(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129773
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】差動増幅器
(51)【国際特許分類】
H03F 3/45 20060101AFI20230912BHJP
H03F 3/34 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
H03F3/45 210
H03F3/45 110
H03F3/34 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034022
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099818
【弁理士】
【氏名又は名称】安孫子 勉
(72)【発明者】
【氏名】小川 正訓
(72)【発明者】
【氏名】森下 伊織
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA12
5J500AA47
5J500AC13
5J500AF09
5J500AF11
5J500AF12
5J500AH10
5J500AH17
5J500AH25
5J500AH26
5J500AH29
5J500AK05
5J500AK06
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5J500AK09
5J500AK47
5J500AM17
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5J500AT02
5J500DN02
5J500DN11
5J500DN22
5J500DN24
5J500DP01
5J500DP03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】従来の入力オフセット電圧の改善策に比してより確実に入力オフセット電圧の改善を図った差動増幅器を提供する。
【解決手段】NチャンネルMOSFETを用いて差動増幅可能に構成されてなる第1の差動対101と、PチャンネルMOSFETを用いて差動増幅可能に構成されてなる第2の差動対102とが、入力に対して並列的に設けられ、各々の出力が加算可能に構成されてなる差動増幅器において、カレントミラー回路105を設ける。カレントミラー回路105は、第1の差動対101の出力段と第2の差動対102の出力段のそれぞれに電流供給可能であり、同相入力電圧の変化に伴う第1の差動対101と第2の差動対102の動作の切り替わりによる第1の差動対101及び第2の差動対102の出力段の電圧変動を抑圧する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NチャンネルMOSFETを用いて差動増幅可能に構成されてなる第1の差動対と、PチャンネルMOSFETを用いて差動増幅可能に構成されてなる第2の差動対とが、入力に対して並列的に設けられ、各々の出力が加算可能に構成されてなる差動増幅器において、
カレントミラー回路が設けられ、前記カレントミラー回路は、
前記第1の差動対の出力段と前記第2の差動対の出力段のそれぞれに電流供給可能に構成されてなり、
同相入力電圧の変化に伴う前記第1の差動対と第2の差動対の動作の切り替わりによる前記第1及び第2の差動対の出力段の電圧変動を抑圧可能としたことを特徴とする差動増幅器。
【請求項2】
前記第1の差動対のテール電流を供給するテール電流供給回路が設けられ、
前記カレントミラー回路は、PチャンネルMOSFETを用いた入力段トランジスタ、及び、第1乃至第4の出力段トランジスタを有してなり、前記入力段トランジスタのソースと前記第1乃至第4の出力段トランジスタのソースは相互に接続されて正電源電圧が印加可能とされる一方、前記入力段トランジスタのゲートと前記第1乃至第4の出力段トランジスタのゲートは相互に接続されると共に前記入力段トランジスタのドレインと接続され、前記入力段トランジスタのドレインは、前記テール電流供給回路の出力段に接続され、
前記第1及び第2の出力段トランジスタのドレインは、前記第2の差動対の2つの出力段に、前記第3及び第4の出力段トランジスタのドレインは、前記第1の差動対の2つの出力段に、それぞれ接続されてなることを特徴とする請求項1記載の差動増幅器。
【請求項3】
前記入力段トランジスタのドレインと前記テール電流供給回路の出力段との間には、PチャンネルMOSFETを用いたカスコード用入力段トランジスタが設けられ、前記カスコード用入力段トランジスタのソースは、前記入力段トランジスタのドレインに、前記カスコード用入力段トランジスタのドレインは、ゲートと共に前記テール電流供給回路の出力段に、それぞれ接続され、
前記第1の出力段トランジスタのドレインと前記第2の差動対の出力段の一方との間には、カスコード用第1の出力段トランジスタが設けられ、前記カスコード用第1の出力段トランジスタのソースは、前記第1の出力段トランジスタのドレインに、前記カスコード用第1の出力段トランジスタのゲートは、前記カスコード用入力段トランジスタのゲートに、前記カスコード用第1の出力段トランジスタのドレインは、前記第2の差動対の出力段の一方に、それぞれ接続され、
前記第2の出力段トランジスタのドレインと前記第2の差動対の出力段の他方との間には、カスコード用第2の出力段トランジスタが設けられ、前記カスコード用第2の出力段トランジスタのソースは、前記第2の出力段トランジスタのドレインに、前記カスコード用第2の出力段トランジスタのゲートは、前記カスコード用入力段トランジスタのゲートに、前記カスコード用第2の出力段トランジスタのドレインは、前記第2の差動対の出力段の他方に、それぞれ接続されてなることを特徴とする請求項2記載の差動増幅器。
【請求項4】
前記カレントミラー回路に代えて、第1のカレントミラー回路と第2のカレントミラー回路が設けられ、
前記第1のカレントミラー回路は、前記第2の差動対の出力段に電流供給可能に構成されてなり、
前記第2のカレントミラー回路は、前記第1の差動対の出力段に電流供給可能に構成されてなることを特徴とする請求項1記載の差動増幅器。
【請求項5】
前記第1及び第2のカレントミラー回路は、PチャンネルMOSFETを用いてなり、
前記第1のカレントミラー回路は、第1のカレントミラー用入力段トランジスタ、及び、第1のカレントミラー用第1及び第2の出力段トランジスタを有してなり、
前記第2のカレントミラー回路は、第2のカレントミラー用入力段トランジスタ、及び、第2のカレントミラー用第1及び第2の出力段トランジスタを有してなり、
前記第1のカレントミラー回路において、前記第1のカレントミラー用入力段トランジスタのソースと前記第1のカレントミラー用第1及び第2の出力段トランジスタのソースは相互に接続されて正電源電圧が印加可能とされる一方、前記第1のカレントミラー用入力段トランジスタのゲートと前記第1のカレントミラー用第1及び第2の出力段トランジスタのゲートは相互に接続されると共に前記第1のカレントミラー用入力段トランジスタのドレインと接続され、前記第1のカレントミラー用入力段トランジスタのドレインは、前記テール電流供給回の出力段に接続され、
前記第1のカレントミラー用第1及び第2の出力段トランジスタのドレインは、前記第2の差動対の2つの出力段に、それぞれ接続され、
前記第2のカレントミラー回路において、前記第2のカレントミラー用入力段トランジスタのソースと前記第2のカレントミラー用第1及び第2の出力トランジスタのソースは相互に接続されて正電源電圧が印加可能とされる一方、前記第2のカレントミラー用入力段トランジスタのゲートと前記第2のカレントミラー用第1及び第2の出力段トランジスタのゲートは相互に接続されると共に前記第2のカレントミラー用入力段トランジスタのドレインと接続され、前記第2のカレントミラー用入力段トランジスタのドレインは、前記テール電流供給回の出力段に接続され、
前記第2のカレントミラー用第1及び第2の出力段トランジスタのドレインは、前記第1の差動対の2つの出力段に、それぞれ接続されてなることを特徴とする請求項4記載の差動増幅器。
【請求項6】
前記第1のカレントミラー用入力段トランジスタのソースは調整用第1の抵抗器を介して、前記第1のカレントミラー用第1の出力段トランジスタのソースは調整用第2の抵抗器を介して、前記第1のカレントミラー用第2の出力段トランジスタのソースは調整用第3の抵抗器を介して、共に前記正電源電圧が印加可能とされてなることを特徴とする請求項5記載の差動増幅器。
【請求項7】
前記調整用第2及び第3の抵抗器は、抵抗値が可変可能に構成されてなる可変抵抗器であることを特徴とする請求項6記載の差動増幅器。
【請求項8】
前記第1のカレントミラー回路に代えて、オフセット調整回路が設けられ、前記オフセット調整回路は、前記第2の差動対の出力段に電流供給可能に構成されてなることを特徴とする請求項4記載の差動増幅器。
【請求項9】
前記オフセット調整回路は、PチャンネルMOSFETを用いたオフセット調整回路用第1及び第2のトランジスタを有してなり、
前記オフセット調整回路用第1及び第2のトランジスタのゲートは、相互に接続されて外部からリファレンス電圧が印加可能とされ、
前記オフセット調整回路用第1及び第2のトランジスタのソースは、前記第2の差動対の電流源である第1の定電流源に接続される一方、
前記オフセット調整回路用第1のトランジスタのドレインは、前記第2の差動対の一方の出力段に、前記オフセット調整回路用第2のトランジスタのドレインは、前記第2の差動対の他方の出力段に、それぞれ接続されてなることを特徴とする請求項8記載の差動増幅器。
【請求項10】
前記第1の差動対は、第1の差動対用第1のトランジスタのゲートが反転入力端子に、第1の差動対用第2のトランジスタのゲートが非反転入力端子に、それぞれ接続され、前記第1の差動対用第1のトランジスタのドレインには、第1の抵抗器を介して、前記第1の差動対用第2のトランジスタのドレインには、第2の抵抗器を介して、それぞれ前記正電源電圧が印加され、
前記第1の差動対用第1のトランジスタのドレインに接続される前記第4の出力段トランジスタのオーバードライブ電圧と、前記第1の差動対用第2のトランジスタのドレインに接続される前記第3の出力段トランジスタのオーバードライブ電圧とが等しくなり、かつ、前記第2の抵抗器における電圧降下以下となるように設定されてなることを特徴とする請求項2又は請求項3記載の差動増幅器。
【請求項11】
前記第1の差動対は、第1の差動対用第1のトランジスタのゲートが反転入力端子に、第1の差動対用第2のトランジスタのゲートが非反転入力端子に、それぞれ接続され、前記第1の差動対用第1のトランジスタのドレインには、第1の抵抗器を介して、前記第1の差動対用第2のトランジスタのドレインには、第2の抵抗器を介して、それぞれ前記正電源電圧が印加され、
前記第1の差動対用第1のトランジスタのドレインに接続される前記第2のカレントミラー用第2の出力段トランジスタのオーバードライブ電圧と、前記第1の差動対用第2のトランジスタのドレインに接続される前記第2のカレントミラー用第1の出力段トランジスタのオーバードライブ電圧とが等しくなり、かつ、前記第2の抵抗器における電圧降下以下となるように設定されてなることを特徴とする請求項5乃至請求項9いずれか記載の差動増幅器。
【請求項12】
前記カレントミラー回路に代えて、第1のカレントミラー回路が設けられ、
前記第1のカレントミラー回路は、前記第2の差動対の出力段に電流供給可能に構成されてなることを特徴とする請求項1記載の差動増幅器。
【請求項13】
前記第1のカレントミラー回路は、PチャンネルMOSFETを用いた第1のカレントミラー用入力段トランジスタ、及び、第1のカレントミラー用第1及び第2の出力段トランジスタを有してなり、
前記第1のカレントミラー用入力段トランジスタのソースと前記第1のカレントミラー用第1及び第2の出力段トランジスタのソースは相互に接続されて前記正電源電圧が印加可能とされる一方、前記第1のカレントミラー用入力段トランジスタのゲートと前記第1のカレントミラー用第1及び第2の出力段トランジスタのゲートは相互に接続されると共に前記第1のカレントミラー用入力段トランジスタのドレインと接続され、前記第1のカレントミラー用入力段トランジスタのドレインは、前記テール電流供給回の出力段に接続され、
前記第1のカレントミラー用第1及び第2の出力段トランジスタのドレインは、前記第2の差動対の2つの出力段に、それぞれ接続されてなることを特徴とする請求項12記載の差動増幅器。
【請求項14】
前記第1のカレントミラー用入力段トランジスタのソースは調整用第1の抵抗器を介して、前記第1のカレントミラー用第1の出力段トランジスタのソースは調整用第2の抵抗器を介して、前記第1のカレントミラー用第2の出力段トランジスタのソースは調整用第3の抵抗器を介して、共に前記正電源電圧が印加可能とされてなることを特徴とする請求項13記載の差動増幅器。
【請求項15】
前記調整用第2及び第3の抵抗器は、抵抗値が可変可能に構成されてなる可変抵抗器であることを特徴とする請求項14記載の差動増幅器。
【請求項16】
前記第カレントミラー回路に代えて、第2のオフセット調整回路が設けられ、
前記第2のオフセット調整回路は、前記第1及び前記第2の差動対の出力段に、それぞれ電流供給可能に構成されてなることを特徴とする請求項1記載の差動増幅器。
【請求項17】
前記第2のオフセット調整回路は、PチャンネルMOSFETを用いたオフセット調整回路用第1乃至第4のトランジスタを有してなり、
前記オフセット調整回路用第1乃至第4のトランジスタのゲートは、相互に接続されて外部からリファレンス電圧が印加可能とされ、
前記オフセット調整回路用第1乃至第4のトランジスタのソースは、前記第2の差動対の電流源である第1の定電流源に接続される一方、
前記オフセット調整回路用第1のトランジスタのドレインは、前記第2の差動対の一方の出力段に、
前記オフセット調整回路用第2のトランジスタのドレインは、前記第2の差動対の他方の出力段に、
前記オフセット調整回路用第3のトランジスタのドレインは、前記第1の差動対の一方の出力段に、
前記オフセット調整回路用第4のトランジスタのドレインは、前記第1の差動対の他方の出力段に、それぞれ接続されてなることを特徴とする請求項16記載の差動増幅器。
【請求項18】
前記第1の差動対は、第1の差動対用第1のトランジスタのゲートが反転入力端子に、第1の差動対用第2のトランジスタのゲートが非反転入力端子に、それぞれ接続され、前記第1の差動対用第1のトランジスタのドレインには、第1の抵抗器を介して、前記第1の差動対用第2のトランジスタのドレインには、第2の抵抗器を介して、それぞれ前記正電源電圧が印加され、
前記第1の差動対用第1のトランジスタのドレインに接続される前記オフセット調整回路用第3のトランジスタの閾値電圧の絶対値に前記リファレンス電圧を加算した値と、前記第1の差動対用第2のトランジスタのドレインに接続されるオフセット調整回路用第4のトランジスタの閾値電圧の絶対値に前記リファレンス電圧を加算した値とが等しく、かつ、前記正電源電圧から前記第2の抵抗器における電圧降下を差し引いた値より大となるように設定されてなることを特徴とする請求項17記載の差動増幅器。
【請求項19】
CMOS素子に代えてバイポーラ素子を用いてなることを特徴とする請求項1乃至請求項9、請求項12乃至請求項17いずれか記載の差動増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演算増幅器やコンパレータに用いられる差動増幅器に係り、特に、同相入力電圧に対する入力オフセット電圧の改善を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
演算増幅器やコンパレータは、同相入力電圧の電圧範囲が広いこと、同相入力電圧に対して入力オフセット電圧の変動が少ないことが理想とされる。
図18には、同相入力電圧を負電源電圧から正電源電圧まで印加可能な差動増幅器を用いた従来の演算増幅器の回路構成例における回路図が示されており、以下、同図を参照しつつ、この従来の演算増幅器について説明する。
この従来の演算増幅器は、第1及び第2のトランジスタM1,M2により構成された第1の差動対101Xと、第3及び第4のトランジスタM3,M4、及び、第1の定電流源CS1により構成された第2の差動対102Xと、第5乃至第8のトランジスタM5~M8を用いて構成されたフォールデットカスコード回路103Xと、第10乃至第12のトランジスタM10~M12により構成されたテール電流供給回路104Xとに大別されて構成されたものとなっている。
【0003】
図19には、この従来の演算増幅器における入力オフセット電圧の同相入力電圧特性が示されており、同図を参照しつつ、この演算増幅器の動作について概説する。
この同相入力電圧特性は、正電源電圧VDD=5V、負電源電圧VSS=0Vにおいて、同相入力電圧Vicmを0Vから5Vまで掃引した場合の入力オフセット電圧をプロットしたものである。
図19によれば、従来の演算増幅器は、同相入力電圧Vicm=3.5Vを境界に、PMOS差動対動作と、NMOS差動対動作が切り替わることが確認できる。ここで、PMOS差動対とは、
図18における第2の差動対102Xを、また、NMOS差動対とは、
図18における第1の差動対101Xを、それぞれ意味するものとする。なお、同相入力電圧Vicm=3.5Vを境界に、PMOS差動対動作と、NMOS差動対動作が切り替わる理由は、
図18のリファレンス電圧端子45Xにリファレンス電圧Vref1=3.5Vを供給しているためである。このリファレンス電圧端子45Xに供給される電圧を境界に、PMOS差動対動作とNMOS差動対動作が切り替わる。
【0004】
したがって、同相入力電圧Vicm=3.5Vを境界にして、回路動作は次述するように切り替わることとなる。
まず、同相入力電圧Vicmが負電源電圧VSSとリファレンス電圧Vref1との間にある場合、PMOS差動対が動作する一方、NMOS差動対は非動作状態となる。
また、同相入力電圧Vicmがリファレンス電圧Vref1と正電源電圧VDDとの間にある場合、PMOS差動対は非動作状態となる一方、NMOS差動対は動作状態となる。
【0005】
このように、従来の演算増幅器は、動作する差動対の切り替わりが生ずるために、
図19に示されたように、同相入力電圧Vicm=3.5V以下の場合、入力オフセット電圧がほぼ0mVであるが、同相入力電圧Vicm=3.5V以上となると、入力オフセット電圧は0.4mV以上に悪化する。
【0006】
このNMOS差動対動作時における入力オフセット電圧が悪化する原因について、以下に説明する。
最初に結論を述べれば、入力オフセット電圧の悪化の理由は、PMOS差動対動作時とNMOS差動対動作時とで抵抗器R4における電圧降下の大きさが変化することにある。
【0007】
このことについて、以下詳述する。
まず、PMOS差動対動作時の抵抗器R4における電圧降下を導出する。
抵抗器R4における電圧降下を求めるために、PMOS差動対動作時のトランジスタM6のドレイン電流IM6を導出する。この電流IM6は、定電流源CS2、トランジスタM6、M9、抵抗器R2、R5を用いて、下記する式1の関係を満たすように定められる。
【0008】
(IM6×R2)+[2×IM6/{k’P×(W/L)M6}]1/2=(IM9×R5)+[2×IM9/{k’P×(W/L)M9}]1/2・・・式1
【0009】
ここで、IM6はトランジスタM6のドレイン電流、R2は抵抗器R2の抵抗値、k’PはPMOSトランジスタの移動度と単位面積当たりのゲート酸化膜容量の積、(W/L)M6はトランジスタM6のチャネル幅Wをチャネル長Lで除した値、IM9はトランジスタM9のドレイン電流、R5は抵抗器R5の抵抗値、(W/L)M9はトランジスタM9のチャネル幅Wをチャネル長Lで除した値である。
【0010】
この式1において、R2=R5、(W/L)M6=(W/L)M9とすると、トランジスタM6のドレイン電流IM6は、トランジスタM9のドレイン電流IM9と同じ大きさとなる。また、トランジスタM9のドレイン電流IM9は、電流源CS2の電流I2と等価である。したがって、PMOS差動対動作時のトランジスタM6のドレイン電流IM6は、下記する式2のように電流源CS2の電流I2となる。
【0011】
PMOS差動対動作時のIM6=IM9=I2・・・式2
【0012】
このドレイン電流IM6は、NMOSトランジスタM8を介して抵抗器R4に流れ込む。さらに、抵抗器R4には、PMOS差動対動作時は、トランジスタM4を介して電流源CS1の電流I1の半分が流れ込む。したがって、PMOS差動対動作時の抵抗器R4の電圧降下は、下記する式3の如くに表される。
【0013】
PMOS差動対動作時の抵抗器R4での電圧降下=R4×(I2+I1/2)・・・式3
【0014】
ここで、入力オフセット電圧は、抵抗器R4での電圧降下と、抵抗器R3での電圧降下が等しくなるように、すなわち、抵抗器R4と抵抗器R3の電圧降下の差を打ち消すように発生することは、一般的に良く知られている通りである。
つまり、入力オフセット電圧は、抵抗器R4での電圧降下の関数ということができる。したがって、先の式3により算出されるPMOS差動対動作時の抵抗器R4における電圧降下の大きさを、NMOS差動対動作時でも維持できれば、
図19に示されたような入力オフセット電圧の悪化は発生しない。
【0015】
しかし、
図18に示された従来の演算増幅器は、次述するように、NMOS差動対動作時の抵抗器R4での電圧降下の大きさは、PMOS差動対動作時の電圧降下の大きさを維持できず、
図19に示されたようにNMOS差動対動作時に入力オフセット電圧が悪化する。
まず、NMOS差動対動作時の回路動作を説明し、抵抗器R4の電圧降下を求める。
NMOS差動対動作時、電流源CS1の電流I1は、PMOS差動対のトランジスタM3,M4には流れず、PMOSトランジスタM10を介してNMOSトランジスタM11に流れる。
【0016】
ここで、NMOSトランジスタM11とM12は、カレントミラー構成であり、M11と同一の電流I1がM12に流れる。このM12に流れる電流I1は、トランジスタM1,M2で構成されるNMOS差動対のテール電流となり、NMOS差動対を動作させる。そのため、NMOSトランジスタM2を介して抵抗器R2に流れる電流の大きさは、電流I1の半分となる。したがって、トランジスタM6のドレイン電流は、下記する式4の関係を満たすように定められる。
【0017】
{(I1/2+IM6)×R2}+[2×IM6/{k’P×(W/L)M6}]1/2=(IM9×R5)+[2×IM9/{k’P×(W/L)M9}]1/2・・・式4
【0018】
ここで、R2=R5、(W/L)M6=(W/L)M9とした場合、少なくともトランジスタM6のドレイン電流IM6は、トランジスタM9のドレイン電流IM9より小さいことがわかる。トランジスタM9のドレイン電流IM9は、電流源CS2の電流I2と等価なので、トランジスタM6のドレイン電流IM6は、電流I2より小さいといえる。電流IM6が、電流I2よりどの程度小さいかを表す比率を定数Aとすると、下記する式5のようになる。
【0019】
NMOS差動対動作時のIM6=IM9/A=I2/A・・・式5
【0020】
ここで、定数Aは、1より大きな値であり、したがって式5は、電流IM6が電流IM9や電流I2より小さくなることを意味する。
【0021】
次に、PMOSトランジスタM4から抵抗器R4に流れ込む電流について説明する。
NMOS差動対動作時は、電流源CS1からの電流I1は、PMOSトランジスタM10に流れ、PMOSトランジスタM4には流れない。
したがって、NMOS差動対動作時の抵抗器R4における電圧降下は、下記する式6で表される。
【0022】
NMOS差動対動作時の抵抗器R4での電圧降下=R4×(I2/A)・・・式6
【0023】
PMOS差動対動作時の抵抗器R4での電圧降下は、先の式3で表された通りである。一方、NMOS差動対動作時の抵抗器R4における電圧降下は、上記式6の通りであり、PMOS差動対動作時とは異なる値となる。そのため、
図19に示されたようにNMOS差動対動作時は入力オフセット電圧が悪化する。
PMOS差動対動作時とNMOS差動対動作時とで、抵抗器R4における電圧降下の差分は、先の式3と式6の差として、下記する式7のように表される。
【0024】
PMOS差動対動作時とNMOS差動対動作時とでの抵抗器R4における電圧降下の差分=R4×(I2+I1/2)-R4×(I2/A)=R4×{I2(1-1/A)+I1/2}・・・式7
【0025】
この差分が大きくなるほど、
図19に示されたようにNMOS差動対動作時における入力オフセット電圧の悪化を招くこととなる。
このような同相入力電圧に対する入力オフセット電圧の改善策としては、例えば、特許文献1、2等に開示されたものがある。
特許文献2には、バイポーラトランジスタで構成された回路構成例が開示されおり、特許文献1には、バイポーラトランジスタをCMOSトランジスタに置き換えた回路構成例が示されている。
特許文献1に開示された回路と等価な回路構成例を
図20に示し、以下、同図を参照しつつ、入力オフセット電圧の改善策が施された回路について説明する。
【0026】
この
図20に示された回路は、先の
図18に示された回路構成に、NMOSトランジスタM100が付加された構成を有するものである。
図21には、この回路構成における入力オフセット電圧の同相入力電圧特性が示されている。同図において、点線の特性線が、特許文献1の技術を用いた場合の入力オフセット電圧の変化特性を、また、二点鎖線の特性線が、
図18に示された従来回路における入力オフセット電圧の変化特性を、それぞれ示している。
図21によれば、特許文献1の技術を用いることで、NMOS差動対動作時の入力オフセット電圧が0.4mV以上の電圧レベルから0.2mV程度に改善されることが確認できる。
【0027】
ここで、
図20に示された回路の動作について概説する。
この回路は、NMOS差動対動作時にのみNMOSトランジスタM100が動作し、ドレイン電流IM100が流れる点に特徴がある。
よって、NMOS差動対動作時におけるPMOSトランジスタM6のドレイン電流IM6は、下記する式8の関係式で表される。
【0028】
{(I1/2+IM6)×R2}+[2×IM6/{k’P×(W/L)M6}]1/2={(IM100+IM9)×R5}+[2×IM9/{k’P×(W/L)M9}]1/2・・・式8
【0029】
ここで、R2=R5、(W/L)M6=(W/L)M9とし、さらに、NMOSトランジスタM100のドレイン電流IM100=I1/2とすると、トランジスタM6のドレイン電流IM6は、トランジスタM9のドレイン電流IM9と同じ大きさとなる。トランジスタM9のドレイン電流IM9は、電流源CS2の電流IM2と等価なので、NMOS差動対動作時のトランジスタM6のドレイン電流IM6は、下記する式9のように電流源CS2の電流IM2となる。
【0030】
NMOS差動対動作時のIM6=IM9=I2・・・式9
【0031】
次に、PMOSトランジスタM4から抵抗器R4に流れ込む電流について説明する。
NMOS差動対動作時は、電流源CS1からの電流I1は、PMOSトランジスタM10に流れ、PMOSトランジスタM4には流入しないため、NMOS差動対動作時の抵抗器R4における電圧降下は、下記する式10で表される。
【0032】
NMOS差動対動作時の抵抗器R4における電圧降下=R4×I2・・・式10
【0033】
一方、PMOS差動対動作時の抵抗器R4における電圧降下は、先の式3で表される通りである。したがって、PMOS差動対動作時とNMOS差動対動作時とでの抵抗器R4における電圧降下の違いは、下記する式11の通りとなる。
【0034】
PMOS差動対動作時とNMOS差動対動作時とでの抵抗器R4における電圧降下の差分=R4×(I2+I1/2)-R4×I2=R4×I1/2・・・式11
【0035】
特許文献に開示された技術を用いた
図20の回路におけるPMOS差動対動作時とNMOS差動対動作時とでの抵抗器R4における電圧降下の差分は、
図18に示された回路における同様な差分(式7参照)よりも小さい。したがって、特許文献に開示された技術を適用した回路においては、入力オフセット電圧を改善することができ、その改善度は、先に
図21に示された通りである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【特許文献1】特開2018-7070号公報
【特許文献2】特開平8-237051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
しかしながら、特許文献に開示された技術を適用することで、上述のように確かに入力オフセット電圧改善効果はあるものの、式11に示されたように、理論上、完全に入力オフセット電圧を零とするには至っておらず、具体回路の回路定数等の選定によっては、必ずしも満足できる改善が実現されるとは限らない。
【0038】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、従来の入力オフセット電圧の改善策に比してより確実に入力オフセット電圧の改善を可能とする差動増幅器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0039】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係る差動増幅器は、
NチャンネルMOSFETを用いて差動増幅可能に構成されてなる第1の差動対と、PチャンネルMOSFETを用いて差動増幅可能に構成されてなる第2の差動対とが、入力に対して並列的に設けられ、各々の出力が加算可能に構成されてなる差動増幅器において、
カレントミラー回路が設けられ、前記カレントミラー回路は、
前記第1の差動対の出力段と前記第2の差動対の出力段のそれぞれに電流供給可能に構成されてなり、
同相入力電圧の変化に伴う前記第1の差動対と第2の差動対の動作の切り替わりによる前記第1及び第2の差動対の出力段の電圧変動を抑圧可能としてなるものである。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、入力オフセット電圧変動の要因となる回路電流の不均一を解消するようにしたので、従来の対策技術に比して入力オフセット電圧の変動をより確実に抑圧し、特性改善を図ることができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明の実施の形態における差動増幅器を用いた演算増幅器の第1の回路構成例を示す回路図である。
【
図2】
図1に示された第1の回路構成例のカレントミラー回路をブロック化した回路図である。
【
図3】本発明の実施の形態における差動増幅器を用いた演算増幅器の第2の回路構成例を示す回路図である。
【
図4】本発明の実施の形態における差動増幅器を用いた演算増幅器の第3の回路構成例を示す回路図である。
【
図5】
図4に示された第3の回路構成例のカレントミラー回路をブロック化した回路図である。
【
図6】本発明の実施の形態における差動増幅器を用いた演算増幅器の第4の回路構成例を示す回路図である。
【
図7】本発明の実施の形態における差動増幅器を用いた演算増幅器の第5の回路構成例を示す回路図である。
【
図8】本発明の実施の形態における差動増幅器を用いた演算増幅器の第6の回路構成例を示す回路図である。
【
図9】
図8に示された第6の回路構成例におけるオフセット調整回路とカレントミラー回路をブロック化した回路図である。
【
図10】本発明の実施の形態における差動増幅器を用いた演算増幅器の第7の回路構成例を示す回路図である。
【
図11】
図10に示された第7の回路構成例におけるカレントミラー回路をブロック化した回路図である。
【
図12】本発明の実施の形態における差動増幅器を用いた演算増幅器の第8の回路構成例を示す回路図である。
【
図13】本発明の実施の形態における差動増幅器を用いた演算増幅器の第9の回路構成例を示す回路図である。
【
図14】本発明の実施の形態における差動増幅器を用いた演算増幅器の第10の回路構成例を示す回路図である。
【
図15】
図14に示された第10の回路構成例におけるオフセット調整回路をブロック化した回路図である。
【
図16】
図2に示された回路構成においてバイポーラ素子を用いた場合の回路図である。
【
図17】本発明の実施の形態における差動増幅器を用いた演算増幅器の入力オフセット電圧の同相入力電圧依存性を示す特性線図である。
【
図18】従来の差動増幅器を用いた演算増幅器の一回路構成例を示す回路図である。
【
図19】
図18に示された従来回路における入力オフセット電圧の同相入力電圧依存性を示す特性線図である。
【
図20】他の従来回路の一回路構成例を示す回路図である。
【
図21】
図20に示された従来回路における入力オフセット電圧の同相入力電圧依存性を示す特性線図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態について、
図1乃至
図17を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態における差動増幅器を用いた演算増幅器の第1の回路構成例について、
図1を参照しつつ説明する。
この第1の回路構成例における演算増幅器は、本発明の実施の形態における差動増幅器DIF1に、フォールデットカスコード回路103と出力回路106が接続されて構成されたものとなっている。
【0043】
本発明の実施の形態における差動増幅器DIF1は、第1及び第2のトランジスタ(
図1においては、それぞれ「M1」、「M2」と表記)1,2により構成された第1の差動対101と、第3及び第4のトランジスタ(
図1においては、それぞれ「M3」、「M4」と表記)3,4、及び、第1の定電流源(
図1においては「CS1」と表記)71により構成された第2の差動対102と、第10乃至第12のトランジスタ(
図1においては、それぞれ「M10」、「M11」、「M12」と表記)10~12、及び、第101のトランジスタ(
図1においては「M101」と表記)15により構成されたテール電流供給回路104と、第201乃至第205のトランジスタ(
図1においては、それぞれ「M201」、「M202」、「M203」、「M204」、「M205」と表記)21~25により構成されたカレントミラー回路(
図1においては「CM1」と表記)105とに大別されて構成されたものとなっている。
【0044】
本発明の実施の形態における差動増幅器において、第1の差動対101と第2の差動対102は、信号入力に対して並列的に設けられており、各々の出力がフォールデットカスコード回路103において加算され、出力回路106を介して出力されるものとなっている。
【0045】
第1の差動対101を構成する第1及び第2のトランジスタ(第1の差動対用第1及び第2のトランジスタ)1,2には、NチャンネルMOSFET(NチャンネルMOS電界効果トランジスタ)が用いられている。なお、以下、説明の便宜上、”NチャンネルMOSFET”を”NMOSFET”と称する。同様に、以下、説明の便宜上、「PチャンネルMOSFET(PチャンネルMOS電界効果トランジスタ)」を「PMOSFET」と称する。
第1のトランジスタ1のドレインは、第1の抵抗器(
図1においては「R1」と表記)31を介して、第2のトランジスタ2のドレインは、第2の抵抗器(
図1においては「R2」と表記)32を介して、共に正電源電圧端子43に接続されて正電源電圧VDDが印加されるようになっている。一方、第1及び第2のトランジスタ1,2の各々のソースは、相互に接続されてNMOSFETを用いた第12のトランジスタ12のドレインに接続されている。
また、第1のトランジスタ1のゲートは、反転入力端子(
図1においては「INM」と表記)41に、第2のトランジスタ2のゲートは、非反転入力端子(
図1においては「INP」と表記)42に、それぞれ接続されている。
【0046】
第2の差動対102を構成する第3及び第4のトランジスタ3,4には、PMOSFETが用いられている。
第3及び第4のトランジスタ3,4のソースは相互に接続され、その接続点と正電源電圧端子43との間には、第1の定電流源(
図1においては「CS1」と表記)71が接続されている。
【0047】
また、第3のトランジスタ3のドレインは、第3の抵抗器(
図1においては「R3」と表記)33を介して、また、第4のトランジスタ4のドレインは、第4の抵抗器(
図1においては「R4」と表記)34を介して、共に、負電源電圧端子44に接続されて負電源電圧VSSが印加されるようになっている。
さらに、第3のトランジスタ3のゲートは、先の第1のトランジスタ1のゲートに、第4のトランジスタ4のゲートは、先の第2のトランジスタ2のゲートに、それぞれ接続されている。
【0048】
カレントミラー回路105は、PMOSFETを用いた第201乃至第205のトランジスタ21~25により次述するように構成されている。
第201乃至第205のトランジスタ21~25は、ソースが相互に接続されて、共通電位端子P0を介して正電源電圧端子43に接続されている。
また、第201乃至第205のトランジスタ21~25は、ゲートが相互に接続されると共に、第201のトランジスタ(入力段トランジスタ)21のドレインと共に、カレントミラー回路の入力端子P1に接続されている。
この入力端子P1には、先の第101のトランジスタ15のドレインが接続されている。
【0049】
さらに、第202のトランジスタ(第1の出力段トランジスタ)22のドレインは、カレントミラー回路の出力端子P2を介して、第3のトランジスタ3のドレインと、第3の抵抗器33と、第7のトランジスタ7のソースとの接続点に接続されている。
また、第203のトランジスタ(第2の出力段トランジスタ)23のドレインは、カレントミラー回路の出力端子P3を介して、第4のトランジスタ4のドレインと、第4の抵抗器34と、第8のトランジスタ8のソースとの接続点に接続されている。
【0050】
また、第204のトランジスタ(第3の出力段トランジスタ)24のドレインは、カレントミラー回路の出力端子P4を介して、第2のトランジスタ2のドレインと、第2の抵抗器32と、第6トランジスタ6のソースとの接続点に接続されている。
またさらに、第205のトランジスタ(第4の出力段トランジスタ)25のドレインは、カレントミラー回路の出力端子P5を介して、第1のトランジスタ1のドレインと、第1の抵抗器31と、第5のトランジスタ5のソースとの接続点に接続されている。
【0051】
テール電流供給回路104を構成する第10のトランジスタ10には、PMOSFETが、第11及び第12のトランジスタ11,12、並びに、第101のトランジスタ15には、共にNMOSFETが、それぞれ用いられており、次述するようにカレントミラー回路を構成するものとなっている。
まず、第10のトランジスタ10のゲートは、リファレンス電圧端子45に接続されてリファレンス電圧Vref1が外部から印加されるようになっている。
また、第10のトランジスタ10のソースは、第3及び第4のトランジスタ3,4のソースに接続されている。
さらに、第10のトランジスタ10のドレインは、第11のトランジスタ11のドレインに接続されている。
【0052】
第11及び第12のトランジスタ11,12、並びに、第101のトランジスタ15は、相互にゲートが接続されると共に、第11のトランジスタ11のドレインに接続されている。
また、第11及び第12のトランジスタ11,12、並びに、第101のトランジスタ15は、ソースが共に負電源電圧端子44に接続されて、負電源電圧VSSが印加されるようになっている。
そして、第11のトランジスタ11がカレントミラー元となっており、第12のトランジスタ12及び第101のトランジスタ15にミラー電流が出力される構成となっている。
【0053】
フォールデットカスコード回路103は、第1の差動対101と第2の差動対102を繋ぐ機能を有するもので、第5及び第6のトランジスタ5,6には、PMOSFETが、第7及び第8のトランジスタ7,8には、NMOSFETが、それぞれ用いられている。
第5及び第6のトランジスタ5,6は、各々のゲートが相互に接続される一方、第5のトランジスタ5のソースは、第1のトランジスタ1のドレインに、第6のトランジスタ6のソースは、第2のトランジスタ2のドレインに、それぞれ接続されている。
【0054】
また、第7及び第8のトランジスタ7,8は、各々のゲートと第7のトランジスタ7のドレインとが相互に接続されると共に、第5のトランジスタ5のドレインに接続されている。
また、第8のトランジスタ8のドレインは、第6のトランジスタ6のドレインに接続されている。
一方、第7のトランジスタ7のソースは、第3のトランジスタ3のドレインに、第8のトランジスタ8のソースは、第4のトランジスタ4のドレインに、それぞれ接続されている。
【0055】
出力回路106は、PMOSFETを用いた第9のトランジスタ(
図1においては「M9」と表記)9と、NMOSFETを用いた第13のトランジスタ(
図1においては「M13」と表記)13と、第2及び第3の定電流源(
図1においては、それぞれ「CS2」、「CS3」と表記)72,73を主たる構成要素として構成されている。
この出力回路106は、次述するようにフォールデットカスコード回路103と接続されている。
【0056】
フォールデットカスコード回路103における第5及び第6のトランジスタ5,6は、第9のトランジスタ9をミラー元とし、カレントミラー比1:1のカレントミラー回路を構成している。
すなわち、ミラー元用MOSトランジスタとしての第9のトランジスタ9は、そのゲートとドレインが相互に接続されてダイオード接続状態とされると共に、その接続点は、第5及び第6のトランジスタ5,6のゲートに接続されている。
【0057】
そして、第9のトランジスタ9のソースは、第5の抵抗器(
図1においては「R5」と表記)35を介して正電源電圧端子43に接続されて正電源電圧VDDが印加されるようになっている。一方、第9のトランジスタ9のドレインと負電源電圧端子44との間には、第2の定電流源72が接続されている。
また、フォールデットカスコード回路103の第6及び第8のトランジスタ6,8の相互に接続されたドレインには、出力トランジスタである第13のトランジスタ13のゲートが接続されている。
【0058】
第13のトランジスタ13のドレインと正電源電圧端子43との間には、第3の定電流源73が直列接続されて設けられると共に、ドレインは、出力端子46に接続されている。一方、第13のトランジスタ13のソースは、負電源電圧端子44に接続されて負電源電圧VSSが印加されるようになっている。さらに、第13のトランジスタ13のドレインとゲートとの間には、位相補償コンデンサ(
図1においては「Cc」と表記)40が接続されている。
【0059】
なお、
図2には、
図1において点線で囲まれたカレントミラー回路105をブロックとして表した回路図が示されている。
以下の回路動作の説明においては、
図1を参照することとし、
図2については、
図1の回路動作の説明を以て、
図2の回路動作の説明に代えることとする。
次に、かかる構成における回路動作について説明する。
最初に、以下の説明においては、説明の便宜上、第1の差動対101を”NMOS差動対”と、第2の差動対102を”PMOS差動対”と、それぞれ称することとする。
まず、PMOS差動対動作時の第4の抵抗器34における電圧降下は、従来回路(
図18、
図20参照)の場合と基本的に同様であり、下記する式12のように表される。
【0060】
PMOS差動対動作時の第4の抵抗器34での電圧降下=R4×(I2+I1/2)・・・式12
【0061】
なお、ここで、R4は、第4の抵抗器34の抵抗値とする。
また、I1は、第1の定電流源71の出力電流を、I2は、第2の定電流源72の出力電流を、それぞれ表すものとする。
【0062】
次に、NMOS差動対動作時の第4の抵抗器34における電圧降下を導出する。
NMOS差動対動作時、第11のトランジスタ11にドレイン電流が流れる。この第11のトランジスタ11とカレントミラーを構成する第101のトランジスタ15にもドレイン電流が流れる。そして、第201のトランジスタ21とカレントミラーを構成する第202のトランジスタ乃至第205のトランジスタ22~25にも、それぞれドレイン電流IM202、IM203、IM204、IM205が流れる。
【0063】
一方、第1及び第2のトランジスタ1,2のNMOS差動対には、第12のトランジスタ12のドレイン電流が流れる。この第12のトランジスタ12のドレイン電流は、第1の定電流源71のミラー電流であるため、その電流値はI1となる。
したがって、第1及び第2のトランジスタ1,2に、それぞれ流れるドレイン電流は、I1/2となる。
【0064】
ここで、本発明の実施の形態においては、第204及び205のトランジスタ24,25のドレイン電流を下記する式13で表される電流値とする。
【0065】
IM204=IM205=I1/2・・・式13
【0066】
このように、第1及び第2のトランジスタ1,2のドレイン電流I1/2は、第204及び第205のトランジスタ24,25のドレイン電流IM204、IM205で賄われることとなる。
その結果、第2の抵抗器32に流れる電流の大きさは、第6のトランジスタ6のドレイン電流IM6となる。
そして、この第6のトランジスタ6のドレイン電流IM6は、下記する式14で表される。
【0067】
(IM6×R2)+[2×IM6/{k’P×(W/L)M6}]1/2=(IM9×R5)+[2×IM9/{k’P×(W/L)M9}]1/2・・・式14
【0068】
ここで、IM6は第6のトランジスタ6のドレイン電流、R2は第2の抵抗器32の抵抗値、k’PはPMOSトランジスタの移動度と単位面積当たりのゲート酸化膜容量の積、(W/L)M6は第6のトランジスタ6のチャネル幅Wをチャネル長Lで除した値、IM9は第9のトランジスタ9のドレイン電流、R5は第5の抵抗器35の抵抗値、(W/L)M9は第9のトランジスタ9のチャネル幅Wをチャネル長Lで除した値である。
【0069】
この式14において、R2=R5、(W/L)M6=(W/L)M9とすると、第6のトランジスタ6のドレイン電流IM6は、第9のトランジスタ9のドレイン電流IM9と同じ大きさとなる。また、第9のトランジスタ9のドレイン電流IM9は、第2の電流源72の出力電流I2と等価となる。したがって、NMOS差動対動作時の第6のトランジスタ6のドレイン電流IM6は、下記する式15のように第2の電流源72の電流I2となる。
【0070】
NMOS差動対動作時のIM6=IM9=I2・・・式15
【0071】
このドレイン電流IM6は、第8のトランジスタ8を介して第4の抵抗器34に流れ込む。さらに、第4の抵抗器34には、第203のトランジスタ23のドレイン電流IM203が流れ込む。このドレイン電流IM203の大きさを、式16のように定める。
【0072】
IM203=IM202=I1/2・・・式16
【0073】
このように定めることで、NMOS差動対動作時の第4の抵抗器34における電圧降下は、下記する式17により求められる。
【0074】
NMOS差動対動作時の第4の抵抗器34での電圧降下=R4×(I2+I1/2)・・・式17
【0075】
結局、先に式12で示したPMOS差動時の第4の抵抗器34での電圧降下と同じ大きさとなる。
したがって、PMOS差動対動作時とNMOS差動対動作時とでの第4の抵抗器34での電圧降下の差分は零となる。
PMOS差動対動作時とNMOS差動対動作時とでの第4の抵抗器34における電圧降下の差分が零に近いほど、入力オフセット電圧はより改善されることは周知の通りであるが、本発明の実施の形態においては、上述のように数式上、第4の抵抗器34における電圧降下の差分は零である。したがって、本発明の実施の形態における差動増幅器は、特許文献1、2の技術を適用した従来回路よりも入力オフセット電圧が確実に改善できるものであることが確認できる。
【0076】
図17には、本発明の実施の形態における差動増幅器の同相入力電圧に対する入力オフセット電圧特性が示されており、以下、同図について説明する。
同図において、横軸は同相入力電圧を、縦軸は入力オフセット電圧を、それぞれ示している。
また、
図17においては、本発明の実施の形態における差動増幅器の同相入力電圧に対する入力オフセット電圧特性が実線の特性線で示されると共に、従来回路(
図18参照)の同特性が二点鎖線の特性線により、また、特許文献の技術を適用した回路(
図20参照)の同特性が点線の特性線により、それぞれ示されている。
【0077】
図17によれば、本発明の実施の形態における差動増幅器は、先に述べたように入力オフセット電圧はほぼ0mVであり、従来回路(
図18,
図20参照)に対して入力オフセット電圧の確実な改善が確認できる。
なお、本発明の実施の形態の差動増幅器においては、第204及び第205のトランジスタ24,25の回路定数設定には、下記する式18に示された条件を満たす必要がある。
【0078】
[2×IM204/{k’P×(W/L)M204}]1/2=[2×IM205/{k’P×(W/L)M205}]1/2<VR2・・・式18
【0079】
ここで、IM204は第204のトランジスタ24のドレイン電流、k’PはPMOSトランジスタの移動度と単位面積当たりのゲート酸化膜容量の積、(W/L)M204は第204のトランジスタ24のチャネル幅Wをチャネル長Lで除した値、(W/L)M205は第205のトランジスタ25のチャネル幅Wをチャネル長Lで除した値、IM205は第205のトランジスタ25のドレイン電流、VR2は第2の抵抗器32における電圧降下である。
この式18は、第204及び第205のトランジスタ24,25のオーバードライブ電圧が、第2の抵抗器32における電圧降下より低い値をとるということを意味する。
【0080】
仮に、この条件を満たさなかった場合、第204及び第205のトランジスタ24,25は、線形領域で動作することになり、所望のドレイン電流IM204,IM205が流れなくなるという問題が生ずる。
そのため、本発明の実施の形態においては、第204及び第205のトランジスタ24,25の回路定数を上述した条件下で設定する必要がある。
このように、本発明の実施の形態における差動増幅器にあっては、特許文献に開示された従来技術を適用する場合に比して入力オフセット電圧をより改善できるものとなっている。
【0081】
次に、第2の回路構成例について、
図3を参照しつつ説明する。
なお、
図1に示された構成例と同一の構成要素については、 同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第2の回路構成例は、第1の回路構成例におけるカレントミラー回路105に代えて、カレントミラー回路105Aが設けられた構成を有するものである。
すなわち、カレントミラー回路105Aは、PMOSFETである第201乃至第208のトランジスタ21~28を用いて構成されたものとなっている。
このカレントミラー回路105Aは、
図1に示されたカレントミラー回路105の回路構成を基本として、第206乃至第208のトランジスタ26~28が次述するように付加された構成となっている。
【0082】
先ず、第201乃至第203のトランジスタ21~23における回路接続については、それぞれのドレイン側を除いて、
図1に示された回路接続と同一である。また、第204及び205のトランジスタ24,25については、
図1に示された回路接続と同一であるので、これらの回路接続については、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明することとする。
【0083】
最初に、第206乃至第208のトランジスタ26乃至28は、各々のゲートが相互に接続されると共に、第206のトランジスタ26のドレインに接続されている。
また、第206のトランジスタ(カスコード用入力段トランジスタ)26のソースは、第201のトランジスタ21のドレインに、第207のトランジスタ(カスコード用第1の出力段トランジスタ)27のソースは、第202のトランジスタ22のドレインに、第208のトランジスタ(カスコード用第2の出力段トランジスタ)28のソースは、第203のトランジスタ23のドレインに、それぞれ接続されている。
【0084】
そして、第206のトランジスタ26のドレインは、入力端子P1に、第207のトランジスタ27のドレインは、出力端子P2に、第208のトランジスタ28のドレインは、出力端子P3に、それぞれ接続されている。
なお、
図3に示された回路図において、点線で囲まれたカレントミラー回路105Aをブロックとして表した回路図は、先に示された
図2の回路図と同一となる。
【0085】
次に、上述した構成における第2の回路構成例の回路動作について説明する。
この第2の回路構成例におけるカレントミラー回路105Aは、カスコードカレントミラー構成を有するものとなっている。すなわち、第201のトランジスタ21と第206のトランジスタ26、第202のトランジスタ22と第207のトランジスタ27、また、第203のトランジスタ23と第208のトランジスタ28は、それぞれカスコード接続されて、カレントミラーの一部を構成するものとなっている。
【0086】
このようなカスコードカレントミラー構成としたことで、第3の抵抗器33、第4の抵抗器34に流れ込む電流IM202、IM203の電源電圧依存性が抑制され、その結果、入力オフセット電圧の電源電圧依存性も抑制される。
なお、この第2の回路構成例においても、先の第1の回路構成例同様、第204及び第205のトランジスタ24,25の回路定数設定には、先の式18に示された条件を満たす必要がある。
【0087】
次に、第3の回路構成例について、
図4を参照しつつ説明する。
なお、
図1に示された構成例と同一の構成要素については、 同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第3の回路構成例は、第1の回路構成例におけるカレントミラー回路105に代えて、第1のカレントミラー回路(
図4においては「CM2」と表記)105B-1及び第2のカレントミラー回路(
図4においては「CM3」と表記)105B-2が、第1の回路構成例におけるテール電流供給回路104に代えて、テール電流供給回路104Aが、それぞれ設けられた構成を有するものである。
【0088】
まず、テール電流供給回路104Aは、第1の回路構成例に示されたテール電流供給回路104の構成に、NMOSFETの第102のトランジスタ(
図4においては「M102」と表記)16が付加された構成となっている。
すなわち、第102のトランジスタ16は、そのゲートが、第101のトランジスタ15、第11及び第12のトランジスタ11,12の各ゲートと相互に接続されて、第11のトランジスタ11のドレインと接続されている。
また、第102のトランジスタ16のソースは、負電源電圧端子44に接続される一方、ドレインは、次述する第1のカレントミラー回路105B-1の入力端子P11に接続されている。
【0089】
第1のカレントミラー回路105B-1は、第202及び第203のトランジスタ(第1のカレントミラー用第1及び第2の出力段トランジスタ)22,23、並びに、第211のトランジスタ(
図4においては「M211」と表記)29を有して構成されている。
また、第2のカレントミラー回路105B-2は、第201のトランジスタ(第2のカレントミラー用入力段トランジスタ)21、第204及び第205のトランジスタ(第2のカレントミラー用第1及び第2の出力段トランジスタ)24,25を有して構成されている。
第1及び第2のカレントミラー回路105B-1,105B-2のいずれも、PMOSFETが用いられている。
【0090】
第1のカレントミラー回路105B-1において、第211のトランジスタ(第1のカレントミラー用入力段トランジスタ)29、第202及び第203のトランジスタ22,23は、各々のゲートが相互に接続されると共に、第211のトランジスタ29のドレインに接続されており、この第211のトランジスタ29のドレインは、入力端子P11に接続されている。
この入力端子P11には、先の第102のトランジスタ16のドレインが接続されている。
【0091】
また、第211のトランジスタ29、第202及び第203のトランジスタ22,23は、ソースが相互に接続されて、共通電位端子P10を介して正電源電圧端子43に接続されている。
また、第202のトランジスタ22のドレインは、出力端子P12を介して、第3のトランジスタ3のドレインと、第3の抵抗器33と、第7のトランジスタ7のソースとの接続点に接続されている。
さらに、第203のトランジスタ23のドレインは、出力端子P13を介して、第4のトランジスタ4のドレインと、第4の抵抗器34と、第8のトランジスタ8のソースとの接続点に接続されている。
【0092】
次に、第2のカレントミラー回路105B-2において、第201のトランジスタ21、第204及び第205のトランジスタ24,25は、各々のゲートが相互に接続されると共に、第201のトランジスタ21のドレインに接続されている。そして、この第201のトランジスタ21のドレインは、入力端子P21を介して第101のトランジスタ15のドレインに接続されている。
【0093】
また、第201のトランジスタ21、第204及び第205のトランジスタ24,25は、ソースが相互に接続されて、共通電位端子P20を介して正電源電圧端子43に接続されている。
また、第204のトランジスタ24のドレインは、出力端子P22を介して、第2のトランジスタ2のドレインと、第2の抵抗器32と、第6のトランジスタ6のソースとの接続点に接続されている。
【0094】
さらに、第205のトランジスタ25のドレインは、出力端子P23を介して、第1のトランジスタ1のドレインと、第1の抵抗器31と、第5のトランジスタ5のソースとの接続点に接続されている。
なお、
図5には、第1及び第2のカレントミラー回路105B-1,105B-2をブロックとして表した回路図が示されている。
以下の回路動作の説明においては、
図4を参照することとし、
図5については、
図4の回路動作の説明を以て、
図5の回路動作の説明に代えることとする。
【0095】
かかる構成において、第1のカレントミラー回路105B-1は、第211のトランジスタ29、第202のトランジスタ22、及び、第203のトランジスタ23の各チャネル幅Wが短く、チャネル長Lが長く設定されており、チャネル長変調効果が抑制されたものとなっている。その結果、この第3の回路構成例においては、ドレイン電流IM202、IM203の電源電圧依存性が抑制される。
【0096】
一方、第2のカレントミラー回路105B-2は、第201のトランジスタ21、第204のトランジスタ24、及び、第205のトランジスタ25の各チャネル幅Wが長く、チャネル長Lが短く設定されており、それによって、オーバードライブ電圧が小さくなる。その結果、第204及び第205のトランジスタ24,25を飽和状態で動作させるための先の式18を満たす回路定数の設定を容易なものとしている。
このように、この第3の回路構成例においては、2つのカレントミラー回路105B-1,105B-2を設けることにより、先に説明した第1及び第2の回路構成例に比して回路定数の設定が容易となっている。
【0097】
次に、第4の回路構成例について、
図6を参照しつつ説明する。
なお、
図1又は
図4に示された構成例と同一の構成要素については、 同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第4の回路構成例は、
図4において示された第1のカレントミラー回路105B-1に代えて、次述する構成を有する第1のカレントミラー回路105Cが設けられた構成を有するものである。
第1のカレントミラー回路105Cは、第211のトランジスタ29、第202及び第203のトランジスタ22,23、並びに、第101乃至第103の抵抗器(
図6においては、それぞれ「R101」、「R102」、「R103」と表記)75~77を有して構成されている。
【0098】
この第1のカレントミラー回路105Cは、
図4に示された第1のカレントミラー回路105B-1に、第101乃至第103の抵抗器(調整用第1乃至第3の抵抗器)75~77が次述するように付加された構成となっている。
すなわち、第101乃至第103の抵抗器75~77は、第211のトランジスタ29、第202及び第203のトランジスタ22,23のソースと共通電位端子P10との間に設けられたものとなっている。
【0099】
具体的には、第101の抵抗器75は、第211のトランジスタ29のソースと共通電位端子P10との間に、第102の抵抗器76は、第202のトランジスタ22のソースと共通電位端子P10との間に、第103の抵抗器77は、第203のトランジスタ23のソースと共通電位端子P10との間に、それぞれ直列接続されて設けられている。
かかる構成においては、第101乃至第103の抵抗器75~77を設けたことで、第202及び第203のトランジスタ22,23のドレイン電流IM202、IM203の電源電圧依存性がさらに抑制されることとなる。
【0100】
次に、第5の回路構成例について、
図7を参照しつつ説明する。
なお、
図1又は
図6に示された構成例と同一の構成要素については、 同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第5の回路構成例は、
図6に示された第4の回路構成例における第102及び第103の抵抗器76,77を、抵抗値が可変可能な可変抵抗器である第102及び第103の抵抗器(
図7においては、それぞれ、「R102A」、「R102B」と表記)76A,77Aに変えた点が、第4の回路構成例と異なるもので、残余の部分は、基本的に同一の構成を有してなるものである。
【0101】
かかる構成においては、NMOS差動対動作時にのみ流れるドレイン電流IM202、IM203を、可変抵抗器である第102及び第103の抵抗器76A,77Aを用いてトリミングすることで、入力オフセット電圧の調整が可能となっている。すなわち、この第5の回路構成例は、PMOS差動対動作時の入力オフセット電圧を維持したまま、NMOS差動対動作時の入力オフセット電圧のみを調整可能としたものである。
【0102】
次に、第6の回路構成例について、
図8を参照しつつ説明する。
なお、
図1又は
図4に示された構成例と同一の構成要素については、 同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第6の回路構成例は、
図4に示された第3の回路構成例における第1のカレントミラー回路105B-1、
図6に示された第4の回路構成例における第1のカレントミラー回路105C、
図7に示された第5の回路構成例における第1のカレントミラー回路105Dを、オフセット調整回路100に変えると共に、同様に、各回路構成例におけるテール電流供給回路104Aを、テール電流供給回路104に変えた構成を有してなるものである。
【0103】
すなわち、第6の回路構成例は、オフセット調整回路100が設けられた回路部分を除けば、残余の回路構成は、
図4、
図6、及び、
図7のそれぞれと同一構成を有するものである。
以下、具体的な回路構成について説明する。
まず、オフセット調整回路100は、第1の定電流源71と第2の差動対102の出力段との間に設けられた構成となっている。
【0104】
このオフセット調整回路100は、第202及び第203のトランジスタ(オフセット調整回路用第1及び第2のトランジスタ)22,23を有して構成されている。
第202及び第203のトランジスタ22,23は、ゲートが相互に接続されると共に、共通電位端子P101を介して第10のトランジスタ10のゲートと接続されている。
【0105】
また、第202及び第203のトランジスタ22,23は、ソースが相互に接続されると共に、入力端子P102を介して第10のトランジスタ10のソースに接続されている。
また、第202のトランジスタ22のドレインは、出力端子P103を介して第3のトランジスタ3のドレインと第3の抵抗器33との接続点に接続されている。
さらに、第203のトランジスタ23のドレインは、出力端子P104を介して第4のトランジスタ4のドレインと第4の抵抗器34との接続点に接続されている。
【0106】
なお、
図9には、オフセット調整回路(
図9においては「OF-AJD」と表記)100をブロックとして表した回路図が示されている。
以下の回路動作の説明においては、
図8を参照することとし、
図9については、
図8の回路動作の説明を以て、
図9の回路動作の説明に代えることとする。
この第6の回路構成例は、次述するように低消費電流化が実現できるものとなっている。
【0107】
まず、NMOS差動対動作時、第1の定電流源71から流れる電流I1の一部が、電流IP102としてオフセット調整回路100に流入する。この電流IP102は、第202及び第203のトランジスタ22,23で分割されて、電流IM202、電流IM203となり、第3及び第4の抵抗器33,34に流れ込む。このように、第1の定電流源71の電流I1の一部を、第3及び第4の抵抗器33,34に流し込む電流として用いることで低消費電流化を可能としている。
【0108】
なお、この第6の回路構成例においては、これまでの回路構成例と異なり、NMOS差動対動作時に、第204及び第205のトランジスタ24,25に流れる電流IM204、電流IM205の大きさが、第1の定電流源71の電流I1の半分の大きさとは限らない。そのため、ドレイン電流IM204、IM205の大きさは、適宜、シミュレータなどを用いた調整が必要となる。
【0109】
次に、第7の回路構成例について、
図10を参照しつつ説明する。
なお、
図1又は
図4に示された構成例と同一の構成要素については、 同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第7の回路構成例は、
図4、
図6、
図7において、それぞれ示された2つのカレントミラー回路を用いる構成に代えて、一方の第1のカレントミラー回路105B-1のみを用いる構成としたものである。
なお、
図11には、
図10における第1のカレントミラー回路105B-1をブロックとして表した回路図が示されている。
以下の回路動作の説明においては、
図10を参照することとし、
図11については、
図10の回路動作の説明を以て、
図11の回路動作の説明に代えることとする。
【0110】
この第7の回路構成例は、既に説明した回路構成例に比して、必要な素子数が少なく、そのため、チップ面積の縮小化が図られたものとなっている。
なお、NMOS差動対動作時に、第202及び第203のトランジスタ22,23に流れるドレイン電流IM202、IM203は、シミュレータなどを用いて入力オフセット電圧が小さくなるように調整が必要となる。
【0111】
先に説明した回路構成例において、ドレイン電流IM202、IM203は、第1の定電流源71の電流I1の半分であったが、この第7の回路構成例の場合、これまでとは異なり、NMOS差動対動作時に差動増幅器に追加的に流入する電流は、ドレイン電流IM202、IM203のみである。
それ故、入力オフセット電圧は、ドレイン電流IM202、IM203のみで調整することとなる。
【0112】
次に、第8の回路構成例について、
図12を参照しつつ説明する。
なお、
図1、
図6、又は、
図10に示された構成例と同一の構成要素については、 同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第8の回路構成例は、先の第7の回路構成例における第1のカレントミラー回路105B-1を、第1のカレントミラー回路105C(
図6参照)に変えた構成を有するものである。
【0113】
かかる第8の回路構成例においては、第101乃至第103の抵抗器75~77を設けたことで、第202及び第203のトランジスタ22,23のドレイン電流IM202、IM203の電源電圧依存性が抑制されるものとなっている。そのため、この第8の回路構成例は、入力オフセット電圧の電源電圧依存性の抑制が可能となっている。
【0114】
次に、第9の回路構成例について、
図13を参照しつつ説明する。
なお、
図1、
図7、又は、
図12に示された構成例と同一の構成要素については、 同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第9の回路構成例は、
図12に示された第8の回路構成例における第1のカレントミラー回路105Cに代えて、先に
図7に示された第1のカレントミラー回路105Dが設けられた構成を有するものである。
【0115】
かかる構成においては、NMOS差動対動作時にのみ流れるドレイン電流IM202、IM203を、可変抵抗器である第102及び第103の抵抗器76A,77Aを用いてトリミングすることで、入力オフセット電圧の調整が可能となる。すなわち、この第9の回路構成例は、PMOS差動対動作時の入力オフセット電圧を維持したまま、NMOS差動対動作時の入力オフセット電圧のみを調整可能としたものである。
【0116】
次に、第10の回路構成例について、
図14を参照しつつ説明する。
なお、
図1、又は、
図8に示された構成例と同一の構成要素については、 同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第10の回路構成例は、
図8に示された第6の回路構成例におけるオフセット調整回路100を第2のオフセット調整回路200に、また、テール電流供給回路104を、テール電流供給回路104Bに、それぞれ変えた構成を有してなるものである。
【0117】
まず、第2のオフセット調整回路200は、第202乃至第205のトランジスタ(オフセット調整回路用第1乃至第4のトランジスタ)22~25を有して構成されたものとなっている。
また、テール電流供給回路104Bは、第10乃至第12のトランジスタ10~12を有して構成されたものとなっている。
以下、具体的な回路構成について説明する。
第2のオフセット調整回路200は、第202乃至第205のトランジスタ22~25のゲートが相互に接続されると共に、共通電位端子P101を介して第10のトランジスタ10のゲートと接続されている。
【0118】
また、第202乃至第205のトランジスタ22~25は、ソースが相互に接続されると共に、入力端子P102を介して第10のトランジスタ10のソースに接続されている。
また、第202のトランジスタ22のドレインは、出力端子P103を介して第3のトランジスタ3のドレインと第3の抵抗器33との接続点に接続されている。
【0119】
さらに、第203のトランジスタ23のドレインは、出力端子P104を介して第4のトランジスタ4のドレインと第4の抵抗器34との接続点に接続されている。
またさらに、第204のトランジスタ24のドレインは、出力端子P105を介して、第1のトランジスタ1のドレインと第1の抵抗器31との接続点に接続されている。
また、第205のトランジスタ25のドレインは、出力端子P106を介して、第2のトランジスタ2のドレインと第2の抵抗器32との接続点に接続されている。
【0120】
一方、テール電流供給回路104Bは、
図1に示された第1の回路構成例のテール電流供給回路104における第101のトランジスタ15を除いた構成を有してなるものであり、ここでの再度の詳細な回路構成についての説明は省略することとする。
【0121】
なお、
図15には、
図14における第2のオフセット調整回路200をブロックとして表した回路図が示されている。
以下の回路動作の説明においては、
図14を参照することとし、
図15については、
図14の回路動作の説明を以て、
図15の回路動作の説明に代えることとする。
【0122】
この第10の回路構成例は、これまでの回路構成例よりも低消費電流化を図った差動増幅器が実現できる。この低消費電流化が可能な理由を以下に説明する。
NMOS差動対動作時、第1の定電流源71から流れる電流I1の一部が、電流IP102として第2のオフセット調整回路200に流入する。この電流IP102は、第202乃至第205のトランジスタ22~25で分割され、電流IM202~IM205となる。
【0123】
そして、電流IM202は、第3の抵抗器33に、電流IM203は、第4の抵抗器34に、それぞれ流れ込む。
また、電流IM204は、第1の抵抗器31と、第1のトランジスタ1のドレインと、第5のトランジスタ5のソースとの接続点に流れ込む。
さらに、電流IM205は、第2の抵抗器32と、第2のトランジスタ2のドレインと、第6のトランジスタ6のソースとの接続点に流れ込む。
このように、第10の回路構成例においては、第1の定電流源71の電流I1の一部を、差動増幅器に流し込む電流として使いまわすことで低消費電流化が可能となっている。
【0124】
なお、この第10の回路構成例においては、第204及び第205のトランジスタ24,25の定数設定の際、下記する式19の条件を満たす必要がある。
【0125】
Vref1+VthM204=Vref1+VthM205>VDD-VR2・・・式19
【0126】
ここで、Vref1は、リファレンス電圧端子45に外部から印加されるリファレンス電圧、VthM204は、第204のトランジスタ24の閾値電圧の絶対値、VthM205は、第205のトランジスタ25の閾値電圧の絶対値、VDDは、正電源電圧、VR2は、第2の抵抗器32における電圧降下である。
【0127】
この式19の条件は、第204及び第205のトランジスタ24,25が飽和領域で動作することを表したものである。
この式19の導出過程について、以下に説明する。
まず、第204のトランジスタ24のゲート電位は、Vref1であるので、ソース電位は、下記する式20により表される。
【0128】
第204のトランジスタ24のソース電位=Vref1+VgsM204=Vref1+VthM204+VovM204・・・式20
【0129】
ここで、VgsM204は、第204のトランジスタ24のゲートとソース間の電位差の絶対値、VovM204は、第204のトランジスタ24のオーバードライブ電圧である。
したがって、下記する式21に示されるように、第204のトランジスタ24のソース電位よりオーバードライブ電圧分だけ下がった電位が、第204のトランジスタ24のドレイン電位となる。
【0130】
第204のトランジスタ24のドレイン電位=Vref1+VthM204・・・式21
【0131】
これが第204のトランジスタ24のドレイン電位であり、この第10の回路構成例に必要な条件式である先の式19の左辺となる。
例えば、正電源電圧VDD=5V、Vref1=3.7V、VthM204=0.7V、VovM204=0.2Vの場合、第204のトランジスタ24のソース電位は、4.6Vとなる。そして、このソース電位からVovM204=0.2Vを差し引いた4.4Vが、第204のトランジスタ24のドレイン電位となる。この4.4Vは、式21でも導くことができる値である。この際、第1の抵抗器31と第204のトランジスタ24の接続点の電位、及び、第2の抵抗器32と第205のトランジスタ25の接続点の電位は、4.4Vより低い値とする必要がある。
以上が、式19の意味するところである。
【0132】
このように、この第10の回路構成例は、これまでの回路構成例に比して低消費電流化が可能なものとなっている。なお、NMOS差動対動作時に、第202乃至第205のトランジスタ22~25に流れるドレイン電流IM202~IM204は、シミュレータなどを用いて入力オフセット電圧が小さくなるように調整が必要となる。
【0133】
上述の第1乃至第10の回路構成例においては、CMOS素子を用いた回路構成を説明したが、本発明は、CMOS素子に限定されるものではなく、バイポーラ素子を用いて構成することも可能である。
図16には、
図1、
図2に示された回路構成例におけるCMOS素子であるNMOSトランジスタをNPN型バイポーラトランジスタに、同じくPMOSトランジスタをPNP型バイポーラトランジスタに、それぞれ置き換えた場合の回路図が示されている。
なお、
図1等においてCMOS素子を意味するため用いた”M”の表記を、
図16においては、”Q”の表記に変えてバイポーラトランジスタを意味するものとしている。
【0134】
なお、具体的な回路接続については、MOSトランジスタのゲートをバイポーラトランジスタのベースに、MOSトランジスタのソースをバイポーラトランジスタのエミッタに、MOSトランジスタのドレインをバイポーラトランジスタのコレクタに、それぞれ読み替えることで先に
図1、
図2で説明した回路構成と基本的に同様であるので、ここでの再度の詳細な説明は省略することとする。
【産業上の利用可能性】
【0135】
従来の入力オフセット電圧の改善策に比してより確実に入力オフセット電圧の改善が所望される差動増幅器に適用できる。
【符号の説明】
【0136】
100…オフセット調整回路
101…第1の差動対
102…第2の差動対
104,104A,104B…テール電流供給回路
105,105A,105C,105D…カレントミラー回路
105B-1…第1のカレントミラー回路
105B-2…第2のカレントミラー回路
200…第2のオフセット調整回路