスクとしてエッチングした後、前記ハードマスクを除去するハードマスクの除去方法であって、
前記ハードマスクにBClとOとの混合ガスを供給して前記ハードマスクを改質する工程と、
前記ハードマスクを改質した後、純水洗浄を行い、前記ハードマスクを除去する工程と、
を有する、ハードマスクの除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハードマスク、基板処理方法、およびハードマスクの除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいては、Si含有膜等の所定の膜をプラズマエッチングによりトレンチやホール等に加工する工程が存在する。エッチングの際のマスクとしては、従来からレジストマスクが用いられているが、パターンの微細化にともないレジストマスクのみではエッチング耐性が不十分であるため、ハードマスクが用いられるようになっている。
【0003】
特許文献1には、ハードマスクとして、SiN膜、SiO膜、SiON膜、SiC膜、アモルファスSi膜(a-Si膜)、TiN膜のいずれかを組み合わせることが記載されている。一方、特許文献2には、SiO膜にトレンチ等の凹部を形成する際に用いるハードマスクとして、a-Si膜やアモルファスカーボン膜(a-C膜)を用いることが記載されている。また、特許文献3には、シリコン含有膜をエッチングする際のハードマスクとして、タングステンを含む膜と、ジルコニウムまたはチタンおよび酸素を含む膜を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-37162号公報
【特許文献2】特開2013-179218号公報
【特許文献3】特開2021-141260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、加工対象物に対する選択比が高く、薄膜化することが可能なハードマスク、基板処理方法、およびハードマスクの除去方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るハードマスクは、加工対象物のエッチングに用いられるハードマスクであって、ガリウム、インジウム、および亜鉛の1種または2種以上を含む酸化物を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、加工対象物に対する選択比が高く、薄膜化することが可能なハードマスク、基板処理方法、およびハードマスクの除去方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係るハードマスクを用いて加工対象物をエッチングする一連の工程を有する基板処理方法を示すフローチャートである。
図2図1の基板処理方法のステップST1における基板の一例を示す図である。
図3図1の基板処理方法のステップST2の状態の一例を示す図である。
図4図1の基板処理方法のステップST3の状態の一例を示す図である。
図5図1の基板処理方法のステップST4の状態の一例を示す図である。
図6図1の基板処理方法のステップST5の状態の一例を示す図である。
図7図1の基板処理方法のステップST6の状態の一例を示す図である。
図8】改質処理と純水洗浄によりハードマスクを除去する方法を説明するための図である。
図9】ハードマスクの成膜に用いられる成膜装置の一例を示す断面図である。
図10】ハードマスクのエッチングおよび加工対象物のエッチングに用いられるプラズマエッチング装置の一例を示す断面図である。
図11】実験例1の結果を示す図である。
図12】実験例2の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施の形態について具体的に説明する。
【0010】
<経緯および概要>
まず、経緯および概要について説明する。
半導体デバイスの製造プロセスにおいては、微細化が進み、より高アスペクト比のエッチング加工工程が増加している。特に、DRAMのキャパシタや3DNANDでは、極めて高いアスペクト比のエッチング加工が求められる。例えば、DRAMのキャパシタでは、CD(Critical Dimension)が20nm以下、深さが1.0μm以上であるアスペクト比が50以上の加工が要求される。
【0011】
高アスペクト比のエッチング工程においては、加工対象物のエッチングレートが下がる傾向があり、ハードマスクの消耗が大きくなるため、ハードマスクを厚く形成する必要がある。しかし、ハードマスクの膜厚を厚くすると、最終的に加工対象物の開口部のラフネスを劣化させてしまう。従来、比較的高い選択比が得られるハードマスクとしてアモルファスシリコン膜、poly-Si膜、アモルファスカーボン膜、TiN膜、タングステン含有膜(例えばWSi膜)等が用いられているが、これらよりもさらに高い選択比が得られ、より薄膜化することが可能なハードマスクが求められる。
【0012】
発明者らは、高い選択比が得られ、より薄膜化することが可能なハードマスクを検討した。その結果、ハードマスクとして、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)の1種または2種以上を含む酸化物を用いることが有効であることが見出された。
【0013】
このようなハードマスクを用いた処理方法の一例は、基体上に加工対象物が形成された基板を準備する工程と、加工対象物の上にGa、In、Znの1種または2種以上を含む酸化物を含むハードマスクを成膜する工程と、ハードマスクを所望のパターンにエッチングする工程と、エッチングされたハードマスクを用いて加工対象膜をエッチングする工程を有する。このような処理方法により、薄いハードマスクを用いることができ、加工対象膜の開口部におけるラフネスの劣化を抑制することができる。
【0014】
<具体的な実施形態>
以下、具体的な実施形態について説明する。
ここでは、一実施形態に係るハードマスクを用いて加工対象物をエッチングする一連の工程を有する基板処理方法について説明する。
【0015】
図1はこのような基板処理方法を示すフローチャートである。図1に示すように、この方法では、加工対象物を有する基板を準備し(ステップST1)、加工対象物の上にハードマスクを成膜し(ステップST2)、ハードマスクをパターニングし(ステップST3)、ハードマスクをエッチングし(ステップST4)、加工対象物をエッチングし(ステップST5)、ハードマスクを除去する(ステップST6)。
【0016】
ステップST1の基板としては、図2に示すように、基体201上にエッチングが行われる加工対象物202が形成された基板200が例示される。基体201上に加工対象物202の下地膜を有していてもよい。基板200は特に限定されず、例えば、シリコンのような半導体基体を有する半導体ウエハであってよい。加工対象物202は特に限定されないが、シリコン(Si)、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、酸炭窒化シリコン(SiOCN)、酸窒化シリコン(SiON)のようなSi含有膜が好適な例として例示される。Siは、単結晶Si、多結晶Si(poly-Si)、アモルファスSiのいずれであってもよい。例えば、対象デバイスがDRAMのキャパシタの場合は加工対象物がSiO膜であり、3DNANDの場合は、SiO膜およびSiN膜の積層膜である。
【0017】
ステップST2では、図3に示すように、図2の加工対象物202の上に一実施形態に係るハードマスク203を成膜する。ハードマスク203は、Ga、In、Znの1種または2種以上を含む酸化物(IGZO系膜)を含む。本実施形態に係るハードマスク203は全部がこのような酸化物で構成されていてもよいし、一部がこのような酸化物であってもよい。
【0018】
このようなハードマスク203は、加工対象物202を高選択比でエッチングすることが可能である。このため、薄膜化が可能であり、加工対象物の開口部のラフネス劣化が抑制される。特に、加工対象物202がSi含有膜である場合に高い選択比で加工対象物202をエッチングすることができ、より薄膜化が可能である。
【0019】
また、このようなハードマスク203は、加工対象物202をエッチングする際のエッチングガスとして、フッ化炭素ガス(Cガス)、フッ化炭化水素(C)ガス、六フッ化硫黄(SF)ガスのようなフッ素(F)含有ガスを使用する場合に高い選択比で加工対象物202をエッチングすることが可能である。特に、このようなハードマスク203は、加工対象物202がSi含有膜で、加工対象物202をF含有ガスでエッチングする場合に、大きな効果を発揮する。
【0020】
ハードマスク203は、エッチングの際の形状性を良好にする観点から、結晶粒界のないアモルファスであることが好ましい。ハードマスク203を成膜するための手法は特に限定されず、PVD、CVD、ALD等の薄膜形成技術の全般、および塗布(スピンコート)を用いることができる。アモルファスのハードマスクを得る観点から、PVD、例えばスパッタリングを好適に用いることができる。
【0021】
ハードマスク203を構成するGa、In、Znの1種または2種以上を含む酸化物(IGZO系膜)としては、InGaZnO、InZnO、GaZnO、In、ZnOが好ましい。これらは、加工対象物、特にSi含有膜に対して、従来のハードマスクとして用いられているa-Si膜、poly-Si膜、a-C膜、TiN膜、WSi膜等よりも高い選択比を有する。これらの中でZnOは高い選択比が得られるものの、結晶化しやすく、PVDで成膜しても室温で結晶化してしまい、アモルファスとはなり難い。一方、InGaZnO、InZnO、GaZnO、Inは、アモルファス化しやすく、PVDにより容易にアモルファスの膜を得ることができるため、より好ましい。
【0022】
ステップST3のハードマスクのパターニングは、例えば、フォトリソグラフィ技術を用いて行うことができる。具体的には、図4に示すように、ハードマスク203の上に防反射膜204およびフォトレジスト膜205を順に形成後、露光および現像を行うことによりパターニングを行う。このとき、フォトレジスト膜205の厚さは、ハードマスク203の厚さに応じて調整する。高選択比の加工を行う場合、防反射膜204とハードマスク203の間に、選択比の高い膜を追加してもよい。
【0023】
ステップST4では、ステップST3で形成されたパターンを用いてハードマスクのエッチングを行う。具体的には、図5に示すように、フォトレジスト膜205をマスクとして、プラズマを用いた異方性エッチングによりハードマスク203のエッチング行う。
【0024】
IGZO系膜で構成されたハードマスク203をエッチングする際のエッチングガスとしては、HBrガス、Clガス、CHガス、CHOHガス、BClガスなどを使用することができる。これらのうちHBrガス、Clガスを用いる場合には、ハロゲン系の残留物が残りやすいため、120℃程度の高温でエッチングを行い、エッチング後にアッシングを行うことが好ましい。また、このようにエッチングガスとしてHBrまたはClを用いる場合には、Oガス、Arガス、Nガスの1種または2種以上を添加してもよい。
【0025】
エッチングガスとしてCHガス、CHOHガス、BClを用いる場合には、低温処理が可能である。この場合には、HガスとClガスを添加してもよい。
【0026】
ステップST5では、ステップST4でエッチングされたハードマスクを用いて加工対象物のエッチングを行う。具体的には、図6に示すように、エッチングされたハードマスク203をマスクとして、プラズマを用いた異方性エッチングにより加工対象物202のエッチングを行う。
【0027】
このときのエッチングガスは特に限定されないが、上述した、Cガス、Cガス、SFのようなF含有ガスを好適に用いることができる。F系ガスにOガス、Nガス、Arガス等を添加してもよい。
【0028】
このようなF含有ガスは、加工対象物202が上述したSi系膜の場合のエッチングガスとして好適に用いることができる。また、ハードマスク203を構成するIGZO系膜は、このようなF含有ガスに対して高い耐性を有する。また、In、Ga、Znは、そのフッ化物の融点・沸点が高いため、これらで構成されるハードマスク203は高温であってもF含有ガスに対して基本的に高いエッチング耐性を有する。しかし、低温であればあるほどハードマスク203がエッチングされ難くなり選択比の優位性が高い。
【0029】
ステップST6では、図7に示すように、加工対象物202をエッチングした後のハードマスク203を除去する。ハードマスク203の除去は、通常の薬液によるウエット洗浄、または改質処理と純水洗浄により行うことができる。
【0030】
ウエット洗浄は、ハードマスク203の下地である加工対象物202の材料に応じて適切な薬液を選択して行う。例えば、加工対象物がSiの場合は、希フッ酸(DHF)(HF=1%程度)が好適である。また、加工対象物がSiOの場合には、リン酸、硝酸、酢酸の混合液(PAN)が好適である。ウエット洗浄は、容器内に貯留された薬液に基板を浸漬して行ってもよいし、基板上に薬液を塗布して行ってもよい。
【0031】
改質処理と純水洗浄によりハードマスク203を除去する方法について図8を参照して説明する。まず、加工対象物202のエッチングを行ったエッチングチャンバー内にBClとOの混合ガスを導入して改質処理を行う。このとき、BClとOの混合ガスにより、ハードマスク203を構成するIGZO系膜表面で改質反応が生じる。例えばハードマスク203がGa、In、およびZnの酸化物(IGZO)で構成されている場合、図8(a)に示すように、表面でこれらの酸化物がBClとOと反応し、Zn(ClO、Ga(ClO、In(ClOに改質される。これらのうち、Zn(ClOは揮発性であるため、チャンバー内で揮発する。また、Ga(ClO、In(ClOは残存するが、これらは水溶性である。また、Zn(ClOの残渣も純水で除去可能である。このため、図8(b)に示すように、改質処理後に基板をチャンバーから搬出し、純水処理を施すことにより、ハードマスク203を除去することができる。このような手法は、IGZO系膜に特有の手法であり、薬液処理を好まない場合でもハードマスク203を容易に除去できるという大きな効果を有する。また、このような手法により、例えば下地である加工対象物であるSiO膜に対してほぼ無限大の選択比で(SiOがほぼエッチングされることなく)ハードマスクを除去することができる。
【0032】
改質処理は、高温になると成膜反応が優位になる可能性があるため、60℃以下で行うことが好ましい。また、改質処理の改質速度はBClとOの組成比に依存するため、所望の改質速度が得られるように、これらの組成比を調整することが好ましい。
【0033】
次に、一実施形態に係るハードマスクを成膜する成膜装置の一例について詳細に説明する。
図9は、ハードマスクの成膜に用いられる成膜装置の一例を示す断面図である。成膜装置1は、上述した好適な成膜手法であるスパッタリングにより成膜を行う装置である。成膜装置1は、略円筒状をなし、処理空間11を画成するチャンバー10を有している。チャンバー10は、例えば、アルミニウムのような金属からなり、接地電位に接続されている。
【0034】
チャンバー10の底部には、排気口14aが設けられ、排気口14aには排気装置14が接続されている。排気装置14は、圧力制御バルブおよび真空ポンプを含み、排気装置14により、チャンバー10内を排気するとともに、所望の真空度に制御するようになっている。チャンバー10の側壁には、チャンバー10に対して基板Wを搬入出するための搬入出口12が設けられており、搬入出口12はゲートバルブ13により開閉される。
【0035】
チャンバー10の頂部には、処理空間11にガスを導入するためのガス導入ポート15が設けられている。ガス導入ポート15はガス供給部(図示せず)に接続されており、ガス供給部からガス導入ポート15を介して処理空間11にガスが供給される。供給されるガスとしてはArガス等の希ガスやNガスのような不活性ガスであってよい。
【0036】
チャンバー10内には、基板Wが載置されるステージ16が設けられている。ステージ16は、基板Wを静電吸着する静電チャックを有していてもよい。また、ステージ16は、ヒータや冷媒流路のような温調機構を有していてもよい。ステージ16は、駆動部18に接続されている。駆動部18は、支軸18aと駆動装置18bを含む。支軸18aは、ステージ16の裏面中央部からチャンバー10の底部を通って外部まで延びている。駆動装置18bは、支軸18aを介してステージ16を回転および昇降するように構成されている。支軸18aとチャンバー10の底壁との間は、磁性流体シールのような封止部材40により封止されている。
【0037】
チャンバー10の天部は円錐状をなし、傾斜面を有しており、傾斜面には、金属製のターゲットホルダ20およびホルダ22が、ステージ16に向けてそれぞれ絶縁部材24および26を介して取り付けられている。ターゲットホルダ20および22は、互いに対向する位置に設けられ、それぞれターゲット28および30を保持する。ターゲットホルダ20および22には、それぞれ電源32および34が電気的に接続されている。電源32および34は、直流電源であってもよく、高周波電源であってもよい。ターゲット28および30は、成膜しようとする膜を構成する材料の一部または全部を含む。なお、ターゲットホルダの個数や配置は、本例に限るものではない。
【0038】
ターゲットホルダ20およびホルダ22の裏面側には、それぞれ、マグネット36および38が設けられている。マグネット36および38は、ターゲット28および30に漏洩磁場を与え、マグネトロンスパッタを行うためのものである。マグネット36および38は、それぞれマグネット駆動部36aおよび38aによりターゲットホルダ20および22の裏面に沿って揺動するように構成されている。
【0039】
このように構成される成膜装置1においては、チャンバー10内に基板Wを搬入しステージ16上に載置する。そして、駆動部18によってステージ16の鉛直方向の位置を調整し、ステージ16を回転させる。
【0040】
ステージ16を回転させた状態で、ガス供給部からチャンバー10内にArガス等の不活性ガスをスパッタリングガスとして供給し、排気装置14によってチャンバー10内を減圧状態に調圧する。そして、電源32および34からターゲット28および30に給電するとともに、マグネット36および38をマグネット駆動部36aおよび38aによって駆動する。これにより、プラズマがターゲット28および30の近傍に集中し、ターゲット28および30にプラズマ中の正イオンが衝突することで、ターゲット28および30からそれぞれの構成物質が放出され、放出された物質を基板W上に堆積させる。これにより、基板W上にハードマスクとなる膜が成膜される。
【0041】
ターゲット28および30は、基板W上に成膜される膜が所望組成のIGZO系膜となるようにその組成が調整される。ターゲット28および30は、形成しようとする膜の組成に応じて同じ組成としてもよいし異なる組成にしてもよい。同じ組成の場合には、一方のターゲットのみを用いるようにしてもよい。異なる組成の場合には、両方のターゲットから放出される物質が基板W上に堆積されることにより、所望の組成の膜が成膜されるようにしてもよい。
【0042】
このような成膜装置1でスパッタリングによりハードマスクを構成するIGZO系膜を成膜することにより、エッチングの際の形状性が良好なアモルファスの膜を形成しやすい。
【0043】
次に、以上のような基板処理方法において、ハードマスクのエッチングおよび加工対象物のエッチングに用いられるプラズマエッチング装置の一例について詳細に説明する。
【0044】
図10は、プラズマエッチング装置の一例を示す断面図である。プラズマエッチング装置101は、容量結合プラズマ処理装置として構成される。プラズマエッチング装置101は、略円筒状をなし、処理空間111を画成するチャンバー110を有している。チャンバー110は、金属、例えば、表面が陽極酸化処理されたアルミニウムで構成され、保安設置されている。
【0045】
チャンバー110の底部には、絶縁板112を介して円柱状の金属製の支持台114が配置され、この支持台114の上に金属例えばアルミニウムで構成された基板Wを載置するステージ116が設けられている。ステージ116は下部電極を構成する。ステージ116は上部に静電チャック118を有している。静電チャック118は、絶縁体の内部に電極120が設けられた構造を有し、電極120に吸着用直流電源122から直流電圧を印加することにより、クーロン力等の静電力により基板Wが吸着保持される。
【0046】
静電チャック118の周囲部分には、導電性材料、例えばシリコンで構成されたフォーカスリング124が配置されている。ステージ116および支持台114の側面には、絶縁体、例えば石英からなる円筒状の内壁部材126が設けられている。
【0047】
支持台114の内部には冷媒室128が設けられ、冷媒室128には、外部に設けられたチラーユニット(図示せず)から配管130a,130bを介して冷媒、例えば冷却水が循環供給され、ステージ116上の基板Wの処理温度が制御される。さらに、伝熱ガス、例えばHeガスがガス供給ライン132を介して静電チャック118の上面と基板Wの裏面との間に供給される。
【0048】
下部電極であるステージ116には、プラズマ生成用の第1の高周波電源188およびバイアス印加用の第2の高周波電源191が電気的に接続されている。第1の高周波電源188からステージ116に給電する給電線189には整合器187が介装されている。第2の高周波電源191からの給電線192は、給電線189に接続されており、給電線192には整合器190が介装されている。整合器187,190は、それぞれ第1および第2の高周波電源188,191側のインピーダンスに負荷(プラズマ)インピーダンスを整合させるためのものである。プラズマ生成用の第1の高周波電源188はバイアス印加用の第2の高周波電源191よりも高い周波数を有する。
【0049】
下部電極であるステージ116の上方には、ステージ116と対向するように上部電極134が設けられている。そして、上部電極134およびステージ(下部電極)116の間にプラズマが生成される。
【0050】
上部電極134は、絶縁性遮蔽部材143を介して、チャンバー110の上部に支持されている。上部電極134は、ステージ116との対向面を構成しかつ多数のガス吐出孔137を有する電極板136と、電極板136を着脱自在に支持する水冷構造の電極支持体138とによって構成されている。電極板136は導電体、例えば、シリコンで構成される。上部電極134は接地電位に接続されている。電極支持体138の内部には、ガス拡散室140が設けられ、ガス拡散室140からはガス吐出孔137に連通する多数のガス通流孔141が下方に延びている。電極支持体138にはガス拡散室140へ処理ガスを導くガス導入口142が形成されており、このガス導入口142には後述するガス供給部150から延びるガス配管151が接続されている。すなわち、上部電極134はシャワーヘッドとして構成される。
【0051】
ガス供給部150は、ハードマスクや加工対象物に応じて適切なエッチングガスを供給するものである。また、ガス供給部150からは、パージガスやプラズマ生成ガスとしての不活性ガスも供給される。エッチングガスとしては、ハードマスクをエッチングする際には、上述したように、HBrガス、Clガス、CHガス、CHOHガス、BClガスなどを好適に用いることができる。エッチングガスとしてHBrガス、Clガスを用いる場合には、添加ガスとして、Oガス、Arガス、Nガスを用いてもよく、CHガス、CHOHガス、BClを用いる場合には、添加ガスとして、HガスとClガスを用いてもよい。また、加工対象物をエッチングするには、エッチングガスとして、上述したように、Cガス、Cガス、SFのようなF含有ガスを好適に用いることができる。F含有ガスにOガス、Nガス、Arガス等を添加してもよい。
【0052】
チャンバー110の底部には排気口160が設けられ、排気口160には排気管162を介して排気装置164が接続されている。排気装置164は、圧力制御バルブおよび真空ポンプを含み、排気装置164によりチャンバー110内を排気するとともに、所望の真空度に制御するようになっている。チャンバー110の側壁には、チャンバー110に対して基板Wを搬入出するための搬入出口165が設けられており、搬入出口165はゲートバルブ166により開閉される。
【0053】
このように構成されるエッチング装置101においては、基板Wをチャンバー110内に搬入し、ステージ116上に載置する。そして、ガス供給部150からチャンバー110内に不活性ガスを供給し、排気装置164によってチャンバー110内を減圧状態に調圧する。この状態で、ガス供給部150からエッチングガスを供給しつつ、下部電極であるステージ116に、第1の高周波電源188からのプラズマ生成用高周波電力を印加するとともに、第2の高周波電源191からステージ116にバイアス印加用高周波電力を印加する。これにより、上部電極134と下部電極であるステージ116の間に容量結合プラズマが形成され、プラズマ中のイオンがステージ116に引き込まれ、基板W上のハードマスクまたは加工対象物が異方性エッチングされる。
【0054】
<実験例>
次に、実験例について説明する。
【0055】
[実験例1]
実験例1では、DRAMの形成工程等に用いられるSiO膜のエッチングについて実験を行った。ここでは、ハードマスクとして各種IGZO系膜および従来のpoly-Si膜、WSi膜をハードマスクとして用いてSiO膜のエッチングを行って選択比を求めた。IGZO系膜としては、InGaZnO膜、InZnO膜、GaZnO膜、In膜、ZnO膜を用いた。ハードマスクの成膜は、図9の成膜装置を用いてスパッタリングにより行った。また、加工対象物のエッチングは、図10の装置を用い、エッチングガスとしてCガス、Cガス、Oガスを用いて行った。
【0056】
その結果を図11に示す。図11は、各種ハードマスクの加工対象物であるSiOに対する選択比を、poly-Si膜の選択比を1として規格化して示す図である。図11に示すように、SiO膜のエッチングを行うハードマスクとして、本実験例で用いたIGZO系膜はいずれも、従来のpoly-Si膜、WSi膜よりも高い選択比が得られた。すなわち、本実施形態のIGZO系膜をDRAMの形成工程においてSiO膜をエッチングする際のハードマスクとして用いることにより、従来よりも加工対象物に対する選択比が高く薄膜化が可能であることが確認された。また、これらのIGZO系膜のうち、InGaZnO膜、InZnO膜、GaZnO膜、In膜は成膜したままの状態でアモルファスであり、ZnO膜は成膜したままの状態で結晶となった。このことから、InGaZnO膜、InZnO膜、GaZnO膜、In膜が形状性の点でより好ましいことが確認された。
【0057】
[実験例2]
実験例2では、3DNANDの形成工程等に用いられるSiO/SiN積層膜のエッチングについて実験を行った。ここでは、ハードマスクとして各種IGZO系膜および従来のアモルファスカーボン(ACL)膜、WSi膜をハードマスクとして用いてSiO/SiN積層膜のエッチングを行って選択比を求めた。IGZO系膜としては、InGaZnO膜、InZnO膜、GaZnO膜、In膜、ZnO膜を用いた。ハードマスクの成膜は、図9の成膜装置を用いてスパッタリングにより行った。また、加工対象膜のエッチングは、図10の装置を用い、エッチングガスとしてCガス、Cガス、Oガス、CHガスを用いて行った。
【0058】
その結果を図12に示す。図12は、各種ハードマスクの加工対象物であるSiO/SiN積層膜に対する選択比を、ACL膜の選択比を1として規格化して示す図である。図12に示すように、SiO/SiN積層膜のエッチングを行うハードマスクとして、本実験例で用いたIGZO系膜はいずれも、従来のACL膜、WSi膜よりも高い選択比が得られた。すなわち、本実施形態のIGZO系膜を3DNANDの形成工程においてSiO/SiN積層膜をエッチングする際のハードマスクとして用いることにより、従来よりも加工対象物に対する選択比が高く薄膜化が可能であることが確認された。また、実験例1と同様、これらのIGZO系膜のうち、InGaZnO膜、InZnO膜、GaZnO膜、In膜は成膜したままの状態でアモルファスであり、ZnO膜は成膜したままの状態で結晶となった。このことから、InGaZnO膜、InZnO膜、GaZnO膜、In膜は形状性の点でより好ましいことが確認された。
【0059】
<他の適用>
以上、実施形態について説明したが、今回開示された実施形態は、全ての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0060】
例えば、上記実施形態では、成膜装置として図9に示すスパッタリング装置を例示したが、これに限るものではない。異なる構造のPVD装置であってもよいし、CVDやALD等の他の成膜技術を用いた成膜装置であってもよく、さらに、塗布(スピンコート)を行う装置であってもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、エッチング装置として図10に示す容量結合プラズマ処理装置を例示したが、これに限るものではない。異なる構造の容量結合プラズマ装置であってもよいし、誘導結合プラズマ処理装置やマイクロ波プラズマ処理装置等の他のプラズマを用いる装置であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1;成膜装置
10;チャンバー
16;ステージ
32,34;電源
28,30;ターゲット
101;プラズマエッチング装置
110;チャンバー
116;ステージ(下部電極)
134;上部電極
150;ガス供給部
188;第1の高周波電源
191;第2の高周波電源
200;基板
201;基体
202;加工対象物
203;ハードマスク
W;基板
図1
図2
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図5
図6
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図12