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特開2023-127546プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127546
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016096
(22)【出願日】2023-02-06
(31)【優先権主張番号】P 2022031131
(32)【優先日】2022-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100140431
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135677
【弁理士】
【氏名又は名称】澤井 光一
(74)【代理人】
【識別番号】100131598
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 和宗
(72)【発明者】
【氏名】米澤 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】勝沼 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】石川 慎也
(72)【発明者】
【氏名】田中 康基
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 翔
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA09
5F004BA09
5F004BB12
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB25
5F004BB26
5F004BB28
5F004BB29
5F004CA02
5F004CA03
5F004CA06
5F004DA04
5F004DA05
5F004DA11
5F004DA12
5F004DA13
5F004DA14
5F004DA15
5F004DA16
5F004DA17
5F004DA18
5F004DA20
5F004DA23
5F004DA24
5F004DA25
5F004DA26
5F004DA29
5F004DB02
5F004DB03
5F004DB07
5F004EA03
5F004EA05
5F004EA13
5F004EA37
5F004EB01
5F004EB04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】垂直性の高いエッチングが可能なプラズマ処理方法を提供する。
【解決手段】プラズマ処理方法は、シリコン含有膜及び開口パターンを含むマスク膜を有する基板を基板支持部に準備する工程ST1と、チャンバ内でプラズマを生成して、前記マスク膜をマスクとして前記シリコン含有膜をエッチングする工程ST2、を含む。エッチングする工程ST2は、炭素、水素及びフッ素を含む1以上のガスを含む処理ガスを前記チャンバ内に供給する工程ST21と、前記プラズマ生成部にソースRF信号を供給して、前記処理ガスからプラズマを生成する工程ST22と、前記基板支持部にバイアスRF信号を供給する工程ST23と、を含む。前記エッチングする工程において、前記マスク膜の表面の少なくとも一部に炭素含有膜を形成しつつ、少なくとも前記処理ガスから生成されたフッ化水素によって前記シリコン含有膜をエッチングする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置において実行されるプラズマ処理方法であって、
前記プラズマ処理装置は、チャンバ、前記チャンバ内に配置された基板支持部及び前記基板支持部に対向して配置されたプラズマ生成部を有し、
前記プラズマ処理方法は、
シリコン含有膜及びマスク膜を有する基板を前記基板支持部に準備する工程であって、前記マスク膜は開口パターンを含む、準備する工程と、
前記チャンバ内でプラズマを生成して、前記マスク膜をマスクとして前記シリコン含有膜をエッチングする工程と
を含み、
前記エッチングする工程は、
炭素、水素及びフッ素を含む1以上のガスを含む処理ガスを前記チャンバ内に供給する工程と、
前記プラズマ生成部にソースRF信号を供給して、前記処理ガスからプラズマを生成する工程と、
前記基板支持部にバイアス信号を供給する工程と
を含み、
前記エッチングする工程において、前記マスク膜の表面の少なくとも一部に炭素含有膜を形成しつつ、少なくとも前記処理ガスから生成されたフッ化水素によって前記シリコン含有膜をエッチングする、プラズマ処理方法。
【請求項2】
前記プラズマ処理装置は、前記プラズマ生成部及び前記基板支持部を電極とする、容量結合型のプラズマ処理装置である、請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項3】
前記プラズマ処理装置は、誘導結合型のプラズマ処理装置である、請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項4】
前記プラズマ生成部は、前記基板支持部に対向して配置されたアンテナを備え、
前記チャンバは、
側壁と、
前記基板支持部と前記アンテナとの間に配置された誘電体窓と
を有し、
前記プラズマ処理装置は、
前記誘電体窓に配置された第1のガス注入部と、
前記側壁に配置された第2のガス注入部と
を有し、
前記エッチングする工程において、前記処理ガスは、前記第1のガス注入部及び前記第2のガス注入部から、前記チャンバ内に供給される、請求項3に記載のプラズマ処理方法。
【請求項5】
前記処理ガスは、窒素含有ガスを含む、請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項6】
前記窒素含有ガスは、窒素ガス(N)又は三フッ化窒素(NF)である、請求項5に記載のプラズマ処理方法。
【請求項7】
前記処理ガスにおいて、フッ素原子の数に対する水素原子の数の比は0.2以上である、請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項8】
前記エッチングする工程において、前記チャンバ内の圧力は50mTorr以下である、請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項9】
前記ソースRF信号の電力は、前記バイアス信号の電力よりも大きい、請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項10】
前記バイアスRF信号の電力に対する前記ソースRF信号の電力の比は10以上である、請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項11】
前記準備する工程は、
前記シリコン含有膜上にEUVレジストを形成する工程と、
前記EUVレジストを露光して、前記開口パターンを含む前記マスク膜を形成する工程と、
前記マスク膜が形成された前記基板を前記基板支持部に配置する工程と
を含む、請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項12】
前記EUVレジストは、有機膜レジストである、請求項11に記載のプラズマ処理方法。
【請求項13】
前記EUVレジストは、金属含有膜レジストである、請求項11に記載のプラズマ処理方法。
【請求項14】
前記金属含有膜レジストは、スズ(Sn)含有膜レジストである、請求項13に記載のプラズマ処理方法。
【請求項15】
前記ソースRF信号の電力は500W以上である、請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項16】
前記バイアスRF信号の電力は200W以下である、請求項1から15のいずれか1項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項17】
前記マスク膜は炭素含有膜又は金属含有膜である、請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項18】
前記ソースRF信号の電力は500W以上である、請求項17に記載のプラズマ処理方法。
【請求項19】
前記バイアスRF信号の電力は200W以上である、請求項18に記載のプラズマ処理方法。
【請求項20】
前記開口パターンに含まれる開口の開口幅は25nm以下である、請求項17に記載のプラズマ処理方法。
【請求項21】
前記エッチング膜の厚さは、前記開口パターンに含まれる開口の開口幅の5倍以上である、請求項17に記載のプラズマ処理方法。
【請求項22】
プラズマ処理装置であって、
チャンバと
前記チャンバ内に配置された基板支持部と、
前記基板支持部に対向して設けられたプラズマ生成部と、
制御部と
を有し、
前記制御部は、
シリコン含有膜及びマスク膜を有する基板を前記基板支持部に準備する制御と、
前記チャンバ内でプラズマを生成して、前記マスク膜をマスクとして前記シリコン含有膜をエッチングする制御と
を実行し、
前記エッチングする制御において、
炭素、水素及びフッ素を含む1以上のガスを含む処理ガスを前記チャンバ内に供給する制御と、
前記プラズマ生成部にソースRF信号を供給して、前記処理ガスからプラズマを生成する制御と、
前記基板支持部にバイアスRF信号を供給する制御と、
を実行し、
前記エッチングする制御おいて、前記マスク膜の表面の少なくとも一部に炭素含有膜を形成しつつ、少なくとも前記処理ガスから生成されたフッ化水素によって前記シリコン含有膜をエッチングする制御を実行する、プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスの製造においては、基板のシリコン含有膜のプラズマエッチングが行われている。例えば、特許文献1には、プラズマエッチングにより、誘電体膜をエッチングする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-39309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、垂直性の高いエッチングが可能なプラズマ処理方法及びプラズマ処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置において実行されるプラズマ処理方法であって、プラズマ処理装置は、チャンバ、チャンバ内に配置された基板支持部及び基板支持部に対向して配置されたプラズマ生成部を有し、プラズマ処理方法は、シリコン含有膜及びマスク膜を有する基板を基板支持部に準備する工程であって、マスク膜は開口パターンを含む、準備する工程と、チャンバ内でプラズマを生成して、マスク膜をマスクとしてシリコン含有膜をエッチングする工程とを含み、エッチングする工程は、炭素、水素及びフッ素を含む1以上のガスを含む処理ガスをチャンバ内に供給する工程と、プラズマ生成部にソースRF信号を供給して、処理ガスからプラズマを生成する工程と、基板支持部にバイアスRF信号を供給する工程とを含み、エッチングする工程において、マスク膜の表面の少なくとも一部に炭素含有膜を形成しつつ、少なくとも処理ガスから生成されたフッ化水素によってシリコン含有膜をエッチングする。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一つの例示的実施形態によれば、垂直性の高いエッチングが可能なプラズマ処理方法及びプラズマ処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】プラズマ処理システムの構成例を説明するための図である。
図2】容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
図3】誘導結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
図4】基板Wの断面構造の一例を示す図である。
図5】本処理方法の一例を示すフローチャートである。
図6】基板Wの断面構造の一例を示す図である。
図7】基板Wの断面構造の一例を示す図である。
図8】参考例1、実施例1及び実施例2の測定結果を示す表である。
図9】炭素含有膜(保護膜PF)の堆積速度の変化を示すグラフである。
図10】マスク膜MKに対するシリコン含有膜SFの選択比の変化を示すグラフである。
図11】基板Wの断面構造の一例を示す図である。
図12】参考例2及び実施例3の測定結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の各実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置において実行されるプラズマ処理方法が提供される。プラズマ処理方法は、プラズマ処理装置は、チャンバ、チャンバ内に配置された基板支持部及び基板支持部に対向して配置されたプラズマ生成部を有し、プラズマ処理方法は、シリコン含有膜及びマスク膜を有する基板を基板支持部に準備する工程であって、マスク膜は開口パターンを含む、準備する工程と、チャンバ内でプラズマを生成して、マスク膜をマスクとしてシリコン含有膜をエッチングする工程とを含み、エッチングする工程は、炭素、水素及びフッ素を含む1以上のガスを含む処理ガスをチャンバ内に供給する工程と、プラズマ生成部にソースRF信号を供給して、処理ガスからプラズマを生成する工程と、基板支持部にバイアス信号を供給する工程とを含み、エッチングする工程において、マスク膜の表面の少なくとも一部に炭素含有膜を形成しつつ、少なくとも処理ガスから生成されたフッ化水素によってシリコン含有膜をエッチングする。
【0010】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置は、プラズマ生成部及び基板支持部を電極とする、容量結合型のプラズマ処理装置である。
【0011】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置は、誘導結合型のプラズマ処理装置である。
【0012】
一つの例示的実施形態において、プラズマ生成部は、基板支持部に対向して配置されたアンテナを備え、チャンバは、側壁と、基板支持部とアンテナとの間に配置された誘電体窓とを有し、プラズマ処理装置は、誘電体窓に配置された第1のガス注入部と、側壁に配置された第2のガス注入部とを有し、エッチングする工程において、処理ガスは、第1のガス注入部及び第2のガス注入部から、チャンバ内に供給される。
【0013】
一つの例示的実施形態において、処理ガスは、窒素含有ガスを含む、請求項1に記載の。
【0014】
一つの例示的実施形態において、窒素含有ガスは、窒素ガス(N)又は三フッ化窒素(NF)である。
【0015】
一つの例示的実施形態において、処理ガスにおいて、フッ素原子の数に対する水素原子の数の比は0.2以上である。
【0016】
一つの例示的実施形態において、エッチングする工程において、チャンバ内の圧力は50mTorr以下である。
【0017】
一つの例示的実施形態において、ソースRF信号の電力は、バイアス信号の電力よりも大きい。
【0018】
一つの例示的実施形態において、バイアスRF信号の電力に対するソースRF信号の電力の比は10以上である。
【0019】
一つの例示的実施形態において、準備する工程は、シリコン含有膜上にEUVレジストを形成する工程と、EUVレジストを露光して、開口パターンを含むマスク膜を形成する工程と、マスク膜が形成された基板を基板支持部に配置する工程とを含む。
【0020】
一つの例示的実施形態において、EUVレジストは、有機膜レジストである。
【0021】
一つの例示的実施形態において、EUVレジストは、金属含有膜レジストである。
【0022】
一つの例示的実施形態において、金属含有膜レジストは、スズ(Sn)含有膜レジストである。
【0023】
一つの例示的実施形態において、ソースRF信号の電力は500W以上である。
【0024】
一つの例示的実施形態において、バイアスRF信号の電力は200W以下である。
【0025】
一つの例示的実施形態において、マスク膜は炭素含有膜又は金属含有膜である。
【0026】
一つの例示的実施形態において、ソースRF信号の電力は500W以上である。
【0027】
一つの例示的実施形態において、バイアスRF信号の電力は200W以上である。
【0028】
一つの例示的実施形態において、開口パターンに含まれる開口の開口幅は25nm以下である。
【0029】
一つの例示的実施形態において、エッチング膜の厚さは、開口パターンに含まれる開口の開口幅の5倍以上である。
【0030】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理放置は、チャンバとチャンバ内に配置された基板支持部と、基板支持部に対向して設けられたプラズマ生成部と、制御部とを有し、制御部は、シリコン含有膜及びマスク膜を有する基板を基板支持部に準備する制御と、チャンバ内でプラズマを生成して、マスク膜をマスクとしてシリコン含有膜をエッチングする制御とを実行し、エッチングする制御において、炭素、水素及びフッ素を含む1以上のガスを含む処理ガスをチャンバ内に供給する制御と、プラズマ生成部にソースRF信号を供給して、処理ガスからプラズマを生成する制御と、基板支持部にバイアスRF信号を供給する制御と、を実行し、 エッチングする制御おいて、マスク膜の表面の少なくとも一部に炭素含有膜を形成しつつ、少なくとも処理ガスから生成されたフッ化水素によってシリコン含有膜をエッチングする制御を実行する。
【0031】
以下、図面を参照して、本開示の各実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一または同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づいて上下左右等の位置関係を説明する。図面の寸法比率は実際の比率を示すものではなく、また、実際の比率は図示の比率に限られるものではない。
【0032】
<プラズマ処理システムの一例>
図1は、プラズマ処理システムの構成例を説明するための図である。一実施形態において、プラズマ処理システムは、プラズマ処理装置1及び制御部2を含む。プラズマ処理システムは、基板処理システムの一例であり、プラズマ処理装置1は、基板処理装置の一例である。プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、基板支持部11及びプラズマ生成部12を含む。プラズマ処理チャンバ10は、プラズマ処理空間を有する。また、プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間に供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。ガス供給口は、後述するガス供給部20に接続され、ガス排出口は、後述する排気システム40に接続される。基板支持部11は、プラズマ処理空間内に配置され、基板を支持するための基板支持面を有する。
【0033】
プラズマ生成部12は、プラズマ処理空間内に供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマを生成するように構成される。プラズマ処理空間において形成されるプラズマは、容量結合プラズマ(CCP;Capacitively Coupled Plasma)、誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)、ECRプラズマ(Electron-Cyclotron-resonance plasma)、ヘリコン波励起プラズマ(HWP:Helicon Wave Plasma)、又は、表面波プラズマ(SWP:Surface Wave Plasma)等であってもよい。また、AC(Alternating Current)プラズマ生成部及びDC(Direct Current)プラズマ生成部を含む、種々のタイプのプラズマ生成部が用いられてもよい。一実施形態において、ACプラズマ生成部で用いられるAC信号(AC電力)は、100kHz~10GHzの範囲内の周波数を有する。従って、AC信号は、RF(Radio Frequency)信号及びマイクロ波信号を含む。一実施形態において、RF信号は、100kHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。
【0034】
<CCPプラズマ処理装置の一例>
図2は、容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
【0035】
プラズマ処理システムは、容量結合型のプラズマ処理装置1及び制御部2を含む。容量結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。プラズマ処理チャンバ10は接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10の筐体とは電気的に絶縁される。
【0036】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板Wを支持するための中央領域111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111bとを有する。ウェハは基板Wの一例である。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。従って、中央領域111aは、基板Wを支持するための基板支持面とも呼ばれ、環状領域111bは、リングアセンブリ112を支持するためのリング支持面とも呼ばれる。
【0037】
一実施形態において、本体部111は、基台1110及び静電チャック1111を含む。基台1110は、導電性部材を含む。基台1110の導電性部材は下部電極として機能し得る。静電チャック1111は、基台1110の上に配置される。静電チャック1111は、セラミック部材1111aとセラミック部材1111a内に配置される静電電極1111bとを含む。セラミック部材1111aは、中央領域111aを有する。一実施形態において、セラミック部材1111aは、環状領域111bも有する。なお、環状静電チャックや環状絶縁部材のような、静電チャック1111を囲む他の部材が環状領域111bを有してもよい。この場合、リングアセンブリ112は、環状静電チャック又は環状絶縁部材の上に配置されてもよく、静電チャック1111と環状絶縁部材の両方の上に配置されてもよい。また、後述するRF(Radio Frequency)電源31及び/又はDC(Direct Current)電源32に結合される少なくとも1つのRF/DC電極がセラミック部材1111a内に配置されてもよい。この場合、少なくとも1つのRF/DC電極が下部電極として機能する。後述するバイアスRF信号及び/又はDC信号が少なくとも1つのRF/DC電極に供給される場合、RF/DC電極はバイアス電極とも呼ばれる。なお、基台1110の導電性部材と少なくとも1つのRF/DC電極とが複数の下部電極として機能してもよい。また、静電電極1111bが下部電極として機能してもよい。従って、基板支持部11は、少なくとも1つの下部電極を含む。
【0038】
リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。一実施形態において、1又は複数の環状部材は、1又は複数のエッジリングと少なくとも1つのカバーリングとを含む。エッジリングは、導電性材料又は絶縁材料で形成され、カバーリングは、絶縁材料で形成される。
【0039】
また、基板支持部11は、静電チャック1111、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路1110a、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路1110aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路1110aが基台1110内に形成され、1又は複数のヒータが静電チャック1111のセラミック部材1111a内に配置される。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と中央領域111aとの間の間隙に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0040】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、少なくとも1つの上部電極を含む。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0041】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0042】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、少なくとも1つのRF信号(RF電力)を少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を少なくとも1つの下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0043】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給される。
【0044】
第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号の周波数よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、少なくとも1つの下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0045】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、少なくとも1つの下部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、少なくとも1つの下部電極に印加される。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、少なくとも1つの上部電極に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、少なくとも1つの上部電極に印加される。以下、バイアスRF信号及びバイアスDC信号を総称して、「バイアス信号」ともいう。
【0046】
種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。この場合、電圧パルスのシーケンスが少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に印加される。電圧パルスは、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、DC信号から電圧パルスのシーケンスを生成するための波形生成部が第1のDC生成部32aと少なくとも1つの下部電極との間に接続される。従って、第1のDC生成部32a及び波形生成部は、電圧パルス生成部を構成する。第2のDC生成部32b及び波形生成部が電圧パルス生成部を構成する場合、電圧パルス生成部は、少なくとも1つの上部電極に接続される。電圧パルスは、正の極性を有してもよく、負の極性を有してもよい。また、電圧パルスのシーケンスは、1周期内に1又は複数の正極性電圧パルスと1又は複数の負極性電圧パルスとを含んでもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0047】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0048】
<ICPプラズマ処理装置の一例>
図3は、誘導結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
【0049】
プラズマ処理システムは、誘導結合型のプラズマ処理装置1及び制御部2を含む。誘導結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。プラズマ処理チャンバ10は、誘電体窓を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11、ガス導入部及びアンテナ14を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。アンテナ14は、プラズマ処理チャンバ10上又はその上方(すなわち誘電体窓101上又はその上方)に配置される。プラズマ処理チャンバ10は、誘電体窓101、プラズマ処理チャンバ10の側壁102及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。プラズマ処理チャンバ10は接地される。
【0050】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板Wを支持するための中央領域111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111bとを有する。ウェハは基板Wの一例である。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。従って、中央領域111aは、基板Wを支持するための基板支持面とも呼ばれ、環状領域111bは、リングアセンブリ112を支持するためのリング支持面とも呼ばれる。
【0051】
一実施形態において、本体部111は、基台1110及び静電チャック1111を含む。基台1110は、導電性部材を含む。基台1110の導電性部材はバイアス電極として機能し得る。静電チャック1111は、基台1110の上に配置される。静電チャック1111は、セラミック部材1111aとセラミック部材1111a内に配置される静電電極1111bとを含む。セラミック部材1111aは、中央領域111aを有する。一実施形態において、セラミック部材1111aは、環状領域111bも有する。なお、環状静電チャックや環状絶縁部材のような、静電チャック1111を囲む他の部材が環状領域111bを有してもよい。この場合、リングアセンブリ112は、環状静電チャック又は環状絶縁部材の上に配置されてもよく、静電チャック1111と環状絶縁部材の両方の上に配置されてもよい。また、後述するRF(Radio Frequency)電源31及び/又はDC(Direct Current)電源32に結合される少なくとも1つのRF/DC電極がセラミック部材1111a内に配置されてもよい。この場合、少なくとも1つのRF/DC電極がバイアス電極として機能する。なお、基台1110の導電性部材と少なくとも1つのRF/DC電極とが複数のバイアス電極として機能してもよい。また、静電電極1111bがバイアス電極として機能してもよい。従って、基板支持部11は、少なくとも1つのバイアス電極を含む。
【0052】
リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。一実施形態において、1又は複数の環状部材は、1又は複数のエッジリングと少なくとも1つのカバーリングとを含む。エッジリングは、導電性材料又は絶縁材料で形成され、カバーリングは、絶縁材料で形成される。
【0053】
また、基板支持部11は、静電チャック1111、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路1110a、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路1110aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路1110aが基台1110内に形成され、1又は複数のヒータが静電チャック1111のセラミック部材1111a内に配置される。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と中央領域111aとの間の間隙に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0054】
ガス導入部は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。一実施形態において、ガス導入部は、中央ガス注入部(CGI:Center Gas Injector)13を含む。中央ガス注入部131は、基板支持部11の上方に配置され、誘電体窓101に形成された中央開口部に取り付けられる。中央ガス注入部131は、少なくとも1つのガス供給口131a、少なくとも1つのガス流路131b、及び少なくとも1つのガス導入口131cを有する。ガス供給口131aに供給された処理ガスは、ガス流路131bを通過してガス導入口131cからプラズマ処理空間10s内に導入される。なお、ガス導入部は、中央ガス注入部131に加えて又はその代わりに、側壁102に形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0055】
ガス導入部は、サイドガス注入部の一例として、周辺ガス注入部52を含んでよい。周辺ガス導入部52は、複数の周辺注入口52iを含んでいる。複数の周辺注入口52iは、主として基板Wの縁部にガスを供給する。複数の周辺注入口52iは、基板Wの縁部、又は、基板Wを支持する中央領域111aの縁部に向けて開口している。複数の周辺注入口52iは、ガス導入口131cと同程度の高さ位置に配置されてよい。また、複数の周辺注入口52iは、ガス導入口131cよりも下方、且つ、基板支持部11の上方において、基板支持部11の周方向に沿って配置されてもよい。即ち、複数の周辺注入口52iは、誘電体窓101の直下よりも電子温度の低い領域(プラズマ拡散領域)において、ガス流路131bの軸線を中心として環状に配列されてよい。なお、図2に示す容量結合型のプラズマ処理装置1においても、ガス導入部は、図3に示す周辺ガス注入部52を含んでよい。
【0056】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してガス導入部に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0057】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、少なくとも1つのRF信号(RF電力)を少なくとも1つのバイアス電極及びアンテナ14に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を少なくとも1つのバイアス電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオンを基板Wに引き込むことができる。
【0058】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、アンテナ14に結合され、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、アンテナ14に供給される。
【0059】
第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つのバイアス電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号の周波数よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、少なくとも1つのバイアス電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0060】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、バイアスDC生成部32aを含む。一実施形態において、バイアスDC生成部32aは、少なくとも1つのバイアス電極に接続され、バイアスDC信号を生成するように構成される。生成されたバイアスDC信号は、少なくとも1つのバイアス電極に印加される。
【0061】
種々の実施形態において、バイアスDC信号は、パルス化されてもよい。この場合、電圧パルスのシーケンスが少なくとも1つのバイアス電極に印加される。電圧パルスは、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、DC信号から電圧パルスのシーケンスを生成するための波形生成部がバイアスDC生成部32aと少なくとも1つのバイアス電極との間に接続される。従って、バイアスDC生成部32a及び波形生成部は、電圧パルス生成部を構成する。電圧パルスは、正の極性を有してもよく、負の極性を有してもよい。また、電圧パルスのシーケンスは、1周期内に1又は複数の正極性電圧パルスと1又は複数の負極性電圧パルスとを含んでもよい。なお、バイアスDC生成部32aは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0062】
アンテナ14は、1又は複数のコイルを含む。一実施形態において、アンテナ14は、同軸上に配置された外側コイル及び内側コイルを含んでもよい。この場合、RF電源31は、外側コイル及び内側コイルの双方に接続されてもよく、外側コイル及び内側コイルのうちいずれか一方に接続されてもよい。前者の場合、同一のRF生成部が外側コイル及び内側コイルの双方に接続されてもよく、別個のRF生成部が外側コイル及び内側コイルに別々に接続されてもよい。
【0063】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0064】
<基板Wの一例>
図4は、基板Wの断面構造の一例を示す図である。基板Wは、本処理方法が適用され得る基板の一例である。基板Wは、シリコン含有膜SF及びマスク膜MKを有する。シリコン含有膜SF及びマスク膜MKは、下地膜UF上に形成されている。図4に示すように、基板Wは、下地膜UF、シリコン含有膜SF及びマスク膜MKがこの順で積層されて形成されてよい。
【0065】
下地膜UFは、シリコンウェハ上に形成された有機膜、誘電体膜、金属膜、半導体膜等であってよい。また、下地膜UFは、シリコンウェハであってよい。また、下地膜UFは、複数の膜が積層されて構成されてよい。
【0066】
シリコン含有膜SFは、シリコン(Si)を含有する誘電体膜であり得る。シリコン含有膜SFは、シリコン酸化膜又はシリコン窒化膜を含み得る。一例として、シリコン含有誘電体膜は、SiON膜である。シリコン含有膜は、シリコンを含有する膜であれば、他の膜種を有する膜であってもよい。また、シリコン含有膜SFは、シリコン膜(例えば多結晶シリコン膜)を含んでいてもよい。また、シリコン含有膜SFは、シリコン窒化膜、多結晶シリコン膜、炭素含有シリコン膜、及び低誘電率膜のうち少なくとも一つを含んでいてもよい。炭素含有シリコン膜は、SiC膜及び/又はSiOC膜を含み得る。低誘電率膜は、シリコンを含有し、層間絶縁膜として用いられ得る。また、シリコン含有膜SFは、互いに異なる膜種を有する二つ以上のシリコン含有膜を含んでいてもよい。二つ以上のシリコン含有膜は、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜を含んでいてもよい。シリコン含有膜SFは、例えば、交互に積層された一つ以上のシリコン酸化膜及び一つ以上のシリコン窒化膜を含む多層膜であってもよい。シリコン含有膜SFは、交互に積層された複数のシリコン酸化膜及び複数のシリコン窒化膜を含む多層膜であってもよい。或いは、二つ以上のシリコン含有膜は、シリコン酸化膜及びシリコン膜を含んでいてもよい。シリコン含有膜SFは、例えば、交互に積層された一つ以上のシリコン酸化膜及び一つ以上のシリコン膜を含む多層膜であってもよい。シリコン含有膜SFは、交互に積層された複数のシリコン酸化膜及び複数の多結晶シリコン膜を含む多層膜であってもよい。或いは、二つ以上のシリコン含有膜は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、及びシリコン膜を含んでいてもよい。
【0067】
マスク膜MKは、シリコン含有膜SF上に設けられている。マスク膜MKは、工程ST2においてシリコン含有膜SFのエッチングレートよりも低いエッチングレートを有する材料から形成される。マスク膜MKは、有機材料から形成され得る。即ち、マスク膜MKは、炭素を含有してもよい。一例として、フォトレジスト膜は、EUV用のフォトレジスト膜であってよい。マスク膜MKは、例えば、アモルファスカーボン膜、フォトレジスト膜、又はスピンオンカーボン膜(SOC膜)を含んで構成されてよい。マスク膜MKは、シリコン含有反射防止膜のようなシリコン含有膜を含んで構成されてもよい。マスク膜MKは、窒化チタン、タングステン、炭化タングステンのような金属含有材料から形成された金属含有マスクであってもよい。
【0068】
マスク膜MKは、シリコン含有膜SF上に少なくとも1つの開口OPを規定するようにパターニングされている。即ち、マスク膜MKは、工程ST2においてシリコン含有膜SFをエッチングするための開口パターンを有している。マスク膜MKのパターンにより規定される開口OPの形状に基づいて、シリコン含有膜SFにホール又はトレンチ等の凹部が形成される。工程ST2においてシリコン含有膜SFに形成される開口のアスペクト比は20以上であってよく、30以上、40以上、又は50以上であってもよい。なお、マスク膜MKは、開口パターンとして、ラインアンドスペースパターンを有していてもよい。
【0069】
<本処理方法の一例>
図5は、本処理方法の一例を示すフローチャートである。本処理方法は、例えば、図2及び図3に示すプラズマ処理装置1を用いて、基板Wに対して実行される。以下、各図を参照しつつ、図4に示す基板Wに対して、図5に示す本処理方法を実行する例を説明する。なお、以下の例では、図1から図3に示す制御部2が、図2及び図3に示すプラズマ処理装置1の各部を制御して、本処理方法が実行される。
【0070】
(工程ST1:基板の準備)
【0071】
工程ST1において、基板Wをプラズマ処理チャンバ10のプラズマ処理空間10s内に準備する。工程ST1において、基板Wは、少なくとも、基板支持部11に配置され、静電チャック1111により保持される。基板Wが有する各構成を形成する工程の少なくとも一部は、工程ST1の一部として、プラズマ処理空間10s内で行われてよい。また、基板Wの各構成の全部又は一部がプラズマ処理装置1の外部の装置又はチャンバで形成された後、基板Wがプラズマ処理空間10s内に搬入され、基板支持部11に配置されてもよい。
【0072】
工程ST1は、基板支持部11の温度を設定する工程を含んでよい。基板支持部11の温度を設定するために、制御部2は温調モジュールを制御し得る。一例として、制御部2は、基板支持部11の温度を20℃以下に設定してもよい。
【0073】
(工程ST2:エッチングの実行)
工程ST2において、基板Wのシリコン含有膜SFをエッチングする。工程ST2は、処理ガスを供給する工程(工程ST21)と、ソースRF信号(ソースRF電力)を供給する工程(工程ST22)と、バイアス信号を供給する工程(工程ST23)とを含む。工程ST2において、処理ガスから生成されたプラズマの活性種(イオン、ラジカル)により、シリコン含有膜SFがエッチングされる。なお、工程ST21からST23が開始される順番は、この順番に限られない。また、工程ST21からST23は、並行して実行されてよい。
【0074】
(工程ST21:処理ガスの供給)
工程ST21において、処理ガスがプラズマ処理チャンバ10内に供給される。処理ガスは、基板Wに形成されたエッチング膜をエッチングするために用いられるガスである。処理ガスの種類は、エッチング膜の材料、マスク膜の材料、下地膜の材料、マスク膜が有するパターン、エッチングの深さ等に基づいて適宜選択されてよい。
【0075】
工程ST21において用いられる処理ガスは、水素とフッ素を含むガスを含み得る。水素とフッ素を含むガスは、プラズマ処理中に、プラズマ処理チャンバ10内でフッ化水素(HF)種を生成可能なガスでよい。フッ化水素種は、エッチャントとして機能する。水素とフッ素を含むガスは、ハイドロフルオロカーボンからなる群から選択される少なくとも1種のガスであってよい。ハイドロフルオロカーボンは、例えば、CH、CHF、又はCHFの少なくとも一つである。ハイドロフルオロカーボンは、二つ以上の炭素原子を含んでいてもよく、二つ以上六つ以下の炭素原子を含んでいてもよい。ハイドロフルオロカーボンは、例えば、CHF、C、C、C等の二つの炭素原子を含んでいてもよい。ハイドロフルオロカーボンは、例えば、CHF、C、C、C、C、C、C、C等、三つの又は四つの炭素原子を含んでいてもよい。ハイドロフルオロカーボンガスは、例えば、C、C10、C等の五つの炭素原子を含んでもいてもよい。一実施形態として、ハイドロフルオロカーボンガスは、C、C、C及びCからなる群から選択される少なくとも1種を含む。なお、処理ガスは、プラズマ処理中にプラズマ処理チャンバ10内でフッ化水素(HF)種を生成可能なガスとして、フッ化水素(HF)を含んでよい。なお、フッ素原子の数に対する水素原子の数の比は、0.2以上、0.25以上又は0.3以上であってよい。
【0076】
また、水素とフッ素を含むガスは、プラズマ処理中に、プラズマ処理チャンバ10内でフッ化水素種を生成可能な混合ガスであってもよい。フッ化水素種を生成可能な混合ガスは、水素源及びフッ素源を含んでよい。水素源は、例えば、H、NH、HO、H又はハイドロカーボン(CH、C等)であってよい。フッ素源は、BF、NF、PF、PF、SF、WF、XeF又はフルオロカーボンであってよい。一例として、フッ化水素種を生成可能な混合ガスは、三フッ化窒素(NF)と水素(H)との混合ガスである。
【0077】
工程ST21において用いられる処理ガスは、少なくとも一つのリン含有分子を更に含み得る。リン含有分子は、十酸化四リン(P10)、八酸化四リン(P)、六酸化四リン(P)等の酸化物であってもよい。十酸化四リンは、五酸化二リン(P)と呼ばれることがある。リン含有分子は、三フッ化リン(PF)、五フッ化リン(PF)、三塩化リン(PCl)、五塩化リン(PCl)、三臭化リン(PBr)、五臭化リン(PBr)、ヨウ化リン(PI)のようなハロゲン化物(ハロゲン化リン)であってもよい。即ち、リンを含む分子は、ハロゲン元素としてフッ素を含むフッ化物(フッ化リン)であってもよい。或いは、リンを含む分子は、ハロゲン元素としてフッ素以外のハロゲン元素を含んでもよい。リン含有分子は、フッ化ホスホリル(POF)、塩化ホスホリル(POCl)、臭化ホスホリル(POBr)のようなハロゲン化ホスホリルであってよい。リン含有分子は、ホスフィン(PH)、リン化カルシウム(Ca等)、リン酸(HPO)、リン酸ナトリウム(NaPO)、ヘキサフルオロリン酸(HPF)等であってよい。リン含有分子は、フルオロホスフィン類(HPF)であってよい。ここで、xとyの和は、3又は5である。フルオロホスフィン類としては、HPF、HPFが例示される。処理ガスは、少なくとも一つのリン含有分子として、上記のリン含有分子のうち一つ以上のリン含有分子を含み得る。例えば、処理ガスは、少なくとも一つのリン含有分子として、PF、PCl、PF,PCl,POCl、PH、PBr、又はPBrの少なくとも一つを含み得る。なお、処理ガスに含まれる各リン含有分子が液体又は固体である場合、各リン含有分子は、加熱等によって気化されてプラズマ処理チャンバ10内に供給され得る。
【0078】
工程ST21において用いられる処理ガスは、炭素を更に含んでよい。炭素を含む分子として、ハイドロカーボン(C)、フルオロカーボン(C)からなる群から選択される少なくとも一種の炭素含有ガスを含んでいてもよい。ここで、x、y、v及びwの各々は自然数である。ハイドロカーボンは、例えば、CH、C、C、C又はC10等を含んでもよい。フルオロカーボンは、例えば、CF、C、C、C、C、C又はC等を含んでもよい。これらの炭素含有ガスから生成される化学種は、マスク膜MKを保護する。
【0079】
また、処理ガスは、ハロゲン含有分子を含んでもよい。ハロゲン含有分子は、炭素を含有しなくてもよい。ハロゲン含有分子は、フッ素含有分子であってよく、フッ素以外のハロゲン元素を含有するハロゲン含有分子であってもよい。フッ素含有分子は、例えば、三フッ化窒素(NF)、六フッ化硫黄(SF)、三フッ化ホウ素(BF)などのガスを含んでいてもよい。フッ素以外のハロゲン元素を含有するハロゲン含有分子は、例えば、塩素含有ガス、臭素含有ガス及びヨウ素からなる群から選択される少なくとも1種であってよい。塩素含有ガスは、例えば、塩素(Cl)、塩化水素(HCl)、二塩化ケイ素(SiCl)、四塩化ケイ素(SiCl)、四塩化炭素(CCl)、ジシクロロシラン(SiHCl)、六塩化二ケイ素(SiCl)、クロロホルム(CHCl)、塩化スルフリル(SOCl)、三塩化ホウ素(BCl)などのガスである。臭素含有ガスは、例えば、臭素(Br)、臭化水素(HBr)、ジブロモジフルオロメタン(CBr)、ブロモペンタフルオロエタン(CBr)三臭化リン(PBr)、五臭化リン(PBr)、リン酸オキシブロミド(POBr)、三臭化ホウ素(BBr)などのガスである。ヨウ素含有ガスは、例えば、ヨウ化水素(HI)、トリフルオロヨードメタン(CFI)、ペンタフルオロヨードエタン(CI)、ヘプタフルオロプロピルヨージド(CI)、五フッ化ヨウ素(IF)、七フッ化ヨウ素(IF)、ヨウ素(I)、三ヨウ化リン(PI)などのガスである。これらのハロゲン含有分子はから生成される化学種は、プラズマエッチングで形成される凹部の形状を制御するために用いられる。
【0080】
処理ガスは、酸素含有分子を更に含んでいてもよい。酸素含有分子は、例えばO、CO又はCOを含んでいてもよい。また、処理ガスは、Ar、Kr、Xe等の貴ガスを含んでもよい。
【0081】
なお、プラズマ処理チャンバ10内に供給される処理ガスは、1以上のガスを含んでよい。当該1以上のガスは、水素、炭素及びフッ素を含み得る。この場合、当該1つ以上のガスの各々が水素、炭素及びフッ素を含んでよい。また、当該1つ以上のガスが複数のガスである場合、当該複数のガスのうち、1つのガスが、水素、炭素及びフッ素の1以上を含み、当該複数のガスのうち、残りの1つ以上のガスの一部又は全部が、水素、炭素及びフッ素の残りを含んでよい。
【0082】
また、図3のプラズマ処理装置1において、処理ガスは、中央ガス注入部131及びサイドガス注入部の一方又は双方から、プラズマ処理チャンバ10内に供給されてよい。一例として、中央ガス注入部131から供給される炭素含有ガスの流量よりも、サイドガス注入部から供給される炭素含有ガスの流量が多くてよい。即ち、処理ガスに含まれる炭素含有ガスの流量に対する、中央ガス注入部131から供給される炭素含有ガスの流量の割合が50%以下、サイドガス注入部から供給される炭素含有ガスの流量の割合が50%以上であってよい。また、処理ガスに含まれる炭素含有ガスの流量に対する、中央ガス注入部131から供給される炭素含有ガスの流量の割合が20%以下、サイドガス注入部から供給される炭素含有ガスの流量の割合が80%以上であってよい。また、処理ガスに含まれる炭素含有ガスの流量に対する、中央ガス注入部131から供給される炭素含有ガスの流量の割合が10%以下、サイドガス注入部から供給される炭素含有ガスの流量の割合が90%以上であってよい。また、処理ガスに含まれる炭素含有ガスの流量に対する、中央ガス注入部131から供給される炭素含有ガスの流量の割合が5%以下、サイドガス注入部から供給される炭素含有ガスの流量の割合が95%以上であってよい。また、処理ガスに含まれる炭素含有ガスの流量における、サイドガス注入部から供給される炭素含有ガスの流量の割合が100%であってよい。なお、同様に、図2のプラズマ処理装置1においても、処理ガスは、シャワーヘッド13及びサイドガス注入部の一方又は双方から、プラズマ処理チャンバ10内に供給されてよい。
【0083】
また、一例として、プラズマ処理チャンバ10内に供給される処理ガスのうち、中央ガス注入部131から供給される炭素含有ガスに含まれる炭素原子の数よりも、サイドガス注入部から供給される炭素含有ガスに含まれる炭素原子の数が多くてよい。
【0084】
処理ガスに含まれる炭素含有ガスの少なくとも一部を、サイドガス注入部からプラズマ処理チャンバ10内に供給することにより、基板Wの面内において、エッチング膜のエッチングレートの均一性及び/又はエッチング膜に形成される凹部の寸法の均一性を向上することができる。
【0085】
(工程ST22:ソースRF信号の供給)
工程ST22において、ソースRF信号が供給される。一例として、ソースRF信号は、図2のプラズマ処理装置1における上部電極又は図3におけるプラズマ処理装置1のアンテナ14に供給されてよい。上部電極及びアンテナ14はプラズマ生成部の一例である。ソースRF信号は、連続波であってよく、また、パルス波であってもよい。
【0086】
ソースRF信号の電力は、後述する工程ST23において供給されるバイアス信号の電力よりも大きい。一例として、ソースRF信号の電力は、300W以上であってよい。また、ソースRF信号の電力は、500W以上、1,000W以上、又は、2,000W以上であってよい。
【0087】
(工程ST23:バイアス信号の供給)
工程ST23において、バイアス信号が供給される。一例として、バイアス信号は、図2及び図3の基板支持部11に供給される。バイアス信号は、基板支持部11においてバイアス電極として機能し得る部材に供給されてよい。
【0088】
バイアス信号の電力は、ソースRF信号の電力よりも小さい。一例として、バイアス信号の電力は、200W以下であってよい。また、バイアス信号の電力は、100W以下、又は、50W以下であってよい。なお、一例として、バイアス信号の電力は、ソースRF信号の電力よりも大きくてもよい。
【0089】
なお、工程ST2において、プラズマ処理チャンバ10内の圧力は、適宜設定されてよい。一例として、プラズマ処理チャンバ10内の圧力は、50mTorr以下、30mTorr以下又は10mTorr以下に設定されてよい。
【0090】
図6は、工程ST2においてエッチングが実行された基板Wの断面構造の一例を示す図である。工程ST21においてプラズマ処理チャンバ10内に処理ガスが供給され、また、工程ST22においてソースRF信号が供給されると、プラズマ処理空間10sにおいてプラズマが生成される。そして、生成されたプラズマ中のイオン、ラジカルといった化学種が基板Wに引き寄せられて、シリコン含有膜SFがエッチングされる。一例として、当該化学種は、フッ化水素種である。そして、図6に示すように、マスク膜MKの開口OPの形状に基づいて、マスク膜MKに形成された開口OPから連続して、シリコン含有膜SFにおいても、シリコン含有膜SFの側壁SS2で規定された凹部RCが形成される。凹部RCは、その底部BTにおいて下地膜UFが露出する開口であってよい。
【0091】
また、生成されたプラズマ中のイオン、ラジカルといった化学種によって、マスク膜MKの一部もエッチングされ得る。一例として、当該化学種は、フッ化水素種である。他方で、プラズマ中の化学種によって、マスク膜MKの少なくとも一部に、保護膜PFが形成され得る。一例として、保護膜PFは、処理ガス中の炭素を含んで形成された炭素含有膜であってよい。保護膜PFは、マスク膜MKの表面のうち、少なくとも、上面TS及び/又は側壁SS1の少なくとも一部に形成されてよい。また、保護膜PFは、マスク膜MKの側壁SS1から、シリコン含有膜SFの凹部を規定する側壁SS2の一部に亘って形成されてもよい。
【0092】
<本処理方法の実施例>
以下の参考例、実施例1及び実施例2の条件で、基板Wのシリコン含有膜SFのエッチングを行った。なお、「H/F」は、処理ガスに含まれるフッ素原子数に対する水素原子数の比率である。

参考例1
装置:CCPプラズマ処理装置
ソースRF信号:60MHz、500W
バイアスRF信号:40MHz、400W
処理ガス:CHF、CF
H/F:0.09

実施例1
装置:CCPプラズマ処理装置(図2
ソースRF信号:60MHz、1,000W
バイアスRF信号:40MHz、50W
処理ガス:CHF、H、NF、N
H/F:0.33

実施例2
装置:ICPプラズマ処理装置(図3
ソースRF信号:27MHz、2,000W
バイアスRF信号:13MHz、80W
処理ガス:CHF、CHF、NF、N、Ar
H/F:0.42
【0093】
図7は、シリコン含有膜SFをエッチングした後の基板Wの断面を示す図である。図7における(a)、(b)及び(c)は、それぞれ、参考例1、実施例1及び実施例2の条件でシリコン含有膜SFをエッチングした後の基板Wの断面図である。
【0094】
まず、参考例1である(a)では、マスク膜MKがエッチングされた一方で、実施例1である(b)及び実施例2である(c)では、シリコン含有膜SFのエッチング後においてもマスク膜MKが十分に残る結果となった。具体的には、参考例1、実施例1及び実施例2のいずれにおいても、マスク膜MKの厚さは、シリコン含有膜SFのエッチング前において、31nmであった。他方で、シリコン含有膜SFのエッチング後において、マスク膜MKの厚さは、参考例1では8.0nm、実施例1では18nm、実施例2では23nmであった。なお、マスク膜MKの厚さは、マスク膜MKの表面に形成された保護膜PFの厚さを含む。
【0095】
また、参考例1である(a)では、凹部RCの断面形状がテーパ形状となった一方で、実施例1である(b)及び実施例2である(c)では、凹部RCの断面形状がほぼ垂直形状となった。具体的には、凹部RCの上端における開口幅に対する下端における開口幅の比率が、参考例1では0.45であった。他方で、当該比率は、実施例1では0.89、実施例2では0.94であった。
【0096】
図8は、参考例1、実施例1及び実施例2における凹部RCのCD(Critical Dimension:寸法)、LCDU(Local Critical Dimension Uniformity:CDの3σ)及びCER(Circle Edge Roughness)の測定結果を示す表である。なお、表1において、CDは平均値である。また、各例において凹部RCの平面視における開口形状は円形状を有しており、CERは、凹部RCの開口のラフネスを示す。
【0097】
図8に示すとおり、実施例1及び実施例2は、参考例1よりも良好な結果となった。すなわち、まず、実施例1及び実施例2における凹部RCのLCDUは、参考例1におけるLCDUよりも大幅に改善された。すなわち、実施例では、凹部RCの開口幅の均一性を大きく改善することができた。また、CERについても、参考例1よりも実施例1及び実施例2の方が小さな値となった。すなわち、実施例1及び実施例2の方が参考例1よりも、真円に近い開口形状を得ることができた。
【0098】
図9は、実施例2における炭素含有膜(保護膜PF)の堆積速度の変化を示すグラフである。すなわち、図9のグラフは、実施例2の条件において、バイアスRF信号の電力を0Wとし、ソースRF信号の電力(RF電力)を変化させて、炭素含有膜の堆積速度の変化を測定した測定結果を示す。図9に示すように、ソースRF信号の電力を増加させると、炭素含有膜の堆積速度も顕著に増加することが確認された。
【0099】
図10は、実施例2におけるマスク膜MKに対するシリコン含有膜SFの選択比の変化を示すグラフである。図10において、横軸は、バイアスRF信号の電力に対するソースRF信号の電力の比率(電力比)を示す。すなわち、図10のグラフは、実施例2の条件において、バイアス信号の電力に対するソースRF信号の電力を変化させて、マスク膜MKに対するシリコン含有膜SFのエッチングレートの比率(選択比)を算出した結果を示す。図10に示すように、電力比を増加させると、選択比もまた顕著に増加した。
【0100】
本処理方法では、フッ化水素の活性種を多く含み、電子密度の高いプラズマを生成することができる。これにより、シリコン含有膜SFのエッチングにおいて、選択比が高く、かつ、垂直形状に近い断面形状を有する凹部RCを形成することができる。また、本処理方法では、バイアス信号の電力よりも大きな電力を有するソースRF信号を上部電極又はアンテナに供給し得るとともに、処理ガスとしてハイドロフルオロカーボンガスを含むガスを用い得る。これにより、シリコン含有膜SFのエッチングにおいて、選択比及び垂直形状を更に向上させることができる。
【0101】
また、以下の参考例2及び実施例3の条件で、基板Wのシリコン含有膜SFのエッチングを行った。なお、参考例2及び実施例3において、マスク膜MKはアモルファスカーボン膜である。

参考例2
装置:CCPプラズマ処理装置
ソースRF信号:40MHz、0W
バイアスRF信号:13.56MHz、450W
処理ガス:C、O、Ar

実施例3
装置:ICPプラズマ処理装置(図3
ソースRF信号:27MHz、500W
バイアスRF信号:13.56MHz、450W
処理ガス:CHF、CHF、NF、N、O、C
【0102】
図11は、シリコン含有膜SFをエッチングした後の基板Wの断面を示す図である。図11における(a)はエッチング前の基板Wの断面、(b)は参考例2の条件でシリコン含有膜SFをエッチングした後の基板Wの断面図、(c)は、実施例3の条件でシリコン含有膜SFをエッチングした後の基板Wの断面図である。
【0103】
図12は、参考例2及び実施例3における凹部RCのエッチング速度、選択比、ネックCD及びボウCDの測定結果を示す表である。なお、選択比は、シリコン含有膜SFのエッチング速度に対する、マスク膜MKのエッチング速度の比率である。また、ネックCDは、凹部RCの上端における寸法(開口幅)である。また、ボウCDは、凹部RCにおいて寸法が最も大きくなる部分における凹部RCの寸法(開口幅)である。
【0104】
図11及び図12に示すとおり、実施例3は、参考例2よりも良好な結果となった。すなわち、まず、実施例3では、十分な選択比を保ちつつ、シリコン含有膜SFのエッチング速度を大きく改善することができた。また、実施例3では、十分なネックCDを保ちつつ、ボウCDの広がりを抑制することができた。このように、実施例3では、凹部RCのネックにおいてクロッギング(詰まり)を抑制しつつ、凹部RCの垂直性を高めることができた。なお、マスク膜MKを金属含有マスクとした場合においても、実施例3と同様の結果が得られた。
【0105】
本開示は、以下の態様を含み得る。
【0106】
(付記1)
プラズマ処理装置において実行されるプラズマ処理方法であって、
前記プラズマ処理装置は、チャンバ、前記チャンバ内に配置された基板支持部及び前記基板支持部に対向して配置されたプラズマ生成部を有し、
前記プラズマ処理方法は、
シリコン含有膜及びマスク膜を有する基板を前記基板支持部に準備する工程であって、前記マスク膜は開口パターンを含む、準備する工程と、
前記チャンバ内でプラズマを生成して、前記マスク膜をマスクとして前記シリコン含有膜をエッチングする工程と
を含み、
前記エッチングする工程は、
炭素、水素及びフッ素を含む1以上のガスを含む処理ガスを前記チャンバ内に供給する工程と、
前記プラズマ生成部にソースRF信号を供給して、前記処理ガスからプラズマを生成する工程と、
前記基板支持部にバイアス信号を供給する工程と
を含み、
前記エッチングする工程において、前記マスク膜の表面の少なくとも一部に炭素含有膜を形成しつつ、少なくとも前記処理ガスから生成されたフッ化水素によって前記シリコン含有膜をエッチングする、プラズマ処理方法。
【0107】
(付記2)
前記プラズマ処理装置は、前記プラズマ生成部及び前記基板支持部を電極とする、容量結合型のプラズマ処理装置である、付記1に記載のプラズマ処理方法。
【0108】
(付記3)
前記プラズマ処理装置は、誘導結合型のプラズマ処理装置である、付記1に記載のプラズマ処理方法。
【0109】
(付記4)
前記プラズマ生成部は、前記基板支持部に対向して配置されたアンテナを備え、
前記チャンバは、
側壁と、
前記基板支持部と前記アンテナとの間に配置された誘電体窓と
を有し、
前記プラズマ処理装置は、
前記誘電体窓に配置された第1のガス注入部と、
前記側壁に配置された第2のガス注入部と
を有し、
前記エッチングする工程において、前記処理ガスは、前記第1のガス注入部及び前記第2のガス注入部から、前記チャンバ内に供給される、付記3に記載のプラズマ処理方法。
【0110】
(付記5)
前記処理ガスは、窒素含有ガスを含む、付記1から3のいずれか1つに記載のプラズマ処理方法。
【0111】
(付記6)
前記窒素含有ガスは、窒素ガス(N)又は三フッ化窒素(NF)である、付記5に記載のプラズマ処理方法。
【0112】
(付記7)
前記処理ガスにおいて、フッ素原子の数に対する水素原子の数の比は0.2以上である、付記1から6のいずれか1つに記載のプラズマ処理方法。
【0113】
(付記8)
前記エッチングする工程において、前記チャンバ内の圧力は50mTorr以下である、付記1から7のいずれか1つに記載のプラズマ処理方法。
【0114】
(付記9)
前記ソースRF信号の電力は、前記バイアス信号の電力よりも大きい、付記1から8のいずれか1つに記載のプラズマ処理方法。
【0115】
(付記10)
前記バイアスRF信号の電力に対する前記ソースRF信号の電力の比は10以上である、付記1から9のいずれか1つに記載のプラズマ処理方法。
【0116】
(付記11)
前記準備する工程は、
前記シリコン含有膜上にEUVレジストを形成する工程と、
前記EUVレジストを露光して、前記開口パターンを含む前記マスク膜を形成する工程と、
前記マスク膜が形成された前記基板を前記基板支持部に配置する工程と
を含む、付記1から10のいずれか1つに記載のプラズマ処理方法。
【0117】
(付記12)
前記EUVレジストは、有機膜レジストである、付記11に記載のプラズマ処理方法。
【0118】
(付記13)
前記EUVレジストは、金属含有膜レジストである、付記11に記載のプラズマ処理方法。
【0119】
(付記14)
前記金属含有膜レジストは、スズ(Sn)含有膜レジストである、付記13に記載のプラズマ処理方法。
【0120】
(付記15)
前記ソースRF信号の電力は500W以上である、付記1から14のいずれか1つに記載のプラズマ処理方法。
【0121】
(付記16)
前記バイアスRF信号の電力は200W以下である、付記1から15のいずれか1つに記載のプラズマ処理方法。
【0122】
(付記17)
前記マスク膜は炭素含有膜又は金属含有膜である、付記1から3のいずれか1つに記載のプラズマ処理方法。
【0123】
(付記18)
前記ソースRF信号の電力は500W以上である、付記17に記載のプラズマ処理方法。
【0124】
(付記19)
前記バイアスRF信号の電力は200W以上である、付記17又は18に記載のプラズマ処理方法。
【0125】
(付記20)
前記開口パターンに含まれる開口の開口幅は25nm以下である、付記17から19のいずれか1つに記載のプラズマ処理方法。
【0126】
(付記21)
前記エッチング膜の厚さは、前記開口パターンに含まれる開口の開口幅の5倍以上である、付記17から20のいずれか1つに記載のプラズマ処理方法。
【0127】
(付記22)
プラズマ処理装置であって、
チャンバと
前記チャンバ内に配置された基板支持部と、
前記基板支持部に対向して設けられたプラズマ生成部と、
制御部と
を有し、
前記制御部は、
シリコン含有膜及びマスク膜を有する基板を前記基板支持部に準備する準備する制御と、
前記チャンバ内でプラズマを生成して、前記マスク膜をマスクとして前記シリコン含有膜をエッチングする制御と
を実行し、
前記エッチングする制御において、
炭素、水素及びフッ素を含む1以上のガスを含む処理ガスを前記チャンバ内に供給する制御と、
前記プラズマ生成部にソースRF信号を供給して、前記処理ガスからプラズマを生成する制御と、
前記基板支持部にバイアスRF信号を供給する制御と、
を実行し、
前記エッチングする制御おいて、前記マスク膜の表面の少なくとも一部に炭素含有膜を形成しつつ、少なくとも前記処理ガスから生成されたフッ化水素によって前記シリコン含有膜をエッチングする制御を実行する、プラズマ処理装置。
【0128】
以上の各実施形態は、説明の目的で説明されており、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく種々の変形をなし得る。
【符号の説明】
【0129】
1…プラズマ処理装置、2…制御部、10…プラズマ処理チャンバ、13…シャワーヘッド、131…中央ガス注入部、14…アンテナ、20…ガス供給部、30…電源、32…DC電源、OP…開口、PF…保護膜、RC…凹部、SF…シリコン含有膜

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12