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特開2023-128751絶縁膜の形成方法および基板処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128751
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】絶縁膜の形成方法および基板処理システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20230907BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20230907BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
H01L21/316 X
H01L21/318 B
H01L21/31 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033322
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】大場 大輔
(72)【発明者】
【氏名】松木 信雄
(72)【発明者】
【氏名】森貞 佳紀
【テーマコード(参考)】
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
5F045AA08
5F045AB32
5F045AB33
5F045AC01
5F045AC07
5F045AC08
5F045AC09
5F045AC12
5F045AC15
5F045AC16
5F045AC17
5F045AD04
5F045AE17
5F045AE19
5F045AE21
5F045AE23
5F045BB19
5F045DP03
5F045DQ17
5F045EB08
5F045EE19
5F045EF05
5F045EH05
5F045EH14
5F045EH18
5F045EK07
5F045EM09
5F045EN04
5F045HA16
5F058BA09
5F058BC02
5F058BC04
5F058BC08
5F058BC10
5F058BF07
5F058BF23
5F058BF25
5F058BF27
5F058BF30
5F058BF37
5F058BH02
5F058BH07
5F058BH16
5F058BJ05
5F058BJ06
(57)【要約】
【課題】流動性CVDを用いて、基板の微細凹部へ高品質な絶縁膜を形成することができる絶縁膜の形成方法および基板処理システムを提供する。
【解決手段】絶縁膜の形成方法は、基板上にプリカーサーガスを供給し、プラズマ重合により流動性オリゴマーを生成して成膜することと、流動性オリゴマーを成膜した後の基板に対し、流動性オリゴマーが流動性を保持したまま、その少なくとも一部が水素終端されるようにプラズマ処理を行うことと、その後、基板に対してプラズマ処理を含むアニール処理を施して、絶縁膜を形成することとを有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にプリカーサーガスを供給し、プラズマ重合により流動性オリゴマーを生成して基板に成膜することと、
前記流動性オリゴマーを成膜した後の前記基板に対し、前記流動性オリゴマーが流動性を保持したまま、その少なくとも一部が水素終端されるようにプラズマ処理を行うことと、
その後、前記基板に対してプラズマ処理を含むアニール処理を施して、絶縁膜を形成することと、
を有する、絶縁膜の形成方法。
【請求項2】
前記流動性オリゴマーを成膜すること、および前記水素終端されるようにプラズマ処理を行うことは、前記基板の温度を80℃以下にして行われる、請求項1に記載の絶縁膜の形成方法。
【請求項3】
前記水素終端されるようにプラズマ処理を行う際に、水素を含むガスのプラズマを用いる、請求項1または請求項2に記載の絶縁膜の形成方法。
【請求項4】
前記水素終端されるようにプラズマ処理を行う際のプラズマは、60MHz以下の高周波電力を用いて生成される、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の絶縁膜の形成方法。
【請求項5】
前記プラズマ重合は、前記プリカーサーガスに非酸化性の水素含有ガスを加えてプラズマ処理することにより行われる、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の絶縁膜の形成方法。
【請求項6】
前記プリカーサーガスを構成するプリカーサーは、アルキル基終端を有する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の絶縁膜の形成方法。
【請求項7】
前記アニール処理は、前記基板の温度を80℃超えにして行われる、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の絶縁膜の形成方法。
【請求項8】
前記アニール処理に含まれる前記プラズマ処理は、水素を含むガスを含有するプラズマにより行われる、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の絶縁膜の形成方法。
【請求項9】
前記アニール処理に含まれる前記プラズマ処理は、炭素および水素を含むガスを含有するプラズマにより行われる、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の絶縁膜の形成方法。
【請求項10】
前記アニール処理に含まれる前記プラズマ処理は、VHF帯~マイクロ波帯の周波数を用いて行う、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の絶縁膜の形成方法。
【請求項11】
前記アニール処理に含まれる前記プラズマ処理は、60MHz以上の周波数を用いて行う、請求項10に記載の絶縁膜の形成方法。
【請求項12】
前記アニール処理を行う際にガスを供給するガスシャワーヘッドが金属により構成されており、前記アニール処理に含まれる前記プラズマ処理は、60MHz以上300MHz以下の周波数を用いて行う、請求項11に記載の絶縁膜の形成方法。
【請求項13】
前記アニール処理は、前記ガスシャワーヘッドの温度を80℃超えにして行われる、請求項12に記載の絶縁膜の形成方法。
【請求項14】
前記アニール処理に含まれる前記プラズマ処理の際のプラズマシース電圧は30eV以下である、請求項10から請求項13のいずれか一項に記載の絶縁膜の形成方法。
【請求項15】
前記流動性オリゴマーを成膜することと、前記水素終端されるようにプラズマ処理を行うこととを複数回繰り返す、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の絶縁膜の形成方法。
【請求項16】
前記流動性オリゴマーを成膜することと、前記水素終端されるようにプラズマ処理を行うことと、前記アニール処理を施して、絶縁膜を形成することとを複数回繰り返す、請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の絶縁膜の形成方法。
【請求項17】
前記流動性オリゴマーを成膜することと、前記水素終端されるようにプラズマ処理を行うこととは、同じ処理空間で実施する、請求項1から請求項16のいずれか一項に記載の絶縁膜の形成方法。
【請求項18】
前記水素終端されるようにプラズマ処理を行うことと、前記アニール処理を施して、絶縁膜を形成することとは、異なる処理空間で実施する、請求項1から請求項17のいずれか一項に記載の絶縁膜の形成方法。
【請求項19】
前記プリカーサーガスを構成するプリカーサーは、シリコン含有プリカーサーまたはボロン含有プリカーサーである、請求項1から請求項18のいずれか一項に記載の絶縁膜の形成方法。
【請求項20】
前記シリコン含有プリカーサーは、Si-O結合含有プリカーサーである、請求項19に記載の絶縁膜の形成方法。
【請求項21】
前記Si-O結合含有プリカーサーは、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリメトキシ・ジシロキサンから選択された少なくとも1種である、請求項20に記載の絶縁膜の形成方法。
【請求項22】
前記シリコン含有プリカーサーは、Si-N結合含有プリカーサーである、請求項19に記載の絶縁膜の形成方法。
【請求項23】
前記Si-N結合プリカーサーは、ビス(tert-ブチルアミノ)シラン、ビス(tert-ブチルアミノ)メチルシラン、ビス(エチルメチルアミノ)シラン、トリジメチルアミノシラン、メチルトリジメチルアミノシラン、ヘキサメチルシクロトリシラザンから選択された少なくとも1種である、請求項22に記載の絶縁膜の形成方法。
【請求項24】
前記ボロン含有プリカーサーは、ジボラン、ボラジン、トリエチルボラン、トリエチルアミンボラン、トリ(ジメチルアミノ)ボラン、トリ(エチルメチルアミノ)ボラン、トリメチルボラジンから選択された少なくとも1種である、請求項19に記載の絶縁膜の形成方法。
【請求項25】
前記流動性オリゴマーは、基本構造としてSiOH、SiNH、SiCOH、SiCNH、SiCH、BNH、BCNH、SiBCNH、SiBNHのいずれかを含む、請求項19に記載の絶縁膜の形成方法。
【請求項26】
前記絶縁膜は、SiO、SiN、SiCO、SiCN、SiC、BN、BCN、SiBCN、SiBNのいずれかを含む、請求項25に記載の絶縁膜の形成方法。
【請求項27】
基板に処理を行う複数の処理装置と、
前記複数の処理装置の間で基板を搬送する搬送機構と、
制御部と、
を有し、
前記制御部は、
いずれかの前記処理装置により、基板上にプリカーサーガスを供給し、プラズマ重合により流動性オリゴマーを生成して基板に成膜することと、
いずれかの前記処理装置により、前記流動性オリゴマーを成膜した後の前記基板に対し、前記流動性オリゴマーが流動性を保持したまま、その少なくとも一部が水素終端されるようにプラズマ処理を行うことと、
その後、いずれかの処理装置により前記基板に対してプラズマ処理を含むアニール処理を施して、絶縁膜を形成することと、
を実行して絶縁膜を形成するように、前記複数の処理装置と前記搬送機構とを制御する、基板処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、絶縁膜の形成方法および基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程において、基板上の微細な立体構造へシリコンを含む絶縁膜を埋め込む工程が存在する。このようなシリコンを含む絶縁膜の埋め込みには、従来、塗布技術が用いられてきたが、より良好な膜質を得ることができる技術として、チャンバ内で原料ガスの分子量を大きくし、液体のような流動性をもたせて成膜する流動性CVDが提案されている。このような流動性CVDを用いた技術として、特許文献1には、酸素含有シリコン化合物ガスと非酸化性の水素含有ガスとを、プラズマの存在下で反応させて、流動性のシラノールコンパウンドを基板上に成膜し、その後基板をアニールして絶縁膜を形成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/010004号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、流動性CVDを用いて、基板の微細凹部へ高品質な絶縁膜を形成することができる絶縁膜の形成方法および基板処理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る絶縁膜の形成方法は、基板上にプリカーサーガスを供給し、プラズマ重合により流動性オリゴマーを生成して成膜することと、前記流動性オリゴマーを成膜した後の前記基板に対し、前記流動性オリゴマーが流動性を保持したまま、その少なくとも一部が水素終端されるようにプラズマ処理を行うことと、その後、前記基板に対してプラズマ処理を含むアニール処理を施して、絶縁膜を形成することと、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、流動性CVDを用いて、基板の微細凹部へ高品質な絶縁膜を形成することができる絶縁膜の形成方法および基板処理システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る絶縁膜の形成方法を示すフローチャートである。
図2】プラズマ重合により基板上に流動性オリゴマーを成膜する際の工程を説明するための模式図である。
図3】一実施形態に係る絶縁膜の形成方法の典型的な具体例を説明するための図である。
図4】絶縁膜の形成方法を実施する基板処理システムの一例を概略的に示す概略構成図である。
図5図4の基板処理システムにおいて、ステップST1の流動性オリゴマーの生成および成膜、ならびにステップST2の水素終端プラズマ処理を行う第1の処理装置の一例を示す断面図である。
図6】実験例において得られた、ステップST2の高周波パワーとRI値との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施の形態について具体的に説明する。
【0009】
<経緯>
まず、経緯について説明する。
基板上の微細な立体構造へ絶縁膜を埋め込む際に、流動性CVDではチャンバ内で、流動性の中間体を生成して微細な立体構造へ絶縁膜を埋め込むため、塗布技術よりも良質な膜が得られる。
【0010】
しかし、流動性CVDとして例えば特許文献1の技術を用いる場合、プラズマ処理(プラズマ重合)により流動性のシラノールコンパウンド(典型的には流動性オリゴマー)を基板上に成膜し、その後基板をアニールして絶縁膜を形成するが、埋め込み性と膜質を両立させることが困難である。すなわち、埋め込み性を考慮した場合、流動性オリゴマーの流動性が高いほうがよく、そのためにはアルキル基終端を有する分子構造にすることが有利である。しかし、そのような分子構造の場合、残留カーボンが多くなって膜が低密度化し、かつ、アニール後のシュリンクが大きくなってボイドやクラックが発生するため、膜質が低下する。逆に、膜質を良好に維持するため、流動性オリゴマーのアルキル基終端を減少させた場合、流動性が小さくなり埋め込み性が低下してやはりボイドが発生するおそれがある。
【0011】
このような点を解決するための検討がなされた結果、基板上にプリカーサーガスを供給し、プラズマ重合により流動性オリゴマーを生成した後、流動性オリゴマーが流動性を保持したまま、その少なくとも一部が水素終端されるようにプラズマ処理を行い、その後、基板に対してプラズマ処理を含むアニール処理を施して絶縁膜を形成する方法に至った。
【0012】
これにより、流動性オリゴマーを、アルキル基終端等を含む流動性が高い構造にして埋め込みを行っても、その後に流動性オリゴマーが流動性を保持したまま水素終端されるように改質されるので、最終アニールで固化する際の残留カーボンおよびシュリンクを小さくすることができる。このため、膜中のボイドやクラックの発生や、膜の低密度化を引き起こさずに、基板の微細凹部へ高品質な絶縁膜を形成することができる。
【0013】
<具体的な実施形態>
次に、具体的な実施形態について説明する。
【0014】
[絶縁膜の形成方法]
図1は、一実施形態に係る絶縁膜の形成方法を示すフローチャートである。
本実施形態の絶縁膜の形成方法は、以下のステップST1、ステップST2、ステップST3を含む。ステップST1では基板上にプリカーサーガスを供給し、プラズマ重合により流動性オリゴマーを生成する。ステップST2では、流動性オリゴマーを成膜した後の基板に対し、流動性オリゴマーが流動性を保持したまま、その少なくとも一部が水素終端されるようにプラズマ処理を行う。ステップST3では、ステップST2の水素終端プラズマ処理の後、基板に対しプラズマ処理を含むアニール処理を施し、絶縁膜を形成する。
【0015】
以下、詳細に説明する。
ステップST1において、基板は特に限定されないが、シリコン等の半導体基板(半導体ウエハ)が例示される。基板としては、表面に微細な立体構造を有するものを用い得る。微細な立体構造は、トレンチやホールのような微細凹部を含んでいる。
【0016】
ステップST1では、プリカーサーガスを構成するプリカーサーとして、シリコン(Si)含有プリカーサーまたはボロン(B)含有プリカーサーを用いることができる。Si含有プリカーサーは、Si-O結合含有プリカーサーまたはSi-N結合含有プリカーサーであってよい。
【0017】
Si-O結合含有プリカーサーとしては、アルコキシシラン系化合物(アルコキシシラン系モノマー)を挙げることができる。アルコキシシラン系化合物としては、(R1)Si(-O-R2)4-a(ただし、R1は、-CH、-C、-C、-C、および-CHのいずれか、R2は、-CHまたは-C、aは0、1、2、または3である)で表されるものを用いることができる。具体的には、テトラメトキシシラン(TMOS;Si(OCH)、メチルトリメトキシシラン(MTMOS;Si(OCHCH)、テトラエトキシシラン(TEOS;Si(OC)、ジメチルジメトキシシラン(DMDMOS;Si(OCH(CH)、トリエトキシシラン(SiH(OC)、トリメトキシシラン(SiH(O)、トリメトキシ・ジシロキサン(Si(OCHOSi(OCH)等を挙げることができる。これらの化合物は、単独で用いてもよいし、2以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
Si-N結合含有プリカーサーとしては、ビス(tert-ブチルアミノ)シラン(BTBAS)、ビス(tert-ブチルアミノ)メチルシラン(BTBAS-MS)、ビス(エチルメチルアミノ)シラン(BEMAS)、トリジメチルアミノシラン(3DMAS)、メチルトリジメチルアミノシラン(3DMAMS)、ヘキサメチルシクロトリシラザン(HMCT Silazane)等を挙げることができる。これらの化合物は、単独で用いてもよいし、2以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
B含有プリカーサーとしては、ジボラン(B)、ボラジン(Borazine)、トリエチルボラン(TEB)、トリエチルアミンボラン(BTEA)、トリ(ジメチルアミノ)ボラン(TDMAB)、トリ(エチルメチルアミノ)ボラン(TEMAB)、トリメチルボラジン(TMB)等を挙げることができる。これらの化合物は、単独で用いてもよいし、2以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
ステップST1では、以上のようなプリカーサーガスを用いてプラズマ重合により流動性オリゴマーを生成して流動性CVDを行う。プラズマ重合は、上述のプリカーサーガスに非酸化性の水素含有ガスを加えてプラズマを生成することにより行うことができる。非酸化性の水素含有ガスとしては、Hガス、NHガス、SiHガスを挙げることができ、これら単独であっても、2以上の組み合わせであってもよい。
【0021】
プラズマ重合する際のプラズマとしては、He、Ne、Ar、Kr、Nのような不活性ガスを含むプラズマ、または、不活性ガスと水素を含むプラズマ、例えばAr/Hプラズマを用いることができる。また、プラズマ生成手法は特に限定されず、容量結合プラズマ(CCP)、誘導結合プラズマ(ICP)、マイクロ波プラズマ(MWP)等種々の手法を用いることができる。これらの中ではCCPが好ましい。また、プラズマ重合の際には、プリカーサーはプラズマ化してもしなくてもよい。プリカーサーをプラズマ化しない場合は、チャンバ内にプリカーサーを導入するとともに、水素含有ガスを含むプラズマをチャンバ内に導入するリモートプラズマを用いることができる。
【0022】
上述したプリカーサーと非酸化性の水素含有ガスとの反応により、プリカーサーのアルキル基やアルコキシ基の一部が離脱するとともに、重合して流動性を有するオリゴマーが生成され、この流動性オリゴマーが基板に成膜される。このときの成膜は、図2に示すように行われる。すなわち、図2の(a)に示す表面に微細な凹部201が形成された基板200において、(b)に示すように、プラズマ重合により生成された流動性オリゴマー202が表面張力により凹部201に流入する。そして、(c)に示すように、流動性オリゴマー202が凹部201に充填される。
【0023】
オリゴマーとは、比較的少数(十数分子まで)のモノマーが結合した重合体(多量体)をいう。本実施形態において、流動性オリゴマーとしては、基本構造としてSiOH、SiNH、SiCOH、SiCNH、SiCH、BNH、BCNH、SiBCNH、SiBNHのいずれかを含むものが例示される。
【0024】
ステップST1において、流動性オリゴマーとしては、流動性を増大させて埋め込み性を良好にする観点から、アルキル基終端を有するものが好ましい。例えば、上記基本構造を含む分子が複数結合し、水素終端の一部がアルキル基に置換されているものが例示される。
【0025】
また、流動性オリゴマーの流動性を確保する観点から、プラズマ重合処理の際の基板温度が低いほうがよく、特に、基板温度を80℃以下にすることにより、十分な流動性を確保して埋め込み性を良好にすることができる。より良好な流動性を得る観点から、基板温度は30℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましい。基板温度が-50℃程度に低くなっても流動性オリゴマーの流動性を確保することができる。
【0026】
このように、流動性オリゴマーとしてアルキル基終端を有するものを用い、かつ基板温度を80℃以下、好ましくは30℃以下にすることにより、アスペクト比が10以上の微細凹部にも内部に空洞を形成させることなく良好な埋め込み性を得ることができる。
【0027】
ステップST2においては、流動性オリゴマーが流動性を保持したまま、その少なくとも一部が水素終端されるようにプラズマ処理を行う。すなわち、ステップST2のプラズマ処理では、プラズマ中のイオン・ラジカルによる置換反応により、ステップST1で生成された流動性オリゴマーの末端に存在するカーボン含有基、例えばアルキル基を除去して水素終端になるように改質する。なお、本実施形態では、水素終端にはOH終端も含まれる。
【0028】
ステップST2のプラズマ処理は、水素を含むガスのプラズマを用いることが好ましい。水素を含むガスのプラズマを用いることにより、流動性オリゴマーの水素終端を容易に行うことができる。水素を含むガスとしては、HガスやNHガス等を挙げることができ、この中ではHガスが好ましい。ステップST2のプラズマ処理は、水素を含むガスを用いず、例えばHeガス等の不活性ガスのプラズマを用いてもよい。この場合には、流動性オリゴマー中の水素を利用して水素終端を行うことができる。
【0029】
ステップST2のプラズマ処理の際のプラズマ生成手法は特に限定されず、容量結合プラズマ(CCP)、誘導結合プラズマ(ICP)、マイクロ波プラズマ(MWP)等種々の手法を用いることができる。これらの中では容量結合プラズマ(CCP)が好ましい。また、プラズマを生成する際に用いる高周波電力の周波数は60MHz以下(例えば13.56Hz)が好ましい。60MHz以下とすることにより、より深く効率的にイオン(水素イオン)を打ち込んで膜全体を改質することができる。60MHzを超えると表面のみが改質される傾向となる。
【0030】
流動性オリゴマーが流動性を保持したままの状態で水素終端するためには、プラズマ処理の際の基板温度が低いほうがよく、ステップST1のプラズマ重合処理と同様、80℃以下で行うことが好ましい。より好ましくは30℃以下、さらには20℃以下である。
【0031】
ステップST2のプラズマ処理により流動性オリゴマーのアルキル基等が除去されて水素終端された膜としては、基本構造が上述のステップST1と同様、SiOH、SiNH、SiCOH、SiCNH、SiCH、BNH、BCNH、SiBCNH、SiBNHのいずれかを含むものが例示される。
【0032】
ステップST3では、プラズマ処理を含むアニール処理により、ステップST2の水素終端後の膜を縮合固化し、緻密で安定な絶縁膜を形成する。この際の温度は、膜を効率よく確実に固化させるために、80℃を超える高温で行うことが好ましく、150℃以上で行うことがより好ましい。
【0033】
この際のアニール処理は、下地への酸化の影響を排除する観点から非酸化雰囲気で行うことが好ましく、Nガスや希ガス(例えばArガスやHeガス)等の不活性ガス雰囲気で行うことができる。アニール処理は、縮合固化を効率的に行うために、プラズマ処理を含んでいることが好ましい。アニール処理は全てがプラズマ処理であっても、熱アニールとプラズマアニールを併用してもよい。プラズマ処理は、不活性ガスのみを用いてもよいが、Hガスのような水素を含むガスを含有するプラズマを用いることが好ましい。
【0034】
また、アニール処理の際のプラズマ処理は、VHF帯(30~300MHz)~マイクロ波(MW)帯(300MHz~3THz)の周波数を用いて行うことが好ましい。より好ましくは60MHz以上である。30MHz未満の周波数で行われる一般的なICPやCCPの場合、30eV超えの高エネルギーイオンによるダメージにより膜損傷を引き起こしやすいが、VHF帯~MW帯、特に60MHz以上の周波数を用いることにより、膜損傷を抑えることができる。すなわち、VHF帯~MW帯、特に60MHz以上では、30eV以下の低エネルギーのイオンおよびラジカルを照射可能であり、膜に照射されるエネルギーが低く、膜損傷を抑えることが可能となる。また、素子酸化を抑制することもできる。60MHz以上の周波数の中でさらに好ましくは、VHF帯の範囲内である60MHz以上300MHz以下である。
【0035】
ステップST3のアニール処理により形成される絶縁膜は、プリカーサーとしてSi含有プリカーサーまたはB含有プリカーサーを用いる場合には、Si含有膜またはB含有膜となる。流動性オリゴマーが上述したSiOH、SiNH、SiCOH、SiCNH、SiCH、BNH、BCNH、SiBCNH、SiBNHを基本構造とする場合には、絶縁膜は、これらが縮合固化して形成された、SiO、SiN、SiCO、SiCN、SiC、BN、BCN、SiBCN、SiBNとなる。
【0036】
形成される絶縁膜が炭素を含む膜、例えば上記のSiCO、SiCN、SiC、SiBCNの場合には、ステップST3のプラズマアニールを含むアニール処理において、プラズマアニールにより脱離する炭素を補い、膜中の炭素濃度低下を防止する目的で、プラズマアニール中に供給されるガスとして、炭素含有ガスを用いてもよい。炭素含有ガスとしては、C(mは1以上の整数、nは2以上の整数)のような炭素と水素を含むガスを用いることができる。炭素と水素を含むガスを含有するプラズマは、このような効果を有する炭素と上述した水素とを含んでいるため、より好適である。
【0037】
ステップST1の流動性オリゴマーの生成とステップST2のプラズマ処理は、上述したようにいずれも80℃以下の低温で行うことが好ましく、これらは同じ処理空間で行うことができる。また、ステップST3のプラズマアニールは、上述したように、80℃超、さらには150℃以上の高温で行うことが好ましいため、低温で行うことが好ましいステップST1およびステップST2とは異なる処理空間で行うことが好ましい。
【0038】
ステップST1とステップST2を所望の膜厚になるまで複数回繰り返してもよい。また、ステップST1~ステップST3を所望の膜厚になるまで複数回繰り返してもよい。また、ステップST1とステップST2を複数回繰り返した後、ステップST3を行って終了してもよいし、ステップST1とステップST2を複数回繰り返した後、ステップST3を行う処理を複数回繰り返してもよい。
【0039】
本実施形態の絶縁膜の形成方法においては、流動性の高い流動性オリゴマーを成膜した後に、流動性オリゴマーが流動性を保持したまま、その少なくとも一部が水素終端されるようにプラズマ処理を行うので、膜が固化する前に膜中にボイドやクラックが生じることなくアルキル基等を除去することができる。そして、最終のアニール処理で固化する際には水素終端を除去するだけなので、残留カーボンが少なく、また固化の際のシュリンクを小さくできる。このため、膜中のボイドやクラックの発生や膜の低密度化を抑制することができ、基板の微細凹部へ高品質な絶縁膜を形成することができる。
【0040】
次に、本実施形態の典型的な具体例について、図3を参照して説明する。
ここでは、まず、プリカーサーガスとしてアルコキシシラン系化合物を用い、非酸化性の水素含有ガスとしてシランガス(SiHガス)を用いて80℃以下の低温でステップS1のプラズマ重合を行う。これにより、流動性オリゴマーとしてポリシラノールオリゴマーが生成され、成膜される。
【0041】
次に、ステップST2の水素終端プラズマ処理を行う。ステップST2では、80℃以下の低温において水素を含むガスとしてHガスを用いたプラズマ処理を行う。これにより、ポリシラノールオリゴマーの流動性を保持したまま水素イオン・ラジカルによる置換反応によりアルキル基を除去して水素終端させる。
【0042】
次に、ステップST3のアニール処理を行う。ステップST3のアニール処理は、80℃超え、好ましくは150℃以上の高温で、VHF帯~MW帯の高周波を用いて不活性ガスのプラズマまたは水素を含むガスのプラズマによるプラズマ処理を含む処理である。これにより、水素終端後の膜を縮合固化(脱水素)し、安定な絶縁膜であるネットワーク構造のSiO膜を形成する。
【0043】
[基板処理システム]
次に、上記絶縁膜の形成方法を実施する基板処理システムについて説明する。
【0044】
図4は、基板処理システムの一例を概略的に示す概略構成図である。
図4に示すように、基板処理システム100は、基板Sに対して絶縁膜を形成するものであり、第1の処理装置101と第2の処理装置102とを有する。これらは、ゲートバルブGを介して真空搬送室103の壁部に接続されている。真空搬送室103内は、真空ポンプにより排気されて所定の真空度に保持される。
【0045】
第1の処理装置101は、上述したステップST1の流動性オリゴマーの生成・成膜処理およびステップST2の水素終端プラズマ処理を行うものである。また、第2の処理装置102は、上述したステップST3のアニール処理を行うものである。
【0046】
また、真空搬送室103の他の壁部には3つのロードロック室104がゲートバルブG1を介して接続されている。ロードロック室104を挟んで真空搬送室103の反対側には大気搬送室105が設けられている。3つのロードロック室104は、ゲートバルブG2を介して大気搬送室105に接続されている。ロードロック室104は、大気搬送室105と真空搬送室103との間で基板Wを搬送する際に、大気圧と真空との間で圧力制御するものである。
【0047】
大気搬送室105のロードロック室104の取り付け壁部とは反対側の壁部には基板Sを収容するキャリア(FOUP等)Cを取り付ける4つのキャリア取り付けポート106を有している。
【0048】
真空搬送室103内には、第1の搬送機構107が設けられている。第1の搬送機構107は、第1の処理装置101、第2の処理装置102、ロードロック室104に対して基板Sを搬送する。
【0049】
大気搬送室105内には、第2の搬送機構108が設けられている。第2の搬送機構108は、キャリアC、ロードロック室104に対して基板Sを搬送する。
【0050】
基板処理システム100は制御部110を有している。制御部110は、第1の処理装置101、第2の処理装置102の各構成部、真空搬送室103の排気機構、ロードロック室104の排気機構、第1の搬送機構107、第2の搬送機構108、ゲートバルブG、G1、G2の駆動系等を制御する。制御部110は、CPUを有する主制御部と、入力装置、出力装置、表示装置、記憶装置(記憶媒体)を有している。制御部110の主制御部は、例えば、記憶装置に内蔵された記憶媒体、または記憶装置にセットされた記憶媒体に記憶された処理レシピに基づいて、基板処理システム100の処理を制御する。
【0051】
次に、以上のように構成される基板処理システム100の動作について説明する。
まず、第2の搬送機構108によりキャリアCから基板Sを取り出し、いずれかのロードロック室104に搬入する。そのロードロック室104を真空排気した後、第1の搬送機構107によりロードロック室104内の基板Sを第1の処理装置101内に搬送する。
【0052】
第1の処理装置101においては、ステップST1のプラズマ重合による流動性オリゴマーの生成および基板Sへの成膜を行う。そして、引き続きステップST2の水素終端プラズマ処理を行う。これらは、80℃以下の低温で行われ、必要に応じて複数回繰り返す。
【0053】
第1の処理装置101での処理が終了後、第1の搬送機構107により基板Sを取り出し、第2の処理装置102に搬送する。第2の処理装置102においては、80℃超え、好ましくは150℃以上の高温でステップST3のプラズマ処理を含むアニール処理を行う。
【0054】
第2の処理装置102での処理が終了後、必要に応じて第1の搬送機構107により基板Sを第1の処理装置101に搬送し、ステップST1、ステップST2の処理、さらに第2の処理装置102に搬送してステップST3の処理を行う。
【0055】
ステップST1~ステップST3を所望の回数行った後、第1の搬送機構107により基板Sをいずれかのロードロック室104に搬送する。そして、そのロードロック室104を大気雰囲気に戻した後、第2の搬送機構108によりその中の基板SをキャリアCに戻す。
【0056】
以上のような処理を、複数の基板Sについて同時並行的に行って、所定枚数の基板Sに対する絶縁膜形成処理が完了する。
【0057】
次に、ステップST1の流動性オリゴマーの生成および成膜、ならびにステップST2の水素終端プラズマ処理を行う第1の処理装置について説明する。
図5は、第1の処理装置の一例を示す断面図である。図5に示すように、第1の処理装置101は、チャンバ2を有する。チャンバ2は接地されている。チャンバ2内には、基板Sを水平に載置するための載置台3が設けられている。載置台3は金属製であり、内部に基板Sの温調を行う温調器4が設けられている。載置台3はチャンバ2を介して接地されている。
【0058】
チャンバ2の底部には排気管5が接続され、この排気管5にはチャンバ2内の圧力制御機能を有する排気機構6が接続されている。チャンバ2の側壁には、基板Sが搬送される搬送口7が形成されており、搬送口7はゲートバルブGにより開閉される。
【0059】
チャンバ2の上部には載置台3に対向するようにガスシャワーヘッド9が設けられている。ガスシャワーヘッド9は、内部にガス室9aを有し、底部に複数のガス吐出孔9bを有する。ガスシャワーヘッド9とチャンバ2の天壁との間は、絶縁部材14で絶縁されている。
【0060】
ガスシャワーヘッド9には、ガス流路10を介してガス供給部11が接続されている。ガス供給部11は、プリカーサーガス、非酸化性の水素含有ガス(例えばSiHガス)、Hガス、および不活性ガス等を供給する。不活性ガスは、キャリアガス、希釈ガス、プラズマ生成ガス等として供給される。これらのガスは、ガス供給部11からガス流路10を介してガスシャワーヘッド9のガス室9aに至り、ガス吐出孔9bを介してチャンバ2内に吐出される。
【0061】
ガスシャワーヘッド9には、整合器12を介して高周波電源13が接続されている。高周波電源13は、例えば13.56MHzの高周波電力をガスシャワーヘッド9に印加する。ガスシャワーヘッド9に高周波電力が印加されることにより、ガスシャワーヘッド9と載置台3との間に高周波電界が形成され、ガスシャワーヘッド9から吐出されたガスによる容量結合プラズマが生成される。
【0062】
このような第1の処理装置101においては、基板Sを載置台3上に載置し、温調器4により基板Sの温度を好ましくは80℃以下、より好ましくは30℃以下に制御し、圧力を13~1330Paに制御する。ガス供給部11からプリカーサーガスと非酸化性の水素含有ガスとをガスシャワーヘッド9を介してチャンバ2内に供給するとともに、高周波電源13から高周波電力をガスシャワーヘッド9に供給する。これにより、プラズマ重合により流動性オリゴマーが生成され、基板S上へ成膜される。そして、流動性オリゴマーは、基板Sに形成されたギャップ(凹部)に埋め込まれる。
【0063】
以上のようにして流動性オリゴマーを成膜後、基板Sを載置台3上に載置したままの状態で、基板Sの温度も流動性オリゴマーの生成・成膜の際と同様の低温に保持したままとする。そして、ガス供給部11からHガスと不活性ガスとをガスシャワーヘッド9を介してチャンバ2内に供給するとともに、高周波電源13から高周波電力をガスシャワーヘッドに供給する。これにより、成膜された流動性オリゴマーが流動性を保持したまま、その少なくとも一部が水素終端されるようにプラズマ処理が行われる。
【0064】
プラズマアニールを行う第2の処理装置102としては、例えば、チャンバと、チャンバ内に設けられた載置台と、基板を加熱する加熱機構と、チャンバ内にガスを供給するガス供給機構と、チャンバ内を排気する排気機構と、VHF帯~MW帯の周波数の高周波によりプラズマを生成するプラズマ生成機構とを有するものが例示される。プラズマ生成機構としては、載置台に対向するように設けられた電極にVHF帯の高周波電力を印加するものや、マイクロ波発振源から発振されたマイクロ波を載置台に対向するように設けられたアンテナから放射するものを用いることができる。
【0065】
プラズマアニールによる改質では供給されるガス温度が高いほど、大きな改質効果が期待できる。第2の処理装置102へ供給されるガス温度を高くするためには、処理装置102へのガス供給部の温度は高いほうが望ましく、80℃超えが好ましい。しかし、マイクロ波プラズマの場合誘電体天板が必須となるため天板破損が懸念され、十分に温度を上げることが困難であるる。一方、VHFプラズマの場合、ガス供給部として金属により構成されたシャワーヘッドを用いることが可能なため、ガス供給部を問題なく80℃超えにすることができる。このような理由から、プラズマアニールの際の周波数は、金属により構成されたシャワーヘッドを用いることができるVHF帯が望ましく、その中でも上述した60MHz以上、すなわち60MHz~300MHzの範囲が望ましい。
【0066】
なお、基板処理システム100では、第1の処理装置101の同じ処理空間で、ステップST1の成膜処理と、ステップST2の水素終端プラズマ処理の両方を行うようにしたが、ステップST1とステップST2とを別個の装置または別個の処理空間で行うようにしてもよい。
【0067】
[実験例]
次に、実験例について説明する。
ここでは、まず、ステップST1として、25℃において、プリカーサーガスとしてテトラエトキシシラン(TEOS)またはテトラメトキシシラン(TMOS)を用い、非酸化性の水素含有ガスとしてSiHを用いてプラズマ重合を行うことにより流動性オリゴマーを生成し、基板上に成膜した。次いで、ステップST2として、同じ25℃において、高周波パワーを変化させて低温Hプラズマ処理を行い、その後、ステップST3として、550℃で熱アニールとその後のプラズマアニールを含むアニール処理を行い、SiO膜を形成した。
【0068】
このときの詳細な条件を以下に示す。
(1)ステップST1
時間:200sec
ガス:TEOSまたはTMOS/SiH/Ar/H=375/225/1800/2250sccm
圧力:4Torr(532Pa)
プラズマ:13.56MHz、50W
基板温度:25℃
(2)ステップST2
時間:30sec
ガス:Ar/H=6400/640sccm
圧力:1Torr(133Pa)
プラズマ:13.56MHz、0~450W
基板温度:25℃
(3)ステップST3
・熱アニール
時間:300sec
ガス:Ar=11000sccm
圧力:4Torr(532Pa)
基板温度:550℃
・プラズマアニール
時間:30sec
ガス:Ar/H=6400/640sccm
プラズマ:220MHz、450W
基板温度:550℃
【0069】
以上のようにステップST2のプラズマのパワーを変化させて絶縁膜を形成したサンプルについて、膜の屈折率(RI値)を求めた。図6にステップST2の高周波パワーとRI値との関係を示す。図6に示すように、ステップST2の低温Hプラズマ処理を行わない場合(ステップST2の高周波パワー0W)は、RI値が1.77程度であった。これに対して、ステップST2を行う場合、高周波パワーを上昇させるに従いRI値が低下し、300W以上で一般的なSiO膜(熱酸化膜(Th-Ox))のRI値である1.46程度となることが確認された。これは、ステップST2の低温Hプラズマ処理により、膜からカーボンが除去されたことを示唆している。また、低温Hプラズマ処理を行ったサンプルは、低温Hプラズマ処理を行わないサンプルよりもボイドが少ない結果も得られた。以上の結果から、プラズマ重合により成膜を行った後、アニール処理に先立って低温Hプラズマ処理を行うことにより、良好な膜質のSiO膜が得られることが確認された。
【0070】
<他の適用>
以上、実施形態について説明したが、今回開示された実施形態は、全ての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0071】
例えば、上記実施形態においてはプリカーサーガスとしてSi含有ガスまたはB含有ガスを用いて絶縁膜としてSi含有膜またはB含有膜を成膜した場合について示したが、これに限らず、例えば、プリカーサーおよび絶縁膜として、アルミニウム等の他の金属元素を含有するものであってもよい。また、上記実施形態で示した基板処理システムや成膜等を行う処理装置も例示にすぎない。さらに、基板として、シリコン等の半導体基板(半導体ウエハ)を例示したが、これに限るものではなく、他の種々の基板を用いることができる。
【符号の説明】
【0072】
100;基板処理システム
101;第1の処理装置
102;第2の処理装置
200;基板
201;凹部
202;流動性オリゴマー
図1
図2
図3
図4
図5
図6