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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129186
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】加熱装置、定着装置、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20230907BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
G03G15/20 510
G03G15/00 550
G03G15/00 552
G03G15/00 551
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089587
(22)【出願日】2022-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2022032745
(32)【優先日】2022-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】足立 知哉
(72)【発明者】
【氏名】古市 祐介
(72)【発明者】
【氏名】染矢 幸通
【テーマコード(参考)】
2H033
2H171
【Fターム(参考)】
2H033AA02
2H033AA23
2H033BA11
2H033BA12
2H033BA25
2H033BA26
2H033BA27
2H033BA31
2H033BA32
2H033BA37
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB18
2H033BB21
2H033BB22
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB34
2H033BB38
2H033BE00
2H033CA07
2H171FA19
2H171FA30
2H171GA08
2H171JA23
2H171JA27
2H171JA29
2H171JA31
2H171QA04
2H171QA08
2H171QA24
2H171QB03
2H171QB14
2H171QB32
2H171QB52
2H171QC03
2H171QC22
2H171QC37
2H171SA11
2H171SA14
2H171SA22
2H171SA26
2H171SA31
2H171TA02
2H171TA12
2H171TA15
2H171TA17
2H171UA03
2H171UA05
2H171UA07
2H171UA12
2H171UA16
2H171UA20
2H171UA22
2H171VA02
2H171VA04
2H171VA06
2H171XA02
2H171XA03
2H171XA16
(57)【要約】
【課題】回転部材と加熱体との間の良好な摺動状態を形成することを課題とする。
【解決手段】定着ベルト20と、定着ベルト20との間に定着ニップN2を形成する加圧ローラ21と、ヒータ22と、ヒータホルダ23と、ヒータ22の定着ベルト20に対する摺動面32aもしくは定着ベルト20の内面に塗布されるグリース90と、を備えた定着装置9であって、ヒータ22と定着ベルト20の内面とにより形成するニップ部を摺動ニップN1とすると、抵抗発熱体31は用紙搬送方向の摺動ニップN1内に設けられ、用紙搬送方向の摺動ニップN1の外側であって、定着ベルト20とヒータ22との間にグリース90を保持するグリース溜まり40が設けられ、グリース90の塗布量をP、定着ベルト20内面の凹凸高さをA、定着ベルト20の長手方向の幅をX1、定着ベルト20の周長をB、グリース90の比重をC、グリース溜まり40の体積をDとすると、以下の式を満たすことを特徴とする。A×X1×B×C≦P≦D×C
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部材と、
前記回転部材との間に外面ニップ部を形成する加圧部材と、
前記回転部材の内側に設けられ、基材と抵抗発熱体とを有する加熱体と、
前記加熱体を保持する凹部を有する保持部材と、
前記加熱体の前記回転部材に対する摺動面もしくは前記回転部材の内面に塗布される潤滑剤と、を備えた加熱装置であって、
前記加熱体と前記回転部材の内面とにより形成するニップ部を摺動ニップとすると、
前記抵抗発熱体は記録媒体搬送方向の前記摺動ニップ内に設けられ、
前記記録媒体搬送方向の前記摺動ニップの外側であって、前記回転部材と前記加熱体との間に前記潤滑剤を保持する潤滑剤保持領域が設けられ、
前記潤滑剤の塗布量をP、前記回転部材内面の凹凸高さをA、前記回転部材の長手方向の幅をX1、前記回転部材の周長をB、潤滑剤の比重をC、前記潤滑剤保持領域の体積をDとすると、以下の式を満たすことを特徴とする加熱装置。
A×X1×B×C≦P≦D×C
【請求項2】
前記潤滑剤がフッ素グリースである請求項1記載の加熱装置。
【請求項3】
前記回転部材は弾性層を有する請求項1記載の加熱装置。
【請求項4】
前記回転部材の外径が前記加圧部材の外径よりも大きい請求項1記載の加熱装置。
【請求項5】
前記加熱体の前記回転部材側の表面粗さが0.05μm以下である請求項1記載の加熱装置。
【請求項6】
前記回転部材の内面の表面粗さが0.5μm以下である請求項1記載の加熱装置。
【請求項7】
請求項1から6いずれか1項に記載の加熱装置により、記録媒体上の熱を加熱して定着させる定着装置。
【請求項8】
請求項7記載の定着装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置に設けられる定着装置として、回転する無端状の定着ベルト(回転部材)の内面に設けられた面状のヒータ(加熱体)により定着ベルトを加熱する構成のものが存在する。そして、このような定着装置には、定着ベルトとヒータとの摺動抵抗を低減するための潤滑剤が定着ベルトの内面に塗布される。
【0003】
このような定着装置では、定着ベルトとヒータとの間に適量の潤滑剤を介在させ、定着ベルトの摩耗の抑制および加圧ローラの駆動トルクを適正な値に保持することが求められる。
【0004】
例えば特許文献1(特開2010-204587号公報)の定着装置では、定着ベルト内周面の軸方向中央部に粗面部を形成する。これにより、定着ベルトの潤滑剤を保持する能力を向上させている。
【0005】
しかし、特許文献1のような構成であっても、潤滑剤の塗布量や加熱体や、加熱体を保持する保持部材の構造によっては、回転部材と加熱体との間に適切な潤滑剤を保持することができない場合があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
回転部材と加熱体との間の良好な摺動状態を形成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、回転部材と、前記回転部材との間にニップ部を形成する加圧部材と、前記回転部材の内側に設けられ、基材と抵抗発熱体とを有する加熱体と、前記加熱体を保持する凹部を有する保持部材と、前記加熱体の前記回転部材に対する摺動面もしくは前記回転部材の内面に塗布される潤滑剤と、を備えた加熱装置であって、前記加熱体と前記回転部材の内面とにより形成するニップ部を摺動ニップとすると、前記抵抗発熱体は記録媒体搬送方向の前記摺動ニップ内に設けられ、前記記録媒体搬送方向の前記摺動ニップの外側であって、前記回転部材と前記加熱体との間に前記潤滑剤を保持する潤滑剤保持領域が設けられ、前記潤滑剤の塗布量をP、前記回転部材内面の凹凸高さをA、前記回転部材の長手方向の幅をX1、前記回転部材の周長をB、潤滑剤の比重をC、前記潤滑剤保持領域の体積をDとすると、以下の式を満たすことを特徴とする。A×X1×B×C≦P≦D×C
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回転部材と加熱体との間の良好な摺動状態を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】画像形成装置の概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
図3】ヒータの平面図である。
図4】ヒータへの電力供給を示す図である。
図5図3と抵抗発熱体の形状が異なるヒータの平面図である。
図6図3図5と抵抗発熱体の形状が異なるヒータの平面図である。
図7図3図5図6と抵抗発熱体の形状が異なるヒータの平面図である。
図8】ヒータと第1高熱伝導部材の長手方向の幅を示す図である。
図9】摺動ニップおよび定着ニップを示す定着装置の断面図である。
図10】摺動ニップおよび定着ニップの関係を示す図である。
図11】定着ベルトの配列方向の温度分布を示す図で、(a)図がヒータの平面図、(b)図が定着ベルトの温度分布を示す図である。
図12図5のヒータの分割領域を示す図である。
図13図12と異なる形状の分割領域を示す図である。
図14図6のヒータの分割領域を示す図である。
図15】ヒータ、第1高熱伝導部材、ヒータホルダの斜視図である。
図16】第1高熱伝導部材の配置を示すヒータの平面図である。
図17】第1高熱伝導部材の配置の異なる例を示すヒータの平面図である。
図18】第1高熱伝導部材の配置のさらに異なる例を示すヒータの平面図である。
図19図2とは異なる実施形態の定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
図20】ヒータ、第1高熱伝導部材、第2高熱伝導部材、ヒータホルダの斜視図である。
図21】第1高熱伝導部材および第2高熱伝導部材の配置を示すヒータの平面図である。
図22】第1高熱伝導部材および第2高熱伝導部材の異なる配置の例を示すヒータの平面図である。
図23】グラフェンの原子結晶構造を示す図である。
図24】グラファイトの原子結晶構造を示す図である。
図25図21と第2高熱伝導部材の配置が異なるヒータを示す平面図である。
図26図2図19とは異なる実施形態の定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
図27】上記と異なる定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
図28図1と異なる画像形成装置の概略構成図である。
図29】本発明の一実施形態に係る定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
図30図29の定着装置におけるヒータの平面図である。
図31】ヒータおよびヒータホルダの斜視図である。
図32】ヒータに対するコネクタの取付状態を示す斜視図である。
図33】サーミスタとサーモスタットの配置を示す図である。
図34】フランジの溝部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0011】
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。本実施形態の画像形成装置は、本発明の加熱装置の一態様として、用紙上のトナー画像を用紙に定着させる定着装置を有する。
【0012】
図1に示す画像形成装置100は、画像形成装置本体に対して着脱可能な4つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkを備える。各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。これらの色の現像剤は、カラー画像の色分解成分に対応する。各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、像担持体としてのドラム状の感光体2と、帯電装置3と、現像装置4と、クリーニング装置5とを備える 。帯電装置3は感光体2の表面を帯電する。現像装置4は、感光体2の表面に現像剤としてのトナーを供給してトナー画像を形成する。クリーニング装置5は感光体2の表面をクリーニングする。
【0013】
また、画像形成装置100は、露光装置6と、給紙装置7と、転写装置8と、加熱装置としての定着装置9と、排紙装置10とを備える。露光装置6は、各感光体2の表面を露光し、その表面に静電潜像を形成する。給紙装置7は、記録媒体としての用紙Pを用紙搬送路14に供給する。転写装置8は各感光体2に形成されたトナー画像を用紙Pに転写する。定着装置9は用紙Pに転写されたトナー画像を用紙P表面に定着させる。排紙装置10は用紙Pを装置外に排出する。各作像ユニット1、感光体2、帯電装置3、露光装置6、転写装置8などは、用紙に画像を形成するための画像形成手段を構成している。
【0014】
転写装置8は、中間転写体としての無端状の中間転写ベルト11と、一次転写部材としての4つの一次転写ローラ12と、二次転写部材としての二次転写ローラ13とを有する。中間転写ベルト11は複数のローラによって張架される。一次転写ローラ12は各感光体2上のトナー画像を中間転写ベルト11へ転写する。二次転写ローラ13は中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像を用紙Pへ転写する。複数の一次転写ローラ12は、それぞれ、中間転写ベルト11を介して感光体2に接触している。これにより、中間転写ベルト11と各感光体2とが互いに接触し、これらの間に一次転写ニップが形成される。一方、二次転写ローラ13は、中間転写ベルト11を介して中間転写ベルト11を張架するローラの1つに接触している。これにより、二次転写ローラ13と中間転写ベルト11との間には二次転写ニップが形成されている。
【0015】
また、用紙搬送路14における給紙装置7から二次転写ニップ(二次転写ローラ13)に至るまでの途中には、一対のタイミングローラ15が設けられている。
【0016】
次に、図1を参照して上記画像形成装置の印刷動作について説明する。
【0017】
印刷動作開始の指示があると、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkにおいては、感光体2が図1の時計回りに回転駆動され、帯電装置3によって感光体2の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント情報に基づいて、露光装置6が各感光体2の表面を露光する。これにより、露光された部分の電位が低下して静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置4からトナーが供給され、各感光体2上にトナー画像が形成される。
【0018】
各感光体2上に形成されたトナー画像は、各感光体2の回転に伴って回転し、一次転写ニップ(一次転写ローラ12の位置)に達する。そしてトナー画像は、図1の反時計回りに回転駆動する中間転写ベルト11に順次重なり合うように転写される。そして、中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト11の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ13の位置)へ搬送される。トナー画像は、二次転写ニップにおいて搬送されてきた用紙Pに転写される。この用紙Pは、給紙装置7から供給されたものである。給紙装置7から供給された用紙Pは、タイミングローラ15によって一旦停止された後、中間転写ベルト11上のトナー画像が二次転写ニップに至るタイミングに合わせて二次転写ニップへ搬送される。かくして、用紙P上にフルカラーのトナー画像が担持される。また、トナー画像が転写された後、各感光体2上に残留するトナーは各クリーニング装置5によって除去される。
【0019】
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置9へと搬送され、定着装置9によって用紙Pにトナー画像が定着される。その後、用紙Pは排紙装置10によって装置外に排出されて、一連の印刷動作が完了する。
【0020】
続いて、定着装置の構成について説明する。
【0021】
図2に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、定着ベルト20と、加圧ローラ21と、加熱体としてのヒータ22と、保持部材としてのヒータホルダ23と、支持部材としてのステー24と、温度検知部材としてのサーミスタ25と、第1高熱伝導部材28等を備えている。定着ベルト20は無端状のベルトからなる。加圧ローラ21は定着ベルト20の外周面に接触して、定着ベルト20との間に、外面ニップ部としての定着ニップN2を形成する。ヒータ22は定着ベルト20を加熱する。ヒータホルダ23はヒータ22を保持する。ステー24はヒータホルダ23を支持する。サーミスタ25は第1高熱伝導部材28の温度を検知する。
【0022】
図2の紙面に直交する方向は定着ベルト20、加圧部材としての加圧ローラ21、ヒータ22、ヒータホルダ23、ステー24、第1高熱伝導部材28等の長手方向であり、以下、この方向を単に長手方向と呼ぶ。なお、この長手方向は搬送される用紙の幅方向、定着ベルト20のベルト幅方向、そして、加圧ローラ21の軸方向でもある。定着装置に設けられる定着部材は、本発明の加熱装置に設けられる回転部材の一態様である。本実施形態の定着装置9には、この定着部材の具体例として定着ベルト20が設けられる。図2に示す矢印Aが用紙搬送方向(記録媒体搬送方向)である。
【0023】
定着ベルト20は、例えば外径が25mmで厚みが50~75μmのポリイミド(PI)製の筒状基体を有している。定着ベルト20の最表層には、耐久性を高めて離型性を確保するために、PFAやPTFE等のフッ素系樹脂による厚みが7~20μmの離型層が形成される。基体と離型層の間に厚さ100~300μmのゴム等からなる弾性層を設けてもよい。また、定着ベルト20の基体はポリイミドに限らず、PEEKなどの耐熱性樹脂やニッケル(Ni)、SUSなどの金属基体であってもよい。定着ベルト20の内周面に摺動層としてポリイミドやPTFEなどをコートしてもよい。
【0024】
加圧ローラ21は、例えば外径が20~22mmである。加圧ローラ21は、その内側から、芯金21aと、弾性層21bと、表層21cとを有する。中実の芯金21aは導電性材料により形成され、本実施形態では鉄製である。弾性層21bは非導電性材料により形成され、本実施形態では厚みが3.5~4.0mmのシリコーンゴムで形成される。弾性層21bを非導電層とすることで、弾性層21bに導電性を付与するためのフィラーなどの材料を添加する必要がなく、その弾性や伸縮性を確保できる。表層21cは厚さ30~50μmのフッ素樹脂により形成される。
【0025】
加圧ローラ21が付勢手段によって定着ベルト20側へ付勢されることで、加圧ローラ21は定着ベルト20を介してヒータ22に圧接される。これにより、定着ベルト20と加圧ローラ21との間に定着ニップN2が形成される。また、加圧ローラ21は駆動手段によって回転駆動されるように構成されており、加圧ローラ21が図2の矢印方向に回転すると、これに伴って定着ベルト20が従動回転する。
【0026】
ヒータ22は、定着ベルト20の幅方向に渡って長手状に設けられた面状の加熱部材である。ヒータ22は、板状の基材30と、基材30上に設けられた抵抗発熱体31と、抵抗発熱体31を被覆する絶縁層32等で構成されている。また、ヒータ22は、絶縁層32側で定着ベルト20の内周面に対して接触しており、抵抗発熱体31から発された熱は、絶縁層32を介して定着ベルト20へと伝達される。ただし、ヒータ22の定着ベルト20の内周面に対する接触とは、摺動シートなどの導電性部材を介した接触であってもよい。ヒータ22に対して電源200(図4参照)からAC電圧を印加することにより、主に抵抗発熱体31が発熱する。本実施形態では、抵抗発熱体31や絶縁層32が基材30の定着ベルト20側(定着ニップN2側)に設けられているが、反対に、抵抗発熱体31や絶縁層32を基材30のヒータホルダ23側に設けてもよい。その場合、抵抗発熱体31の熱が基材30を介して定着ベルト20に伝達されることになるため、基材30は窒化アルミニウムなどの熱伝導率の高い材料で構成されることが望ましい。また、基材30を熱伝導率の高い材料で構成することで、抵抗発熱体31を基材30の定着ベルト20側とは反対側に配置しても、定着ベルト20を十分に加熱することが可能である。
【0027】
ヒータホルダ23およびステー24は、定着ベルト20の内周側に配置されている。ステー24は、金属製のチャンネル材で構成され、その両端部分が定着装置9の両側板に支持されている。ステー24によってヒータホルダ23およびヒータ22が支持されることで、加圧ローラ21が定着ベルト20に加圧された状態で、ヒータ22が加圧ローラ21の押圧力を確実に受けとめることができる。これにより、定着ベルト20と加圧ローラ21との間に定着ニップN2を安定的に形成される。本実施形態では、ヒータホルダ23の熱伝導率は基材30よりも小さく設けられる。
【0028】
ヒータホルダ23は、ヒータ22の熱によって高温になりやすいため、耐熱性の材料で形成されることが望ましい。例えば、ヒータホルダ23をLCPなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂で形成した場合は、ヒータ22からヒータホルダ23への伝熱が抑制される。これにより、ヒータ22が効率的に定着ベルト20を加熱することができる。
【0029】
また、ヒータホルダ23には、定着ベルト20をガイドするガイド部26が設けられている。ガイド部26は、ヒータ22のベルト回転方向の上流側(図2におけるヒータ22の下側)と下流側(図2におけるヒータ22の上側)とにそれぞれ設けられている。また、上流側と下流側のガイド部26は、ヒータ22の長手方向に渡って間隔をあけて複数配置されている。各ガイド部26は、略扇型に形成されており、定着ベルト20の内周面に対向するようにベルト周方向に延在する円弧状又は凸曲面状のベルト対向面260を有する。
【0030】
ヒータホルダ23は長手方向に複数の開口部23aを有する。開口部23aはヒータホルダ23の厚み方向に貫通した開口部である。この開口部23aに、サーミスタ25や後述するサーモスタットが設けられる。これらのサーミスタ25やサーモスタットは、バネ29により加圧されて第1高熱伝導部材28の裏面に押し当てられている。ただし、第1高熱伝導部材28(および後述する第2高熱伝導部材)にも同様に開口部を設け、サーミスタ25やサーモスタットが基材30の裏面に押し当てられる構成としてもよい。
【0031】
第1高熱伝導部材28は基材30よりも熱伝導率の高い部材により構成される。本実施形態では、第1高熱伝導部材28は板状のアルミニウムにより構成される。その他、例えば銅や銀、グラフェン、グラファイトにより第1高熱伝導部材28を構成してもよい。第1高熱伝導部材28を板状とすることにより、ヒータホルダ23や第1高熱伝導部材28に対するヒータ22の位置精度を向上させることができる。
【0032】
次に、上記の熱伝導率の算出方法について説明する。熱伝導率を算出する際には、まず、対象の物体の熱拡散率を測定し、この熱拡散率を用いて熱伝導率を算出する。
【0033】
熱拡散率の計測は、熱拡散率・熱伝導率測定装置(商品名:ai-Phase Mobile 1u、株式会社アイフェイズ性)を用いた。
【0034】
上記熱拡散率を熱伝導率に換算するためには、密度と比熱容量の値が必要である。 密度の計測には、乾式自動密度計(商品名:Accupyc 1330、株式会社島津製作所製)を用いた。 また、比熱容量の計は、示差走査型熱量測定装置(商品名:商品名:DSC-60 株式会社島津製作所製)を用い、比熱容量が既知の基準物質としてサファイアを用いて測定した。本実施例では比熱容量測定を5回行い、50℃における平均値を用いた。密度および比熱容量をそれぞれρ、Cとすると、上記熱拡散率測定で得られた熱拡散率αとから、熱伝導率λは、以下の式(1)により得ることができる。
λ=ρ×C×α・・・(1)
【0035】
本実施形態に係る定着装置9において、印刷動作が開始されると、加圧ローラ21が回転駆動され、定着ベルト20が従動回転を開始する。このとき、定着ベルト20の内周面がガイド部26のベルト対向面260に接触してガイドされることで、定着ベルト20は安定してかつ円滑に回転する。また、ヒータ22の抵抗発熱体31に電力が供給されることで、定着ベルト20が加熱される。そして、定着ベルト20の温度が所定の目標温度(定着温度)に到達した状態で、図2に示すように、未定着トナー画 像が担持された用紙Pが、定着ベルト20と加圧ローラ21との間(定着ニップN2)に搬送されることで、未定着トナー画像が加熱および加圧されて用紙Pに定着される。定着ベルト20はヒータ22に加熱される被加熱部材である。
【0036】
次に、定着装置に設けられたヒータの構成について詳細に説明する。
【0037】
図3は、本実施形態に係るヒータの平面図である。
【0038】
図3に示すように、板状の基材30の表面には、複数(4つ)の抵抗発熱体31と、導電体としての給電線33A、33Bと、第1電極部34Aおよび第2電極部34Bとが設けられる。ただし、抵抗発熱体31の数は本実施形態に限らない。
【0039】
なお、図3の左右方向Xは前述のヒータ22等の長手方向であり、複数の抵抗発熱体31の配列方向でもある。この配列方向は定着ベルト20の長手方向や加圧ローラ21の軸方向と同じ方向である。また、図3の上下方向Yは用紙搬送方向(記録媒体搬送方向)である。また上下方向Yはヒータ22の短手方向であり、抵抗発熱体31の配列方向に交差する方向(本実施形態では垂直な方向)で、基材30の厚み方向と異なる方向である。以下、この左右方向Xを単に長手方向、上下方向Yを単に短手方向とも呼ぶ。
【0040】
複数の抵抗発熱体31によって、長手方向に複数に分割された発熱部35が構成されている。各抵抗発熱体31は、基材30の長手方向一方側端部(図3の左端)に設けられた一対の電極部34A、34Bに対して、給電線33A,33Bを介して電気的に並列に接続されている。給電線33A,33Bは、抵抗発熱体31よりも抵抗値の小さい導体で構成されている。互いに隣り合う抵抗発熱体31同士の隙間は、抵抗発熱体31間の絶縁性を確保する観点から、0.2mm以上が好ましく、0.4mm以上がさらに好ましい。また、互いに隣り合う抵抗発熱体31同士の隙間は、大きすぎると、その隙間の部分で温度低下が生じやすくなる。このため、長手方向に渡る温度ムラを抑制する観点から、上記隙間は5mm以下が好ましく、1mm以下がさらに好ましい。
【0041】
抵抗発熱体31は、PTC(正の温度抵抗係数)特性を有する材料で構成されており、温度が上昇すると抵抗値が上昇(ヒータ出力が低下)する特徴がある。抵抗発熱体31の温度抵抗係数は例えば500ppmに設定される。
【0042】
抵抗発熱体31がPTC特性を有する こと、および、長手方向に分割された発熱部35の構成により、小サイズ用紙を通紙時の定着ベルト20の過昇温を防止できる。つまり、発熱部35の全体幅よりも幅の小さい用紙を通紙した場合、紙幅より外側の領域では用紙によって定着ベルト20の熱が奪われないため、その部分に相当する抵抗発熱体31の温度が上昇する。抵抗発熱体31にかかる電圧は一定なので、紙幅より外側の抵抗発熱体31の温度が上昇し、その抵抗値が上昇すると、反対に出力(発熱量)が相対的に低下し、端部温度上昇が抑制される。また、複数の抵抗発熱体31が電気的に並列接続されていることで、印刷スピードを維持したまま非通紙部温度上昇を抑制することができる。なお、発熱部35を構成する発熱体は、PTC特性を有する抵抗発熱体以外のものであってもよい。また、抵抗発熱体は、ヒータ22の短手方向に複数列に配置されていてもよい。
【0043】
抵抗発熱体31は、例えば、銀パラジウム(AgPd)やガラス粉末などを調合したペーストをスクリーン印刷等により基材30に塗工し、その後、当該基材30を焼成することによって形成することができる。本実施形態では、抵抗発熱体31の抵抗値を常温で80Ωとしている。抵抗発熱体31の材料は、前述したもの以外に、銀合金(AgPt)や酸化ルテニウム(RuO)の抵抗材料を用いてもよい。給電線33や電極部34の材料は、銀(Ag)もしくは銀パラジウム(AgPd)をスクリーン印刷等で形成することができる。給電線33は、抵抗発熱体31よりも小さい抵抗値の導体で構成されている。
【0044】
基材30の材料としては、耐熱性および絶縁性に優れるアルミナや窒化アルミニウムなどのセラミックや、ガラス、マイカなどの非金属材料が好ましい。本実施形態では、短手方向の幅8mm、長手方向の幅270mm、厚さ1.0mmのアルミナ基材を使用している。他に、金属などの導電材料に絶縁性材料を積層したもので、基材30を構成してもよい。基材30の金属材料としては、アルミニウムやステンレスなどが低コストで好ましい。基材30をステンレス板により構成することで、熱応力による割れを抑制できる。また、ヒータ22の均熱性を向上し画像品位を高めるために、基材30を銅、グラファイト、グラフェンなどの高熱伝導率の材料で構成してもよい。
【0045】
絶縁層32は、例えば厚さ75μmの耐熱性ガラスで構成される。絶縁層32によって抵抗発熱体31と給電線33とを被覆し、これらを絶縁・保護すると共に、定着ベルト20との摺動性を維持する。
【0046】
図4は、本実施形態に係るヒータへの電力供給回路を示す図である。
【0047】
図4に示すように、本実施形態では、各抵抗発熱体31に電力を供給するための電力供給回路が、交流電源200とヒータ22の電極部34A,34Bとを電気的に接続することで構成されている。また、電力供給回路には、供給電力量を制御するトライアック210が設けられている。各抵抗発熱体31への供給電力量は、サーミスタ25の検知温度に基づいて制御部220がトライアック210を介して制御する。制御部220は、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェース等を包含するマイクロコンピュータで構成される。
【0048】
本実施形態では、サーミスタ25が、最小通紙幅内であるヒータ22の長手方向中央領域と、ヒータ22の長手方向一端部側とに、それぞれ配置されている。さらに、ヒータ22の長手方向一端部側には、抵抗発熱体31の温度が所定温度以上となった場合に、抵抗発熱体31への電力供給を遮断する電力遮断手段としてのサーモスタット27が配置されている。サーミスタ25およびサーモスタット27は、第1高熱伝導部材28に接触してその温度を検知する。
【0049】
本実施形態では、第1電極部34Aおよび第2電極部34Bが長手方向の同じ側に設けられるが、それぞれ異なる側に設けられていてもよい。また抵抗発熱体31は、本実施形態の形状に限らない。図5に示すように、抵抗発熱体31は長方形状であってもよいし、図6に示すように、抵抗発熱体31が線状部からなり、この線状部を折り返して略平行四辺形状をなす構成であってもよい。また図5に示すように、ブロック状の抵抗発熱体31の部分から給電線33の側に伸びる部分(短手方向に伸びる部分)は、抵抗発熱体31の一部であってもよいし、給電線33と同じ材料により構成されていてもよい。
【0050】
また抵抗発熱体31が長手方向に分割されない構成のヒータ22であってもよい。例えば図7に示すように、長手方向に延在する二本の抵抗発熱体31が直列に接続される構成であってもよい。二本の抵抗発熱体31は、長手方向一方側で、それぞれ給電線33A、33Bを介して電極部34A、34Bに接続される。また二本の抵抗発熱体31は、長手方向他方側で給電線33Cを介して直列に接続されている。
【0051】
以下の説明では、一例として、図7のヒータ22を用いた場合について説明する。このヒータ22の短手方向Yの寸法は、基材30の寸法8.0mm、各抵抗発熱体31の短手方向の寸法1.5mm、抵抗発熱体31同士の間隔0.8mmで、ヒータ22の加熱領域の短手方向の幅Y2が3.8mmに設定される。このヒータ22の加熱領域とは、ヒータ22の主たる発熱領域のことであり、ヒータ22内の抵抗発熱体31が設けられる領域のことである。ただし、この加熱領域には抵抗発熱体31同士の隙間も含まれる。
【0052】
また図8に示すように、ヒータの加熱領域の長手方向の幅X2は216mmに設定される。第1高熱伝導部材28は、その厚みが0.3mm、長手方向の長さX3が222mm、短手方向の幅が10mmに設定される。第1高熱伝導部材28の長手方向の幅X3はヒータの加熱領域の長手方向の幅X2よりも大きく設けられる。これにより、ヒータ22の抵抗発熱体31が局所的に過昇温してヒータ22に割れが生じるのを防止できる。
【0053】
図9に示すように、定着ベルト20は、図9の左右方向である用紙搬送方向にわたって加圧ローラ21に当接し、定着ニップN2を形成している。また定着ベルト20の内周面はヒータ22と用紙搬送方向にわたって当接し、摺動ニップN1を形成している。
【0054】
摺動ニップN1はヒータ22と定着ベルト20との摺動面が一定のニップ圧で摺接する部分を言う。具体的な摺動ニップの測定方法としては、ヒータ22の表面に新明丹N-RED(株式会社ナカタニ製)を塗布し、定着装置9を加圧状態にする。 そのまま、定着ベルト20の表面温度を190℃に設定し、定着装置9を10分間駆動する。その後、定着装置9を分解し、ヒータ22の表面を見ると、新明丹が剥がれる部分を観察することができる。これを写真に撮影し、既知であるヒータ22の短手方向の幅を用いて、新明丹が剥がれた部分を測定し、摺動ニップN1とする。
【0055】
本実施形態の摺動ニップN1の短手方向の幅は5.1mmであり、一方、誤差を考慮した定着ニップN2の下限値は6.5mmである。摺動ニップN1はその幅が加熱領域の短手方向の幅Y2よりも大きく、かつ、加熱領域が摺動ニップN1の内側に設けられる。つまり、抵抗発熱体31が摺動ニップN1内に設けられる。より詳細には、摺動ニップN1の幅と加熱領域の短手方向の幅Y2の幅の差が1.3mmあり、ヒータ22や定着ベルト20、加圧ローラ21、そして、ヒータ22における抵抗発熱体31の部品の寸法誤差、取付の誤差約0.6mmを考慮しても加熱領域は摺動ニップN1内に設けられる。
【0056】
また定着ベルト20の異なる構成として、定着ベルト20の外径が25mm、厚み40μmのニッケル製の基体に、厚み120μmのシリコーンゴムによる弾性層、最表層には厚み7μmのPFAによる離型層を有する構成を採用することもできる。この構成では、定着ニップN2の下限値を7.0mmに広げることで、摺動ニップN1内に抵抗発熱体31を配置できる。
【0057】
以上のようなヒータ22を備えた定着装置では、定着ベルト20の回転により定着ベルト20の内周面とヒータ22の絶縁層32との摺動抵抗やこの摺動による定着ベルト20の摩耗を抑制するために、定着ベルト20の内周面あるいは絶縁層32の定着ベルト20との摺動面32aに潤滑剤が塗布される。本実施形態では、潤滑剤としてフッ素グリース(以下、単にグリースとも呼ぶ)が用いられる。
【0058】
本実施形態では、ヒータ22がヒータホルダ23の凹部23bに保持される。ヒータホルダ23は、その用紙搬送方向両側に突出部23eを有する。突出部23eは、凹部23b内に保持されたヒータ22の絶縁層32よりも定着ベルト20側に突出し、定着ベルト20の内面に摺接している。
【0059】
加圧ローラ21によって加圧された定着ベルト20は、絶縁層32の摺動面32a側へ押圧される。これにより、ヒータ22の短手方向(図9の左右方向)の中央側で、絶縁層32の摺動面32aに対して定着ベルト20の内面が当接し、摺動ニップN1が形成される。一方、絶縁層32の短手方向両端部側では、絶縁層32の摺動面32aと定着ベルト20の内周面との間に、潤滑剤保持領域としてのグリース溜まり40が形成される。このグリース溜まり40にグリースが溜められ、特に本実施形態では、グリース溜まり40の摺動ニップN1側にグリース90が溜められている。このグリース溜まり40に溜まったグリース90が摺動ニップN1へ少しずつ供給されることで、絶縁層32の摺動面32aと定着ベルト20の内周面との間の良好な摺動性能を長期にわたって保持することができる。
【0060】
定着ベルト20の内周面とヒータ22の絶縁層32との良好な摺動状態を形成するために、定着ベルト20とヒータ22の摺動面同士の間に介在するグリースの量やグリースの粘度を適切な値に保つことが必要である。つまり、介在するグリースの量が少ないと良好な摺動状態を形成できないが、一方でグリースの量が多すぎると、グリースの膜厚が大きくなりすぎて摺動負荷が大きくなってしまったり、定着ベルト20の端部からのグリースの漏れが多くなってしまう。グリースの粘度が高すぎても低すぎても良好な摺動状態を形成することができない。また、グリースを保持する定着ベルト20およびヒータ22の摺動面の表面粗さによっても摺動面のグリース保持能力が変化する。
【0061】
本実施形態では、ヒータ22の絶縁層32はガラスで形成されており、その表面は平滑で、絶縁層32の抵抗発熱体31等が設けられていない部分の表面粗さがRa0.03μm程度である。本実施形態のように絶縁層32の摺動面が平滑な場合には、定着ベルト20の内周面の凹凸がグリースの保持能力に大きく影響する。特に、定着ベルト20の内周面の凹部にフッ素グリースの増ちょう剤であるPTFEを保持することで、経時にわたって摺動ニップN1にフッ素グリースの基油が供給され、油膜切れを防止できる。
【0062】
そこで本実施形態では、定着ベルト20の内周面の凹部を埋められるだけのグリースを供給する。具体的には、定着ベルト20の内周面の凹凸高さをA、定着ベルト20の長手方向の幅をX1、定着ベルト20の周長をB、グリースの比重をCとすると、グリースのヒータ22の裏面側への回り込みやヒータホルダ23への付着も考慮して、グリースの塗布量Pは以下の式(2)を満たすように設定される。
A×X1×B×C≦P・・・(2)
【0063】
ここで、定着ベルト20の内周面の凹凸高さAはレーザ顕微鏡(キーエンス製VKシリーズ)を用いて表面プロファイルを測定し、ピークピーク値の10点平均を算出することで求められる。この10点平均とは、定着ベルト20の内周面の10点、例えば定着ベルト20の長手方向の中央位置、中央位置から±50mm、中央位置から±100mmの位置で周方向にそれぞれ2点ずつ測定し、これらのピークピーク値の10点を平均して算出される。具体的に本実施形態では、凹凸高さが1.67μmであった。
【0064】
また本実施形態の定着ベルト20は、外径が25mm、基体が60μm、シリコーンゴムによる弾性層が250μm、PFAによる離型層が12μmで形成される。そして、定着ベルト20の長手方向の幅X1が234mm、内周長Bが76.5mmで設けられ、定着ベルト20の内周面全体の面積は、234×76.5=17901mmである。さらに、フッ素グリースの比重Cは2.0kg/mである。
【0065】
以上の数値を用いて、式(2)より、グリースの塗布量Pが約0.06g以上となる。これにより、定着ベルト20の内周面凹部、特にグリース溜まりにグリースを保持させることができ、絶縁層32の摺動面32aと定着ベルト20の内周面との間に経時で適切量のグリースを供給でき、油膜切れを防止できる。
【0066】
また塗布量Pは、摺動ニップN1の上下流に形成されるグリース溜まりの体積以下に設定する。このグリース溜まりの空間体積よりも多いグリースを塗布すると、定着ベルト20の端部からのグリースの漏れやグリースの過多による摺動抵抗の増加が問題になる。このグリース溜まりは、定着ベルト20の内周面と絶縁層32の摺動面32aとの間であって、摺動ニップN1の外側に形成された図9の幅Y1で示す空間のことである。
【0067】
摺動ニップN1の外側のグリース溜まりの用紙搬送方向の幅をY1、ヒータホルダ23の突出部23eの絶縁層32の摺動面32aからの突出量をZ1とすると、グリースの塗布量Pは以下の式(3)を満たすように設定される。式(3)の幅Y1×2、突出量Z1、定着ベルト20の長手方向の幅X1の積がグリース溜まりの体積Dmである。
P≦Y1×2×Z1×X1×C・・・(3)
【0068】
前述のように摺動ニップN1の幅が5.1mmでヒータ22の短手方向の幅が8.0mmであるから、幅Y1×2は2.9mmである。突出部23eの高さが1.57mmであるのに対して、第1高熱伝導部材28の厚みが0.3mm、ヒータ22の厚みが1.07mmであるから、突出量Z1は0.2mmである。定着ベルト20の長手方向の幅X1は234mmである。以上により、式(3)よりグリース溜まりの体積Dは、2.9×0.2×234=135.72mmとなる。これにグリースの比重を掛けて、0.271gとなる。塗布量Pを0.271g以下とすることで、定着ベルト20の端部からのグリースの漏れを抑制したり、駆動開始時の初期トルクの増加による定着ベルト20のスリップを防止できる。
【0069】
ここで、高さZ1の算出方向の一例を説明する。
まず、定着装置9内のヒータ22および第1高熱伝導部材28を取り出す。この状態で、加圧ローラ21による加圧状態で凹部23bの底面から突出部23eの定着ベルト20側に最も突出している頂点までの高さをハイトゲージで測定する。この際、凹部23bの底面の測定箇所が床面に対して水平になるように配置して測定を行う。この際、凹部23bの用紙搬送方向上流側下流側それぞれで高さを測定し、その平均値を算出する。この値から、同じく測定したヒータ22および第1高熱伝導部材28の厚みを差し引くことで、高さZ1を算出できる。
【0070】
また、摺動ニップN1内に抵抗発熱体31を収めることで、摺動ニップN1外のグリース溜まりに溜められたグリースが加熱されることを抑制し、この加熱によるグリースの粘度低下やフッ素オイルの揮発を抑制できる。従って、状態の良好なグリースをグリース溜まり40から摺動ニップN1へ供給することができ、定着ベルト20の内周面とヒータ22との間で良好な摺動性を確保できる。
【0071】
以上のように、摺動ニップN1内に抵抗発熱体31を配置すること、および、フッ素グリースの塗布量を前述の下限値および上限値の範囲内で設定することにより、定着ベルト20の内周面とヒータ22との間で長期にわたって良好な摺動性を確保できる。
【0072】
また特に本実施形態では、塗布量Pを0.15gとすることで、±30%程度の塗布量の誤差があった場合でも、前述の下限値および上限値の範囲内に塗布量を収めることができ、好ましい。
【0073】
潤滑剤としては、本実施形態のようにフッ素グリースを用いることが好ましい。これにより、PTFEの増ちょう剤によって粘度を確保し、定着ベルト20とヒータ22との間で油膜切れを起こすことなく潤滑剤を保持させ、長期にわたって定着ベルト20とヒータ22との良好な摺動性を確保できる。
【0074】
また本実施形態では、定着ベルト20が弾性層を有する構成とすることができる。これにより、定着ベルト20の剛性が高くなり、摺動ニップN1が狭くなる。また、定着ベルト20の外径が加圧ローラ21の外径よりも小さい構成とすることができる。これにより、摺動ニップN1が狭くなる。
【0075】
またヒータ22の摺動面である摺動面32aの表面粗さは0.05μm以下であることが好ましい。摺動面32aはグリースを保持する能力が小さいため、摺動面32aと定着ベルト20の内面との摺動抵抗を抑制するために、その表面粗さが小さい方が好ましい。また定着ベルト20の内周面の表面粗さは0.5μm以下であることが好ましい。定着ベルト20の内周面の表面粗さを小さくすることで、定着ベルト20の内周面の凹凸にグリースがトラップされたまま定着ベルト20の内周面とヒータ22との間に供給されなくなることを防止できる。
【0076】
これらの表面粗さの測定は、表面粗さ計サーフコム1400A(東京精密社製)を用いて、JIS B0601-2001に準拠し、算術平均粗さRaを、評価長さLnを1.5mm、基準長さLを0.25mm、カットオフ値を0.8mmとした測定条件で測定する。
【0077】
ところで、定着動作の高品質化および定着装置の高寿命化を図るためには、定着ベルト20の基体を厚くする、金属製の基体を用いる、弾性層を厚くする、等により定着ベルト20の剛性を高めることが必要である。しかし一方で、定着ベルト20の剛性が高いと、加圧ローラ21の加圧による定着ベルト20の変形量が小さくなり、定着ニップN2に対して摺動ニップN1が小さくなる。また定着ベルト20の外径が小さい、あるいは加圧ローラ21の外径に対して定着ベルト20の外径が小さい、ことにより、定着ニップN2に対して摺動ニップN1が小さくなる。
【0078】
この摺動ニップN1と定着ニップN2との関係を示す実験結果について説明する。実験では2種類の定着装置を用いる。
【0079】
構成1の定着装置は、定着ベルト20の外径が25mm、厚み60μmのポリイミド製の基体に、厚み250μmのシリコーンゴムによる弾性層、最表層には厚み12μmのPFAによる離型層を有する。加圧ローラ21は外径20mm、芯金、厚み3.5mmのシリコーンゴムによる弾性層、最表層に厚み50μmのPFAによる離型層を有する。
【0080】
構成2の定着装置は、定着ベルト20の外径が25mm、厚み40μmのニッケル製の基体に、厚み120μmのシリコーンゴムによる弾性層、最表層には厚み7μmのPFAによる離型層を有する。加圧ローラ21は構成1と同じである。
【0081】
以上の構成1および構成2の定着装置において、加圧ローラ21の軸上硬度(アスカーC)の値を変化させて摺動ニップN1と定着ニップN2との用紙搬送方向の幅を測定した測定結果を図10に示す。図10の実線が構成1の結果、図10の点線が構成2の結果を示している。
【0082】
また定着ニップN2の幅は、以下のように測定する。まず、定着装置9の定着ベルト20の表面温度を190℃に設定し、5分以上駆動する。OHPシートを定着ニップN2に通過させ始めてから定着ベルト20が一周するまでの間にOHPシート先端から定着装置9を停止させ、定着ニップN2で挟み込む。そして20秒間放置後にOHPシートを取り出す。このOHPシートについたニップ幅跡をノギスで正確に計り、定着装置9の定着ニップN2の幅を測定する。
【0083】
図10に示すように、定着ニップN2の幅が6.5~8.0mmの領域では、構成1は摺動ニップN1が定着ニップN2に対して1.4mm~2.0mm程度小さくなっている。一方、構成2は、摺動ニップN1が定着ニップN2に対して2.4mm~3.0mm程度小さくなっている。このように、剛性の高いニッケル製の基体を用いた定着ベルト20を採用した構成2の方が、摺動ニップN1の幅がより狭くなる。
【0084】
抵抗発熱体31が摺動ニップN1の範囲から外れてその外側に配置されると、摺動ニップN1の外側でヒータ22の温度が特に上昇してグリース溜まりにおけるグリースの粘性低下やフッ素オイルの揮発が生じてしまう。従って、構成2のように剛性の高い定着ベルトを採用するほど定着ニップN2を大きくして摺動ニップN1を大きくする必要がある(つまり、図10のより右上の位置の定着ニップN2を採用する必要がある)。従って、装置の大型化や駆動トルクを押さえる観点から、構成1のような定着ベルトを採用することが好ましい。
【0085】
図11は定着ベルト20の長手方向の温度分布を示す図である。(a)図がヒータ22の配置を示す図である。(b)図は縦軸が定着ベルト20の温度Tを示し、横軸が定着ベルト20の長手方向の各位置を表している。
【0086】
図11(a)および図11(b)に示すように、ヒータ22に設けられる複数の抵抗発熱体31は長手方向に分割されており、抵抗発熱体31同士の分割領域Bが形成される。別の言い方をすると、ヒータ22に設けられる複数の抵抗発熱体31は間隔Bを置いて配置される。以下、分割領域としての範囲Bを間隔Bと呼ぶ。間隔Bでは、抵抗発熱体31が占める面積がその他の部分よりも小さくなり、発熱量が小さくなる。これにより、間隔Bにおける定着ベルト20の温度がその他の部分よりも小さくなり、定着ベルト20の長手方向の温度ムラの原因となる。また、分割領域である間隔Bの周辺の領域を含む拡大分割領域C(以下、単に領域Cと呼ぶ)においても、ヒータ22や定着ベルト20の温度が小さくなる。なお、ヒータ22の温度も、同様に間隔Bでの温度が小さくなる。ここで、図11(a)の拡大図に示すように、間隔Bは、ヒータ22の主たる発熱部分である抵抗発熱体31が長手方向に分割された部分全体を含む長手方向領域を意味する。また、間隔Bに加えて、抵抗発熱体31の接続部311に対応する範囲を含む領域を領域Cとする。この接続部311は、抵抗発熱体31のうち、短手方向に延在し、各給電線33A、33Bに接続される部分を指す。
【0087】
図12に示すように、図5に示した長方形状の抵抗発熱体31を有するヒータ22においても、間隔Bの温度がその他の部分よりも小さくなる。また図13に示す形状の抵抗発熱体31を有するヒータ22においても、間隔Bの温度がその他の部分よりも小さくなる。さらに、図14に示すように、図6に示す形状の抵抗発熱体31を有するヒータ22においても、間隔Bの温度がその他の部分よりも小さくなる。ただし、図11図13図14のように、隣り合う抵抗発熱体31同士を長手方向にオーバーラップさせることで、間隔Bのその他の部分に対する温度落ち込みを抑制できる。
【0088】
本実施形態では、上記の間隔における温度落ち込みを抑制して、定着ベルト20の長手方向の温度ムラを抑制するために、前述した第1高熱伝導部材28を設けている。以下、第1高熱伝導部材28についてより詳細に説明する。
【0089】
図2に示すように、第1高熱伝導部材28は、図2の左右方向において、ヒータ22とステー24との間に配置され、特にヒータ22とヒータホルダ23との間に挟まれる。つまり第1高熱伝導部材28は、一方の面を基材30の裏面に当接させ、他方の面をヒータホルダ23に当接させる。
【0090】
ステー24は、ヒータ22などの厚み方向に延在する二つの垂直部24aの当接面24a1をヒータホルダ23に当接させ、ヒータホルダ23、第1高熱伝導部材28、ヒータ22を支持する。短手方向(図2の上下方向)において、当接面24a1は抵抗発熱体31が設けられる範囲よりも外側に設けられる。これにより、ヒータ22からステー24への伝熱を抑制でき、ヒータ22が定着ベルト20を効率よく加熱できる。
【0091】
図15に示すように、第1高熱伝導部材28は板材により構成される。本実施形態では第1高熱伝導部材28は単一の板材により構成されるが、複数の部材からなってもよい。なお、図15では図2のガイド部26の記載を省略している。
【0092】
第1高熱伝導部材28は、ヒータホルダ23の凹部23bに嵌め込まれ、その上からヒータ22が取り付けられることで、ヒータホルダ23とヒータ22とに挟み込まれて保持される。本実施形態では、第1高熱伝導部材28の長手方向の幅がヒータ22の長手方向の幅と略同じに設けられる。第1高熱伝導部材28およびヒータ22は、凹部23bを形成する長手方向の両側壁(長手方向規制部)23b1により、長手方向の移動を規制される。このように、第1高熱伝導部材28の定着装置9内での長手方向の位置ズレを規制することで、長手方向の狙いの範囲に対して熱伝導効率を向上させることができる。また、第1高熱伝導部材28およびヒータ22は、凹部23bを形成する短手方向の両側壁(短手方向規制部)23b2により、短手方向の移動を規制される。
【0093】
第1高熱伝導部材28を設ける長手方向の範囲は上記に限らない。例えば図16に示すように、長手方向の発熱部35に対応する範囲のみに第1高熱伝導部材28を設けてもよい(図16のハッチング部参照)。また、図17に示すように、長手方向の間隔Bに対応する位置で、その全域のみに第1高熱伝導部材28を設けることもできる。なお、図17では便宜上、抵抗発熱体31と第1高熱伝導部材28を図17の上下方向にずらして示しているが、両者は短手方向のほぼ同じ位置に配置される。ただし、これに限るものではなく、第1高熱伝導部材28が抵抗発熱体31の短手方向の一部に設けられていたり、後述の図18のように短手方向の全体を覆うようにして設けられていてもよい。さらに、図18に示すように、第1高熱伝導部材28を、長手方向の間隔Bに対応する位置に加えて、その間隔Bを間にはさむ両側の抵抗発熱体31にまたがって設けることもできる。この、両側の抵抗発熱体31にまたがって設ける、とは、第1高熱伝導部材28が両側の抵抗発熱体31と長手方向の位置が少なくとも一部重なることを言う。なお、ヒータ22の全ての間隔Bに対応して第1高熱伝導部材28を設けてもよいし、例えば図18のように間隔Bの1箇所に対応する位置にだけ第1高熱伝導部材28を設けるように、一部の間隔Bに対応する位置にだけ第1高熱伝導部材28を設けてもよい。ここで、長手方向の間隔Bに対応する位置に設ける、とは、間隔Bと長手方向に少なくともその一部が重なることを言う。
【0094】
加圧ローラ21の加圧力により、第1高熱伝導部材28はヒータ22とヒータホルダ23との間に挟み込まれてこれらの部材に密着する。第1高熱伝導部材28がヒータ22に接触することにより、ヒータ22の長手方向の熱伝導効率が向上する。そして、第1高熱伝導部材28が、長手方向において、ヒータ22の間隔Bに対応する位置に設けられることで、間隔Bにおける熱伝導効率を向上させることができ、長手方向の間隔Bの位置へ伝達される熱量を増やし、長手方向の間隔Bにおける温度を上昇させることができる。従って、ヒータ22の長手方向の温度ムラを抑制できる。これにより、定着ベルト20の長手方向の温度ムラを抑制できる。従って、用紙に定着される画像の定着ムラや光沢ムラを抑制できる。あるいは、間隔Bにおいて十分な定着性能を確保するために、ヒータ22による余分な加熱をする必要が無くなり、定着装置9の省エネ化を実現できる。また、長手方向の発熱部35全域にわたって第1高熱伝導部材28を設けることにより、ヒータ22による主な加熱領域(つまり、通紙される用紙の画像形成領域)全域において、ヒータ22の伝熱効率を向上させ、ヒータ22ひいては定着ベルト20の長手方向の温度ムラを抑制できる。
【0095】
特に本実施形態では、上記の第1高熱伝導部材28の構成と前述したPTC特性を有する抵抗発熱体31との組み合わせにより、小サイズ用紙通紙時の非通紙領域による過昇温を効果的に抑制できる。つまり、PTC特性により非通紙領域における抵抗発熱体31の発熱量を抑制すると共に、温度が上昇した非通紙部の熱量を通紙部の側へ効率的に伝達することができ、非通紙領域による過昇温を効果的に抑制できる。
【0096】
また間隔Bの周辺においても、間隔Bの発熱量が小さいことによりその温度が小さくなるため、第1高熱伝導部材28を配置することが好ましい。例えば本実施形態では、領域C(図12参照)に対応する位置に第1高熱伝導部材28を設けることにより、間隔Bおよびその周辺における長手方向の熱伝達効率を特に向上させ、ヒータ22の長手方向の温度ムラをより抑制できる。特に本実施形態では、長手方向において、発熱部35の全域にわたって第1高熱伝導部材28が設けられる。これにより、ヒータ22(定着ベルト20)の長手方向の温度ムラをより抑制できる。
【0097】
次に、定着装置の異なる実施形態について説明する。
【0098】
図19に示すように、本実施形態の定着装置9は、ヒータホルダ23と第1高熱伝導部材28との間に第2高熱伝導部材36を有する。第2高熱伝導部材36は、ヒータホルダ23やステー24、第1高熱伝導部材28等の部材の積層方向(図19の左右方向)において、第1高熱伝導部材28と異なる位置に設けられる。より詳しくは、第2高熱伝導部材36は第1高熱伝導部材28に重ね合わせされて設けられる。なお、図19図2とは異なり、長手方向の第2高熱伝導部材36が配置され、サーミスタ25が配置されていない断面を示している。
【0099】
第2高熱伝導部材36は基材30よりも熱伝導率の高い部材、例えばグラフェンやグラファイトにより構成される。本実施形態では、第2高熱伝導部材36は厚み1mmのグラファイトシートにより形成される。ただし、第2高熱伝導部材36をアルミニウムや銅、銀などの板材により形成してもよい。
【0100】
図20に示すように、長手方向に部分的に設けられた各第2高熱伝導部材36が、長手方向に複数配置される。ヒータホルダ23の凹部23bの第2高熱伝導部材36が設けられる部分は、その他の部分よりもその深さが一段深く設けられている。第2高熱伝導部材36は、長手方向の両側で、ヒータホルダ23との間に隙間が設けられる。これにより、第2高熱伝導部材36からヒータホルダ23への伝熱を抑制し、ヒータ22が定着ベルト20を効率的に加熱できる。なお、図20では図2のガイド部26の記載を省略している。
【0101】
図21に示すように、第2高熱伝導部材36(ハッチング部参照)は、長手方向において、間隔Bに対応する位置で、隣り合う抵抗発熱体31の少なくとも一部に重なる位置に設けられ、特に本実施形態では、間隔B全域にわたって設けられる。ただし図21(および後述の図25)では、第1高熱伝導部材28が、長手方向の発熱部35に対応する領域のみに設けられる場合を示しているが、前述のようにこれに限らない。
【0102】
本実施形態のように、第1高熱伝導部材28に加えて、長手方向の間隔Bに対応する位置で、隣り合う抵抗発熱体31の少なくとも一部に重なる位置に第2高熱伝導部材36を設けることで、間隔Bにおける長手方向の熱伝達効率を特に向上させ、ヒータ22の長手方向の温度ムラをより抑制できる。また、最も好ましくは、図22に示すように、間隔Bに対応する位置でその全域にのみ第1高熱伝導部材28および第2高熱伝導部材36を設ける。これにより、間隔Bに対応する位置で、その他の領域と比較して特に熱伝達効率を向上させることができる。なお、図22では便宜上、抵抗発熱体31と第1高熱伝導部材28そして第2高熱伝導部材36を、図22の上下方向にそれぞれずらして示しているが、これらは短手方向のほぼ同じ位置に配置される。ただし、これに限るものではなく、第1高熱伝導部材28や第2高熱伝導部材36が、抵抗発熱体31の短手方向の一部に設けられていたり、短手方向の全体を覆うようにして設けられていてもよい。
【0103】
上記と異なる本発明の一実施形態では、第1高熱伝導部材28および第2高熱伝導部材36が上記グラフェンシートにより構成される。これにより、グラフェンの面に沿う所定の方向、つまり、厚み方向ではなく長手方向に熱伝導率の高い第1高熱伝導部材28および第2高熱伝導部材36を形成できる。従って、ヒータ22や定着ベルト20の長手方向の温度ムラを効果的に抑制できる。
【0104】
グラフェンは薄片状の粉体である。グラフェンは、図23に示すように、炭素原子の平面状の六角形格子構造からなる。グラフェンシートとは、シート状のグラフェンであり、通常、単層である。炭素の単一層に不純物を含んでいてもよい。またグラフェンはフラーレン構造を有したものであってもよい。フラーレン構造は、一般的に、同数の炭素原子が5員環および6員環でかご状に縮環した多環体を形成してなる化合物として認識されており、例えば、C60、C70およびC80フラーレン又は3配位の炭素原子を有する他の閉じたかご状構造である。
【0105】
グラフェンシートは、人工物であり、例えば化学気相蒸着(CVD)法で作製されうる。
【0106】
グラフェンシートには市販品を用いることができる。グラフェンシートの大きさ、厚み、あるいは後述するグラファイトシートの層数などは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定される。
【0107】
また、グラフェンを多層化したグラファイトは大きな熱伝導異方性を持つ。グラファイトは、図24に示すように、炭素原子の縮合六員環層面が平面状に広がった層を有し、この層が何重にも重なった結晶構造を有する。この結晶構造における炭素原子間は、層内での隣接する炭素原子同士は共有結合をなし、層間の炭素原子同士はファン・デル・ワールス結合をなす。そして、共有結合はファン・デル・ワールス結合に比べてその結合力が大きく、層内での結合と層間での結合とでは大きな異方性を持つ。つまり、第1高熱伝導部材28あるいは第2高熱伝導部材36をグラファイトにより構成することで、第1高熱伝導部材28あるいは第2高熱伝導部材36における長手方向の伝熱効率が厚み方向(つまり、部材の積層方向)に比べて大きくなり、ヒータホルダ23への伝熱を抑制できる。従って、ヒータ22の長手方向の温度ムラを効率よく抑制するとともに、ヒータホルダ23側へ流出する熱を最小限に抑えることができる。また第1高熱伝導部材28あるいは第2高熱伝導部材36をグラファイトにより構成することで、700度程度まで酸化しない優れた耐熱性を第1高熱伝導部材28あるいは第2高熱伝導部材36に持たせることができる。
【0108】
グラファイトシートの物性や寸法は、第1高熱伝導部材28あるいは第2高熱伝導部材36に求められる機能に応じて適宜変更できる。例えば、高純度のグラファイトあるいは単結晶グラファイトを用いる、あるいは、グラファイトシートの厚みを大きくすることで、その熱伝導の異方性を高めることができる。また、定着装置9を高速化するために、厚みの小さいグラファイトシートを用いて定着装置9の熱容量を小さくしてもよい。また、定着ニップN2やヒータ22の幅が大きい場合には、それに合わせて第1高熱伝導部材28あるいは第2高熱伝導部材36の長手方向の幅を大きくしてもよい。
【0109】
機械的強度を高める観点から、グラファイトシートの層数は11以上であることが好ましい。またグラファイトシートは部分的に単層と多層の部分とを含んでいてもよい。
【0110】
第2高熱伝導部材36は、長手方向において、間隔B(さらに領域C)に対応する位置で、隣り合う抵抗発熱体31の少なくとも一部に重なる位置に設けられればよく、図21の配置に限らない。例えば、図25に示すように、第2高熱伝導部材36Aは、短手方向において、基材30よりも短手方向の両側へ飛び出して設けられる。また第2高熱伝導部材36Bは、短手方向において、抵抗発熱体31が設けられる範囲に設けられる。第2高熱伝導部材36Cは、間隔Bの一部に設けられる。
【0111】
また、図26に示すように、本実施形態では、第1高熱伝導部材28とヒータホルダ23との間に厚み方向(図26の左右方向)の隙間を設ける。つまり、ヒータホルダ23のヒータ22、第1高熱伝導部材28、そして第2高熱伝導部材36を配置するための凹部23b(図20参照)の一部領域であって、長手方向の第2高熱伝導部材36が設けられた部分以外の部分で、短手方向の一部領域に、凹部23bの深さをその他の第1高熱伝導部材28を受ける部分よりも深くする、断熱層としての逃げ部23cを設ける。これにより、ヒータホルダ23と第1高熱伝導部材28との接触面積を最小限にとどめることができる。従って、第1高熱伝導部材28からヒータホルダ23への伝熱を抑制し、ヒータ22が定着ベルト20を効率的に加熱できる。なお、長手方向の第2高熱伝導部材36が設けられる断面では、前述の実施形態の図19のように、第2高熱伝導部材36がヒータホルダ23に当接する。
【0112】
また、特に本実施形態では、短手方向(図26の上下方向)において、抵抗発熱体31が設けられた範囲全域にわたって逃げ部23cが設けられる。これにより、特に第1高熱伝導部材28からヒータホルダ23への伝熱を抑制し、ヒータ22が定着ベルト20を効率的に加熱できる。なお、断熱層として、逃げ部23cのように空間を設ける構成の他、ヒータホルダ23よりも熱伝導率の低い断熱部材を設ける構成であってもよい。
【0113】
さらに、以上の説明では、第2高熱伝導部材36を第1高熱伝導部材28とは異なる部材として設けたが、これに限らない。例えば、第1高熱伝導部材28の間隔Bに対応する部分を、その他の部分よりも厚みを設けてもよい。
【0114】
これらの図19あるいは図26の実施形態においても、前述の実施形態と同様、摺動ニップN1内に抵抗発熱体31を配置するとともに、潤滑剤の塗布量を適正に設定することで、定着ベルト20とヒータ22との間の良好な摺動状態を形成することができる。
【0115】
また、本発明は、前述の定着装置のほか、図27に示すような定着装置にも適用可能である。以下、図27に示す定着装置9について説明する。
【0116】
図27に示すように、定着装置9は、加熱アセンブリ92、定着部材である定着ローラ93、対向部材である加圧アセンブリ94からなる。加熱アセンブリ92は、先の実施形態で説明したヒータ22、第1高熱伝導部材28、ヒータホルダ23、ステー24、回転部材としての加熱ベルト120等を有する。定着ローラ93は、加熱ベルト120を加圧して加熱ベルト120との間に加熱ニップN3を形成する加圧部材である。また、定着ローラ93は、芯金93aと、弾性層93bと、表層93cとで構成されている。また、定着ローラ93に対して加熱アセンブリ92側とは反対側に、加圧アセンブリ94が設けられている。加圧アセンブリ94は、ニップ形成部材95とステー96とを配置し、これらニップ形成部材95とステー96を内包するように加圧ベルト97を回転可能に配置している。そして、加圧ベルト97と定着ローラ93との間の定着ニップN2に用紙Pを通紙して加熱および加圧して画像を定着する。
【0117】
図27の実施形態においても、前述の実施形態と同様、摺動ニップN1内に抵抗発熱体31を配置するとともに、潤滑剤の塗布量を適正に設定することで、定着ベルト20とヒータ22との間の良好な摺動状態を形成することができる。また図27の実施形態においても、摺動ニップN1内に抵抗発熱体31を配置するとともに、潤滑剤の塗布量を適正に設定することで、加熱ベルト120とヒータ22との間の良好な摺動状態を形成することができる。
【0118】
また、本発明は、上記の実施形態で説明したような定着装置に限らず、用紙に塗布されたインクを乾燥させる乾燥装置、さらには、被覆部材としてのフィルムを用紙等のシートの表面に熱圧着するラミネータや、包材のシール部を熱圧着するヒートシーラーなどの熱圧着装置のような加熱装置にも適用可能である。このような装置にも本発明を適用することで、回転部材と加熱部材との間の良好な摺動状態を形成することができる。
【0119】
本発明に係る画像形成装置は、図1に示すカラー画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置や、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等であってもよい。
【0120】
例えば図28に示すように、本実施形態の画像形成装置100は、感光体ドラムなどからなる画像形成手段50と、一対のタイミングローラ15等からなる用紙搬送部と、給紙装置7と、定着装置9と、排紙装置10と、読取部51と、を備える。給紙装置7は複数の給紙トレイを備え、それぞれの給紙トレイが異なるサイズの用紙を収容する。
【0121】
読取部51は原稿Qの画像を読み取る。読取部51は、読み取った画像から画像データを生成する。給紙装置7は、複数の用紙Pを収容し、搬送路へ用紙Pを送り出す。タイミングローラ15は搬送路上の用紙Pを画像形成手段50へ搬送する。
【0122】
画像形成手段50は、用紙Pにトナー像を形成する。具体的には、画像形成手段50は、感光体ドラムと、帯電ローラと、露光装置と、現像装置と、補給装置と、転写ローラと、クリーニング装置と、除電装置とを含む。トナー像は、例えば、原稿Qの画像を示す。定着装置9は、トナー像を加熱および加圧して、用紙Pにトナー像を定着させる。トナー像の定着された用紙Pは、搬送ローラなどにより排紙装置10へ搬送される。排紙装置10は、画像形成装置100の外部に用紙Pを排出する。
【0123】
次に、本実施形態の定着装置9について説明する。前述の実施形態の定着装置と共通する構成については、適宜その記載を省略する。
【0124】
図29に示すように、定着装置9は、定着ベルト20と、加圧ローラ21と、ヒータ22と、ヒータホルダ23と、ステー24と、サーミスタ25と、第1高熱伝導部材28等を備える。
【0125】
定着ベルト20と加圧ローラ21との間に定着ニップN2が形成される。定着ニップN2のニップ幅は10mm、定着装置9の線速は240mm/sである。
【0126】
定着ベルト20はポリイミドの基体と離型層とを備え、弾性層を有していない。離型層は、例えばフッ素樹脂からなる耐熱性のフィルム材からなる。定着ベルト20の外径は約24mmである。
【0127】
加圧ローラ21は、芯金21aと弾性層21bと表層21cとを含む。加圧ローラ21の外径は24~30mmで形成され、弾性層21bの厚みは3~4mmで形成される。
【0128】
ヒータ22は、基材と、断熱層と、抵抗発熱体などを含む導体層と、絶縁層とを含み、全体の厚みが1mmで形成される。また、ヒータ22の短手方向の幅Yは13mmである。
【0129】
図30に示すように、ヒータ22の導体層は、複数の抵抗発熱体31と、給電線33と、電極部34A~34Cとを備える。本実施形態においても、図30の拡大図に示すように、複数の抵抗発熱体31が長手方向に分割された分割領域としての間隔Bが形成される(ただし、図30では拡大図の範囲のみで間隔Bを図示しているが、実際は全ての抵抗発熱体31同士の間に間隔Bが設けられる)。抵抗発熱体31により、三つの発熱部35A~35Cが構成される。電極部34A,34Bに通電することにより、発熱部35A,35Cが発熱する。電極部34A,34Cに通電することにより、発熱部35Bが発熱する。例えば、小サイズ用紙に定着動作を行う場合には発熱部35Bを発熱させ、大サイズ用紙に定着動作を行う場合には全ての発熱部に発熱させることができる。
【0130】
図31に示すように、ヒータホルダ23は、その凹部23dにヒータ22および第1高熱伝導部材28を保持する。凹部23dは、ヒータホルダ23のヒータ22側に設けられる。凹部23dは、ヒータ22のその他の面よりもステー24側に凹となった基材30に略平行な面23d1と、ヒータホルダ23の長手方向両側(一方側でもよい)でヒータホルダ23の内側に設けられた壁部23d2と、短手方向両側でヒータホルダ23の内側に設けられた壁部23d3とにより構成される。ヒータホルダ23はガイド部26を有する。ヒータホルダ23はLCP(液晶ポリマー)により形成される。
【0131】
図32に示すように、コネクタ60は、樹脂製(例えばLCP)のハウジングと、ハウジング内に設けられた複数のコンタクト端子等を備える。
【0132】
コネクタ60は、ヒータ22とヒータホルダ23とを表側と裏側から一緒に挟むようにして取り付けられる。この状態で、各コンタクト端子が、ヒータ22の各電極部に接触(圧接)することで、コネクタ60を介して発熱部35と画像形成装置に設けられた電源とが電気的に接続される。これにより、電源から発熱部35へ電力が供給可能な状態となる。なお、各電極部34は、コネクタ60との接続を確保するため、少なくとも一部が絶縁層に被覆されておらず露出した状態となっている。
【0133】
フランジ53は、定着ベルト20の長手方向の両側に設けられ、定着ベルト20の両端をベルトの内側から保持する。フランジ53は定着装置9の筐体に固定される。フランジ53はステー24の両端に挿入される(図32のフランジ53からの矢印方向参照)。
【0134】
コネクタ60のヒータ22およびヒータホルダ23に対する取り付け方向はヒータの短手方向である(図32のコネクタ60からの矢印方向参照)。コネクタ60のヒータホルダ23に対する取り付け時に、コネクタ60とヒータホルダ23との一方に設けた凸部が、他方に設けた凹部に係合し、凸部が凹部内を相対移動する構成としてもよい。またコネクタ60は、長手方向のいずれか一方側であって、加圧ローラ21の駆動モータが設けられる側とは反対側で、ヒータ22およびヒータホルダ23に取り付けられる。
【0135】
図33に示すように、定着ベルト20の内周面に対向して、定着ベルト20の長手方向中央側と端部側にそれぞれサーミスタ25が設けられる。サーミスタ25により検知された定着ベルト20の長手方向中央側と端部側のそれぞれの温度に基づいて、ヒータ22を制御する。
【0136】
定着ベルト20の内周面に対向して、定着ベルト20の長手方向中央側と端部側にそれぞれサーモスタット27が設けられる。サーモスタット27により検知された定着ベルト20の温度が定められた閾値を超えた場合には、ヒータ22への通電を停止する。
【0137】
定着ベルト20の長手方向両端には、定着ベルト20の各端部を保持するフランジ53が設けられる。フランジ53はLCP(液晶ポリマー)により形成される。
【0138】
図34に示すように、フランジ53にはスライド溝53aが設けられる。スライド溝53aは、定着ベルト20の加圧ローラ21に対する接離方向に延在する。スライド溝53aには定着装置9の筐体の係合部が係合する。この係合部がスライド溝53a内を相対移動することにより、定着ベルト20は加圧ローラ21に対する接離方向へ移動できる。
【0139】
以上の定着装置9においても、前述の実施形態と同様、摺動ニップN1内に抵抗発熱体31を配置するとともに、潤滑剤の塗布量を適正に設定することで、定着ベルト20とヒータ22との間の良好な摺動状態を形成することができる。
【0140】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0141】
本発明に係る画像形成装置は、図1に示すカラー画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置や、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等であってもよい。
【0142】
記録媒体としては、用紙P(普通紙)の他、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート、プラスチックフィルム、プリプレグ、銅箔等が含まれる。
【0143】
本発明の態様は、例えば以下の通りである。
<1>
回転部材と、
前記回転部材との間に外面ニップ部を形成する加圧部材と、
前記回転部材の内側に設けられ、基材と抵抗発熱体とを有する加熱体と、
前記加熱体を保持する凹部を有する保持部材と、
前記加熱体の前記回転部材に対する摺動面もしくは前記回転部材の内面に塗布される潤滑剤と、を備えた加熱装置であって、
前記加熱体と前記回転部材の内面とにより形成するニップ部を摺動ニップとすると、
前記抵抗発熱体は記録媒体搬送方向の前記摺動ニップ内に設けられ、
前記記録媒体搬送方向の前記摺動ニップの外側であって、前記回転部材と前記加熱体との間に前記潤滑剤を保持する潤滑剤保持領域が設けられ、
前記潤滑剤の塗布量をP、前記回転部材内面の凹凸高さをA、前記回転部材の長手方向の幅をX1、前記回転部材の周長をB、潤滑剤の比重をC、前記潤滑剤保持領域の体積をDとすると、以下の式を満たすことを特徴とする加熱装置である。
A×X1×B×C≦P≦D×C
<2>
前記潤滑剤がフッ素グリースである<1>記載の加熱装置である。
<3>
前記回転部材は弾性層を有する<1>または<2>記載の加熱装置である。
<4>
前記回転部材の外径が前記加圧部材の外径よりも大きい<1>から<3>いずれか記載の加熱装置である。
<5>
前記加熱体の前記回転部材側の表面粗さが0.05μm以下である<1>から<4>いずれか記載の加熱装置である。
<6>
前記回転部材の内面の表面粗さが0.5μm以下である<1>から<5>いずれか記載の加熱装置である。
<7>
<1>から<6>いずれか記載の加熱装置により、記録媒体上の熱を加熱して定着させる定着装置である。
<8>
<7>記載の定着装置を備えた画像形成装置である。
【符号の説明】
【0144】
1 画像形成装置
9 定着装置(加熱装置)
20 定着ベルト(回転部材)
21 加圧ローラ(加圧部材)
22 ヒータ(加熱体)
23 ヒータホルダ(保持部材)
23b 凹部
30 基材
31 抵抗発熱体
32 絶縁層
40 グリース溜まり(潤滑剤保持領域)
90 フッ素グリース(潤滑剤)
A 用紙搬送方向(記録媒体搬送方向)
N1 摺動ニップ
N2 定着ニップ(外面ニップ部)
X 長手方向
Y 短手方向(記録媒体搬送方向)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0145】
【特許文献1】特開2010-204587号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34