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特開2023-12993シクロヘキサン骨格を有するジオール化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012993
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】シクロヘキサン骨格を有するジオール化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/145 20060101AFI20230119BHJP
   C07C 35/14 20060101ALI20230119BHJP
   C07C 35/21 20060101ALI20230119BHJP
   C07C 29/56 20060101ALI20230119BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230119BHJP
【FI】
C07C29/145
C07C35/14
C07C35/21
C07C29/56 C
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116828
(22)【出願日】2021-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(72)【発明者】
【氏名】猪木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】古里 伸一
(72)【発明者】
【氏名】川邉 俊行
(72)【発明者】
【氏名】佐治木 弘尚
(72)【発明者】
【氏名】井川 貴詞
(72)【発明者】
【氏名】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】朴 貴煥
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC14
4H006AC41
4H006BA21
4H006BA23
4H006BA26
4H006BC10
4H006BC11
4H006BE20
4H006FC22
4H006FE12
4H039CA60
4H039CB20
4H039CJ10
(57)【要約】
【課題】 全トランス体/シス含有体の比率の高いシクロヘキサン骨格を有するジオール化合物を穏和な反応条件で取得可能なプロセス提供すること。
【解決手段】 シクロヘキサン骨格を有するジオン化合物、シクロヘキサン骨格を有するケトール化合物、またはジヒドロキシアリール化合物、およびシクロヘキサン骨格を有するジオール化合物から選択された少なくとも1つの化合物を原料とし、金属触媒存在下、溶媒を添加せずに固相状態で、水素雰囲気下で反応を行うことにより、全トランス体/シス含有体の比率が1.5を超え、10000以下である、シクロヘキサン骨格を有するジオール化合物の製造方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロヘキサン骨格を有するジオン化合物、シクロヘキサン骨格を有するケトール化合物、ジヒドロキシアリール化合物、およびシクロヘキサン骨格を有するジオール化合物から選択された少なくとも1つの化合物を原料とし、金属触媒存在下、溶媒を添加せずに固相状態で、水素雰囲気下で反応を行うことにより、全トランス体/シス含有体の比率が1.5を超え、10000以下であり、一般式(1)で示される化合物の製造方法。


ここで、式(1)中のヒドロキシ基で置換されていない炭素原子に直結した各水素原子は独立して、ハロゲン、炭素数1~20のアルキル、炭素数1~20のハロゲン化アルキル、炭素数3~20のシクロアルキル、または炭素数4~30のアリールで置換されていてもよく、各置換基が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。また、式(1)中、nは0~2の整数であり、ヒドロキシ基の結合位置はオルト、メタまたはパラ位のいずれであってもよく、nが1~2の場合の各シクロヘキサン骨格の結合位置はオルト、メタまたはパラ位を示す。
【請求項2】
前記原料がシクロヘキサン骨格を有するジオール化合物であり、前記反応がシクロヘキサン骨格を有するジオール化合物の全トランス体/シス含有体の比率を高くする異性化反応である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記原料が、シクロヘキサン骨格を有するジオン化合物、シクロヘキサン骨格を有するケトール化合物、およびジヒドロキシアリール化合物から選択された少なくとも1つの化合物であり、前記反応が接触水素化反応を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記金属触媒が、周期表第8族、第9族、第10族、および第11族から選択された少なくとも1つの金属を含む触媒である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記金属触媒が、Ru、Rh、NiまたはPtを含む触媒である、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記金属触媒が、金属塩、金属酸化物、金属元素、金属微粉末、多孔質状金属触媒、または金属担持触媒であり、前記金属担持触媒の担体が、酸化物、水化物、炭素、およびセルロースから選択された少なくとも1つの担体である、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記反応における水素の分圧が0.01~50MPaであり、反応温度が10~180℃である、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全トランス体/シス含有体の比率の高いシクロヘキサン骨格を有するジオール化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジオール化合物は、種々ポリマー材料の製造に使用され、例えばジカルボン酸とジオール化合物から誘導されるポリエステルは、優れた機械的性質、耐熱性、ならびに耐薬品性を有する。また、ジオール化合物を原料とするポリカーボネートは、耐衝撃性や軽量性等の優れた特性を有しているため、医療用材料やエンジニアプラスチック等として有用である。
ジオール化合物の中でも、その主鎖構造に脂環式構造を有する脂環式ジオールを原料とする種々ポリマーは、他の脂肪族ジオールを原料とするポリマーに比較して高いガラス転移点を示すため有用な高分子材料である。
脂環式ジオールの水酸基の立体異性体として、トランス体とシス体があり、例えば1,4-シクロヘキサンジオールは、原料であるヒドロキノンや1,4-シクロヘキサンジオンを溶媒および金属触媒存在下、加熱、加圧下に接触水素化する技術が知られており、この時得られる1,4-シクロヘキサンジオールのトランス体/シス体の比率は通常約0~1.5の範囲である(特許文献1)。当該トランス体/シス体の比率は1,4-シクロヘキサンジオールを原料として得られるポリマーの重要な特性に影響を及ぼすことが知られており、当該トランス体/シス体の比率の安定制御がポリマーの品質安定に繋がるため重要である。特に、トランス体/シス体の比率の高い1,4-シクロヘキサンジオール化合物は、ガラス転移温度、衝撃強度、耐候性、及び加水分解安定性において、高い安定性と安定した品質を有するポリマーを得るうえで重要である。
【0003】
トランス体/シス体の比率の高い1,4-シクロヘキサンジオールを得る手法として、特定の溶媒を用いてシクロヘキサンジオールを再結晶する方法(特許文献2)や、保護・脱保護を用いて再結晶する方法(非特許文献1)などが知られている。しかし、これらの方法は元の1,4-シクロヘキサンジオールの異性体比により収率が大きく影響される。
【0004】
さらに、合成的にトランス体/シス体の比率の高い1,4-シクロヘキサンジオールを得る手法としては、シクロヘキサノールに標識官能基を結合させたのち、酵素により立体選択的にヒドロキシル基を導入し、標識官能基を除去することで1,4-シクロヘキサンジオールを選択的に合成する手法が報告されている(非特許文献2)。本手法は高選択的にトランス―1,4-シクロヘキサンジオールがられるものの、保護、脱保護の工程が必要な上、脱離した標識官能基が廃棄物となるため、グリーンケミストリーの観点から環境に優しいプロセスとは言えない。
【0005】
一方でグリーン・サステナブル・ケミストリーの観点から溶媒を用いず、かつ原料、中間体、生成物、触媒が固体である固相状態での水素化、ならびに鈴木カップリングの報告例がある。水素化は、パラジウム触媒の存在下、水素の分圧が大気圧条件下にて、不飽和炭化水素、アジド誘導体、ベンジルエーテルなどで良好な水素化反応の進行を確認している(非特許文献3)。しかしながら、これまでに1,4-シクロヘキサンジオールのようなシクロヘキサン骨格を有するジオール化合物の接触水素化反応や異性化反応を、溶媒を用いず固相状態で行う方法については検討されていない。
【0006】
グリーンケミストリーの観点から環境に調和したシクロヘキサン骨格を有するジオール化合物の製造プロセスの開発が必要であり、かつトランス体/シス体の比率の高いシクロヘキサン骨格を有するジオール化合物を穏和な反応条件で取得可能なプロセス開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭45-6009号
【特許文献2】特開平5-155797号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc. 66 (1944) 1096-1099
【非特許文献2】Org. Biomol. Chem. 12 (2014) 2479-2488
【非特許文献3】Tetrahedron 67 (2011) 8628-8634
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、グリーンケミストリーの観点から環境に調和したシクロヘキサン骨格を有するジオール化合物の製造プロセスであり、かつ全トランス体/シス含有体の比率の高いシクロヘキサン骨格を有するジオール化合物を安定して取得可能なプロセス開発を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討の結果、接触水素化反応、またはトランス-シス異性化反応を金属触媒存在下、溶媒を用いずに固相状態で行うことにより、全トランス体/シス含有体の比率の高いシクロヘキサン骨格を有するジオール化合物を穏和な反応条件で取得可能なことを見出した。
上記のような知見に基づき、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0011】
[1]シクロヘキサン骨格を有するジオン化合物、シクロヘキサン骨格を有するケトール化合物、ジヒドロキシアリール化合物、およびシクロヘキサン骨格を有するジオール化合物から選択された少なくとも1つの化合物を原料とし、金属触媒存在下、溶媒を添加せずに固相状態で、水素雰囲気下で反応を行うことにより、全トランス体/シス含有体の比率が1.5を超え、10000以下であり、一般式(1)で示される化合物の製造方法。


ここで、式(1)中のヒドロキシ基で置換されていない炭素原子に直結した各水素原子は独立して、ハロゲン、炭素数1~20のアルキル、炭素数1~20のハロゲン化アルキル、炭素数3~20のシクロアルキル、または炭素数4~30のアリールで置換されていてもよく、各置換基が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。また、式(1)中、nは0~2の整数であり、ヒドロキシ基の結合位置はオルト、メタまたはパラ位のいずれであってもよく、nは1~2の場合の各シクロヘキサン骨格の結合位置はオルト、メタまたはパラ位を示す。
【0012】
[2]前記原料がシクロヘキサン骨格を有するジオール化合物であり、前記反応がシクロヘキサン骨格を有するジオール化合物の全トランス体/シス含有体の比率を高くする異性化反応である、[1]に記載の製造方法。
【0013】
[3]前記原料が、シクロヘキサン骨格を有するジオン化合物、シクロヘキサン骨格を有するケトール化合物、およびジヒドロキシアリール化合物から選択された少なくとも1つの化合物であり、前記反応が接触水素化反応を含む、[1]に記載の製造方法。
【0014】
[4]前記金属触媒が、周期表第8族、第9族、第10族、および第11族から選択された少なくとも1つの金属を含む触媒である、[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
【0015】
[5]前記金属触媒が、Ru、Rh、NiまたはPtを含む触媒である、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
【0016】
[6]前記金属触媒が、金属塩、金属酸化物、金属元素、金属微粉末、多孔質状金属触媒、または金属担持触媒であり、前記金属担持触媒の担体が、酸化物、水化物、炭素、およびセルロースから選択された少なくとも1つの担体である、[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
【0017】
[7]前記反応における水素の分圧が0.01~50MPaであり、反応温度が10~180℃である、[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るシクロヘキサン骨格を有するジオール化合物の製造方法は、従来に比べ全トランス体/シス含有体の比率の高いシクロヘキサン骨格を有するジオール化合物を穏和な反応条件で取得可能であり、かつ反応溶媒を用いない点からグリーンケミストリー上、環境に優しいプロセスと言える。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る実施の形態について説明する。なお、本発明は下記の実施の形態によって限定されるものではない。
【0020】
本発明のシクロヘキサン骨格を有するジオール化合物の製造方法は、原料と金属触媒に溶媒を添加せずに固相状態で、水素雰囲気下で反応を行うことにより、シクロヘキサン骨格を有するジオール化合物の全トランス体/シス含有体の比率が通常手法の溶液系で実施するよりも高くなることを特徴としている。
【0021】
本発明の製造方法によって得られるシクロヘキサン骨格を有するジオール化合物は、一般式(1)で示される化合物であり、その全トランス体/シス含有体の比率は1.5を超え、10000以下であり、好ましくは1.6~5000であり、より好ましくは1.8~1000である。全トランス体/シス含有体の比率を上記範囲とすることによって、高品質を有するポリエステルやポリカーボネートなどの原材料として好適に利用することができる。
ここで、全トランス体とは、一般式(1)において、各シクロヘキサン骨格に結合したヒドロキシ基または他のシクロヘキサン骨格が、全てトランス位で結合している化合物を意味する。また、シス含有体とは、一般式(1)において、各シクロヘキサン骨格に結合したヒドロキシ基または他のシクロヘキサン骨格の少なくとも1つがシス位で結合している化合物を意味する。
より具体的には、1つのシクロヘキサン骨格を有するジオール化合物(一般式(1)におけるn=0)の場合、全トランス体とは、2つのヒドロキシ基がシクロヘキサン骨格にトランス位で結合している化合物であり、シス含有体とは2つのヒドロキシ基がシクロヘキサン骨格にシス位で結合している化合物である。
また、2つのシクロヘキサン骨格を有するジオール化合物(一般式(1)におけるn=1)の場合、2つのシクロヘキサン骨格に対して、ヒドロキシ基または他方のシクロヘキサン骨格がいずれもトランス位で結合している化合物であり、シス含有体とは、2つのシクロヘキサン骨格に対して、ヒドロキシ基または他方のシクロヘキサン骨格の少なくとも1つがシス位で結合している化合物である。
また、3つのシクロヘキサン骨格を有するジオール化合物(一般式(1)におけるn=2)の場合、3つのシクロヘキサン骨格に対して、ヒドロキシ基または他のシクロヘキサン骨格の全てがトランス位で結合している化合物であり、シス含有体とは、3つのシクロヘキサン骨格に対して、ヒドロキシ基または他のシクロヘキサン骨格の少なくとも1つがシス位で結合している化合物である。
そして、全トランス体/シス含有体の比率とは、全トランス体の合計量を、シス含有体の合計量(シス含有体が複数ある場合は、全てのシス含有体の合計量)で除した値を意味する。


ここで、式(1)中のヒドロキシ基で置換されていない炭素原子に直結した各水素原子は独立して、ハロゲン、炭素数1~20のアルキル、炭素数1~20のハロゲン化アルキル、炭素数3~20のシクロアルキル、または炭素数4~30のアリールで置換されていてもよく、各置換基が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。また、式(1)中、nは0~2の整数であり、ヒドロキシ基の結合位置はオルト、メタまたはパラ位のいずれであってもよく、nは1~2の場合の各シクロヘキサン骨格の結合位置はオルト、メタまたはパラ位を示す。
【0022】
本発明に用いる原料は、シクロヘキサン骨格を有するジオン化合物、シクロヘキサン骨格を有するケトール化合物、ジヒドロキシアリール化合物、およびシクロヘキサン骨格を有するジオール化合物から選択された少なくとも1つの化合物を特に制限なく使用することができる。
【0023】
シクロヘキサン骨格を有するジオン化合物を原料とした場合には、下記反応スキームの通り、接触水素化反応により2つのカルボニル基の還元が起こり、全トランス体/シス含有体の比率が低いシクロヘキサン骨格を有するジオール化合物が得られる。この際、反応中間体として1つのカルボニル基が還元されたシクロヘキサン骨格を有するケトール化合物を経由する。その後、さらに異性化反応によって、全トランス体/シス含有体の比率の高いシクロヘキサン骨格を有するジオール化合物が得られる。

【0024】
シクロヘキサン骨格を有するケトール化合物を原料とした場合には、下記反応スキームの通り、接触水素化反応により1つのカルボニル基の還元が起こり、全トランス体/シス含有体の比率が低いシクロヘキサン骨格を有するジオール化合物が得られた後、さらに異性化反応によって、全トランス体/シス含有体の比率の高いシクロヘキサン骨格を有するジオール化合物が得られる。

【0025】
ジヒドロキシアリール化合物を原料とした場合には、下記反応スキームの通り、接触水素化反応によりアリールの還元が起こり、全トランス体/シス含有体の比率が低いシクロヘキサン骨格を有するジオール化合物が得られた後、さらに異性化反応によって、全トランス体/シス含有体の比率の高いシクロヘキサン骨格を有するジオール化合物が得られる。

【0026】
シクロヘキサン骨格を有するジオール化合物を原料とする場合、異性化反応によって、全トランス体/シス含有体の比率の高いシクロヘキサン骨格を有するジオール化合物が得られる。
【0027】
本発明に用いる金属触媒の金属としては、特に限定されないが、周期表第8族、第9族、第10族、および第11族から選択された少なくとも1つの金属であることが好ましく、より好ましくは、Ru、Rh、NiまたはPtであり、さらに好ましくは、Ruである。
金属触媒の状態については特に限定されず、金属塩や金属酸化物、金属元素、金属微粉末であってもよく、これらの金属触媒をそのまま、または多孔質状(多孔質状金属触媒)にして用いてもよいし、担体に担持された状態(金属担持触媒)であってもよい。
【0028】
担体としては、酸化物、水化物、炭素、セルロースなどが挙げられ、これらのうちから少なくとも1つ以上を用いることができる。
酸化物としては、シリカ、アルミナ、チタニア、セラミック、ジルコニア、ニオビア、ゼオライトなどが挙げられ、水化物としては、ヒドロキシアパタイト、ニオブ酸、ジルコニウム酸、タングステン酸、チタン酸などが挙げられ、炭素としては、活性炭、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、酸化グラフェン、カーボンナノチューブなどが挙げられる。
【0029】
金属担持触媒における金属担持量は、特に限定されないが、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは0.2~10重量%である。
金属触媒は乾燥した状態でもよく、また触媒の運搬、保管、秤量を容易に行うため水等で湿潤した状態でも良い。湿潤した状態の水の量としては、好ましくは1~5000重量%、より好ましくは5~1000重量%である。
【0030】
触媒濃度は幅広い範囲内で変化させてよいが、多いほど本発明の反応が進みやすくなるが、経済的な面を考慮すると、好ましくは0.001~50mol%(原料mol数量に対する触媒金属のmol数量)、より好ましくは0.01~20mol%、さらに好ましくは0.1~10mol%の範囲に調整する。
【0031】
本発明の実施形態は、原料と金属触媒を反応装置に仕込み、溶媒を添加せずに固相状態で水素を置換して、所定の反応温度、混合条件において実施する。
反応装置は、ガス置換可能な容器であれば良く、フラスコ、オートクレーブなどが使用可能である。また、容器自体が回転して内部を混合可能なロータリーエバポレーターの応用や愛知電機株式会社製「ロッキングミキサー」も使用可能であり、原料と触媒を予め混合して充填したカラム型固定床などに水素をフィードする方法も可能である。さらに、固体を半連続的に取り扱うことが可能な流動床型反応器、ナウターミキサー、リボンブレンダー、株式会社神鋼環境ソリューション社製「SVミキサー」、「PVミキサー」なども使用可能である。
【0032】
原料と金属触媒の仕込み方法については、個別に仕込んでも良く、予め混合した状態を仕込んでも良い。反応器の撹拌動力の急激な負荷を抑制するため、反応器の撹拌を稼働させたまま仕込んでも良い。
【0033】
反応器内の水素置換方法は、水素を多量に導入して置換する方法、水素や不活性ガスによる加圧、パージを繰り返す方法、反応器内を減圧した後に水素を導入することを繰り返す方法などがある。本発明の実施形態は、溶媒を添加せずに固相状態での反応であることから、溶媒の蒸発などの懸念がないため、反応器内を減圧した後に水素を導入することを繰り返す方法が好ましい。
【0034】
反応器内の水素は不活性ガスとの混合状態でも良く、水素の分圧は、特に限定されないが、好ましくは0.01~50MPa、より好ましくは0.05~5MPa、さらに好ましくは0.08~0.98MPaである。
反応温度は、特に限定されないが、好ましくは10~180℃、より好ましくは30~150℃、さらに好ましくは50~120℃である。
混合条件は、原料と金属触媒が十分に混合された状態が維持されればよい。予め混合した状態で仕込んだ場合は、反応器内で特別に混合しなくても良い。
【0035】
金属触媒は、反応後に反応混合物を溶媒に溶解させて不均一化し、ろ別によって反応混合物から容易に除去可能である。ろ別した金属触媒に更なる処置を行わずに接触水素化反応や異性化反応に繰り返し使用してもよい。また、触媒を水等で洗浄し、最初の水等で湿潤した状態で繰り返し使用してもよい。
【0036】
反応混合物は、水、アルコール、エーテル、炭化水素、ケトンおよびエステルから選択された少なくとも1つの溶媒に溶解することができる。例えば、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-エチルヘキサノール、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、イソ酪酸イソブチル、およびそれらの混合物が挙げられる。入手のし易さや操作性から好ましくは、水、メタノール、2-プロパノール、テトラヒドロフラン、アセトン、酢酸エチルである。
【0037】
上記以外の反応後の反応混合物からの触媒の除去方法として、化合物の物性にも依存するが、蒸留、昇華、溶融等の慣用方法を用いることもできる。
【実施例0038】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
[実施例1]
(大気圧下での接触水素化反応の例)
反応装置は東京理化器械株式会社製「パーソナル有機合成装置ChemiStationTM PPM-5512型」を使用した。
原料である1,4-シクロヘキサンジオン(1,4-CHK)8.92mmol、金属触媒として50重量%含水5重量%Ru/C(A-type/エヌ・イー ケムキャット社製)1.5g(触媒Ru/C中のルテニウム含量が原料の4.2mol%量)を120mL試験管に投入した。試験管内を脱気した後、水素ガスバルーンを装着し、水素ガス雰囲気下に置換した後、反応温度を80℃に設定し、300rpmの撹拌速度で6時間撹拌して反応させた。
【0040】
(反応後の後処理)
その後、得られた反応混合物にメタノール20mLを添加して反応混合物を溶解させ、メンブレンフィルター(ADVANTEC社製、DISMIC(登録商標)、13HP020AN、孔径0.20μm)を用いてろ別することにより、金属触媒Ru/Cを除去した反応ろ液を得た。また、反応に使用した金属触媒Ru/Cを別途酢酸エチル10mLで洗浄し、洗浄液を回収した。該洗浄液を先に得た反応ろ液と合一させ、ガスクロマトグラフィー(島津製作所社製GC―2030)で測定することにより、原料と反応生成物の比率を算出した。なお、反応生成物として、原料の1,4-シクロヘキサンジオン(1,4-CHK)、一還元体の4-ヒドロキシシクロヘキサノン(4-CHO)、二還元体のうちシス体をcis-1,4-シクロヘキサンジオール(cis-CHD)、トランス体をtrans-1,4-シクロヘキサンジオール(trans-CHD)、および副生成物としてothersがあり、以下の表中にGC組成を表記した。また、1,4-CHDの全トランス体/シス含有体の比率も表中に併記した。
【0041】
[実施例2]
(加圧下での接触水素化反応の例)
反応装置は東京理化器械株式会社製「パーソナル有機合成装置ChemiStationTM PPV-4400型」を使用した。
原料である1,4-CHK 8.92mmol、金属触媒として50重量%含水5重量%Ru/C(A-type/エヌ・イー ケムキャット社製)0.40gを120mL反応管に投入した。その後、ガスラインを接続し、水素ガス雰囲気下に置換した後、水素の分圧0.8MPaG、反応温度を80℃に設定し、300rpmの撹拌速度で6時間撹拌して反応させた。
反応後の後処理については実施例1と同様に実施した。
【0042】
[比較例1]
(イソプロパノール中における加圧下での接触水素化反応の例)
反応装置は東京理化器械株式会社製「パーソナル有機合成装置ChemiStationTM PPV-4400型」を使用した。
原料である1,4-CHK 8.92mmol、金属触媒として50重量%含水5重量%Ru/C(A-type/エヌ・イー ケムキャット社製)0.40g、反応溶媒としてイソプロパノール(IPA)20mLを120mL反応管に投入した。その後、ガスラインを接続し、水素ガス雰囲気下に置換した後、水素の分圧0.8MPaG、反応温度を80℃に設定し、600rpmの撹拌速度で6時間撹拌して反応させた。
その後、得られた反応液をメンブレンフィルター(ADVANTEC社製、DISMIC(登録商標)、13HP020AN、孔径0.20μm)でろ別することにより、金属触媒Ru/Cを除去した反応ろ液を得た。以降の操作は実施例1と同様に実施した。
実施例1~2、および比較例1の結果を併せて下記表1に示す。
【0043】
【表1】


実施例1~2と比較例1の比較から、溶媒を添加せずに固相状態で接触水素化反応を行うことにより、全トランス体/シス含有体の比率の高い1,4-シクロヘキサンジオールが得られることがわかる。
【0044】
[実施例3]
(大気圧下での異性化反応の例)
反応装置は東京理化器械株式会社製「パーソナル有機合成装置ChemiStationTM PPM-5512型」を使用した。
原料である1,4-シクロヘキサンジオール(1,4-CHD)8.61mmol、金属触媒として5重量%Ru/C(A-typeドライ/エヌ・イー ケムキャット社製)0.20gを120mL試験管に投入した。試験管内を脱気した後、水素ガスバルーンを装着し、水素ガス雰囲気下に置換した後、反応温度を60℃に設定し、300rpmの撹拌速度で6時間撹拌して反応させた。
反応後の後処理については実施例1と同様に実施した。なお、反応生成物として、1,4-CHDの立体異性体のうちシス体をcis-1,4-シクロヘキサンジオール(cis-CHD)、トランス体をtrans-1,4-シクロヘキサンジオール(trans-CHD)、および副生成物としてothersがあり、以下の表中にGC組成を表記した。また、1,4-CHDの全トランス体/シス含有体の比率も表中に併記した。
【0045】
[実施例4]
実施例3の反応温度を80℃に変えたほかは、同様に実施した。
【0046】
[実施例5]
実施例4の触媒をスポンジニッケル(東京化成工業社製)0.20gに変えたほかは、同様に実施した。
【0047】
[実施例6]
(加圧下での異性化反応の例)
反応装置は東京理化器械株式会社製「パーソナル有機合成装置ChemiStationTM PPV-4400型」を使用した。
原料である1,4-シクロヘキサンジオール(1,4-CHD)8.61mmol、金属触媒として5重量%Ru/C(A-typeドライ/エヌ・イー ケムキャット社製)0.20gを120mL反応管に投入した。その後、ガスラインを接続し、水素ガス雰囲気下に置換した後、水素の分圧0.8MPaG、反応温度を80℃に設定し、300rpmの撹拌速度で6時間撹拌して反応させた。
反応後の後処理については実施例1と同様に実施した。
【0048】
[比較例2]
(メタノール中における大気圧下での異性化反応の例)
反応装置は東京理化器械株式会社製「パーソナル有機合成装置ChemiStationTM PPM-5512型」を使用した。
原料である1,4-CHD 8.61mmol、金属触媒として50重量%含水5重量%Ru/C(A-type/エヌ・イー ケムキャット社製)0.40g、反応溶媒としてメタノール20mLを120mL試験管に投入した。試験管内を脱気した後、水素ガスバルーンを装着し、水素ガス雰囲気下に置換した後、反応温度を60℃に設定し、600rpmの撹拌速度で6時間撹拌して反応させた。
反応後の後処理については比較例1と同様に実施した。
【0049】
[比較例3~4]
比較例2の反応溶媒をそれぞれイソプロピルアルコール(IPA)、テトラヒドロフラン(THF)と変えたほかは同様に実施した。
実施例3~6、および比較例2~4の結果を併せて下記表2に示す。
【0050】
【表2】


実施例3~6と比較例2~4の比較から、溶媒を添加せずに固相状態で異性化反応を行うことにより、全トランス体/シス含有体の比率が高くなることがわかる。
【0051】
[実施例7]
実施例4の原料を1,2-シクロヘキサンジオール(1,2-CHD)に変えたほかは、同様に実施した。
なお、反応生成物として、1,2-CHDの立体異性体のうちシス体をcis-1,2-シクロヘキサンジオール(cis-CHD)、トランス体をtrans-1,2-シクロヘキサンジオール(trans-CHD)、および副生成物としてothersがあり、以下の表中にGC組成を表記した。また、1,2-CHDの全トランス体/シス含有体の比率も表中に併記した。
【0052】
[実施例8]
実施例7の触媒をスポンジニッケル(東京化成工業社製)0.20gに変えたほかは、同様に実施した。
【0053】
[実施例9]
(加圧下での異性化反応の例)
反応装置は東京理化器械株式会社製「パーソナル有機合成装置ChemiStationTM PPV-4400型」を使用した。
原料である1,2-シクロヘキサンジオール(1,2-CHD)8.61mmol、金属触媒として5重量%Ru/C(A-typeドライ/エヌ・イー ケムキャット社製)0.20gを120mL反応管に投入した。その後、ガスラインを接続し、水素ガス雰囲気下に置換した後、水素の分圧0.8MPaG、反応温度を80℃に設定し、300rpmの撹拌速度で6時間撹拌して反応させた。
反応後の後処理については実施例1と同様に実施した。
【0054】
[比較例5]
(メタノール中における大気圧下での異性化反応の例)
反応装置は東京理化器械株式会社製「パーソナル有機合成装置ChemiStationTM PPM-5512型」を使用した。
原料である1,2-CHD 8.61mmol、金属触媒として50重量%含水5重量%Ru/C(A-type/エヌ・イー ケムキャット社製)0.40g、反応溶媒としてメタノール20mLを120mL反応管に投入した。試験管内を脱気した後、水素ガスバルーンを装着し、水素ガス雰囲気下に置換した後、反応温度を60℃に設定し、600rpmの撹拌速度で6時間撹拌して反応させた。
反応後の後処理については比較例1と同様に実施した。
【0055】
[比較例6~8]
比較例5の反応溶媒をそれぞれイソプロピルアルコール(IPA)、酢酸エチル、テトラヒドロフラン(THF)と変えたほかは同様に実施した。
実施例7~9、および比較例5~8の結果を併せて下記表3に示す。
【0056】
【表3】


実施例7~9と比較例5~8の比較から、溶媒を添加せずに固相状態で異性化反応を行うことにより、全トランス体/シス含有体の比率が高くなることがわかる。
【0057】
[実施例10]
(加圧下での異性化反応の例)
反応装置は東京理化器械株式会社製「パーソナル有機合成装置ChemiStationTM PPV-4400型」を使用した。
原料である4,4’-ビシクロヘキサノール5.04mmol、金属触媒として50重量%含水5重量%Ru/C(A-type/エヌ・イー ケムキャット社製)0.40gを120mL反応管に投入した。その後、ガスラインを接続し、水素ガス雰囲気下に置換した後、水素の分圧0.4MPaG、反応温度を80℃に設定し、300rpmの撹拌速度で6時間撹拌して反応させた。
反応後の後処理については実施例1と同様に実施した。なお、反応生成物として、4,4’-ビシクロヘキサノールの立体異性体として(1s,1‘s,4S,4’S)-[1,1‘-ビ(シクロヘキサン)]-4,4’-ジオール(c-c-体)、(1r,1‘s,4R,4’S)-[1,1‘-ビ(シクロヘキサン)]-4,4’-ジオール(c-t-体)、(1r,1‘r,4R,4’R)-[1,1‘-ビ(シクロヘキサン)]-4,4’-ジオール(t-t-体)、および副生成物としてothersがあり、以下の表中にGC組成を表記した。また、表中に併記した全トランス体/シス含有体の比率は、c-c-体とc-t-体の合計量に対するt-t-体の比率である。
【0058】
[実施例11]
実施例10の反応温度を100℃に変えたほかは、同様に実施した。
【0059】
[実施例12]
実施例10の反応温度を120℃に変えたほかは、同様に実施した。
【0060】
[実施例13]
実施例12の水素の分圧を0.8MPaGに変えたほかは、同様に実施した。
【0061】
[実施例14]
実施例13の金属触媒を50重量%含水5重量%Rh/C(A-type/エヌ・イー ケムキャット社製)1.00gに変えたほかは、同様に実施した。
【0062】
[実施例15]
(大気圧下での異性化反応の例)
反応装置は東京理化器械株式会社製「パーソナル有機合成装置ChemiStationTM PPM-5512型」を使用した。
原料である4,4’-ビシクロヘキサノール2.52mmol、触媒として50重量%含水5重量%Ru/C(A-type/エヌ・イー ケムキャット社製)1.50gを120mL試験管に投入した。試験管内を脱気した後、水素ガスバルーンを装着し、水素ガス雰囲気下に置換した後、反応温度を120℃に設定し、300rpmの撹拌速度で6時間撹拌して反応させた。
反応後の後処理については実施例1と同様に実施した。
【0063】
[実施例16]
実施例15の触媒を5重量%Ru/Al(富士フィルム和光純薬社製)0.75gに変えたほかは、同様に実施した。
【0064】
[実施例17]
実施例15の触媒を50重量%含水3重量%Pt/C(富士フィルム和光純薬社製)0.10gに変えたほかは、同様に実施した。
【0065】
[比較例9]
(メタノール中における加圧下での異性化反応の例)
反応装置は東京理化器械株式会社製「パーソナル有機合成装置ChemiStationTM PPV-4400型」を使用した。
原料である4,4’-ビシクロヘキサノール5.04mmol、金属触媒として50重量%含水5重量%Ru/C(A-type/エヌ・イー ケムキャット社製)0.40g、反応溶媒としてメタノール20mLを120mL反応管に投入した。その後、ガスラインを接続し、水素ガス雰囲気下に置換した後、水素の分圧0.8MPaG、反応温度を80℃に設定し、600rpmの撹拌速度で6時間撹拌して反応させた。
反応後の後処理については比較例1と同様に実施した。
実施例10~17、および比較例9の結果を併せて下記表4に示す。
【0066】
【表4】


実施例10~17と比較例9の比較から、溶媒を添加せずに固相状態で異性化反応を行うことにより、全トランス体/シス含有体の比率が高くなることがわかる。
【0067】
[実施例18]
(加圧下での接触水素化反応の例)
反応装置は東京理化器械株式会社製「パーソナル有機合成装置ChemiStationTM PPV-4400型」を使用した。
原料である4,4’-ジヒドロキシビフェニル5.04mmol、金属触媒として50重量%含水5重量%Ru/C(A-type/エヌ・イー ケムキャット社製)0.40gを120mL反応管に投入した。その後、ガスラインを接続し、水素ガス雰囲気下に置換した後、水素の分圧0.8MPaG、反応温度を120℃に設定し、300rpmの撹拌速度で6時間撹拌して反応させた。
反応後の後処理については実施例1と同様に実施した。なお、反応生成物として、4,4’-ビシクロヘキサノールの立体異性体として(1s,1‘s,4S,4’S)-[1,1‘-ビ(シクロヘキサン)]-4,4’-ジオール(c-c-体)、(1r,1‘s,4R,4’S)-[1,1‘-ビ(シクロヘキサン)]-4,4’-ジオール(c-t-体)、(1r,1‘r,4R,4’R)-[1,1‘-ビ(シクロヘキサン)]-4,4’-ジオール(t-t-体)、および副生成物としてothersがあり、以下の表中にGC組成を表記した。また、表中に併記した全トランス体/シス含有体の比率は、c-c-体とc-t-体の合計量に対するt-t-体の比率である。
【0068】
[実施例19]
実施例18の触媒を5重量%Ru/Al(S-type/エヌ・イー ケムキャット社製)0.75gに変えたほかは、同様に実施した。
【0069】
[比較例10]
(イソプロパノール中における加圧下での接触水素化反応の例)
反応装置は東京理化器械株式会社製「パーソナル有機合成装置ChemiStationTM PPV-4400型」を使用した。
原料である4,4’-ジヒドロキシビフェニル5.04mmol、金属触媒として50重量%含水5重量%Ru/C(A-type/エヌ・イー ケムキャット社製)0.40g、反応溶媒としてイソプロパノール20mLを120mL反応管に投入した。その後、ガスラインを接続し、水素ガス雰囲気下に置換した後、水素の分圧0.8MPaG、反応温度を120℃に設定し、900rpmの撹拌速度で6時間撹拌して反応させた。
反応後の後処理については比較例1と同様に実施した。
実施例18~19、および比較例10の結果を併せて下記表5に示す。
【0070】
【表5】

実施例18~19と比較例10の比較から、溶媒を添加せずに固相状態で異性化反応を行うことにより、全トランス体/シス含有体の比率の高い4,4’-ビシクロヘキサノールが得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の製造方法により得られた全トランス体/シス含有体の比率の高いシクロヘキサン骨格を有するジオール化合物は、ガラス転移温度、衝撃強度、耐候性、及び加水分解安定性において、高い安定性と安定した品質を有するポリエステルやポリカーボネートなどの原材料に好適に利用することができる。