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▶ 日清オイリオグループ株式会社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127360
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】澱粉含有食品用ほぐれ剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/10 20160101AFI20230906BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20230906BHJP
   A23L 29/244 20160101ALI20230906BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20230906BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20230906BHJP
   A23L 29/212 20160101ALI20230906BHJP
   A23L 7/109 20160101ALN20230906BHJP
【FI】
A23L29/10
A23L5/00 N
A23L29/244
A23L29/269
A23L29/256
A23L29/212
A23L7/109 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031110
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 太一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】笠井 通雄
【テーマコード(参考)】
4B025
4B035
4B041
4B046
【Fターム(参考)】
4B025LB25
4B025LG04
4B025LG24
4B025LG27
4B025LG28
4B025LG29
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4B025LP20
4B035LC16
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4B035LG27
4B035LG35
4B035LK19
4B035LP01
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4B035LP43
4B035LP59
4B041LC10
4B041LD01
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4B041LH08
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4B041LK08
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4B041LP16
4B046LA02
4B046LC15
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4B046LG14
4B046LG15
4B046LG18
4B046LG29
4B046LP55
4B046LP80
(57)【要約】
【課題】良好なほぐれ性を有する澱粉含有食品用ほぐれ剤、及び当該ほぐれ剤を含む澱粉含有食品の製造方法等を提供すること。
【解決手段】澱粉含有食品の表面に適用するための澱粉含有食品用ほぐれ剤であって、 前記ほぐれ剤が、水と、乳化剤と、増粘多糖類とを含有し、前記ほぐれ剤が、油脂を含まないか、又は前記乳化剤と前記増粘多糖類との合計質量の1/2以下の油脂を含有し、前記ほぐれ剤の粘度が、200~25000mPa・s(20℃)である、澱粉含有食品用ほぐれ剤を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉含有食品の表面に適用するための澱粉含有食品用ほぐれ剤であって、
前記ほぐれ剤が、水と、乳化剤と、増粘多糖類とを含有し、
前記ほぐれ剤が、油脂を含まないか、又は前記乳化剤と前記増粘多糖類との合計質量の1/2以下の油脂を含有し、
前記ほぐれ剤の粘度が、200~25000mPa・s(20℃)である、
澱粉含有食品用ほぐれ剤。
【請求項2】
澱粉含有食品の表面に適用するための澱粉含有食品用ほぐれ剤であって、
前記ほぐれ剤が、乳化剤と、増粘多糖類とを含有し、
前記ほぐれ剤が、油脂を含まないか、又は前記乳化剤と前記増粘多糖類との合計質量の1/2以下の油脂を含有し、
前記ほぐれ剤に水を加えて粘度を、200~25000mPa・s(20℃)に調節して使用するための、
澱粉含有食品用ほぐれ剤。
【請求項3】
前記ほぐれ剤中の乳化剤の含有量が、0.1~80質量%であり、
前記乳化剤が、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、有機酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及びレシチンから選ばれる1種又は2種以上であり、
前記増粘多糖類が、キサンタンガム、ガラクトマンナン、カラギーナン、及びデキストリンから選ばれる1種又は2種以上である、
請求項1又は2に記載の澱粉含有食品用ほぐれ剤。
【請求項4】
前記ほぐれ剤中の乳化剤と増粘多糖類との質量割合が、乳化剤:増粘多糖類=300:1~1:1である、及び/又は、前記ほぐれ剤中の増粘多糖類の含有量が0.01~5質量%であり、かつ、
前記ほぐれ剤中の水の含有量又は水を加えて粘度調節した後の澱粉含有食品用ほぐれ剤中の水の量が、0質量%を超え99.8質量%以下である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の澱粉含有食品用ほぐれ剤。
【請求項5】
澱粉含有食品と、該澱粉含有食品の表面に付着した請求項1~4のいずれか1項に記載の澱粉含有食品用ほぐれ剤とを含有する、表面改質澱粉含有食品。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項記載の澱粉含有食品用ほぐれ剤を、澱粉含有食品の表面に適用する工程を含む、澱粉含有食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、澱粉含有食品用ほぐれ剤及び当該ほぐれ剤を含む澱粉含有食品の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
そば、うどん、中華麺、パスタなどは、茹でて食すが、特に加熱などしなくても、そのまま食すことができるように流通しているものも多い。しかし、それらの麺類は、流通あるいは保存中に麺と麺が付着するなどの問題が発生しやすく、これらの問題を改善するために、油脂をコーティングし、麺相互の付着を防止し、ほぐれ性を改善することが行われてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、レシチンとジグリセリン脂肪酸エステルとを必須とし、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤を含む麺ほぐれ改良剤が提案されている。また、特許文献2には、レシチンとポリグリセリン脂肪酸エステルとを含む麺ほぐれ改良用油脂組成物が提案されている。
【0004】
これらの組成物は、一定の麺のほぐれ性を有するものであるが、例えば、麺表面に水分量が多い場合など、麺への付着性に劣り、十分なほぐれ性を発揮できない場合があった。
【特許文献1】特開平10-035024号公報
【特許文献2】特開平11-221033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的の一つは、良好なほぐれ性を有する澱粉含有食品用ほぐれ剤を提供することである。また、本発明のさらなる目的の一つは、良好なほぐれ性を有する澱粉含有食品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、特定成分を含む組成物が、良好なほぐれ性を有することを見出し、上記の課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の〔1〕~〔6〕を提供する。
〔1〕澱粉含有食品の表面に適用するための澱粉含有食品用ほぐれ剤であって、
前記ほぐれ剤が、水と、乳化剤と、増粘多糖類とを含有し、
前記ほぐれ剤が、油脂を含まないか、又は前記乳化剤と前記増粘多糖類との合計質量の1/2以下の油脂を含有し、
前記ほぐれ剤の粘度が、200~25000mPa・s(20℃)である、
澱粉含有食品用ほぐれ剤。
〔2〕澱粉含有食品の表面に適用するための澱粉含有食品用ほぐれ剤であって、
前記ほぐれ剤が、乳化剤と、増粘多糖類とを含有し、
前記ほぐれ剤が、油脂を含まないか、又は前記乳化剤と前記増粘多糖類との合計質量の1/2以下の油脂を含有し、
前記ほぐれ剤に水を加えて粘度を、200~25000mPa・s(20℃)に調節して使用するための、
澱粉含有食品用ほぐれ剤。
〔3〕前記ほぐれ剤中の乳化剤の含有量が、0.1~80質量%であり、
前記乳化剤が、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、有機酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及びレシチンから選ばれる1種又は2種以上であり、
前記増粘多糖類が、キサンタンガム、ガラクトマンナン、カラギーナン、及びデキストリンから選ばれる1種又は2種以上である、
前記〔1〕又は〔2〕に記載の澱粉含有食品用ほぐれ剤。
〔4〕前記ほぐれ剤中の乳化剤と増粘多糖類との質量割合が、乳化剤:増粘多糖類=300:1~1:1である、及び/又は、前記ほぐれ剤中の増粘多糖類の含有量が0.01~5質量%であり、かつ、
前記ほぐれ剤中の水の含有量又は水を加えて粘度調節した後の澱粉含有食品用ほぐれ剤中の水の量が、0質量%を超え99.8質量%以下である、
前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の澱粉含有食品用ほぐれ剤。
〔5〕澱粉含有食品と、該澱粉含有食品の表面に付着した前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の澱粉含有食品用ほぐれ剤とを含有する、表面改質澱粉含有食品。
〔6〕前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項記載の澱粉含有食品用ほぐれ剤を、澱粉含有食品の表面に適用する工程を含む、澱粉含有食品の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、澱粉含有食品のほぐれ性を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に例示説明する。なお、本発明の実施の形態において、A(数値)~B(数値)は、A以上B以下を意味する。また、以下で例示する好ましい態様やより好ましい態様等は、「例えば」、「好ましい」、及び「より好ましい」等の表現にかかわらず適宜相互に組み合わせて使用することができる。また、数値範囲の記載は例示であって、各範囲の上限と下限並びに実施例の数値とを適宜組み合わせた範囲も好ましく使用することができる。さらに、「含有する」又は「含む」等の用語は、「本質的になる」や「のみからなる」と読み替えてもよい。
【0010】
[澱粉含有食品用ほぐれ剤]
本発明の澱粉含有食品用ほぐれ剤は、水と、乳化剤と、増粘多糖類とを含有する。本発明の澱粉含有食品用ほぐれ剤は、増粘多糖類を含有することで、増粘多糖類を含まないものに比べて、当該ほぐれ剤の粘度が高くなる。ほぐれ剤の粘度が高くなることで、ほぐれ剤が適用される澱粉含有食品のほぐれ性が向上する効果を有する。しかし、粘度が高すぎると作業性や澱粉含有食品に対するコーティング性が劣る。そのため、本発明の澱粉含有食品用ほぐれ剤は、例えば、200~25000mPa・s(20℃)の粘度を有することが適当であり、好ましくは、400~20000mPa・s(20℃)の粘度、より好ましくは、600~15000mPa・s(20℃)の粘度、更に好ましくは800~13000mPa・s(20℃)の粘度を有することが適当である。
【0011】
また、本発明の澱粉含有食品用ほぐれ剤は、乳化剤と、増粘多糖類とを含有し、使用時に水を加えて用いるものであってもよい。つまり、本発明の澱粉含有食品用ほぐれ剤は、当該ほぐれ剤に水を加えて粘度を、200~25000mPa・s(20℃)として使用するための、前駆体的要素の澱粉含有食品用ほぐれ剤であり得る。本発明の澱粉含有食品用ほぐれ剤は、使用時に適宜水を加えるという意味で中間体のような態様とも言える。当該前駆体的要素の澱粉含有食品用ほぐれ剤は、水を含まないか、実質的に含まないことが好ましく、例えば、前駆体的要素の澱粉含有食品用ほぐれ剤全体に対して、水の量が、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下、より好ましくは、1質量%以下であり、かつ、0質量%以上若しくは0.1質量%以上程度であることが適当である。
このような中間体としての本発明の澱粉含有食品用ほぐれ剤は、実際に使用する際に、水を加えた状態での粘度を200~25000mPa・s(20℃)として使用されることが適当である。澱粉含有食品用ほぐれ剤に水を後から加えて用いる形態とすることで、輸送時等の容量を小さくすることができ、輸送時のコスト低減、CO2削減を行うことができる。なお、澱粉含有食品用ほぐれ剤に水を加えた状態において、例えば、200~25000mPa・s(20℃)の粘度を有することが適当であり、好ましくは、400~20000mPa・s(20℃)の粘度、より好ましくは、600~15000mPa・s(20℃)の粘度、更に好ましくは800~13000mPa・s(20℃)の粘度を有することが適当である。粘度を調節した後の澱粉含有食品用ほぐれ剤に含まれる好ましい水の量は、後述する<水>の項目で説明したとおりである。
【0012】
なお、本発明において、粘度は、日本油化学会制定 基準油脂分析試験法(2.2.10.5-2013 粘度(ブルックフィールド法))に準拠して測定することができる。例えば、BM型粘度計を用い、回転開始後から1分後の粘度を用いることができる。
【0013】
<乳化剤>
本発明の澱粉含有食品用ほぐれ剤は、乳化剤を含む。乳化剤としては、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、有機酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及びレシチンから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。ここで「脂肪酸」としては、炭素数16~22、好ましくは炭素数18~22、より好ましくは炭素数18~20の直鎖又は分岐鎖の、飽和又は不飽和の、脂肪酸を挙げることができる。不飽和脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、及びエルカ酸から選ばれる1種又は2種以上の不飽和脂肪酸が好ましい。飽和脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸から選ばれる1種又は2種以上の飽和脂肪酸が好ましい。以下、特に断りがない限り、「脂肪酸」において同様である。
【0014】
ほぐれ性を向上させるために、乳化剤のHLBは2~18が好ましい。本発明において、複数の乳化剤を含有することを許容するが、同HLBは、含有する乳化剤全体のHLBである。同HLBを有する乳化剤は、水中で分散又は可溶化することができ、また、澱粉含有食品のほぐれ性も良好である。乳化剤のHLBは3~16が好ましく、4~14がより好ましく、6~10がさらに好ましい。また、HLB2~18の乳化剤は乳化機能もあり、少量の油脂を含む場合、本発明では当該乳化剤を利用して乳化物等とすることができる。特に効率よく乳化をするために、乳化剤のHLBは3~10が好ましく、4~10がより好ましく、6~10がさらに好ましい。
【0015】
HLBは、親水性疎水性バランス(Hydrophile Lipophile Balance)の略であって、乳化剤が親水性か親油性かを知る指標となるもので、0~20の値をとる。HLB値が小さい程、親油性が強いことを示す。本発明において、HLB値の算出はアトラス法の算出法を用いる。アトラス法の算出法は、
HLB=20×(1-S/A)
S:ケン化価
A:エステル中の脂肪酸の中和価
からHLB値を算出する方法を言う。同算出方法では、HLB値は、算術平均として算出される。例えば、HLB2の乳化剤とHLB4の乳化剤とを1:1(質量割合)で含有する場合、乳化剤全体のHLBは3となる。
【0016】
本発明において、澱粉含有食品用ほぐれ剤は、当該ほぐれ剤(100質量%)中に乳化剤を0.1~80質量%含有することが好ましい。この範囲であれば、澱粉含有食品の良好なほぐれ性を得ることができ、また、本発明のほぐれ剤に含まれる油性成分を十分乳化することができる。乳化剤の含有量は、当該ほぐれ剤(100質量%)中に、0.2~70質量%含有することが好ましく、0.3~60質量%含有することがより好ましく、0.5~50質量%であることがさらに好ましく、1~45質量%であることがことさらに好ましく、当該ほぐれ剤中に5~40質量%であることが最も好ましい。
【0017】
乳化剤は、低温下での固化を防ぐために、構成脂肪酸の60質量%以上が不飽和脂肪酸であることが好ましい。乳化剤の構成脂肪酸の70~100質量%が不飽和脂肪酸であることがより好ましく、乳化剤の構成脂肪酸の80~98質量%が不飽和脂肪酸であることがさらに好ましい。また、不飽和脂肪酸は、例えば炭素数16~22、好ましくは炭素数18~22、より好ましくは炭素数18~20の直鎖状不飽和脂肪酸を用いることができる。不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、及びエルカ酸から選ばれる1種又は2種以上の不飽和脂肪酸が好ましい。特に好ましくは、構成脂肪酸の65~90質量%がオレイン酸である。乳化剤の不飽和脂肪酸以外の脂肪酸は飽和脂肪酸である。飽和脂肪酸としては炭素数6~22の直鎖状飽和脂肪酸が好ましく、炭素数16~22の直鎖状飽和脂肪酸がより好ましく、炭素数18~20の直鎖状飽和脂肪酸がさらに好ましく、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸から選ばれる1種又は2種以上を用いることがさらに好ましい。
【0018】
用いる乳化剤として、ジグリセリンモノ脂肪酸エステル及び/又はトリグリセリンモノ脂肪酸エステルは、ほぐれ性だけでなく、本発明のほぐれ剤に含まれる油性成分を乳化させる機能が高い。そのため、これらの乳化剤は、単独あるいは他の乳化剤と同時に用いることができる。例えば、ジグリセリンモノ脂肪酸エステルは、ジグリセリンと脂肪酸をエステル化して製造されたジグリセリン脂肪酸エステルを用いることができる。ジグリセリンモノ脂肪酸エステル及び/又はトリグリセリンモノ脂肪酸エステルは、反応物を蒸留してモノエステルの純度を高めたもの(蒸留モノグリセライド等)を用いることが好ましいが、ジエステルやトリエステルを不純物として含有するものを用いてもよい。
【0019】
本発明において、澱粉含有食品用ほぐれ剤は、ジグリセリンモノ脂肪酸エステル及び/又はトリグリセリンモノ脂肪酸エステルを、当該ほぐれ剤(100質量%)中に10~60質量%含有することが好ましい。ジグリセリンモノ脂肪酸エステル及び/又はトリグリセリンモノ脂肪酸エステルの配合量が10質量%以上あれば、ほぐれ剤を十分乳化することができ、また、該配合量を60質量%以下に抑えることで、他の乳化剤を配合する余地が生じ、他の乳化剤との相乗作用が期待できる。ジグリセリンモノ脂肪酸エステル及び/又はトリグリセリンモノ脂肪酸エステルの含有量は、当該ほぐれ剤(100質量%)中に20~55質量%であることがより好ましく、当該ほぐれ剤中に30~50質量%であることがさらに好ましく、当該ほぐれ剤中に35~45質量%であることがことさらに好ましい。特に好ましいジグリセリンモノ脂肪酸エステルとしては、ジグリセリンモノオレイン酸エステルである。
【0020】
本発明において、澱粉含有食品用ほぐれ剤は、ポリグリセリンの平均重合度が4以上のポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、有機酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及びレシチンから選ばれる1種又は2種以上の乳化剤を用いることが好ましい。これらの乳化剤も単独で用いることもできるが、前述のジグリセリンモノ脂肪酸エステル及び/又はトリグリセリンモノ脂肪酸エステルと同時に用いることで、ほぐれ性をより向上させる効果がある。ポリグリセリンの平均重合度が4以上のポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及びレシチンから選ばれる1種又は2種以上の乳化剤は、ほぐれ剤(100質量%)中の含有量が、0~40質量%又は0質量%を超え40質量%以下であることが好ましく、5~30質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることがさらに好ましく、5~15質量%であることがことさらに好ましい。
【0021】
ポリグリセリンの平均重合度が4以上のポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンと脂肪酸をエステル化して合成されたものである。ポリグリセリン脂肪酸エステルの原料として使用されるポリグリセリンは一般には、グリセリンを原料として苛性ソーダなどのアルカリ触媒の存在下、高温にて脱水縮合し、必要に応じて蒸留、脱臭、脱色して得られる。これらポリグリセリン脂肪酸エステルの原料であるポリグリセリンは、反応ポリグリセリンとも呼ばれ、重合度の異なるポリグリセリンの混合物であり、重合度分布の広いものである。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、一般的に、重合度4以上のものは、単離することが困難なため、様々な重合度のポリグリセリン脂肪酸エステルの混合物であることを許容する。
【0022】
本発明において、平均重合度(百分率)は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンの重合度を示すものである。なお、ここでいう平均重合度とは、ポリグリセリン脂肪酸エステルの原料であるポリグリセリンの水酸基価より計算された値であり、例えば、次式(式1)及び(式2)から平均重合度(n)を導き出すことができる。
(式1)分子量=74×n+18
(式2)水酸基価=56110×(n+2)/分子量
【0023】
そして、一般のポリグリセリンは、水酸基価を測定して求められる末端基分析法により決定された平均重合度によって、テトラグリセリン(平均重合度4)、ヘキサグリセリン(平均重合度6)、デカグリセリン(平均重合度10)等と呼ばれて販売されている。従って、平均重合度は、計算上で求められた値であり、実際の重合度とは異なる値を示す場合がある。
【0024】
ポリグリセリン脂肪酸エステルのポリグリセリン部分の平均重合度は、4~12がより好ましく、4~10がさらに好ましく、4~7がことさらに好ましい。特に好ましくはペンタグリセリントリオレイン酸エステル、デカグリセリンペンタオレイン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、ペンタグリセリンモノオレイン酸エステル、及びポリグリセリン縮合リシノレートである。
【0025】
ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルは、ポリグリセリンとリシノール酸の重合体とのエステルであり、例えば、主にヒマシ油から得られるリシノール酸とポリグリセリンとのエステル化反応により得られる。ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルのポリグリセリン部分は、前述のポリグリセリン脂肪酸エステルと同様に、重合度分布を有し、平均重合度で示される。ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルのポリグリセリン部分の平均重合度は、好ましくは2~12程度であり、より好ましくは2~10程度であり、さらに好ましくは3~8程度である。
【0026】
有機酸モノグリセリドを構成する有機酸としては、特に限定されるものではないが、クエン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、及び酪酸等を好適に使用できる。特にクエン酸が、高いほぐれ性効果が見られるため好ましい。特に好ましくはクエン酸モノオレイン酸グリセリル及びコハク酸モノオレイン酸グリセリンである。
【0027】
ショ糖脂肪酸エステル、及びソルビタン脂肪酸エステルは、ショ糖もしくはソルビタンと脂肪酸のエステルであり、市販のものを用いることができる。ショ糖脂肪酸エステルの市販品としては、三菱ケミカル株式会社製のリョートーシュガーエステルS-1670、リョートーシュガーエステルPOS-135、リョートーシュガーエステルS-070、リョートーシュガーエステルO-170、リョートーシュガーエステルER-290などが、適宜使用できる。ソルビタン脂肪酸エステルの市販品として、理研ビタミン株式会社のリケマールOR-85、リケマールB-150、ポエムS-65Vなどが、適宜使用できる。ショ糖脂肪酸エステル、及びソルビタン脂肪酸エステルは、2種以上を併用してもよい。
【0028】
ポリソルベートは、ソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキシドを縮合反応させることで得られるものである。エチレンオキシドは、10~40分子縮合したものが好ましく、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸等を主な構成脂肪酸とする市販品を用いることができる。特に好ましくは、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート20)、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポロソルベート65)、オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート80)である。
【0029】
プロピレングリコール脂肪酸エステルは、プロピレングリコールと脂肪酸をエステル化したものであるが、HLB2~10や3~10のものを好適に使用することができる。特に好ましくは、プロピレングリコールオレイン酸エステルである。
【0030】
レシチンは、卵黄レシチンあるいは植物由来のレシチンを用いることができ、植物由来のレシチンを用いることが好ましい。植物由来のレシチンの原料としては、大豆、菜種、コーン、ヒマワリ、サフラワー、ゴマ、アマニなどの油糧種子を圧搾および/または抽出して得られる原油、該原油に水または水蒸気を吹き込んで沈澱物として得られる油滓、分離した該油滓を乾燥して得られる粗レシチン、該粗レシチンから溶剤分別等の公知の方法で中性油脂分を除去したレシチン、さらには該混合レシチンから特定のリン脂質を濃縮・分画した濃縮あるいは高純度レシチン等が利用できる。なお、本発明においては、かかる原料を脱糖処理したレシチンが、着色を抑えられる点から好ましい。
【0031】
なお、本発明において、乳化剤中のレシチンは、日本油化学会制定「基準油脂分析試験法 4.3.1-2013 アセトン不溶物」で測定されるアセトン不溶物をレシチンとすることもできるが、同測定方法は、アセトン不溶物が5質量%以下のものの測定は適さないため、リン含有量を測定し、換算してレシチン含有量とすることができる。例えば、リンを含有する澱粉含有食品用ほぐれ剤を、高周波誘導結合プラズマ(ICP)を光源とする発光分光分析法(ICP発光分析装置)によりリン含量を定量し、リンの原子量とレシチンの分子量比は、概ね1:25であるので、リン含有量を25倍して求めてもよい。
以上例示した種々の乳化剤の中でも、とりわけ好ましいものは、ショ糖ステアリン酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル、及び大豆レシチンである。これらの乳化剤を、ほぐれ剤の質量に対して10質量%±5質量%程度使用することが適当である。
【0032】
<増粘多糖類>
本発明の澱粉含有食品用ほぐれ剤は、増粘多糖類を含有する。増粘多糖類とは、水に溶解すると粘度を向上したり、ゲル化したりする性質をもった水溶性の高分子物質であり、例えば、キサンタンガム、ガラクトマンナン、タマリンドシードガム、カラギーナン、寒天、ペクチン、アラビアガム、プルラン、デキストリン、及び大豆多糖類などが挙げられ、これらの増粘多糖類の1種又は2種以上を用いることができる。好ましくは、キサンタンガム及びガラクトマンナンから選ばれる1種又は2種以上である。また、ガラクトマンナンとしては、グアーガムやローカストビーンガムが好ましい。
【0033】
本発明において、澱粉含有食品用ほぐれ剤は、乳化物等又は加水して乳化物等として用いるものであるが、乳化物等の粘度が高くなることで、澱粉含有食品のほぐれ性が向上する効果を有する。そのため、本発明では、増粘多糖類を配合することが適当である。澱粉含有食品用ほぐれ剤中の乳化剤と増粘多糖類との質量割合は、乳化剤:増粘多糖類=300:1~1:1であることが好ましい。澱粉含有食品用ほぐれ剤(100質量%)中の増粘多糖類の含有量は、0.01~5質量%であることが好ましい。上記乳化剤と増粘多糖類との質量割合及び/又は増粘多糖類の含有量がこれらの範囲であれば、一定の乳化物等の粘度上昇が見込めるため、澱粉含有食品のほぐれ性が改善される。澱粉含有食品用ほぐれ剤中の乳化剤と増粘多糖類との質量割合は、乳化剤:増粘多糖類=300:1~5:3、300:1~3:1、又は200:1~3:1がより好ましく、乳化剤:増粘多糖類=160:1~3:1、100:1~5:1、又は50:1~10:1がさらに好ましい。澱粉含有食品用ほぐれ剤(100質量%)中の増粘多糖類の含有量は、0.05~3質量%であることがより好ましく、0.1~2質量%がさらに好ましく、0.2~1質量%が特に好ましい。
【0034】
<水>
本発明の澱粉含有食品用ほぐれ剤は、水を含有する。澱粉含有食品用ほぐれ剤(100質量%)中の水含有量は、例えば、0質量%を超え99.8質量%以下であり、40~99.5質量%が好ましく、50~99質量%がより好ましく、60~95質量%がさらに好ましい。
【0035】
<油脂>
本発明の澱粉含有食品用ほぐれ剤は、油脂を含まないか、又は含んでいたとしても、乳化剤と増粘多糖類との合計質量の1/2以下(乳化剤と増粘多糖類との合計質量を100質量%とした場合、油脂の量が0質量%を超え50質量%以下)の油脂を含有する。ここで、澱粉含有食品用ほぐれ剤中に油脂が含まれないことが好ましいが、含まれる場合は、油脂の含有量が、上記乳化剤と増粘多糖類との合計質量の1/3以下が好ましく、1/4以下がより好ましく、1/5以下が更に好ましい。油脂が含まれる場合の油脂の含有量の上限は、上記乳化剤と増粘多糖類との合計質量の1/50以上、1/30以上、又は1/20以上が好ましい。澱粉含有食品用ほぐれ剤中に油脂が含まれる場合、澱粉含有食品用ほぐれ剤(100質量%)中に油脂を、例えば0質量%を超え20質量%未満、好ましくは0.1~18質量%、より好ましくは1~10質量%含有する。本発明は、油脂が存在しなくても、澱粉含有食品用のほぐれ剤として十分機能することを見出したものであるが、油脂が一定量存在すれば、澱粉含有食品用のほぐれ剤を十分乳化することができる。また、同範囲の油脂を含有することで、乳化剤及び増粘多糖類とともに、澱粉含有食品のほぐれ性が向上できる。
【0036】
油脂としては、動植物油脂、グリセリンと脂肪酸から合成した油脂及びそれらの分別油脂、エステル交換油、水素添加油などを単独あるいは組み合わせて用いることができる。
動植物油脂としては、例えば、大豆油、菜種油、ハイオレイック菜種油、ひまわり油、ハイオレイックひまわり油、オリーブ油、サフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、コーン油、綿実油、米油、ゴマ油、エゴマ油、亜麻仁油、落花生油、グレープシード油、牛脂、乳脂、魚油、ヤシ油、パーム油、パーム核油などが挙げられる。
グリセリンと脂肪酸から合成した油脂としては、炭素数6~12、好ましくは炭素数8~10の直鎖状飽和脂肪酸を含有する油脂、例えば炭素数8~10の中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)などが挙げられる。
分別油としては、パームオレイン、パームスーパーオレイン、パームステアリン、パームミッドフラクションなどのパーム油の分別油が挙げられる。
エステル交換油としては、パーム油あるいはパーム油の分別油と他の液状油脂のエステル交換油、あるいはMCTと植物油などとのエステル交換油を用いることができる。
水素添加油は、動植物油、動植物油の分別油の水素添加油の他、エステル交換油の水素添加油などが挙げられる。
【0037】
本発明で用いる油脂につき、室温(20℃±5℃)で流動性を失う油脂は、澱粉含有食品への適用(塗布)時に加熱により溶解させる必要があるので、30℃で流動性を有する態様の油脂が好ましい。原料油脂の一部が30℃で固体であっても、他の原料油脂と併用して用いることによって、油脂全体として流動性を有していれば好適に使用できる。20℃で流動性を有する油脂がより好ましく、20℃で液状である油脂がさらに好ましい。特に、融点の低い液状油脂でありながら、酸化安定性も良好であるという利点を有することから、油脂の構成脂肪酸に炭素数6~12、好ましくは炭素数8~10の直鎖状飽和脂肪酸を含有する油脂、菜種油、パームオレイン、オリーブ油、及びこれらの混合物などを好適に使用することができる。特に、油脂の構成脂肪酸の30質量%以上が、炭素数8~10の直鎖状飽和脂肪酸である油脂は、澱粉含有食品のほぐれ性が良好であり、好ましい。油脂の構成脂肪酸の50~100質量%が、炭素数8~10の直鎖状飽和脂肪酸である油脂がより好ましく、80~100質量%が、炭素数8~10の直鎖状飽和脂肪酸である油脂がさらに好ましい。炭素数8~10の直鎖状飽和脂肪酸として、カプリル酸及びカプリン酸が挙げられる。
【0038】
<その他の成分>
本発明の澱粉含有食品用ほぐれ剤は、上記成分以外にも、澱粉含有食品用ほぐれ剤に一般的に配合される原材料を使用することができる。具体的には、例えば、エタノール、pH調整剤、調味剤、着色料、香料、酸化防止剤、糖類、糖アルコール類、安定剤、乳化剤等を使用することができる。これらの成分の量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができるが、例えば、澱粉含有食品用ほぐれ剤(100質量%)中に10質量%以下含有させることができ、好ましくは0~3質量%又は0質量%を超え3質量%以下、より好ましくは0~1質量%又は0質量%を超え1質量%以下含有させることができる。
【0039】
[澱粉含有食品用ほぐれ剤の加水]
澱粉含有食品用ほぐれ剤は、澱粉含有食品用ほぐれ剤そのまま、又は、さらに使用時に水を加えて、200~25000mPa・s(20℃)の粘度の液体の状態として、実際のほぐれ剤としての用途に用いられてもよい。この時の水溶液は、特に限定するものではないが、可溶化水溶液、水分散液、水中油型(O/W型)乳化物、又はW/O/W型乳化物などが挙げられる(本明細書において、これらをまとめて「乳化物等」と言うことがある)。
澱粉含有食品用ほぐれ剤は、乳化剤と増粘多糖類との相乗作用により特定の高い粘度を有する乳化物等とすることで、澱粉含有食品のほぐれ性が向上する効果を有する。ここで、粘度が高すぎると作業性や澱粉含有食品に対するコーティング性が劣る。そのため、本発明の澱粉含有食品用ほぐれ剤は、使用時において含有する水分を調節することにより、使用時の粘度を調節してもよい。水分を調節した乳化物等の形態である澱粉含有食品用ほぐれ剤は、例えば、200~10000mPa・s(20℃)の粘度、より好ましくは400~5000mPa・s(20℃)、さらに好ましくは600~3000mPa・s(20℃)の粘度、特に好ましくは800~2500mPa・s(20℃)の粘度とすることが適当である。その他、乳化物等の定義や好ましい態様は、前述の通りである。
【0040】
[澱粉含有食品]
本発明の澱粉含有食品用ほぐれ剤は、澱粉含有食品に用いられる。具体的に、本発明の澱粉含有食品用ほぐれ剤は、澱粉含有食品と、当該澱粉含有食品の表面に上記澱粉含有食品用ほぐれ剤を適用することにより、澱粉含有食品と、該澱粉含有食品の表面に付着した上記澱粉含有食品用ほぐれ剤とを含有する、表面改質澱粉含有食品を提供する。澱粉含有食品としては、小麦粉、そば粉、米粉、片栗粉、くず粉、アワ粉、こんにゃく粉、及びタピオカ粉等の穀物粉を主体とする原料を水等と混錬して作成される加工食品を挙げることができる。澱粉含有食品としては、例えば、そば、うどん、ソーメン、冷や麦、中華麺、米粉麺、冷麺、パスタ(ロングパスタ)等の麺類、すいとん、マカロニ、ショートパスタ、ぎょうざの皮、春巻きの皮等の麺類以外の練り製品、及び、ご飯、チャーハン、カレーライス、丼物等の飯類が挙げられる。澱粉含有食品用ほぐれ剤は、これらの澱粉含有食品の特に表面に適用され、澱粉含有食品の表面をコーティングしてほぐれ性が改善された澱粉含有食品を提供するために用いることができる。澱粉含有食品用ほぐれ剤の適用(塗布)量は、澱粉含有食品100質量部に対して、乳化物等の形態である澱粉含有食品用ほぐれ剤として0.1~7質量部となるように適用(塗布)することが好ましく、0.2~5.0質量部となるように適用(塗布)することがより好ましい。本発明の澱粉含有食品用ほぐれ剤を澱粉含有食品に適用する場合、澱粉含有食品は90~100℃程度の湯で茹でた直後、あるいは、当該茹でた澱粉含有食品を冷却して室温(20℃±5℃)とした後に、好ましくは乳化形態である澱粉含有食品用ほぐれ剤を澱粉含有食品に適用してもよい。
【0041】
[澱粉含有食品のほぐれ性向上方法]
本発明の澱粉含有食品のほぐれ性向上方法は、前述の澱粉含有食品用ほぐれ剤を用いて、澱粉含有食品に適用(塗布)することである。即ち、乳化剤と任意の油脂とを、増粘多糖類及び水とともに混合して200~25000mPa・s(20℃)の粘度を有する澱粉含有食品用ほぐれ剤を調製する工程、及び前記澱粉含有食品用ほぐれ剤を澱粉含有食品に適用(塗布)する工程を含む、澱粉含有食品のほぐれ性向上方法である。本発明の澱粉含有食品のほぐれ剤が、澱粉含有食品の、好ましくは表面上に付着していることにより、澱粉含有食品のほぐれ性を向上することができる。ここで、本発明の澱粉含有食品のほぐれ剤は、澱粉含有食品の表面積の100面積%をコーティングしていることが特に好ましいが、澱粉含有食品の表面積の50面積%以上、60面積%以上、70面積%以上、80面積%以上で、99面積%以下、95面積%以下、90面積%以下程度コーティングされていれば十分にほぐれ性を付与することができる。なお、本発明の澱粉含有食品のほぐれ性向上方法において、水分量を調節してさらに乳化物等とした後に、当該乳化物等を、澱粉含有食品に適用(塗布)してもよい。
【0042】
本発明の澱粉含有食品のほぐれ性向上方法で用いる澱粉含有食品用ほぐれ剤、得られた澱粉含有食品の詳細は、前述で述べた通りである。澱粉含有食品用ほぐれ剤の澱粉含有食品に適用(塗布)する方法は、特に限定するものではないが、浸漬、スプレー、和える等の方法があるが、澱粉含有食品を澱粉含有食品用ほぐれ剤表面に塗布する方法、又は澱粉含有食品を澱粉含有食品用ほぐれ剤中に浸漬する方法を採用することが好ましい。このようにほぐれ性が向上されることにより、澱粉含有食品の流通あるいは保存中における付着の問題を改善し、例えば、喫食時に澱粉含有食品を水に浸してほぐすなどの工程を要することなく、互いに接着せず、容易に分離し得るほぐれ性が改善された澱粉含有食品を提供できる。
【0043】
[ほぐれ性が改善された澱粉含有食品の製造方法]
本発明のほぐれ性が改善された澱粉含有食品の製造方法は、前述の澱粉含有食品のほぐれ性向上方法により前記澱粉含有食品を得る工程を含む。ほぐれ性が改善された澱粉含有食品の製造方法は、具体的には、水、任意の油脂及び乳化剤を、増粘多糖類とともに混合し、200~25000mPa・s(20℃)の粘度を有する澱粉含有食品用ほぐれ剤を得る工程、及び前記澱粉含有食品用ほぐれ剤を澱粉含有食品の、好ましくは表面に適用して、ほぐれ性が改善された澱粉含有食品を得る工程、を含む。各用語の詳細な定義や好ましい態様は、前述の通りである。
【実施例0044】
次に、実施例、比較例及び参考例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。また。以下において「%」とは、特別な記載がない場合、質量%を示す。
【0045】
[ほぐれ剤(澱粉含有食品用ほぐれ剤)1~33]
ほぐれ剤を表1~9の配合にて、調製した。
使用した乳化剤は以下の通りである。
乳化剤1(ジグリセリンモノオレイン酸エステル(理研ビタミン株式会社製 商品名「ポエムDO-100V」:HLB7.3))
乳化剤2(クエン酸モノオレイン酸グリセリル(太陽化学株式会社製 商品名「サンソフトNo.623M」:HLB7))
乳化剤3(デカグリセリンペンタオレイン酸エステル(太陽化学株式会社製 商品名「サンソフトQ-175S」:HLB7))
乳化剤4(デカグリセリンモノオレイン酸エステル(太陽化学株式会社製 商品名「サンソフトQ-17S」:HLB12))
乳化剤5(ペンタグリセリンモノオレイン酸エステル(太陽化学株式会社製 商品名「サンソフトA-171E」:HLB13))
乳化剤6(ショ糖ステアリン酸エステル(三菱ケミカルフーズ株式会社製 商品名「リョートーシュガーエステルS-1670」:HLB16.0))
乳化剤7(大豆レシチン(日清オイリオグループ株式会社製 商品名「日清レシチンDX」)
乳化剤8(プロピレングリコールオレイン酸エステル(理研ビタミン株式会社製 商品名「リケマールPO-100V」:HLB3.6))
乳化剤9(蒸留モノグリセライド(理研ビタミン株式会社製 商品名「エマルジーMU」:HLB4.2))
【0046】
使用した増粘多糖類は以下の通りである。
キサンタンガム(太陽化学株式会社製 商品名「ネオソフトXR」)
グアーガム(ユニテックフーズ株式会社 商品名「VIDOGUM GHK175」)
【0047】
ほぐれ剤1~33は、表1~9の配合にて、調製した。ここで、ほぐれ剤2~3は、乳化剤と水を混合し、乳化剤含有液とした。ほぐれ剤5~33は、乳化剤に増粘多糖類(キサンタンガム又はグアーガム)を混合した後に水を加え、70℃まで加温して十分に分散させ乳化剤・増粘多糖類含有液とした。得られた乳化剤・増粘多糖類含有液は、その後氷水で25℃まで急冷し、再度質量を測定した。冷却した乳化剤・増粘多糖類含有液に、加温時に蒸発した量と同量の水を加えて各サンプル間の質量をそろえ、続く実験に用いた。
【0048】
[粘度]
各ほぐれ剤の20℃での粘度を、ブルックフィールド粘度計(BM型粘度計、東機産業株式会社製 商品名「VISCOMETER TVB-15」)にて、回転開始後から1分後の粘度を測定した。
【0049】
[麺のほぐれ性]
市販のうどん麺(テーブルマーク株式会社製 商品名「トップバリュ ベストプライス さぬきうどん」)を100℃の湯中で1分間茹でた。茹でた麺を3~4cmの長さにカットした。カットした麺にほぐれ剤を添加して混合させ、カットした麺100gに対して、ほぐれ剤を3g(麺100質量部に対して3質量部)付着させた。当該ほぐれ剤を添加した麺を開口部10cm×10cm、深さ2.6cmの容器に詰め、24時間10℃にて保管した。
保管後、ステンレスの平面から1mの高さに当該容器を設置し、当該容器から当該ステンレス面に向けて麺を落下させ、当該ステンレス面上で分散した麺の最大距離(最大径)を測定し、各サンプルの麺の最大距離から参考例1の麺の最大距離を除した値を麺のほぐれ性とした。

麺のほぐれ性(cm)=(サンプルの麺の最大距離)-(参考例1の麺の最大距離)

数値が大きいほど、麺が広く分散しており、ほぐれ性がよいことを示している。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
【表5】
【0055】
【表6】
【0056】
【表7】
【0057】
【表8】
【0058】
【表9】
【0059】
実施例1~25はいずれも、参考例1、比較例1~4に比べて、良好なほぐれ性を有している。