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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127745
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20230907BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20230907BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20230907BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
G03F7/027 514
G03F7/004 501
C08G73/10
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031619
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 幸子
(72)【発明者】
【氏名】石井 秀則
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 貴文
(72)【発明者】
【氏名】坂口 崇洋
(72)【発明者】
【氏名】荻野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】星野 有輝
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
4J043
【Fターム(参考)】
2H197AA01
2H197AA10
2H197CA05
2H197CA06
2H197CA08
2H197CE01
2H197HA03
2H225AC23
2H225AC66
2H225AC79
2H225AD06
2H225AN02P
2H225AN41P
2H225AN54P
2H225AN84P
2H225AN87P
2H225BA02P
2H225BA05P
2H225CA12
2H225CC01
2H225CC13
4J043PC085
4J043PC086
4J043QB31
4J043RA34
4J043SA06
4J043SA49
4J043SB03
4J043TA22
4J043TB03
4J043UA121
4J043UA151
4J043UA152
4J043UB131
4J043UB132
4J043UB161
4J043UB162
4J043VA021
4J043VA022
4J043XA03
4J043XA16
4J043ZB47
(57)【要約】
【課題】 得られる硬化膜において低い誘電正接を有し、保存安定性に優れかつポリイミドを含む場合でも有機溶媒現像における現像時間が短く、更に残留応力が低い感光性樹脂組成物などの提供。
【解決手段】 ポリイミドと、溶媒とを含み、
前記ポリイミドが、光重合性基を有する2価の芳香族基及び脂環構造を有さない炭素原子数14~28の2価の脂肪族炭化水素基を有する、
感光性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドと、溶媒とを含み、
前記ポリイミドが、光重合性基を有する2価の芳香族基及び脂環構造を有さない炭素原子数14~28の2価の脂肪族炭化水素基を有する、
感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリイミドが、ジアミン成分とテトラカルボン酸誘導体との反応生成物であり、
前記ジアミン成分が、光重合性基を有する芳香族ジアミン化合物及び脂環構造を有さない炭素原子数14~28の脂肪族ジアミン化合物を含む、
請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記光重合性基を有する芳香族ジアミン化合物が、下記式(1-a)で表され、
前記脂環構造を有さない炭素原子数14~28の脂肪族ジアミン化合物が、下記式(1-b)で表される、
請求項2に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】
[式(1-a)中、Xは直接結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、又はウレア結合を表し、Yは酸素原子又はNH基を表し、Rは直接結合、又は水酸基で置換されていてもよい炭素原子数2~6のアルキレン基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表す。]
【化2】
[式(1-b)中、Zは、脂環構造を有さない炭素原子数14~28の2価の脂肪族炭化水素基を表す。]
【請求項4】
前記式(1-a)におけるXがエステル結合を表し、さらにYが酸素原子を表す請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記式(1-a)におけるRが1,2-エチレン基を表す請求項3又は4に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記式(1-b)で表される脂肪族ジアミン化合物が、構造式が異なる2種以上の脂肪族ジアミン化合物を含む、請求項3から5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記テトラカルボン酸誘導体がテトラカルボン酸二無水物である請求項2から6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
さらに光ラジカル重合開始剤を含む請求項1から7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
さらに架橋性化合物を含む請求項1から8のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
絶縁膜形成用である請求項1から9のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
ネガ型感光性樹脂組成物である請求項1から10のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の塗布膜の焼成物である樹脂膜。
【請求項13】
絶縁膜である請求項12に記載の樹脂膜。
【請求項14】
基材フィルムと、請求項1から11のいずれかに記載の感光性樹脂組成物から形成される感光性樹脂層と、カバーフィルムとを有する感光性レジストフィルム。
【請求項15】
(1)請求項1から11のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布して、感光性樹脂層を該基板上に形成する工程と、
(2)該感光性樹脂層を露光する工程と、
(3)該露光後の感光性樹脂層を現像して、レリーフパターンを形成する工程と、
(4)該レリーフパターンを加熱処理して、硬化レリーフパターンを形成する工程と、
を含む、硬化レリーフパターン付き基板の製造方法。
【請求項16】
前記現像に用いられる現像液が有機溶媒である請求項15に記載の硬化レリーフパターン付き基板の製造方法。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の方法により製造された硬化レリーフパターン付き基板。
【請求項18】
半導体素子と該半導体素子の上部又は下部に設けられた硬化膜とを備える半導体装置であって、該硬化膜は請求項1から11のいずれかに記載の感光性樹脂組成物から形成される硬化レリーフパターンである半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、該組成物から得られる樹脂膜、該組成物を用いた感光性レジストフィルム、硬化レリーフパターン付き基板の製造方法、及び硬化レリーフパターンを有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品の絶縁材料、及び半導体装置のパッシベーション膜、表面保護膜、層間絶縁膜等には、優れた耐熱性、電気特性及び機械特性を併せ持つポリイミド樹脂が用いられている。このポリイミド樹脂の中でも、感光性ポリイミド前駆体の形態で供されるものは、該前駆体の塗布、露光、現像、及びキュアによる熱イミド化処理によって、耐熱性のレリーフパターン被膜を容易に形成することができる。このような感光性ポリイミド前駆体は、従来の非感光型ポリイミド樹脂と比較して、大幅な工程短縮を可能にするという特徴を有している。
【0003】
特許文献1及び特許文献2には、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するジアミンを用いたポリアミック酸又はポリイミドを含有する感光性樹脂組成物が提案されている。
また、特許文献3には、十分な現像性を得ることができると共に、厚膜で解像度よく像形成を行うことが可能な感光性樹脂組成物として、(A)主鎖に炭素数5~20のアルキレン基を有しかつジアミン残基にエチレン性不飽和基を有するポリアミック酸と、(B)光重合性化合物と、(C)光重合開始剤とを含む感光性樹脂組成物が提案されている。
【0004】
また、半導体装置のパッシベーション膜、表面保護膜、層間絶縁膜等を厚膜化及び高弾性率化することによって応力が増大し、半導体ウェハの反りが大きくなって、搬送やウェハ固定の際に不具合が生じる場合がある。そのため、残留応力が低いポリイミド樹脂の開発が望まれている。ポリイミド樹脂の残留応力を低減する方法として、例えば、ポリイミドの熱膨張係数をシリコンウェハの熱膨張係数に近づけるために、ポリイミドの分子鎖を剛直な骨格にする方法(例えば特許文献4)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-347404号公報
【特許文献2】特表2012-516927号公報
【特許文献3】特開2009-251451号公報
【特許文献4】特開平5-295115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、半導体装置では、大容量の情報を高速で伝送・処理する必要から、電気信号の高周波化が進んでいる。高周波の電気信号は減衰しやすいため、伝送損失を低くする必要がある。そのため、半導体装置に用いられる樹脂には低い誘電正接が求められる。
【0007】
また、硬化レリーフパターンを形成する際には、現像液による現像が行われるが、一般的にアルカリ水溶液現像液又は有機溶媒現像液が用いられる。硬化レリーフパターンを得るための感光性樹脂は、露光、現像により、露光部の感光性樹脂が現像液に溶解し、未露光部の感光性樹脂が残るポジ型と、未露光部の感光性樹脂が現像液に溶解し、露光部の感光性樹脂が残るネガ型とに分けられる。特に、ネガ型はポジ型よりも解像性には劣るが、厚膜化やフィルム化が容易で信頼性に優れており、そのような特徴を必要とする半導体装置の製造で用いられる。しかしながら、ポリアミック酸を含有するネガ型感光性樹脂では、保存安定性が低いという問題がある。他方、ポリイミドを含有するネガ型感光性樹脂の場合、有機溶媒現像における現像時間が長いという問題がある。
また、ネガ型感光性樹脂で特に厚膜化する場合、半導体ウェハの反りを小さくするために、残留応力が低い方が望ましい。
【0008】
したがって、得られる硬化膜において低い誘電正接を有し、保存安定性に優れかつポリイミドを含む場合でも有機溶媒現像における現像時間が短く、更に残留応力が低い感光性樹脂組成物が求められている。
しかし、特許文献1~特許文献4に記載の感光性樹脂組成物は、それら特性の全てが満足できるものではない。
【0009】
本発明の目的は、上記事情に鑑み、得られる硬化膜において低い誘電正接を有し、保存安定性に優れかつポリイミドを含む場合でも有機溶媒現像における現像時間が短く、更に残留応力が低い感光性樹脂組成物、該組成物から得られる樹脂膜、該組成物を用いた感光性レジストフィルム、硬化レリーフパターン付き基板の製造方法、並びに硬化レリーフパターンを有する半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、ポリイミドと、溶媒とを含む感光性樹脂組成物において、ポリイミドが、光重合性基を有する2価の芳香族基及び脂環構造を有さない炭素原子数14~28の2価の脂肪族炭化水素基を有することで、得られる硬化膜において低い誘電正接を有し、保存安定性に優れかつポリイミドを含む場合でも有機溶媒現像における現像時間が短く、更に残留応力が低い感光性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
[1] ポリイミドと、溶媒とを含み、
前記ポリイミドが、光重合性基を有する2価の芳香族基及び脂環構造を有さない炭素原子数14~28の2価の脂肪族炭化水素基を有する、
感光性樹脂組成物。
[2] 前記ポリイミドが、ジアミン成分とテトラカルボン酸誘導体との反応生成物であり、
前記ジアミン成分が、光重合性基を有する芳香族ジアミン化合物及び脂環構造を有さない炭素原子数14~28の脂肪族ジアミン化合物を含む、
[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3] 前記光重合性基を有する芳香族ジアミン化合物が、下記式(1-a)で表され、
前記脂環構造を有さない炭素原子数14~28の脂肪族ジアミン化合物が、下記式(1-b)で表される、
[2]に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】
[式(1-a)中、Xは直接結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、又はウレア結合を表し、Yは酸素原子又はNH基を表し、Rは直接結合、又は水酸基で置換されていてもよい炭素原子数2~6のアルキレン基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表す。]
【化2】
[式(1-b)中、Zは、脂環構造を有さない炭素原子数14~28の2価の脂肪族炭化水素基を表す。]
[4] 前記式(1-a)におけるXがエステル結合を表し、さらにYが酸素原子を表す[3]に記載の感光性樹脂組成物。
[5] 前記式(1-a)におけるRが1,2-エチレン基を表す[3]又は[4]に記載の感光性樹脂組成物。
[6] 前記式(1-b)で表される脂肪族ジアミン化合物が、構造式が異なる2種以上の脂肪族ジアミン化合物を含む、[3]から[5]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[7] 前記テトラカルボン酸誘導体がテトラカルボン酸二無水物である[2]から[6]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[8] さらに光ラジカル重合開始剤を含む[1]から[7]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[9] さらに架橋性化合物を含む[1]から[8]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[10] 絶縁膜形成用である[1]から[9]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[11] ネガ型感光性樹脂組成物である[1]から[10]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[12] [1]から[11]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の塗布膜の焼成物である樹脂膜。
[13] 絶縁膜である[12]に記載の樹脂膜。
[14] 基材フィルムと、[1]から[11]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物から形成される感光性樹脂層と、カバーフィルムとを有する感光性レジストフィルム。
[15] (1)[1]から[11]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布して、感光性樹脂層を該基板上に形成する工程と、
(2)該感光性樹脂層を露光する工程と、
(3)該露光後の感光性樹脂層を現像して、レリーフパターンを形成する工程と、
(4)該レリーフパターンを加熱処理して、硬化レリーフパターンを形成する工程と、
を含む、硬化レリーフパターン付き基板の製造方法。
[16] 前記現像に用いられる現像液が有機溶媒である[15]に記載の硬化レリーフパターン付き基板の製造方法。
[17] [15]又は[16]に記載の方法により製造された硬化レリーフパターン付き基板。
[18] 半導体素子と該半導体素子の上部又は下部に設けられた硬化膜とを備える半導体装置であって、該硬化膜は[1]から[11]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物から形成される硬化レリーフパターンである半導体装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、得られる硬化膜において低い誘電正接を有し、保存安定性に優れかつポリイミドを含む場合でも有機溶媒現像における現像時間が短く、更に残留応力が低い感光性樹脂組成物、該組成物から得られる樹脂膜、該組成物を用いた感光性レジストフィルム、硬化レリーフパターン付き基板の製造方法、並びに硬化レリーフパターンを有する半導体装置が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(感光性樹脂組成物)
本発明の感光性樹脂組成物は、ポリイミドと溶媒とを少なくとも含み、更に必要に応じてその他の成分を含む。
【0014】
<ポリイミド>
ポリイミドは、光重合性基を有する2価の芳香族基を有する。
ポリイミドは、脂環構造を有さない炭素原子数14~28の2価の脂肪族炭化水素基を有する。
【0015】
本発明者らは、本発明の感光性樹脂組成物によって本発明の効果が奏する理由を、以下のように考えている。
ポリイミドが光重合性基を有する2価の芳香族基を有することにより、ポリイミドを含む樹脂組成物に感光性が付与される。
ポリイミドが炭素原子数14~28の2価の脂肪族炭化水素基を有することにより、硬化膜の誘電正接が低くなる。
ポリイミドが炭素原子数14~28の2価の脂肪族炭化水素基を有することにより、残留応力を低くできる。
ポリイミドが炭素原子数14~28の2価の脂肪族炭化水素基を有することにより、有機溶媒現像における現像時間を短くできる。
感光性樹脂組成物がポリイミドを含有することにより、感光性樹脂組成物の保存安定性が優れる。
【0016】
ポリイミドは、例えば、ポリアミック酸のイミド化物である。
ポリアミック酸は、例えば、ジアミン成分とテトラカルボン酸誘導体との反応生成物である。
【0017】
ポリイミドのイミド化率は100%である必要はない。ポリイミドのイミド化率は、例えば90%以上であってもよいし、95%以上であってもよいし、98%以上であってもよい。
【0018】
<<光重合性基を有する2価の芳香族基>>
光重合性基としては、例えば、ラジカル重合性基、カチオン重合性基、アニオン重合性基が挙げられる。これらの中でも、ラジカル重合性基が好ましい。
ラジカル重合性基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロペニルエーテル基、ビニルエーテル基、ビニル基などが挙げられる。
【0019】
光重合性基を有する2価の芳香族基における芳香族環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などが挙げられる。
【0020】
光重合性基を有する2価の芳香族基は、例えば、ジアミンから2つのアミノ基を除いた残基である。
【0021】
光重合性基を有する2価の芳香族基としては、下記式(1-A)で表される2価の有機基が好ましい。
【化3】
[式(1-A)中、Xは直接結合、エーテル結合(-O-)、エステル結合(-COO-)、アミド結合(-NHCO-)、ウレタン結合(-NHCOO-)、又はウレア結合(-NHCONH-)を表し、Yは酸素原子又はNH基を表し、Rは直接結合、又は水酸基で置換されていてもよい炭素原子数2~6のアルキレン基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表す。*は結合手を表す。]
【0022】
式(1-A)における2つの結合手は、例えば、窒素原子に結合する結合手である。
【0023】
本明細書において、水酸基で置換されていてもよい炭素原子数2~6のアルキレン基としては、例えば、1,1-エチレン基、1,2-エチレン基、1,2-プロピレン基、1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基、1,2-ブチレン基、2,3-ブチレン基、1,2-ペンチレン基、2,4-ペンチレン基、1,2-へキシレン基、1,2-シクロプロピレン基、1,2-シクロブチレン基、1,3-シクロブチレン基、1,2-シクロペンチレン基、1,2-シクロへキシレン基、これらの水素原子の少なくとも一部が水酸基で置換されたアルキレン基(例えば、2-ヒドロキシ-1,3-プロピレン基)などが挙げられる。
【0024】
Xはエステル結合(-COO-)を表すことが好ましい。
Yは酸素原子を表すことが好ましい。
は1,2-エチレン基を表すことが好ましい。
【0025】
式(1-A)で表される2価の有機基としては、以下の式で表される2価の有機基が挙げられる。
【化4】
式中、*は結合手を表す。2つの結合手は、例えば、光重合性基を有する置換基に対してメタ位に位置する。
【0026】
<<脂環構造を有さない炭素原子数14~28の2価の脂肪族炭化水素基>>
脂環構造を有さない炭素原子数14~28の2価の脂肪族炭化水素基としては、飽和脂肪族炭化水素基であってもよいし、不飽和脂肪族炭化水素基であってもよい。不飽和脂肪族炭化水素基における不飽和基の数としては、特に限定されず、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。
脂環構造は、脂肪族炭化水素環ともいう。
【0027】
脂環構造を有さない炭素原子数14~28の2価の脂肪族炭化水素基の炭素原子数としては、本発明の効果を好適に得る観点から、15~26が好ましく、16~24がより好ましく、17~23が更により好ましく、18~22が特に好ましい。
【0028】
脂環構造を有さない炭素原子数14~28の2価の脂肪族炭化水素基としては、本発明の効果を好適に得る観点から、下記式(1-B)で表される2価の有機基が好ましい。
【化5】
[式(1-B)中、Zは、脂環構造を有さない炭素原子数14~28の2価の脂肪族炭化水素基を表す。*は結合手を表す。]
【0029】
Zは、例えば、炭素原子数が14~28であるアルキレン基またはアルケニレン基である。アルケニレン基における炭素-炭素二重結合の数としては、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。
Zは、例えば、直鎖状である。
Zは、分岐鎖を有していてもよい。言い換えれば、Zは、分岐状であってもよい。分岐鎖としては、例えば、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数2~4のアルケニル基が挙げられる。分岐鎖の数としては、特に制限されず、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。Zにおける分岐鎖の位置としては、特に制限されない。
【0030】
分岐鎖である、炭素原子数1~4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。
分岐鎖である、炭素原子数2~4のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基が挙げられる。
【0031】
ポリイミドにおいては、構造式が異なる2種以上の「脂環構造を有さない炭素原子数14~28の2価の脂肪族炭化水素基」を有していてもよい。
【0032】
<<3つ以上の芳香族環を有する4価の有機基>>
得られる硬化膜において、より低い誘電正接が得られる点から、ポリイミドは3つ以上の芳香族環を有する4価の有機基を有することが好ましい。
【0033】
3つ以上の芳香族環を有する4価の有機基は、例えば、テトラカルボン酸誘導体からカルボキシル基、カルボン酸エステル基、又はカルボン酸二無水物基を除いた残基である。3つ以上の芳香族環を有する4価の有機基は、例えば、テトラカルボン酸二無水物から2つの酸無水物基を除いた残基である。
【0034】
3つ以上の芳香族環を有する4価の有機基における芳香族環の数としては、3つ以上であれば、特に限定されないが、例えば、4つ以上であってもよい。芳香族環の数の上限値としては、特に限定されないが、例えば、8つ以下であってもよいし、6つ以下であってもよい。
【0035】
「3つ以上の芳香族環」における芳香族環の数え方に関し、ナフタレン環、アントラセン環のような2以上の芳香族環が縮合してなる多環芳香族環は1つの芳香族環として数える。そのため、ナフタレン環は1つの芳香族環として数える。他方、ビフェニル環は縮合環ではないため2つの芳香族環として数える。そして、ペリレン環は、2つのナフタレン環が結合してなる構造とみなし、2つの芳香族環として数える。
芳香族環としては、芳香族炭化水素環、芳香族複素環などが挙げられる。
【0036】
3つ以上の芳香族環を有する4価の有機基としては、下記式(2-A)で表される4価の有機基が好ましい。
【化6】
[式(2-A)中、X及びXはそれぞれ独立に直接結合、エーテル結合(-O-)、エステル結合(-COO-)、アミド結合(-NHCO-)、ウレタン結合(-NHCOO-)、ウレア結合(-NHCONH-)、チオエーテル結合(-S-)又はスルホニル結合(-SO-)を表す。
a1及びRa2はそれぞれ独立に置換されていてもよい炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
は下記式(3-a)、下記式(3-b)又は下記式(3-c)で表される2価の有機基を表す。
n1及びn2はそれぞれ独立に0~3の整数を表す。
a1が複数の場合、複数のRa1は同じでもよいし異なっていてもよい。Ra2が複数の場合、複数のRa2は同じでもよいし異なっていてもよい。
*は結合手を表す。]
【0037】
式(2-A)中のRa1及びRa2における置換されていてもよい炭素原子数1~6のアルキル基としては、例えば、炭素原子数1~6のアルキル基が挙げられる。炭素原子数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。本明細書において、アルキル基、アルキレン基は、その構造について特に言及されていない限り、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよいし、環状であってもよいし、これらの2以上の組み合わせであってもよい。
置換されていてもよい炭素原子数1~6のアルキル基における置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、シアノ基、ホルミル基、ハロホルミル基、スルホ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、オキソ基、チオキシ基、炭素原子数1~6のアルコキシ基などが挙げられる。
なお、「置換されていてもよい炭素原子数1~6のアルキル基」の「炭素原子数1~6」とは、置換基を除く「アルキル基」の炭素原子数を指す。また、置換基の数としては特に限定されない。
【0038】
【化7】
[式(3-a)中、Ra3は炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数2~6のアルケニル基又は炭素原子数1~6のアルコキシ基を表し、mは0~4の整数を表す。mが2以上の時、Ra3は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
式(3-b)中、Zは直接結合、又は下記式(4-a)若しくは下記式(4-b)で表される2価の有機基を表し、Ra4及びRa5はそれぞれ独立して炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数2~6のアルケニル基又は炭素原子数1~6のアルコキシ基を表し、m及びmはそれぞれ独立して0~4の整数を表す。mが2以上の時、Ra4は同じであってもよいし、異なっていてもよい。mが2以上の時、Ra5は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
式(3-c)中、Ra6は炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数2~6のアルケニル基又は炭素原子数1~6のアルコキシ基を表し、mは0~6の整数を表す。mが2以上の時、Ra6は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
*は結合手を表す。]
【化8】
[式(4-a)中、R、及びRはそれぞれ独立に水素原子、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
式(4-b)中、R、及びR10はそれぞれ独立に置換されていてもよい炭素原子数1~6のアルキレン基又は置換されていてもよい炭素原子数6~12のアリーレン基を表す。
*は結合手を表す。]
【0039】
及びRにおけるハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~6のアルキル基としては、例えば、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基などが挙げられる。
炭素原子数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基におけるハロゲン化は、一部であってもよいし、全部であってもよい。
【0040】
及びR10における置換されていてもよい炭素原子数1~6のアルキレン基における置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、シアノ基、ホルミル基、ハロホルミル基、スルホ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、オキソ基、チオキシ基、炭素原子数1~6のアルコキシ基などが挙げられる。
置換されていてもよい炭素原子数1~6のアルキレン基としては、例えば、炭素原子数1~6のアルキレン基、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキレン基などが挙げられる。炭素原子数1~6のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。
なお、「置換されていてもよい炭素原子数1~6のアルキレン基」の「炭素原子数1~6」とは、置換基を除く「アルキレン基」の炭素原子数を指す。また、置換基の数としては特に限定されない。
【0041】
及びR10における置換されていてもよい炭素原子数6~10のアリーレン基における置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ハロゲン化されていてもよい炭素原子数1~6のアルキル基、ハロゲン化されていてもよい炭素原子数1~6のアルコキシ基などが挙げられる。なお、ハロゲン化は、一部であってもよいし、全部であってもよい。
アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
なお、「置換されていてもよい炭素原子数6~10のアリーレン基」の「炭素原子数6~10」とは、置換基を除く「アリーレン基」の炭素原子数を指す。また、置換基の数としては特に限定されない。
【0042】
式(4-a)で表される2価の有機基としては、例えば、以下の式で表される2価の有機基が挙げられる。
【化9】
式中、*は結合手を表す。
【0043】
式(4-b)で表される2価の有機基としては、例えば、以下の式で表される2価の有機基が挙げられる。
【化10】
式中、R13~R15はそれぞれ独立にハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~6のアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~6のアルコキシ基を表す。n13は、0~5の整数を表す。n14及びn15はそれぞれ独立に0~4の整数を表す。R13が複数の場合、複数のR13は同じでもよいし異なっていてもよい。R14が複数の場合、複数のR14は同じでもよいし異なっていてもよい。R15が複数の場合、複数のR15は同じでもよいし異なっていてもよい。*は結合手を表す。
【0044】
13~R15におけるハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~6のアルキル基の具体例としては、例えば、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基が挙げられる。
炭素原子数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基におけるハロゲン化は、一部であってもよいし、全部であってもよい。
13~R15におけるハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~6のアルコキシ基の具体例としては、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~6のアルキル基をアルコキシ基にしたものが挙げられる。
【0045】
3つ以上の芳香族環を有する4価の有機基としては、例えば、以下の式で表される4価の有機基が挙げられる。
【化11】
【化12】
式中、*は結合手を表す。
【0046】
<<3つ以上の芳香族環を有する2価の有機基>>
得られる硬化膜において、より低い誘電正接が得られる点から、ポリイミドは3つ以上の芳香族環を有する2価の有機基を有することが好ましい。なお、ここでの3つ以上の芳香族環を有する2価の有機基は、上記の光重合性基を有する2価の芳香族基とは異なる有機基を指す。
3つ以上の芳香族環を有する2価の有機基は、例えば、ジアミンから2つのアミノ基を除いた残基である。
【0047】
3つ以上の芳香族環を有する2価の有機基における芳香族環の数としては、3つ以上であれば、特に限定されないが、例えば、4つ以上であってもよい。芳香族環の数の上限値としては、特に限定されないが、例えば、8つ以下であってもよいし、6つ以下であってもよい。
【0048】
3つ以上の芳香族環を有する2価の有機基としては、特に限定されないが、好ましくは下記式(13)で表される2価の有機基である。
【化13】
[式(13)中、X21及びX22はそれぞれ独立に直接結合、エーテル結合(-O-)、エステル結合(-COO-)、アミド結合(-NHCO-)、ウレタン結合(-NHCOO-)、ウレア結合(-NHCONH-)、チオエーテル結合(-S-)又はスルホニル結合(-SO-)を表す。
21及びR22はそれぞれ独立に置換されていてもよい炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
20は上記式(3-a)、上記式(3-b)又は上記式(3-c)で表される2価の有機基を表す。
n21及びn22はそれぞれ独立に0~4の整数を表す。
21が複数の場合、複数のR21は同じでもよいし異なっていてもよい。R22が複数の場合、複数のR22は同じでもよいし異なっていてもよい。
*は結合手を表す。]
【0049】
21及びR22における置換されていてもよい炭素原子数1~6のアルキル基の具体例としては、式(2-A)中のRa1及びRa2の説明において例示した置換されていてもよい炭素原子数1~6のアルキル基が挙げられる。
なお、「置換されていてもよい炭素原子数1~6のアルキル基」の「炭素原子数1~6」とは、置換基を除く「アルキル基」の炭素原子数を指す。また、置換基の数としては特に限定されない。
【0050】
3つ以上の芳香族環を有する2価の有機基としては、例えば、以下の式で表される2価の有機基が挙げられる。
【化14】
【化15】
式中、*は結合手を表す。
【0051】
<<その他の有機基>>
ポリイミドは、その他の有機基を有していてもよい。その他の有機基としては、例えば、上記以外の2価の有機基、上記以外の4価の有機基などが挙げられる。
【0052】
上記以外の2価の有機基としては、例えば、以下の式で表される2価の有機基が挙げられる。これらの2価の有機基は、例えば、ジアミンから2つのアミノ基を除いた残基である。
【化16】
式中、*は結合手を表す。
【0053】
上記以外の4価の有機基としては、例えば、以下の式で表される4価の有機基が挙げられる。これらの4価の有機基は、例えば、テトラカルボン酸誘導体からカルボキシル基、カルボン酸エステル基、又はカルボン酸二無水物基を除いた残基である。これらの4価の有機基は、例えば、テトラカルボン酸二無水物から2つの酸無水物基を除いた残基である。
【化17】
【化18】
式中、*は結合手を表す。
【0054】
<<ジアミン成分>>
ジアミン成分は、光重合性基を有する芳香族ジアミン化合物を含むことが好ましい。
ジアミン成分は、脂環構造を有さない炭素原子数14~28の脂肪族ジアミン化合物を含むことが好ましい。
光重合性基を有する2価の芳香族基は、例えば、光重合性基を有する芳香族ジアミン化合物に由来する。
脂環構造を有さない炭素原子数14~28の2価の脂肪族炭化水素基は、例えば、脂環構造を有さない炭素原子数14~28の脂肪族ジアミン化合物に由来する。
【0055】
<<<光重合性基を有する芳香族ジアミン化合物>>>
光重合性基を有する芳香族ジアミン化合物において、2つのアミノ基は、1つの芳香族環に結合していてもよいし、芳香族環を2つ以上有する場合には2つの芳香族環のそれぞれに結合していてもよい。芳香族環としては、芳香族炭化水素環、芳香族複素環などが挙げられる。
なお、芳香族ジアミン化合物は、アミノ基が結合していない芳香族環を有していてもよい。
【0056】
光重合性基を有する芳香族ジアミン化合物にとしては、本発明の効果を好適に得る観点から、下記式(1-a)で表されるジアミン化合物が好ましい。
【化19】
[式(1-a)中、Xは直接結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、又はウレア結合を表し、Yは酸素原子又はNH基を表し、Rは直接結合、又は水酸基で置換されていてもよい炭素原子数2~6のアルキレン基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表す。]
【0057】
Xはエステル結合(-COO-)を表すことが好ましい。
Yは酸素原子を表すことが好ましい。
は1,2-エチレン基を表すことが好ましい。
【0058】
式(1-a)で表されるジアミン化合物としては、以下のジアミン化合物が挙げられる。
【化20】
式中、2つのアミノ基は、例えば、光重合性基を有する置換基に対してメタ位に位置する。
【0059】
ポリイミドを構成する全ジアミン成分に対する、光重合性基を有する芳香族ジアミン化合物の割合としては、特に限定されないが、十分な感光性を得る観点から、10モル%~90モル%が好ましく、15モル%~75モル%がより好ましく、20モル%~60モル%が特に好ましい。
【0060】
<<<脂環構造を有さない炭素原子数14~28の脂肪族ジアミン化合物>>>
脂環構造を有さない炭素原子数14~28の脂肪族ジアミン化合物における脂肪族炭化水素基としては、飽和脂肪族炭化水素基であってもよいし、不飽和脂肪族炭化水素基であってもよい。不飽和脂肪族炭化水素基における不飽和基の数としては、特に限定されず、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。
【0061】
脂環構造を有さない炭素原子数14~28の脂肪族ジアミン化合物の炭素原子数としては、本発明の効果を好適に得る観点から、15~26が好ましく、16~24がより好ましく、17~23が更により好ましく、18~22が特に好ましい。
【0062】
脂環構造を有さない炭素原子数14~28の脂肪族ジアミン化合物としては、本発明の効果を好適に得る観点から、下記式(1-b)で表される脂肪族ジアミン化合物が好ましい。
【化21】
[式(1-b)中、Zは、脂環構造を有さない炭素原子数14~28の2価の脂肪族炭化水素基を表す。]
【0063】
Zは、例えば、炭素原子数が14~28であるアルキレン基またはアルケニレン基である。アルケニレン基における炭素-炭素二重結合の数としては、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。
Zは、例えば、直鎖状である。
Zは、分岐鎖を有していてもよい。言い換えれば、Zは、分岐状であってもよい。分岐鎖としては、例えば、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数2~4のアルケニル基が挙げられる。分岐鎖の数としては、特に制限されず、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。Zにおける分岐鎖の位置としては、特に制限されない。
【0064】
分岐鎖である、炭素原子数1~4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。
分岐鎖である、炭素原子数2~4のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基が挙げられる。
【0065】
脂環構造を有さない炭素原子数14~28の脂肪族ジアミン化合物としては、例えば、直鎖飽和ジアミン、直鎖不飽和ジアミン、分岐飽和ジアミン、分岐不飽和ジアミンなどが挙げられる。
直鎖飽和ジアミンとしては、例えば、1,14-テトラデカンジアミン、1,16-ヘキサデカンジアミン、1,18-オクタデカンジアミン、1,20-エイコサジアミン、1,22-ドコサジアミン、1,24-テトラコサジアミン、1,28-オクタコサジアミンなどが挙げられる。
直鎖不飽和ジアミンとしては、例えば、1,14-テトラデカンジアミン-7-エン、1,16-ヘキサデカンジアミン-6-エン、1,16-ヘキサデカンジアミン-8-エン、1,18-オクタデカンジアミン-8-エン、1,18-オクタデカンジアミン-10-エン、1,20-エイコサジアミン-6-エン、1,20-エイコサジアミン-8-エン、1,20-エイコサジアミン-12-エン、1,20-エイコサジアミン-8,12-ジエン、1,20-エイコサジアミン-10,14-ジエン、1,22-ドコサジアミン-7,11,15-トリエン、1,22-ドコサジアミン-8,12,16-トリエン、1,24-テトラコサジアミン-8,12,16-トリエン、1,24-テトラコサジアミン-10,14,18-トリエンなどが挙げられる。
分岐飽和ジアミンとしては、例えば、6,8-ジメチル-1,14-テトラデカンジアミン、7-エチル-1,14-テトラデカンジアミン、7-プロピル-1,14-テトラデカンジアミン、7-エチル-1,16-ヘキサデカンジアミン、7-ブチル-1,16-ヘキサデカンジアミン、7-イソプロピル-10-メチル-1,16-ヘキサデカンジアミン、5-エチル-1,18-オクタデカンジアミン、6-エチル-1,18-オクタデカンジアミン、7-エチル-1,18-オクタデカンジアミン、8-エチル-1,18-オクタデカンジアミン、9-エチル-1,18-オクタデカンジアミン、8-イソプロピル-11-メチル-1,18-オクタデカンジアミン、8,13-ジエチル-1,18-オクタデカンジアミン、8,13-ジメチル-1,20-エイコサジアミン、9,12-ジメチル-1,20-エイコサジアミン、9,12-ジエチル-1,20-エイコサジアミンなどが挙げられる。
分岐不飽和ジアミンとしては、例えば、7-ビニル-1,14-テトラデカンジアミン、7-ビニル-1,16-ヘキサデカンジアミン-8-エン、7-イソプロペニル-10-メチル-1,16-ヘキサデカンジアミン-9-エン、8-ビニル-1,18-オクタデカンジアミン-9-エン、7,12-ジメチル-1,18-オクタデカンジアミン-7,11-ジエン、7,12-ジエチル-1,18-オクタデカンジアミン-7,11-ジエン、8-イソプロペニル-11-メチル-1,18-オクタデカンジアミン-10-エン、8-エチル-11-イソプロペニル-1,18-オクタデカンジアミン-10-エン、8,13-ジメチル-1,20-エイコサジアミン-8,12-ジエン、9,12-ジメチル-1,20-エイコサジアミン-8,12-ジエンなどが挙げられる。
【0066】
ポリイミドを構成する、脂環構造を有さない炭素原子数14~28の脂肪族ジアミン化合物は、構造式が異なる2種以上の脂肪族ジアミン化合物を含んでいてもよい。
【0067】
脂環構造を有さない炭素原子数14~28の脂肪族ジアミン化合物は、例えば、国際公開第2021/049503号パンフレットに記載されているジアミン化合物である。
脂環構造を有さない炭素原子数14~28の脂肪族ジアミン化合物は、例えば、国際公開第2021/049503号パンフレットに記載されているジアミン化合物の製造方法により得ることができる。
これらを参照して得られる脂環構造を有さない炭素原子数14~28の脂肪族ジアミン化合物は、単一組成であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
【0068】
ポリイミドを構成する全ジアミン成分に対する、脂環構造を有さない炭素原子数14~28の2価の脂肪族炭化水素基の割合としては、特に限定されないが、本発明の効果を好適に得る観点から、5モル%~80モル%が好ましく、10モル%~70モル%がより好ましく、15モル%~60モル%が特に好ましい。
【0069】
ポリイミドにおける、光重合性基を有する2価の芳香族基(A)と脂環構造を有さない炭素原子数14~28の2価の脂肪族炭化水素基(B)とのモル割合(A:B)としては、特に制限されないが、5:1~0.3:1が好ましく、4:1~0.5:1がより好ましく、3:1~0.6:1が特に好ましい。
【0070】
ポリイミドを構成する全ジアミン成分に対する、光重合性基を有する芳香族ジアミン化合物と脂環構造を有さない炭素原子数14~28の2価の脂肪族炭化水素基との合計のモル割合としては、特に限定されないが、本発明の効果を好適に得る観点から、30モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましく、50モル%以上が特に好ましい。合計のモル割合の上限値としては、特に制限されないが、合計のモル割合は、100モル%以下であってもよいし、90モル%以下であってもよい。
【0071】
<<<3つ以上の芳香族環を有する芳香族ジアミン化合物>>>
得られる硬化膜において、より低い誘電正接が得られる点から、ジアミン成分は3つ以上の芳香族環を有する芳香族ジアミン化合物を含むことが好ましい。なお、ここでの3つ以上の芳香族環を有する芳香族ジアミン化合物は、上記の光重合性基を有する2価の芳香族ジアミン化合物とは異なるジアミン化合物を指す。
【0072】
3つ以上の芳香族環を有する芳香族ジアミン化合物における芳香族環の数としては、3つ以上であれば、特に限定されないが、例えば、4つ以上であってもよい。芳香族環の数の上限値としては、特に限定されないが、例えば、8つ以下であってもよいし、6つ以下であってもよい。
【0073】
3つ以上の芳香族環を有する芳香族ジアミン化合物としては、例えば、下記式(13-1)で表されるジアミン化合物が挙げられる。
【化22】
[式(13-1)中、X21及びX22はそれぞれ独立に直接結合、エーテル結合(-O-)、エステル結合(-COO-)、アミド結合(-NHCO-)、ウレタン結合(-NHCOO-)、ウレア結合(-NHCONH-)、チオエーテル結合(-S-)又はスルホニル結合(-SO-)を表す。
21及びR22はそれぞれ独立に置換されていてもよい炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
20は上記式(3-a)、上記式(3-b)又は上記式(3-c)で表される2価の有機基を表す。
n21及びn22はそれぞれ独立に0~4の整数を表す。
21が複数の場合、複数のR21は同じでもよいし異なっていてもよい。R22が複数の場合、複数のR22は同じでもよいし異なっていてもよい。]
【0074】
ポリイミドを構成する全ジアミン成分に対する、3つ以上の芳香族環を有する芳香族ジアミン化合物の割合としては、特に限定されないが、発明の効果を好適に得る観点から、5モル%~60モル%が好ましく、10モル%~55モル%がより好ましく、15モル%~50モル%が特に好ましい。
【0075】
<<テトラカルボン酸誘導体>>
テトラカルボン酸誘導体は、得られる硬化膜において、より低い誘電正接が得られる点から、3つ以上の芳香族環を有するテトラカルボン酸誘導体を含むことが好ましい。
【0076】
「テトラカルボン酸誘導体」におけるテトラカルボン酸誘導体としては、例えば、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジハライド、テトラカルボン酸ジアルキルエステル、及びテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライドが挙げられるが、特に、テトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【0077】
3つ以上の芳香族環を有するテトラカルボン酸誘導体における芳香族環の数としては、3つ以上であれば、特に限定されないが、例えば、4つ以上であってもよい。芳香族環の数の上限値としては、特に限定されないが、例えば、8つ以下であってもよいし、6つ以下であってもよい。
【0078】
3つ以上の芳香族環を有するテトラカルボン酸誘導体としては、ポリイミドに、前述の3つ以上の芳香族環を有する4価の有機基を与えるテトラカルボン酸誘導体が好ましく、前述の3つ以上の芳香族環を有する4価の有機基を与えるテトラカルボン酸二無水物が好ましい。そのようなテトラカルボン酸二無水物は、例えば、下記式(2-A-1)で表されるテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【化23】
[式(2-A-1)中、X及びXはそれぞれ独立に直接結合、エーテル結合(-O-)、エステル結合(-COO-)、アミド結合(-NHCO-)、ウレタン結合(-NHCOO-)、ウレア結合(-NHCONH-)、チオエーテル結合(-S-)又はスルホニル結合(-SO-)を表す。
a1及びRa2はそれぞれ独立に置換されていてもよい炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
は上記式(3-a)、上記式(3-b)又は上記式(3-c)で表される2価の有機基を表す。
n1及びn2はそれぞれ独立に0~3の整数を表す。
a1が複数の場合、複数のRa1は同じでもよいし異なっていてもよい。Ra2が複数の場合、複数のRa2は同じでもよいし異なっていてもよい。]
【0079】
ポリイミドを構成する全テトラカルボン酸誘導体に対する、3つ以上の芳香族環を有する芳香族テトラカルボン酸誘導体の割合としては、特に限定されないが、本発明の効果を好適に得る観点から、20モル%~100モル%が好ましく、50モル%~100モル%がより好ましい。
【0080】
ポリイミドの重量平均分子量としては、特に限定されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、本明細書ではGPCと略称する)によるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量は、5,000~100,0000が好ましく、7,000~50,000がより好ましく、10,000~50,000が更に好ましく、10,000~40,000が特に好ましい。
【0081】
<<ポリイミドの製造方法>>
ポリイミドは、例えば、ポリアミック酸をイミド化して得られる。
ポリアミック酸は、例えば、光重合性基を有する芳香族ジアミン化合物及び脂環構造を有さない炭素原子数14~28の脂肪族ジアミン化合物を含むジアミン成分とテトラカルボン酸誘導体とを反応させて得られる。
【0082】
ポリイミド又はポリアミック酸の製造方法としては、特に限定されず、例えば、ジアミン成分とテトラカルボン酸誘導体とを反応させてポリイミド又はポリアミック酸を得る公知の方法が挙げられる。ポリイミド及びポリアミック酸は、例えば、WO2013/157586号公報に記載されるような公知の方法で合成出来る。
【0083】
ポリアミック酸の製造は、例えば、光重合性基を有する芳香族ジアミン化合物及び脂環構造を有さない炭素原子数14~28の脂肪族ジアミン化合物を含むジアミン成分とテトラカルボン酸誘導体とを溶媒中で(縮重合)反応させることにより行われる。
【0084】
上記溶媒の具体例としては、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルイソ酪酸アミド、ジメチルスルホキシド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンが挙げられる。また、ポリアミック酸の溶媒溶解性が高い場合は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、又は下記の式[D-1]~式[D-3]で示される溶媒を用いることができる。
【化24】
(式[D-1]中、Dは炭素原子数1~3のアルキル基を示し、式[D-2]中、Dは炭素原子数1~3のアルキル基を示し、式[D-3]中、Dは炭素原子数1~4のアルキル基を表す。)。
【0085】
これら溶媒は単独で使用しても、混合して使用してもよい。さらに、ポリアミック酸を溶解しない溶媒であっても、ポリアミック酸が析出しない範囲で、上記溶媒に混合して使用してもよい。
【0086】
ジアミン成分とテトラカルボン酸誘導体成分とを溶媒中で反応させる際には、反応は任意の濃度で行うことができるが、好ましくは1質量%~50質量%、より好ましくは5質量%~30質量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、溶媒を追加することもできる。
反応においては、ジアミン成分の合計モル数とテトラカルボン酸誘導体成分の合計モル数の比は0.8~1.2であることが好ましい。通常の縮重合反応同様、このモル比が1.0に近いほど生成するポリアミック酸の分子量は大きくなる。
【0087】
ジアミン成分とテトラカルボン酸誘導体成分とを反応させる際には、光重合性基の重合を避けるために、熱重合禁止剤を反応系に添加してもよい。
熱重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、4-メトキシフェノール、N-ニトロソジフェニルアミン、p-tert-ブチルカテコール、フェノチアジン、N-フェニルナフチルアミン、エチレンジアミン四酢酸、1,2-シクロヘキサンジアミン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、5-ニトロソ-8-ヒドロキシキノリン、1-ニトロソ-2-ナフトール、2-ニトロソ-1-ナフトール、2-ニトロソ-5-(N-エチル-N-スルフォプロピルアミノ)フェノール、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、N-ニトロソ-N(1-ナフチル)ヒドロキシルアミンアンモニウム塩等が挙げられる。
熱重合禁止剤の使用量としては、特に限定されない。
【0088】
ポリイミドは、上記反応で得られたポリアミック酸を脱水閉環して得られる。
ポリイミドを得る方法としては、上記反応で得られたポリアミック酸の溶液をそのまま加熱する熱イミド化、又はポリアミック酸の溶液に触媒を添加する化学イミド化が挙げられる。溶液中で熱イミド化させる場合の温度は、100℃~400℃、好ましくは120℃~250℃であり、イミド化反応により生成する水を系外に除きながら行う方が好ましい。
【0089】
上記化学イミド化は、反応で得られたポリアミック酸の溶液に、塩基性触媒と酸無水物とを添加し、-20℃~250℃、好ましくは0℃~180℃で撹拌することにより行うことができる。塩基性触媒の量はアミド酸基の0.1モル倍~30モル倍、好ましくは0.2モル倍~20モル倍であり、酸無水物の量はアミド酸基の1モル倍~50モル倍、好ましくは1.5モル倍~30モル倍である。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミンなどを挙げることができ、なかでも、トリエチルアミンは副生成物であるポリイソイミドが生成しにくいので好ましい。酸無水物としては、無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などを挙げることができ、なかでも、無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。化学イミド化によるイミド化率(ポリイミド前駆体の有する全繰り返し単位に対する閉環される繰り返し単位の割合、閉環率ともいう。)は、触媒量と反応温度、反応時間を調節することにより制御することができる。
【0090】
上記イミド化の反応溶液から、生成したイミド化物を回収する場合には、反応溶液を溶媒に投入して沈殿させればよい。沈殿に用いる溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、ベンゼン、水などを挙げることができる。溶媒に投入して沈殿させたポリマーは濾過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱して乾燥することができる。
【0091】
ポリイミドは、末端封止がされていてもよい。末端封止の方法としては、特に制限されず、例えば、モノアミン又は酸無水物を用いた従来公知の方法を用いることができる。
【0092】
<溶媒>
感光性樹脂組成物に含有される溶媒としては、ポリイミドに対する溶解性の点から、有機溶媒を用いることが好ましい。具体的には、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルイソ酪酸アミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン、テトラメチル尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリノン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、乳酸エチル又は下記の式[D-1]~式[D-3]で示される溶媒等が挙げられ、これらは単独又は2種以上の組合せで用いることができる。
【化25】
(式[D-1]中、Dは炭素原子数1~3のアルキル基を示し、式[D-2]中、Dは炭素原子数1~3のアルキル基を示し、式[D-3]中、Dは炭素原子数1~4のアルキル基を表す。)。
【0093】
溶媒は、感光性樹脂組成物の所望の塗布膜厚及び粘度に応じて、ポリイミド100質量部に対し、例えば、30質量部~1500質量部の範囲、好ましくは100質量部~1000質量部の範囲で用いることができる。
【0094】
<その他の成分>
実施の形態では、感光性樹脂組成物は、ポリイミド及び溶媒以外のその他の成分をさらに含有してもよい。その他の成分としては、例えば、光ラジカル重合開始剤(「光ラジカル開始剤」ともいう)、架橋性化合物(「架橋剤」ともいう)、熱硬化剤、その他の樹脂成分、フィラー、増感剤、接着助剤、熱重合禁止剤、アゾール化合物、ヒンダードフェノール化合物などが挙げられる。
【0095】
<<光ラジカル重合開始剤>>
光ラジカル重合開始剤としては、光硬化時に使用する光源に吸収をもつ化合物であれば特に限定されないが、例えば、tert-ブチルペルオキシ-iso-ブチレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルジオキシ)ヘキサン、1,4-ビス[α-(tert-ブチルジオキシ)-iso-プロポキシ]ベンゼン、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルジオキシ)ヘキセンヒドロペルオキシド、α-(iso-プロピルフェニル)-iso-プロピルヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、1,1-ビス(tert-ブチルジオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルジオキシ)バレレート、シクロヘキサノンペルオキシド、2,2’,5,5’-テトラ(tert-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(tert-アミルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’-ビス(tert-ブチルペルオキシカルボニル)-4,4’-ジカルボキシベンゾフェノン、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジ-tert-ブチルジペルオキシイソフタレート等の有機過酸化物;9,10-アントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン等のキノン類;ベンゾインメチル、ベンゾインエチルエーテル、α-メチルベンゾイン、α-フェニルベンゾイン等のベンゾイン誘導体;2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-[4-{4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)ベンジル}-フェニル]-2-メチル-プロパン-1-オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン等のアルキルフェノン系化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系化合物;2-(O-ベンゾイルオキシム)-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン、1-(O-アセチルオキシム)-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン等のオキシムエステル系化合物が挙げられる。
【0096】
光ラジカル重合開始剤は、市販品として入手が可能であり、例えば、IRGACURE[登録商標]651、同184、同2959、同127、同907、同369、同379EG、同819、同819DW、同1800、同1870、同784、同OXE01、同OXE02、同OXE03、同OXE04、同250、同1173、同MBF、同TPO、同4265、同TPO(以上、BASF社製)、KAYACURE[登録商標]DETX-S、同MBP、同DMBI、同EPA、同OA(以上、日本化薬(株))、VICURE-10、同55(以上、STAUFFER Co.LTD製)、ESACURE KIP150、同TZT、同1001、同KTO46、同KB1、同KL200、同KS300、同EB3、トリアジン-PMS、トリアジンA、トリアジンB(以上、日本シイベルヘグナー(株))、アデカオプトマーN-1717、同N-1414、同N-1606、アデカアークルズN-1919T、同NCI-831E、同NCI-930、同NCI-730(以上、(株)ADEKA製)が挙げられる。
これらの光ラジカル重合開始剤は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0097】
光ラジカル重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、ポリイミド100質量部に対し、0.1質量部~20質量部が好ましく、光感度特性の観点から0.5質量部~15質量部がより好ましい。光ラジカル重合開始剤をポリイミド100質量部に対し0.1質量部以上含有する場合には、感光性樹脂組成物の光感度が向上しやすく、一方で、20質量部以下含有する場合には、感光性樹脂組成物の厚膜硬化性が改善しやすい。
【0098】
<<架橋性化合物>>
実施の形態では、レリーフパターンの解像性を向上させるために、光ラジカル重合性の不飽和結合を有するモノマー(架橋性化合物)を任意に感光性樹脂組成物に含有させることができる。
このような架橋性化合物としては、光ラジカル重合開始剤によりラジカル重合反応する(メタ)アクリル化合物が好ましく、特に以下に限定するものではないが、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコール又はポリエチレングリコールモノ又はジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール又はポリプロピレングリコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート、グリセロールのモノ、ジ又はトリ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールのジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールのジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールのジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールのジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールのジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールのジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのモノ又はジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、ベンゼントリメタクリレート、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンのジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アクリルアミド及びその誘導体、メタクリルアミド及びその誘導体、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのジ、トリ、又はテトラ(メタ)アクリレート、並びにこれら化合物のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物等の化合物、2-イソシアネートエチル(メタ)アクリレート又はイソシアネート含有(メタ)アクリレート、及びこれらにメチルエチルケトンオキシム、ε-カプロラクタム、γ-カプロラクタム、3,5-ジメチルピラゾール、マロン酸ジエチル、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のブロック剤を付加した化合物を挙げることができる。尚、これらの化合物は単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートを意味する。
【0099】
架橋性化合物の含有量は、特に限定されないが、ポリイミド100質量部に対し、好ましくは1質量部~100質量部であり、より好ましくは1質量部~50質量部である。
【0100】
<<熱硬化剤>>
熱硬化剤としては、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン、1,3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3-テトラキス(ブトキシメチル)尿素及び1,1,3,3-テトラキス(メトキシメチル)尿素などが挙げられる。
感光性樹脂組成物における熱硬化剤の含有量は、特に限定されない。
【0101】
<<フィラー>>
フィラーとしては、例えば無機フィラーが挙げられ、具体的にはシリカ、窒化アルミ二ウム、窒化ボロン、ジルコニア、アルミナなどのゾルが挙げられる。
感光性樹脂組成物にけるフィラーの含有量は、特に限定されない。
【0102】
<<その他の樹脂成分>>
実施の形態では、感光性樹脂組成物は、ポリイミド以外の樹脂成分をさらに含有してもよい。感光性樹脂組成物に含有させることができる樹脂成分としては、例えば、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリオキサゾール、ポリオキサゾール前駆体、フェノール樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂、シロキサン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
これらの樹脂成分の含有量は、特に限定されないが、ポリイミド100質量部に対して、好ましくは0.01質量部~20質量部の範囲である。
【0103】
<<増感剤>>
実施の形態では、感光性樹脂組成物には、光感度を向上させるために増感剤を任意に配合することができる。
増感剤としては、例えば、ミヒラーズケトン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,5-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)シクロペンタン、2,6-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p-ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p-ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2-(p-ジメチルアミノフェニルビフェニレン)-ベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノフェニルビニレン)ベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3-ビス(4’-ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3’-カルボニル-ビス(7-ジエチルアミノクマリン)、3-アセチル-7-ジメチルアミノクマリン、3-エトキシカルボニル-7-ジメチルアミノクマリン、3-ベンジロキシカルボニル-7-ジメチルアミノクマリン、3-メトキシカルボニル-7-ジエチルアミノクマリン、3-エトキシカルボニル-7-ジエチルアミノクマリン、N-フェニル-N’-エチルエタノールアミン、N-フェニルジエタノールアミン、N-p-トリルジエタノールアミン、N-フェニルエタノールアミン、4-モルホリノベンゾフェノン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、2-メルカプトベンズイミダゾール、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ナフト(1,2-d)チアゾール、2-(p-ジメチルアミノベンゾイル)スチレン等が挙げられる。
これらは単独で、又は複数の組合せで用いることができる。
【0104】
増感剤の含有量は、特に限定されないが、ポリイミド100質量部に対し、0.1質量部~25質量部であることが好ましい。
【0105】
<<接着助剤>>
実施の形態では、感光性樹脂組成物を用いて形成される膜と基材との接着性を向上させるために、接着助剤を任意に感光性樹脂組成物に配合することができる。
接着助剤としては、例えば、γ-アミノプロピルジメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ジメトキシメチル-3-ピペリジノプロピルシラン、ジエトキシ-3-グリシドキシプロピルメチルシラン、N-(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)スクシンイミド、N-〔3-(トリエトキシシリル)プロピル〕フタルアミド酸、ベンゾフェノン-3,3’-ビス(N-〔3-トリエトキシシリル〕プロピルアミド)-4,4’-ジカルボン酸、ベンゼン-1,4-ビス(N-〔3-トリエトキシシリル〕プロピルアミド)-2,5-ジカルボン酸、3-(トリエトキシシリル)プロピルスクシニックアンハイドライド、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、及びアルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系接着助剤等が挙げられる。
【0106】
これらの接着助剤のうちでは、接着力の点からシランカップリング剤を用いることがより好ましい。
【0107】
接着助剤の含有量は、特に限定されないが、ポリイミド100質量部に対し、0.5質量部~25質量部の範囲が好ましい。
【0108】
<<熱重合禁止剤>>
実施の形態では、特に溶媒を含む溶液の状態での保存時の感光性樹脂組成物の粘度及び光感度の安定性を向上させるために、熱重合禁止剤を任意に配合することができる。
熱重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、4-メトキシフェノール、N-ニトロソジフェニルアミン、p-tert-ブチルカテコール、フェノチアジン、N-フェニルナフチルアミン、エチレンジアミン四酢酸、1,2-シクロヘキサンジアミン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、5-ニトロソ-8-ヒドロキシキノリン、1-ニトロソ-2-ナフトール、2-ニトロソ-1-ナフトール、2-ニトロソ-5-(N-エチル-N-スルフォプロピルアミノ)フェノール、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、N-ニトロソ-N(1-ナフチル)ヒドロキシルアミンアンモニウム塩等が用いられる。
【0109】
熱重合禁止剤の含有量としては、特に限定されないが、ポリイミド100質量部に対し、0.005質量部~12質量部の範囲が好ましい。
【0110】
<<アゾール化合物>>
例えば、銅又は銅合金から成る基板を用いる場合には、基板変色を抑制するためにアゾール化合物を任意に感光性樹脂組成物に配合することができる。
アゾール化合物としては、例えば、1H-トリアゾール、5-メチル-1H-トリアゾール、5-エチル-1H-トリアゾール、4,5-ジメチル-1H-トリアゾール、5-フェニル-1H-トリアゾール、4-t-ブチル-5-フェニル-1H-トリアゾール、5-ヒドロキシフェニル-1H-トリアゾール、フェニルトリアゾール、p-エトキシフェニルトリアゾール、5-フェニル-1-(2-ジメチルアミノエチル)トリアゾール、5-ベンジル-1H-トリアゾール、ヒドロキシフェニルトリアゾール、1,5-ジメチルトリアゾール、4,5-ジエチル-1H-トリアゾール、1H-ベンゾトリアゾール、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α―ジメチルベンジル)フェニル]-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、4-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、4-カルボキシ-1H-ベンゾトリアゾール、5-カルボキシ-1H-ベンゾトリアゾール、1H-テトラゾール、5-メチル-1H-テトラゾール、5-フェニル-1H-テトラゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール、1-メチル-1H-テトラゾール等が挙げられる。特に好ましくは、4-カルボキシ-1H-ベンゾトリアゾール及び5-カルボキシ-1H-ベンゾトリアゾールが挙げられる。
また、これらのアゾール化合物は、1種で用いても2種以上の混合物で用いてもよい。
【0111】
アゾール化合物の含有量は、特に限定されないが、ポリイミド100質量部に対し、0.1質量部~20質量部であることが好ましく、光感度特性の観点から0.5質量部~5質量部であることがより好ましい。アゾール化合物のポリイミド100質量部に対する含有量が0.1質量部以上である場合には、感光性樹脂組成物を銅又は銅合金の上に形成したときに、銅又は銅合金表面の変色が抑制され、一方、20質量部以下である場合には、光感度に優れるため好ましい。
【0112】
<<ヒンダードフェノール化合物>>
実施の形態では、銅上の変色を抑制するためにヒンダードフェノール化合物を任意に感光性樹脂組成物に配合することができる。
ヒンダードフェノール化合物としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,5-ジ-t-ブチル-ハイドロキノン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネ-ト、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4、4’-メチレンビス(2、6-ジ-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオ-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-ビス〔3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6-ヘキサンジオール-ビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2-チオ-ジエチレンビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N’ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、ペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5-トリス(3-ヒドロキシ-2,6-ジメチル-4-イソプロピルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-s-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス[4-(1-エチルプロピル)-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス[4-トリエチルメチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(3-ヒドロキシ-2,6-ジメチル-4-フェニルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,5,6-トリメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-5-エチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-6-エチル-3-ヒドロキシ-2-メチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-6-エチル-3-ヒドロキシ-2,5-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-5,6-ジエチル-3-ヒドロキシ-2-メチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2-メチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,5-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-5‐エチル-3-ヒドロキシ-2-メチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
これらの中でも、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオンが特に好ましい。
【0113】
ヒンダードフェノール化合物の含有量は、特に限定されないが、ポリイミド100質量部に対し、0.1質量部~20質量部であることが好ましく、光感度特性の観点から0.5質量部~10質量部であることがより好ましい。ヒンダードフェノール化合物のポリイミド100質量部に対する含有量が0.1質量部以上である場合、例えば銅又は銅合金の上に感光性樹脂組成物を形成した場合に、銅又は銅合金の変色・腐食が防止され、一方、20質量部以下である場合には光感度に優れるため好ましい。
【0114】
感光性樹脂組成物は、後述する硬化レリーフパターンの製造のためのネガ型感光性樹脂組成物として好適に用いることができる。
【0115】
(樹脂膜)
本発明の樹脂膜は、本発明の感光性樹脂組成物の塗布膜の焼成物である。
塗布方法としては、従来から感光性樹脂組成物の塗布に用いられている方法、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷機等で塗布する方法、スプレーコーターで噴霧塗布する方法等を用いることができる。
焼成物を得る際の焼成の方法としては、例えば、ホットプレートによるもの、オーブンを用いるもの、温度プログラムを設定できる昇温式オーブンを用いるもの等種々の方法を選ぶことができる。焼成は、例えば、130℃~250℃で30分~5時間の条件で行うことができる。加熱硬化時の雰囲気気体としては空気を用いてもよく、窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いることもできる。
樹脂膜の厚みとしては、特に限定されないが、1μm~100μmが好ましく、2μm~50μmがより好ましい。
樹脂膜は、例えば、絶縁膜である。
【0116】
(感光性レジストフィルム)
本発明の感光性樹脂組成物は、感光性レジストフィルム(所謂、ドライフィルムレジスト)に用いることができる。
感光性レジストフィルムは、基材フィルムと、本発明の感光性樹脂組成物から形成される感光性樹脂層(感光性樹脂膜)と、カバーフィルムとを有する。
通常、基材フィルム上に、感光性樹脂層と、カバーフィルムとがこの順で積層されている。
【0117】
感光性レジストフィルムは、例えば、基材フィルム上に、感光性樹脂組成物を塗布し、乾燥させて感光性樹脂層を形成した後、その感光性樹脂層上にカバーフィルムを積層することにより製造できる。
塗布方法としては、従来から感光性樹脂組成物の塗布に用いられている方法、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷機等で塗布する方法、スプレーコーターで噴霧塗布する方法等を用いることができる。
乾燥の方法としては、例えば、20℃~200℃で1分~1時間の条件が挙げられる。
得られる感光性樹脂層の厚みとしては、特に限定されないが、1μm~100μmが好ましく、2μm~50μmがより好ましい。
【0118】
基材フィルムには、公知のものを使用でき、例えば熱可塑性樹脂フィルム等が用いられる。この熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステルが挙げられる。基材フィルムの厚みは、2μm~150μmが好ましい。
カバーフィルムには、公知のものを使用でき、例えばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が用いられる。カバーフィルムとしては、感光性樹脂層との接着力が、基材フィルムよりも小さいフィルムが好ましい。カバーフィルムの厚みは、2μm~150μmが好ましく、2μm~100μmがより好ましく、5μm~50μmが特に好ましい。
基材フィルムとカバーフィルムとは、同一のフィルム材料であってもよいし、異なるフィルムを用いてもよい。
【0119】
(硬化レリーフパターン付き基板の製造方法)
本発明の硬化レリーフパターン付き基板の製造方法は、
(1)本発明に係る感光性樹脂組成物を基板上に塗布して、感光性樹脂層(感光性樹脂膜)を該基板上に形成する工程と、
(2)該感光性樹脂層を露光する工程と、
(3)該露光後の感光性樹脂層を現像して、レリーフパターンを形成する工程と、
(4)該レリーフパターンを加熱処理して、硬化レリーフパターンを形成する工程と
を含む。
【0120】
以下、各工程について説明する。
【0121】
(1)本発明に係る感光性樹脂組成物を基板上に塗布して、感光性樹脂層を該基板上に形成する工程
本工程では、本発明に係る感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、必要に応じて、その後に乾燥させて、感光性樹脂層を形成する。塗布方法としては、従来から感光性樹脂組成物の塗布に用いられている方法、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷機等で塗布する方法、スプレーコーターで噴霧塗布する方法等を用いることができる。
【0122】
必要に応じて、感光性樹脂組成物から成る塗膜を乾燥させることができ、そして乾燥方法としては、例えば、風乾、オーブン又はホットプレートによる加熱乾燥、真空乾燥等の方法が用いられる。具体的には、風乾又は加熱乾燥を行う場合、20℃~200℃で1分~1時間の条件で乾燥を行うことができる。以上により基板上に感光性樹脂層を形成できる。
【0123】
(2)感光性樹脂層を露光する工程
本工程では、上記(1)工程で形成した感光性樹脂層を、コンタクトアライナー、ミラープロジェクション、ステッパー等の露光装置を用いて、パターンを有するフォトマスク又はレチクルを介して又は直接に、紫外線光源等により露光する。
露光の際に使用される光源としては、例えば、g線、h線、i線、ghi線ブロードバンド、及びKrFエキシマレーザーが挙げられる。露光量は25mJ/cm~2000mJ/cmが望ましい。
【0124】
この後、光感度の向上等の目的で、必要に応じて、任意の温度及び時間の組合せによる露光後ベーク(PEB)及び/又は現像前ベークを施してもよい。ベーク条件の範囲は、温度は50℃~200℃であることが好ましく、時間は10秒~600秒であることが好ましいが、感光性樹脂組成物の諸特性を阻害するものでない限り、この範囲に限らない。
【0125】
(3)露光後の感光性樹脂層を現像して、レリーフパターンを形成する工程
本工程では、露光後の感光性樹脂層のうち未露光部を現像除去する。露光(照射)後の感光性樹脂層を現像する現像方法としては、従来知られているフォトレジストの現像方法、例えば、回転スプレー法、パドル法、超音波処理を伴う浸漬法等の中から任意の方法を選択して使用することができる。また、現像の後、現像液を除去する目的でリンスを施してもよい。さらに、レリーフパターンの形状を調整する等の目的で、必要に応じて、任意の温度及び時間の組合せによる現像後ベークを施してもよい。
現像に使用される現像液としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン等が好ましい。また、各溶媒を2種以上、例えば数種類組合せて用いることもできる。
リンスに使用されるリンス液としては、現像液と混和し、感光性樹脂組成物に対して溶解性が低い有機溶媒が好ましい。リンス液としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、乳酸エチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、トルエン、キシレン等が好ましい。また、各溶媒を2種以上、例えば数種類組合せて用いることもできる。
【0126】
(4)レリーフパターンを加熱処理して、硬化レリーフパターンを形成する工程
本工程では、上記現像により得られたレリーフパターンを加熱して硬化レリーフパターンに変換する。加熱硬化の方法としては、例えば、ホットプレートによるもの、オーブンを用いるもの、温度プログラムを設定できる昇温式オーブンを用いるもの等種々の方法を選ぶことができる。加熱は、例えば、130℃~250℃で30分~5時間の条件で行うことができる。加熱硬化時の雰囲気気体としては空気を用いてもよく、窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いることもできる。
【0127】
硬化レリーフパターンの厚みとしては、特に限定されないが、1μm~100μmが好ましく、2μm~50μmがより好ましい。
【0128】
(半導体装置)
実施の形態では、半導体素子と該半導体素子の上部又は下部に設けられた硬化膜とを備える半導体装置も提供される。硬化膜は、本発明の感光性樹脂組成物から形成される硬化レリーフパターンである。硬化レリーフパターンは、例えば、上述した硬化レリーフパターン付き基板の製造方法における工程(1)~(4)により得ることができる。
また、本発明は、基板として半導体素子を用い、上述した硬化レリーフパターン付き基板の製造方法を工程の一部として含む半導体装置の製造方法にも適用できる。本発明の半導体装置は、硬化レリーフパターンを、表面保護膜、層間絶縁膜、再配線用絶縁膜、フリップチップ装置用保護膜、又はバンプ構造を有する半導体装置の保護膜等として形成し、既知の半導体装置の製造方法と組合せることで製造することができる。
【0129】
(表示体装置)
実施の形態では、表示体素子と該表示体素子の上部に設けられた硬化膜とを備える表示体装置であって、該硬化膜は上述の硬化レリーフパターンである表示体装置が提供される。ここで、当該硬化レリーフパターンは、当該表示体素子に直接接して積層されていてもよく、別の層を間に挟んで積層されていてもよい。例えば、該硬化膜として、TFT(Thin Film Transistor)液晶表示素子及びカラーフィルター素子の表面保護膜、絶縁膜、及び平坦化膜、MVA(Multi-domain Vertical Alignment)型液晶表示装置用の突起、並びに有機EL(Electro-Luminescence)素子陰極用の隔壁を挙げることができる。
【0130】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記のような半導体装置への適用の他、多層回路の層間絶縁膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、及び液晶配向膜等の用途にも有用である。
【実施例0131】
次に実施例を挙げ本発明の内容を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0132】
下記合成例及び比較合成例に示す化合物は下記に示すものである。
BEM-S:3,5-ジアミノ安息香酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル(三星化学工業(株)製)
【化26】
【0133】
HFBAPP:2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン
【化27】
【0134】
脂環構造を有さない炭素原子数14~28の脂肪族ジアミン化合物の混合物(以下「脂肪族ジアミン化合物の混合物」と称する):
当該脂肪族ジアミン化合物の混合物は、以下の(1)~(3)の混合物である。
(1)脂環構造を有さない炭素原子数20の飽和脂肪族ジアミン化合物
(2)脂環構造を有さない炭素原子数20の飽和脂肪族ジアミン化合物
(3)脂環構造を有さない炭素原子数16の飽和脂肪族ジアミン化合物
混合割合は、(1):(2):(3)(質量比)=78:19:3である。主成分である(1)は、エチル基を分岐鎖として有する1,18-オクタデカンジアミンである。(2)は、(1)の位置異性体である。なお、(1)~(3)における各アミノ基は、-NHである。
【0135】
BPADA:4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物
【化28】
【0136】
TMPBP-TME:2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイルビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボキシレート)(本州化学工業(株)製)
【化29】
【0137】
下記合成例に示す重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、本明細書ではGPCと略称する)による測定結果である。測定には、GPC装置(HLC-8320GPC(東ソー(株)製))を用い、測定条件は以下の通りである。
・カラム:Shodex〔登録商標〕KD-805/Shodex〔登録商標〕KD-803(昭和電工(株)製)
・カラム温度:50℃
・流量:1mL/分
・溶離液:N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、臭化リチウム一水和物(30mM)/リン酸(30mM)/テトラヒドロフラン(1%)
・標準試料:ポリエチレンオキシド
【0138】
下記合成例に示す化学イミド化率は、核磁気共鳴装置(以下、本明細書ではNMRと略称する)による測定結果である。測定には、NMR装置(JNM-ECA500)(日本電子(株)製)を用い、測定条件は下記の通りである。
・測定温度:室温
・測定溶媒:重水素化テトラヒドロフラン(THF-d8)
尚、化学イミド化率はイミド化前後で変化しない構造に由来するプロトンを基準プロトンとし、このプロトンのピーク積算値と、9.5ppm~11.0ppm付近に現れるアミック酸のNH基に由来するプロトンピーク積算値とを用い以下の式によって算出した。
化学イミド化率(%)=(1-α・x/y)×100
上記式において、xはアミック酸のNH基由来のプロトンピーク積算値、yは基準プロトンのピーク積算値、αはポリアミック酸(イミド化率が0%)の場合におけるアミック酸のNH基プロトン1個に対する基準プロトンの個数割合である。
【0139】
<合成例1> ポリイミド(P-1)の合成
4口フラスコにBEM-S 5.27g(19.95mmol)、脂肪族ジアミン化合物の混合物(アミン価:341.7mgKOH/g) 12.16g(37.05mmol)、及びN-エチル-2-ピロリドン 168.66gを加え、空気下、室温で撹拌して溶解させた。さらに、BPADA 14.54g(27.93mmol)、TMPBP-TME 17.63g(28.50mmol)、及びN-エチル-2-ピロリドン 112.44gをフラスコ内に加え、50℃で20時間撹拌することでポリアミック酸溶液を得た。次に、N-エチル-2-ピロリドン 164.50g、無水酢酸 17.37g、及びトリエチルアミン 2.87gをフラスコ内に加え、60℃で3時間撹拌することで化学イミド化を行った。この反応溶液をメタノール中に滴下し、生じた沈殿物をろ過後、60℃で減圧乾燥することでポリイミド粉末を得た。GPCによる重量平均分子量(Mw)は17,364であり、NMR(THF-d8)による化学イミド化率は99%であった。
【0140】
<合成例2> ポリイミド(P-2)の合成
4口フラスコにBEM-S 4.62g(17.50mmol)、HFBAPP 5.18g(10.00mmol)、脂肪族ジアミン化合物の混合物(アミン価:341.7mgKOH/g) 7.39g(22.50mmol)、及びN-エチル-2-ピロリドン 154.41gを加え、空気下、室温で撹拌して溶解させた。さらに、BPADA 12.75g(24.50mmol)、TMPBP-TME 15.46g(25.00mmol)、及びN-エチル-2-ピロリドン 102.94gをフラスコ内に加え、50℃で16.5時間撹拌することでポリアミック酸溶液を得た。次に、N-エチル-2-ピロリドン 150.50g、無水酢酸 15.23g、及びトリエチルアミン 2.51gをフラスコ内に加え、60℃で3時間撹拌することで化学イミド化を行った。この反応溶液をメタノール中に滴下し、生じた沈殿物をろ過後、60℃で減圧乾燥することでポリイミド粉末を得た。GPCによる重量平均分子量(Mw)は22,041であり、NMR(THF-d8)による化学イミド化率は98%であった。
【0141】
<合成例3> ポリイミド(P-3)の合成
4口フラスコにBEM-S 4.53g(17.15mmol)、HFBAPP 8.89g(17.15mmol)、脂肪族ジアミン化合物の混合物(アミン価:341.7mgKOH/g) 4.83g(14.70mmol)、及びN-エチル-2-ピロリドン 156.07gを加え、空気下、室温で撹拌して溶解させた。さらに、BPADA 12.50g(24.01mmol)、TMPBP-TME 15.16g(24.50mmol)、及びN-エチル-2-ピロリドン 104.05gをフラスコ内に加え、50℃で16.5時間撹拌することでポリアミック酸溶液を得た。次に、N-エチル-2-ピロリドン 152.25g、無水酢酸 14.93g、及びトリエチルアミン 2.47gをフラスコ内に加え、60℃で3時間撹拌することで化学イミド化を行った。この反応溶液をメタノール中に滴下し、生じた沈殿物をろ過後、60℃で減圧乾燥することでポリイミド粉末を得た。GPCによる重量平均分子量(Mw)は27,705であり、NMR(THF-d8)による化学イミド化率は98%であった。
【0142】
<比較合成例1> ポリイミド(P-4)の合成
4口フラスコにBEM-S 2.81g(10.62mmol)、HFBAPP 10.23g(19.72mmol)、及びN-エチル-2-ピロリドン 96.15gを加え、空気下、室温で撹拌して溶解させた。さらに、BPADA 7.58g(14.57mmol)、TMPBP-TME 9.39g(15.17mmol)、及びN-エチル-2-ピロリドン 73.85gをフラスコ内に加え、室温で39時間撹拌することでポリアミック酸溶液を得た。次に、N-エチル-2-ピロリドン 100.00g、無水酢酸 9.29g、及びトリエチルアミン 1.54gをフラスコ内に加え、60℃で3時間撹拌することで化学イミド化を行った。反応溶液にN-エチル-2-ピロリドン 128.57gを加えて希釈し、この希釈溶液をメタノール中に滴下した。生じた沈殿物をメタノールで洗浄後、60℃で減圧乾燥することでポリイミド粉末を得た。GPCによる重量平均分子量(Mw)は44,173であり、NMR(THF-d8)による化学イミド化率は99%であった。
【0143】
<比較合成例2> ポリアミック酸(P-5)の合成
合成例3と同様の方法で重合を行い、ポリアミック酸溶液を得た。
【0144】
実施例及び比較例に示す化合物は下記に示すものである。
・NKエステル A-DOD-N:1,10-デカンジオールジアクリレート(新中村化学工業(株)製)
・IRGACURE[登録商標]OXE01:1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル-,2-(O-ベンゾイルオキシム)](BASFジャパン(株)製)
・CaA-BTZ:5-カルボキシベンゾトリアゾール(Sigma-Aldrich Japan G.K.製)
・KBM-5103:3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)
【0145】
<実施例1>
合成例1で得られたポリイミド(P-1)6.00g、架橋剤としてNKエステル A-DOD-N 0.60g、光ラジカル開始剤としてIRGACURE[登録商標]OXE01 0.12g、CaA-BTZ 0.18g、KBM-5103 0.12g、N-エチル-2-ピロリドン 4.48g、及びシクロペンタノン 10.44gを混合して溶解させた後、孔径5μmのポリプロピレン製フィルターを用いてろ過することで、ネガ型感光性樹脂組成物を調製した。
【0146】
<実施例2>
合成例2で得られたポリイミド(P-2)10.00g、架橋剤としてNKエステル A-DOD-N 1.50g、光ラジカル開始剤としてIRGACURE[登録商標]OXE01 0.40g、CaA-BTZ 0.30g、KBM-5103 0.20g、N-エチル-2-ピロリドン 9.57g、γ-ブチロラクトン 12.75g、及びシクロペンタノン 9.57gを混合して溶解させた後、孔径5μmのポリプロピレン製フィルターを用いてろ過することで、ネガ型感光性樹脂組成物を調製した。
【0147】
<実施例3>
実施例2で得られたネガ型感光性樹脂組成物 31.35gに、N-エチル-2-ピロリドン 0.35g、γ-ブチロラクトン 0.46g、及びシクロペンタノン 0.35gを混合して希釈した。
【0148】
<実施例4>
合成例3で得られたポリイミド(P-3)10.00g、架橋剤としてNKエステル A-DOD-N 1.50g、光ラジカル開始剤としてIRGACURE[登録商標]OXE01 0.40g、CaA-BTZ 0.30g、KBM-5103 0.20g、N-エチル-2-ピロリドン 10.06g、γ-ブチロラクトン 13.41g、及びシクロペンタノン 10.06gを混合して溶解させた後、孔径5μmのポリプロピレン製フィルターを用いてろ過することで、ネガ型感光性樹脂組成物を調製した。
【0149】
<実施例5>
実施例4で得られたネガ型感光性樹脂組成物 33.52gに、N-エチル-2-ピロリドン 1.26g、γ-ブチロラクトン 1.68g、及びシクロペンタノン 1.26gを混合して希釈した。
【0150】
<比較例1>
比較合成例1で得られたポリイミド(P-4)10.00g、架橋剤としてNKエステル A-DOD-N 1.50g、光ラジカル開始剤としてIRGACURE[登録商標]OXE01 0.40g、CaA-BTZ 0.30g、KBM-5103 0.20g、N-エチル-2-ピロリドン 12.45g、γ-ブチロラクトン 16.61g、及びシクロペンタノン 12.45gを混合して溶解させた後、孔径5μmのポリプロピレン製フィルターを用いてろ過することで、ネガ型感光性樹脂組成物を調製した。
【0151】
<比較例2>
比較例1で得られたネガ型感光性樹脂組成物 32.89gに、N-エチル-2-ピロリドン 4.32g、γ-ブチロラクトン 5.76g、及びシクロペンタノン 4.32gを混合して希釈した。
【0152】
<比較例3>
比較合成例2で得られたポリアミック酸(P-5)を含むN-エチル-2-ピロリドン溶液(固形分濃度:15質量%)10.00gに、架橋剤としてNKエステル A-DOD-N 0.225g、光ラジカル開始剤としてIRGACURE[登録商標]OXE01 0.060g、CaA-BTZ 0.045g、及びKBM-5103 0.030gを混合して溶解させた後、孔径5μmのポリプロピレン製フィルターを用いてろ過することで、ネガ型感光性樹脂組成物を調製した。
【0153】
〔電気特性評価〕
実施例1、実施例2、実施例4、及び比較例1で調製したネガ型感光性樹脂組成物を20μm厚のアルミニウム箔を被覆させた4インチシリコンウェハ上にスピンコートし、ホットプレート上で115℃、270秒間焼成することで、アルミニウム箔上に約25μmの感光性樹脂膜を形成した。得られた感光性樹脂膜上にi線アライナー(PLA-501、キヤノン(株)製)を用いて、ウェハ上に500mJ/cmで全面露光した後、高温クリーンオーブン(CLH-21CD(V)-S、光洋サーモシステム(株))を用いて、窒素雰囲気中、230℃、2時間焼成した。さらに、焼成したアルミニウム箔を6N塩酸に浸漬し、アルミニウム箔を溶解させることで、フィルムを得た。得られたフィルムの60GHzにおける誘電正接を、スプリットシリンダー共振器を用いて測定した。誘電正接の測定条件は以下の通りである。
・測定方法:スプリットシリンダー共振器
・ベクトルネットワークアナライザー:FieldFox N9926A(キーサイト・テクノロジーズ(株)製)
・共振器:CR-760(EMラボ(株)製)
・測定周波数:約60GHz
フィルムの60GHzにおける誘電正接の測定結果を表1に示す。
【0154】
【表1】
表1の結果から、実施例1、実施例2、実施例4のネガ型感光性樹脂組成物から得られたフィルムは、比較例1のネガ型感光性樹脂組成物から得られたフィルムよりも60GHzにおける誘電正接が低い値を示した。
【0155】
〔感光性評価〕
実施例3、実施例5、及び比較例2で調製したネガ型感光性樹脂組成物を8インチシリコンウェハ上にスピンコーター(CLEAN TRACK ACT-8、東京エレクトロン(株)製)を用いて塗布後、115℃、270秒間焼成することで、ウェハ上に膜厚約6.5μmの感光性樹脂膜を形成した。得られた感光性樹脂膜上にi線ステッパー(NSR-2205i12D、ニコン(株)製)を用いて7mm角の露光パターン(露光量:300mJ/cm)を作成した。露光後、自動現像装置(AD-1200、ミカサ(株)製)を用い、現像液としてシクロペンタノンでスプレー現像し、リンス液としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)でスプレーリンスした。尚、シクロペンタノンによる現像時間は未露光部(0mJ/cm)が完全に現像されるまでの時間とし、PGMEAによるリンス時間は10秒間とした。成膜直後の膜厚と未露光部及び露光部(300mJ/cm)における現像後の膜厚を干渉膜厚計(ラムダエースVM-2110、SCREEN(株)製)を用いて測定することによって、露光部において現像されずに残存した膜厚の割合(残膜率(%))を以下の式によって算出した。
残膜率(%)=[(未露光部の膜厚)または(露光部の膜厚)]/(成膜直後の膜厚)×100
すなわち、残膜率が80%であれば、現像後の膜厚は成膜直後の膜厚の80%が現像されずに残存していることを意味している。現像時間及び現像後残膜率の測定結果を表2に示す。
【0156】
【表2】
【0157】
表2の結果から、実施例3、実施例5、及び比較例2のネガ型感光性樹脂組成物は、現像後に未露光部の感光性樹脂膜は全て現像され、露光部の感光性樹脂膜は殆ど現像されなかった。さらに、比較例2のネガ型感光性樹脂組成物から得られた感光性樹脂膜は、実施例3及び実施例5のネガ型感光性樹脂組成物から得られた感光性樹脂膜と比較してシクロペンタノンによる現像時間が長かった。すなわち、実施例3及び実施例5のネガ型感光性樹脂組成物から得られた感光性樹脂膜は現像液に対する溶解性が高く、現像工程に係る現像時間の短縮や使用する現像液の削減に有効である。
【0158】
〔残留応力評価〕
実施例3、実施例5、及び比較例2で調製したネガ型感光性樹脂組成物を、厚さ724μmの新品8インチシリコンウェハに対して、スピンコーター(CLEAN TRACK ACT-8、東京エレクトロン(株)製)を用いて塗布後、115℃、270秒間焼成することで、ウェハ上に膜厚約6.5μmの感光性樹脂膜を形成した。
次に、i線ステッパー(NSR-2205i12D、ニコン(株)製)を用いて500mJ/cmで全面露光した。次いで高温クリーンオーブン(CLH-21CD(V)-S、光洋サーモシステム(株))を用いて窒素雰囲気中、230℃、2時間焼成して、ポリイミド硬化膜を得た。得られたポリイミド膜の残留応力を室温下、薄膜応力測定装置(FLX-3300-T:ケーエルエー・テンコール(株)製)を用いて測定した。
残留応力を測定した結果を表3に示す。得られた測定値が25MPa以下を「良好」、30MPa以上を「不良」とした。
【0159】
【表3】
【0160】
表3の結果から、実施例3及び実施例5のネガ型感光性樹脂組成物から得られたポリイミド硬化膜は、比較例2のネガ型感光性樹脂組成物から得られたポリイミド硬化膜よりも残留応力が小さいため、シリコンウェハが反りにくく、搬送やウェハ固定の際の不具合が生じにくい。
【0161】
〔保存安定性試験〕
実施例3、実施例5、比較例2及び比較例3で調製した直後のネガ型感光性樹脂組成物を、電磁回転式EMS粘度計によって組成物の粘度を測定した。その後、3週間、室温で保管した後、同様の手法により、粘度を再度測定した。そうすることで、経時変化によって生じる粘度変化の度合い(粘度変化率(%))を以下の式によって算出した。
粘度変化率(%)=[1-(室温、3週間保管後の粘度)/(調製直後の粘度)]×100
粘度の測定条件は以下の通りである。
・電磁回転式EMS粘度計:EMS-1000(京都電子工業(株)製)
・測定温度:25℃
・球状プローブ:4.7mmアルミニウム
・回転数:1000rpm
保存安定性試験の結果を表4に示す。粘度変化が大きい程、ネガ型感光性樹脂組成物の保存安定性が悪いと言える。尚、粘度変化率の絶対値が3%未満の場合を「良好」、3%~10%の場合を「やや不良」、10%を超える場合を「不良」とした。
【0162】
【表4】
表4の結果から、実施例3、実施例5及び比較例2のネガ型感光性樹脂組成物は、比較例3のネガ型感光性樹脂組成物よりも粘度変化が小さく、高い保存安定性を有していると言える。
【0163】
すなわち、実施例1乃至実施例5のネガ型感光性樹脂組成物は短い現像時間でレリーフパターンの作製が可能であるだけでなく、保存安定性に優れ、誘電正接が低く、さらに残留応力が小さいため、優れた電気特性を必要とする電子材料の製造に好適に用いることができる。