(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128442
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】光学フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/38 20140101AFI20230907BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20230907BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20230907BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20230907BHJP
【FI】
B23K26/38 Z
G02B5/30
G02B1/14
B32B7/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032787
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】姜 大山
【テーマコード(参考)】
2H149
2K009
4E168
4F100
【Fターム(参考)】
2H149BA02
2K009AA15
4E168AD07
4E168CB02
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA04
4E168DA23
4E168DA24
4E168DA28
4E168DA32
4E168DA40
4E168DA46
4E168DA47
4E168JA14
4E168JA17
4E168JB03
4F100AA20B
4F100AK01B
4F100AK25B
4F100AK42A
4F100AR00B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100EJ30
4F100EJ52
4F100GB41
4F100JB14B
4F100JK12B
4F100JM01B
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】ハードコート層を最表面に有する光学フィルムの製造方法であって、切断工程における品質の低下を抑制することができる製造方法を提供する。
【解決手段】基材層とハードコート層とを有し前記ハードコート層が最表面に位置する材料フィルムから光学フィルムを得る製造方法であって、前記材料フィルムの前記ハードコート層側の表面からレーザ光を照射することにより前記材料フィルムを切断する切断工程、を有し、前記レーザ光は、レーザ照射装置から周波数f〔kHz〕のパルスで出射され、前記ハードコート層表面上を相対速度v〔cm/sec〕で、前記表面と平行な一方向に移動し、かつ下記式(1)で算出される重畳率Rが15%以上80%以下である、製造方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層とハードコート層とを有し前記ハードコート層が最表面に位置する材料フィルムから光学フィルムを得る製造方法であって、
前記材料フィルムの前記ハードコート層側の表面からレーザ光を照射することにより前記材料フィルムを切断する切断工程、を有し、
前記レーザ光は、レーザ照射装置から周波数f〔kHz〕のパルスで出射され、前記ハードコート層の表面上を相対速度v〔cm/sec〕で、前記表面と平行な一方向に移動し、かつ下記式(1)で算出される重畳率Rが15%以上80%以下である、製造方法。
R〔%〕={(D-x)/D}×100% (1)
[式(1)において、D〔μm〕は前記レーザ光の径であり、xは下記式(2)で算出される値である。]
x=(v/f)×103 (2)
【請求項2】
前記レーザ光のパルスエネルギーは、5W以上50W以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記レーザ光の前記相対速度vは、20cm/sec以上40cm/sec以下である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記レーザ光の前記径Dは、5μm以上60μm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記レーザ照射装置は、ピコ秒レーザ照射装置である、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ハードコート層は、紫外線硬化型樹脂の硬化層である、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記ハードコート層の厚みは、5μm以上30μm以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記光学フィルムは、直線偏光板または円偏光板を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や有機EL表示装置等の画像表示装置は、携帯電話やスマートウォッチといった種々の用途に広く活用されている。このような画像表示装置の前面板として、ガラスが用いられてきたが、ガラスは非常に剛直であり、割れやすいため、例えばフレキシブルディスプレイ等の前面板材料としての利用は難しい。ガラスに代わる光学フィルムとして、基材と、該基材の少なくとも一方の面に積層されたハードコート層とを有する樹脂フィルムが検討されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハードコート層を最表面に有する光学フィルムを切断加工する際に、刃物により切断するとハードコート層にクラックが生じやすく、またレーザ光の照射により切断するとハードコート層由来の汚れが発生しやすい等切断により品質が低下する問題があった。
【0005】
本発明は、ハードコート層を最表面に有する光学フィルムの製造方法であって、切断工程における品質の低下を抑制することができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に例示する光学フィルムの製造方法を提供する。
〔1〕 基材層とハードコート層とを有し前記ハードコート層が最表面に位置する材料フィルムから光学フィルムを得る製造方法であって、
前記材料フィルムの前記ハードコート層側の表面からレーザ光を照射することにより前記材料フィルムを切断する切断工程、を有し、
前記レーザ光は、レーザ照射装置から周波数f〔kHz〕のパルスで出射され、前記ハードコート層の表面上を相対速度v〔cm/sec〕で、前記表面と平行な一方向に移動し、かつ下記式(1)で算出される重畳率Rが15%以上80%以下である、製造方法。
R〔%〕={(D-x)/D}×100% (1)
[式(1)において、D〔μm〕は前記レーザ光の径であり、xは下記式(2)で算出される値である。]
x=(v/f)×103 (2)
〔2〕 前記レーザ光のパルスエネルギーは、5W以上50W以下である、〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕 前記レーザ光の前記相対速度vは、20cm/sec以上40cm/sec以下である、〔1〕または〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕 前記レーザ光の前記径Dは、5μm以上60μm以下である、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の製造方法。
〔5〕 前記レーザ照射装置は、ピコ秒レーザ照射装置である、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の製造方法。
〔6〕 前記ハードコート層は、紫外線硬化型樹脂の硬化層である、〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の製造方法。
〔7〕 前記ハードコート層の厚みは、5μm以上30μm以下である、〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の製造方法。
〔8〕 前記光学フィルムは、直線偏光板または円偏光板を含む、〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光学フィルムの製造方法において切断工程における品質の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態における切断工程の一例を模式的に示す上面斜視図である。
【
図2】ハードコート層表面におけるレーザ光と切断線との関係を模式的に示す図である。
【
図3】切断面付近にハードコート層由来の汚れが付着する様子を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の全ての図面においては、各構成要素を理解し易くするために縮尺を適宜調整して示しており、図面に示される各構成要素の縮尺と実際の構成要素の縮尺とは必ずしも一致しない。
【0010】
[光学フィルムの製造方法]
本実施形態の製造方法は、基材層とハードコート層とを有し前記ハードコート層が最表面に位置する材料フィルムから光学フィルムを得る製造方法であって、前記材料フィルムの前記ハードコート層側の表面からレーザ光を照射することにより前記材料フィルムを切断する切断工程を有する。前記切断工程において、前記レーザ光は、レーザ照射装置から周波数f〔kHz〕のパルスで出射され、前記ハードコート層表面上を相対速度v〔cm/sec〕で、前記表面と平行な一方向に移動し、かつ下記式(1)で算出される重畳率Rが15%以上80%以下である。
R〔%〕={(D-x)/D}×100% (1)
[式(1)において、D〔μm〕は前記レーザ光の径であり、xは下記式(2)で算出される値である。]
x=(v/f)×103 (2)
【0011】
本発明者らは、上記式(1)で算出される重畳率Rが15%以上80%以下、好ましくは30%以上75%以下、さらに好ましくは60%以上70%以下、であることにより、切断工程においてハードコート層由来の汚れが発生して切断面付近に付着することを抑制することができ、またはハードコート層由来の汚れが発生して切断面付近に付着することを抑制することができるとともに均一な切断面を得ることができ、光学フィルムの切断面における品質低下を抑制できることを見出した。切断工程において、切断に十分なエネルギーが付与されていない箇所がある場合、切断面が不均一になるものと推測される。
【0012】
<切断工程>
図1は、本実施形態における切断工程の一例を模式的に示す上面斜視図である。切断工程では、材料フィルム10のハードコート層側の表面からレーザ光Lを照射して(
図1(a))、材料フィルム10を切断する(
図1(b))。レーザ光Lは、レーザ照射装置50から周波数f〔kHz〕のパルスで出射される。レーザ光Lは、材料フィルム10のハードコート層表面上の切断線(仮想線であっても実際に存在する線であってもよい)に沿って相対速度v〔cm/sec〕で矢印方向に一方向に移動する。レーザ光Lのハードコート層表面上の移動は、材料フィルム10をハードコート層表面と平行な一方向に移動させることによるものであってもよく、レーザ光Lをハードコート層表面と平行な一方向に走査することによるものであってもよい。レーザ光Lの切断線上の移動が完了すると、材料フィルム10が二つに分断される。
【0013】
切断工程において、レーザ照射装置50から出射されるレーザ光は、紫外線レーザ光であってもよく、赤外線レーザ光であってもよい。紫外線レーザ光を出射するレーザ照射装置としては、ND:YAGレーザ、ND:YVO4レーザ等が挙げられ、赤外線レーザ光を出射するレーザ照射装置としては、CO2レーザ、Fiberレーザ等が挙げられる。レーザ照射装置50は、切断後の光学フィルムの断面の品質の観点から紫外線レーザ光であることが好ましい。紫外線レーザ光の波長は、300nm~400nmであり、好ましくは330nm~370nmであり、より好ましくは350nm~360nmの範囲であり、例えば355nmである。
【0014】
レーザ照射装置としては、紫外線レーザ光をパルスで出射する、ピコ秒レーザ照射装置やフェムト秒レーザ照射装置が好適である。紫外線レーザ光のパルス幅は、好ましくは5~20ピコ秒、より好ましくは9~15ピコ秒である。紫外線レーザ光の周波数f〔kHz〕は、好ましくは3000kHz~8000kHz、より好ましくは4000kHz~6000kHzである。
【0015】
切断工程における、レーザ光のハードコート層表面上の相対速度v〔cm/sec〕は、例えば10cm/sec以上100cm/sec以下であり、好ましくは10cm/sec以上60cm/sec以下、より好ましくは20cm/sec以上40cm/sec以下である。
【0016】
上記式(1)においてレーザ光の径D〔μm〕は、材料フィルム10のハードコート層表面おける径である。レーザ光の径Dは、測定値であってもよく、後述の実施例で算出されるような理論値であってもよい。
図2は、材料フィルム10のハードコート層表面におけるレーザ光のビーム形状と、切断線との関係を模式的に示す図である。レーザ照射装置から出射されるレーザ光のビーム形状は、円形であっても楕円形であってもよく、好ましくは円形である。レーザ光の経D〔μm〕は、レーザ光のビーム形状が楕円形である場合には移動方向の径である。
【0017】
上記式(1)においてxは、上記式(2)からわかるように、一つのパルスから次のパルスまでの移動距離に相当する。したがって、一つのパルスと次のパルスとは、(D-x)分の重なりが生じる。この重なりの度合いを示したのが、式(1)で算出される重畳率R〔%〕となる。
【0018】
レーザ光の径D〔μm〕は、例えば1μm以上100μm以下であり、好ましくは3μm以上80μm以下、より好ましくは5μm以上60μm以下である。
【0019】
レーザ光のパルスエネルギーは、例えば1W以上100W以下であり、好ましくは3W以上70W以下であり、より好ましくは5W以上50W以下である。
【0020】
重畳率R〔%〕が15%未満である場合には、
図1(b)で示す材料フィルムの切断面付近にハードコート層由来の汚れが付着しやすくなる。また、重畳率R〔%〕が80%を超えると生産性が低下する。
図3は、切断後の材料フィルム10について、切断面付近にハードコート層由来の汚れ60が付着している様子を示すイメージ図である。ハードコート層由来の汚れが発生する理由としては、レーザ光の熱によりハードコート層が部分的に昇華し、その後固化して切断面付近に付着することによるものと推測される。
【0021】
[材料フィルム]
図4は、材料フィルムを模式的に示す断面図である。材料フィルム10は、ハードコート層20を最表面に有し、さらに基材層31を含む第1光学部材30を有する。第1光学部材30は、基材層31のみから構成されるものであってもよく、基材層31以外の層を有するものであってもよい。材料フィルム10において、ハードコート層20と基材層31とは接して積層されている形態が好ましい。
【0022】
材料フィルム10は、1回または複数回の切断工程を経て同じ層構成の光学フィルムとして用いてもよいし、また切断工程を経た材料フィルムに他の層をさらに積層して光学フィルムとして用いてもよい。材料フィルム10の厚みは、その層構成に応じて適宜選択し得るが、例えば5μm以上500μm以下であり、10μm以上300μm以下であってもよい。材料フィルム10の平面視形状は、例えば方形形状であってよく、好ましくは長辺と短辺とを有する方形形状であり、より好ましくは長方形状である。材料フィルム10は、長尺状であってもよい。
【0023】
[光学フィルム]
図5は、材料フィルムから切断工程を経て得られた光学フィルムを模式的に示す断面図である。光学フィルム70は、材料フィルム10と同じ層構成に加えて、第1光学部材30のハードコート層20とは反対側の表面にさらに第2光学部材40を備えている構成でもよく、備えていない構成でもよい。第1光学部材30を準備する工程、第2光学部材40を準備する工程、および第1光学部材30に第2光学部材を積層する工程においては、貼合層を介して層同士を貼合する工程を含む方法によって製造することができる。貼合層を介して層同士を貼合する場合には、密着力を調整する目的で貼合面の一方または両方に対して、コロナ処理等の表面活性化処理を施すことが好ましい。コロナ処理の条件は適宜設定することができ、貼合面の一方の面と他の面とで条件が異なっていてもよい。
【0024】
光学フィルム70の厚みは、光学フィルムに求められる機能および光学フィルムの用途等に応じて異なるため特に限定されないが、例えば30μm以上2000μm以下であり、50μm以上1500μm以下であってもよく、70μm以上1000μm以下であってもよく、500μm以下であってもよく、300μm以下であってもよい。
【0025】
光学フィルム70の平面視形状は、例えば方形形状であってよく、好ましくは長辺と短辺とを有する方形形状であり、より好ましくは長方形である。光学フィルム70の面方向の形状が長方形である場合、長辺の長さは、例えば10mm以上1400mm以下であってよく、好ましくは50mm以上600mm以下である。短辺の長さは、例えば5mm以上800mm以下であり、好ましくは30mm以上500mm以下であり、より好ましくは50mm以上300mm以下である。光学フィルム70を構成する各層は、角部がR加工されたり、端部が切り欠き加工されたり、穴あき加工されたりしていてもよい。
【0026】
光学フィルム70は屈曲可能であることが好ましい。本明細書において、屈曲には、曲げ部分に曲面が形成される折り曲げの形態が含まれ、折り曲げた内面の屈曲半径は特に限定されない。また、屈曲には、内面の屈折角が0度より大きく180度未満である屈折、および、内面の屈曲半径がゼロに近似、または内面の屈折角が0度である折り畳みも含む。
【0027】
光学フィルム70は、例えば画像表示装置等に用いることができる。画像表示装置は特に限定されず、例えば有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(無機EL)表示装置、液晶表示装置、電界発光表示装置等が挙げられる。光学フィルム70は、最表面にハードコート層20を有することから、フレキシブルディスプレイに好適であり、屈曲軸が光学フィルム70の中央に固定されない画像表示装置(スライド式画面拡張ディスプレイ)に特に好適である。
【0028】
<ハードコート層>
ハードコート層20は、例えば基材層31上に設けることができる。ハードコート層20は、光学フィルム70の表面に耐傷性、耐薬品性などを付与して光学フィルムを保護する機能を有する層である。ハードコート層としては、公知のものを適宜採用してよく、例えばアクリル系、エポキシ系、ウレタン系、ベンジルクロライド系、ビニル系等の公知のハードコート層が挙げられる。これらの中でも光学フィルムの広角方向の視認性の低下を抑制し、かつ耐屈曲性を向上させる観点から、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系及びそれらの組合せのハードコート層が好ましい。ハードコート層の鉛筆硬度は、本発明の光学フィルムに積層された状態で測定して、好ましくはHB以上、より好ましくはF以上、さらに好ましくはH以上、とりわけ好ましくは2H以上である。なお、鉛筆硬度は、JIS K 5600-5-4:1999に準拠して測定できる。
【0029】
ハードコート層20は、例えば、活性エネルギー線硬化性化合物を含有する組成物の硬化物であってよい。活性エネルギー線硬化性化合物は、電子線、紫外線などの活性エネルギー線を照射することにより硬化する性質を有する化合物である。このような活性エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、電子線を照射することにより硬化する電子線硬化性化合物や、紫外線を照射することにより硬化する紫外線硬化性化合物などが挙げられる。これらの化合物は、通常のハードコート層の形成に用いられるハードコート剤の主成分と同様の化合物であり、例えばラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0030】
前記ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性基を有する化合物である。前記ラジカル重合性化合物が有するラジカル重合性基としては、ラジカル重合反応を生じ得る官能基であればよく、炭素‐炭素不飽和二重結合を含む基などが挙げられ、具体的には、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。なお、前記ラジカル重合性化合物が2個以上のラジカル重合性基を有する場合、これらのラジカル重合性基はそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい。前記ラジカル重合性化合物が1分子中に有するラジカル重合性基の数は、ハードコート層の硬度を向上する点から、好ましくは2以上である。前記ラジカル重合性化合物としては、反応性の高さの点から、好ましくは(メタ)アクリロイル基を有する化合物が挙げられ、具体的には1分子中に2~6個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレートモノマーと称される化合物やエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートと称される分子内に数個の(メタ)アクリロイル基を有する分子量が数百から数千のオリゴマーが挙げられ、好ましくはエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートから選択された1種以上が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル系樹脂が好ましく、多官能(メタ)アクリレート系化合物を主成分とするものがより好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
【0031】
多官能(メタ)アクリレート系化合物とは、分子中に少なくとも2個のアクリロイルオキシ基及び/又はメタクリロイルオキシ基を有する化合物であり、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ホスファゼン化合物のホスファゼン環に(メタ)アクリロイルオキシ基が導入されたホスファゼン系アクリレート化合物又はホスファゼン系メタクリレート化合物、分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び水酸基を有するポリオール化合物との反応により得られるウレタン(メタ)アクリレート化合物、分子中に少なくとも2個のカルボン酸ハロゲン化物と少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び水酸基を有するポリオール化合物との反応により得られるポリエステル(メタ)アクリレート化合物、及び上記各化合物の2量体、3量体などのようなオリゴマーなどが挙げられる。
【0032】
これらの化合物は、それぞれ単独又は2種以上を混合して用いてよい。なお、上記の多官能(メタ)アクリレート系化合物の他に、少なくとも1種の単官能(メタ)アクリレートを使用してもよい。単官能(メタ)アクリレートとしては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの化合物は単独又は2種類以上を混合して用いられる。単官能(メタ)アクリレート系化合物の含有量は、機能層形成用組成物(ハードコート層用塗料)に含まれる化合物の固形分に対して、好ましくは10質量%以下の量である。なお、本明細書において、固形分とは、硬化性組成物に含まれる溶媒を除く、全ての成分を意味する。
【0033】
ハードコート層には、例えば硬度を調整する目的で、重合性オリゴマーを添加してもよい。このようなオリゴマーとしては、末端(メタ)アクリレートポリメチルメタクリレート、末端スチリルポリ(メタ)アクリレート、末端(メタ)アクリレートポリスチレン、末端(メタ)アクリレートポリエチレングリコール、末端(メタ)アクリレートアクリロニトリル-スチレン共重合体、末端(メタ)アクリレートスチレン-メチル(メタ)アクリレート共重合体などのマクロモノマーが挙げられる。重合性オリゴマーを添加する場合、その含有量は、ハードコート層形成用組成物の固形分に対して、好ましくは5~50質量%である。
【0034】
活性エネルギー線硬化性化合物は、溶剤と混合された溶液の状態で用いてもよい。活性エネルギー線硬化性化合物やその溶液は、ハードコート剤として市販されているものであってもよい。市販のハードコート剤としては、具体的には、「NKハードM101」(新中村化学(株)製、ウレタンアクリレート化合物)、「NKエステルA-TMM-3L」(新中村化学(株)製、テトラメチロールメタントリアクリレート)、「NKエステルA-9530」(新中村化学(株)製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、「KAYARAD(登録商標) DPCAシリーズ」(日本化薬(株)製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート化合物の誘導体)、「アロニックス(登録商標) M-8560」(東亜合成(株)製、ポリエステルアクリレート化合物)、「ニューフロンティア(登録商標) TEICA」(第一工業製薬(株)製、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート)、「PPZ」(共栄社化学(株)製、ホスファゼン系メタクリレート化合物)などが挙げられる。
【0035】
前記カチオン重合性化合物は、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基等のカチオン重合性基を有する化合物である。前記カチオン重合性化合物が1分子中に有するカチオン重合性基の数は、ハードコート層の硬度を向上する点から、好ましくは2以上であり、より好ましくは3以上である。また、前記カチオン重合性化合物としては、中でも、カチオン重合性基としてエポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を有する化合物が好ましい。エポキシ基、オキセタニル基等の環状エーテル基は、重合反応に伴う収縮が小さいという点から好ましい。また、環状エーテル基のうちエポキシ基を有する化合物は多様な構造の化合物が入手し易く、得られたハードコート層の耐久性に悪影響を与えず、ラジカル重合性化合物との相溶性もコントロールし易いという利点がある。また、環状エーテル基のうちオキセタニル基は、エポキシ基と比較して重合度が高くなりやすく、得られたハードコート層のカチオン重合性化合物から得られるネットワーク形成速度を早め、ラジカル重合性化合物と混在する領域でも未反応のモノマーを膜中に残さずに独立したネットワークを形成する等の利点がある。
【0036】
エポキシ基を有するカチオン重合性化合物としては、例えば、脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル又は、シクロヘキセン環、シクロペンテン環含有化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化する事によって得られる脂環族エポキシ樹脂;脂肪族多価アルコール、又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジル(メタ)アクリレートのホモポリマー、コポリマーなどの脂肪族エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールFや水添ビスフェノールA等のビスフェノール類、又はそれらのアルキレンオキサイド付加体、カプロラクトン付加体等の誘導体と、エピクロルヒドリンとの反応によって製造されるグリシジルエーテル、及びノボラックエポキシ樹脂等でありビスフェノール類から誘導されるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0037】
ハードコート層の厚さは、特に限定されず適宜設定することができ、例えば2~100μmであってよいが、光学フィルムの耐屈曲性及び表面硬度を高めやすい観点から、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下、さらにより好ましくは10μm、とりわけ好ましくは8μm以下であり、耐衝撃性を向上させやすい観点から5μm以上である。
【0038】
ハードコート層を基材の少なくとも片面に積層させる方法としては、例えば活性エネルギー線硬化性化合物、例えば活性エネルギー線硬化性樹脂を含有するハードコート層形成用組成物を基材の表面に塗布し、活性エネルギー線を照射すればよい。このような組成物は、活性エネルギー線硬化性化合物を必要に応じて添加剤等と混合することにより得ることができる。該ハードコート層形成用組成物の硬化物がハードコート層を構成する。
【0039】
ハードコート層形成用組成物は、活性エネルギー線硬化性化合物の他に、帯電防止剤を含有していてもよい。該組成物が帯電防止剤を含有することにより、ハードコート層に帯電防止機能を付与することができる。帯電防止剤としては、例えば界面活性剤、導電性高分子、導電性粒子、アルカリ金属塩及び/又は有機カチオン-アニオン塩などが挙げられる。これらの帯電防止剤は、それぞれ1種又は2種以上を混合して使用される。
【0040】
ハードコート層形成用組成物は、例えば臭素原子、フッ素原子、硫黄原子、ベンゼン環などを含む有機化合物、例えば酸化錫、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素などの無機酸化物微粒子などを含有してもよい。この場合、得られるハードコート層の屈折率を調整することができ、ハードコート層に低反射機能、反射防止機能等の光学的機能を付与することができる。
【0041】
活性エネルギー線硬化性化合物を含有するハードコート層形成用組成物を基材の上に塗布したのち、乾燥することにより、活性エネルギー線硬化性化合物を含有する層を形成することができる。塗布は、例えばマイクログラビアコート法、ロールコート法、ディッピングコート法、スピンコート法、ダイコート法、キャスト転写法、フローコート法、スプレーコート法といった通常の方法により行うことができる。光学フィルムの光学特性を高めやすい観点からは、マイクログラビアコート法又はダイコート法によりハードコート層形成用組成物を積層させることが好ましい。
【0042】
その後、活性エネルギー線を照射することにより、基材の表面に塗工された活性エネルギー線硬化性化合物が硬化して、目的とするハードコート層が得られる。活性エネルギー線としては、例えば電子線、紫外線、可視光線などが挙げられ、使用する活性エネルギー線硬化性化合物の種類に応じて適宜選択される。活性エネルギー線は、通常のハードコート層の形成におけると同様に照射すればよい。照射する活性エネルギー線の強度、照射時間などは、用いる硬化性化合物の種類、硬化性化合物を含有する層の厚さみなどに応じて適宜選択される。活性エネルギー線は、不活性ガス雰囲気中で照射してもよい。窒素雰囲気中で活性エネルギー線を照射するには、例えば不活性ガスでシールした容器の中で活性エネルギー線照射を行えばよく、不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガスなどが使用できる。
【0043】
<基材層>
第1光学部材30は基材層31を含んでいてもよい。基材層31としては、樹脂製の板状体(例えば樹脂板、樹脂シート、樹脂フィルム等)、ガラス製の板状体(例えばガラス板、ガラスフィルム等)が挙げられる。基材層31はハードコート層20の支持体となり、ハードコート層20と基材層31からなる積層体は、前面板として画像表示装置の最表面を構成することができる。
【0044】
基材層31の厚みは、例えば10μm以上500μm以下であってよい。基材層31の厚みは、屈曲反発力を小さくする観点からは、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは80μm以下であり、さらに好ましくは60μm以下である。耐衝撃性を向上させる観点からは、基材層31の厚みは、好ましくは20μm以上であり、より好ましくは30μm以上である。
【0045】
基材層31が樹脂製の板状体である場合、樹脂製の板状体は、光を透過可能なものであれば限定されることはない。樹脂製の板状体を構成する樹脂としては、例えばトリアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリ(メタ)アクリル、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリメチルメタアクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアミドイミドなどの高分子が挙げられる。これらの高分子は、単独でまたは2種以上混合して用いることができる。強度および透明性向上の観点から、樹脂製の板状体は、好ましくはポリエチレンテレフタレートで形成される樹脂フィルムである。
【0046】
基材層31がガラス板である場合、ガラス板は、ディスプレイ用強化ガラスが好ましく用いられる。ガラス板の厚みは、例えば10μm以上1000μm以下であってよい。ガラス板を用いることにより、優れた機械的強度および表面硬度を有する光学フィルムの表面構成することができる。
【0047】
光学フィルムが画像表示装置に用いられる場合、基材層31とハードコート層20とから構成される前面板は、表示装置の前面(画面)を保護する機能(ウィンドウフィルムとしての機能)を有するのみではなく、タッチセンサとしての機能、ブルーライトカット機能、視野角調整機能等を有するものであってもよい。
【0048】
<偏光板>
第1光学部材30および第2光学部材40の少なくとも一方は、偏光板を含んでいてもよい。偏光板は、例えば直線偏光板、円偏光板、楕円偏光板等であってもよい。以下、円偏光板と楕円偏光板とを総称して、単に円偏光板ということがある。円偏光板は、直線偏光板および位相差層を備える。円偏光板は、画像表示装置中で反射された外光を吸収することができるため、光学フィルムに反射防止フィルムとしての機能を付与することができる。
【0049】
偏光板の厚みは、通常5μm以上であり、20μm以上であってもよく、25μm以上であってもよく、30μm以上であってもよい。偏光板の厚みは、80μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましい。
【0050】
(直線偏光板)
直線偏光板は、自然光等の非偏光な光線からなる一方向の直線偏光を選択的に透過させる機能を有する。直線偏光板は、二色性色素を吸着させた延伸フィルムまたは延伸層、重合性液晶化合物の硬化物および二色性色素を含み、二色性色素が重合性液晶化合物の硬化物中に分散し、配向している液晶層等を偏光子層として備えることができる。色素を異方性のある媒質中に分散して配向させると、ある方向からは着色して見え、それと垂直な方向からはほとんど無色に見えることがある。このような現象を示す色素を二色性色素という。液晶層を偏光子層として用いた直線偏光板は、二色性色素を吸着させた延伸フィルムまたは延伸層に比べて、屈曲方向に制限がないため好ましい。
【0051】
(1)二色性色素を吸着させた延伸フィルムまたは延伸層である偏光子層
二色性色素を吸着させた延伸フィルムである偏光子層は、通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムをヨウ素等の二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、およびホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造することができる。
【0052】
偏光子層の厚みは、通常30μm以下であり、好ましくは18μm以下、より好ましくは15μm以下である。偏光子層の厚みを薄くすることは、偏光板20の薄膜化に有利である。偏光子層の厚みは、通常1μm以上であり、例えば5μm以上であってよい。
【0053】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することによって得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との共重合体が用いられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば不飽和カルボン酸系化合物、オレフィン系化合物、ビニルエーテル系化合物、不飽和スルホン系化合物、アンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミド系化合物が挙げられる。
【0054】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85モル%以上100モル%以下程度であり、好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール等も使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1000以上10000以下であり、好ましくは1500以上5000以下である。
【0055】
二色性色素を吸着させた延伸層である偏光子層は、通常、上記ポリビニルアルコール系樹脂を含む塗布液を基材フィルム上に塗布する工程、得られた積層フィルムを一軸延伸する工程、一軸延伸された積層フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させて偏光子層とする工程、二色性色素が吸着されたフィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、およびホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造することができる。偏光子層を形成するために用いる基材フィルムは、偏光子層の保護層として用いてもよい。必要に応じて、基材フィルムを偏光子層から剥離除去してもよい。基材フィルムの材料および厚みは、後述する熱可塑性樹脂フィルムの材料および厚みと同様であってよい。
【0056】
二色性色素を吸着させた延伸フィルムまたは延伸層である偏光子層は、そのまま直線偏光板として用いてよく、その片面または両面に保護層を形成して直線偏光板として用いてもよい。保護層としては、後述する熱可塑性樹脂フィルムを用いることができる。得られる直線偏光板の厚みは、好ましくは2μm以上40μm以下である。
【0057】
熱可塑性樹脂フィルムは、例えばシクロポリオレフィン系樹脂フィルム;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース等の樹脂からなる酢酸セルロース系樹脂フィルム;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の樹脂からなるポリエステル系樹脂フィルム;ポリカーボネート系樹脂フィルム;(メタ)アクリル系樹脂フィルム;ポリプロピレン系樹脂フィルム等、当分野において公知のフィルムを挙げることができる。偏光子層と保護層とは、後述する貼合層を介して積層することができる。
【0058】
熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、薄型化の観点から、通常100μm以下であり、好ましくは80μm以下であり、より好ましくは60μm以下であり、さらに好ましくは40μm以下であり、なおさらに好ましくは30μm以下であり、また、通常5μm以上であり、好ましくは10μm以上である。
【0059】
熱可塑性樹脂フィルム上にハードコート層が形成されていてもよい。ハードコート層は、熱可塑性樹脂フィルムの一方の面に形成されていてもよいし、両面に形成されていてもよい。ハードコート層を設けることにより、硬度およびスクラッチ性を向上させた熱可塑性樹脂フィルムとすることができる。ハードコート層は、上述の樹脂フィルムに形成されるハードコート層と同様にして形成することができる。
【0060】
(2)液晶硬化層である偏光子層
液晶層を形成するために用いる重合性液晶化合物は、重合性反応基を有し、かつ、液晶性を示す化合物である。重合性反応基は、重合反応に関与する基であり、光重合性反応基であることが好ましい。光重合性反応基は、光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸等によって重合反応に関与し得る基をいう。光重合性官能基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基およびオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。重合性液晶化合物の種類は特に限定されず、棒状液晶化合物、円盤状液晶化合物、およびこれらの混合物を用いることができる。重合性液晶化合物の液晶性は、液晶性はサーモトロピック性液晶でもリオトロピック性液晶でもよく、相秩序構造としてはネマチック液晶でもスメクチック液晶でもよい。
【0061】
液晶層である偏光子層に用いられる二色性色素としては、300~700nmの範囲に吸収極大波長(λMAX)を有するものが好ましい。このような二色性色素としては、例えば、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素、およびアントラキノン色素等が挙げられるが、中でもアゾ色素が好ましい。アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素、およびスチルベンアゾ色素等が挙げられ、好ましくはビスアゾ色素、およびトリスアゾ色素である。二色性色素は単独でも、2種以上を組み合わせてもよいが、3種以上を組み合わせることが好ましい。特に、3種以上のアゾ化合物を組み合わせることがより好ましい。二色性色素の一部が反応性基を有していてもよく、また液晶性を有していてもよい。
【0062】
液晶層である偏光子層は、例えば基材フィルム上に形成した配向膜上に、重合性液晶化合物および二色性色素を含む偏光子層形成用組成物を塗布し、重合性液晶化合物を重合して硬化させることによって形成することができる。基材フィルム上に、偏光子層形成用組成物を塗布して塗膜を形成し、この塗膜を基材フィルムとともに延伸することによって、偏光子層を形成してもよい。偏光子層を形成するために用いる基材フィルムは、偏光子層の保護層として用いてもよい。基材フィルムの材料および厚みは、上述した熱可塑性樹脂フィルムの材料および厚みと同様であってよい。
【0063】
重合性液晶化合物および二色性色素を含む偏光子層形成用組成物、およびこの組成物を用いた偏光子層の製造方法としては、特開2013-37353号公報、特開2013-33249号公報、特開2017-83843号公報等に記載のものを例示することができる。偏光子層形成用組成物は、重合性液晶化合物および二色性色素に加えて、溶媒、重合開始剤、架橋剤、レベリング剤、酸化防止剤、可塑剤、増感剤等の添加剤をさらに含んでいてもよい。これらの成分は、それぞれ1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
偏光子層形成用組成物が含有していてもよい重合開始剤は、重合性液晶化合物の重合反応を開始し得る化合物であり、より低温条件下で、重合反応を開始できる点で、光重合性開始剤が好ましい。具体的には、光の作用により活性ラジカルまたは酸を発生できる光重合開始剤が挙げられ、中でも、光の作用によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物の総量100重量部に対して、好ましくは1質量部以上10質量部以下であり、より好ましくは3質量部以上8質量部以下である。この範囲内であると、重合性基の反応が十分に進行し、かつ、液晶化合物の配向状態を安定化させやすい。
【0065】
液晶層である偏光子層の厚みは、通常10μm以下であり、好ましくは0.5μm以上8μm以下であり、より好ましくは1μm以上5μm以下である。
【0066】
液晶層である偏光子層は、基材フィルムを剥離除去せずに直線偏光板として用いてもよく、基材フィルムを偏光子層から剥離除去して直線偏光板としてもよい。液晶層である偏光子層は、その片面または両面に保護層を形成して直線偏光板として用いてもよい。保護層としては、上述する熱可塑性樹脂フィルムを用いることができる。
【0067】
液晶層である偏光子層は、偏光子層の保護等を目的として、偏光子層の片面または両面にオーバーコート層を有していてもよい。オーバーコート層は、例えば偏光子層上にオーバーコート層を形成するための材料(組成物)を塗布することによって形成することができる。オーバーコート層を構成する材料としては、例えば光硬化性樹脂、水溶性ポリマー等が挙げられる。オーバーコート層を構成する材料としては、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等を用いることができる。
【0068】
偏光板は、直線偏光板の視認側とは反対側の面に後述の貼合層を介して位相差層を備えてもよい。
【0069】
<位相差層>
第1光学部材30および第2光学部材40の少なくとも一方は位相差層を含んでいてもよい。位相差層は、1層であってもよく2層以上であってもよい。位相差層は、その表面を保護するオーバーコート層、位相差層を支持する基材フィルム等を有していてもよい。位相差層は、λ/4層を含み、さらにλ/2層またはポジティブC層の少なくともいずれかを含んでいてもよい。位相差層がλ/2層を含む場合、直線偏光板側から順にλ/2層およびλ/4層を積層する。位相差層がポジティブC層を含む場合、直線偏光板側から順にλ/4層およびポジティブC層を積層してもよく、直線偏光板側から順にポジティブC層およびλ/4層を積層してもよい。位相差層の厚みは、例えば0.1μm以上10μm以下であり、好ましくは0.5μm以上8μm以下であり、より好ましくは1μm以上6μm以下である。
【0070】
位相差層は、保護層の材料として例示した樹脂フィルムから形成してもよいし、重合性液晶化合物が硬化した層から形成してもよい。位相差層は、さらに配向膜を含んでもよい。位相差層は、λ/4層と、λ/2層およびポジティブC層とを貼合するための貼合層を有していてもよい。
【0071】
重合性液晶化合物を硬化して位相差層を形成する場合、位相差層は、重合性液晶化合物を含む組成物を基材フィルムに塗布し硬化させることにより形成することができる。基材フィルムと塗布層との間に配向層を形成してもよい。基材フィルムの材料および厚みは、上記熱可塑性樹脂フィルムの材料および厚みと同じであってよい。重合性液晶化合物を硬化してなる層から位相差層を形成する場合、位相差層は、配向層および基材フィルムを有する形態で光学フィルムに組み込まれてもよい。位相差層は、貼合層を介して直線偏光板と貼合することができる。
【0072】
<貼合層>
第1光学部材30および第2光学部材40の少なくとも一方は貼合層を含んでいてもよい。貼合層は、2つの層の間に介在して、これらを貼合する層であり、例えば粘着剤や接着剤から構成される層または該層に対して何らかの処理を施してなる層であってよい。粘着剤とは、感圧式接着剤とも呼ばれるものである。本明細書において「接着剤」とは、粘着剤(感圧式接着剤)以外の接着剤をいい、粘着剤とは明確に区別される。
【0073】
光学フィルムを構成する貼合層のそれぞれの厚みは、例えば3μm以上50μm以下であり、屈曲反発力を所定の範囲に収めやすくする観点からは、好ましくは3μm以上30μm以上である。貼合層の厚みが小さいと耐衝撃性が低下する傾向にあり、貼合層の厚みが大きいと屈曲反発力が上昇する傾向にある。光学フィルムを構成する貼合層の厚みの合計は、例えば3μm以上130μm以下であり、好ましくは5μm以上120μm以下であり、より好ましくは10μm以上100μm以下である。
【0074】
粘着剤層は、1層からなるものであってもよく、2層以上からなるものであってもよいが、好ましくは1層である。粘着剤層は、粘着剤組成物から形成することができる。粘着剤層は、(メタ)アクリル系、ゴム系、ウレタン系、エステル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系のような樹脂を主成分とする粘着剤組成物で構成することができる。中でも、透明性、耐候性、耐熱性等に優れる(メタ)アクリル系樹脂をベースポリマーとする粘着剤組成物が好適である。粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型または熱硬化型であってもよい。
【0075】
粘着剤組成物に用いられる(メタ)アクリル系樹脂(ベースポリマー)としては、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステルの1種または2種以上をモノマーとする重合体または共重合体が好適に用いられる。ベースポリマーには、極性モノマーを共重合させることが好ましい。極性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸化合物、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル化合物、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル化合物、(メタ)アクリルアミド化合物、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート化合物、グリシジル(メタ)アクリレート化合物等の、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基等を有するモノマーを挙げることができる。
【0076】
粘着剤組成物は、上記ベースポリマーのみを含むものであってもよいが、通常は架橋剤をさらに含有する。架橋剤としては、カルボキシル基との間でカルボン酸金属塩を形成する2価以上の金属イオン;カルボキシル基との間でアミド結合を形成するポリアミン化合物;カルボキシル基との間でエステル結合を形成するポリエポキシ化合物またはポリオール;カルボキシル基との間でアミド結合を形成するポリイソシアネート化合物が例示される。中でも、ポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0077】
活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物とは、紫外線や電子線のような活性エネルギー線の照射を受けて硬化する性質を有しており、活性エネルギー線照射前においても粘着性を有してフィルム等の被着体に密着させることができ、活性エネルギー線の照射によって硬化して密着力の調整ができる性質を有する粘着剤組成物である。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、紫外線硬化型であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、ベースポリマー、架橋剤に加えて、活性エネルギー線重合性化合物をさらに含有する。さらに必要に応じて、光重合開始剤や光増感剤等を含有させることもある。
【0078】
粘着剤組成物は、光散乱性を付与するための微粒子、ビーズ(樹脂ビーズ、ガラスビーズ等)、ガラス繊維、ベースポリマー以外の樹脂、粘着性付与剤、充填剤(金属粉やその他の無機粉末等)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、着色剤、消泡剤、腐食防止剤、光重合開始剤等の添加剤を含むことができる。
【0079】
粘着剤層は、トルエンや酢酸エチル等の有機溶剤に粘着剤組成物を溶解または分散させて粘着剤液を調製し、これを積層フィルムの対象面に直接塗工して粘着剤層を形成する方式や、離型処理が施されたセパレートフィルム上に粘着剤層をシート状に形成しておき、それを偏光板の対象面に移着する方式等により行うことができる。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物を用いた場合は、形成された粘着剤層に、活性エネルギー線を照射することにより所望の硬化度を有する硬化物とすることができる。
【0080】
粘着剤層の厚みは、例えば1μm以上100μm以下であってよい。粘着剤層の厚みは、好ましくは3μm以上であり、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは30μm以下である。粘着剤層の厚みが小さいと耐衝撃性が低下する傾向にあり、粘着剤層の厚みが大きいと屈曲反発力が上昇する傾向にある。
【0081】
温度25℃における粘着剤層の貯蔵弾性率は、例えば0.01MPa以上0.2MPa以下である。貯蔵弾性率が高いとき、耐衝撃性が向上すると考えられる。貯蔵弾性率は、粘弾性測定装置(Anton Paar社製「MCR-301」(商品名))を使用して測定することができる。粘着剤層を幅20mm×長さ20mmに裁断し、厚さが150μmとなるように複数枚積層する。積層された粘着剤層をガラス板に接合する。粘着剤層と測定チップとが接着した状態において、-20℃から100℃の温度領域で、周波数1.0Hz、変形量1%、昇温速度5℃/分の条件下で測定を行い、25℃における貯蔵弾性率値を測定する。
【0082】
接着剤層は、硬化性の樹脂成分を水に溶解または分散させた公知の水系組成物(水系接着剤を含む。)および活性エネルギー線硬化性化合物を含有する公知の活性エネルギー線硬化性組成物(活性エネルギー線硬化性接着剤を含む。)等から構成される。
【0083】
水系組成物に含有される樹脂成分としては、ポリビニルアルコール系樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂を含む水系組成物は、密着性や接着性を向上させるために、多価アルデヒド、メラミン系化合物、ジルコニア化合物、亜鉛化合物、グリオキザール、グリオキザール誘導体、水溶性エポキシ樹脂等の硬化性成分や架橋剤をさらに含有することができる。ウレタン樹脂を含む水系組成物としては、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とグリシジルオキシ基を有する化合物とを含む水系組成物が挙げられる。ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とは、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂であって、その中に少量のイオン性成分(親水成分)が導入された樹脂である。
【0084】
活性エネルギー線硬化性組成物は、紫外線、可視光、電子線、X線等の活性エネルギー線の照射によって硬化する組成物である。
【0085】
活性エネルギー線硬化性組成物は、カチオン重合によって硬化するエポキシ系化合物を硬化性成分として含有する組成物であることができ、好ましくは、かかるエポキシ系化合物を硬化性成分として含有する紫外線硬化性組成物である。エポキシ系化合物とは、分子内に平均1個以上、好ましくは2個以上のエポキシ基を有する化合物を意味する。エポキシ系化合物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0086】
エポキシ系化合物としては、芳香族ポリオールの芳香環に水素化反応を行って得られる脂環式ポリオールに、エピクロロヒドリンを反応させることにより得られる水素化エポキシ系化合物(脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテル);脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ系化合物;脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に1個以上有するエポキシ系化合物である脂環式エポキシ系化合物等が挙げられる。
【0087】
活性エネルギー線硬化性組成物は、硬化性成分として、上記エポキシ系化合物の代わりに、またはこれとともにラジカル重合性である(メタ)アクリル系化合物を含有することができる。(メタ)アクリル系化合物としては、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマー;官能基含有化合物を2種以上反応させて得られ、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートオリゴマー等の(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物を挙げることができる。
【0088】
活性エネルギー線硬化性組成物は、カチオン重合によって硬化するエポキシ系化合物を硬化性成分として含む場合、光カチオン重合開始剤を含有することが好ましい。光カチオン重合開始剤としては、芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩;鉄-アレン錯体等を挙げることができる。
活性エネルギー線硬化性組成物は、(メタ)アクリル系化合物等のラジカル重合性成分を含む場合、光ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン系開始剤、ベンゾフェノン系開始剤、ベンゾインエーテル系開始剤、チオキサントン系開始剤、キサントン、フルオレノン、カンファーキノン、ベンズアルデヒド、アントラキノン等を挙げることができる。
【0089】
接着剤層の厚みは、例えば1μm以上25μm以下であってよい。接着剤層の厚みは、好ましくは2μm以上であり、好ましくは15μm以下であり、より好ましくは5μm以下である。接着剤層の厚みが小さいと耐衝撃性が低下する傾向にあり、接着剤層の厚みが大きいと屈曲反発力が上昇する傾向にある。
【0090】
温度25℃における接着剤層の貯蔵弾性率は、例えば1000MPa以上である。貯蔵弾性率が高いとき、耐衝撃性が向上すると考えられる。
【0091】
貼合層を介して貼合される対向する二つの表面は、予めコロナ処理、プラズマ処理、火炎処理等を行ってもよく、プライマー層等を有していてもよい。
【0092】
<背面板>
第1光学層30および第2光学層40の少なくとも一方は、背面板を含んでいてもよい。光学フィルム70において、背面板はハードコート層20とは反対側の表面を構成する層であることが好ましい。背面板としては、光を透過可能な板状体、または通常の表示装置に用いられる構成要素等を用いることができる。背面板に用いる通常の表示装置に用いられる構成要素としては、例えばセパレータ、タッチセンサパネル、有機EL表示素子等が挙げられる。表示装置における構成要素の積層順としては、例えば前面板/円偏光板/セパレータ、前面板/円偏光板/有機EL表示素子、前面板/円偏光板/タッチセンサパネル/有機EL表示素子、前面板/タッチセンサパネル/円偏光板/有機EL表示素子等が挙げられる。背面板は、タッチセンサパネルであることが好ましい。
【0093】
(タッチセンサパネル)
タッチセンサパネルは、タッチされた位置を検出可能なセンサ(すなわちタッチセンサ)を有するパネルであれば、限定されない。タッチセンサの検出方式は限定されることはなく、抵抗膜方式、静電容量結合方式、光センサ方式、超音波方式、電磁誘導結合方式、表面弾性波方式等のタッチセンサパネルが例示される。低コストであることから、抵抗膜方式、静電容量結合方式のタッチセンサパネルが好適に用いられる。
【0094】
抵抗膜方式のタッチセンサの一例として、互いに対向配置された一対の基板と、それら一対の基板の間に挟持された絶縁性スペーサーと、各基板の内側の前面に抵抗膜として設けられた透明導電膜と、タッチ位置検知回路とにより構成されている部材が挙げられる。抵抗膜方式のタッチセンサを設けた画像表示装置においては、前面板の表面がタッチされると、対向する抵抗膜が短絡して、抵抗膜に電流が流れる。タッチ位置検知回路が、このときの電圧の変化を検知し、タッチされた位置が検出される。
【0095】
静電容量結合方式のタッチセンサの一例としては、基板と、基板の全面に設けられた位置検出用透明電極と、タッチ位置検知回路とにより構成されている部材が挙げられる。静電容量結合方式のタッチセンサを設けた画像表示装置においては、前面板の表面がタッチされると、タッチされた点で人体の静電容量を介して透明電極が接地される。タッチ位置検知回路が、透明電極の接地を検知し、タッチされた位置が検出される。
【0096】
タッチセンサパネルの厚みは、例えば5μm以上2000μm以下であってよく、好ましくは5μm以上100μm以下、さらに好ましくは5μm以上50μm以下である。
【0097】
タッチセンサパネルは、基材フィルム上にタッチセンサのパターンが形成された部材であってよい。基材フィルムの例示は、上述の熱可塑性樹脂フィルムの説明における例示と同じであってよい。また、タッチセンサパネルは、基材フィルムから粘着剤層を介して被着体に転写されたものであってもよい。タッチセンサパターンの厚みは、例えば1μm以上20μm以下であってよい。
【0098】
<画像表示装置>
光学フィルム70は、画像表示素子の前面(視認側)に配置されて、画像表示装置の構成要素として用いることができる。光学フィルム70は、円偏光板を含む場合、画像表示装置において反射防止機能を付与する反射防止用偏光板として用いることもできる。
【0099】
本発明に係る光学フィルムを含む画像表示装置は、屈曲または巻回等が可能なフレキシブルディスプレイとして用いることができる。フレキシブルディスプレイである画像表示装置は、ハードコート層20(視認側)を外側にして屈曲可能に構成されたものであってもよく、ハードコート層20(視認側)を内側にして屈曲可能に構成されたものであってもよい。
【0100】
画像表示装置は、スマートフォン、タブレット等のモバイル機器、テレビ、デジタルフォトフレーム、電子看板、測定器、計器類、事務用機器、医療機器、電算機器等として用いることができる。
【実施例0101】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例および比較例中の「%」および「部」は、特記しない限り、「質量%」および「質量部」である。
【0102】
[レーザ光の径Dの計算例]
(具体例1)
UVピコ秒レーザ照射装置を用いて照射した場合、ハードコート層表面でのレーザ光の径Dの理論値は、下記式(3)により算出することができる。
【0103】
D=4M2λF/πd (3)
上記式(3)において、λはレーザ波長(μm)であり、M2はレーザ補正パラメータであり、dはレンズ透過前のレーザ直径(mm)であり、Fは焦点距離(mm)である。
【0104】
UVピコ秒レーザ照射装置(DIT社製)において、レーザ波長λが0.355μm、レンズの焦点距離Fが42.0mm、レーザ光のレンズ透過前のレーザ直径dが2.7mm、レーザ補正パラメータM2が1.3である場合、式(3)により算出される(すなわち理論値である)ハードコート層表面でのレーザ光の径Dは9.1μmとなる。レーザ光の径Dは、レンズの焦点距離、レーザの波長等を調整することによって調整することができる。ここでいうレンズは、レーザ照射装置内において、レーザ光の進行方向に沿って最下流(レーザ光の出射口付近)に配置されているものである。
【0105】
[材料フィルムの準備]
材料フィルムとして、基材の片面にハードコート層が形成された厚み60μm(長さ:165.55mm、 幅 :126.59 mm)の材料フィルムを用意した。基材は、厚み40μmのポリエチレンテレフタレートフィルムであった。ハードコート層は、厚みが10μmであり、以下に示すハードコート層用組成物を用いて形成した。
【0106】
(ハードコート層)
多官能アクリレート(MIWONスペシャルティーケミカル社製「MIRAMER M340」(商品名))30部、プロピレングリコールモノメチルエーテルに分散したナノシリカゾル(平均粒子径12nm、固形分40%)50部、エチルアセテート17部、光
重合開始剤(CIBA社製「イルガキュア 184」(商品名))2.7部、フッ素系添加剤(信越化学工業(株)製「KY-1203」(商品名))0.3部を、攪拌機を利用して混合し、ポリプロピレン(PP)材質のフィルターを用いて濾過することで、ハードコート層用組成物を製造した。
【0107】
[切断工程]
実施例1~3、比較例1,2は、UVピコ秒レーザ照射装置(DIT社製)を用いて、表1に示す条件でかつハードコート層表面でのレーザ光の径Dの理論値が9.1μmとなるようにして、材料フィルムのハードコート層表面にレーザ光を照射して材料フィルムを長さ方向に切断した。
【0108】
[評価]
<切断面近傍の汚れ発生>
切断面近傍にハードコート層由来の汚れが付着するかを確認するために、ハードコート層表面を不織布で拭き取り不織布に汚れが付着するかを目視にて確認した。具体的には、ハードコート層表面の切断面から1000μm毎の範囲を不織布で拭き取り、どの範囲までハードコート層由来の汚れが付着するかを確認し、汚れがほとんど確認されなくなった範囲の直前の範囲(切断面からの距離、
図3に矢印で示す距離、表1において「汚れ確認距離」とする)に基づいて評価する。表1に、汚れ確認距離を示す。
【0109】
<切断面の均一性>
切断面の均一性を目視にて確認し、下記の基準で評価した。
A:切断面が均一である。
B:汚れ確認距離が5000μm以下
C:汚れ確認距離が5000μm超過
表1に評価結果を示す。
【0110】
10 材料フィルム、20 ハードコート層、30 第1光学部材、31 基材層、40 第2光学部材、50 レーザ照射装置、60 ハードコート層由来の汚れ、70 光学フィルム。