(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128707
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】作業支援装置、作業支援システムおよび作業支援方法
(51)【国際特許分類】
B65G 1/137 20060101AFI20230907BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20230907BHJP
B62B 3/02 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
B65G1/137 G
G05D1/02 H
B62B3/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033251
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】牧 隆史
【テーマコード(参考)】
3D050
3F522
5H301
【Fターム(参考)】
3D050BB02
3D050DD03
3D050EE08
3D050EE15
3F522AA02
3F522BB01
3F522CC01
3F522DD37
3F522EE15
3F522FF12
3F522GG03
3F522GG05
3F522GG18
3F522HH02
3F522HH13
3F522HH24
3F522HH35
3F522JJ02
3F522KK05
3F522LL57
5H301AA02
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301FF10
5H301FF11
5H301GG09
5H301GG12
5H301KK10
5H301QQ08
(57)【要約】
【課題】作業ミスを防止しつつ、作業効率を向上させる。
【解決手段】作業者の移動に伴って移動する作業支援装置であって、前記作業支援装置の自己位置を検出する自己位置検出手段と、前記自己位置から先の位置に対応した複数の作業エリアの位置を示す情報と、前記複数の作業エリアにおけるそれぞれの作業内容とを関連付けて表示部に表示する作業内容表示手段と、を備え、前記作業内容表示手段は、前記作業エリアの位置を示す情報及び前記作業内容を、前記作業者と前記作業エリアとの相対的な位置関係を反映するように、前記作業者の移動に追随して変更して表示する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の移動に伴って移動する作業支援装置であって、
前記作業支援装置の自己位置を検出する自己位置検出手段と、
前記自己位置から先の位置に対応した複数の作業エリアの位置を示す情報と、前記複数の作業エリアにおけるそれぞれの作業内容とを関連付けて表示部に表示する作業内容表示手段と、
を備え、
前記作業内容表示手段は、前記作業エリアの位置を示す情報及び前記作業内容を、前記作業者と前記作業エリアとの相対的な位置関係を反映するように、前記作業者の移動に追随して変更して表示する、
ことを特徴とする作業支援装置。
【請求項2】
前記作業内容表示手段は、前記作業支援装置の現在位置に対応した作業内容を表示するとともに、前記自己位置から先の位置に対応した全ての作業エリアの位置を示す情報と、前記作業エリアの作業内容と、を表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の作業支援装置。
【請求項3】
前記作業者による入力を受け付ける入力部を備え、
前記入力部を介して所定の前記作業エリアにおける前記作業内容の完了を記録する、
ことを特徴とする請求項1に記載の作業支援装置。
【請求項4】
前記入力部は、前記表示部と一体となったタッチパネルである、
ことを特徴とする請求項3に記載の作業支援装置。
【請求項5】
壁面または天井に設置した複数の標識を撮影するカメラを備え、
前記自己位置検出手段は、前記カメラで撮影された画像を読み取ることによって前記作業支援装置の自己位置を検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の作業支援装置。
【請求項6】
前記自己位置検出手段は、前記作業エリアが前記作業支援装置の進行方向に対して複数配置されている場合に、前記カメラが読み取った複数の標識の配置に基づいて前記作業者の移動方向を検出する、
ことを特徴とする請求項5に記載の作業支援装置。
【請求項7】
前記自己位置検出手段は、前記作業支援装置の移動方向が転換したことを検出した場合に、前記作業エリア及び前記作業内容の表示を前記作業支援装置の移動方向に合わせて転換する、
ことを特徴とする請求項6に記載の作業支援装置。
【請求項8】
物品を載せる荷物積載部との着脱機構を有する台車部を備える、
ことを特徴とする請求項1ないし7の何れか一項に記載の作業支援装置。
【請求項9】
前記着脱機構は、前記荷物積載部に設けられている孔に対して着脱可能な上向きのフック形状の部材である、
ことを特徴とする請求項8に記載の作業支援装置。
【請求項10】
前記自己位置検出手段は、床面に接触させた前記台車部のキャスターの回転量を検出することによって前記作業支援装置の自己位置を検出する、
ことを特徴とする請求項8に記載の作業支援装置。
【請求項11】
前記自己位置検出手段は、前記作業支援装置の移動距離を前記キャスターの回転量に基づいて算出する、
ことを特徴とする請求項10に記載の作業支援装置。
【請求項12】
前記作業内容表示手段は、色分けされた床の色を、前記作業エリアの表示に対応させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の作業支援装置。
【請求項13】
前記作業内容表示手段は、仕分け対象となる物品の仕分け残数を表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の作業支援装置。
【請求項14】
前記表示部の高さおよび角度の調整が可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の作業支援装置。
【請求項15】
請求項1ないし14の何れか一項に記載の作業支援装置と、
前記作業支援装置に物品の仕分け情報を送信するサーバと、
を備えることを特徴とする作業支援システム。
【請求項16】
作業者の移動に伴って移動する作業支援装置における作業支援方法であって、
前記作業支援装置の自己位置を検出する自己位置検出工程と、
前記自己位置から先の位置に対応した複数の作業エリアの位置を示す情報と、前記複数の作業エリアにおけるそれぞれの作業内容とを関連付けて表示部に表示する作業内容表示工程と、
を含み、
前記作業内容表示工程は、前記作業エリアの位置を示す情報及び前記作業内容を、前記作業者と前記作業エリアとの相対的な位置関係を反映するように、前記作業者の移動に追随して変更して表示する、
ことを特徴とする作業支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業支援装置、作業支援システムおよび作業支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンビニエンスストアやスーパーマーケット等への配送を担う通過型の物流倉庫で、物品を種まき型の方法で仕分けする仕分け業務が知られている。このような種まき型の物品仕分け業務において、作業者への仕分け数量を指示する手段として、仕分け先と対応して設置された表示装置に仕分け情報(物品種類、数量)を表示し、表示装置に設置されたボタンを押すことによって仕分けの完了をシステムに通知する、所謂デジタルアソートシステムが広く使われている。
【0003】
しかし、従来のデジタルアソートシステムでは、仕分け先の数に対応した表示装置を作業場所に予め設置する必要があり、その設置コストが問題となっていた。また、従来のデジタルアソートシステムでは、設置した表示装置の場所の変更には工事が必要となることも、運用の柔軟な管理をしたい場合の足枷となっていた。さらに、従来のデジタルアソートシステムでは、仕分け先の物量変動に対応するため、表示装置を作業者の作業しやすい場所に設置できないことも少なくなく、作業性の上でも課題となっていた。
【0004】
近年、作業者の現在位置を検出する手段を組み合わせることにより、作業者の現在位置に対応して指示内容を表示する台車を用いたシステムが開発されている。特許文献1には、台車の前面(進行方向Xの反対面)に、指示内容やトレイ情報などを表示する表示用画面を備え、配膳すべき部屋に近づくと配膳作業を開始するよう促す技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の台車を用いたシステムでは、配膳対象の各病室の位置に対応して作業内容を指示するものであり、作業内容を確認するときには台車が停止していることが前提となっている。このため、台車の移動と指示内容の確認と作業自体とを同時並行的に行うことはできないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、作業ミスを防止しつつ、作業効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、作業者の移動に伴って移動する作業支援装置であって、前記作業支援装置の自己位置を検出する自己位置検出手段と、前記自己位置から先の位置に対応した複数の作業エリアの位置を示す情報と、前記複数の作業エリアにおけるそれぞれの作業内容とを関連付けて表示部に表示する作業内容表示手段と、を備え、前記作業内容表示手段は、前記作業エリアの位置を示す情報及び前記作業内容を、前記作業者と前記作業エリアとの相対的な位置関係を反映するように、前記作業者の移動に追随して変更して表示する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、作業ミスを防止しつつ、作業効率を向上させることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態にかかる仕分けシステムにおける棚の配置および作業経路を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、仕分けシステムの概略構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、物品の仕分け情報の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、情報処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、情報処理装置が有する機能の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、搬送台車の全体を示す側面図である。
【
図7】
図7は、搬送台車の台車部に荷物積載部を装着する様子を示す平面図である。
【
図9】
図9は、自己位置検出用の標識の設置例を示す図である。
【
図11】
図11は、カメラによる撮影画像の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、逆方向への進行の場合におけるカメラによる撮影画像の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、情報処理装置による自己位置表示処理の流れを示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、
図8に示した状態における完了操作後の表示画面の表示内容を示す図である。
【
図15】
図15は、
図14に示した状態から少し前に進んだ状態の表示画面の表示内容を示す図である。
【
図16】
図16は、
図15に示した状態から少し前に進んだ状態の表示画面の表示内容を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、作業支援装置、作業支援システムおよび作業支援方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
まず、本実施形態の具体的な実施形態を説明する前に、本実施形態が想定している作業支援システムである仕分けシステムの概要を説明する。
【0012】
図1は、実施の形態にかかる仕分けシステムにおける棚の配置および作業経路を概略的に示す図である。
図1は、例えばコンビニエンスストアやスーパーマーケット等への配送を担う通過型の物流倉庫で、物品を種まき型の方法で仕分けする仕分け業務を行う例を示すものである。したがって、作業エリア(棚)Xは仕分け先と対応して設置されたものであって、仕分けた物品を収納するためのものである。作業支援装置として機能する搬送台車10は、仕分け業務を行う作業者が扱うものである。ここでは、「仕分け」とは、物流倉庫において、仕分け情報(物品種類、数量)にしたがって物品を搬送台車10から取り出して仕分け先と対応して設置された作業エリア(棚)に収納していく作業のことを指す。
【0013】
なお、
図1に示すように、本実施形態においては、作業エリア(棚)の床は、3種類の色に色分けされている。
【0014】
図1の例では、開始位置から仕分けを上流側から開始し、経路に沿って仕分けを行っていき、全ての棚の仕分けが終了すると、全作業終了となる。ここでは、仕分けの上流側とは、経路の上流側(開始位置に近い側)を指し、仕分けの下流側とは、経路の下流側(終了位置に近い側)を指す。
【0015】
前述したように、従来のデジタルアソートシステムでは、配送先(仕分け先)の数に対応した表示装置を作業場所に予め設置する必要があり、その設置コストが問題となっていた。また、従来のデジタルアソートシステムでは、設置した表示装置の場所の変更には工事が必要となることも、運用の柔軟な管理をしたい場合の足枷となっていた。さらに、従来のデジタルアソートシステムでは、配送先の物量変動に対応するため、表示装置を作業者の作業しやすい場所に設置できないことも少なくなく、作業性の上でも課題となっていた。
【0016】
そこで、本実施形態では、搬送台車10の表示部に、搬送台車10の自己位置(作業者の位置に対応)情報と、作業内容(配送先ごとの棚に、仕分ける物品の種類・数などの情報)とを対応付けて表示させることで、作業効率を向上することを実現可能にしている。以下、本実施形態の具体的な内容を説明する。
【0017】
図2は、仕分けシステム1の概略構成の一例を示す図である。
図2に示すように、仕分けシステム1は、サーバ2と、作業支援装置として機能する情報処理装置3と、を備え、これらは例えばインターネット等のネットワーク4を介して相互に接続可能である。
【0018】
サーバ2は、各種の情報を記憶するデータベースサーバとして機能する。例えば、サーバ2は、注文を受けた1以上の物品を示すオーダリストに基づく物品の仕分け情報を記憶する。
図3は、物品の仕分け情報の一例を示す図である。
図3に示すように、物品の仕分け情報は、仕分け対象となる物品ごとに、物品の配送先に対応する作業エリア(棚)と、配送数量と、を含む作業内容の情報である。
【0019】
次に、情報処理装置3のハードウェア構成を説明する。
【0020】
図4は、情報処理装置3のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。本実施形態においては、情報処理装置3は、タブレット端末などのコンピュータにより構成される。
図4に示すように、情報処理装置3は、CPU(Central Processing Unit)101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、入力部104と、表示部105と、通信I/F(インタフェース)106と、を備える。また、情報処理装置3は、カメラ107と、スキャナ108と、回転検出センサ109と、を接続する。
【0021】
CPU101は、情報処理装置3の動作を統括的に制御する。CPU101は、RAM103の所定の領域を作業領域として、ROM102に記録された各種制御プログラムを実行して、情報処理装置3が有する各種の機能を実現させる。情報処理装置3が有する機能の具体的な内容については後述する。
【0022】
ROM102は、情報処理装置3に関わるプログラムや各種設定情報などを記憶する不揮発性のメモリ(書き換え不可能なメモリ)である。
【0023】
RAM103は、例えばSDRAMなどの記憶手段であって、CPU101の作業エリアとして機能し、バッファなどの役割を果たす。
【0024】
入力部104は、ユーザ(作業者)の操作を受け付けるためのデバイスである。
【0025】
表示部105は、情報処理装置3に関する各種の情報(例えば、後述する作業内容や作業エリアなど)を表示するデバイスであり、例えば液晶ディスプレイなどで構成される。なお、本実施形態においては、入力部104と表示部105とが一体的に構成される(例えばタッチパネルとして構成される)形態である。
【0026】
通信I/F106は、ネットワーク4に接続するためのインタフェースである。
【0027】
カメラ107は、搬送台車10の自己位置認識を行うために、後述の標識を読み取ることに用いられる。
【0028】
スキャナ108は、物品の識別情報などを読み取ることに用いられる。
【0029】
回転検出センサ109は、床面に接触させた搬送台車10のキャスター22,23(
図6参照)の回転量を検出することに用いられる。
【0030】
次に、CPU101が各種制御プログラムを実行して実現する情報処理装置3が有する機能について説明する。
【0031】
図5は、情報処理装置3が有する機能の一例を示す図である。
図5に示すように、情報処理装置3は、自己位置検出手段31と、作業内容表示手段32と、を有する。説明の便宜上、
図5の例では、本実施形態に関する機能を主に例示しているが、情報処理装置3が有する機能はこれらに限られるものではない。
【0032】
自己位置検出手段31は、搬送台車10の自己位置を検出する。
【0033】
作業内容表示手段32は、自己位置から先の位置に対応した複数の作業エリア(棚)と、複数の作業エリア(棚)におけるそれぞれの作業内容とを関連付けて表示部105に表示する。ここで、自己位置から先の位置に対応した作業エリア(棚)は、例えば
図1において作業を開始する位置である開始位置に対して終了位置側にある複数の作業エリア(棚)である。また、作業内容表示手段32は、作業エリア(棚)及び作業内容を、作業者の位置と作業エリアの位置との相対的な位置関係を反映するように、作業者の移動に追随して変更して表示する。すなわち、作業内容表示手段23は、表示部105に作業エリア(棚)の位置を示す情報と作業者の位置を示す情報とを、実際の作業エリア(棚)と作業者との相対的な位置関係を反映するように表示する。言い換えると、表示部105に表示される作業者の位置を示す情報と作業エリアの位置を示す情報との相対的な位置関係は、実際の作業者の位置と実際の作業エリアの相対的な位置関係が反映されていることになる。さらに、作業者が移動した場合、実際の作業エリアの位置と作業者との相対的な位置関係が変わるので、作業内容表示手段23は、表示部105に表示される作業エリア(棚)の位置を示す情報と作業者の位置を示す情報とを、実際の相対的な位置関係に対応するように変更して表示する。
【0034】
次に、搬送台車10の詳細について説明する。
【0035】
ここで、
図6は搬送台車10の全体を示す側面図、
図7は搬送台車10の台車部15に荷物積載部50を装着する様子を示す平面図である。
【0036】
図6および
図7に示すように、搬送台車10は、荷物積載部50と、台車部15と、を備えている。
【0037】
荷物積載部50は、積載面が四角形状の台となっているものであって、一般にドーリーと呼ばれるものである。ドーリーは、荷台本体の下に車輪(キャスター)を備えるとともに、手押し部分を有さない台車(搬送機器)である。荷物積載部50は、例えば折り畳みおよび組み立てが可能な箱又または容器であるコンテナ(折り畳みコンテナ)などを載せるものである。
【0038】
台車部15は、コンテナを載せる荷物積載部50が着脱自在に備えられるものであって、コの字形状の台車フレーム21と、台車フレーム21の下面に回転することで台車部15を移動させる車輪部であるキャスター22,23と、を備える。キャスター22は、搬送台車10の搬送方向(α方向)の前方側に2つ、キャスター23は、搬送方向(α方向)の後方側に2つ、計4つ設けられている。ここでは、4つのキャスター22,23が設けられているが、キャスターの数は任意である。
【0039】
また、台車部15は、台車フレーム21における搬送台車10の搬送方向(α方向)に対して後方側に、上方に向けてハンドル部60を備える。ハンドル部60を作業者に掴まれながら搬送方向(α方向)に押されることで、搬送台車10は、搬送方向(α方向)に移動される。このようにしてコンテナが積載された荷物積載部50が目的地となる作業エリア(棚)に向けて搬送されていく。
【0040】
ハンドル部60は、
図6に示すように、上部がさらに搬送方向の後方側に屈折しており、作業者が押しやすくなっている。加えて、ハンドル部60の2つの垂直方向の部材60a、60bは、伸縮可能な構造である。このようにハンドル部60を伸縮可能とすることで、コンテナに搭載された荷物の量が少ない場合でも、作業者にとって作業しやすいものとなっている。
【0041】
また、
図6および
図7に示すように、ハンドル部60の2つの垂直方向の部材60a、60bには、情報処理装置3を取り付けるための取付部61が水平方向に接続されて設けられている。取付部61は、情報処理装置3を着脱自在に取り付け可能な部材である。なお、取付部61は、情報処理装置3の取り付け角度を変更することができる。このように情報処理装置3の取り付け角度を可変とすることにより、作業者の身長に合わせることができるので、情報処理装置3が作業の邪魔にならないようにすることができる。
【0042】
このように情報処理装置3を作業者の手元の操作しやすい場所に設置することにより、作業場所の柔軟性を確保しつつ、作業者にとっても作業しやすい作業環境を提供することができる。
【0043】
なお、本実施形態では、台車部15のハンドル部60に情報処理装置3を備えるようにしたが、これに限るものではなく、作業者が情報処理装置3を装着する形態(ウェアラブル端末)であってもよい。
【0044】
図7に示すように、台車部15は、台車フレーム21に対して荷物積載部50を着脱可能とする着脱機構24を備えている。着脱機構24は、荷物積載部50に設けられている孔50aに対して着脱可能な上向きのフック形状の部材となっている。荷物積載部50に設けられている孔50aを上方から下方に向けた方向に降ろすと、着脱機構24のフックが荷物積載部50に設けられた孔50aに挿入されて掛かることで、台車フレーム21に荷物積載部50が取り付けられる。また、荷物積載部50に設けられている孔50aを下方から上方に向けた方向に持ち上げることで、着脱機構24から荷物積載部50に設けられている孔50aがフックから取り外され、荷物積載部50と台車フレーム21との固定が解除される。
【0045】
このように台車部15は、専用の接続用部材をドーリーに取り付けることなく、ドーリーと接続することができる。そして、台車部15は、すでに荷物が積載されたドーリーに取付けることができるので、荷物を積み替えることなく作業が開始できる。
【0046】
図7に示すように、台車部15は、台車フレーム21にカメラ107を備えている。カメラ107は、搬送台車10の自己位置認識を行うために用いられる。
【0047】
図6および
図7に示すように、台車部15は、台車フレーム21に回転検出センサ109を備えている。回転検出センサ109は、床面に接触させた搬送台車10のキャスター22,23の回転量を検出することに用いられる。
【0048】
次に、情報処理装置3の表示部105に表示される表示画面について説明する。
【0049】
ここで、
図8は表示画面Dの一例を示す図である。
図8に示すように、表示画面Dの左側表示部D1は、仕分け作業予定の作業エリア(棚)と作業内容(仕分け数)がすべて表示された全体マップである。また、左側表示部D1は、搬送台車10の位置も併せて表示する。
図8に示す例では、作業者(搬送台車10)が手前から9番目の位置にいるときの様子を示している。作業エリア(棚)に表示されている数字は、その位置における作業の内容、すなわち物品を配る個数を示している。
【0050】
左側表示部D1によって、現在の作業とこれから行う作業全体とを同時に把握することができるので、作業の優先順位の判断や、たとえば離れた場所にしか作業が無い場合には、その場所まで素早く移動するかどうかを判断することができる。
【0051】
右側表示部D2は、左側表示部D1の全体マップの一部を拡大し、搬送台車10の進行方向に沿って並んだ3つの作業エリア(棚)が表示された表示部分である。
【0052】
また、本実施形態においては、左側表示部D1および右側表示部D2は、色分けされた床の色を、作業エリア(棚)の表示に対応させている。このようにすることで、作業者に対して作業者(搬送台車10)の現在位置を認識しやすくしている。
【0053】
加えて、表示画面Dの下段には、仕分け対象となる物品の商品名D3と、仕分け対象となる物品の仕分け残数D4と、が表示される。このように仕分け残数D4によって残数表示することにより、仕分け対象となる物品の残りが少なくなった場合に、間違いがわかりやすくなる。
【0054】
加えて、表示画面Dには、現在の搬送台車10の位置D5と、搬送台車10を搬送する作業者の位置D6と、が表示される。
【0055】
このような表示画面Dにより、
図8に示すように、現在位置における作業エリア(棚)での作業内容である右側列作業エリア(棚)に対して7個の仕分けをしたあとに、次に作業すべき作業として、左側作業エリア(棚)及び右側作業エリア(棚)にそれぞれ3個の仕分けをすること、さらに先の作業エリア(棚)では右側作業エリア(棚)に対して6個の仕分けをすることを、搬送台車10の移動中に予め作業者が把握することができる。
【0056】
本実施形態においては、情報処理装置3は、複数の作業エリア(棚)と、複数の作業エリア(棚)に対応する作業内容の表示とが、作業者(搬送台車10)の移動に追随して移動し、作業者(搬送台車10)との相対的な位置関係を反映するように表示される。これにより、搬送台車10の移動中に次に作業すべき作業エリア(棚)とその作業内容とを把握しつつ、その次に作業すべき作業エリア(棚)とその作業内容とも同時に把握することができ、作業効率を向上させることができる。
【0057】
次に、搬送台車10の自己位置検出処理について説明する。
【0058】
ここで、
図9は自己位置検出用の標識Mの設置例を示す図である。
図9に示すように、物流倉庫の天井には、各作業エリア(棚)に沿って複数の標識Mが設置される。より詳細には、搬送台車10に設けられたカメラ107は、天井方向を撮影するように設置される。複数の標識Mは、搬送台車10に設けられたカメラ107で撮影できるよう、作業エリア(棚)に沿って天井に列状に設置される。
【0059】
なお、本実施形態においては、天井に複数の標識Mを設置するようにしたがこれに限るものではなく、壁面であってもよい。
【0060】
標識Mは、作業エリア(棚)のそれぞれ番号の情報を含んでおり、作業エリア(棚)の位置に対応させて設置される。標識Mは、例えばAR(Augmented Reality)マーカが利用される。なお、標識Mは、バーコード、二次元コードなどのコードシンボルであってもよい。
【0061】
図10は、位置検出の仕組みを示す図である。
図10に示すように、標識Mの設置間隔をLとすると、それぞれの標識Mの設置されている位置は、標識M(1)の位置を原点(位置が0)とすると、標識M(2)~M(7)の原点からの距離はそれぞれL~6Lとなる。カメラ107による位置検出の方法は、以下のとおりである。
【0062】
図11は、カメラによる撮影画像の一例を示す図である。
図11に示すように、搬送台車10に設けられたカメラ107が撮影した画像に、標識番号(2)、(3)、及び(4)の視界の標識Mが含まれている。標識番号(2)、(3)及び(4)の視界の標識Mは、それぞれの画像上での位置(左端からの画素数)をn1、n2、n3とする。標識M(2)の位置は原点からLの距離にあるので(
図10参照)、撮影画像の全画素数=N、撮影画像の視覚幅=Wとすると、撮影画像の左端に対応する位置x1は下記で求められる。
x1=L-W×(n1/N)
【0063】
同様に、標識M(3)及び標識M(4)の位置は、原点からそれぞれ2L、3Lの位置にあるので、これらに基づいて算出した撮影画像の左側に対応する位置x2,x3は下記で求められる。
x2=2L-W×(n2/N)
x3=3L-W×(n3/N)
【0064】
ここで、x1、x2、x3は別の標識Mに基づいて算出した位置情報であるが、理想的には同じ値となる。
【0065】
次に、カメラ107による搬送台車10の反転の検出の方法について説明する。
【0066】
図12は、逆方向への進行の場合におけるカメラによる撮影画像の一例を示す図である。実作業においては、作業者の進行方向が
図10に示す搬送台車10の搬送方向(α方向)とは逆方向となるように作業を行うことがある。この場合、搬送台車10に設けられたカメラ107の撮影画像における標識番号の位置関係が、
図11に示す標識番号の位置関係とは逆となってしまう。この様子を
図12に示す。
【0067】
図12に示すように、逆方向への進行の場合、左側の標識M(4)から算出した、撮影画像の左側に対応する位置は下記のようになる。
x1=3L-W×(n1/N)
【0068】
本来、左側にはLの位置にある標識番号(2)の標識Mが検出されることを想定していたが、この位置に標識番号(4)の標識が検出されることによって、算出したx1は
図1に示した例よりも2Lだけ大きい値となる。同様に、標識M(3)及び標識M(4)の位置は、原点からそれぞれ2L、3Lの位置にあるので、これらに基づいて算出した撮影画像の左側に対応する位置x2,x3は下記で求められる。
x2=2L-W×(n2/N)
x3=L-W×(n3/N)
【0069】
図12に示すように、中央に検出されている標識Mは
図11と同じ標識番号(3)の標識Mなので、x2は
図11に示した例と同じ値となる。しかしながら、x3については、
図11に示した例では標識番号(4)の標識Mが認識されていた位置に標識番号(2)の標識Mが検出されるため、算出したx3は
図11に示した例よりも2Lだけ小さい値となる。結果として、x1、x2、x3はそれぞれ大きく異なった値(この場合には2Lづつ異なった値)となる。このことを利用すれば、検出された複数の標識Mから算出した位置情報の差が一定以上の場合には進行方向の逆転が発生したと判断することができる。
【0070】
すなわち、情報処理装置3は、作業者の移動方向を検出できるので、表示内容の転換のトリガーとすることができる。
【0071】
また、情報処理装置3は、搬送台車10の移動方向が転換したことを検出した場合に、作業エリア及び作業内容の表示を搬送台車10の移動方向に合わせて転換する。これにより、表示されている作業内容の並び順を搬送台車10の移動方向と一致させるので、作業者は直感的に位置および作業を認識することができる。
【0072】
以上のように、情報処理装置3は、搬送台車10のカメラ107で撮影された画像から搬送台車10の自己位置推定を行い、どの作業エリア(棚)にいるかを判断する。このように、天井に配置されたARマーカ等の標識Mと搬送台車10に設けられたカメラ107とを用いた画像認識で自己位置を認識することで、屋内などGPS等の利用に制約のある環境においても、高精度かつ簡易に自己位置が認識でき、適切に作業を支援することができる。
【0073】
また、情報処理装置3は、複数の標識Mを撮影することにより、自己位置の検出をより安定して行うことができる。例えば、どれか一つの標識Mが認識できなかったとしても、他の標識Mの認識結果でカバーすることができる。
【0074】
なお、自己位置の検出が、自己位置検出用の標識Mを用いて検出される例を示したが、標識Mのようなマーカを用いずに自己位置認識できるVisual SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)などのカメラで撮像された画像や映像から自己位置を検出する方法を用いても良い。
【0075】
また、情報処理装置3は、床面に接触させた搬送台車10のキャスター22,23の回転量を回転検出センサ109によって検出することによって自己位置を検出するようにしてもよい。具体的には、情報処理装置3は、カメラ107で標識Mが読み取れない場合の移動距離を、搬送台車10のキャスター22,23の回転量に基づいて算出する。例えば、天井に設置された標識Mの画像で自己位置認識する場合、その撮影視野角の問題で標識Mの認識ができない区間が生じても、キャスター22,23の回転量を利用して同等の精度で自己位置認識ができる。このようにすることで、カメラ107を用いた標識認識エラーや回転検出センサ109を用いたキャスター回転数の検知エラーのいずれかが生じても、自己位置認識の対応を実施することができる。
【0076】
次に、自己位置表示処理の流れについて説明する。
【0077】
ここで、
図13は情報処理装置3による自己位置表示処理の流れを示すフローチャートである。
図13に示すように、情報処理装置3は、無線通信によって物品の仕分け情報を保有するサーバ2から
図3に示す作業内容の情報を受けとる(ステップS1)。
【0078】
情報処理装置3は、接続されたカメラ107によって撮影された画像に基づいて自己位置推定を行い、自己位置に対応した作業内容を、表示部105の画面に表示画面D(
図8参照)として表示する(ステップS2)。
【0079】
情報処理装置3は、自己位置を検出し(ステップS3)、表示画面Dの表示内容を更新する(ステップS4)。
【0080】
続いて、情報処理装置3は、作業完了の入力があったかを判断する(ステップS5)。
【0081】
ここで、
図14は
図8に示した状態における完了操作後の表示画面Dの表示内容を示す図である。作業者は、物品を作業エリア(棚)に指示された数量だけ配った後、表示画面Dの左側表示部D1の作業エリア(棚)に表示されている数字部分を入力部104を介してタッチすることにより、その作業エリア(棚)における作業が完了したことを入力する。
図14に示すように、情報処理装置3は、作業完了した作業エリア(棚)に対する数字部分は配色を変更(例えばグレーアウト)するなどして、作業が完了したことを作業者にフィードバックする。このように、本実施形態においては、作業完了の入力を表示にタッチすることで直感的に行うことができる。
【0082】
情報処理装置3は、作業完了の入力があった場合(ステップS5のYes)、作業が行われたことをサーバ2に通知する(ステップS6)。
【0083】
一方、情報処理装置3は、作業完了の入力がない場合(ステップS5のNo)、自己位置の検出(ステップS3)、表示画面Dの表示内容の更新(ステップS4)を繰り返す。
【0084】
ここで、
図15は
図14に示した状態から少し前に進んだ状態の表示画面Dの表示内容を示す図である。
図15に示す表示例では、
図14に示した状態から作業者(搬送台車10)が少し前に進んだ場合を示す。
図15に示す表示例では、情報処理装置3の表示部105に表示される表示画面Dの右側表示部D2は、作業者(搬送台車10)の移動に伴って連続的にスクロールすることで、開始位置から10番目の作業エリア(棚)に搬送台車10を搬送する作業者が移動していることを表している。すなわち、右側表示部D2は、実際の10番麺の作業エリアと搬送台車10との相対的な位置関係を反映した情報を示している。
【0085】
図16は、
図15に示した状態から少し前に進んだ状態の表示画面Dの表示内容を示す図である。
図16に示す表示例では、
図15に示した状態から作業者が10番目の位置まで進んだ場合を示す。
図16に示す表示例では、情報処理装置3の表示部105に表示される表示画面Dの右側表示部D2は、搬送台車10を搬送する作業者の位置D6において、右側の10番目の作業エリア(棚)に3個の物品を配ることを指示し、左側の10番目の作業エリア(棚)に3個の物品を配ることを指示している。
【0086】
上述したステップS3~S6の処理は、全ての作業エリア(棚)における作業が完了するまで(ステップS7のYes)、繰り返される。
【0087】
このように本実施形態によれば、自己位置をリアルタイムで表示するともに、作業者及び仕分け物品と同時に移動する情報処理装置3の表示画面Dに、作業者の現在位置対応した仕分け情報(作業内容(作業先、物品数、種類など))と、作業エリア(棚)と、さらに次に作業をする仕分け情報と、作業エリア(棚)と、を含めてリアルタイムで表示する。このように複数の作業エリア(棚)と作業エリア(棚)に対応する作業内容との表示が、作業者(搬送台車10)の移動に追随して変更され、作業者(搬送台車10)と作業エリアとの相対的な位置関係を反映するように表示されることで、移動中に次に作業すべき作業エリアとその作業内容とを把握しつつ、その次に作業すべきエリアとその作業内容とも同時に把握することができる。これにより、作業ミスを防止しつつ、作業効率を向上させることができる。
【0088】
また、本実施形態によれば、「デジタルアソートシステム」での、仕分け先の数等の変更に伴う運用の悪さを改善することができる。
【0089】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0090】
例えば上述の実施形態では仕分けシステム1は、サーバ2と、情報処理装置3とから構成されていたが、例えばサーバ2の機能(前述の物品の仕分け情報等を記憶する機能)が情報処理装置3に搭載された形態であっても構わない。つまり、上述の仕分けシステム1が有する機能を1つの装置(情報処理装置3)で実現する形態であっても構わない。要するに、仕分けシステム1は、上述の自己位置検出手段31に対応する機能と、上述の作業内容表示手段32に対応する機能と、を少なくとも備えた形態であればよい。
【0091】
また、上述した実施形態の仕分けシステム1で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disc)、USB(Universal Serial Bus)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよいし、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。また、各種プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 作業支援システム
2 サーバ
3、10 作業支援装置
15 台車部
22,23 キャスター
24 着脱機構
31 自己位置検出手段
32 作業内容表示手段
50 荷物積載部
50a 孔
104 入力部
105 表示部
107 カメラ
109 回転検出センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0093】