(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127582
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】マスク修復のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
G03F 1/74 20120101AFI20230906BHJP
【FI】
G03F1/74
【審査請求】有
【請求項の数】29
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023031299
(22)【出願日】2023-03-01
(31)【優先権主張番号】10 2022 202 058.8
(32)【優先日】2022-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100196612
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル リノウ
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン フェリクス ヘルマンス
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン-クリストフ フォン ザルダーン
(72)【発明者】
【氏名】フーベルトゥス マールバッハ
(72)【発明者】
【氏名】ニコル アウス
(72)【発明者】
【氏名】バルトロメウス サフラネック
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン プライシュル
【テーマコード(参考)】
2H195
【Fターム(参考)】
2H195BA07
2H195BA10
2H195BD35
2H195BD36
2H195CA11
2H195CA22
(57)【要約】
【課題】リソグラフィ用の物体を処理するための方法、装置およびコンピュータプログラムを提供すること。
【解決手段】リソグラフィ用の物体を処理するための方法は、(a)第1のガスを供給すること、(b)反転振動を実行することができる第2の分子を含む第2のガスを供給すること、ならびに(c)第1のガスおよび第2のガスに少なくとも部分的に基づいて物体の作業領域に堆積材料を生成するために、作業領域に粒子ビームを供給することを含む。第2のガスは、5sccm未満、好ましくは2sccm未満、より好ましくは0.5sccm未満のガス流量で供給される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィ用の物体を処理する方法であって、
第1のガスを供給することと、
反転振動を行うことができる第2の分子を含む第2のガスを供給することと、
前記第1のガスおよび前記第2のガスに少なくとも部分的に基づいて、前記物体の作業領域に堆積材料を生成するために、前記作業領域に粒子ビームを供給することと、
を含み、前記第2のガスが、5sccm未満、好ましくは2sccm未満、より好ましくは0.5sccm未満のガス流量で供給される、
方法。
【請求項2】
前記第2のガスが、0.01sccm未満、好ましくは0.05sccm未満、より好ましくは0.1sccm未満のガス流量で供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粒子ビームが、0.1マイクロ秒~10マイクロ秒、好ましくは0.3マイクロ秒~7マイクロ秒の前記粒子ビームの滞在時間で供給される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記堆積材料が前記粒子ビームの影響なしで気相中で少なくとも部分的に形成するように、前記第1のガスおよび/または前記第2のガスが供給される、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第1のガスが、カルボニル化合物を含む第1の分子を含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第1の分子が金属カルボニルを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記金属カルボニルがクロムカルボニルを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記堆積材料が窒化クロムを含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記窒化クロムが、少なくとも10原子百分率の窒素、好ましくは少なくとも15原子百分率の窒素、より好ましくは少なくとも20原子百分率の窒素を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記物体の欠陥が補修されるように前記堆積材料が生成される、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記欠陥が透明欠陥を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
リソグラフィ用の物体の表面材料を処理する方法であって、
反転振動を行うことができる第2の分子を含む第2のガスを供給することと、
前記第2のガスに少なくとも部分的に基づいて前記物体の作業領域内の前記表面材料を不動態化するために、前記作業領域に粒子ビームを供給することと、
を含む方法。
【請求項13】
前記表面材料の不動態化の前に、第1のガスおよび前記粒子ビームを供給することに少なくとも部分的に基づいて、前記作業領域に前記表面材料を生成することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記不動態化が、前記表面材料上に不動態化層を生成することを含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記反転振動が、前記第2の分子のピラミッド反転を含む、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記第2の分子が三角錐形構造を含む、請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記第2の分子が、化合物中に窒素および水素を含む、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記第2の分子がアンモニアNH3を含む、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記第2の分子がH2N-NH2を含む、請求項1~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記第2の分子が、化合物中に窒素およびハロゲンを含む、請求項1~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記第2の分子が、以下の分子:NF3、NCl3、NI3、NBr3のうちの少なくとも1つを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の分子が、化合物中に窒素、水素およびハロゲンを含む、請求項1~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記第2の分子が、以下の分子:NH2X(Xはハロゲンを含む)、NHX2(Xはハロゲンを含む)のうちの少なくとも1つを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記作業領域において、前記第2の分子が、NO2分子よりも低い吸収確率を有する、請求項1~23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記粒子ビームが電子ビームを含む、請求項1~24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
リソグラフィ用の物体を処理するための装置であって、
第1のガスを供給する手段と、
反転振動を行うことができる第2の分子を含む第2のガスを供給する手段と、
粒子ビームを供給する手段と
を備え、
前記装置が、請求項1~25のいずれかに記載の方法を実行するように構成されている、
装置。
【請求項27】
リソグラフィ用の物体であって、前記物体が、請求項1~25の方法によって処理されたものである、リソグラフィ用の物体。
【請求項28】
半導体ベースのウエハのリソグラフィ処理の方法であって、リソグラフィ用の物体に関連したパターンを前記ウエハにリソグラフィ転写することを含み、前記物体が、請求項1~25の方法によって処理されたものである、方法。
【請求項29】
命令を含むコンピュータプログラムであって、コンピュータシステムによって前記命令が実行されたときに、前記命令が、請求項1~25のいずれかおよび/または請求項28に記載の方法を前記コンピュータシステムに実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィ用の物体(Objektes fur die Lithografie)を処理するための方法、装置およびコンピュータプログラムに関する。より詳細には、本発明は、堆積材料を生成する方法、表面材料を不動態化する方法、対応する装置、ウエハのリソグラフィ処理の方法、およびこれらの方法を実行するためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業では、集積度の増大を保証するために、ますます小さな構造体がウエハ上に形成されている。構造体を形成するためにここで使用される方法には、これらの構造体をウエハ上に結像する(abbilden)リソグラフィ法が含まれる。リソグラフィ法は例えば、フォトリソグラフィ、紫外線(UV)リソグラフィ、DUVリソグラフィ(すなわち深紫外線スペクトル領域でのリソグラフィ)、EUVリソグラフィ(すなわち極端紫外線スペクトル領域でのリソグラフィ)、X線リソグラフィ、ナノインプリントリソグラフィなどを含むことができる。ここでは普通、例えば所望の構造体をウエハ上に結像する(abzubilden)ために、パターンを含むリソグラフィ用の物体(例えばフォトマスク、露光マスク、レチクル、ナノインプリントリソグラフィの場合のスタンプなど)としてマスクが使用される。
【0003】
集積度が増大するにつれて、(例えば、マスク上の構造体寸法の付随する低減の結果として、またはリソグラフィにおけるより高い材料要件の結果として)マスク製造に関する要求も大きくなる。その結果、マスクの製造プロセスはますます複雑になり、ますます時間をとり、ますます費用がかかるようになるが、マスクエラー(例えば欠陥、材料の欠如、材料の不良形成など)を回避することが常に可能というわけではない。したがって、マスクエラーは通常、別の処理操作で補修または修復される。
【0004】
例えば、粒子ビームベースの堆積プロセスまたは粒子ビーム誘起堆積プロセスによってマスクエラーを修復することが可能である。これは通常、マスクエラーの領域の局所部位上に材料を電子ビーム誘起堆積またはイオンビーム誘起堆積させることを含むことができる。ここで、前駆体ガスとして堆積ガスを使用することが可能であり、これは、堆積材料(すなわち修復材料)の組成を規定する際に決定的に重要である。
【0005】
しかしながら、(修復された)マスクは、リソグラフィおよび下流プロセスにおいて(例えばマスクの露光中、マスク洗浄操作中などに)高い物理的ストレスおよびさらに化学的ストレスを受けることがある。したがって、それらの攻撃的な影響に対する修復材料の強度、耐久性および安定性は非常に重要である。
【0006】
例えば、マスク処理操作において堆積ガスに添加物ガス(additives Gas)を添加することができることが知られており、これは修復材料の特性にさらに影響を与えうる。
【0007】
さらに、米国特許出願公開第2020/103751号は、第1の粒子ビームおよび少なくとも1つの堆積ガスを使用した材料の堆積を開示している。堆積ガスは金属カルボニルを含むことができ、金属カルボニルはクロムヘキサカルボニルを含むことができる。堆積ガスは通常、フォトマスクのパターン要素の失われた部分の代わりを補うために使用されることがある。さらに、酸化剤を含む少なくとも1種の添加物ガスを堆積ガスに添加することが可能であり、その場合、酸化剤は例えば酸素、水蒸気または二酸化窒素を含むことができる。さらに、添加物ガスは、還元効果を有するガスを含むことができる。還元効果を有するガスは、水素、アンモニアまたはメタンを含むことができる。EUVマスクも開示されている。EUVマスクの緩衝層のための1つの可能な材料は窒化クロムである。緩衝層は、キャッピング層上に堆積しており、キャッピング層は、EUVマスクの多層構造体を保護する。EUVマスクの吸収層のための1つの可能な材料はクロムである。EUVマスクの反射防止層のための1つの可能な材料は酸窒化タンタルである。緩衝層、吸収層および反射防止層から形成された吸収性パターン要素の構造体が生成されるような態様の構造化も開示されている。
【0008】
しかしながら、粒子ビームベースの堆積プロセスの技術的複雑さのため、修復材料の特性が常に最適というわけではない
【0009】
したがって、本発明が解決する課題は、リソグラフィ用の物体の処理を最適化する方法および装置を明記することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/103751号
【発明の概要】
【0011】
この目的は、少なくとも部分的に、本発明のさまざまな態様によって達成される。
【0012】
本発明の第1の態様は、リソグラフィ用の物体を処理する方法に関する。この方法は、第1のガスを供給する(Bereitstellen)こと、および反転振動(Inversionsschwingung)を実行する(行う)ことができる第2の分子を含む第2のガスを供給することを含む。この方法はさらに、第1のガスおよび第2のガスに少なくとも部分的に基づいて物体の作業領域(Arbeitsbereich)に堆積材料を生成するために、作業領域に粒子ビームを供給することを含む。第2のガスは、5sccm未満、好ましくは2sccm未満、より好ましくは0.5sccm未満のガス流量で供給することができる。
【0013】
本発明の発想は、第1に、分子の反転振動が、粒子ビームを使用した堆積材料の生成に対して決定的な影響を有しうることに基づく。本明細書では、反転振動を実行することができる分子を反転分子とも呼ぶ。本発明は、反転分子が、時間で均すとゼロになる平均双極子モーメントμを有することができることを利用する。この反転振動によって、反転分子の双極子モーメントμの積分は、特定の時間間隔に対して本質的にゼロになる(例えば、双極子モーメントμの積分は、1つまたは複数の振動周期を含む時間間隔に対してゼロになることがあり、または選択された時間間隔が無限大に向かうときに数学的にゼロに近づくことがある)。したがって、この機構の結果、反転分子が、反転振動を実行することができない分子に比べて低い双極子性(Dipolcharakter)を有することがある。ここで、反転分子のこの低い双極子性は、反転分子と材料表面との相互作用に対して決定的な影響を有しうることが分かった。堆積材料を生成する際には、第1のガス、第2のガスおよび粒子ビームの間で複雑な相互作用が起こることがあり、その際に、リソグラフィ用の物体の作業領域内の材料表面に堆積材料が生成される。例えば、堆積材料の生成は、(例えば質量がゼロでない粒子のビームによる)粒子ビーム誘起堆積を含むことができる。したがって、堆積材料の生成にとって、これらのガスの特性を含む、作業領域内および物体の環境内の特性は決定的に重要である。ガスのこれらの(局所)特性は、作業領域内または物体の環境中のガスの(局所)ガス濃度を含むことができる。この(局所)ガス濃度は例えば、第1のガス、第2のガス、および/または堆積材料の生成の気体反応生成物の濃度を含むことができる。さらに、この(局所)ガス濃度は、さまざまな分子の濃度(例えば第2の分子の濃度、第1のガス、第2のガスおよび/または反応生成物に含まれる別の分子の濃度)を含むことができる。さらに、ここに記載された(局所)ガス濃度は、第1のガス、第2のガスおよび/または気体反応生成物に関連した任意のガスパラメータ(例えばガス圧力、ガス流量など)を含むことができる。
【0014】
堆積材料を生成する際には通常、堆積材料を生成するための反応が制御された方式で進むことを可能にするために、特定の期間にわたって、堆積材料の規定された物理的および/または化学的特性の確立を可能にする、規定された(局所)ガス濃度が必要となる。したがって、この規定された(局所)ガス濃度を制御することが有用であることがある。この規定された(局所)ガス濃度は、静的または動的タイプとすることができる。ここで、静的(局所)ガス濃度の含意は、本質的に一定の(局所)ガス濃度(例えば第1のガス、第2のガスおよび/または反応生成物の濃度の一定の比)が存在することができること、またはそのような(局所)ガス濃度が確立されることであることがある。ここで、動的(局所)ガス濃度の含意は、(局所)ガス濃度の動的プロセス(例えば、反応生成物の制御された外部への輸送、2つの静的(局所)ガス濃度間の制御された切り換え、交互に起こる(局所)ガス濃度など)が、制御された方式で実行されることであることがある。
【0015】
しかしながら、堆積材料を生成する際の化学的および/または物理的相互作用のために、この規定された(局所)ガス濃度は、技術的に望ましくない程度に変動することがある。例えば、これが、堆積材料を生成するプロセスが不必要な影響を受けるような態様の、作業領域内の第2のガス(および/または第1のガス)の(局所的な)枯渇を含むことがある。
【0016】
本発明の発明者は、ここで、堆積材料の粒子ビームベースの生成の場合には、本明細書に記載された低い双極子性を有しうる反転分子の使用が極めて有利となりうることを理解した。これは、反転分子の低い双極子性が、作業領域内の材料に対する反転分子の吸収確率(Absorptionswahrscheinlichkeit)に影響を及ぼしうるためである。低い双極子性の結果として、例えば、第2のガスの第2の分子(すなわち反転分子)の吸収確率は、作業領域内の材料に比べて有利な程度をとりうる。吸収確率のこの有利な程度を、例えば反転振動を実行することができない分子を用いて達成することはできない。本明細書では、反転振動を実行することができないこれらの分子を非反転分子と呼ぶ。非反転分子は例えば、ゼロでない永久双極子モーメントを有することがある。非反転分子はさらに、例えば、ゼロでない双極子モーメントを有する極性分子(例えばNO、NO2、H2O)を含むことができる。具体的には、反転分子は、その低い双極子性のために、非反転分子よりも低い程度の、(作業領域内の)材料に対する吸収確率を有することがある。したがって、反転分子は、(作業領域内の)材料によって、非反転分子よりも少なく吸収されることがある。したがって、第2のガス中で反転分子を使用したときには、作業領域の領域内での第2のガスの枯渇を最小化することが可能である。したがって、例えば、作業領域の範囲内の第2のガスの濃度を、第2のガス中で非反転分子が(排他的に)使用された場合よりも高くすることができ、または長く維持することができる。したがって、第2のガスの濃度を技術的に再調整すること、または高度の吸収確率による第2のガスの濃度の低下を考慮することをかなり減らすことができる。
【0017】
したがって、第2の分子としての反転分子の使用は、堆積材料を生成する際の規定された(局所)ガス濃度の構成(Gestaltung)の比を最適化することを可能にすることができ、その結果、堆積材料の生成を最適化することができる。さらに、この使用は、生成された堆積材料の規定された物理的および/または化学的特性の確立を最適化することができる。これは、これらの特性が、堆積材料を生成する際の(局所)ガス濃度に、決定的な程度、依存しうるためである。
【0018】
第2の分子が反転振動を実行することができるとは、第2の分子が基本的に、ゼロケルビンよりも高い温度を含む特定の温度で反転振動を実行することできることであると定義することができる。例えば、これを、第2のガスの第2の分子が、堆積材料の生成中に優勢な温度で反転振動を実行することができることと定義することができる。例えば、第2の分子が反転振動を実行することができる特定の温度は、典型的な室温(例えば20℃または25℃)を含むことができる。この特定の温度はさらに、例えば堆積材料を生成する際に優勢であることがある-60℃~600℃の間の温度範囲内にあることができる。
【0019】
さらに、本発明の発明者は、一連の試験において、堆積材料を生成するのに有利な(反転分子を含む)第2のガスのガス流量のパラメータ空間を発見した。第2のガスは、5sccm未満のガス流量で供給することができる(sccmは、標準立方センチメートル毎分を意味する)。さらに、第2のガスは、好ましくは2sccm未満、より好ましくは0.5sccm未満のガス流量で供給することができる。別の例では、第2のガスを、0.3sccm未満のガス流量で供給することができる。これらの範囲内では、例えば、外部影響(例えば、減圧下でのUV、DUV、EUV放射を用いた照射、反応性ガス雰囲気中での使用、EUVまたはDUVマスクの洗浄サイクルなど)に対して特定の安定性を有する材料を堆積させることが可能である。
【0020】
ここに明記されたガス流量の相互影響、および本明細書で解明された反転分子と(作業領域内の)材料との相互作用は、生成された堆積材料の特に好ましい特性を生み出すことができた。1つの特性は例えば材料の組成である。例えば、オージェ電子分光法および/またはX線光電子分光法(略称:XPS)によって、生成された材料の化学組成の決定を可能にすることができる。
【0021】
本発明の発明者は、ここで、堆積材料の化学組成の最適条件を、記載された範囲内で見つけることができることを理解した。あるいは、有利な特性は、堆積材料の耐久性に関係することもある。例えば、堆積材料は本質的に、特定の回数の(例えばEUVまたはDUVマスクの)洗浄サイクル、例えば少なくとも10回、少なくとも50回もしくは少なくとも100回、または少なくとも1000回の洗浄サイクルに耐えることができる(例えば、この回数の洗浄サイクル後、堆積材料によって修復された透明欠陥(klarer Defekt)は本質的にプリントすることができない)。
【0022】
しかしながら、原理上、異なるガス流量、例えば<0.01sccmまたは>5sccmのガス流量で第2のガスを供給することを含む例も考えられる。次いで、例えばその代わりにまたはそれに加えて、本明細書に記載された別の態様によって、特に有利な堆積材料を生成することができる。これに対応して、窒化クロムまたは窒化クロムを含む材料を堆積させる方法を、本発明の1つの態様と考えることができ、この態様では、本明細書では一般的な用語で記述された粒子ビームならびに第1および第2のガスが(ガス流量の特定の間隔に限定されることなく)使用される。第1のガスは、クロムを含むガスとすることができる。第2のガスは、反転振動を実行することができる第2の分子を含むことができる。
【0023】
それとは無関係に、表現sccmは、当業者に知られている単位、標準立方センチメートル毎分に関係することを明確にすべきである。これは、流量を、単位時間当たりの体積の単位で示し、これらの体積単位は、標準状態(温度T=0℃、圧力p=1013.25hpa)下の体積単位に対応する。当業者に知られている標準密度を使用して、例えば、異なる圧力または温度における特定のガス流量のために必要な質量流量(例えばkg毎分)を計算することができる。例えば、空気の標準密度は例えば約1.29mg/cm3、NH3の標準密度は例えば約0.77mg/cm3である。
【0024】
この方法はさらに、物体の作業領域に第1のガスおよび/または第2のガスを局所的に供給することを含むことができる。したがって、堆積材料を生成するために、第1のおよび/または第2のガスを(例えばガス管路、ノズルなどによって)作業領域上に局所的に導くことができる。この方法はさらに、堆積材料の生成が本質的にリソグラフィ用の物体の作業領域に限定されるような態様で作業領域内に堆積材料を局所的に生成することを含むことができる。この方法はさらに、限局された粒子ビーム、例えば集束粒子ビームを使用することを含むことができ、その場合、この生成は、限局された粒子ビームの領域に本質的に限定された局所生成を含む。
【0025】
本明細書に記載されたリソグラフィ用の物体はリソグラフィマスクを含むことができる。このリソグラフィマスクは、半導体ベースのチップを製造するためのリソグラフィで(例えば半導体ベースのウエハの露光時に)使用することができるように設計されたものとすることができる。このリソグラフィマスクはさらに、(任意の波長の)電磁放射の供給源およびリソグラフィマスクに含まれるパターンに基づいて像を結像することができる任意のタイプのリソグラフィマスクを含むことができる。この像は、このパターンの変形を含むことがある。このリソグラフィマスクは例えば、EUVマスク、DUVマスク、X線リソグラフィマスク、バイナリマスク、位相シフトマスクなどを含むことができる。さらに、このリソグラフィマスクは、粒子源に基づいてパターンを結像することができるナノインプリントリソグラフィスタンプまたはリソグラフィマスクも含むことができる。
【0026】
本明細書に明記された作業領域は、リソグラフィ用の物体の局所領域を含むことができる。しかしながら、作業領域が、リソグラフィ用の物体の全体を含むことも考えられる。作業領域はさらに、任意の面積寸法、形状および/または形状寸法(Geometrie)を含むことができる。例えば、作業領域は、物体の(限界)寸法に関連した大きさの程度内にあることができる。例えば、(限界)寸法は、物体のパターン要素の特定の寸法CDを含むことができる。作業領域は例えば、特定の寸法CDに基づく面積Aをカバーすることができる(例えば、Aは、特定の寸法CDに比例することができる。例えばA=CD2)。さらに、材料は、生成された材料が、作業領域の面積全体を必ずしもカバーせず、作業領域の小領域にだけ生成されるような態様で、作業領域内に生成することができる。あるいは、生成された材料が作業領域の面積全体をカバーするような態様で、材料を作業領域内に生成することもできる。
【0027】
一例では、この方法が、第2のガスを、0.01sccm未満、好ましくは0.05sccm未満、より好ましくは0.1sccm未満のガス流量で供給することを含む。これらの最低量は、堆積材料の特に有利な安定性を可能にする。
【0028】
さらに、この方法は、第2のガスを、0.1sccm~0.5sccmの間のガス流量、より好ましくは0.2sccm~0.3sccm、最も好ましくは0.24sccm~0.26sccmのガス流量で供給することを含むことができる。これらの範囲内で、堆積材料の特に有利な安定性を達成することができることが分かっている。
【0029】
一例では、この方法が、少なくとも0.1マイクロ秒、好ましくは少なくとも0.3マイクロ秒、最も好ましくは少なくとも0.5マイクロ秒の粒子ビームの滞在時間(dwell time)で粒子ビームを供給することを含む。一例では、この方法が、少なくとも1マイクロ秒、好ましくは少なくとも3マイクロ秒、最も好ましくは少なくとも5マイクロ秒の粒子ビームの滞在時間で粒子ビームを供給することを含む。別の例では、このプロセスが、0.1マイクロ秒~10マイクロ秒、好ましくは0.3マイクロ秒~7マイクロ秒、最も好ましくは0.4マイクロ秒~6マイクロ秒の粒子ビームの滞在時間で粒子ビームを供給することを含む。材料を所望の高さに堆積させるため、この滞在時間で多数のサイクルが実行される。
【0030】
一例では、この方法が、堆積材料が粒子ビームの影響なしで気相中で少なくとも部分的に形成するようなやり方で、第1のガスおよび/または第2のガスを供給することを含む。本発明において第2のガス中で反転分子を使用することは、(本明細書に記載された)非反転分子を使用することに比べて、物体の作業領域の環境中の第2のガスの濃度がより高くなることを保証することができる。したがって、この状態は、粒子ビームの影響がなくとも第1のガスと第2のガスとの間の反応を可能にすることができる。したがって、気相中であっても作業材料の表面の上で堆積材料が形成する確率を大幅に増大させることが可能である。これによって例えば、堆積材料の粒子ビーム誘起生成中の反応に対する有利な境界条件が生じることがある。したがって、粒子ビームの起動時に、作業領域内での堆積材料の堆積の形態の堆積材料の生成が、その生成をより効率的にするのに有利な方式で起こることが可能である。上述の状態を、第1のガスおよび/または第2のガスのガスパラメータの制御された調整によって(例えば第1および/または第2のガスの対応するガス流量、ガス濃度、ガス圧力などによって)さらに促進することができる。
【0031】
一例では、この方法が、材料の生成の反応生成物が作業領域から排除されるように、第2のガスを供給することを含む。これは例えば、反転分子を第2の分子として使用することによって可能にすることができる。本明細書に記載されているとおり、非反転分子を使用することに比べて、物体の作業領域の環境中の第2のガスの高い濃度を保証することができる。その結果として生じる気相中の第2の分子の高い供給は、作業領域の表面から反応生成物が排除される確率を増大させうる。
【0032】
一例では、第1のガスを、堆積材料を生成するための主要な堆積ガスとみなすことができる。この第1のガスは、生成された堆積材料の金属含量に対してかなりの影響を有するように設計することができる。一例では、この方法の第1のガスが、金属原子を含む第1の分子を含む。したがって、この例では、(主要な堆積ガスとしての)第1のガスが、堆積材料が特定の金属を含むかどうかを第1のガスが規定するようなやり方で、堆積材料を生成するプロセスに影響を与えうる。さらに、(主要な堆積ガスとしての)第1のガスは、堆積材料が特定の複合金属を含むかどうかを規定することができる。
【0033】
この文脈では、本明細書に記載された第2のガスを、主要な堆積ガス(すなわち第1のガス)に関係する添加物ガスとみなすことができる。添加物ガスとしての第2のガスはさらに、堆積材料の化学組成および物理特性(例えば堆積材料の化学量論的組成、硬さ、化学安定性など)を適合させることができる。例えば、第2のガスを添加物ガスとして使用することによって、第2のガスの成分を堆積材料に組み込むことができる。さらに、第2のガスを使用することによって、(粒子ビームを用いて堆積材料を生成するために第1のガスを排他的に使用するのに比べて)堆積材料内のモル割合(ein Stoffanteil innerhalb des Abscheidematerials)を低減させることができる。反転分子を含む添加物ガスは、本明細書に記載された関係のため、非反転分子を含む添加物ガスよりも特に有利であることを本発明の発明者は理解している。
【0034】
一例では、この方法が、第1のガスと第2のガスを少なくとも部分的に同時に供給することを含む。例えば、例えば堆積材料の生成中に、第1のガスと第2のガスを、作業領域の環境中または物体の環境中に同時に導入することができる。これはさらに、作業領域/物体の環境中に第1のガスと第2のガスの両方が存在することが保証されるような態様で、生成中に第1のガスの第1のガス流量と第2のガスの第2のガス流量が(少なくとも部分的に)存在することを含むことができる。ここで、例えば、第1のガス流量と第2のガス流量とが本質的に全く同じであることが可能である。あるいは、他の例では、それらのガス流量が異なっていてもよい。第1のガスと第2のガスを同時に供給することはさらに、(堆積材料を生成する際に)第1のガス流量および第2のガス流量が変動することを含むことができる。
【0035】
一例では、この方法が、第1のガスと第2のガスを少なくとも部分的に時間間隔をあけて供給することを含む。例えば、堆積材料を生成するために、生成プロセスの1つのステップにおいて、これらの2つのガスのうちの一方のガスだけを作業領域/物体の環境に供給または導入することが必要なことがある。例えば、堆積材料の生成を開始するために、最初に第1のガス(または第2のガス)だけを作業領域/物体の環境に導入することが必要なことがある。続いて、後の時点で、第2のガス(または第1のガス)をフィードまたは供給することができる。さらに、生成中に、第1のガスの(排他的)供給/導入(第2のガスなし)と第2のガスの(排他的)供給/導入(第1のガスなし)とを段階的に交互に行うことも考えられる。さらに、堆積材料を生成するプロセスの終了が、これらの2つのガスのうちの一方のガスの排他的供給/導入を含むこともありうる。例えば、生成プロセスの終了が、第2のガスの排他的供給/導入によって規定されることが考えられる。
【0036】
別の例では、この方法の第1のガスが、カルボニル化合物を含む第1の分子を含む。このことを、第1のガスの第1の分子がカルボニル基を有すると解釈することもできる。例えば、第1の分子は一酸化炭素配位子を含むことができる。
【0037】
一例では、この方法の第1の分子が金属カルボニルを含む。例えば、この金属カルボニルは、一酸化炭素を配位子として含む金属の錯体を含むことができる。この金属カルボニルは、原理上、任意の電荷の錯体、任意の数およびタイプの中心原子、ならびに任意の数およびタイプの配位子およびその結合モードを含むことができる。例えば、この金属カルボニルは、帯電していない錯体、正に帯電した金属カルボニルカチオン、および/または負に帯電した金属カルボニラートアニオンを含むことができる。堆積材料の生成は、反応生成物として一酸化炭素分子(すなわちCO分子)を発生させることがある。別の例では、この方法の第1の分子が有機金属化合物を含む。
【0038】
一例では、この金属カルボニルがクロムカルボニルを含む。例えば、このクロムカルボニルは、クロムヘキサカルボニルCr(CO)6を含むことができる。
【0039】
一例では、生成された堆積材料が窒化クロムを含む。窒化クロムは、堆積材料の他にない耐久性を達成することができることが分かっている。別の例では、生成された堆積材料が、金属窒化物および/または金属酸窒化物を含む。
【0040】
一例では、この方法の窒化クロム(または堆積材料)が、少なくとも10原子百分率(atomic percent)の窒素、好ましくは少なくとも15原子百分率の窒素、より好ましくは少なくとも20原子百分率の窒素を含む。単位「原子百分率」は、窒化クロム(または堆積材料)のモル割合に関係することがあり、原子百分率は、例えば、物質の総粒子数(例えば窒化クロム中の総原子数または堆積材料中の総原子数)に対する粒子(例えば窒素原子)の相対数を示す。原子百分率は、例えばオージェ電子分光法および/またはX線光電子分光法によって(およびさらに例えば光電子分光法PESによって)検出することができる。
【0041】
一例では、この方法が、物体の欠陥が補修されるようなやり方で堆積材料を生成することを含む。例えば、これは、最初に、(例えば走査電子顕微鏡、光学顕微鏡などによって)欠陥の位置を検出することを含むことができる。ここで、位置が検出された欠陥の少なくとも1つの特性に基づいて(例えば欠陥の位置、形状、サイズ、タイプなどに基づいて)、堆積材料を生成するために使用する作業領域を画定することが可能である。物体の欠陥の補修はさらに、欠陥を含む修復形状を生成することを含むことができる。一例では、この修復形状が、本明細書に明記された方法の作業領域の役目を果たすことができる。修復形状は例えばピクセルパターンを有することができ、このピクセルパターンは、欠陥部位の位置検出を可能にすることができる。このピクセルパターンは例えば、ピクセルパターンの中の全てのピクセルが欠陥の中の部位に本質的に対応し、したがって欠陥ピクセルを構成するような態様で、ピクセルパターンが欠陥の輪郭に従うように設計されたものとすることができる。別の例では、このピクセルパターンが、欠陥を完全に含む固定された幾何学的形状(例えば多角形、長方形、円など)を有し、その場合には、全てのピクセルが必ず欠陥部位を構成するというわけではない。ここで、このピクセルパターンは、欠陥部位に対応する欠陥ピクセル、および欠陥の部分をカバーしていない部位に対応する非欠陥ピクセルを含むことがありうる。一例では、この方法が、材料を生成する際に、粒子ビームを、少なくとも修復形状のピクセルパターンの欠陥ピクセル上に導くことを含む。さらに、堆積材料を生成する際に粒子ビームを任意の欠陥ピクセル上に導くことができるように、粒子ビームを構成することができる。これによって、堆積材料の生成が欠陥ピクセルに限局されること、およびしたがって欠陥だけが処理されることを保証することができる。
【0042】
一例では、この方法の欠陥が透明欠陥を含む。ここで言う透明欠陥は、物体の設計によれば実際には不透明(例えば特定の波長の放射に対して不透過性または強度に吸収性)であるはずのリソグラフィ用の物体上の故障部位(fehlerhafte Stelle)である。具体的には、不透明は、物体に対するリソグラフィ法に関して定義されることがある。例えば、リソグラフィ用の物体は、EUVリソグラフィ法用のEUVマスクを含むことがあり、この場合、「不透明」は、13.5ナノメートルの放射波長に関することがある。「不透明」が、(例えば193ナノメートルまたは248ナノメートルの放射波長での)DUVリソグラフィ法、(例えば265ナノメートルの放射波長での)i線リソグラフィ法、または物体に応じた他の任意のリソグラフィ法に関係することも考えられる。さらに、透明欠陥は例えば、リソグラフィマスクの不透明パターン要素の材料が失われた故障部位を含むことがある。この方法は、故障部位が不透明になるように堆積材料を生成することを含むことができる。例えば、この方法は、本明細書に明記された方法によって、堆積材料としての吸収体材料を生成することを含むことができる。この吸収性材料は、パターン要素も不透明である波長に関して不透明であるように設計されたものとすることができる。生成された吸収体材料は例えば、パターン要素の層の材料に対応することができ、またはパターン要素の層の材料と光学的に類似の特性(例えば屈折率n、吸収係数k)を有する材料組成物を含むことができる。一例では、透明欠陥を補修するために、かなりの部分が窒化クロムである、または窒化クロムを本質的に含む吸収体材料を、本明細書に明記された方法によって堆積させる。さらに、本発明によるこの方法は、パターン要素の任意の層の材料を、本明細書に明記された方法によって生成することを含むことができる。
【0043】
本発明の第2の態様は、リソグラフィ用の物体の表面材料を処理する方法に関し、この方法は、反転振動を実行することができる第2の分子を含む第2のガスを供給することを含む。第2の態様の方法はさらに、第2のガスに少なくとも部分的に基づいて物体の作業領域内の表面材料を不動態化する(Passivieren)ために、作業領域に粒子ビームを供給することを含む。したがって、第2の態様の方法は、第2のガスに少なくとも部分的に基づく粒子ビーム支援または粒子ビーム誘起不動態化を含むことができる。表面材料は、リソグラフィ用の物体に含まれる任意の材料を含むことができる。例えば、表面材料は、リソグラフィマスクの任意の構造体および/または層の材料であることができる。例えば、表面材料は、物体上に存在することもある。
【0044】
第2の態様も、第1の態様に関して本出願で説明した特徴を含むことができる。具体的には、第2のガスを、第1の態様に関して本明細書で説明した第2のガスとすることができる。同様に、第1の態様が、第2の態様に関して本明細書で説明した特徴を含むことも可能である。さらに、第1の態様は第2の態様を含むことができ、同様に第2の態様は第1の態様を含むことができる。
【0045】
表面材料の不動態化は、第2の態様の方法において、粒子ビームが作用する表面材料の局所部位だけが不動態化されるように設計することができる。例えば、供給された第2のガスと協働して局所部位が不動態化されるような態様で、粒子ビームを、表面材料の局所部位上に(例えば粒子ビームの制御された偏向および/または集束によって)導くことができる。不動態化される局所部位の大きさは、例えば表面上の粒子ビームの大きさに対応することができ、例えば、この不動態化を、表面上の粒子ビームの直径(例えばFWHM)に比例した直径(例えば粒子ビームの直径の5倍~0.2倍、または粒子ビームの直径の2~0.5倍)を有する部位内で実行することができる。したがって、粒子ビームの位置決めによって、表面材料の不動態化を、任意の自由度で限局することができる。したがって、表面材料を、制御された方式で局所的に(すなわち幾何学的に囲われて)不動態化することができる。例えば、第2の態様の方法の文脈では、表面材料(の表面)に沿って粒子ビームを特定のパターンで走査することができ、その結果、表面材料はこのパターンに沿って不動態化される。これは、材料(例えばリソグラフィ用の物体の材料)を大きな面積にわたって単独で不動態化することができる純粋にガスベースの従来の大域不動態化とは対照的である(例えば、純粋にガスベースの従来の不動態化の場合には、ガスにさらされた表面の全体が不動態化される)。したがって、本発明によるこの方法は、不動態化または不動態化された部位の形状寸法の高度の構成を可能にし、さらに、不動態化しない部位の制御された除外を可能にする(これは例えば、この方法によって、粒子ビームによって走査された部位だけを不動態化することができるためである)。
【0046】
一例では、第2の態様の不動態化が、表面材料の側面の不動態化を含む。この側面は、例えば、表面材料の縁、コーナ、高さ、凹みなどの局所部位/面を含むことがある。本発明によるこの方法はしたがって、通常は接近することが困難な、リソグラフィ用の物体の材料の側方部位の不動態化を可能にすることができる。ここでは、粒子ビームを、側方からの角度で表面材料に位置合わせすることが可能である。側面を不動態化する際に、物体(したがって表面材料)に角度をつけること/物体(したがって表面材料)を傾けること、さらに、物体を傾けることと粒子ビームを側方から位置合わせすることを組み合わせることも考えられる。別の例では、本発明の表面材料が物体の側面の材料を含む。
【0047】
本発明による不動態化を実行しない場合よりも表面材料が外部影響に対して物理的および/または化学的に安定するように、表面材料の不動態化を設計することができる。この不動態化は特に、リソグラフィ処理の間に物体がさらされる外部影響(例えば電磁放射、パージガス、洗浄化学物質、浸漬媒質など)に関して最適化することができる。使用される第2の分子は、(本明細書で説明したとおり)作業領域内の第2のガスの規定された(局所)ガス濃度の構成を促進する反転分子であるため、この不動態化は特に、有利な方式で実行することができる。さらに、この不動態化は特に、プロセスガスによって(優先的に)攻撃されうる構造化されたリソグラフィマスクの反応性部位(例えば縁、以前に損傷した構造体、容易に損傷する決定的に重要な構造体など)を不動態化する役目を果たすことができる。生じうる損傷を予め防ぐために、この不動態化を特に予防的に実行することができる。
【0048】
一例では、第2の態様の方法で、この不動態化がエッチングプロセスを支援する。例えば、(例えば表面材料の領域での局所エッチングの場合の)エッチングプロセス中にまたはエッチングプロセスの間に、(本明細書に記載されたとおりに)表面材料を不動態化することができる。このエッチングプロセスは例えば、クロムおよび/または酸化クロムを含む吸収体材料のエッチングを含むことができる。使用するエッチングガスは例えばXeF2およびH2Oとすることができる。このエッチングプロセスで生じる縁を、本明細書で説明した表面材料(または表面材料の側面)とみなすことができる。したがって、本発明では、第2の態様の方法によって、本明細書で説明した縁を不動態化することができる。これは例えば、表面材料の基本的な(例えば最終的な)不動態化のために、エッチングプロセスの終了後に実行することができる。さらに、エッチングプロセスのプロセス速度を調整するために不動態化を実行することも考えられる。この不動態化は、少なくとも部分的にこのエッチングプロセス中に実行することができる。
【0049】
一例では、第2の態様の方法がさらに、表面材料の不動態化の前に、第1のガスおよび粒子ビームを供給することに少なくとも部分的に基づいて、作業領域に表面材料を生成することを含む。第2の態様の第1のガスは、本発明の第1の態様の第1のガスに関して本明細書に明記された例の1つに対応することができる。第2の態様の方法はさらに、表面材料の制御された(例えば粒子ビーム誘起)堆積を含むことができ、この堆積を続いて本発明に従って不動態化することができる。例えば、この不動態化は、表面材料の生成の直後に実行することができ、その場合には、表面材料の生成と不動態化とを別々に(例えば別個の処理操作として)実行することも考えられる。
【0050】
別の例では、本明細書に記載された第1の態様の方法の1つによって表面材料を生成することができる。この場合には、第2の態様の表面材料を、第1の態様で生成される堆積材料と同様の材料とすることができ、または第2の態様の表面材料が、第1の態様で生成される堆積材料に対応することができる。
【0051】
別の例では、表面材料の生成がさらに、少なくとも部分的に、添加されたガス(以後、添加ガス)に基づくことができる。この添加ガスは、表面材料を生成する際に、第1のガスと一緒に添加物ガスとして供給することができる。例えば、この添加ガスは、酸化剤、ハロゲン化物および/または還元効果を有するガスを含むことができる。酸化剤は、酸素を含むガスを含むことができる。例えば、酸化剤は、以下のうちの少なくとも1つを含むことができる:酸素(O2)、オゾン(O3)、水(H2O)、過酸化水素(H2O2)、一酸化二窒素(N2O)、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)、硝酸(HNO3)。ハロゲン化物は、ハロゲンを含むガスを含むことができる。例えば、ハロゲン化物は、以下のうちの少なくとも1つを含むことができる:Cl2、HCl、XeF2、HF、I2、HI、Br2、HBr、NOCl、PCl3、PCl5、PF3。還元効果を有するガス(例えば還元剤)は、水素を含むガスを含むことができる。例えば、還元効果を有するガスは、以下のうちの少なくとも1つを含むことができる:H2、NH3、H2N-NH2、CH4。一例では、表面材料を生成することが、クロムヘキサカルボニルを含む第1のガスを供給すること、および酸化剤として二酸化窒素を含む添加ガスを供給することを含む。別の例では、表面材料を生成することが、クロムヘキサカルボニルを含む第1のガスを供給すること、ならびに酸化剤として水および/または酸素を含む添加ガスを供給することを含む。
【0052】
一例では、第2の態様の方法で、表面材料が吸収体材料を含む。本明細書で説明したとおり、吸収体材料は、リソグラフィ用の物体が使用されうるリソグラフィ法の波長に対して不透明であるように設計されたものであることができる。
【0053】
一例では、第2の態様の方法で、この不動態化が、表面材料上に不動態化層を生成することを含む。例えば、不動態化層を生成することは、表面材料の少なくとも1つの上層の化学的/物理的変化を含むことができる。さらに、不動態化層を生成することは、表面材料上の別の層として不動態化層を堆積させることを含むことができる。さらに、本発明に従って、表面材料上に、表面材料の変化した上層と堆積した別の層との組合せを生成することも考えられる。一例では、第2の態様の方法で、生成された不動態化層が表面材料の窒化物を含む。
【0054】
一例では、第2の態様の方法で、生成された表面材料がクロムを含む。例えば、生成された表面材料は、酸化クロムを含む材料またはクロムを含む材料であってもよく、その表面は、窒化物形成によって不動態化される。
【0055】
一例では、第2の態様の方法で、生成された不動態化層が窒化クロムを含む。
【0056】
一例では、第2の態様の方法で、この不動態化に続いて、不動態化された表面材料上に別の表面材料を生成する。この別の表面材料は、(本明細書に記載された)表面材料と類似のやり方で生成することができる。さらに、第2の態様の方法は、この別の表面材料を(本明細書に記載されているとおりに)不動態化することを含むことができる。別の例では、第2の態様の方法が、この別の表面材料の生成とその不動態化とを交互に実行することを含む。ここで、生成と不動態化とを交互に実行することを希望に応じた頻度で繰り返すことができる。例えば、この例は、(別の)表面材料とその不動態化層とが交互に出現する層スタックに帰着することができる。
【0057】
一例では、第2の態様の方法で、窒化クロムが、少なくとも10原子百分率の窒素、好ましくは少なくとも15原子百分率の窒素、より好ましくは少なくとも20原子百分率の窒素を含む。
【0058】
一例では、第2の態様の方法が、物体の欠陥が補修されるようなやり方で表面材料を生成することを含む。例えば、これを、第1の態様で説明した例と類似したやり方で実行することができる。一例では、第2の態様の方法で、この欠陥が透明欠陥を含む。
【0059】
一例では、第1および/または第2の態様の方法で、反転振動が、第2の分子のピラミッド反転(pyramidale Inversion)を含む。
【0060】
一例では、第1および/または第2の態様の方法で、第2の分子が、三角錐形構造(trigonal-pyramidale Geometrie)を含む。
【0061】
一例では、第1および/または第2の態様の方法で、第2の分子が、化合物中に窒素および水素を含む。例えば、第2の分子は、窒素および水素を本質的に含むことができる。第2の分子が窒素および水素を排他的に含むことも考えられる。
【0062】
一例では、第1および/または第2の態様の方法で、第2の分子がアンモニアNH3を含む。例えば、アンモニアの反転振動は、典型的な室温で約23ギガヘルツ(GHz)の高い頻度で起こる。このことは本発明による方法にとって有利であることを本発明の発明者は理解している。
【0063】
一例では、第1および/または第2の態様の方法で、第2の分子がH2N-NH2を含む。
【0064】
一例では、第1および/または第2の態様の方法で、第2の分子が、化合物中に窒素およびハロゲンを含む。例えば、第2の分子は、窒素およびハロゲンを本質的に含むことができる。第2の分子が窒素およびハロゲンを排他的に含むことも考えられる。
【0065】
一例では、第1および/または第2の態様の方法で、第2の分子が、以下の分子:NF3、NCl3、NI3、NBr3のうちの少なくとも1つを含む。
【0066】
一例では、第1および/または第2の態様の方法で、第2の分子が、化合物中に窒素、水素およびハロゲンを含む。例えば、第2の分子は、窒素、水素およびハロゲンを本質的に含むことができる。第2の分子が窒素、水素およびハロゲンを排他的に含むことも考えられる。
【0067】
一例では、第1および/または第2の態様の方法で、第2の分子が、以下の分子:NH2X(Xはハロゲンを含む)、NHX2(Xはハロゲンを含む)のうちの少なくとも1つを含む。
【0068】
一例では、第1および/または第2の態様の方法で、作業領域において、第2の分子が、NO2分子よりも低い吸収確率を有する、より低い吸収確率は、第2の分子のより良好な可用性を保証しうる。
【0069】
一例では、第1および/または第2の態様の方法で、粒子ビームが電子ビームを含む。例えば、第1の態様の堆積材料および/または第2の態様の表面材料を、(例えば(F)EBID、すなわち(集束)電子ビーム誘起堆積として知られている)電子ビーム誘起堆積によって生成することができる。
【0070】
しかしながら、粒子ビームがイオンビーム(例えばガリウムイオンなど)を含むことも考えられる。例えば、第1の態様の堆積材料および/または第2の態様の表面材料を、(例えば(F)IBID、すなわち(集束)イオンビーム誘起堆積として知られている)イオンビーム誘起堆積によって生成することができる。
【0071】
さらに、粒子ビームとして多数の粒子ビームを使用することも考えられる。
【0072】
一例では、第1および/または第2の態様の方法で、(添加物ガスとしての)添加ガスも供給される。例えば、第2のガスは、添加ガス(またはその分子)を含むことができる。この添加ガスは、酸化剤、ハロゲン化物および/または還元効果を有するガス(すなわち還元剤)を含むことができる。酸化剤は例えば、酸素を含むガスを含むことができる。例えば、酸化剤は、以下のうちの少なくとも1つを含むことができる:酸素(O2)、オゾン(O3)、水(H2O)、過酸化水素(H2O2)、一酸化二窒素(N2O)、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)、硝酸(HNO3)。ハロゲン化物は、ハロゲンを含むガスを含むことができる。例えば、ハロゲン化物は、以下のうちの少なくとも1つを含むことができる:Cl2、HCl、XeF2、HF、I2、HI、Br2、HBr、NOCl、PCl3、PCl5、PF3。還元効果を有するガスは、水素を含むガスを含むことができる。例えば、還元作用を有するガスは、以下のうちの少なくとも1つを含むことができる:H2、NH3、H2N-NH2、CH4。
【0073】
好ましい例では、第1および/または第2の態様の方法が、クロムヘキサカルボニルを含む第1のガスを供給すること、および第2の分子として(本明細書に記載された)反転分子を含み、酸化剤として二酸化窒素を含む第2のガスを供給することを含む。別の好ましい例では、第1および/または第2の態様の方法が、クロムヘキサカルボニルを含む第1のガスを供給すること、ならびに第2の分子として(本明細書に記載された)反転分子を含み、酸化剤として酸素および/または水を含む第2のガスを供給することを含む。別の好ましい例では、第1および/または第2の態様の方法が、クロムヘキサカルボニルを含む第1のガスを供給すること、および第2の分子として(本明細書に記載された)反転分子を含み、還元剤としてH2を含む第2のガスを供給することを含む。
【0074】
本発明の第3の態様は、リソグラフィ用の物体を処理するための装置に関し、この装置は、第1のガスを供給する手段と、反転振動を実行することができる第2の分子を含む第2のガスを供給する手段と、粒子ビームを供給する手段とを備える。この装置はさらに、本明細書に記載された本発明の第1および/または第2の態様の例による方法を実行するように構成されている。さらに、この装置はコンピュータシステムを備えることができる。
【0075】
いくつかの例では、例えばこの装置が本明細書に記載された不動態化のためだけに使用されることが意図されているとき、この装置は、必ずしも、第1のガスを供給する手段を備えない。
【0076】
本発明の第4の態様は、リソグラフィ用の物体に関し、この物体は、第1および/または第2の態様の方法によって処理されたものである。
【0077】
本発明の第5の態様は、半導体ベースのウエハのリソグラフィ処理の方法に関する。第5の態様の方法はさらに、リソグラフィ用の物体に関連したパターンをウエハにリソグラフィ転写することを含み、この物体は、本明細書に記載された本発明の第1および/または第2の態様の例の1つに従って処理されたものである。このリソグラフィ転写は、それに合わせて物体が設計されたリソグラフィ法(例えばEUVリソグラフィ、DUVリソグラフィ、i線リソグラフィなど)を含むことができる。例えば、第5の態様の方法は、電磁放射(例えばEUV放射、DUV放射、i線放射など)のビーム源を提供することを含むことができる。これはさらに、現像可能なレジスト層をウエハ上に塗布することを含むことができる。このリソグラフィ転写はさらに、少なくとも部分的に、放射源に基づくこと、および現像可能なレジスト層を塗布することに基づくことができる。ここで、例えば放射源から放射によって、レジスト層上にパターンを(変形した形態で)結像する(image)ことが可能である。
【0078】
本明細書に記載された方法を、例えば文書の形態で記録することができる。これは例えば、デジタルファイルによって、アナログ式に(例えば紙の文書の形態で)、ユーザハンドブック中で、(例えば半導体工場においてデバイスおよび/またはコンピュータに記録された)式で、達成することができる。本明細書に記載された方法のうちの1つの方法の実行時に、書かれたプロトコルをコンパイルすることも考えられる。このプロトコルは例えば、後の時点における(例えば故障評価、監査などの間における)方法およびその詳細(例えば式)の実行の証明を可能にすることができる。このプロトコルは例えば、例えばデバイスおよび/またはコンピュータに記録することができるプロトコルファイル(すなわちログファイル)を含むことができる。
【0079】
本発明の第6の態様は、命令を含むコンピュータプログラムに関し、この命令は、コンピュータシステムによって実行されたときに、本発明の第1、第2および/または第4の態様の例の1つによる方法をコンピュータシステムに実行させる。
【0080】
別の態様は、コンピュータプログラムを含むメモリを備えた上述の装置に関する。この装置はさらに、コンピュータプログラムを実行するための手段を有することができる。あるいは、コンピュータプログラムを他の場所に(例えばクラウドの中に)記憶すること、およびこの装置が単に、プログラムを他の場所で実行することに起因する、命令を受け取るための手段を有することも可能である。いずれにせよ、このことは、この方法が、この装置内で自動的にまたは自律的に実行されることを可能にすることができる。その結果として、介入、例えばオペレータによる介入を最小限することも可能であり、そのため、マスクを処理するときのコストと複雑さの両方を最小限に抑えることが可能である。
【0081】
本明細書に明記された方法の特徴(およびさらに例)を、上述の装置に相応に適用すること、または上述の装置に相応に適用可能とすることもできる。同様に、本明細書に明記された装置の特徴(およびさらに例)を、本明細書に記載された装置に相応に適用すること、または本明細書に記載された装置に相応に適用可能とすることもできる。
【0082】
以下の詳細な説明は、本発明の技術的背景情報および作業例を図を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【
図1】先行技術による、リソグラフィ用の物体の例示的な修復状況の上面を概略的に示す図である。
【
図2】リソグラフィ用の物体の欠陥の修復するプロセスの断面を一例として概略的に示す図である。
【
図4a】5つの試験構造体の走査電子顕微鏡写真を示す図であり、これらの試験構造体の一部は、本発明による方法によって生成されたものである。
【
図4b】
図4aの5つの試験構造体に対するオージェ電子分光法の結果を示す図である。
【
図5】本発明による例示的な装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0084】
図1は、リソグラフィ用の物体の例示的な修復状況の上面を概略的に示している。このリソグラフィ用の物体は、リソグラフィ法(例えばEUVリソグラフィ、DUVリソグラフィ、i線リソグラフィ、ナノインプリントリソグラフィなど)に適したリソグラフィマスクを含むことがある。一例では、このリソグラフィマスクが、EUVマスク、DUVマスク、i線リソグラフィマスクおよび/またはナノインプリンティングスタンプを含むことがある。さらに、このリソグラフィ用の物体は、バイナリマスク(例えばクロムマスク、OMOGマスク)、位相マスク(例えばクロムフリー位相マスク)、交互位相マスク(例えばリム位相マスク)、ハーフトーン位相マスク、トリトーン位相マスク、および/またはレチクル(例えばペリクルを有するレチクル)を含むことがある。このリソグラフィマスクは例えば、半導体チップを製造するためのリソグラフィ法で使用されることがある。
【0085】
リソグラフィ用の物体は(不要な)欠陥を含むことがある。例えば、物体を製造する際に欠陥が生じることがある。さらに、物体の(リソグラフィ)処理、(リソグラフィ)処理におけるプロセス逸脱、物体の輸送などによっても欠陥は生じることがある。リソグラフィ用の物体の製造は普通、高コストであり複雑なため、欠陥は普通、修復される。
【0086】
本明細書に記載された作業例では、例示の目的上、リソグラフィ用の物体の例としてEUVマスクがしばしば使用される。しかしながら、EUVマスクよりもむしろ、(例えば本明細書に記載された)リソグラフィ用の任意の物体が考えられる。
【0087】
図1は、EUVマスクの欠陥を修復する間のマスクの詳細1000の2つの局所状態D、Rの上面を概略的に示すことができる。詳細1000は、EUVマスクのパターン要素PEの部分を示している。パターン要素PEを、EUVマスクのパターン要素とみなすこともできる。パターン要素PEを、例えばリソグラフィ法によってウエハに転写することができる設計されたパターンの部分とすることができる。局所状態Dは、パターン要素PEの透明欠陥110を示している。(本明細書に記載されているとおり)透明欠陥1010は、例えばパターン要素PEの不透明材料の欠如によって特徴付けられることがある。
図1(状態D)に関して、詳細1000の欠陥のないパターン要素PEは正方形の形状を有していなければならないが、欠陥1010の結果として、目標であるこの状態が存在しないことは明らかである。したがって、修復手順RVは通常、パターン要素PEの修復された状態Rを確立することができるような態様で、透明欠陥1010の領域に修復材料1020を生成する。例えば、
図1の状態Rでは、パターン要素の目標である正方形の状態が既に再確立されていることが明らかである。修復材料1020は、パターン要素の不透明効果に対応する不透明効果を(元の)欠陥1010の部位に持たせる効果を有する材料を含むことがある。パターン要素の不透明効果は特に、パターン要素の少なくとも1つの吸収体材料によって生じる。したがって、修復材料1020は普通、吸収体材料を含み、この吸収体材料は、例えば、パターン要素の吸収体材料と本質的に全く同じものであることがあり、またはパターン要素の吸収体材料と同様の吸収特性(例えば同様の材料)を有するものであることがある。しかしながら、ここでの技術的課題は、局所的に生成された修復材料が、EUVマスク上に元から存在するパターン要素の材料と同じ影響を受けることがあることである。したがって、局所境界を有するこの修復材料は、化学的および物理的に高いストレスを受けることがある。
【0088】
リソグラフィマスクは、リソグラフィ装置内でのまたはリソグラフィ法での使用中に極端な物理的および化学的環境条件にさらされることがあり、それらの条件は、例えばマスクの材料特性を変化させうる。このことは特に、UVリソグラフィ法中のEUVマスクの露光でそうであり、特に、吸収性材料はこれらの影響によくさらされることがある。高エネルギーEUV放射を用いたEUVは通常、水素雰囲気で実行される。さらに、DUVリソグラフィ法のDUVマスクは特に、材料を変化させる環境条件に潜在的にさらされることがある。
【0089】
したがって、吸収体材料を含むことがある修復材料に対して、高い要求、例えばこれらのリソグラフィ環境条件に対する安定性に関する高い要求がなされることがある。(例えばUV、DUV、EUVマスクなどの)材料が失われた欠陥の修復では通常、電子ビーム誘起堆積が使用される。電子ビーム誘起堆積は、吸収性の(例えばクロムを含む)堆積物を生成することができる。しばしば、クロム前駆体ガスが、酸化性の添加物ガス(例えばNO2、O2、H2Oなど)とともに使用される。酸化性の添加物ガスを添加する主な目的は堆積物中の炭素含量を低減させることであり、堆積物中の炭素含量を低減させるのは、残留炭素が堆積物の安定性をさらに低下させうるためである。しかしながら、結果として生じる酸化クロムを含む材料(すなわち修復材料)はしばしば、(例えばUV、DUV、EUVリソグラフィ法における)リソグラフィプロセスで優勢な攻撃的な周囲条件に対する安定性の要求を部分的にしか満たさない。したがって、修復材料(およびマスク)に対する損傷を常に防ぐことができるわけではない。
【0090】
修復材料(およびマスク)に対する損傷は、材料の化学的および/または物理的変化を含むことがあり、それらはさらにさまざまな原因を有することがある。第1に、この原因が、リソグラフィ法中の操作(例えば露光操作)にあることがある。例えば、この原因が、露光における放射(例えばEUV放射、DUV放射など)、(プロセス)温度、水素および/もしくは他の反応性水素種(例えば遊離基、イオン、プラズマ)との反応、ならびに/または、露光における放射に関連した、マスクとパージガス(例えばN2、極端な清浄な乾燥空気(XCDA(登録商標))、希ガス)との反応、であることがある。第2に、この原因が、下流プロセス(例えばリソグラフィ法後のマスクの処理)にあることがある。この下流プロセスが例えばマスク洗浄を含むことがある。ここで、リソグラフィ法中の化学および/または物理プロセスによって以前に損傷した修復材料(およびマスク)が、下流プロセスによってさらに損傷することが起こりうる。
【0091】
図2は、リソグラフィ用の物体の欠陥を修復するプロセスの断面を一例として概略的に示している。さらに、
図2は、EUV波長範囲用の反射型リソグラフィマスク200(すなわちEUVマスクまたはEUVフォトマスク)の断面を概略的に示している。例示的なEUVマスク200は、13.5nmの範囲の露光波長向けに設計されたものとすることができる。EUVマスク200は、低い熱膨張率を有する材料、例えば石英でできた基板210を含むことがある。同様に、例えば、ZERODUR(登録商標)、ULE(登録商標)またはCLEARCERAM(登録商標)などの他の誘電体、ガラス材料または半導体材料を、EUVマスク用の基板として使用することができる。EUVマスク200の基板210の裏側215または裏側表面215は、EUVマスク200の生成中およびその操作中にEUVフォトリソグラフィ装置内で基板210を保持する役目を果たすことがある。静電チャック(ESC)上に基板210を保持するための薄い導電層220が基板210の裏側215に適用されていることが好ましい。
【0092】
基板210の前面225は、例えばモリブデン(Mo)層230とシリコン(Si)層235の20~80対の互層を有する、堆積多層膜または堆積多層構造体270を含むことがある。この互層はMoSi層とも呼ばれる。モリブデンの代わりに、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、レニウム(Re)、ジルコニウム(Zn)またはイリジウム(Ir)などの高い質量数を有する他の元素からなる層をMoSi層に対して使用することもありうる。多層構造体270を保護するため、一番上のシリコン層235上に、例えば二酸化シリコンのキャッピング層240が適用されていることがある。同様に、キャッピング層240として、例えばルテニウム(Ru)などの他の材料も考えられる。
【0093】
キャッピング層240上に、構造化されたパターン要素PEが存在することがありうる。パターン要素PEはいくつかの層を含むことがある。例えば、パターン要素PEは、キャッピング層240の上に緩衝層245を含むことがある。さらに、パターン要素PEは、緩衝層245の上に吸収層250を含むことがある。さらに、パターン要素PEは、吸収層250の上に反射防止層255を含むことがある。パターン要素PEは、例えばEUVリソグラフィで使用される光放射(例えば13.5nmの波長を有する光放射)に対して不透明である(すなわち光に対して透過性でない、または高度に光吸収性である)ように設計されていることがある。ここで、パターン要素PEの全ての層が、この光放射に対して不透明であるように設計されていることがありうる。具体的には、吸収層250は、(EUV)光放射の吸収の主要な割合を有することがあり、緩衝層245および/または反射防止層255も吸収に寄与することがある。したがって、提供されたパターン要素PEによって、EUVマスク200は、吸収性領域280および反射性領域285を有する。
【0094】
緩衝層245に対する可能な材料は、石英(SiO2)、シリコン-酸素窒化物(SiON)、Ru、クロム(Cr)、酸化クロムおよび/または窒化クロム(CrN)を含むことがある。具体的には、EUVマスクの緩衝層245に対する材料として窒化クロムが好ましいことがある。吸収層250に対する可能な材料は、窒化クロム、クロム、酸化クロム、窒化チタン(TiN)および/または窒化タンタル(TaN)を含むことがある。具体的には、EUVマスクの吸収層250に対する材料として窒化クロムが好ましいことがある。反射防止層は、例えば酸窒化タンタル(TaON)および/または窒化クロムを含むことがある。
【0095】
修復の間に、パターン要素PEの失われた材料の代わりを補う必要があることがある。ここで、パターン要素PEの層の任意の材料を生成する必要があることがある。例えば、修復操作RVが、
図2のAによって概略的に示されている吸収層250の材料を生成することを含むことがある。例えば、部分的にのみ失われた吸収層250の修復が必要であることがある。ここで、(部分的に存在している)吸収層250上に修復材料を直接に生成することがある。この場合、生成された修復材料の境界層は、(例えば緩衝層245または基板に関してではなく)吸収層250に関して画定される。さらに、修復操作RVが、
図2のBによって概略的に示されている緩衝層245の材料を生成することを含むことがある。ここで、修復操作RVが、反射防止層255に対する材料および/またはキャッピング層240に対する材料を生成することも考えられる。さらに、パターン要素PEのさまざまな層のさまざまな材料を生成する組合せも考えられる(例えば、修復操作RVが、緩衝層245の材料およびさらに吸収層250の材料を生成することがある)。さらに、修復操作RVにおいて、例えば吸収層250の材料に対応する吸収体材料だけ、または吸収層250と同様の不透明特性を有する吸収体材料だけが生成されることもありうる。(透明)欠陥を修正するのに、緩衝材料245および/または反射防止層255の失われた断面の修正が必ず必要というわけではない。
【0096】
図3は、例示的な方法300の概略図を示している。方法300を使用して、パターン要素PEの失われた材料を生成することができる。本明細書に記載されているとおり、この方法を利用して、例えば透明欠陥を補修することができる。
【0097】
この方法は、第1のガスを供給すること310を含むことができる。第1のガスは、例えば、クロムを含むガス、好ましくはクロムヘキサカルボニルを含むことができる。
【0098】
さらに、方法300は、反転振動を実行することができる第2の分子を含む第2のガスを供給すること320を含むことができる。第2のガスは、例えばアンモニアを含むことができる。これは、アンモニアが反転振動を実行することができるためである。具体的には、第2のガスは、5sccm未満、好ましくは2sccm未満、より好ましくは0.5sccm未満のガス流量で供給することができる。
【0099】
方法300はさらに、第1のガスおよび第2のガスに少なくとも部分的に基づいて堆積材料を生成するために、作業領域に粒子ビームを供給すること330を含む。具体的には、生成することが、電子ビーム誘起堆積を含むことができ、この電子ビーム誘起堆積は、例えば(第1のガスとしての)クロムヘキサカルボニルおよび(第2のガスとしての)アンモニアを含むガス雰囲気で実行される。この方法はさらに、特定のパラメータ空間内で生成することを含むことができる。例えば、このパラメータ空間は、本明細書に記載されたガス流量の第2のガスを生成することを含むことができる。さらに、この方法に対する別のパラメータ空間が考えられ、それらは例えば、第1のガス、第2のガスおよび/もしくは粒子ビームまたはそれらのパラメータに関係することがある。例示的な方法300のいくつかのパラメータ空間は、生成された堆積材料の特に有利な特性を可能にした。特に、窒素を含む第2のガスが使用されるときには、(第1のガスだけを用いた堆積に比べて)高い堆積材料の窒化物含量を達成するために、明記されたパラメータ空間が有利であることがある。(第1のガスだけを用いた堆積に比べて)堆積材料の炭素含量を低減させることができる。
【0100】
図4aは、5つの試験構造体の上面の走査電子顕微鏡写真を示しており、これらの試験構造体の一部は、本発明による方法によって生成されたものである。ここで、5つの試験構造体S1、S2、S3、S4、S5は立方体構造体であり、試験構造体S2、S3、S4、S5は、本発明による方法の異なるパラメータ空間を用いて生成されたものである。全ての試験構造体S1~S5に共通することは、第1のガスとしてクロムヘキサカルボニルが供給されたこと、および堆積材料の生成が電子ビーム誘起堆積に基づくものであったことである。試験構造体S2~S5に共通することは、本発明による方法が、第2のガスとしてアンモニアを供給して実行されたことである。試験構造体S1は、参照構造体として生成されたものであり、試験構造体S1は、本発明による第2のガス(例えばアンモニア)の供給なしで(すなわち第1のガスだけが存在する条件で)生成されたものである。プロセスパラメータは以下に詳細に記載されている。
【0101】
試験構造体S1は、単にクロムヘキサカルボニルの供給および電子ビーム誘起堆積だけを用いて生成した。0.5マイクロ秒の比較的に短い電子ビームの滞在時間を選択した。試験構造体S2は、0.1sccmの第2のガス(この例ではアンモニア)のガス流量、および同じ電子ビームの滞在時間を用いて生成した。試験構造体S3は、0.25sccmの第2のガスのガス流量、およびやはり同じ電子ビームの滞在時間を用いて生成した。試験構造体S4は、0.25sccmの第2のガスのガス流量、および比較的に長い(S1の場合の10倍の)電子ビームの滞在時間を用いて生成した。試験構造体S5は、0.4sccmの第2のガスのガス流量、およびS1の場合と同じ電子ビームの滞在時間を用いて生成した。
【0102】
試験構造体S2~S5については、粒子ビーム誘起堆積における電子ビームの走査を、試験構造体S2~S5の高さ寸法が同じ程度(約50nm)になるように選択した。試験構造体S1の高さ寸法は約130nm程度であった。これは、参照構造体S1を生成する際の第2のガスの供給の欠如に起因すると考えることができた。さらに、試験構造体S1、S2、S3、S4、S5の処理では、試験構造体を幾何学的に画定するピクセルパターンを走査した。電子ビームは、それぞれの試験構造体のピクセルパターンの全てのピクセル上に少なくとも一度導いた。この走査は、部分層を生成するものとみなすことができ、反復走査によって試験構造体の高さが画定される。走査をループまたはサイクルと呼ぶことがある。試験構造体S1、S2、S3およびS5はそれぞれ、同様の回数のループを用いて生成した。試験構造体S4に対するループの回数は、滞在時間が長いため明確に少なかった。
【0103】
図4bは、
図4aの5つの試験構造体に対するオージェ電子分光法の結果を示す図である。したがって、このオージェ電子分光法(またはオージェ分光法)の結果は試験結果の相対的比較を可能にしうる。
図4bの縦軸は、モル割合を原子百分率で示している。
図4bの横軸は、オージェ分光法で評価した物質を示しており、全ての試験構造体S1、S2、S3、S4、S5の結果を物質ごとにまとめて示している。
図4bに示されている分析対象の物質は炭素Cおよび窒素Nである。酸素およびクロムも同様に分析したが
図4bには示されていない。
図4bから明らかなとおり、本発明による方法を使用したときには(すなわち試験構造体S2~S5については)、窒素含量が、参照構造体S1に比べて明確に高いことが明らかである。本発明による方法は、少なくとも10原子百分率の窒素含量を可能にすることができ、従来の方法による参照構造体S1の堆積材料では、あまり大きな窒素含量は検出できなかった。このことは、アンモニアを使用した本発明による方法によって、窒化クロムが、従来の方法に比べて優先的に生成されたことを示唆している。構造体S4およびS5については、>20原子百分率の窒素含量を達成することも可能であった。(クロムヘキサカルボニルおよびアンモニアを用いた)本発明による例示的な方法については、Cr(CO)
6+bNH
3→cCr
xO
yN
z+dCO+eH
2O+fCH
4+gCO
2+hN
2の基本的な化学反応が仮定される(対照的に、後続の不動態化については、この式が、Cr
xO
yC
z+dNH
3→Cr
xO
y-aC
z-bN
c+eH
2O+fCO
2となると考えられる)。この正確な反応は、この方法のパラメータ空間の影響を受けうる。
【0104】
さらに、本発明による方法を使用したときには(すなわち試験構造体S2~S5については)、参照構造体S1に比べて、炭素含量がかなり低く抑えられていることが明らかである。ここで、本発明による方法によって、炭素含量が40原子百分率未満、好ましくは30原子百分率未満、より好ましくは20原子百分率未満になることがあることを示すことが可能である。したがって、本発明による方法は、(第2のガスを供給しない堆積に比べて)25パーセント、好ましくは40パーセント、より好ましくは60パーセントの炭素含量の明確な低減を達成した。このことに対する説明は、反転分子としてアンモニアを使用するとその結果として有利な効果が得られ、この効果は、適当なパラメータ空間によって強化されうるというものである可能性がある。クロムヘキサカルボニルを用いたクロムの電子ビーム誘起堆積の場合には、表面にCO分子が残ることがある。例えば反転分子としてのNH3の特性によって保証することができる、気相中のNH3の高い供給は、NH3による表面からのCOの排除の確率を増大させうる。このことには、堆積材料に堆積する炭素がより少なくなるという効果がありうる。これらの2つの効果(すなわち、窒化クロムの優先的生成または高い窒素含量と、堆積材料中の炭素含量の低減)は、本明細書に明記された影響により耐えることができる、マスク修復における最適化された修復材料を可能にしうる。さらに、窒素含量は、第2のガスのガス流量の増大とともに増大するという明らかな傾向がある。試験構造体S5の場合のアンモニアのガス流量が比較的に高い(0.4sccm)ケースでは、窒素含量が比較的に軽微に低減しているため、第2のガスの有利なガス流量は0.25sccmであると結論することが可能である。
【0105】
本明細書で述べたとおり、
図4bに、分析したクロム含量は示されていない。試験構造体S1、S2、S3、S4、S5のクロム含量は、あまり大きな差または変動を示さず、約15~25原子%の範囲にあると測定された。したがって、本発明による方法は、クロム含量にあまり影響を与えないことが示された。本発明による方法によって、より高いクロム含量(例えば少なくとも25原子%、少なくとも30原子%、少なくとも35原子%のクロム含量)も検出可能であったことに留意すべきである。堆積材料のクロム含量がさらに少なくとも50原子%、少なくとも70原子%または少なくとも80原子%(または35原子%~99原子%の間)であることも考えられる。さらに、クロム含量を15原子%未満とすることができることも考えられる。さらに、試験構造体S2、S3、S4、S5では、(第2のガスの供給のない)参照構造体S1に比べて高い酸素含量も検出された。酸素含量は、例えば少なくとも1.5倍または少なくとも2倍に増大した。
【0106】
さらに、電子ビームの比較的に長い滞在時間(試験構造体S4の場合)は、電子ビームのより短い滞在時間(試験構造体S2、S3、S5の場合)に比べて、堆積材料の高い窒素含量を生み出しうることが示された。
【0107】
したがって、
図4の結果に関して、本発明による方法によって、生成された材料の少なくとも5原子%、好ましくは少なくとも10原子%、より好ましくは少なくとも20原子%の窒素含量を達成すること、またはそのような窒素含量を目指すことが可能である。本発明による方法によって、生成された材料の窒素含量を、(例えば第2のガスを供給しない)先行技術の方法による生成に比べて少なくとも2倍、3倍、4倍および/または10倍にすることもできる。
【0108】
アンモニアの低い双極子性は、二酸化窒素に比べて、基板表面でのアンモニアの吸収確率を低下させうる。その結果として、基板表面の上方の気相中のアンモニア分子の濃度を増大させることができる。これによって、窒素を含む所望の堆積材料が気相中に既に形成されている確率を増大させることができる。これは、おそらく、クロム原子上のCO配位子とNH3配位子との交換が既に気相中で起こっていることによると説明することができる。起こりうる1つの反応は、以下のとおりである:Cr(CO)6+nNH3→Cr(CO)6-n(NH3)n+nCO。ここでn=1~6である。
【0109】
追加の分析のために、別の2つの試験構造体E1およびE2を生成した。試験構造体E2は、本発明による方法のパラメータ空間を用いて生成した。試験構造体E1、E2は、20μm×20μmの長さおよび幅、ならびに10nm~20nmの高さを有するように生成した。これらの試験構造体をX線光電子分光法(略称:XPS)によって分析した。これによって、炭素C、酸素O、酸化物化合物中のクロムCr-Ox、金属クロムCr-Met、窒素N、全クロム含量Cr-sumを分析した。試験構造体E1は、クロムヘキサカルボニルを第1のガスとして供給すること、および(電子ビーム誘起堆積のプロセス温度で)反転振動を実行することができない二酸化窒素を第2のガスとして供給することを含む知られている方法により、参照構造体として生成した。試験構造体E1は、0.5sccmの第2のガス(すなわち二酸化窒素)のガス流量、および5マイクロ秒の電子ビームの滞在時間を用いて生成した。試験構造体E2は、第1のガスとしてクロムヘキサカルボニル、第2のガスとしてのアンモニアを使用して、電子ビーム誘起堆積によって生成した。試験構造体E2を生成するプロセスのパラメータ空間は以下のとおりとした:第2のガス(すなわちアンモニア)のガス流量0.25sccm、プロセス温度17℃、電子ビームの滞在時間5マイクロ秒、フレームリフレッシュ速度2500マイクロ秒。さらに、試験構造体E2を生成するプロセスは、0.3kV~1kVの間、例えば約0.6kV(kV:キロボルト)の電子ビームの加速電圧、および1pA~100pAの間、例えば約28pA(pA:ピコアンペア)の電子ビームの電流で実行した。試験構造体の高さが10nm~20nmの範囲となるようなやり方でピクセルパターンを走査した。プロセスガスの枯渇を最小化するため、10行ごとに逐次的にアドレスされる走査パターンを選択した。いくつかの例では、試験構造体E2を生成するために、第2のガス(例えばアンモニア)のガス流量を、0.1sccm~2sccmの間、0.1sccm~1sccmの間、および/または0.1sccm~0.5sccmの間とすることができる。プロセス温度は、第1のガスの(予め設定された)温度および第2のガスの(予め設定された)温度を含むことができる。いくつかの例では、試験構造体E2を生成するために、電子ビームの滞在時間が、0.1マイクロ秒~10マイクロ秒の間、0.3マイクロ秒~7マイクロ秒の間、および/または1マイクロ秒~6マイクロ秒の間の範囲を含むことができる。いくつかの例では、フレームリフレッシュ速度を、0.5ミリ秒~5ミリ秒の間、0.7ミリ秒~4ミリ秒の間、および/または1ミリ秒~3ミリ秒の間とすることができる。さらに、(第1および/または第2のガスの)プロセス温度を、0℃~60℃の範囲、または10℃~40℃の間、12℃~30℃の間および/もしくは12℃~20℃の間の範囲とすることも考えられる。
【0110】
この追加の分析で、試験構造体E2が、約23原子百分率(原子%)の窒素を含むことが分かった。したがって、本発明による方法のパラメータ空間によって、試験構造体E2の高い窒素含量を達成することが可能であることが示された。このことは、本発明によるこの方法が、堆積材料の高い窒化クロム含量を生み出すことを可能にすることも示唆している。窒化クロムは、攻撃的な化学的/物理的環境条件に対して抵抗性の材料となりうるため、この効果は特に、修復操作RVの文脈で有利なことがある。
【0111】
さらに、試験構造体E2の酸素含量は、参照構造体E1の酸素含量よりもかなり低かった。酸素含量の低減は、試験構造体E2中で見られた窒素含量におおよそ対応していた。したがって、酸素含量の低減は、この低減におおよそ対応して窒素含量を増大させうると結論することができる。
【0112】
参照構造体E1と比べた試験構造体E2の炭素含量の増大は最小限であり、両方の試験構造体で低水準(1桁のパーセントの範囲)であった。ここで、参照構造体E1の炭素含量(酸素含量)は、
図4bの参照構造体S1よりも低い(より高い)レベルを有していたということが分かっている。この点に関しては、参照構造体E1は、添加物ガスとしての二酸化窒素(および第1のガスとしてのクロムヘキサカルボニル)を用いた堆積法によって生成されたものであり、
図4bの参照構造体S1は、添加物ガスを用いない(したがって堆積ガスとしてのクロムヘキサカルボニルを排他的に用いた)堆積法によって生成されたものであることを述べておく。したがって、添加物ガスとして二酸化窒素ではなく反転分子(この場合にはアンモニア)を使用したときには、炭素含量の大きな変化は起こらない(また、本発明による方法によって炭素含量は依然として低いままでありうる)ことが示された。さらに、試験構造体E2の金属クロムの含量を、E1に比べて7倍に増大させることが可能であった。試験構造体E1の酸化物化合物中のクロムの割合は試験構造体E2よりもやや低かった。
【0113】
EUVリソグラフィ法に関しては酸化クロム含量の低減が有利なことがある。EUVリソグラフィ装置内で酸化クロム(例えばCr2O3)と水素の間で起こりうる可能な化学反応は例えば、クロムの部分的還元(Cr2O3+3H2→2Cr+3H2O)およびクロム原子の酸化状態の局所的変化を含む。例えば、酸化状態は、Cr(III)からCr(II)、Cr(I)および/またはCr(0)に変化しうる。同様に、酸化状態がCr(IV)からCr(III)、Cr(II)、Cr(I)および/またはCr(0)に変化しうることも考えられる。このクロム原子の酸化状態の局所的部分変化は、材料の化学的および物理的耐久性が低下するような態様で材料の不均質性を増大させうる。例えば、EUVリソグラフィ装置内の反応性水素種が、酸化クロムを含む材料から酸素を除去することも考えられ、このことは固体材料の欠陥を生じさせうる。これらの欠陥は、後続の洗浄プロセスにおいて材料の浸食(erosion)を加速しうる。したがって、本発明による方法による酸化クロム含量の低減は、上述の効果を最小化しうる。本発明による方法によって生じうる高い窒化クロム含量が、特定の酸化クロム含量に関連した上述の効果をさらに最小化することも考えられる。
【0114】
要約すると、本発明による方法によって生成された修復材料は、EUVマスクの修復において、(例えば本明細書で述べた)処理の間にEUVマスクが受ける可能性がある影響に関して、より安定であることまたはより抵抗性であることがある。
【0115】
窒化クロムを含む生成された堆積金属の試験結果は、化学的/物理的な外部影響に対する材料の耐久性、抵抗性および安定性が、従来の方法で生成した材料に比べて増大することを示唆している。方法300(または第1および/もしくは第2の態様による方法)によるEUVマスクの修復の場合には、修復したEUVマスクをリソグラフィ法に使用する場合に、これが特に有利なことがある。例えば、これは、修復した部位の光学特性が、限界寸法CDに関する必要な仕様をその部位がもはや満たさない程度に変化するまでに、修復したリソグラフィマスクが経ることができる、(リソグラフィ法の)DUVおよび/またはEUV露光サイクルの回数を増やすことを可能にすることがある。さらに、これは、下流プロセス、例えばマスク洗浄操作による損傷の低減につながりうる。具体的には、以下のステップのうちの少なくとも1つを含む洗浄プロセスに対する安定性が存在することがある:汚染の除去、炭素を含む汚染の除去、粒子の除去、酸化剤の使用、酸の使用、酸化性酸の使用、酸および酸化剤の使用、pH<7の洗浄液の使用、H2SO4(および例えばH2O2)の使用、UV光の使用、洗浄化学物質と反応し、それらを活性化しうる光の使用、プラズマの使用、酸素プラズマの使用、塩基性溶液の使用、pH<7の溶液の使用、NH3を含む溶液の使用。さらに、本発明による(第1および/または第2の態様の)方法は、(修復した部位の)堆積物の浸食または劣化の低減を可能にしうる。この劣化は特に、以下のうちの少なくとも1つを含むことがある:大域的累進的浸食、(漸進的)リーフィング、局所浸食、堆積物の大きな面積の同時損失、所望の光学特性の喪失。
【0116】
さらに、本発明による第1および/または第2の態様の方法に対して以下の作業例が可能である。例えば、第2のガスが、以下のうちの少なくとも1つを含むことが考えられる:還元性の添加物前駆体、水素を含む添加物前駆体、少なくとも1つの窒素原子および少なくとも1つの水素原子を含む添加物前駆体。別の例では、本発明に従って生成された堆積材料およびさらに(不動態化された)表面材料を、(例えば別個の処理操作における)電子ビーム衝撃によって圧密することまたは安定化することができることが考えられる。
【0117】
いくつかの例では、0.1~2kV、または0.2~1.5kV、または0.3~1kVの電子ビームの加速電圧を使用することができる。それぞれの場合に、28pAの電子ビーム電流を使用することが可能である。あるいは、他の範囲内の電流、例えば1~100pA、5~80pAまたは10~60pAの電流も考えられる。
【0118】
図5は、本発明による例示的な装置500の概略断面図を示している。装置500は、方法300または本発明の第1および/もしくは第2の態様の方法を実行することができるように構成されたものとすることができる。一例では、
図5の装置500が、リソグラフィマスクを修復または処理するためのマスク修復装置を含む。装置500を使用して、マスク欠陥の位置を検出すること、およびマスク欠陥を修復または補修することができる。装置500は、米国特許出願公開第2020/103751号に記載された装置などの部分を備えることができる(この文献の対応する
図3Aを参照されたい)。
【0119】
図5の例示的な装置500は例えば、粒子ビームを供給するための走査電子顕微鏡(SEM)501を備えることができ、この例ではこの粒子ビームが電子ビーム509である。電子銃506が電子ビーム509を発生させることができ、ビーム成形要素508および512によって、電子ビーム509を、焦束電子ビーム510として、試料ステージ504(またはチャック)上に配置されたリソグラフィマスク502上に導くことができる。さらに、この走査電子顕微鏡を使用して、電子ビームのパラメータ/特性(例えば加速電圧、滞在時間、電流、集束、スポットサイズなど)を制御することができる。電子ビームのパラメータは、例えば本明細書に記載された方法のパラメータ空間に関して調整することができる。電子ビーム509は、リソグラフィマスク502の作業領域において局所的な化学反応を開始するためのエネルギー源の役目を果たすことができる。電子ビーム509を例えば、本明細書に記載された方法のために(例えば第1の態様の電子ビーム誘起堆積、第2の態様の電子ビーム支援不動態化を実施するために)利用することができる。さらに、電子ビーム509を、リソグラフィマスク502を結像する(image)ために利用することもできる。装置500は、電子を検出するための検出器514を備えることができる。
【0120】
本明細書に明記された対応する方法を実行するために、
図5の例示的な装置500は、少なくとも2種類の異なる処理ガスまたは前駆体ガス用の少なくとも2つのリザーバ容器を含むことができる。第1のリザーバ容器G1は第1のガスを貯蔵することができる。第2のリザーバ容器G2は、反転振動を実行することができる分子を含む第2のガスを貯蔵することができる。第2のガスを添加物ガスとみなすこともできる。さらに、例示的な装置500では、それぞれのリザーバ容器G1、G2が、それ自体のガス入り口システム532、547を有し、ガス入り口システム532、547は、リソグラフィマスク502上の電子ビーム510の入射点に近い端部にノズルを備えることができる。単位時間当たりに供給する対応するガスの量、すなわち対応するガスのガス流量を制御するために、それぞれのリザーバ容器G1、G2が、それ自体の制御バルブ546、531を有することが可能である。この制御は、電子ビーム510の入射点においてガス流量が制御されるようなやり方で実行することができる。さらに、一例では、装置500が、第1および/または第2の態様のプロセスに1種または数種の(添加物)ガスとして添加することができる追加のガス(例えば本明細書に記載された酸化剤、還元剤、ハロゲン化物)用の別のリザーバ容器を含むことができる。
図5の装置500は、プロセスチャンバ585内で必要な圧力を発生させ、維持するためのポンプシステム522を含むことができる。
【0121】
装置500はさらに、例えばコンピュータシステム520の部分とすることができる制御ユニット518を備えることができる。一例では、コンピュータシステム520および/または制御ユニット518が本明細書に開示された方法のプロセスパラメータを制御するように、装置500を構成することができる。この構成は、本明細書に明記された本発明による方法の制御されたまたは自動化された実施、例えば手動介入のない実施を可能にすることができる。装置500のこの構成は例えば、本発明によるコンピュータプログラムによって本明細書に記載されたとおりに達成することまたは可能にすることができる。
【0122】
さらに、以下のうちの少なくとも1つを第1のガスとして(例えば堆積ガスとして)本発明に含めることができる:(金属、遷移元素、主族)アルキル、例えばシクロペンタジエニル(Cp)またはメチルシクロペンタジエニル(MeCp)トリメチル白金(CpPtMe3またはMeCpPtMe3)、テトラメチルスズSnMe4、トリメチルガリウムGaMe3、フェロセンCp2Fe、ビスアリールクロムAr2Cr、およびこの種の他の化合物。さらに、以下のうちの少なくとも1つを第1のガスとして本発明に含めることができる:(金属、遷移元素、主族)カルボニル、例えばクロムヘキサカルボニルCr(CO)6、モリブデンヘキサカルボニルMo(CO)6、タングステンカルボニルW(CO)6、ジコバルトオクタカルボニルCo2(CO)8、トリルテニウムドデカカルボニルRu3(CO)12、鉄五カルボニルFe(CO)5、およびこの種の他の化合物。さらに、以下のうちの1つを第1のガスとして本発明に含めることができる:(金属、遷移元素、主族)アルコキシド、例えばテトラエトキシシランSi(OC2H5)4、テトライソプロポキシチタンTi(OC3H7)4、およびこの種の他の化合物。
【0123】
さらに、以下のうちの少なくとも1つを第1のガスとして本発明に含めることができる:(金属、遷移元素、主族)ハロゲン化物、例えばWF6、WCl6、TiCl6、BCl3、SiCl4、およびこの種の他の化合物。さらに、以下のうちの少なくとも1つを第1のガスとして本発明に含めることができる:(金属、遷移元素、主族)錯体、例えば銅ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナート)Cu(C5F6HO2)2、ジメチル金トリフルオロアセチルアセトナートMe2Au(C5F3H4O2)、およびこの種の他の化合物。さらに、以下のうちの1つを第1のガスとして本発明に含めることができる:有機化合物、例えばCO、CO2、脂肪族または芳香族炭化水素、真空ポンプ油の成分、揮発性有機化合物、および別のこのような化合物。
【符号の説明】
【0124】
1000 EUVマスクの詳細
1010 透明欠陥
1020 修復材料
D 欠陥のある局所状態
R 修復された局所状態
PE パターン要素
RV 修復手順
200 反射型リソグラフィマスク(EUVマスク)
210 基板
215 基板の裏側
220 薄い導電層
225 基板の前面
230 モリブデン(Mo)層
235 シリコン(Si)層
240 キャッピング層
245 緩衝層
250 吸収層
255 反射防止層
270 堆積多層構造体
280 吸収性領域
285 反射性領域
S1 試験構造体
S2 試験構造体
S3 試験構造体
S4 試験構造体
S5 試験構造体
500 装置
501 走査電子顕微鏡
502 リソグラフィマスク
504 試料ステージ
506 電子銃
508 ビーム成形要素
509 電子ビーム
510 焦束電子ビーム
512 ビーム成形要素
514 検出器
518 制御ユニット
520 コンピュータシステム
522 ポンプシステム
531 制御バルブ
532 ガス入り口システム
546 制御バルブ
547 ガス入り口システム
585 プロセスチャンバ
G1 第1のリザーバ容器
G2 第2のリザーバ容器
【手続補正書】
【提出日】2023-07-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィ用の物体を処理する方法であって、
第1のガスを供給することと、
反転振動を行うことができる第2の分子を含む第2のガスを供給することと、
前記第1のガスおよび前記第2のガスに少なくとも部分的に基づいて、前記物体の作業領域に堆積材料を生成するために、前記作業領域に粒子ビームを供給することと、
を含み、前記第2のガスが、5sccm未満、好ましくは2sccm未満、より好ましくは0.5sccm未満のガス流量で供給される、
方法。
【請求項2】
前記第2のガスが、0.01sccm未満、好ましくは0.05sccm未満、より好ましくは0.1sccm未満のガス流量で供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粒子ビームが、0.1マイクロ秒~10マイクロ秒、好ましくは0.3マイクロ秒~7マイクロ秒の前記粒子ビームの滞在時間で供給される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記堆積材料が前記粒子ビームの影響なしで気相中で少なくとも部分的に形成するように、前記第1のガスおよび/または前記第2のガスが供給される、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記第1のガスが、カルボニル化合物を含む第1の分子を含む、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第1の分子が金属カルボニルを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記金属カルボニルがクロムカルボニルを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記堆積材料が窒化クロムを含む、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記窒化クロムが、少なくとも10原子百分率の窒素、好ましくは少なくとも15原子百分率の窒素、より好ましくは少なくとも20原子百分率の窒素を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記物体の欠陥が補修されるように前記堆積材料が生成される、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記欠陥が透明欠陥を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
リソグラフィ用の物体の表面材料を処理する方法であって、
反転振動を行うことができる第2の分子を含む第2のガスを供給することと、
前記第2のガスに少なくとも部分的に基づいて前記物体の作業領域内の前記表面材料を不動態化するために、前記作業領域に粒子ビームを供給することと、
を含む方法。
【請求項13】
前記表面材料の不動態化の前に、第1のガスおよび前記粒子ビームを供給することに少なくとも部分的に基づいて、前記作業領域に前記表面材料を生成することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記不動態化が、前記表面材料上に不動態化層を生成することを含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記反転振動が、前記第2の分子のピラミッド反転を含む、請求項1、請求項2、請求項12、または請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の分子が三角錐形構造を含む、請求項1、請求項2、請求項12、または請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の分子が、化合物中に窒素および水素を含む、請求項1、請求項2、請求項12、または請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の分子がアンモニアNH3を含む、請求項1、請求項2、請求項12、または請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の分子がH2N-NH2を含む、請求項1、請求項2、請求項12、または請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の分子が、化合物中に窒素およびハロゲンを含む、請求項1、請求項2、請求項12、または請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記第2の分子が、以下の分子:NF3、NCl3、NI3、NBr3のうちの少なくとも1つを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の分子が、化合物中に窒素、水素およびハロゲンを含む、請求項1、請求項2、請求項12、または請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の分子が、以下の分子:NH2X(Xはハロゲンを含む)、NHX2(Xはハロゲンを含む)のうちの少なくとも1つを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記作業領域において、前記第2の分子が、NO2分子よりも低い吸収確率を有する、請求項1、請求項2、請求項12、または請求項13に記載の方法。
【請求項25】
前記粒子ビームが電子ビームを含む、請求項1、請求項2、請求項12、または請求項13に記載の方法。
【請求項26】
リソグラフィ用の物体を処理するための装置であって、
第1のガスを供給する手段と、
反転振動を行うことができる第2の分子を含む第2のガスを供給する手段と、
粒子ビームを供給する手段と
を備え、
前記装置が、請求項1、請求項2、請求項12、または請求項13に記載の方法を実行するように構成されている、
装置。
【請求項27】
リソグラフィ用の物体であって、前記物体が、請求項1、請求項2、請求項12、または請求項13の方法によって処理されたものである、リソグラフィ用の物体。
【請求項28】
半導体ベースのウエハのリソグラフィ処理の方法であって、リソグラフィ用の物体に関連したパターンを前記ウエハにリソグラフィ転写することを含み、前記物体が、請求項1、請求項2、請求項12、または請求項13の方法によって処理されたものである、方法。
【請求項29】
命令を含むコンピュータプログラムであって、コンピュータシステムによって前記命令が実行されたときに、前記命令が、請求項1、請求項2、請求項12、または請求項13に記載の方法を前記コンピュータシステムに実行させる、コンピュータプログラム。
【外国語明細書】