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特開2023-129015イデユコゴメ綱に属する藻類の培養方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129015
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】イデユコゴメ綱に属する藻類の培養方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/12 20060101AFI20230907BHJP
   C12P 19/04 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
C12N1/12 A
C12P19/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033751
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504202472
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人情報・システム研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100141195
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 恵美子
(72)【発明者】
【氏名】岨 稔康
(72)【発明者】
【氏名】堤端 千尋
(72)【発明者】
【氏名】宮城島 進也
(72)【発明者】
【氏名】藤原 崇之
(72)【発明者】
【氏名】廣岡 俊亮
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AF12
4B064CA08
4B064DA10
4B065AA83X
4B065AC14
4B065BB03
4B065BB15
4B065BB16
4B065CA41
(57)【要約】
【課題】本発明は、イデユコゴメ綱に属する藻類の培養方法及びグリコーゲンの生産方法の提供を目的とする。
【解決手段】所定の濃度の炭素源及び場合により所定の濃度の鉄イオンを含有する培地でイデユコゴメ綱に属する藻類を培養することを含む、イデユコゴメ綱に属する藻類の培養方法又はグリコーゲンの生産方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イデユコゴメ綱に属する藻類を、5~40重量%の炭素源を含む培地で培養することを含む、イデユコゴメ綱に属する藻類を培養する方法。
【請求項2】
前記炭素源が、単糖類、二糖類又は糖アルコールである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
培養が回分培養である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
培地が0.07~10mMの鉄イオンをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
請求項1~3いずれか一項記載の培養方法によりグリコーゲンを生産する方法。
【請求項6】
培養物からグリコーゲンを回収することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
グリコーゲンが、培養物中のイデユコゴメ綱に属する藻類に対し10mg/g以上含まれる、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項の方法で得られるイデユコゴメ綱に属する藻類の培養物を乾燥した、イデユコゴメ綱に属する藻類の乾燥物。
【請求項9】
イデユコゴメ綱に属する藻類を、5~40重量%の炭素源を含む培地で培養することを含む、イデユコゴメ綱に属する藻類にグリコーゲンを生産させる方法。
【請求項10】
前記炭素源が、単糖類、二糖類又は糖アルコールである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
培地が0.07~10mMの鉄イオンをさらに含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
グリコーゲンが、培養物中のイデユコゴメ綱に属する藻類に対し10mg/g以上含まれる、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イデユコゴメ綱に属する藻類の培養方法又はイデユコゴメ綱に属する藻類を培養してグリコーゲンを生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イデユコゴメ綱に属する藻類(紅藻)は、硫酸酸性温泉に生育する単細胞性の藻類である。
【0003】
特許文献1には、紅藻シアニジウム目の増殖を維持しながら、脂質を生産させるための培地組成物、及び当該培地組成物を用いる脂質の生産方法が記載される。特許文献1には、脂質を生産するために用いられる培地組成物は、硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩を十分に含み、塩化ナトリウム等のナトリウム塩を含み、さらにリン酸等の無機酸の含量を調節した強酸性の培地組成物であることが記載されている。一方で、特許文献1では、グリコーゲン(多糖類)の生産を目的とする培養条件の検討は行われていない。
【0004】
ところで、生物の細胞(細胞質)はタンパク質、アミノ酸、糖類、脂質、リン酸、ナトリウム、カリウムなどの様々な分子を含み、一般的に細胞周囲の環境よりも高い溶液濃度を有する。そのため、水は細胞の中へと拡散する傾向があり、代謝・増殖などに必要な水分量が適正に保たれる。しかし、微生物の培養において、糖類等を高濃度で含む培地中で細胞を培養すると、細胞中のナトリウムイオンやカリウムイオンを含んだ水分が細胞外に流出してしまう。これらのイオンは細胞機能に必要であることから、細胞は増殖が困難になり、場合よっては細胞死に至ることが知られている(非特許文献1)。したがって、微生物の培養においては培養初期に培地中の糖類の濃度を高くすることは通常行われないか、仮に行われたとしても細胞の増殖に問題があることが多い。
【0005】
特許文献1においては、培地組成物を用いることにより藻類から脂質が生産されるが、通常の培地程度の増殖速度は達成されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-192598
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】日本醸造協会誌第105巻10号618-657頁、2010年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、イデユコゴメ綱に属する藻類の培養方法及びイデユコゴメ綱に属する藻類にグリコーゲンを生産させる方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究を行い、イデユコゴメ綱に属する藻類の培養方法及びイデユコゴメ綱に属する藻類からグリコーゲンを生産する方法を見出した。すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
イデユコゴメ綱に属する藻類を、5~40重量%の炭素源を含む培地で培養することを含む、イデユコゴメ綱に属する藻類を培養する方法。
[2]
前記炭素源が、単糖類、二糖類又は糖アルコールである、[1]に記載の方法。
[3]
培養が回分培養である、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]
培地が0.07~10mMの鉄イオンをさらに含む、[1]~[3]のいずれか一項記載の方法。
[5]
[1]~[3]いずれか一項記載の培養方法によりグリコーゲンを生産する方法。
[6]
培養物からグリコーゲンを回収することをさらに含む、[5]に記載の方法。
[7]
グリコーゲンが、培養物中のイデユコゴメ綱に属する藻類に対し10mg/g以上含まれる、[5]又は[6]に記載の方法。
[8]
[1]~[7]のいずれか一項の方法で得られるイデユコゴメ綱に属する藻類の培養物を乾燥した、イデユコゴメ綱に属する藻類の乾燥物。
[9]
イデユコゴメ綱に属する藻類を、5~40重量%の炭素源を含む培地で培養することを含む、イデユコゴメ綱に属する藻類にグリコーゲンを生産させる方法。
[10]
前記炭素源が、単糖類、二糖類又は糖アルコールである、[9]に記載の方法。
[11]
培地が0.07~10mMの鉄イオンをさらに含む、[9]又は[10]に記載の方法。
[12]
グリコーゲンが、培養物中のイデユコゴメ綱に属する藻類に対し10mg/g以上含まれる、[9]~[11]のいずれか一項に記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、イデユコゴメ綱に属する藻類の培養方法が提供される。本発明の培養方法により、培養物中のイデユコゴメ綱に属する藻類の藻体量が増加し、イデユコゴメ綱に属する藻類の培養効率が改善する。
【0011】
別の態様において、本発明の培養方法により、イデユコゴメ綱に属する藻類によるグリコーゲンの生産量が増加する。また、本発明により、グリコーゲンの生産方法が提供される。したがって、本発明によれば、イデユコゴメ綱に属する藻類によるグリコーゲンの生産効率が改善する。
【0012】
本発明の別の態様において、イデユコゴメ綱に属する藻類の培養効率を改善させつつ、かつ、イデユコゴメ綱に属する藻類によるグリコーゲンの生産効率を改善させることができる。
【0013】
本発明の別の態様において、イデユコゴメ綱に属する藻類の培養物を乾燥した乾燥体が提供される。乾燥体はグリコーゲンを多く含むことから、本発明により、藻類由来のバイオマス燃料の原料になり得るグリコーゲンの効率の良い製造が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。本発明の範囲はこれらの説明に限定されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施し得る。
【0015】
本発明は、イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類の培養方法又はイデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類にグリコーゲンを生産させる方法に関する。
【0016】
微生物の培養において、糖類等を高濃度で含む培地中で細胞を培養すると、細胞中のナトリウムイオンやカリウムイオンを含んだ水分が細胞外に流出してしまう。これらのイオンは細胞機能に必要であり、細胞は増殖が困難になり、場合よっては細胞死に至ることが知られている。このように、微生物の培養においては培養初期に糖類の濃度を高くすることは通常行われない。本発明においては、イデユコゴメ綱に属する藻類の培養において、培養開始時に5~40重量%の濃度の炭素源(糖)を含む培地で培養することにより、驚くべきことに藻類の培養効率が高まり、グリコーゲンを効率的に産生することを見出した。グリコーゲンを高効率で産生するためには、0.05~10mMの鉄イオンをさらに含む培地を用いることが好ましい。
【0017】
イデユコゴメ綱は、分類学上、紅色植物門(Rhodophyta)イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)として分類され、シアニディオシゾン(Cyanidioschyzon)属、シアニジウム(Cyanidium)属及びガルデリア(Galdieria)属の3属にさらに分類される。本発明において、イデユコゴメ綱に属する藻類として、シアニディオシゾン(Cyanidioschyzon)属、シアニジウム(Cyanidium)属及びガルデリア(Galdieria)属のいずれの属に属する藻類を用いてもよい。本発明において、イデユコゴメ綱に属する藻類は、ガルデリア(Galdieria)属に属する藻類が好ましい。
【0018】
本発明において、例えば、シアニディオシゾン・メローラエ(Cyanidioschyzon merolae)等のシアニディオシゾン属に属する藻類、シアニジウム・カルダリウム(Cyanidium caldarium)等のシアニジウム属に属する藻類、ガルデリア・スルフラリア(Galdieria sulphuraria)等のガルデリア属に属する藻類、又はこれらの変異体又はこれらの組合せを用いることができる。
【0019】
本発明において、イデユコゴメ綱に属する藻類は、一倍体の細胞形態であっても、二倍体の細胞形態であってもよい。
【0020】
本発明において、用いるイデユコゴメ綱に属する藻類の株は限定されない。例えば、ガルデリア・スルフラリア(Galdieria sulphuraria)の株としては、G 127(二倍体。強固な細胞壁を有する、CCCryoから入手可能)、G 108(1n)(二倍体から特開2020-072698に記載の方法に従って一倍体を誘導し、その単独培養株を作製してから利用。強固な細胞壁を有さない。)又はその変異株が挙げられる。G 127及びG 108のそれぞれの二倍体は、公的機関(例えば、G127(CCCryo 127-00)はCCCryo(Culture Collection of Cryophilic Algae)、G108(SAG 108.79)はSAG(The Culture Collection of Algae at Goettingen University))から容易に入手することができる。
【0021】
変異株は、当業者であれば、株に変異処理を行うことによって容易に得ることができる。変異処理としては、例えば、変異原作用を有する薬剤による処理又は高エネルギー線照射処理が挙げられる。変異原作用を有する薬剤として、例えば、エチルメタンスルホネート、N-メチル-N′-ニトロ-N-ニトロソグアニジン及び5-ブロモウラシル等の塩基類似体が挙げられる。また、高エネルギー線としては、UV、ガンマ線、X線及び重イオンビームが挙げられる。変異処理には、遺伝子組換え法を利用して特定の遺伝子を変異させる方法も含まれる。変異株には、形質転換体も含まれる。
【0022】
イデユコゴメ綱に属する藻類は、高温、高硫黄、低pHの環境、たとえば硫酸塩泉から、既報に従って採集し(De Luca P. et al., 1978, Webbia, 33, 37-44)、アレン培地又は改変アレン(MA)培地において維持培養することができる(Allen, M. B., 1959, Arch. Mikrobiol., 32, 270-277; Kuroiwa, T. et al., 1993, Protoplasma, 175, 173-177; Ohnuma M. et al., 2008, Plant Cell Physiol., 117-120; Kuroiwa T. et al., 2012, Cytologia, 77(3), 289-299)。
【0023】
本発明は、イデユコゴメ綱に属する藻類を培養するための培地又はイデユコゴメ綱に属する藻類にグリコーゲンを生産させるための培地を含む。
【0024】
本発明のイデユコゴメ綱に属する藻類を培養するための培地又はイデユコゴメ綱に属する藻類にグリコーゲンを生産させるための培地は、5~40重量%の炭素源を含むことを特徴とする。炭素源は、イデユコゴメ綱に属する藻類を培養するのに通常用いられる基礎培地に含有させることができる。5~40重量%の炭素源を含む培地は、0.07~10mMの鉄イオンをさらに含有してもよい。
【0025】
5~40重量%の炭素源を含む本発明の培地を用いてイデユコゴメ綱に属する藻類を培養することにより、培養物中の藻体量が増加し、イデユコゴメ綱に属する藻類の培養効率が改善する。したがって、炭素源を含む培地は、イデユコゴメ綱に属する藻類の培養のために用いることができるし、イデユコゴメ綱に属する藻類の培養効率を改善するためにも用いることができる。5~40重量%の炭素源を含む培地でイデユコゴメ綱に属する藻類を培養することを含む、イデユコゴメ綱に属する藻類の培養方法又は培養効率を改善する方法は、本発明に含まれる。
【0026】
イデユコゴメ綱に属する藻類の培養効率は、濁度法や乾燥藻体重量などの従来公知の細胞増殖の評価方法に基づき評価することができる。例えば、濁度法では、培養容器から採取した培養物の波長750 nmにおける濁度(光学密度)を分光光度計等を用いて測定する。測定の際に、水又は培地で希釈系列を作製し、測定に適する濃度まで培養物を希釈してもよい。また、培養容器から採取した一定量の培養物を乾燥させた後、重量を測定することにより乾燥藻体の重量を測定することができる。
【0027】
対照の値と比較して、濁度が大きい又は乾燥藻体量が多い場合、イデユコゴメ綱に属する藻類の藻体量が増加した、又は、イデユコゴメ綱に属する藻類の培養効率が改善したと評価することができる。本発明の培地で培養する前のイデユコゴメ綱に属する藻類又は基礎培地などの本発明の培地以外の培地で培養したイデユコゴメ綱に属する藻類を対照として用いることができる。
【0028】
イデユコゴメ綱に属する藻類は、グリコーゲンを貯蔵多糖として細胞質基質中に貯蔵する。5~40重量%の炭素源を含む本発明の培地でイデユコゴメ綱に属する藻類を培養することにより、培養物中の藻体量が増加し、グリコーゲンが蓄積された藻体を含む培養物を多量に得ることができる。したがって、本発明の培地を用いてイデユコゴメ綱に属する藻類を培養することにより、イデユコゴメ綱に属する藻類によるグリコーゲンの生産量を増加させることができる。また、5~40重量%の炭素源を含む本発明の培地は、イデユコゴメ綱に属する藻類にグリコーゲンを生産させるための培地としても用いることができる。5~40重量%の炭素源を含む培地でイデユコゴメ綱に属する藻類を培養することを含む、イデユコゴメ綱に属する藻類にグリコーゲンを生産させる方法又はグリコーゲンの生産効率を改善する方法は、本発明に含まれる。
【0029】
グリコーゲンの生産量は、培養物中のイデユコゴメ綱に属する藻類に含まれるグリコーゲン量によって評価することができる。イデユコゴメ綱に属する藻類に含まれるグリコーゲン量は、培養した藻体からグリコーゲンを抽出し、抽出したグリコーゲンの量を測定すればよい。例えば、培養容器から採取した一定量の培養物を乾燥させた後、乾燥物(乾燥藻体)に水を加えてミキサーで混合した後に熱処理及び遠心処理をして得られた上清をグリコーゲン抽出液とすることができる。当業者であれば適宜改変を実施して培養したイデユコゴメ綱に属する藻類からグリコーゲン抽出液を得ることができる。グリコーゲン抽出液中に含まれるグリコーゲン量は、市販のキットを用いて定量することができる。定量の際に、水又は溶媒で希釈系列を作製し、測定に適する濃度までグリコーゲン抽出液を希釈してもよい。また、グリコーゲン抽出液中に含まれるグリコーゲン量は、HPLC等のクロマトグラフィーによって定量してもよい。
【0030】
対照の値と比較して、培養物中のイデユコゴメ綱に属する藻類に含まれるグリコーゲン量が多い場合、グリコーゲンの生産量が増加した、又はグリコーゲンの生産効率が改善したと評価することができる。本発明の培地で培養する前のイデユコゴメ綱に属する藻類又は基礎培地などの本発明の培地以外の培地で培養したイデユコゴメ綱に属する藻類を対照として用いることができる。
【0031】
本発明の別の態様において、5~40重量%の炭素源を含む本発明の培地は、0.05~10mMの鉄イオンをさらに含むこともできる。
【0032】
本発明の一態様において、5~40重量%の炭素源及び0.05~10mMの鉄イオンを含む本発明の培地を用いてイデユコゴメ綱に属する藻類を培養することにより、培養物中の藻体量が増加し、イデユコゴメ綱に属する藻類の培養効率が改善する。したがって、炭素源と鉄イオンを含む培地は、イデユコゴメ綱に属する藻類の培養のために用いることができるし、あるいはイデユコゴメ綱に属する藻類の培養効率を改善するために用いることもできる。5~40重量%の炭素源及び0.05~10mMの鉄イオンを含む培地でイデユコゴメ綱に属する藻類を培養することを含む、イデユコゴメ綱に属する藻類の培養方法又は培養効率を改善する方法は、本発明に含まれる。
【0033】
5~40重量%の炭素源及び0.05~10mMの鉄イオンを含む本発明の培地を用いる場合のイデユコゴメ綱に属する藻類の培養効率の評価は、前述と同様に実施することができる。
【0034】
また、本発明の別の態様において、5~40重量%の炭素源及び0.05~10mMの鉄イオンを含む培地で培養することにより、培養物中の藻体量が増加し、グリコーゲンが蓄積された藻体を含む培養物を多量に得ることができる。また、炭素源及び鉄イオンを含む本発明の培地を用いてイデユコゴメ綱に属する藻類を培養することにより、藻体中のグリコーゲン濃度が増加し、グリコーゲンが多量に蓄積された藻体を含む培養物を得ることができる。また別の態様において、炭素源及び鉄イオンを含む本発明の培地を用いてイデユコゴメ綱に属する藻類を培養することにより、培養物中の藻体量が増加し、かつ、藻体中のグリコーゲン濃度が増加し、グリコーゲンが多量に蓄積された藻体を含む培養物を多量に得ることができる。このように、炭素源及び鉄イオンを含む本発明の培地を用いてイデユコゴメ綱に属する藻類を培養することにより、イデユコゴメ綱に属する藻類によるグリコーゲンの生産量を増加させることができる。したがって、5~40重量%の炭素源及び0.05~10mMの鉄イオンを含む培地は、イデユコゴメ綱に属する藻類にグリコーゲンを生産させるための培地又はイデユコゴメ綱に属する藻類によるグリコーゲンの生産効率を改善するための培地としても用いることができる。5~40重量%の炭素源及び0.05~10mMの鉄イオンを含む培地でイデユコゴメ綱に属する藻類を培養することを含む、イデユコゴメ綱に属する藻類にグリコーゲンを生産させる方法又はグリコーゲンの生産効率を改善する方法は、本発明に含まれる。
【0035】
5~40重量%の炭素源及び0.05~10mMの鉄イオンを含む本発明の培地を用いる場合のイデユコゴメ綱に属する藻類のグリコーゲン生産量又はグリコーゲン生産効率の改善の評価は、前述と同様に実施することができる。
【0036】
本発明において、炭素源としてイデユコゴメ綱に属する藻類が利用できる糖類であればいずれを用いてもよく、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等の単糖類、スクロース、マルトース、ラクトースなどの二糖類、グリセロールなどの糖アルコールを単独又は組み合わせて用いることができる。本発明において、好ましい炭素源は、単糖類又は二糖類であり、より好ましくはグルコース又はスクロースである。本発明の一態様において、炭素源はグルコースである。本発明の別の態様において、炭素源はスクロースである。
【0037】
本発明において、炭素源は5~40重量%の濃度になるように基礎培地に含有させることができる。炭素源の濃度は、5~40重量%の範囲内で変更することができる。本発明において、培地中の炭素源の濃度は、例えば、7~40重量%、7~35重量%、9~35重量%、7~30重量%、9~30重量%、10~30重量%、10~25重量%、15~25重量%、18~25重量%、15~24重量%、16~23重量%、16~22重量%、16~21重量%、16~20重量%、17~22重量%、17~21重量%、17~20重量%、17~19重量%、17~18重量%、18~23重量%、18~22重量%、18~21重量%、18~20重量%、18~19重量%、又は18重量%であってもよい。
【0038】
本発明において、鉄イオン源として、培地中で鉄イオンを生じるものであり、微生物の培養に通常使用されるものであれば、いずれを用いることもでき、例えば、FeSO4、Fe2(SO4)3、FeCl2、FeCl3、もしくはそれらの水和物又はそれらの組合せを用いることができる。本発明の一態様において、鉄イオン源はFeSO4の7水和物(FeSO4・7H2O)である。本発明の別の態様において、鉄イオン源はFeCl3の6水和物(FeCl3・6H2O)である。本発明において、鉄イオンは2価でも3価でもよい。また、水和物の数も特に限定されない。
【0039】
本発明において、鉄イオンは0.05~10mMの濃度になるように基礎培地に含有させることができる。鉄イオンの濃度は、0.05~10mMの範囲内、例えば0.07~10mMの範囲内で変更することができる。本発明において、培地中の鉄イオンの濃度は、例えば、0.07~10mM、0.1~10mM、0.15~10mM、0.2~10mM、0.25~10mM、0.3~10mM、0.4~10mM、0.5~10mM、0.07~9mM、0.1~9mM、0.07~8mM、0.1~8mM、0.15~8mM、0.2~8mM、0.25~8mM、0.3~8mM、0.4~8mM、0.5~8mM、0.07~7mM、0.1~7mM、0.07~6mM、0.1~6mM、0.15~6mM、0.2~6mM、0.25~6mM、0.3~6mM、0.4~6mM、0.5~6mMであってもよい。
【0040】
本発明において、基礎培地は、従来、イデユコゴメ綱に属する藻類を培養することができることが知られている培地であれば、特に限定されることなく用いることができる。本発明において、基礎培地の例としては、アレン培地又は改変アレン培地(Allen, M. B., 1959, Arch. Mikrobiol., 32, 270-277; Kuroiwa, T. et al., 1993, Protoplasma, 175, 173-177; Ohnuma M. et al., 2008, Plant Cell Physiol., 117-120; Kuroiwa T. et al., 2012, Cytologia, 77(3), 289-299)を挙げることができるが、これらに限定されない。本発明において、基礎培地は、好ましくは液体培地である。
【0041】
本発明において、培地には上記成分の他に、公知の添加剤、たとえば、セレンなどの微量金属元素、ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシンなどの抗生物質、フェノールレッド、ブロモフェノールブルーなどのpH指示薬を含んでいてもよい。
【0042】
本発明において、炭素源又は炭素源と鉄イオンを基礎培地に含有させ、イデユコゴメ綱に属する藻類を播種した後は、培養中系内への培地の供給は行わないことが望ましい。すなわち、本発明の一態様において、培養中に栄養分などの培地中の必要な成分は、連続的又は間欠的に系内に供給されない。本発明は、培養の開始時に必要な栄養成分、炭素源及び場合により鉄イオンをすべて培地中に含有させておく、回分培養で実施することができる。溶存酸素については、調整してもよい。
【0043】
本発明は、上記の培地を用いたイデユコゴメ綱に属する藻類の培養方法に関する。具体的には、イデユコゴメ綱に属する藻類を、5~40重量%の炭素源を含む培地で培養することを含む、イデユコゴメ綱に属する藻類を培養する方法に関する。培養したイデユコゴメ綱に属する藻類は回収することができる。また、本発明の培養方法によりイデユコゴメ綱に属する藻類を培養することにより、イデユコゴメ綱に属する藻類にグリコーゲンを生産させることができる。
【0044】
また、本発明は、上記の培地を用いたイデユコゴメ綱に属する藻類にグリコーゲンを生産させる方法に関する。具体的には、イデユコゴメ綱に属する藻類を、5~40重量%の炭素源を含む培地で培養することを含む、イデユコゴメ綱に属する藻類にグリコーゲンを生産させる方法に関する。グリコーゲンの生産方法において、培養したイデユコゴメ綱に属する藻類に由来するグリコーゲンを回収する工程をさらに含んでもよい。
【0045】
上記本発明の方法において、培地は0.07~10mMの鉄イオンをさらに含有してもよい。
【0046】
イデユコゴメ綱に属する藻類の培養条件は、イデユコゴメ綱に属する藻類が生育する条件であればいずれの方法でもよく、当業者であれば、公知の方法から適宜選択、変更することができ、実施例の記載も適宜参考にすることができる。例えばイデユコゴメ綱に属する藻類の培養温度は、37℃~50℃とすることができ、40℃~45℃としてもよい。また、通気条件としては、好気条件及び嫌気条件のいずれをも用いることができる。光の照射条件としては、光条件及び暗条件のいずれをも用いることができる。培養には、藻類の培養に通常用いられる培養槽を用いることができる。例えば、試験管、坂口フラスコ、三角フラスコ、円形ポンド、レースウェイポンド、カラム型培養槽、フラットパネル型培養槽、チューブ型培養槽、ジャーファーメンターなどのタンク等を用いることができるがこれらの限定されるわけではない。
【0047】
培養期間も当業者が適宜設定することができる。例えば、イデユコゴメ綱に属する藻類の培養期間は、1日~6月間、1日~3月間、1日~2月間、1日~4週間、1~4週間、例えば1~2週間とすることができる。
【0048】
培養したイデユコゴメ綱に属する藻類を回収する方法又は培養したイデユコゴメ綱に属する藻類に由来するグリコーゲンを回収する方法は、当業者は適宜選択することができる。
【0049】
培養したイデユコゴメ綱に属する藻類は細胞内にグリコーゲンを含むため、藻体を含む培養物をそのままイデユコゴメ綱に属する藻類に由来するグリコーゲンとしてもよい。また、培養物を遠心分離やろ過分離等により濃縮した濃縮物をイデユコゴメ綱に属する藻類に由来するグリコーゲンとしてもよい。上記培養物や濃縮物や破砕物を必要に応じて乾燥させた乾燥物をイデユコゴメ綱に属する藻類に由来するグリコーゲンとしてもよい。乾燥は、凍結乾燥、加熱乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥などの方法のいずれであってもよいが、凍結乾燥が好ましい。乾燥物を処理してグリコーゲンを抽出又は精製してもよい。さらに、培養物、濃縮物又は乾燥物に、加熱、紫外線及び/又は放射線等による光照射、ミル又はガラスビーズなどによる粉砕等の処理を施してもよい。
【0050】
本発明の培養方法又はグリコーゲン生産方法により得られる培養物、濃縮物、乾燥物又は処理物も本発明に含まれる。
【0051】
一態様において、本発明の培養方法により、約10g/L以上、約15g/L以上、約20g/L以上の、培養液中のイデユコゴメ綱に属する藻類の藻体量が達成される。
【0052】
一態様において、本発明のグリコーゲン生産方法により、約10mg/g以上、約15mg/g以上、約20mg/g以上、約30mg/g以上、約40mg/g以上の、藻体中のグリコーゲン濃度が達成される。
【0053】
本明細書において、数値範囲について「~」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「1~40」という記載では、下限値である「1」、上限値である「40」のいずれも含むものとする。すなわち、「1~40」は、「1以上40以下」と同じ意味である。
【実施例0054】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0055】
[培養条件]
ガルデリアを試験管に供し、下記の条件で培養した。ガルデリアは、Fraunhofer Institute for Cell Therapy and Immunology, Branch Bioanalytics and Bioprocesses IZI-BBに株番号CCCryo 127-00 Galdieria sulphuraria (Galdieri) Merola 1982として寄託されたものを用いた。
【0056】
培地
実験Aでは、以下の組成の1×MA培地(M-Allen、国立研究開発法人国立環境研究所微生物系統保存施設https://mcc.nies.go.jp/02medium.html)の4倍濃度の培地成分を含む4×MA培地を使用した。
【表1】
【0057】
実験Bは、1×MA培地を使用した。
実験Cでは、10×MA(-)培地に、Fe(0.0752 mM EDTA・2Na及び0.0592 mM FeSO4・7H2O)の1~100倍量を適宜添加した培地を用いた。10×MA(-)培地は、1×MAの10倍濃度の培地成分を含むが、EDTA・2NaとFeSO4・7H2Oを含有しない培地である。
【0058】
培養条件
(1)実験A(炭素源濃度の検討、比較例1~2、実施例1~6)
・温度:40 ℃
・振盪:330 rpm
・培養日数:14日間
・炭素源の種類:グルコース
・炭素源濃度:(比較例1)1%、(比較例2)3%、(実施例1)5%、(実施例2)7%、(実施例3)9%、(実施例4)18%、(実施例5)25%、(実施例6)30%
4×MA培地に上記濃度となるようにグルコースを加えた培地5mLに、Galdieria sulphuraria CCCryo 127-00(1倍体)を加え、試験管培養を行った。4×MA培地の鉄イオン濃度は、0.237mMである。
【0059】
(2)実験B(炭素源の検討、実施例7~8)
・温度:40 ℃
・振盪:330 rpm
・培養日数:12日間
・炭素源の種類:(実施例7)グルコース、(実施例8)スクロース
・炭素源濃度:(実施例7)9%、(実施例8)9%
1×MA培地に上記濃度となるように炭素源を加えた培地5mLに、Galdieria sulphuraria CCCryo 127-00(1倍体)を加え、試験管培養を行った。1×MA培地の鉄イオン濃度は、0.0592mMである。
【0060】
(3)実験C(鉄イオンの効果確認、実施例9~16)
・温度:40 ℃
・振盪:330 rpm
・培養日数:14日間
・炭素源の種類:グルコース
・炭素源濃度:18%
・鉄イオン濃度:(実施例9)0.0592mM、(実施例10)0.1184mM、(実施例11)0.2960mM、(実施例12)0.5919mM、(実施例13)0.8879mM、(実施例14)1.1839mM、(実施例15)2.9597mM、(実施例16)5.9193mM
10×MA(-)培地に、上記炭素源濃度及び鉄イオン濃度となるようにグルコース及びFeを加えた培地5mLに、Galdieria sulphuraria CCCryo 127-00(1倍体)を加え、試験管培養を行った。
【0061】
[評価]
(1)ガルデリアの増殖確認
ガルデリアの増殖確認は、培養液200μLをFALCON(登録商標)96 wellプレートに加え、室温における750 nmの光学密度(以下、「OD750nm」とする)を、分光光度計(Thermo Fisher Scientific社製、Thermo Scientific Multiskan Go)を用いて測定することにより行った。
【0062】
(2)培養液中の藻体量(g/L)
培養液1mLを1.5mL容量のマイクロチューブに分注して、遠心分離(TOMY社製、微量高速冷却遠心機MX-307)を行った(15000×g、10分)。上清を取り除いてから1×MA培地1mLをマイクロチューブに添加し、ダイレクトミキサー(アズワン社製、ダイレクトミキサーDM-301)で5分間懸濁した。再び遠心分離を行い、上清を除いた(洗浄)。洗浄操作をもう一度行い、得られた藻体を-20℃で凍結させた。
凍結乾燥機(EYELA社製、凍結乾燥機FDU-1200型)で数時間乾燥させて、重さを測定した(g/L)。
【0063】
(3)藻体中のグリコーゲン量(mg/L)
(2)培養液中の藻体量(g/L)と同様に藻体を凍結したサンプルに、グリコーゲン抽出操作を行った。凍結藻体にイオン交換水400μLを加えてダイレクトミキサーで混合し、95℃のアルミブロック(アズワン社製、アルミブロック恒温槽CB-100A)で10分間の加温を行った。15000×gで10分間遠心を行って、得られた上清をグリコーゲン抽出液とした。
グリコーゲン定量には、市販のキットを使用した(BioVision社製、Glycogen Assay Kit)。抽出液は10~1000倍に段階的に希釈し、適切な濃度(mg/L)の希釈液を測定に使用した。なお、グリコーゲン量に関するデータは、実験系列間の比較に適さない。
【0064】
(4)グリコーゲン濃度/OD750nm(mg/L)
(3)で得られた藻体中のグリコーゲン量(mg/L)を(1)で得られたOD750nmの値で割って算出した(データ示さず)。
【0065】
(5)藻体中のグリコーゲン量/藻体量(mg/g)=藻体中のグリコーゲン濃度
(3)で得られた藻体中のグリコーゲン量(mg/L)を(2)で得られた培養液中の藻体量(g/L)で割って算出した。得られた値は藻体中のグリコーゲン濃度を意味する。
【0066】
[結果]
(1)実験A(グルコース濃度の検討、比較例1~2、実施例1~6)
実験Aの結果を表2に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
表2に示されるとおり、炭素源であるグルコースの濃度を5.0%以上で培養した場合に、培養液中の藻体量が増加した。9~30%のグルコース濃度で培養した場合(実施例3~6)、培養液中の藻体量が20g/Lを超え、培養液中の藻体量の増加が著しかった。特に、18~25%のグルコース濃度で培養した場合(実施例4、5)に培養液中の藻体量が多かった。また、炭素源であるグルコースの濃度を5.0%以上で培養した場合に、藻体量当たりのグリコーゲン量も増加した。
【0069】
実験Aの結果から、炭素源を5%以上含む培地で培養することにより、イデユコゴメ綱に属する藻類の培養効率を改善できることが示された。また、炭素源を5%以上含む培地で培養することにより、イデユコゴメ綱に属する藻類からグリコーゲンの生産効率を改善できることが示された。
【0070】
(2)実験B(炭素源の検討、実施例7~8)
実験Bの結果を表3に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
表3に示されるとおり、実験Bでは、炭素源としてグルコース(実施例7)又はスクロース(実施例8)を用いて培養した場合に、同程度のOD750値であった。この結果は、実施例7と実施例8では、イデユコゴメ綱に属する藻類が同程度増殖したことを示す。また、炭素源としてグリセロール(9%)を使用した場合も、イデユコゴメ綱に属する藻類の増殖が維持されることが示された。
実験Bの結果から、イデユコゴメ綱に属する藻類の増殖効率に対する炭素源による向上効果に関して、炭素源の違いによる影響はないか、あったとしても小さいと考えられることが示された。
【0073】
(3)実験C(鉄イオンの効果確認、実施例9~16)
実験Cの結果を表4に示す。
【0074】
【表4】
【0075】
表4に示されるとおり、培地中の鉄イオン濃度を0.0592mM以上で培養した場合に、藻体量あたりの藻体中のグリコーゲン量が増加した。0.1184~5.9193mMの鉄イオン濃度で培養した場合に(実施例10~16)、グリコーゲン量の増加が著しかった。
実験Cの結果から、鉄イオン濃度を0.0592mM以上含む培地で培養することにより、イデユコゴメ綱に属する藻類のグリコーゲンの生産効率を向上できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明により、イデユコゴメ綱に属する藻類の培養方法が提供される。本発明の培養方法により、イデユコゴメ綱に属する藻類の藻体量が増加し、イデユコゴメ綱に属する藻類の培養効率が改善する。
【0077】
本発明の別の態様において、本発明の培養方法により、グリコーゲンの生産量が増加する。また、本発明により、グリコーゲンの生産方法が提供される。したがって、本発明によれば、イデユコゴメ綱に属する藻類によるグリコーゲンの生産効率が改善する。
【0078】
本発明の別の態様において、イデユコゴメ綱に属する藻類の培養効率を改善させつつ、かつ、イデユコゴメ綱に属する藻類によるグリコーゲンの生産効率を改善させることができる。
【0079】
本発明の別の態様において、イデユコゴメ綱に属する藻類の培養物を乾燥した乾燥体が提供される。乾燥体はグリコーゲンを多く含むことから、本発明により、藻類由来のバイオマス燃料の原料になり得るグリコーゲンの効率の良い製造が可能になる。