(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128733
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/15 20060101AFI20230907BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20230907BHJP
A61F 13/514 20060101ALI20230907BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
A61F13/15 142
A61F13/511 200
A61F13/511 300
A61F13/514 100
A61F13/53 100
A61F13/53 300
A61F13/15 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033293
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂東 健司
(72)【発明者】
【氏名】和田 充弘
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BB17
3B200DB02
3B200DB20
3B200DC02
3B200DD02
(57)【要約】
【課題】使用済みの使い捨て吸収性物品から得られたリサイクルパルプを備える吸収性物品であっても、排泄物由来の色や匂いを軽減させた吸収性物品とすることができる。
【解決手段】使用済みの使い捨て吸収性物品をリサイクル処理して得られたリサイクルパルプを備え、リサイクルパルプは、排泄物由来の糖を有することを特徴とする吸収性物品(1)である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みの使い捨て吸収性物品をリサイクル処理して得られたリサイクルパルプを備え、
前記リサイクルパルプは、排泄物由来の糖を有する
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、抗菌剤を有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
請求項2に記載の吸収性物品であって、
前記リサイクルパルプが、前記抗菌剤を有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の吸収性物品であって、
前記リサイクルパルプを備えるリサイクル部品を有し、
前記リサイクル部品に厚さ方向から隣接する隣接部材が前記抗菌剤を有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記リサイクルパルプを備えるリサイクル部品を有し、
前記リサイクル部品は、液体透過性シートであることを特徴とする吸収性物品。
【請求項6】
請求項2から4のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記リサイクルパルプを備えるリサイクル部品を有し、
前記リサイクル部品は、吸収性コアであることを特徴とする吸収性物品。
【請求項7】
請求項6に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性コアの少なくとも一部を覆うコアラップシートを有し、
前記コアラップシートが、前記抗菌剤を有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性コアは、高吸収性ポリマーを備え、
前記高吸収性ポリマーが、前記抗菌剤を有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記リサイクルパルプが、死滅した大腸菌を有さないことを特徴とする吸収性物品。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、前記リサイクルパルプを含む液体吸収性パルプを有し、
前記リサイクルパルプの重量を前記液体吸収性パルプの重量で除した値が15%以下であることを特徴とする吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
限りある資源の消費を抑制し、環境への負荷を軽減させることを目的として、例えば、特許文献1には、使い捨ての衛生用品から衛生的な素材を回収する処理が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、汚れが付着した衛生用品から回収された素材は、汚れや菌等を分離したり、死滅させたりしているものの、回収された素材が、排泄物由来の汚れによる色が付着していないことや、排泄物由来の匂いがしないこと等、より清潔で、より衛生的な素材であることが望まれている。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、使用済みの使い捨て吸収性物品から得られたリサイクルパルプを備える吸収性物品であっても、排泄物由来の色や匂いを軽減させることができる吸収性物品とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、使用済みの使い捨て吸収性物品をリサイクル処理して得られたリサイクルパルプを備え、前記リサイクルパルプは、排泄物由来の糖を有することを特徴とする吸収性物品である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、使用済みの使い捨て吸収性物品から得られたリサイクルパルプを備える吸収性物品であっても、排泄物由来の色や匂いを軽減させた吸収性物品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】展開かつ伸長状態の吸収パッド1を肌面側から見た概略平面図である。
【
図4】展開かつ伸長状態の使い捨ておむつ100を肌面側から見た概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
使用済みの使い捨て吸収性物品をリサイクル処理して得られたリサイクルパルプを備え、前記リサイクルパルプは、排泄物由来の糖を有することを特徴とする吸収性物品である。
【0010】
このような吸収性物品によれば、使用済みの使い捨て吸収性物品から得られたリサイクルパルプを備える吸収性物品であっても、少なくとも糖レベルまで分解されたリサイクルパルプを備えた吸収性物品であることで、排泄物由来の色や匂いを軽減させることができる。
【0011】
かかる吸収性物品であって、前記吸収性物品は、抗菌剤を有することが望ましい。
【0012】
このような吸収性物品によれば、リサイクルパルプが排泄物由来の糖を有する場合であっても、吸収性物品が抗菌剤を有することで、浮遊菌等の付着によってリサイクルパルプが腐敗してしまう恐れを軽減させることができる。
【0013】
かかる吸収性物品であって、前記リサイクルパルプが、前記抗菌剤を有することが望ましい。
【0014】
このような吸収性物品によれば、リサイクルパルプが排泄物由来の糖を有する場合であっても、リサイクルパルプが抗菌剤を有することで、浮遊菌等の付着によってリサイクルパルプが腐敗してしまう恐れを軽減させることができる。
【0015】
かかる吸収性物品であって、前記リサイクルパルプを備えるリサイクル部品を有し、前記リサイクル部品に厚さ方向から隣接する隣接部材が前記抗菌剤を有することが望ましい。
【0016】
このような吸収性物品によれば、リサイクルパルプが排泄物由来の糖を有する場合であっても、リサイクル部品に厚さ方向から隣接する隣接部材が抗菌剤を有することで、隣接部材に隣接するリサイクル部品のリサイクルパルプが浮遊菌等の付着によって腐敗してしまう恐れを軽減させることができる。
【0017】
かかる吸収性物品であって、前記リサイクルパルプを備えるリサイクル部品を有し、前記リサイクル部品は、液体透過性シートであることが望ましい。
【0018】
このような吸収性物品によれば、液体(水分)との接触が多い液体透過性シートにリサイクルパルプを用いた場合でも、抗菌剤によって、浮遊菌等の付着でリサイクルパルプが腐敗してしまう恐れを軽減させることができる。
【0019】
かかる吸収性物品であって、前記リサイクルパルプを備えるリサイクル部品を有し、前記リサイクル部品は、吸収性コアであることが望ましい。
【0020】
このような吸収性物品によれば、液体(水分)を保持する吸収性コアにリサイクルパルプを用いた場合でも、抗菌剤によって、浮遊菌等の付着でリサイクルパルプが腐敗してしまう恐れを軽減させることができる。
【0021】
かかる吸収性物品であって、前記吸収性コアの少なくとも一部を覆うコアラップシートを有し、前記コアラップシートが、前記抗菌剤を有することが望ましい。
【0022】
このような吸収性物品によれば、吸収性コアにリサイクルパルプを用いた場合でも、吸収性コアの少なくとも一部を覆うコアラップシートが抗菌剤を有することで、浮遊菌等の付着でリサイクルパルプが腐敗してしまう恐れを軽減させることができる。
【0023】
かかる吸収性物品であって、前記吸収性コアは、高吸収性ポリマーを備え、前記高吸収性ポリマーが、前記抗菌剤を有することが望ましい。
【0024】
このような吸収性物品によれば、吸収性コアに設けられた高吸収性ポリマーが抗菌剤を有することで、浮遊菌等の付着でリサイクルパルプが腐敗してしまう恐れを軽減させることができる。
【0025】
かかる吸収性物品であって、前記リサイクルパルプが、死滅した大腸菌を有さないことが望ましい。
【0026】
このような吸収性物品によれば、リサイクルパルプが排泄物由来の糖を有する場合であっても、死滅した大腸菌を有さないことで、リサイクルパルプの腐敗を軽減させることができる。
【0027】
かかる吸収性物品であって、前記吸収性物品は、前記リサイクルパルプを含む液体吸収性パルプを有し、前記リサイクルパルプの重量を前記液体吸収性パルプの重量で除した値が15%以下であることが望ましい。
【0028】
このような吸収性物品によれば、リサイクルパルプの重量を液体吸収性パルプの重量で除した値が15%より多い場合よりも、相対的に排泄物由来の糖の量を少なくしやすくなり、リサイクルパルプが排泄物由来の糖を有する場合であっても、浮遊菌等の付着でリサイクルパルプが腐敗してしまう恐れを軽減させることができる。
【0029】
===実施形態===
限りある資源の消費を抑制し、環境への負荷を軽減させることを目的として、使い捨て吸収性物品をリサイクルして、新たな吸収性物品を製造することが望まれている。本発明に係る吸収性物品は、使用済みの使い捨て吸収性物品をリサイクル処理して得られたパルプ(以下、「リサイクルパルプ」ともいう。)を有している。リサイクルパルプは、使用済みの使い捨て吸収性物品を回収し、リサイクル処理を施すことで回収されたリサイクルパルプである。以下の実施形態において、リサイクルパルプを有するリサイクル部品を用いた吸収性物品について説明する。
【0030】
===第1実施形態===
第1実施形態に係る吸収性物品の一例として、尿や便等の排泄物を吸収する吸収パッド1について説明する。
【0031】
<吸収パッド1の基本的構成>
図1は、展開かつ伸長状態の、第1実施形態に係る吸収性物品としての吸収パッド1を肌面側から見た概略平面図である。
図2は、
図1中のA-A矢視断面図である。
図3は、
図1中のB-B矢視断面図である。
図1等において、中央線C-Cは、伸長状態における幅方向の中央線であり、中央線CLは、伸長状態における長手方向の中央線である。
【0032】
図1~
図3に示すように、吸収パッド1は、長手方向、幅方向、及び厚さ方向が設定されている。吸収パッド1を構成する各部材が積層された方向を厚さ方向という。厚さ方向において、着用者に接する側を肌側と称し、その反対側を非肌側と称す。吸収パッド1の長手方向は、縦方向ともいい、着用者の腹側に設けられる側が前側であり、着用者の背側に設けられる側が後側である。吸収パッド1の幅方向は、左右方向ともいい、本実施形態の吸収パッド1は幅方向に対称な構成である。
【0033】
吸収パッド1の展開状態とは、吸収パッド1をその長手方向に開くことで、吸収パッド1を平面上に展開した状態のことである。また、吸収パッド1の伸長状態とは、吸収パッド1全体(製品全体)を皺なく伸長させた状態、具体的には、吸収パッド1を構成する各資材の寸法が、吸収パッド1が有する弾性部材の影響を受けない状態で、その資材単体の寸法と一致又はそれに近い長さになるまで、吸収パッド1を伸長させた状態である。
【0034】
図1~
図3に示すように、吸収パッド1は、表面シート34と、裏面シート35と、吸収体33と、外装シート36と、一対のサイドシート37とを備える。表面シート34は、厚さ方向において吸収体33よりも肌側に設けられた液透過性のシートであり、エアスルー不織布やスパンボンド不織布等を例示できる。裏面シート35は、吸収体33よりも厚さ方向の非肌側に設けられた液不透過性のシートであり、合成樹脂フィルムや、疎水性のSMS不織布等を例示できる。また、表面シート34及び裏面シート35に、熱可塑性樹脂(ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等)が含まれることが好ましい。
【0035】
一対のサイドシート37は、表面シート34の肌側面上の、幅方向の両側部から幅方向の外側に延出するシート(例えば不織布等)である。一対のサイドシート37は、熱可塑性樹脂(ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等)が含まれている。外装シート36は、厚さ方向において裏面シート35よりも非肌側に位置する液不透過性のシートである。
【0036】
吸収体33は、厚さ方向において表面シート34と裏面シート35との間に位置する、液吸収性及び液保持性を有する部材である。本実施形態では、吸収体33としては、肌側に位置する第1吸収性コア33aと、第1吸収性コア33aの非肌側に位置する第2吸収性コア33bと、第1吸収性コア33aの肌側に位置する第3吸収性コア33cを含む。
【0037】
第1吸収性コア33a及び第2吸収性コア33bとしては、高吸収性ポリマー(SAP)を含む液体吸収性パルプが所定の形状に成形されたものを例示できる。液体吸収性パルプとしては、例えば、木材パルプ、架橋パルプ、非木材パルプ、再生セルロース、半合成セルロース等のセルロース系繊維を例示できる。本実施形態の第1吸収性コア33aの形状は、長手方向に長く、長手方向の中央付近に、幅方向の内側に向かう括れ部を備える略瓢箪形状又は略砂時計状である。一方、第2吸収性コア33bの形状は、平面視で長手方向に長く、幅方向が短い略矩形状を有する。
【0038】
第3吸収性コア33cは、親水性のシートに高吸収性ポリマー(SAP)を付着させて層状に成形されたSAPシートを例示できる。第3吸収性コア33cは、長手方向に長い略矩形形状であり、幅方向における中央部、且つ、吸収パッド1の長手方向における背側に設けられており、具体的には、長手方向において、スリット45a(後述)より背側に設けられている。なお、吸収体33の形状について特に制限はない。
【0039】
また、本実施形態においては、第1吸収性コア33aの肌側に第1コアラップシート38が設けられており、第2吸収性コア33bを非肌側から包むように第2コアラップシート39が設けられている。また、第3吸収性コア33cの肌側に第3コアラップシート41が設けられ、第3吸収性コア33cの非肌側に第4コアラップシート42が設けられている。各コアラップシート38、39、41、42には、液体吸収性繊維としてのパルプ繊維の他に、熱可塑性樹脂が含まれていてもよい。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等を例示できる。
【0040】
また、吸収パッド1は、防漏壁48を有する。防漏壁48は、着用者の肌面側に起立可能に構成されており、左右一対で設けられている。防漏壁48は、
図2及び
図3に示すように、サイドシート37の幅方向の内側側部が非肌側に折り返されて、その折り返された部位に長手方向に伸縮する防漏壁弾性部材60が設けられることにより形成されている。防漏壁48によって排泄物の横漏れを抑制できる。なお、
図1では、糸状の防漏壁弾性部材60が左右に1本ずつ配置されているが、これらの数や配置は特に限定されるものではない。
【0041】
本実施形態では、吸収体33において、第1吸収性コア33a及び第2吸収性コア33bは、それぞれ肌側から非肌側に向かって厚さ方向に窪んだ、好ましくは貫通したスリット45a、45bを有する。スリット45aは、吸収パッド1の長手方向の中央よりも腹側寄りに位置し、吸収体33の幅方向の中心を通って長手方向に延在する。スリット45bは、吸収パッド1の長手方向の中央よりも背側寄りに位置し、吸収体33の幅方向の中心を通って長手方向に延在する。スリット45a及びスリット45bは、平面視で少なくとも一部が重なるように形成される。これにより、排泄された尿が第1吸収性コア33aのスリット45aを介して第2吸収性コア33bに達したとき、その尿を、スリット45bを介して第2吸収性コア33bの更に内部へ引き込むことができる。スリット45a、45bの平面視での長手方向の寸法及び幅方向の寸法等は、第1吸収性コア33a及び第2吸収性コア33bのサイズ等を考慮して適宜調整される。
【0042】
本実施形態の第3吸収性コア33cは、厚さ方向に圧搾されており、第3吸収性コア33cのうち、圧搾されていない部分は、突出部45cとして、肌側に突出している。
【0043】
本実施形態の吸収体33は、一対の圧搾部46を備える。一対の圧搾部46は、スリット45aの幅方向の両外側に、長手方向に沿って延在する。一対の圧搾部46は、第1吸収性コア33aの肌側の表面から、第1吸収性コア33a及び第2吸収性コア33bを厚さ方向に圧搾することで形成される。ただし、一対の圧搾部46は、表面シート34及び吸収体33の両方を圧搾して形成されてもよい。一対の圧搾部46の各々は、平面視で、直線状に形成されるが、その形状は特に制限されるものではない。一対の圧搾部46により、尿が表面シート34上を外側に向かって移動して外部に漏れることを予防し、尿を吸収体33内へ引き込み易くすることができる。
【0044】
<吸収パッド1のリサイクル部品>
吸収パッド1は、リサイクルパルプを有する吸収性コア33a、33bを備える。つまり、吸収パッド1の吸収性コア33a、33bは、それぞれ使用済みの使い捨て吸収性物品(例えば、使用済みの使い捨ておむつ)をリサイクル処理して得られたリサイクルパルプを含むリサイクル部品である。リサイクルパルプは、パルプ繊維及び高吸収性ポリマー(SAP)を備えた使い捨て吸収性物品をリサイクル処理することで得られたパルプ(パルプ繊維)である。リサイクル処理を施す使い捨て吸収性物品としては、使い捨ておむつに限らず、尿取りパッド、生理用ナプキン、ショーツ型ナプキン等であってもよい。
【0045】
本実施形態の吸収パッド1は、リサイクル部品として、第1吸収性コア33aと第2吸収性コア33bを備えたが、吸収パッド1が備えるリサイクル部品が、第1吸収性コア33aのみであってもよく、第2吸収性コア33bのみであってもよい。以下、リサイクル部品として第1吸収性コア33aについて説明するが、リサイクル部品としては第2吸収性コア33bも同様である。
【0046】
吸収パッド1の第1吸収性コア33aは、使用済みの使い捨ておむつをリサイクル処理して得られたリサイクルパルプを有している。第1吸収性コア33aは、上述のとおり、高吸収性ポリマー(SAP)を含む液体吸収性パルプが所定の形状に成形されたものであり、この液体吸収性パルプの全てがリサイクルパルプであってもよく、液体吸収性パルプが、リサイクルパルプと、リサイクルを行っていないパルプ(以下、「バージンパルプ」ともいう。)とを任意の比率で混ぜ合わせたものでもよい。
【0047】
<リサイクル処理について>
リサイクル処理としては、任意の方法を採用でき、例えば、オゾン処理、酸性溶液処理、熱処理、紫外線(UV)照射、放射線照射、又は次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、過酢酸、二酸化塩素、過マンガン酸カリウム等による処理等、及びこれらの組み合わせを採用することができる。以下、オゾン処理による使用済みの使い捨ておむつのリサイクル処理の一例を説明する。以下の工程のリサイクル処理で、使用済みの使い捨ておむつからリサイクルパルプが回収される。
【0048】
(1)脱水工程
まず、使用済みの使い捨ておむつ中の高吸収性ポリマー(SAP)が吸収した水分を取り除く脱水工程を行う。具体的には、使用済みの使い捨ておむつを、多価金属イオンを含む水溶液又はpHが2.5以下の酸性水溶液中に浸漬させることで、水分を吸収して膨潤した高吸収性ポリマー(SAP)を脱水する。高吸水性ポリマー(SAP)を脱水することで、パルプ繊維と高吸水性ポリマーの分離が容易になる。本実施形態では、硫酸溶液中に使用済み使い捨ておむつを浸漬させて脱水処理を行う。脱水工程における酸性水溶液の種類、濃度、水溶液の温度、水溶液の量、及び浸漬時間は、任意に調整可能である。
【0049】
(2)分解工程
続いて、使用済みの使い捨ておむつに物理的な力を作用させることによって、使用済みの使い捨ておむつをパルプ繊維とその他の素材に分解する分解工程を行う。使用済みの使い捨ておむつは、一般的に、パルプ繊維、高吸水性ポリマー、不織布、プラスチックフィルム、ゴム等の各素材から構成されている。この分解工程では、使用済みの使い捨ておむつを各素材に分解する。分解の程度は、パルプ繊維の少なくとも一部が回収できる程度に分解されればよく、部分的であってもよい。使用済みの使い捨ておむつに物理的な力を作用させる方法としては、攪拌、叩き、突き、振動、引き裂き、切断、破砕等を例示することができる。例えば、攪拌は、洗濯機のような攪拌機付きの処理槽内で行うことができる。本実施形態では、縦型洗濯機の要領で洗浄しながら攪拌衝撃で使用済みの使い捨ておむつを粉砕し、分解する。分解工程における水溶液の量、水溶液の温度、分解時間は、任意に調整可能である。
【0050】
この分解工程は、多価金属イオンを含む水溶液又はpHが2.5以下の酸性水溶液中で行うことが好ましい。通常、水中で分解すると、高吸水性ポリマーが吸水して膨潤し、槽内の固形分濃度が高まり、機械的な分解操作の処理効率が低下してしまうが、多価金属イオンを含む水溶液又はpHが2.5以下の酸性水溶液を用いることで、使用済みの使い捨ておむつ中の高吸水性ポリマー中の水分を脱水することができ、分解操作の処理効率の低下を軽減することができる。
【0051】
多価金属イオンとしては、アルカリ土類金属イオン、遷移金属イオン等を使用できる。高吸水性ポリマー1g(乾燥質量)あたりの多価金属イオンの量や水溶液中の多価金属イオンの濃度は、高吸水性ポリマーの量や処理時間等に応じて、任意に調整可能である。
【0052】
アルカリ土類金属イオンとしては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムのイオンが挙げられる。土類金属イオンを含む水溶液としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム等の水溶液が挙げられ、特に塩化カルシウム水溶液が好ましい。
【0053】
遷移金属イオンとしては、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、銅等のイオンが挙げられる。遷移金属イオンを含む水溶液として、遷移金属の無機酸塩、有機酸塩、錯体等の水溶液が挙げられる。無機酸塩としては、塩化鉄、硫酸鉄、燐酸鉄、硝酸鉄等の鉄塩、塩化コバルト、硫酸コバルト、燐酸コバルト、硝酸コバルト等のコバルト塩、塩化ニッケル、硫酸ニッケル等のニッケル塩、塩化銅、硫酸銅等の銅塩などが挙げられる。有機酸塩類としては、乳酸鉄、酢酸コバルト、ステアリン酸コバルト、酢酸ニッケル、酢酸銅等が挙げられる。
【0054】
pHが2.5以下の酸性水溶液としては、pHが2.5以下であれば、無機酸、有機酸のいずれの水溶液を用いることができる。酸性水溶液のpHを2.5以下とすることで、高吸水性ポリマーの脱水を行いやすくする。一方、酸性水溶液のpHを0.5以上とすることで、強酸のために回収されるパルプ繊維が損傷する恐れを軽減させることができる。
【0055】
(3)分離工程
その後、分解した状態の使用済みの使い捨ておむつを、パルプ繊維(リサイクルパルプ)とその他の部材(高吸収性ポリマー、不織布、プラスチックフィルム、ゴム等)の混合物に分離する分離工程を行う。分離工程では、パルプ繊維の少なくとも一部を分離回収する。また、パルプ繊維と一緒にその他の素材が分離回収されてもよい。なお、分離工程を経て得られたパルプ繊維は、高吸収性ポリマー(SAP)と分離させるものの、この分離工程で全ての高吸収性ポリマー(SAP)をパルプ繊維から分離することは難しく、分離工程で回収されたパルプ繊維には、分離されなかった高吸収性ポリマー(SAP)が含まれる。分離したパルプ繊維を得る方法としては、分解された構成素材の比重差を利用して水中で沈殿分離する方法、分解されたサイズの異なる構成素材を所定の網目を有するスクリーンを通して分離する方法、サイクロン式遠心分離機で分離する方法を例示できる。
【0056】
(4)オゾン処理工程
そして、分離されたパルプ繊維にオゾン処理を施す。オゾン処理工程は、分離工程で分離されたパルプ繊維をオゾン含有水溶液に浸漬する工程である。オゾン処理工程では、パルプ繊維の汚れを分解し、パルプ繊維の消毒、漂白、消臭を行う。また、パルプ繊維が備える高吸収性ポリマー(SAP)を分解し、パルプ繊維に付着する菌(大腸菌)等も分解する。このオゾン処理工程で、使用済みの使い捨ておむつが吸収した排泄物を含む汚れを分解、消毒、漂白、消臭を行うことができる。このオゾン処理工程は、排泄物を糖レベルまで分解する程度の処理を行う。また、排泄物に起因する菌(大腸菌等)だけでなく、使い捨ておむつに付着する浮遊菌等も分解する。使い捨ておむつに用いられていたホットメルト接着剤等の接着剤もオゾン処理工程で酸化劣化させる。
【0057】
オゾン含有水溶液は、オゾンが溶解した水溶液であり、例えば、(三菱電機株式会社製オゾン発生装置OS-25V、エコデザイン株式会社製オゾン水曝露試験機ED-OWX-2など)を用いることで調製可能である。
【0058】
オゾン含有水溶液のオゾン濃度は、排泄物を糖にまで分解できる濃度であり、1~50質量ppmが好ましい。オゾン含有水溶液に浸漬する時間は、排泄物を糖にまで分解できる時間であり、5~120分が好ましく、オゾン含有水溶液のオゾン濃度に応じて調整可能である。オゾン含有水溶液のオゾン濃度(ppm)とオゾン含有水溶液に浸漬する時間(分)の積(以下「CT値」ともいう。)は、100~6000ppm・分が好ましい。オゾン含有水溶液の量は、排泄物を糖にまで分解できる量であり、パルプ繊維100質量部(乾燥基準)に対し、300~5000質量部が好ましい。オゾン含有水溶液のオゾン濃度、オゾン含有水溶液に浸漬する時間、CT値、オゾン含有水溶液の量は、それぞれ、排泄物の分解を十分に行うことができる範囲で、且つパルプ繊維を損傷する恐れがない範囲で調整可能である。
【0059】
オゾン処理工程において、周知の方法でパルプ繊維をオゾン含有水溶液に浸漬することができる。例えば、容器にオゾン含有水溶液を入れ、そのオゾン含有水溶液の中にパルプ繊維を入れる。浸漬している間、容器内を攪拌してもよく、攪拌しなくてもよい。また、容器に入れたオゾン含有水溶液の中にオゾンガスを吹き込み、オゾンガスの泡の上昇による流れを発生させてもよい。オゾン含有水溶液の温度は、高吸水性ポリマーを分解することができる温度であればよく、オゾン含有水溶液を加熱しても、室温のままでもよい。
【0060】
(5)脱水工程
オゾン処理工程終了後に、オゾン含有水溶液を排出(脱水)する脱水工程を行う。オゾン含有水溶液を排出する方法(脱水方法)としては、例えば、容器の底部に栓を設け、その栓を抜いて、オゾン含有水溶液をスクリーンメッシュに通過させて排出してもよい。
【0061】
(6)洗浄工程
続いて、パルプ繊維を洗浄する洗浄工程を行う。洗浄方法としては、例えば、パルプ繊維をメッシュ袋に入れ、水ですすぎ洗いをする。
【0062】
(7)脱水工程
洗浄工程後に、脱水工程を行う。脱水方法としては、例えば、メッシュ袋に入った洗浄したパルプ繊維を、脱水機で脱水することにより行うことができる。洗浄工程(6)と脱水工程(7)は、1回ずつでもよく、交互に複数回繰り返してもよい。
【0063】
(8)乾燥工程
そして、パルプ繊維を乾燥する乾燥工程を行う。乾燥方法としては、例えば、105℃の熱風乾燥機で所定時間乾燥させることができる。この乾燥工程によって、浮遊菌等の付着によるパルプ繊維の腐敗を軽減させることができる。
【0064】
以上の工程を経て、使用済みの使い捨ておむつからリサイクルパルプ(パルプ繊維)を得ることができる。ただし、リサイクル処理方法としては、上記の方法に限られない。例えば、上記リサイクル処理方法のうち、まず、使用済みの使い捨ておむつに、(4)オゾン処理工程を行い、その後、脱水工程(5)を行い、洗浄工程(6)と分解工程(2)を合わせて行い、分離工程(3)を行って、分離されたパルプ繊維に、必要に応じて洗浄及び脱水を行いつつ、パルプ繊維(リサイクルパルプ)を回収するものであってもよい。
【0065】
<リサイクルパルプについて>
リサイクル処理前の使用済みの使い捨ておむつ(吸収性物品)は、尿や便等の排泄物を吸収している。そして、排泄物を吸収した使用済みの使い捨ておむつにリサイクル処理を施すことで得られたリサイクルパルプは、リサイクル処理によって、排泄物由来の糖を有する。つまり、排泄物由来の糖は、排泄物が分解された糖であり、使用済みの使い捨ておむつのリサイクル処理は、排泄物を糖レベルまで分解する処理である。例えば、便には、水分、食べ物のカス、胃腸の上皮細胞、腸内細菌の死骸等によって構成されており、便を含む排泄物をリサイクル処理で糖レベルまで分解することで、リサイクルパルプが糖を有するものとなる。なお、必ずしも使用済みの使い捨ておむつの排泄物の全てがリサイクル処理で糖にまで分解されている必要はない。使用済みの使い捨ておむつの排泄物の少なくとも一部が糖にまで分解され、回収されたリサイクルパルプが排泄物由来の糖を有していればよい。
【0066】
回収されたリサイクルパルプが有する糖の存在を検出及び糖の定量分析する方法としては、例えば、アンスロン硫酸法やフェノール硫酸法等の周知の方法を用いることができる。本実施形態のリサイクルパルプは、「三訂版 粗飼料の品質評価ガイドブック」(自給飼料利用研究会 編、出版:日本草地畜産種子協会、発行:2009年2月)に記載された「2.4.4 単・小糖類分析手順」(アンスロン法)で、単糖類及び二糖類の小糖類を検出及び定量分析している。本実施形態の吸収パッド1で用いられているリサイクルパルプは、リサイクルパルプ1kg当たり44.7mgの糖類を有している。
【0067】
使用済みの使い捨ておむつのリサイクル処理が排泄物を糖レベルにまで分解する処理である場合は、リサイクルパルプは、排泄物の色や匂いを生じさせない状態まで不純物質が分解されたものとなる。上述のように、吸収パッド1のリサイクルパルプは、オゾン処理工程(4)で、排泄物由来の汚れ、匂い等を分解することで、排泄物が糖レベルにまで分解され、オゾン処理中に残留する菌は滅菌されている。使用済みの使い捨ておむつから得られたリサイクルパルプを備えた吸収パッド1であっても、排泄物が糖レベルにまで分解されていることで、吸収パッド1の着用者に、排泄物由来の色や匂いを認識させにくくなり、着用者の吸収パッド1に対する清潔な印象や安心感を向上させることができる。
【0068】
上述のとおり、排泄物由来の糖を有するリサイクルパルプは、使用済みの使い捨ておむつから回収されたものであり、排泄物に起因する菌を有する使い捨ておむつに、上述のオゾン処理(4)のようなリサイクル処理を施すことで、排泄物に起因する大腸菌等の菌を分解している。しかし、排泄物に起因する菌を完全に分解していても、リサイクルパルプとして保管している間、製造過程、吸収パッド1として保管・流通されている間、着用中などにおいて、空気中の水分や排泄物の液体(水分)等と、リサイクルパルプが有する糖を栄養として、リサイクルパルプや吸収パッド1に浮遊菌等の菌(細菌、真菌)が付着したり、菌が繁殖したりする恐れがある。そのため、吸収パッド1が抗菌剤を備えることが好ましい。これによって、吸収パッド1に細菌や真菌が付着し、繁殖してしまう恐れを軽減させることができる。
【0069】
また、吸収パッド1のうち、液体を保持し続ける部材である吸収体33が抗菌剤を有することが好ましく、リサイクルパルプにおける菌の付着や繁殖を軽減させるために、リサイクルパルプ自体が抗菌剤を有することがより好ましい。本実施形態の吸収パッド1は、第1吸収性コア33a中のリサイクルパルプが抗菌剤を有している。これによって、第1吸収性コア33aにリサイクルパルプを用いた場合でも、浮遊菌等の付着で第1吸収性コア33aが腐敗してしまう恐れを軽減させることができる。
【0070】
なお、「抗菌剤を有する」とは、各部材の表面に抗菌剤が付着している状態、各部材の内部に抗菌剤が浸透している状態、又は各部材の内側に位置する素材が抗菌剤を有している状態をいう。例えば、「リサイクルパルプが抗菌剤を有する」とは、リサイクルパルプの表面に抗菌剤が付着している状態、又はリサイクルパルプの繊維に抗菌剤が浸透している状態をいう。また、「抗菌剤を有する」状態は、例えば、ハローの有無によって評価する定性試験方法(JIS L 1902 ハロー法)等で測定することができる。
【0071】
このように、リサイクルパルプが排泄物由来の糖を有する場合であっても、抗菌剤によって、吸収パッド1に浮遊菌等の菌が付着したり、菌が繁殖することを軽減させて、リサイクルパルプが腐敗する恐れを軽減させることができる。また、吸収パッド1を清潔な状態に保ちやすくなるため、着用者の肌に悪影響を及ぼす恐れを軽減させることができるため、着用者に安心して着用できる吸収パッド1を提供することができる。
【0072】
抗菌剤としては、周知のものを用いることができ、また、殺菌剤や除菌剤として知られるものを抗菌剤として用いてもよい。例えば、カチオン性抗菌剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩、グアニジン系抗菌剤(たとえばグルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン)、ヘキセチジン、メタロニダゾール、及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。また、カチオン性殺菌剤としては、ビグアニド系殺菌剤・ヨード系殺菌剤・チアゾリン系殺菌剤・有機酸系殺菌剤、及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。また、例えば、Ag、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、ゼオライト、酸化チタンなどの無機物を含む化合物無機化合物(無機系抗菌剤)や、天然系の抗菌剤でもよい。アルコール系、フェノール系、ハロゲン系の有機系の抗菌剤であってもよい。
【0073】
本実施形態の吸収パッド1は、抗菌剤を有しており、具体的には、リサイクルパルプに抗菌剤処理が施されている。リサイクルパルプが抗菌剤を有するための方法としては、上述のリサイクル処理(1)~(8)を行った後に、液体状の抗菌剤にリサイクルパルプを浸したり、リサイクルパルプに液体状の抗菌剤を吹きかけたりしてもよく、また、上述のリサイクル処理のオゾン処理工程(4)の後の洗浄工程(6)で使用する洗浄液に抗菌剤を添加することで、洗浄工程(6)で、洗浄処理と抗菌剤処理とを同時に行うことができる。なお、リサイクル処理における洗浄工程(6)で、洗浄処理と抗菌剤処理とを同時に行う場合には、抗菌剤として、カチオン性抗菌剤を用いることが好ましい。パルプ繊維はアニオン性なので、カチオン性抗菌剤はパルプ繊維に吸着し、パルプ繊維に吸着したカチオン性抗菌剤が、容易に脱落しづらくして、最終的に得られるリサイクルパルプにカチオン性抗菌剤が残存させやすくなる。なお、「カチオン性抗菌剤を有する」か否かは、例えば、ブロムフェノールブルーを用いた方法で確認することができる。具体的には、ブロムフェノールブルーを酸・アルカリの緩衝状態で水溶化した液を対象製品に噴霧すると、カチオン系抗菌剤が付与されている(カチオン性抗菌剤を有する)場合には青色を呈色し、付与されていない(カチオン性抗菌剤を有さない)場合は黄色となる。
【0074】
また、リサイクルパルプを有するリサイクル部品に厚さ方向から隣接する隣接部材が、抗菌剤を有することが好ましい。本実施形態の吸収パッド1のリサイクル部品は、第1吸収性コア33aであり、
図2に示すように、第1吸収性コア33aの肌側から隣接する第1コアラップシート38と、第1吸収性コア33aの非肌側から隣接する第2コアラップシート39が隣接部材である。吸収パッド1が、排泄物由来の糖を有するリサイクルパルプを備える場合であっても、第1吸収性コア33aに厚さ方向から隣接する第1コアラップシート38又は第2コアラップシート39の少なくとも一方が抗菌剤を有することで、第1吸収性コア33aのリサイクルパルプに浮遊菌が付着したり、繁殖したりする恐れを軽減させ、第1吸収性コア33a中のリサイクルパルプが腐敗する恐れを軽減させることができる。コアラップシート38、39に抗菌剤を設ける方法としては、例えば、上述の抗菌剤のいずれか1つ又は複数の抗菌剤の薬液にコアラップシート38、39を浸漬させたり、コアラップシート38、39に薬液を吹きかけることで、コアラップシート38、39が抗菌剤を有する状態となる。
【0075】
なお、本実施形態では、リサイクルパルプ自体が抗菌剤を有し、且つ、第1コアラップシート38又は第2コアラップシート39の少なくとも一方が抗菌剤を有したが、これに限られない。第1吸収性コア33aのリサイクルパルプが抗菌剤を有さずに、第1コアラップシート38又は第2コアラップシート39が抗菌剤を有するものでもよい。リサイクルパルプの近くに抗菌剤を有する第1コアラップシート38又は第2コアラップシート39を設けることで、リサイクルパルプへの菌の付着や繁殖による腐敗の恐れを軽減させることができる。また、第1吸収性コア33aに対し、第1コアラップシート38と第2コアラップシート39の両方(厚さ方向の両側)が抗菌剤を有することで、よりリサイクルパルプに菌が付着したり、繁殖したりする恐れを軽減させやすくなる。
【0076】
第1吸収性コア33aが高吸収性ポリマー(SAP)を備え、高吸収性ポリマー(SAP)が、抗菌剤を有することが好ましい。特に、本実施形態のように、第1吸収性コア33aが、液体吸収性パルプとしてリサイクルパルプを備え、且つ抗菌剤を有する高吸収性ポリマー(SAP)を備えることがより好ましい。抗菌剤を有する高吸収性ポリマー(SAP)によって、リサイクルパルプへの浮遊菌等の付着や菌の繁殖を軽減させて、リサイクルパルプが腐敗する恐れを軽減させることができる。また、第1吸収性コア33aは、液体吸収性パルプとしてリサイクルパルプを備え、且つ、リサイクルパルプの近傍に抗菌剤を有する高吸収性ポリマー(SAP)を備えることで、リサイクルパルプの菌による腐敗の恐れをより軽減させることができる。
【0077】
なお、本実施形態では、リサイクルパルプ(第1吸収性コア33a)が抗菌剤を有し、第1吸収性コア33a中の高吸収性ポリマー(SAP)が抗菌剤を有するものとしたが、これに限られない。第1吸収性コア33aにおけるリサイクルパルプが抗菌剤を有さずに、第1吸収性コア33aにおける高吸収性ポリマー(SAP)が抗菌剤を有するものであってもよい。第1コアラップシート38又は第2コアラップシート39が抗菌剤を有する場合でも、抗菌剤を有さない場合でも、第1吸収性コア33aにおける高吸収性ポリマー(SAP)が抗菌剤を有していてもよい。いずれの場合でも、リサイクルパルプの近くに高吸収性ポリマー(SAP)に設けられた抗菌剤を配置することができるため、リサイクルパルプの菌の付着や繁殖による腐敗の恐れを軽減させることができる。高吸収性ポリマー(SAP)に抗菌剤を設ける方法としては、例えば、上述の抗菌剤のいずれか1つ又は複数の抗菌剤の薬液に高吸収性ポリマー(SAP)を浸漬させたり、高吸収性ポリマー(SAP)に薬液を吹きかけることで、高吸収性ポリマー(SAP)が抗菌剤を有する状態とすることができる。
【0078】
本実施形態において、第1吸収性コア33aにおけるリサイクルパルプ、高吸収性ポリマー(SAP)、又はコアラップシート38、39が抗菌剤を有する形態を説明したが、これに限られない。抗菌剤は、吸収パッド1の任意の部材及び位置に設けることができる。例えば、液体透過性シートである表面シート34やサイドシート37等が抗菌剤を有していてもよい。例えば、表面シート34は、液体(水分)との接触が多い部材であるため、この表面シート34が抗菌剤を有することで、表面シート34に付着する菌を軽減させ、表面シート34で菌が繁殖する恐れを軽減させることができる。また、各部材が有する抗菌剤は、各部材の全面に亘って配置されているものであってもよく、各部材に任意のパターンで配置したものであってもよい。また、抗菌剤を有する部材において、抗菌剤の量が多い部分や、抗菌剤の量が少ない部分を有していてもよく、抗菌剤の濃度が濃い部分や、抗菌剤の濃度が薄い部分を有していてもよい。
【0079】
また、吸収パッド1が、リサイクルパルプを含む液体吸収性パルプを有している場合において、リサイクルパルプの重量を、液体吸収性パルプの重量で除した値が、15%以下であることが好ましい。吸収パッド1が有する液体吸収性パルプは、吸収性コア33a、33bに限らず、例えば、コアラップシート38、39、41、42や表面シート34等のシート部材にパルプ繊維を用いたものであってもよい。吸収パッド1が備えるリサイクルパルプの重量が少ないほど、相対的に吸収パッド1が備える排泄物由来の糖の量を少なくすることができる。そのため、リサイクルパルプの重量を液体吸収性パルプの重量で除した値を15%以下とすることで、リサイクルパルプの重量を液体吸収性パルプの重量で除した値が15%より大きい場合よりも、吸収パッド1が備える排泄物由来の糖の量を相対的に少なくさせやすくなり、リサイクルパルプが排泄物由来の糖を有する場合であっても、排泄物由来の糖の量を少なくすることで、浮遊菌等の菌の栄養分を減少させることができるため、菌の付着や繁殖の恐れを軽減させることができる。吸収パッド1が有するリサイクルパルプの重量について、リサイクルパルプの重量を液体吸収性パルプの重量で除した値が、15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0080】
また、第1吸収性コア33a(リサイクル部品)は、リサイクルパルプとバージンパルプからなる液体吸収性パルプを有しており、第1吸収性コア33aにおいて、リサイクルパルプの重量を第1吸収性コア33a中の液体吸収性パルプの重量で除した値が10%以下であることが好ましい。本実施形態では、第1吸収性コア33aにおいて、リサイクルパルプの重量を第1吸収性コア33a中の液体吸収性パルプの重量で除した値が10%以下とし、バージンパルプの重量を第1吸収性コア33a中の液体吸収性パルプの重量で除した値を90%以上としている。
【0081】
吸収パッド1が有するリサイクルパルプが、死滅した大腸菌を有さないことが好ましい。吸収パッド1が、排泄物由来の糖を有するリサイクルパルプを備える場合もで、リサイクルパルプが死滅した大腸菌を有さないほどのレベルまで処理がなされていることで、リサイクルパルプが死滅した大腸菌を有さず、大腸菌によるリサイクルパルプの腐敗の恐れを軽減させることができる。
【0082】
===第2実施形態===
第2実施形態に係る吸収性物品の一例としての大人用のテープ型使い捨ておむつ100(以下、「おむつ100」とも呼ぶ)を例に挙げて説明する。
【0083】
<テープ型使い捨ておむつ100の基本的構成>
図4は、展開かつ伸長状態の、第2実施形態に係る吸収性物品としての使い捨ておむつ100を肌面側から見た概略平面図である。
図5は、
図4中のD-D矢視断面図である。
【0084】
おむつ100は、
図4に示すように、展開かつ伸長状態において、長手方向、幅方向、及び厚さ方向を有する。また、おむつ100は、長手方向に3つの領域に区分され、着用者の腹側部に当てられる腹側胴回り部101Aと、着用者の背側部に当てられる背側胴回り部101Cと、長手方向において腹側胴回り部101Aと背側胴回り部101Cの間に位置する股下部101Bを有する。また、
図5に示すように、おむつ100を構成する各部材が積層された方向を厚さ方向という。厚さ方向において、着用者に接する側を肌側と称し、その反対側を非肌側と称す。おむつ100の長手方向は、縦方向ともいい、着用者の腹側に設けられる側が前側であり、着用者の背側に設けられる側が後側である。おむつ100の幅方向は、左右方向ともいい、本実施形態のおむつ1は幅方向に対称な構成である。なお、おむつ100の展開状態及び伸長状態については、第1実施形態の吸収パッド1の展開状態及び伸長状態の定義と同様である。
【0085】
おむつ100は、
図5に示すように、吸収性コア103と、吸収性コア103よりも厚さ方向の肌側に設けられた表面シート104と、吸収性コア103よりも厚さ方向の非肌側に設けられた裏面シート105及び外装シート106と、一対のサイドシート107とを備える。
【0086】
表面シート104は、液透過性のシートであればよく、エアスルー不織布やスパンボンド不織布等を例示できる。裏面シート105は、液不透過性のシートであればよく、合成樹脂フィルムや、疎水性のSMS不織布等を例示できる。また、表面シート104及び裏面シート105には、熱可塑性樹脂(ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等)が含まれていることが好ましい。
【0087】
一対のサイドシート107は、表面シート104の肌側面上の、幅方向の両側部から幅方向の外側に延出するシート(例えば不織布等)である。外装シート106は、厚さ方向において裏面シート105よりも非肌側に位置する液不透過性のシートであり、おむつ100の外形形状、すなわち、長手方向の中央部(股下部101B)が幅方向の内側に括れた形状を成す。
【0088】
吸収性コア103としては、高吸収性ポリマー(SAP)を含むパルプ等の液体吸収性繊維が所定の形状に成形されたものを例示できる。また、本実施形態の液透過性の肌側コアラップシート108は吸収性コア103の肌側に隣接して配置されており、さらに、液透過性の非肌側コアラップシート109が吸収性コア103の非肌側に隣接して配置されている。肌側コアラップシート108及び非肌側コアラップシート109は、例えばティッシュ等によって構成されるが、詳細については後述する。
【0089】
また、おむつ100は、
図4に示すように、背側胴回り部101Cから幅方向の両外側に延出するフラップ部110を備える。フラップ部110は、基材シート111と、基材シート111上に接合された第1止着部材112と第2止着部材113とを有する。基材シート11は、サイドシート107と外装シート106との間に接合されている。第1止着部材112と第2止着部材113とは、長手方向に間隔を空けて配置されており、おむつ100の装着時に、腹側胴回り部101Aに設けられたターゲット部114に止着可能に構成されている。第1止着部材112と第2止着部材113としては、フック材を例示できる。なお、止着部材は、左右それぞれに一つずつ設けられていてもよい。また、おむつ100は、フラップ部110の基材シート111を備えずに、サイドシート107及び外装シート106が幅方向の外側に延出し、サイドシート107上に止着部材が接合されていてもよい。
【0090】
おむつ100は、幅方向の両側部において、長手方向に伸縮する脚回り弾性部材116を有する(
図5参照)。脚回り弾性部材116は、幅方向に間隔を空けて左右3本ずつ設けられている。より詳細には、最も幅方向の内側に位置する脚回り弾性部材116は、表面シート104と裏面シート105との間に配置されている。残りの2本の脚回り弾性部材116は、サイドシート107と裏面シート105との間に配置されている。尚、脚回り弾性部材116の本数は特に限定されるものではない。
【0091】
また、おむつ100は、内側防漏ギャザー117及び外側防漏ギャザー118を有する。内側防漏ギャザー117及び外側防漏ギャザー118は、着用者の肌面側に起立可能に構成されており、左右一対で設けられている。内側防漏ギャザー117は、いわゆる内倒れのギャザーであり、外側防漏ギャザー118は、いわゆる外倒れのギャザーである。内側防漏ギャザー117は、外側防漏ギャザー118及び脚回り弾性部材116よりも幅方向の内側に設けられている。なお、内側防漏ギャザー117の少なくとも一部が外側防漏ギャザー118よりも幅方向の内側に位置していればよい。なお、おむつ100は、必ずしも内側防漏ギャザー17及び外側防漏ギャザー118を有する必要はなく、また、外側防漏ギャザー118のみを有していてもよい。
【0092】
内側防漏ギャザー117は、
図5に示すように、表面シート104が折り畳まれることによって形成されている。具体的には、内側防漏ギャザー117は、
図5に示される折り曲げ線f1にて表面シート104が幅方向の外側から内側、且つ肌側に折り曲げられ、折り曲げ線f2にて表面シート104が幅方向の内側から外側、且つ非肌側に折り返されて、その折り返された部位に長手方向に伸縮する内側防漏弾性部材171が設けられることにより形成されている。内側防漏弾性部材171としては、例えば糸ゴムが挙げられる。
【0093】
外側防漏ギャザー118は、
図5に示すように、サイドシート107が折り畳まれることによって形成されている。具体的には、外側防漏ギャザー118は、
図5に示される折り曲げ線f3にてサイドシート107が幅方向の内側から外側、且つ肌側に折り曲げられ、折り曲げ線f4にてサイドシート107が幅方向の外側から内側、且つ非肌側に折り返されて、その折り返された部位に長手方向に伸縮する外側防漏弾性部材181が設けられることにより形成されている。外側防漏弾性部材181としては、例えば糸ゴムが挙げられる。内側防漏ギャザー117及び外側防漏ギャザー118によって、排泄物の横漏れを抑制できる。
【0094】
おむつ100の背側胴回り部101Cの長手方向の端部、且つ、幅方向の中央部には、複数の胴回り弾性部材121により形成されるウエストギャザー122が配置されている。ウエストギャザー122により、着用時に着用者の胴部の形状に沿うように変形してフィットすると共に、おむつ100の位置ずれが抑制される。
【0095】
<おむつ100のリサイクル部品>
おむつ100は、リサイクル部品として、リサイクルパルプを有する肌側コアラップシート108、非肌側コアラップシート109を備える。つまり、おむつ100の肌側コアラップシート108、非肌側コアラップシート109は、それぞれ使用済みの使い捨て吸収性物品(例えば、使用済み使い捨ておむつ)から回収したパルプをリサイクルしたリサイクルパルプを含むリサイクル部品である。
図5に示すように、肌側コアラップシート108は、吸収性コア103の少なくとも一部を肌側から覆うシートであり、非肌側コアラップシート109は、吸収性コア103の少なくとも一部を非肌側から覆うシートである。リサイクル処理を施す吸収性物品は、使い捨ておむつに限らず、尿取りパッド、生理用ナプキン、ショーツ型ナプキン等であってもよい。
【0096】
本実施形態のおむつ100は、リサイクル部品として、肌側コアラップシート108と非肌側コアラップシート109を備えたが、おむつ100が備えるリサイクル部品が、肌側コアラップシート108のみであってもよく、非肌側コアラップシート109のみであってもよい。以下、リサイクル部品として、肌側コアラップシート108について説明するが、非肌側コアラップシート109についても同様である。
【0097】
肌側コアラップシート108は、使用済みの吸収性物品から回収したリサイクルパルプを原料として、増粘剤等の添加剤を加えてシート状に成形した所謂ティッシュである。肌側コアラップシート108に含まれるパルプが、リサイクルパルプのみであってもよく、リサイクルパルプとバージンパルプとが任意の比率で混ぜ合わされたものであってもよい。
【0098】
リサイクル処理としては、任意の方法を採用でき、例えば、オゾン処理、酸性溶液処理、熱処理、紫外線(UV)照射、放射線照射、又は次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、過酢酸、二酸化塩素、過マンガン酸カリウム等による処理等、及びこれらの組み合わせを採用することができる。肌側コアラップシート108に用いられるリサイクルパルプは、第1実施形態と同様のリサイクル処理で、リサイクル処理を施す使い捨て吸収性物品から回収することができる。
【0099】
<リサイクルパルプについて>
リサイクル処理前の使用済みの吸収性物品は、尿や便等の排泄物を吸収している。そして、排泄物を吸収した使用済みの使い捨ておむつにリサイクル処理を施すことで得られたリサイクルパルプは、排泄物由来の糖を有する。つまり、排泄物由来の糖は、排泄物が分解された糖である。例えば、便には、水分、食べ物のカス、胃腸の上皮細胞、腸内細菌の死骸等によって構成されており、便を含む排泄物をリサイクル処理で糖レベルまで分解することで、リサイクルパルプが糖を有するものとなる。本実施形態のおむつ100で用いられている第1実施形態と同じリサイクルパルプを用いており、リサイクルパルプが有する糖類は、リサイクルパルプ1kg当たり44.7mgである。回収されたリサイクルパルプが有する糖の存在を検出及び糖の定量分析する方法は、上述の第1実施形態と同様の方法で行うことができる。
【0100】
使用済みの吸収性物品のリサイクル処理が排泄物を糖レベルにまで分解する処理である場合は、リサイクルパルプは、排泄物の色や匂いを生じさせない状態まで不純物質が分解されたものとなる。第1実施形態と同様に、肌側コアラップシート108のリサイクルパルプは、オゾン処理工程(4)で、排泄物由来の汚れ、匂い等を分解することで、排泄物が糖レベルにまで分解され、残留する菌は滅菌されている。使用済みの吸収性物品から得られたリサイクルパルプを備えたおむつ100であっても、排泄物が糖レベルにまで分解されていることで、おむつ100の着用者に、排泄物由来の色や匂いを認識させにくくなり、着用者のおむつ100に対する清潔な印象や安心感を向上させることができる。
【0101】
排泄物由来の糖を有するリサイクルパルプは、使用済みの吸収性物品から回収されたものであり、リサイクル処理(オゾン処理等)によって、排泄物に起因する大腸菌等の菌が分解されている。しかし、リサイクルパルプとして保管している間、製造過程、おむつ100として保管・流通されている間、着用中などに、空気中の水分や排泄物の液体等の水分と、リサイクルパルプが有する糖を栄養として、リサイクルパルプやおむつ100に浮遊菌等の菌(細菌、真菌)が付着したり、菌が繁殖したりする恐れがある。そのため、おむつ100が抗菌剤を備えることが好ましい。抗菌剤によって、おむつ100に細菌や真菌が付着したり、繁殖したりする恐れを軽減させることができる。
【0102】
また、おむつ100のうち、リサイクル部品である肌側コアラップシート108が抗菌剤を有することが好ましく、肌側コアラップシート108中のリサイクルパルプが抗菌剤を有することがより好ましい。本実施形態のおむつ100は、肌側コアラップシート108中のリサイクルパルプが抗菌剤を有している。おむつ100の肌側コアラップシート108にリサイクルパルプを用いた場合でも、肌側コアラップシート108中のリサイクルパルプが抗菌剤を有することで、また、肌側コアラップシート108が抗菌剤を有することで、リサイクルパルプに浮遊菌等の付着及び繁殖で、リサイクルパプルが腐食する恐れを軽減させることができる。
【0103】
このように、リサイクルパルプが排泄物由来の糖を有する場合であっても、浮遊菌等の菌の付着及び繁殖を軽減させて、リサイクルパルプが腐敗する恐れを軽減させることができる。また、おむつ100を清潔な状態に保ちやすくなるため、着用者の肌に悪影響を及ぼす恐れを軽減させることができるため、着用者に安心して着用できるおむつ100を提供することができる。
【0104】
第1実施形態と同様に、「抗菌剤を有する」とは、各部材の表面に抗菌剤が付着している状態、各部材の内部に抗菌剤が浸透している状態、又は各部材の内側に位置する素材が抗菌剤を有している状態をいう。おむつ100に設ける抗菌剤としては、第1実施形態に示した抗菌剤と同様のものを用いることができ、リサイクルパルプ等に抗菌剤を設ける方法も、第1実施形態と同様の方法を用いることができる。また、「抗菌剤を有する」状態については、第1実施形態と同様のハロー法(JIS L 1902)等の方法で測定・確認することができる。
【0105】
なお、肌側コアラップシート108のように、リサイクルパルプをティッシュとして用いる場合には、抄紙時に泡立ちにくい抗菌剤を用いる(有する)ことが望ましい。起泡性を持たない抗菌剤としては、例えば、ビグアナイド系抗菌剤、ヨード系抗菌剤を挙げることができる。
【0106】
また、リサイクルパルプを有するリサイクル部品に厚さ方向から隣接する隣接部材が、抗菌剤を有することが好ましい。本実施形態のおむつ100のリサイクル部品は、肌側コアラップシート108であり、
図5に示すように、肌側コアラップシート108の肌側から隣接する表面シート104と、肌側コアラップシート108の非肌側から隣接する吸収性コア103が隣接部材である。おむつ100が、排泄物由来の糖を有するリサイクルパルプを備える場合であっても、リサイクル部品である肌側コアラップシート108に厚さ方向から隣接する表面シート104又は吸収性コア103の少なくとも一方が抗菌剤を有することで、肌側コアラップシート108に浮遊菌が付着したり、繁殖したりする恐れを軽減させ、肌側コアラップシート108中のリサイクルパルプが腐敗してしまう恐れを軽減させることができる。表面シート104及び吸収性コア103に抗菌剤を設ける方法としては、第1実施形態の方法と同様に行うことができる。
【0107】
なお、本実施形態では、リサイクルパルプ(肌側コアラップシート108)自体が抗菌剤を有するものとし、且つ、表面シート104又は吸収性コア103の少なくとも一方が抗菌剤を有するものとしたが、これに限られない。肌側コアラップシート108(リサイクルパルプ)が抗菌剤を有さずに、表面シート104又は吸収性コア103が抗菌剤を有するものであってもよく、肌側コアラップシート108、表面シート104、吸収性コア103の全てが抗菌剤を有していてもよい。
【0108】
吸収性コア103が高吸収性ポリマー(SAP)を備え、高吸収性ポリマー(SAP)が、抗菌剤を有することが好ましい。本実施形態のおむつ100のように、肌側コアラップシート108にリサイクルパルプが用いられている場合、リサイクルパルプの近くに吸収性コア103中の抗菌剤を有する高吸収性ポリマー(SAP)を配置することができるため、リサイクルパルプが糖を有する場合でも、リサイクルパルプに菌が付着したり、繁殖したりする恐れを軽減させ、リサイクルパルプの腐敗を軽減させることができる。
【0109】
なお、本実施形態では、リサイクルパルプ(肌側コアラップシート108)が抗菌剤を有し、吸収性コア103の高吸収性ポリマー(SAP)が抗菌剤を有するものとしたが、これに限られない。肌側コアラップシート108(リサイクルパルプ)が抗菌剤を有さずに、吸収性コア103の高吸収性ポリマー(SAP)が抗菌剤を有していてもよい。いずれの場合でも、リサイクルパルプの近くに高吸収性ポリマー(SAP)に設けられた抗菌剤を配置することができるため、リサイクルパルプの菌の付着や繁殖による腐敗の恐れを軽減させることができる。高吸収性ポリマー(SAP)に抗菌剤を設ける方法としては、第1実施形態と同様の方法で行うことができる。
【0110】
本実施形態において、肌側コアラップシート108、吸収性コア103及び吸収性コア103の高吸収性ポリマー(SAP)、表面シート104が抗菌剤を有する形態を説明したが、これに限られない。抗菌剤は、おむつ100の任意の部材及び位置に設けることができる。また、各部材が有する抗菌剤は、各部材の全面に亘って配置されているものであってもよく、各部材に任意のパターンで配置したものであってもよい。また、抗菌剤を有する部材において、抗菌剤の量が多い部分や、抗菌剤の量が少ない部分を有していてもよく、抗菌剤の濃度が濃い部分や、抗菌剤の濃度が薄い部分を有していてもよい。
【0111】
また、おむつ100が、リサイクルパルプを含む液体吸収性パルプを有している場合において、リサイクルパルプの重量を、液体吸収性パルプの重量で除した値が、15%以下であることが好ましい。おむつ100が有する液体吸収性パルプは、コアラップシート108、109に限らず、例えば、吸収性コア103や表面シート104等にパルプ繊維を用いたものであってもよい。おむつ100が備えるリサイクルパルプの重量が少ないほど、相対的におむつ100が備える排泄物由来の糖の量を少なくすることができる。そのため、リサイクルパルプの重量を液体吸収性パルプの重量で除した値を15%以下とすることで、リサイクルパルプの重量を液体吸収性パルプの重量で除した値が15%より大きい場合よりも、おむつ100が備える排泄物由来の糖の量を相対的に少なくさせやすくなり、リサイクルパルプが排泄物由来の糖を有する場合であっても、排泄物由来の糖の量を少なくすることで、浮遊菌等の菌の栄養分を減少させることができるため、菌の付着や繁殖の恐れを軽減させることができる。おむつ100が有するリサイクルパルプの重量について、リサイクルパルプの重量を液体吸収性パルプの重量で除した値が、15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0112】
また、肌側コアラップシート108(リサイクル部品)は、リサイクルパルプとバージンパルプからなる液体吸収性パルプを有しており、肌側コアラップシート108において、リサイクルパルプの重量を第1吸収性コア33a中の液体吸収性パルプの重量で除した値が10%以下であることが好ましい。本実施形態では、肌側コアラップシート108において、リサイクルパルプの重量を肌側コアラップシート108中の液体吸収性パルプの重量で除した値が10%以下とし、バージンパルプの重量を肌側コアラップシート108の液体吸収性パルプの重量で除した値を90%以上としている。
【0113】
おむつ100が有するリサイクルパルプが、死滅した大腸菌を有さないことが好ましい。おむつ100が、排泄物由来の糖を有するリサイクルパルプを備える場合もで、リサイクルパルプが死滅した大腸菌を有さないほどのレベルまでリサイクル処理がなされていることで、リサイクルパルプが死滅した大腸菌を有さず、大腸菌によるリサイクルパルプの腐敗の恐れを軽減させることができる。
【0114】
===その他の実施形態===
上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。
【0115】
上述の実施形態において、吸収パッド1と大人用のテープ型使い捨ておむつ100を例に挙げて説明したが、これに限られない。本発明の吸収性物品は、子供用のテープ型使い捨ておむつ、大人用又は子供用のパンツ型使い捨ておむつ、尿取りパッド、生理用ナプキン、ショーツ型ナプキン、ペット用の使い捨ておむつ等としても適用可能である。
【0116】
上述の実施形態において、吸収パッド1では吸収性コア33a、33bをリサイクル部品とし、大人用のテープ型使い捨ておむつ100では、コアラップシート108、109をリサイクル部品としたが、これに限られない。吸収パッド1のコアラップシート38、39、41、42をリサイクル部品としてもよく、おむつ100の吸収性コア103をリサイクル部品としてもよい。また、吸収パッド1の吸収性コア33a、33bとコアラップシート38、39、41、42の両方をリサイクル部品にしてもよく、おむつ100の吸収性コア33a、33bとコアラップシート108、109の両方をリサイクル部品としてもよい。さらに、吸収性物品(吸収パッド1、おむつ100)における吸収性コア、コアラップシートに限らず、任意の部材を、リサイクルパルプを有するリサイクル部品としてもよい。
【0117】
例えば、第1実施形態の吸収パッド1において、リサイクル部品を液体透過性の表面シート34がリサイクルパルプを用いて形成されている場合でも、吸収パッド1が抗菌剤を有していることで、排泄物由来の糖を有するリサイクルパルプに菌が付着したり、菌が繁殖したりする恐れを軽減させることができる。また、表面シート34がリサイクルパルプを用いて形成されている場合に、表面シート34が抗菌剤を有することが好ましく、この表面シート34を構成するリサイクルパルプが抗菌剤を有することがより好ましい。
【符号の説明】
【0118】
1 吸収パッド(吸収性物品)、
33 吸収体、
33a 第1吸収性コア(吸収性コア、リサイクル部品)、
33b 第2吸収性コア(吸収性コア、リサイクル部品)、
33c 第3吸収性コア、
34 表面シート、
35 裏面シート、36 外装シート、
37 サイドシート、
38 第1コアラップシート(隣接部材)、
39 第2コアラップシート(隣接部材)、
41 第3コアラップシート、
42 第4コアラップシート、
45a、45b スリット、46 一対の圧搾部、48 防漏壁、
60 防漏壁弾性部材、
100 おむつ(吸収性物品)、
101A 腹側胴回り部、101B 股下部、101C 背側胴回り部、
103 吸収性コア(隣接部材)、
104 表面シート(隣接部材)、
105 裏面シート、106 外装シート、
107 サイドシート、
108 肌側コアラップシート(コアラップシート、リサイクル部品)、
109 非肌側コアラップシート(コアラップシート、リサイクル部品)、
110 フラップ部、111 基材シート、
112 第1止着部材、113 第2止着部材、
114 ターゲット部、
116 脚回り弾性部材、
117 内側防漏ギャザー、118 外側防漏ギャザー、
121 胴回り弾性部材、122 ウエストギャザー、
171 内側防漏弾性部材、181 外側防漏弾性部材