(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128872
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】加工装置および加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20230907BHJP
B24B 55/02 20060101ALI20230907BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20230907BHJP
B24B 55/06 20060101ALI20230907BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20230907BHJP
B23Q 11/10 20060101ALI20230907BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20230907BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
H01L21/78 F
B24B55/02 B
B24B27/06 M
B24B55/06
B24B55/02 D
B23Q11/00 N
B23Q11/10 A
B23Q17/24 B
B24B49/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033520
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】對馬 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】須藤 雄二郎
(72)【発明者】
【氏名】大武 裕介
(72)【発明者】
【氏名】ファン チュック リン
【テーマコード(参考)】
3C011
3C029
3C034
3C047
3C158
5F063
【Fターム(参考)】
3C011BB12
3C011BB36
3C011EE02
3C029AA26
3C029AA40
3C034AA07
3C034BB73
3C034BB83
3C034BB93
3C034CA08
3C034CA22
3C034DD07
3C034DD10
3C047FF04
3C047GG01
3C047HH15
3C158AA03
3C158AC02
3C158AC04
3C158BA07
3C158BC03
3C158CB05
3C158DA17
5F063AA15
5F063DD01
5F063FF28
5F063FF38
(57)【要約】
【課題】加工装置の製造コストの増加および大型化を抑制しながら、構成部材に付着した加工屑を除去できる加工装置を提供する。
【解決手段】洗浄ステップにおいて、液体供給ノズルから、洗浄(加工屑の除去)に適した第2の液体を供給する。これにより、加工ステップにおいて加工室内に付着した加工屑を、第2の液体を用いて洗浄することができる。また、制御部が、液体供給ノズルから、加工に適した第1の液体と、洗浄に適した第2の液体とを、切り替え可能に供給することができる。したがって、複数種類の液体を供給するために、液体の種類ごとに液体供給ノズルを設ける必要がないので、液体供給ノズルを設置するための費用およびスペースの増加を抑えることができる。このため、切削装置の製造コストの増加および大型化を抑制することができる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持テーブルと、
該保持テーブルに保持された被加工物を加工する加工ユニットと、
該保持テーブルと該加工ユニットとを少なくとも含む加工空間に液体を供給する液体供給ノズルと、
を少なくとも備える加工装置であって、
該液体供給ノズルと、第1の液体を供給するための第1供給源と、を連通させる第1の流路と、
該液体供給ノズルと、該第1の液体とは異なる第2の液体を供給するための第2供給源と、を連通させる第2の流路と、
該第1の流路と、該第2の流路と、を開閉する開閉弁と、
該開閉弁を制御し、該液体供給ノズルから、該第1の液体と、該第2の液体と、を切り替え可能に供給する制御部と、
をさらに備えることを特徴とする、加工装置。
【請求項2】
該第2の液体は、ファインバブルまたは界面活性剤の少なくともいずれかを含むことを特徴とする、
請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
該制御部は、
被加工物の加工中には、該液体供給ノズルから第1の液体を供給し、
被加工物を加工していない時には、該液体供給ノズルから該第2の液体を供給するよう、該開閉弁を制御することを特徴とする、
請求項1に記載の加工装置。
【請求項4】
該制御部は、
被加工物の加工時に、該液体供給ノズルから該第1の液体と該第2の液体とのいずれを供給するか、を選択可能であることを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項5】
該加工ユニットは、
回転可能なスピンドルの先端に固定された切削ブレードを有し、
該加工装置は、
所定の間隔を空けて設置された投光部と受光部とを含み、該投光部と該受光部との間に該切削ブレードが挿入されたときに該受光部が受光する受光量に応じて、該切削ブレードの刃先の先端位置を検出する刃先検出ユニットをさらに備え、
該液体供給ノズルは、該刃先検出ユニットに該第1の液体または該第2の液体を供給する、
ことを特徴とする、
請求項1に記載の加工装置。
【請求項6】
該加工装置は、該保持テーブルと、該加工ユニットとを相対的に該保持テーブルの保持面と平行な方向に移動させる移動ユニットをさらに備え、
該液体供給ノズルは、該保持テーブルの移動方向と交差する方向に沿って形成された複数の噴射口を有し、保持テーブルの上方に位置するウォーターカーテン形成部である、
ことを特徴とする、
請求項1に記載の加工装置。
【請求項7】
液体供給ノズルを備えた加工装置によって被加工物を加工する方法であって、
該液体供給ノズルから第1の液体あるいは第2の液体のいずれかを供給しながら被加工物を加工する加工ステップと、
該液体供給ノズルから該第1の液体あるいは該第2の液体のいずれかを供給しながら加工装置を洗浄する洗浄ステップと、
該液体供給ノズルから供給される液体を該第1の液体あるいは該第2の液体のいずれかに設定する設定ステップと、を含んでいることを特徴とする加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハやパッケージ基板などの被加工物を加工する加工装置および加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハやパッケージ基板などの被加工物を加工する加工装置では、加工にともなって、加工屑が、加工ユニット、保持テーブル、および、加工ユニットを囲繞するカバーの内壁などの構成部材に付着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加工屑が付着した状態を放置すると、加工屑が、ウェーハに落下してウェーハを汚染する恐れがある。
また、加工水や洗浄水を供給するノズルに加工屑が付着した状態を長時間放置すると、ノズルの噴射口に加工屑がつまり、ノズルを再度使用する際に、加工水や洗浄水を正常に供給できない恐れがある。
【0005】
しかし、特許文献1に記載のように、加工屑を除去するために別途洗浄ノズルを設けると、そのためのスペースおよび費用が必要となる。
【0006】
本発明の目的は、加工装置の製造コストの増加および大型化を抑制しながら、構成部材に付着した加工屑を除去できる加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の加工装置(本加工装置)は、被加工物を保持する保持テーブルと、該保持テーブルに保持された被加工物を加工する加工ユニットと、該保持テーブルと該加工ユニットとを少なくとも含む加工空間に液体を供給する液体供給ノズルと、を少なくとも備える加工装置であって、該液体供給ノズルと、第1の液体を供給するための第1供給源と、を連通させる第1の流路と、該液体供給ノズルと、該第1の液体とは異なる第2の液体を供給するための第2供給源と、を連通させる第2の流路と、該第1の流路と、該第2の流路と、を開閉する開閉弁と、該開閉弁を制御し、該液体供給ノズルから、該第1の液体と、該第2の液体と、を切り替え可能に供給する制御部と、をさらに備える。
本加工装置では、該第2の液体は、ファインバブルまたは界面活性剤の少なくともいずれかを含むものであってもよい。
本加工装置では、該制御部は、被加工物の加工中には、該液体供給ノズルから第1の液体を供給し、被加工物を加工していない時には、該液体供給ノズルから該第2の液体を供給するよう、該開閉弁を制御してもよい。
本加工装置では、該制御部は、被加工物の加工時に、該液体供給ノズルから該第1の液体と該第2の液体とのいずれを供給するか、を選択可能であってもよい。
本加工装置では、該加工ユニットは、回転可能なスピンドルの先端に固定された切削ブレードを有していてもよく、該加工装置は、所定の間隔を空けて設置された投光部と受光部とを含んでいてもよく、該投光部と該受光部との間に該切削ブレードが挿入されたときに該受光部が受光する受光量に応じて、該切削ブレードの刃先の先端位置を検出する刃先検出ユニットをさらに備えてもよく、該液体供給ノズルは、該刃先検出ユニットに該第1の液体または該第2の液体を供給してもよい。
本加工装置は、該保持テーブルと、該加工ユニットとを相対的に該保持テーブルの保持面と平行な方向に移動させる移動ユニットをさらに備えてもよく、該液体供給ノズルは、該保持テーブルの移動方向と交差する方向に沿って形成された複数の噴射口を有し、保持テーブルの上方に位置するウォーターカーテン形成部であってもよい。
本発明にかかる加工方法は、液体供給ノズルを備えた加工装置によって被加工物を加工する方法であって、該液体供給ノズルから第1の液体あるいは第2の液体のいずれかを供給しながら被加工物を加工する加工ステップと、該液体供給ノズルから該第1の液体あるいは該第2の液体のいずれかを供給しながら加工装置を洗浄する洗浄ステップと、該液体供給ノズルから供給される液体を該第1の液体あるいは該第2の液体のいずれかに設定する設定ステップと、を含んでいる。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、制御部が、液体供給ノズルから、第1の液体と、たとえば洗浄(加工屑の除去)に適した第2の液体とを、切り替え可能に供給することができる。したがって、複数種類の液体を供給するために、液体の種類ごとに液体供給ノズルを設ける必要がないので、液体供給ノズルを設置するための費用およびスペースの増加を抑えることができる。このため、加工装置の製造コストの増加および大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】加工室、保持部および切削機構の構成を示す説明図である。
【
図3】刃先検出ユニットの構成を示す斜視図である。
【
図4】第4液体供給ノズルの構成を示す説明図である。
【
図5】液体供給ユニットの構成を示すブロック図である。
【
図7】実施形態にかかる加工方法を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態にかかる他の加工方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態では、被加工物として、
図1に示すウェーハ100が用いられる。ウェーハ100は、円形状を有し、表面に、格子状の分割予定ライン102が形成されている。分割予定ライン102によって区画された各領域には、たとえば、各種デバイス(図示せず)が形成されている。
【0011】
本実施形態では、ウェーハ100は、
図1に示すように、ワークセット110の状態で取り扱われる。ワークセット110は、環状フレーム111と、環状フレーム111の開口に位置づけられたウェーハ100とを、ダイシングテープ113によって一体化させることによって形成されている。本実施形態では、ウェーハ100は、このようなワークセット110の状態で、切削装置1において加工される。
【0012】
図1に示すように、切削装置1は、基台10および制御部7を備えている。基台10の上面の開口部12には、保持部20が配置されている。保持部20は、ワークセット110のウェーハ100を保持する保持テーブル21、保持テーブル21の周囲に配されているカバー板24、カバー板24に取り付けられてX軸方向に伸縮する蛇腹カバー26、および、保持テーブル21の周囲に備えられた4つのクランプ部25を備えている。
【0013】
保持テーブル21は、
図1に示したウェーハ100を保持する部材であり、円板状に形成されている。保持テーブル21は、ポーラス材からなる保持面22を備えている。保持面22は、図示しない吸引源に連通可能である。保持テーブル21は、この保持面22によって、ワークセット110におけるウェーハ100を吸引保持する。
【0014】
保持テーブル21の周囲に備えられた4つのクランプ部25は、保持テーブル21に保持されているウェーハ100の周囲の環状フレーム111を挟持固定する。
【0015】
また、保持部20は、保持テーブル21の下方における基台10の内部に、
図2に示すように、保持テーブル21を支持してXY平面内で回転させるθテーブル23を有している。さらに、θテーブル23の下方には、加工送り機構14が配設されている。加工送り機構14は、移動ユニットの一例であり、保持テーブル21を含む保持部20と、切削機構50とを、相対的に、保持テーブル21の保持面22に平行な加工送り方向(X軸方向)に沿って移動させる。本実施形態では、加工送り機構14は、保持部20を、切削機構50に対して、X軸方向に沿って移動させるように構成されている。
【0016】
また、
図1に示すように、基台10の上面における+X方向側の端部には、作業者が切削条件等を入力するための操作パネル8が設置されている。また、基台10上の-X方向側には、門型コラム11が、開口部12を跨ぐように立設されている。門型コラム11の前面には、切削機構50を移動させる切削機構移動機構13が設けられている。
【0017】
切削機構移動機構13は、切削機構50を、Y軸方向に割り出し送りするとともに、Z軸方向に切込み送りする。切削機構移動機構13は、切削機構50を割り出し送り方向(Y軸方向)に移動する割り出し送り機構30、および、切削機構50を切込み送り方向(Z軸方向)に移動する切込み送り機構40を備えている。
【0018】
割り出し送り機構30は、門型コラム11の前面に配設されている。割り出し送り機構30は、Y軸方向に沿って、切込み送り機構40および切削機構50を往復移動させることにより、Y軸方向における切削機構50の位置を調整する。
【0019】
割り出し送り機構30は、Y軸方向に延びる一対のガイドレール31、ガイドレール31に設置されたY軸テーブル34、ガイドレール31と平行に延びるボールネジ32、および、ボールネジ32を回転させるモータ(図示せず)を含んでいる。
【0020】
一対のガイドレール31は、Y軸方向に平行に、門型コラム11の前面に配置されている。Y軸テーブル34は、一対のガイドレール31上に、これらのガイドレール31に沿ってスライド可能に設置されている。Y軸テーブル34上には、切込み送り機構40および切削機構50が取り付けられている。
【0021】
ボールネジ32は、Y軸テーブル34に設けられたナット部(図示せず)に螺合されている。ボールネジ32の一端部に連結されているモータによってボールネジ32が回転駆動されることで、Y軸テーブル34、切込み送り機構40および切削機構50が、ガイドレール31に沿って、割り出し送り方向であるY軸方向に移動する。
【0022】
切込み送り機構40は、切削機構50をZ軸方向(上下方向)に沿って往復移動させる。Z軸方向は、X軸方向およびY軸方向に直交するとともに、保持テーブル21の保持面22に対して直交する方向である。
【0023】
切込み送り機構40は、Z軸方向に延びる一対のガイドレール41、ガイドレール41に載置された支持部材42、ガイドレール41と平行に延びるボールネジ43、および、ボールネジ43を回転させるモータ44を含んでいる。
【0024】
一対のガイドレール41は、Z軸方向に平行に、Y軸テーブル34に配置されている。支持部材42は、カメラ48を備えており、一対のガイドレール41に、これらのガイドレール41に沿ってスライド可能に設置されている。支持部材42の下端部には、切削機構50が取り付けられている。
【0025】
ボールネジ43は、支持部材42に設けられたナット部(図示せず)に螺合されている。モータ44は、ボールネジ43の一端部に連結されており、ボールネジ43を回転駆動する。ボールネジ43が回転駆動されることで、支持部材42および切削機構50が、ガイドレール41に沿って、切込み送り方向であるZ軸方向に移動する。
【0026】
切削機構50は、加工ユニットの一例であり、保持テーブル21に保持されたウェーハ100を加工(切削加工)する。切削機構50は、ウェーハ100を切削する切削ブレード51を回転可能に支持している。
ここで、切削機構50およびその近傍の構成について詳細に説明する。
【0027】
切削装置1は、
図2に示すように、保持部20の保持テーブル21および切削機構50を覆う加工室60を有している(
図1には図示せず)。
【0028】
加工室60は、保持テーブル21にワークセット110を搬入および搬出するための搬出入領域201と、切削機構50によりウェーハ100を切削加工するための加工領域202との、2つの領域を有している。搬出入領域201と加工領域202とは、X軸方向に隣接している。
【0029】
加工室60は、保持テーブル21と切削機構50とを少なくとも含む加工空間である。加工室60は、
図2に示すように、上壁61、側壁62,63および64、保護部材65、ならびに仕切り板67を備える。加工室60の下部は、蛇腹カバー26によって塞がれている。
上壁61は、XY平面に沿って搬出入領域201および加工領域202に渡って形成され、保持テーブル21および切削機構50の上方を覆っている。上壁61には、Y軸方向およびZ軸方向に移動する切込み送り機構40の支持部材42および切削機構50が通過する領域に、貫通孔611が形成されている。保護部材65は、切削機構50の上方に設けられ、貫通孔611を覆っている。
【0030】
一対の側壁62は、XZ平面に沿って搬出入領域201および加工領域202に渡って形成され、保持テーブル21および切削機構50のY軸方向の両側を覆っている。側壁62の一方には、搬出入領域201へのワークセット110の搬出入のための開口(図示せず)が設けられている。側壁63は、YZ平面に沿って形成され、搬出入領域201の+X方向側を覆っている。側壁64は、YZ平面に沿って形成され、加工領域202の-X方向側を覆っている。
【0031】
仕切り板67は、加工室60内に、側壁63および側壁64と同様にYZ平面に沿って形成され、搬出入領域201と加工領域202とを仕切っている。
【0032】
仕切り板67の下方には、保持テーブル21が通過する開口部68が形成されている。すなわち、保持テーブル21は、加工送り機構14により、X軸方向に沿って、仕切り板67の開口部68を介して移動することで、搬出入領域201と加工領域202との間を往復移動することができる。
【0033】
切削機構50は、加工領域202内に配置されている。切削機構50は、加工領域202に位置付けられた保持テーブル21に保持されたウェーハ100を、高速回転する切削ブレード51によって、分割予定ライン102に沿って加工する。
【0034】
切削機構50は、切削ブレード51に加えて、切削ブレード51を装着して回転するスピンドル52、スピンドルを回転可能に支持するハウジング(図示せず)、および、スピンドルを回転駆動するモータ(図示せず)等を備えている。すなわち、切削ブレード51は、モータによって回転可能なスピンドル52の先端に固定されている。さらに、切削機構50は、切削ブレード51の上方を覆うブレードカバー55、液体を供給するための第1液体供給ノズル56および第2液体供給ノズル57、ならびに、これらのノズルに液体を供給するためのジョイント58を含む。
【0035】
第1液体供給ノズル56および第2液体供給ノズル57は、加工空間である加工室60に液体を供給する液体供給ノズルの一例である。
第1液体供給ノズル56は、後述する供給源からジョイント58を介して供給される液体(第1の液体あるいは第2の液体)を、切削ブレード51の側方に供給する。また、第2液体供給ノズル57は、供給源からジョイント58を介して供給される液体を、切削ブレード51の+X方向側から、たとえば、切削ブレード51とウェーハ100との接点である加工点に供給する。
【0036】
また、
図1に示すように、カバー板24における保持テーブル21と隣接する位置には、切削機構50の切削ブレード51の刃先の先端位置を検出する刃先検出ユニット70が設けられている。
【0037】
刃先検出ユニット70は、
図3に示すように、本体71、および、本体71に取り付けられた検出部72を有している。検出部72は、ブレード侵入部75を形成するU字形状の先端を有している。検出部72は、このブレード侵入部75を挟むように、光を投光する投光部73、および、投光部73からの光を受光する受光部74を有している。
【0038】
投光部73および受光部74は、互いに所定の間隔を空けて設置されている。投光部73と受光部74との間のブレード侵入部75に切削機構50の切削ブレード51(切削ブレード51の刃先)が挿入されると、切削ブレード51の刃先の先端位置(高さ位置)に応じて、受光部74が受光する受光量が変化する。刃先検出ユニット70は、ブレード侵入部75に切削機構50の切削ブレード51が挿入されたときに受光部74が受光する受光量に応じて、切削ブレード51の刃先の先端位置を検出するように構成されている。たとえば、受光部74の受光量が所定量になるように、切込み送り機構40によって切削ブレード51の高さを調整することで、切削ブレード51の刃先の先端を、所定の基準位置に配置することができる。
【0039】
また、検出部72上には、一対の第3液体供給ノズル76および一対のエア供給ノズル77が配置されている。第3液体供給ノズル76は、刃先検出ユニット70に液体(第1の液体あるいは第2の液体)を供給する液体供給ノズルの一例である。本実施形態では、第3液体供給ノズル76は、投光部73および受光部74に、後述する供給源から供給される液体を、洗浄水として噴射する。エア供給ノズル77は、投光部73および受光部74にエアを供給する。
【0040】
また、
図1に示すように、門型コラム11の+X方向側には、基台10の開口部12を跨ぐように、ウォーターカーテン形成部としての第4液体供給ノズル80が配置されている。第4液体供給ノズル80は、
図2に示した加工室60内に配置されており、加工室60に液体を供給する液体供給ノズルの一例である。第4液体供給ノズル80は、保持テーブル21に液体を供給するためのパイプ状の部材であり、基台10上に設けられた一対の支持部材83によって支持されている。第4液体供給ノズル80は、保持テーブル21の保持面22および刃先検出ユニット70よりも高い位置で、保持テーブル21の移動方向であるX軸方向と交差する方向であるY軸方向に沿って延在している。
なお、刃先検出ユニット70が、カバー板24の上ではなく、切削ブレード51が固定されるスピンドル52の下方に設置される場合もある。この場合には、第4液体供給ノズル80は、刃先検出ユニット70よりも高い位置にある必要は無く、保持面22よりも高い位置にあれば良い。
【0041】
図4に示すように、第4液体供給ノズル80は、Y軸方向に沿って形成された複数の噴射口81を有している。第4液体供給ノズル80では、後述する供給源から供給される液体(第1の液体あるいは第2の液体)を噴射口81から噴射することにより、第4液体供給ノズル80の下方にウォーターカーテン82を形成することができる。
【0042】
したがって、加工送り機構14によって、保持テーブル21を含む保持部20が第4液体供給ノズル80の下方に配置された際、第4液体供給ノズル80は、保持テーブル21の上方に位置して、保持テーブル21の保持面22あるいはウェーハ100を、ウォーターカーテン82によって洗浄することができる。
【0043】
また、
図1に示すように、切削装置1は、液体供給ユニット90を有している。液体供給ユニット90は、切削機構50の第1液体供給ノズル56および第2液体供給ノズル57、刃先検出ユニット70の第3液体供給ノズル76、ならびに第4液体供給ノズル80に液体を供給するために用いられる。
【0044】
図5に示すように、液体供給ユニット90は、第1供給源91および第2供給源92を備えている。
第1供給源91は、第1の液体を供給するための供給源である。第1の液体は、ファインバブルおよび界面活性剤のいずれをも含んでいない通常の加工水あるいは洗浄水であり、たとえば純水である。
【0045】
第2供給源92は、第1の液体とは異なる第2の液体を供給するための供給源である。第2の液体は、洗浄(加工屑の除去)に適した液体であり、たとえば、ファインバブルまたは界面活性剤の少なくともいずれかを含む。本実施形態では、第2の液体は、界面活性剤を含む液体(界面活性剤と水との混合物)である。
【0046】
液体供給ユニット90は、さらに、第1供給源91に接続されている第1の流路94、および、第2供給源92に接続されている第2の流路95を備えている。第1の流路94は、各液体供給ノズル(第1~第4液体供給ノズル56,57,76および80)と第1供給源91とを連通させるために用いられる。一方、第2の流路95は、各液体供給ノズルと第2供給源92とを連通させるために用いられる。
【0047】
さらに、液体供給ユニット90は、第1の流路94と第2の流路95とを開閉する開閉弁93を備えている。開閉弁93は、第1の流路94および第2の流路95のいずれかを一方を開放して主流路96に接続する一方、いずれか他方を閉じることが可能である。
【0048】
また、
図5に示すように、主流路96は、切削機構50の第1液体供給ノズル56および第2液体供給ノズル57に、第1制御弁97(およびジョイント58(
図2参照))を介して接続されている。第1制御弁97は、第1液体供給ノズル56および第2液体供給ノズル57と主流路96との連通状態を制御するものである。
【0049】
また、主流路96は、刃先検出ユニット70の第3液体供給ノズル76に、これらの間の連通状態を制御する第2制御弁98を介して接続されている。さらに、主流路96は、第4液体供給ノズル80に、これらの間の連通状態を制御する第3制御弁99を介して接続されている。
【0050】
また、第2供給源92は、
図6に示すように、液体(たとえば純水)を供給するための液体供給部141、界面活性剤を供給するための界面活性剤供給部142、および、混合器143を有している。混合器143は、液体供給部141から供給される液体と界面活性剤供給部142から供給される界面活性剤とを混合して第2の液体を生成し、第2の流路95に供給するものである。
【0051】
このような構成を有する液体供給ユニット90は、制御部7によって制御される。
この制御部7は、制御プログラムに従って演算処理を行うCPU、および、メモリ等の記憶媒体等を備えている。制御部7は、液体供給ユニット90を含む切削装置1の各部材を制御して、ウェーハ100の加工を実施する。たとえば、制御部7は、液体供給ユニット90の開閉弁93を制御し、液体供給ノズルから、第1の液体と第2の液体とを切り替え可能に供給する。
【0052】
以下に、制御部7によって制御される、切削装置1におけるウェーハ100の加工方法について、
図7に基づいて説明する。
【0053】
この加工方法は、液体供給ノズルを備えた加工装置である切削装置1によって、ウェーハ100を加工する方法である。加工の開始時には、制御部7が、
図5に示した液体供給ユニット90の開閉弁93を制御して、第1の流路94を開放して主流路96に接続する一方、第2の流路95を閉じる。これにより、第1の流路94から、主流路96を介して、上述した第1液体供給ノズル56、第2液体供給ノズル57、第3液体供給ノズル76および第4液体供給ノズル80に、第1の液体(純水)を供給することが可能となる。
【0054】
[保持ステップ(S1)]
このステップでは、制御部7は、まず、加工送り機構14によって保持テーブル21を含む保持部20をX軸方向に沿って往復移動させつつ、第3制御弁99を開放して主流路96と第4液体供給ノズル80とを連通させる。これにより、
図4に示すように、保持テーブル21の保持面22および蛇腹カバー26の上面を、第1の液体からなるウォーターカーテン82によって洗浄する。
【0055】
次に、作業者によって、
図1に示したワークセット110のウェーハ100が、ダイシングテープ113を介して、加工室60内における保持部20の保持テーブル21に載置される。さらに、保持部20のクランプ部25によって、ワークセット110の環状フレーム111が支持される。この状態で、制御部7が、図示しない吸引源に保持テーブル21の保持面22を連通させることにより、保持面22によってウェーハ100を吸引保持する。このようにして、ウェーハ100を含むワークセット110が、保持テーブル21によって保持される。
【0056】
[加工ステップ(S2)]
加工ステップは、たとえば、液体供給ノズルから第1の液体を供給しながらウェーハ100を加工するステップである。このステップでは、
図1に示した複数の分割予定ライン102に沿って、ウェーハ100が切削される。
具体的には、制御部7が、切削ブレード51の刃先の先端位置を
図3に示した刃先検出ユニット70を用いて確認しながら、切削ブレード51の刃先の先端が所定の基準位置に配置されるまで、切込み送り機構40によって切削ブレード51を降下させる。
【0057】
そして、制御部7は、
図1および
図2に示したθテーブル23、加工送り機構14および割り出し送り機構30を制御して、保持テーブル21に保持されているウェーハ100における1つの分割予定ライン102を、X軸に平行にするとともに、切削ブレード51によって切削可能な位置に配置する。
【0058】
次に、制御部7は、
図2に示した切削ブレード51を高速回転させながら、ウェーハ100を保持している保持テーブル21をX軸方向に移動させる。これにより、回転する切削ブレード51が、1つの分割予定ライン102に沿って、ウェーハ100を切削する。
そして、制御部7は、ウェーハ100における全ての分割予定ライン102に沿って、ウェーハ100を切削する。
【0059】
なお、この切削の際、制御部7は、
図5に示した第1制御弁97を開放して、主流路96と切削機構50の第1液体供給ノズル56および第2液体供給ノズル57とを連通させることにより、第1液体供給ノズル56および第2液体供給ノズル57から、切削ブレード51に対して、加工水として第1の液体を供給する。
【0060】
また、制御部7は、第2制御弁98を開放して、主流路96と刃先検出ユニット70の第3液体供給ノズル76とを連通させることにより、
図3に示した第3液体供給ノズル76から投光部73および受光部74に対して第1の液体を供給して、投光部73および受光部74を洗浄する。
また、制御部7は、第3制御弁99を適宜に開放して、主流路96と第4液体供給ノズル80とを連通させることにより、保持テーブル21に保持されているウェーハ100を、連続的あるいは間欠的に、ウォーターカーテン82によって洗浄する。
【0061】
[搬出ステップ(S3)]
このステップでは、作業者によって、ウェーハ100を含むワークセット110が、加工室60内における保持部20の保持テーブル21から取り外されて、加工室60の外に搬出される。
【0062】
[第1切り替えステップ(S4)]
第1切り替えステップは、液体供給ノズルから供給される液体を第1の液体あるいは第2の液体のいずれかに設定する設定ステップの一例である。このステップでは、制御部7が、液体供給ノズルから供給される液体を、洗浄に適した第2の液体に切り換える。具体的には、制御部7が、
図5に示した液体供給ユニット90の開閉弁93を制御して、第1の流路94を閉じる一方、第2の流路95を開放して主流路96に接続する。これにより、第2の流路95から、主流路96を介して、上述した第1液体供給ノズル56、第2液体供給ノズル57、第3液体供給ノズル76および第4液体供給ノズル80に、洗浄に適した第2の液体を供給することが可能となる。
【0063】
[洗浄ステップ(S5)]
洗浄ステップは、たとえば、液体供給ノズルから第2の液体を供給しながら加工装置を洗浄するステップである。
【0064】
すなわち、上述した加工ステップでは、切削ブレード51とウェーハ100との接点である加工点から、加工屑(切削屑)が発生して、加工室60の内壁および加工室60内の部材に付着する。このため、この洗浄ステップでは、これらの加工屑を洗浄する。
【0065】
洗浄ステップでは、制御部7は、まず、切削機構50の切削ブレード51を回転させる。さらに、制御部7は、
図5に示した第1制御弁97を開放して、第1液体供給ノズル56および第2液体供給ノズル57から、切削ブレード51に対して、第2の液体を供給する。
【0066】
これにより、切削ブレード51を含む切削機構50の各構成(ブレードカバー55,ジョイント58など)が、第2の液体によって洗浄される。さらに、回転している切削ブレード51に供給された第2の液体が切削ブレード51の周囲に飛んで、切削ブレード51の周囲を洗浄する。たとえば、第2の液体は、加工室60の内壁(上壁61、側壁62,63および64の内面)まで飛んで、加工室60の内壁を洗浄する。
【0067】
また、制御部7は、第2制御弁98を開放して、主流路96と刃先検出ユニット70の第3液体供給ノズル76とを連通させることにより、
図3に示した第3液体供給ノズル76から投光部73および受光部74に対して第2の液体を供給して、投光部73および受光部74を洗浄する
さらに、制御部7は、加工送り機構14によって保持テーブル21を含む保持部20をX軸方向に沿って往復移動させつつ、第3制御弁99を開放して主流路96と第4液体供給ノズル80とを連通させることにより、保持テーブル21の保持面22および蛇腹カバー26の上面を、第2の液体からなるウォーターカーテン82によって洗浄する。
【0068】
[第2切り替えステップ(S6)]
このステップも、設定ステップの一例である。このステップでは、液体供給ノズルから供給される液体を、加工に適した第1の液体に切り替える。具体的には、制御部7が、
図5に示した液体供給ユニット90の開閉弁93を制御して、第1の流路94を開放して主流路96に接続する一方、第2の流路95を閉じる。これにより、第1の流路94から、主流路96を介して、上述した第1液体供給ノズル56、第2液体供給ノズル57、第3液体供給ノズル76および第4液体供給ノズル80に、第1の液体(純水)を供給することが可能となる。
【0069】
次に、制御部7は、ウェーハ100の加工を終了するか否か、すなわち、次のウェーハ100の加工を実施するか否かを、たとえば作業者からの指示に基づいて判断する(S7)。制御部7は、次のウェーハ100の加工を実施する場合には、処理をS1に戻す。
【0070】
以上のように、本実施形態では、加工ステップにおいて加工室60の内壁および加工室60内の部材に付着した加工屑を、洗浄ステップにおいて、第2の液体を用いて洗浄することができる。このため、加工室60の内壁および加工室60内の各部材に加工屑が固着することを抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態では、切削装置1が、第1の液体および第2の液体のいずれかを供給するための液体供給ノズルとして、切削機構50の第1液体供給ノズル56および第2液体供給ノズル57、刃先検出ユニット70の第3液体供給ノズル76、ならびに、ウォーターカーテン82を形成するための第4液体供給ノズル80を有している。そして、制御部7が、各液体供給ノズルから、加工に適した第1の液体と、洗浄に適した第2の液体とを、切り替え可能に供給することができる。
【0072】
このように、本実施形態では、各液体供給ノズルから、複数種類の液体を切り替えながら供給することができる。したがって、複数種類の液体を供給するために、液体の種類ごとに液体供給ノズルを設ける必要がないので、液体供給ノズルを設置するための費用およびスペースの増加を抑えることができる。このため、切削装置1の製造コストの増加および大型化を抑制することができる。
【0073】
なお、上述した実施形態では、加工に適した第1の液体として純水を用いる一方、洗浄に適した第2の液体として界面活性剤を含む液体を用いている。これに関し、第1の液体および第2の液体の種類(内容)は、作業者によって任意に選択されることができる。作業者は、これらの液体の種類を、たとえば、被加工物(たとえば、被加工物の素材)に応じて選択することができる。
【0074】
第2の液体としては、洗浄に適した任意の液体を採用することができる。たとえば、第2の液体は、界面活性剤に代えて、ファインバブルを含む液体(ファインバブルと水との混合物)であってもよい。
【0075】
この場合、第2供給源92は、
図6に示した界面活性剤供給部142に代えてファインバブルとなるエアを供給するエア供給源を備えるとともに、混合器143に代えて、液体中にファインバブルを生成するファインバブル生成器を備える。
【0076】
この場合、第2の液体は、100μm以下のファインバブルであるマイクロバブルを含む液体であることが好ましい。あるいは、第2の液体は、1μm下のファインバブルであるウルトラファインバブルを含む液体であることがさらに好ましい。
【0077】
ファインバブル生成器において採用されるファインバルブ(マイクロバブルあるいはウルトラファインバブル)の製造方式としては、旋回流液式、および、エゼクター式(ベンチュリー式)が上げられる。旋回流液式では、大きな気泡を、強い流れの液体によってせん断すること(引きちぎったり切断したりすること)によって、細かく砕くこと(高速液旋回流による気泡の粉砕)により、ファインバブルを生成する。一方、エゼクター式(ベンチュリー式)では、圧力を上げてガスを良く溶かした液体を生成したあと、急に圧力を下げて発泡させること(気液流路内の急激な圧力変化による気泡の粉砕)により、ファインバブルを生成する。
【0078】
また、上述の実施形態では、制御部7は、加工ステップにおいて第1の液体を用いる一方、洗浄ステップにおいて第2の液体を用いている。すなわち、制御部7は、ウェーハ100の加工中(加工ステップ)には、液体供給ノズルから第1の液体を供給し、ウェーハ100を加工していない時は、液体供給ノズルから第2の液体を供給するよう、開閉弁93を制御している。
【0079】
これに関し、第2の液体は、ウェーハ100に影響を与える場合がある。たとえば、ファインバブルを含む第2の液体を用いる場合、第2の液体が飛散してウェーハ100に含まれているデバイスに触れると、気泡によってデバイスが損傷する恐れがある。また、界面活性材を含む第2の液体を用いる場合も、第2の液体がデバイスに影響する恐れがある。このため、このような影響を受けるデバイスを有するウエーハ100の場合には、加工ステップでは第1の液体を液体供給ノズルから供給することで、加工品質の悪化を抑制することができる。
【0080】
また、本実施形態では、
図8に示すような加工方法を採用することもできる。この方法では、加工ステップを実施する前に、加工ステップにおいて使用する液体を選択することができる。
【0081】
この方法では、まず、
図7の保持ステップ(S1)と同様の保持ステップが実施されて、ウェーハ100を含むワークセット110が、保持テーブル21によって保持される(S11)。
【0082】
次に、選択ステップが実施される(S12)。このステップでは、作業者が、
図1に示した操作パネル8を用いて、ウェーハ100の切削加工に用いる液体(第1の液体あるいは第2の液体)を選択する。
【0083】
次に、第1設定ステップが実施される(S13)。このステップでは、制御部7が、液体供給ノズルから供給される液体を、S12において作業者に選択された液体に設定する。たとえば、作業者によって第1の液体が選択されている場合、制御部7が、
図5に示した液体供給ユニット90の開閉弁93を制御して、第2の流路95を閉じる一方、第1の流路94を開放して主流路96に接続する。これにより、第1の流路94から、主流路96を介して、上述した第1液体供給ノズル56、第2液体供給ノズル57、第3液体供給ノズル76および第4液体供給ノズル80に、第1の液体を供給することが可能となる。
【0084】
次に、
図7に示した加工ステップ(S2)および搬出ステップ(S3)と同様の加工ステップ(S14)および搬出ステップ(S15)が実施されて、切削加工されたウェーハ100を含むワークセット110が、加工室60の外に搬出される。
【0085】
次に、第2設定ステップが実施される(S16)。このステップでは、制御部7が、液体供給ノズルから供給される液体を、第2の液体に設定する。なお、第1設定ステップ(S13)において第2の液体が設定されている場合には、第2設定ステップ(S16)は省略されてもよい。
【0086】
次に、制御部7は、
図7に示した洗浄ステップ(S5)と同様の洗浄ステップ(S17)を実施する。これにより、加工室60の内壁および加工室60内の部材に付着した加工屑が、第2の液体によって洗浄される。
【0087】
次に、制御部7は、ウェーハ100の加工を終了するか否かを、たとえば作業者からの指示に基づいて判断し(S18)、次のウェーハ100の加工を実施する場合には、処理をS11に戻す。
【0088】
この方法では、制御部7が、たとえば作業者の指示に基づいて、ウェーハ100の加工時に、液体供給ノズルから第1の液体と第2の液体とのいずれを供給するか、を選択可能である。すなわち、作業者は、たとえばウェーハ100の種類に応じて、ウェーハ100の切削加工に用いる液体を選択することができる。
【0089】
したがって、たとえば、ウェーハ100が第2の液体によって悪影響を受けない場合、加工ステップにおいて第2の液体を用いることができる。この場合、加工中に、加工室60の内壁、その内部の部材およびウェーハ100に加工屑が付着することを、良好に抑制することができる。
このように、加工ステップは、液体供給ノズルから第1の液体あるいは第2の液体のいずれかを供給しながらウェーハ100を加工するステップであってもよい。
【0090】
なお、
図8に示す方法では、選択ステップ(S12)において、作業者が、加工ステップで用いられる液体を選択することに加えて、洗浄ステップで用いられる液体を選択してもよい。そして、第2設定ステップ(S16)において、制御部7が、洗浄ステップ(S17)において液体供給ノズルから供給される液体を、作業者に選択された液体に設定してもよい。この場合、洗浄ステップにおいて、第2の液体に代えて第1の液体を用いて洗浄を実施することが可能となる。したがって、洗浄ステップは、液体供給ノズルから第1の液体あるいは第2の液体のいずれかを供給しながら加工装置を洗浄するステップであってもよい。
【0091】
また、上述した実施形態では、ウェーハ100を切削加工して(S2,S14)、このウェーハ100を含むワークセット110を搬出した後(S3,S15)、洗浄ステップ(S5,S17)を行っている。すなわち、1枚のウェーハ100を加工するたびに、洗浄ステップを実施している。これに関し、洗浄ステップは、所定数のウェーハ100を加工した後、たとえば、1つの収納カセット内の複数のウェーハ100を加工した後に実施されてもよい。あるいは、洗浄ステップは、作業者の望む任意のタイミングで実施されてもよい。たとえば、切削装置1を長時間にわたって使用しない(長時間にわたってウェーハ100を加工しない)ことが明確となった時点で、洗浄ステップが実施されてもよい。
【0092】
また、上述したように、第2の液体が、ウェーハ100に影響を与える場合がある。このような場合には、第2の液体を用いる洗浄ステップは、ウェーハ100が保持テーブル21に保持されていないタイミングで実施されることが好ましい。
【0093】
また、本実施形態では、
図5に示すように、1つの液体供給ユニット90の主流路96が、4つの液体供給ノズル(第1~第4液体供給ノズル56,57,76および80)に接続されており、各液体供給ノズルに共通の液体が供給されている。
これに関し、液体供給ノズルごとに液体供給ユニット90が備えられていてもよい。これにより、液体供給ノズルごとに、供給される液体を設定することが可能となる。したがって、各液体供給ノズルから、それぞれ異なる種類の液体(第1の液体あるいは第2の液体)を供給することが可能となる。たとえば、加工ステップ(S2,S14)では、第1液体供給ノズル56、第2液体供給ノズル57および第4液体供給ノズル80から第1の液体を供給する一方、第3液体供給ノズル76から第2の液体を供給することができる。
【0094】
ここで、第3液体供給ノズル76を含む刃先検出ユニット70は、保持テーブル21に保持されているウェーハ100から離れている。このため、投光部73および受光部74を洗浄するために第3液体供給ノズル76から供給される液体は、保持テーブル21に保持されているウェーハ100に与える影響が小さいので、常に第2の液体であってもよい。したがって、加工ステップにおいて、第3液体供給ノズル76から投光部73および受光部74に向けて、第2の液体を供給してもよい。
【0095】
また、切削装置1では、
図7および
図8に示した加工処理において、加工ステップ(S2,S14)および洗浄ステップ(S5,S17)以外のタイミング(たとえば、他のステップの実施中、あるいは、アイドリング時)においても、各液体供給ノズルから液体を継続的あるいは間欠的に供給していてもよい。たとえば、制御部7は、第1液体供給ノズル56、第2液体供給ノズル57および第4液体供給ノズル80から、第1の液体あるいは第2の液体を継続的あるいは間欠的に供給していてもよい。これにより、加工室60内に浮遊する加工屑が、これらの液体供給ノズルおよび他の部材に付着することを抑制することができる。
【0096】
また、切削装置1では、制御部7は、加工の終了後(加工を実施していない時)に、第1液体供給ノズル56、第2液体供給ノズル57、第3液体供給ノズル76および第4液体供給ノズル80から、連続的あるいは間欠的に、第2の液体を供給してもよい。これにより、これらの液体供給ノズルに加工屑が固着して、液体供給ノズルの噴出口が加工屑によって塞がれてしまうことを、抑制することができる。
【0097】
あるいは、切削装置1を長時間にわたって使用しないことが明確となった時点で、所定時間、洗浄ステップでの供給量よりも少量の第2の液体を、各液体供給ノズルから供給してもよい。これによっても、液体供給ノズルの噴出口が加工屑によって塞がれてしまうことを抑制することができる。
【0098】
加工を実施していないタイミングで第2の液体を液体供給ノズルから供給すると、第2の液体がファインバブルを含む場合には、付着した加工屑をバブルによって浮かせる作用が発揮されて、高い洗浄効果を得られる。また、第2の液体が界面活性剤を含む場合には、界面活性剤が加工屑に浸透して加工屑を除去する作用が発揮されるため、この場合にも洗浄効果が高くなる。
【0099】
また、上述した実施形態では、被加工物の一例としてウェーハ100を示している。これに関し、被加工物は、パッケージ基板であってもよい。
【0100】
また、上述した実施形態では、加工装置として、切削装置1を示している。これに関し、本実施形態にかかる加工装置は、
図9に示す研削装置2であってもよい。この研削装置2は、ウェーハ100等の被加工物を保持する保持部材130、保持部材130に保持された被加工物を研削する研削機構120、上述した液体供給ユニット90、および、制御部127を備えている。
制御部127は、上述した研削装置2の制御部7と同様に、液体供給ユニット90を含む研削装置2の各部材を制御して被加工物の加工を実施する。この際、制御部127は、液体供給ユニット90の開閉弁93を制御し、液体供給ノズルから、第1の液体と第2の液体と、を切り替え可能に供給する。
【0101】
保持部材130は、保持面132によって被加工物を保持する保持テーブル131、および、保持テーブル131を回転可能に支持する支持柱133を有している。
【0102】
研削機構120は、保持テーブル131の保持面132によって保持された被加工物を研削砥石126によって研削する。研削機構120は、モータ(図示せず)によって回転するスピンドル122、スピンドル122の下端に取り付けられたホイールマウント123、および、ホイールマウント123に支持された研削ホイール124を備えている。
【0103】
研削ホイール124は、加工ユニットの一例であり、保持テーブル131に保持された被加工物を加工(研削加工)する。研削ホイール124は、円環状のホイール基台125、および、複数の研削砥石126を備えている。研削砥石126は、ホイール基台125の下面に、全周にわたって環状に配列されている。研削砥石126は、スピンドル122とともに回転され、保持テーブル131に保持された被加工物を研削する。
【0104】
また、研削装置2は、研削砥石126を含む研削ホイール124および保持テーブル131を覆う加工室160を有している。
【0105】
加工室160は、保持テーブル131と研削ホイール124とを少なくとも含む加工空間である。加工室160は、
図9に示すように、上壁161、側壁163および164、ならびに、下壁162を備えている。上壁161は、保持テーブル131および研削ホイール124の上方を覆っている。上壁161には、研削ホイール124を挿入するための第1開口部165が形成されている。
【0106】
下壁162は、保持テーブル131および研削ホイール124の下方を覆っている。下壁162には、保持テーブル131を挿入するための第2開口部166が形成されている。一対の側壁163は、YZ平面に沿って形成され、保持テーブル131および研削ホイール124のX軸方向の両側を覆う。一対の側壁164は、XZ平面に沿って形成され、保持テーブル131および研削ホイール124のY軸方向の両側を覆う。
【0107】
また、研削装置2は、第5液体供給ノズル170を備えている。第5液体供給ノズル170は、たとえば、保持テーブル131の保持面132によって保持された被加工物と研削砥石126との接点である加工点に液体を供給するために用いられる。この第5液体供給ノズル170は、加工空間である加工室160に液体を供給する液体供給ノズルの一例である。
【0108】
また、研削装置2は、
図5に示した液体供給ユニット90を有している。そして、第5液体供給ノズル170は、液体供給ユニット90の主流路96に接続されており、第1の液体あるいは第2の液体のいずれかを加工点に供給することが可能である。
【0109】
このような構成を有する研削装置2でも、
図7および
図8に示した加工方法を実施することが可能である。すなわち、加工ステップ(S2,S14)において、制御部127は、第5液体供給ノズル170から、たとえば第1の液体を、保持テーブル131に保持された被加工物と研削砥石126との接点である加工点に供給することができる。
【0110】
そして、洗浄ステップ(S5,S16)においては、制御部127は、スピンドル122および研削砥石126を回転させながら、第5液体供給ノズル170から第2の液体を供給する。これにより、研削ホイール124、保持テーブル131およびこれらの近傍が、第2の液体によって洗浄される。さらに、回転している研削砥石126に供給された第2の液体が、水滴301となって研削砥石126の周囲に飛んで、研削砥石126の周囲を洗浄する。たとえば、第2の液体は、加工室160の内壁(上壁161、下壁162,側壁163および164の内面)まで飛んで、加工室160の内壁を洗浄する。
【0111】
このように、研削装置2においても、加工ステップにおいて加工室160の内壁および加工室160内の部材に付着した加工屑を、洗浄ステップにおいて、第2の液体を用いて洗浄することができる。また、第5液体供給ノズル170から、加工に適した第1の液体と、洗浄に適した第2の液体とを、切り替え可能に供給することができる。
【0112】
なお、研削装置2では、スピンドル122の内部を通って研削ホイール124に形成された噴出口(図示せず)から、加工点に向けて液体を供給することもできる。この場合、研削ホイール124の噴出口が、液体供給ノズルとして機能する。
【符号の説明】
【0113】
1:切削装置、2:研削装置、7:制御部、8:操作パネル、10:基台、
11:門型コラム、12:開口部、13:切削機構移動機構、14:加工送り機構、
20:保持部、21:保持テーブル、22:保持面、23:θテーブル、24:カバー板
25:クランプ部、26:蛇腹カバー、30:割り出し送り機構、31:ガイドレール、
32:ボールネジ、34:Y軸テーブル、40:切込み送り機構、41:ガイドレール、
42:支持部材、43:ボールネジ、44:モータ、48:カメラ、50:切削機構、
51:切削ブレード、52:スピンドル、55:ブレードカバー、
56:第1液体供給ノズル、57:第2液体供給ノズル、58:ジョイント、
60:加工室、61:上壁、62:側壁、63:側壁、64:側壁、65:保護部材、
67:仕切り板、68:開口部、70:刃先検出ユニット、71:本体、72:検出部、
73:投光部、74:受光部、75:ブレード侵入部、76:第3液体供給ノズル、
77:エア供給ノズル、80:第4液体供給ノズル、81:噴射口、
82:ウォーターカーテン、90:液体供給ユニット、91:第1供給源、
92:第2供給源、93:開閉弁、94:第1の流路、95:第2の流路、
96:主流路、97:第1制御弁、98:第2制御弁、99:第3制御弁、
100:ウェーハ、102:分割予定ライン、
110:ワークセット、111:環状フレーム、113:ダイシングテープ、
120:研削機構、122:スピンドル、123:ホイールマウント、
124:研削ホイール、125:ホイール基台、126:研削砥石、127:制御部、
130:保持部材、131:保持テーブル、132:保持面、133:支持柱、
141:液体供給部、142:界面活性剤供給部、143:混合器、160:加工室、
161:上壁、162:下壁、163:側壁、164:側壁、165:第1開口部、
166:第2開口部、170:第5液体供給ノズル、201:搬出入領域、
202:加工領域、301:水滴、611:貫通孔