(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129084
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】シート処理装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 43/00 20060101AFI20230907BHJP
B65H 41/00 20060101ALI20230907BHJP
B65H 37/04 20060101ALI20230907BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
B65H43/00
B65H41/00 B
B65H37/04
B41J29/38 206
B41J29/38 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033862
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【弁理士】
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】古場 遥
(72)【発明者】
【氏名】林 雄太
【テーマコード(参考)】
2C061
3F048
3F108
【Fターム(参考)】
2C061AS11
2C061CK02
2C061HJ04
2C061HJ10
2C061HK11
2C061HV01
2C061HV32
2C061HV56
3F048AA01
3F048AB01
3F048AB06
3F048BA14
3F048BB02
3F048BB04
3F048BB05
3F048BD01
3F048EA02
3F048EA08
3F048EB38
3F108GA09
3F108GB01
3F108HA02
3F108JA02
(57)【要約】
【課題】後処理部材に影響のない原因によって後処理の前段処理がキャンセルされたとき、当該後処理部材を待機させて、前段処理を再開したときに待機中の後処理部材を利用可能にするシート処理装置を提供する。
【解決手段】上流側の装置から搬送されるシート状の媒体を受け入れるシート搬入部と、重合シートを剥離して媒体を挿入し、当該媒体が挿入された当該重合シートに加熱処理をする後処理部と、を備え、後処理部は、上流側の装置において処理異常が発生し、加熱処理に至る一連の後処理が中断したとき、その後に処理異常が回復したときには、中断していた後処理を継続する、シート処理装置による。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側の装置から搬送されるシート状の媒体を受け入れるシート搬入部と、
重合シートを剥離して前記媒体を挿入し、当該媒体が挿入された当該重合シートに加熱処理をする後処理部と、
を備え、
前記後処理部は、前記上流側の装置において処理異常が発生し、前記加熱処理に至る一連の後処理が中断したとき、その後に前記処理異常が回復したときには、中断していた前記後処理を継続する、
ことを特徴とするシート処理装置。
【請求項2】
前記後処理部は、前記処理異常により中断した後処理が前記重合シートの剥離処理であるとき、前記処理異常の回復によって当該剥離処理を継続する、
請求項1に記載のシート処理装置。
【請求項3】
前記後処理部は、前記処理異常により中断した後処理を再開したとき、継続された前記剥離処理によって剥離した前記重合シートに前記媒体を挿入して前記加熱処理を実行する、
請求項2に記載のシート処理装置。
【請求項4】
前記後処理部は、前記処理異常により中断した後処理が前記重合シートの剥離処理であり、かつ、前記処理異常が前記上流側の装置に対する処理停止指示に基づくものであるとき、当該処理異常により中断していた前記剥離処理を継続せず、新たに前記剥離処理を実行する、
請求項1に記載のシート処理装置。
【請求項5】
前記後処理部は、前記上流側の装置から前記媒体が搬入される前に前記処理異常が発生したときは、その後、当該処理異常が回復したときに前記後処理を継続する、
請求項1に記載のシート処理装置。
【請求項6】
前記後処理部は、前記処理異常が発生したときに、当該処理異常の復帰操作をユーザに促すための復帰催促情報を出力する、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシート処理装置。
【請求項7】
シート状の媒体に画像を形成する画像形成部と、当該媒体に対して後処理を行う請求項1乃至6のいずれか一項に記載のシート処理装置と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート処理装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状の媒体を二枚重ねのシート内に挿入して熱と圧力を加え、二枚重ねシートを接着する技術が知られている。当該技術は「ラミネート処理」と呼ばれている。また、画像が形成されたシート状の媒体を二枚重ねシートへと搬送して挿入しラミネート処理を行うシート処理装置や、シート処理装置と連携し、媒体に画像を形成する画像形成装置が知られている。
【0003】
ラミネート処理を行う画像形成システムに適用可能な技術の一例として、二つのシート処理経路を備え、一の出力物に対するラミネート処理中に、ラミネートを必要としない出力物をシート処理装置から出力できる技術が開示されている(特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の技術では、後処理の一例であるラミネート処理を必要とする出力物(画像が形成された媒体)と、ラミネート処理を必要としない出力物を、別々の出力経路を用いて出力処理を並行することができる。この場合、ラミネート処理とは異なる処理(例えば、上流側で行う画像形成処理)に異常が生じて出力処理がキャンセルされると、ラミネート処理もキャンセルされることになる。ラミネート処理がキャンセルされると、予定されていたラミネート処理で利用するための後処理部材(ラミネートフィルム)が無駄に消費されるという課題が生ずる。
【0005】
本発明は、後処理部材に影響のない原因によって後処理の前段処理がキャンセルされたとき、当該後処理部材を待機させて、前段処理を再開したときに待機中の後処理部材を利用可能にするシート処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術的課題を解決するため、本発明の一態様は、上流側の装置から搬送されるシート状の媒体を受け入れるシート搬入部と、重合シートを剥離して前記媒体を挿入し、当該媒体が挿入された当該重合シートに加熱処理をする後処理部と、を備え、前記後処理部は、前記上流側の装置において処理異常が発生し、前記加熱処理に至る一連の後処理が中断したとき、その後に前記処理異常が回復したときには、中断していた前記後処理を継続する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、後処理部材に影響のない原因によって後処理の前段処理がキャンセルされたとき、当該後処理部材を待機させて、前段処理を再開したときに待機中の後処理部材を利用可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係るシート処理装置を備えた画像形成装置の概略構成図。
【
図2】本発明の一実施形態に係るシート処理装置の全体構成図。
【
図3】本発明に係るシート処理装置及び画像形成装置を有する画像形成システムを示す概略構成図。
【
図5】従来例に係るラミネート加工を含む印刷処理の例を示すフローチャート。
【
図6】本実施形態に係るラミネート加工を含む印刷処理の例を示すフローチャート。
【
図7】本実施形態に係る印刷処理においてユーザに異常復帰を報知する報知例。
【
図8】本実施形態に係るラミネート加工を含む印刷処理の別例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本発明に係る画像形成処理の実施形態について図を用いて説明する。
図1は、画像形成装置300の全体構成を例示する図である。画像形成装置300は、本発明に係るシート処理装置の実施形態としてのラミネート処理装置100を備えている。
【0010】
ラミネート処理装置100の詳細は後述するが、二枚重ねシート(以下、重合シートSという)を互いに剥離し、その剥離した重合シートS内にシート状の媒体としての中紙Pを挿入して挟持し、これらを一体にして出力するラミネート処理を行う処理ユニットである。
【0011】
なお、重合シートSとは、二枚のシートが重ねられ、その一部(又は一辺)が接合された二枚重ねシートであって、例えば、片側を透明ポリエステルシートなどの透過性シートとし、反対側を透明又は不透明シートとして、それらの一辺で接合したものがある。また、重合シートSには、ラミネートフィルムも含まれる。
【0012】
中紙Pは、重合シートSに挿入されるシート状の媒体の一例である。中紙Pには、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙など)、トレーシングペーパ、OHPシートなどが含まれる。
【0013】
以下の説明において、重合シートSに挿入されてラミネート処理に付される媒体については「中紙P」と表記する。また、重合シートSに挿入されることなく、ラミネート処理の対象とはならずに出力されるシート状の媒体を「用紙Pp」と表記する。また、中紙Pと用紙Ppを区別しないときには「シートPs」と表記する。
【0014】
また、画像形成装置300は、ラミネート処理装置100の他にも、装置下部に配置されシートPsを収容及び供給するための給シート部301と、給シート部301からシートPsを給紙する給紙手段303と、給シート部301の上方に配置されシートPsに画像を形成するための画像形成部305と、画像形成されたシートPsをラミネート処理装置100へと排出するための用紙排出経路307と、を備える。画像形成装置300を搬送されたシートPsは、その下流に配置されたラミネート処理装置100のシート搬入部としての中紙受け渡しガイド117にてラミネート処理装置100内部へと受け渡される。
【0015】
ラミネート処理装置100は、画像形成装置300における画像形成処理(印刷処理)の開始と同時に重合シートSの剥離動作を開始して、画像形成装置300からシートPs(中紙P)の受け渡しが行われるときに、剥離した重合シートSで中紙Pを受け入れられる状態にする。画像形成装置300では、重合シートSの剥離動作の開始と同時に給シート部301よりシートPsが給紙されて、用紙排出経路307を介してラミネート処理装置100の中紙受け渡しガイド117へとシートPsを受け渡すように動作をする。この一連の動作において、画像形成部305において、画像形成処理を実行して、シートPsに対して画像を形成してからラミネート処理装置100へ受け渡しをしてもよいし、画像形成処理を行わずにシートPsを受け渡してもよい。
【0016】
また、画像形成装置300は、
図1に示す用紙排出経路307の上部に本体排紙経路と本体排紙トレイを備えてもよい。これにより、ラミネート処理を施さない場合でも、画像形成装置300からシートPs(用紙Pp)を排出可能となる。このように構成することで、ラミネート処理を要さない出力物(用紙Pp)を画像形成装置から出力する場合、ラミネート処理装置100を通さずにその用紙Ppを排出することができるため、画像形成装置300の出力速度を失うことなく、効率的な出力処理を行うことができる。
【0017】
[シート処理装置の実施形態]
次に、本発明に係るシート処理装置の実施形態としてのラミネート処理装置100の全体構成について、
図2を用いて説明する。既に説明したとおり、画像形成装置300には、シートに画像形成処理を施す画像形成部305と、画像形成されたシートPs(中紙P)に後処理を行うラミネート処理装置100とを有する形態を例としている。なお、後述する画像形成システム1のように、ラミネート処理装置100を画像形成装置300とは別体に設けてもよい。
【0018】
ラミネート処理装置100は、中紙Pを搬送して後処理を行うための第1搬送経路と、後処理を行わずに用紙Ppを下流に搬送するための第2搬送経路とを備える。ラミネート処理装置100によりラミネート処理を行う1部又はN部(N≧2)の印刷ジョブと、ラミネート処理装置100によりラミネート処理を行わない印刷ジョブの両方を含む複数の印刷ジョブが指示された場合に、ラミネート処理を行う印刷ジョブの任意のM部目(1≦M<N)を実行中に、ラミネート処理を行わない印刷ジョブが実行され、シートを第2搬送経路にて搬送する。
【0019】
図2に示すように、ラミネート処理装置100は、重合シートSを積載する第1積載手段であるシートトレイ102と、シートトレイ102から重合シートSを給送するピックアップローラ105と、搬送ローラ対107とを備える。中紙Pは、画像形成装置300の給シート部301から給紙可能に構成されており、重合シートSの中に挿入する中紙Pに画像形成装置300のコピーやプリンターを活用した方法で任意の画像を印刷し、インラインで挿入することが可能である。
【0020】
搬送ローラ対107の搬送方向下流には、重合シートSの搬送位置を検出する搬送センサC1が設けられている。また、ラミネート処理装置100の上流側の装置としての画像形成装置300(
図1参照)から搬入された中紙Pは、ラミネート処理装置100の中紙受け渡しガイド117にてラミネート処理装置100内部へと受け渡される。その中紙受け渡しガイド117には中紙Pの搬送位置を検出する搬送センサC2が設けられている。
【0021】
またラミネート処理装置100は、搬送ローラ対107の下流に、第1搬送手段である入口ローラ対108と、回転部材としての巻付けローラ109と、第2搬送手段である出口ローラ対113と、排出される重合シートSを積載する積載手段である排出トレイ104などを備える。巻付けローラ109と出口ローラ対113の間に、重合シートSの幅方向に移動可能に設けられた剥離爪116を備える。
【0022】
入口ローラ対108の搬送方向下流には、重合シートS及び中紙Pの搬送位置を検出する搬送センサC3が設けられ、巻付けローラ109の搬送方向下流には、重合シートSの状態を検出する異常状態検出センサC4が設けられている。そして、出口ローラ対113の搬送方向下流には、重合シートSの搬送位置を検出する搬送センサC5が設けられている。また、搬送センサC3の下方には剥離された重合シートSのうちの下方を検出する剥離センサC6が、出口ローラ対113の上方には剥離された重合シートSのうちの上方を検出する剥離センサC7が、それぞれ設けられている。
【0023】
ここで、入口ローラ対108、巻付けローラ109、剥離爪116及び出口ローラ対113が備えられた搬送路は、重合シートSを処理するためのシート処理経路99を形成する。具体的に、シート処理経路99は、第一の媒体としての重合シートSを剥離して、ラミネート処理装置100の上流側に配置された画像形成部305により画像形成された第二の媒体としての中紙Pをそこに挟み込むためのものである。なお、シート処理経路99は、重合シートSを加熱及び加圧可能な熱加圧部材である熱加圧ローラ120を含んでもよい。これにより、シート処理装置は加熱を含むラミネート処理が可能となり、加熱処理中に用紙排出経路を使って別ジョブを実施することでシステム全体での生産性を向上することができる。
【0024】
ラミネート処理装置100は、シート処理経路99の搬送方向下流に設けられた分岐爪118と、その搬送方向下流に形成された熱加圧搬送路128を有する。熱加圧搬送路128には、熱加圧ローラ120と、その下流であって排紙口の近傍に設けられた排出ローラ121とが配置されている。
【0025】
熱加圧部材である熱加圧ローラ120は、中紙Pを挟み込んだ重合シートSを加熱及び加圧する。排出ローラ121により排出口から排出されたラミネート処理後の重合シートSシートは、排出トレイ104に積載される。
【0026】
またラミネート処理装置100は、シート処理経路99を通らずに第二のシートである用紙Pp又は中紙Pを排出トレイ104に排出可能な用紙排出経路124と、シート処理経路99より上流側に、用紙Pp又は中紙Pの情報に応じて、用紙Pp又は中紙Pの搬送先を用紙排出経路124又はシート処理経路99に切り替え可能な切替手段である分岐爪119を有する。用紙排出経路124には、用紙Pp又は中紙Pを搬送する搬送ローラ125,127,129と、排紙口の近傍に設けられた排出ローラ123とが配置されている。排出ローラ123により排紙口から排紙された用紙Pp又は中紙Pは、排出トレイ104に排出・積載される。
【0027】
このように、ラミネート処理装置100は、シート処理経路99を通らずに排紙することが可能な用紙排出経路124と、シート処理経路99より上流側に用紙排出経路124に用紙Pp又は中紙Pを案内可能な切替手段である分岐爪119を有する。これによって、ラミネート処理を要する中紙Pはシート処理経路99に、コピーやプリント等のラミネート処理を要さない用紙Ppは用紙排出経路124に案内して排出することができる。そのため、シート処理経路99における重合シートSの給紙・剥離動作中や、中紙Pの挿入・シート処理後の熱加圧ローラ120への搬送中等のシート処理中であっても、ラミネート処理をせずに用紙Ppを排紙する通常印刷(コピーやプリンター等を用いた印刷ジョブ)の実行が可能となり、ラミネート処理を要さない印刷の生産性が上昇する。
【0028】
またラミネート処理装置100は、第一のシートである重合シートSと第二のシートである中紙Pの搬送路合流地点より上流側に、シート処理経路99又は用紙排出経路124にシートを案内する切替手段である分岐爪119を有することを特徴とする。これにより、シート処理経路99において重合シートSの給紙中でも、ラミネート処理を要さないコピーやプリントの用紙を分岐爪119によって用紙排出経路124に案内して排出トレイ104に排出することが可能となる。
【0029】
ラミネート処理装置100の外装部には、ラミネート処理装置100における情報表示や、操作入力の受付を行う表示操作手段であるシート処理操作パネル101が設置されている。また、このシート処理操作パネル101は、ユーザに知覚信号を発する報知手段としての役割を兼ねる。例えば、ラミネート処理装置100において、処理の異常が生じた場合、それをユーザに報知する報知音を出力する。また、画像形成装置300において処理の異常が生じたときに、重合シートSを剥離した状態で保持し、再利用可能な状態を維持している場合、など、それをユーザに報知する音や表示を出力する。代替として、シート処理操作パネル101以外の報知手段を、ラミネート処理装置100に別途設ける構成としてもよい。
【0030】
[ラミネート処理装置100の動作]
ここで、ラミネート処理装置100が備える各構成の動作などについて説明する。入口ローラ対108及び出口ローラ対113は、それぞれ、例えば対となった二つのローラであり、駆動手段(モータなど)により回転駆動される。入口ローラ対108は一方向に回転駆動され、出口ローラ対113は正逆方向に回転駆動されることで、重合シートS及び中紙Pを挟持して搬送する。
【0031】
入口ローラ対108は、重合シートS及び中紙Pを出口ローラ対113に向けて搬送する。一方、出口ローラ対113は、その回転を正逆の両方向に切り替え可能である。挟持した重合シートSを正搬送方向である排出トレイ104に向けて搬送できるとともに、その逆方向(引き戻す方向)となる巻付けローラ109に向けて重合シートSを搬送することもできる。この巻付けローラ109に向けて搬送する方向(搬送方向に対し、逆方向)を、逆搬送方向と呼ぶ。
【0032】
また、ラミネート処理装置100は、これら入口ローラ対108と出口ローラ対113との間に、回転部材である巻付けローラ109と、剥離爪116とを備える。巻付けローラ109は、駆動手段(モータなど)により正逆方向に回転駆動され、その回転を両方向(時計回り/反時計回り)に切り替え可能である。
【0033】
巻付けローラ109は、ローラ部材111と、ローラ部材111に設けられ、重合シートSを把持する可動の把持手段110とを有する。可動の把持手段110は、ローラ部材111とともに重合シートSの先端を把持することを特徴とする。この把持手段110は、ローラ部材111の外周に一体に成形してもよいし、別部品として構成してもよい。
【0034】
[画像形成システムの実施形態]
次に、上記にて説明をした画像形成装置300及びラミネート処理装置100と同様の機能を含む画像形成システム1についても説明する。
図3は、画像形成システム1の全体構成を示す図である。
図3に示すように、画像形成システム1は、画像形成装置300、中継装置310、ラミネート処理装置100及びラミネート処理装置400を有する。
【0035】
画像形成システム1は、中継装置310を介して画像形成装置300から中紙Pを給紙可能に構成されており、コピーやプリンターを活用した方法で任意の画像をインラインで挿入することが可能である。そのため、重合シートSの給紙から剥離、中紙挿入、熱加圧によるラミネート処理までの一連の動作において人手を要さず実施可能である。
【0036】
ラミネート処理を実施する印刷ジョブの場合、ラミネート処理装置100では、重合シートSをスタックするシートトレイ102からピックアップローラ105及び搬送ローラ対107によって重合シートSを給紙する。その後剥離された重合シートSは、出口ローラ対113により保持され、画像形成装置300から給紙される中紙Pを入口ローラ146にて受け入れ、入口ローラ対108によって重合シートSと合流する。中紙Pと重合シートSの合流物は、熱加圧ローラ120にて加熱によりラミネート処理される。ラミネート処理された重合シートS及び中紙P(処理済シートSG)は、排出ローラ121により排出トレイ104に積載される。
【0037】
ラミネート処理を行わない印刷ジョブの場合、画像形成装置300から給紙される用紙は、ラミネート処理装置100の入口ローラ146で受け入れられ、入口ローラ146の搬送方向下流に位置する排紙ローラ147により、ラミネート処理装置100の下流にあるラミネート処理装置400に搬送される。ラミネート処理装置400では、ラミネート処理を行っていないシート材Nにステープル処理などの後処理を行うことが可能である。
【0038】
図3に示すように、画像形成システム1が備えるラミネート処理装置100は、シートを搬送して後処理(ラミネート処理)を行うための第1搬送経路であるシート処理経路と、ラミネート処理をせずに下流に排紙するための第2搬送経路である用紙排出経路を有している。図中、第1搬送経路と第2搬送経路の分岐部より下方に、第1搬送経路であるシート処理経路が形成され、分岐部より左側に第2搬送経路である用紙排出経路が形成されている。これらの経路に加えて、ラミネート処理を行う印刷ジョブ中にラミネート処理を行わない印刷ジョブを実施可能とするシステム制御を有することで、ラミネート処理の時間を有効活用し、システム全体の生産性を向上することが可能である。なお、シートトレイ102には、シートPsのサイズを検知する複数のセンサC10が配置されている。
【0039】
[制御ブロック]
次に、画像形成システム1の動作を制御する制御部について
図4を用いて説明する。
図4に示すように、画像形成システム1の制御ブロックとしては、画像形成装置300の制御ブロックとしての画像形成制御部30と、ラミネート処理装置100の制御ブロックとしてのシート処理制御部10が連携して構成される。
【0040】
画像形成制御部30は、画像制御コントローラ31と、エンジン32とを備える。また、シート処理制御部10は、シート処理コントローラ11と、ラミネート制御部12とを備える。
【0041】
画像制御コントローラ31はユーザからの印刷要求を受け付け、エンジン32が有する制御管理部321へ要求する。制御管理部321は要求を受けたページごとにプロッタ制御部322とラミネート制御部12に対して制御を要求する。プロッタ制御部322は制御管理部321からの要求に従い、シートPsの供給を介して、画像を形成し、排出する処理を制御する。
【0042】
ラミネート制御部12は重合シートSを中紙Pに一体化させるための準備としての剥離動作を開始して、画像形成装置300から搬送された中紙Pと重合シートSを一体化させる処理であるラミネート処理を制御する。
【0043】
シート処理コントローラ11は、ラミネート制御部12によるラミネート処理の実行に必要な制御を含む中紙Pの搬送制御などを制御する。
【0044】
本実施形態に係る画像形成システム1では、画像形成装置300が印刷ジョブを処理している途中で何らかの要因によって処理異常が生じて、画像形成装置300の動作が中断されても、ラミネート処理装置100において処理準備を進めていた重合シートSを維持する。そして、維持された重合シートSは、画像形成装置300の処理異常が解消された後のリカバリ印刷のラミネート処理で利用可能な状態にするように制御する。これら一連の制御は制御管理部321とラミネート制御部12の連携により実現される。ここで、「重合シートSを維持する」とは、画像形成装置300の動作が正常であれば利用するために準備処理を進めた重合シートSについて、画像形成装置300の中断による廃棄はせずに、画像形成装置300の動作が再開したときに利用できる状態を保つことを意味する。
【0045】
[シート処理を伴う画像形成処理フローの第一実施形態]
次に、本実施形態に係る画像形成システム1において実行される画像形成処理フローについて説明する。まず、比較例として従来技術に係るシート処理方法と、その課題に関して
図5のフローチャートを用いて説明する。
【0046】
従来例において、ラミネート加工を含む印刷処理を開始すると、画像形成装置300は画像制御コントローラ31の制御によってシートPsの供給を開始する(S501)。同時に、制御管理部321からの要求に基づいてラミネート処理装置100では、ラミネート制御部12が重合シートSの剥離動作を開始する(S502)。
【0047】
ここで、画像形成装置300において処理異常(ジャム)が発生したとする(S503)。一方、ラミネート処理装置100では、重合シートSの剥離処理を完了まで継続し(S504)、剥離動作が完了したら(S504:YES)、処理を一旦停止する(S505)。
【0048】
ここで、画像形成システム1として、画像形成装置300の処理異常に起因して印刷ジョブのキャンセル処理を実行することになる(S506)。
【0049】
その後、画像形成装置300では処理異常(ジャム)の除去が完了するまで処理をループし(S507:NO)。一方、ラミネート処理装置100では、ジャムの除去が実行されている間(S507:NO)、剥離が完了している重合シートSをパージトレイ(排出トレイ104)へと排出する処理を実行する(S508)。
【0050】
画像形成装置300の処理異常(ジャム)の除去が完了したら(S507:YES)、画像形成システム1においてリカバリ印刷が開始される(S509)。
【0051】
リカバリ印刷が開始されると、画像形成装置300では再度、S501と同様にシートPsの供給(給紙)を開始し(S510)、ラミネート処理装置100では、新たな重合シートSに対する剥離動作を開始する(S511)。
【0052】
その後、画像形成装置300では用紙に対して画像形成処理が実行される(S512)。また、ラミネート処理装置100では、重合シートSの剥離処理が行われる(S513)。重合シートSの剥離処理が完了したら(S513:YES)、中紙Pを剥離した重合シートSに挿入して、熱圧着してラミネート処理を実行する(S514)。再度の処理後のラミネートシートを排出トレイ104に排出する(S515)。
【0053】
従来技術の場合、画像形成装置300側で何らかの異常が発生した場合、制御管理部321は画像形成装置300とラミネート処理装置100の双方に動作のキャンセルを要求する。そして、画像形成装置300とラミネート処理装置100は、要求に従い印刷ジョブのキャンセル処理と、後処理部材である重合シートSの排出を行う。
【0054】
画像形成装置300のジャム除去完了と後処理部材(重合シートS)の排出が完了次第、制御管理部321はキャンセルした印刷ジョブを再度実行するリカバリ印刷を開始することになる。
【0055】
したがって、従来例では、ラミネート処理装置100において重合シートSの剥離処理のように、後処理(ラミネート処理)に用いる部材(重合シートS)の準備を行っている段階で、画像形成装置300側で処理異常が生じた場合、準備していた重合シートSが使用できない状況に至る。
【0056】
次に、本発明の実施形態としての画像形成システム1において実行されるシート処理方法について
図6を用いて説明する。以下において説明する処理方法は、比較例として説明した従来方法で生ずる課題を解消しうるものである。
【0057】
画像形成システム1において、ラミネート加工を含む印刷処理を開始すると、画像形成装置300は画像制御コントローラ31の制御によって用紙の供給が開始される(S601)。同時に、ラミネート処理装置100では、制御管理部321からの要求に基づいてラミネート制御部12が重合シートSの剥離動作を開始する(S602)。
【0058】
ここで、比較例と同様に、画像形成装置300において処理異常(ジャム)が発生したとする(S603)。画像形成装置300側では、処理異常によって一旦処理が停止状態になる(S606)。
【0059】
一方、ラミネート処理装置100では、すでに開始されている重合シートSの剥離処理を継続する。また、画像形成装置300からラミネート処理装置100に対してすでに中紙Pが供給されているか否かを判定する(S604)。中紙Pの供給された状態に至っていれば(S604:YES)、処理を一旦停止する(S606)。また、中紙Pの供給された状態に至っていなければ(S604:NO)、重合シートSの剥離動作が完了するまで継続し(S605:NO)、剥離動作が完了したら(S605:YES)、処理を一旦停止する(S606)。
【0060】
続いて、画像形成システム1としては、画像形成装置300の処理異常に起因する印刷ジョブのキャンセル処理を実行される(S607)。このとき、ラミネート処理装置100では、剥離が完了している重合シートSの排出処理は行わず、剥離した状態の柔道シートSを維持する。そして、キャンセル処理に続いて、画像形成装置300では処理異常(ジャム)の除去が完了するまで処理をループし(S608:NO)、画像形成装置300の処理異常(ジャム)の除去が完了したら(S608:YES)、画像形成システム1はリカバリ印刷を開始する(S609)。
【0061】
リカバリ印刷が開始されると、画像形成装置300では再度の給紙を開始してシートPsに対して画像形成処理を実行する(S610)。続いて、剥離が完了し保持されている重合シートSを利用するための処理を再開して、中紙Pを挿入して、熱圧着してラミネート処理を実行する(S611)。そして処理後のラミネートシートを排出トレイ104に排出する(S612)。
【0062】
以上説明をした本実施形態に係る画像形成システム1によれば、中紙Pがラミネート処理装置100へ搬入前に画像形成装置300で異常が発生した場合は、画像形成装置300の画像制御コントローラ31は制御管理部321にのみキャンセルを要求する。一方、ラミネート処理装置100は、重合シートSの剥離が完了するまで動作を続行し、剥離が完了したら、その重合シートSを保持する。そして、画像形成装置300のジャム除去が完了後、画像制御コントローラ31はリカバリ印刷を要求し、出力した中紙Pが待機させていた重合シートSに挿入されて、ラミネート処理が実行される。
【0063】
なお、S603において発生する処理異常のシナリオとしては、以下の例示を挙げることができる。
【0064】
例えば、印刷開始してから重合シートSの剥離動作を開始した後に、ラミネート処理を伴う印刷ジョブが画像形成装置300において異常となる例が挙げられる。
【0065】
また、印刷を開始して重合シートSの剥離動作を開始した後に、ラミネート処理を伴う印刷ジョブがラミネート処理装置100において異常となることも一例となる。
【0066】
そして、印刷を開始してから重合シートSの剥離動作を開始した後に、ラミネート処理を伴う印刷ジョブにおいて、シートPsの搬送処理が進行している途中でユーザが画像形成装置300のカバーを開閉して印刷ジョブが停止することも一例となる。
【0067】
[報知手段]
ここで、画像形成システム1が備える報知手段の実施形態について、
図7(a)は、比較例のS505においてラミネート処理装置100のシート処理操作パネル101に表示される表示例である。
図7(b)は、本実施形態に係るS606においてラミネート処理装置100のシート処理操作パネル101に表示される表示例である。
【0068】
図7(a)に示すように比較例の場合は、画像形成装置300において、シートPsの搬送異常など(ジャム)が発生した場合、画像形成装置300及びラミネート処理装置100の内部(搬送経路内)に残留している搬送物(シートPsや重合シートS)の情報がシート処理コントローラ11へ通知される。シート処理コントローラ11は残留物情報に基づいてシート処理操作パネル101にバナーを表示するなどして画像形成装置300及びラミネート処理装置100に対する異常復帰操作を受け付け可能な状態にする。
【0069】
たとえば、比較例においては、画像形成装置300の復帰処理(印刷ジョブキャンセル)を実行するための「画像形成装置復帰処理ボタン1011」と、ラミネート処理装置100の動作をキャンセルするための「後処理装置復帰処理ボタン1012」と、を報知する。この場合、重合シートSの剥離動作が既に行われていて内部に残留している状態であれば、後処理装置復帰処理ボタン1012が表示される。したがって、画像形成装置復帰処理ボタン1011と後処理装置復帰処理ボタン1012を操作しなければ、復帰のための処理(S506)が実行されない。
【0070】
これに対して
図7(b)に示すように、本実施形態に係る処理の場合も、画像形成装置300においてシートPsの搬送異常など(ジャム)が発生すると、画像形成装置300及びラミネート処理装置100の内部(搬送経路内)に残留している搬送物(シートPsや重合シートS)の情報がシート処理コントローラ11へ通知される。そして、シート処理コントローラ11は残留物情報に基づいてシート処理操作パネル101にバナーを表示するなどして画像形成装置300及びラミネート処理装置100に対する異常復帰操作を受け付け可能な状態にする。
【0071】
本実施形態に係る処理方法では、画像形成装置300の復帰処理(印刷ジョブキャンセル)を実行するための復帰催促情報としての「画像形成装置復帰処理ボタン1011」のみが報知される。すなわち、重合シートSの剥離動作が既に行われていて内部に残留している状態であっても、後処理装置復帰処理ボタン1012は表示されずに、画像形成装置復帰処理ボタン1011が操作されれば、復帰のための処理(S607)が実行される。
【0072】
したがって、本実施形態に係る画像形成システム1において、ラミネート処理装置100の動作のキャンセルは促されることなく、復帰操作も不要であるから、ユーザは画像形成装置300についてのみ異常復帰操作を実行すれば、リカバリ印刷が開始した際、すでに待機している重合シートSを再利用できる。
【0073】
[シート処理を伴う画像形成処理フローの第二実施形態]
次に、本実施形態に係る画像形成システム1において実行される画像形成処理フローの第二実施形態について説明する。第一実施形態にて説明したように、処理異常から復帰してリカバリ印刷を実行するだけではなく、ユーザの操作によって印刷ジョブ自体がキャンセルされる場合もある。この場合、リカバリ印刷は開始されないことになる。
【0074】
第一実施形態と同様に、画像形成システム1において、ラミネート加工を含む印刷処理を開始すると、画像形成装置300は画像制御コントローラ31の制御によってシートPsの供給が開始される(S801)。同時に、ラミネート処理装置100では、制御管理部321からの要求に基づいてラミネート制御部12が重合シートSの剥離動作を開始する(S802)。
【0075】
ここで、画像形成装置300において処理異常(ジャム)が発生したとする(S803)。画像形成装置300側では、処理異常によって一旦処理が停止状態になる(S805)。一方、ラミネート処理装置100では、重合シートSの剥離処理を完了まで継続し(S804)、剥離動作が完了したら(S804:YES)、処理を一旦停止する(S805)。
【0076】
ここで、画像形成システム1として、画像形成装置300の処理異常に起因して印刷ジョブのキャンセル処理を実行することになる(S806)。
【0077】
その後、画像形成装置300では処理異常(ジャム)の除去処理が実行されるが、これが完了するまでにユーザがキャンセルした場合(S807:YES)、ラミネート処理装置100では処理停止指示(キャンセル指示)に基づいて、剥離が完了している重合シートSをパージトレイ(排出トレイ104)へと排出する処理を実行する(S808)。
【0078】
ユーザが処理異常を回復するための処理をキャンセルしなければ(S807:NO)、画像形成装置300では処理異常(ジャム)の除去が完了するまで処理をループし(S809:NO)、ジャムの除去が完了すれば(S809:Yes)、画像形成システム1はリカバリ印刷を開始する(S810)。
【0079】
リカバリ印刷が開始されると、画像形成装置300では再度の給紙を開始してシートPsに対して画像形成処理を実行する(S811)。続いて、剥離が完了し保持されている重合シートSに、中紙Pを挿入して、熱圧着してラミネート処理を実行する(S812)。そして処理後のラミネートシートを排出トレイ104に排出する(S813)。
【0080】
以上のとおり、本実施形態に係る処理フローによれば、印刷ジョブの開始後に生じた処理異常からの復帰処理をして、その後、すでに準備されている重合シートSを利用できる状態であるか否かをユーザが判別するステップを設けることができる。この場合、重合シートSの再利用が不適当であるとユーザが判断すれば、ユーザが復帰処理をキャンセルすることで、重合シートSを排出して、新たな重合シートSを用いた印刷ジョブを実行できる。
【0081】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
1 :画像形成システム
10 :シート処理制御部
11 :シート処理コントローラ
12 :ラミネート制御部
30 :画像形成制御部
31 :画像制御コントローラ
32 :エンジン
100 :ラミネート処理装置
101 :シート処理操作パネル
102 :シートトレイ
104 :排出トレイ
300 :画像形成装置
321 :制御管理部
322 :プロッタ制御部
400 :ラミネート処理装置
1011 :画像形成装置復帰処理ボタン
1012 :後処理装置復帰処理ボタン
【先行技術文献】
【特許文献】
【0083】