(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128411
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】駆動制御装置、ヘッドユニット、液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/015 20060101AFI20230907BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032747
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207181
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 朋
(72)【発明者】
【氏名】花田 卓弥
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EC08
2C056EC09
2C056EC31
2C056EC37
2C056EC38
2C056EC41
2C056EC42
2C056FA02
2C056FA10
2C057AF21
2C057AF22
2C057AG14
2C057AG44
2C057AM03
2C057AM15
2C057AM21
2C057AM22
2C057BA01
(57)【要約】
【課題】液体吐出ヘッドによる液体の吐出状態を安定化することを課題とする。
【解決手段】液体吐出ヘッド10のノズル14を開閉するニードル弁17の駆動を制御する駆動制御装置40であって、ニードル弁17を駆動させる駆動パルスを生成する波形発生回路41を備え、波形発生回路41は、第1駆動パルスと、ニードル弁17を最大変位量~最大変位量*0.6の範囲の変位量である所定変位量で保持する保持時間が第1駆動パルスよりも小さく、保持時間における変位量の平均値が第1駆動パルスよりも大きい第2駆動パルスとを生成可能であることを特徴とする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出ヘッドの吐出口を開閉する開閉弁の駆動を制御する駆動制御装置であって、
前記開閉弁を駆動させる駆動パルスを生成する駆動パルス生成部を備え、
前記駆動パルス生成部は、第1駆動パルスと、前記開閉弁の変位量を所定変位量で保持する保持時間が前記第1駆動パルスよりも小さく、前記保持時間における前記開閉弁の変位量の平均値が前記第1駆動パルスよりも大きい第2駆動パルスとを生成可能であることを特徴とする駆動制御装置。
【請求項2】
前記液体吐出ヘッドが液体の吐出対象物の隣接する少なくとも二つの箇所に液体を吐出する場合に、前記少なくとも二つの箇所に個別に液滴を吐出するために前記液体を吐出する箇所の数と同じ回数だけ前記開閉弁を開閉させる複数駆動パルスと、前記少なくとも二つの箇所に跨るように液滴を吐出するために前記開閉弁を一度だけ開閉させて前記開閉弁を開いた状態を維持する単一駆動パルスとを生成可能である請求項1記載の駆動制御装置。
【請求項3】
前記開閉弁を閉じる速度が異なる複数の駆動パルスを生成可能である請求項1または2記載の駆動制御装置。
【請求項4】
前記開閉弁を閉じた状態から前記開閉弁を前記所定変位量まで開くまでの区間を上り区間、前記開閉弁を前記所定変位量で保持する区間を保持区間、前記開閉弁が前記所定変位量まで変位した前記開閉弁を閉じていく区間を下り区間とすると、
前記下り区間における前記吐出口からの液体の吐出速度が、前記上り区間および保持区間における前記吐出口からの液体の吐出速度よりも大きくなるように前記駆動パルスを生成する請求項3記載の駆動制御装置。
【請求項5】
前記液体の液圧をP、
前記吐出口の出口側開口端の断面積をS、
前記吐出口と前記開閉弁との間の領域である隙間領域の流体抵抗をR
bulb、
前記吐出口内の流体抵抗をR
nozzle、
前記開閉弁を閉じる速度SR
bulbとすると、
下記の数式(1)を満たす前記駆動パルスを生成する請求項3または4記載の駆動制御装置。
【数1】
【請求項6】
液体吐出ヘッドの開閉弁を駆動する駆動体に電圧を印加し、前記開閉弁の吐出口に対する開閉動作を制御する駆動制御装置であって、
前記駆動体に印加する電圧のパルスである駆動パルスを生成する駆動パルス生成部を備え、
前記駆動パルス生成部は、第1駆動パルスと、前記駆動体に所定電圧を印加した状態で保持する保持時間が前記第1駆動パルスよりも小さく、前記保持時間における電圧の平均値が前記第1駆動パルスよりも大きい第2駆動パルスとを生成可能であることを特徴とする駆動制御装置。
【請求項7】
前記液体吐出ヘッドが液体の吐出対象物の隣接する少なくとも二つの箇所に液体を吐出する場合に、前記少なくとも二つの箇所に個別に液滴を吐出するために前記液体を吐出するする箇所の数と同じ回数だけ前記駆動体に印加する電圧の値を前記所定電圧まで上げた後に下げる複数駆動パルスと、前記少なくとも二つの箇所に跨るように液滴を吐出するために前記駆動体に印加する電圧の値を一度だけ前記所定電圧まで上げ、前記所定電圧の印加状態を維持する単一駆動パルスとを生成可能である請求項6記載の駆動制御装置。
【請求項8】
前記電圧を前記所定電圧から下げる速度の異なる複数の駆動パルスを生成可能である請求項6または7いずれか記載の駆動制御装置。
【請求項9】
電圧を前記所定電圧まで上げる区間を上り区間、前記所定電圧を印加した状態を保持する区間を保持区間、電圧を前記所定電圧から下げていく区間を下り区間とすると、
前記下り区間における前記吐出口からの液体の吐出速度が、前記上り区間および保持区間における前記吐出口からの液体の吐出速度よりも大きくなるように前記駆動パルスを生成する請求項8記載の駆動制御装置。
【請求項10】
前記液体の液圧をP、
前記吐出口の出口側開口端の断面積をS、
前記吐出口と前記開閉弁との間の領域である隙間領域の流体抵抗をR
bulb、
前記吐出口内の流体抵抗をR
nozzle、
電圧を前記所定電圧から下げる速度を速度SR
bulbとすると、
下記の数式(1)を満たす前記駆動パルスを生成する請求項8または9記載の駆動制御装置。
【数1】
【請求項11】
前記液体吐出ヘッドは大きさの異なる複数の液滴を吐出し、
前記液体吐出ヘッドから吐出する液滴が大きい場合には前記第1駆動パルスを生成し、前記液体吐出ヘッドから吐出する液滴が前記第1駆動パルスの場合よりも小さい場合には前記第2駆動パルスを生成する請求項1から10いずれか1項に記載の駆動制御装置。
【請求項12】
前記液体吐出ヘッドが液体を吐出する周期が長い場合には前記第1駆動パルスを生成し、前記液体吐出ヘッドが液体を吐出する周期が前記第1駆動パルスを生成する場合よりも短い場合には前記第2駆動パルスを生成する請求項1から11いずれか1項に記載の駆動制御装置。
【請求項13】
請求項1から12いずれか1項に記載の駆動制御装置と、
前記液体吐出ヘッドとを備えたヘッドユニット。
【請求項14】
液体を吐出する吐出口を開閉する開閉弁を有する液体吐出ヘッドと、
前記開閉弁の駆動を制御する駆動制御装置とを備えるヘッドユニットであって、
第1駆動パルスによって前記開閉弁を駆動して液体を吐出する動作と、前記開閉弁を所定変位量だけ変位させた状態で保持する保持時間が前記第1駆動パルスよりも小さく、前記保持時間における前記開閉弁の変位量の平均値が前記第1駆動パルスよりも大きい第2駆動パルスによって前記開閉弁を駆動して液体を吐出する動作とを選択的に実行することを特徴とするヘッドユニット。
【請求項15】
駆動体、および、前記吐出口を開閉する開閉弁とを有する前記液体吐出ヘッドと、
前記駆動体に電圧を印加して前記開閉弁の駆動を制御する駆動制御装置と、を備えるヘッドユニットであって、
第1駆動パルスによって前記開閉弁を駆動して液体を吐出する動作と、前記駆動体に所定電圧を印加した状態で保持する保持時間が前記第1駆動パルスよりも小さく、前記保持時間に印加する電圧の平均値が前記第1駆動パルスよりも大きい第2駆動パルスによって前記開閉弁を駆動して液体を吐出する動作とを選択的に実行することを特徴とするヘッドユニット。
【請求項16】
前記液体吐出ヘッドは大きさの異なる複数の液滴を吐出し、
前記液体吐出ヘッドから吐出する液滴が大きい場合には前記第1駆動パルスが選択され、前記液体吐出ヘッドから吐出する液滴が前記第1駆動パルスの場合よりも小さい場合には前記第2駆動パルスが選択される請求項14または15記載のヘッドユニット。
【請求項17】
前記液体吐出ヘッドが液体を吐出する周期が長い場合には前記第1駆動パルスが選択され、前記液体吐出ヘッドが液体を吐出する周期が前記第1駆動パルスを生成する場合よりも短い場合には前記第2駆動パルスが選択される請求項14または15記載のヘッドユニット。
【請求項18】
請求項13から17いずれか1項に記載のヘッドユニットを備えた液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動制御装置、ヘッドユニットおよび液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
開閉弁によって吐出口を開閉することにより液体の吐出を行う液体吐出ヘッドが存在する。そして、この開閉弁を駆動させる駆動体に電圧を印加することにより、開閉弁の駆動を制御する駆動制御装置が存在する。
【0003】
例えば特許文献1(特開2018-51477号公報)の液体吐出装置では、ピエゾ素子に電圧を印加してピエゾ素子を伸縮させることで、移動体を移動させて吐出口を開閉し、吐出口から流体を吐出することが記載されている。この液体吐出装置では、移動体を一度往復させて吐出口からの流体の吐出を開始させる吐出処理の後、再度移動体を往復させることで、吐出口から吐出される流体に貯留室側へ向かう力を発生させる移動処理を行う。これにより、吐出口の外部に流体が残留することを抑制している。またこの移動処理では、移動体の移動距離の異なる複数の移動波形を選択できることが記載されている。
【0004】
ところで、液体吐出ヘッドによる液体の吐出は、要求される液滴の大きさや吐出の周期などの吐出条件や、環境温度などの外的条件がその都度異なっており、これらの条件の違いが液体の吐出速度や吐出量などに影響を与える。このため、液体吐出ヘッドによる液体の吐出状態にもばらつきを生じ、印刷される画像の品質にばらつきを生じてしまうという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では、液体吐出ヘッドによる液体の吐出状態を安定化することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は、液体吐出ヘッドの吐出口を開閉する開閉弁の駆動を制御する駆動制御装置であって、前記開閉弁を駆動させる駆動パルスを生成する駆動パルス生成部を備え、前記駆動パルス生成部は、第1駆動パルスと、前記開閉弁の変位量を所定変位量で保持する保持時間が前記第1駆動パルスよりも小さく、前記保持時間における前記開閉弁の変位量の平均値が前記第1駆動パルスよりも大きい第2駆動パルスとを生成可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、液体吐出ヘッドによる液体の吐出状態を安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】液体供給手段の一例を示す概略構成図である。
【
図5】(a)~(c)はニードル弁の開閉動作によるインクの吐出を示す図で、(d)はその時の駆動パルスを示す図である。
【
図6】液滴の大きさによって異なる駆動パルスを示す図である。
【
図7】圧電素子の経時の収縮による変化を示す図である。
【
図8】駆動周期によって異なる駆動パルスを示す図である。
【
図9】隣接箇所へインクを吐出する場合の駆動パルスを示す図で、(a)図が駆動パルスの波形を示し、(b)図がそれによって吐出される液滴の形状の一例を示している。
【
図10】隣接箇所へインクを吐出する場合の、
図9と異なる駆動パルスを示す図で、(a)図が駆動パルスの波形を示し、(b)図がそれによって吐出される液滴の形状の一例を示している。
【
図11】ノズルから吐出されたインクを示す図である。
【
図12】ニードル弁を閉じる速度の異なる複数の駆動パルスを示す図である。
【
図13】駆動制御装置が駆動パルスを生成する過程を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の説明では、本発明の一実施形態に係る駆動制御装置として、液体吐出ヘッドに設けられた開閉弁の駆動を制御する駆動制御装置を説明する。またこの液体吐出ヘッドは、液体としてのインクを吐出する。
【0010】
【0011】
液体吐出ヘッド10はハウジング11を備える。ハウジング11は金属または樹脂からなる。また、ハウジング11は、その上部に電気信号の通信のためのコネクタ29を備える。また、ハウジング11の左右には、インクをヘッド内に供給するための供給ポート12と、インクをヘッドから排出するための回収ポート13を設けている。
【0012】
図2はヘッドユニットを示す図で、液体吐出ヘッドの
図1のA-A矢視断面を示す図でもある。
【0013】
ヘッドユニット60は、液体吐出ヘッド10と駆動制御装置40とを有する。
【0014】
液体吐出ヘッド10はノズル板15を有する。ノズル板15はハウジング11に接合されている。ノズル板15はインクを吐出するノズル14を備える。ハウジング11は流路16を備えている。流路16は、供給ポート12側からのインクを、ノズル板15上を経て回収ポート13側へ送る経路である。インクは、流路16上を
図2に示す矢印a1~a3で示す方向へ送られる。
【0015】
供給ポート12と回収ポート13との間には、液体吐出モジュール30が配置されている。液体吐出モジュール30は流路16内のインクをノズル14から吐出する。液体吐出モジュール30の数はノズル14の数に対応しており、本例では1列に並べた8個のノズル14に対応する8個の液体吐出モジュール30を備えた構成を示している。なお、ノズル14および液体吐出モジュール30の数および配列は上記に限るものではない。例えば、ノズル14および液体吐出モジュール30の数は、複数ではなく1個であってもよい。また、ノズル14および液体吐出モジュール30の配列は、1列ではなく複数列で配置してもよい。
【0016】
上記の構成により、供給ポート12は加圧した状態のインクを外部から取り込み、インクを矢印a1方向へ送り、インクを流路16に供給する。流路16は、供給ポート12からのインクを矢印a2方向へ送る。そして、回収ポート13は、流路16に沿って配置したノズル14から吐出しなかったインクを矢印a3方向へ排出する。
【0017】
液体吐出モジュール30は、ノズル14を開閉するニードル弁17と、ニードル弁17を駆動する圧電素子18とを備える。
【0018】
ハウジング11は、圧電素子18の上端部と対向する位置に規制部材19を備えている。この規制部材19は、圧電素子18の上端部に当接しており、圧電素子18の固定点をなしている。
【0019】
ここで、ノズル14は吐出口の一例で、ノズル板15は吐出口形成部材の一例で、ニードル弁17は開閉弁の一例で、圧電素子18は駆動体の一例である。
【0020】
圧電素子18を作動してニードル弁17を上方向へ動かした場合は、ニードル弁17によって閉じていたノズル14が開いた状態になり、ノズル14からインクを吐出する。また、圧電素子18を作動してニードル弁17を下方向へ動かした場合は、ニードル弁17の先端部がノズル14に当接してノズル14が閉じた状態になり、ノズル14からインクは吐出しなくなる。なお、ノズル14からのインクの吐出効率が低下しないようにするため、液体の吐出対象物に対してインクを吐出している期間は、回収ポート13からのインクの排出を一時的に行わないようにしてもよい。
【0021】
図3は、液体吐出ヘッドを構成する液体吐出モジュール単体の説明図である。
図3(a)は液体吐出モジュールの全体断面図、
図3(b)は
図3(a)のB部の拡大図である。
【0022】
流路16はハウジング11に設けた複数の液体吐出モジュール30に共通の流路である。
【0023】
ニードル弁17はその先端に弾性部材17aを備えている。ニードル弁17の先端をノズル板15に押し付けた際に、弾性部材17aが圧縮されることで、ニードル弁17がノズル14を確実に閉塞する。また、ニードル弁17とハウジング11との間には、軸受部21を設ける。軸受部21とニードル弁17との間には、Oリングなどのシール部材22を設けている。
【0024】
ハウジング11の内側の空間11a内には圧電素子18を収容している。保持部材23は中央空間23a内に圧電素子18を保持している。圧電素子18とニードル弁17とは同軸上に保持部材23の先端部23bを介して連結されている。保持部材23は、先端部23b側はニードル弁17と連結し、後端部23c側はハウジング11に取り付けられた規制部材19によって固定されている。
【0025】
駆動制御装置40によって圧電素子18に電圧が印加されることで、圧電素子18が収縮し、圧電素子18が保持部材23を介してニードル弁17を引っ張る。これにより、ニードル弁17がノズル14から離間してノズル14を開放する。これにより、流路16に加圧供給したインクがノズル14から吐出される。また、圧電素子18に電圧を印加していないときは、ニードル弁17がノズル14を閉塞している。この状態では、流路16にインクが加圧供給されていても、ノズル14からインクが吐出することはない。
【0026】
駆動制御装置40は、駆動パルス生成部である波形発生回路41と増幅回路42とを有する。波形発生回路41が後述する駆動パルス波形を生成し、増幅回路42が必要な値まで電圧値を増幅する。そして、増幅された電圧が圧電素子18に印加される。この電圧の印加により、駆動制御装置40は、ニードル弁17の開閉を制御し、液体吐出ヘッドからのインクの吐出を制御する。ただし、波形発生回路41が十分な値の電圧を印加できる場合には増幅回路42は省略してもよい。
【0027】
波形発生回路41は、圧電素子18に印加する電圧の時間経過に伴う波形である駆動パルスを生成する。波形発生回路41は、外部のPCや装置内部のマイコンから印刷データを入力され、この入力データに基づいて駆動パルスを生成する。波形発生回路41は、圧電素子18に印加する電圧を変更でき、複数の駆動パルスを生成できる。前述のように、波形発生回路41が駆動パルスを生成することにより、圧電素子18が駆動パルスに従って伸縮し、ニードル弁17を開閉移動させる。
【0028】
図4は、液体供給手段の一例を示す概略構成図である。
【0029】
液体吐出装置は、各液体吐出ヘッド10a~10dから吐出するインク90a~90dを収容した密閉容器としてのタンク31a~31dを備えている。なお、以下の説明において、これら各インクを総称する場合はインク90と記す。また、各タンクを総称する場合は、タンク31と記す。
【0030】
タンク31と液体吐出ヘッド10の注入口(
図1、
図2に示した供給ポート12)とは、それぞれチューブ32を介して接続している。一方、タンク31は、エアーレギュレータ33を含むパイプ34を介してコンプレッサ35に接続している。コンプレッサ35はタンク31に加圧空気を供給する。これにより、液体吐出ヘッド10内のインク90は加圧状態になり、前述のニードル弁を開けばノズル14からインク90が吐出する。ここで、コンプレッサ35、エアーレギュレータ33を含むパイプ34、タンク31、およびチューブ32は、液体吐出ヘッド10に対してインク90を加圧供給する液体供給手段の一例である。
【0031】
次に、駆動制御装置40が圧電素子18に電圧を印加してニードル弁17を駆動する様子について
図5を用いて説明する。
図5(a)~(c)はニードル弁の開閉の様子を示す図で、
図5(d)はその際のニードル弁の変位量を示すもので、横軸に時間t[s]、縦軸にニードル弁の変位量C[mm]を示している。ここで言うニードル弁の変位量とは、
図5(a)のニードル弁17がノズル板15に当接し、ニードル弁17がノズル14を閉じた位置を0として、そこからニードル弁17が
図5(a)の上方向である開き方向へ移動した量を示すものである。
【0032】
なお、駆動制御装置40は、圧電素子18に対して電圧のパルスである駆動パルスを印加して圧電素子18を伸縮させ、開閉弁を駆動させる。この駆動パルスはニードル弁の変位量と比例関係にある。つまり、駆動制御装置40が形成する時間tに対する駆動パルスは、
図5(d)の時刻tの変化に対するニードル弁の変位量の推移と同様の形状の波形をなす。このため、以降の説明では、
図5(d)等に示す変位量Cの波形が駆動パルスの波形である(駆動パルスの波形と等しい)ものとして説明する。
【0033】
圧電素子18への印加電圧を0Vにした状態では、
図5(a)に示すように、圧電素子18が伸張してニードル弁17がノズル板15に当接する。これにより、ニードル弁17がノズル14を閉じる。
図5(d)および以降の図では、ニードル弁17がノズル14を閉じた状態をニードル弁17の変位量0とし、この位置からのニードル弁17の変位量として変位量Cを示している。また本実施例では、ノズル14を閉じるときは電圧を0Vとしているが、後述の所定電圧よりも小さな電圧であれば0V以外としてもよい。
【0034】
また圧電素子18に電圧を印加することにより、圧電素子18が収縮する。これにより、
図5(b)に示すように、ニードル弁17が
図5(b)の上方向へ移動し、ニードル弁17とノズル板15との間に隙間領域50が形成される。そして、圧電素子18に対する電圧の印加をやめることにより、あるいは印加する電圧を小さくすることにより、
図5(c)に示すように、再びニードル弁17がノズル板15に当接してノズル14を閉じる。
【0035】
以上のニードル弁17による開閉動作の区間として、
図5(d)に示すように、ニードル弁17の変位量が大きくなっていく上り区間D1と、ニードル弁17の変位量が最大変位量C
max*0.6~最大変位量C
maxの範囲で保持される保持区間D2と、ニードル弁17の変位量が小さくなっていく下り区間D3との三つの区間に分けられる。
【0036】
このノズル14の開放時には、コンプレッサ35(
図4参照)によりインク90が加圧されている。従って、
図5(b)のように、インク90の液圧により開放されたノズル14からインクが吐出される。上り区間D1の初期は、ニードル弁17の変位量が小さく隙間領域50も小さいため、インクの吐出速度は小さい。そして、保持区間D2では、変位量が大きくなりインクの吐出速度も大きくなる。このため、ノズル14から吐出されるインクは、
図5(b)のように下流側に形成された液滴91Aの塊をこれに連なる糸部分が押し出すような形になる。またこれとは別に、下り区間D3では、ニードル弁17が閉じられていく過程で、隙間領域50のインク90が加圧されてノズル14から押し出される。これにより、
図5(c)に示すように、上流側に別の液滴91Bの塊が形成される。
【0037】
ここで、液体の吐出対象物に形成する画像の品質を安定させるために、インクの吐出量や吐出速度を安定させることが重要になる。しかし、吐出するインクの液滴の大きさやインクを吐出する周期などの吐出条件は、その都度異なる。そこで本実施形態では、駆動制御装置がこれらの条件毎に異なる駆動パルスを生成している。
【0038】
ここで、ノズルからのインクの吐出量は、インク90の液圧とニードル弁17の開口時間に比例し、隙間領域50における流体抵抗に反比例する。具体的には、液圧をP、ノズル14の流体抵抗をR
nozzle、隙間領域50の流体抵抗をR
lift、ニードル弁17の開口時間をΔtとし、駆動パルスの波形が矩形であるとすると、吐出量Qを下記式(2)により求めることができる。あるいは、駆動パルスが矩形でない場合には、インクを吐出する周期をTとすると、吐出量Qを下記式(3)により求めることができる。なお、液圧Pは圧力計により液体吐出モジュール内に入るインクの液圧を測定する、あるいはタンク31(
図4参照)の液圧を測定することにより求める。また、R
nozzleはノズル14の断面積により、R
liftは隙間領域50の寸法により求めることができる。
【数2】
【数3】
【0039】
またインクの吐出速度は単位時間当たりの吐出量に比例し、ノズル14の断面積に反比例する。具体的には、ノズル14の出口側開口端の断面積をSとし、駆動パルスが矩形であるとすると、吐出速度Vを下記式(4)により求めることができる。あるいは、駆動パルスが矩形でない場合には、吐出速度Vを下記式(5)により求めることができる。
【数4】
【数5】
【0040】
ここで、本実施形態の駆動制御装置は、液体吐出ヘッドが吐出するインクの液滴の大きさにより、異なる駆動パルスを生成する。具体的には、駆動制御装置は、
図6に示すように、大きい液滴を吐出する際の駆動パルスA1と、中間の大きさの液滴を吐出する際の駆動パルスA2と、小さい液滴を吐出する際の駆動パルスA3とを生成できる。
【0041】
各駆動パルスのニードル弁が所定変位量だけ変位した状態で保持する保持時間は、駆動パルスA1の保持時間t1が最も大きく、駆動パルスA2の保持時間t2、駆動パルスA3の保持時間t3の順で小さくなる。この「所定変位量」とは、その駆動パルスにおける最大変位量*0.6~最大変位量の範囲の変位量のことを指し、「保持時間」は、この「所定変位量」で保持される区間のことである。またこれとは逆に、保持時間における変位量の平均値は、駆動パルスA1が最も小さく、A2、A3の順で大きくなる。なお最大変位量は、駆動パルスA1の最大変位量C1が最も小さく、駆動パルスA2の最大変位量C2、駆動パルスA3の変位量C3の順で大きくなる。以下、各駆動パルスにおけるニードル弁の最大変位量を単に最大変位量、そして、所定変位量だけ変位した状態での保持時間を単に保持時間とも呼ぶ。またニードル弁が最大変位した時は、駆動制御装置が圧電素子18に最大電圧を印加した時でもある。そして保持時間は所定電圧を印加した状態で保持した時間でもある。この所定電圧とは、最大の電圧値*0.6~最大の電圧値の範囲の電圧である。
【0042】
最大変位量が大きいほどインクが通る道幅が大きくなり、ノズル14から吐出されるインクの吐出速度は大きくなる。また所定変位量での保持時間が長いほど吐出されるインクの量が多くなり、インクの吐出速度も大きくなる。このため、本実施形態では、吐出する液滴を大きくしたい時ほど保持時間を大きくしてインクの吐出量を大きくしている。一方で、吐出する液滴が小さい場合には、保持時間における変位量の平均値を大きくすることで吐出速度を大きくしている。これにより、それぞれの駆動パルスにおける吐出速度を略同じにしている。つまり、本実施形態のように複数の駆動パルスを使い分けることにより、吐出する液滴の大きさに関わらず、略一定の速度でインクを吐出することができ、液体吐出ヘッドからのインクの吐出状態を安定させることができる。従って、液体の吐出対象物に形成する画像の品質を向上させることができる。
【0043】
以上のように本実施形態の駆動制御装置は、吐出する液滴の大きさに応じて複数の駆動パルスを生成できる。ただし、この駆動パルスは少なくとも2つあればよく、また4つ以上であってもよい。これらの駆動パルスのうち、ある駆動パルス(例えば駆動パルスA1)を本発明の第1駆動パルス、そして、この第1駆動パルスよりもニードル弁の保持時間における変位量の平均値が大きく、保持時間が小さい駆動パルス(例えば駆動パルスA3)を本発明の第2駆動パルスとすることができる。
【0044】
ところで、圧電素子18は電圧を印加することにより発熱する。このため、高電圧を印加したり高周波での駆動を続けると、圧電素子18の負の熱膨張係数により圧電素子18が収縮し、ニードル弁17の変位量も小さくなってしまう。一例として
図7に示すように、時刻t0から高電圧での駆動を継続すると、圧電素子18の熱収縮によってニードル弁の変位量Cが小さくなり、ひいてはインクの吐出量Q、吐出速度Vも小さくなってしまう。
【0045】
これに対して本実施形態では、駆動制御装置が、圧電素子の発熱量の異なる複数の駆動パルスを生成できる。具体的には、
図8に示すように、駆動制御装置は、第2駆動パルスとしての駆動パルスB1と、第1駆動パルスとしての駆動パルスB2とを生成できる。駆動パルスB1の最大変位量C4は駆動パルスB2の最大変位量C5よりも大きい。そして、駆動パルスB1の保持時間における変位量の平均値は駆動パルスB2の保持時間における変位量の平均値よりも大きい。また、駆動パルスB1の保持時間t4は駆動パルスB2の保持時間t5よりも小さい。
【0046】
本実施形態の駆動制御装置は、ニードル弁の駆動周波数が大きい場合には駆動パルスB1を生成し、ニードル弁の駆動周波数が小さい場合には駆動パルスB2を生成する。駆動パルスB1と駆動パルスB2はその面積が略同じになるように設定されており、吐出量は略同じである。
【0047】
圧電素子の発熱量を抑える観点で考えると、保持時間における変位量の平均値の小さい(つまり印加する電圧の小さい)駆動パルスB2が好ましい。しかし一方で、駆動パルスB2はニードル弁を開閉する時間が長くなり、高速印刷に対応できないという問題がある。そこで本実施形態では、上記のように、駆動周波数が小さい場合には圧電素子の発熱量の小さい駆動パルスB2を生成し、駆動周波数が大きい場合には駆動パルスB1を生成する。これにより、圧電素子の熱収縮を抑制してノズルからのインクの吐出量や吐出速度を安定化するとともに、ニードル弁の高周波駆動にも対応することができる。また、駆動周波数ごとに3つ以上の駆動パルスを生成できる構成であってもよい。
【0048】
また圧電素子18の発熱を抑える観点では、ニードル弁の開閉の回数を減らすことも有効である。つまり本実施形態の駆動制御装置は、液体の吐出対象物の隣接する2箇所にインクを吐出する場合、
図9(a)に示すように、ニードル弁をその都度開閉させる複数駆動パルスである駆動パルスE1を生成し、
図9(b)に示すように、それぞれの箇所に吐出する液滴を個別に形成することもできる。一方で、
図10(a)に示すように、ニードル弁を一度だけ開閉させ、ニードル弁の開放状態を維持する単一駆動パルスである駆動パルスE2を生成し、
図10(b)に示すように、2箇所に跨って吐出される糸状の液滴を形成することもできる。駆動パルスE2により、圧電素子の熱収縮を抑制してノズルからのインクの吐出量や吐出速度を安定化することができる。また、隣接するインクの吐出箇所に対して糸状の液滴による塗布を行うので、インクの液体の吐出対象物に対する着弾時のインク跳ねや膜厚のムラを抑制できる。
【0049】
駆動パルスE1において、ニードル弁をその都度開閉させるというのは、駆動体に印加する電圧を0Vから所定電圧まで上げた後に0Vまで下げる動作を吐出箇所の数だけ行うことである。また、駆動パルスE2において、ニードル弁を一度だけ開閉するというのは、駆動体に印加する電圧を所定電圧まで上げて保持した後、0Vまで下げることである。なお、液体の吐出対象物の3箇所以上に連続してインクを吐出する場合に、これらをすべて一度のニードル弁の開閉によりインクを吐出してもよい。
【0050】
ところで、ノズルから吐出されるインクには、
図5(c)で示したように、インクの液圧により形成される吐出方向下流側の液滴91Aと、開閉弁を閉じる圧力により形成される吐出方向上流側の液滴91Bとがある。そして、ノズル14からこれらの液滴が吐出された後に、上流側の液滴91Bの速度が下流側の液滴91Aの速度よりも大きい場合には、
図11(a)に示すように、上流側の液滴91Bが下流側の液滴91Aに追いついて1つの大きな液滴になる。これとは反対に、
図11(b)に示すように、上流側の液滴91Bの速度が下流側の液滴91Aの速度以下の場合には、二つの液滴91A,91Bは分離するか、あるいは細長い糸形状になる。
【0051】
図11(a)の場合には、ノズルから吐出されるインクが1つの球形に近い液滴になるため、液体の吐出対象物に対する吐出状態が安定し、液体の吐出対象物に良好な画像を形成できる。一方、
図11(b)の場合には、同一箇所に2度液滴が着弾して前後の液滴91A,91Bが干渉することで、液体の吐出対象物に形成される画像が不安定になるなど、印刷不良を起こす。つまり、
図11(a)のように上流側の液滴91Bの速度が下流側の液滴91Aの速度よりも大きい方が、ノズルからのインクの吐出状態を安定させることができ、好ましい。
【0052】
これに対して本実施形態の駆動制御装置は、ニードル弁17を閉じる速度を変化させる複数の駆動パルスを生成できる。具体的には、
図12に示すように、駆動制御装置は、ニードル弁17を閉じる速度(
図12に示す下り勾配)が大きい駆動パルスF1と、この勾配が小さくニードル弁17を閉じる速度が小さい駆動パルスF2とを生成できる。
【0053】
ニードル弁17を閉じる速度が大きい駆動パルスF1では、
図11(a)のように、上流側の液滴91Bの速度が下流側の液滴91Aの速度よりも大きくなるように、その勾配が設定される。これにより、上記のようにインクの吐出状態を安定させることができる。具体的には、ニードル弁17を閉じる速度であるスルーレートをSR
bulbとすると、SR
bulbが前述の式(4)で示される吐出速度V以上に設定され、下記式(6)を満たすように設定される。なお、スルーレートの異なる3つ以上の駆動パルスを生成可能であってもよい。
【0054】
【0055】
上記のスルーレートSRbulbは、駆動体に印加する電圧を所定電圧から0Vまで下げる速度のことでもある。
【0056】
以上の説明では、決まった複数の駆動パルスの中からその一つを選択するものとしたが、数値を調整するように設定してもよい。例えば
図6の実施形態では、保持時間における変位量の平均値が大きくなるほど所定変位量での保持時間が小さくなるように、変位量の値を任意に設定してもよいし、例えば
図12の実施形態では、スルーレートを任意に設定してもよい。また、
図6の液滴による駆動パルスの違い、
図8の駆動周波数による駆動パルスの違い、
図9の連続吐出時の駆動パルスの選択、
図12の駆動パルスにおけるスルーレートの違い、のそれぞれの条件を組み合わせて合成した駆動パルスを生成してもよい。
【0057】
次に、駆動制御装置があるノズルに対して駆動パルスを生成する過程の一例について、
図13のフロー図を用いて説明する。
【0058】
図13に示すように、まず外部のPCや装置内のマイコンなどからノズルにより吐出する液滴の大きさのデータを受け取る(ステップS1)。そして、このデータに基づいて、一度目の駆動パルスを選択する(ステップS2,S3)。本実施形態では、まず、液滴の大きさに応じて、定型の駆動パルスから一つを選択する。その後、環境温度などの外乱要因や、駆動周期、経時変化を考慮したインクの粘度などのその他要因に基づいて、ニードル弁の最大変位量、スルーレート、ニードル弁の所定変位量での保持時間をそれぞれ補正する(ステップS4~S6)。そして、波形発生回路41(
図3(a)参照)により駆動パルスを生成して増幅回路42により波形を増幅し、液体吐出ヘッドの圧電素子に電圧を印加する(ステップS7~S9)。そして、このノズルによりインクの吐出が終了するまでステップS3~S9のフローを繰り返す。
【0059】
以上のように本実施形態の駆動制御装置によれば、吐出する液滴の大きさや駆動周期などの吐出条件に応じて、適切な駆動パルスを生成できる。従って、ノズルからのインクの吐出量や吐出速度を安定させることができる等、液体吐出ヘッドからのインクの吐出状態を安定させることができる。従って、液体の吐出対象物に形成する画像の品質を向上させることができる。
【0060】
以上の本実施形態では、変位量が最大値まで増加して一定になる例を説明したが、保持時間において、変位量の最大値に対して-40%以内で変位量が変動や振動するように構成してもよい。また同様に、以上の本実施形態では、電圧が上昇し続けて最大値まで増加し、最大値を維持する例を説明したが、保持時間における最大電圧値に対して-40%以内で電圧が変動や振動するように構成してもよい。
【0061】
次に、以上の駆動制御装置を有するヘッドユニットを備えた液体吐出装置について、
図14を用いて説明する。
【0062】
図14に示すように、液体吐出装置100は、対象物の一例である液体の吐出対象物200に対向して設置している。液体吐出装置100は、X軸レール101と、このX軸レール101と交差するY軸レール102と、X軸レール101およびY軸レール102と交差するZ軸レール103を備える。
【0063】
Y軸レール102は、X軸レール101がY方向に移動可能なように、X軸レール101を保持する。また、X軸レール101は、Z軸レール103がX方向に移動可能なように、Z軸レール103を保持する。そして、Z軸レール103は、キャリッジ1がZ方向に移動可能なように、キャリッジ1を保持する。ここで、キャリッジ1は、ヘッドユニットの一例であり、前述の駆動制御装置と液体吐出ヘッドを備えている。
【0064】
液体吐出装置100は、キャリッジ1をZ軸レール103に沿ってZ方向に動かす第1のZ方向駆動部92と、Z軸レール103をX軸レール101に沿ってX方向に動かすX方向駆動部72を備える。また、液体吐出装置100は、X軸レール101をY軸レール102に沿ってY方向に動かすY方向駆動部82を備える。さらに、液体吐出装置100は、キャリッジ1に対してヘッド保持体70をZ方向に動かす第2のZ方向駆動部93を備える。
【0065】
キャリッジ1は、ヘッド保持体70を備えている。ヘッド保持体70は、保持体の一例である。また、キャリッジ1は、
図14に示した第1のZ方向駆動部92からの動力によりZ軸レール103に沿ってZ方向へ移動可能である。ヘッド保持体70は、
図14に示した第2のZ方向駆動部93からの動力によりキャリッジ1に対してZ方向へ移動可能である。
【0066】
上記構成の液体吐出装置100は、キャリッジ1をX軸、Y軸およびZ軸の方向に動かしながら、ヘッド保持体70に設けたヘッドから液体の一例であるインクを吐出し、液体の吐出対象物200に描画を行う。ここで、キャリッジ1およびヘッド保持体70のZ方向への移動は、Z方向と平行である必要はなく、少なくともZ方向の成分を含んでいれば斜めの移動であってもよい。
【0067】
なお、
図14において液体の吐出対象物200の表面形状は平面として示しているが、液体の吐出対象物200の表面形状は、車やトラックの車体、航空機の機体などのように鉛直に近い面、もしくは曲率半径の大きい面でもよい。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0069】
「液体」にはインクだけでなく塗料を含む。
【0070】
以上の説明では、駆動制御装置が圧電素子などの駆動体に電圧を印加して開閉弁を開閉する実施例ついて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、空圧や油圧により開閉弁を開閉してもよい。この場合、駆動制御装置が生成する駆動パルスは、空圧や油圧による加圧機構を設定した圧力で駆動させるための駆動波形である。
【0071】
本願において、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッド又はヘッドユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体吐出装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0072】
この「液体吐出装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0073】
例えば、「液体吐出装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0074】
また、「液体吐出装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0075】
上記「液体が付着可能なもの」とは、前述した液体の吐出対象物のことであり、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0076】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0077】
また、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0078】
また、「液体吐出装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0079】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【符号の説明】
【0080】
10 液体吐出ヘッド
14 ノズル(吐出口)
15 ノズル板(吐出口形成部材)
17 ニードル弁(開閉弁)
18 圧電素子(駆動体)
30 液体吐出モジュール
40 駆動制御装置
41 波形発生回路(駆動パルス生成部)
50 隙間領域
60 ヘッドユニット
100 液体吐出装置
C ニードル弁の変位量
Cmax ニードル弁の最大変位量
D1 上り区間
D2 保持区間
D3 下り区間
【先行技術文献】
【特許文献】
【0081】