(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128532
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】トナー、現像剤、トナー収容ユニット、画像形成装置及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/097 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
G03G9/097 371
G03G9/097 365
G03G9/097 375
G03G9/097 372
G03G9/097 374
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032922
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 月子
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 光章
(72)【発明者】
【氏名】北川 陽一
(72)【発明者】
【氏名】雨森 涼香
(72)【発明者】
【氏名】山田 博
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA08
2H500AA09
2H500AA10
2H500AA11
2H500CA34
2H500CB01
2H500CB05
2H500CB06
2H500CB08
2H500CB12
2H500EA62D
2H500FA04
(57)【要約】
【課題】低温定着性と耐熱保存性を両立し、クリーニング部材及び感光体の汚染を抑制すると共に、優れた帯電安定性を有するトナーを提供する。
【解決手段】本発明に係るトナーは、結着樹脂、着色剤及びワックスを含有するトナー母体粒子の表面に樹脂微粒子及び無機外添剤が複数存在しているトナーであって、前記樹脂微粒子の被覆率が、30%~70%であり、前記無機外添剤が、金属元素の酸化物の表面を金属元素の水酸化物で被覆している。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂、着色剤及びワックスを含有するトナー母体粒子の表面に樹脂微粒子及び無機外添剤が複数存在しているトナーであって、
前記樹脂微粒子の被覆率が、30%~70%であり、
前記無機外添剤が、金属元素の酸化物の表面を金属元素の水酸化物で被覆しているトナー。
【請求項2】
前記無機外添剤の最表面が、アルキルシランで被覆されている請求項1のトナー。
【請求項3】
前記金属元素の酸化物が、シリカである請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
前記無機外添剤の水酸化物が、アルミニウム、亜鉛及びマグネシウムからなる群から選択される少なくとも一種である請求項1~3の何れか一項に記載のトナー。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のトナーを含む現像剤。
【請求項6】
請求項1~4の何れか1項に記載のトナーを収容したトナー収容ユニット。
【請求項7】
静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体の上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
請求項1~4の何れか1項に記載のトナー又は請求項5に記載の現像剤を用いて、前記静電潜像を現像して可視像を形成する現像手段と、
前記可視像を記録媒体上に転写する転写手段と、
前記記録媒体上に転写された転写像を定着させる定着手段を有することを画像形成装置。
【請求項8】
静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
請求項1~4の何れか1項に記載のトナー又は請求項5に記載の現像剤を用いて、前記静電潜像を現像して可視像を形成する現像工程と、
前記可視像を記録媒体上に転写する転写工程と、
前記記録媒体上に転写された転写像を定着させる定着工程を有する画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー、現像剤、トナー収容ユニット、画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トナーには、定着時の消費電力を抑えて省エネルギー化を図るための低温定着性と、製造後の保管時や運搬時における高温高湿に対する耐性を高めるための耐熱保存性が要求されている。トナーの低温定着性を向上させるためには、トナーに低融点の材料を使用する必要があるが、低融点の材料を用いて製造したトナーの耐熱保存性は悪くなり、低温定着性と耐熱保存性とはトレードオフの関係にある。
【0003】
そこで、トナーの低温定着性と耐熱保存性とを両立させる方法として、例えば、特許文献1には、1種又は2種の樹脂を構成成分として含む樹脂微粒子を樹脂粒子の表面の一部を被覆して製造した複合樹脂粒子をトナーとして用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1~4参照)。
【0004】
一方、近年では、複写機の長寿命化、メンテナンスフリーに対する要求が高まっており、機内のトナー汚れを抑制することが求められている。機内のトナー汚れの原因の一つはトナー飛散であり、経時でのトナーの帯電性が安定せず帯電量が低下するために、トナーがキャリアに十分に保持されず、現像器内のトナーが飛散することで機内が汚染される。より高いトナー飛散抑制への要求に対して、これら外添剤を増やす傾向にあるが、外添剤はトナーの定着を阻害する原因となり、より高い低温定着性を達成するために課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術においては、低温定着性及び耐熱保存性の両立と、クリーニング部材や感光体の汚染を抑制することと、トナー飛散の少なくなるような優れた帯電安定性を同時に満たせる技術が望まれている。
【0006】
本発明の一態様は、低温定着性と耐熱保存性を両立し、クリーニング部材及び感光体の汚染を抑制すると共に、優れた帯電安定性を有するトナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るトナーの一態様は、
結着樹脂、着色剤及びワックスを含有するトナー母体粒子の表面に樹脂微粒子及び無機外添剤が複数存在しているトナーであって、
前記樹脂微粒子の被覆率が、30%~70%であり、
前記無機外添剤が、金属元素の酸化物の表面を金属元素の水酸化物で被覆している。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様は、低温定着性と耐熱保存性を両立し、クリーニング部材及び感光体の汚染を抑制すると共に、優れた帯電安定性を有するトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【
図2】一実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
【
図3】一実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
【
図5】一実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、実施形態は以下の記述によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、本明細書において数値範囲を示す「~」は、別段の断わりがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0011】
<トナー>
一実施形態に係るトナーについて説明する。一実施形態に係るトナーは、結着樹脂、着色剤及びワックスを含有するトナー母体粒子の表面に有機樹脂粒子及び無機外添剤が複数存在しているトナーであって、有機樹脂微粒子の被覆率が、30%~70%であり、無機外添剤の少なくとも1種が、金属元素の酸化物表面に金属元素の水酸化物を被覆している。
【0012】
本実施形態では、有機樹脂粒子が表面に複数存在しているトナー母体を特徴としている。トナー母体粒子の表面に存在する隣り合う有機樹脂微粒子間の被覆率が30%~70%であり、被覆率がこの範囲にあることで、十分に定着を阻害しない有機樹脂微粒子によりトナー表面を覆うことでトナーを硬くでき、信頼性(保存性、付着力)を担保できることによって、低温定着性と耐熱保存性を高レベルに両立できる。
【0013】
また、本実施形態では、使用する無機外添剤の少なくとも1種が金属元素の酸化物表面に金属元素の水酸化物を被覆していることを特徴としている。無機外添剤の基材が金属元素の酸化物であることにより帯電安定性に優れたトナーを提供することができ、さらに金属元素の酸化物表面を金属元素の水酸化物で被覆していることにより、トナーの帯電立ち上がり性が担保され高いレベルでトナー飛散を抑制することができる。
【0014】
さらに、本実施形態では、有機樹脂粒子が表面に複数存在しているトナー母体粒子に、無機外添剤の少なくとも1種が、金属元素の酸化物表面に金属元素の水酸化物を被覆していることを特徴としている。有機樹脂粒子が存在する母体表面に金属元素の水酸化物を被覆した金属元素の酸化物を外添することにより、有機樹脂粒子表面と水酸基間で分子間相互作用が生じるため無機外添剤がトナーから遊離することを防ぐ。よって有機樹脂粒子が母体表面に複数存在することでトナーは硬くなり外添剤は埋没しにくくなりながら、同時にトナーからの遊離も防ぐことが可能となる。この効果は有機樹脂粒子の母体表面への被覆率が30%~70%あることにより発揮する。
【0015】
[トナー母体粒子]
一実施形態に係るトナーは、上述の通り、トナー母体粒子を有する。
【0016】
トナー母体粒子は、少なくとも結着樹脂及び着色剤を含み、更に必要に応じてその他の成分を含む。
【0017】
トナー母体粒子は、少なくとも結着樹脂及び着色剤を有機溶媒中に溶解乃至分散させ、得られた溶解乃至分散物を水相中に添加し、得られた分散液から有機溶媒を除去することにより得られることが好ましい。また、少なくとも結着樹脂前駆体及び着色剤を有機溶媒中に溶解乃至分散させ、得られた溶解乃至分散物を水相中に添加して結着樹脂前駆体を架橋乃至伸長反応させ、有機溶媒を除去することにより得られることがより好ましい。
【0018】
[結着樹脂]
トナー母体粒子は、樹脂成分として結着樹脂を含む。
【0019】
結着樹脂は、トナー用の結着樹脂であれば用いることができる。結着樹脂としては、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、スチレンアクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ジエン系樹脂、フェノール樹脂、テルペン樹脂、クマリン樹脂、アミドイミド樹脂、ブチラール樹脂、ウレタン樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂等の一般的な結着樹脂を用いることができる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してよい。これらの中でも、トナーが優れた低温定着性を発現する点から、結着樹脂としては、ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
【0020】
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂は、非線状の非晶性(非結晶性)ポリエステル樹脂(非晶質ポリエステル樹脂Aともいう。)及び結晶性ポリエステル樹脂(結晶性ポリエステル樹脂Cともいう。)を含むことが好ましい。非線状の非晶質ポリエステル樹脂A又は結晶性ポリエステル樹脂Cは、通常、テトラヒドロフラン(THF)に不溶な成分に含まれることが好ましい。
【0021】
((非晶質ポリエステル樹脂))
非晶質ポリエステル樹脂は、多価アルコール成分と、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステル等の多価カルボン酸成分とを用いて得られる。
【0022】
なお、本実施形態において、非晶質ポリエステル樹脂とは、上記のごとく、多価アルコール成分と、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステル等の多価カルボン酸成分とを用いて得られるものをいい、ポリエステル樹脂を変性したもの、例えば、後述するプレポリマー、及びそのプレポリマーを架橋及び/又は伸長反応させて得られる樹脂は、非晶質ポリエステル樹脂には属さない。
【0023】
多価アルコール成分としては、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド(平均付加モル数1~10)付加物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、水添ビスフェノールA、ソルビトール、又はそれらのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド(平均付加モル数1~10)付加物等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
多価カルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸等のジカルボン酸;ドデセニルコハク酸、オクチルコハク酸等の炭素数1~20のアルキル基又は炭素数2~20のアルケニル基で置換されたコハク酸;トリメリット酸、ピロメリット酸;それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1~8)エステル等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
非晶質ポリエステル樹脂と、後述するプレポリマー並びにこのプレポリマーを架橋及び/又は伸長反応させて得られる樹脂とは、少なくとも一部が相溶していることが好ましい。これらが相溶していることにより、低温定着性及び耐高温オフセット性を向上させることができる。このため、非晶質ポリエステル樹脂を構成する多価アルコール成分及び多価カルボン酸成分と、後述するプレポリマーを構成する多価アルコール成分及び多価カルボン酸成分とは、類似の組成であることが好ましい。
【0026】
非晶質ポリエステル樹脂の分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。分子量が低すぎる場合、トナーの耐熱保存性、現像器内での攪拌等のストレスに対する耐久性に劣る場合がある。分子量が高すぎる場合、トナーの溶融時の粘弾性が高くなり低温定着性に劣る場合がある。GPC測定において、重量平均分子量(Mw)が2,500~10,000、数平均分子量(Mn)が1,000~4,000、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は1.0~4.0であることが好ましい。
【0027】
非晶質ポリエステル樹脂の酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1mgKOH/g~50mgKOH/gが好ましく、5mgKOH/g~30mgKOH/gがより好ましい。酸価が、1mgKOH/g以上であることにより、トナーが負帯電性となりやすく、さらには、紙への定着時に、紙とトナーの親和性が良くなり、低温定着性を向上させることができる。酸価が、50mgKOH/g以下であることにより、帯電安定性、特に環境変動に対する帯電安定性が低下することがない。
【0028】
非晶質ポリエステル樹脂の水酸基価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5mgKOH/g以上であることが好ましい。
【0029】
非晶質ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。Tgが低すぎる場合、トナーの耐熱保存性、現像器内での攪拌等のストレスに対する耐久性に劣る場合がある。Tgが高すぎる場合、トナーの溶融時の粘弾性が高くなり低温定着性に劣る場合がある。そのため、非晶質ポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgは、40℃~70℃が好ましく、45℃~60℃がより好ましい。
【0030】
非晶質ポリエステル樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー100質量部に対して、50質量部~95質量部が好ましく、60質量部~90質量部がより好ましい。非晶質ポリエステル樹脂の含有量が、50質量部未満であると、トナー中の顔料、離型剤の分散性が悪化し、画像のかぶり、乱れを生じやすくなることがある。非晶質ポリエステル樹脂の含有量が95質量部を超えると、結晶性ポリエステルの含有量が少なくなるため、低温定着性に劣ることがある。非晶質ポリエステル樹脂の含有量が、より好ましい範囲であると、高画質、高安定、低温定着性の全てに優れる点で有利である。
【0031】
非晶質ポリエステル樹脂の分子構造は、溶液や固体によるNMR測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、IR測定等により確認することができる。簡便には赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm-1及び990±10cm-1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有しないものを非晶質ポリエステル樹脂として検出する方法が挙げられる。
【0032】
((結晶性ポリエステル樹脂))
結晶性ポリエステル樹脂は、飽和脂肪族ジオールに由来する構成単位を有する。
【0033】
飽和脂肪族ジオールとしては、炭素数2~8の直鎖脂肪族ジオールを含有するアルコール成分を用いることが好ましい。これにより、結晶性ポリエステル樹脂が均一にトナー内部に微分散することが可能となり、結晶性ポリエステル樹脂のフィルミングを防止し、耐ストレス性を改良し、かつトナーの低温定着性が達成できる。
【0034】
結晶性ポリエステル樹脂は、高い結晶性をもつために、定着開始温度付近において急激な粘度低下を示す熱溶融特性を示す。このような特性を有する結晶性ポリエステル樹脂をトナーに用いることで、溶融開始温度直前までは結晶性による耐熱保存性がよく、溶融開始温度では急激な粘度低下(シャープメルト性)を起こし定着することから、良好な耐熱保存性と低温定着性とを兼ね備えたトナーが得られる。また、離型幅(定着下限温度とホットオフセット発生温度との差)についても、良好な結果を示す。
【0035】
結晶性ポリエステル樹脂は、多価アルコール成分と、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステル等の多価カルボン酸成分とを用いて得られる。
【0036】
なお、本実施形態において、結晶性ポリエステル樹脂とは、上記のごとく、多価アルコール成分と、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステル等の多価カルボン酸成分とを用いて得られるものを指し、結晶性ポリエステル樹脂を変性したもの、例えば、後述するプレポリマー、及びそのプレポリマーを架橋及び/又は伸長反応させて得られる樹脂は、前記結晶性ポリエステル樹脂には属さない。
【0037】
-多価アルコール成分-
多価アルコール成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール、3価以上のアルコールが挙げられる。
【0038】
ジオールとしては、例えば、飽和脂肪族ジオールが挙げられる。飽和脂肪族ジオールとしては、直鎖型飽和脂肪族ジオール、分岐型飽和脂肪族ジオールが挙げられるが、これらの中でも、直鎖型飽和脂肪族ジオールが好ましく、炭素数が2~8である直鎖型飽和脂肪族ジオールがより好ましい。飽和脂肪族ジオールが分岐型であると、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が低下してしまうことがある。また、主鎖部分の炭素数が2以上であると、芳香族ジカルボン酸と縮重合させる場合に、融解温度の上昇が抑えられ、低温定着が可能である。一方、炭素数が8以下であると、実用上の材料の入手ができる。
【0039】
飽和脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンデカンジオール等が挙げられる。これらの中でも、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が高く、シャープメルト性に優れる点で、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールが好ましい。
【0040】
3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
-多価カルボン酸成分-
多価カルボン酸成分としては、セバシン酸を用いるが、目的に応じて他の2価のカルボン酸、3価以上のカルボン酸を併用することができる。
【0042】
2価のカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の二塩基酸等の芳香族ジカルボン酸;等が挙げられ、さらに、これらの無水物やこれらの低級アルキルエステルも挙げられる。
【0043】
3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0044】
多価カルボン酸成分としては、飽和脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、スルホン酸基を持つジカルボン酸成分が含まれていてもよい。さらに、飽和脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、2重結合を持つジカルボン酸成分を含有してもよい。
【0045】
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
結晶性ポリエステル樹脂の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以上80℃未満であることが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の融点が60℃以上であると、結晶性ポリエステル樹脂が低温での溶融が抑えられ、トナーの耐熱保存性を維持できる。結晶性ポリエステル樹脂の融点が80℃未満であると、定着時の加熱によるポリエステル樹脂Aの溶融が十分でき、低温定着性が低下することが抑えられる。
【0047】
融点は、示差走査熱量計(DSC)測定におけるDSCチャートの吸熱ピーク値により測定することができる。
【0048】
結晶性ポリエステル樹脂の分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、分子量分布がシャープで低分子量のものが低温定着性に優れ、かつ分子量が低い成分が多いと耐熱保存性が悪化するという観点から、前記結晶性ポリエステル樹脂のオルトジクロロベンゼンの可溶分が、GPC測定において、重量平均分子量(Mw)が3,000~30,000、数平均分子量(Mn)が1,000~10,000、Mw/Mnが1.0~10であることが好ましい。
【0049】
結晶性ポリエステル樹脂の酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、紙と樹脂との親和性の観点から、所望の低温定着性を達成するためには、5mgKOH/g以上が好ましく、10mgKOH/g以上がより好ましい。一方、耐高温オフセット性を向上させるには、45mgKOH/g以下が好ましい。
【0050】
結晶性ポリエステル樹脂の水酸基価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、所望の温定着性を達成し、かつ良好な帯電特性を達成するためには、0mgKOH/g~50mgKOH/gが好ましく、5mgKOH/g~50mgKOH/gがより好ましい。
【0051】
結晶性ポリエステル樹脂の分子構造は、溶液や固体によるNMR測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、IR測定等により確認することができる。簡便には赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm-1又は990±10cm-1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有するものを結晶性ポリエステル樹脂として検出する方法が挙げられる。
【0052】
結晶性ポリエステル樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー100質量部に対して、2質量部~20質量部が好ましく、5質量部~15質量部がより好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の含有量が2質量部以上であると、結晶性ポリエステル樹脂によるシャープメルト化が十分であるため、十分な低温定着性を発揮できる。結晶性ポリエステル樹脂の含有量が20質量部以下であると、耐熱保存性を維持できると共に画像のかぶりが抑えられる。結晶性ポリエステル樹脂の含有量が上記のより好ましい範囲であると、高画質、高安定及び低温定着性の全てに優れる点で有利である。
【0053】
[着色剤]
着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばカーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン等が挙げられる。
【0054】
着色剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー100質量部に対して、1質量部~15質量部が好ましく、3質量部~10質量部がより好ましい。
【0055】
着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造又はマスターバッチとともに混練される樹脂としては、例えば、ハイブリッド樹脂の他にポリスチレン、ポリp-クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン又はその置換体の重合体;スチレン-p-クロロスチレン共重合体、スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸オクチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
マスターバッチは、マスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合し、混練してマスターバッチを得ることができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いることができる。また、いわゆるフラッシング法と呼ばれる着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶剤とともに混合混練を行い、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができるため乾燥する必要がなく、好ましく用いられる。混合混練するには、3本ロールミル等の高せん断分散装置が好ましく用いられる。
【0057】
[樹脂微粒子]
樹脂微粒子は、トナー母体粒子の表面にトナー母体粒子の表面を覆うように配置されている。樹脂微粒子の被覆率は、30%~70%であることが好ましい。被覆率が30%以上であることで、トナーの耐熱保存性を担保できる。被覆率が70%以下であることで、外添剤が付着し易くなると共に、トナー定着の際に熱が伝達しやすく、定着性を担保できる。
【0058】
(樹脂微粒子間の距離の測定)
以下のようにして、超音波による外添剤の遊離処理で外添剤を極力除去して、トナー母体粒子に近い状態にし、樹脂微粒子間の距離の平均値及び標準偏差を求める。
-外添剤の遊離方法-
[1]100mlのスクリュー管に、界面活性剤を含有した5%水溶液(商品名ノイゲンET-165、第一工業製薬株式会社製)を50ml添加し、その混合液にトナー3gを加えて静かに上下左右に動かす。その後、トナーが分散溶液になじむようにボールミルで30min撹拌する。
[2]その後、超音波ホモジナイザー(商品名homogenizer、形式VCX750、CV33、SONICS&MATERIALS有限会社製)を用いて、出力40Wに設定し、60分間超音波エネルギーを付与する。
-超音波条件-
・振動時間:60分連続
・振幅:40W
・振動開始温度:23±1.5℃
・振動中温度:23±1.5℃
[3](1)分散液をろ紙(商品名定性ろ紙(No.2、110mm)、アドバンテック東洋株式会社製)で吸引ろ過し、再度イオン交換水で2回洗浄しろ過し、遊離した添加剤を除去後、トナー粒子を乾燥させる。
(2)(1)で得られたトナーを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察する。まず、反射電子像を観察することでSiを含有する外添剤やフィラーを検出する。
(3)(1)の画像を画像処理ソフト(ImageJ)で二値化し、外添剤とフィラーを排除する。
次に、(1)と同じ位置で二次電子画像を観察する。樹脂微粒子は反射電子画像では観察されず、二次電子画像でのみ観察されるため、(3)で得られた画像と照合し、残存外添剤とフィラー以外の部分((3)で排除した以外の部分)に存在する微粒子を樹脂微粒子として、画像処理ソフトを使用し、樹脂微粒子間の距離(粒子の中心と中心を結ぶ距離)を測定する。
この測定を二値化画像100枚(画像1枚当たりトナー粒子1個)について行い、その平均値を樹脂微粒子間の距離の平均値とする。
樹脂微粒子間の距離の標準偏差は、粒子間距離をxとすると、下記数式(1)により算出する。
【0059】
【0060】
[撮影条件]
・走査型電子顕微鏡:SU-8230(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)
・撮影倍率:35000倍
・撮影像:SE(L):二次電子、BSE(反射電子)
・加速電圧:2.0kV
・加速電流:1.0μA
・プローブ電流:Normal
・焦点モード:UHR
・WD:8.0mm
【0061】
樹脂微粒子の体積平均一次粒子径は、5nm以上100nm以下が好ましく、10nm~50nmがより好ましい。体積平均一次粒子径が5nm~100nmであると、低温定着性が良好となる。なお、体積平均一次粒子径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)画像観察によって測定することができる。
【0062】
樹脂微粒子(以下、「樹脂微粒子(B)」とも表記することがある)としては、コア樹脂(芯部)とコア樹脂の少なくとも一部の表面を被覆するシェル樹脂(外殻部)とを有することが好ましく、コア樹脂とシェル樹脂からなることがより好ましく、樹脂(b1)、樹脂(b2)からなるビニル系ユニットを含有することが更に好ましい。
【0063】
シェル樹脂(以下「樹脂(b1)」とも表現する)及びコア樹脂(以下、「樹脂(b2)」とも表現する)は、ビニルモノマーを単独重合又は共重合したポリマーが好ましい。
【0064】
ビニルモノマーとしては、例えば、下記(1)~(10)が挙げられる。
(1)ビニル炭化水素
ビニル炭化水素としては、例えば、(1-1)脂肪族ビニル炭化水素、(1-2)脂環式ビニル炭化水素及び(1-3)芳香族ビニル炭化水素等が挙げられる。
(1-1)脂肪族ビニル炭化水素
脂肪族ビニル炭化水素としては、例えば、アルケン、アルカジエン等が挙げられる。
【0065】
アルケンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、α-オレフィン等が挙げられる。
【0066】
アルカジエンとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,6-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン等が挙げられる。
(1-2)脂環式ビニル炭化水素
脂環式ビニル炭化水素としては、モノ-もしくはジ-シクロアルケン及びアルカジエンが挙げられ、具体的な例としては(ジ)シクロペンタジエン、テルペン等が挙げられる。
(1-3)芳香族ビニル炭化水素
芳香族ビニル炭化水素としては、スチレン又はそのハイドロカルビル(アルキル、シクロアルキル、アラルキル及び/又はアルケニル)置換体等が挙げられ、具体的にはα-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン及びビニルナフタレン等が挙げられる。
【0067】
(2)カルボキシル基含有ビニルモノマー及びその塩
カルボキシル基含有ビニルモノマー及びその塩としては、例えば、炭素数3~30の不飽和モノカルボン酸(塩)、不飽和ジカルボン酸(塩)並びにその無水物(塩)及びそのモノアルキル(炭素数1~24)エステル又はその塩等が挙げられる。
【0068】
具体的には、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、桂皮酸等のカルボキシル基含有ビニルモノマー及びこれらの金属塩等が挙げられる。
【0069】
本実施形態において、「(塩)」とは、酸又はその塩を意味する。例えば、炭素数3~30の不飽和モノカルボン酸(塩)とは、不飽和モノカルボン酸又はその塩を意味する。本実施形態において、「(メタ)アクリル」とは、メタクリル酸又はアクリル酸を意味する。本実施形態において、「(メタ)アクリロイル」とは、メタクリロイル又はアクリロイルを意味する。本実施形態において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート又はアクリレートを意味する。
【0070】
(3)スルホン酸基含有ビニルモノマー、ビニル硫酸モノエステル化物及びこれらの塩
スルホン酸基含有ビニルモノマー、ビニル硫酸モノエステル化物及びこれらの塩としては、例えば、炭素数2~14のアルケンスルホン酸(塩)、炭素数2~24のアルキルスルホン酸(塩)、スルホ(ヒドロキシ)アルキル-(メタ)アクリレート(塩)、又は(メタ)アクリルアミド(塩)、アルキルアリルスルホコハク酸(塩)等が挙げられる。
【0071】
具体的には、炭素数2~14のアルケンスルホン酸としては、ビニルスルホン酸(塩)等が挙げられ、炭素数2~24のアルキルスルホン酸(塩)としては、α-メチルスチレンスルホン酸(塩)等が挙げられ、スルホ(ヒドロキシ)アルキル-(メタ)アクリレート(塩)、又は(メタ)アクリルアミド(塩)としては、スルホプロピル(メタ)アクリレート(塩)、硫酸エステル(塩)、又はスルホン酸基含有ビニルモノマー(塩)等が挙げられる。
【0072】
(4)燐酸基含有ビニルモノマー及びその塩
燐酸基含有ビニルモノマー及びその塩としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1~24)燐酸モノエステル(塩)、(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1~24)ホスホン酸(塩)等が挙げられる。
【0073】
(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1~24)燐酸モノエステル(塩)の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート(塩)、フェニル-2-アクリロイロキシエチルホスフェート(塩)等が挙げられる。
【0074】
(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1~24)ホスホン酸(塩)の具体例としては、2-アクリロイルオキシエチルホスホン酸(塩)等が挙げられる。
【0075】
上記(2)~(4)の塩としては、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩、アミン塩、4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0076】
(5)ヒドロキシル基含有ビニルモノマー
ヒドロキシル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、ヒドロキシスチレン、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1-ブテン-3-オール、2-ブテン-1-オール、2-ブテン-1,4-ジオール、プロパルギルアルコール、2-ヒドロキシエチルプロペニルエーテル、蔗糖アリルエーテル等が挙げられる。
【0077】
(6)含窒素ビニルモノマー
含窒素ビニルモノマーとしては、例えば、(6-1)アミノ基含有ビニルモノマー、(6-2)アミド基含有ビニルモノマー、(6-3)ニトリル基含有ビニルモノマー、(6-4)4級アンモニウムカチオン基含有ビニルモノマー、(6-5)ニトロ基含有ビニルモノマー等が挙げられる。
【0078】
(6-1)アミノ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0079】
(6-2)アミド基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0080】
(6-3)ニトリル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン、シアノアクリレート等が挙げられる。
【0081】
(6-4)4級アンモニウムカチオン基含有ビニルモノマーとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド及びジアリルアミン等の3級アミン基含有ビニルモノマーの4級化物(メチルクロライド、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド、ジメチルカーボネート等の4級化剤を用いて4級化したもの)等が挙げられる。
【0082】
(6-5)ニトロ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、ニトロスチレン等が挙げられる。
【0083】
(7)エポキシ基含有ビニルモノマー
エポキシ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート及びp-ビニルフェニルフェニルオキサイド等が挙げられる。
【0084】
(8)ハロゲン元素含有ビニルモノマー
ハロゲン元素含有ビニルモノマーとしては、例えば、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、アリルクロライド、クロルスチレン、ブロムスチレン、ジクロルスチレン、クロロメチルスチレン、テトラフルオロスチレン、クロロプレン等が挙げられる。
【0085】
(9)ビニルエステル、ビニル(チオ)エーテル、ビニルケトン
ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメタクリレート、メチル4-ビニルベンゾエート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート、エチルα-エトキシアクリレート、炭素数1~50のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート[メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等)]、ジアルキルフマレート(2個のアルキル基は、炭素数2~8の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ジアルキルマレエート(2個のアルキル基は、炭素数2~8の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ポリ(メタ)アリロキシアルカン[ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン等]等、ポリアルキレングリコール鎖を有するビニルモノマー[ポリエチレングリコール(分子量300)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノアクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド10モル付加物(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールエチレンオキサイド30モル付加物(メタ)アクリレート等]、ポリ(メタ)アクリレート[多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等]等が挙げられる。
【0086】
ビニル(チオ)エーテルとしては、例えば、ビニルメチルエーテル等が挙げられる。
【0087】
ビニルケトンとしては、例えば、ビニルメチルケトン等が挙げられる。
【0088】
(10)その他のビニルモノマー
その他のビニルモノマーとしては、例えば、テトラフルオロエチレン、フルオロアクリレート、イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、m-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。
【0089】
樹脂(b1)の合成には、上記(1)~(10)のビニルモノマーを1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0090】
樹脂(b1)としては、低温定着性の観点から、スチレン-アクリル樹脂が好ましい。スチレン-アクリル樹脂としては、具体的には、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体及び(メタ)アクリル酸エステル共重合体が好ましく、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体がより好ましい。
【0091】
樹脂(b1)がカルボン酸を有することで、樹脂に酸価を付与し、樹脂微粒子(B)がトナー粒子の表面に付着したトナー粒子を形成しやすくなる。
【0092】
樹脂(b2)に用いられるビニルモノマーは、樹脂(b1)と同様のものが挙げられる。
【0093】
樹脂(b2)の合成には、上記樹脂(b1)で挙げた(1)~(10)のビニルモノマーを1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0094】
樹脂(b2)としては、低温定着性の観点から、スチレン-アクリル樹脂が好ましい。スチレン-アクリル樹脂としては、具体的には、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体及び(メタ)アクリル酸エステル共重合体が好ましく、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体がより好ましい。
【0095】
樹脂(b1)の周波数1Hzでの100℃における粘弾性特性の損失弾性率G''としては、1.5MPa~100MPaが好ましく、1.7MPa~30MPaがより好ましく、2.0MPa~10MPaが更に好ましい。
【0096】
樹脂(b2)の周波数1Hzでの100℃における粘弾性特性の損失弾性率G''としては、0.01MPa~1.0MPaが好ましく、0.02MPa~0.5MPaがより好ましく、0.05MPa~0.3MPaが更に好ましい。
【0097】
粘弾性特性の損失弾性率G''がこの範囲であれば、樹脂(b1)と樹脂(b2)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子(B)がトナー粒子の表面に付着したトナー粒子を形成しやすい。
【0098】
樹脂(b1)及び(b2)の周波数1Hzでの100℃における粘弾性特性の損失弾性率G"は、構成モノマーの種類及びその構成比を変えることや、重合条件(開始剤、連鎖移動剤の種類及び使用量、並びに反応温度等)で調整することができる。
【0099】
具体的には、例えば以下のような組成にすることで各々のG''を前述の範囲に調整することが可能となる。
(1)樹脂(b1)の構成単量体から計算されるガラス転移温度(Tg1)、及び樹脂(b2)の構成単量体から計算されるガラス転移温度(Tg2)について、Tg1を好ましくは0℃~150℃、更に好ましくは50℃~100℃とし、Tg2を好ましくは-30℃~100℃、更に好ましくは0℃~80℃、最も好ましくは30℃~60℃とする。
【0100】
なお、構成単量体から計算されるガラス転移温度(Tg)とは、Fox法により計算することができる値である。
【0101】
ここで、Fox法[T.G.Fox,Phys.Rev.,86,652(1952)]とは、下記式で示される個々の単独重合体のTgから共重合体のTgを推算する方法である。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn
[式中、Tgは共重合体のガラス転移温度(絶対温度表示)、Tg1、Tg2・・・Tgnは各単量体成分の単独重合体のガラス転移温度(絶対温度表示)、W1、W2・・・Wnは各単量体成分の重量分率を示す。]
【0102】
(2)樹脂(b1)の計算酸価(AV1)及び樹脂(b2)の計算酸価(AV2)について、(AV1)を、好ましくは75mgKOH/g~400mgKOH/g、更に好ましくは150mgKOH/g~300mgKOH/gとし、(AV2)を0mgKOH/g~50mgKOH/g、更に好ましくは0mgKOH/g~20mgKOH/g、最も好ましくは0mgKOH/gとする。
【0103】
なお、計算酸価とは、構成単量体中に含有される酸性基のモル量と、構成モノマーの総重量から計算される理論酸価である。
【0104】
(1)及び(2)の条件を満たす構成単量体として、樹脂(b1)については、例えば樹脂(b1)の合計質量に基づいて、構成単量体としてスチレンを好ましくは10質量%~80質量%、更に好ましくは30質量%~60質量%含有し、メタクリル酸及び/又はアクリル酸を好ましくは合計10質量%~60質量%、更に好ましくは合計30質量%~50質量%含有する樹脂が挙げられる。
【0105】
また、樹脂(b2)については、例えば、樹脂(b2)の合計質量に基づいて、構成単量体としてスチレンを好ましくは10質量%~100質量%、更に好ましくは30質量%~90質量%含有し、メタクリル酸及び/又はアクリル酸を樹脂(b2)の合計質量に基づいて、好ましくは合計0質量%~7.5質量%、更に好ましくは合計0質量%~2.5質量%含有する樹脂が挙げられる。
【0106】
(3)重合条件(開始剤、連鎖移動剤の種類及び使用量、並びに反応温度等)を調整する。具体的には、樹脂(b1)及び樹脂(b2)の数平均分子量(Mn1)及び(Mn2)について、(Mn1)は、2,000~2,000,000が好ましく、20,000~200,000がより好ましい。(Mn2)は、1,000~1,000,000が好ましく、10,000~100,000がより好ましい。
【0107】
本実施形態において、粘弾性特性の損失弾性率G''は、例えば、下記の粘弾性測定装置を用いて測定される。
・装置:ARES-24A(レオメトリック社製)
・治具:25mmパラレルプレート
・周波数:1Hz
・歪み率:10%
・昇温速度:5℃/min
【0108】
樹脂(b1)の酸価(AVb1)としては、75mgKOH/g~400mgKOH/gが好ましく、150mgKOH/g~300mgKOH/gがより好ましい。酸価が上記範囲であれば、樹脂(b1)と樹脂(b2)とを同一粒子内に構成成分として含むビニル系ユニットを含有する樹脂微粒子(B)がトナーの表面に付着した粒子を形成しやすい。
【0109】
酸価が上記範囲にある樹脂(b1)は、メタクリル酸及び/又はアクリル酸を樹脂(b1)の合計質量に基づいて、好ましくは合計10質量%~60質量%、更に好ましくは合計30質量%~50質量%含有する樹脂である。
【0110】
樹脂(b2)の酸価(AVb2)としては、低温定着性の観点から、0mgKOH/g~50mgKOH/gが好ましく、0mgKOH/g~20mgKOH/gがより好ましく、0mgKOH/gが更に好ましい。
【0111】
酸価がこの範囲にある樹脂(b2)は、メタクリル酸及び/又はアクリル酸を樹脂(b2)の合計質量に基づいて、好ましくは合計0質量%~7.5質量%、更に好ましくは合計0質量%~2.5質量%含有する樹脂である。
【0112】
酸価は、例えば、JIS K0070:1992の方法で測定することができる。
【0113】
樹脂(b1)のガラス転移温度としては、樹脂(b2)のガラス転移温度より高いことが好ましく、10℃以上高いことがより好ましく、20℃以上高いことが更に好ましい。樹脂(b1)のガラス転移温度が樹脂(b2)のガラス転移温度より高いと、樹脂微粒子(B)がトナーの表面に付着したトナー粒子の形成しやすさと、一実施形態に係るトナーの低温定着性のバランスに優れる。
【0114】
樹脂(b1)のガラス転移温度(以下、Tgと略記することもある)としては、0℃~150℃が好ましく、50℃~100℃がより好ましい。ガラス転移温度が、0℃以上であれば、耐熱保存性を向上させることができ、150℃以下であれば、低温定着性に対する阻害が少ない。
【0115】
樹脂(b2)のTgとしては、-30℃~100℃が好ましく、0℃~80℃がより好ましく、30℃~60℃が更に好ましい。ガラス転移温度が、-30℃以上であれば、耐熱保存性を向上させることができ、100℃以下であれば、低温定着性に対する阻害が少ない。
【0116】
Tgは、「DSC20、SSC/580」[セイコー電子工業株式会社製]を用いて、ASTM D3418-82に規定の方法(DSC)で測定する。
【0117】
樹脂(b1)の溶解性パラメータ(以下、SP値と略記することもある)としては、トナー粒子の形成しやすさの観点から、9(cal/cm3)1/2~13(cal/cm3)1/2が好ましく、9.5(cal/cm3)1/2~12.5(cal/cm3)1/2がより好ましく、10.5(cal/cm3)1/2~11.5(cal/cm3)1/2が更に好ましい。
【0118】
樹脂(b1)のSP値は、構成するモノマーの種類及びその構成比を変えることで調整することができる。
【0119】
樹脂(b2)のSP値としては、トナー粒子の形成しやすさの観点から、8.5(cal/cm3)1/2~12.5(cal/cm3)1/2が好ましく、9(cal/cm3)1/2~12(cal/cm3)1/2がより好ましく、10(cal/cm3)1/2~11(cal/cm3)1/2が更に好ましい。
【0120】
樹脂(b2)のSP値は、構成するモノマーの種類及びその構成比を変えることで調整することができる。
【0121】
SP値は、Fedorsによる方法[Polym.Eng.Sci.14(2)152,(1974)]により計算する。
【0122】
樹脂(b1)中に、樹脂(b1)のTg及びその他モノマーとの共重合性の観点から、樹脂(b1)の合計質量に基づいて、構成単量体としてスチレンを10質量%~80質量%含有することが好ましく、30質量%~60質量%含有することがより好ましい。
【0123】
樹脂(b2)中に、樹脂(b2)のTg及びその他ビニルモノマーとの共重合性の観点から、樹脂(b2)の合計質量に基づいて、構成単量体としてスチレンを10質量%~100質量%含有することが好ましく、30質量%~90質量%含有することがより好ましい。
【0124】
樹脂(b1)の数平均分子量(Mn)としては、2,000~2,000,000が好ましく、20,000~200,000がより好ましい。数平均分子量が2,000以上であれば、耐熱保存性が向上し、2,000,000以下であれば、トナーの低温定着性に対する阻害が少ない。
【0125】
樹脂(b1)の重量平均分子量(Mw)としては、樹脂(b2)の重量平均分子量(Mw)より大きいことが好ましく、樹脂(b2)の重量平均分子量(Mw)より1.5倍以上大きいことがより好ましく、樹脂(b2)の重量平均分子量(Mw)より2.0倍以上大きいことが更に好ましい。この範囲であれば、トナーの形成しやすさと、低温定着性のバランスに優れる。
【0126】
樹脂(b1)の重量平均分子量(Mw)としては、20,000~20,000,000が好ましく、200,000~2,000,000がより好ましい。重量平均分子量(Mw)が、20,000以上であれば、耐熱保存性が向上し、20,000,000以下であれば、低温定着性に対する阻害が少ない。
【0127】
樹脂(b2)の数平均分子量(Mn)としては、1,000~1,000,000が好ましく、10,000~100,000がより好ましい。Mnが、1,000以上であれば、トナーの耐熱保存性が向上し、1,000,000以下であれば、トナーの低温定着性に対する阻害が少ない。
【0128】
樹脂(b2)の重量平均分子量(Mw)としては、10,000~10,000,000が好ましく、100,000~1,000,000がより好ましい。Mwが、10,000以上であれば、トナーの耐熱保存性が向上し、10,000,000以下であれば、トナーの低温定着性に対する阻害が少ない。
【0129】
これらの中でも、樹脂(b1)のMwが200,000~2,000,000で、樹脂(b2)のMwが100,000~500,000で、かつ「(b1)のMw」>「(b2)のMw」であることが好ましい。
【0130】
数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、以下の条件で測定することができる。
・装置(一例):「HLC-8120」[東ソー株式会社製]
・カラム(一例):「TSK GEL GMH6」[東ソー株式会社製]2本
・測定温度:40℃
・試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液(不溶解分をグラスフィルターでろ別したもの)
・溶液注入量:100μl
・検出装置:屈折率検出器
・基準物質:標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量:500、1,050、2,800、5,970、9,100、18,100、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,890,000)[東ソー株式会社製]
【0131】
樹脂微粒子(B)中の樹脂(b1)と樹脂(b2)との質量比率は、5/95~95/5が好ましく、25/75~75/25がより好ましく、40/60~60/40が更に好ましい。樹脂(b1)と樹脂(b2)との質量比率が5/95以上であれば、トナーの耐熱保存性に優れ、樹脂(b1)と樹脂(b2)との質量比率が95/5以下であれば、樹脂微粒子(B)がトナー粒子の表面に付着したトナー粒子を形成しやすい。
【0132】
樹脂微粒子(B)を製造する方法としては公知の製造方法が挙げられるが、例えば、次のような製造方法(I)~(V)等が挙げられる。
(I)水性分散液中の樹脂(b1)の微粒子をシードとして、樹脂(b2)の構成モノマーをシード重合する方法。
(II)水性分散液中の樹脂(b2)の微粒子をシードとして、樹脂(b1)の構成モノマーをシード重合する方法。
(III)樹脂(b1)及び樹脂(b2)の混合物を水性媒体に乳化して樹脂微粒子の水性分散液として得る方法。
(IV)樹脂(b1)と樹脂(b2)の構成モノマーの混合物とを水性媒体に乳化した後に、樹脂(b2)の構成モノマーを重合して樹脂微粒子の水性分散液として得る方法。
(V)樹脂(b2)と樹脂(b1)の構成モノマーの混合物とを水性媒体に乳化した後に、樹脂(b1)の構成モノマーを重合して樹脂微粒子の水性分散液として得る方法。
【0133】
樹脂微粒子(B)が、シェル樹脂(b1)とコア樹脂(b2)とを同一粒子内に構成成分として含むことは、樹脂微粒子(B)の切断面を公知の表面元素分析装置(TOF-SIMSEDX-SEM等)を用いて元素マッピング画像の観察、及び樹脂(b1)と樹脂(b2)に含まれる官能基に応じた染色剤で染色した樹脂微粒子(B)の切断面の電子顕微鏡観察画像の観察を行うことにより確認することができる。
【0134】
またこの方法で得られる樹脂微粒子は、樹脂(b1)と樹脂(b2)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子(B)の他に樹脂(b1)のみを構成樹脂成分とする樹脂微粒子及び樹脂(b2)のみを構成樹脂成分とする樹脂微粒子を含む混合物として得られる場合があるが、後述する複合化工程においては、混合物のまま用いてもよく、樹脂微粒子(B)だけを単離して用いてもよい。
【0135】
(I)の具体例としては、(b1)の構成モノマーを滴下重合して(b1)を含む樹脂微粒子の水性分散液を製造した後、これをシードとして(b2)の構成モノマーをシード重合する方法及びあらかじめ溶液重合等で製造した(b1)を水に乳化分散した後、これをシードとして(b2)の構成モノマーをシード重合する方法等が挙げられる。
【0136】
(II)の具体例としては、(b2)の構成モノマーを滴下重合して(b2)を含む樹脂微粒子の水性分散液を製造した後、これをシードとして(b1)の構成モノマーをシード重合する方法及びあらかじめ溶液重合等で製造した(b2)を水に乳化分散した後、これをシードとして(b1)の構成モノマーをシード重合する方法等が挙げられる。
【0137】
(III)の具体例としては、あらかじめ溶液重合等で製造した(b1)及び(b2)の溶液又は溶融物を混合した後、これを水性媒体に乳化分散する方法等が挙げられる。
【0138】
(IV)の具体例としては、あらかじめ溶液重合等で製造した(b1)を(b2)の構成モノマーと混合し、これを水性媒体に乳化分散した後、(b2)の構成モノマーを重合する方法及び(b2)の構成モノマー中で(b1)を製造した後、その混合物を水性媒体に乳化分散した後、(b2)の構成モノマーを重合する方法等が挙げられる。
【0139】
(V)の具体例としては、あらかじめ溶液重合等で製造した(b2)を(b1)の構成モノマーと混合し、これを水性媒体に乳化分散した後、(b1)の構成モノマーを重合する方法、(b1)の構成モノマー中で(a2)を製造した後、その混合物を水性媒体に乳化分散した後、(b1)の構成モノマーを重合する方法等が挙げられる。
【0140】
本実施形態においては、上記(I)~(V)のいずれの製造方法も好適である。
【0141】
樹脂微粒子(B)は、水性分散液として用いることが好ましい。
【0142】
水性分散液に用いられるもの(水性媒体)としては、水に溶解するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、界面活性剤、緩衝剤、保護コロイド等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0143】
水性分散液に用いる、水性媒体としては、水を必須とする液体であれば、特に制限はなく用いることができ、例えば、水を含有させた水溶液等が挙げられる。
【0144】
[無機外添剤]
無機外添剤は、トナー母体粒子の表面に配置され、樹脂微粒子の表面に配置されてもよい。即ち、無機外添剤は、樹脂微粒子同士の間に存在するトナー母体粒子の表面又は樹脂微粒子の表面に配置される。
【0145】
無機外添剤は、金属元素の酸化物の表面を金属元素の水酸化物で被覆している。
【0146】
金属元素の酸化物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化スズ酸化クロム、酸化セリウム、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム等を挙げることができる。これらの中でも、トナー母体粒子及び樹脂微粒子との接着の点から、シリカと二酸化チタンが好ましく、シリカがより好ましい。
【0147】
金属元素の水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛及び水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、併用されてもよい。
【0148】
無機外添剤の最表面は、イソブチルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン等のアルキルシランを含むシランカップリング剤で表面処理して、のアルキルシランで被覆されていることが好ましい。
【0149】
疎水化処理された酸化物微粒子、疎水化処理されたシリカ微粒子、疎水化処理された酸化チタン微粒子、疎水化処理された酸化アルミニウム微粒子を得るためには、親水性の微粒子をアルキルシランを含むシランカップリング剤で処理して得ることができる。
【0150】
無機外添剤の平均粒径は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1nm~200nmが好ましく、10nm~150nmがより好ましい。無機外添剤の平均粒径が上記の好ましい範囲内であれば、無機外添剤がトナー母体粒子中に埋没され難くして無機外添剤機能が有効に発揮できるようにすることができると共に、感光体表面を不均一に傷つけることを抑えることができる。
【0151】
無機外添剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー母体粒子100質量部に対して、0.5質量部~6.0質量部が好ましく、1.0質量部~4.0質量部がより好ましい。
【0152】
<無機物フィラー>
トナー母体粒子は、トナー母体粒子に無機物フィラーを添加して製造される。無機物フィラーとしては、特に限定されるものではないが、炭酸カルシウム、カオリンクレー、タルク、硫酸バリウム等から選ばれる1種類以上を用いるができる。これらは、1種単独で用いてもよいし、は複数組み合わせて用いてもよい。これらの無機フィラーは、シランカップリング剤、界面活性剤及び金属石鹸等で表面処理等されていてもよいし、分級等により所望の粒子径分布に調整されたものを使用してもよい。
【0153】
また、無機物フィラーとしては、上記以外にも層状無機鉱物が好ましい。さらには、有機物イオンで変性された層状無機鉱物が好ましい。なお、層状無機鉱物は、厚さ数nmの層が重ね合わさってできている無機鉱物のことをいい、有機物イオンで変性するとはその層間に存在するイオンに有機物イオンを導入することをいう。
【0154】
層状無機鉱物としては、スメクタイト族(モンモリロナイト、サポナイト等)、カオリン族(カオリナイト等)、マガディアイト、カネマイトが知られている。変性層状無機鉱物はその変性された層状構造により親水性が高い。そのため、層状無機鉱物を変性すること無しに水系媒体中に分散して造粒するトナーに用いると、水系媒体中に層状無機鉱物が移行し、トナーを異形化することができないが、変性することにより、親水性が高くなり、かかる変性層状無機鉱物は、トナーの製造時に微細化すると共に異形化し、トナー粒子の表面部分に特に多く存在し、トナー母体粒子全体に均一に分散配置させることができ、電荷調節機能を果たすと共に、低温定着にも貢献する。このとき、トナー材料中の変性層状無機鉱物の含有量は、0.2質量%~1.5質量%であることが好ましい。
【0155】
変性層状無機鉱物は、スメクタイト系の基本結晶構造を持つものを有機カチオンで変性したものが望ましい。また、層状無機鉱物の2価金属の一部を3価の金属に置換することにより、金属アニオンを導入することができる。しかし、金属アニオンを導入すると親水性が高いため、金属アニオンの少なくとも一部を有機アニオンで変性した層状無機化合物が望ましい。
【0156】
層状無機鉱物が有するイオンの少なくとも一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物の、有機物イオン変性剤としては、第4級アルキルアンモニウム塩、フォスフォニウム塩やイミダゾリウム塩等が挙げられるが、第4級アルキルアンモニウム塩が望ましい。第4級アルキルアンモニウムとしては、トリメチルステアリルアンモニウム、ジメチルステアリルベンジルアンモニウム、ジメチルオクタデシルアンモニウム、オレイルビス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム等が挙げられる。
【0157】
有機物イオン変性剤としては、さらに分岐、非分岐又は環状アルキル(C1~C44)、アルケニル(C1~C22)、アルコキシ(C8~C32)、ヒドロキシアルキル(C2~C22)、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を有する硫酸塩、スルフォン酸塩、カルボン酸塩又はリン酸塩が挙げられる。エチレンオキサイド骨格を持ったカルボン酸が望ましい。
【0158】
層状無機鉱物を、少なくとも一部を有機物イオンで変性することにより、適度な疎水性を持ち、トナー組成物及び/又はトナー組成物前駆体を含む油相が非ニュ-トニアン粘性を持ち、トナーを異形化することができる。このとき、トナー材料中の一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物の含有量は、0.2質量%~1.5質量%であることが好ましい。
【0159】
一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物は、適宜選択することができるが、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、アタパルジャイト、セピオライト及びこれらの混合物等が挙げられる。中でも、Al元素は帯電能力の向上に効果があるため、Al元素を含むモンモリロナイト又はベントナイトが好ましい。
【0160】
一部を有機物カチオンで変性した層状無機鉱物の市販品としては、Bentone 3、Bentone 38、Bentone 38V(以上、レオックス社製)、チクソゲルVP(United catalyst社製)、クレイトン34、クレイトン40、クレイトンXL(以上、サザンクレイ社製)等のクオタニウム18ベントナイト;Bentone27(レオックス社製)、チクソゲルLG(United catalyst社製)、クレイトンAF、クレイトンAPA(以上、サザンクレイ社製)等のステアラルコニウムベントナイト;クレイトンHT、クレイトンPS(以上、サザンクレイ社製)等のクオタニウム18/ベンザルコニウムベントナイトが挙げられる。特に好ましいのは、クレイトンAF、クレイトンAPAが挙げられる。また、一部を有機アニオンで変性した層状無機鉱物としてはDHT-4A(協和化学工業社製)に下記一般式(3)で表される有機アニオンで変性させたものが特に好ましい。下記一般式(3)は、例えばハイテノール330T(第一工業製薬社製)が挙げられる。
R1(OR2)nOSO3M ・・・一般式(3)
(式(3)中、R1は炭素数13を有するアルキル基、R2は炭素数2~6を有するアルキレン基を表す。nは2~10の整数を表し、Mは1価の金属元素を表す。)
【0161】
<その他の成分>
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、離経済、活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体、活性水素基含有化合物、帯電制御剤、外添剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料等が挙げられる。
【0162】
[離型剤]
離型剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができる。
【0163】
ロウ類及びワックス類の離型剤としては、例えば、カルナウバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス;オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス;等の天然ワックスが挙げられる。
【0164】
また、これら天然ワックスのほか、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成炭化水素ワックス;エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス;等が挙げられる。
【0165】
さらに、12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド系化合物;低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ-n-ステアリルメタクリレート、ポリ-n-ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n-ステアリルアクリレート-エチルメタクリレートの共重合体等);側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子、等を用いてもよい。
【0166】
これらの中でも、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等の炭化水素系ワックスが好ましい。
【0167】
離型剤の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以上95℃未満が好ましい。
【0168】
離型剤としては、融点が60℃以上95℃未満の炭化水素系ワックスであることがより好ましい。このような離型剤は、定着ローラとトナー界面との間で離型剤として効果的に作用することができるため、定着ローラにオイル等の離型剤を塗布しなくても耐高温オフセット性を向上させることができる。
【0169】
特に、炭化水素系ワックスは、前記ポリエステル樹脂Aとの相溶性がほとんど無く、互いに独立して機能することができるため、結晶性ポリエステル樹脂の結着樹脂としての軟化効果、離型剤のオフセット性を損なうことがないため、好ましい。
【0170】
離型剤の融点が60℃以上であると、低温で離型剤が溶融し難く、トナーの耐熱保存性を維持できる。離型剤の融点が95℃未満であると、定着時の加熱による離型剤の溶融が十分であり、充分なオフセット性が得られる。
【0171】
離型剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー100質量部に対して、2質量部~10質量部が好ましく、3質量部~8質量部がより好ましい。離型剤の含有量が、2質量部以上であると、定着時の耐高温オフセット性、及び低温定着性が発揮でき、10質量部以下であると、耐熱保存性を維持できると共に画像のかぶり等を生じ難くできる。離型剤の含有量が、より好ましい範囲であると、高画質化及び定着安定性を向上させる点で有利である。
【0172】
[活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体(プレポリマー)]
活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体(「プレポリマー」と称することがある。)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオール樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、これらの誘導体、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、溶融時の高流動性及び透明性の点で、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0173】
プレポリマーが有する活性水素基含有化合物と反応可能な部位としては、イソシアネート基、エポキシ基、カルボンキシル基、-COClで示される官能基、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、イソシアネート基が好ましい。
【0174】
プレポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高分子成分の分子量を調節し易く、乾式トナーにおけるオイルレス低温定着特性、特に、定着用加熱媒体への離型オイル塗布機構が無い場合でも、良好な離型性及び定着性を確保できる点で、ウレア結合を生成することが可能なイソシアネート基等を有するポリエステル樹脂が好ましい。
【0175】
[活性水素基含有化合物]
活性水素基含有化合物は、前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体が、水系媒体中で伸長反応、架橋反応等する際の伸長剤、架橋剤等として作用する。
【0176】
活性水素基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水酸基(アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0177】
活性水素基含有化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体がイソシアネート基を含有するポリエステル樹脂である場合には、ポリエステル樹脂と伸長反応、架橋反応等により高分子量化できる点で、アミン類が好ましい。
【0178】
アミン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジアミン、三価以上のアミン、アミノアルコール、アミノメルカプタン、アミノ酸、これらのアミノ基をブロックしたもの等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジアミン、ジアミンと少量の三価以上のアミンとの混合物が好ましい。
【0179】
ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、脂肪族ジアミン等が挙げられる。
【0180】
芳香族ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
【0181】
脂環式ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン等が挙げられる。
【0182】
脂肪族ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0183】
三価以上のアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等が挙げられる。
【0184】
アミノアルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリン等が挙げられる。
【0185】
アミノメルカプタンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタン等が挙げられる。
【0186】
アミノ酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸等が挙げられる。
【0187】
アミノ基をブロックしたものとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノ基を、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類でブロックすることにより得られるケチミン化合物、オキサゾリゾン化合物等が挙げられる。
【0188】
-イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂-
イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂(以下、「イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー」と称することがある)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオールとポリカルボン酸を重縮合することにより得られる活性水素基を有するポリエステル樹脂とポリイソシアネートとの反応生成物、等が挙げられる。
【0189】
-ポリオール-
ポリオールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール、三価以上のアルコール、ジオールと三価以上のアルコールの混合物、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジオール、ジオールと少量の三価以上のアルコールとの混合物が好ましい。
【0190】
ジオールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のオキシアルキレン基を有するジオール;1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ジオール;脂環式ジオールに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール類;ビスフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの等のビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物;等が挙げられる。なお、前記アルキレングリコールの炭素数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2~12が好ましい。
【0191】
これらの中でも、炭素数が2~12であるアルキレングリコール、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物が好ましく、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物と炭素数が2~12のアルキレングリコールとの混合物がより好ましい。
【0192】
三価以上のアルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、三価以上の脂肪族アルコール、三価以上のポリフェノール類、三価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物等が挙げられる。
【0193】
三価以上の脂肪族アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0194】
三価以上のポリフェノール類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。
【0195】
三価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物としては、三価以上のポリフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの等が挙げられる。
【0196】
ジオールと前記三価以上のアルコールを混合して用いる場合、ジオールに対する三価以上のアルコールの質量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01質量%~10質量%が好ましく、0.01質量%~1質量%がより好ましい。
【0197】
-ポリカルボン酸-
ポリカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジカルボン酸、三価以上のカルボン酸、ジカルボン酸と三価以上のカルボン酸の混合物等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジカルボン酸、ジカルボン酸と少量の三価以上のポリカルボン酸との混合物が好ましい。
【0198】
ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、二価のアルカン酸、二価のアルケン酸、芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0199】
二価のアルカン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。
【0200】
二価のアルケン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが炭素数4~20の二価のアルケン酸が好ましい。前記炭素数4~20の二価のアルケン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。
【0201】
芳香族ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。前記炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、等が挙げられる。
【0202】
三価以上のカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、三価以上の芳香族カルボン酸等が挙げられる。
【0203】
三価以上の芳香族カルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数9~20の三価以上の芳香族カルボン酸が好ましい。前記炭素数9~20の三価以上の芳香族カルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0204】
ポリカルボン酸として、ジカルボン酸、三価以上のカルボン酸、及びジカルボン酸と三価以上のカルボン酸との混合物のいずれかの酸無水物又は低級アルキルエステルを用いることもできる。
【0205】
低級アルキルエステルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等が挙げられる。
【0206】
ジカルボン酸と前記三価以上のカルボン酸とを混合して用いる場合、ジカルボン酸に対する三価以上のカルボン酸の質量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01質量%~10質量%が好ましく、0.01質量%~1質量%がより好ましい。
【0207】
ポリオールとポリカルボン酸とを重縮合させる際の、ポリカルボン酸のカルボキシル基に対するポリオールの水酸基の当量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1~2が好ましく、1~1.5がより好ましく、1.02~1.3が特に好ましい。
【0208】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー中のポリオール由来の構成単位の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5質量%~40質量%が好ましく、1質量%~30質量%がより好ましく、2質量%~20質量%が特に好ましい。上記の含有量が0.5質量%以上であると、耐高温オフセット性が維持でき、トナーの耐熱保存性と低温定着性との両立でき、40質量%以下であると、低温定着性を維持できる。
【0209】
-ポリイソシアネート-
ポリイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、イソシアヌレート類、これらをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタム等でブロックしたもの等が挙げられる。
【0210】
脂肪族ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトカプロン酸メチル、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
【0211】
脂環式ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0212】
芳香族ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリレンジイソシアネート、ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4'-ジイソシアナトジフェニル、4,4'-ジイソシアナト-3,3'-ジメチルジフェニル、4,4'-ジイソシアナト-3-メチルジフェニルメタン、4,4'-ジイソシアナト-ジフェニルエーテル等が挙げられる。
【0213】
芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、α,α,α',α'-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0214】
イソシアヌレート類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリス(イソシアナトアルキル)イソシアヌレート、トリス(イソシアナトシクロアルキル)イソシアヌレート等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0215】
ポリイソシアネートと、水酸基を有するポリエステル樹脂を反応させる場合、ポリエステル樹脂の水酸基に対するポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1~5が好ましく、1.2~4がより好ましく、1.5~3が特に好ましい。当量比が、1以上であると、耐オフセット性を維持でき、5以下であると、低温定着性を維持できる。
【0216】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー中のポリイソシアネート由来の構成単位の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5質量%~40質量%が好ましく、1質量%~30質量%がより好ましく、2質量%~20質量%が特に好ましい。上記含有量が、0.5質量%以上であると、耐高温オフセット性を維持でき、40質量%以下であると、低温定着性を維持できる。
【0217】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーが一分子当たりに有するイソシアネート基の平均数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1以上が好ましく、1.2~5がより好ましく、1.5~4が特に好ましい。平均数が1以上であると、ウレア変性ポリエステル系樹脂の分子量の低下が抑えられ、耐高温オフセット性を維持できる。
【0218】
多価アルコール成分中にビスフェノール類のプロピレンオキサイド付加物を50モル%以上含有し、特定の水酸基価と酸価を有するポリエステル樹脂に対するイソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーの質量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5/95超え25/75未満が好ましく、10/90~25/75がより好ましい。質量比が5/95を超えると、耐高温オフセット性を維持でき、25/75未満であると、低温定着性及び画像の光沢性を発揮できる。
【0219】
[帯電制御剤]
帯電制御剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。具体的にはニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP-51、含金属アゾ染料のボントロンS-34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE-82、サリチル酸系金属錯体のE-84、フェノール系縮合物のE-89(以上、オリエント化学工業株式会社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP-302、TP-415(以上、保土谷化学工業株式会社製)、LRA-901、ホウ素錯体であるLR-147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。
【0220】
帯電制御剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー100質量部に対して、0.1質量部~10質量部が好ましく、0.2質量部~5質量部がより好ましい。帯電制御剤の含有量が、10質量部以下であると、トナーの帯電性が大きすぎず、主帯電制御剤の効果を維持できるため、現像ローラとの静電的吸引力の増大を抑え、現像剤の流動性及び画像濃度を維持できる。これらの帯電制御剤はマスターバッチ、樹脂と共に溶融混練した後に溶解分散させることもできるし、有機溶剤に直接溶解させて分散する際に加えてもよいし、トナー表面にトナー母体粒子の作製後に固定化させてもよい。
【0221】
トナーの酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、低温定着性(定着下限温度)、ホットオフセット発生温度等を制御する点から、0.5mgKOH/g~40mgKOH/gであることが好ましい。酸価が、0.5mgKOH/g以上であると、製造時の塩基による分散安定性を向上させる効果が得られ、プレポリマーを用いた場合に伸長反応及び/又は架橋反応が進行しやすくなることが抑えられ、製造安定性を維持できる。酸価が、40mgKOH/g以下であると、プレポリマーを用いた場合に伸長反応及び/又は架橋反応が十分であり、耐高温オフセット性を発揮できる。
【0222】
トナーのガラス転移温度(Tg)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、DSC測定において昇温一回目に算出されるガラス転移温度(Tg1st)が、45℃以上65℃未満であることが好ましく、50℃~60℃であることがより好ましい。これにより、低温定着性、耐熱保存性及び高耐久性を得ることができる。Tg1stが、45℃以上であると、現像機内でのブロッキングや感光体へのフィルミングの発生が抑えられ、65℃以下であると、低温定着性の低下が抑えられる。
【0223】
また、トナーのDSC測定において昇温二回目に算出されるガラス転移温度(Tg2nd)は、20℃以上40℃未満であることが好ましい。Tg2ndが20℃以上であると、現像機内でのブロッキングや感光体へのフィルミングの発生が抑えられ、40℃以下であると、低温定着性の低下が抑えられる。
【0224】
トナーの体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3μm~7μmであることが好ましい。また、個数平均粒径に対する体積平均粒径の比は1.2以下であることが好ましい。また、体積平均粒径が2μm以下である成分を1個数%以上10個数%以下含有することが好ましい。
【0225】
<<酸価、水酸基価の測定方法>>
水酸基価は、JIS K0070-1966に準拠した方法を用いて測定することができる。具体的には、まず、試料0.5gを100mLのメスフラスコに精秤し、これにアセチル化試薬5mLを加える。次に、100±5℃の温浴中で1時間~2時間加熱した後、フラスコを温浴から取り出して放冷する。さらに、水を加えて振り動かして無水酢酸を分解する。次に、無水酢酸を完全に分解させるために、再びフラスコを温浴中で10分以上加熱して放冷した後、有機溶剤でフラスコの壁を十分に洗う。さらに、電位差自動滴定装置DL-53 Titrator(メトラー・トレド社製)及び電極DG113-SC(メトラー・トレド社製)を用いて、23℃で水酸基価を測定し、解析ソフトLabX Light Version 1.00.000を用いて解析する。なお、装置の校正には、トルエン120mLとエタノール30mLの混合溶媒を用いる。このとき、測定条件は、以下の通りである。
【0226】
〔測定条件〕
・撹拌(Stir)
Speed[%]:25
Time[s]:15
・E-V滴定曲線(EQP titration)
Titrant/Sensor
Titrant:CH3ONa
Concentration[mol/L]:0.1
Sensor:DG115
Unit of measurement:mV
Predispensing to volume
Volume[mL]:1.0
Wait time[s]:0
Titrant addition:Dynamic
dE(set)[mV]:8.0
dV(min)[mL]:0.03
dV(max)[mL]:0.5
Measure mode:Equilibrium controlled
dE[mV]:0.5
dt[s]:1.0
t(min)[s]:2.0
t(max)[s]:20.0
Recognition
Threshold:100.0
Steepest jump:only No
Range:No
Tendency:None
Termination
at maximum volume[mL]:10.0
at potential:No
at slope:No
after number EQPs:Yes
n=1
comb.termination conditions:No
Evaluation
Procedure:Standard
Potential1:No
Potential2:No
Stop for reevaluation:No
【0227】
酸価は、JIS K0070-1992に準拠した方法を用いて測定することができる。具体的には、まず、試料0.5g(酢酸エチル可溶分では0.3g)をトルエン120mLに添加して、23℃で約10時間撹拌することにより溶解させる。次に、エタノール30mLを添加して試料溶液とする。なお、試料が溶解しない場合は、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の溶媒を用いる。さらに、電位差自動滴定装置DL-53 Titrator(メトラー・トレド社製)及び電極DG113-SC(メトラー・トレド社製)を用いて、23℃で酸価を測定し、解析ソフトLabX Light Version 1.00.000を用いて解析する。なお、装置の校正には、トルエン120mLとエタノール30mLの混合溶媒を用いる。このとき、測定条件は、上記した水酸基価の場合と同様である。
【0228】
酸価は、以上のようにして測定することができるが、具体的には、予め標定された0.1N水酸化カリウム/アルコール溶液で滴定し、滴定量から、酸価[mgKOH/g]=滴定量[mL]×N×56.1[mg/mL]/試料質量[g](ただし、Nは、0.1N水酸化カリウム/アルコール溶液のファクター)により酸価を算出する。
【0229】
<<融点、及びガラス転移温度(Tg)の測定方法>>
融点、ガラス転移温度(Tg)は、例えば、DSCシステム(示差走査熱量計)(「DSC-60」、島津製作所社製)を用いて測定することができる。具体的には、対象試料の融点、ガラス転移温度は、下記手順により測定できる。
【0230】
まず、対象試料約5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットする。次いで、窒素雰囲気下、0℃から昇温速度10℃/minにて150℃まで加熱する。その後、150℃から降温速度10℃/minにて0℃まで冷却させ、更に昇温速度10℃/minにて150℃まで加熱し、示差走査熱量計(「DSC-60」、島津製作所社製)を用いてDSC曲線を計測する。
【0231】
得られるDSC曲線から、DSC-60システム中の解析プログラム『吸熱ショルダー温度』を用いて、一回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温一回目におけるガラス転移温度を求めることができる。また、『吸熱ショルダー温度』を用いて、二回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温二回目におけるガラス転移温度を求めることができる。
【0232】
また、得られるDSC曲線から、DSC-60システム中の解析プログラム『吸熱ピーク温度』を用いて、一回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温一回目における融点を求めることができる。また、『吸熱ピーク温度』を用いて、二回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温二回目における融点を求めることができる。
【0233】
本実施形態においては、対象試料としてトナーを用いた際の一回目昇温時におけるガラス転移温度をTg1st、同二回目昇温時におけるガラス転移温度をTg2ndとする。
【0234】
また、本実施形態では、各構成成分の二回目昇温時における融点、Tgを各対象試料の融点、Tgとする。
【0235】
<<粒度分布の測定方法>>
トナーの体積平均粒径(D4)と個数平均粒径(Dn)、その比(D4/Dn)は、例えば、コールターカウンターTA-II、コールターマルチサイザーII(いずれもコールター社製)等を用いて測定することができる。本発明ではコールターマルチサイザーIIを使用した。以下に測定方法について述べる。
【0236】
まず、電解水溶液100mL~150mL中に分散剤として界面活性剤(好ましくはポリオキシエチレンアルキルエーテル(非イオン性の界面活性剤))を0.1mL~5mL加える。ここで、電解水溶液とは1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製したもので、例えばISOTON-II(コールター社製)が使用できる。ここで、更に測定試料を2mg~20mg加える。試料を懸濁した電解水溶液は、超音波分散器で約1分間~3分間分散処理を行ない、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子又はトナーの体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの体積平均粒径(D4)、個数平均粒径(Dn)を求めることができる。
【0237】
チャンネルとしては、2.00μm以上2.52μm未満;2.52μm以上3.17μm未満;3.17μm以上4.00μm未満;4.00μm以上5.04μm未満;5.04μm以上6.35μm未満;6.35μm以上8.00μm未満;8.00μm以上10.08μm未満;10.08μm以上12.70μm未満;12.70μm以上16.00μm未満;16.00μm以上20.20μm未満;20.20μm以上25.40μm未満;25.40μm以上32.00μm未満;32.00μm以上40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上40.30μm未満の粒子を対象とする。
【0238】
[外添剤]
外添剤としては酸化物微粒子の他に、無機微粒子や疎水化処理無機微粒子を併用することができるが、疎水化処理された一次粒子の平均粒径は1nm~200nmが好ましく、10nm~150nmの無機微粒子がより好ましい。また、疎水化処理された一次粒子の平均粒径が30nm以下の無機微粒子を少なくとも1種類以上含み、かつ50nm以上の無機微粒子を少なくとも1種類含むことが好ましい。無機微粒子の平均粒径が50nm以上の場合、ブレードに堰き止められやすくなり、フィルミング及びクリーニングが改善する。また、BET法による比表面積は、20m2/g~500m2/gであることが好ましい。
【0239】
外添剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリカ微粒子、疎水性シリカ、脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム等)、金属酸化物(例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化アンチモン等)、フルオロポリマー、等が挙げられる。
【0240】
外添剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー母体粒子100質量部に対して、0.5質量部~6.0質量部が好ましく、1.0質量部~4.0質量部がより好ましい。
【0241】
(その他の外添剤)
その他の添加剤としては、酸化チタン微粒子、酸化アルミニウム微粒子が挙げられる。酸化チタン微粒子としては、例えばP-25(日本アエロジル社製)、STT-30、STT-65C-S(いずれも、チタン工業株式会社製)、TAF-140(富士チタン工業株式会社製)、MT-150W、MT-500B、MT-600B、MT-150A(いずれも、テイカ株式会社製)、等が挙げられる。
【0242】
疎水化処理された酸化チタン微粒子としては、例えばT-805(日本アエロジル株式会社製)、STT-30A、STT-65S-S(いずれも、チタン工業株式会社製)、TAF-500T、TAF-1500T(いずれも、富士チタン工業株式会社製)、MT-100S、MT-100T(いずれも、テイカ株式会社製)、IT-S(石原産業株式会社製)、等が挙げられる。
【0243】
疎水化処理された酸化物微粒子、疎水化処理されたシリカ微粒子、疎水化処理された酸化チタン微粒子、疎水化処理された酸化アルミニウム微粒子を得るためには、親水性の微粒子をメチルトリメトキシシランやメチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤で処理して得ることができる。また、シリコーンオイルを必要ならば、熱を加えて無機微粒子に処理した、シリコーンオイル処理酸化物微粒子、無機微粒子も好適である。
【0244】
シリコーンオイルとしては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、アクリル、メタクリル変性シリコーンオイル、α-メチルスチレン変性シリコーンオイル等が使用できる。
【0245】
無機微粒子としては、例えば、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸パリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等を挙げることができる。これらの中でも、シリカと二酸化チタンが特に好ましい。
【0246】
外添剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナーに対して、0.1質量%~5質量%が好ましく、0.3質量%~3質量%がより好ましい。
【0247】
無機微粒子の一次粒子の平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200nm以下が好ましく、10nm以上100nm以下がより好ましい。この範囲より小さいと、無機微粒子がトナー中に埋没し、その機能が有効に発揮されにくい。またこの範囲より大きいと、感光体表面を不均一に傷つけ好ましくない。
【0248】
[流動性向上剤]
流動性向上剤は、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止可能なものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。流動性向上剤としては、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル等が挙げられる。シリカ、酸化チタンは、このような流動性向上剤により表面処理行い、疎水性シリカ、疎水性酸化チタンとして使用するのが特に好ましい。
【0249】
[クリーニング性向上剤]
クリーニング性向上剤は、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するために前記トナーに添加されるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子、等が挙げられる。ポリマー微粒子は、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01μm~1μmのものが好適である。
【0250】
[磁性材料]
磁性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉄粉、マグネタイト、フェライト等が挙げられる。これらの中でも、色調の点で白色のものが好ましい。
【0251】
<トナーの製造方法>
トナーの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナーは、少なくとも非晶質ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、離型剤、及び着色剤を含む油相を水系媒体中で分散させることにより造粒されることが好ましい。
【0252】
このようなトナーの製造方法の一例としては、公知の溶解懸濁法が挙げられる。
【0253】
また、トナーの製造方法の他の一例として、活性水素基含有化合物と活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体との伸長反応及び/又は架橋反応により生成するもの(以下、「接着性基材」と称することがある)を生成しながら、トナー母粒子を形成する方法を以下に示す。このような方法においては、水系媒体の調製、トナー材料を含有する油相の調製、トナー材料の乳化乃至分散、有機溶媒の除去等を行う。
【0254】
[水系媒体(水相)の調製]
水系媒体の調製は、例えば、樹脂粒子を水系媒体に分散させることにより行うことができる。樹脂粒子の水系媒体中の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5質量%~10質量%が好ましい。
【0255】
樹脂粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイド等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい、これらの中でも、界面活性剤が好ましい。
【0256】
水系媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、水と混和可能な溶媒、これらの混合物等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水が好ましい。
【0257】
水と混和可能な溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セロソルブ類、低級ケトン類等が挙げられる。
【0258】
アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。
【0259】
低級ケトン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0260】
[油相の調製]
トナー材料を含有する油相の調製は、有機溶媒中に、活性水素基含有化合物、活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体、結晶性ポリエステル樹脂、非晶質ポリエステル樹脂、離型剤、ハイブリッド樹脂及び着色剤等を含むトナー材料を、溶解乃至分散させることにより行うことができる。
【0261】
有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、除去が容易である点で、沸点が150℃未満の有機溶媒が好ましい。
【0262】
沸点が150℃未満の有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、酢酸エチル、トルエン、キシレン、ベンゼン、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等が好ましく、酢酸エチルがより好ましい。
【0263】
[乳化乃至分散]
トナー材料の乳化乃至分散は、トナー材料を含有する油相を、水系媒体中に分散させることにより行うことができる。そして、トナー材料を乳化乃至分散させる際に、活性水素基含有化合物と活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体を伸長反応及び/又は架橋反応させることにより、接着性基材が生成する。
【0264】
接着性基材は、例えば、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー等の活性水素基に対する反応性を有する重合体を含有する油相を、アミン類等の活性水素基を含有する化合物と共に、水系媒体中で乳化又は分散させ、水系媒体中で両者を伸長反応及び/又は架橋反応させることにより生成させてもよく、トナー材料を含有する油相を、予め活性水素基を有する化合物を添加した水系媒体中で乳化又は分散させ、水系媒体中で両者を伸長反応及び/又は架橋反応させることにより生成させてもよく、トナー材料を含有する油相を水系媒体中で乳化又は分散させた後で、活性水素基を有する化合物を添加し、水系媒体中で粒子界面から両者を伸長反応及び/又は架橋反応させることにより生成させてもよい。なお、粒子界面から両者を伸長反応及び/又は架橋反応させる場合、生成するトナーの表面に優先的にウレア変性ポリエステル樹脂が形成され、トナー中にウレア変性ポリエステル樹脂の濃度勾配を設けることもできる。
【0265】
接着性基材を生成させるための反応条件(反応時間、反応温度)としては、特に制限はなく、活性水素基含有化合物と、該活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体との組み合わせに応じて、適宜選択することができる。
【0266】
反応時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10分間~40時間が好ましく、2時間~24時間がより好ましい。
【0267】
反応温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0℃~150℃が好ましく、40℃~98℃がより好ましい。
【0268】
水系媒体中において、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー等の活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体を含有する分散液を安定に形成する方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。このような方法としては、例えば、水系媒体相中に、トナー材料を溶媒に溶解乃至分散させて調製した油相を添加し、せん断力により分散させる方法等が挙げられる。
【0269】
分散のための分散機としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機、等が挙げられる。これらの中でも、分散体(油滴)の粒子径を2μm~20μmに制御することができる点で、高速せん断式分散機が好ましい。
【0270】
高速せん断式分散機を用いた場合、回転数、分散時間、分散温度等の条件は、目的に応じて適宜選択することができる。
【0271】
回転数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1,000rpm~30,000rpmが好ましく、5,000rpm~20,000rpmがより好ましい。
【0272】
分散時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、バッチ方式の場合、0.1分間~5分間が好ましい。
【0273】
分散温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、加圧下において、0℃~150℃が好ましく、40℃~98℃がより好ましい。なお、一般に、分散温度が高温である方が分散は容易である。
【0274】
トナー材料を乳化乃至分散させる際の、水系媒体の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー材料100質量部に対して、50質量部~2,000質量部が好ましく、100質量部~1,000質量部がより好ましい。
【0275】
水系媒体の使用量が、50質量部未満であると、トナー材料の分散状態が悪くなって、所定の粒子径のトナー母粒子が得られないことがあり、2,000質量部を超えると、生産コストが高くなることがある。
【0276】
トナー材料を含有する油相を乳化乃至分散する際には、油滴等の分散体を安定化させ、所望の形状にすると共に粒度分布をシャープにする観点から、分散剤を用いることが好ましい。
【0277】
分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイド等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、界面活性剤が好ましい。
【0278】
界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤等を用いることができる。
【0279】
陰イオン界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、フルオロアルキル基を有するものが好ましい。
【0280】
接着性基材を生成させる際の伸長反応及び/又は架橋反応には、触媒を用いることができる。
【0281】
触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジブチルスズラウレート、ジオクチルスズラウレート、等が挙げられる。
【0282】
[有機溶媒の除去]
乳化スラリー等の分散液から有機溶媒を除去する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、反応系全体を徐々に昇温させて、油滴中の有機溶媒を蒸発させる方法、分散液を乾燥雰囲気中に噴霧して、油滴中の有機溶媒を除去する方法、等が挙げられる。
【0283】
有機溶媒が除去されると、トナー母粒子が形成される。トナー母粒子に対しては、洗浄、乾燥等を行うことができ、さらに分級等を行うことができる。分級は、液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことにより行ってもよいし、乾燥後に分級操作を行ってもよい。
【0284】
得られたトナー母粒子は、前記外添剤、前記帯電制御剤等の粒子と混合してもよい。このとき、機械的衝撃力を印加することにより、トナー母粒子の表面から前記外添剤等の粒子が脱離するのを抑制することができる。
【0285】
機械的衝撃力を印加する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高速で回転する羽根を用いて混合物に衝撃力を印加する方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させて粒子同士又は粒子を適当な衝突板に衝突させる方法、等が挙げられる。
【0286】
方法に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して粉砕エアー圧力を下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢、等が挙げられる。
【0287】
このように、一実施形態に係るトナーは、結着樹脂、着色剤及びワックスを含有するトナー母体粒子の表面に有機樹脂粒子及び無機外添剤を複数備え、有機樹脂微粒子の被覆率を30%~70%とし、無機外添剤の少なくとも1種が、金属元素の酸化物表面に金属元素の水酸化物を被覆している。一実施形態に係るトナーは、トナー母体粒子の表面に存在する隣り合う有機樹脂微粒子間の被覆率を30%~70%とすることで、低温定着性と耐熱保存性を高レベルで両立することができる。また、トナー母体粒子の表面には有機樹脂微粒子が多数存在しているため、無機外添剤がトナー母体粒子の表面に埋没し難くすることができる。
【0288】
また、一実施形態に係るトナーは、無機外添剤の基材を金属元素の酸化物とすることで優れた帯電安定性を有し、無機外添剤の基材の表面を金属元素の水酸化物で被覆することでトナーの帯電立ち上がり性を高めると共にトナー飛散を抑制することができる。さらに、一実施形態に係るトナーは、トナー母体粒子の表面に存在する有機樹脂粒子の表面と無機外添剤の表面に存在する水酸基との間で分子間相互作用が生じるため、無機外添剤がトナー母体粒子から遊離することを抑制することができる。
【0289】
よって、一実施形態に係るトナーは、低温定着性と耐熱保存性を両立し、クリーニング部材及び感光体の汚染を抑制すると共に、優れた帯電安定性を有することができる。
【0290】
一実施形態に係るトナーは、無機外添剤の最表面をアルキルシランで被覆することができる。これにより、一実施形態に係るトナーは、その表面の疎水性が高められるので、帯電水準の向上、即ち優れた帯電安定性と帯電立ち上がり性を向上させることができる。
【0291】
一実施形態に係るトナーは、金属元素の酸化物としてシリカを用いることができる。これにより、一実施形態に係るトナーは、帯電安定性をより高めることができる。
【0292】
一実施形態に係るトナーは、無機外添剤の水酸化物に、アルミニウム、亜鉛及びマグネシウムからなる群から選択される少なくとも一種を用いることができる。これにより、一実施形態に係るトナーは、トナー母体粒子の表面に存在する有機樹脂粒子の表面と無機外添剤の表面に存在する水酸基との間で分子間相互作用がより生じ易くすることができるため、無機外添剤がトナー母体粒子から遊離することをより確実に抑制することができる。よって、一実施形態に係るトナーは、無機外添剤の機能をより確実に発揮させることができる。より低温定着性及び耐熱保存性を高めることができる。
【0293】
<現像剤>
一実施形態に係る現像剤は、一実施形態に係るトナーを含み、必要に応じてキャリア等の適宜選択されるその他の成分を含むことができる。これにより、転写性、帯電性等に優れ、高画質な画像を安定して形成することができる。
【0294】
現像剤は、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等に使用する場合には、寿命向上の点から、二成分現像剤であることが好ましい。
【0295】
一実施形態に係るトナーを一成分現像剤に用いる場合、トナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像ローラへのトナーのフィルミング及びトナーを薄層化するブレード等の部材へのトナーの融着が少なく抑えられ、現像装置において長期間にわたって攪拌されても、良好で安定した現像性及び高画質な画が得られる。
【0296】
一実施形態に係る現像剤を二成分現像剤に用いる場合には、キャリアと混合して現像剤として用いることができる。一実施形態に係るトナーを二成分現像剤として用いる場合、長期にわたるトナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像装置において長期間にわたって攪拌されても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。
【0297】
二成分現像剤中のキャリアの含有量は、目的に応じて適宜選択することができるが、二成分現像剤100質量部に対して、90質量部~98質量部が好ましく、93質量部~97質量部がより好ましい。
【0298】
一実施形態に係る現像剤は、磁性一成分現像方法、非磁性一成分現像方法、二成分現像方法等の公知の各種電子写真法による画像形成に好適に用いることができる。
【0299】
[キャリア]
キャリアは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、芯材を被覆する樹脂層(被覆層)とを有するものであることが好ましい。
【0300】
(芯材)
芯材の材料は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、50emu/g~90emu/gのマンガン-ストロンチウム系材料、50emu/g~90emu/gのマンガン-マグネシウム系材料等が挙げられる。また、画像濃度を確保するためには、100emu/g以上の鉄粉、75emu/g~120emu/gのマグネタイト等の高磁化材料を用いることが好ましい。また、穂立ち状態となっている現像剤の感光体に対する衝撃を緩和でき、高画質化に有利であることから、30emu/g~80emu/gの銅-亜鉛系等の低磁化材料を用いることが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0301】
芯材の体積平均粒径は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm~150μmが好ましく、40μm~100μmがより好ましい。体積平均粒径が10μm以上であれば、キャリア中に微粉が多くなり、一粒子当たりの磁化が低下してキャリアの飛散が生じることがあるという問題を有効に防止できる。一方、150μm以下であれば、比表面積が低下し、トナーの飛散が生じることがあり、ベタ部分の多いフルカラーでは、特にベタ部の再現が悪くなることがあるという問題を有効に防止することができる。
【0302】
(樹脂層)
樹脂層の材料としては、特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノ系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリハロゲン化オレフィン、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリトリフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンとアクリルモノマーの共重合体、フッ化ビニリデンとフッ化ビニルの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンとフルオロ基を有さないモノマーの共重合体等のフルオロターポリマー、シリコーン樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0303】
アミノ系樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0304】
ポリビニル系樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等が挙げられる。
【0305】
ポリスチレン系樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリスチレン、スチレン-アクリル共重合体等が挙げられる。
【0306】
ポリハロゲン化オレフィンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ塩化ビニル、等が挙げられる。
【0307】
ポリエステル系樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、等が挙げられる。
【0308】
樹脂層は、必要に応じて、導電粉等を含有してもよい。導電粉としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛等が挙げられる。導電粉の平均粒子径は、1μm以下であることが好ましい。平均粒子径が1μm以下であると、電気抵抗の制御を行うことができる。
【0309】
樹脂層は、シリコーン樹脂等を溶媒に溶解させて塗布液を調製した後、塗布液を芯材の表面に公知の塗布方法を用いて塗布、乾燥した後、焼き付けを行うことにより形成することができる。
【0310】
塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、浸漬塗工法、スプレー法、ハケ塗り法、等を用いることができる。
【0311】
溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチルセロソルブ、等が挙げられる。
【0312】
焼き付けは、外部加熱方式であってもよいし、内部加熱方式であってもよく、例えば、固定式電気炉、流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉等を用いる方法、マイクロ波を用いる方法等が挙げられる。
【0313】
キャリア中の樹脂層の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01質量%~5.0質量%が好ましい。樹脂層の含有量が0.01質量%以上であると、芯材の表面に均一な樹脂層を形成することができ、5.0質量%以下であると、樹脂層の厚みが抑えられるため、キャリア同士の融着が抑えられ、キャリアの均一性を維持できる。
【0314】
<現像剤収容容器>
一実施形態に係る現像剤収容容器は、一実施形態に係る現像剤を収容している。現像剤収容容器としては、特に限定されず、公知のものの中から適宜選択することができるが、容器本体とキャップを有するもの等が挙げられる。
【0315】
また、容器本体の大きさ、形状、構造、材質等は、特に限定されないが、形状は、円筒状等であることが好ましく、内周面にスパイラル状の凹凸が形成され、回転させることにより、内容物である現像剤が排出口側に移行することが可能であり、スパイラル状の凹凸の一部又は全てが蛇腹機能を有することが特に好ましい。さらに、材質は、特に限定されないが、寸法精度がよいものであることが好ましく、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル酸、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂等の樹脂材料が挙げられる。
【0316】
現像剤収容容器は、保存、搬送等が容易であり、取扱性に優れるため、後述する画像形成装置、プロセスカートリッジ等に着脱可能に取り付け、現像剤の補給に使用することができる。
【0317】
<トナー収容ユニット>
一実施形態に係るトナー収容ユニットは、一実施形態に係るトナーを収容することができる。一実施形態に係るトナー収容ユニットとは、トナーを収容する機能を有するユニットに、トナーを収容したものをいう。ここで、トナー収容ユニットの態様としては、例えば、トナー収容容器、現像器、プロセスカートリッジが挙げられる。
【0318】
トナー収容容器とは、トナーを収容した容器をいう。
【0319】
現像器は、トナーを収容し現像する手段を有するものをいう。
【0320】
プロセスカートリッジとは、少なくとも静電潜像担持体(像担持体ともいう)と現像手段とを一体とし、トナーを収容し、画像形成装置に対して着脱可能であるものをいう。プロセスカートリッジは、更に帯電部、露光部、クリーニング部等から選ばれる少なくとも一つを備えてもよい。
【0321】
一実施形態に係るトナー収容ユニットは、一実施形態に係るトナーを収容し、一実施形態に係るトナーは、耐オフセット性、帯電安定性、耐ストレス性、地汚れに優れた、高精細・高品質な画像を長期にわたって提供できる特徴を有する。一実施形態に係るトナー収容ユニットを画像形成装置に装着して、一実施形態に係るトナーの特徴を生かして画像形成することで、長期的な画像安定性を有し、かつ高品質・高精細な画像を形成することができる。
【0322】
<画像形成装置>
一実施形態に係る画像形成装置は、静電潜像担持体と、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成部と、静電潜像担持体に形成された静電潜像をトナーを用いて現像してトナー像を形成する現像部とを有し、更に必要に応じて、その他の構成を有することができる。
【0323】
一実施形態に係る画像形成装置は、より好ましくは、上記の、静電潜像担持体、静電潜像形成部及び現像部の他に、トナー像を記録媒体に転写する転写部と、記録媒体の表面に転写された転写像を定着させる定着部とを備える。
【0324】
現像部において、一実施形態に係るトナーが使用される。好ましくは、一実施形態に係るトナーを含有し、更に必要に応じて、キャリア等のその他の成分が含有された現像剤を用いることにより、トナー像を形成してもよい。
【0325】
(静電潜像担持体)
静電潜像担持体(「電子写真感光体」、「感光体」と称することがある)の材質、形状、構造、大きさ等としては、特に制限されず、公知のものの中から適宜選択することができる。静電潜像担持体の材質としては、例えば、アモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体(OPC)等が挙げられる。これらの中でも、長寿命性の点で、アモルファスシリコンが好ましく、より高精細な画像が得られる点で、有機感光体(OPC)が好ましい。
【0326】
アモルファスシリコン感光体としては、例えば、支持体を50℃~400℃に加熱し、支持体上に真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD(化学気相成長、Chemical Vapor Deposition)法、光CVD法、プラズマCVD法等の成膜法によりa-Siからなる光導電層を有する感光体を用いることができる。これらの中でも、プラズマCVD法、即ち、原料ガスを直流又は高周波あるいはマイクロ波グロー放電によって分解し、支持体上にa-Si堆積膜を形成する方法が好適である。
【0327】
静電潜像担持体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、円筒状が好ましい。円筒状の静電潜像担持体の外径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3mm~100mmが好ましく、5mm~50mmがより好ましく、10mm~30mmが特に好ましい。
【0328】
静電潜像担持体の線速としては、300mm/s以上であることが好ましい。
【0329】
(静電潜像形成部)
静電潜像形成部としては、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する手段であれば、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。静電潜像形成部は、例えば、静電潜像担持体の表面を一様に帯電させる帯電部材(帯電器)と、静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光部材(露光器)とを備える。
【0330】
帯電器としては、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えた接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器等が挙げられる。
【0331】
帯電器の形状としては、ローラの他にも、磁気ブラシ、ファーブラシ等どのような形態をとってもよく、画像形成装置の仕様や形態にあわせて選択することができる。
【0332】
帯電器としては、静電潜像担持体に接触乃至非接触状態で配置され、直流及び交流電圧を重畳印加することによって静電潜像担持体表面を帯電するものが好ましい。また、帯電器が、静電潜像担持体にギャップテープを介して非接触に近接配置された帯電ローラであり、帯電ローラに直流並びに交流電圧を重畳印加することによって静電潜像担持体表面を帯電するものが好ましい。
【0333】
帯電器としては、接触式の帯電器に限定されるものではないが、帯電器から発生するオゾンが低減された画像形成装置が得られる点から、接触式の帯電部材を用いることが好ましい。
【0334】
露光器としては、帯電器により帯電された静電潜像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系、液晶シャッタ光学系等の各種露光器が挙げられる。
【0335】
露光器に用いられる光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等の発光物全般等が挙げられる。
【0336】
また、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルター等の各種フィルターを用いることもできる。
【0337】
なお、露光器は、静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0338】
(現像部)
現像部は、静電潜像担持体に形成された静電潜像を現像して可視像を形成できれば、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。現像部は、例えば、トナーを収容し、静電潜像にトナーを接触又は非接触的に付与可能な現像器を備えるものを好適に用いることができ、トナー入り容器を備えた現像器等が好ましい。
【0339】
現像器は、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよい。現像器として、例えば、トナーを摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、内部に固定された磁界発生部とを有し、表面にトナーを含む現像剤を担持して回転可能な現像剤担持体(例えば、マグネットローラ)を有する現像装置等が好適に挙げられる。
【0340】
(転写部)
転写部としては、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写部と、複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写部とを有する態様が好ましい。なお、中間転写体としては、特に制限されず、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が好適に挙げられる。
【0341】
転写部(第一次転写手段及び第二次転写部)は、静電潜像担持体(感光体)上に形成された可視像を記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。転写部は1つであってもよいし、2以上であってもよい。
【0342】
転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器等が挙げられる。
【0343】
なお、記録媒体としては、代表的には普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものなら、特に制限はなく、公知の記録媒体(記録紙)の中から目的に応じて適宜選択することができ、OHP用のPETベース等も用いることができる。
【0344】
(定着部)
定着部としては、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧部が好適である。加熱加圧部としては、加熱ローラと加圧ローラとの組合せ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組合せ等が挙げられる。
【0345】
定着部は、発熱体を具備する加熱体と、加熱体と接触するフィルムと、フィルムを介して加熱体と圧接する加圧部材とを有し、フィルムと加圧部材の間に未定着画像を形成させた記録媒体を通過させて加熱定着できる加熱加圧部であることが好ましい。
【0346】
加熱加圧部における加熱は、通常、80℃~200℃が好ましい。
【0347】
加熱加圧部における面圧としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10N/cm2~80N/cm2であることが好ましい。
【0348】
なお、本実施形態においては、目的に応じて、定着部と共に又はこれに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
【0349】
(その他)
一次形態に係る画像形成装置は、その他、例えば、除電部、リサイクル部、制御部等を備えることができる。
【0350】
((除電部))
除電部としては、特に制限されず、静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
【0351】
((クリーニング部))
クリーニング部は、静電潜像担持体上に残留するトナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができる。クリーニング部として、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が挙げられる。
【0352】
一次形態に係る画像形成装置は、クリーニング部を有することにより、クリーニング性を向上させることができる。すなわち、トナー間付着力を制御することにより、トナーの流動性が維持され、クリーニング性を向上させることができる。また、劣化後のトナーの特性を制御することにより、高寿命化や高温多湿等の過酷な条件下においても、優れたクリーニング品質を維持することができる。さらに、感光体上におけるトナーから外添剤を十分に遊離させることができるため、クリーニングブレードニップ部における外添剤の堆積層(ダム層)を形成することにより、高いクリーニング性を達成することができる。
【0353】
((リサイクル部))
リサイクル部としては、特に制限されず、公知の搬送手段等が挙げられる。
【0354】
((制御部))
制御部は、上記の各部の動きを制御することができる。制御部としては、上記の各部の動きを制御できれば、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の制御機器が挙げられる。
【0355】
一実施形態に係る画像形成装置は、一実施形態に係るトナーを用いて画像形成を行うことができるため、転写性、帯電性等に優れ、高画質な画像を安定して提供することができる。
【0356】
<画像形成方法>
一実施形態に係る画像形成方法は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、静電潜像をトナーを用いて現像してトナー像を形成する現像工程とを含み、更に必要に応じて、その他の工程を含むことができる。画像形成方法は、画像形成装置により好適に行うことができ、静電潜像形成工程は、静電潜像形成部により好適に行うことができ、現像工程は、現像部により好適に行うことができ、その他の工程は、その他の部により好適に行うことができる。
【0357】
また、一実施形態に係る画像形成方法は、より好ましくは、上記の、静電潜像形成工程及び現像工程の他に、トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、記録媒体の表面に転写された転写像を定着する定着工程とを含む。
【0358】
現像工程において、一実施形態に係るトナーが使用される。好ましくは、一実施形態に係るトナーを含有し、更に必要に応じて、キャリア等のその他の成分が含有された現像剤を用いることにより、トナー像を形成してもよい。
【0359】
静電潜像形成工程は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程であり、静電潜像担持体表面を帯電させる帯電工程と、帯電された静電潜像担持体表面を露光して静電潜像を形成する露光工程とを含む。帯電は、例えば、帯電器を用いて静電潜像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。露光は、例えば、露光器を用いて静電潜像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。静電潜像の形成は、例えば、静電潜像担持体の表面を一様に帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、静電潜像形成部により行うことができる。
【0360】
現像工程は、静電潜像を複数色のトナーにより順次現像して可視像を形成する工程である。可視像の形成は、例えば、静電潜像をトナーを用いて現像することにより行うことができ、現像器により行うことができる。
【0361】
現像器内では、例えば、トナーとキャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦によりトナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。マグネットローラは、静電潜像担持体(感光体)近傍に配置されているため、マグネットローラの表面に形成された磁気ブラシを構成するトナーの一部は、電気的な吸引力によって静電潜像担持体(感光体)の表面に移動する。その結果、静電潜像がトナーにより現像されて静電潜像担持体(感光体)の表面にトナーによる可視像が形成される。
【0362】
転写工程は、可視像を記録媒体に転写する工程である。転写工程は、中間転写体を用い、中間転写体上に可視像を一次転写した後、可視像を記録媒体上に二次転写する態様が好ましい。
【0363】
転写工程は、二色以上のトナー、好ましくはフルカラートナーを用い、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写工程と、複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写工程とを含む態様がより好ましい。転写工程は、記録媒体上に二次転写される画像が複数色のトナーからなるカラー画像である場合、中間転写体を用いて、中間転写体上に各色のトナーを順次重ね合わせて中間転写体上に画像を形成し、中間転写体により、中間転写体上の画像を記録媒体上に一括で二次転写してよい。
【0364】
転写は、例えば、可視像を転写帯電器を用いて静電潜像担持体(感光体)を帯電することにより行うことができ、転写部により行うことができる。
【0365】
定着工程は、記録媒体に転写された可視像を定着装置を用いて定着させる工程であり、各色の現像剤に対し記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色の現像剤に対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
【0366】
一次形態に係る画像形成方法は、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、除電工程、クリーニング工程、リサイクル工程等を含むことができる。
【0367】
除電工程は、静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であり、除電部により好適に行うことができる。
【0368】
クリーニング工程は、静電潜像担持体上に残留するトナーを除去する工程であり、クリーニング部により好適に行うことができる。
【0369】
リサイクル工程は、クリーニング工程により除去したトナーを現像部にリサイクルさせる工程であり、リサイクル部により好適に行うことができる。
【0370】
一実施形態に係る画像形成方法は、一実施形態に係るトナーを用いて画像形成を行うことができるため、転写性、帯電性等に優れ、高画質な画像を安定して提供することができる。
【0371】
[画像形成装置の一態様]
次に、一実施形態に係る画像形成装置の一の態様について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、一実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図1に示すように、画像形成装置100Aは、静電潜像担持体である感光体ドラム10と、帯電部である帯電ローラ20と、露光部である露光装置30と、現像部である現像装置40と、中間転写体(中間転写ベルト)50と、クリーニング部であるクリーニング装置60と、転写部である転写ローラ70と、除電部である除電ランプ80と、中間転写体クリーニング装置90とを備える。
【0372】
中間転写体50は、内側に配置されている3個のローラ51で張架されている無端ベルトであり、3個のローラ51によって、矢印方向に移動可能に設計されている。3個のローラ51の一部は、中間転写体50へ所定の転写バイアス(一次転写バイアス)を印加可能な転写バイアスローラとしても機能する。中間転写体50の近傍には、中間転写体クリーニング装置90が配置されている。さらに、中間転写体50の近傍に、転写ローラ70が中間転写体50に対向して配置され、記録媒体としての転写紙Pに現像像(トナー画像)を転写(二次転写)するための転写バイアス(二次転写バイアス)を印加することができる。中間転写体50の周囲には、中間転写体50上のトナー画像に電荷を付与するためのコロナ帯電器52が、中間転写体50の回転方向に対して、感光体ドラム10と中間転写体50との接触部と、中間転写体50と転写紙Pとの接触部との間に配置されている。
【0373】
現像装置40は、現像剤担持体である現像ベルト41と、現像ベルト41の周囲に併設した現像ユニット42から構成されている。
【0374】
現像ベルト41は、複数のベルトローラで張架されている無端ベルトであり、図中、矢印方向に移動することができる。さらに、現像ベルト41の一部が感光体ドラム10と接触している。
【0375】
現像ユニット42は、ブラック(Bk)現像ユニット42K、イエロー(Y)現像ユニット42Y、マゼンタ(M)現像ユニット42M、及びシアン(C)現像ユニット42Cから構成されている。
【0376】
ブラック現像ユニット42Kは、現像剤収容部421Kと現像剤供給ローラ422Kと現像ローラ(現像剤担持体)423Kとを備えている。イエロー現像ユニット42Yは、現像剤収容部421Yと現像剤供給ローラ422Yと現像ローラ423Yとを備えている。マゼンタ現像ユニット42Mは、現像剤収容部421Mと現像剤供給ローラ422Mと現像ローラ423Mとを備えている。シアン現像ユニット42Cは、現像剤収容部421Cと現像剤供給ローラ422Cと現像ローラ423Cとを備えている。
【0377】
次に、画像形成装置100Aを用いて画像を形成する方法について説明する。まず、帯電ローラ20を用いて、感光体ドラム10の表面を一様に帯電させた後、露光装置30を用いて、感光体ドラム10に露光光Lを露光し、静電潜像を形成する。次に、感光体ドラム10上に形成された静電潜像を、現像装置40から供給されたトナーで現像してトナー像を形成する。さらに、感光体ドラム10上に形成されたトナー像が、ローラ51から印加された転写バイアスにより、中間転写体50上に転写(一次転写)された後、転写ローラ70から印加された転写バイアスにより、不図示の給紙部によって給紙された転写紙P上に転写(二次転写)される。一方、トナー像が中間転写体50に転写された感光体ドラム10は、表面に残留したトナーがクリーニング装置60により除去された後、除電ランプ80により除電される。画像転写後の中間転写体50上の残留トナーは、中間転写体クリーニング装置90によって除去される。
【0378】
転写工程終了後、転写紙Pは定着ユニットに搬送されて、この定着ユニットで、上記転写されたトナー像は転写紙Pに定着される。
【0379】
図2は、一実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
図2に示すように、画像形成装置100Bは、
図1に示す画像形成装置100Aにおいて、現像ベルト41を設けずに、感光体ドラム10の周囲に、現像ユニット42(ブラック現像ユニット42K、イエロー現像ユニット42Y、マゼンタ現像ユニット42M及びシアン現像ユニット42C)が直接対向して配置されている以外は、画像形成装置100Aと同様の構成を有する。
【0380】
図3は、一実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
図3に示すように、画像形成装置100Cは、タンデム型カラー画像形成装置であり、複写装置本体110と、給紙テーブル120と、スキャナ130と、原稿自動搬送装置(ADF)140と、二次転写装置150と、定着部である定着装置160と、シート反転装置170を備えている。
【0381】
複写装置本体110の中央部には、無端ベルト状の中間転写体50が設けられている。中間転写体50は、3個のローラ53A、53B及び53Cに張架されている無端ベルトであり、
図3中、矢印方向に移動することができる。ローラ53Bの近傍には、トナー像が記録紙に転写された中間転写体50上に残留したトナーを除去するための中間転写体クリーニング装置90が配置されている。ローラ53A及び53Bにより張架された中間転写体50に対向すると共に、搬送方向に沿って、対向して並置されたタンデム型現像器である現像ユニット42(イエロー(Y)現像ユニット42Y、シアン(C)現像ユニット42C、マゼンタ(M)現像ユニット42M及びブラック(Bk)現像ユニット42K)が配置されている。
【0382】
また、現像ユニット42の近傍には、露光装置30が配置されている。さらに、中間転写体50の現像ユニット42が配置された側とは反対側には、二次転写装置150が配置されている。二次転写装置150は、二次転写ベルト151を備える。なお、二次転写ベルト151は、一対のローラ152に張架されている無端ベルトであり、二次転写ベルト151上を搬送される記録紙と中間転写体50は、ローラ53Cとローラ152との間で接触することができる。
【0383】
また、二次転写ベルト151の近傍には、定着装置160が配置されている。定着装置160は、一対のローラに張架されている無端ベルトである定着ベルト161と、定着ベルト161に押圧されて配置された加圧ローラ162とを備えている。
【0384】
また、二次転写ベルト151及び定着装置160の近傍に、記録紙の両面に画像を形成する場合に、記録紙を反転させるためのシート反転装置170が配置されている。
【0385】
次に、画像形成装置100Cを用いて、フルカラー画像を形成する方法について説明する。ます、原稿自動搬送装置(ADF)140の原稿台141上にカラー原稿をセットするか、原稿自動搬送装置140を開いてスキャナ130のコンタクトガラス131上にカラー原稿をセットし、原稿自動搬送装置140を閉じる。
【0386】
スタートスイッチ(不図示)を押すと、原稿自動搬送装置140にカラー原稿をセットした時は、カラー原稿が搬送されてコンタクトガラス131上へと移動された後で、スキャナ130が駆動し、光源を備える第1走行体132及び第2走行体133が走行する。一方、コンタクトガラス131上に原稿をセットした時は直ちに、スキャナ130が駆動して、光源を備える第1走行体132及び第2走行体133が走行する。このとき、第1走行体132から照射された光の原稿面からの反射光を第2走行体133のミラーで反射した後、結像レンズ135を通して読取りセンサ136で受光することにより、カラー原稿(カラー画像)が読み取られ、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの画像情報が得られる。
【0387】
各色の画像情報は、各色の現像ユニット(イエロー現像ユニット42Y、シアン現像ユニット42C、マゼンタ現像ユニット42M及びブラック現像ユニット42K)にそれぞれ伝達され、各色のトナー像が形成される。
【0388】
図4は、
図3の画像形成装置の部分拡大図である。
図4に示すように、各現像ユニット(イエロー現像ユニット42Y、シアン現像ユニット42C、マゼンタ現像ユニット42M及びブラック現像ユニット42K)は、それぞれ、感光体ドラム10(ブラック用静感光体ドラム10K、イエロー用感光体ドラム10Y、マゼンタ用感光体ドラム10M、及びシアン用感光体ドラム10C)と、感光体ドラム10を一様に帯電させる帯電部である帯電ローラ20と、各色の画像情報に基づいて、感光体ドラム10に露光光Lを露光し、感光体ドラム10上に各色の静電潜像を形成する露光装置30と、静電潜像を各色の現像剤で現像して各色のトナー像を形成する現像部である現像装置40と、トナー像を中間転写体50上に転写させるための転写帯電器62と、クリーニング装置60と、除電ランプ80とを備える。
【0389】
各色の現像ユニット(イエロー現像ユニット42Y、シアン現像ユニット42C、マゼンタ現像ユニット42M及びブラック現像ユニット42K)で形成された各色のトナー像は、ローラ53A、53B及び53Cに張架されて移動する中間転写体50上に順次転写(一次転写)される。そして、中間転写体50上に各色のトナー像が重ね合わされて、合成カラー画像(カラー転写像)が形成される。
【0390】
一方、給紙テーブル120においては、給紙ローラ121の1つを選択的に回転させ、ペーパーバンク122に多段に備える給紙カセット123の1つから記録紙を繰り出す。記録紙は、分離ローラ124で1枚ずつ分離されて給紙路125に送出され、搬送ローラ126で搬送されて複写装置本体110内の給紙路111に導かれ、レジストローラ112に突き当てて止められる。又は、手差しローラ113を回転して手差しトレイ114上の記録紙を繰り出し、手差しローラ113で1枚ずつ分離して手差し給紙路115に導き、レジストローラ112に突き当てて止める。
【0391】
なお、レジストローラ112は、一般には接地されて使用されるが、記録紙の紙粉を除去するためにバイアスが印加された状態で使用されてもよい。
【0392】
次に、中間転写体50上に形成された合成カラー画像(カラー転写像)にタイミングを合わせてレジストローラ112を回転させ、中間転写体50と二次転写ベルト151との間に記録紙を送出させ、合成カラー画像(カラー転写像)を記録紙上に転写(二次転写)する。なお、合成カラー画像(カラー転写像)を転写した中間転写体50上に残留したトナーは、中間転写体クリーニング装置90により除去される。
【0393】
合成カラー画像(カラー転写像)が転写された記録紙は、二次転写ベルト151により搬送された後、定着装置160により複合トナー像が記録紙上に定着される。
【0394】
その後、記録紙は、切換爪116により搬送経路が切り換えられ、排出ローラ117により排紙トレイ118上に排出される。又は、記録紙は、切換爪116により搬送経路が切り換えられ、シート反転装置170により反転され、再度、二次転写ベルト151にと導かれ、裏面にも同様にして画像が形成された後、排出ローラ117により排紙トレイ118上に排出される。
【0395】
<プロセスカートリッジ>
一実施形態に係るプロセスカートリッジは、各種画像形成装置に着脱可能に成型されており、静電潜像を担持する静電潜像担持体と、静電潜像担持体上に担持された静電潜像を上記の一実施形態に係る現像剤で現像してトナー像を形成する現像部とを有し、必要に応じて、その他の構成を有してもよい。
【0396】
静電潜像担持体は、上記の画像形成装置の静電潜像担持体と同様であるため、詳細は省略する。
【0397】
現像部は、一実施形態に係る現像剤を収容する現像剤収容容器と、現像剤収容容器内に収容された現像剤を担持すると共に搬送する現像剤担持体とを有する。なお、現像部は、担持する現像剤の厚さを規制するため、規制部材等をさらに有してもよい。
【0398】
図6に、一実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示す。
図6に示すように、画像形成装置プロセスカートリッジ200は、感光体ドラム10、帯電部であるコロナ帯電器22、現像装置40、クリーニング装置60及び転写ローラ70を有する。なお、図中、Pは転写紙を示し、Lは露光光を示す。
【実施例0399】
以下、実施例及び比較例を示して実施形態を更に具体的に説明するが、実施形態はこれらの実施例及び比較例により限定されるものではない。
【0400】
-トナーの製造-
(結晶性ポリエステル樹脂の製造例)
<結晶性ポリエステル樹脂1の合成>
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対をセットした反応容器に、セバシン酸及び1,6-ヘキサンジオールを仕込んだ。このとき、カルボキシル基に対する水酸基のモル比を0.9とし、全モノマーに対して、500ppmのチタンテトライソプロポキシドを添加した。次に、180℃で10時間反応させた後、200℃まで昇温して3時間反応させた。さらに、8.3kPaの減圧下で2時間反応させ、結晶性ポリエステル樹脂1を得た。
結晶性ポリエステル樹脂1は、融点が67℃であり、重量平均分子量が25000であった。
【0401】
(非晶質ポリエステル樹脂の製造例)
<非晶質ポリエステル樹脂1の合成>
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、ビスフェノールAプロピレンオキサイドサイド2モル付加物1427.5g、トリメチロールプロパン20.2g、テレフタル酸512.7g、及びアジピン酸119.9gを入れ、常圧で230℃で10時間反応し、さらに10mmHg~15mmHgの減圧で5時間反応した後、反応容器に無水トリメリット酸41.0gを入れ、180℃、常圧で3時間反応し、非晶質ポリエステル樹脂1を得た。
非晶質ポリエステル樹脂1は、重量平均分子量(Mw)10,000、数平均分子量2,900、Tg57.5℃、酸価20mgKOH/gであった。
【0402】
(結晶性ポリエステル樹脂分散液の製造例)
<結晶性ポリエステル樹脂分散液1の調製>
金属製2L容器に、結晶性ポリエステル樹脂1を100質量部、及び酢酸エチル200質量部を入れ、75℃で加熱溶解させた後、氷水浴中で27℃/分の速度で急冷した。これにガラスビーズ(3mmφ)500mLを加え、バッチ式サンドミル装置(カンペハピオ社製)で10時間粉砕を行い、結晶性ポリエステル樹脂分散液1を得た。
【0403】
(有機微粒子分散液の作成)
<樹脂微粒子(A)の水性分散液(W0―1)の製造>
撹拌機、加熱冷却装置、及び温度計を備えた反応容器に、水3710質量部、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム(第一工業製薬株式会社製、アクアロンKH-1025)200質量部を仕込み、200回転/分で撹拌して均一化した。均一化したものを加熱して系内温度75℃まで昇温させた後、10%過硫酸アンモニウム水溶液90質量部を加えてから、スチレン450質量部、ブチルアクリレート250質量部、及びメタクリル酸300質量部からなる混合液を4時間かけて滴下した。
滴下後、75℃で4時間熟成させることで前記モノマー及びポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウムが共重合したポリマーである樹脂(a1-1)を含む微粒子分散液(W0-1)を得た。
微粒子分散液(W0-1)中の微粒子の体積平均粒径は、動的光散乱法(光散乱電気泳動装置:大塚電子株式会社製、ELS-8000)で測定したところ、15nmであった。
微粒子分散液(W0-1)の一部を乾燥して樹脂(a1-1)を単離した。該樹脂分のガラス転移温度(TgA)は75℃、酸価は195mgKOH/gであった。
【0404】
<樹脂微粒子(A-1)の水性分散液(W―1)の製造>
次に、撹拌機、加熱冷却装置、及び温度計を備えた反応容器に、樹脂微粒子(A)の水性分散液(W0-1)667質量部、及び水248質量部を仕込み、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド(日油株式会社製、パーブチルH)0.267質量部を加えてから加熱して系内温度を70℃まで昇温させた後、スチレン43.3質量部、ブチルアクリレート23.3質量部、及び1%アスコルビン酸水溶液18.0質量部を2時間かけて滴下した。
滴下後、70℃で4時間熟成させることで(W0-1)中の樹脂微粒子をシードとして前記モノマーが共重合したポリマーである樹脂(a2-1)と樹脂(a1-1)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子(A-1)の水性分散液(W-1)を得た。
樹脂微粒子(A-1)の体積平均粒径は、上記と同様にして測定したところ、17.3nmであった。
樹脂微粒子(A-1)の水性分散液(W-1)を10%アンモニア水溶液で中和してpH9.0にした後、遠心分離した沈殿物を乾固することで樹脂(a2-1)を単離した。該樹脂のガラス転移温度(Tg)は61℃であった。
【0405】
樹脂微粒子(A-1)の水性分散液(W-1)が樹脂(a1-1)と樹脂(a2-1)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子(A-1)を含むことは以下のようにして確認した。
具体的には、ゼラチン(クックゼラチン、森永乳業株式会社製)2質量部を95℃~100℃に温めた水15質量部に加えて溶解させ、空冷して40℃となったゼラチン水溶液に樹脂微粒子(A-1)の水性分散液(W-1)を1:1の質量比率で混合し、よく撹拌した後、10℃で1時間冷やすことで硬化させたゲルを作製した。
このゲルをウルトラミクロトーム(ウルトラミクロトームUC7、FC7、ライカマイクロシステムス社製)において、-80℃に温調しながら厚さ80nmの切片を作製した後、2%四酸化ルテニウム水溶液で5分間気相染色を行ってから透過型電子顕微鏡(日立テクノロジーズ株式会社製、H-7100)で観察を行うことにより確認した。
【0406】
<有機微粒子エマルション(微粒子分散液)の製造>
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、水683質量部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(商品名:エレミノールRS-30、三洋化成工業社製)11質量部、スチレン138質量部、メタクリル酸138質量部、及び過硫酸アンモニウム1質量部を仕込み、400回転/分間で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。これを加熱して、系内温度:75℃まで昇温し、5時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液30質量部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン-メタクリル酸-メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[微粒子分散液2]を得た。
[微粒子分散液2]をレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA-920、HORIBA社製)で測定したところ、体積平均粒径:0.14μmであった。[微粒子分散液2]の一部を乾燥して樹脂分を単離した。
【0407】
(製造例1)
[樹脂微粒子(A)の水性分散液(W0-1)の製造]
撹拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に、水3710質量部、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム(第一工業製薬株式会社製、アクアロンKH-1025)200質量部を仕込み、200回転/分で撹拌して均一化した。均一化したものを加熱して系内温度75℃まで昇温させた後、10%過硫酸アンモニウム水溶液90質量部を加えてから、スチレン450質量部、ブチルアクリレート250質量部、及びメタクリル酸300質量部からなる混合液を4時間かけて滴下した。
滴下後、75℃で4時間熟成させることで前記モノマー及びポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウムが共重合したポリマーである樹脂(a1-1)を含む微粒子分散液(W0-1)を得た。
微粒子分散液(W0-1)中の微粒子の体積平均粒径は、動的光散乱法(光散乱電気泳動装置:大塚電子株式会社製、ELS-8000)で測定したところ、15nmであった。
微粒子分散液(W0-1)の一部を乾燥して樹脂(a1-1)を単離した。該樹脂分のガラス転移温度(TgA)は75℃、酸価は195mgKOH/gであった。
【0408】
(製造例2)
[樹脂微粒子(A)の水性分散液(W0-2)の製造]
撹拌機、加熱冷却装置、及び温度計を備えた反応容器に、水3810質量部、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム(第一工業製薬株式会社製、アクアロンKH-1025)100質量部を仕込み、200回転/分で撹拌して均一化した。均一化したものを加熱して系内温度75℃まで昇温させた後、10%過硫酸アンモニウム水溶液90質量部を加えてから、スチレン400質量部、ブチルアクリレート300質量部、及びメタクリル酸300質量部からなる混合液を4時間かけて滴下した。
滴下後、75℃で4時間熟成させることで前記モノマー及びポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウムが共重合したポリマーである樹脂(a3-1)を含む微粒子分散液(W0-2)を得た。
微粒子分散液(W0-2)中の微粒子の体積平均粒径は、製造例1と同様にして測定したところ、45nmであった。
微粒子分散液(W0-2)の一部を乾燥して樹脂(a2-1)を単離した。該樹脂分のガラス転移温度(TgA)は65℃、酸価は195mgKOH/gであった。
【0409】
(製造例3)
<樹脂微粒子(A-1)の水性分散液(W-1)の製造>
次に、撹拌機、加熱冷却装置、及び温度計を備えた反応容器に、樹脂微粒子(A)の水性分散液(W0-1)667質量部、及び水248質量部を仕込み、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド(日油株式会社製、パーブチルH)0.267質量部を加えてから加熱して系内温度を70℃まで昇温させた後、スチレン43.3質量部、ブチルアクリレート23.3質量部、及び1%アスコルビン酸水溶液18.0質量部を2時間かけて滴下した。
滴下後、70℃で4時間熟成させることで(W0-1)中の樹脂微粒子をシードとして前記モノマーが共重合したポリマーである樹脂(a2-1)と樹脂(a1-1)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子(A-1)の水性分散液(W-1)を得た。
樹脂微粒子(A-1)の体積平均粒径は、製造例1と同様にして測定したところ、17.3nmであった。
樹脂微粒子(A-1)の水性分散液(W-1)を10%アンモニア水溶液で中和してpH9.0にした後、遠心分離した沈殿物を乾固することで樹脂(a2-1)を単離した。該樹脂のガラス転移温度(Tg)は61℃であった。
【0410】
樹脂微粒子(A-1)の水性分散液(W-1)が樹脂(a1-1)と樹脂(a2-1)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子(A-1)を含むことは以下のようにして確認した。
具体的には、ゼラチン(クックゼラチン、森永乳業株式会社製)2質量部を95℃~100℃に温めた水15質量部に加えて溶解させ、空冷して40℃となったゼラチン水溶液に樹脂微粒子(A-1)の水性分散液(W-1)を1:1の質量比率で混合し、よく撹拌した後、10℃で1時間冷やすことで硬化させたゲルを作製した。
このゲルをウルトラミクロトーム(ウルトラミクロトームUC7、FC7、ライカマイクロシステムス社製)において、-80℃に温調しながら厚さ80nmの切片を作製した後、2%四酸化ルテニウム水溶液で5分間気相染色を行ってから透過型電子顕微鏡(日立テクノロジーズ株式会社製、H-7100)で観察を行うことにより確認した。
【0411】
(製造例4)
<樹脂微粒子(A-2)の水性分散液(W-2)の製造>
次に、撹拌機、加熱冷却装置、及び温度計を備えた反応容器に、樹脂微粒子(A)の水性分散液(W0-2)を667質量部、水248質量部を仕込み、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド(日油株式会社製、パーブチルH)0.267質量部を加えてから加熱して系内温度を70℃まで昇温させた後、スチレン43.3質量部、ブチルアクリレート23.3質量部、及び1%アスコルビン酸水溶液18.0質量部を2時間かけて滴下した。
滴下後、70℃で4時間熟成させることで(W0-2)中の樹脂微粒子をシードとして前記モノマーが共重合したポリマーである樹脂(a2-2)と樹脂(a1-2)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子(A-2)の微粒子分散液(W-2)を得た。
樹脂微粒子(A-2)の体積平均粒径は、製造例1と同様にして測定したところ、51.5nmであった。
樹脂微粒子(A-2)の水性分散液(W-2)を10%アンモニア水溶液で中和してpH9.0にした後、遠心分離した沈殿物を乾固することで樹脂(a2-3)を単離した。該樹脂のガラス転移温度(Tg)は55℃であった。
樹脂微粒子(A-2)の水性分散液(W-2)が樹脂(a1-2)と樹脂(a2-2)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子(A-2)を含むことを製造例4と同様の方法により確認した。
【0412】
(製造例5)
<非結晶性ポリエステル樹脂(b-1)の合成>
冷却管、撹拌機、加熱冷却装置、温度計、及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールA・PO2モル付加物425質量部、プロピレングリコール100質量部、テレフタル酸・プロピレングリコール2モル付加物634質量部、及び縮合触媒としてチタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート0.5質量部を入れて230℃で12時間反応させた。
次いで、10~15mmHgの減圧下で反応させた。
回収されたプロピレングリコールは195質量部であった。
次いで、180℃に冷却した後、無水トリメリット酸30質量部を入れて180℃で1時間反応させた後に取り出した。
取り出した樹脂を室温まで冷却後、非結晶性ポリエステル(b-1)を得た。該樹脂分のガラス転移温度(Tg)は42℃、数平均分子量(Mn)は2400、重量平均分子量(Mw)は5400、水酸基価は32mgKOH/g、酸価は18mgKOH/gであった。
【0413】
(製造例6)
<着色剤分散液の製造>
冷却管、撹拌機、加熱冷却装置、温度計、及び窒素導入管の付いた反応容器中に、プロピレングリコール557質量部、テレフタル酸ジメチルエステル569質量部、アジピン酸184質量部、及び縮合触媒としてテトラブトキシチナネート3質量部を投入し、180℃で窒素気流下に、生成するメタノールを留去しながら8時間反応させた。
次いで、230℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下で生成するプロピレングリコール及び水を留去しながら4時間反応させ、更に0.007MPa~0.026MPaの減圧下にて1時間反応させた。
回収されたプロピレングリコールは175質量部であった。
次いで、180℃まで冷却し、無水トリメリット酸121質量部を加え、常圧密閉下で2時間反応後、常圧下で220℃まで加熱し、軟化点が180℃になるまで反応させ、ポリエステル樹脂(数平均分子量(Mn)=8500)を得た。
ビーカーに銅フタロシアニン20質量部と着色剤分散剤(ソルスパーズ28000、アビシア社製)4質量部、得られたポリエステル樹脂20質量部、及び酢酸エチル56質量部を投入して、撹拌して均一分散させた後、ビーズミルによって銅フタロシアニンを微分散して[着色剤分散液]を得た。
得られた[着色剤分散液]の体積平均粒径は0.2μmであった。
【0414】
(製造例7)
<変性ワックス(d)の製造>
撹拌機、加熱冷却装置、温度計、及び滴下ボンベを備えた耐圧反応容器に、キシレン454質量部、及び低分子量ポリエチレン(三洋化成工業株式会社製、サンワックスLEL-400)150質量部を投入し、窒素置換後、撹拌下170℃に昇温し、同温度でスチレン595質量部、メタクリル酸メチル255質量部、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート34質量部、及びキシレン119質量部の混合溶液を3時間かけて滴下し、更に同温度で30分間保持した。
次いで、0.039MPaの減圧下でキシレンを留去し、変性ワックス(d)を得た。
変性ワックス(d)のグラフト鎖のSP値は10.35(cal/cm3)1/2、数平均分子量(Mn)は1900、重量平均分子量(Mw)は5200、ガラス転移温度(Tg)は57℃であった。
【0415】
(製造例8)
<離型剤分散液の製造>
冷却管、撹拌機、加熱冷却装置、及び温度計の付いた反応容器中に、パラフィンワックス(日本精蝋株式会社製、HNP-9)10質量部、変性ワックス(d)1質量部及び酢酸エチル33質量部を投入し、78℃に昇温して同温度で30分間撹拌した後、1時間かけて30℃まで冷却してパラフィンワックスを微粒子状に晶析させ、更にウルトラビスコミル(アイメックス製)で湿式粉砕し、[離型剤分散液]を得た。
[離型剤分散液]の体積平均粒径は0.25μmであった。
【0416】
(製造例9)
<反応性プレポリマー(α2b-1)の製造>
冷却管、撹拌機及び窒索導入管の付いた反応容器中に、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、イソフタル酸、アジピン酸、及び無水トリメリット酸を、水酸基とカルボキシル基のモル比であるOH/COOHが1.5であり、ジオール成分の構成が3-メチル-1,5-ペンタンジオール100mol%であり、ジカルボン酸成分の構成がイソフタル酸40mol%及びアジピン酸60mol%であり、全モノマー中における無水トリメリット酸の量が1mol%となるように、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して1,000ppm)とともに投入した。
その後、4時間程度で200℃まで昇温し、次いで、2時間かけて230℃に昇温し、流出水がなくなるまで反応を行った。
その後更に、10mmHg~15mmHgの減圧下で5時間反応し、[中間体ポリエステルC-1]を得た。
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、[中間体ポリエステルC-1]とイソホロンジイソシアネート(IPDI)とをモル比(IPDIのイソシアネート基/中間体ポリエステルの水酸基)2.0で投入し、酢酸エチルで50%酢酸エチル溶液となるように希釈後、100℃で5時間反応させ、[反応性プレポリマー(α2b-1)]を得た。
【0417】
(製造例10)
<無機外添剤の作製>
<<無機外添剤1の作製>>
まず、液相法で製造されたシリカ粒子(東ソーシリカ製 ニップシールSP-200B ET比表面積200m2/g)100gを2Lの水に分散し、85℃に加温した。次に、シリカ粒子に対してZnO換算で10質量%となる量の塩化亜鉛水溶液を添加し、水酸化ナトリウム水溶液でpH8.0に調整した後、30分間攪拌しながら保持した後、ろ過するとともにろ材上の残渣を水洗することによって洗浄ケーキを得た。次に、この洗浄ケーキを120℃で乾燥した後、メディア式微粉砕機で粉砕した。最後に、得られた粉体40gを小型ミキサーへ投入し、イソブチルトリメトキシシラン10gを添加して15分混合した後、120℃で再乾燥することによって、無機外添剤1を作製した。
【0418】
<<無機外添剤2の作製>>
まず、液相法で製造されたシリカ粒子(ニップシールSP-200B、ET比表面積200m2/g、東ソーシリカ製)100gを2Lの水に分散し、85℃に加温した。次に、シリカ粒子に対してAl2O3換算で10質量%となる量の塩化アルミニウム水溶液を添加し、水酸化ナトリウム水溶液でpH5.5に調整した後、30分間攪拌しながら保持した後、ろ過するとともにろ材上の残渣を水洗することによって洗浄ケーキを得た。次に、この洗浄ケーキを120℃で乾燥した後、メディア式微粉砕機で粉砕した。最後に、得られた粉体40gを小型ミキサーへ投入し、イソブチルトリメトキシシラン10gを添加して15分混合した後、120℃で再乾燥することによって、無機外添剤2を作製した。
【0419】
<<無機外添剤3の作製>>
まず、液相法で製造されたシリカ粒子(東ソーシリカ製 ニップシールSP-200B ET比表面積200m2/g)100gを2Lの水に分散し、85℃に加温した。
次に、シリカ粒子に対してMgO換算で10質量%となる量の塩化マグネシウム水溶液を添加し、水酸化ナトリウム水溶液でpH5.0に調整した後、30分間攪拌しながら保持した後、ろ過するとともにろ材上の残渣を水洗することによって洗浄ケーキを得た。
次に、この洗浄ケーキを120℃で乾燥した後、メディア式微粉砕機で粉砕した。
最後に、得られた粉体40gを小型ミキサーへ投入し、イソブチルトリメトキシシラン10gを添加して15分混合した後、120℃で再乾燥することによって、無機外添剤3を作製した。
【0420】
<<無機外添剤4の作製>>
まず、液相法で製造されたシリカ粒子(東ソーシリカ製 ニップシールSP-200B ET比表面積200m2/g)100gを2Lの水に分散し、85℃に加温した。次に、シリカ粒子に対してFeO換算で10質量%となる量の塩化鉄水溶液を添加し、水酸化ナトリウム水溶液でpH8.5に調整した後、30分間攪拌しながら保持した後、ろ過するとともにろ材上の残渣を水洗することによって洗浄ケーキを得た。次に、この洗浄ケーキを120℃で乾燥した後、メディア式微粉砕機で粉砕した。最後に、得られた粉体40gを小型ミキサーへ投入し、イソブチルトリメトキシシラン10gを添加して15分混合した後、120℃で再乾燥することによって、無機外添剤4を作製した。
【0421】
<<無機外添剤5の作製>>
まず、液相法で製造されたシリカ粒子(東ソーシリカ製 ニップシールSP-200B ET比表面積200m2/g)100gを2Lの水に分散し、85℃に加温した。次に、シリカ粒子に対してCoO換算で10質量%となる量の塩化コバルト水溶液を添加し、水酸化ナトリウム水溶液でpH9.0に調整した後、30分間攪拌しながら保持した後、ろ過するとともにろ材上の残渣を水洗することによって洗浄ケーキを得た。次に、この洗浄ケーキを120℃で乾燥した後、メディア式微粉砕機で粉砕した。最後に、得られた粉体40gを小型ミキサーへ投入し、イソブチルトリメトキシシラン10gを添加して15分混合した後、120℃で再乾燥することによって、無機外添剤5を作製した。
【0422】
<<無機外添剤6の作製>>
まず、酸化チタン100gを2Lの水に分散し、85℃に加温した。次に、チタン粒子に対してFeO換算で10質量%となる量の塩化鉄水溶液を添加し、水酸化ナトリウム水溶液でpH8.5に調整した後、30分間攪拌しながら保持した後、ろ過するとともにろ材上の残渣を水洗することによって洗浄ケーキを得た。次に、この洗浄ケーキを120℃で乾燥した後、メディア式微粉砕機で粉砕した。最後に、得られた粉体40gを小型ミキサーへ投入し、イソブチルトリメトキシシラン10gを添加して15分混合した後、120℃で再乾燥することによって、無機外添剤6を作製した。
【0423】
<<無機外添剤7の作製>>
まず、液相法で製造されたシリカ粒子(東ソーシリカ製 ニップシールSP-200B ET比表面積200m2/g)100gを2Lの水に分散し、85℃に加温した。次に、シリカ粒子に対してAl2O3換算で10質量%となる量の塩化アルミニウム水溶液を添加し、水酸化ナトリウム水溶液でpH5.5に調整した後、30分間攪拌しながら保持した後、ろ過するとともにろ材上の残渣を水洗することによって洗浄ケーキを得た。次に、この洗浄ケーキを120℃で乾燥した後、メディア式微粉砕機で粉砕した。最後に、得られた粉体40gを小型ミキサーへ投入し、デシルトリメトキシシラン10gを添加して15分混合した後、120℃で再乾燥することによって、無機外添剤7を作製した。
【0424】
<<無機外添剤8の作製>>
まず、酸化チタン100gを2Lの水に分散し、85℃に加温した。次に、チタン粒子に対してAl2O3換算換算で10質量%となる量の塩化アルミニウム水溶液を添加し、水酸化ナトリウム水溶液でpH9.0に調整した後、30分間攪拌しながら保持した後、ろ過するとともにろ材上の残渣を水洗することによって洗浄ケーキを得た。次に、この洗浄ケーキを120℃で乾燥した後、メディア式微粉砕機で粉砕し、無機外添剤8を作製した。
【0425】
<<無機外添剤9の作製>>
まず、液相法で製造されたシリカ粒子(東ソーシリカ製 ニップシールSP-200B ET比表面積200m2/g)100gを小型ミキサーへ投入し、イソブチルトリメトキシシラン10gを添加して15分混合した後、120℃で再乾燥することによって、外添剤9を作製した。
【0426】
使用した無機外添剤の詳細を表1に示す。
【0427】
【0428】
(実施例1)
<複合樹脂粒子(C-1)の製造>
ビーカーにイオン交換水165質量部、微粒子分散液(W-1)5質量部と微粒子分散液(W0-1)10質量部の混合液、カルボキシメチルセルロースナトリウム1質量部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(三洋化成工業株式会社製、エレミノールMON-7)26質量部、及び酢酸エチル15質量部を投入し、混合させた分散液を得た。
次いで、別のビーカーに非結晶性ポリエステル樹脂(b-1)71質量部、[着色分散液]40質量部、[離型剤分散液]39質量部、及び酢酸エチル54質量部を投入し、混合した後、更に反応性プレポリマー(α2b-1)溶液18質量部、及び硬化剤(β)としてイソホロンジアミン0.3質量部を投入して混合し、混合液を得た。
この混合液を先ほど作製した分散液に全量加えて、TKオートホモミキサーで2分間撹拌して混合液を得た。
次いで、この混合液を撹拌機、及び温度計を備えた反応容器に移し、50℃で濃度が0.5質量%以下となるまで酢酸エチルを留去して複合化工程を行い、複合樹脂粒子の水性分散体を得た。
【0429】
複合樹脂粒子の水性分散体は、樹脂微粒子(A-1)を含む微粒子が、非結晶性ポリエステル樹脂(b-1)と、反応性プレポリマー(α2b-1)及びイソホロンジアミンの反応物からなる非結晶性ポリウレタン樹脂(b-2)とを含む樹脂粒子(B'-1)に付着した複合樹脂粒子である。
複合樹脂粒子の水性分散体に含まれる樹脂粒子が、樹脂微粒子(A-1)を含む微粒子が樹脂粒子(B'-1)に付着した複合樹脂粒子(C-1)であることは、複合樹脂粒子の水性分散体に含まれる粒子の形状を走査型電子顕微鏡(SU-8230、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で拡大観察することにより確認した。
【0430】
次に、複合樹脂粒子の水性分散体のpHが12になるように水酸化ナトリウムを添加し、スリーワンモーターで1時間撹拌した。その後、遠心濾過し、再びイオン交換水を添加しリスラリーにした。再度、遠心濾過し、リスラリーするという工程を複数回繰り返した後、メンブランフィルターを用いて吸引濾過(以下、「洗浄・濾別工程」という)し、40℃で18時間乾燥を行い、揮発分を0.5質量%以下とすることで、[トナー母体粒子1]が得られた。
【0431】
[トナー母体粒子1]に対し、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて、トナー母体粒子100質量部、平均粒径50nmの疎水性シリカ粒子を1.5質量部、無機外添剤1を1.0質量部混合し、[トナー1]を得た。
【0432】
(実施例2)
実施例1において、微粒子分散液(W-1)5質量部と微粒子分散液(W0-1)10質量部の混合液15質量部を、微粒子分散液(W-1)7.5質量部と微粒子分散液(W0-1)7.5質量部の混合液15質量部へ変更し、[トナー母体粒子2]を得た。[トナー母体粒子2]に対し、実施例1において無機外添剤1を無機外添剤2へ変更して外添処理を行い[トナー2]を得た。[トナー2]を用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価を実施した。
【0433】
(実施例3)
実施例1において、微粒子分散液(W-1)5質量部と微粒子分散液(W0-1)10質量部の混合液15質量部を、微粒子分散液(W-1)10質量部と微粒子分散液(W0-1)5質量部の混合液15質量部へ変更し、[トナー母体粒子3]を得た。[トナー母体粒子3]に対し、実施例1において無機外添剤1を無機外添剤3へ変更して外添処理を行い[トナー3]を得た。[トナー3]を用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価を実施した。
【0434】
(実施例4)
実施例3において、無機外添剤3を無機外添剤4へ変更して外添処理を行い、[トナー4]を得た。[トナー4]を用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価を実施した。
【0435】
(実施例5)
実施例3において、無機外添剤3を無機外添剤5へ変更して外添処理を行い、[トナー5]を得た。[トナー5]を用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価を実施した。
【0436】
(実施例6)
実施例3において、無機外添剤3を無機外添剤6へ変更して外添処理を行い、[トナー6]を得た。[トナー6]を用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価を実施した。
【0437】
(実施例7)
実施例3において、無機外添剤3を無機外添剤7へ変更して外添処理を行い、[トナー7]を得た。[トナー7]を用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価を実施した。
【0438】
(実施例8)
実施例3において、無機外添剤3を無機外添剤8へ変更して外添処理を行い、[トナー8]を得た。[トナー8]を用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価を実施した。
【0439】
(比較例1)
実施例3において、無機外添剤3を無機外添剤9へ変更して外添処理を行い、[トナー9]を得た。[トナー9]を用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価を実施した。
【0440】
(比較例2)
実施例1において、微粒子分散液(W-1)5質量部と微粒子分散液(W0-1)10質量部の混合液15質量部を、微粒子分散液(W-1)2.5質量部と微粒子分散液(W0-1)12.5質量部の混合液15質量部へ変更し、[トナー母体粒子4]を得た。[トナー母体粒子4]に対し、実施例1における無機外添剤1を無機外添剤2へ変更して外添処理を行い、[トナー10]を得た。[トナー10]を用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価を実施した。
【0441】
(比較例3)
実施例1において、微粒子分散液(W-1)5質量部と微粒子分散液(W0-1)10質量部の混合液15質量部を、微粒子分散液(W-1)11.25質量部と微粒子分散液(W0-1)3.75質量部の混合液15質量部へ変更し、[トナー母体粒子5]を得た。[トナー母体粒子4]に対し、実施例1における外添剤1を外添剤2へ変更して外添処理を行い[トナー11]を得た。[トナー11]を用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価を実施した。
【0442】
<キャリアの作製>
トルエン100質量部に、シリコーン樹脂(オルガノストレートシリコーン)100質量部、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン5質量部、及びカーボンブラック10質量部を添加し、ホモミキサーで20分間分散させて、樹脂層塗布液を調製した。流動床型コーティング装置を用いて、体積平均粒径50μmの球状マグネタイト1,000質量部の表面に前記樹脂層塗布液を塗布して、[キャリア]を作製した。
【0443】
<現像剤の作製>
ボールミルを用いて、各[トナー]5質量部と[キャリア]95質量部とを混合し、各[現像剤]を作製した。
【0444】
トナー母体粒子の表面における樹脂微粒子の被覆率は、以下の通り、トナー母体表面上の樹脂微粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、撮影された画像を画像処理ソフトを用いてトナー母体の面積に対する樹脂微粒子の面積比を算出することで行った。
【0445】
樹脂微粒子の観察は、超音波による外添剤の遊離処理で外添剤を極力除去して、トナー母体粒子に近い状態にして行った。
【0446】
<樹脂微粒子間の距離の測定>
-外添剤の遊離方法-
[1]100mlのスクリュー管に、界面活性剤を含有した5%水溶液(商品名ノイゲンET-165、第一工業製薬株式会社製)を50ml添加し、その混合液にトナー3gを加えて静かに上下左右に動かした。その後、トナーが分散溶液になじむようにボールミルで30min撹拌した。
[2]その後、超音波ホモジナイザー(商品名homogenizer、形式VCX750、CV33、SONICS&MATERIALS有限会社製)を用いて、出力40Wに設定し、60分間超音波エネルギーを付与した。
-超音波条件-
・振動時間:60分連続
・振幅:40W
・振動開始温度:23±1.5℃
・振動中温度:23±1.5℃
[3](1)分散液をろ紙(商品名定性ろ紙(No.2、110mm)、アドバンテック東洋株式会社製)で吸引ろ過し、再度イオン交換水で2回洗浄しろ過し、遊離した添加剤を除去後、トナー粒子を乾燥した。
(2)(1)で得られたトナー粒子を、以下の観察条件で走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。まず、反射電子像を観察することで、Siを含有する外添剤やフィラーを検出する。
(3)(1)の画像を画像処理ソフト(ImageJ)で二値化し、前記外添剤とフィラーを排除した。
【0447】
次に、(1)と同じ位置で二次電子画像を観察した。樹脂微粒子は反射電子画像では観察されず、二次電子画像でのみ観察されるため、(3)で得られた画像と照合し、残存外添剤とフィラー以外の部分((3)で排除した以外の部分)に存在する微粒子を樹脂微粒子とし観察した。
【0448】
[撮影条件]
・走査型電子顕微鏡:SU-8230(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)
・撮影倍率:35000倍
・撮影像:SE(L):二次電子、BSE(反射電子)
・加速電圧:2.0kV
・加速電流:1.0μA
・プローブ電流:Normal
・焦点モード:UHR
・WD:8.0mm
【0449】
次に、トナー1~トナー8、及びトナー9~11及び現像剤を用いて、以下のようにして、低温定着性、耐熱保存性、添加剤の耐フィルミング性及び帯電安定性を評価した。結果を表2に示す。
【0450】
<低温定着性>
各トナーを紙面上に0.8mg/cm2となるように均一に載せた。このとき、粉体を紙面に載せる方法は、熱定着機を外したプリンタを用いた。上記の重量密度で粉体を均一に載せることができれば他の方法を用いてもよい。粉体を載せた紙を加圧ローラに定着速度(加熱ローラ周速)213mm/sec、定着圧力(加圧ローラ圧)10kg/cm2の条件で通した時のコールドオフセットの発生温度(MFT)を測定し、下記のコールドオフセット評価基準に基づいて低温定着性を評価した。コールドオフセットの発生温度が低いほど、低温定着性に優れることを意味する。
[コールドオフセット評価基準]
A:定着下限温度が130℃以下である。
B:定着下限温度が130℃より大きく135℃以下である。
C:定着下限温度が135℃より大きく140℃以下である。
D:定着下限温度が140℃より大きいである。
【0451】
<耐熱保存性>
各トナーを50℃で8時間保管した後、42メッシュの篩で2分間篩い、金網上の残存率を測定し、下記の評価基準で耐熱保存性を評価した。なお、耐熱保存性が良好なトナーほど、残存率は小さいことを意味する。
[評価基準]
A:残存率が5%未満である。
B:残存率が5%以上15%未満である。
C:残存率が15%以上30%未満である。
D:残存率が30%以上である。
【0452】
<添加剤(無機微粒子)の耐フィルミング性>
画像形成装置(imageo MP C5002、株式会社リコー製)を用い、実験室環境27℃、90%RHで、画像面積率30%の縦帯チャートを3プリント/ジョブで、5,000枚(A4サイズ横)を出力した。次いで、白紙を3プリント/ジョブで、5,000枚(A4サイズ横)を出力した後、ハーフトーン画像を1枚印刷した後の感光体を目視で観察し、下記の評価基準で添加剤の耐フィルミング性を評価した。
[評価基準]
A:感光体に不具合なし。品質に何ら問題ない。
B:うっすら印字方向にフィルミングがあるが、画像では品質上問題ないレベルであるため問題ない。
C:感光体にフィルミングがはっきりと発生し、画像品質にも問題があるレベルである。
【0453】
<帯電安定性>
各現像剤を用いて、画像面積率12%の文字画像パターンを用いて、連続100,000 枚出力する耐久試験を実施し、そのときの帯電量の変化を評価した。現像スリーブ上から現像剤を少量採取し、ブローオフ法により帯電量変化を求め、下記基準により評価した。なお、「C」以上が実使用可能レベルである。
[評価基準]
A:帯電量の変化が3μC/g未満
B:帯電量の変化が3μC/g以上6μC/g未満
C:帯電量の変化が6μC/g以上10μC/g未満
D:帯電量の変化が10μC/g以上
【0454】
[総合評価]
総合評価は、下記評価基準により評価した。全ての評価項目がAであるものをA、全ての評価項目でAが1つ~3つで、残りがBであるものをB、全ての評価項目でBが2つ以下で、残りがCであるものをC、全ての評価項目でDであるものをDとして判定した。
(評価基準)
A:非常に優れている
B:優れている
C:従来より若干優れている
D:実用に耐えない
【0455】
【0456】
表2の通り、実施例1~8では、低温定着性、耐熱保存性、添加剤の耐フィルミング性及び帯電安定性の何れも優れた結果が得られた。トナー母体表面の樹脂微粒子の被覆率、無機外添剤の表面処理剤を制御することで、低温定着性、耐熱保存性及び帯電安定性を高く維持すると共に、適切な無機外添剤の遊離量に制御することができ、添加剤のフィルミング性を改善できたといえる。
【0457】
これに対し、比較例1では、無機外添剤を金属元素の水酸化物で被覆していないため帯電安定性が低くなると共に、水酸基と樹脂微粒子との相互作用が生じないため外添剤の遊離量が増加して、添加剤の耐フィルミング性が悪化したといえる。
【0458】
比較例2では、樹脂微粒子の被覆率が高いため、トナー母体粒子の表面が硬くなり、無機外添剤を含む添加剤がトナー母体表面へ適切な混合強度で配置することができなかった。そのため、無機外添剤の遊離量が増加して、添加剤の耐フィルミング性が悪化すると共に、無機外添剤の混合強度が弱く、帯電安定性が悪化したといえる。
【0459】
比較例3では、樹脂微粒子の被覆率が低かったため、トナー母体粒子の表面が柔らかく、無機外添剤を含む添加剤がトナー母体表面に埋没したといえる。そのため、無機外添剤が低温定着性を阻害し、スペーサーとしての効果が減少し、耐熱保存性が悪化したといえる。
【0460】
よって、実施例1~8のトナーは、比較例1~3のトナーと異なり、有機樹脂微粒子の被覆率を30%~70%とし、無機外添剤が金属元素の酸化物表面に金属元素の水酸化物を被覆することで、優れた低温定着性、耐熱保存性及び帯電安定性を有すると共に、クリーニング部材及び感光体の汚染を抑制でき、高品質なトナーを製造できるといえる。
【0461】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更等を行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。