(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127503
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】冷凍麺の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20230906BHJP
【FI】
A23L7/109 A
A23L7/109 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031336
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000226998
【氏名又は名称】株式会社日清製粉グループ本社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 翔平
(72)【発明者】
【氏名】石田 一晃
(72)【発明者】
【氏名】捨田利 望実
(72)【発明者】
【氏名】夏目 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】北山 若奈
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 純子
【テーマコード(参考)】
4B046
【Fターム(参考)】
4B046LA01
4B046LA06
4B046LB09
4B046LC01
4B046LC20
4B046LG11
4B046LP41
4B046LP51
4B046LP69
4B046LP71
4B046LP80
(57)【要約】
【課題】冷凍状態から再加熱した後においても良好な歯ごたえのある食感、照りがあり表面粗さのある外観、及び香ばしい風味を有する冷凍麺を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、α化麺に対し、100℃以上280℃以下の水蒸気を用いた加熱を行う蒸気処理工程の後、当該蒸気処理工程で得られた麺を、120℃以上200℃以下の油脂と接触させて1秒以上60秒以下加熱する油加熱工程を行い、
油加熱工程で処理した麺を冷凍する工程を有する、冷凍麺の製造方法を提供することにより、上記目的を達成する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
α化麺に対し、100℃以上280℃以下の水蒸気を用いた加熱を行う蒸気処理工程の後、当該蒸気処理工程で得られた麺を、120℃以上200℃以下の油脂と接触させて1秒以上60秒以下加熱する油加熱工程を行い、
油加熱工程で処理した麺を冷凍する工程を有する、冷凍麺の製造方法。
【請求項2】
α化麺として、水分量50質量%以上80質量%以下となるように加熱したものを用いる、請求項1に記載の冷凍麺の製造方法。
【請求項3】
蒸気処理工程の加熱時間が5秒以上15分以下である、請求項1又は2に記載の冷凍麺の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱済みの冷凍麺を製造する方法に関する。
【0002】
従来、麺の歯ごたえのある食感を得るために種々の調理法が知られている。
特許文献1には、蒸煮麺に対し、300℃以上の過熱水蒸気を30秒以内で直接噴射して焦げ目を付けた後、油脂、糖及び糖アルコールのいずれかを麺線にコーティングすることを特徴とする焦げ目付麺の製造方法が記載されている。同文献には、当該方法により、麺本来の食感を極力損なわない焦げ目付を可能にし、新しい品質が得られると記載されている。
【0003】
特許文献2には、茹で調理した麺類に油脂類を付着させた後、105℃以上の過熱蒸気または加熱空気で加熱する工程を含む調理済み麺類の製造方法が記載されている。同文献には、当該製造方法により、炒め調理を行わなくても、炒め調理したような香ばしい風味と食感を有する調理済み麺類が得られると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-218930号公報
【特許文献2】国際公開第2019/117113号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
炒めスパゲティや焼きそば等、炒めた麺は、その香ばしい風味、焼き締まりにより麺表面が粗くなっているとともに照りのある外観、歯ごたえのある食感、等が広く好まれる料理であり、これを電子レンジ加熱などで簡単に喫食できる冷凍麺の需要は高まっている。
一方で、加熱済みの冷凍麺は一定の水分量を有することなどから、冷凍及びその後の加熱を経ることで食感や風味が低下しやすい傾向があり、冷凍後の再加熱後に歯ごたえある食感、香ばしい風味、良好な外観を得ることが難しい場合が存在する。
特許文献1は上記の課題を一切考慮したものではない。
また特許文献2も炒め調理したような香ばしさと食感を目的とはしているが、冷凍及びその再加熱後における風味や食感についてはなお検討の余地があった。また特許文献2には冷凍状態から再加熱した後の麺の外観の課題は記載されていない。
【0006】
従って本発明の課題は、冷凍状態から再加熱した後においても歯ごたえのある食感と香ばしい風味を有するとともに、照り感や表面粗さがある外観を有する冷凍麺を提供することにある。麺の照り感や表面粗さは炒め調理した状態を感じさせる外観要素である。(以下、炒め調理した状態を感じさせることを「炒め感がある」ともいう。)
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、α化麺に対し、100℃以上280℃以下の水蒸気を用いた加熱を行う蒸気処理工程の後、当該蒸気処理工程で得られた麺を、120℃以上200℃以下の油脂と接触させて1秒以上60秒以下加熱する油加熱工程を行い、
油加熱工程で処理した麺を冷凍する工程を有する、冷凍麺の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、冷凍状態から再加熱した後においても歯ごたえのある食感と香ばしい風味を有するとともに、照り感や表面粗さがある外観を有する冷凍麺を提供することができる。本発明により、炒め調理せずとも、冷凍状態から再加熱した後において食感・食味だけでなく見た目にも炒め感が得られる冷凍麺を大量生産することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をその好適な実施態様に基づき説明する。
本発明は、α化麺に対し、100℃以上280℃以下の水蒸気を用いた加熱を行う蒸気処理工程の後、当該蒸気処理工程で得られた麺を、120℃以上200℃以下の油脂と接触させて1秒以上60秒以下加熱する油加熱工程を行い、
油加熱工程で処理した麺を冷凍する工程を有する、冷凍麺の製造方法に関する。
なお、以下、時間についての「N秒」及び「M分」の記載はそれぞれ「N秒間」「M分間」の意味である(N及びMはそれぞれ数値である)。
【0010】
本発明者は、冷凍後に再加熱した場合に、照り感や表面粗さのある外観を有しつつ歯ごたえある食感、香ばしい風味が得られる加熱済み冷凍麺の製造方法について鋭意検討した。その結果、麺のα化を進めた上で、高温の水蒸気及び高温の油によりこの順で所定条件で加熱して、水分を除去することで、驚くべきことに、上記の課題を解決できることを見出した。
【0011】
本発明ではα化麺を用いる。α化麺としては、通常食用に供される麺類をα化したものを用いることができる。麺類の例としては、スパゲティ、マカロニ等のパスタ、中華麺、うどん、そば、ビーフン、フォー等が挙げられる。これらの中でも、広く炒め調理して喫食されるタイプの麺類が好ましく、スパゲティ等のパスタ、中華そば、うどん、ビーフン等を好適に例示できる。本明細書において、α化麺とは、茹で処理又は蒸し処理が施された麺類を指す。ここでいう蒸し処理は、蒸煮処理を含む。一般にα化麺を得る際の蒸し処理に用いられる水蒸気温度は100℃である。本発明では、蒸し処理でα化麺を得る場合は蒸気処理工程の水蒸気温度は100℃超として、蒸し処理でα化麺を得る場合の当該α化処理と蒸気処理工程とを区別することができる。
【0012】
麺類の原料としては、小麦粉、そば粉、米粉、澱粉等を原料粉として用いればよい。また麺類の製法については、常法に従って麺類として製造すればよい。製造された麺類は、そのまま(生麺として)茹で調理又は蒸し調理してα化麺としてもよく、熟成処理後に茹で調理又は蒸し調理を行ってα化麺としてもよい。ここで熟成処理としては、乾燥処理や加熱処理が含まれ、従来から行われている麺類の風味を改善する方法を適宜選択して適用し、行うことができる。α化麺は、市販されている乾麺や生麺等の未調理の麺類を用いてα化してもよい。
【0013】
蒸気処理工程に供するα化麺の水分量としては50質量%以上であることが、冷凍後の再加熱後における表面粗さが大きくなりすぎることを好適に防止できるほか、香ばしい風味、歯ごたえある食感に優れることから好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、65質量%以上とすることが特に好ましい。一方α化麺の水分量は80質量%以下であることが歯ごたえや表面粗さの点で好ましく、75質量%以下であることが更に一層好ましい。麺の水分量は、105℃での常圧加熱乾燥法により測定することができる。
【0014】
例えば、乾燥麺を茹で調理又は蒸し調理する場合の歩留としては、200質量%以上とすることが、冷凍後の再加熱後における表面粗さが大きくなりすぎることを好適に防止できるほか、香ばしい風味、歯ごたえある食感に優れることから好ましく、220質量%以上とすることがより好ましく、260質量%以上とすることが特に好ましい。乾燥麺を茹で調理又は蒸し調理する場合の歩留は、400質量%以下であることが歯ごたえや表面粗さの点で好ましく、380質量%以下であることが更に一層好ましい。
【0015】
(蒸気処理工程)
α化麺を蒸気処理工程に供する。蒸気処理工程に供する時点でのα化麺の温度は特に限定されない。茹で又は蒸した麺は、冷却した後に蒸気処理工程に供してもよいし、茹で又は蒸した高温の状態のまま蒸気処理工程に供してもよい。
α化麺は、100℃以上の水蒸気で加熱する。加熱する際は、α化麺の加熱にムラが起こりにくくなるように、麺類をなるべく均一な状態で配置することが好ましく、シート状、畝状、棒状等にして広げるように配置することが好ましい。例えば、シート状は、凹凸が無いように麺を均一に敷き詰めた状態をいい、長さ:幅:厚みの比率が1~100:1~100:1、特に10~50:10~50:1のシート状とすることが好ましい。シート状に広げると、加熱をほぼ均等に行うことが可能になる。畝状は、凹凸があり厚さが均一でない点以外は、シート状と同様である。棒状は、直線状に延ばした複数の麺線を束状に揃えた状態をいう。
【0016】
蒸気処理工程に供する麺には、該麺とともに肉や魚、野菜などの別具材を混合させてもよい。また調味料、衣材、酸化防止剤やpH調整剤などの食品添加物、ミネラル等の各種成分を野菜に前もって添加しておいてもよい。蒸気処理工程に供する全材料中、α化麺の割合は60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0017】
蒸気処理工程は、100℃以上280℃以下の水蒸気を用いて麺を加熱する。本発明者は、100℃以上280℃以下という高温の水蒸気を麺と接触させる蒸気処理工程を経ることで、その後高温の油と接触させた後に冷凍させ、次いで再加熱しても、麺の表面の硬さを維持しやすく、歯ごたえのある良好な食感が得られるほか、表面粗さと照りのある炒め感のある外観及び風味を良好とできることを知見した。この理由は明確ではないが、水蒸気加熱によれば、物理的衝撃なく均一加熱が可能で、加熱時間の制御が容易であり、色調や歩留への悪影響を抑制しやすい。本工程においては、水蒸気の温度が100℃以上であることで、急速に麺を加熱でき、それにより短時間で麺表面に適度な硬さを付与できる利点があり、280℃以下であることで、過度に麺を加熱させず、食感の向上や風味向上、良好な外観という利点となる。水蒸気は100℃超である場合は、100℃以上で沸騰気化した飽和水蒸気をさらに加熱して得られる過熱水蒸気を用いる。麺の表面に乾燥効果を与え、加熱した油脂と接触させた時の調理の効果を向上させることの点から水蒸気の温度は、110℃以上であることがより好ましい。またこれらの観点から最も好ましい水蒸気の温度は120℃以上270℃以下である。
【0018】
蒸気処理工程の好適な加熱時間としては、麺の種類や太さに応じて適宜調整すればよい。しかしながら、例えば5秒以上15分以下であることが、得られる麺の表面粗さと照りのある炒め感のある外観、歯ごたえある食感、香ばしい風味の点で好ましく、より好ましくは10秒以上10分以下であり、特に好ましくは15秒以上5分以下であり、最も好ましくは15秒以上4分以下である。ここで、蒸気処理工程の加熱時間とは、麺が100℃以上280℃以下の水蒸気と接触した状態にある時間であり、間欠的に水蒸気と接触させる場合は、接触時間の合計である。
また、本発明の効果に特に優れる点から、蒸気処理工程は、水蒸気温度(℃)×蒸気処理工程の時間(秒)を掛け合わせた値が、10000(℃・秒)~25000(℃・秒)であることが好ましく、13000(℃・秒)~20000(℃・秒)であることがより好ましい。
【0019】
蒸気処理工程に使用する水蒸気量としては、歯ごたえがあり外観が良好で風味が良好な麺が一層得やすい点、及び麺表面の水分を低下させやすい点から、20kg/時間以上400kg/時間以下が好ましく挙げられ、30kg/時間以上300kg/時間以下が更に好適である。
【0020】
100℃以上280℃以下の水蒸気を用いた調理機器としては、水蒸気を食材に直接吹き付ける水蒸気噴射型、水蒸気を食材に直接吹き付けるのではなく、庫内を蒸気で満たす水蒸気充満型の2種類があり、どちらを使用してもよい。
【0021】
上記の蒸気処理工程により処理した麺を油加熱工程に供する。本発明の製造方法は、蒸気処理工程と油加熱工程との間に、別工程を有していてもよい。そのような別工程としては、静置工程や調味工程、食品添加物の添加工程、重量調整工程等が挙げられる。蒸気処理工程と油加熱工程との間には、積極的な加熱工程や積極的な冷却工程を有しないことが、麺の温度制御の容易性の点から好ましい。特に、蒸気処理工程と油加熱工程とは連続的に行うことが、麺の温度制御が容易である点で好ましい。蒸気処理工程と油加熱工程とを連続的に行うとは、蒸気処理工程による水蒸気と麺との接触終了時点から、油加熱工程における麺と油との接触開始までの時間が1時間以内であることを意味することが好ましく、20分間以内であることを意味することが特に好ましい。
【0022】
(油加熱工程)
油加熱工程は、蒸気処理工程による処理後の麺と、120℃以上200℃以下の油脂とを接触させる、加熱時間が1秒以上60秒以下の工程である。油脂と麺とを接触させる方法としては、鍋中の加熱油脂で麺を揚げる一般的な油ちょうであってもよく、或いは、麺に対し、加熱油脂を上から流下させたり、加熱油脂を麺に噴霧したりして、麺に加熱油脂をかける方法が挙げられる。後者である場合、短時間の加熱において加熱時間調整がしやすく、また油脂の温度調整もしやすい点で好ましい。
【0023】
油加熱工程において用いる油脂の温度は120℃以上であることで、照り感及び表面粗さのある外観が得られるほか、香ばしい風味の付与の点で有利である。油加熱工程において用いる油脂の温度は200℃以下であることで、冷凍麺を再加熱したときの過加熱に起因した見た目や食感の劣化を回避できる。この観点から、油加熱工程において用いる油脂の温度は120℃以上200℃以下であることがより好ましく、150℃以上190℃以下であることが特に好ましい。
【0024】
油加熱工程の加熱時間は1秒以上60秒以下である。1秒以上であることで、照り感や表面粗さがあり炒め感のある外観や香ばしい風味が得られ、60秒以下であることで、冷凍麺を再加熱したときの過加熱に起因した見た目や食感の劣化を回避できる。この観点から、油加熱工程における加熱時間は2秒以上50秒以下であることがより好ましく、3秒以上30秒以下であることが特に好ましい。
【0025】
油加熱工程において油脂と麺との接触は連続的であってもよく、不連続的であってもよい。不連続的とは例えば油脂を間欠的に麺にかける場合が挙げられる。油加熱工程における加熱時間とは、120℃以上200℃以下の油との接触時間を指す。例えば油かけを連続的に行う場合には、油かけが開始して麺と加熱油脂が接触開始してから接触終了するまでの時間を指す。間欠的に油かけを行う場合、各回の油かけの間の間隙時間を含まない、各回の油かけによる麺と加熱油脂との接触時間を全て足した時間とする。
【0026】
油加熱工程で用いる油脂の総流量は麺1gに対し1g以上200g以下であることが、照り感や適度に表面粗さのある外観や香ばしい風味が効率よく得やすい点で好ましく、2g以上100g以下であることがより好ましい。
【0027】
油加熱工程において用いる油脂は食用油脂であれば特に限定はされず、パーム油、パーム核油、ヤシ油、シア脂、牛脂、豚脂、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、米油、コーン油、ゴマ油、アマニ油、オリーブ油、乳脂等や、これらの加工油脂(水素添加油、分別油、エステル交換油)など特に限定なく使用することができる。特に本発明では液状油、具体的には25℃で液状である油脂を用いることが連続製造での取り扱いが容易な点から好ましい。また風味の点からは、菜種油、大豆油、オリーブ油、サフラワー油、コーン油から選ばれる少なくとも一種であることが好適である。
【0028】
油加熱工程終了後の麺は、そのまま必要に応じて冷却させて、冷凍により保存させてもよく、又はその他の具材(肉、魚介類、野菜等)とたれ、つゆ、調味液類(ソース類ともいう)と混合した後に冷却し、冷凍してもよい。本発明で得られる麺は、良好な表面粗さを有しており、ソース類の絡みやすさも良好である。油加熱工程後の麺は冷凍前に冷却することが、温度制御の容易性や衛生面の点で好ましい。油加熱工程終了後の麺の冷却は送風冷却、真空冷却等の各種方法を採用できる。冷凍は通常-50℃以上0℃以下で行われ、-45℃以上-10℃以下がより好ましい。
【0029】
油加熱工程後の麺は、必要に応じて上記のように具材やソース類と混合した後、必要に応じて、所定の分量、例えば、一人分として150~300gに分けてトレイ等に盛り付けた後、必要に応じて包装し、これを冷蔵又は冷凍処理に付すことができる。特に冷凍された調理済み麺類は、長期保存が可能である。
【0030】
冷凍麺の加熱方法は適宜、目的とする調理麺の種類に適した方法を採用すればよい。また喫食時における冷凍麺の加熱方法は、マイクロウェーブ加熱、オーブン加熱等が挙げられ、また、フライパン等を用いて冷凍麺又はそれを含む食品を炒めたり、食品を包材に密閉した状態でボイル加熱したりしてもよく、特に限定されない。本発明の冷凍麺はこれを加熱、喫食時における、冷凍状態から再加熱した後においても歯ごたえのある食感と香ばしい風味、照り感や表面粗さがあり炒め感のある良好な外観を有する。
【0031】
冷凍麺の例としては、ナポリタンスパゲティ、ペペロンチーノスパゲティ等の炒めパスタ、焼きそば、焼きうどん、焼きビーフン等が例示できるが、これに限定されない。
【実施例0032】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。油加熱工程に用いる油脂としては、菜種油を用いた。また油かけは、麺を油に当たりやすいように重なり部分がないように広げ、流下位置の上方から投影視したときに加熱油脂を流下した部分が麺が存在する位置の全体を含むように且つ流下した部分全体に亘り面積当たりの流下量が均一となるように油脂を流下させた。
【0033】
〔実施例1-1~1-4〕
市販の乾燥スパゲティ(商品名「マッシモプレミオ#201」日清製粉ウェルナ製)について、水3Lに乾麺30gを投入し、標準時間の8分間、茹で調理して表1に記載の水分量、茹で歩留とした。茹で後の麺をステンレス鋼製のトレイの上に重なり部分がないように広げ、水蒸気量:100kg/時間で、連続式水蒸気調理機(中西製作所製、SVロースター、水蒸気噴射型)を用いて表1記載の温度の水蒸気にて表1に記載の加熱時間で加熱した(蒸気処理工程)。
次いで、油加熱工程として、蒸気処理工程後の麺に対し、油かけ機により、表1に記載の温度の油を、表1に記載の加熱時間にて上からかけた。油かけ機の油の総流量は蒸気処理工程前の茹で麺1gに対し、10gであった。蒸気処理工程から油加熱工程までは連続的に行われた。油かけ終了後の麺は、10℃で冷風冷却した後、-40℃のブラスト凍結処理を行った。冷凍した麺をナイロンポリ製のパウチに入れて密封し、冷凍庫に保管して冷凍麺を得た。
【0034】
〔比較例1-1〕
蒸気処理工程及び油加熱工程を行わなかった以外は、それぞれ実施例1-1~1-4と同様として冷凍麺を得た。
【0035】
〔比較例1-2、1-3〕
油加熱工程を行わなかった以外は実施例1-1及び1-2とそれぞれ同様として、冷凍麺を得た。
【0036】
〔比較例1-4〕
蒸気処理工程を行わずに茹で麺にそのまま油加熱工程を施した。その点以外は実施例1-1と同様にして、冷凍麺を得た。
【0037】
〔比較例1-5〕
蒸気処理工程の水蒸気温度及び加熱時間を表1となるようにしたほか、油加熱工程の代わりに、25℃の菜種油を蒸気処理工程後の茹で麺150gに対して、5mlまぶしてコーティングした以外は実施例1-1と同様として、冷凍麺を得た。
【0038】
〔比較例1-6〕
蒸気処理工程と油加熱工程の順序を入れ替えた以外は実施例1-2と同様として、冷凍麺を得た。
【0039】
(評価)
7日冷凍保存した冷凍麺について、皿に100gを盛りつけた後に、電子レンジで600W、1分40秒間加熱した。加熱後の麺について、以下の評価基準で評価した。
【0040】
<評価基準>
●外観
5:麺表面が適度に粗くなり、適度な照りが付いた外観で、非常に良好。
4:麺表面に粗さがあり、適度な照りが付いた外観で、良好。
3:麺表面にやや粗さがあり、やや照りが強いまたは弱い外観で、並み。
2:麺表面の粗さが弱く、照りが強いまたは弱い外観で、不良。
1:麺表面に粗さがほとんどなく、照りが強すぎるまたは弱すぎる外観で、非常に不良。
【0041】
●風味
5:油脂の香ばしい香り・味が強く、非常に良好。
4:油脂の香ばしい香り・味があり、良好。
3:油脂の香ばしい香り・味がややあり、並み。
2:油脂の香ばしい香り・味が弱く、不良。
1:油脂の香ばしい香り・味がほとんどなく、非常に不良。
【0042】
●食感
5:歯ごたえが強く、麺表面に適度な硬さが感じられる食感で、非常に良好。
4:歯ごたえがあり、麺表面に適度な硬さが感じられる食感で、良好。
3:歯ごたえがやや弱く、麺表面がやや硬いまたはやや柔らかい食感で、並み。
2:歯ごたえが弱く、麺表面が硬いまたは柔らかい食感で、不良。
1:歯ごたえがほとんどなく、麺表面が硬すぎるまたは柔らかすぎる食感で、非常に不良。
【0043】
【0044】
【0045】
表1に示す通り、所定温度、時間の蒸気処理工程と、所定温度、時間の油加熱工程とをこの順で組み合わせた各実施例では麺表面粗さ及び照りのある外観、香ばしい風味、歯ごたえある食感のうち2つ以上が良好、残る一つも標準以上の評価が得られている。これらの評価の実施例の製品では、冷凍後の再加熱後において、食感、風味だけでなく見た目においても炒め調理したように感じさせるものであった。これに対し、表1及び表2の通り、蒸気処理工程及び油加熱工程を行わない比較例1-1は表面の粗さや照りがある外観が得難く、蒸気処理工程のみ行ってもこれらを向上しがたい。また油加熱工程のみ行う比較例1-4では外観・食感に劣る。更に、本発明の上限を超える温度の水蒸気を用い、常温の油脂で被覆する比較例1-5も外観・風味の効果が得られず、油加熱工程と蒸気処理工程の順序を入れ替えた比較例1-6では風味が得られず、外観、食感も劣る。
【0046】
〔実施例2-1~2-2、3-1~3-2〕
茹で時間を15分(表3)又は20分(表4)に変更して水分量、茹で歩留を当該表に記載の値とした後に蒸気処理工程を行った以外は実施例1-1及び1-2と同様として、冷凍麺を得た。
【0047】
〔比較例2-1~2-4、3-1~3-4〕
茹で時間を15分(表3)又は20分(表4)に変更して水分量、茹で歩留を当該表に記載の値とした後に蒸気処理工程を行った以外は比較例1-1~1-4とそれぞれ同様として、冷凍麺を得た。
【0048】
実施例2-1~2-2、3-1~3-2、比較例2-1~2-4、3-1~3-4の冷凍麺について、比較例1-1~1-7、1-1~1-4と同様の評価を行った。結果を表3及び4に示す。
【0049】
【0050】
【0051】
表1、表3及び表4に示す通り、歩留や水分量が所定値以上である場合、冷凍後の再加熱後において、表面の適度な粗さと適度な照りがある炒め感のある外観、油脂の香ばしい風味、及び歯ごたえある食感の向上効果が顕著になることが判る。