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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130037
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】基板加熱装置及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20230912BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20230912BHJP
   C23C 16/46 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
H01L21/31 B
H01L21/68 N
C23C16/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034478
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】本間 学
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA06
4K030AA09
4K030AA11
4K030AA13
4K030AA14
4K030BA10
4K030BA18
4K030BA38
4K030BA40
4K030BA42
4K030BA44
4K030CA04
4K030EA04
4K030FA10
4K030GA06
4K030KA23
4K030KA46
5F045AA06
5F045AB31
5F045AB32
5F045AB33
5F045AC07
5F045AC11
5F045AC12
5F045AC15
5F045AC16
5F045AC17
5F045BB08
5F045DP15
5F045EK03
5F045EM09
5F131AA02
5F131BA04
5F131CA03
5F131EA04
5F131EA24
5F131EB53
5F131EB67
5F131EB81
(57)【要約】
【課題】加熱に要する消費電力を抑制し、温度制御性を向上する基板加熱装置及び基板処理装置を提供する。
【解決手段】誘導加熱コイルと、基板を載置して保持する基板保持部を有し、前記誘導加熱コイルによって誘導加熱される保持トレイと、前記保持トレイを支持し、回転自在に設けられる回転テーブルと、備える、基板加熱装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導加熱コイルと、
基板を載置して保持する基板保持部を有し、前記誘導加熱コイルによって誘導加熱される保持トレイと、
前記保持トレイを支持し、回転自在に設けられる回転テーブルと、
を備える、基板加熱装置。
【請求項2】
前記保持トレイは、前記基板保持部が形成される絶縁体部材と、前記絶縁体部材内に配置される磁性体部材と、を有する、
請求項1に記載の基板加熱装置。
【請求項3】
前記磁性体部材は、前記基板が載置される前記基板保持部の載置面の下に配置される、
請求項2に記載の基板加熱装置。
【請求項4】
前記絶縁体部材は、AlNまたはAlで形成され、
前記磁性体部材は、FeまたはSUS430で形成される、
請求項2に記載の基板加熱装置。
【請求項5】
前記保持トレイは、前記基板保持部が形成される磁性体部材を有する、
請求項1に記載の基板加熱装置。
【請求項6】
前記磁性体部材は、カーボンで形成される、
請求項4に記載の基板加熱装置。
【請求項7】
前記回転テーブルは、石英で形成される、
請求項1に記載の基板加熱装置。
【請求項8】
前記回転テーブルは、前記回転テーブルと前記保持トレイとの熱伝導を抑制する熱伝導抑制部を介して、前記保持トレイを支持する、
請求項1に記載の基板加熱装置。
【請求項9】
前記熱伝導抑制部は、
前記保持トレイの外周に設けられたフランジ部と、
前記回転テーブルに設けられた係止部とを有し、
前記保持トレイと前記回転テーブルとは、前記フランジ部及び前記係止部で当接する、
請求項8に記載の基板加熱装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の基板加熱装置を備える、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板加熱装置及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ウェハが載置されるウェハ支持台を収容する複数の凹状の収容部を有し、これら複数の収容部が周方向に並んで配置された搭載プレートと、搭載プレートの上面に対向して配置されたシーリングと、搭載プレートの下面およびシーリングの上面に対向配置され、誘導加熱により搭載プレートおよびシーリングを加熱する誘導コイルと、を備るエピタキシャルウェハの製造装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-127612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一の側面では、本開示は、加熱に要する消費電力を抑制し、温度制御性を向上する基板加熱装置及び基板処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、一の態様によれば、誘導加熱コイルと、基板を載置して保持する基板保持部を有し、前記誘導加熱コイルによって誘導加熱される保持トレイと、前記保持トレイを支持し、回転自在に設けられる回転テーブルと、備える、基板加熱装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、加熱に要する消費電力を抑制し、温度制御性を向上する基板加熱装置及び基板処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る基板処理装置の一例を示す断面模式図。
図2】実施形態に係るチャンバ内の構造を説明するための図。
図3】実施形態に係る制御部のハードウエア構成の一例を示す図。
図4】回転テーブルの収容部及び支持トレイの構造を説明する断面図の一例。
図5】回転テーブルの収容部及び支持トレイの構造を説明する断面図の他の一例。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
[基板処理装置]
まず、実施形態に係る基板処理装置について、図1から図3を用いて説明する。図1は、実施形態に係る基板処理装置の一例を示す断面模式図である。なお、以下の説明において、基板処理装置は、成膜装置であるものとして説明する。
【0010】
本開示の基板処理装置は、略円形の平面形状を有するチャンバ1と、チャンバ1内に設けられ、チャンバ1の中心に回転中心を有する回転テーブル2とを有する。チャンバ1は、有底の円筒形状を有する容器本体12と、容器本体12の上面に対して、例えばOリング等のシール部材13を介して気密に着脱可能に配置される天板11とを有している。
【0011】
回転テーブル2は、中心部にて円筒形状のコア部21に固定され、コア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されて回転可能に設けられている。回転軸22は、チャンバ1の底部14を貫通し、その下端が回転軸22を鉛直軸回りに回転させる駆動部23に取り付けられている。回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。容器本体12の底部14とケース体20の間には、ベローズ16が設けられている。これにより、ケース体20は、チャンバ1の底部14の下面に気密に取り付けられており、ケース体20の内部雰囲気が外部雰囲気から隔離される。駆動部23は、モータであってもよい。
【0012】
また、ベローズ16の外側には、回転テーブル2を昇降させ、回転テーブル2の高さを変更可能な昇降機構17が設けられている。かかる昇降機構17により、回転テーブル2を昇降させ、回転テーブル2の昇降に対応して、天井面45とウエハWとの間の距離を変更可能に構成される。なお、昇降機構17は、回転テーブル2を昇降可能であれば、種々の構成により実現されてよいが、例えば、ギア等により、回転軸22の長さを伸縮させる構造であってもよい。
【0013】
チャンバ1内の外縁部には、第1の排気口610が設けられ、排気管630に連通している。排気管630は、圧力調整器650を介して、真空ポンプ640に接続され、チャンバ1内が、第1の排気口610から排気可能に構成されている。
【0014】
回転テーブル2は、例えば石英(SiO)、Al等の絶縁体で形成される。また、回転テーブル2は、例えば石英(SiO)等の熱伝導性の低い絶縁体で形成されることが好ましい。回転テーブル2は、コア部21、回転軸22及び駆動部23によって、回転自在に設けられている。回転テーブル2には、複数の保持トレイ25を収容して支持するための収容部24が設けられている。なお、図1(及び後述する図4,5)に示す例において、収容部24は、回転テーブル2を貫通する貫通穴として形成されるものとして図示しているが、これに限られるものではない。収容部24は、回転テーブル2の上面に形成され、保持トレイ25を収容可能な有底の凹部として形成されていてもよい。
【0015】
保持トレイ25は、その上面に、半導体ウエハ(以下「基板」あるいは「ウエハ」という)Wを載置して保持するための円形状の凹部(基板保持部)26が設けられている。また、保持トレイ25を収容部24に収容した際、保持トレイ25の上面(凹部26よりも外側の上面)と回転テーブル2の上面(収容部24よりも外側の上面)とが同じ高さになるように形成されている。
【0016】
図2は、実施形態に係るチャンバ1内の構造を説明するための図である。図2において、実施形態に係る基板処理装置を上から見たときに、天板11の図示を省略してチャンバ1内の構造を示している。
【0017】
図2に示すように、回転テーブル2の回転方向(周方向)に沿って複数(図示の例では5枚)の保持トレイ25が設けられている。各保持トレイ25には、半導体ウエハ(以下「基板」あるいは「ウエハ」という)Wを載置するための円形状の凹部26が設けられている。なお、図2では、1個の凹部26にウエハWを載置した状態を示す。この凹部26は、ウエハWの直径(例えば300mm)よりも僅かに(例えば2mm)大きい内径と、ウエハWの厚さにほぼ等しい深さとを有しており、ウエハWを載置可能な載置部である。従って、ウエハWを保持トレイ25の凹部26に載置すると、ウエハWの上面、保持トレイ25の上面及び回転テーブル2の上面とが同じ高さになる。凹部26の底面には、ウエハWの裏面を支えてウエハWを昇降させるための例えば3本の昇降ピンが貫通する貫通孔(いずれも図示せず)が形成されている。搬送口15は、外部の搬送アーム10と回転テーブル2との間でウエハWの受け渡しを行う。
【0018】
なお、回転テーブル2の収容部24及び保持トレイ25については、図4および図5を用いて後述する。
【0019】
回転テーブル2の上方には、各々例えば石英からなる反応ガスノズル31、反応ガスノズル32、及び分離ガスノズル41,42が配置されている。図示の例では、チャンバ1の周方向に間隔をおいて、搬送口15から時計回り(回転テーブル2の回転方向)に分離ガスノズル41、反応ガスノズル31、分離ガスノズル42、及び反応ガスノズル32の順に配列されている。これらのノズル41,31,42,32は、それぞれの基端部であるガス導入ポート41a,31a,42a,32aを容器本体12の外周壁に固定する。これにより、チャンバ1の外周壁からチャンバ1内に導入され、容器本体12の半径方向に沿って回転テーブル2に対して平行に伸びるように取り付けられている。
【0020】
反応ガスノズル31には、第1の反応ガスが貯留される第1の反応ガス供給源が開閉バルブや流量調整器(ともに不図示)を介して接続されている。反応ガスノズル32には、第1の反応ガスと反応する第2の反応ガスが貯留される第2の反応ガス供給源が開閉バルブや流量調整器(ともに不図示)を介して接続されている。
【0021】
ここで、第1の反応ガスは、半導体元素又は金属元素を含むガスであることが好ましく、酸化物又は窒化物となったときに、酸化膜又は窒化膜として用いられ得るものが選択される。第2の反応ガスは、半導体元素又は金属元素と反応して、半導体酸化物又は半導体窒化物、若しくは金属酸化物又は金属窒化物を生成し得る酸化ガス又は窒化ガスが選択される。具体的には、第1の反応ガスは、半導体元素又は金属元素を含む有機半導体ガス又は有機金属ガスであることが好ましい。また、第1の反応ガスとしては、ウエハWの表面に対して吸着性を有するガスであることが好ましい。第2の反応ガスとしては、ウエハWの表面に吸着する第1の反応ガスと酸化反応又は窒化反応が可能であり、反応化合物をウエハWの表面に堆積させ得る酸化ガス又は窒化ガスであることが好ましい。
【0022】
具体的には、例えば、第1の反応ガスは、シリコンを含む反応ガスであり、酸化膜としてSiOを形成あるいは窒化膜としてSiNを形成するジイソプロピルアミノシラン、ビスターシャルブチルアミノシラン(BTBAS)等の有機アミノシランである。あるいは、第1の反応ガスは、ハフニウムを含む反応ガスであり、酸化膜としてHfOを形成するテトラキスジメチルアミノハフニウム(以下、「TDMAH」と称す。)である。あるいは、第1の反応ガスは、チタンを含む反応ガスであり、窒化膜としてTiNを形成するTiCl等である。また、第2の反応ガスは、例えばオゾンガス(O)、酸素ガス(O)等の酸化ガスである。あるいは、第2の反応ガスは、例えばアンモニアガス(NH)等の窒化ガスである。
【0023】
また、分離ガスノズル41,42には、ArやHe等の希ガスや窒素(N)ガス等の不活性ガスの供給源が開閉バルブや流量調整器(ともに不図示)を介して接続されている。分離ガスノズル41,42から供給される不活性ガスを分離ガスともいう。実施形態においては、不活性ガスとして例えばNガスが使用される。
【0024】
また、反応ガスノズル31には、第1の反応ガス供給源の他、第2の反応ガス供給源、ArやHe等の希ガスや窒素(N)ガス等の分離ガスとしても用いられる不活性ガスの供給源が接続される。切り替え部(不図示)の動作でいずれのガスを供給するか切り替え可能に設けられている。反応ガスノズル32には、第2の反応ガス供給源の他、第1の反応ガス供給源、分離ガスとしても用いられる不活性ガスの供給源が接続されて、切り替え部(不図示)の動作でいずれのガスを供給するか切り替え可能に設けられている。
【0025】
反応ガスノズル31の下方に区画された領域は、第1の反応ガスをウエハWに吸着させるための第1の処理領域P1となる。反応ガスノズル32の下方に区画され領域は、第1の処理領域P1においてウエハWに吸着された第1の反応ガスを酸化又は窒化させる第2の処理領域P2となる。
【0026】
チャンバ1内には2つの凸状部4が、回転テーブル2に向かって突出するように天板11の裏面に取り付けられている。凸状部4は、分離ガスノズル41,42とともに分離領域Dを構成する。すなわち、分離ガスノズル41,42の下方領域は、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを分離し、第1の反応ガスと第2の反応ガスとの混合を防止する分離領域Dとなる。凸状部4は、頂部が円弧状に切断された略扇型の平面形状を有し、本開示においては、内円弧が天井面45よりも突出する突出部5(図1参照)に連結し、外円弧がチャンバ1の容器本体12の内周面に沿うように配置されている。図1に示すように、突出部5は、回転テーブル2を固定するコア部21の外周を囲むように設けられている。
【0027】
図2に示す凸状部4は、天板11の裏面に取り付けられている。このため、凸状部4の下面は、この下面の周方向両側に位置する天井面45よりも低くなっている。
【0028】
凸状部4のそれぞれには、周方向中央において溝部(図示せず)が形成され、分離ガスノズル41,42が収容されている。分離ガスノズル41,42にはガス吐出孔が形成されている。
【0029】
反応ガスノズル31,32は、天井面45から離間してウエハWの近傍に設けられている。分離ガスノズル42から供給されるNガスは、第1の処理領域P1からの第1の反応ガスと、第2の処理領域P2からの第2の反応ガス(酸化ガス又は窒化ガス)とに対するカウンターフローとして働く。したがって、第1の処理領域P1からの第1の反応ガスと、第2の処理領域P2からの第2の反応ガスとが、凸状部4及びNガスにより分離される。よって、チャンバ1内において第1の反応ガスと第2の反応ガスとが混合して反応することが抑制される。
【0030】
回転テーブル2と容器本体12の内周面との間において、第1の排気口610と第2の排気口620とが形成されている。第1の排気口610と図1に示す真空ポンプ640との間の排気管630には圧力調整器(APC、Auto Pressure Controller)650が設けられている。第2の排気口620も同様に、圧力調整器が設けられた排気管を介して真空ポンプ(それぞれ不図示)に接続されている。第1の排気口610と第2の排気口620の排気圧力が、各々独立して制御可能に構成されている。
【0031】
図1に示すように、回転テーブル2とチャンバ1の底部14との間に形成される空間70には、保持トレイ25を誘導加熱するための誘導加熱コイル7が設けられている。誘導加熱コイル7に高周波電流を供給する高周波電源(図示せず)は、制御部100によって制御される。高周波電源(図示せず)から誘導加熱コイル7に高周波電流が供給されると、保持トレイ25(後述する磁性体部材250,252)が誘導加熱により加熱される。これにより、保持トレイ25の凹部26に載置されたウエハWを、プロセスレシピで決められた温度(例えば450℃)に加熱する。
【0032】
誘導加熱コイル7と回転テーブル2との間には、誘導加熱コイル7が配置される空間70を覆う仕切り板71が設けられている。仕切り板71は、チャンバ1の底部14に対して、例えばOリング等のシール部材72を介して気密に配置される。仕切り板71は、石英(SiO)、Al等の絶縁体で形成される。これにより、誘導加熱コイル7が設けられた空間70へのガスの侵入を抑える。
【0033】
また、チャンバ1の底部14には、空間70に誘導加熱コイル7を空冷するための冷却ガス(例えば、Nガス)を供給するためのガス供給管73と、空間70から冷却ガスを排気するためのガス排気管74が設けられている。これにより、誘導加熱コイル7の熱は、空間70の外に排熱される。
【0034】
また、誘導加熱コイル7は、回転テーブル2の回転方向(周方向)に沿って複数設けられ、各誘導加熱コイル7が独立して制御可能に構成されていてもよい。また、誘導加熱コイル7は、回転テーブル2に収容して支持される保持トレイ25と同数設けられていてもよい。これにより、回転テーブル2が停止した状態において、複数の保持トレイ25のうち選択した保持トレイ25について誘導加熱することができる。
【0035】
なお、誘導加熱コイル7、保持トレイ25及び回転テーブル2は、保持トレイ25に保持されたウエハWを加熱する基板加熱装置を構成する。
【0036】
なお、誘導加熱コイル7と保持トレイ25との距離は、20mm以内が好ましい。
【0037】
ケース体20には、パージガスであるNガスを供給してパージするためのパージガス供給管75が設けられている。パージガス供給管75からNガスを供給することで、これらNガスの流れにより、チャンバ1の中央下方の空間と、回転テーブル2の下方の空間とを通じて、図2に示す空間481及び空間482内のガスが混合するのを抑制できる。
【0038】
また、チャンバ1の天板11の中心部には分離ガス供給管51が接続されていて、天板11とコア部21との間の空間52に分離ガスであるNガスを供給するように構成されている。空間52に供給された分離ガスは、突出部5と回転テーブル2との狭い空間50を介して回転テーブル2のウエハ載置領域側の表面に沿って周縁に向けて吐出される。空間50は分離ガスにより空間481及び空間482よりも高い圧力に維持され得る。従って、空間50により、第1の処理領域P1に供給される第1の反応ガスと、第2の処理領域P2に供給される第2の反応ガスとが、空間52を通って混合することが抑制される。
【0039】
基板処理装置には、基板処理装置の動作を制御する制御部100が設けられている。基板処理装置には、各種センサが設置されている。各種センサの一例として回転テーブル2の温度を測定する温度センサ60が設置されている。温度センサ60は、例えば、回転テーブル2の上方に設けられ、回転テーブル2とウエハWとの材質の違いを利用して載置部に載置されたウエハWの脱離を判定したり、回転テーブル2の温度を測定したりするための放射温度計であってもよい。温度センサ60は、回転テーブル2に接触又は非接触に配置され、回転テーブル2の温度を測定する。
【0040】
温度センサ60が放射温度計の場合、例えば放射温度計をチャンバ1の外部の窓上に設け、物体から放射される赤外線や可視光線の強度を測定して物体の温度を測定する。温度センサ60に放射温度計を用いることにより、回転テーブル2の温度測定を高速かつ非接触で行うことができる。温度センサ60は、測定した温度を制御部100に送信する。制御部100は温度センサ60が測定した温度を取得し、回転テーブル2の昇降制御に使用する。
【0041】
図3は、実施形態に係る制御部100のハードウエア構成の一例を示す図である。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、I/Oポート104、操作パネル105、HDD(Hard Disk Drive)106を有する。各部はバスBによって接続されている。
【0042】
CPU101は、HDD106等の記憶装置に格納されたプログラムや、成膜処理やクリーニング処理を行うためのプロセスレシピ等に基づき、制御部100の動作を制御する。CPU101は、プロセスレシピに基づき、回転テーブル2に載置されたウエハWの成膜処理を制御する。また、CPU101は、クリーニングレシピに基づき、チャンバ1内のクリーニング処理を制御する。
【0043】
ROM102は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ、ハードディスク等により構成され、CPU101のプログラムやレシピ等を記憶する記憶媒体である。RAM103は、CPU101のワークエリア等として機能する。
【0044】
I/Oポート104は、温度、圧力、ガス流量等を検出する各種センサの値を基板処理装置に取り付けられた各種センサから取得し、CPU101に送信する。また、I/Oポート104は、CPU101が出力する制御信号を基板処理装置の各部(回転テーブル2、真空ポンプ640等)へ出力する。また、I/Oポート104には、操作者が基板処理装置を操作する操作パネル105が接続されている。
【0045】
HDD106は、補助記憶装置であり、成膜処理、クリーニング処理の手順を規定した情報であるプロセスレシピやプログラム等が格納されてもよい。
【0046】
次に、回転テーブル2の収容部24及び保持トレイ25について、図4を用いて更に説明する。図4は、回転テーブル2の収容部24及び保持トレイ25の構造を説明する断面図の一例である。
【0047】
保持トレイ25は、凹部26が形成される絶縁体部材251と、絶縁体部材251内に配置される磁性体部材252と、を有する。
【0048】
絶縁体部材251は、絶縁体で形成される。また、絶縁体部材251は、例えばAlN、Al等の熱伝導性の高い絶縁体で形成されることが好ましい。
【0049】
磁性体部材252は、磁性体で形成され、誘導加熱コイル7によって誘導加熱される部材である。磁性体部材252は、例えばFe、SUS430等の磁性体で形成される。また、磁性体部材252は、例えばウエハWが載置される凹部26の載置面の下に配置される。
【0050】
なお、保持トレイ25は、磁性体部材252を絶縁体部材251で被覆することにより形成されてもよく、絶縁体部材251と磁性体部材252とを一体焼結で形成されてもよい。
【0051】
また、保持トレイ25は、回転テーブル2と保持トレイ25との熱伝導を抑制する熱伝導抑制部を介して、回転テーブル2に支持される。熱伝導抑制部は、回転テーブル2と保持トレイ25との接触面積を小さくして支持する構造によって形成される。
【0052】
例えば、図4に示す例において、保持トレイ25には、円板形状の保持トレイ25の外周面から径方向外側に向かって形成されるフランジ部255が形成されている。
【0053】
また、回転テーブル2の収容部24には、保持トレイ25のフランジ部255と当接する係止部205が形成されている。係止部205は、例えば、穴形状の収容部24の内周面から径方向内側に向かって形成される段差部として形成されている。
【0054】
この例において、熱伝導抑制部は、フランジ部255及び係止部205によって構成される。回転テーブル2の収容部24に保持トレイ25を配置した際、保持トレイ25と回転テーブル2の収容部24とは、フランジ部255及び係止部205で当接する。熱伝導抑制部は、保持トレイ25と回転テーブル2との接触面積を少なくすることにより、保持トレイ25と回転テーブル2との熱伝導を抑制する。なお、図4に示す熱伝導抑制部の構成は、一例でありこれに限られるものではない。
【0055】
加えて、熱伝導抑制部は、回転テーブル2と保持トレイ25との間に断熱部材を介在させることにより構成してもよい。これにより、回転テーブル2にAl等の熱伝導性の高い絶縁体を用いることができる。
【0056】
また、保持トレイ25の構成は、図4に示す保持トレイ25の構成に限られるものではない。図5は、回転テーブル2の収容部24及び保持トレイ25の構造を説明する断面図の他の一例である。
【0057】
保持トレイ25は、凹部26が形成される磁性体部材250を有する。磁性体部材250は、磁性体で形成され、誘導加熱コイル7によって誘導加熱される部材である。磁性体部材250は、例えばカーボン等の磁性体で形成される。また、保持トレイ25の表面は、SiCでコートされていてもよい。
【0058】
また、保持トレイ25は、回転テーブル2と保持トレイ25との熱伝導を抑制する熱伝導抑制部(フランジ部255、係止部205)を介して、回転テーブル2に支持される。熱伝導抑制部は、回転テーブル2と保持トレイ25との接触面積を小さくして支持する構造によって形成される。
【0059】
次に、参考例に係る基板処理装置と対比しつつ、本実施形態に係る基板処理装置について説明する。
【0060】
まず、参考例に係る基板処理装置について説明する。参考例に係る基板処理装置では、回転テーブルにウエハを載置するための円形状の凹部が直接設けられている。また、回転テーブルの下に抵抗加熱ヒータが設けられている。抵抗加熱ヒータは、輻射熱によって回転テーブルを加熱することで、回転テーブルの凹部に載置されたウエハを加熱する。
【0061】
参考例に係る基板処理装置においては、熱容量の大きい回転テーブルを加熱するため、ウエハを所望の温度に加熱するための抵抗加熱ヒータの消費電力が多くなる。また、抵抗加熱ヒータからの輻射熱は、回転テーブルを加熱するとともに、容器本体12の底部14等も加熱する。このため、ウエハを所望の温度に加熱するための抵抗加熱ヒータの消費電力が多くなる。また、参考例に係る基板処理装置においては、熱容量の大きい回転テーブルを加熱するため、ウエハの温度を昇降させる際の温度制御性が悪い。
【0062】
これに対し、本実施形態に係る基板処理装置によれば、誘導加熱コイル7によって、保持トレイ25を誘導加熱する。即ち、加熱対象の熱容量を参考例よりも小さくする。これにより、ウエハWを所望の温度に加熱するための誘導加熱コイル7の消費電力を参考例よりも少なくすることができる。また、誘導加熱を用いることにより、容器本体12の底部14等が加熱されることを抑制することができるので、ウエハWを所望の温度に加熱するための誘導加熱コイル7の消費電力を参考例よりも少なくすることができる。また、本実施形態に係る基板処理装置によれば、加熱対象の熱容量を参考例よりも小さくすることができるので、ウエハWの温度を昇降させる際の温度制御性を向上させることができる。
【0063】
また、参考例に係る基板処理装置においては、回転テーブルが加熱されることにより、回転テーブルにもウエハと同様に成膜される。これにより、プロセスガスの消費量が増加する。また、成膜処理によって生じた反応副生成ガスの生成量も増加する。また、クリーニングする際の対象範囲が広く、クリーニングガスの消費量も増える。膜剥がれによりパーティクルを生じる発塵源となる範囲も広くなる。
【0064】
これに対し、本実施形態に係る基板処理装置によれば、保持トレイ25を誘導加熱し、保持トレイ25と回転テーブル2との伝熱を抑制する構造(フランジ部255,係止部205)を有している。これにより、回転テーブル2の成膜を抑制することができる。また、プロセスガスの消費量を少なくすることができる。また、反応副生成ガスの生成量も少なくすることができる。また、クリーニングガスの消費量も少なくすることができる。また、膜剥がれによりパーティクルを生じる発塵源となる範囲を狭くすることができるので、パーティクル等が基板Wに付着することを抑制することができる。
【0065】
また、参考例に係る基板処理装置において、回転テーブルは中心軸から放熱する。このため、回転テーブルの径方向において温度勾配が生じるおそれがある。
【0066】
これに対し、本実施形態に係る基板処理装置によれば、保持トレイ25が熱伝導抑制部を介して回転テーブル2に支持されていることにより、回転テーブル2の径方向における温度勾配を抑制することができる。
【0067】
なお、高周波電源(図示せず)から誘導加熱コイル7に高周波電流を供給することにより、保持トレイ25の磁性体部材250,252を誘導加熱により加熱するものとして説明したが、これに限られるものではない。誘導加熱コイル7によって定磁場を形成し、回転テーブル2を回転させることにより、保持トレイ25の磁性体部材250,252に磁場変化を与えることで誘導加熱により加熱させてもよい。また、保持トレイ25の磁性体部材250,252と接続する接地(アース)ライン(図示せず)と、接地ライン上に設けられた開閉スイッチ(図示せず)と、を設けてもよい。これにより、開閉スイッチを閉じることで保持トレイ25の磁性体部材250,252の誘導加熱を抑制することができる。また、開閉スイッチを開くことで保持トレイ25の磁性体部材250,252の誘導加熱させることができる。
【0068】
以上、基板処理装置について説明したが、本開示は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 チャンバ
2 回転テーブル
7 誘導加熱コイル
24 収容部
25 保持トレイ
26 凹部(基板保持部)
205 係止部
250 磁性体部材
251 絶縁体部材
252 磁性体部材
255 フランジ部
W ウエハ
図1
図2
図3
図4
図5