(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129132
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】非水電解液二次電池用セパレータ、非水電解液二次電池用部材、非水電解液二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/417 20210101AFI20230907BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20230907BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20230907BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20230907BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20230907BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20230907BHJP
H01M 50/423 20210101ALI20230907BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20230907BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20230907BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20230907BHJP
H01M 50/457 20210101ALI20230907BHJP
【FI】
H01M50/417
H01M50/414
H01M50/489
H01M50/443 M
H01M50/443 E
H01M50/451
H01M50/446
H01M50/423
B32B5/18
B32B27/32 D
H01M50/434
H01M50/443 C
H01M50/457
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033938
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127498
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100146329
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】松峰 陸
(72)【発明者】
【氏名】進 章彦
(72)【発明者】
【氏名】米口 裕規
【テーマコード(参考)】
4F100
5H021
【Fターム(参考)】
4F100AA19B
4F100AK01B
4F100AK03A
4F100AK04A
4F100AK47B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA31
4F100CA23B
4F100DJ00A
4F100GB41
4F100JA03
4F100JD02
4F100JJ03B
4F100YY00B
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE04
5H021EE07
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH05
(57)【要約】
【課題】耐圧縮性に優れる非水電解液二次電池用セパレータを提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂を主成分とする多孔質フィルムを備えた多孔質基材および耐熱性樹脂を含有する混合層と、任意で残留多孔質基材とを含み、前記混合層中の耐熱性樹脂の含有量が0.2g/m2以上である、非水電解液二次電池用セパレータ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂を主成分とする多孔質フィルムを備えた多孔質基材および耐熱性樹脂を含有する混合層と、任意で残留多孔質基材とを含み、前記混合層中の耐熱性樹脂の含有量が0.2g/m2以上である、非水電解液二次電池用セパレータ:
ここで、前記混合層中の耐熱性樹脂の含有量は、以下の式(1)に基づいて算出される。
混合層中の耐熱性樹脂の含有量[g/m2]=(前記混合層および前記残留多孔質基材の重量目付[g/m2])×{1-(ΔH1/ΔH0)}・・式(1)
(前記式(1)中、ΔH0は、前記多孔質基材が有する前記ポリオレフィン系樹脂の結晶の融解エンタルピーであり、ΔH1は、前記非水電解液二次電池用セパレータにおける前記混合層および前記残留多孔質基材が有する前記ポリオレフィン系樹脂の結晶の融解エンタルピーである。)
【請求項2】
前記耐熱性樹脂を含む耐熱層が前記混合層上に積層されている、請求項1に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
【請求項3】
前記耐熱層がフィラーをさらに含み、
前記フィラーの含有量が、前記耐熱層全体の重量に対して20重量%以上、90重量%以下である、請求項2に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
【請求項4】
前記耐熱層は、以下の式(2)で表される値が5%以上である、請求項2または3に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
輝度X1(%)-輝度X2(%)・・式(2)
(ここで、輝度X1とは、前記混合層と接している前記耐熱層の界面から、前記耐熱層の厚みの20%の深さまでの地点における輝度の平均値であり、
輝度X2とは、前記耐熱層の最も外側の表面から、前記耐熱層の厚みの20%の深さまでの地点における輝度の平均値であり、
前記耐熱層全体の輝度の平均値が100%である)
【請求項5】
透気度が500sec/100mL以下である、請求項1~4の何れか1項に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
【請求項6】
前記耐熱性樹脂がアラミド樹脂である、請求項1~5の何れか1項に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
【請求項7】
正極と、請求項1~6のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用セパレータと、負極とがこの順で配置されてなる非水電解液二次電池用部材。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用セパレータを含む、非水電解液二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池用セパレータ、非水電解液二次電池用部材および非水電解液二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池等の非水電解液二次電池は、現在、パーソナルコンピュータ、携帯電話および携帯情報端末等の機器に用いる電池、または車載用の電池として広く使用されている。
【0003】
前記非水電解液二次電池用のセパレータとして、ポリオレフィンを主成分とする多孔質フィルム上に積層された耐熱性層を構成する樹脂の一部を当該多孔質フィルムの一部に浸透させて耐熱性を向上させたセパレータが知られている(例えば、特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-511818号公報
【特許文献2】特開2013-46998号公報
【特許文献3】国際公開第2019/107219号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来のセパレータは、良好なシャットダウン特性の確保と、抵抗値の過剰な増大の防止との観点から、前記耐熱性層を構成する樹脂の前記多孔質フィルムへの浸透の度合いが抑制されている。しかし、前記セパレータは、電池内部に圧力が負荷された際にセパレータが変形し、電池性能が低下する可能性があるという問題点を有している。つまり、前記セパレータは、圧縮弾性率および圧縮維持率等の耐圧縮性に改善の余地を有している。
【0006】
本発明の一態様は、従来のセパレータよりも圧縮弾性率および圧縮維持率等の耐圧縮性に優れる非水電解液二次電池用セパレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、多孔質フィルムを備えた多孔質基材および耐熱性樹脂を含有する混合層を含み、前記混合層中の耐熱性樹脂の含有量が所定量である場合に、セパレータの耐圧縮性がより向上することを見出し、本発明に想到した。
【0008】
本発明の一態様は、以下の[1]~[8]に示す発明を含む。
[1]ポリオレフィン系樹脂を主成分とする多孔質フィルムを備えた多孔質基材および耐熱性樹脂を含有する混合層と、任意で残留多孔質基材とを含み、前記混合層中の耐熱性樹脂の含有量が0.2g/m2以上である、非水電解液二次電池用セパレータ:
ここで、前記混合層中の耐熱性樹脂の含有量は、以下の式(1)に基づいて算出される。
混合層中の耐熱性樹脂の含有量[g/m2]=(前記混合層および前記残留多孔質基材の重量目付[g/m2])×{1-(ΔH1/ΔH0)}・・式(1)
(前記式(1)中、ΔH0は、前記多孔質基材が有する前記ポリオレフィン系樹脂の結晶の融解エンタルピーであり、ΔH1は、前記非水電解液二次電池用セパレータにおける前記混合層および前記残留多孔質基材が有する前記ポリオレフィン系樹脂の結晶の融解エンタルピーである。)
[2]前記耐熱性樹脂を含む耐熱層が前記混合層上に積層されている、[1]に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
[3]前記耐熱層が、フィラーをさらに含み、
前記フィラーの含有量が、前記耐熱層全体の重量に対して20重量%以上、90重量%以下である、[2]に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
[4]前記耐熱層は、以下の式(2)で表される値が5%以上である、[2]または[3]に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
輝度X1(%)-輝度X2(%)・・式(2)
(ここで、輝度X1とは、前記混合層と接している前記耐熱層の界面から、前記耐熱層の厚みの20%の深さまでの地点における輝度の平均値であり、
輝度X2とは、前記耐熱層の最も外側の表面から、前記耐熱層の厚みの20%の深さまでの地点における輝度の平均値であり、
前記耐熱層全体の輝度の平均値が100%である)
[5]透気度が500sec/100mL以下である、[1]~[4]の何れか1つに記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
[6]前記耐熱性樹脂がアラミド樹脂である、[1]~[5]の何れか1つに記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
[7]正極と、[1]~[6]の何れか1つに記載の非水電解液二次電池用セパレータと、負極とがこの順で配置されてなる非水電解液二次電池用部材。
[8][1]~[6]の何れか1つに記載の非水電解液二次電池用セパレータを含む、非水電解液二次電池。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータは、従来のセパレータよりも耐圧縮性に優れるとの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態における、フィラーをさらに含む耐熱層の一例の構造の概要を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に関して以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態に関しても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0012】
[実施形態1:非水電解液二次電池用セパレータ]
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータ(以下、単に「セパレータ」とも称する)は、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする多孔質フィルムを備えた多孔質基材および耐熱性樹脂を含有する混合層と、任意で残留多孔質基材とを含み、前記混合層中の耐熱性樹脂の含有量が0.2g/m2以上である:
ここで、前記混合層中の耐熱性樹脂の含有量は、以下の式(1)に基づいて算出される。
混合層中の耐熱性樹脂の含有量[g/m2]=(前記混合層および前記残留多孔質基材の重量目付[g/m2])×{1-(ΔH1/ΔH0)}・・式(1)
(前記式(1)中、ΔH0は、前記多孔質基材が有する前記ポリオレフィン系樹脂の結晶の融解エンタルピーであり、ΔH1は、前記非水電解液二次電池用セパレータにおける前記混合層および前記残留多孔質基材が有する前記ポリオレフィン系樹脂の結晶の融解エンタルピーである。)
本明細書において、単に「多孔質基材」と記載する場合には、耐熱性樹脂を含有しない多孔質基材を意味する。
【0013】
前記「混合層」は、例えば、前記多孔質基材の表面のうち、片面または両面から前記耐熱性樹脂が浸透することによって形成され得る。例えば、前記多孔質基材の一部に前記耐熱性樹脂が浸透した場合、前記セパレータは、混合層と、多孔質基材のみからなる部分とを有する。本明細書では、前記セパレータのうち、前記「多孔質基材のみからなる部分」を「残留多孔質基材」と称する。一方、例えば前記多孔質基材の全ての部分に耐熱性樹脂が浸透した場合、前記セパレータは混合層を有し、残留多孔質基材を有さない。
【0014】
ここで、前記ΔH0とは、前記多孔質基材が有するポリオレフィン系樹脂の結晶の融解エンタルピーである。前記ΔH1とは、前記セパレータにおける前記混合層および前記残留多孔質基材が有するポリオレフィン系樹脂の結晶の融解エンタルピーである。なお、前述したように、前記残留多孔質基材は、存在しない場合がある。
【0015】
よって、前記ΔH0と前記ΔH1との間の関係性は、前記多孔質基材の組成と、前記残留多孔質基材および前記混合層の組成との差異に依存する。詳細には、ΔH0に対するΔH1の割合(ΔH1/ΔH0)が、前記混合層が形成される前後におけるポリオレフィン系樹脂の含有比率の減少の割合を表す。
【0016】
従って、(ΔH1/ΔH0)の値および前記混合層および前記残留多孔質基材の重量目付を用いて、以下の式(1)に基づき、前記混合層中の耐熱性樹脂の含有量を算出することができる。
混合層中の耐熱性樹脂の含有量[g/m2]=(前記混合層および前記残留多孔質基材の重量目付[g/m2])×{1-(ΔH1/ΔH0)}・・式(1)
前記セパレータは、前記混合層中の耐熱性樹脂の含有量が、0.2g/m2以上である。ここで、前記セパレータは、前記含有量が0.2g/m2以上であることにより、前記多孔質基材の構造が補強され、その強度が向上していると考えられる。よって、前記セパレータは、圧力を加えられた際に変形し難くなり、耐圧縮性、具体的には、圧縮弾性率および圧縮維持率が向上すると考えられる。
【0017】
ポリオレフィン結晶の融解エンタルピーの算出方法は特に限定されない。例えば、市販の示差走査熱量(DSC)測定装置を用いて、以下の<測定条件>でDSC測定を実施し、その結果得られるDSC曲線に基づき、以下に示す方法によって、前記融解エンタルピーを算出することができる。
<測定条件>
サンプルを装置にセットし、以下のプログラムを、1stスキャン、1st降温、2ndスキャンおよび2nd降温の順で実施し、昇温・降温して測定する。
・1stスキャン:30℃から180℃まで10℃/minで昇温し、3分間保持する。
・1st降温:180℃から30℃まで10℃/minで降温し、3分間保持する。
・2ndスキャン:30℃から180℃まで10℃/minで昇温し、1分間保持する。
・2nd降温:180℃から30℃まで10℃/minで降温し、1分間保持する。
<ポリオレフィン結晶の融解エンタルピーの算出方法>
前記多孔質基材、並びに、前記セパレータにおける前記混合層および前記残留多孔質基材について、2ndスキャン時の吸熱チャートからポリオレフィンピークの面積(吸熱量ΔH)をそれぞれ算出する。なお、前記混合層および前記残留多孔質基材の重量目付は、例えば、前記セパレータが後述の耐熱層を備える場合には、以下の方法によって得ることができる。すなわち、当該セパレータから当該耐熱層を剥離して、前記混合層及び前記残留多孔質基材を調製し、その重量目付を測定することによって、前記重量目付を得ることができる。なお、前述したように、前記セパレータは、前記残留多孔質基材を含まない場合がある。
【0018】
また、以下の(a)~(d)に示す方法によって、前記混合層中の耐熱性樹脂の含有量を算出することができる。
(a)予め、前記多孔質基材の重量目付を測定する。
(b)続けて、前記多孔質基材に対して、前述した方法によってDSC曲線を得る。そして、前記多孔質基材が有するポリオレフィン系樹脂の結晶の融解エンタルピー(ΔH0)を算出する。
(c)前記セパレータにおける前記混合層および前記残留多孔質基材に対して、前述した方法によってDSC曲線を得る。そして、前記混合層および前記残留多孔質基材が有するポリオレフィン系樹脂の結晶の融解エンタルピー(ΔH1)を測定する。
(d)(a)~(c)によって得られた測定値を用いて、以下の式(1)に基づき、前記混合層中の耐熱性樹脂の含有量を算出する。
混合層中の耐熱性樹脂の含有量[g/m2]=(前記混合層および前記残留多孔質基材の重量目付[g/m2])×{1-(ΔH1/ΔH0)}・・式(1)
[多孔質基材]
前記多孔質基材について、以下に説明する。
【0019】
前記多孔質基材は、ポリオレフィン多孔質フィルムを備える。前記ポリオレフィン多孔質フィルムは、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする多孔質フィルムである。「ポリオレフィン系樹脂を主成分とする」とは、前記多孔質フィルムに占めるポリオレフィン系樹脂の割合が、前記多孔質フィルムを構成する材料全体の50体積%以上、好ましくは90体積%以上であり、より好ましくは95体積%以上であることを意味する。
【0020】
前記多孔質基材は、その内部に連結した細孔を多数有しており、一方の面から他方の面に気体や液体を通過させることが可能となっている。
【0021】
前記多孔質基材の膜厚は、5~20μmが好ましく、7~15μmがより好ましく、8~15μmがさらに好ましい。膜厚が5μm以上ならば、前記セパレータに要求される機能(シャットダウン機能など)が、充分に得られる。膜厚が20μm以下ならば、前記セパレータを薄型化できる。
【0022】
前記ポリオレフィン系樹脂には、重量平均分子量が5×105~15×106の高分子量成分が含まれていることがより好ましい。特に、ポリオレフィン系樹脂に重量平均分子量が100万以上の高分子量成分が含まれていると、得られる多孔質基材および当該多孔質基材を含む非水電解液二次電池用セパレータの強度が向上するため、より好ましい。
【0023】
前記ポリオレフィン系樹脂は、特に限定されないが、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-ヘキセン等の単量体から選ばれる1以上の単量体を重合してなる、単独重合体または共重合体等を挙げることができる。
【0024】
前記単独重合体としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンを挙げることができる。また、前記共重合体としては、例えばエチレン-プロピレン共重合体を挙げることができる。
【0025】
前記ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレンがより好ましい。前記ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレン(エチレン-α-オレフィン共重合体)、重量平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレン等が挙げられる。このうち、重量平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレンがさらに好ましい。
【0026】
前記多孔質基材の単位面積当たりの重量、すなわち重量目付は、電池の、重量エネルギー密度や体積エネルギー密度を高くすることができるように、通常、2~20g/m2であることが好ましく、5~12g/m2であることがより好ましい。
【0027】
前記多孔質基材の透気度は、十分なイオン透過性を示すという観点から、ガーレ値で30~500sec/100mLであることが好ましく、50~300sec/100mLであることがより好ましい。
【0028】
前記多孔質基材の空隙率は、電解液の保持量を高めると共に、過大電流が流れることをより低温で確実に阻止(シャットダウン)する機能を得ることができるように、20体積%~80体積%であることが好ましく、30~75体積%であることがより好ましい。
【0029】
前記多孔質基材が有する細孔の孔径は、十分なイオン透過性、および、電極を構成する粒子の入り込みを防止するという観点から、0.1μm以下であることが好ましく、0.06μm以下であることがより好ましい。
【0030】
[多孔質基材の製造方法]
本発明の一実施形態において、前記多孔質基材の製造方法としては、公知の手法を用いることができ、特に限定されない。例えば、日本国特許第5476844号公報に記載されたように、熱可塑性樹脂にフィラーを加えてフィルム成形した後、当該フィラーを除去する方法が挙げられる。
【0031】
具体的には、例えば、ポリオレフィン多孔質フィルムが、超高分子量ポリエチレンおよび重量平均分子量1万以下の低分子量ポリオレフィンを含むポリオレフィン系樹脂から形成されてなる場合には、製造コストの観点から、以下に示す工程(1)~(4)を含む方法により製造することが好ましい。
【0032】
(1)超高分子量ポリエチレン100重量部と、重量平均分子量1万以下の低分子量ポリオレフィン5重量部~200重量部と、炭酸カルシウムなどの無機充填剤100重量部~400重量部とを混練してポリオレフィン系樹脂組成物を得る工程、
(2)ポリオレフィン系樹脂組成物を用いてシートを成形する工程、
(3)工程(2)で得られたシート中から無機充填剤を除去する工程、
(4)工程(3)で得られたシートを延伸する工程。
その他、上述した各特許文献に記載の方法を利用してもよい。
【0033】
また、ポリオレフィン多孔質フィルムとして、上述の特徴を有する市販品を使用してもよい。
【0034】
[混合層]
本発明の一実施形態における混合層は、前記多孔質基材および耐熱性樹脂を含有する層である。よって、前記混合層は、前記多孔質基材を構成する成分である前記ポリオレフィン系樹脂と、前記耐熱性樹脂とを含む。
【0035】
本発明の一実施形態において、前記多孔質基材の全てが前記混合層に含まれていてもよく、前記多孔質基材の一部が、前記混合層に含まれていてもよい。詳細には、前記セパレータは、前記残留多孔質基材を含まなくともよく、前記残留多孔質基材を含んでいてもよい。また、前記混合層は、後述のとおり、前記多孔質基材の片面または両面から前記耐熱性樹脂を浸透して形成され得る。ここで、例えば、前記多孔質基材の片面から前記耐熱性樹脂を浸透して前記混合層を形成する場合には、前記セパレータは、前記多孔質基材における前記耐熱性樹脂を浸透させた面に相当する面側に混合層を有し、かつ、当該面と対向する面の側に残留多孔質基材を有する構成を備え得る。さらに、例えば、前記多孔質基材の両面から前記耐熱性樹脂を浸透して前記混合層を形成する場合には、前記セパレータは、前記多孔質基材における前記耐熱性樹脂を浸透させた両面に相当する両面の側に2つの混合層を有し、かつ、前記セパレータの中央部分に残留多孔質基材を有する構造を備え得る。
【0036】
前記混合層の体積%は、前記多孔質基材全体の体積のうち、混合層に含まれる部分の割合によって表される。前記混合層の体積%は、前記多孔質基材全体の体積に対して、5.0体積%以上であることが好ましく、7.0体積%以上であることがより好ましい。また、前記混合層の体積の上限は、前記多孔質基材全体の体積に対して100体積%であり、55体積%以下であることが好ましく、40体積%以下であることがより好ましい。
【0037】
前記耐熱性樹脂は、ポリオレフィンよりも耐熱性に優れる樹脂である。本発明の一実施形態において、前記セパレータが前記混合層を有することにより、前記セパレータの耐圧縮性を向上させることができる。
【0038】
前記耐熱性樹脂は、電池の電解液に不溶であり、また、その電池の使用範囲において電気化学的に安定であることが好ましい。
【0039】
前記耐熱性樹脂の例としては、含窒素芳香族重合体;(メタ)アクリレート系樹脂;含フッ素樹脂;ポリエステル系樹脂;ゴム類;融点またはガラス転移温度が180℃以上の樹脂;水溶性ポリマー;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。
【0040】
含窒素芳香族重合体の例としては、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリウレタン、メラミン樹脂が挙げられる。芳香族ポリアミドの例としては、全芳香族ポリアミド(アラミド樹脂)、半芳香族ポリアミドが挙げられる。芳香族ポリアミドの例としては、パラアラミド、メタアラミドが挙げられる。上述した含窒素芳香族重合体の中では、全芳香族ポリアミドが好ましく、パラアラミドがより好ましい。
【0041】
本明細書においてパラアラミドとは、芳香族環のパラ位またはそれに準じた配向位にアミド結合が位置している全芳香族ポリアミドを表す。パラ位に準じた配向位とは、芳香族環を挟んで反対方向にあり、同一軸上に位置する配向位または平行である配向位のことである。このような配向位の例としては、ビフェニレン環の4位および4’位、ナフタレン環の1位および5位、ナフタレン環の2位および6位が挙げられる。
【0042】
パラアラミドの具体例としては、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(パラベンズアミド)、ポリ(4,4’-ベンズアニリドテレフタルアミド)、ポリ(パラフェニレン-4,4’-ビフェニレンジカルボン酸アミド)、ポリ(パラフェニレン-2,6-ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(2-クロロ-パラフェニレンテレフタルアミド)、パラフェニレンテレフタルアミド/2,6-ジクロロパラフェニレンテレフタルアミド共重合体が挙げられる。上述したパラアラミドの中では、製造および取扱いが容易であるため、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)が好ましい。
【0043】
含フッ素樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-トリクロロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-フッ化ビニル共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体、及びエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等、並びに、前記含フッ素樹脂の中でもガラス転移温度が23℃以下である含フッ素ゴムを挙げることができる。
【0044】
ポリエステル系樹脂としては、ポリアリレートなどの芳香族ポリエステルおよび液晶ポリエステルが好ましい。
【0045】
ゴム類としては、スチレン-ブタジエン共重合体およびその水素化物、メタクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレンプロピレンラバー、ポリ酢酸ビニル等を挙げることができる。
【0046】
融点又はガラス転移温度が180℃以上の樹脂としては、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルアミド等を挙げることができる。
【0047】
水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、セルロースエーテル、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸等を挙げることができる。
【0048】
なお、前記耐熱性樹脂としては、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
耐熱性樹脂の分子量は、固有粘度で表すと、1.0~2.5dL/gが好ましく、1.2~2.0dL/gがより好ましい。耐熱性樹脂の分子量が1.0dL/g未満である場合、混合層の耐圧縮性の向上がみられない可能性があり、耐熱性樹脂の分子量が2.5dL/gを超える場合、基材内部に浸透しにくい。
【0050】
前記混合層の重量目付、透気度、空隙率および細孔の孔径は、前記多孔質基材の重量目付、透気度、空隙率および細孔の孔径の好ましい範囲と同一の範囲内であることが好ましい。
【0051】
[混合層の製造方法]
前記混合層の製造方法は、特に限定されず、例えば、前記多孔質基材の片面または両面に、前記耐熱性樹脂を含む塗工液を塗布し、前記塗工液を前記多孔質基材の内部の少なくとも一部に浸透させた後、前記塗工液に含まれる溶媒を除去する方法を挙げることができる。
【0052】
このとき、前記塗工液を前記多孔質基材の内部の全体に浸透させてもよく、前記塗工液を前記多孔質基材の内部の一部に浸透させてもよい。前記塗工液を前記多孔質基材の内部の全体に浸透させる場合とは、前記残留多孔質基材が存在しない場合をいう。また、前記塗工液を前記多孔質基材の内部の一部に浸透させる場合とは、前記残留多孔質基材が存在する場合をいう。
【0053】
ここで、前記多孔質基材の内部に浸透しない塗工液は、前記混合層の片面上または両面上に塗工層を形成し得る。そして、前記塗工液に含まれる溶媒が除去されることにより、前記混合層の片面上または両面上に後述する耐熱層が形成され得る。よって、前記セパレータは、前記耐熱層が前記混合層上に積層されている形態であり得る。
【0054】
前記塗工液を前記多孔質基材の片面または両面に塗布する前に、前記多孔質基材の片面または両面に対して、必要に応じて親水化処理を行うことができる。
【0055】
前記塗工液は、前記耐熱層に含まれ得る後述のフィラーを含み得る。前記塗工液は、通常、前記耐熱性樹脂を溶媒に溶解させることにより調製され得る。
【0056】
前記フィラーを含む耐熱層を前記混合層上に形成する場合、前記塗工液は、通常、前記耐熱性樹脂を溶媒に溶解させることに加えて、前記フィラーを前記溶媒に分散させることにより調製され得る。その場合、前記溶媒は、前記フィラーを分散させる分散媒を兼ねている。
【0057】
さらに、前記溶媒により前記耐熱性樹脂をエマルションとしてもよい。
【0058】
前記溶媒は、前記多孔質基材に悪影響を及ぼさず、前記耐熱性樹脂を均一かつ安定に溶解し、前記フィラーを含む場合には、前記フィラーを均一かつ安定に分散させることができればよく、特に限定されるものではない。前記溶媒としては、例えば、水および有機溶媒が挙げられる。前記溶媒は1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
塗工液は、前記混合層及び前記耐熱層を得るのに必要な樹脂固形分(樹脂濃度)および微粒子量等の条件を満足することができれば、どのような方法で形成されてもよい。塗工液の形成方法としては、具体的には、例えば、機械攪拌法、超音波分散法、高圧分散法、メディア分散法等が挙げられる。また、前記塗工液は、本発明の目的を損なわない範囲で、前記耐熱性樹脂および微粒子以外の成分として、分散剤や可塑剤、界面活性剤、pH調整剤等の添加剤を含んでいてもよい。尚、添加剤の添加量は、本発明の目的を損なわない範囲であればよい。
【0060】
塗工液の塗布方法としては、従来公知の方法を採用することができ、具体的には、例えば、グラビアコーター法、ディップコーター法、バーコーター法、およびダイコーター法等が挙げられる。
【0061】
溶媒の除去方法は、乾燥による方法が一般的である。また、塗工液に含まれる溶媒を他の溶媒に置換してから乾燥を行ってもよい。
【0062】
本発明の一実施形態において、例えば、以下の(A)~(C)のうち1以上の製造条件を採用することによって、前記塗工液の前記多孔質基材の内部への浸透を促進し、前記混合層を好適に製造することができる。その結果、前記混合層中の耐熱性樹脂の含有量を0.2g/m2以上とすることができる。
(A)前記多孔質基材に前記塗工液を塗布する際に、例えば、高圧バーを使用して、塗工バーの幅当たりの作用荷重を好ましくは250N/m以上、より好ましくは300N/m以上として、前記多孔質基材の前記塗工液を塗工する面に加える。なお、前記作用荷重は、ランド部(塗工バーへの塗布液の出入口の間の領域)での塗布液の圧力とランド部の接液面積との積として計算される。
(B)前記溶媒を乾燥によって除去し、その際の乾燥時間を、好ましくは10秒以上、より好ましくは20秒以上となるように、乾燥条件を制御する。
(C)前記塗工液における前記耐熱性樹脂の含有量を、好ましくは2.0~10.0重量%、より好ましくは4.5~8.0重量%に制御する。
【0063】
前記耐熱性樹脂の前記多孔質基材の内部への浸透を抑制する方法としては、前記塗工液を前記多孔質基材の片面に塗布し、前記塗工液を塗布する面とは反対側の面を、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等の溶媒に含浸させる下面含浸法が知られている。本発明の一実施形態では、前述したように、前記多孔質基材の内部の全体に前記耐熱性樹脂を含有(浸透)させてよい。よって、下面含浸法等の方法を採用することなく、前記塗工液を前記多孔質基材の片面または両面に塗布することによっても、前記混合層を好適に製造することができる。前記多孔質基材の内部の一部に前記耐熱性樹脂を含有(浸透)させる場合は、前記下面含浸法等を適宜用いてもよい。
【0064】
[耐熱層]
前述のとおり、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータは、前記混合層上に積層されている耐熱層を含み得る。
【0065】
前記耐熱層は、前記耐熱性樹脂を含む。また、前記耐熱層は、フィラーを含み得る。前記フィラーとしては、有機微粒子または無機微粒子を挙げることができる。従って、前記耐熱層が前記フィラーを含む場合、前記耐熱層部含まれる前記耐熱性樹脂は、前記フィラー同士、並びに前記フィラーと塩基混合層とを結着させるバインダー樹脂としての機能をも有する。また、前記フィラーは、絶縁性微粒子が好ましい。さらに、前記フィラーは、構成物質、粒径および比表面積にうちの1つ以上が互いに異なる2種類以上のフィラーを組み合わせて用いてもよい。
【0066】
前記有機微粒子を構成する有機物としては、スチレン、ビニルケトン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸メチルなどの単独あるいは2種類以上の共重合体;ポリテトラフルオロエチレン、4フッ化エチレン-6フッ化プロピレン共重合体、4フッ化エチレン-エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライドなどのフッ素系樹脂;メラミン樹脂;尿素樹脂;ポリオレフィン;ポリメタクリレートなどが挙げられる。前記有機微粒子は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いることもできる。前記有機微粒子としては、化学的安定性の点で、ポリテトラフルオロエチレンから構成される有機微粒子が好ましい。
【0067】
前記無機微粒子を構成する無機物としては、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、炭酸塩、硫酸塩などをあげることができる。前記無機物の具体例を例示すると、アルミニウム酸化物(アルミナなど)、ベーマイト、シリカ、チタニア、マグネシア、チタン酸バリウム、水酸化アルミニウムおよび炭酸カルシウムなどの粉末;ならびに、マイカ、ゼオライト、カオリンおよびタルクなどの鉱物が挙げられる。前記無機微粒子は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いることもできる。前記無機微粒子としては、化学的安定性の点で、アルミニウム酸化物から構成される無機微粒子が好ましい。
【0068】
前記フィラーの形状としては、略球状、板状、柱状、針状、ウィスカー状、繊維状などが挙げられ、何れの粒子も用いることができる。均一な孔を形成しやすいことから、略球状粒子であることが好ましい。
【0069】
前記フィラーの平均粒径は、0.01~1μmであることが好ましい。本明細書においては、「フィラーの平均粒径」とはフィラーの体積基準の平均粒径(D50)を意味する。D50とは、体積基準による積算分布が50%になる値の粒子径のことを意味する。D50は、例えば、レーザー回折式粒度分布計(島津製作所製、商品名:SALD2200、SALD2300など)を利用して測定することができる。
【0070】
前記耐熱層における前記フィラーの含有量は、前記耐熱層全体の重量に対して、好ましくは20~90重量%であり、より好ましくは40~80重量%である。フィラーの含有率が前述の範囲であれば、充分なイオン透過性を有する耐熱層が得られる。
【0071】
耐熱層の透気度は、ガーレー値で、400sec/100mL以下であることが好ましく、200sec/100mL以下であることがより好ましい。
【0072】
前記耐熱層は、以下の式(2)にて表される値が5%以上であることが好ましく、7%以上であることがより好ましい。以下の式(2)にて表される値の上限値は、特に限定されず、例えば、60%以下であり、好ましくは、50%以下であり、より好ましくは11%以下である。
輝度X1(%)-輝度X2(%)・・式(2)
ここで、輝度X1とは、前記混合層と接している前記耐熱層の界面から、前記耐熱層の厚みの20%の深さまでの地点における輝度の平均値であり、
輝度X2とは、前記耐熱層の最も外側の表面から、前記耐熱層の厚みの20%の深さまでの地点における輝度の平均値であり、
前記耐熱層全体の輝度の平均値が100%である。ここで、前記耐熱層の最も外側の表面とは、前記耐熱層における前記混合層と接している面と対向する面を意味する。
【0073】
前記式(2)によって表される値は、前記耐熱層の厚み方向において、当該耐熱層を構成する物質の偏りを表す。前記耐熱層を構成する物質は、例えば、耐熱性樹脂および当該耐熱性樹脂がフィラーを含む場合は当該フィラーである。前記値が前述の好ましい範囲内である場合、前記耐熱層は、前記混合層に近い領域に、前記混合層から遠い領域よりも多くの前記耐熱層を構成する物質を含んでいる。その場合、前記耐熱層における前記混合層に近い領域に前記耐熱層を構成する物質である前記耐熱性樹脂(または、前記耐熱性樹脂および前記フィラー)がより多く移動している。その結果、前記混合層には、セパレータに十分な耐圧縮性を付与する上で好適な量の前記耐熱性樹脂が含有されていると考えられる。
【0074】
前記輝度の平均値は、後述の実施例に記載の方法と同一の方法によって測定され得る。
【0075】
ここで、前記フィラーをさらに含む耐熱層の一例の構造について、
図1を挙げて説明する。
図1に記載のセパレータは、残留多孔質基材および混合層からなる積層体1における混合層上に、フィラー7を含む耐熱層5が積層する構造を備える。
図1に記載の矢印L10は、耐熱層5全体の厚みを表し、矢印L11および矢印L12の長さは、いずれも、矢印L10の20%である。したがって、
図1に記載の耐熱層5において、輝度X
1は斜線を付した部分の平均輝度であり、輝度X
2は交差斜線を付した部分の平均輝度である。
【0076】
[耐熱層の製造方法]
前記耐熱層は、前記混合層を形成するのと共に、形成され得る。すなわち、前記耐熱層の製造方法は、前述した前記混合層の製造方法と同一である。
【0077】
[非水電解液二次電池用セパレータの物性]
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータの膜厚は、5.0μm~45μmであることが好ましく、6μm~25μmであることがより好ましい。
【0078】
前記セパレータの透気度は、ガーレ値で500sec/100mL以下が好ましく、300sec/100mL以下がより好ましい。透気度が前述の範囲内である場合、前記セパレータは、充分なイオン透過性を有すると言える。
【0079】
前記セパレータは、前記残留多孔質基材、前記混合層および前記耐熱層以外の別の多孔質層を、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で含んでいてもよい。前記別の多孔質層としては、別の耐熱層、接着層および保護層等の公知の多孔質層が挙げられる。
【0080】
[実施形態2:非水電解液二次電池用部材、実施形態3:非水電解液二次電池]
本発明の実施形態2に係る非水電解液二次電池用部材は、正極、本発明の実施形態1に係る非水電解液二次電池用セパレータ、および負極がこの順で配置されてなる。
【0081】
本発明の実施形態3に係る非水電解液二次電池は、本発明の実施形態1に係る非水電解液二次電池用セパレータを含む。
【0082】
本発明の実施形態3に係る非水電解液二次電池は、例えば、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池であって、正極と、本発明の実施形態1に係る非水電解液二次電池用セパレータと、負極とがこの順で積層されてなる非水電解液二次電池部材を備え得る。なお、非水電解液二次電池用セパレータ以外の非水電解液二次電池の構成要素は、下記説明の構成要素に限定されるものではない。
【0083】
本発明の実施形態3に係る非水電解液二次電池は、通常、負極と正極とが、本発明の実施形態1に係る非水電解液二次電池用セパレータを介して対向した構造体に電解液が含浸された電池要素が、外装材内に封入された構造を有する。非水電解液二次電池は、特にはリチウムイオン二次電池であることが好ましい。なお、ドープとは、吸蔵、担持、吸着、または挿入を意味し、正極等の電極の活物質にリチウムイオンが入る現象を意味する。
【0084】
本発明の実施形態2に係る非水電解液二次電池部材は、本発明の実施形態1に係るセパレータを備えている。従って、本発明の実施形態2に係る非水電解液二次電池部材は、耐圧縮性に優れるという効果を奏する。
【0085】
本発明の実施形態3に係る非水電解液二次電池は、本発明の実施形態1に係るセパレータを備えている。ここで、充放電サイクルの進行に伴い、非水電解液二次電池用セパレータには、膨張および収縮する電極から繰り返し応力(荷重)が加えられる。そして、従来のセパレータを備える非水電解液二次電池は、上記応力によってセパレータが変形し、その結果、レート試験時における容量維持率等の電池性能が低下する可能性がある。一方、本発明の実施形態3に係る非水電解液二次電池は、セパレータが変形し難いため、前記電池性能が向上するという効果を奏する。
【0086】
<正極>
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池部材および非水電解液二次電池における正極としては、一般に非水電解液二次電池の正極として使用されるものであれば、特に限定されない。例えば、正極活物質および結着剤を含む活物質層が集電体上に成形された構造を備える正極シートを、前記正極として使用することができる。なお、前記活物質層は、更に導電剤を含んでもよい。
【0087】
前記正極活物質としては、例えば、リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料が挙げられる。当該材料としては、具体的には、例えば、V、Mn、Fe、CoおよびNi等の遷移金属を少なくとも1種類含んでいるリチウム複合酸化物が挙げられる。
【0088】
前記導電剤としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維および有機高分子化合物焼成体等の炭素質材料等が挙げられる。前記導電剤は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
前記結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂、アクリル樹脂、並びに、スチレンブタジエンゴムが挙げられる。なお、結着剤は、増粘剤としての機能も有している。
【0090】
前記集電体としては、例えば、Al、Niおよびステンレス等の導電体が挙げられる。中でも、薄膜に加工し易く、安価であることから、Alがより好ましい。
【0091】
シート状の正極の製造方法としては、例えば、正極活物質、導電剤および結着剤を正極集電体上で加圧成型する方法;適当な有機溶剤を用いて正極活物質、導電剤および結着剤をペースト状にした後、当該ペーストを正極集電体に塗工し、乾燥した後に加圧して正極集電体に固着する方法;等が挙げられる。
【0092】
<負極>
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池部材および非水電解液二次電池における負極としては、一般に非水電解液二次電池の負極として使用されるものであれば、特に限定されない。例えば、負極活物質および結着剤を含む活物質層が集電体上に成形された構造を備える負極シートを、前記負極として使用することができる。なお、前記活物質層は、更に導電剤を含んでもよい。
【0093】
前記負極活物質としては、例えば、リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料、リチウム金属またはリチウム合金等が挙げられる。当該材料としては、例えば、炭素質材料等が挙げられる。炭素質材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック、および熱分解炭素類等が挙げられる。
【0094】
前記集電体としては、例えば、Cu、Niおよびステンレス等が挙げられ、特にリチウムイオン二次電池においてはリチウムと合金を作り難く、かつ薄膜に加工し易いことから、Cuがより好ましい。
【0095】
シート状の負極の製造方法としては、例えば、負極活物質を負極集電体上で加圧成型する方法;適当な有機溶剤を用いて負極活物質をペースト状にした後、当該ペーストを負極集電体に塗工し、乾燥した後に加圧して負極集電体に固着する方法;等が挙げられる。前記ペーストには、好ましくは前記導電剤および前記結着剤が含まれる。
【0096】
<非水電解液>
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池における非水電解液は、一般に非水電解液二次電池に使用される非水電解液であれば特に限定されず、例えば、リチウム塩を有機溶媒に溶解してなる非水電解液を用いることができる。リチウム塩としては、例えば、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、Li2B10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム塩およびLiAlCl4等が挙げられる。前記リチウム塩は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0097】
非水電解液を構成する有機溶媒としては、例えば、カーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、アミド類、カーバメート類および含硫黄化合物、並びにこれらの有機溶媒にフッ素基が導入されてなる含フッ素有機溶媒等が挙げられる。前記有機溶媒は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【実施例0098】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0099】
[各種物性の測定方法]
実施例および比較例における各種物性の測定を、以下の方法によって行った。
【0100】
[重量目付]
実施例および比較例において使用した耐熱性樹脂を含有しない多孔質基材を、一辺の長さが8cmの正方形に切出してサンプルとし、このサンプルの重量Wa[g]を測定した。測定されたWaの値を用いて、下記式(3)に従って、前記多孔質基材の重量目付[g/m2]を算出した。
多孔質基材の重量目付=(Wa)/(0.08×0.08)・・式(3)
セパレータを、一辺の長さが8cmの正方形に切出してサンプルとし、このサンプルの重量Wb[g]を測定した。さらに、前記サンプルの耐熱層が形成されている面に剥離テープを貼付してから剥離することによって、当該耐熱層をセパレータから剥離させ、残留多孔質基材および混合層からなる積層体を得た。前記積層体の重量Wc[g]を測定した。測定されたWbおよびWcの値を用いて、下記式(4)および下記式(5)に従って、前記耐熱層の重量目付および前記積層体、すなわち前記混合層および前記残留多孔質基材の重量目付を算出した。
耐熱層の重量目付=(Wb-Wc)/(0.08×0.08)・・式(4)
混合層および残留多孔質基材の重量目付=(Wc)/(0.08×0.08)・・式(5)
[耐熱層の輝度平均値]
以下に示す方法によって、耐熱層全体の輝度平均値を100%とした場合の、前記混合層と接している前記耐熱層の界面から、前記耐熱層の厚みの20%の深さまでの地点における輝度の平均値:輝度X1[%]および前記耐熱層の最も外側の表面、すなわち前記混合層と接している界面と対向する面から、前記耐熱層の厚みの20%の深さまでの地点における輝度の平均値:輝度X2[%]を測定した。
1. セパレータを四酸化ルテニウムで電子染色した。
2. セパレータの細孔にエポキシ樹脂を充填し、硬化させた。
3. イオンミリング法(IB-19520(日本電子製))により、セパレータをMD方向に対して垂直な方向に切断した。
4. 現れた断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察および撮像する。このとき、耐熱層および多孔質基材の断面全体と、エポキシ樹脂の層とが同一視野に入る最大倍率となるように、倍率を調節した。SEMとしてはS-4800(日立ハイテク製)を用い、加速電圧2kVの条件で、反射電子検出器を用いて観察した。
5. 得られた画像について、1ピクセルごとに輝度を出力した。得られた輝度を、面内方向に平均した。
6. 面内方向における輝度の平均値を、厚み方向にプロットした輝度プロファイルを作成した。このプロファイルを、耐熱層全体の平均輝度値が100%、エポキシ樹脂の領域の平均輝度値が0%となるように、規格化した。
7. 耐熱層から混合層へ向かう方向に、5ピクセル分の輝度の移動平均を1ピクセルごとに計算した。
8. 耐熱層と混合層との界面付近において、移動平均の傾きが負の最大となる位置を、耐熱層と混合層との界面とした。
9. 工程7および8とは別に、耐熱層の外側にあるエポキシ樹脂から耐熱層へ向かう方向に、5ピクセル分の輝度の移動平均を1ピクセルごとに計算した。
10. エポキシ樹脂と耐熱層との界面付近において、移動平均の傾きが正の最大となる位置を、エポキシ樹脂と耐熱層との界面とした。
11. 工程8および10で設定した界面に挟まれた領域を耐熱層とした。耐熱層と混合層との界面から厚み方向に0%から20%の位置までの輝度の平均値をX1とした。また、エポキシ樹脂と耐熱層との界面から厚み方向に0%から20%の位置までの輝度の平均値をX2とした。
【0101】
測定された輝度X1[%]および輝度X2[%]の値を用いて、以下の式(2)で表される値を算出した。
(輝度X1[%])-(輝度X2[%])・・式(2)
[透気度]
セパレータの透気度(ガーレ値)をJIS P8117に準拠して測定した。
【0102】
[混合層中の耐熱性樹脂の含有量]
(ポリオレフィン結晶の融解エンタルピーの算出)
実施例および比較例において使用した、耐熱性樹脂を含有しない多孔質基材に対して、DSC測定装置(日立ハイテクサイエンス社製、製品名:DSC7020)を用いて、以下の<測定条件>にてDSC測定を実施した。その結果得られるDSC曲線に基づき、以下に示す方法によって、前記多孔質基材が有するポリオレフィン結晶の融解エンタルピー(ΔH0)を算出した。
<測定条件>
サンプルを装置にセットし、以下のプログラムを、1stスキャン、1st降温、2ndスキャンおよび2nd降温の順で実施し、昇温・降温して測定した。
・1stスキャン:30℃から180℃まで10℃/minで昇温し、3分間保持する。
・1st降温:180℃から30℃まで10℃/minで降温し、3分間保持する。
・2ndスキャン:30℃から180℃まで10℃/minで昇温し、1分間保持する。
・2nd降温:180℃から30℃まで10℃/minで降温し、1分間保持する。
<ポリオレフィン結晶の融解エンタルピーの算出方法>
2ndスキャン時の吸熱チャートから、前記多孔質基材が有するポリオレフィンピークの面積(吸熱量ΔH0)をそれぞれ算出した。
【0103】
続いて、実施例および比較例において製造されたセパレータにおける残留多孔質基材および混合層からなる積層体に対して、前記測定条件および算出方法と同一の条件および方法によってDSC測定を実施した。その結果得られるDSC曲線に基づき、前記積層体が有するポリオレフィン結晶の融解エンタルピー(ΔH1)を算出した。前記積層体は、前記「耐熱層の輝度平均値の測定」で述べたのと同様に、前記セパレータから前記耐熱層を剥離することによって調製した。
【0104】
(混合層中の耐熱性樹脂の含有量の算出)
以上の方法によって算出された前記混合層および前記残留多孔質基材の重量目付、並びに、ΔH0およびΔH1の値を用いて、以下の式(1)に基づき、前記混合層中の耐熱性樹脂の含有量を算出した。
混合層中の耐熱性樹脂の含有量[g/m2]=(前記混合層および前記残留多孔質基材の重量目付[g/m2])×{1-(ΔH1/ΔH0)}・・式(1)
[圧縮弾性率および圧縮維持率]
実施例および比較例において製造されたセパレータの膜厚を、株式会社ミツトヨ製の高精度デジタル測長機(VL-50)を用いて測定した。
【0105】
前記セパレータを、1cm×1cmの大きさに切り取り、測定用サンプルとした。前記測定用サンプルを、圧縮試験機(MICRO COMPRESSION TESTER(島津製作所製))に付属する専用のステンレス(SUS)台座に貼り付け、当該圧縮試験機に設置した。
【0106】
続いて、前記圧縮試験機における圧縮部の先端50μm径の凸部を、前記測定用サンプルの表面に対して、負荷速度0.4462mN/secにて試験力(負荷圧力)が20mNに達するまで押し当てた。その後、除荷し、前記測定用サンプルを300秒間静置した。この一連の試験における前記測定用サンプルの膜厚の変位量と前記測定用サンプルへの負荷圧力とをプロットした。その結果得られたプロットに基づき、以下に示す方法によって、前記セパレータの圧縮弾性率および圧縮維持率を算出した。
【0107】
圧縮弾性率の測定:前記プロットでの変位量0μmから、最大の負荷圧力M1となる変位量Q1までの間の負荷圧力のプロットデータについてSLOPE関数にて傾きS1(MPa/μm)を算出した。ここから圧縮弾性率を式(6)にて算出した。
圧縮弾性率(MPa)=S1(MPa/μm)×前記セパレータの膜厚(μm)・・式(6)
圧縮維持率の測定:前記プロットでの最大の負荷圧力となる変位量Q1(μm)から、圧縮維持率を式(7)にて算出した。
圧縮維持率(%)={1-(Q1/前記セパレータの膜厚)}×100・・式(7)
[製造例1:アラミド樹脂の調製]
アラミド樹脂の一種である、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)を以下の方法によって合成した。合成用の容器としては、攪拌翼、温度計、窒素流入管および粉体添加口を有する、容量3Lのセパラブルフラスコを使用した。充分に乾燥させた前記セパラブルフラスコに、2200gのNMPを仕込んだ。この中に、151.07gの塩化カルシウム粉末を加え、100℃に昇温して完全に溶解させ、溶液Aを得た。前記塩化カルシウム粉末は、予め200℃にて2時間真空乾燥させたものを用いた。
【0108】
次に、溶液Aの液温を室温に戻して、68.23gのパラフェニレンジアミンを加え、完全に溶解させて、溶液Bを得た。溶液Bの温度を20℃±2℃に保ったまま、124.97gのテレフタル酸ジクロライドを、4分割して約10分おきに添加して溶液Cを得た。その後、溶液Cを、150rpmで攪拌を続けながら、温度を20℃±2℃に保ったまま1時間熟成させた。その結果、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)を6重量%含むアラミド重合液を得た。
【0109】
[製造例2:塗工液(1)の調製]
100gの前記アラミド重合液をフラスコに秤取し、6.0gのアルミナA(平均粒径:13nm)を加えて分散液A1を得た。分散液A1において、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)とアルミナAとの重量比は、1:1であった。次に、分散液A1に対して、固形分が4.5重量%となるようにNMPを加えて、240分間攪拌し、分散液B2を得た。ここで言う「固形分」とは、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)とアルミナAとの総重量のことである。次に、分散液B1に対して、0.73gの炭酸カルシウムを加えて240分間攪拌することにより、分散液B1を中和させた。中和された分散液B1を減圧下で脱泡して、スラリー状の塗工液(1)を調製した。
【0110】
[製造例3:塗工液(2)の調製]
100gの前記アラミド重合液をフラスコに秤取し、6.0gのアルミナA(平均粒径:13nm)および6.0gのアルミナB(平均粒径:640nm)を加えて分散液A2を得た。分散液A2において、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)、アルミナAおよびアルミナBの重量比は、1:1:1であった。次に、分散液A2に対して、固形分が6.0重量%となるようにNMPを加えて、240分間攪拌し、分散液B2を得た。ここで言う「固形分」とは、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)とアルミナAとアルミナBとの総重量のことである。次に、分散液B2に対して、0.73gの炭酸カルシウムを加えて240分間攪拌することにより、分散液B2を中和させた。中和された分散液B2を減圧下で脱泡して、スラリー状の塗工液(2)を調製した。
【0111】
[実施例1]
多孔質基材として、ポリエチレンからなるポリオレフィン多孔質フィルム(厚さ:10.5μm、透気度:92sec/100mL、重量目付:5.40g/m2)を使用した。塗工液(1)を、多孔質基材の片面上に、高圧バーにより前記多孔質基材に対して塗工バーの幅あたり327N/mの作用荷重を加えながら、クリアランス:0.05mm、塗工速度:20mm/minの条件にて塗布し、塗付物を得た。得られた塗布物を、50℃、相対湿度70%の雰囲気下で1分間静置して、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)を析出させた。次に、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)を析出させた塗布物をイオン交換水に浸漬させて、当該塗付物から塩化カルシウムおよび溶媒を除去した。次に、塩化カルシウムおよび溶媒が除去された塗布物を80℃で乾燥させて、非水電解液二次電池用セパレータ(1)を得た。
【0112】
[実施例2]
下記の(i)および(ii)以外は実施例1と同一の方法により、非水電解液二次電池用セパレータ(2)を得た。
(i)塗工液(1)の代わりに塗工液(2)を使用したこと。
(ii)塗工液の多孔質基材上への塗工を、高圧バーにより前記多孔質基材に対して塗工バーの幅あたり327N/mの作用荷重を加えながら、クリアランス:0.06mm、塗工速度:20mm/minの条件にて塗布して実施したこと。
【0113】
[実施例3]
下記の(iii)および(iv)以外は実施例1と同一の方法により、非水電解液二次電池用セパレータ(3)を得た。
(iii)塗工液(1)の代わりに塗工液(2)を使用したこと。
(iv)塗工液の多孔質基材上への塗工を、高圧バーにより前記多孔質基材に対して塗工バーの幅あたり327N/mの作用荷重を加えながら、クリアランス:0.08mm、塗工速度:20mm/minの条件にて塗布して実施したこと。
【0114】
[比較例1]
下記の(v)~(vii)以外は実施例1と同一の方法により、非水電解液二次電池用セパレータ(4)を得た。
(v)多孔質基材として、ポリエチレンからなるポリオレフィン多孔質フィルム(厚さ:10.8μm、透気度:91sec/100mL、重量目付:5.52g/m2)を使用したこと。
(vi)前記塗工液の前記多孔質基材上への塗工を、通常のバーを用いて、前記多孔質基材に対して塗工バーの幅あたり94N/mの作用荷重を加えながら、クリアランス:0.07mm、塗工速度:20mm/minの条件で実施したこと。
(vii)前記塗工を、前記多孔質基材における前記塗工液を塗布した面とは反対側の面をNMPに含浸させながら実施したこと。
【0115】
[比較例2]
下記の(viii)および(ix)以外は実施例1と同一の方法により、非水電解液二次電池用セパレータ(5)を得た。
(viii)多孔質基材として、ポリエチレンからなるポリオレフィン多孔質フィルム(厚さ:10.8μm、透気度:94sec/100mL、重量目付:5.56g/m2)を使用したこと。
(xi)前記塗工液の前記多孔質基材上への塗工を、手塗工用のバーコーダーを用いて、前記多孔質基材に対して実質的に作用荷重を加えることなく、クリアランス:0.05mm、塗工速度:5mm/minの条件で実施したこと。
【0116】
[結果]
実施例1~3及び比較例1、2で製造された非水電解液二次電池用セパレータ(1)~(5)の物性値等を、前述の方法によって測定した。その結果を、以下の表1に示す。
【0117】
【0118】
表1に記載のとおり、実施例1~3で製造された非水電解液二次電池用セパレータ(1)~(3)は、「混合層中の耐熱性樹脂の含有量」が0.2g/m2以上となっている。一方、比較例1、2で製造された非水電解液二次電池用セパレータ(4)、(5)は、「混合層中の耐熱性樹脂の含有量」が0.2g/m2未満となっている。また、非水電解液二次電池用セパレータ(1)~(3)は、非水電解液二次電池用セパレータ(4)、(5)と比較して、圧縮弾性率および圧縮維持率が共に大きな値となっており、耐圧縮性に優れることが分かった。
【0119】
以上、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータは、「混合層中の耐熱性樹脂の含有量」が0.2g/m2以上であることによって、耐圧縮性に優れることが分かった。
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータは、耐圧縮性に優れている。よって、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータは、電極の膨張・収縮に起因するセパレータの変形による電池性能の低下を抑制可能な非水電解液二次電池の製造に好適に利用することができる。