(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128581
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】単結晶シリコンインゴットの製造設備及び単結晶シリコンインゴットの製造方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/06 20060101AFI20230907BHJP
C30B 15/00 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
C30B29/06 502Z
C30B15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033009
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】林田 寿男
(72)【発明者】
【氏名】横山 隆
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BA04
4G077CF10
4G077EG21
4G077PA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】排気管内に堆積した酸化物の燃焼を促進することのできる、単結晶シリコンインゴットの製造設備及び単結晶シリコンインゴットの製造方法を提供する。
【解決手段】製造装置2に接続される排気管路3と、排気管路3を通して製造装置2内に供給された不活性ガスを吸引する真空ポンプ4と、を備え、排気管路3は、製造装置2の排ガス口6に接続される第1の排気管3aと、第1の排気管3aと真空ポンプ4との間を連結する第2の排気管3bと、からなり、第1の排気管3aに接続され、第1の排気管3a内に空気を供給する、第1の空気供給部7と、第2の排気管3bに接続され、第2の排気管3b内に空気を供給する、第2の空気供給部9と、をさらに備える、単結晶シリコンインゴットの製造設備2と、排気管路3内を流れる不活性ガスに空気を供給して、排気管路3内の酸化物を燃焼させる、単結晶シリコンインゴットの製造方法とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶シリコンインゴットの製造装置に接続される排気管路と、
前記排気管路を通して前記単結晶シリコンインゴットの製造装置内に供給された不活性ガスを吸引する真空ポンプと、を備えた、単結晶シリコンインゴットの製造設備であって、
前記排気管路は、前記単結晶シリコンインゴットの製造装置の排ガス口に接続される第1の排気管と、前記第1の排気管と前記真空ポンプとの間を連結する第2の排気管と、からなり、
前記第1の排気管に接続され、前記第1の排気管内に空気を供給する、第1の空気供給部と、
前記第2の排気管に接続され、前記第2の排気管内に空気を供給する、第2の空気供給部と、を備えることを特徴とする、単結晶シリコンインゴットの製造設備。
【請求項2】
前記第2の排気管に、前記第1の排気管内の圧力を調整する圧力調整部が設けられ、
前記排ガス口側を前記排気管路の前方側、前記真空ポンプ側を前記排気管路の後方側とするとき、前記第2の空気供給部は、前記圧力調整部よりも後方側に接続されている、請求項1に記載の単結晶シリコンインゴットの製造設備。
【請求項3】
チョクラルスキー法による単結晶シリコンインゴットの製造方法であって、
石英ルツボ内に充填されたシリコン原料を加熱して溶融させる、原料溶融工程と、
種結晶を降下させて前記石英ルツボ内のシリコン融液に着液する、着液工程と、
前記石英ルツボ内のシリコン融液から単結晶シリコンインゴットを引き上げる、単結晶育成工程と、
育成した単結晶シリコンインゴットを冷却する、単結晶冷却工程と、を含み、
前記着液工程、前記単結晶育成工程、及び単結晶冷却工程のいずれか1つ以上の工程において、単結晶シリコンインゴットの製造装置に接続された排気管路内を流れる不活性ガスに、空気を供給して前記排気管路内の酸化物を燃焼させることを特徴とする、単結晶シリコンインゴットの製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の単結晶シリコンインゴットの製造設備を用いた、チョクラルスキー法による請求項3に記載の単結晶シリコンインゴットの製造方法であって、
前記着液工程、前記単結晶育成工程、及び単結晶冷却工程のいずれか1つ以上の工程において、前記第2の排気管内を流れる不活性ガスに、前記第2の空気供給部から空気を供給して、前記第2の排気管内の酸化物を燃焼させる、単結晶シリコンインゴットの製造方法。
【請求項5】
請求項2に記載の単結晶シリコンインゴットの製造設備を用いた、請求項4に記載の単結晶シリコンインゴットの製造方法であって、
前記第2の排気管内に空気を供給した際に生じる前記第1の排気管内の圧力を計測し、測定した圧力変動値に基づいて、前記圧力調整部により前記第1の排気管内の圧力を調整する、単結晶シリコンインゴットの製造方法。
【請求項6】
前記原料溶融工程、前記着液工程、前記単結晶育成工程、及び前記単結晶冷却工程を繰り返すことにより、同一の前記石英ルツボを用いて複数本の前記単結晶シリコンインゴットを製造する、マルチプリング法を行うものである、請求項3~5のいずれか一項に記載の単結晶シリコンインゴットの製造方法。
【請求項7】
複数本の前記単結晶シリコンインゴットを製造する際の、前記単結晶シリコンインゴットの1本の製造ごとに、前記第2の空気供給部により、前記第2の排気管の管内に空気を供給して、前記第2の排気管内の酸化物を燃焼させる、請求項6に記載の単結晶シリコンインゴットの製造方法。
【請求項8】
前記単結晶シリコンインゴットの前記単結晶冷却工程後、前記単結晶シリコンインゴットの製造装置のチャンバ内を常圧に戻す前に、前記第1の空気供給部により、前記第1の排気管の管内に空気を供給して、前記第1の排気管内の酸化物を燃焼させる、請求項3~7のいずれか一項に記載の単結晶シリコンインゴットの製造方法。
【請求項9】
前記単結晶シリコンインゴットの前記単結晶冷却工程後、前記単結晶シリコンインゴットの製造装置のチャンバ内を常圧に戻す前に、前記第1の空気供給部及び前記第2の空気供給部により、前記第1の排気管及び前記第2の排気管の管内に空気を供給して、前記第1の排気管及び前記第2の排気管内の酸化物を燃焼させる、請求項3~7のいずれか一項に記載の単結晶シリコンインゴットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶シリコンインゴットの製造設備及び単結晶シリコンインゴットの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
単結晶シリコンインゴットの代表的な製造方法として、チョクラルスキー法(CZ法)を挙げることができる。CZ法による単結晶シリコンインゴットの製造では、石英ルツボ内に多結晶シリコンなどのシリコン原料を充填し、不活性ガス雰囲気下の単結晶シリコンインゴットの製造装置のチャンバ内でシリコン原料を加熱し溶融させてシリコン融液とする。次に、種結晶を石英ルツボ内のシリコン融液に接触させて、種結晶及び石英ルツボを所定の方向に回転させながら種結晶を徐々に上昇させることにより、種結晶の下方に単結晶シリコンインゴットを育成する。単結晶シリコンインゴットの製造装置にはチャンバ内に供給された不活性ガスを排気する排気設備が接続され、単結晶シリコンインゴットの製造装置の下部に排ガス口が設けられ、不活性ガスは、排ガス口から排気管路を通して、真空ポンプで吸引し、排出される。
【0003】
上記のCZ法の応用として、マルチプリング法が知られている。マルチプリング法では、1本目の単結晶シリコンインゴットを引き上げた後、同一の石英ルツボ内にシリコン原料を追加充填して溶融させ、得られたシリコン融液から2本目の単結晶シリコンインゴットの引き上げを行う。このような原料充填工程と引き上げ工程とを繰り返すことにより、1つの石英ルツボから複数本の単結晶シリコンインゴットを製造する。マルチプリング法によれば、単結晶シリコンインゴット1本当たりの石英ルツボの原価コストを低減することができる。また、チャンバを解体して石英ルツボを交換する頻度を低減できるため、操業効率を向上させることができる。
【0004】
CZ法による単結晶シリコンインゴットの引き上げ時において、石英ルツボの内面からシリコン融液中に酸素が溶け出し、これがシリコン融液と反応して酸化物(SiOx)が生成され、シリコン融液表面から蒸発する。これらの酸化物は、単結晶シリコンインゴットの製造装置内の不活性ガスと一緒に排気管路を流れ、ダストチャンバに集塵されるが、排ガス口からダストチャンバまでの排気管路は長いことから、酸化物は排気管路内を流れる過程において冷却されて凝結し、時間経過とともに排気管路に付着して堆積する。このことから、排気管路の前方の排ガス口側ではなく、後方のダストチャンバ側で酸化物の堆積量が多い傾向にある。
【0005】
CZ法においては、1本当たりの製造時間が長いことから、排気管内に酸化物が堆積していくことが問題となる。すなわち、排気管内の酸化物の堆積量が多くなると、堆積した酸化物が排気管から単結晶シリコンインゴットの製造装置に逆流して単結晶シリコンインゴットが有転位化したり、酸化物付着により排気管内の圧力が変動して温度や圧力が急激に上昇し、酸化物が発火したりするおそれがある。
【0006】
これに対し、単結晶シリコンインゴットの引き上げ完了後に、排気管内に空気を供給して、排気管内に堆積した酸化物を燃焼させることが提案されている(例えば、特許文献1、2)。これによれば、単結晶シリコンインゴットの引き上げ完了後、排気管内に堆積した酸化物を減少させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001-097797号公報
【特許文献2】特開2002-316889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、単結晶シリコンインゴットの引き上げ中に有転位化し、引き上げた単結晶シリコンインゴットを再溶融後に再引き上げを実施する場合や、マルチプリング法により1つの石英ルツボから複数の単結晶シリコンインゴットを引き上げる場合は、引き上げ完了までの運転時間が増大することになる。
運転時間の増大に伴い排気管内に堆積する酸化物の堆積量も増加するため、特許文献1、2で記載されるような、単結晶シリコンインゴットの引き上げ完了後に酸化物の燃焼操作を行っても、引き上げ中には実施することができない。したがって、単結晶シリコンインゴット引き上げ完了後までに排気管内の酸化物が充分に燃焼できず、排気管の圧力が変化したり、急激に発火したりするおそれがあった。
【0009】
また、単結晶シリコンインゴットの製造装置の下部の排ガス口からダストチャンバまでの排気管路は長いことから、単結晶シリコンインゴットの引き上げを完了後、単結晶シリコンインゴットの製造装置内にあるヒーターの電源をオフした後に空気供給して燃焼操作を行った場合、単結晶シリコンインゴットの製造装置から距離の近い排気管内の酸化物は燃焼されるが、距離の離れた真空ポンプに近い排気管内の酸化物は充分に燃焼できていないケースが散見された。これは、ヒーター電源をオフした直後、単結晶シリコンインゴットの製造装置から近い排気管側では管内の温度が比較的高温であることから酸化物の燃焼反応が起こり易い一方、距離の離れたダストチャンバに近い排気管側では管内の温度は低いため、酸化物の燃焼反応が起こり難くなることが一因と考えられる。このように、引き上げが完了してヒーター電源をオフした後に行う空気供給による燃焼操作では排気管路の全長に亘って酸化物を充分に燃焼させることができないことが明らかとなった。
【0010】
そこで、本発明は、排気管内に堆積した酸化物の燃焼を促進することのできる、単結晶シリコンインゴットの製造設備及び単結晶シリコンインゴットの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、単結晶シリコンインゴットの引き上げ中の所定の工程において、排気管路の所定の部位に空気を供給することで、上記の課題を有利に解決することができることを想起した。なお、本発明において、「空気」とは、地球を取りまく気体の総体であって、酸素を含む、窒素、水素、アルゴン、二酸化炭素、オゾン、ネオン、ヘリウム、水蒸気などを成分とするものを意味する。
【0012】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)単結晶シリコンインゴットの製造装置に接続される排気管路と、
前記排気管路を通して前記単結晶シリコンインゴットの製造装置内に供給された不活性ガスを吸引する真空ポンプと、を備えた、単結晶シリコンインゴットの製造設備であって、
前記排気管路は、前記単結晶シリコンインゴットの製造装置の排ガス口に接続される第1の排気管と、前記第1の排気管と前記真空ポンプとの間を連結する第2の排気管と、からなり、
前記第1の排気管に接続され、前記第1の排気管内に空気を供給する、第1の空気供給部と、
前記第2の排気管に接続され、前記第2の排気管内に空気を供給する、第2の空気供給部と、を備えることを特徴とする、単結晶シリコンインゴットの製造設備。
【0013】
(2)前記第2の排気管に、前記第1の排気管内の圧力を調整する圧力調整部が設けられ、
前記排ガス口側を前記排気管路の前方側、前記真空ポンプ側を前記排気管路の後方側とするとき、前記第2の空気供給部は、前記圧力調整部よりも後方側に接続されている、上記(1)に記載の単結晶シリコンインゴットの製造設備。
なお、「前方側」には、第2の排気管内のみならず、第1の排気管内も含まれる。
【0014】
(3)チョクラルスキー法による単結晶シリコンインゴットの製造方法であって、
石英ルツボ内に充填されたシリコン原料を加熱して溶融させる、原料溶融工程と、
種結晶を降下させて前記石英ルツボ内のシリコン融液に着液する、着液工程と、
前記石英ルツボ内のシリコン融液から単結晶シリコンインゴットを引き上げる、単結晶育成工程と、
育成した単結晶シリコンインゴットを冷却する、単結晶冷却工程と、を含み、
前記着液工程、前記単結晶育成工程、及び単結晶冷却工程のいずれか1つ以上の工程において、単結晶シリコンインゴットの製造装置に接続された排気管路内を流れる不活性ガスに、空気を供給して前記排気管路内の酸化物を燃焼させることを特徴とする、単結晶シリコンインゴットの製造方法。
【0015】
(4)上記(1)又は(2)に記載の単結晶シリコンインゴットの製造設備を用いた、チョクラルスキー法による上記(3)に記載の単結晶シリコンインゴットの製造方法であって、
前記着液工程、前記単結晶育成工程、及び単結晶冷却工程のいずれか1つ以上の工程において、前記第2の排気管内を流れる不活性ガスに、前記第2の空気供給部から空気を供給して、前記第2の排気管内の酸化物を燃焼させる、単結晶シリコンインゴットの製造方法。
【0016】
(5)上記(2)に記載の単結晶シリコンインゴットの製造設備を用いた、上記(4)に記載の単結晶シリコンインゴットの製造方法であって、
前記第2の排気管内に空気を供給した際に生じる前記第1の排気管内の圧力を計測し、測定した圧力変動値に基づいて、前記圧力調整部により前記第1の排気管内の圧力を調整する、単結晶シリコンインゴットの製造方法。
【0017】
(6)前記原料溶融工程、前記着液工程、前記単結晶育成工程、及び前記単結晶冷却工程を繰り返すことにより、同一の前記石英ルツボを用いて複数本の前記単結晶シリコンインゴットを製造する、マルチプリング法を行うものである、上記(3)~(5)のいずれか1つに記載の単結晶シリコンインゴットの製造方法。
【0018】
(7)複数本の前記単結晶シリコンインゴットを製造する際の、前記単結晶シリコンインゴットの1本の製造ごとに、前記第2の空気供給部により、前記第2の排気管の管内に空気を供給して、前記第2の排気管内の酸化物を燃焼させる、上記(6)に記載の単結晶シリコンインゴットの製造方法。
【0019】
(8)前記単結晶シリコンインゴットの前記単結晶冷却工程後、前記単結晶シリコンインゴットの製造装置のチャンバ内を常圧に戻す前に、前記第1の空気供給部により、前記第1の排気管の管内に空気を供給して、前記第1の排気管内の酸化物を燃焼させる、上記(3)~(7)のいずれか1つに記載の単結晶シリコンインゴットの製造方法。
【0020】
(9)前記単結晶シリコンインゴットの前記単結晶冷却工程後、前記単結晶シリコンインゴットの製造装置のチャンバ内を常圧に戻す前に、前記第1の空気供給部及び前記第2の空気供給部により、前記第1の排気管及び前記第2の排気管の管内に空気を供給して、前記第1の排気管及び前記第2の排気管内の酸化物を燃焼させる、上記(3)~(7)のいずれか1つに記載の単結晶シリコンインゴットの製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、排気管内に堆積した酸化物の燃焼を促進することのできる、単結晶シリコンインゴットの製造設備及び単結晶シリコンインゴットの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる単結晶シリコンインゴットの製造設備を示す概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかる単結晶シリコンインゴットの製造方法のフローチャートである。
【
図3】比較例1で用いた単結晶シリコンインゴットの製造設備を示す概略図である。
【
図4】比較例2及び3で用いた単結晶シリコンインゴットの製造設備を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に例示説明する。
【0024】
<単結晶シリコンインゴットの製造設備>
図1は、本発明の一実施形態にかかる単結晶シリコンインゴットの製造設備を示す概略図である。
図1に示すように、本実施形態の単結晶シリコンインゴットの製造設備1は、 単結晶シリコンインゴットの製造装置2に接続される排気管路3と、排気管路3を通して単結晶インゴットの製造装置2内に供給された不活性ガスを吸引する真空ポンプ4と、酸化物を集塵するダストチャンバ11と、を備えている。単結晶シリコンインゴットの製造装置2は、クリーンルームC.R.内の床F.L.の直上に、排気管路3は、床F.L.の下方に、真空ポンプ4及びダストチャンバ11は、クリーンルームC.R.の外部にあるポンプ室P.R.に、それぞれ配置されている。
【0025】
単結晶シリコンインゴットの製造装置2は、メインチャンバ2aと、メインチャンバ2aの上端に接続されたプルチャンバ2bとを有する。図示は省略しているが、メインチャンバ2a内にはシリコン融液が貯留される石英ルツボや、この石英ルツボを包囲し上記シリコン融液を加熱するヒーター等が収容される。また、プルチャンバ2bの上端には単結晶シリコンインゴットを引き上げる引き上げ手段2cが設けられている。真空ポンプ4は、排気管路3を通してメインチャンバ2aの下面に接続されている。また、プルチャンバ2bには不活性ガス供給管路5aが接続されている。不活性ガス供給管路5aは、プルチャンバ2bの上面及び下面にスイッチバルブ5b、5cを介して接続され、また、不活性ガス供給管路5aは、不活性ガス(本例ではArガス)が貯留されるタンク(図示せず)にも接続される。スイッチバルブ5b、5cは、例えば電動式のものであり、Arガスの流量をそれぞれ調整することにより、メインチャンバ2a内の圧力を制御することができるように構成されている。
【0026】
図1に示すように、排気管路3は、単結晶インゴットの製造装置2の排ガス口6に接続される第1の排気管3aと、第1の排気管3aと真空ポンプ4との間を連結する第2の排気管3bと、からなる。第1の排気管3aは、一端がメインチャンバ2aの下面に接続され他端が合流する一対の第1の分岐管路3a1及び第2の分岐管路3a2と、一端が第1の分岐管路3a1及び第2の分岐管路3a2に接続され他端がフラッパバルブ13に接続される第3の分岐管路3a3と、を有する。排気管路3内に堆積した酸化物が燃焼して排気管路3内の圧力が急激に上昇した際に、フラッパバルブ13を動作させて排気管路3内の圧力を開放する。
【0027】
この単結晶シリコンインゴットの製造設備1は、第1の排気管3aに接続され、第1の排気管3a内に空気を供給する、第1の空気供給部7を備えている。第1の空気供給部7は、本例では、スイッチバルブである。スイッチバルブは、例えば2ポート2位置切換の電磁弁とすることができ、オンするとこのスイッチバルブが開き、オフするとこのスイッチバルブが閉じるように構成されている。なお、本例では、第1の空気供給部7の上記の動作は、制御部12により制御可能である。制御部12としては、任意の既知のコントローラを用いることができる。
【0028】
この単結晶シリコンインゴットの製造設備1は、第2の排気管3bに接続され、第2の排気管3b内に空気を供給する、第2の空気供給部9をさらに備えている。第2の空気供給部9は、本例では、コントロールバルブである。本例では、第2の空気供給部9の動作は、上記の制御部12により制御可能である。第2の空気供給部9は、空気の供給量や供給のタイミングの制御性に高いものであることが好ましく、一例としては電磁弁だけに限らずボールバルブや流量計を用いたものとすることができる。
空気供給速度が速すぎると排気管路3内に粉塵雲が生じやすく、酸化物の急激燃焼による粉塵爆発が起こりやすいと考えられる。第2の空気供給部9は、真空電磁弁のみなので空気供給を一気に行うため粉塵爆発を起こすおそれがある。そこで、サイレンサとスローOPEN動作(10秒間かけて開)可能なボールバルブを追加し、空気供給を一気に起こさない構成とすることが好ましい。他にもArガス流量と空気供給量との合計の排気量が多すぎると、真空ポンプ4の排気能力(例えば, 炉内圧力30Torr時の排気能力は592L/min)を超えた場合、ポンプ過負荷となりポンプ停止やポンプが故障するおそれがある。そこで、真空電磁弁の次に流量調整機能付き流量計を追加し、空気供給量が200L/minを超えない構成とすることも好ましい。
【0029】
本実施形態の単結晶シリコンインゴットの製造設備1では、第2の排気管3bに、第1の排気管3a内の圧力を調整する圧力調整部8を備えている。圧力調整部8は、本例では、コントロールバルブであるが、バタフライバルブなどを用いることが望ましい。
圧力調整部8を設けることにより、単結晶シリコンインゴットの引き上げ中に第2の空気供給部9より第2の排気管3b内に空気供給した際に生じる、第1の排気管3a内の圧力変動を抑制することができる。結果、メインチャンバ2a内の圧力変動を防止でき、メインチャンバ2a内への排ガスの逆流などを生じることなく、単結晶シリコンインゴットの引き上げ中に第2の排気管3b内に堆積する酸化物の燃焼操作を行うことができる。
【0030】
本例では、排ガス口6側を排気管路3の前方側、真空ポンプ4側を排気管路3の後方側とするとき、第2の空気供給部9は、圧力調整部8よりも後方側に接続されている。例えば、本例では、圧力調整部8は、第2の排気管3bの先端側(前方側)に設置され、第2の空気供給部9は、圧力調整部8の直後に設けられている。より具体的には、第2の空気供給部9により酸化物が燃焼可能な距離とし、この距離は適宜設定できるものである。さらに具体的には、圧力調整部8から第2の空気供給部9までの距離(排気管路3の経路に沿った距離)は、圧力調整部8から真空ポンプ4までの距離の50%以下とすることが好ましい。真空ポンプ4側に近いほど排気管路3内の温度が低く酸化物の温度も低いため、酸化物を燃焼させるための着火現象そのものが起き難いという傾向があるが、空気供給位置を排気管路3内の温度が比較的高い圧力調整部8に近い位置に配置させることで、空気供給による酸化物に対する着火性が向上し、第2の排気管3b内に堆積する酸化物を燃焼させることができる。
【0031】
本例では、圧力調整部8の直前には、第1の排気管3aの圧力を計測することでチャンバ2a内の圧力を計測する、圧力計10が配置されている。圧力計10の計測値は制御部12に送信され、そこから得られた第1の排気管3aの圧力変動に基づき、圧力調整部8はコントロールされている。
【0032】
真空ポンプ4としては、水封式ポンプ及びメカニカルブースタを組合せたもの、油回転ポンプ、あるいはドライ真空ポンプ等が用いられる。本例では、真空ポンプ4の直前に、ダストチャンバ11が設けられており、サイクロン14によって吸引された不活性ガスから酸化物を分離し、酸化物をこのダストチャンバ11に集めることができる。
【0033】
<単結晶シリコンインゴットの製造方法>
図2は、本発明の一実施形態にかかる単結晶シリコンインゴットの製造方法のフローチャートである。
図2に示すように、本実施形態の単結晶シリコンインゴットの製造方法では、まず、メインチャンバ2a内に位置する石英ルツボ内に多結晶シリコンナゲット等のシリコン原料を充填する(ステップS101:原料充填工程)。
【0034】
次いで、メインチャンバ2a内の雰囲気を排出してメインチャンバ2aを真空にする(ステップS102:チャンバ内の真空工程)。メインチャンバ2a内の雰囲気を排出するに際しては、圧力調整部8を全開放する。
【0035】
次いで、石英ルツボ内に充填されたシリコン原料を加熱して溶融させる(ステップS103:原料溶融工程)。具体的には、不活性ガスのArを流しながら石英ルツボ内のシリコン原料をヒーターで加熱し溶融させて、石英ルツボ内にシリコン融液を形成する。その後、石英ルツボを引き上げ開始位置まで上昇させる。
【0036】
次いで、種結晶を降下させて石英ルツボ内のシリコン融液に着液する(ステップS104:着液工程)。例えば、ワイヤ昇降機構等を用いて引き上げワイヤを下降させることにより行うことができる。
【0037】
次いで、石英ルツボ内のシリコン融液から単結晶シリコンインゴットを引き上げる(ステップS105:単結晶育成工程)。具体的には、石英ルツボ及び引き上げワイヤを所定の方向に回転させながら、引き上げワイヤを上方に引き上げ、種結晶の下方に単結晶シリコンインゴットを育成する。なお、インゴットの育成が進行するにつれて、シリコン融液の量は減少するが、石英ルツボを上昇させて、シリコン融液面のレベルを維持する。
【0038】
図2に示すように、単結晶育成工程(ステップS105)は、以下の工程を含む。単結晶育成工程では、まず、単結晶シリコンインゴットを無転位化するためダッシュネック法によるシード絞り(ネッキング)を行い、ネッキング部を形成する(ステップS105-1:ネッキング部育成工程)。次いで、必要な直径のインゴットを得るためにショルダー部を育成する(ステップS105-2:ショルダー部育成工程)。次いで、単結晶シリコンインゴットが所望の直径になったところで直径を一定にしてボディ部を育成する(ステップS105-3:ボディ部育成工程)。次いで、ボディ部を所定の長さまで育成した後、無転位の状態で単結晶シリコンインゴットをシリコン融液から切り離すためにテイル絞りを行い、テイル部を形成する(ステップS105-4:テイル部育成工程)。
【0039】
次いで、育成した単結晶シリコンインゴットを冷却する(ステップS106:単結晶冷却工程)。例えば、単結晶シリコンインゴットを、バルブが閉となったプルチャンバ2b内で、好ましくは500℃以下の取り出し温度になるまで放置し、冷却する。
【0040】
本実施形態は、原料溶融工程(ステップS103)、着液工程(ステップS104)、単結晶育成工程(ステップS105)、及び単結晶冷却工程(ステップS106)を繰り返すことにより、同一の石英ルツボを用いて複数本の単結晶シリコンインゴットを製造する、マルチプリング法を行うものである。ステップS107においては、(例えば単結晶シリコンインゴットの製造予定本数に基づいて)次の引き上げを行うか否かを判断する。
【0041】
次の引き上げを行う場合には、プルチャンバ2b内を常圧に戻し(ステップS108)、単結晶シリコンインゴットを取り出し(ステップS109)、次の単結晶シリコンインゴットを得るためにステップS101に戻って次の単結晶シリコンインゴットの製造を行う。
【0042】
一方で、次の引き上げを行わない場合には、まず、ヒーターの電源をオフにする(ステップS110)。そして、メインチャンバ2a及びプルチャンバ2bを常圧に戻し(ステップS112)、単結晶シリコンインゴットを取り出して(ステップS113)、製造を終了する。ここで、本実施形態の方法は、単結晶シリコンインゴットの単結晶冷却工程(ステップS106)後、単結晶シリコンインゴットの製造装置2のチャンバ内を常圧に戻す前に(ステップS112に先立って)、第1の空気供給部7、あるいは第1の空気供給部7及び第2の空気供給部9により、第1の排気管3a、あるいは第1の排気管3a及び第2の排気管3bの管内にそれぞれ空気を供給して、第1の排気管3a、あるいは第1の排気管3a及び第2の排気管3b内の酸化物を燃焼させる、空気供給(ステップS111)をさらに含む。
【0043】
本実施形態では、着液工程(ステップS104)、単結晶育成工程(ステップS105)、及び単結晶冷却工程(ステップS106)のいずれか1つ以上の工程において、排気管路3内(本例では第2の排気管3b内)を流れる不活性ガスに、(本例では第2の空気供給部9から)空気を供給して、排気管路3内(本例では第2の排気管3b内)の酸化物を燃焼させる。排気管路3に堆積する酸化物の原因である、シリコン融液表面から蒸発するSiOxが、メインチャンバ2a内の温度がより高温となるシリコン原料の溶融時に多量発生する。このため、原料溶融工程(ステップS103)以降に排気管路3(本例では第2の排気管3b内)の燃焼操作を実施することが有効であり、着液工程(ステップS104)以降の工程で実施することが望ましい。特に、単結晶冷却工程(ステップS106)で燃焼操作を実施することが望ましく、これにより、仮に何らかのトラブルにより酸化物の燃焼操作中に排気管路3内(本例では第2の排気管3b内)からメインチャンバ2a内にSiOxが逆流するようなことが生じたとしても、単結晶シリコンインゴットの育成は終了しているため、育成した単結晶シリコンインゴットに有転位化が発生することがない。
【0044】
以下、本実施形態の単結晶シリコンインゴットの製造設備及び本実施形態の単結晶シリコンインゴットの製造方法の作用効果について、それぞれ説明する。
【0045】
本実施形態の単結晶シリコンインゴットの製造設備1は、第1の排気管3aに接続され、第1の排気管3a内に空気を供給する、第1の空気供給部7のみならず、第2の排気管3bに接続され、第2の排気管3b内に空気を供給する、第2の空気供給部9を備えている。この構成によれば、第1の排気管3aと第2の排気管3bのそれぞれに独立して空気供給することができ、引き上げ中に第2の排気管3bのみへの空気供給が可能となる。これにより、上記の単結晶シリコンインゴットの製造方法の実施形態で説明した、空気供給を行って、第2の排気管3b内の酸化物を引き上げ中に燃焼することができ、引き上げ中の酸化物の急激な燃焼や圧力の急激な上昇を防止することができる。しかも、引き上げ中に酸化物の燃焼操作を行うことから、引き上げ完了してヒーター電源をオフした後に行う酸化物の燃焼操作に比べて、第2の排気管3b内にはより高温のArガスが流れることになり、酸化物の燃焼効果がより高まり、真空ポンプ4側の第2の排気管3b内に堆積する酸化物を充分に燃焼することができる。また、第2の排気管3bに、第1の排気管3a内の圧力を調整する圧力調整部8が設けられ、第2の空気供給部9は、圧力調整部8よりも後方側に接続されていることにより、第2の排気管3b内に空気を供給した際に生じる第1の排気管3a内の圧力変動を解消させることができ、その結果、メインチャンバ2a内への排ガスの逆流による汚染を回避することができる。
【0046】
また、本実施形態の単結晶シリコンインゴットの製造方法は、着液工程(ステップS104)、単結晶育成工程(ステップS105)、及び単結晶冷却工程(ステップS106)のいずれか1つ以上の工程において、排気管路3内(本例では第2の排気管3b内)を流れる不活性ガスに、(本例では第2の空気供給部9から)空気を供給して、排気管路3内(本例では第2の排気管3b内)の酸化物を燃焼させるものである。これにより、排気管路3内(本例では第2の排気管3b内)の酸化物を引き上げ中に燃焼することができる。従って、単結晶シリコンインゴット引き上げ中の酸化物の急激な燃焼や圧力の急激な上昇を防止することができ、排気管内に堆積した酸化物の燃焼を促進することができる。また、排気管路3内(本例では第2の排気管3b内)に空気を供給した際に生じる第1の排気管3a内の圧力を計測し、計測した圧力変動値に基づいて、圧力調整部8により第1の排気管3a内の圧力を調整することが好ましく、これにより、上記の空気供給をより安全に行うことができる。
【0047】
本実施形態の単結晶シリコンインゴットの製造方法では、単結晶シリコンインゴットの単結晶冷却工程(ステップS106)後、単結晶シリコンインゴットの製造装置2のチャンバ内を常圧に戻す前に、第1の空気供給部7、あるいは第1の空気供給部7及び第2の空気供給部9により、第1の排気管3a、あるいは第1の排気管3a及び第2の排気管3bの管内にそれぞれ空気を供給して、第1の排気管3a、あるいは第1の排気管3a及び第2の排気管3b内の酸化物を燃焼させる、空気供給(ステップS111)をさらに含むことが好ましい。1つの単結晶シリコンインゴットの引き上げが完了した後にも、第1の排気管3a及び第2の排気管3b内の酸化物を燃焼させることで、酸化物をさらに燃焼し、酸化物の堆積を効果的に減少させることができるからである。
また、本実施形態の単結晶シリコンインゴットの製造方法は、原料溶融工程(ステップS103)、着液工程(ステップS104)、単結晶育成工程(ステップS105)、及び単結晶冷却工程(ステップS106)を繰り返すことにより、同一の石英ルツボを用いて複数本の単結晶シリコンインゴットを製造する、マルチプリング法を行うものであることが好ましく、これにより、特に長時間運転となる場合に、排気管内の酸化物の燃焼を促進させて、上記の効果を有利に得ることができるからである。
また、複数本の単結晶シリコンインゴットを製造する際の、単結晶シリコンインゴットの1本の製造ごとに、上記の(本例では第2の空気供給部9から)空気を供給することが好ましく、これにより、排気管路3内(本例では第2の排気管3b内)に酸化物が多量に堆積する前に酸化物が燃焼されることになり、単結晶シリコンインゴット引き上げ中に酸化物の急激に燃焼して圧力が急上昇するのを防止することができる。
【0048】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例0049】
(実施例1)
本発明の効果を確かめるため、発明例1~3については
図1、比較例1~2については
図3~
図4に示した単結晶シリコンインゴットの製造設備を用い、1本の単結晶シリコンインゴットを引き上げする実験を行った。単結晶シリコンインゴットの引き上げ条件は各例とも同一とし、空気供給を行うタイミングを様々変更する実験を行った。その後、ダストチャンバ開放時の酸化物の燃焼評価試験及び酸化物の強制着火試験を行った。
ここで、「ダストチャンバ開放時の酸化物の燃焼評価試験」とは、引き上げ完了して6時間後に、ダストチャンバ11の蓋を開放し、ダストチャンバ11に集塵された酸化物の燃焼有無を確認する試験である。また、「強制着火試験」とは、「ダストチャンバ開放時の酸化物の燃焼評価試験」において燃焼されなかった酸化物を回収し、ライター等で酸化物に強制着火した際の燃焼有無を評価する試験である。
【0050】
比較例1では、排気管路3内への空気供給を実施しなかった。具体的には、単結晶シリコンインゴットの育成を完了し、メインチャンバ2aからプルチャンバ2b内に単結晶シリコンインゴットを移動させた後、ヒーター電源をオフにする操作を行った。ヒーター電源をオフ後、引き上げ終了して6時間経過した後、ダストチャンバ11の蓋を開放時の酸化物の燃焼評価試験を行った。その結果、ダストチャンバ11の蓋を開放した際に、ダストチャンバ11内に集塵された酸化物が激しく燃焼した。このため、比較例1では強制着火試験を行わなかった。
【0051】
比較例2では、ヒーター電源をオフした後に、チャンバ内を常圧に戻す前に空気供給部から排気管路3内に空気供給を行った以外は、比較例1と同一条件で実験を行った。その結果、ダストチャンバ11の蓋を開放した際に酸化物の燃焼反応は観察されなかった。また、ダストチャンバ11から酸化物を回収し、強制着火試験を行ったところ、酸化物が激しく燃焼することが確認された。すなわち、比較例2では、空気供給による酸化物の燃焼操作を行うものの、引き上げ完了後の空気供給では排気管路3内に堆積する酸化物の燃焼効果が低いことが確認された。
【0052】
発明例1では、着液工程(ステップS104)中に第2の空気供給部9から第2の排気管3b内に空気供給を行った。その結果、ダストチャンバ11の蓋を開放した際には酸化物の燃焼反応が観察されなかった。また、ダストチャンバ11から回収した酸化物に強制着火試験を行ったところ、僅かな酸化物の燃焼が確認された。
また、発明例1では、着液工程中に空気供給による酸化物の燃焼操作を行ったにも係わらず、メインチャンバ2a内の圧力変動は観察されず、無転位の単結晶シリコンインゴットを育成することができた。
【0053】
発明例2では、単結晶冷却工程(ステップS106)中に第2の空気供給部9から第2の排気管3b内に空気供給を行った。ダストチャンバ11の蓋を開放した際には酸化物の燃焼は観察されず、強制着火試験において僅かな酸化物の燃焼が確認された。
【0054】
発明例3では、単結晶冷却工程(ステップS106)中に第2の空気供給部9から第2の排気管3b内に空気供給を行い、且つ、チャンバ内を常圧に戻す前に第1の空気供給部7及び第2の空気供給部9から第1の排気管3a及び第2の排気管3b内にそれぞれ空気供給(ステップS111)を行った。酸化物は、ダストチャンバ11の蓋を開放した際には燃焼は観察されず、強制着火試験でも燃焼は確認されなかった。
【0055】
(実施例2)
マルチプリング法における本発明の効果を確かめるため、発明例4~6については
図1、比較例3については
図4に示した単結晶シリコンインゴットの製造設備を用い、2本の単結晶シリコンインゴットを連続的に育成する引き上げ実験を行った。マルチプリング法による引き上げを実施した以外は、実施例1と同一条件で、ダストチャンバ開放時の酸化物の発火評価試験及び酸化物の強制着火試験を行った。
【0056】
比較例3では、マルチプリング法により2本の単結晶シリコンインゴットの引き上げ完了し、ヒーター電源をオフした後に第1の空気供給部7から排気管路3内に空気供給を行った。酸化物は、ダストチャンバ11の蓋を開放した際に激しい燃焼が観察された。このため、強制着火試験は行わなかった。
【0057】
発明例4では、マルチプリング法の2本目の単結晶冷却工程中に第2の空気供給部9から第2の排気管3b内に空気供給を行った。酸化物は、ダストチャンバ11開放した際に燃焼が観察されず、強制着火試験において僅かに燃焼することが確認された。
【0058】
発明例5では、マルチプリング法の1本目及び2本目の単結晶冷却工程中に第2の空気供給部から第2の排気管3b内に空気供給を行った。その結果、発明例4と同様に、酸化物は、ダストチャンバ11を開放した際に燃焼は観察されず、強制着火試験で僅かに燃焼することが確認された。
発明例4と比較すると、評価試験時の酸化物の燃焼量は小さいことが確認された。これは、単結晶冷却工程の都度、毎回、第2の排気管3b内の酸化物を燃焼させていることから、第2の排気管3b内に堆積する酸化物の量が少なかったことによるものと推察される。
【0059】
発明例6では、マルチプリング法の1本目及び2本目の単結晶冷却工程中に第2の空気供給部9から第2の排気管3b内に空気供給を行い、且つ、チャンバ内を常圧に戻す前に第1及び第2の空気供給部から空気供給を行った。ただし、マルチプリング法の1本目の単結晶冷却工程中及びヒーター電源をオフした後に空気供給(ステップS111)を実施しなかった。酸化物は、ダストチャンバ開放した際に燃焼せず、強制着火試験でも燃焼しなかった。
【0060】
【0061】
表1は、実施例1及び実施例2における、発明例1~6及び比較例1~3での各評価結果をまとめたものである。
発明例1~3では、引き上げ中に第2の排気管3bに空気供給を行った場合は、引き上げ完了後に排気管路3内に空気供給を行ったときよりも、酸化物の燃焼効果が高いことが確認された。
また、マルチプリング法による複数本の単結晶シリコンインゴットの育成を行うと、排気管路3内に堆積する酸化物の量も増大することから、酸化物が充分に燃焼できないことが予想されるところ、発明例4~6の結果からも明らかなように、引き上げ中に第2の排気管内に空気供給を行った場合は、マルチプリング法において酸化物を充分に燃焼できることが確認された。