(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128392
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】廃液処理システム、蒸気リサイクルシステム、廃液処理方法及び蒸気リサイクル方法
(51)【国際特許分類】
C10L 1/02 20060101AFI20230907BHJP
B09B 3/70 20220101ALI20230907BHJP
【FI】
C10L1/02
B09B3/00 304Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032713
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】時宗 章
(72)【発明者】
【氏名】深野 勝則
【テーマコード(参考)】
4D004
4H013
【Fターム(参考)】
4D004AA14
4D004BA03
4D004CA15
4D004CA34
4D004CC03
4D004CC15
4D004DA01
4D004DA02
4D004DA10
4D004DA20
4H013BA01
4H013BA02
4H013BA03
(57)【要約】
【課題】有機溶剤含有塗料から長時間にわたって安定した粘性を有する液体燃料を製造することができる廃液処理システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る廃液処理システムは、有機化合物製造設備から排出される、イソシアネート基を含有する有機溶剤含有塗料廃液を処理して液体燃料を製造する廃液処理システムであって、アルコール水溶液及び前記有機溶剤含有塗料廃液が供給される廃液容器と、前記廃液容器内に前記アルコール水溶液を供給するアルコール水溶液供給部と、前記有機化合物製造設備から前記廃液容器内に供給された前記有機溶剤含有塗料廃液と前記アルコール水溶液を含む混合溶液を撹拌する撹拌部と、を備え、前記廃液容器内の前記アルコール水溶液の含有量が、前記有機溶剤含有塗料廃液100wt%に対して0.5wt%~30wt%である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機化合物製造設備から排出される、イソシアネート基を含有する有機溶剤含有塗料廃液を処理して液体燃料を製造する廃液処理システムであって、
アルコール水溶液及び前記有機溶剤含有塗料廃液が供給される廃液容器と、
前記廃液容器内に前記アルコール水溶液を供給するアルコール水溶液供給部と、
前記有機化合物製造設備から前記廃液容器内に供給された前記有機溶剤含有塗料廃液と前記アルコール水溶液を含む混合溶液を撹拌する撹拌部と、
を備え、
前記廃液容器内の前記アルコール水溶液の含有量が、前記有機溶剤含有塗料廃液100wt%に対して0.5wt%~30wt%である廃液処理システム。
【請求項2】
前記アルコール水溶液供給部から前記廃液容器内に前記アルコール水溶液を供給する際には、前記廃液容器が第1の配置領域に設置され、
前記有機化合物製造設備から排出された前記有機溶剤含有塗料廃液を前記廃液容器内に供給する際には、前記廃液容器が第2の配置領域に設置され、
前記廃液容器内に前記撹拌部が設けられる際には、前記廃液容器が第3の配置領域に設置され、
前記廃液容器を前記第1の配置領域、前記第2の配置領域及び前記第3の配置領域に順次移動させる移動部と、
を備える請求項1に記載の廃液処理システム。
【請求項3】
前記アルコール水溶液供給部が、
前記廃液容器内にアルコールを供給するアルコール供給部と、
前記廃液容器内に水を供給する水供給部と、
を備える請求項1又は2に記載の廃液処理システム。
【請求項4】
前記アルコール供給部は、所定量の前記アルコールが供給される定量タンクを備え、
前記定量タンク内に供給された所定量の前記アルコールが、前記廃液容器に供給される請求項3に記載の廃液処理システム。
【請求項5】
前記廃液容器の質量を測定する質量測定部を備える請求項1~4の何れか一項に記載の廃液処理システム。
【請求項6】
前記廃液容器内の前記有機溶剤含有塗料廃液及び前記アルコール水溶液の液面を検知する液面検出部を備える請求項2~4の何れか一項に記載の廃液処理システム。
【請求項7】
前記アルコール水溶液の含有量が、前記有機溶剤含有塗料廃液に含まれる前記イソシアネート基を有する化合物に対して、モル比で1~2/3である請求項1~6の何れか一項に記載の廃液処理システム。
【請求項8】
前記有機溶剤含有塗料廃液と、前記アルコール水溶液の前記廃液容器への供給量を制御する制御部を備える請求項1~7の何れか一項に記載の廃液処理システム。
【請求項9】
前記有機溶剤含有塗料廃液は、前記有機化合物製造設備と前記廃液容器とを連結する塗料廃液供給ラインを介して前記廃液容器に供給される請求項1~8の何れか一項に記載の廃液処理システム。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載の廃液処理システムと、
前記液体燃料を用いて蒸気を生成する燃焼ボイラと、
燃料を用いて蒸気を生成する燃料炊きボイラと、
前記廃液処理システムから前記燃焼ボイラに前記液体燃料を供給する液体燃料供給ラインと、
前記燃料炊きボイラで生成される蒸気を外部に搬送する蒸気搬送ラインに前記燃焼ボイラで生成した前記蒸気を供給する蒸気リサイクルラインと、
を備える蒸気リサイクルシステム。
【請求項11】
有機化合物製造設備から排出される、イソシアネート基を含有する有機溶剤含有塗料廃液を処理して液体燃料を製造する廃液処理方法であって、
廃液容器にアルコール水溶液を供給するアルコール水溶液供給工程と、
前記廃液容器に前記有機溶剤含有塗料廃液を供給する塗料廃液供給工程と、
前記廃液容器内の前記アルコール水溶液と前記有機溶剤含有塗料廃液とを含む混合溶液を撹拌する撹拌工程と、
を含み、
前記廃液容器内の前記アルコール水溶液の含有量が、前記有機溶剤含有塗料廃液100wt%に対して0.5wt%~30wt%である廃液処理方法。
【請求項12】
前記アルコール水溶液供給工程は、前記廃液容器を第1の配置領域に設置し、
前記塗料廃液供給工程は、前記廃液容器を第2の配置領域に設置し、
前記撹拌工程は、前記廃液容器を第3の配置領域に設置し、
前記第1の配置領域、前記第2の配置領域及び前記第3の配置領域に前記廃液容器を順次移動させる請求項11に記載の廃液処理方法。
【請求項13】
前記アルコール水溶液供給工程が、
前記廃液容器内にアルコールを供給するアルコール供給工程と、
前記廃液容器内に水を供給する水供給工程と、
を含む請求項11又は12に記載の廃液処理方法。
【請求項14】
前記アルコール水溶液供給工程が、
所定量の前記アルコール水溶液を定量タンクに供給する定量タンク供給工程と、
前記定量タンク内に供給された所定量の前記アルコール水溶液を、前記廃液容器に供給する定量アルコール水溶液供給工程と、
を含む請求項11又は12に記載の廃液処理方法。
【請求項15】
前記混合溶液を含む前記廃液容器の質量の測定又は前記混合溶液の液面の検知により、前記有機溶剤含有塗料廃液に対する前記アルコール水溶液の含有量を測定するアルコール水溶液の含有量測定工程を請求項12~14の何れか一項に記載の廃液処理方法。
【請求項16】
請求項11~15の何れか一項に記載の廃液処理方法を用いて前記液体燃料を得る液体燃料製造工程と、
前記液体燃料を燃焼ボイラに供給して蒸気を生成する蒸気生成工程と、
前記燃焼ボイラで生成した前記蒸気を、燃料炊きボイラで燃料を用いて生成された蒸気を蒸気利用設備に搬送する蒸気搬送ラインに供給する蒸気リサイクル工程と、
含む蒸気リサイクル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃液処理システム、蒸気リサイクルシステム、廃液処理方法及び蒸気リサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料、接着剤、粘着剤等(塗料等)の樹脂組成物は、有機溶剤を原材料として製造されており、塗料等の製造施設等からは有機溶剤を含有する廃液(溶剤廃液)が排出される。このような溶剤廃液は産業廃棄物として処理する必要がある。そこで、溶剤廃液をリサイクルすると共に産業廃棄物の排出量を低減するため、溶剤廃液を加熱等により処理することで、液体燃料を生成する廃液処理システムがある。
【0003】
このような溶剤廃液を処理する廃液処理システムとして、例えば、重油及び軽油等の液体燃料に水を加えたものを貯蔵タンクに投入して、貯蔵タンク内の油と水の加圧衝突を繰り返すことによりエマルション化した燃料を生成するエマルション生成器が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
塗料等の樹脂組成物は、有機溶剤として、一般にイソシアネート基を有する硬化剤を含んでいる含む場合が多く、イソシアネート基を含む硬化剤は水及びアルコール等と反応し易い。そのため、特許文献1のエマルション生成器等の従来の廃液処理システムでは、溶剤廃液に含まれる硬化剤が水及びアルコール等と反応して固化し、配管の内壁及び配管に設けられるポンプ等に固着すると、溶剤廃液の搬送性能が低下する、という問題があった。溶剤廃液が配管やポンプ等の送液系統で固化してしまうと、最悪の場合には溶剤廃液の固形物は送液系統から取り出せず、配管ごと交換する必要が生じる。
【0006】
また、溶剤廃液が固化する前でも増粘が進行することで、溶材廃液が通過する配管内の圧力が高まり、配管に設置されるセンサ等の検知装置が異常状態であると判断して停止する可能性がある、という問題があった。
【0007】
さらに、溶材廃液が固化した状態でボイラ等の燃焼施設に搬送され、燃焼させると、溶材廃液の一部が高温(例えば、1200℃)になって、火炎等を生じる可能性があるため、燃焼施設等で安全に燃焼させて処理できない可能性がある。
【0008】
本発明の一態様は、有機溶剤含有塗料から長時間にわたって安定した粘性を有する液体燃料を製造することができる廃液処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、
有機化合物製造設備から排出される、イソシアネート基を含有する有機溶剤含有塗料廃液を処理して液体燃料を製造する廃液処理システムであって、
アルコール水溶液及び前記有機溶剤含有塗料廃液が供給される廃液容器と、
前記廃液容器内に前記アルコール水溶液を供給するアルコール水溶液供給部と、
前記有機化合物製造設備から前記廃液容器内に供給された前記有機溶剤含有塗料廃液と前記アルコール水溶液を含む混合溶液を撹拌する撹拌部と、
を備え、
前記廃液容器内の前記アルコール水溶液の含有量が、前記有機溶剤含有塗料廃液100wt%に対して0.5wt%~30wt%である廃液処理システムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る廃液処理システムの一態様は、有機溶剤含有塗料から長時間にわたって安定した粘性を有する液体燃料を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係る廃液処理システムの構成を示す図である。
【
図2】廃液処理システムを備えるエネルギーリサイクルシステムの構成の一例を示す図である。
【
図3】廃液処理システムの他の構成の一例を示す図である。
【
図4】第2の実施形態に係る廃液処理システムの構成の一例を示す図である。
【
図5】第3の実施形態に係る廃液処理システムの構成の一例を示す図である。
【
図6】第4の実施形態に係る廃液処理システムの構成の一例を示す図である。
【
図7】第5の実施形態に係る廃液処理システムの構成の一例を示す図である。
【
図8】実施例1~9及び比較例1の経過時間と粘度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の符号を付して、重複する説明は省略する。また、図面における各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。本明細書において数値範囲を示す「~」は、別段の断わりがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0013】
[第1の実施形態]
<廃液処理システム>
第1の実施形態に係る廃液処理システムについて説明する。
図1は、本実施形態に係る廃液処理システムの構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る廃液処理システム1Aは、廃液容器10と、アルコール水溶液供給部20Aと、撹拌部30と、移動部40を備え、有機化合物製造設備2から排出される有機溶剤含有塗料廃液(塗料廃液)を廃液容器10で処理して液体燃料を製造する。なお、塗料廃液はろ過装置3で予めろ過して不純物を除去してよい。
【0014】
なお、有機化合物製造設備2は、例えば、燃料、材料及び塗料等を使用して、VOCガス及び塗料廃液を排出する設備である。有機化合物製造設備2内の塗料廃液は、塗料廃液供給ライン4を通って、廃液容器10に搬送される。有機化合物製造設備2から排出される塗料廃液の量は、有機化合物製造設備2から排出される塗料廃液供給ライン4に設けた調整弁V1で調整される。
【0015】
塗料廃液とは、イソシアネート基を有する化合物を含む溶液である。イソシアネート基を有する化合物としては、例えば、硬化剤等に含まれる。
【0016】
液体燃料とは、粘性が高いゲル状の燃料であり、ボイラ、蓄熱式脱臭装置(RTO:Regenerative Thermal Oxidizer)、エンジン等の外燃機関及び内燃機関の燃料として用いれる。
【0017】
廃液容器10は、アルコール水溶液及び塗料廃液が供給されて貯留する容器である。
【0018】
本実施形態では、廃液容器10は、アルコール水溶液供給部20Aから廃液容器10内にアルコール水溶液が供給される際には、第1の配置領域A1に設置され、有機化合物製造設備2から排出された塗料廃液を廃液容器10内に供給する際には、第2の配置領域A2に設置され、廃液容器10内に撹拌部30が設けられる際には、第3の配置領域に設置される。
【0019】
第1の配置領域A1、第2の配置領域A2及び第3の配置領域は、それぞれ、アルコール水溶液の供給、塗料廃液の供給及び撹拌部30の設置等のできる場所であればよく、特に限定されない。
【0020】
アルコール水溶液供給部20Aは、アルコール水溶液を保管するアルコール水溶液貯蔵部201、アルコール水溶液を廃液容器10に送るアルコール水溶液供給管202及びアルコール水溶液の供給量を調整する調整弁V11を備える。アルコール水溶液供給部20Aは、廃液容器10内にアルコール水溶液を供給する。アルコール水溶液は、塗料廃液の固化を抑制する固化防止剤として機能する。
【0021】
アルコールとしては、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール(IPA)等が挙げられる。
【0022】
廃液容器10内に供給されるアルコール水溶液中のアルコールの含有量は、塗料廃液100wt%に対して0.5wt%~30wt%であり、3wt%~20wt%が好ましく、5wt%~15wt%がより好ましい。
【0023】
アルコール水溶液供給部20Aは、アルコール水溶液の含有量を、塗料廃液に含まれるイソシアネート基を有する化合物の量に対して、モル比で2/3~1.0であることが好ましく、4/5~0.98であることがより好ましい。
【0024】
撹拌部30は、廃液容器10内に設けられ、塗料廃液とアルコール水溶液を含む混合溶液を撹拌する。
【0025】
撹拌部30は、撹拌翼31と、撹拌軸32と、モータ33とを備える。撹拌翼31としては、一般的な撹拌翼が用いられる。
【0026】
移動部40は、廃液容器10を、第1の配置領域A1、第2の配置領域A2及び第3の配置領域A3に順次移動させる。
【0027】
移動部40は、廃液容器10を移動できる手段であればよく、例えば、ローラコンベア、ベルトコンベア等を用いることができる。なお、廃液容器10は、移動部40による移動に代えて、作業員により移動させてもよい。
【0028】
本実施形態に係る廃液処理方法について説明する。本実施形態に係る廃液処理方法は、廃液処理システム1Aを用いて行う。
【0029】
図1に示すように、まず、廃液容器10を第1の配置領域A1に設置し、廃液容器10内にアルコール水溶液を供給する(アルコール水溶液供給工程)。
【0030】
次に、廃液容器10を第1の配置領域A1から移動して第2の配置領域A2に設置し、廃液容器10内に塗料廃液を供給する(塗料廃液供給工程)。具体的は、調整弁V1を開放して有機化合物製造設備2から塗料廃液供給ライン4に塗料廃液を排出し、ろ過装置3で塗料廃液中の不純物を除去した後、塗料廃液を廃液容器10内に供給する。
【0031】
塗料廃液を供給することで、アルコール水溶液と塗料廃液とを含む混合溶液は、廃液容器10内に満杯となるまで充填してよい。
【0032】
廃液容器10内に含まれるアルコール水溶液中のアルコールの含有量が塗料廃液100wt%に対して0.5wt%~30wt%となるように、塗料廃液を供給する。
【0033】
次に、廃液容器10を第2の配置領域A2から移動して第3の配置領域A3に設置して、廃液容器10内に攪拌翼31及び撹拌軸32を挿入した後、モータ33を駆動して撹拌軸32を介して攪拌翼31を回転させ、混合溶液を撹拌する(撹拌工程)。
【0034】
撹拌時間は、特に限定されず、アルコール水溶液の量、塗料廃液の量、混合溶液の量、アルコール水溶液と塗料廃液との混合割合等に応じて適宜選択され、例えば、60分以下であり、より好ましくは10秒~1200秒である。
【0035】
次に、攪拌翼31を廃液容器10から取り出した後、廃液容器10に蓋部51を置いて、廃液容器10内の混合溶液を保存する。
【0036】
これにより、有機化合物製造設備から排出される、イソシアネート基を含有する塗料廃液を処理して液体燃料を製造する。
【0037】
液体燃料の使用時には、蓋部51を外して、液体燃料抜き出し管52を廃液容器10内に挿入する。廃液容器10内の液体燃料は、液体燃料抜き出し管52を通って、燃焼ボイラ等の燃焼設備に抜き出され、燃料として使用される。
【0038】
廃液容器10内の液体燃料が全て抜き出され、廃液容器10内の液体燃料が空となったら、廃液容器10は、再び、第1の配置領域A1に移動させてリサイクルする。
【0039】
このように、廃液処理システム1Aは、廃液容器10と、アルコール水溶液供給部20Aと、撹拌部30とを備える。廃液処理システム1Aは、廃液容器10内にアルコール水溶液及び塗料廃液を供給し、廃液容器10内のアルコール水溶液及び塗料廃液を含む混合溶液を撹拌することで、混合溶液に含まれる塗料が硬化して固化することを抑制しながら、塗料廃液を液体燃料にすることができる。塗料廃液は、硬化剤であるイソシアネート基を有する化合物と反応しない疎水性の有機溶剤を含む。アルコール水溶液は、有機溶剤と相溶性を有するアルコールを含むため、イソシアネート基の固化を防止する処理液として機能できる。廃液処理システム1Aは、廃液容器10内において、塗料廃液にアルコール水溶液を混ぜて、塗料廃液に含まれる硬化剤であるイソシアネート基をアルコール又は水と化学反応させることで、塗料廃液中の樹脂分の長鎖化及び三次元ネットワーク化を抑え、塗料廃液中の硬化剤がアルコール水溶液により固化し粘度を上昇させることを抑えることができるため、液体燃料を安定した粘度で長時間保管できる。このため、液体燃料は、例えば、1ケ月以上の長期間にわたって室温で保管できる燃料にできる。よって、廃液処理システム1Aは、長時間安定した粘性を有する液体燃料を製造することができる。
【0040】
液体燃料の粘性の指標に用いられる液体燃料の粘度は、例えば、JIS K5600-2-3:2014に準じて、平板形回転粘度計(コーンプレート型粘度計)又は同心円円筒形粘度計等を用いて測定する等、一般的な測定方法で測定できる。
【0041】
また、廃液処理システム1Aは、塗料廃液から液体燃料を製造でき、液体燃料をボイラ等の補助燃料として使用できるため、塗料廃液に燃料として使用する価値を有するという付加価値を与えることができる。
【0042】
さらに、廃液処理システム1Aは、廃液容器10を回収して再利用することができるため、廃液容器10に含まれる内容物を処分することを抑えることができる。
【0043】
また、廃液処理システム1Aは、アルコール水溶液中の水分が塗料廃液中のイソシアネート基を有する化合物の固化を抑えると共に、液体燃料の燃焼時に火炎内で気化熱(顕熱及び潜熱)を奪うことで、火炎温度を効果的に下げることができるので、例えば、サーマルNOxの発生を抑制できる。
【0044】
廃液処理システム1Aは、移動部40で、第1の配置領域A1において廃液容器10内にアルコール水溶液を供給し、第2の配置領域A2において廃液容器10内に塗料廃液を供給し、第3の配置領域A3において廃液容器10内の混合溶液を撹拌することができる。これにより、廃液処理システム1Aは、廃液容器10を適宜最適な領域に移動させながら、廃液容器10内へのアルコール水溶液の供給、廃液容器10内への塗料廃液の供給及び廃液容器10内の混合溶液の撹拌を行うことができる。
【0045】
廃液処理システム1Aは、塗料廃液を塗料廃液供給ライン4を介して廃液容器10に供給できる。これにより、廃液処理システム1Aは、有機化合物製造設備2から塗料廃液を塗料廃液供給ライン4に通すことで廃液容器10に自動で搬送させることができる。
【0046】
廃液処理システム1Aは、上記のように、長時間安定した粘性を有する液体燃料を製造できることから、蒸気を生成するエネルギーリサイクルシステム等に好適に用いることができる。
【0047】
<エネルギーリサイクルシステム>
廃液処理システム1Aを適用したエネルギーリサイクルシステムについて説明する。
図2は、廃液処理システム1Aを備えるエネルギーリサイクルシステムの構成の一例を示す図である。
図2に示すように、エネルギーリサイクルシステム100は、廃液処理システム110と、燃焼ボイラ120と、燃料炊きボイラ130と、液体燃料供給ラインL10と、蒸気リサイクルラインL20と、エネルギー供給ラインL30とを備える。なお、廃液処理システム110は、上記の廃液処理システム1Aと同様であるため、詳細は省略する。
【0048】
燃焼ボイラ120は、液体燃料供給ラインL10により廃液処理システム110から供給される液体燃料を用いて蒸気を生成する。燃焼ボイラ120は、一般的な燃焼ボイラを用いることができる。本実施形態では、燃焼ボイラ120以外に、液体燃料を用いて蒸気を生成できる燃焼設備であれば特に限定されない。
【0049】
燃料炊きボイラ130は、外部から供給される燃料を用いて蒸気を生成する。燃料炊きボイラ130は、一般的な燃焼ボイラを用いることができる。本実施形態では、燃料炊きボイラ130以外に、燃料を用いて蒸気を生成できる燃焼設備であれば特に限定されない。
【0050】
液体燃料供給ラインL10は、廃液処理システム110と燃焼ボイラ120とを連結し、廃液処理システム110から燃焼ボイラ120に液体燃料を供給するための供給管である。
【0051】
蒸気リサイクルラインL20は、蒸気搬送ラインL30に燃焼ボイラ120で生成した蒸気を供給するための供給管である。
【0052】
エネルギー供給ラインL30は、燃料炊きボイラ130で生成される蒸気を蒸気利用設備140に搬送するための供給管である。
【0053】
エネルギーリサイクルシステム100では、廃液処理システム1Aで液体燃料が製造される(液体燃料製造工程)。廃液処理システム1Aで製造された液体燃料は液体燃料供給ラインL10を通って燃焼ボイラ120に供給され、燃焼ボイラ120で供給された液体燃料を用いて蒸気が生成される(蒸気生成工程)。燃焼ボイラ120で生成された蒸気は、蒸気リサイクルラインL20を通ってエネルギー供給ラインL30に供給し、燃料炊きボイラ130で生成され、エネルギー供給ラインL30を流れる蒸気と混合する(蒸気リサイクル工程)。エネルギー供給ラインL30を流れる蒸気は、蒸気利用設備140に送られて使用される。
【0054】
エネルギーリサイクルシステム100は、廃液処理システム1Aを備えることで、液体燃料を製造し、かつ製造した液体燃料を長期間安定して保管できるため、使用済みの塗料廃液が産業廃棄物として外部に排出される量を低減できると共に、燃焼ボイラ120で蒸気を生成する際の燃料として使用することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、
図1に示すように、廃液処理システム1Aは、アルコール水溶液供給部20Aからアルコール水溶液を廃液容器10内に供給しているが、
図3に示すように、廃液処理システム1Aは、廃液容器10内に水を供給する水供給部21と、アルコールを供給するアルコール供給部22とを有するアルコール水溶液供給部20Bを備え、廃液容器10内に水供給部21より水を供給し、アルコール水溶液供給部22Bよりアルコールを供給してもよい。水供給部21は、水を保管する水貯蔵部211、水を廃液容器10に送る水供給管212及び水の供給量を調整する調整弁V12を備えてよい。アルコール供給部22は、アルコールを保管するアルコール貯蔵部221、アルコールを廃液容器10に送るアルコール供給管222及びアルコールの供給量を調整する調整弁V13を備えてよい。
【0056】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係る廃液処理システムについて説明する。本実施形態に係る廃液処理システムは、上述の第1の実施形態に係る廃液処理システム1Aにおいて、廃液容器10を移動させずに液体燃料を製造するものである。
【0057】
図4は、本実施形態に係る廃液処理システムの構成の一例を示す図である。
図4に示すように、本実施形態に係る廃液処理システム1Bは、上述の第1の実施形態に係る廃液処理システム1Aの移動部40を備えず、廃液容器10と、アルコール水溶液供給部20Bと、撹拌部30と、質量測定部60と、保管槽70とを備える。廃液容器10、アルコール水溶液供給部20B及び撹拌部30は、上述の第1の実施形態に係る廃液処理システム1Aと同様であるため、詳細は省略する。
【0058】
質量測定部60は、廃液容器10の質量を測定する装置であり、例えば、ロードセル等を用いることができる。
【0059】
保管槽70は、製造された液体燃料を保存する槽である。保管槽70は、製造された液体燃料を保管できる槽であれば特に限定されず用いることができる。
【0060】
本実施形態に係る廃液処理システム1Bを用いた廃液処理方法について説明する。
【0061】
まず、廃液容器10内にアルコール水溶液を供給する(アルコール水溶液供給工程)。アルコール水溶液供給工程は、廃液容器10内に水供給部21より水を供給する工程(水供給工程)と、廃液容器10内にアルコール供給部22よりアルコールを供給する工程(アルコール供給工程)を含む。
【0062】
水供給工程では、調整弁V12を開放して水貯蔵部211内の水を水供給管212を介して廃液容器10内に供給する。
【0063】
アルコール供給工程では、調整弁V13を開放してアルコール貯蔵部221内のアルコールをアルコール供給管222を介して廃液容器10内に供給する。
【0064】
廃液容器10内において、水及びアルコールが混合されることで、アルコール水溶液が生成される。
【0065】
なお、アルコール供給工程は、水供給工程よりも先に行ってもよいし、水供給工程と同時に行ってもよい。
【0066】
次に、調整弁V1を開放して有機化合物製造設備2から塗料廃液供給ライン4に塗料廃液を排出し、ろ過装置3で塗料廃液中の不純物を除去した後、塗料廃液を廃液容器10内に供給する(塗料廃液供給工程)。
【0067】
廃液容器10内で生成されるアルコール水溶液の含有量は、塗料廃液100wt%に対して0.5wt%~30wt%となるように、塗料廃液を供給する。
【0068】
アルコール水溶液の含有量が塗料廃液100wt%に対して0.5wt%~30wt%であるか否か測定する(アルコール水溶液の含有量測定工程)。アルコール水溶液の含有量が塗料廃液100wt%に対して0.5wt%~30wt%であるか否かは、質量測定部60で廃液容器10の重さを測定することで求められる。質量測定部60は、アルコール水溶液を含む廃液容器10の質量を基準に、塗料廃液が供給された後の廃液容器10の質量の増加分から、アルコール水溶液の塗料廃液に対する含有量を求めることができる。
【0069】
アルコール水溶液の含有量測定工程は、塗料廃液供給工程の後に行ってもよいし、同時に行ってもよい。
【0070】
次に、廃液容器10内にモータ33を駆動して攪拌翼31を回転させ、アルコール水溶液と塗料廃液とを含む混合溶液を撹拌する(撹拌工程)。
【0071】
混合溶液の撹拌時間は、特に限定されず、適宜設定してよい。
【0072】
有機化合物製造設備2から排出される塗料廃液をアルコール水溶液と撹拌させながら反応させることで液体燃料が製造される。
【0073】
次に、調整弁V14を開放して、ポンプ71を稼働し、廃液容器10内の混合溶液を溶液保管ライン72に抜き出し、抜き出した混合液を溶液保管ライン72を通して保管槽70に供給し、保管槽70内で保存する(保管工程)。
【0074】
液体燃料の使用時には、ポンプ73を稼働して、保管槽70内の液体燃料を液体燃料抜き出しライン74に抜き出し、燃焼ボイラ等の燃焼設備に送られ、燃料として使用される。
【0075】
廃液処理システム1Bは、廃液容器10と、アルコール水溶液供給部20Bと、撹拌部30と、質量測定部60と、保管槽70を備えることで、廃液処理システム1Aと同様に、塗料廃液中に所定量のアルコール水溶液を供給して混合することができる。これにより、廃液処理システム1Bは、塗料廃液中の硬化剤がアルコール水溶液により固化し粘度を上昇させることを抑えることができる。よって、廃液処理システム1Bは、長時間安定した粘性を有する液体燃料を製造することができる。
【0076】
また、廃液処理システム1Bは、廃液処理システム1Aと同様に、塗料廃液に燃料として使用する価値を有するという付加価値を与えることができると共に、廃液容器10を回収して再利用することができるため、廃液容器10に含まれる内容物を処分することを抑えることができる。さらに、廃液処理システム1Bは、廃液処理システム1Aと同様に、例えば、サーマルNOxの発生を抑制できる。
【0077】
[第3の実施形態]
第3の実施形態に係る廃液処理システムについて説明する。
図5は、本実施形態に係る廃液処理システムの構成の一例を示す図である。
図5に示すように、本実施形態に係る廃液処理システム1Cは、上述の第2の実施形態に係る廃液処理システム1Bにおいて、質量測定部60に代えて液面検出部80を備えたものである。
【0078】
液面検出部80は、廃液容器10の壁面に設けられ、廃液容器10内の塗料廃液及びアルコール水溶液を含む混合廃液の液面を検知する。液面検出部80として、例えば、液面レベルセンサ等を用いることができる。
【0079】
液面検出部80は、廃液容器10の壁面の下面付近に設けられる液面検出部80Aと、廃液容器10の壁面の上面付近に設けられる液面検出部80Bとを有する。
【0080】
液面検出部80Aの設置場所は、廃液容器10内で生成されるアルコール水溶液の含有量が所定の基準量となる位置に設けられることが好ましい。液面検出部80Aによって、アルコール水溶液の有無を検知することで、廃液容器10内に所定量のアルコール水溶液が供給されたことを検知できる。
【0081】
液面検出部80Bの設置場所は、廃液容器10内に供給される塗料廃液の含有量が所定の基準量となる位置に設けられることが好ましい。所定の基準量とは、例えば、アルコール水溶液中のアルコールの含有量が塗料廃液100wt%に対して0.5wt%~30wt%となる位置であることが好ましい。液面検出部80Bによって、混合溶液の有無を検知することで、廃液容器10内の混合溶液の含有量がアルコール水溶液中のアルコールの含有量が塗料廃液100wt%に対して0.5wt%~30wt%となるのを満たす塗料廃液が供給されたことを検知できる。
【0082】
本実施形態に係る廃液処理システム1Cを用いた廃液処理方法について説明する。
【0083】
まず、廃液容器10内にアルコール水溶液を供給する(アルコール水溶液供給工程)。アルコール水溶液供給工程は、上記の第2の実施形態に係る廃液処理システム1Bと同様であるため、詳細は省略する。
【0084】
次に、調整弁V1を開放して有機化合物製造設備2から塗料廃液供給ライン4に塗料廃液を排出し、ろ過装置3で塗料廃液中の不純物を除去した後、塗料廃液を廃液容器10内に供給する(塗料廃液供給工程)。
【0085】
廃液容器10内で生成されるアルコール水溶液の含有量は、塗料廃液100wt%に対して0.5wt%~30wt%となるように、塗料廃液を供給する。
【0086】
アルコール水溶液の含有量が塗料廃液100wt%に対して0.5wt%~30wt%であるか否か測定する(アルコール水溶液の含有量測定工程)。アルコール水溶液の含有量が塗料廃液100wt%に対して0.5wt%~30wt%であるか否かは、液面検出部80A及び80Bでアルコール水溶液及び混合溶液を検知することで求められる。液面検出部80Aでアルコール水溶液の液面を検知し、アルコールと水の混合割合からアルコール水溶液中のアルコールの質量を検出する。液面検出部80Bで混合溶液の液面を検知し、液面検出部80Aと液面検出部80Bとの差から混用溶液中の塗料廃液の質量を検出する。これにより、塗料廃液100wt%に対するアルコール水溶液の含有量が求められる。
【0087】
次に、廃液容器10内にモータ33を駆動して攪拌翼31を回転させ、アルコール水溶液と塗料廃液とを含む混合溶液を撹拌し(撹拌工程)、廃液容器10内の混合溶液を溶液保管ライン72に抜き出して、抜き出した混合液を保管槽70内で保存する(保管工程)。塗料廃液供給工程及び撹拌工程は、上記の第2の実施形態に係る廃液処理システム1Bと同様であるため、詳細は省略する。
【0088】
廃液処理システム1Cは、廃液容器10と、アルコール水溶液供給部20Bと、撹拌部30と、液面検出部80と、保管槽70とを備えることで、廃液処理システム1Aと同様に、塗料廃液中に所定量のアルコール水溶液を供給して混合することができる。これにより、廃液処理システム1Cは、塗料廃液中の硬化剤がアルコール水溶液により固化し粘度を上昇させることを抑えることができる。よって、廃液処理システム1Cは、長時間安定した粘性を有する液体燃料を製造することができる。
【0089】
また、廃液処理システム1Cは、廃液処理システム1Aと同様に、塗料廃液に燃料として使用する価値を有するという付加価値を与えることができると共に、廃液容器10を回収して再利用することができるため、廃液容器10に含まれる内容物を処分することを抑えることができる。さらに、廃液処理システム1Bは、廃液処理システム1Aと同様に、例えば、サーマルNOxの発生を抑制できる。
【0090】
[第4の実施形態]
第4の実施形態に係る廃液処理システムについて説明する。
図6は、本実施形態に係る廃液処理システムの構成の一例を示す図である。
図6に示すように、本実施形態に係る廃液処理システム1Dは、上述の第3の実施形態に係る廃液処理システム1Cにおいて、アルコール水溶液供給部20Bに代えてアルコール水溶液供給部20Cを備える。廃液容器10、アルコール水溶液供給部20C、撹拌部30、保管槽70及び液面検出部80は、上述の第3の実施形態に係る廃液処理システム1Cと同様であるため、詳細は省略する。
【0091】
アルコール水溶液供給部20Cは、アルコール水溶液貯蔵部201、アルコール水溶液供給管202及び調整弁V11の他に、アルコール水溶液供給部20Aのアルコール水溶液供給管202の廃液容器10と調整弁V11との間に定量タンク23と、アルコール水溶液供給管202の定量タンク23と廃液容器10との間に調整弁V15を備える。
【0092】
定量タンク23は、廃液容器10に供給される所定量のアルコール水溶液を貯蔵する。定量タンク23の容量は、廃液容器10に供給されるアルコール水溶液の供給量となるように設計されることが好ましい。
【0093】
本実施形態に係る廃液処理システム1Dを用いた廃液処理方法について説明する。
【0094】
まず、廃液容器10内にアルコール水溶液を供給する(アルコール水溶液供給工程)。
アルコール水溶液供給工程は、所定量のアルコール水溶液を定量タンク23に供給する工程(定量タンク供給工程)と、定量タンク23内に供給された所定量のアルコール水溶液を、廃液容器10に供給する工程(定量アルコール水溶液供給工程)を含む。
【0095】
定量タンク供給工程では、調整弁V11を開放してアルコール水溶液貯蔵部201内の所定量のアルコール水溶液をアルコール水溶液供給管202を介して定量タンク23に保管する。
【0096】
定量アルコール水溶液供給工程では、調整弁V15を開放して定量タンク23内の所定量のアルコール水溶液を廃液容器10内に供給する。
【0097】
次に、調整弁V1を開放して有機化合物製造設備2から塗料廃液供給ライン4に塗料廃液を排出し、ろ過装置3で塗料廃液中の不純物を除去した後、塗料廃液を廃液容器10内に供給し(塗料廃液供給工程)、アルコール水溶液の含有量が塗料廃液100wt%に対して0.5wt%~30wt%であるか否か測定する(アルコール水溶液の含有量測定工程)。その後、廃液容器10内にモータ33を駆動して攪拌翼31を回転させ、アルコール水溶液と塗料廃液とを含む混合溶液を撹拌し(撹拌工程)、廃液容器10内の混合溶液を溶液保管ライン72に抜き出して、抜き出した混合液を保管槽70内で保存する(保管工程)。塗料廃液供給工程、アルコール水溶液の含有量測定工程、撹拌工程及び保管工程は、上記の第2の実施形態に係る廃液処理システム1Bと同様であるため、詳細は省略する。
【0098】
廃液処理システム1Dは、廃液容器10と、アルコール水溶液供給部20Cと、撹拌部30と、液面検出部80と、保管槽70とを備えることで、廃液処理システム1Aと同様に、塗料廃液中に所定量のアルコール水溶液を供給して混合することができる。これにより、廃液処理システム1Dは、塗料廃液中の硬化剤がアルコール水溶液により固化し粘度を上昇させることを抑えることができる。よって、廃液処理システム1Dは、長時間安定した粘性を有する液体燃料を製造することができる。
【0099】
また、廃液処理システム1Dは、廃液処理システム1Aと同様に、塗料廃液に燃料として使用する価値を有するという付加価値を与えることができると共に、廃液容器10を回収して再利用することができるため、廃液容器10に含まれる内容物を処分することを抑えることができる。さらに、廃液処理システム1Dは、廃液処理システム1Aと同様に、例えば、サーマルNOxの発生を抑制できる。
【0100】
[第5の実施形態]
第5の実施形態に係る廃液処理システムについて説明する。
図7は、本実施形態に係る廃液処理システムの構成の一例を示す図である。
図7に示すように、本実施形態に係る廃液処理システム1Eは、上述の第4の実施形態に係る廃液処理システム1Dにおいて、アルコール水溶液供給部20Cに代えてアルコール水溶液供給部20Aを用い、制御部90を備えるものである。
【0101】
制御部90は、液面検出部80の検出結果を検知すると共に、調整弁V1、V11、V14と、ポンプ71とを制御する。制御部90は、アルコール水溶液の廃液容器10への供給量と、塗料廃液の廃液容器10への供給量と、廃液容器10内の混合溶液の保管槽70への供給量を制御する。
【0102】
本実施形態に係る廃液処理システム1Eを用いた廃液処理方法について説明する。
【0103】
制御部90は、廃液容器10内にアルコール水溶液を供給する(アルコール水溶液供給工程)。アルコール水溶液の含有量測定工程は、上記の第2の実施形態に係る廃液処理システム1Cと同様に行われるため、詳細は省略する。制御部90によって行われるアルコール水溶液供給工程は、上記の第1の実施形態に係る廃液処理システム1Aと同様に行われるため、詳細は省略する。
【0104】
次に、制御部90は、調整弁V1を制御して開放し、塗料廃液を有機化合物製造設備2から塗料廃液供給ライン4に排出し、ろ過装置3で塗料廃液中の不純物を除去した後、塗料廃液を廃液容器10内に供給する(塗料廃液供給工程)。制御部90によって行われる塗料廃液供給工程は、上記の第1の実施形態に係る廃液処理システム1Aと同様に行われるため、詳細は省略する。
【0105】
制御部90は、液面検出部80A及び80Bの検出結果に基づいて、アルコール水溶液の含有量が塗料廃液100wt%に対して0.5wt%~30wt%であるか否か測定する(アルコール水溶液の含有量測定工程)。制御部90によって行われるアルコール水溶液の含有量測定工程は、上記の第2の実施形態に係る廃液処理システム1Cと同様に行われるため、詳細は省略する。
【0106】
その後、制御部90は、廃液容器10内にモータ33を制御して駆動し、攪拌翼31を回転させることで、アルコール水溶液と塗料廃液とを含む混合溶液を撹拌し(撹拌工程)、廃液容器10内の混合溶液を溶液保管ライン72に抜き出して、抜き出した混合液を保管槽70内で保存する(保管工程)。制御部90によって行われる撹拌工程及び保管工程は、上記の第2の実施形態に係る廃液処理システム1Bと同様に行われるため、詳細は省略する。
【0107】
廃液処理システム1Eは、廃液容器10と、アルコール水溶液供給部20Cと、撹拌部30と、液面検出部80と、保管槽70と、制御部90を備えることで、塗料廃液と、アルコール水溶液の廃液容器10への供給量を自動で制御できるため、塗料廃液中に所定量のアルコール水溶液を供給して混合することができる。これにより、廃液処理システム1Eは、塗料廃液中の硬化剤がアルコール水溶液により固化し粘度を上昇させることを抑えることができる。よって、廃液処理システム1Eは、長時間安定した粘性を有する液体燃料を製造することができる。
【0108】
また、廃液処理システム1Eは、廃液処理システム1Aと同様に、塗料廃液に燃料として使用する価値を有するという付加価値を与えることができると共に、廃液容器10を回収して再利用することができるため、廃液容器10に含まれる内容物を処分することを抑えることができる。さらに、廃液処理システム1Eは、廃液処理システム1Dと同様に、例えば、サーマルNOxの発生を抑制できる。
【実施例0109】
以下、例を示して実施形態を更に具体的に説明するが、実施形態はこれらの例により限定されるものではない。
【0110】
<実施例1>
[廃液処理システムの準備]
図1に示す第1の実施形態に係る廃液処理システム1Aを準備した。
【0111】
[液体燃料の安定性の評価]
作製した廃液処理システム1Aの廃液容器10にアルコール水溶液としてメタノール水溶液と塗料廃液を、有機溶剤含有塗料廃液にメタノールを有機溶剤含有塗料廃液100wt%に対して5wt%となるように混合して、23℃±2℃で、10分間、撹拌した。その後、432時間、保管しながら廃液容器10内に生成された液体燃料の粘度をJIS K5600-2-3:2014に準じて、同心円円筒形粘度計を用いて測定した。経過時間と、液体燃料の粘度との関係を
図8に示す。
【0112】
<実施例2及び3>
実施例1において、有機溶剤含有塗料廃液にメタノールを有機溶剤含有塗料廃液100wt%に対して10wt%、15wt%となるように混合したこと以外は、実施例1と同様に行った。経過時間と、液体燃料の粘度との関係を
図8に示す。
【0113】
<実施例4~6>
実施例1において、有機溶剤含有塗料廃液にアルコールとしてメタノールに代えてイソプロピルアルコール(IPA)を有機溶剤含有塗料廃液100wt%に対して、5wt%、10wt%、15wt%となるように混合したこと以外は、実施例1と同様に行った。経過時間と、液体燃料の粘度との関係を
図8に示す。
【0114】
<比較例1>
実施例1において、有機溶剤含有塗料廃液にアルコールを加えなかったこと以外は、実施例1と同様に行った。経過時間と、液体燃料の粘度との関係を
図8に示す。
【0115】
<比較例2~4>
実施例1において、有機溶剤含有塗料廃液にアルコールとしてメタノールに代えて酢酸エチルを有機溶剤含有塗料廃液100wt%に対して、5wt%、10wt%、15wt%となるように混合したこと以外は、実施例1と同様に行った。経過時間と、液体燃料の粘度との関係を
図8に示す。
【0116】
図8に示すように、実施例1~9は、比較例1よりも、液体燃料の粘度の上昇を遅らせ、固化を遅らせることができた。特に、実施例1~6は、液体燃料の固化を遅らせることができた。
【0117】
よって、有機溶剤含有塗料廃液にアルコールを5wt%~15wt%含めて撹拌することで、長時間安定した粘性を有する液体燃料を製造することができるといえる。
【0118】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更等を行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。