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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127978
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】硫黄含有組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 17/44 20060101AFI20230907BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20230907BHJP
   B09B 3/21 20220101ALI20230907BHJP
   B09B 3/25 20220101ALI20230907BHJP
【FI】
C01B17/44
B09B3/40 ZAB
B09B3/21
B09B3/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031986
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100226023
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 崇仁
(72)【発明者】
【氏名】高松 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】野田 謙二
(72)【発明者】
【氏名】武永 計介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴康
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA12
4D004AA31
4D004CA04
4D004CA14
4D004CA15
4D004CA22
4D004CB09
4D004CB13
4D004CB31
4D004DA03
4D004DA06
4D004DA20
(57)【要約】
【課題】
硫黄含有化合物の含有量が大きい硫黄含有組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】
硫黄源と公称目開き1.18mmの篩を通過する粒子の割合が70質量%以上である炭素源とを混合して混合原料を得る混合工程と、混合原料を転動造粒して造粒原料を得る造粒工程と、造粒原料を加熱する加熱工程とを有する、硫黄含有組成物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄源と公称目開き1.18mmの篩を通過する粒子の割合が70質量%以上である炭素源とを混合して混合原料を得る混合工程と、
前記混合原料を転動造粒して造粒原料を得る造粒工程と、
前記造粒原料を加熱する加熱工程とを有する、硫黄含有組成物の製造方法。
【請求項2】
硫黄源と公称目開き1.18mmの篩を通過する粒子の割合が70質量%以上である炭素源とを混合して混合原料を得る混合工程と、
前記混合原料を造粒して略球状の原料粒子を含む造粒原料を得る造粒工程と、
前記造粒原料を加熱する加熱工程とを有する、硫黄含有組成物の製造方法。
【請求項3】
前記造粒工程が転動造粒法により行われる、請求項2に記載の硫黄含有組成物の製造方法。
【請求項4】
前記造粒原料の粒径が3mm以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の硫黄含有組成物の製造方法。
【請求項5】
前記加熱工程がロータリーキルンにより行われ、前記ロータリーキルン内における加熱温度が1200℃以下であり、酸素濃度が20体積%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の硫黄含有組成物の製造方法。
【請求項6】
前記硫黄含有組成物が金属硫化物を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の硫黄含有組成物の製造方法。
【請求項7】
前記硫黄源が石膏を含み、前記硫黄含有組成物が硫化カルシウムを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の硫黄含有組成物の製造方法。
【請求項8】
前記石膏が紙を含む廃石膏ボードであり、前記廃石膏ボードを粉砕する粉砕工程を含む、請求項7に記載の硫黄含有組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄含有組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硫黄を含む硫黄源と、炭素を含む炭素源とを加熱して硫黄含有組成物を製造する方法が知られている。例えば、特許文献1には石膏と粉砕した炭素源とを混合して還元雰囲気下で加熱することで硫化カルシウムを得る方法が開示されている。また特許文献2には還元材および金属硫酸塩を含む原料に酸化物を加え、造粒し、加熱・溶融することで硫化物を含有する重金属溶出抑制材の製造方法が開示されている。また、特許文献2には、炭素等の還元材及び金属硫酸塩を含む原料を、酸化雰囲気下1200~1600℃で溶融する、金属硫化物を含む重金属溶出抑制材の製造方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-306911号公報
【特許文献2】特開2004-337677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている製造方法は管状電気炉で4時間の加熱処理を行っている上、製品中には未反応の硫酸カルシウムが20%以上残存しており、更に効率的な製法が望まれている。
【0005】
また、特許文献2に記載の製造方法は2種以上の酸化物混合物又は複合酸化物を原料中に含み、これを1200℃以上高温で加熱することで溶融させる必要があった。すなわち、1200℃以上の高温加熱が必要であり、また溶融させる為の酸化物を多量に配合する必要もあり、得られる重金属溶出抑制材中の有効成分(硫化物)の量は必ずしも多くないという課題があり、より低温で高純度の重金属溶出抑制成分を得られる方法が望まれている。
【0006】
本発明は、上述の事情によりなされたものであり、硫黄含有化合物の含有量が大きい硫黄含有組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の硫黄含有組成物の製造方法は、硫黄源と公称目開き1.18mmの篩を通過する粒子の割合が70質量%以上である炭素源とを混合して混合原料を得る混合工程と、混合原料を転動造粒して造粒原料を得る造粒工程と、造粒原料を加熱する加熱工程とを有する。
【0008】
本発明の硫黄含有組成物の製造方法は、硫黄源と公称目開き1.18mmの篩を通過する粒子の割合が70質量%以上である炭素源とを混合して混合原料を得る混合工程と、混合原料を造粒して略球状の原料粒子を含む造粒原料を得る造粒工程と、造粒原料を加熱する加熱工程とを有するものであってもよい。
【0009】
上記造粒工程が転動造粒法により行われてよい。
【0010】
上記造粒原料の粒径が3mm以上であってよい。
【0011】
上記加熱工程がロータリーキルンにより行われ、ロータリーキルン内における加熱温度が1200℃以下であり、酸素濃度が20体積%以下であってよい。
【0012】
上記硫黄含有組成物が金属硫化物を含んでいてよい。
【0013】
上記硫黄源が石膏を含み、上記硫黄含有組成物が硫化カルシウムを含んでいてよい。
【0014】
上記石膏が紙を含む廃石膏ボードであり、廃石膏ボードを粉砕する粉砕工程を含んでいてよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、硫黄含有化合物の含有量が大きい硫黄含有組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係る硫黄含有組成物の製造方法は、硫黄源と公称目開き1.18mmの篩を通過する粒子の割合が70質量%以上である炭素源とを混合して混合原料を得る混合工程と、混合原料を転動造粒して造粒原料を得る造粒工程と、造粒原料を加熱する加熱工程とを有する。また、本実施形態の硫黄含有組成物の製造方法は、硫黄源と公称目開き1.18mmの篩を通過する粒子の割合が70質量%以上である炭素源とを混合して混合原料を得る混合工程と、混合原料を造粒して略球状の造粒原料を得る造粒工程と、造粒原料を加熱する加熱工程とを有するものであってもよい。
【0017】
本実施形態の製造方法によれば、硫黄含有化合物の含有量が大きい硫黄含有組成物を得ることができる。このような効果が得られる理由としては、造粒工程において混合原料に転動造粒を行っていることが挙げられる。ここで、従来、混合原料の加熱前に造粒を行う場合、ブリケット造粒のように原料を圧縮する方法が採用されていた。そのため、造粒された原料(粒子)は、特定の方向に圧縮され、扁平な形状、柱状の形状をしていた。このような原料にロータリーキルン等で加熱を行っても造粒された原料粒子がうまく転がらず、特定の方向のみ加熱が進み、焼きむらができ、粒子内でうまく反応が進まない。そのため、未反応物が多く残ってしまう。また、反応を進行させるべく加熱温度を上げると、原料及び生成した硫黄含有化合物に含まれる硫黄の燃焼反応が進むことにより、酸化物が生成してしまう。そのため、却って得られる硫黄含有組成物における硫黄含有化合物の含有量の低下を招いてしまう。一方、本実施形態に係る製造方法では、混合原料を転動造粒しているため、略球状の造粒原料(原料粒子)が得られやすい。略球状の原料粒子は、加熱中に転がることにより容易に向きを変更できるため、粒子内で均一に反応が進みやすく、未反応物を低減できる。また、反応が均一に進みやすいため、加熱温度を低くすることができ、コストダウンを図れると共に、生成した硫黄含有化合物の反応が進み酸化物が生成する副反応を抑えることもできる。更に、加熱時間を短くすることもできる。
【0018】
(混合工程)
混合工程では、まず原料である硫黄源と炭素源とを混合する。混合の方法としては特に限定されず、ミキサー等により混合してよい。混合は湿式及び乾式のいずれで行われてもよい。
【0019】
硫黄源としては、硫黄を含む原料であれば特に問題はない。硫黄源は、正の酸化数を有する硫黄を含有する化合物を有していてよく、硫黄のオキソ酸を含む化合物(硫黄のオキソ酸塩等)であってよい。このような化合物としては、硫酸塩、亜硫酸塩、重硫酸塩(硫酸水素塩)等が挙げられる。これらの塩は水和物であってもよい。硫黄源は、1種又は2種以上の硫黄を含有する化合物を含んでいてよい。
【0020】
また、硫黄源は、金属元素を含有していてよい。金属元素としては、特に限定されず、アルカリ金属、アルカリ土類金属等であってよい。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム等が挙げられ、マグネシウム又はカルシウムであってもよい。硫黄源に含まれる金属元素は、1種又は2種以上のであってよい。
【0021】
硫黄源としては、具体的には、石膏を含んでいてもよい。石膏を含む硫黄源としては、特に限定されず、無水石膏、半水石膏、二水石膏、廃石膏ボード、鋳込み成型用石膏型、工業模型用石膏型等の石膏廃材等が挙げられる。廃石膏ボードは、紙を含んでいてもよい。硫黄源として廃石膏ボードを用いる場合は、混合工程の前に廃石膏ボードを粉砕する粉砕工程を有していてもよい。粉砕工程は、通常の粉砕機を用いて行うことができる。硫黄源の粒径は20mm以下であってよく、10mm以下であってもよく、1mm以下であってもよい。硫黄源の粒子径は、JIS Z 8801-1:2019に準拠した金属製ふるいによって測定することができる。
【0022】
炭素源としては、カーボン、石炭、コークス、木炭、木材等の他に、石炭火力発電所から排出する未燃炭素を含む石炭灰、石炭ガス化炉から排出されるガス化スラグ、製紙工場から排出されるパルプスラッジや廃プラスチック、廃木材、伐採木等のバイオマス廃棄物などを上げることができる。炭素源に含まれる炭素は、硫黄源が正の酸化数を有する硫黄を含有する化合物を含む場合、加熱中に当該硫黄を還元することができる。
【0023】
炭素源の粒子径は、例えば、JIS Z 8801-1:2019「試験用ふるい-第一部:金属製網ふるい」に準拠した金属製ふるいにより測定できる。すなわち、本実施形態において使用する炭素源における、公称目開き1.18mmの篩を通過する粒子の割合は、炭素源の総量に対して70質量%以上であり、80質量%以上であってよく、90質量%以上であってよく、95質量%以上であってよい。炭素源における公称目開き1.18mmの篩を通過する粒子の割合を上記範囲とすることにより、炭素源の表面積の増大による反応性向上が得られ、また、造粒物の密度上昇によって原料である硫黄源及び生成物である硫黄含有化合物がOと触れにくくなり酸化されにくくなり、酸化物の生成を抑制できる。
【0024】
本実施形態において使用する炭素源における、公称目開き600μmの篩を通過する粒子の割合は、炭素源の総量に対して70質量%以上であってよく、80質量%以上であってよく、90質量%以上であってよく、95質量%以上であってよい。本実施形態において使用する炭素源における、公称目開き300μmの篩を通過する粒子の割合は、炭素源の総量に対して70質量%以上であってよく、80質量%以上であってよく、90質量%以上であってよく、95質量%以上であってよい。本実施形態において使用する炭素源における、公称目開き150μmの篩を通過する粒子の割合は、炭素源の総量に対して70質量%以上であってよく、80質量%以上であってよく、90質量%以上であってよく、95質量%以上であってよい。本実施形態において使用する炭素源における、公称目開き300μmの篩を通過できない粒子の割合は、炭素源の総量に対して3質量%以下であってよく、2質量%以下であってよく、1質量%以下であってよく、0.7質量%以下であってよい。本実施形態において使用する炭素源における、公称目開き150μmの篩を通過できない粒子の割合は、炭素源の総量に対して15質量%以下であってよく、0.1~10質量%であってよく、0.5~8質量%であってよく、1~7質量%であってよい。本実施形態において使用する炭素源における、公称目開き300μmの篩を通過するものの公称目開き150μmの篩を通過できない粒子の割合は、炭素源の総量に対して15質量%以下であってよく、0.1~10質量%であってよく、0.5~8質量%であってよく、1~7質量%であってよい。
【0025】
炭素源における1mm未満の炭素源の割合が、使用する炭素源の全量に対して、70質量%以上であってよく、80質量%以上であってよく、90質量%以上であってよく、95質量%以上であってよい。炭素源は、1mm未満の所定の粒子径を有するものの割合が、70質量%以上であり、80質量%以上であってよく、90質量%以上であってよく、95質量%以上であってよい。当該所定の粒子径としては、0.6mm以下であってよく、0.3mm以下であってよく、0.15mm以下であってよい。
【0026】
0.6mm未満の炭素源の含有量が炭素源の全量に対して、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上又は95質量%以上であってよい。0.3mm未満の炭素源の含有量が炭素源の全量に対して、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上又は95質量%以上であってよい。0.15mm未満の炭素源の含有量が炭素源の全量に対して、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上又は95質量%以上であってよい。
【0027】
混合原料における炭素源に含まれる炭素と硫黄源に含まれる硫黄とのモル比は、生成物である硫黄含有組成物における硫黄含有化合物の含有量を高める観点から、1.0以上、1.5以上、2.0以上、又は2.2以上であってよい。また、混合原料における炭素源に含まれる炭素と硫黄源に含まれる硫黄とのモル比は、未反応の炭素を低減すると共に、反応が進行しすぎて酸化物が生成することを抑制する観点から、10以下、5以下、3以下、又は2.5以下であってよい。
【0028】
例えば、硫黄源が石膏(CaSO)を含む場合、上記炭素源と硫黄源との比率は、炭素源に含まれる炭素(C)とCaSOのモル比として、[C]/[CaSO]で表すことができる。
【0029】
混合原料は、硫黄源及び炭素源以外に造粒促進剤を含んでいてもよい。造粒促進剤は無機系、有機系の何れでもよい。無機系としては、例えばベントナイトを挙げることができる。有機系としては、廃糖蜜、デンプン、アルギン酸、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等を挙げることができる。
【0030】
混合原料は、炭素源に由来する灰分(例えば、SiO、Al)を含んでいてもよい。
【0031】
(造粒工程)
造粒工程においては、混合工程により得られた混合原料を造粒する。造粒工程は、転動造粒により行われてよい。転動造粒法としては、特に限定されないが、パン型造粒機、ドラム型造粒機、振動造粒機、ハイスピードミキサー等により行われてよい。造粒原料のサイズや粒度分布は、造粒方法に応じて造粒条件を適宜調整することで変更・調整することができる。例えば、パン型造粒機であればパンに投入した粉体原料に水を霧状に吹き付け、粒子を造粒容器の回転方向に沿って転動させ粒子同士を衝突結合させることにより、所要のサイズの粒子を造粒してよい。その他の造粒方法についても、水・バインダーの添加量やドラム・攪拌スクリューの回転数、モーター振動数等を適宜調整して造粒サイズ及び粒度分布を調整すればよい。また、造粒後の原料粒子はアスペクト比(=短軸長さ/長軸長さ)が0.7~1であってよく、0.8~1であってよく、0.9~1であってよい。
【0032】
原料粒子の粒子径は、副反応生成物である酸化物の精製を低減する観点から、1mm以上、3mm以上、3mmより大きい、5mm以上、又は10mm以上であってよい。また、原料粒子の粒子径は、粒子の内部まで十分に反応を進める観点から、50mm以下、又は30mm以下、又は20mm以下であってよい。原料粒子の粒子径は、JIS Z 8801-1:2019に準拠した金属製ふるいによって測定することができる。
【0033】
原料粒子の粒子径を篩によって測定する場合、当該粒子径は、原料粒子を造粒した後、乾燥させてから測定した粒子径であってよい。例えば、原料粒子における公称目開き3.35mmの篩を通過できたものの割合が5~50質量%であってよく、5~20質量%であってよい。また、原料粒子における公称目開き3.35mmの篩を通過できなかったもののうち、公称目開き9.5mmの篩を通過できたものの割合が5~80質量%であってよく、20~80質量%であってよい。また、原料粒子における公称目開き9.5mmの篩を通過できなかったものの割合が50~95質量%であってよく、80~95質量%であってよい。原料粒子における公称目開き3.35mmの篩を通過できなかったものの割合が50質量%以上であってよく、70質量%以上であってよく、80質量%以上であってよく、90質量%以上であってよく、95質量%以上であってよい。原料粒子における公称目開き9.5mmの篩を通過できなかったものの割合が50質量%以上であってよく、70質量%以上であってよく、80質量%以上であってよく、90質量%以上であってよく、95質量%以上であってよい。
【0034】
造粒原料の水分量は、造粒原料の総量に対して1~30質量%であってよく、3~25質量%であってよく、5~20質量%であってよい。
【0035】
(加熱工程)
加熱方法としては、特に限定されないが、加熱炉において行われてよい。加熱炉は、内燃バーナー式ロータリーキルン、外熱式ロータリーキルン、二重筒ロータリーキルン式炭化炉等のロータリーキルン、バッチ式炭化炉等、所定の温度に加熱できるものであれば特に限定されない。
【0036】
加熱温度としては、1200℃以下であってよく、1100℃以下であってよい。加熱炉内の酸素濃度が20体積%以下であってよく、17体積%以下、15体積%以下、13体積%以下、10体積%以下であってよい。加熱炉内の酸素濃度は、3~20体積%であってよく、5~15体積%であってよい。
【0037】
得られた硫黄含有組成物には、分級を行ってもよい。分級は、例えば、JIS Z 8801-1:2019に準拠した篩を使用して行うことができる。
【0038】
加熱工程により得られる硫黄含有組成物に含まれる硫黄化合物としては、例えば、金属硫化物、金属亜硫酸塩等の原料の硫黄源に含まれる硫黄よりも酸化数の小さい硫黄を含む(つまり、硫黄が還元された)化合物が挙げられる。このような酸化数の小さい硫黄を含む硫黄含有化合物は、六価クロムに対する還元剤として使用できる。金属硫化物としては、例えば、硫化カルシウム、多硫化カルシウム、硫化マグネシウム等であってよい。金属硫化物は、硫化カルシウムであってよい。金属亜硫酸塩としては、亜硫酸カルシウム、亜硫酸マグネシウム等が挙げられる。
【0039】
加熱工程では、例えば、硫黄源として石膏(CaSO)を用いた場合、以下の反応式(1)で表される反応が進行する。また同時に以下の反応式(2)で表される反応も進行し、SO2が発生してもよい。
CaSO4+2C→ CaS+2CO (1)
CaSO4+CaS→ 2CaO+2SO (2)
【0040】
加熱工程において、加熱部に供給される石膏(CaSO)のモル数と、炭素源(C)のモル数とが、下記式(3)を満たすことが好ましく、下記式(4)を満たすことがより好ましく、下記式(5)を満たすことがさらに好ましい。これによって、石膏と炭素源との反応を、一層進行し易くすることができる。
C/CaSO≧3 (3)
C/CaSO>4 (4)
C/CaSO>5 (5)
【0041】
硫黄含有組成物は、硫化物以外の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、酸化カルシウム、未反応の石膏、及び、石膏等の原料由来の不純物などが挙げられる。硫化物を含む硫黄含有組成物を、セメント組成物を製造するセメント製造工程の一つである粉砕工程に入れて、セメントクリンカー及び石膏とともに粉砕することで、六価クロム溶出量を低減することが可能なセメント組成物を製造することができる。硫黄含有組成物は、乾粉又はアルカリ性スラリーとして、粉砕工程で添加してもよい。
【0042】
硫黄含有組成物の硫化カルシウムの含有量は、粉末X線回折測定で得られる回析パターンをリートベルト法で解析して求めることができる。硫黄含有組成物の硫化カルシウムの含有量は、5質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。硫黄含有組成物の硫化カルシウムの含有量は、製造の容易性の観点から、95質量%以下であってよい。
【0043】
硫黄含有組成物の粒子径は、副反応生成物である酸化物の生成を低減する観点から、1mm以上、3mm以上、3mmより大きい、5mm以上、又は10mm以上であってよい。また、硫黄含有組成物の粒子径は、粒子の内部まで十分に反応を進める観点から、50mm以下、又は30mm以下、又は20mm以下であってよい。
【0044】
硫黄含有組成物の粒子径は、JIS Z 8801-1:2019に準拠した金属製ふるいによって測定することができる。例えば、硫黄含有組成物における公称目開き3.35mmの篩を通過できたものの割合が5~50質量%であってよく、5~20質量%であってよい。また、硫黄含有組成物における公称目開き3.35mmの篩を通過できなかったもののうち、公称目開き9.5mmの篩を通過できたものの割合が5~80質量%であってよく、20~80質量%であってよい。また、硫黄含有組成物における公称目開き9.5mmの篩を通過できなかったものの割合が50~95質量%であってよく、80~95質量%であってよい。硫黄含有組成物における公称目開き3.35mmの篩を通過できなかったものの割合が50質量%以上であってよく、70質量%以上であってよく、80質量%以上であってよく、90質量%以上であってよく、95質量%以上であってよい。硫黄含有組成物における公称目開き9.5mmの篩を通過できなかったものの割合が50質量%以上であってよく、70質量%以上であってよく、80質量%以上であってよく、90質量%以上であってよく、95質量%以上であってよい。
【実施例0045】
表1に示す粒度分布を有する炭素源を用意した。なお、コーススラグ1は、石炭ガス化コーススラグ(宇部興産株式会社製)であり、コーススラグ2は、コーススラグをボールミルにより粉砕したものである。廃石膏ボードは、廃石膏ボードの粉砕物(二水石膏含有量94質量%、紙を含む)であり、微粉炭は、一般的な石炭を竪型ローラーミルで粉砕して製造したものである。
各炭素源の粒度分布は、JIS Z 8801-1:2019「試験用ふるい-第一部:金属製網ふるい」に準拠した金属製ふるいにより測定した。表1において、便宜上、各炭素源について、150μmの篩を通過した粒子を「≦150μm」と、公称目開き300μmの篩を通過するものの公称目開き150μmの篩を通過できない粒子を「150μm<、≦300μm」と、公称目開き600μmの篩を通過するものの公称目開き300μmの篩を通過できない粒子を「300μm<、≦600μm」と、公称目開き1.18mmの篩を通過するものの公称目開き600μmの篩を通過できない粒子を「600μm<、≦1.18mm」と、公称目開き1.18mmの篩を通過できない粒子を「1.18mm<」とそれぞれ表現し、各粒子の割合(質量%)を表1に記載する。
【0046】
【表1】
【0047】
(実施例1及び2)
表2に示す配合比で、石膏と炭素源とを[C]/[CaSO]=2.4(モル比)の割合で混合して粉体の混合原料を得た。得られた混合原料を、ハイスピードミキサー(株式会社アーステクニカ製、FS100)で転動造粒して略球状の造粒原料を得た。転動造粒は、造粒容器に投入した混合原料に混合原料に水を加えて行われた。なお、表2における水分量は、水及び原料の全量に対する水分の割合である。得られた造粒原料をロータリーキルン(全長約3m、回転数0.5min-1)により表2に示す条件で加熱して、硫黄含有組成物を得た。得られた硫黄含有組成物には、未反応の石膏(CaSO)、及び生成物である硫化カルシウム(CaS)及び酸化カルシウム(CaO)が含まれていた。生成したCaS及びCaOの量は原料であるCaSOの量に換算し、未反応のCaSO、並びに換算されたCaS及びCaOの合計量に対するこれらの含有量(石膏換算%)を表2に示す。また、表2において反応率は、得られた硫黄含有組成物における、上記合計量に対する換算されたCaS及びCaOの合計量の割合(%)である。
【0048】
(比較例1及び2)
造粒を行わなかったこと、及びキルンの運転条件を表2に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様に原料の混合、及び加熱を行って硫黄含有組成物を得た。
【0049】
(比較例3)
混合原料をブリケットマシン(古河産機株式会社製、KP-102H)で造粒して扁平なアーモンド形の造粒原料を得たこと、及びキルンの運転条件を表2に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様に原料の混合、及び加熱を行って硫黄含有組成物を得た。比較例3の造粒サイズはノギスによる実測値である。代表的な粒子サイズは、10mm×24mm×16mm(アスペクト比=0.417)であった。
【0050】
(比較例4)
炭素源としてコーススラグ1を使用したこと、及びキルンの運転条件を表2に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様に原料の混合、及び加熱を行って硫黄含有組成物を得た。
【0051】
(比較例5)
炭素源としてコーススラグ2を使用し、造粒を行わなかったこと及びキルンの運転条件を表2に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様に原料の混合、及び加熱を行って硫黄含有組成物を得た。
【0052】
【表2】
【0053】
石膏と炭素源とを混合したのみで焼成した比較例1及び比較例2では、石膏の多くがCaOへと変化しており、CaSとして得られた割合は少なかった。また、ブリケットマシンでアーモンド形に造粒した原料を使用した比較例3では、石膏の反応率が十分でなく、CaOの割合も多くなった。また、炭素源を粉砕していない比較例4では、石膏の約半分がCaSに変化したものの、10%以上がCaOとなっていた。一方で実施例1及び2では、石膏のほとんどが反応しており、CaSの割合も多かった。コーススラグ2を使用しているものの、未造粒の比較例5では、反応が進みすぎてCaSが略含まれていなかった。