(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128932
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】レーザ光照射装置
(51)【国際特許分類】
B23K 1/005 20060101AFI20230907BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
B23K1/005 A
B23K1/00 330E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033624
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 哲平
(72)【発明者】
【氏名】一宮 佑希
(72)【発明者】
【氏名】陳 之文
(57)【要約】
【課題】簡素な装置構成で高い生産性を実現すること。
【解決手段】レーザ光照射装置1において、レーザ光照射ユニット20は、レーザ光を出射するレーザ光源と、レーザ光源から出射したレーザ光を位相パターンに応じて変調して出射する空間光変調器と、空間光変調器により変調されたレーザ光を結像して板状物に照射する結像手段と、を含み、制御ユニット90は、空間光変調器に表示させた際に板状物の面内でレーザ光が照射される位置が互いに異なる複数の位相パターンを記憶する位相パターン記憶部91と、空間光変調器に表示させる位相パターンを、位相パターン記憶部91に記憶された複数の位相パターンのうち所定の位相パターンに切り替える位相パターン制御部92と、を有し、位相パターン制御部92が空間光変調器に表示させる位相パターンを切り替えることにより、レーザ光を板状物の面内で二次元的に走査することが可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状物を保持する保持テーブルと、
該保持テーブルに保持された板状物にレーザ光を照射するレーザ光照射ユニットと、
各構成要素を制御する制御ユニットと、を備えたレーザ光照射装置であって、
該レーザ光照射ユニットは、
該レーザ光を出射するレーザ光源と、
該レーザ光源から出射したレーザ光を位相パターンに応じて変調して出射する空間光変調器と、
該空間光変調器により変調されたレーザ光を結像して板状物に照射する結像手段と、
を含み、
該制御ユニットは、
該空間光変調器に表示させた際に該板状物の面内でレーザ光が照射される位置が互いに異なる複数の位相パターンを記憶する位相パターン記憶部と、
該空間光変調器に表示させる位相パターンを、該位相パターン記憶部に記憶された複数の該位相パターンのうち所定の位相パターンに切り替える位相パターン制御部と、
を有し、
該位相パターン制御部が該空間光変調器に表示させる該位相パターンを切り替えることにより、該レーザ光を該板状物の面内で二次元的に走査することが可能であることを特徴とする、
レーザ光照射装置。
【請求項2】
該保持テーブルと該レーザ光の結像点とを相対的に移動させる移動ユニットを更に備えることを特徴とする、
請求項1に記載のレーザ光照射装置。
【請求項3】
該板状物は、
一方の面にバンプを有した半導体チップが該バンプを介して複数搭載された基板であり、
該位相パターン記憶部に記憶された複数の位相パターンは、該空間光変調器に表示させた際にレーザ光が照射される位置が、該基板に搭載された各々の半導体チップに対応する領域である各々の位相パターンを含み、
該位相パターン制御部が該空間光変調器に表示させる該位相パターンを切り替えることにより、該レーザ光を該基板の面内で該半導体チップに対応する領域で二次元的に走査しつつ該レーザ光の被照射範囲に含まれるバンプをリフローさせることが可能であることを特徴とする、
請求項1または2に記載のレーザ光照射装置。
【請求項4】
前記結像手段は、前記空間光変調器が有する結像機能であることを特徴とする、
請求項1から3のいずれか1項に記載のレーザ光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を対象物に照射するレーザ光照射装置として、例えば特許文献1に記載された装置が知られている。このようなレーザ光照射装置において、レーザ光源で発生させたレーザ光は、空間光変調器により変調された後、対物レンズによって対象物に集光される。
特許文献1のレーザ光照射装置で対象物に照射されるレーザ光の被照射範囲を変更させる場合には、被照射範囲変更手段としてガルバノスキャナやMEMSスキャナ等の走査手段を用いて被照射範囲を変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、走査手段を必要とするこの方法は、装置構成がやや複雑になり装置が肥大化してしまう。また、例えば、対象物を載置する加工テーブルを移動させることで、被照射範囲を変更させる方法は、加工テーブルを移動させるのに時間がかかるという異なる課題が存在している。また、例えば、被照射範囲を大きくすることで移動を少なくする方法は、空間光変調器の耐光性の観点から投入できるパワーが限られているため、被照射範囲におけるパワー密度が確保できず、実現不可能となっている。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡素な装置構成で高い生産性を実現することができるレーザ光照射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のレーザ光照射装置は、板状物を保持する保持テーブルと、該保持テーブルに保持された板状物にレーザ光を照射するレーザ光照射ユニットと、構成要素を制御する制御ユニットと、を備えたレーザ光照射装置であって、該レーザ光照射ユニットは、該レーザ光を出射するレーザ光源と、該レーザ光源から出射したレーザ光を位相パターンに応じて変調して出射する空間光変調器と、該空間光変調器により変調されたレーザ光を結像して板状物に照射する結像手段と、を含み、該制御ユニットは、該空間光変調器に表示させた際に該板状物の面内でレーザ光が照射される位置が互いに異なる複数の位相パターンを記憶する位相パターン記憶部と、該空間光変調器に表示させる位相パターンを、該位相パターン記憶部に記憶された複数の該位相パターンのうち所定の位相パターンに切り替える位相パターン制御部と、を有し、該位相パターン制御部が該空間光変調器に表示させる該位相パターンを切り替えることにより、該レーザ光を該板状物の面内で二次元的に走査することが可能であることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のレーザ光照射装置は、該保持テーブルと該レーザ光の結像点とを相対的に移動させる移動ユニットを更に備えてもよい。
【0008】
また、本発明のレーザ光照射装置において、該板状物は、一方の面にバンプを有した半導体チップが該バンプを介して複数搭載された基板であり、該位相パターン記憶部に記憶された複数の位相パターンは、該空間光変調器に表示させた際にレーザ光が照射される位置が、該基板に搭載された各々の半導体チップに対応する領域である各々の位相パターンを含み、該位相パターン制御部が該空間光変調器に表示させる該位相パターンを切り替えることにより、該レーザ光を該基板の面内で該半導体チップに対応する領域で二次元的に走査しつつ該レーザ光の被照射範囲に含まれるバンプをリフローさせてもよい。
【0009】
また、本発明のレーザリフロー方法において、前記結像手段は、前記空間光変調器が有する結像機能であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、簡素な装置構成で高い生産性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態に係るレーザ光照射装置の構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すレーザ光照射装置によるレーザ光の照射対象の板状物の一例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すレーザ光照射装置の光学系の構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の位相パターンによって変調されたレーザ光が板状物に結像される状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、第2の位相パターンによって変調されたレーザ光が板状物に結像される状態を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、第3の位相パターンによって変調されたレーザ光が板状物に結像される状態を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、第4の位相パターンによって変調されたレーザ光が板状物に結像される状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係るレーザ光照射装置1を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態に係るレーザ光照射装置1の構成例を示す斜視図である。
図2は、
図1に示すレーザ光照射装置1によるレーザ光21の照射対象の板状物100の一例を示す斜視図である。
図3は、
図2に示す板状物100の要部断面図である。
図4は、
図1に示すレーザ光照射装置1の光学系の構成例を示す図である。なお、以下の説明において、X軸方向は、水平面における一方向である。Y軸方向は、水平面において、X軸方向に直交する方向である。Z軸方向は、X軸方向およびY軸方向に直交する方向である。
【0014】
実施形態のレーザ光照射装置1は、保持テーブル10と、レーザ光照射ユニット20と、移動ユニット30と、撮像ユニット70と、表示ユニット80と、制御ユニット90と、を備える。レーザ光照射装置1は、保持テーブル10に保持された板状物100(
図2および
図3参照)にレーザ光21(
図4参照)を照射する装置である。
【0015】
実施形態において、
図2および
図3に示す板状物100は、基板110と、バンプ130を介して基板110上に載置された半導体チップ120と、を含み、バンプ130をレーザ光21でリフローさせることにより、半導体チップ120が基板110に対してフリップ実装されることが予定される被加工物である。すなわち、実施形態のレーザ光照射装置1は、保持テーブル10に保持された板状物100の基板110上に載置された半導体チップ120に対してレーザ光21を照射することにより、バンプ130をリフローさせて半導体チップ120を基板110に接続することが可能な装置である。
【0016】
基板110は、実施形態において、矩形状である。基板110は、例えば、PCB基板(Printed Circuit Board)や、チップに分割される前のデバイスウェーハ等である。基板110の表面111側には、バンプ130を介して半導体チップ120が複数配置される。半導体チップ120は、表面121に1以上のバンプ130を有する。バンプ130は、半導体チップ120の表面121に設けられる突起状の端子である。
【0017】
半導体チップ120は、基板110および半導体チップ120が加熱され、バンプ130が溶けることによって、基板110上の電極に接続する。なお、板状物100は、実施形態における半導体チップ120がバンプ130を介して基板110に配列されたものの他に、複数の半導体チップ120が積層され、各々の半導体チップ120間にバンプ130が存在するもの等でもよい。
【0018】
図1に示す保持テーブル10は、板状物100を保持面11で保持する。保持面11は、ポーラスセラミック等から形成された円板形状である。保持面11は、実施形態において、水平方向と平行な平面である。保持面11は、例えば、真空吸引経路を介して真空吸引源と接続している。保持テーブル10は、保持面11上に載置された板状物100を吸引保持する。
【0019】
なお、板状物100は、半導体チップ120が基板110上に載置された状態で保持テーブル10に保持される。この際、半導体チップ120は、バンプ130を有する一方の面(表面121)を下向きにした状態で、バンプ130を介して、表面111側が上向きにされた基板110の表面111側に載置される。
【0020】
保持テーブル10は、回転ユニット13によりZ軸方向と平行な軸心回りに回転される。回転ユニット13は、X軸方向移動プレート14に支持される。回転ユニット13および保持テーブル10は、X軸方向移動プレート14を介して、移動ユニット30のX軸方向移動ユニット40によりX軸方向に移動される。回転ユニット13および保持テーブル10は、X軸方向移動プレート14、X軸方向移動ユニット40、およびY軸方向移動プレート15を介して、移動ユニット30のY軸方向移動ユニット50によりY軸方向に移動される。
【0021】
レーザ光照射ユニット20は、保持テーブル10に保持された板状物100にレーザ光21を照射させるユニットである。
図4に示すように、レーザ光照射ユニット20は、レーザ光源22と、均一照射ユニット23と、導光ユニット24と、空間光変調器25と、結像手段26と、を含む。
【0022】
レーザ光源22は、レーザ光21を出射する。レーザ光源22は、例えば、ファイバレーザ、単一のレーザダイオード(LD)を有する単一光源、または複数のレーザダイオードが配置されるマルチ光源等を含む。レーザ光源22から出射されるレーザ光21は、板状物100(半導体チップ120)に対して吸収性を有する波長の連続波(CW)である。
【0023】
均一照射ユニット23は、レーザ光源22の後段に配置される。均一照射ユニット23は、均一照射ユニット23から出射されるレーザ光21によって、後述の空間光変調器25に対する均一照射面を形成するためのものである。この均一照射面では、レーザ光21のパワー密度が均一なものとなる。
【0024】
均一照射ユニット23は、レーザ光源22がマルチ光源である場合には、特に設けられることが好ましい。均一照射ユニット23は、単一光源の場合にも、ガウシアン分布をなす光源の場合には、完全なトップハット分布にするために設けられることが好ましく、また、トップハット分布をなす光源の場合においてもより完全なトップハット分布にするために設けられることが好ましい。
【0025】
均一照射ユニット23としては、例えば、コリメートレンズと非球面レンズの組み合わせにより均一照射面が形成されるもの、コリメートレンズ、DOE(Diffractive Optical Element;回折光学素子)および集光レンズの組み合わせにより均一照射面が形成されるもの、ロッドレンズ(ガラスからなる筒状部材)またはライトパイプ(鏡で囲まれた中空の筒状部材であり、ホモジナイザーロッドとも呼ぶ)と導光ユニット(リレーレンズや光ファイバ)との組み合わせにより均一照射面が形成されるもの、コリメートレンズと第一レンズアレイおよび第二レンズアレイ(複数のロッドレンズを束ねてアレイ状にしたものや、レンズをアレイ状に面加工したもの)と集光レンズとの組み合わせにより均一照射面が形成されるもの、等を利用することができる。
【0026】
導光ユニット24は、均一照射ユニット23によって形成された均一照射面の光を、空間光変調器25に転写するためのユニットである。なお、レーザ光照射ユニット20が均一照射ユニット23を含まない場合、導光ユニット24は、レーザ光源22からの直接の光を、空間光変調器25に転写する。導光ユニット24は、例えば、光ファイバやリレーレンズ(組みレンズ)により構成される。
【0027】
空間光変調器25は、レーザ光源22と結像手段26との間に配設される。空間光変調器25は、空間光変調素子を含み、表示させる位相パターンに応じて、レーザ光源22から出射されたレーザ光21を変調して出射する。空間光変調器25は、出射されるレーザ光21の強度(パワー密度)の空間密度分布を制御することで、レーザ光21を変調する、所謂、SLM(Spatial Light Modulator)と称されるものである。
【0028】
空間光変調器25は、表示させる位相パターンを変更することによって、板状物100へレーザ光21を照射する際の板状物100の被照射範囲の位置を変更する。空間光変調器25としては、例えば、周知の反射型液晶LCOS(Liquid-Crystal on Silicon)、透過型液晶LCP(Liquid Crystal Panel)、Deformable Mirror、DMD(Digital Micro-mirror Device)、等の周知のSLMデバイスを利用することができる。実施形態の空間光変調器25は、LCOSである。
【0029】
結像手段26は、入射されるレーザ光21を、板状物100の被照射面に結像する。実施形態のレーザ光照射ユニット20は、結像手段26によって、保持テーブル10上の板状物100における半導体チップ120の裏面122に対応する領域に、レーザ光21を結像する。なお、レーザ光照射ユニット20では、複数の半導体チップ120に対して同時に照射するようにしてもよい。実施形態の結像手段26は、結像系27と、拡大結像レンズ28と、テレセントリックレンズ29と、を含む。
【0030】
結像系27は、単一のレンズや、組みレンズからなる結像レンズで構成され、
図5に示す一例では、両凸レンズと両凹レンズとを順に配置して構成される。なお、結像系27は、空間光変調器25が空間光変調素子により結像系27(結像レンズ)の機能も兼ね備える場合には、省略されてもよい。
【0031】
拡大結像レンズ28は、結像系27で結像される像(共役像)を拡大して板状物100の被照射面に結像するものである。なお、拡大結像レンズ28は、省略されてもよい。
【0032】
テレセントリックレンズ29は、板状物100の被照射面に対して、レーザ光21を垂直に入射させる、すなわち、光軸と平行に入射させるためのものである。なお、結像系27をテレセントリックレンズ29に構成することもでき、また、テレセントリックレンズ29を省略して光学系を構成することとしてもよい。
【0033】
図1に示す移動ユニット30は、保持テーブル10と、レーザ光照射ユニット20とを相対的に移動させるユニットである。移動ユニット30は、X軸方向移動ユニット40と、Y軸方向移動ユニット50と、Z軸方向移動ユニット60と、を含む。
【0034】
X軸方向移動ユニット40は、保持テーブル10と、レーザ光照射ユニット20とをX軸方向に相対的に移動させるユニットである。X軸方向移動ユニット40は、実施形態において、保持テーブル10をX軸方向に移動させる。X軸方向移動ユニット40は、実施形態において、レーザ光照射装置1の装置本体2上に設置されている。
【0035】
X軸方向移動ユニット40は、X軸方向移動プレート14をX軸方向に移動自在に支持する。X軸方向移動ユニット40は、実施形態において、周知のボールねじ41と、周知のパルスモータ42と、周知のガイドレール43と、を含む。ボールねじ41は、軸心回りに回転自在に設けられる。パルスモータ42は、ボールねじ41を軸心回りに回転させる。ガイドレール43は、X軸方向移動プレート14をX軸方向に移動自在に支持する。ガイドレール43は、Y軸方向移動プレート15に固定して設けられる。
【0036】
Y軸方向移動ユニット50は、保持テーブル10と、レーザ光照射ユニット20とをY軸方向に相対的に移動させるユニットである。Y軸方向移動ユニット50は、実施形態において、保持テーブル10をY軸方向に移動させる。Y軸方向移動ユニット50は、実施形態において、レーザ光照射装置1の装置本体2上に設置されている。
【0037】
Y軸方向移動ユニット50は、Y軸方向移動プレート15をY軸方向に移動自在に支持する。Y軸方向移動ユニット50は、実施形態において、周知のボールねじ51と、周知のパルスモータ52と、周知のガイドレール53と、を含む。ボールねじ51は、軸心回りに回転自在に設けられる。パルスモータ52は、ボールねじ51を軸心回りに回転させる。ガイドレール53は、Y軸方向移動プレート15をY軸方向に移動自在に支持する。ガイドレール53は、装置本体2に固定して設けられる。
【0038】
Z軸方向移動ユニット60は、
図4に示す結像手段26によって結像されたレーザ光21の結像点を、光軸方向に移動させるユニットである。光軸方向は、保持テーブル10の保持面11と直交する方向であるZ軸方向である。Z軸方向移動ユニット60は、保持テーブル10と、レーザ光照射ユニット20の少なくとも結像手段26とを、Z軸方向に相対的に移動させる。Z軸方向移動ユニット60は、実施形態において、レーザ光照射装置1の装置本体2から立設した立壁部3に設置されている。
【0039】
Z軸方向移動ユニット60は、レーザ光照射ユニット20のうち、少なくとも結像手段26をZ軸方向に移動自在に支持する。Z軸方向移動ユニット60は、実施形態において、周知のボールねじ61と、周知のパルスモータ62と、周知のガイドレール63と、を含む。ボールねじ61は、軸心回りに回転自在に設けられる。パルスモータ62は、ボールねじ61を軸心回りに回転させる。ガイドレール63は、レーザ光照射ユニット20をZ軸方向に移動自在に支持する。ガイドレール63は、立壁部3に固定して設けられる。
【0040】
撮像ユニット70は、保持テーブル10の保持面11に保持された板状物100を撮像する。撮像ユニット70は、保持面11に保持された板状物100を撮像するCCD(Charge Coupled Device)カメラまたは赤外線カメラを含む。撮像ユニット70は、例えば、レーザ光照射ユニット20の結像手段26(
図4参照)に隣接するように固定されている。撮像ユニット70は、板状物100を撮像して、板状物100とレーザ光照射ユニット20との位置合わせを行うアライメントを遂行するための画像を得て、得た画像を制御ユニット90に出力する。
【0041】
表示ユニット80は、液晶表示装置等により構成される表示部である。表示ユニット80は、例えば、加工条件の設定画面、撮像ユニット70が撮像した板状物100の状態、加工動作の状態等を、表示面に表示させる。表示ユニット80の表示面がタッチパネルを含む場合、表示ユニット80は、入力部を含んでもよい。入力部は、オペレータが加工内容情報を登録する等の各種操作を受付可能である。入力部は、キーボード等の外部入力装置であってもよい。表示ユニット80は、表示面に表示される情報や画像が入力部等からの操作により切り換えられる。表示ユニット80は、報知装置を含んでもよい。報知装置は、音および光の少なくとも一方を発してレーザ光照射装置1のオペレータに予め定められた報知情報を報知する。報知装置は、スピーカーまたは発光装置等の外部報知装置であってもよい。
【0042】
制御ユニット90は、レーザ光照射装置1の上述した各構成要素をそれぞれ制御して、板状物100に対する加工動作等をレーザ光照射装置1に実行させる。制御ユニット90は、レーザ光照射ユニット20、移動ユニット30、撮像ユニット70、および表示ユニット80を制御する。制御ユニット90は、演算手段としての演算処理装置と、記憶手段としての記憶装置と、通信手段としての入出力インターフェース装置と、を含むコンピュータである。演算処理装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のマイクロプロセッサを含む。記憶装置は、ROM(Read Only Memory)またはRAM(Random Access Memory)等のメモリを有する。演算処理装置は、記憶装置に格納された所定のプログラムに基づいて各種の演算を行う。演算処理装置は、演算結果に従って、入出力インターフェース装置を介して各種制御信号を上述した各構成要素に出力し、レーザ光照射装置1の制御を行う。制御ユニット90は、位相パターン記憶部91と、位相パターン制御部92と、を有する。
【0043】
位相パターン記憶部91は、複数の位相パターンを記憶する。位相パターン記憶部91に記憶される複数の位相パターンは、空間光変調器25に表示させた際に板状物100の面内でレーザ光21が照射される位置が互いに異なる。具体的には、各々の位相パターンは、空間光変調器25に表示させた際にレーザ光21が照射される位置が、基板110に搭載された各々の異なる半導体チップ120に対応する領域となる。
【0044】
位相パターン制御部92は、板状物100の面内でレーザ光21が照射される位置が変わるように、空間光変調器25に表示させる位相パターンを、位相パターン記憶部91に記憶された複数の位相パターンのうち所定の位相パターンに切り替える。位相パターン制御部92が空間光変調器25に表示させる位相パターンを切り替えることにより、レーザ光21は、板状物100の面内で二次元的に走査される。より詳しくは、位相パターン制御部92が空間光変調器25に表示させる位相パターンを、各々の半導体チップ120に対応する領域にレーザ光21を照射させる位相パターンに切り替えることにより、レーザ光21は、基板110の面内で半導体チップ120に対応する領域で二次元的に走査され、レーザ光21の被照射範囲に含まれるバンプ130をリフローさせる。
【0045】
次に、レーザ光照射装置1がレーザ光21を、裏面112側を保持テーブル10に保持された実施形態の板状物100に照射して、バンプ130をリフローさせる動作について説明する。
図5は、第1の位相パターンによって変調されたレーザ光21-1が板状物100に結像される状態を示す斜視図である。
図6は、第2の位相パターンによって変調されたレーザ光21-2が板状物100に結像される状態を示す斜視図である。
図7は、第3の位相パターンによって変調されたレーザ光21-3が板状物100に結像される状態を示す斜視図である。
図8は、第4の位相パターンによって変調されたレーザ光21-4が板状物100に結像される状態を示す斜視図である。
図9は、
図5および
図6に示す板状物100の要部断面図である。
【0046】
レーザ光照射装置1は、まず、レーザ光照射ユニット20の空間光変調器25に、第1の位相パターンを表示させる。第1の位相パターンは、変調された後の
図5に示すレーザ光21-1の照射範囲が半導体チップ120-1に対応する領域となるようにレーザ光21を変調させる位相パターンである。
【0047】
レーザ光照射装置1は、次に、板状物100の表面111側からレーザ光21を照射する。これにより、第1の位相パターンにより変調されたレーザ光21-1が、半導体チップ120-1のバンプ130を有する一方の面(表面121)とは反対側の他方の面(裏面122)から照射される。この際、レーザ光21-1の照射範囲は、半導体チップ120-1に対応する領域であるため、半導体チップ120-1全面に対応するバンプ130がリフローされて、半導体チップ120-1が基板110に接続される。レーザ光照射装置1は、例えば、1つの半導体チップ120に対して、1sec間、レーザ光21を照射する。
【0048】
レーザ光照射装置1は、次に、レーザ光照射ユニット20の空間光変調器25に表示させる位相パターンを、第1の位相パターンから第2の位相パターンに切り替える。位相パターンを切り替える所要時間は、例えば、30msec程度である。第2の位相パターンは、変調された後の
図6に示すレーザ光21-2の照射範囲が半導体チップ120-2に対応する領域となるようにレーザ光21を変調させる位相パターンである。
【0049】
これにより、レーザ光21の照射範囲が、半導体チップ120-1に対応する領域から半導体チップ120-2に対応する領域に切り替わる。すなわち、第2の位相パターンにより変調されたレーザ光21-2が、半導体チップ120-2のバンプ130を有する一方の面(表面121)とは反対側の他方の面(裏面122)から照射され、半導体チップ120-2全面に対応するバンプ130がリフローされて、半導体チップ120-2が基板110に接続される。
【0050】
同様に、レーザ光照射装置1は、レーザ光照射ユニット20の空間光変調器25に表示させる位相パターンを、第2の位相パターンから第3の位相パターンに切り替える。第3の位相パターンは、変調された後の
図7に示すレーザ光21-3の照射範囲が半導体チップ120-3に対応する領域となるようにレーザ光21を変調させる位相パターンである。
【0051】
これにより、レーザ光21の照射範囲が、半導体チップ120-2に対応する領域から半導体チップ120-3に対応する領域に切り替わる。すなわち、第3の位相パターンにより変調されたレーザ光21-3が、半導体チップ120-3のバンプ130を有する一方の面(表面121)とは反対側の他方の面(裏面122)から照射され、半導体チップ120-3全面に対応するバンプ130がリフローされて、半導体チップ120-3が基板110に接続される。
【0052】
同様に、レーザ光照射装置1は、レーザ光照射ユニット20の空間光変調器25に表示させる位相パターンを、第3の位相パターンから第4の位相パターンに切り替える。第4の位相パターンは、変調された後の
図8に示すレーザ光21-4の照射範囲が半導体チップ120-4に対応する領域となるようにレーザ光21を変調させる位相パターンである。
【0053】
これにより、レーザ光21の照射範囲が、半導体チップ120-3に対応する領域から半導体チップ120-4に対応する領域に切り替わる。すなわち、第4の位相パターンにより変調されたレーザ光21-4が、半導体チップ120-4のバンプ130を有する一方の面(表面121)とは反対側の他方の面(裏面122)から照射され、半導体チップ120-4全面に対応するバンプ130がリフローされて、半導体チップ120-4が基板110に接続される。
【0054】
このように、レーザ光21を板状物100に照射した状態で、位相パターンを切り替えることで、レーザ光21の照射範囲を板状物100の面内で順次切り替える。すなわち、
図9に示すように、レーザ光21が照射可能な範囲内において、位相パターンによりレーザ光21が板状物100に入射する角度を変更することにより、レーザ光21は、板状物100の面内で二次元的に走査可能である。
【0055】
以上説明したように、実施形態のレーザ光照射装置1は、空間光変調器25を用いて位相パターンを切り替えてレーザ光21が板状物100に入射する角度を変更することにより、レーザ光21が照射される板状物100の被照射範囲を二次元的に走査することができる。このため、パワー密度を確保できる上に、別途走査手段を設ける必要がなく、簡素な装置構成を実現できるという効果を奏する。
【0056】
また、保持テーブル10やレーザ光21を板状物100に結像させる結像手段を物理的に移動させる場合と比較して、空間光変調器25の位相パターン切り替えにかかる時間は短いため、生産性の向上に貢献する。なお、保持テーブル10の移動の所要時間は、例えば、1sec程度であり、位相パターンの切り替えの所要時間は、例えば、30msec程度である。
【0057】
すなわち、例えば、
図5から
図8までに示すように、4つの半導体チップ120にレーザ光21を照射する場合、保持テーブル10の移動で照射対象の半導体チップ120を切り替える場合は、移動に4sec、レーザ光照射に1sec、合計8secかかる。これに対し、実施形態では、位相パターンの切り替えに120msec、レーザ光照射に1sec、合計4secかかる。
【0058】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0059】
例えば、空間光変調器25の照射可能範囲よりも、板状物100の照射対象領域が大きい場合には、所定の位置において位相パターンの切り替えにより空間光変調器25の照射可能範囲(第1の照射可能範囲)にレーザ照射した後、移動ユニット30で板状物100を移動させ、再度位相パターンの切り替えにより空間光変調器25の照射可能範囲(第2の照射可能範囲)にレーザ照射する。これにより、照射対象領域が広範囲でも効率的にレーザ照射してバンプ130をリフローさせることが可能である。
【0060】
また、1つの位相パターンが1つの半導体チップ120への照射に対応する態様に限らず、1つの位相パターンが複数の半導体チップ120への照射に対応することも可能である。
【0061】
また、結像手段26は、実施形態では空間光変調器25とは別個に設けられる結像系27、拡大結像レンズ28、およびテレセントリックレンズ29を含んで構成されるが、空間光変調器25が有する結像機能であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 レーザ光照射装置
10 保持テーブル
20 レーザ光照射ユニット
21 レーザ光
22 レーザ光源
25 空間光変調器
26 結像手段
30 移動ユニット
70 撮像ユニット
80 表示ユニット
90 制御ユニット
91 位相パターン記憶部
92 位相パターン制御部
100 板状物
110 基板
111 表面
112 裏面
120 半導体チップ
121 表面(一方の面)
122 裏面(他方の面)
130 バンプ