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特開2023-127664液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127664
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
B41J2/14 603
B41J2/14 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031488
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】秋山 浩樹
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF42
2C057AG30
2C057AG33
2C057AG68
2C057AN01
2C057BA04
2C057BA14
2C057DB03
(57)【要約】
【課題】複数のノズルからの液体吐出により共通液室が共振することに起因した不具合を抑制する。
【解決手段】液体を吐出する複数のノズル31と、前記複数のノズルにそれぞれ連通する複数の個別液室22と、前記複数の個別液室の壁部を構成する振動板と、前記振動板を駆動するアクチュエータ素子と、前記複数の個別液室に液体を供給する共通液室12とを有する液体吐出ヘッド434であって、前記複数のノズルから液体を吐出したときに生じる該共通液室の共振を抑制するための共振抑制部14を有する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数のノズルと、
前記複数のノズルにそれぞれ連通する複数の個別液室と、
前記複数の個別液室の壁部を構成する振動板と、
前記振動板を駆動するアクチュエータ素子と、
前記複数の個別液室に液体を供給する共通液室とを有する液体吐出ヘッドであって、
前記複数のノズルから液体を吐出したときに生じる該共通液室の共振を抑制するための共振抑制部を有することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記共振抑制部は、前記共通液室内の液体に流体抵抗を与える流体抵抗部によって構成されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項3】
請求項2に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記流体抵抗部は、前記共通液室の複数箇所に配置されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記流体抵抗部は、前記共通液室を形成する隔壁部の形状により該共通液室の断面積を狭くしたものであることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記流体抵抗部は、前記共通液室を形成する隔壁部に別部材を設けることにより該共通液室の断面積を狭くしたものであることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記流体抵抗部は、前記共通液室の高さ方向を狭くしたものであることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項7】
ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、及び、主走査移動機構の少なくとも一つと、液体吐出ヘッドとを備えた液体吐出ユニットにおいて、
前記液体吐出ヘッドとして、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドを用いることを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項8】
液体を吐出する装置において、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド、又は、請求項7に記載の液体吐出ユニットを有することを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のノズルと、複数のノズルにそれぞれ連通する複数の個別液室と、複数の個別液室の壁部を構成する振動板と、振動板を駆動するアクチュエータ素子と、複数の個別液室に液体を供給する共通液室とを有する液体吐出ヘッドが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、隣接するノズル同士の不所望な流体的相互作用(クロストーク)の影響を低減するように、隣り合う2つのノズルの各個別液室につながっている共通液室に、インクに対する流体抵抗を与える抵抗体(流体抵抗部)を配置したインクジェット記録ヘッド(液体吐出ヘッド)が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の液体吐出ヘッドでは、複数のノズルからの液体吐出により共通液室が共振してノズルから吐出される液体の吐出速度が低下するなどの不具合を抑制することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、液体を吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルにそれぞれ連通する複数の個別液室と、前記複数の個別液室の壁部を構成する振動板と、前記振動板を駆動するアクチュエータ素子と、前記複数の個別液室に液体を供給する共通液室とを有する液体吐出ヘッドであって、前記複数のノズルから液体を吐出したときに生じる該共通液室の共振を抑制するための共振抑制部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
以上、本発明によれば、複数のノズルからの液体吐出により共通液室が共振することに起因した不具合を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る液体吐出ヘッドをノズル配列方向と直交する面で切断した断面図。
図2】同液体吐出ヘッドをノズル配列方向に沿って切断した断面図。
図3】同液体吐出ヘッドのノズル面に平行な面に沿って切断した断面図。
図4】実施形態に係るインク循環システムに関するブロック図。
図5】同液体吐出ヘッドの外観斜視説明図。
図6】従来例の液体吐出ヘッドを模式的に示す、ノズル面側から見たときの説明図。実施形態の接合工程における接合前の各構成部材を示す模式図。
図7】実施形態における液体吐出ヘッドを模式的に示す、ノズル面側から見たときの説明図。
図8】一変形例における液体吐出ヘッドを模式的に示す、ノズル面側から見たときの説明図。
図9】他の変形例における液体吐出ヘッドを模式的に示す、ノズル面側から見たときの説明図。
図10】更に他の変形例における液体吐出ヘッドを模式的に示す、ノズル面側から見たときの説明図。
図11】液体を吐出する装置の一例の要部平面説明図。
図12】液体を吐出する装置の要部側面説明図。
図13】液体吐出ユニットの他例の要部平面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る液体吐出ヘッドの一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る個別循環型の液体吐出ヘッド434をノズル配列方向と直交する面で切断した断面図である。
図2は、液体吐出ヘッド434をノズル配列方向に沿って切断した断面図である。
図3は、液体吐出ヘッド434のノズル面に平行な面に沿って切断した断面図である。
【0009】
本実施形態に係る液体吐出ヘッド434は、主に、フレーム1と、流路板2と、ノズル板3と、ベース4と、積層圧電素子5と、振動板6とから構成されている。
【0010】
フレーム1は、インク供給口11(図3参照)、共通液室12となる彫り込みが形成された構成部材(隔壁部材)である。流路板2は、個別液室である圧力発生室22となる彫り込みと、ノズル31に連通する連通管部23とが形成された構成部材である。ノズル板3は、ノズル31が形成された構成部材である。ベース4は、アクチュエータ素子としての圧力発生素子である積層圧電素子5を支持する構成部材である。振動板6は、島状凸部61、ダイヤフラム部62及びインク流入口63を有する構成部材である。
【0011】
流路板2は、ノズル31に通じる圧力発生室22、各圧力発生室22に通じる個別流体抵抗部21、個別流体抵抗部21に通じる導入部20が形成されている。流路板2は、ノズル板3側から複数枚(ここでは3枚)の板状部材2A,2B,2Cを積層接合して形成され、これらの板状部材2A,2B,2Cと振動板6とを積層接合して流路部材8が構成されている。
【0012】
ノズル板3は、金属材料、例えば電鋳工法によるNiメッキ膜等で形成したもので、インク滴を飛翔させるための微細な吐出口であるノズル31を多数形成している。このノズル31の内部形状(内側形状)は、ホーン形状(略円柱形状又は略円錘台形状でもよい。)に形成している。また、このノズル31の径はインク滴出口側の直径で約20[μm]~35[μm]である。また各列のノズルピッチは150[dpi]とした。
【0013】
このノズル板3のインク吐出面(ノズル表面側)は、撥水性の表面処理を施した撥水処理層32を設けている。例えば、PTFE-Ni共析メッキやフッ素樹脂の電着塗装、蒸発性のあるフッ素樹脂(例えばフッ化ピッチなど)を蒸着コートしたもの、シリコン系樹脂・フッ素系樹脂の溶剤塗布後の焼き付け等、インク物性に応じて選定した撥水処理層32を設けている。これにより、インクの滴形状、飛翔特性を安定化し、高品位の画像品質を得られるようにしている。インク供給口11と共通液室12となる彫り込みを形成するフレーム1は樹脂成形で作製している。
【0014】
ベース4は、積層圧電素子5を支持する基材であり、例えばSUSによって形成されている。
【0015】
積層圧電素子5は、厚さ10[μm]~50[μm]/1層のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の圧電層と、厚さ数[μm/1層]の銀・パラジューム(AgPd)からなる内部電極層とを交互に積層した積層構造をもつ。内部電極層は両端で外部電極に接続される。積層圧電素子5は、ハーフカットのダイシング加工により櫛歯状に分割され、1つ毎に駆動部56と支持部57(非駆動部)として使用される。外部電極の外側はハーフカットのダイシング加工で分割されるように、切り欠き等の加工により長さを制限しており、これらは複数の個別電極54となる。他方はダイシング加工では分割されずに導通しており共通電極55となる。
【0016】
駆動部56の個別電極54には、FPC(フレキシブルプリント回路)13が半田接合されている。また、共通電極55は積層圧電素子5の端部に電極層を設けて回し込んでFPC13のグランド電極に接合している。FPC13には、ヘッド制御部であるヘッドドライバが実装されており、これにより駆動部56への駆動電圧印加を制御している。
【0017】
振動板6は、電鋳工法によるNiメッキ膜を2層重ねて形成したものである。振動板6には、薄膜のダイヤフラム部62と、これの中央部に形成した駆動部56である積層圧電素子5に接合される島状凸部61と、フレーム1に接合される梁を含む厚膜部と、インク流入口63となる開口とが形成されている。ダイヤフラム部62の厚さは3[μm]、幅は35[μm](片側)である。振動板6の島状凸部61と積層圧電素子5の可動部(駆動部)56との接合や、振動板6とフレーム1との接合については、ギャップ材を含んだ接着剤からなる接着層7をパターニングして接着により接合している。
【0018】
このように構成した液体吐出ヘッド434においては、画像記録信号に応じて、駆動パルスで構成される駆動波形(10[V]~50[V]のパルス電圧)が駆動部56に印加される。これによって、駆動部56に積層方向の変位が生起し、振動板6を介して圧力発生室22が加圧されて圧力が上昇し、ノズル31からインク滴が吐出される。その後、インク滴吐出の終了に伴い、圧力発生室22内のインク圧力が低減し、インクの流れの慣性と駆動電圧(駆動パルス)の放電過程によって圧力発生室22内に負圧が発生してインク充填工程へ移行する。このとき、インクタンクから供給されたインクは共通液室12に流入し、共通液室12からインク流入口63を経て個別流体抵抗部21を通り、圧力発生室22内に充填される。
【0019】
個別流体抵抗部21は、吐出後の残留圧力振動の減衰に効果がある反面、最充填(リフィル)に対して抵抗になる。個別流体抵抗部21を適宜に選択することで、残留圧力の減衰とリフィル時間のバランスが取れ、次のインク滴吐出動作に移行するまでの時間(駆動周期)を短くできる。
【0020】
次に、本実施形態に係る液体吐出ヘッド434を用いたインク循環システムの一例を、図4を用いて説明する。
図4は、本実施形態に係るインク循環システムに関するブロック図である。
図4に示すように、インク循環システムは、メインタンク410、液体吐出ヘッド434、ヘッドタンク435、供給側ポンプ438a、循環側ポンプ438b、送液ポンプ438c、供給側圧力センサ439a及び循環側圧力センサ439bなどで構成されている。
【0021】
供給側圧力センサ439aは、供給側ポンプ438aと液体吐出ヘッド434との間であって、液体吐出ヘッド434の後述する供給ポート71(図1参照)に繋がった供給流路側に接続されている。循環側圧力センサ439bは、液体吐出ヘッド434と循環側ポンプ438bとの間であって、液体吐出ヘッド434の後述する循環ポート72(図1参照)に繋がった循環流路側に接続されている。そして、供給側圧力センサ439aで正圧、循環側圧力センサ439bで負圧が検知されるように、供給側ポンプ438a及び循環側ポンプ438bでインクを流す。これにより、ヘッドタンク435から供給ポート71を通って液体吐出ヘッド434内に流入し、循環ポート72から排出されてヘッドタンク435に戻るように、インクが循環する。
【0022】
また、供給側圧力センサ439aが一定正圧、循環側圧力センサ439bが一定負圧となるように、供給側ポンプ438a及び循環側ポンプ438bを常に制御し続ける。これにより、液体吐出ヘッド434内を通ってインクを循環させつつ、メニスカスの負圧を一定に保つことができる。また、液体吐出ヘッド434のノズルから液滴を吐出すると、ヘッドタンク435内のインク量が減少していくため、適宜メインタンク410から送液ポンプ438cを用いて、メインタンク410からヘッドタンク435にインクを補充することが望ましい。メインタンク410からヘッドタンク435へのインク補充のタイミングは、ヘッドタンク435内のインクの液面高さが所定高さよりも下がったらインク補充を行うなど、ヘッドタンク435内に設けた液面センサなどの検知結果によって制御することができる。
【0023】
本実施形態においては、共通液室12から、導入部20、個別流体抵抗部21、圧力発生室22、連通管部23、循環抵抗部42を経由し、共通の循環流路41へとつながる循環流路となる。循環流路の途中において、連通管部23の先にノズル31が配されている。共通液室12はフレーム1に形成されており、導入部20から循環流路41までの流路は流路板2に形成されている。
【0024】
図5は、本実施形態に係る液体吐出ヘッド434の外観斜視説明図である。
フレーム1の供給ポート71は、共通液室12のノズル配列方向中央に配置され、共通液室12につながっている。フレーム1の循環ポート72は、流路板2内の循環液室43につながっている。供給ポート71をノズル配列方向で共通液室12の中央に配置することにより、供給ポート71から各循環ポート72までの液体の流路の長さを、どの圧力発生室22でも同じにすることができる。このように前記流路の長さを同じにすることで、共通液室12で発生する圧力損失と、循環液室43で発生する圧力損失との和を、どの圧力発生室22を通る経路でも同じにすることができる。そして、前記圧力損失の和が同一となることで、圧力損失による特性差をなくすことができるようになる。
【0025】
なお、一般に、プリンタ、ファックス、複写機、プロッタ、或いはこれらの内の複数の機能を複合した画像形成装置としては、例えばインクの液滴(以下、インク滴という)を吐出する液体吐出ヘッドを備えたインクジェット記録装置がある。インクジェット記録装置では、媒体である用紙を搬送しながら液体吐出ヘッドによりインク滴を用紙に付着させて画像形成を行う。ここでの媒体は「用紙」ともいうが材質を限定するものではなく、被記録媒体、記録媒体、転写材、記録紙なども同義で使用する。また、画像形成装置は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液滴を吐出して画像形成を行う装置を意味する。そして、画像形成とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与する(単に液滴を吐出する)ことをも意味する。また、インクとは、所謂インクに限るものではなく、吐出されるときに液滴となるものであれば特に限定されるものではなく、例えばDNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる液体の総称として用いる。
【0026】
図6は、従来例の液体吐出ヘッド434'を模式的に示す、ノズル面側から見たときの説明図である。
図6に示す従来例の液体吐出ヘッド434'の共通液室12には、流体抵抗部が設けられていない。詳しくは、特定の周波数帯(特に低周波数帯域)で複数のノズル31(より多くのノズル、例えば全ノズル)からインクを吐出したときに共通液室12の共振が発生してインク吐出速度が許容値以下まで低下するという不具合を抑制できるような流体抵抗部は設けられていない。共通液室12の共振は、特定の低周波数帯域で全ノズル31からインクを吐出したときの各振動が振動板6を経由して共通液室12へ伝播することで発生する。
【0027】
図7は、本実施形態における液体吐出ヘッド434を模式的に示す、ノズル面側から見たときの説明図である。
本実施形態の液体吐出ヘッド434には、複数のノズル31からインクを吐出したときに生じる共通液室12の共振を抑制するための共振抑制部が設けられている。本実施形態の共振抑制部は、共通液室12内のインクに流体抵抗を与える流体抵抗部14によって構成される。この流体抵抗部14は、流体抵抗部14が形成されていない従来例の液体吐出ヘッド434において特定の低周波数帯域で全ノズル31からインクを吐出したときに発生する共通液室12の共振が抑制されるように、インクに与える流体抵抗の大きさ、共通液室12内の配置位置などが決まる。
【0028】
このような流体抵抗部14が共通液室12内に設けられることで、共通液室12の共振が抑えられ、共通液室の共振に起因して発生するインク吐出速度の低下等の不具合を抑制することができる。すなわち、本実施形態の流体抵抗部14によれば、クロストークを抑制するために共通液室内に設けられた従来の流体抵抗部では抑制できなかった上述の不具合を抑制することができる。
【0029】
流体抵抗部14は、例えば、共通液室12を形成するフレーム1とは別の部材を共通液室12の壁面に付着させて共通液室12の断面積を狭くしたものであってもよい。ただし、このように別の部材を付着させる構成では、共通液室の作製工程にて作成の難しさがあり、加工時間を大きく必要とする。
【0030】
一方、流体抵抗部14は、例えば、共通液室12を形成するフレーム1の彫り込み形状により共通液室12の断面積が狭くなるように形成することができる。この構成によれば、共通液室12の作製工程において流体抵抗部14も一緒に作製することが可能であり、共通液室の作製が容易で加工時間を削減できる。
【0031】
図7に示した例では、共通液室12の1箇所だけに流体抵抗部14が設けられた例であるが、図8に示すように、共通液室12の2箇所あるいは3箇所以上に、流体抵抗部14を設けてもよい。本液体吐出ヘッド434の共通液室12に発生する共振によっては、共通液室12の複数箇所に流体抵抗部14を設けた方が、共通液室12の共振抑制効果が高い場合がある。
【0032】
また、図7及び図8に示した例では、共通液室12の幅方向を狭くして共通液室12の断面積を狭くしたものであるが、図9及び図10に示すように、共通液室12の高さ方向を狭くして共通液室12の断面積を狭くしたものであってもよい。
【0033】
次に、各実施形態に係る液体吐出ヘッド434,504を適用可能な液体を吐出する装置の一例を、液体吐出ヘッド504を適用した場合について図11及び図12を参照して説明する。
図11は本実施形態に係る液体を吐出する装置の要部平面説明図であり、図12は本実施形態に係る液体を吐出する装置の要部側面説明図である。
【0034】
この液体を吐出する装置は、シリアル型装置であり、主走査移動機構593によって、キャリッジ503は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構593は、ガイド部材501、主走査モータ505、及び、タイミングベルト508等で構成されている。ガイド部材501は、装置長手方向両側に設けられた側板591A,591Bに架け渡されており、キャリッジ503を移動可能に保持している。キャリッジ503は、主走査モータ505によって、駆動プーリ506と従動プーリ507との間に架け渡したタイミングベルト508を介して装置長手方向である主走査方向に往復移動される。
【0035】
このキャリッジ503には、液体吐出ヘッド504を搭載した液体吐出ユニット540が設けられている。液体吐出ユニット540の液体吐出ヘッド504は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド504は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。液体吐出ヘッド504の外部に貯留されている液体を液体吐出ヘッド504に供給するための供給循環機構594により、液体が液体吐出ヘッド504内に供給及び循環される。
【0036】
なお、本実施形態において、供給循環機構594は、供給タンク531、循環タンク532、コンプレッサ533、真空ポンプ534、第一送液ポンプ535、第二送液ポンプ536、レギュレータ(R)539a,539b等で構成される。また、供給側圧力センサ537は、供給タンク531と液体吐出ヘッド504との間であって、液体吐出ヘッド504の供給ポート71に繋がった供給流路側に接続されている。循環側圧力センサ538は、液体吐出ヘッド504と循環タンク532との間であって、液体吐出ヘッド504の循環ポート72に繋がった循環流路側に接続されている。
【0037】
液体を吐出する装置は、用紙510を搬送するための搬送機構595を備えている。搬送機構595は、搬送手段である搬送ベルト512、搬送ベルト512を駆動するための副走査モータ516などで構成されている。搬送ベルト512は、用紙510を吸着して液体吐出ヘッド504に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト512は、無端状ベルトであり、搬送ローラ513とテンションローラ514との間に掛け渡されている。搬送ベルト512への用紙510の吸着は、静電吸着あるいはエアー吸引などで行うことができる。搬送ベルト512は、副走査モータ516によってタイミングベルト517及びタイミングプーリ518を介して搬送ローラ513が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0038】
キャリッジ503の主走査方向の一方側には、搬送ベルト512の側方に液体吐出ヘッド504の維持回復を行う維持回復機構520が配置されている。維持回復機構520は、例えば液体吐出ヘッド504のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材521や、ノズル面を払拭するワイパ部材522などで構成されている。
【0039】
主走査移動機構593、供給循環機構594、維持回復機構520、及び、搬送機構595は、側板591A,591B及び背板591Cなどで構成される筐体に取り付けられている。このように構成した、液体を吐出する装置においては、用紙510が搬送ベルト512上に給紙されて吸着され、搬送ベルト512の周回移動によって用紙510が副走査方向に搬送される。そして、キャリッジ503を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド504を駆動することにより、停止している用紙510に液体を吐出して画像を形成する。このように、液体を吐出する装置では、液体吐出ヘッド504を備えているので、高画質画像を安定して形成することができる。
【0040】
次に、液体吐出ユニット540の他例について図13を参照して説明する。
図13は同ユニットの要部平面説明図である。
この液体吐出ユニット540は、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板591A,591B及び背板591Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構593と、キャリッジ503と、液体吐出ヘッド504とで構成されている。なお、この液体吐出ユニット540の例えば側板591Bに、前述した維持回復機構520及び供給循環機構594の少なくともいずれかを更に取り付けた液体吐出ユニット540を構成することもできる。
【0041】
本実施形態において、「液体吐出ヘッド」とは、ノズルから液体を吐出・噴射する機能部品である。吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30[mPa・s]以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどである。これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0042】
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、供給循環機構、キャリッジ、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0043】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドと供給循環機構が一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドと供給循環機構が一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットの供給循環機構と液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ユニットとして、供給循環機構若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものとする。
【0044】
「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドまたは液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0045】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0046】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0047】
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30[mPa・s]以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどである。これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0048】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。また、「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で、用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置がある。また、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて、原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0049】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、液体(例えばインク)を吐出する複数のノズル31と、前記複数のノズルにそれぞれ連通する複数の個別液室(例えば圧力発生室22)と、前記複数の個別液室の壁部を構成する振動板6と、前記振動板を駆動するアクチュエータ素子(例えば積層圧電素子5)と、前記複数の個別液室に液体を供給する共通液室12とを有する液体吐出ヘッド434であって、前記複数のノズルから液体を吐出したときに生じる該共通液室の共振を抑制するための共振抑制部(例えば流体抵抗部14)を有することを特徴とするものである。
本発明者らは、複数のノズルから液体を吐出したとき、個別液室内の液体に生じる振動が液体を通じて共通液室内の液体に伝播することによって生じるクロストークが抑制できる構成であっても、ノズルから吐出される液体の吐出速度が低下するなどの不具合が発生することを見出した。これは、複数のノズルから液体を吐出したときに生じる各振動が、それぞれの個別液室の壁部を構成する振動板を通じて共通液室に伝播することで、共通液室が共振し、上述した不具合が発生するものと考えられる。
そこで、本態様では、複数のノズルから液体を吐出したときに生じる共通液室の共振を抑制するための共振抑制部を設けた。これにより、複数のノズルから液体を吐出したときの共通液室の共振が抑制され、クロストークを抑制するために共通液室内に設けられた従来の流体抵抗部では抑制できなかった、共通液室の共振に起因した不具合を抑制することができる。
【0050】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記共振抑制部は、前記共通液室内の液体に流体抵抗を与える流体抵抗部14によって構成されていることを特徴とするものである。
本態様によれば、共振抑制部として流体抵抗部を用い、複数のノズルから液体を吐出したときに生じる共通液室の共振を、当該流体抵抗部により共通液室内の液体に流体抵抗を与えることで抑制する。このような流体抵抗部は比較的簡易に作製することが可能であるため、低コストの液体吐出ヘッドを提供することが可能となる。
【0051】
[第3態様]
第3態様は、第2態様において、前記流体抵抗部は、前記共通液室の複数箇所に配置されていることを特徴とするものである。
共通液室に発生する共振の内容によっては、共通液室の複数箇所に流体抵抗部を設ける方が共通液室の共振抑制効果が高い場合がある。本態様によれば、このような場合に共通液室の共振を効果的に抑制することができる。
【0052】
[第4態様]
第4態様は、第2又は第3態様において、前記流体抵抗部は、前記共通液室を形成する隔壁部(例えばフレーム1)の形状により該共通液室の断面積を狭くしたものであることを特徴とするものである。
本態様によれば、共通液室の作製工程において流体抵抗部も一緒に作製することが可能となるので、低コストの液体吐出ヘッドを提供することが可能となる。
【0053】
[第5態様]
第5態様は、第2又は第3態様において、前記流体抵抗部は、前記共通液室を形成する隔壁部(例えばフレーム1)に別部材を設けることにより該共通液室の断面積を狭くしたものであることを特徴とするものである。
本態様によれば、共通液室の既存の作製工程に変更を加えることなく、流体抵抗部を設けることが可能となる。
【0054】
[第6態様]
第6態様は、第4又は第5態様において、前記流体抵抗部は、前記共通液室の高さ方向を狭くしたものであることを特徴とするものである。
共通液室に発生する共振の内容によっては、共通液室の高さ方向を狭くして流体抵抗を与える方が共通液室の共振抑制効果が高い場合がある。本態様によれば、このような場合に共通液室の共振を効果的に抑制することができる。
【0055】
[第7態様]
第7態様は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、及び、主走査移動機構態様の少なくとも一つと、液体吐出ヘッドとを備えた液体吐出ユニットにおいて、前記液体吐出ヘッドとして、第1乃至第6態様のいずれかの液体吐出ヘッドを用いることを特徴とするものである。
これによれば、液体吐出ユニットにおいて、液体吐出ヘッドの共通液室の共振に起因した不具合を抑制することができる。
【0056】
[第8態様]
第8態様は、液体を吐出する装置において、第1乃至第6態様のいずれかの液体吐出ヘッド、又は、第7態様の液体吐出ユニットを有することを特徴とするものである。
これによれば、液体を吐出する装置において、液体吐出ヘッドの共通液室の共振に起因した不具合を抑制することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 :フレーム
2 :流路板
3 :ノズル板
4 :ベース
5 :積層圧電素子
6 :振動板
7 :接着層
8 :流路部材
9 :アクチュエータ部材
11 :インク供給口
12 :共通液室
13 :FPC
14 :流体抵抗部
20 :導入部
21 :個別流体抵抗部
22 :圧力発生室
23 :連通管部
31 :ノズル
32 :撥水処理層
41 :循環流路
42 :循環抵抗部
43 :循環液室
54 :個別電極
55 :共通電極
56 :駆動部
57 :支持部
61 :島状凸部
62 :ダイヤフラム部
63 :インク流入口
71 :供給ポート
72 :循環ポート
101 :目盛り
101a :基準目盛り
102 :目盛り
102a :基準目盛り
103 :基準印
410 :メインタンク
434 :液体吐出ヘッド
435 :ヘッドタンク
438a :供給側ポンプ
438b :循環側ポンプ
438c :送液ポンプ
439a :供給側圧力センサ
439b :循環側圧力センサ
501 :ガイド部材
503 :キャリッジ
504 :液体吐出ヘッド
505 :主走査モータ
506 :駆動プーリ
507 :従動プーリ
508 :タイミングベルト
510 :用紙
512 :搬送ベルト
513 :搬送ローラ
514 :テンションローラ
516 :副走査モータ
517 :タイミングベルト
518 :タイミングプーリ
520 :維持回復機構
521 :キャップ部材
522 :ワイパ部材
531 :供給タンク
532 :循環タンク
533 :コンプレッサ
534 :真空ポンプ
535 :第一送液ポンプ
536 :第二送液ポンプ
537 :供給側圧力センサ
538 :循環側圧力センサ
540 :液体吐出ユニット
591A :側板
591B :側板
591C :背板
593 :主走査移動機構
594 :供給循環機構
595 :搬送機構
【先行技術文献】
【特許文献】
【0058】
【特許文献1】特開2009-132080号公報
図1
図2
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図4
図5
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図10
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